IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社テイエルブイの特許一覧

特許7541711電池寿命予測システム、装置及び電池寿命予測方法
<>
  • 特許-電池寿命予測システム、装置及び電池寿命予測方法 図1
  • 特許-電池寿命予測システム、装置及び電池寿命予測方法 図2
  • 特許-電池寿命予測システム、装置及び電池寿命予測方法 図3
  • 特許-電池寿命予測システム、装置及び電池寿命予測方法 図4
  • 特許-電池寿命予測システム、装置及び電池寿命予測方法 図5
  • 特許-電池寿命予測システム、装置及び電池寿命予測方法 図6
  • 特許-電池寿命予測システム、装置及び電池寿命予測方法 図7
  • 特許-電池寿命予測システム、装置及び電池寿命予測方法 図8
  • 特許-電池寿命予測システム、装置及び電池寿命予測方法 図9
  • 特許-電池寿命予測システム、装置及び電池寿命予測方法 図10
  • 特許-電池寿命予測システム、装置及び電池寿命予測方法 図11
  • 特許-電池寿命予測システム、装置及び電池寿命予測方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】電池寿命予測システム、装置及び電池寿命予測方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20240822BHJP
   G01R 31/3828 20190101ALI20240822BHJP
【FI】
G01R31/392
G01R31/3828
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020085847
(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公開番号】P2021179397
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】萩原 一成
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-101584(JP,A)
【文献】特開2017-143361(JP,A)
【文献】特開2014-183370(JP,A)
【文献】特開2011-78000(JP,A)
【文献】特開2009-207281(JP,A)
【文献】特開平1-313782(JP,A)
【文献】村山暁子,「モニタリングセンサによるスチームトラップ不良の予兆検知とスマート化の可能性」,計装,(有)工業技術社,2018年02月15日,Vol. 61, No. 3,pp. 32-36,ISSN:0368-5780
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池から供給される電力を消費して1種類以上の動作を行う1以上の装置と、該装置と通信可能に接続されたサーバ装置と、該装置と該サーバ装置との通信を中継する通信中継装置と、を備え、該電池の寿命を予測する電池寿命予測システムにおいて、
前記通信中継装置は、所定周期のデータ取得期間が到来する毎に、自身の下位に属する前記装置のそれぞれに対して所定の順序でデータ送信要求を行っていく第一通信制御手段、
を含み、
前記装置は、
前記データ取得期間が到来する毎に、前記データ取得期間の開始から自身に対する前記データ送信要求を受信するまでの通信待ち時間を計時し、該データ送信要求毎の通信待ち時間を通信履歴データとして記憶部に追記していく待ち時間計時手段、
前記通信中継装置を経由して所定のデータを前記サーバ装置に定期的に送信する第二通信制御手段であって、自身に対する前記データ送信要求を受信した場合、該所定のデータを該通信中継装置に送信する第二通信制御手段、
を、含み、
前記装置で行われた動作の開始から終了までの動作時間、及び、該動作時に消費されると想定される単位時間あたりの電流値を取得し、該動作時間及び該単位時間あたりの電流値に基づいて該装置で行われた動作の想定消費電流値を算出する第一算出手段、
前記想定消費電流値に基づいて、稼働開始から現在までの前記装置の消費電流積算値を算出する第二算出手段、
前記想定消費電流値又は前記消費電流積算値に基づいて、前記装置の単位日数あたりの想定消費電流値を算出する第三算出手段、
前記装置の電池の電圧値が所定電圧値以下であるか否かを判定する判定手段、
前記電圧値が前記所定電圧値よりも大きい場合、前記電池の電池容量から前記消費電流積算値を減算して残電池容量を算出し、該残電池容量及び前記単位日数あたりの想定消費電流値に基づいて、前記装置の終止電圧に至るまでの予想電池寿命を算出する第一予測手段、
前記電圧値が前記所定電圧値以下の場合、該電圧値に基づいて残電池容量を算出し、該残電池容量及び前記単位日数あたりの想定消費電流に基づいて、前記装置の前記予想電池寿命を算出する第二予測手段、
前記第一予測手段及び前記第二予測手段による前記予想電池寿命を、前記通信待ち時間の履歴データに基づいて補正する補正手段、
を含むことを特徴とする電池寿命予測システム。
【請求項2】
前記装置は、前記第一算出手段及び前記第二算出手段を有し、前記消費電流積算値及び前記電池の電圧値を所定周期で前記サーバ装置に向けて送信し、
前記サーバ装置は、前記第三算出手段、前記判定手段、前記第一予測手段及び前記第二予測手段を有し、
前記第三算出手段は、前記想定消費電流値及び前記消費電流積算値のうち、取得した消費電流積算値に基づいて前記装置の単位日数あたりの想定消費電流値を算出することを特徴とする請求項1に記載の電池寿命予測システム。
【請求項3】
前記電池は、塩化チオニルリチウム電池であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電池寿命予測システム。
【請求項4】
電池から供給される電力を消費して1種類以上の動作を行う装置であって、通信中継装置を介してサーバ装置と通信可能に接続された装置において、
所定周期のデータ取得期間が到来する毎に、前記データ取得期間の開始から自身に対するデータ送信要求を前記通信中継装置から受信するまでの通信待ち時間を計時し、該データ送信要求毎の通信待ち時間を通信履歴データとして記憶部に追記していく待ち時間計時手段、
前記通信中継装置を経由して所定のデータを前記サーバ装置に定期的に送信する通信制御手段であって、自身に対する前記データ送信要求を受信した場合、該所定のデータを該通信中継装置に送信する通信制御手段、
前記装置で行われた動作の開始から終了までの動作時間、及び、該動作時に消費されると想定される単位時間あたりの電流値を取得し、該動作時間及び該単位時間あたりの電流値に基づいて該装置で行われた動作の想定消費電流値を算出する第一算出手段、
