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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】流体制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 37/00 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
F16K37/00 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020131503
(22)【出願日】2020-08-03
(65)【公開番号】P2022028215
(43)【公開日】2022-02-16
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【弁理士】
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【弁理士】
【氏名又は名称】狩生 咲
(72)【発明者】
【氏名】丹野 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕也
(72)【発明者】
【氏名】芝田 裕登
(72)【発明者】
【氏名】中田 知宏
(72)【発明者】
【氏名】篠原 努
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-529045(JP,A)
【文献】特開平10-103235(JP,A)
【文献】特開昭56-134682(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0211097(US,A1)
【文献】特開2002-161989(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102606799(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 7/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部が変位することで弁開および弁閉を切り替え、流路における流体の流通および遮断を制御するダイヤフラムと、
バルブボディ部と、
前記バルブボディ部の内側に載置され、流体制御装置内の温度を検出するための温度センサと、
前記温度センサによって検出される、弁開時の測定温度および弁閉時の測定温度を対比することで異常の有無を判定する異常判定手段と、
を有する、流体制御装置。
【請求項2】
前記異常判定手段は、前記弁開時の測定温度と、前記弁閉時の測定温度との差が閾値以上であるとき、異常が生じていると判定する、
請求項1記載の流体制御装置。
【請求項3】
前記ダイヤフラムを押圧するダイヤフラム押さえをさらに備え、
前記ダイヤフラム押さえは、弁開時および弁閉時のいずれにおいても前記ダイヤフラムの可動部に当接している、
請求項1又は2記載の流体制御装置。
【請求項4】
前記ダイヤフラムと前記ダイヤフラム押さえは、弁開時および弁閉時の接触面積が同一である、
請求項3記載の流体制御装置。
【請求項5】
前記ダイヤフラムの周縁部に当接して前記ダイヤフラムを保持する押さえアダプタをさらに備え、
前記押さえアダプタは、弁開時および弁閉時のいずれにおいても前記ダイヤフラムの可動部に当接しない、
請求項1乃至4のいずれかに記載の流体制御装置。
【請求項6】
前記ダイヤフラムと前記押さえアダプタは、弁開時および弁閉時の接触面積が同一である、
請求項5記載の流体制御装置。
【請求項7】
前記バルブボディ部の内側に載置され、前記流体制御装置内の圧力を検出する圧力センサをさらに備え、
前記異常判定手段は、前記温度センサによる測定結果と、前記圧力センサの測定結果とに基づいて、発生している異常の種類を判定する、
請求項1乃至6のいずれかに記載の流体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器内にセンサを備えると共に、当該センサによって検出したデータを出力可能な流体制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハの表面に薄膜を形成する成膜処理においては薄膜の微細化が求められ、近年では原子レベルや分子レベルの厚さで薄膜を形成するALD (Atomic Layer Deposition)という成膜方法が使われている。
しかし、そのような薄膜の微細化は流体制御装置に今まで以上の高頻度な開閉動作を要求しており、その負荷により流体の漏出等を引き起こしやすくなる場合がある。そのため、流体制御装置における流体の漏出を容易に検知できる技術への要求が高まっている。
また、漏出を容易に検知するだけでなく、動作に伴うデータを収集することができれば、従来は考慮できていなかった流体制御装置の使用頻度や個体差などを把握し、流体制御装置をこれまで以上に精度よく制御することも可能と考えられる。
