(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】学習能力を有するニューロ・ファジィシステムのネットワーク評価方法
(51)【国際特許分類】
G06N 7/02 20060101AFI20240822BHJP
G06N 3/006 20230101ALI20240822BHJP
G06N 3/043 20230101ALI20240822BHJP
【FI】
G06N7/02 130
G06N3/006
G06N3/043
(21)【出願番号】P 2024041829
(22)【出願日】2024-03-18
【審査請求日】2024-03-18
(31)【優先権主張番号】202311707436.X
(32)【優先日】2023-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515352847
【氏名又は名称】大連海事大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】梁 暁玲
(72)【発明者】
【氏名】劉 厶源
(72)【発明者】
【氏名】劉 彦呈
(72)【発明者】
【氏名】朱 鵬莅
(72)【発明者】
【氏名】張 勤進
(72)【発明者】
【氏名】艾 莉莉
【審査官】山本 俊介
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第117200454(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第116128361(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113538973(CN,A)
【文献】特表2015-507418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
学習能力を有するニューロ・ファジィシステムのネットワーク評価方法であって、
S1、ニューラルネットワークのフレームワーク下でファジィ論理規則を採用するニューロ・ファジィシステムモデルを構築することと、
S2、改良された粒子群知能最適化アルゴリズムを用いて前記ニューロ・ファジィシステムに対して訓練を行い、最適パラメータと訓練済みのニューロ・ファジィシステムモデルを得ることと、
S3、実際の問題に応じてシステム入力値を定義して、訓練済みのニューロ・ファジィシステムモデルに入力し、システムの能力境界評価結果を取得することとを含
み、
S1において、前記ニューロ・ファジィシステムモデルがNFS={P,T,I,O,M,W,f}で表され、
ここで、P={p
1
,p
2
,・・・,p
n
}は、航空電子システム設備、サブシステム及びシステム破壊イベントを表す有限要素を含む初期ライブラリを意味し、
【数1】
であり、T={t
1
,t
2
,・・・,t
m
}は、初期ライブラリ内の要素が当該サブシステムに与える影響程度を定量化する、有限要素を帯びる端末ライブラリを表し、
【数2】
であり、I(O)は、システムに対する変分の写像を反映する入力又は出力ライブラリを表し、Mは、各ライブラリノードp
i
に標記値M(p
i
)があり、当該ライブラリノードによって表された命題の真理度を反映し、デバイス及びサブシステムの不確実性を表す写像であり、W={w
1
,w
2
,・・・,w
r
}は、初期ライブラリと端末ライブラリの要素間の関連程度を反映する規則の重み集合を表し、fは、システム内の未知の複雑な関係をマッピングする非線形関数である、ことを特徴とする学習能力を有するニューロ・ファジィシステムのネットワーク評価方法。
【請求項2】
S2が、
初期化してランダム粒子が生じ、反復を行うことと、
粒子が各反復アルゴリズムで2つの極値を追跡することで自身を更新し続けることと、
粒子の速度と位置を更新することと、
ランダム粒子に対して反復を行って最適解を求めることとを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の学習能力を有するニューロ・ファジィシステムのネットワーク評価方法。
【請求項3】
前記の2つの極値のうち、1つは粒子自体によって求められた最適解であり、個物極値p
