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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 37/12 20060101AFI20240822BHJP
   D06F 33/34 20200101ALI20240822BHJP
   D06F 33/40 20200101ALI20240822BHJP
   D06F 33/48 20200101ALI20240822BHJP
   D06F 33/54 20200101ALI20240822BHJP
   D06F 33/76 20200101ALI20240822BHJP
   D06F 39/08 20060101ALI20240822BHJP
   D06F 105/02 20200101ALN20240822BHJP
【FI】
D06F37/12 B
D06F33/34
D06F33/40
D06F33/48
D06F33/54
D06F33/76
D06F37/12 H
D06F39/08 301A
D06F39/08 301B
D06F39/08 331
D06F39/08 341
D06F105:02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020199876
(22)【出願日】2020-12-01
(65)【公開番号】P2022087744
(43)【公開日】2022-06-13
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】川口 智也
(72)【発明者】
【氏名】永井 孝之
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-117979(JP,U)
【文献】実開平02-071484(JP,U)
【文献】特開2000-014966(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0236001(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 37/12
D06F 39/08
D06F 33/00 - 33/76
D06F 105/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルセータが底部に配置された洗濯脱水槽と、
前記洗濯脱水槽の内周面に配置され、前記パルセータの下羽根部で撹拌された洗濯水を前記洗濯脱水槽の上端部に向かって通過させて循環水口から吐出する循環通路と、
前記洗濯脱水槽の内周面に配置され、前記循環通路とは別に周方向に等間隔で配置される3つ以上の注水部と、
各注水部に個別に調整水を注水可能な注水装置とを備え
前記注水部は、前記洗濯脱水槽の底部から上端部に亘って上下方向に延びることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記注水部は、前記循環通路の両側に配置される2つの第1貯水部を有することを特徴とする請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記注水部は、前記2つの第1貯水部の上端部を接続する第2貯水部を有することを特徴とする請求項2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記第1貯水部と前記第2貯水部との間に設けられる貯留部材を備え、
前記貯留部材は、その内周側に配置される流入口と、当該流入口の外周側に配置されるリブとを有していることを特徴とする請求項3に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記注水部は、前記2つの第1貯水部の高さ方向中間部を接続する接続部を有することを特徴とする請求項2~4の何れかに記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯脱水槽の回転を継続したまま洗濯脱水槽のアンバランスを解消して、脱水時における洗濯脱水槽の偏心による振動や騒音を抑制可能な洗濯機に関する。
【0002】
