(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】筐体の放熱構造
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20240822BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H05K7/20 F
(21)【出願番号】P 2020209906
(22)【出願日】2020-12-18
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】304020498
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】敦賀 直明
(72)【発明者】
【氏名】西川 晃勝
(72)【発明者】
【氏名】都築 一郎
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-088575(JP,A)
【文献】特開2016-112757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/34-23/473
H05K 7/20
G06F 1/20
H04M 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に搭載された発熱部材と、
金属材料によって板状に形成され、前記発熱部材の熱が伝達される第1の放熱部材と、
金属材料によって板状に形成されて前記第1の放熱部材に重ねられ、前記第1の放熱部材を熱伝達可能に支持する第2の放熱部材と、
前記第2の放熱部材を熱伝達可能に支持する第3の放熱部材と、
前記基板、発熱部材および前記第1~第3の放熱部材を収容する筐体とを備え、
前記筐体は、
箱状に形成されて前記基板を収容するロアケースと、
金属材料によって形成されて前記ロアケースの開口部分を閉塞するアッパーケースとによって構成され、
前記第3の放熱部材は、前記アッパーケースから前記筐体内に向けて突出するように前記アッパーケースと一体に形成されているとともに、前記第2の放熱部材の両端部と対応する位置に対をなすように設けられて前記両端部から熱が伝達されるものであり、
前記第1の放熱部材と前記第3の放熱部材は、前記第2の放熱部材より熱伝導率が高い材料によって
形成されていることを特徴とする筐体の放熱構造。
【請求項2】
請求項1記載の筐体の放熱構造において、
前記第1の放熱部材は、前記ロアケースと前記アッパーケースとが並ぶ方向から見た平面視において四角形状に形成され、
前記第2の放熱部材は、
前記第1の放熱部材における前記発熱部材とは反対側の面からなる伝熱用端面が密着する平板部と、前記第1の放熱部材の4つの側面にそれぞれ重なる縦板部とを有し、かつ前記第1の放熱部材を貫通した取付用ねじが螺着されることにより前記第1の放熱部材の
前記伝熱用端面と
前記側面とを支持することを特徴とする筐体の放熱構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の筐体の放熱構造において、
前記第3の放熱部材は、
前記アッパーケースから前記筐体内に向けて突出して先端が互いに反対方向を指向するように折り曲げられ
た断面L字状に形成されているとともに、前記アッパーケースの内面が上方を指向する状態で前記第2の放熱部材の両端部が上方から重ねられる載置部を有し、
前記載置部の先端と対向する位置に、前記筐体に一体に形成された壁部が配設されていることを特徴とする筐体の放熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の内部に配置されたCPU等の発熱部材から発せられる熱を分散させて筐体外に放熱する筐体の放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から基板に搭載されたCPUなどの発熱部材から発せられる熱を逃がすための放熱構造として、筐体の内部にファンを設ける構造や、筐体内の自然対流を利用する構造などが知られている。筐体内の自然対流を利用する構造は、筐体の内部に配置される発熱部材の位置や、筐体の推奨される設置の姿勢などに合わせて、筐体内の気体が自然対流により放熱されるように筐体表面に複数の放熱孔が形成される。
【0003】
さらに、従来の筐体の放熱構造としては、例えば特許文献1に記載されているようにヒートシンクにより熱を逃がすものや、特許文献2に記載されているように筐体表面と発熱部材との間に空気層を形成して熱が筐体表面に直接伝わらないようにしたもの等、様々なものが知られている。
【0004】
ところで、近年の電子機器の筐体においては、金属材料によって形成することにより高級感を印象付けたりして、意匠性が重要視される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-32684号公報
【文献】特開平11-97871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に記載された筐体の放熱構造では、放熱効果を保つためにデザインの自由度が犠牲になり、意匠性を損なうという課題があった。