bestと呼ばれ、他の1つは個物群全体によってこれまでに求められた最適解であり、大域極値g
bestと呼ばれる、ことを特徴とする請求項
2に記載の学習能力を有するニューロ・ファジィシステムのネットワーク評価方法。
【請求項4】
前記の粒子の速度と位置が次の更新公式に従って更新され、
【数3】
ここで、
【数4】
と
【数5】
がそれぞれ第k世代中粒子iのd次元成分の速度と位置を表し、ν
maxが粒子の最大速度を表し、x
minとx
maxがそれぞれ粒子の最小位置と最大位置を表し、r
1とr
2が(0,1)の間の乱数を表し、通常、c
1=c
2=0.5が学習因子を表し、慣性重みがmと定義される、ことを特徴とする請求項
3に記載の学習能力を有するニューロ・ファジィシステムのネットワーク評価方法。
【請求項5】
前記の粒子の速度との更新公式では慣性重みが次の更新公式に従って更新され、
m
k=m
min+(m
max-m
min)(k
max-k)/k
max
ここで、m
k、m
min及びm
maxは、それぞれ現時点の慣性重み、最小慣性重み及び最大反復回数に当たる最大慣性重みを表し、kは、現時点の反復回数を表す、ことを特徴とする請求項
4に記載の学習能力を有するニューロ・ファジィシステムのネットワーク評価方法。
【請求項6】
S3において、前記システム入力が確実性入力と不確実性入力を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の学習能力を有するニューロ・ファジィシステムのネットワーク評価方法。
【請求項7】
請求項1~
6の何れか1項に記載の学習能力を有するニューロ・ファジィシステムのネットワーク評価方法を実行するプログラムを記憶する記憶媒体。
【請求項8】
メモリと、プロセッサと、前記メモリに記憶されて前記プロセッサにおいて実行されるコンピュータプログラムとを備える電子装置であって、
前記プロセッサが前記コンピュータプログラムを作動させることで請求項1~
6の何れか1項に記載の学習能力を有するニューロ・ファジィシステムのネットワーク評価方法を実行する、ことを特徴とする電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工知能の技術分野に関し、特に学習能力を有するニューロ・ファジィシステムのネットワーク評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、実時間特徴パラメータに基づくオンライン能力境界評価モデルは、知能技術において急速に発展している。このモデルの研究及び応用分野は、工業生産やエネルギーや環境監視や医療衛生等の多くの分野に亘る。現在、特定分野に対する様々なオンライン能力境界評価モデルが提案され、適用されている。モノのインターネット(IoT)技術とセンサー技術の発展に伴い、実時間データ採集技術が継続的に向上してデータ採集の速度と精度も継続的に高まっており、実時間特徴パラメータに基づくオンライン能力境界評価モデルの適用に信頼できるデータサポートを提供する。人工知能と機械学習技術の継続的な開発と改善に従って、実時間特徴パラメータに基づくオンライン能力境界評価モデルのアルゴリズムも継続的に最適化されており、ターゲットシステムの境界をより正確に予測・制御できる。実用化を徐々に展開するとともに、このモデルは、工業自動化生産中の機器の故障検出及び早期警告や電力システム中の故障診断及び制御や医療衛生分野での健康監視及び診断等の多くの分野における応用を推進し続けていずれかにも広い応用及び検証が行われている。特許文献1では、エネルギー貯蔵容器の温度制御能力の評価に焦点を当て、エネルギー貯蔵容器の多次元情報と環境パラメータを収集し、評価モデルを使用して、異なる環境条件下でのエネルギー貯蔵容器の温度制御結果を予測することにより、温度制御能力を評価することを目的としているが、モデルの複雑さ、データの質、完全性に高い要求が求められている。特許文献2では、電力網の緊急対応能力を評価する指標重み係数を決定するために、主観的な事前決定分析方法と客観的な事前決定分析方法の組み合わせを採用しているが、この方法では、定量的な指標と重み係数を用いて評価を行うため、非常に複雑で動的に変化する状況に対応するには限界がある。
【0003】
