(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】プローブ
(51)【国際特許分類】
A61C 19/04 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
A61C19/04 C
(21)【出願番号】P 2020141863
(22)【出願日】2020-08-25
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】520323849
【氏名又は名称】春日井 昇平
(73)【特許権者】
【識別番号】514091895
【氏名又は名称】湘南メディカルパートナー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(74)【代理人】
【識別番号】100220582
【氏名又は名称】秋元 達也
(72)【発明者】
【氏名】春日井 昇平
(72)【発明者】
【氏名】辻村 傑
【審査官】松山 雛子
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3124215(JP,U)
【文献】特開平11-137581(JP,A)
【文献】特表平04-500965(JP,A)
【文献】国際公開第90/003162(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査者の歯周組織の状態を確認するために歯肉溝に挿入されるプローブであって、
前記プローブにおける基端側に設けられ、検査者により把持される把持部と、
前記プローブにおける先端側に設けられ、先端と基端とを有する細長形状で、前記先端から前記歯肉溝に挿入される探針部と、
を備え、
前記探針部は、
当該探針部の前記先端から延在し、前記先端と共通する先端側端及び当該先端側端の反対側の基端側端を有する小径部と、
当該探針部の前記基端から延在し、前記基端と共通する基端側端及び当該基端側端の反対側の先端側端を有する大径部と、
前記小径部の前記基端側端の外周縁と、前記大径部の前記先端側端の外周縁とを接続する接続部と、
を有
し、
前記小径部は、前記基端側端において、前記探針部が延在する方向の中心軸線に垂直な断面における断面積が最大であり、前記中心軸線の位置から外周縁までの距離が0.35mm以下であり、
前記大径部は、前記先端側端において、前記中心軸線に垂直な断面における断面積が最小であり、かつ前記小径部の前記基端側端における前記断面積よりも大きく、前記先端側端における外周縁が前記小径部の前記基端側端における外周縁との間に0.1mm以上の段差を有し、
前記接続部は、前記探針部の延在する方向のいずれの位置においても、前記中心軸線の位置から外周縁までの距離が前記大径部の前記先端側端における前記中心軸線の位置から前記外周縁までの距離以下であり、かつ前記小径部の前記基端側端における前記中心軸線の位置から前記外周縁までの距離以上である
プローブ。
【請求項2】
前記大径部は、前記探針部の前記延在方向において、前記小径部と隣接し、
前記大径部の前記先端側端の端面が前記接続部を成している
請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記大径部
の前記先端側端の端面が前記探針部の前記延在方向に垂直となるように形成されている
請求項2に記載のプローブ。
【請求項4】
前記探針部は、前記小径部と前記大径部との間に形成され、当該探針部の前記延在方向に垂直な断面における断面積が前記小径部側から前記大径部側に向かって拡大する拡径部を備え、
前記拡径部が前記接続部を成している
請求項1に記載のプローブ。
【請求項5】
前記大径部の外周面は、前記探針部の前記延在方向視において、前記小径部の外周面を内包している
請求項1~4のいずれか一項に記載のプローブ。
【請求項6】
前記大径部は、前記小径部と同軸に形成されている
請求項1~5のいずれか一項に記載のプローブ。
【請求項7】
前記探針部は、樹脂からなる
請求項1~6のいずれか一項に記載のプローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科において、被検査者(患者等)の歯周組織の状態を確認するための器具であるプローブが知られている。このようなプローブでは、細長形状の探針部が被検査者の歯肉溝に挿入され、その挿入深さ(例えばプロービングデプス)及び出血の有無等に基づいて、被検査者の歯周組織(例えば、軟組織である歯肉、歯根膜等)の状態が歯科医師等の検査者により判断される。