【0003】
この点、特許文献1では、圧力センサ、温度センサおよびリミットスイッチによって検出されたデータを処理する情報処理モジュールが内部に流用される流体制御装置が開示されている。特許文献2には、流体制御装置の動作情報を取得し、異常発生との相関関係を分析する動作分析システムが開示されている。特許文献3には、内部のセンサに接続された通信用のケーブルを外側へ導出させるスリットを有する流体制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2018/168872号公報
【文献】国際公開2018/168873号公報
【文献】国際公開2020/012828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、流体制御装置に流れる流体の温度管理が厳密になっており、測定精度の要求が高まっているが、流体制御装置に使われる機器が集積化されているので、各機器にセンサを外付けで搭載することができない。本発明は、簡易な構成で流体制御装置の温度測定の異常を検出することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る流体制御装置は、可動部が変位することで弁開および弁閉を切り替え、流路における流体の流通および遮断を制御するダイヤフラムと、バルブボディ部と、前記バルブボディ部の内側に載置され、流体制御装置内の温度を検出するための温度センサと、前記温度センサによって検出される、弁開時の測定温度および弁閉時の測定温度を対比することで異常の有無を判定する異常判定手段と、を有する。
【0007】
前記異常判定手段は、前記弁開時の測定温度と、前記弁閉時の測定温度との差が閾値以上であるとき、異常が生じていると判定するものとしてもよい。
【0008】
前記ダイヤフラムを押圧するダイヤフラム押さえをさらに備え、前記ダイヤフラム押さえは、弁開時および弁閉時のいずれにおいても前記ダイヤフラムの可動部に当接しているものとしてもよい。
【0009】
前記ダイヤフラムと前記ダイヤフラム押さえは、弁開時および弁閉時の接触面積が同一であるものとしてもよい。
【0010】
前記ダイヤフラムの周縁部に当接して前記ダイヤフラムを保持する押さえアダプタをさらに備え、前記押さえアダプタは、弁開時および弁閉時のいずれにおいても前記ダイヤフラムの可動部に当接しないものとしてもよい。
【0011】
前記ダイヤフラムと前記押さえアダプタは、弁開時および弁閉時の接触面積が同一であるものとしてもよい。
【0012】
前記温度センサを収容するボンネットをさらに備え、前記ボンネットはアルミ材により形成されているものとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る流体制御装置によれば、簡易な構成で流体制御装置の異常を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る流体制御装置を示した外観斜視図である。
図2】本実施形態に係る流体制御装置の内部構造を示した縦断面図であって、弁開状態を示す図である。
図3】本実施形態に係る流体制御装置の内部構造を示した部分拡大縦断面図であって、(a)弁開状態、(b)弁閉状態を示す。
図4】本実施形態に係る流体制御装置が有するボンネットを示した斜視図である。
図5】本実施形態に係る流体制御装置の機能を示した機能ブロック図である。
図6】本実施形態の変形例に係る流体制御装置、及び当該流体制御装置と通信可能に構成されたサーバが備える機能を示した機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る流体制御装置について、図を参照して説明する。
なお、以下の説明では、便宜的に図面上での方向によって部材等の方向を上下左右と指称することがあるが、これらは本発明の実施あるいは使用の際の部材等の方向を限定するものではない。
図1に示されるように、本実施形態に係る流体制御装置Vは、流体制御装置Vの内部動作を検出するセンサを内蔵し、他の端末等と有線による通信を実行するエア作動式のダイレクトダイヤフラムバルブである。
なお、ここにいう他の端末には、サーバ等の所謂コンピュータのほか、他の流体制御装置や流量制御装置などの機器や装置が含まれる。
【0016】
本実施形態に係る流体制御装置Vは内部動作に関するデータを取得可能な機器であって、図1および図2に示されるように、バルブボディ部1、第1ボンネット部2、第2ボンネット部4、アクチュエータ部5を備える。
【0017】
●バルブボディ部1
図1および図2に示されるように、バルブボディ部1は、流路が形成された基台部11と、基台部11上に設けられた略円筒形状の円筒部12と、環状のシート13からなる。
基台部11は平面視矩形状からなり、複数の流体制御装置Vによってユニット化された流体制御装置を構成する場合には、基板あるいはマニホールドブロック上に設置される部分となる。
【0018】