前記想定消費電流値に基づいて、稼働開始から現在までの前記装置の消費電流積算値を算出する第二算出手段
前記想定消費電流値又は消費電流積算値に基づいて、単位日数あたりの想定消費電流値を算出する第三算出手段、
前記電池の電圧値が所定電圧値以下であるか否かを判定する判定手段、
前記電圧値が前記所定電圧値よりも大きい場合、前記電池の電池容量から前記消費電流積算値を減算して残電池容量を算出し、該残電池容量及び前記単位日数あたりの想定消費電流値に基づいて、前記装置の終止電圧に至るまでの予想電池寿命を算出する第一予測手段、
前記電圧値が前記所定電圧値以下の場合、該電圧値に基づいて残電池容量を算出し、該残電池容量及び前記単位日数あたりの想定消費電流に基づいて、前記予想電池寿命を算出する第二予測手段、
前記第一予測手段及び前記第二予測手段による前記予想電池寿命を、前記通信待ち時間の履歴データに基づいて補正する補正手段、
を含むことを特徴とする装置。
【請求項5】
電池から供給される電力を消費して1種類以上の動作を行う1以上の装置であって、通信中継装置を介してサーバ装置と通信可能に接続された装置における該電池の寿命を予測する電池寿命予測方法において、
所定周期のデータ取得期間が到来する毎に、前記データ取得期間の開始から前記装置自身に対するデータ送信要求を前記通信中継装置から受信するまでの通信待ち時間を計時し、該データ送信要求毎の通信待ち時間を通信履歴データとして記憶部に追記していく待ち時間計時ステップ、
前記通信中継装置を経由して所定のデータを前記装置から前記サーバ装置に定期的に送信する通信ステップであって、自身に対する前記データ送信要求を受信した場合、該所定のデータを該通信中継装置に送信する通信ステップ、
前記装置で行われた動作の開始から終了までの動作時間、及び、該動作時に消費されると想定される単位時間あたりの電流値を取得し、該動作時間及び該単位時間あたりの電流値に基づいて該装置で行われた動作の想定消費電流値を算出する第一算出ステップ、
前記想定消費電流値に基づいて、稼働開始から現在までの前記装置の消費電流積算値を算出する第二算出ステップ、
前記想定消費電流値又は前記消費電流積算値に基づいて、前記装置の単位日数あたりの想定消費電流値を算出する第三算出ステップ、
前記装置の電池の電圧値が所定電圧値以下であるか否かを判定するステップ、
前記電圧値が前記所定電圧値よりも大きい場合、前記電池の電池容量から前記消費電流積算値を減算して残電池容量を算出し、該残電池容量及び前記単位日数あたりの想定消費電流値に基づいて、前記装置の終止電圧に至るまでの予想電池寿命を算出する第一予測ステップ、
前記電圧値が前記所定電圧値以下の場合、該電圧値に基づいて残電池容量を算出し、該残電池容量及び前記単位日数あたりの想定消費電流に基づいて、前記装置の前記予想電池寿命を算出する第二予測ステップ、
前記第一予測ステップ及び前記第二予測ステップによる前記予想電池寿命を、前記通信待ち時間の履歴データに基づいて補正する補正ステップ、
を含むことを特徴とする電池寿命予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電池から供給される電力を消費して1種類以上の動作を行う装置を駆動する電池の寿命を予測する電池寿命予測システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所、ガスプラント、蒸気プラント、工場等においては、例えば工業無線規格ISA100.11a等に準拠した無線ネットワークが構築されている。同ネットワークには、例えば、ゲートウェイ、無線フィールド機器(無線通信機器)等が接続される。無線フィールド機器には、例えばISA100.11a機器としての、圧力計,差圧計,温度計,レベル計,流量計等がある。無線フィールド機器は、測定した値(測定値)等をゲートウェイを経由してデータ収集サーバ等に送信する。
【0003】
上述の無線フィールド機器は、内臓されている電池から供給される電力を消費することで動作している。そのため、電池の寿命が到来する前に、新たな電池に交換する必要がある。
【0004】
また、従来より、電池の寿命を予測するシステムがある(例えば、特許文献1参照)。引用文献1では、電池の放電量、放電レート、放電温度に基づいて劣化率を算出し、現時点の二次電池の劣化量から、寿命時の劣化量に至るまでの余命期間を算出する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-181875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような放電量等から電池の寿命予測をする構成では、電池電圧と電池残量が比例関係にない電池においては正確に予測することが困難である。
【0007】
この発明は、電池電圧と電池残量が比例関係にない電池において電池の寿命を予測する電池寿命予測システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面によって提供される電池寿命予測システムは、電池から供給される電力を消費して1種類以上の動作を行う1以上の装置と、装置と通信可能に接続されたサーバ装置と、を備え、電池の寿命を予測する。また、電池寿命予測システムは、第一算出手段、第二算出手段、第三算出手段、判定手段、第一予測手段及び第二予測手段を含む。第一算出手段は、装置で行われた動作の動作時間、及び、動作時に消費されると想定される単位時間あたりの電流値を取得し、動作時間及び単位時間あたりの電流値に基づいて装置で行われた動作の想定消費電流値を算出する。第二算出手段は、想定消費電流値に基づいて、稼働開始から現在までの装置の消費電流積算値を算出する。第三算出手段は、想定消費電流値又は消費電流積算値に基づいて、装置の単位日数あたりの想定消費電流値を算出する。判定手段は、装置の電池の電圧値が所定電圧値以下であるか否かを判定する。第一予測手段は、電圧値が所定電圧値よりも大きい場合、電池の電池容量から消費電流積算値を減算して残電池容量を算出し、残電池容量及び単位日数あたりの想定消費電流値に基づいて、装置の終止電圧に至るまでの予想電池寿命を算出する。第二予測手段は、電圧値が所定電圧値以下の場合、電圧値に基づいて残電池容量を算出し、残電池容量及び単位日数あたりの想定消費電流に基づいて、装置の予想電池寿命を算出する。
【0009】
上記装置は、第一算出手段及び第二算出手段を有し、消費電流積算値及び電池の電圧値を所定周期で前記サーバ装置に向けに送信し、サーバ装置は、第三算出手段、判定手段、第一予測手段及び第二予測手段を有するようにしてもよい。
【0010】