【0003】
健康な歯周組織においては、歯の歯根と当該歯を包囲する歯肉とは互いに強固に結合しており、歯肉辺縁側における歯根と歯肉との境界には、歯肉溝と呼ばれる微小な凹部が形成されている。ここで、例えば歯周病等により歯肉に炎症が発生すると、この歯肉溝の凹部が深くなり歯肉ポケットが形成される。そして、炎症が悪化して歯周組織の深部まで進行すると、この歯肉溝の凹部も更に深くなり歯周ポケットが形成される。また、歯周病等により歯肉に炎症が発生すると、歯肉が腫れて出血しやすい状態になる。
【0004】
このように、歯肉溝の深さ及び歯肉からの出血のしやすさと歯周組織の状態との間には相関関係が見られる。したがって、プローブを歯肉溝に挿入して、その挿入深さを計測するとともにプローブの挿入に伴う歯肉からの出血の有無等を検査することにより、歯周組織の炎症の進行状態を確認することができる。このとき、プローブを歯肉溝に挿入するプロービング圧が異なるとプローブの挿入深さ等が変わってしまうため、歯肉溝へのプローブの挿入は所定のプロービング圧で行われることが求められる。特許文献1には、プローブの中途位置に歪ゲージが設けられ、この歪ゲージの出力値に基づいてプロービング圧を検出可能なプローブが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、プローブは、歯肉溝に所定のプロービング圧で挿入される。このため、例えば歯周組織の炎症が深部まで進行して歯肉溝が歯周ポケットを形成しているような場合には、プローブが容易に歯肉の深い位置まで挿入されてしまい、その結果、歯肉に必要以上の負担がかかり被検査者の快適性を損ねるおそれがある。
【0007】
特に、被検査者がインプラント治療(すなわち、歯科インプラントを用いた補綴治療)を行っている場合には、インプラント又はアバットメントと、これらを包囲するインプラント周囲軟組織と、の結合が天然歯の場合と比較して脆弱であるため、これらの結合に対するプローブの挿入の影響が大きくなりやすい。
【0008】
また、インプラント又はアバットメントの側面には天然歯の側面と比較して凹凸が多いため、プローブの探針部の先端を歯肉溝の底部まで適切に案内することが難しい場合がある。この場合、プローブを十分な深さまで挿入しようとして適切なプロービング圧の範囲から逸脱してしまうと、歯肉への影響が大きくなるおそれがある。
【0009】
そこで、本開示に係るプローブは、歯肉溝への挿入時における歯肉への影響を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様に係るプローブ(100)は、被検査者の歯周組織(P)の状態を確認するために歯肉溝(G)に挿入されるプローブ(100)であって、検査者により把持される把持部(1)と、把持部(1)から延在し、把持部(1)とは反対側の先端(3b)から歯肉溝(G)に挿入される細長形状の探針部(3)と、を備え、探針部(3)は、先端(3b)側に形成された小径部(30)と、把持部(1)側に形成され、小径部(30)と比較して当該探針部(3)の延在方向に垂直な断面における断面積が大きい大径部(31)と、を有する。
【0011】
このプローブ(100)によれば、まず、被検査者の歯肉溝(G)に探針部(3)の小径部(30)が挿入される。このとき、大径部(31)では小径部(30)と比較して断面積が大きいため、歯肉溝(G)に小径部(30)を挿入可能なプロービング圧であっても大径部(31)までは挿入されにくい。このため、把持部(1)を把持してプローブ(100)を操作する検査者は、歯肉溝(G)に大径部(31)が挿入される直前の位置で探針部(3)の挿入を停止させやすい。この位置から、検査者は、例えばプローブ(100)を傾斜させたりすることで歯肉溝(G)に大径部(31)が容易に(無理なく)挿入されるか否かを判定する。歯肉溝(G)に大径部(31)が容易に挿入される場合、検査者は、被検査者の歯周組織(P)が健康な状態にないことの示唆を得ることができる。一方、歯肉溝(G)に大径部(31)が容易には挿入されない場合、検査者は、被検査者の歯周組織(P)が健康な状態にあることの示唆を得ることができる。いずれの場合であっても、このプローブ(100)では、探針部(3)の先端(3b)を歯肉溝(G)の底部まで挿入する必要がなく、より浅い挿入深さでの検査が可能である。したがって、このプローブ(100)は、歯肉溝(G)への挿入時における歯肉への影響を低減させることができる。