本発明の目的は、筐体の外観に影響を及ぼすことなく、筐体表面が高温になることを防止する筐体の放熱構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明に係る筐体の放熱構造は、基板に搭載された発熱部材と、前記発熱部材の熱が伝達される第1の放熱部材と、前記第1の放熱部材を熱伝達可能に支持する第2の放熱部材と、前記第2の放熱部材を熱伝達可能に支持する第3の放熱部材と、前記基板、発熱部材および前記第1~第3の放熱部材を収容する筐体とを備え、前記第1の放熱部材と前記第3の放熱部材は、前記第2の放熱部材より熱伝導率が高い材料によって形成され、前記第3の放熱部材は、前記筐体と一体に形成されているものである。
【0008】
本発明は、前記筐体の放熱構造において、前記第2の放熱部材は、前記第1の放熱部材の伝熱用端面と側面とを支持するものであってもよい。
【0009】
本発明は、前記筐体の放熱構造において、前記第3の放熱部材は、前記第2の放熱部材の両端部と対応する位置に対をなすように設けられ、これらの前記第3の放熱部材は、先端が互いに反対方向を指向するように折り曲げられて前記第2の放熱部材が載置される載置部を有し、前記載置部の先端と対向する位置に、前記筐体に一体に形成された壁部が配設されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、発熱部材の熱は、第1の放熱部材から第2の放熱部材に伝達される。第2の放熱部材は相対的に熱伝導率が低いために、第2の放熱部材から第3の放熱部材に伝達される熱の温度が低くなる。このため、第3の放熱部材から筐体に伝達される熱の温度も低くなるから、筐体の表面が高温になることがなく、筐体を触ったユーザに不快感を与えることもない。
本発明の放熱構造は筐体が実質的に放熱部品になるから、筐体の外観が損なわれることもない。
したがって、本発明によれば、筐体の外観に影響を及ぼすことなく、筐体表面が高温になることを防止する筐体の放熱構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明に係る筐体の放熱構造の分解斜視図である。
【
図2】
図2は、アッパーケースのケース内側から見た底面図である。
【
図3】
図3は、アッパーケースのケース内側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る筐体の放熱構造の一実施の形態を
図1~
図6を参照して詳細に説明する。
図5の破断位置は、
図2中にV-V線で示す位置である。
図1に示す筐体1は、電子機器の筐体である。この筐体1は、
図1において下側に描かれているロアケース2と、このロアケース2に重ねて取付けられるアッパーケース3とによって構成されている。ロアケース2は、一方に向けて(
図1においては上方に向けて)開口する箱状に形成されている。
【0013】
アッパーケース3は、
図6に示すように、ロアケース2に取付けられることによりロアケース2の開口部分を閉塞するように構成されている。以下において、筐体1の内部の部品の位置を説明するにあたっては、便宜上、ロアケース2側を下とし、アッパーケース3側を上として説明する。
ロアケース2は、プラスチック材料によって所定の形状に形成されており、内部に基板4を収容している。基板4にはCPU5が搭載されている。CPU5は、本発明でいう「発熱部材」に相当するものである。
【0014】
アッパーケース3は、高級感を印象付けるために金属材料によって形成されている。この実施の形態によるアッパーケース3は、熱伝導率が高い金属材料であるアルミニウム合金によって形成されている。アッパーケース3は、本発明に係る筐体の放熱構造11の一部を構成するもので、
図1に示すように、CPU5との間に放熱シート12と複数の放熱部材13~15とが挟まれる状態でロアケース2に取付けられる。
【0015】
以下においては、複数の放熱部材13~15をCPU5から近い順に第1の放熱部材13、第2の放熱部材14、第3の放熱部材15という。最もCPU5に近い第1の放熱部材13は、CPU5に放熱シート12を介して接続されてCPU5の熱が伝達される。放熱シート12は、CPU5と第1の放熱部材13との間の熱伝達効率を高くするためのもので、例えば放熱シリコンによって形成されている。
第1の放熱部材13は、熱伝導率が相対的に高い金属材料によって平面視四角形の板状に形成されている。この第1の放熱部材13は、平面視四角形の上面13a(
図5参照)と下面13bとが伝熱用端面になって下面側から上面側へ熱を伝達する。
【0016】
この実施の形態による第1の放熱部材13は、アルミニウム合金によって形成されている。また、第1の放熱部材13は、
図5に示すように、第2の放熱部材14の下面14aに重ねられ、第2の放熱部材14に取付用ねじ(図示せず)によって固着されている。この取付用ねじは、第1の放熱部材13を貫通して第2の放熱部材14に螺着される構成を採ることができる。
【0017】
第2の放熱部材14は、第1の放熱部材13より熱伝導率が低い金属材料によって平面視長方形の板状に形成されている。この実施の形態による第2の放熱部材14は、鉄や鉄系合金によって形成されている。また、第2の放熱部材14は、第1の放熱部材13の上面13a(伝熱用端面)が密着する平板部16(