上記電池寿命予測システムは、装置とサーバ装置との通信を中継する通信中継装置を、さらに備えるようにしてもよい。また、通信中継装置は、所定周期のデータ取得期間が到来する毎に、自身の下位に属する装置のそれぞれに対して所定の順序でデータ送信要求を行っていく第一通信制御手段を含むようにしてもよい。また、装置は、データ取得期間が到来する毎に、データ取得期間の開始から自身に対するデータ送信要求を受信するまでの通信待ち時間を計時し、データ送信要求毎の通信待ち時間を通信履歴データとして記憶部に追記していく待ち時間計時手段、及び、通信中継装置を経由して所定のデータをサーバ装置に定期的に送信する第二通信制御手段であって、自身に対するデータ送信要求を受信した場合、所定のデータを通信中継装置に送信する第二通信制御手段を含むようにしてもよい。さらに、第一予測手段及び第二予測手段による予想電池寿命を、通信待ち時間の履歴データに基づいて補正する補正手段、を含むようにしてもよい。
【0011】
上記電池は、塩化チオニルリチウム電池であってもよい。
【0012】
本発明の第2の側面によって提供される装置は、電池から供給される電力を消費して1種類以上の動作を行い、第一算出手段、第二算出手段、第三算出手段、判定手段、第一予測手段及び第二予測手段を含む。第一算出手段は、装置で行われた動作の動作時間、及び、動作時に消費されると想定される単位時間あたりの電流値を取得し、動作時間及び単位時間あたりの電流値に基づいて装置で行われた動作の想定消費電流値を算出する。第二算出手段は、想定消費電流値に基づいて、稼働開始から現在までの装置の消費電流積算値を算出する。第三算出手段は、想定消費電流値又は消費電流積算値に基づいて、単位日数あたりの想定消費電流値を算出する。判定手段は、電池の電圧値が所定電圧値以下であるか否かを判定する。第一予測手段は、電圧値が前記所定電圧値よりも大きい場合、電池の電池容量から消費電流積算値を減算して残電池容量を算出し、残電池容量及び単位日数あたりの想定消費電流値に基づいて、装置の終止電圧に至るまでの予想電池寿命を算出する。第二予測手段は、電圧値が所定電圧値以下の場合、電圧値に基づいて残電池容量を算出し、残電池容量及び単位日数あたりの想定消費電流に基づいて、予想電池寿命を算出する。
【0013】
本発明の第3の側面によって提供される電池寿命予測方法は、電池から供給される電力を消費して1種類以上の動作を行う1以上の装置における電池の寿命を予測する方法であって、装置で行われた動作の動作時間、及び、動作時に消費されると想定される単位時間あたりの電流値を取得し、動作時間及び該単位時間あたりの電流値に基づいて装置で行われた動作の想定消費電流値を算出する第一算出ステップ、想定消費電流値に基づいて、稼働開始から現在までの装置の消費電流積算値を算出する第二算出ステップ、想定消費電流値又は消費電流積算値に基づいて、装置の単位日数あたりの想定消費電流値を算出する第三算出ステップ、装置の電池の電圧値が所定電圧値以下であるか否かを判定するステップ、電圧値が所定電圧値よりも大きい場合、電池の電池容量から消費電流積算値を減算して残電池容量を算出し、残電池容量及び単位日数あたりの想定消費電流値に基づいて、装置の終止電圧に至るまでの予想電池寿命を算出する第一予測ステップ、電圧値が所定電圧値以下の場合、電圧値に基づいて残電池容量を算出し、残電池容量及び単位日数あたりの想定消費電流に基づいて、装置の予想電池寿命を算出する第二予測ステップを含む。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、電池の電圧値に基づいて、電池寿命の予測方法が消費電流積算値を用いた方法及び電池の電圧値を用いた方法のいずれか一方に切り替えられる。したがって、電池電圧が降下してくる前は、消費電流積算値を用いた方法とし、電池電圧が降下してきた場合には電池の電圧値を用いた方法とすることができる。これにより、より正確な電池の寿命予測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の実施形態に係る通信システムの概略の構成を示すブロック図である。
図2】センサ装置で使用された場合の電池の電圧と時間経過との関係の一例を示す。
図3】センサ装置の運転モード時の各種動作時に電池から流れる電流パターンの一例を示すイメージ図である。
図4】センサ装置の運転モード時の各動作で時間あたりに消費される電流値を示す電流値データテーブルである。
図5】電池の電圧値と電池残量との関係を示す電池残量テーブルである。
図6】センサ装置の機能ブロック図である。
図7】通信中継装置の機能ブロック図である。
図8】通信中継装置のデータ取得期間における各センサ装置へのデータ送信要求の出力タイミングの一例を示す図である。
図9】サーバ装置の機能ブロック図である。
図10】サーバ装置のデータベースに記憶された状態情報テーブルの一例を示す図である。
図11】センサ装置の運転モード処理を示すフローチャートである。
図12】サーバ装置の寿命予測処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の実施形態である電池寿命予測システムを適用した通信システムについて図面を参照しつつ説明する。なお、本発明の構成は、各実施形態に限定されるものではない。また、以下で説明する各種フローを構成する各種処理の順序は、処理内容に矛盾等が生じない範囲で順不同である。
【0017】
図1は、通信システム100の概略の構成を示すブロック図である。通信システムは、例えば、発電所、ガスプラント、蒸気プラント、工場等に配備された機器を監視するシステムに適用される。この実施形態では、工場やプラント等に形成されるプロセスシステムに分散配備される多数のスチームトラップ(不図示)の作動状態を、無線通信を用いて監視する通信システム100について説明する。
【0018】
通信システム100は、複数のフィールド機器(センサ装置10、通信中継装置20)、ゲートウェイ30、サーバ装置40等から構成される。
【0019】
無線フィールド機器は、無線ネットワークを介してゲートウェイ30を含む他の装置に接続され、ISA100.11aに準拠した無線通信を行う無線通信機器(ISA100.11a機器)である。
【0020】
無線フィールド機器としては、センサ装置10及び通信中継装置20等がある。センサ装置10は、各スチームトラップに配置され、運転モード中においてスチームトラップの温度等を計測する。具体的には、センサ装置10は、所定周期で、スチームトラップの温度等を計測し、計測データを通信中継装置20、ゲートウェイ30等を経由してサーバ装置40に送信する。なお、センサ装置10は、スチームトラップの温度等を測定し、通信中継装置20に送信する時間以外の時間については、いわゆるスリープ状態となっている。