ファジィ総合評価法は、ファジィ数学に基づく評価方法として、メンバーシップ関数を介してファジィ情報を定量的に記述できることにより、ファジィ問題を解くものである。しかし、ファジィ総合評価法では、メンバーシップ関数の決定は、一致した容認可能な基準がなく、主観性の影響を大きく受ける。近年、2型ファジィ理論は、ファジィ制御の分野で徐々に応用され成功を収めており、2型ファジィクラスタリングの研究も進めている。しかしながら、2型ファジィ理論の運算複雑性の制限のため、評価モデルにおける2型ファジィクラスタリングアルゴリズムの適用にはさらなる研究が必要である。ニューラルネットワークに基づく方法は、主に状態推測研究に適しているが、一般的に、当該方法は、解釈可能性が低く、大量の状態監視データと健康状態表示パラメータデータの支持を必要とするため、オンラインでの適用が難しい。
【0004】
要するに、変動する環境下でデータの信頼性と精度を確保し、アルゴリズムの実時間性と正確性を向上し、専門家の主観的な判断及び経験に対する過度の頼みを低めて主観性を低減することができるファジィ総合評価方法は、まだ発明されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】中国特許出願公開第116596408号明細書
【文献】中国特許出願公開第116562707号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、既存の評価方法が複数の未知パラメータを含む複雑なシステムに適しないといった技術的課題を解決するために、学習能力を有するニューロ・ファジィシステムのネットワーク評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によって採用される技術手段は以下のとおりである。
【0008】
本発明の一態様である学習能力を有するニューロ・ファジィシステムのネットワーク評価方法は、
S1、ニューラルネットワークのフレームワーク下でファジィ論理規則を採用するニューロ・ファジィシステムモデルを構築することと、
S2、改良された粒子群知能最適化アルゴリズムを用いて前記ニューロ・ファジィシステムに対して訓練を行い、最適パラメータと訓練済みのニューロ・ファジィシステムモデルを得ることと、
S3、実際の問題に応じてシステム入力値を定義し、それを訓練済みのニューロ・ファジィシステムモデルに入力してシステムの能力境界評価結果を取得することとを含む。
【0009】
更に、S1において前記ニューロ・ファジィシステムモデルが、
NFS={P,T,I,O,M,W,f}
で表され、
そのうち、P={p
1,p
2,・・・,p
n}は、航空電子システム設備、サブシステム及びシステム破壊イベントを表す有限要素を含む初期ライブラリを意味し、ここで
【数1】
に設定され、T={t
1,t
2,・・・,t
m}は、初期ライブラリ内の要素がサブシステムに与える影響程度を定量化する、有限要素を帯びる端末ライブラリを表し、ここで
【数2】
に設定され、I(O)は、システムに対する変分の写像を反映する入力又は出力ライブラリを表し、Mは、各ライブラリノードp
iに標記値M(p
i)があり、当該ライブラリノードによって表された命題の真理度を反映し、デバイス及びサブシステムの不確実性を表す写像であり、W={w
1,w
2,・・・,w
r}は、初期ライブラリと端末ライブラリの要素間の関連程度を反映する、規則の重み集合を表し、fは、システム内の未知の複雑な関係をマッピングする非線形関数である。
【0010】
更に、S2が、
初期化してランダム粒子が生じ、反復を行うことと、
粒子が各反復アルゴリズムで2つの極値を追跡することで自身を更新し続けることと、
粒子の速度と位置を更新することと、
ランダム粒子に対して反復を行って最適解を求めることとを含む。
【0011】
更に、前記の2つの極値のうち、1つは粒子自体によって求められた最適解であり、個物極値pbestと呼ばれ、他の1つは個物群全体によってこれまでに求められた最適解であり、大域極値gbestと呼ばれる。
【0012】
更に、前記の粒子の速度と位置が次の更新公式に従って更新され、
【数3】
そのうち、
【数4】
と
【数5】
がそれぞれ第k世代中粒子iのd次元成分の速度と位置を表し、ν
maxが粒子の最大速度を表し、x
minとx
maxがそれぞれ粒子の最小位置と最大位置を表し、r
1とr