【0012】
本開示の一態様に係るプローブ(100)では、大径部(31)は、探針部(3)の延在方向において、小径部(30)と隣接していてもよい。これによれば、歯肉溝(G)に大径部(31)が挿入される直前の位置で探針部(3)の挿入を停止させた状態からの更なる挿入深さを微小なものとすることができる。よって、歯肉溝(G)への挿入時における歯肉への影響を低減させることができる。
【0013】
本開示の一態様に係るプローブ(100)では、大径部(31)は、先端(3b)側の端面(31a)が探針部(3)の延在方向に垂直となるように形成されていてもよい。これによれば、歯肉溝(G)に大径部(31)が挿入される直前の位置で探針部(3)の挿入をより確実に停止させることができる。
【0014】
本開示の一態様に係るプローブ(100A)では、探針部(3A)は、小径部(30A)と大径部(31A)との間に形成され、当該探針部(3A)の延在方向に垂直な断面における断面積が小径部(30A)側から大径部(31A)側に向かって拡大する拡径部(32A)を備えていてもよい。これによれば、歯肉溝(G)に大径部(31A)が挿入される際に、探針部(3A)の延在方向に対して斜面を形成する拡径部(32A)から歯肉溝(G)に挿入されるため、歯肉溝(G)に挿入される探針部(3A)の断面積を徐々に大きくしていくことができる。よって、歯肉溝(G)への挿入時における歯肉への影響を低減させることができる。
【0015】
本開示の一態様に係るプローブ(100)では、大径部(31)の外周面(31b)は、探針部(3)の延在方向視において、小径部(30)の外周面(30a)を内包していてもよい。これによれば、歯肉溝(G)に大径部(31)が挿入される直前の位置で探針部(3)の挿入を停止させるための機能を、探針部(3)の全周方向にわたって持たせることができる。
【0016】
本開示の一態様に係るプローブ(100)では、大径部(31)は、小径部(30)と同軸に形成されていてもよい。これによれば、歯肉溝(G)に大径部(31)が挿入される直前の位置で探針部(3)の挿入を停止させるための機能を、探針部(3)の全周方向にわたって均等に持たせることができる。
【0017】
本開示の一態様に係るプローブ(100)では、探針部(3)は、樹脂からなっていてもよい。これによれば、金属等の材料からなる探針部(3)と比較して硬度が低くなるため、探針部(3)が被検査者の歯(T)や歯周組織(P)等と接触することによる歯(T)や歯周組織(P)への負担を軽減することが可能となる。
【0018】
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態における構成要素の符号を本開示の一例として示したものであって、本開示を実施形態の態様に限定するものではない。
【発明の効果】
【0019】
このように、本開示に係るプローブは、歯肉溝への挿入時における歯肉への影響を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るプローブを示す図である。
【
図2】
図2は、探針部の先端付近を拡大して示す図である。
【
図3】
図3は、探針部を中心軸線に沿って見た図である。
【
図4】
図4は、プローブの探針部が被検査者の歯肉溝に挿入された状態を示す図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係るプローブの探針部の先端付近を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して例示的な実施形態について説明する。なお、各図における同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るプローブ100を示す図である。
図2は、探針部3の先端3b付近を拡大して示す図である。
図1及び
図2に示されるプローブ100は、被検査者(患者等)の歯Tの周囲に位置する歯周組織Pの状態を確認するために、歯肉溝Gに挿入される歯科用の検査器具である(
図4参照)。プローブ100が歯肉溝Gに挿入された際の挿入深さ及び出血の有無等に基づいて、被検査者の歯周組織Pの状態が例えば検査者(歯科医師等)により判断される。プローブ100は、例えば金属又は樹脂からなり、把持部1、頚部2、及び探針部3を有している。