従来より、洗濯脱水槽の内周面において周方向に等間隔に配置されたバッフルを有する洗濯機がある(例えば、特許文献1参照)。各バッフルは、洗濯脱水槽の底部から上端部に亘って上下方向に延びるように形成される。バッフルの下端部に、洗濯脱水槽の底部近傍で開口する開口部が形成され、バッフルの上端部に、循環水口が形成される。そのため、洗い工程では、パルセータの下羽根部で撹拌された洗濯水が開口部より浸入してバッフル内をかけあがり、循環水口より吐出され、衣類がシャワー洗いされる。
【0003】
洗濯機では、洗い工程の後で脱水工程が行われるのが一般的であるが、脱水時に洗濯物の偏りが大きい場合、回転時の洗濯脱水槽の偏心が大きくなり、回転に大きなトルクが必要となるので脱水運転を開始することができない。そこで、特許文献1には、脱水時に洗濯脱水槽内の衣類のアンバランス量およびアンバランス位置を検出し、アンバランスがある場合には、洗濯脱水槽の周方向に均等に複数設けられたバッフルへの注水を行うことにより洗濯脱水槽のアンバランス状態を積極的に解消しようとする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-56025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の洗濯機において、バッフルの上方にノズルユニットが配置されており、バッフルへの注水を行う際に、ノズルユニットから注入された調整水が、バッフルの上端部に接続された連通部材を介してバッフル内に流れ込むように構成される。すなわち、洗い工程では、バッフルがシャワー洗いするための洗濯水の循環通路として使用されるのに対して、脱水工程では、バッフルが洗濯脱水槽のアンバランス状態を解消するための調整水の貯水部として使用される。このように、バッフル内の同一空間が循環通路と貯水部とに兼用されており、バッフルの上端部において、内部空間は、循環水口側に連通する空間とノズルユニット側に連通する空間とに分岐している。
【0006】
そのため、特許文献1の洗濯機では、洗い工程においてバッフルがシャワー洗いするための洗濯水の循環通路として使用される場合に、バッフルの下端部の開口部より浸入した洗濯水がバッフル内をかけあがり、その洗濯水が循環水口より吐出される際、バッフル内をかけあがった洗濯水の一部が、バッフルの上端部においてノズルユニット側に連通する空間に入ってしまう。そのため、バッフル内をかけあがった洗濯水の全てを循環水口より吐出することができず、循環水口より十分な洗濯水を吐出することができない問題がある。また、バッフル内の同一空間が循環通路と貯水部とを兼用しているため、バッフルの上端部の循環水口の高さを低くすると、脱水終了時においてバッフル内から排水する際に脱水後の洗濯物を濡らしてしまう恐れがある。
【0007】
そこで、本発明は、脱水工程において注水を行うことにより洗濯脱水槽のアンバランス状態を解消できるとともに、洗い工程においてシャワー洗いするために十分な洗濯水を循環水口より吐出可能な洗濯機を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る洗濯機は、パルセータが底部に配置された洗濯脱水槽と、前記洗濯脱水槽の内周面に配置され、前記パルセータの下羽根部で撹拌された洗濯水を前記洗濯脱水槽の上端部に向かって通過させて循環水口から吐出する循環通路と、前記洗濯脱水槽の内周面に配置され、前記循環通路とは別に周方向に等間隔で配置される3つ以上の注水部と、各注水部に個別に調整水を注水可能な注水装置とを備え、前記注水部は、前記洗濯脱水槽の底部から上端部に亘って上下方向に延びることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る洗濯機において、前記注水装置は、各注水部の外周側に接続された注水ノズルを介して各注水部に対して調整水を注水することが好適である。
【0010】
本発明に係る洗濯機において、前記注水部は、前記循環通路の両側に配置される2つの第1貯水部と、前記2つの第1貯水部の上端部を接続する第2貯水部とを有することが好適である。
【0011】
本発明に係る洗濯機において、前記第1貯水部と前記第2貯水部との間に設けられる貯留部材を備え、前記貯留部材は、その内周側に配置される流入口と、当該流入口の外周側に配置されるリブとを有していることが好適である。
【0012】