2が(0,1)の間の乱数を表し、通常、c
1=c
2=0.5が学習因子を表し、慣性重みがmと定義される。
【0013】
更に、前記の粒子の速度との更新公式では、慣性重みが次の更新公式に従って更新され、
mk=mmin+(mmax-mmin)(kmax-k)/kmax
そのうち、mk、mmin及びmmaxは、それぞれ現時点の慣性重み、最小慣性重み及び最大反復回数に当たる最大慣性重みを表し、kは、現時点の反復回数を表す。
【0014】
更に、S3中の前記システム入力が確実性入力と不確実性入力を含む。
【0015】
本発明は、さらに、前記の学習能力を有するニューロ・ファジィシステムのネットワーク評価方法を実行するプログラムを記憶する記憶媒体を提供する。
【0016】
本発明は、さらに、メモリと、プロセッサと、前記メモリに記憶されて前記プロセッサにおいて実行されるコンピュータプログラムとを備える電子装置であって、前記プロセッサが前記コンピュータプログラムを作動させることで前記の学習能力を有するニューロ・ファジィシステムのネットワーク評価方法を実行する電子装置を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、従来技術に比べて次の有益な効果を有する。
【0018】
本発明は、ファジィ論理の推論能力をニューラルネットワークの無限近似関数能力と組み合わせることで、現実システムの代替モデルを構築し、ひいては知能最適化アルゴリズムを用いて代替モデルが可能な限り現実モデルに似てくるようにさせる。ニューロ・ファジィシステムから構築された能力境界評価モデルは、ファジィ規則をニューラルネットワークのフレームワークに導入する。本方法は、ニューラルネットワークの無限近似関数能力をファジィシステムの学習能力と組み合わせることにより普遍性を有する。実験結果及び分析によると、評価の包括性及び合理性のモデルが複雑なシステムの能力評価に適用できる。特に、複雑なシステムが多くの未知パラメータを含む場合、本方法は、唯一性という利点を有し、システム性能を向上させるための一定の参考となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の実施例又は従来技術における技術的解決手段をより明らかに説明するために、以下、実施例又は従来技術の記述に必要とされる添付の図面を簡単に紹介するが、下記の添付の図面が本発明の一部の実施例であり、当業者であれば、創造的労動を行わずに更にこれらの添付の図面によって他の添付の図面を得ることができることはいうまでもない。
【0020】
【
図2】本発明に係る3つの状況下でのアルゴリズムの収束過程を示す図である。
【
図3】本発明に係る最適重みと最適化重みとの比較図である。
【
図4】本発明に係る予測値と実測値との比較図である。
【
図5】本発明に係る1次元変数のシステム能力評価の結果を示す図である。
【
図6】本発明に係る2次元変数のシステム能力評価の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施例の目的、技術手段及びメリットをより明らかにするために、以下、本発明の実施例における図面を参照しながら、本発明の実施例における技術的手段を明らか且つ完全に説明し、説明される実施例が全ての実施例ではなく、本発明の一部の実施例に過ぎないことはいうまでもない。当業者が本発明における実施例に基づいて創造的労動を行うことなく得た他の実施例は、全て本発明が保護する範囲に含まれるものとする。
【0022】
注目すべきは、本発明の明細書、請求項及び上記図面中の「第1」や「第2」等の用語が類似の対象を区別するために用いられるものであり、特定の順序又は優先順位を述べるために用いられるわけではないということである。ここで記述された本発明の実施例は、ここで図示されたような以外の順序に従って実施できるために、このように採用されたデータを適切な場合で交換する可能性があると理解することが可能である。その上、「含む」と「有する」という用語、並びにそれらの任意の変形は、非排他的な包含という意味を指す。例えば、一連のステップ又はユニットを包含するプロセス、方法、システム、製品又は装置は、明確に列挙されているそれらのステップ又はユニットに限定される必要がなく、明確に列挙されていない、またはそれらのプロセス、方法、製品又は装置に固有の他のステップ又はユニットを更に含むことができる。