【0023】
ここで、「歯」とは、歯根及び歯冠を含む天然歯であってもよく、被検査者がインプラント治療(すなわち、歯科インプラントを用いた補綴治療)を行っている場合には、インプラント、アバットメント、及び上部構造である人工歯の総称(以下、「インプラント歯」と呼ぶ)であってもよい。
【0024】
「歯周組織」とは、歯Tの周囲に位置して当該歯Tを支持する組織である。歯Tが天然歯である場合には、歯周組織Pは、例えば歯肉及び歯根膜からなる軟組織、並びに、セメント質及び歯槽骨からなる硬組織に分類されてもよい。この場合、歯周組織Pは、特に天然歯の歯根を支持する軟組織、より具体的には歯肉であってもよい。一方、歯Tがインプラント歯である場合には、歯周組織Pは、例えば歯肉からなる軟組織(インプラント周囲軟組織)、及び、歯槽骨からなる硬組織に分類されてもよい。この場合、歯周組織Pは、特にインプラント歯のインプラント又はアバットメントを支持する軟組織、より具体的には歯肉であってもよい。
【0025】
「歯肉溝」とは、ここでは、歯Tと歯周組織P(例えば軟組織)との歯肉辺縁側における境界に形成された凹部を意味する。つまり、歯肉溝Gには、歯Tが天然歯である場合における天然歯と歯周組織Pとの境界に形成された凹部、及び、歯Tがインプラント歯である場合におけるインプラント歯と歯周組織Pとの境界に形成された凹部の両方が含まれる。なお、例えば歯周病又はインプラント周囲炎等により歯肉に炎症が発生すると歯肉溝Gの凹部が深くなり歯肉ポケットが形成され、さらに炎症が悪化すると歯肉溝Gの凹部が更に深くなり歯周ポケットが形成される。ここでは、歯肉溝Gは、これら歯肉ポケット及び歯周ポケットも含むものとする。
【0026】
把持部1は、検査者により把持される部分である。把持部1は、長尺の棒状部材であり、検査者が把持しやすく且つ検査者の手が滑りにくく構成されている。把持部1は、例えば直径5mm~10mm程度、全長100mm~150mm程度であってもよい。把持部1の一方の端部である基端1aには他の部材が接続されていない。把持部1の他方の端部である先端1bには、後述する頚部2の基端2aが接続されている。
【0027】
頚部2は、把持部1から直接に延在し(つまり、把持部1に隣接して連結され)、把持部1と探針部3とを接続する部分である。頚部2は、細長形状を呈し、その途中の1箇所において屈曲した第1屈曲部B1を形成している。頚部2の一方の端部である基端2aには把持部1の先端1bが接続されている。頚部2の基端2a付近の部分(すなわち、頚部2の第1屈曲部B1よりも基端2a側の部分)の延在方向は、把持部1の先端1b付近の部分の延在方向と一致している。頚部2は、第1屈曲部B1において例えば30度~45度程度屈曲している。なお、頚部2の屈曲の態様については上述したものに限定されず、例えば頚部2の途中の複数個所において屈曲部が形成されていてもよく、頚部2には屈曲部が形成されていなくてもよい。
【0028】
探針部3は、把持部1から頚部2を介して延在し、把持部1とは反対側の先端3bから被検査者の歯肉溝Gに挿入される部分である。探針部3は、中心軸線A1に沿って直線的に延びる細長形状を呈している(すなわち、中心軸線A1の方向が探針部3の延在方向である。)。探針部3の一方の端部である基端3aには頚部2の先端2bが接続されている。
【0029】
探針部3の延在方向は、頚部2の先端2b付近の部分の延在方向と交差している。つまり、頚部2及び探針部3は、頚部2の先端2bと探針部3の基端3aとの接続部分において第2屈曲部B2を形成している。頚部2及び探針部3は、第2屈曲部B2において例えば60度~90度程度屈曲している。第1屈曲部B1及び第2屈曲部B2は、例えば頚部2及び探針部3が同一平面内に含まれる向きにそれぞれ屈曲している。なお、第2屈曲部B2の屈曲の態様については上述したものに限定されない。
【0030】
上述したように、プローブ100は金属又は樹脂により形成されていてもよい。ここで、特に探針部3は、被検査者の歯肉溝Gに実際に挿入される部分であるため、その材質については検査の目的等に応じて決定されてもよい。例えば、被検査者の歯Tがインプラント歯である場合等には、インプラント及びアバットメントの保護等のために、樹脂からなる探針部3が採用されてもよい。
【0031】