本発明に係る洗濯機において、前記注水部は、前記2つの第1貯水部の高さ方向中間部を接続する接続部を有することが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、洗い工程においてシャワー洗いするための洗濯水の循環通路と、脱水工程において洗濯脱水槽のアンバランス状態を解消するための調整水の貯水部とが別々に設けられる。そのため、脱水工程において注水を行うことにより洗濯脱水槽のアンバランス状態を解消できるとともに、洗い工程においてシャワー洗いするための洗濯水を循環通路の循環水口より十分な洗濯水を吐出することができる。また、循環通路の循環水口の高さを自由に設計できる。
【0014】
本発明によれば、洗濯脱水槽内の出っ張りをなくしつつ、注水部へ注水した後の脱水工程時に洗濯脱水槽が楕円変形するのを低減することができる。
【0015】
本発明によれば、注水部への注水口を1つにでき、注水部へ注水した後の脱水工程時に洗濯脱水槽が楕円変形するのを低減することができる。
【0016】
本発明によれば、注水部への注水口を1つにして、2つの第1貯水部に対して均等に注水することができる。
【0017】
本発明によれば、注水部への注水口を1つにして、2つの第1貯水部に対して不均一に注水された場合でも、接続部を通じて水が移動し、2つの第1貯水部の水量を均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る洗濯機1の外観を示す斜視図である。
図2図1の洗濯機1の構成を示す模式図である。
図3図1の洗濯機1の洗濯脱水槽2の縦断面図である。
図4図3のa-a線における洗濯脱水槽2の水平断面図である。
図5図3のa-a線における洗濯脱水槽2の水平断面図である。
図6図3のa-a線における洗濯脱水槽2の水平断面図である。
図7図7(a)は、注水部10に注水された調整水の流れを説明する模式図であり、図7(b)は、図7(a)のa-a線における断面図であり、図7(c)は、図7(a)のa-a線における断面図である。
図8図8(a)は、第1貯水部11の上端部に配置された櫛状リブ11Tを上方から見た図であり、図8(b)は、図8(a)のa-a線における部分断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態の洗濯機1について、図に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明の実施形態に係る縦型の洗濯機(以下、「洗濯機」と称す。)1の外観を示す斜視図である。図2は、本実施形態の洗濯機1の構成を示す模式図である。
【0021】
本実施形態の洗濯機1は、洗濯機本体1aと、洗濯脱水槽2と、外槽3と、注水装置30と、駆動部50とを備える。
【0022】
図1に示す洗濯機本体1aは、略直方体形状である。洗濯機本体1aの上面には、洗濯脱水槽2に対して洗濯物を出し入れするための開口11が形成されるとともに、この開口11を開閉可能な開閉蓋が取り付けられる。
【0023】
外槽3は、洗濯機本体1aの内部に配置された有底筒状の部材であり、内部に洗濯水を貯留可能である。外槽3の底面には、排水配管3nが接続される。図2に示すように、外槽3の外周面3aには、水平と垂直の2方向の加速度を検出可能な加速度センサ58が取り付けられる。本実施形態では、加速度センサ58により外槽3の加速度が検出されるが、洗濯脱水槽2の加速度は、外槽3の加速度と略同一であるとする。
【0024】
洗濯脱水槽2は、外槽3内において外槽3と同軸に配置されるとともに、回転自在に支持される有底筒状の部材である。洗濯脱水槽2は、内部に洗濯物を収容可能で、その内周面2aに多数の通水孔2tを有する。
【0025】
このような洗濯脱水槽2の底部2c中央には、パルセータ(撹拌翼)4が回転自在に配置される。図2に示すように、パルセータ4は、略円盤形状のパルセータ本体4aと、パルセータ本体4aの上面に形成される複数の上羽根部4bと、パルセータ本体4aの下面に形成される複数の下羽根部4cとを有する。このようなパルセータ4は、外槽3内に貯留された洗濯水を撹拌して水流を発生させる。
【0026】