円筒部12は、第1ボンネット部2が配設される側の端面が開口した中空形状からなり、中空の内部は第1ボンネット部2が収容される凹部12aを構成する。凹部12aの下方及び基台部11内には、流体が流入する流入路111と流体が流出する流出路113、及び当該流入路111と流出路113に連通する弁室112が形成されている。流入路111、流出路113、及び弁室112は、流体が流通する流路を一体的に構成している。
【0019】
環状のシート13は、流入路111の周縁に設けられている。シート13上には、シート13に当接離反することによって流入路111および流出路113において流体を流通させたり、流通を遮断させたりするダイヤフラム22が設けられている。
【0020】
●第1ボンネット部2
図2に示されるように、第1ボンネット部2は、バルブボディ部1の凹部12a内に収容した状態に配設される。
この第1ボンネット部2は、ダイヤフラム22、ディスク23、センサボンネット24、ダイヤフラム押さえ25、および押さえアダプタ26を備える。
【0021】
図3(a)および(b)に示すように、ダイヤフラム22は、ステンレス、Ni-Co系合金等の金属やフッ素系樹脂からなる、中央部221が凸状に膨出した球殻状の部材であり、流入路111および流出路113と第2ボンネット部4が動作する空間とを隔離している。
【0022】
このダイヤフラム22は、駆動圧としての駆動流体が供給されてダイヤフラム押さえ25による押圧から開放されると、自身の復元力や流路内の圧力によって中央部221がシート13から離反する方向に変位してシート13から離反する。その結果、弁室112が開放され、流入路111と流出路113が連通した状態となる。一方、駆動圧としての駆動流体の供給が止まってダイヤフラム22がダイヤフラム押さえ25によって押圧されると、ダイヤフラム22の中央部221がシート13に当接する方向に変位してシート13に当接する。その結果、弁室112が遮断され、流入路111と流出路113が遮断された状態となる。
【0023】
すなわち、ダイヤフラム22の中央部221は、駆動流体の供給により変位する可動部となっており、周縁部222は、駆動流体が供給されても変位しない非可動部である。
【0024】
ダイヤフラム22の周縁部222は、後述する押さえアダプタ26と当接し、この押さえアダプタ26とバルブボディ部1の凹部12a内部に上向きに設けられている突起部121a(図3(a)および(b)参照)とに挟持されている。
【0025】
ディスク23は、ダイヤフラム22の上側に設けられ、センサボンネット24により上下動可能に支持されると共に、摺動するステム43に連動してダイヤフラム22の中央部を押圧する。
【0026】
ディスク23の外周面上にはOリングO1が取り付けられており、このOリングO1はディスク23とセンサボンネット24の内周面をシールしている。
【0027】
ディスク23の上部は外径が小さくなっており、マグネットホルダM10が貫挿されている。マグネットホルダM10は一部が切り欠かれた略円環状の部材であり、切り欠かれた部分に磁石が取り付けられている。この磁石は、センサボンネット24の凹部にはめ込まれてなるセンサホルダ241に取り付けられた磁性体M2と共に後述する磁気センサMを構成する。また、マグネットホルダM10は外周に凹部を備え、センサホルダ241を貫通するボルト等の位置決め部材が当該凹部を押圧することで、マグネットホルダM10の位置ずれが防止される。ディスク23上端部であってマグネットホルダM10の上方にはロックナット231が嵌められていて、マグネットホルダM10が抜け出るのを防止している。
【0028】
ディスク23の下端にはダイヤフラム押さえ25が連結されている。ダイヤフラム押さえ25は、下面側が下に膨らんだ凸面となっていて、その下面側においてダイヤフラム22の中央部221に当接し、摺動するステム43に連動してダイヤフラム22を押圧する。
【0029】
図3(a)および(b)に示されるように、ダイヤフラム押さえ25の下端は、弁開時および弁閉時のいずれにおいても、ダイヤフラム22の中央部221に当接している。すなわち、ダイヤフラム押さえ25とダイヤフラム22の接触面積は、弁開時と弁閉時とで同一面積である。この構成によれば、弁開時と弁閉時とでダイヤフラム22の伝熱面積を一定にし、後述する温度センサTによる正確な測温が可能である。
【0030】
図2および図4に示されるように、センサボンネット24は、略円筒状からなり、弁室112を覆ってバルブボディ部1の凹部12a内に収容される。
センサボンネット24の内部には、ディスク23が貫挿される貫挿孔241aが中心部に形成されている。
また、センサボンネット24には、圧力センサPおよび温度センサTに連通する連通孔241dが設けられている。連通孔241dを介して圧力センサPおよび温度センサTが設けられていることにより、ダイヤフラム22、ディスク23およびセンサボンネット24によって画定された空間内の圧力および温度を測定することができる。