【0023】
図1に示すように、本発明による学習能力を有するニューロ・ファジィシステムのネットワーク評価方法は、次のステップを含む。
【0024】
S1、構造化ニューロ・ファジィシステムをモデル化する。
【0025】
ニューロ・ファジィシステムは、ニューラルネットワークとファジィシステムの特性を兼ね備える上に、ニューラルネットワークの無限近似能力とファジィ論理システムのファジィ推論能力を備える。ニューロ・ファジィシステム(NFS)モデルは、次のように構築及び定義される。NFSは次の通りで定義された7つの要素からなる。
【0026】
NFS={P,T,I,O,M,W,f}
【0027】
そのうち、P={p
1,p
2,・・・、p
n}は、航空電子システム設備、サブシステム及びシステム破壊イベントを表す有限要素を含む初期ライブラリを意味し、ここで
【数6】
に設定される。T={t
1,t
2,・・・、t
m}は、初期ライブラリ内の要素からサブシステムに及ぼされる影響程度を定量化する、有限要素を帯びる端末ライブラリを表し、ここで
【数7】
に設定される。I(O)は、システムに対する変分の写像を反映する入力(出力)ライブラリを表す。Mは、各ライブラリノードp
iに標記値M(p
i)があり、当該ライブラリノードによって表された命題の真理度を反映し、デバイス及びサブシステムの不確実性を表す写像である。W={w
1,w
2,・・・,w
r}は、初期ライブラリと端末ライブラリの要素間の関連程度を反映する規則の重み集合を表す。fは、システム内の未知の複雑な関係をマッピングする非線形関数である。
【0028】
NFSモデルは、ニューラルネットワークのフレームワークにおいてファジィ論理規則を採用して、システムの論理的関係の推論を明確且つ順調にする。パラメータW、M及び非線形関数fの導入は、システムの複雑な重み関係を明確に記述する。この方法によりモデリングの複雑さを回避し、モデリングのコストを削減するという利点は、従来の方法で備えられないものである。
【0029】
端末ライブラリTは、全てのサブシステムとシステム全体からの出力セットである。端末ライブラリの要素は、他のサブシステムの初期ライブラリの要素とする。入力ライブラリIは、初期ライブラリのサブセットであり、すべての非端末ライブラリの要素によって変換された初期ライブラリの要素を表す。出力ライブラリOは、端末ライブラリの一つのサブセットである。複数のサブシステムで構成された大規模の複雑なシステムの場合は、サブシステムの一部の出力が測定できるが、サブシステムのもう一部の出力が制限や高いコストのせいで獲得できない。出力ライブラリには測定可能なすべてのサブシステムの出力が含まれる。測定誤差、外部干渉、信号伝送の損失などの不確定要因があるので、パラメータM(pi)を初期ライブラリ中の各要素に割り当てて当該値の真理度を表す。この操作により、モデルのロバスト性が向上し、実験的価値が高まる。非線形関数fは、ファジィ論理システムに基づいて導入されるものである。
【0030】
出力連続関数
【数8】
の場合は、入力状態は次の通りで定義される。
【0031】
【0032】
ニューロ・ファジィシステムは、通常ファジィ推論ユニットとニューラルネットワーク層とを含み、ファジィ推論をニューラルネットワーク結構に導入し、複雑なシステムのモデル化をより柔軟にする。このシステムは、一連の「if-then」ルールに基づいて構築されるものである。「if-then」ルールによりは、出力を入力とつなぐ関係が生じる。「if-then」ルールは、次の通りで具体化される。
【0033】
Aj1,Aj2,・・・,AjnとBjをファジィ集合に定義する。ルールj:x1をAj1に設定し、x2をAj2に設定し、・・・並びにxnをAjnに設定する場合、yはBjになる。それなら、システムの推測誤差εを次の通りで記述する。
【0034】
y=WTΦ(x)+ε
【0035】
ここで、基礎関数ベクトルは次の通りで表示し、
【数10】
及び
【数11】
はガウス関数を採用する。任意の連続関数f(x)の場合は、次の条件を適えるFLSが存在する。
【0036】
【0037】
そのうち、Wは重み可調の行列を表し、ε0は最大推測誤差を表す。
【0038】
S2、データ駆動に基づいて訓練及び学習を行う。