図2に示す駆動部50は、モータ51によりプーリー52およびベルト53を回転させるとともに、脱水槽2の底部2cに向けて延出する駆動軸54を回転させて、脱水槽2やパルセータ4に駆動力を与え、脱水槽2やパルセータ4を回転させる。洗濯機1は、洗い工程では主としてパルセータ4のみを回転させ、脱水工程では脱水槽2とパルセータ4とを一体的に高速で回転させる。また、一方のプーリー53の近傍には、プーリー52に形成されたマーク52aの通過を検出できる近接スイッチ55が設けられる。
【0027】
図3は、本実施形態の洗濯機1の洗濯脱水槽2の縦断面図である。図4は、図3のa-a線における洗濯脱水槽2の水平断面図であり、図5は、図3のa-a線における洗濯脱水槽2の水平断面図であり、図6は、図3のa-a線における洗濯脱水槽2の水平断面図である。
【0028】
図3及び図4に示すように、洗濯脱水槽2の内周面2aには、周方向に等間隔(等角度)でバッフル6が3つ設けられる。各バッフル6は、洗濯脱水槽2の底部2cから上端部に亘って上下方向に延び、洗濯脱水槽2の内周面2aから軸線S1に向けて突出して形成される。また、各バッフル6は、中空状であり、横断面形状が円弧状に形成される。
【0029】
各バッフル6は、洗い工程においてパルセータ4の下羽根部4cで撹拌された洗濯水を洗濯脱水槽2の上端部に向かって通過させて循環水口8aから吐出する循環通路8と、脱水工程において洗濯脱水槽2のアンバランス状態を解消するための調整水の注水部10とを有している。各バッフル6において、循環通路8と注水部10とは、別々の空間として形成される。
【0030】
図2に示すように、このような循環通路8の上端部には、横長の循環水口8aが形成される。また、循環通路8の下端部には、洗濯脱水槽2の底部2c近傍、より具体的にはパルセータ本体4aよりも下方で開口する開口部8cが形成される。
【0031】
そのため、排水配管3nに取り付けられた排水バルブ3n図2参照)が閉じられて外槽3内に洗濯水が貯められた状態にある洗い工程では、図2において矢印で示すように、パルセータ4の下羽根部4cで撹拌された洗濯水が開口部8cより浸入して循環通路8内をかけあがり、循環水口8aより吐出され、衣類がシャワー洗いされる。またこの動作が繰り返されることで、洗濯水が洗濯脱水槽2内で循環する。
【0032】
3つの注水部10は、それぞれ、循環通路8の両側に配置される2つの第1貯水部11と、2つの第1貯水部11の上端部を接続する第2貯水部12とを有している。すなわち、注水部10は、左右2分割域である2つの第1貯水部11と、その上部の一体域である第2貯水部12とを有している。第1貯水部11と循環通路8とは略同一高さであり、それらの間には、ほとんど隙間が形成されない。
【0033】
図5に示すように、3つの注水部10において、第1貯水部11の上端部と第2貯水部12の下端部との境部には、櫛状リブ11Tがそれぞれ配置される。櫛状リブ11Tは、洗濯脱水槽2の上端部の外形に沿うように湾曲する板状部材である。櫛状リブ11Tは、その内周側に配置される10個の流入口11aと、流入口11aの外周部に配置される10個のリブ11Aとを有している。櫛状リブ11Tの循環通路8より周方向一方側の部分に、5個の流入口11aが配置され、循環通路8より周方向他方向側の部分に、5個の流入口11aが配置される。すなわち、第1貯水部11の上方において、循環通路8の両側のそれぞれに5個の流入口11aが配置される。
【0034】
注水装置30は、3つの注水部10に個別に調整水を注水するものである。注水装置30は、3つの注水部10にそれぞれ接続された3本の注水ノズル30aを有し、注水ノズル30aには、給水バルブ31aがそれぞれ配置される。注水ノズル30aは、3つの注水部10と同数だけ設けられ、3つの注水部10の上端部にそれぞれ取り付けられる。
【0035】
本実施形態では、調整水として水道水が用いられる。そのため、洗濯脱水槽2が回転している状態で注水装置30の注水ノズル30aにより調整水が第2貯水部12に注水されると、第2貯水部12に注水された調整水は、図7に示すように、櫛状リブ11Tの上方に貯留された後で、櫛状リブ11Tに形成される流入口11aから第1貯水部11内に移動するように構成される。
【0036】
第1貯水部11の下端部には、水受けリブ11bが形成される。水受けリブ11bは、第1貯水部11の内部において外周面から内側に向かって突出しており、水受けリブ11bの先端と第1貯水部11の内周面との間に隙間が形成される。そのため、脱水工程において洗濯脱水槽2が回転している状態で、第2貯水部12から第1貯水部11内に移動した調整水は、遠心力により第1貯水部11内の外周側に貼り付いて、水受けリブ11bの上方に保持される。