【0021】
通信中継装置20は、通信システム100の通信ネットワークを構成するルータ等であり、自身の下位に属する他の通信中継装置20から自身の上位に属する他の通信中継装置20(又はゲートウェイ30)への通信を中継する(中継動作)。また、通信中継装置20は、自身と直接的に通信するセンサ装置10から取得した計測データを一時的にメモリに蓄積した後(データ取得動作)、他の通信中継装置20、ゲートウェイ30等を経由して、サーバ装置40に送信する(データ送信動作)。なお、通信中継装置20は、センサ装置10から計測データを取得し、サーバ装置40に向けて送信したり、他の通信中継装置20からの通信を中継する時間以外の時間については、いわゆるスリープ状態となっている。なお、上述の無線フィールド機器は、内蔵された塩化チオニルリチウム電池(一次電池)から供給される電力によって駆動する。
【0022】
ゲートウェイ30は、無線フィールド機器との間でISA100.11aに準拠した無線通信を行う。また、ゲートウェイ30は、IPネットワークを介してサーバ装置40等に接続され、サーバ装置40等とIPプロトコルによる通信を行う。ゲートウェイ30は、サーバ装置40と無線フィールド機器との間で送受信される計測データ等を中継する。
【0023】
サーバ装置40は、通信中継装置20、ゲートウェイ30等を介してセンサ装置10が計測した温度等の計測データを取得(収集)することで、各スチームトラップの作動状態を管理し、作動状態が正常であるかを判定する。
【0024】
なお、上述の計測データを定期的に取得して監視する構成は、一般的な構成であるので詳細な説明は省略する。
【0025】
また、この実施形態の通信システム100は、各フィールド機器の電池寿命を予測する。すなわち、各フィールド機器の現時点から終止電圧に至るまでの期間(残日数)を電池寿命として予測する。以下、センサ装置10の電池寿命予測について説明する。
【0026】
この実施形態では、電池寿命予測の算出方法として2つの方法(第一予測計算、第二予測計算)が用いられる。具体的には、図2に示すように、電池電圧値が切替電圧値以下か否かに応じて、2つの方法を切り替えて電池寿命予測が行われる。図2は、センサ装置10で使用された場合の電池の電圧と時間経過との関係の一例を示す。図2に示すように、電池電圧は、長期間、所定の電圧値(例えば、3.3(V))で安定している。しかし、電池寿命が近い状態になると電池の電圧は急に落ち込み始める。切替電圧値は、電池の電圧が落ち込み始めると予測される電圧値であり、この実施形態では、3.0(V)として設定される。なお、この実施形態では、終止電圧を2.2(V)として説明する。
【0027】
第一予測計算は、センサ装置10の受信、送信、計測等の動作の実行で消費される想定消費電流値を算出し、センサ装置10の稼働開始から現在までの消費電流積算値から電池の残容量(残電池容量)を算出する。この残電池容量に基づいて、算出時点(現在)を基準として電池が終止電圧に至るまであと何日であるか(残日数)を算出する。この残日数が予測した電池寿命(予想電池寿命)となる。
【0028】
第一予測計算では、下記の式(1)にて電池寿命が予測される。
【0029】
【数1】
【0030】
「電池容量」は、100%時の電池容量(Ah)である。「消費電流積算値」は、センサ装置10の稼働開始から現在までに消費されたと想定される電流の累計値(A)である。「今の通信周期で1日に消費する想定電流値」は、センサ装置10が、現在の通信周期に基づく動作によって直近の1日で消費されると想定される電流値(A/日)である。
【0031】
式(1)の「(電池容量-消費電流積算値)」は、想定される現在の残電池容量である。そして、残電池容量を1日に消費する電流値で徐算することで、現時点における電池の残りの寿命が何日であるかが算出される。
【0032】
次に、「消費電流積算値」の算出方法について図3及び図4を参照しつつ説明する。図3は、センサ装置10の運転モード時の各動作時に電池から流れる電流パターンの一例を示すイメージ図である。図4は、各動作で時間あたりに消費される電流値(uA/h)を示す電流値データテーブルである。
【0033】
「消費電流積算値」は、実行された動作の動作時間と時間あたりに消費される電流値とから算出した電流値(想定電流値)を積算していくことで算出される。センサ装置10は、運転モード中、図3に示すように、低消費動作、1秒起床/就寝動作、計測、受信状態等の動作を所定周期で繰り返し実行していく。例えば、低消費動作、1秒起床/就寝動作、計測、受信状態を一日(24時間)周期とし、一日(24時間)に1回、温度等を計測して計測データの送信を行う。
【0034】
低消費動作は、マイコンが就寝したスリープ状態であり、次回起床時間まで待機している状態である。1秒起床/就寝動作は、低消費動作から復帰した状態であり、1分以下の低消費動作で1秒毎の起床/就寝を繰り返す動作である。計測は、スチームトラップの温度等の計測を行う動作である。
【0035】
受信状態は、計測データの送信相手(通信中継装置20)からの信号を受信可能な状態である。受信状態中に、送信相手(通信中継装置20)から自身に対するデータ送信要求(データ送信許可)を受信した場合、計測データを送信する。データ送信要求を受信するまでは、通信待ちの状態である。受信状態は、所定時刻に開始となって、計測データの送信が完了するまでの間において継続される。送信は、受信状態中に、計測データの送信の送信を行う動作である。送信は、データ容量に応じて送信回数が決まる。
【0036】
なお、送信の動作は非常に短い時間であるので、図4に示す送信の電流値だけは、100回分の送信において使用されると想定される電流値(uA/100回)を示す。すなわち、送信の動作に対する想定消費電流値は、送信累計回数をカウントし、送信累計回数100回につき15(uA)の想定消費電流値として算出される。
【0037】
なお、低消費動作、1秒起床/就寝動作、計測は、動作時間は一定(固定値)であり、各動作時間はデータ(動作時間データ)として設定される。例えば、これらの動作の開始時に、動作時間(動作時間データ)と図4に示す電流値とから想定消費電流値を算出すればよい。また、受信状態は、データ送信要求を受信しなければ計測データを送信できないので、受信状況によって動作時間が変動する。したがって、センサ装置10は、受信状態の動作時間を計時し、計時された動作時間と図4に示す電流値とから想定消費電流値を算出すればよい。
【0038】