【0039】
改良された粒子群知能最適化アルゴリズムを用いて第1段階で構築されたファジィ神経システム中の未知重みパラメータに対して学習を行う。このアルゴリズムは、群知能に基づく大域最適化法であり、複雑な空間で有効的な検索を実行する。本願は、改良された粒子群最適化アルゴリズムを用いて上記の航空防護システムの脆弱性評価モデルにおいて大量の重みパラメータに対して適応調整を行う。本方法は、簡潔で、パラメータ調整が少ないので、非線形、微分不能及び多極値(multiple extrema)という大量の複雑な問題を有効的に解くことができる。このアルゴリズムは、先ず初期化されてランダム粒子が生じ、次に反復を行って最適解を求める。最適解は予測値と真理値との誤差の最小2ノルムである。各反復アルゴリズムでは、粒子が2つの極値を追跡することで常に自身を更新し、その1つは、粒子自体によって求められた最適解であり、個物極値pbestと呼ばれ、もう1つは、個物群全体によってこれまでに求められた最適解であり、大域極値gbestと呼ばれる。その後、速度と位置を更新する。
【0040】
【0041】
そのうち、
【数14】
と
【数15】
がそれぞれ第k世代中粒子iのd次元成分の速度と位置を表し、ν
maxが粒子の最大速度を表し、x
minとx
maxがそれぞれ粒子の最小位置と最大位置を表し、r
1とr
2が(0,1)の間の乱数を表し、通常、c
1=c
2=0.5が学習因子を表す。慣性重みがmと定義され、mが大きい場合、粒子が検索空間のサイズを大きくする能力を有し、大域検索能力がかなり強くなり、mが小さい場合、局所検索能力が強くなる。従来の慣性重みは定数である。本願で採用されたPSOアルゴリズムは、次の通りで改良される。
【0042】
mk=mmin+(mmax-mmin)(kmax-k)/kmax
【0043】
そのうち、mk,mmin及びmmaxは、それぞれ現時点の慣性重み、最小慣性重み及び最大反復回数に当たる最大慣性重みを表す。kは、現時点の反復回数を表す。従って、慣性重みは、検索過程の収束性を保証する自己適応能力を備える。
【0044】
S3、システム能力境界評価をオンラインで行う。
【0045】
実際の問題に応じて確実性入力と不確実性入力を含むシステム入力を定義する。モデルにおいていくつかのハイパーパラメータを定義し、それを訓練済みのNFSモデルに入力してシステムの能力境界評価結果を取得する。
【0046】
(実施例)
改良された粒子群最適化アルゴリズムは、ニューロ・ファジィシステムネットワークモデルに集成されてサンプルデータから学習を行って参考重み値を予測するとともに、能力境界をオンラインで評価する。そのステップは次の通りで実行される。
【0047】
1)サンプルデータセットを準備する。データセットには250個のサンプルが含まれる。そのうち、200個のサンプルは訓練に使用され、50個のサンプルは訓練の精度を試験するための試験セットとして使用される。即ち、Ω={(I1,O1),(I2,O2),・・・,(Im,OM)}であり、m=250である。実験データが足りらないため、これらのサンプルは、本願によって提案された方法を試験するために模擬で得られたものである。
【0048】
2)重み数と検索空間を確定する。
図3に示すように、4つのファジィ論理システムがあり、各ファジィ論理システムに5つの重みがあると仮定する場合は、最適化を行うために合計20個の重みパラメータが必要になる。全ての重みは区間[0,1]で検索される。
【0049】
3)最適化アルゴリズム中のパラメータを初期化する。学習予定の重みパラメータを検索空間粒子とし、当該粒子の最大速度を確定する。各粒子の位置と速度を初期化し、粒子群はランダムに生成されたものである。粒子の数は100に設定され、最大反復回数は50(c1=0.5、c2=0.5)となる。
【0050】
4)各次元の粒子の速度と位置を更新する。
【0051】
5)サンプルデータに従って各粒子をデコードし、NFSモデルの端末ライブラリの標記値を求め、システムの能力評価に用いる。各端末ライブラリで標記された値の予測値と真理値との差を取得する。次に、適応度に応じて個物最適と群最適を更新する。
【0052】
6)終了ルールに到達してパラメータが学習するまでにステップ4を実行して反復を行う。
【0053】