探針部3は、小径部30及び大径部31を有している。小径部30は、探針部3の先端3b側に形成されている。大径部31は、探針部3の基端3a側(すなわち、把持部1及び頚部2側)に形成されている。大径部31は、探針部3の延在方向において、小径部30と隣接している。
【0032】
小径部30は、探針部3の先端3bから所定の長さ範囲(ここでは2mm)の部分である。小径部30は、被検査者の歯肉溝Gに容易に挿入され得る。つまり、小径部30は、被検査者の歯周組織Pが健康な状態であるか否かにかかわらず歯肉溝Gに容易に挿入可能な長さ及び断面積を有している。
【0033】
小径部30は、探針部3の先端3b部分において丸みを帯びている。また、小径部30は、探針部3の先端3bから延在方向に沿って基端3aに向かうにつれて、探針部3の延在方向に垂直な断面における断面積が若干大きくなっている(拡径している)。小径部30は、後述する大径部31と比較して探針部3の延在方向に垂直な断面における断面積が小さい。なお、小径部30の長さ及び断面積は上述した態様に限定されず、被検査者の歯周組織Pにおいて確認すべき症状に応じた長さ及び断面積であればよい。
【0034】
大径部31は、探針部3の先端3bから2mmの位置(すなわち、小径部30の先端3bとは反対側の端部の位置)から基端3aに向かって所定の長さ範囲の部分である。ここでは、具体的に大径部31は、探針部3の先端3bから2mmの位置(すなわち、小径部30の先端3bとは反対側の端部の位置)から基端3aまでの全体である。
【0035】
大径部31は、小径部30と比較して探針部3の延在方向に垂直な断面における断面積が大きい。このため、大径部31は、小径部30と比較して、被検査者の歯肉溝Gに挿入されにくい。具体的には、大径部31は、小径部30が歯肉溝Gに挿入される程度の微小なプロービング圧では歯肉溝Gに挿入されず、歯肉溝Gの直前の位置(例えば、歯肉溝Gの外側であって歯肉辺縁に当接する位置)で停止する。その状態から、検査者により、例えばプローブを傾斜させたりプロービング圧を増大させたりするように操作されると、以下のような挙動を示す。すなわち、被検査者の歯周組織Pが健康である場合には、検査者により上記のようにプローブ100が操作されても、相対的に大径部31は歯肉溝Gに挿入されにくい。一方、被検査者の歯周組織Pが健康でない場合には、検査者により上記のようにプローブ100が操作されると、相対的に大径部31は歯肉溝Gに挿入されやすい。なお、ここでは歯周組織Pが健康であるか否かとは、歯周組織Pに炎症(例えば、歯周病又はインプラント周囲炎等)が発生しているか否か(または、その程度の大小)を意味している。
【0036】
上述したように、大径部31は、小径部30と隣接しており、且つ、小径部30よりも断面積が大きい。このため、大径部31は、探針部3の先端3b側の端面31aが先端3b側から視認可能となるように露出している。具体的には、大径部31は、端面31aが探針部3の延在方向に垂直となるように形成されている。なお、「垂直」とは、垂直となるように形成された結果、微小な角度で傾斜して形成された状態を含んでもよい。大径部31は、端面31aから延在方向に沿って探針部3の基端3aに向かうにつれて、探針部3の延在方向に垂直な断面における断面積が若干大きくなっている(拡径している)。
【0037】
小径部30及び大径部31には、被検査者の歯肉溝Gに挿入された際に挿入深さを検査者が視認するための目盛Mが設けられている。目盛Mは、探針部3の先端3bから所定の間隔で複数設けられている。ここでは、目盛Mは、探針部3の先端3bから1mm間隔で3箇所、続いて2mm間隔で2箇所、続いて1mm間隔で3箇所設けられている。なお、目盛Mの位置、間隔、数等の態様については特に限定されず、検査者にとって利便性の高い任意の態様が採用される。また目盛Mは、視認性を向上させるために着色されていてもよい。
【0038】
複数の目盛Mのうちのいずれかは、小径部30と大径部31との境界位置(すなわち、大径部31の端面31aの位置)に設けられている。ここでは、探針部3の先端3bから2箇所目の目盛Mが、小径部30と大径部31との境界位置に設けられている。この場合、小径部30と大径部31との境界位置に設けられる目盛Mは、当該境界位置に新たに線が付されたり着色されたりしてもよい。あるいは、小径部30と大径部31との境界位置に設けられる目盛Mは、小径部30と大径部31との境界を代用していてもよい。つまり、小径部30と大径部31との境界位置においては大径部31の端面31aが恰も目盛Mのように視認され得ることから、この端面31aを目盛Mとして機能させてもよい。