なお、本実施形態では、温度センサTはセンサボンネット24内部に設けられているものとしたが、温度センサTはバルブボディ部1の内側にあればよく、特に、少なくとも温度センサTの温度の検出部分がバルブボディ部1の内側に載置されていればよい。この構成によれば、流体制御装置Vを設置するだけで、別途温度センサの設置作業等を行うことなく、当該流体制御装置V内の温度を正確に測定することができる。
【0031】
また、センサボンネット24の側面から、センサボンネット24内部の圧力センサP、温度センサTおよび磁気センサMと接続されるフレキシブルケーブル60が外側へ伸び出ている。
【0032】
センサボンネット24の内周面には、センサホルダ241に保持された磁性体M2が取り付けられていて、ディスク23に取り付けられた磁石と共に後述する磁気センサMを構成する。
【0033】
センサボンネット24は、アルミ材から構成されている。アルミ材は、例えばSUS等に比べて熱伝導率が高いため、センサボンネット24内部の温度センサTに、流体温度をより正確に伝達することができる。また、アルミ材からなるセンサボンネット24によれば、磁化しないため、温度センサTおよび圧力センサPに対する磁気センサMの影響を小さくすることができる。
【0034】
押さえアダプタ26は、ダイヤフラム22の周縁部222と当接し、ダイヤフラム22をバルブボディ部1の凹部12a内の突起部121aとの間で挟持する。また、周縁部222を上方から押さえつけ、流入路111および流出路113を流れる流体が、周縁部222近傍から外部に漏出するのを防止している。
【0035】
押さえアダプタ26は、ダイヤフラム22の弁開時および弁閉時のいずれにおいても、ダイヤフラム22の可動部分、言い換えれば中央部221に触れない。また、押さえアダプタ26とダイヤフラム22との接触面積は、弁開時および弁閉時で同一である。この構成によれば、弁開時と弁閉時とでダイヤフラム22の伝熱面積を一定にすることができる。ひいては、ダイヤフラム22からの伝導熱が一定になるため、弁の開閉状態に関わらず、後述する温度センサTによる正確な測温が可能である。
【0036】
●第2ボンネット部4
第2ボンネット部4は、第1ボンネット部2上に配設される。
図2に示されるように、この第2ボンネット部4は、第2ボンネットボディ41、ステム43、バネ44を備える。
【0037】
第2ボンネットボディ41は、ステム43とセンサボンネット24の間に介装される。
この第2ボンネットボディ41は略円柱形状からなり、中心部には、ステム43とディスク23が貫挿される貫挿孔41aが長さ方向に沿って設けられている。図2及び図3に示されるように、貫挿孔41a内ではステム43とディスク23が当接しており、ディスク23はステム43の上下動に連動して上下動する。第2ボンネットボディ41には、基台部11とは反対側の一端が開口すると共に、外側から凹部12a側へ貫通したスリット12bが設けられている。
【0038】
ステム43は、駆動圧の供給と停止に応じて上下動し、ディスク23およびダイヤフラム押さえ25を介してダイヤフラム22をシート13に当接離反させる。
ステム43は、上面側においてバネ44の付勢力を受ける。
【0039】
バネ44は、ステム43の外周面上に巻回されており、ステム43の上面に当接してステム43を下方、即ちダイヤフラム22を押下する方向に付勢している。
【0040】
●アクチュエータ部5
アクチュエータ部5は駆動流体が供給される開口部51を有する有底円筒形の部材である。アクチュエータ部5の内部空間には、内壁に沿って上下動可能な円盤状のピストン54が複数収容されていて、ピストン54の間は開口部51に連通する複数の駆動圧導入室52となっている。また、アクチュエータ部5の内部空間には、アクチュエータ部5外部と連通する駆動流体供給口LPが形成されている。開口部51は、ステム43の上端面に形成される開口部43aに接続されている。
【0041】
ここで、駆動圧の供給と停止に伴う弁の開閉動作について言及する。開口部42aに接続された導入管(図示省略)から駆動流体が供給されると、駆動流体はステム43内の駆動圧導入路432を介して駆動圧導入室52に導入される。これに応じて、ステム43はバネ44の付勢力に抗して上方に押し上げられる。これにより、ダイヤフラム22がシート13から離反して開弁した状態となり、流体が流通する。
一方、駆動圧導入室52に駆動流体が導入されなくなると、ステム43がバネ44の付勢力に従って下方に押し下げられる。これにより、ダイヤフラム22がシート13に当接して閉弁した状態となって、流体の流通が遮断される。
【0042】
●センサ
流体制御装置Vは、機器内の動作を検出するためのセンサとして、センサボンネット24の内部に、圧力センサPと、温度センサTと、磁気センサMと、を備えている。各センサは、センサボンネット24の連通孔241dを介してセンサボンネット24の貫挿孔241aに面していて、ダイヤフラム22、ディスク23およびセンサボンネット24によって画定された空間に連通している。これにより圧力センサPは、当該空間内の圧力を検出することができる。