この実施形態では、センサ装置10が消費電流積算値を算出し、自装置のメモリに記憶する。そして、センサ装置10は、消費電流積算値を、計測データとともに通信中継装置20を介してサーバ装置40に向けて送信する。また、センサ装置10のメモリには、動作時間データ、電流値データテーブル等も記憶されている。サーバ装置40は、各センサ装置10の識別情報に対応付けて、消費電流積算値をデータベース(記憶部)で管理する。
【0039】
次に、「今の通信周期で1日に消費する想定電流値」の算出方法について説明する。今の通信周期で1日に消費する想定電流値は、センサ装置10において1日に消費されると想定される電流値である。すなわち、センサ装置10の1日あたり消費電流積算値である。したがって、例えば、過去の消費電流積算値と現時点の消費電流積算値との差から算出可能である。
【0040】
この実施形態では、サーバ装置40が、センサ装置10毎に「今の通信周期で1日に消費する想定電流値」を算出する。サーバ装置40は、各センサ装置10の消費電流積算値を一日周期で受信しているので、受信した最新の消費電流積算値と前日に受信した消費電流積算値との差分を「今の通信周期で1日に消費する想定電流値」とし、センサ装置10の識別情報に対応付けてデータベースで管理する。
【0041】
また、サーバ装置40は、消費電流積算値、今の通信周期で1日に消費する想定電流値を参照し、式(1)を用いてセンサ装置10毎の予想電池寿命を算出する。サーバ装置40は、各センサ装置10の識別情報に対応付けて、予想電池寿命をデータベースで管理する。
【0042】
次に、第二予測計算について説明する。第二予測計算は、センサ装置10の電池電圧値(測定値)からセンサ装置10の残電池容量を算出する。この残電池容量に基づいて、算出時点(現在)を基準として電池が終止電圧に至るまであと何日であるか(残日数)を算出する。この日数が予測した電池寿命(予想電池寿命)となる。
【0043】
第二予測計算は、下記の式(2)にて電池寿命が予測される。
【0044】
【数2】
【0045】
【数3】
【0046】
電池残量f(x)は、想定される現在の残電池容量(Ah)を示し、現在の電池電圧値xから容量換算式である式(3)を用いて算出される。(x,y)、(x、y)には、図5に示すテーブルの固定値が設定される。図5は、電池の電圧値(V)と残電池容量(Ah)との関係を示す電池残量テーブルである。図5に示す電池の電圧値及び残電池容量は、実測データである。すなわち、実際に、上述の通信システム100に適用される同型のセンサ装置を用いて電池の電圧値及び電池残量(残電池容量)を計測した実測データである。本来、通信システム100に適用されるセンサ装置10には、残電池容量を計測する機能はない。
【0047】
データ1は、電池の電圧値が3.0(V)の時、残電池容量が1.91(Ah)であったことを示す。データ2は、電池の電圧値が終止電圧である2.2(V)の時、残電池容量が0.00(Ah)であったことを示す。したがって、図5のデータを用いた場合、式(3)では、(x,y)=(3.0,1.91)、(x、y)=(2.2,0.00)と設定される。
【0048】
例えば、センサ装置10の現在の電圧値が2.5(V)であった場合、図5に示すデータ及び式(3)を用いることで、残電池容量が約0.716(Ah)であると想定される。この残電池容量を用いて式(2)で予想電池寿命が算出される。なお、式(2)の「今の通信周期で1日に消費する想定電流値」は、式(1)の「今の通信周期で1日に消費する想定電流値」と同じ値である。
【0049】
この実施形態では、サーバ装置40が、式(2),(3)を用いてセンサ装置10毎の予想電池寿命を算出する。各センサ装置10の識別情報に対応付けて、予想電池寿命をデータベースで管理する。すなわち、第一予測計算及び第二予測計算をサーバ装置40が実行する。サーバ装置40は、センサ装置10から電源の電圧値(計測データ)及び消費電流積算値を受信したタイミングで、予想電池寿命を算出する。すなわち、一日に1回予想電池寿命を算出(更新)する。最初に、「今の通信周期で1日に消費する想定電流値」を算出する。そして、電源の電圧値に基づいて、第一予測計算及び第二予測計算のいずれを用いるかを決定し、このセンサ装置10の予想電池寿命を算出する。
【0050】
次に、センサ装置10のハードウェアの構成について、図6を参照しつつ説明する。図6は、センサ装置10の機能ブロック図である。センサ装置10は、制御部11、通信制御部12、メモリ13、計時・起動制御部14、センサ部15、電源部16等を有する。
【0051】
制御部11は、例えばCPU、ROM、RAM等を有するマイコン等から構成され、ROMに記憶されたプログラム(ソフトウェア)及び各種データ等に基づいてセンサ装置10全体の動作を制御する。例えば、制御部11は、図2に示すように、各動作(低消費動作を除く)を一定周期で制御する。すなわち、定められた時刻に各動作を実行する。制御部11は、例えば、計測の動作において、センサ部15から受信した温度等の測定データをメモリ13に記憶する。また、制御部11は、計測の動作において、電源部16から受信した電池の電圧値の計測データをメモリ13に記憶する。
【0052】
また、制御部11は、各動作時間及び電流値データテーブル等に基づいて、動作毎に上述した想定消費電流値を算出する。そして、算出した想定消費電流値を、メモり13に記憶されている消費電流積算値に加算していくことで、稼働開始から現在までの自身の消費電流積算値を算出(更新)する。したがって、制御部11は、第一算出手段、第二算出手段に該当する。
【0053】
そして、制御部11は、受信状態の動作においてデータ送信要求を受信した場合、装置ID、計測データ(電池の電圧値を含む)、消費電流積算値を、通信制御部12から通信中継装置20に送信させる。これにより、計測データは、最終的にサーバ装置40に送信される。また、制御部11は、上述の送信が行われる毎に、メモリ13に記憶されている送信累計回数に1を加算していく。そして、制御部11は、送信累計回数が100回に達した場合、「送信」の動作の想定消費電流値を算出し、消費電流積算値に加えるとともに送信累計回数から100を減算する。
【0054】
次に、通信制御部12は、無線通信回路等から構成され、無線ネットワークに接続され、上位の通信中継装置20を介してサーバ装置40との通信を制御する。制御部11及び通信制御部12は、第二通信制御手段に該当する。メモリ13は、例えばEEPROMであり、センサ装置10の装置ID、計測データ及び消費電流積算値等を記憶する。さらに、メモリ13は、上述した各動作(低消費動作、1秒起床/就寝動作、計測)の動作時間データ、電流値データテーブル等も記憶する。また、メモリ13は、図2で例示した運転モードにおける各動作の実行の開始及び終了する時刻等のデータも記憶する。
【0055】