図4参照)と、第1の放熱部材13の4つの側面13cにそれぞれ重なる縦板部17とを有している。すなわち、第2の放熱部材14は、第1の放熱部材13の上面13a(伝熱用端面)と側面13cとを熱伝達可能に支持している。
第2の放熱部材14は、
図2~
図5に示すように、取付用ねじ21によって第3の放熱部材15に取付けられている。
【0018】
第3の放熱部材15は、第2の放熱部材14の両端部と対応する位置に対をなすように設けられている。これらの第3の放熱部材15は、アッパーケース3から筐体内に向けて突出するようにアッパーケース3と一体に形成されている。このため、第3の放熱部材15は、相対的に熱伝導率が高い金属材料であるアルミニウム合金によって形成されている。この結果、この第3の放熱部材15と第1の放熱部材13は、第2の放熱部材14より熱伝導率が高い材料によって形成されていることになる。
【0019】
一対の第3の放熱部材15は、
図2および
図3に示すように、アッパーケース3の一側部3aから他側部3bまで延びるように形成されているとともに、
図5に示すように、アッパーケース3から下方に向けて突出する断面L字状に形成されている。詳述すると、これらの第3の放熱部材15には、
図4および
図5に示すように、先端が互いに反対方向を指向するように折り曲げられて載置部22が形成されている。この載置部22に第2の放熱部材14の両端部が下方から重ねられ、取付用ねじ21によって取付けられている。取付用ねじ21は、第2の放熱部材14の両端部を貫通し、第3の放熱部材15に螺着されている。このため、第3の放熱部材15は、第2の放熱部材14の両端部を熱伝達可能に支持している。
【0020】
アッパーケース3における第3の放熱部材15と隣り合う位置であって一対の第3の放熱部材15を挟む2箇所には、壁部23がそれぞれ設けられている。
これらの壁部23は、アッパーケース3から下方に突出する板状に形成され、第3の放熱部材15と同様にアッパーケース3の一側部3aから他側部3bまで延びている。壁部23の高さは、
図5に示すように、第3の放熱部材15の載置部22と略等しい高さである。壁部23は、載置部22の先端22aと所定の間隔をおいて対向する位置に配置されている。この実施の形態による第2の放熱部材14は、両端部が壁部23の近傍まで延びるように形成されている。
【0021】
このように構成された筐体の放熱構造11において、CPU5の熱は、
図5中に白抜きの矢印で示すように放熱シート12を介して第1の放熱部材13に熱伝導によって伝達され、更に第1の放熱部材13から第2の放熱部材14に熱伝導によって伝達される。第2の放熱部材14に伝達された熱は、
図5中に実線の矢印で示すように、第2の放熱部材14の両端部から第3の放熱部材15に熱伝導によって伝達される。このとき、第2の放熱部材14は相対的に熱伝導率が低いために、第2の放熱部材14から第3の放熱部材15に熱が伝わり難く、第2の放熱部材14から第3の放熱部材15に伝達される熱の温度が低くなる。
【0022】
このため、第3の放熱部材15からアッパーケース3に伝達される熱の温度も低くなるから、アッパーケース3の表面が高温になることがなく、アッパーケース3を触ったユーザに不快感を与えることもない。
この筐体の放熱構造11はアッパーケース3が実質的に放熱部品になるから、筐体1の外観が損なわれることもない。
したがって、この実施の形態によれば、筐体1の外観に影響を及ぼすことなく、筐体1表面が高温になることを防止する筐体の放熱構造を提供することができる。
【0023】
この実施の形態による第2の放熱部材14は、第1の放熱部材13の上面13a(伝熱用端面)と側面13cとを支持している。このため、第1の放熱部材13と第2の放熱部材14との接触面積が大きくなるから、熱が第1の放熱部材13から第2の放熱部材14に放熱され易くなる。したがって、放熱効率が高い放熱構造11が実現される。
【0024】
この実施の形態による第3の放熱部材15は、第2の放熱部材14の両端部と対応する位置に対をなすように設けられている
これらの第3の放熱部材15は、先端が互いに反対方向を指向するように折り曲げられて第2の放熱部材14が載置される載置部22を有している。この載置部22の先端と対向する位置に、筐体1に一体に形成された壁部23が配設されている。
このため、第3の放熱部材15と壁部23との間に空気層24(
図5参照)が形成される。この空気層24が実質的に断熱部として機能することにより、熱が第2の放熱部材14の両端部から
図5中に破線の矢印で示すように筐体内を伝播してアッパーケース3に伝達される際に、熱の温度が低下する。この結果、アッパーケース3の温度をより一層低くすることができる。
【0025】
上述した実施の形態においてはアッパーケース3(第3の放熱部材15)および第1の放熱部材13をアルミニウム合金によって形成し、第2の放熱部材14を鉄によって形成する例を示したが、これらの部材の材料は適宜変更することができる。熱伝導率が相対的に高い金属材料は、例えば銅、銅合金でもよいし、熱伝導率が相対的に低い金属材料は、例えばステンレス鋼でもよい。
【符号の説明】
【0026】
1…筐体、3…アッパーケース、4…基板、5…CPU(発熱部材)、11…放熱構造、13…第1の放熱部材、13a…上面(伝熱用端面)、13c…側面、14…第2の放熱部材、15…第3の放熱部材、22…載置部、23…壁部。