7)最適化された重みを取得してプログラムが終了する。NFSモデル推論アルゴリズムに基づいて、改良された粒子群最適化アルゴリズムが導入することで、パラメータ学習の能力を備えさせ、システムにおいて多くの未知パラメータが専門家や経験を頼ることが免れられる。
【0054】
3つの状況に従ってエミュレーションを実行し、それぞれサブシステム全体の適応度値を表す。これによると、その後で改良された粒子群最適化を収束に用いて20回反復を行うという3つの状況下でのアルゴリズムに達成することができる。3つの状況下での
図2の曲線を比較すると、システムの知識情報を増やすことで最適化精度が高められると結論付けられる。実施例3中の重みについて、
図3で最適重みと最適化重みを比較する。更に、試験結果を
図4に示し、提案されたNFSモデルの優れた性能を示す。このように、訓練されたファジィニューラルネットワークモデルは、能力システムの評価に用いることができる。入力ライブラリは、時間に亘るとともに変える際に、値を求めてオンラインで、実時間で結果を得る。
図5は、入力ライブラリに一つの変数が存在する場合のシステム能力の実時間評価結果を示す。その上、変数x1がシステム能力に小さな影響を与えるが、変数x10がより大きな影響を与えることがわかる。従って、ファジィニューロシステムのネットワークモデルを介して入力ライブラリ中の要素の感度もシステム能力評価結果が得られる。システムの入力ライブラリに2つの変数がある場合、システム能力評価結果は曲面になり、
図6の曲面によると当該システムの能力境界を区間とも呼ぶことができる。例えば、変数x1の変化範囲が[0.3,0.6]となり、変数x9の変化範囲が[0.05,0.35]となる場合、システムの能力範囲が[0.1101,0.1766]となり、つまり、上下限の能力境界はそれぞれ0.1101と0.1766となる。変数x9の変化範囲が[0.05,0.35]となり、変数x10の変化範囲が[0.3,0.6]となる場合、システムの能力範囲が[0.0111,0.3029]となり、つまり、上下限の能力境界はそれぞれ0.0111と0.3029となる。同様に、変数に複数のシステム入力ライブラリがある場合、システム評価結果はNFSモデルを介して能力をとても容易に獲得できる。ファジィニューラルネットワークの応用は、システム能力の記述を大幅に簡素化する。学習能力を有する評価モデルを構築するシステム能力は、4つのサブシステムを研究対象とするシステムにおいて実例を算出してそれの学習効率と精度を裏付ける。実験結果及び分析によると、評価の包括性及び合理性のモデルが複雑なシステムの能力評価に適用できる。特に、複雑なシステムが多くの未知パラメータを含む場合、本方法は、唯一性という利点を有し、システム性能を向上させるための一定の参考となる。
【0055】
最後に以下のことを説明すべきである。以上の各実施例は本発明の技術的手段を説明するためのものに過ぎず、それを限定するものではなく、上述した各実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、上述した各実施例に記載の技術的手段を修正するか、その術的特徴の一部又は全部に同等な取り替えを実施することも可能であり、これらの修正や取り替えによって、対応する技術的手段の本質が本発明の各実施例の技術的手段の範囲から逸脱しないことは当業者に自明である。
【0056】
(付記)
(付記1)
学習能力を有するニューロ・ファジィシステムのネットワーク評価方法であって、
S1、ニューラルネットワークのフレームワーク下でファジィ論理規則を採用するニューロ・ファジィシステムモデルを構築することと、
S2、改良された粒子群知能最適化アルゴリズムを用いて前記ニューロ・ファジィシステムに対して訓練を行い、最適パラメータと訓練済みのニューロ・ファジィシステムモデルを得ることと、
S3、実際の問題に応じてシステム入力値を定義して、訓練済みのニューロ・ファジィシステムモデルに入力し、システムの能力境界評価結果を取得することとを含む、ことを特徴とする学習能力を有するニューロ・ファジィシステムのネットワーク評価方法。
【0057】
(付記2)
S1において、前記ニューロ・ファジィシステムモデルがNFS={P,T,I,O,M,W,f}で表され、
ここで、P={p
1,p
2,・・・,p