次に、計時・起動制御部14は、RTC等から構成され、設定された起動時刻にセンサ装置10を起動する。計時・起動制御部14は、スリープ状態である低消費動作を制御する。なお、制御部11は、低消費動作に移行する場合、1秒起床/就寝動作を開始する時刻(起動時刻)を計時・起動制御部14に設定する。また、計時・起動制御部14は、所定のクロックを発生し、所定の時間を計時する。制御部11は、「受信状態」の動作時間を、計時・起動制御部14から取得する。
【0056】
次に、センサ部15は、温度センサ等から構成され、スチームトラップの温度等を計測する。電源部16は、電池及び電池の電圧値を測定可能な電源IC等をから構成され、センサ装置10を駆動する電力を供給する。
【0057】
次に、通信中継装置20のハードウェアの構成について、図7を参照しつつ説明する。図7は、通信中継装置20の機能ブロック図である。通信中継装置20は、制御部21、通信制御部22、メモリ23、計時・起動制御部24及び電源部26等を有する。
【0058】
制御部21は、例えばCPU、ROM、RAM等を有するマイコンであり、ROMに記憶されたプログラム(ソフトウェア)及び各種データ等に基づいて通信中継装置20全体の動作を制御する。制御部21は、上述した中継動作、データ取得動作及びデータ送信動作を通信制御部22を介して行う。制御部21は、メモリに記憶されている各動作の開始時刻、終了時刻等を参照して、動作を実行する。
【0059】
制御部21は、予め設定されている他の通信中継装置20に対してのみ中継動作を行う。また、制御部21は、予め設定されているセンサ装置10に対してのみデータ取得動作及びデータ送信動作を行う。これらの動作は、所定の周期で繰り返し実行される。制御部21は、データ取得期間の開始時刻から終了時刻までデータ取得動作を開始する。データ取得期間中、制御部21は、通信制御装置22に予め設定されているセンサ装置10の1台ずつに順にデータ送信要求(ポーリング信号)を送信させる。最初のセンサ装置10からのデータ取得が完了した場合、次のセンサ装置10にデータ送信要求を送信させる。そして、予め設定されているセンサ装置10の全てのデータ取得が完了し、データ取得期間の終了時刻が到来した場合にデータ取得動作が終了する。
【0060】
例えば、通信中継装置20Aが、自身の下位に属するセンサ装置10A~10Cからデータを取得する場合について、図8を参照しつつ説明する。図8は、通信中継装置20Aのデータ取得期間における各センサ装置20A~20Cへのデータ送信要求の出力タイミングの一例を示す図である。なお、通信中継装置20Aには、センサ装置10A、センサ装置10B、センサ装置10Cの順にデータ取得する順番が設定されている。
【0061】
制御部21Aは、所定時刻が到来した場合に、周期的に、データ取得期間を開始する。また、3つのセンサ装置10A~10Cも、上記データ取得期間の開始タイミングと同時期に受信状態の動作を開始する。制御部21Aは、3のセンサ装置10A~10Cのうち、1番目に設定されているセンサ装置10Aに対するデータ送信要求を通信制御部22Aに送信させる。センサ装置10Aは、自身に対するデータ送信要求であると認識して、計測データ等を通信中継装置20Aに送信開始する。センサ装置10Aは、送信完了した場合、受信状態を終了する。
【0062】
一方、制御部21Aは、センサ装置10Aからの計測データ等の取得が完了した場合、2番目のセンサ装置10Bに対するデータ送信要求を通信制御部22Aに送信させる。センサ装置10Bは、自身に対するデータ送信要求であると認識して、計測データ等を通信中継装置20Aに送信開始する。センサ装置10Bは、送信完了した場合、受信状態を終了する。
【0063】
一方、通信中継装置20Aは、センサ装置10Bからの測定データ等の取得が完了した場合、3番目のセンサ装置10Cに対するデータ送信要求を通信制御部22Aに送信させる。センサ装置10Cは、自身に対するデータ送信要求であると認識して、計測データ等を通信中継装置20Aに送信開始する。センサ装置10Cは、送信完了した場合、受信状態を終了する。
【0064】
そして、通信中継装置20A(制御部21A)は、センサ装置10Cからの測定データ等の取得が完了した場合、自身の下位に属する全てのセンサ装置10A~10Cのデータ取得が完了したので、データ取得期間の経過時にデータ取得の動作を終了する。
【0065】
上述のように各センサ装置10A~10Cは、自身のデータ送信が完了するまでは受信状態の動作が継続されるので、送信順によって受信状態の継続時間(動作時間)も異なってくる。通信中継装置20と1台のセンサ装置10との通信時間は、通信不具合等がなければ一定であるが、不具合が発生して通信時間が延びる場合もある。なお、データ取得期間は、データを取得するセンサ装置10の台数及び1台のセンサ装置10からデータ取得するのように要する時間等を考慮した期間が設定される。
【0066】
通信制御部22は、無線通信回路等から構成され、無線ネットワークに接続され、下位のセンサ装置10、他の通信中継装置20、サーバ装置40等との通信を制御する。メモリ23は、例えばEEPROMであり、各動作実行の開始及び終了する時刻等のデータ、中継動作を行う他の通信中継装置20の識別情報、データ取得等するセンサ装置10の識別情報、データ取得順等が記憶される。また、メモリ23は、センサ装置10から取得した計測データ等も記憶される。制御部21及び通信制御部22は、第一通信制御手段に該当する。
【0067】
次に、計時・起動制御部24は、RTC等から構成され、設定された起動時刻に通信中継装置20を起動する。制御部21は、低消費動作に移行する場合、次に動作を開始する時刻(起動時刻)を計時・起動制御部24に設定する。また、計時・起動制御部24は、所定のクロックを発生し、所定の時間を計時する。電源部26は、電池及び電池の電圧値を測定可能な電源IC等をから構成され、通信中継装置20を駆動する電力を供給する。
【0068】
次に、サーバ装置40のハードウェアの構成について、図9を参照しつつ説明する。図9は、サーバ装置40の機能ブロック図である。サーバ装置40は、制御部41、通信制御部42、データベース(DB)43等を有する。
【0069】
制御部41は、CPU、ROM,RAM等から構成され、ROMに記憶されたプログラム(ソフトウェア)及びデータ等に基づいて装置全体の動作を制御する。具体的には、制御部41は、受信した各スチームトラップの計測データを状態情報テーブルに含めてDB43で記憶(管理)する。また、制御部41は、上述したように、計測データの受信時に各センサ装置10の電池の寿命予測を行って、状態情報テーブルに含めてDB43で記憶(管理)する。制御部41は、第三算出手段、第一予測手段及び第二予測手段に該当する。
【0070】