【0037】
なお、第1貯水部11の下端部には、排水配管11cが接続される。そのため、脱水工程において洗濯脱水槽2の回転数が小さくなると遠心力が小さくなり、洗濯脱水槽2の回転数が所定回転数より大きい際に、水受けリブ11bの上方に保持されていた調整水は、第1貯水部11内の外周側に貼り付かなくなり、水受けリブ11bの先端と第1貯水部11の内周面との間の隙間、及び、排水配管11cを介して排水される。
【0038】
また、循環通路8の両側に配置された2つの第1貯水部11は、その高さ方向中間部において接続部16により接続される。そのため、2つの第1貯水部11の一方の調整水の水面高さが、接続部16より高くなると、調整水が接続部16を通過して他方の第1貯水部11に移動する。
【0039】
図8(a)は、第1貯水部11の上端部に配置された櫛状リブ11Tを上方から見た図であり、図8(b)は、第1貯水部11及び第2貯水部12の断面を示す模式図である。図8(a)において、第2貯水部12の上端部に接続される注水装置30の注水ノズル30aの位置を点線で図示しているが、注水装置30の注水ノズル30aは、循環通路8の上方に接続される。そのため、櫛状リブ11Tにおいて、注水ノズル30aの下方に配置される部分に、流入口11aは形成されていない。
【0040】
第1貯水部11の幅(洗濯脱水槽2の径方向の沿った幅)、及び、第2貯水部12の幅、櫛状リブ11Tの幅は、何れもA1で同一である。第1貯水部11の上端部に形成される流入口11aの幅A2は、その外周部に径方向内側に向かって突出するリブ11Aが形成されているため、A1よりも小さい。
【0041】
そのため、注水装置30の注水ノズル30aから第2貯水部12に注水された調整水は、遠心力により第2貯水部12内の外周側に貼り付いて、櫛状リブ11Tのリブ11Aの上方に保持される。その後、リブ11Aの上方に保持される調整水の量が増加し、調整水の量がリブ11Aの高さを超えるようになると、その調整水は、流入口11aから第1貯水部11内に移動する。
【0042】
すなわち、第2貯水部12に注水される調整水の量が所定量以下である間は、その調整水は第2貯水部12内に貯留され、第2貯水部12に注水される調整水の量が所定量を超えると、調整水が第2貯水部12から第1貯水部11内に移動するようになる。
【0043】
第2貯水部12内において、櫛状リブ11Tのリブ11Aの上方に保持される調整水の厚さ(洗濯脱水槽2の径方向の沿った幅)は、周方向の全域にわたって略同一であるため、調整水は、循環通路8の両側に配置された2つの第1貯水部11に対してほぼ同時に移動するようになる。
【0044】
本実施形態の洗濯機1では、近接スイッチ55がマーカー52a(図2参照)を検知すると、加速度センサ58からの水平方向と垂直方向の加速度の大きさからアンバランス量が算出されるとともに、加速度センサ58からの水平方向と垂直方向の加速度を示す信号と近接スイッチ55から入力されたマーカー52aの位置を示す信号からアンバランス方向の角度を算出する。
【0045】
アンバランス量とアンバランス位置を示す信号に基づいて、洗濯脱水槽2内の何れの注水部10に給水を行うかおよびその給水量を予め格納される制御プログラムに基づいて判断する。なお、洗濯脱水槽2内の何れの注水部10に給水を行うかについては、洗濯脱水槽2内においてアンバランスの要因となっている洗濯物の塊がある位置と対向する位置にある注水部10が選定される。そして選定した注水部10に接続された給水バルブ31aを開き、調整水の注水を行い、注水部10によりアンバランスが解消されたとき、調整水の注水を停止する。
【0046】
このように本実施形態の洗濯機1は、パルセータ4が底部に配置された洗濯脱水槽2と、洗濯脱水槽2の内周面2aに配置され、パルセータ4の下羽根部4cで撹拌された洗濯水を洗濯脱水槽2の上端部に向かって通過させて循環水口8aから吐出する循環通路8と、洗濯脱水槽2の内周面2aに配置され、循環通路8とは別に周方向に等間隔で配置される3つ以上の注水部10と、各注水部10に個別に調整水を注水可能な注水装置30とを備える。
【0047】