n}は、航空電子システム設備、サブシステム及びシステム破壊イベントを表す有限要素を含む初期ライブラリを意味し、
【数16】
であり、T={t
1,t
2,・・・,t
m}は、初期ライブラリ内の要素が当該サブシステムに与える影響程度を定量化する、有限要素を帯びる端末ライブラリを表し、
【数17】
であり、I(O)は、システムに対する変分の写像を反映する入力又は出力ライブラリを表し、Mは、各ライブラリノードp
iに標記値M(p
i)があり、当該ライブラリノードによって表された命題の真理度を反映し、デバイス及びサブシステムの不確実性を表す写像であり、W={w
1,w
2,・・・,w
r}は、初期ライブラリと端末ライブラリの要素間の関連程度を反映する規則の重み集合を表し、fは、システム内の未知の複雑な関係をマッピングする非線形関数である、ことを特徴とする付記1に記載の学習能力を有するニューロ・ファジィシステムのネットワーク評価方法。
【0058】
(付記3)
S2が、
初期化してランダム粒子が生じ、反復を行うことと、
粒子が各反復アルゴリズムで2つの極値を追跡することで自身を更新し続けることと、
粒子の速度と位置を更新することと、
ランダム粒子に対して反復を行って最適解を求めることとを含む、ことを特徴とする付記1に記載の学習能力を有するニューロ・ファジィシステムのネットワーク評価方法。
【0059】
(付記4)
前記の2つの極値のうち、1つは粒子自体によって求められた最適解であり、個物極値pbestと呼ばれ、他の1つは個物群全体によってこれまでに求められた最適解であり、大域極値gbestと呼ばれる、ことを特徴とする付記3に記載の学習能力を有するニューロ・ファジィシステムのネットワーク評価方法。
【0060】
(付記5)
前記の粒子の速度と位置が次の更新公式に従って更新され、
【数18】
ここで、
【数19】
と
【数20】
がそれぞれ第k世代中粒子iのd次元成分の速度と位置を表し、ν
maxが粒子の最大速度を表し、x
minとx
maxがそれぞれ粒子の最小位置と最大位置を表し、r
1とr
2が(0,1)の間の乱数を表し、通常、c
1=c
2=0.5が学習因子を表し、慣性重みがmと定義される、ことを特徴とする付記4に記載の学習能力を有するニューロ・ファジィシステムのネットワーク評価方法。
【0061】
(付記6)
前記の粒子の速度との更新公式では慣性重みが次の更新公式に従って更新され、
mk=mmin+(mmax-mmin)(kmax-k)/kmax
ここで、mk、mmin及びmmaxは、それぞれ現時点の慣性重み、最小慣性重み及び最大反復回数に当たる最大慣性重みを表し、kは、現時点の反復回数を表す、ことを特徴とする付記5に記載の学習能力を有するニューロ・ファジィシステムのネットワーク評価方法。
【0062】
(付記7)
S3において、前記システム入力が確実性入力と不確実性入力を含む、ことを特徴とする付記1に記載の学習能力を有するニューロ・ファジィシステムのネットワーク評価方法。
【0063】
(付記8)
付記1~7の何れか1つに記載の学習能力を有するニューロ・ファジィシステムのネットワーク評価方法を実行するプログラムを記憶する記憶媒体。
【0064】
(付記9)
メモリと、プロセッサと、前記メモリに記憶されて前記プロセッサにおいて実行されるコンピュータプログラムとを備える電子装置であって、
前記プロセッサが前記コンピュータプログラムを作動させることで付記1~7の何れか1つに記載の学習能力を有するニューロ・ファジィシステムのネットワーク評価方法を実行する、ことを特徴とする電子装置。
【要約】 (修正有)
【課題】学習能力を有するニューロ・ファジィシステムのネットワーク評価方法を提供する。
【解決手段】方法は、ニューラルネットワークのフレームワーク下でファジィ論理規則を採用するニューロ・ファジィシステムモデルを構築し、改良された粒子群知能最適化アルゴリズムを用いてニューロ・ファジィシステムを訓練し、最適パラメータと訓練済みのニューロ・ファジィシステムモデルを得、実際の問題に応じてシステム入力を訓練済みのモデルに入力しシステムの能力境界評価結果を取得する。ファジィ論理の推論能力をニューラルネットワークの無限近似関数能力と組み合わせることで、現実システムの代替モデルを構築し、知能最適化アルゴリズムを用いて代替モデルが可能な限り現実モデルに似てくるようにさせる。
【選択図】
図1