【0039】
図3は、探針部3を中心軸線A1に沿って見た図である。
図3に示されるように、ここでは、小径部30及び大径部31のそれぞれは、延在方向に垂直な断面が円形となるように形成されている。つまり、小径部30及び大径部31のそれぞれは、概略円錐台形状を呈している。大径部31は、小径部30と同軸に形成されている。具体的には、大径部31の中心軸線及び小径部30の中心軸線は、探針部3の全体としての中心軸線A1と一致している。なお、小径部30及び大径部31のそれぞれは、延在方向に垂直な断面が円形となるように形成されていなくてもよく、例えば延在方向に垂直な断面が楕円形等となるように形成されていてもよい。
【0040】
小径部30は、歯肉溝Gへの挿入時における歯肉への影響を抑制することができるような断面積(半径)に形成されている。例えば、小径部30と大径部31との境界位置(すなわち、大径部31の端面31aの位置)において、小径部30の半径(すなわち、中心軸線A1から小径部30の外周面30aまでの径方向における距離)は、好ましくは0.20mm以上0.35mm以下であってもよく、より好ましくは0.25mm以上0.30mm以下であってもよく、特に好ましくは0.27mm程度であってもよい。なお、小径部30の半径は、これらの数値範囲に限定されない。
【0041】
大径部31の外周面31bは、探針部3の延在方向視において(すなわち、延在方向(あるいは、中心軸線A1)に沿って見て)、小径部30の外周面30aを内包している。換言すると、探針部3の延在方向視において、中心軸線A1から大径部31の外周面31bの任意の点までの径方向における距離は、中心軸線A1から小径部30の外周面30aの任意の点までの径方向における距離よりも大きい。例えば、小径部30と大径部31との境界位置(すなわち、大径部31の端面31aの位置)において、大径部31の半径(すなわち、中心軸線A1から大径部31の外周面31bまでの径方向における距離)は、小径部30の半径(すなわち、中心軸線A1から小径部30の外周面30aまでの径方向における距離)よりも、好ましくは0.1mm以上大きくてもよく、より好ましくは0.2mm以下大きくてもよく、特に好ましくは0.25mm程度大きくてもよい。ただし、歯肉溝Gへの挿入時における歯肉への影響が逆に大きくなることを避けるため、大径部31の半径が小径部30の半径よりも過度に大きすぎないことが好ましい場合がある。なお、小径部30の半径と大径部31の半径との大小関係は、これらの数値範囲に限定されない。
【0042】
[プローブの使用態様]
図4は、プローブ100の探針部3が被検査者の歯肉溝Gに挿入された状態を示す図である。
図4には、天然歯の歯肉溝Gにプローブ100の探針部3の小径部30が挿入された状態が示されている。この状態においては、歯肉溝Gに小径部30を挿入可能なプロービング圧であっても、小径部30よりも半径の大きい大径部31までは挿入されていない。この状態から、検査者は、把持部1を動かすようにして例えばプローブ100を傾斜させたりプロービング圧を増大させたりする。それによって探針部3の大径部31が歯肉溝Gに容易に挿入されるか否かを判定し、その判定結果が、歯科医師等の検査者による被検査者の歯周組織Pの状態の判断材料とされる。
【0043】
[作用及び効果]
以上説明したように、プローブ100は、被検査者の歯周組織Pの状態を確認するために歯肉溝Gに挿入されるプローブ100であって、検査者により把持される把持部1と、把持部1から延在し、把持部1とは反対側の先端3bから歯肉溝Gに挿入される細長形状の探針部3と、を備え、探針部3は、先端3b側に形成された小径部30と、把持部1側に形成され、小径部30と比較して当該探針部3の延在方向に垂直な断面における断面積が大きい大径部31と、を有している。
【0044】