通信制御部42は、無線通信回路から構成され、無線ネットワークに接続され、センサ装置10、通信中継装置20等との通信を制御する。DB43は、図10に示すような状態情報テーブルを記憶する。また、DB43には、電池寿命の予測に用いられる切替電圧値、電池残量テーブル、電池容量(100%時)等のデータも記憶されている。
【0071】
図10は、サーバ装置40のDB43に記憶された状態情報テーブルの一例を示す図である。状態情報テーブルには、スチームトラップ毎の状態情報、判定結果、位置情報、電池電圧値、消費電流積算値、期間想定消費電流値、予想電池寿命等がセンサ装置10の装置IDに対応付けて登録されている。状態情報は、スチームトラップの温度等の計測データである。判定結果は、サーバ装置40が、状態情報に基づいて各スチームトラップの作動状態を判定した結果である。位置情報は、各スチームトラップの配置されている位置を特定するための情報である。
【0072】
電池電圧値は、センサ装置10毎の電池の電圧値である。消費電流積算値は、センサ装置10毎の稼働開始から現在までの消費電流積算値である。電池電圧値及び消費電流積算値は、各センサ装置10から受信したデータである。期間想定消費電流値は、センサ装置10毎の単位日数あたりの想定消費電流値である。この実施形態では、上述したように、センサ装置10毎の「今の通信周期で1日に消費する想定電流値」が登録される。予想電池寿命は、センサ装置10毎の電池寿命(残日数)である。期間想定消費電流及び予想電池寿命には、制御部41が行う寿命予測で算出された値が登録される。
【0073】
次に、センサ装置10の運転モード処理について、図11に示すフローチャートを参照しつつ説明する。運転モード処理は、図2で例示した周期で各動作を実行するための処理である。なお、センサ装置10は、計時・起動制御部14において、各動作の時間を計時している。
【0074】
センサ装置10は、測定データを通信中継装置20に送信する時間になったと判断すると(ステップS10)、スリープ状態を解除する(ステップS20)。具体的には、RTC(計時・起動制御部14)が、CPU、無線通信回路等を起動させる。次に、センサ装置10は、積算処理(A)を実行する(ステップS30)。積算処理(A)では、これから開始される1秒起床/就寝動作の想定消費電流値が算出され、メモリ13の消費電流積算値に加算される。センサ装置10は、メモリ13に記憶されている動作時間データ及び電流値データテーブルを参照し、1秒起床/就寝動作の動作の想定消費電流値を算出する。
【0075】
次に、センサ装置10は、1秒起床/就寝動作処理を実行する(ステップS40)。センサ装置10は、設定された動作時間が経過するまで1秒起床/就寝動作処理を実行する。その後、センサ装置10は、積算処理(B)を実行する(ステップS50)。積算処理(B)では、これから開始される計測の動作の想定消費電流値が算出され、メモリ13の消費電流積算値に加算される。センサ装置10は、積算処理(A)と同様に、メモリ13に記憶されている動作時間データ及び電流値データテーブルを参照し、計測の動作の想定消費電流値を算出する。
【0076】
次に、センサ装置10は、スチームトラップの温度等を計測する計測処理を実行する(ステップS60)。センサ装置10は、設定された動作時間が経過するまで計測処理を実行する。この実施形態では、計測処理において、電池の電圧値も計測される。次に、センサ装置10は、受信状態(送信)処理を実行する(ステップS70)。受信状態(送信)処理では、上述したように、自身に対するデータ送信要求を受信した場合に温度等の計測データ、電池電圧値及び消費電流積算値等が、上位の通信中継装置20に送信される。なお、受信状態(送信)の開始タイミングは、上述の図8で例示したように、自身の上位の通信中継装置20のデータ取得期間と同期している。また、受信状態(送信)処理では、処理の動作時間の計時が行われる。さらに、受信状態(送信)処理では、処理中の送信回数が、メモリ13の送信累計回数に加算されていく。センサ装置10は、送信すべきデータの送信が完了した場合に受信状態(送信)処理を終了する。
【0077】
次に、センサ装置10は、積算処理(C)を実行する(ステップS80)。積算処理(C)では、受信状態(送信)の想定消費電流値が算出され、メモリ13の消費電流積算値に加算される。センサ装置10は、ステップS70の処理で計時された動作時間、電流値データテーブルの電流値を参照して想定消費電流値を算出する。また、積算処理(C)では、送信累計回数が100に達した場合、送信の想定消費電流値が算出され、メモリ13の消費電流積算値に加算される。なお、送信の想定消費電流値が算出された場合、メモリ13の送信累計回数から100が減算される。
【0078】
次に、センサ装置10は、スリープ状態(低消費動作)設定を行う(ステップS90)。また、スリープ状態設定では、次に起動するまでの時間が計時・起動制御部14に設定され、CPU、無線通信回路等がスリープ状態とされる。また、スリープ状態設定では、スリープ状態となる前に、低消費動作の想定消費電流値が算出され、メモリ13の消費電流積算値に加算される。センサ装置10は、積算処理(A)と同様に、メモリ13に記憶されている動作時間データ及び電流値データテーブルを参照し、低消費動作の想定消費電流値を算出する。その後、センサ装置10は、ステップS10の処理に戻る。
【0079】
次に、サーバ装置40の寿命予測処理について、図12に示すフローチャートを参照しつつ説明する。寿命予測処理は、現時点での各センサ装置10の電池寿命を予測するための処理である。寿命予測処理は、1台のセンサ装置10から電池電圧値及び消費電流積算値を受信したことを契機として、そのセンサ装置10に対する電池に対して実行される。各センサ装置10は、電池電圧値及び消費電流積算値を、温度等の計測データとともに所定周期でサーバ装置40に送信するので、所定周期で予想電池寿命が更新される。以下、サーバ装置40がセンサ装置10Aから電池電圧値及び消費電流積算値を受信した場合について説明する。
【0080】
サーバ装置40は、データ更新処理を実行する(ステップS100)。データ更新処理では、センサ装置10Aから受信した消費電流積算値と、DB43に記憶されている消費電流積算値とから、今の通信周期で1日に消費する想定電流値を算出する。そして、センサ装置10Aから受信した電池電圧値及び消費電流積算値と、算出した今の通信周期で1日に消費する想定電流値とを、センサ装置10Aのデータとして図10に示す状態情報テーブルを更新する。
【0081】