このような構成であると、洗い工程においてシャワー洗いするための洗濯水の循環通路8と、脱水工程において洗濯脱水槽2のアンバランス状態を解消するための調整水の注水部10とが別々に設けられる。そのため、脱水工程において注水を行うことにより洗濯脱水槽2のアンバランス状態を解消できるとともに、洗い工程においてシャワー洗いするための洗濯水を循環通路8の循環水口8aより十分な洗濯水を吐出することができる。
【0048】
本実施形態の洗濯機1において、注水部10は、循環通路8の両側に配置される2つの第1貯水部11を有する。
【0049】
このような構成であると、洗濯脱水槽2内の出っ張りをなくしつつ、注水部10へ注水した後の脱水工程時に洗濯脱水槽2が楕円変形するのを低減することができる。
【0050】
このように本実施形態の洗濯機1において、注水部10は、2つの第1貯水部11の上端部を接続する第2貯水部12を有する。
【0051】
このような構成であると、注水部10への注水口を1つにでき、注水部10へ注水した後の脱水工程時に洗濯脱水槽2が楕円変形するのを低減することができる。
【0052】
このように本実施形態の洗濯機1において、第1貯水部11と第2貯水部12との間に設けられる貯留部材である櫛状リブ11Tを備え、櫛状リブ11Tは、その内周側に配置される流入口11aと、流入口11aの外周側に配置されるリブ11Aとを有している。
【0053】
このような構成であると、注水部10への注水口を1つにして、2つの第1貯水部11に対して均等に注水することができる。
【0054】
このように本実施形態の洗濯機1において、注水部10は、2つの第1貯水部11の高さ方向中間部を接続する接続部16を有する。
【0055】
このような構成であると、注水部10への注水口を1つにして、2つの第1貯水部11に対して不均一に注水された場合でも、接続部16を通じて水が移動し、2つの第1貯水部11の水量を均一にすることができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本実施形態の構成は上述したものに限定されず、種々の変形が可能である。
【0057】
例えば上記実施形態では、洗濯脱水槽2の内周面において、3つの循環通路8と同数の注水部10が形成されているが、それに限られない。循環通路8の数は任意であり、例えば循環通路8の数は、1つ、2つまたは4つ以上であってよい。注水部10の数は任意であり、例えば注水部10の数は、4つ以上であってよい。注水部10の数と循環通路8の数とは異なってもよい。
【0058】
上記実施形態では、洗濯脱水槽2の内周面において、循環通路8と注水部10が周方向に略同一の位置に配置されているが、それに限られない。循環通路8の配置、及び、注水部10の配置は任意である。例えば、注水部10は、洗濯脱水槽2の内周面において循環通路8と周方向に異なる位置に、循環通路8と離れて配置されてもよい。
【0059】
上記実施形態では、注水部10が、循環通路8の両側に配置された2つの第1貯水部11と、2つの第1貯水部11の上端部を接続する第2貯水部12とを有しているが、注水部10の構成は任意である。例えば注水部10は、循環通路8の片側のみに配置された1つの第1貯水部11を有していてもよい。
【0060】
上記実施形態では、第1貯水部11と第2貯水部12との間に設けられる櫛状リブ11Tは、その内周側に配置される10個の流入口11aと、流入口11aの外周側に配置される10個のリブ11Aとを有しているが、それに限られない。例えば、櫛状リブ11Tの流入口11aの数、形状、配置や、リブ11Aの高さなどは任意である。
【0061】
上記実施形態では、循環通路8の両側に配置された2つの第1貯水部11が、高さ方向中間部で接続部16により接続されているが、2つの第1貯水部11は接続されてなくてもよい。
【0062】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 洗濯機
2 洗濯脱水槽
2a 洗濯脱水槽の内周面
2c 洗濯脱水槽の底部
4 パルセータ
4c 下羽根部
6 バッフル
8 循環通路
8a 循環水口
10 注水部
11 第1貯水部
11a 流入口
11A リブ
11T 櫛状リブ(貯留部材)
12 第2貯水部
16 接続部
30 注水装置
30a 注水ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8