このプローブ100によれば、まず、被検査者の歯肉溝Gに探針部3の小径部30が挿入される。このとき、大径部31では小径部30と比較して断面積が大きいため、歯肉溝Gに小径部30を挿入可能なプロービング圧であっても大径部31までは挿入されにくい。このため、把持部1を把持してプローブ100を操作する検査者は、歯肉溝Gに大径部31が挿入される直前の位置で探針部3の挿入を停止させやすい。この位置から、検査者は、例えばプローブ100を傾斜させたりすることで歯肉溝Gに大径部31が容易に(無理なく)挿入されるか否かを判定する。歯肉溝Gに大径部31が容易に挿入される場合、検査者は、被検査者の歯周組織Pが健康な状態にないことの示唆を得ることができる。一方、歯肉溝Gに大径部31が容易には挿入されない場合、検査者は、被検査者の歯周組織Pが健康な状態にあることの示唆を得ることができる。いずれの場合であっても、このプローブ100では、探針部3の先端3bを歯肉溝Gの底部まで挿入する必要がなく、より浅い挿入深さでの検査が可能である。したがって、このプローブ100は、歯肉溝Gへの挿入時における歯肉への影響を低減させることができる。
【0045】
プローブ100では、大径部31は、探針部3の延在方向において、小径部30と隣接している。これにより、歯肉溝Gに大径部31が挿入される直前の位置で探針部3の挿入を停止させた状態からの更なる挿入深さを微小なものとすることができる。よって、歯肉溝Gへの挿入時における歯肉への影響を低減させることができる。
【0046】
プローブ100では、大径部31は、先端3b側の端面31aが探針部3の延在方向に垂直となるように形成されている。これにより、歯肉溝Gに大径部31が挿入される直前の位置で探針部3の挿入をより確実に停止させることができる。
【0047】
プローブ100では、大径部31の外周面31bは、探針部3の延在方向視において、小径部30の外周面30aを内包している。これにより、歯肉溝Gに大径部31が挿入される直前の位置で探針部3の挿入を停止させるための機能を、探針部3の全周方向にわたって持たせることができる。
【0048】
プローブ100では、大径部31は、小径部30と同軸に形成されている。これにより、歯肉溝Gに大径部31が挿入される直前の位置で探針部3の挿入を停止させるための機能を、探針部3の全周方向にわたって均等に持たせることができる。
【0049】
プローブ100では、探針部3は、樹脂からなっている。これにより、金属等の材料からなる探針部3と比較して硬度が低くなるため、探針部3が被検査者の歯Tや歯周組織P等と接触することによる歯Tや歯周組織Pへの負担を軽減することが可能となる。
【0050】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態に係るプローブ100Aの探針部3Aの先端3Ab付近を拡大して示す図である。
図5に示されるように、第2実施形態に係るプローブ100Aは、第1実施形態に係るプローブ100と比較して、探針部の形状が相違しており、その他の点で同様である。プローブ100Aの探針部3Aは、小径部30A、大径部31A、及び拡径部32Aを備えている。
【0051】
小径部30Aは、第1実施形態に係る探針部3の小径部30と同様の構成を備えている。すなわち、小径部30Aは、探針部3Aの先端3Abから所定の長さ範囲(ここでは2mm)の部分であり、大径部31Aと比較して探針部3Aの延在方向に垂直な断面における断面積が小さい。
【0052】
大径部31Aは、探針部3Aの延在方向において、小径部30Aと隣接しておらず、後述する拡径部32Aを介して小径部30Aと接続されている。このため、大径部31Aは、探針部3Aの先端3Ab側の端面が露出していない。大径部31Aは、探針部3Aの先端3Abから2mmの位置に更に拡径部32Aの長さを加えた位置(すなわち、拡径部32Aの先端3Abとは反対側の端部の位置)から基端3aに向かって所定の長さ範囲の部分(あるいは、基端3aまでの全体)である。大径部31Aは、小径部30Aと比較して探針部3Aの延在方向に垂直な断面における断面積が大きい。
【0053】
拡径部32Aは、小径部30Aと大径部31Aとの間に形成され、探針部3Aの延在方向に垂直な断面における断面積が小径部30A側から大径部31A側に向かって拡大する部分である。拡径部32Aは、探針部3Aの延在方向に沿った長さが例えば小径部30Aの長さと比較して十分に短くなるように形成されている。例えば、拡径部32Aは、探針部3Aの延在方向に沿った長さが1mm以下となるように形成されていてもよく、0.5mm以下となるように形成されていてもよく、0.2mm以下となるように形成されていてもよい。拡径部32Aの探針部3Aの延在方向に沿った長さが短いほど、歯肉溝Gに大径部31Aが挿入される直前の位置において、探針部3Aの挿入をより精度良く位置決めして停止させることができる。一方、拡径部32Aの探針部3Aの延在方向に沿った長さが長いほど、拡径部32Aの外周面32Aaにより形成される斜面がなだらかになるため、探針部3Aの歯肉溝Gへの挿入時における歯肉への影響を低減させることができる。