次に、サーバ装置40は、電源電圧値が切替電圧値以下か否かを判断する(ステップS110)。サーバ装置40は、状態情報テーブルにおけるセンサ装置10Aの電池電圧値を参照する。切替電圧値よりも大きい場合(ステップS110:NO)、サーバ装置40は、第一予測計算処理を実行する(ステップS120)。第一予測計算処理では、上述した式(1)を用いて予想電池寿命が算出される。サーバ装置40は、状態情報テーブルにおけるセンサ装置10Aの消費電流値及び今の通信周期で1日に消費する想定電流値を参照する。そして、サーバ装置40は、算出したセンサ装置10Aの予想電池寿命を状態情報テーブルに登録(更新)して、処理を終了する。
【0082】
一方、切替電圧値以下の場合(ステップS110:YES)、サーバ装置40は、第二予測計算処理を実行する(ステップS130)。第二予測計算処理では、上述した式(2)、(3)を用いて予想電池寿命が算出される。サーバ装置40は、状態情報テーブルにおけるセンサ装置10Aの電源電圧値及び今の通信周期で1日に消費する想定電流値を参照する。そして、サーバ装置40は、算出したセンサ装置10Aの予想電池寿命を状態情報テーブルに登録(更新)して、処理を終了する。
【0083】
以上のように、電池の電圧値に基づいて、電池寿命の予測方法が消費電流積算値を用いた方法及び電池の電圧値を用いた方法のいずれか一方に切り替えられる。具体的には、電池電圧が降下してくる前は、消費電流積算値を用いた方法(第一予測計算)とし、電池電圧が降下してきた場合には電池の電圧値を用いた方法(第二予測計算)とすることができる。これにより、より正確な電池の寿命予測を行うことができる。
【0084】
なお、上述の実施形態では、消費電流積算値をセンサ装置が算出し、予想電池寿命をサーバ装置が算出していたが、電池寿命の予測のための各処理の分担は、特にこれに限定されるものではない。いずれの装置が実行してもよい。例えば、センサ装置が、電池寿命の予測のための各処理の全てを実行してもよい。なお、この場合、電池寿命の予測においてサーバ装置は不要である。
【0085】
また、上述の実施形態では、消費電流積算値を参照してセンサ装置の単位日数あたりの想定消費電流値(今の通信周期で1日に消費する想定電流値)を算出していたが、特にこれに限定されるものではない。実行された動作毎の想定消費電流値を参照して算出するようにしてもよい。例えば、所定タイミングから1日(24時間)の間に、センサ装置で実行された動作毎の想定消費電流値を積算した値を、今の通信周期で1日に消費する想定電流値とすればよい。この場合、例えば、センサ装置が上記値を算出すればよい。
【0086】
さらに、上述の実施形態では、センサ装置に内蔵された電池の寿命予測について説明したが、特にこれに限定されるものではない。本発明は、電池駆動の装置であれば、種々の装置に適用可能である。例えば、上述の実施形態の通信中継装置に適用してもよい。この場合、通信中継装置は、自身の各動作(中継動作等)で時間あたりに消費される電流値を示す電流値データテーブル等をメモリに記憶しておき、自身の消費電流積算値を算出すればよい。また、通信中継装置は、サーバ装置と通信する際、自身の消費電流積算値を周期的にサーバ装置に送信すればよい。
【0087】
また、上述の実施形態では、塩化チオニルリチウム電池が用いられていたが、特にこれに限定されるものではない。電池電圧と電池残量が比例関係にない一次電池であれば、本発明を適用可能である。
【0088】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、電池の電圧値に基づいて、第一予測計算及び第二予測計算の一方で算出された結果が予想電池寿命として用いられるが、第一予測計算及び第二予測計算の一方で算出された予想電池寿命を補正する構成を追加してもよい。
【0089】
電池寿命の補正は、例えば、センサ装置の受信状態時の通信待ち時間の履歴の変化に基づいて行われる。通信待ち時間は、センサ装置が受信状態を開始して、自身のデータ送信要求を通信中継装置から受信するまでの時間である。センサ装置のセンサ装置の制御部及び計時・起動制御部は、待ち時間計時手段として機能し、周期的に実行される受信状態における通信待ち時間を履歴データとしてメモリに記憶しておく。そして、センサ装置は、周期的に、計測データ、電源電圧値及び消費電流積算値等とともに、履歴データをサーバ装置に送信する。
【0090】
サーバ装置は、受信した履歴データも、消費電流積算値等と同様にDBに登録しておく。サーバ装置(制御部)は、補正手段とし機能し、1台のセンサ装置に対して第一予測計算及び第二予測計算の一方で算出した結果(予想電池寿命)を、このセンサ装置の履歴データに基づいて補正する。具体的には、履歴データから、実際の通信待ち時間が、標準の通信待ち時間よりも長くなる傾向にある場合、算出電池寿命を減少させる方向に補正して最終的な電池寿命とする。逆に、履歴データから、実際の通信待ち時間が、標準の通信待ち時間よりも短くなる傾向にある場合、算出された電池寿命を増加させる方向に補正する。
【0091】
例えば、1台の通信中継装置にn台のセンサ装置が接続されている場合、m台目に通信を行うセンサ装置の標準の通信待ち時間は、{1台の通信時間×(m-1)}となる。「1台の通信時間」は、1台のセンサ装置が通信中継装置と計測データの送信のための通信を開始して終了するまでの標準的な時間(固定値)である。サーバ装置は、センサ装置の履歴データから、このセンサ装置の平均の通信待ち時間を算出し、標準の通信待ち時間との差分から補正量(補正日数)を算出する。例えば、(差分×定数K)として補正量を算出すればよい(定数Kは、任意の数)。そして、予想電池寿命に補正量を加算又は減算することで、最終的な予想電池寿命を算出する。
【0092】
通信経路上にトラック等の障害物があるなどして通信障害等が発生した場合、通信中のセンサ装置はリトライを行う。このとき、順番待ちしている他のセンサ装置は通信待ち時間が長くなっていくので、電力消費も増加して電池の寿命が短くなる。したがって、通信待ち時間の変化履歴(傾向)に基づいて補正を行うことで、より正確な電池寿命を予測することができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
この発明は、電池から供給される電力を消費して1種類以上の動作を行う装置の電池寿命を予測するのに有用である。
【符号の説明】
【0094】
10 センサ装置
11 制御部
12 通信制御部
13 メモリ
14 計時・起動制御部
15 センサ部
16 電源部
20 通信中継装置
21 制御部
22 通信制御部
23 メモリ
24 計時・起動制御部
25 センサ部
26 電源部
40 サーバ装置
41 制御部
42 通信制御部
43 データベース(DB)
100 通信システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12