【0054】
拡径部32Aと小径部30Aとの境界位置(すなわち、拡径部32Aの先端3Ab側の端部の位置)において、拡径部32Aの半径は、小径部30Aの半径と一致している。つまり、拡径部32Aの外周面32Aaと小径部30Aの外周面30Aaとは連続的に接続されている。また、拡径部32Aと大径部31Aとの境界位置(すなわち、拡径部32Aの先端3Abとは反対側の端部の位置)において、拡径部32Aの半径は、大径部31Aの半径と一致している。つまり、拡径部32Aの外周面32Aaと大径部31Aの外周面31Abとは連続的に接続されている。
【0055】
複数の目盛Mのうちのいずれかは、小径部30Aと拡径部32Aとの境界位置に設けられていてもよく、拡径部32Aと大径部31Aとの境界位置に設けられていてもよい。ここでは、探針部3Aの先端3Abから2箇所目の目盛Mが、小径部30Aと拡径部32Aとの境界位置に設けられており、当該目盛Mは、小径部30Aと拡径部32Aとの境界を代用している。なお、目盛Mが拡径部32Aと大径部31Aとの境界位置に設けられている場合には、当該目盛Mは、拡径部32Aと大径部31Aとの境界を代用していてもよい。
【0056】
[作用及び効果]
以上説明したように、プローブ100Aでは、探針部3Aは、小径部30Aと大径部31Aとの間に形成され、当該探針部3Aの延在方向に垂直な断面における断面積が小径部30A側から大径部31A側に向かって拡大する拡径部32Aを備えている。これにより、歯肉溝Gに大径部31Aが挿入される際に、探針部3Aの延在方向に対して斜面を形成する拡径部32Aから歯肉溝Gに挿入されるため、歯肉溝Gに挿入される探針部3Aの断面積を徐々に大きくしていくことができる。よって、歯肉溝Gへの挿入時における歯肉への影響を低減させることができる。
【0057】
[変形例]
上述した実施形態は、当業者の知識に基づいて変更又は改良が施された様々な形態により実施可能である。
【0058】
例えば、第1実施形態及び第2実施形態においては、小径部30,30Aは、探針部3,3Aの先端3b,3Ab側から延在方向に沿って基端3a側に向かうにつれて、探針部3,3Aの延在方向に垂直な断面における断面積が拡径している。しかし、小径部30,30Aは、いずれの位置においても、探針部3,3Aの延在方向に垂直な断面における断面積が一定であってもよい。
【0059】
また、第1実施形態及び第2実施形態においては、大径部31,31Aは、探針部3,3Aの先端3b,3Ab側から延在方向に沿って基端3a側に向かうにつれて、探針部3,3Aの延在方向に垂直な断面における断面積が拡径している。しかし、大径部31,31Aは、いずれの位置においても、探針部3,3Aの延在方向に垂直な断面における断面積が一定であってもよい。
【0060】
また、第1実施形態において、探針部3の先端3b側を少なくとも除く基端3a側の部分に筒状のスリーブを外嵌することにより、当該スリーブが配置された基端3a側の部分を大径部31、当該スリーブが配置されていない先端3b側の部分を小径部30としてもよい。スリーブは、例えばシリコンによって構成されていてもよい。
【0061】
また、第2実施形態において、探針部3Aの先端3Ab側を少なくとも除く基端3a側の部分に筒状のスリーブを外嵌することにより、当該スリーブが配置された基端3a側の部分を大径部31A及び拡径部32A、当該スリーブが配置されていない先端3Ab側の部分を小径部30Aとしてもよい。この場合、拡径部32Aに相当する部分のスリーブについては、予め斜面を形成しておくことにより拡径部32Aを形成してもよく、当該スリーブを外周側から潰すように探針部3Aに外嵌することにより拡径部32Aを形成してもよい。スリーブは、例えばシリコンによって構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 把持部
2 頚部
3,3A 探針部
3b,3Ab 先端
30,30A 小径部
30a 外周面
31,31A 大径部
31a 端面
31b 外周面
32A 拡径部
100,100A プローブ
G 歯肉溝
P 歯周組織
T 歯