なお、圧力センサPが連通孔241dに通じる箇所にはパッキン等のシール部材が介装されており、気密状態が担保されている。
【0043】
温度センサTは、ダイヤフラム22、ディスク23およびセンサボンネット24によって画定された空間の温度を測定する。温度センサTを有する流体制御装置Vによれば、流体の制御と共に流体の温度を測定することができる。
【0044】
センサボンネット24の貫通孔241eには磁性体M2が取り付けられており、この磁性体M2は、ディスク23に取り付けられた磁石と共に磁気センサMを構成する。
この磁気センサMによって以下の通り、弁の開閉動作、及びステム43の移動量を検知することができる。即ち、マグネットホルダM10に保持される磁石がディスク23の上下動に応じて摺動するのに対し、磁性体M2はセンサボンネット24と共にバルブボディ部1内に固定されている。この結果、ディスク23の上下動に従って上下動するマグネットホルダM10に保持される磁石と、位置が固定されている磁性体M2との間に発生する磁界の変化に基づき、ディスク23およびダイヤフラム押さえ25の動作、ひいては弁の開閉動作、及びステム43の移動量を検知することができる。
なお、本実施形態では磁気センサMを用いたが、これに限らず、他の実施形態においては、光学式の位置センサ等、他の種類のセンサを用いることもできる。
【0045】
圧力センサP、温度センサTと磁気センサMには夫々、可撓性を有する通信用のフレキシブルケーブル60の一端が接続しており(磁気センサMについては、詳細には磁性体M2に接続している)、フレキシブルケーブル60の他端は、流体制御装置Vの外側に設けられた回路基板に接続している。さらに、回路基板には外部端子接続用の略矩形状のコネクタが設けられており、これにより、圧力センサP、温度センサT、および磁気センサMによって測定されたデータを抽出することができる。コネクタの種類や形状は、各種の規格に応じて適宜に設計し得る。
【0046】
このような構成からなる流体制御装置Vによれば、圧力センサP、温度センサT及び磁気センサMによって検出されたデータを外部へ出力させることができる。そして、このようなデータは、弁の開閉動作、ダイヤフラム22の破損等によるリーク、流体制御装置Vの経年劣化や個体差などを把握するための情報となり得る。
【0047】
●制御部
図5に示すように、本実施形態にかかる流体制御装置Vは、センサによって検出されたデータを処理する制御部70を有する。制御部70は、機能ブロックとして異常判定部71を有する。なお、図6に示す別の実施例のように、流体制御装置Vは通信処理部72を備え、サーバ80の通信処理部82と通信を行ってもよい。図6の例においては、流体制御装置Vとサーバ80とは、ネットワークNW1、中継装置C、およびネットワークNW2を介して接続されている。そして、このサーバ80が異常判定部71および通信処理部82を有するものとしてもよい。
【0048】
異常判定部71は、センサによって検出されたデータに基づいて、流体制御装置Vおよび当該機器に接続されている周辺装置等の異常を判定する機能部である。異常判定部71は、例えば、参照用テーブル等に保持された所定の閾値と、圧力センサPによって検出された圧力の検出値とを比較することにより、流体の漏出等に起因した流体制御装置Vの異常を判別する処理を実行する。例えば、通常使用時において、流体制御装置Vの弁の開閉で想定される内部空間内の圧力の限界を所定の閾値としておく。そして、内部空間内の圧力の検出値が当該閾値を超えた場合に、流体制御装置Vに異常が生じたものと判別する。
【0049】
参照テーブルに、弁開時の流体温度の許容範囲と、弁閉時の流体温度の許容範囲との少なくともいずれかを記憶しておき、異常判定部71は、弁開時または弁閉時の流体温度と当該許容範囲とを比較して、許容範囲を超えているときに異常が生じたものと判別してもよい。
【0050】
異常判定部71は、弁開時の流体温度と、弁閉時の流体温度と、を対比して、異常の有無を判定する。例えば、異常判定部71は、弁開時の流体温度と、弁閉時の流体温度との差分における許容範囲を記憶していて、弁開時と弁閉時の差分が当該許容範囲を超えているときに異常が生じたものと判別してもよい。
【0051】
なお、本構成においては、ダイヤフラム22とダイヤフラム押さえ25の接触面積が弁開時と弁閉時とで同一である。また、ダイヤフラム22と押さえアダプタ26の接触面積が弁開時と弁閉時とで同一である。このような構成によれば、ダイヤフラム22からダイヤフラム押さえ25への伝熱量、また、ダイヤフラム22から押さえアダプタ26への伝熱量は、伝熱面積が同一なので、それぞれの伝熱量を同一にすることができるので、弁開時の流体温度と弁閉時の流体温度との差が小さく構成できる。したがって、弁開時の流体温度と弁閉時の流体温度との差分が閾値を超えているとき、異常が生じたものと判別してもよい。また、弁開時と弁閉時の流体温度が同一である前提で、弁開時の流体温度と弁閉時の流体温度とが同一か否かによって異常の有無を判定してもよい。
【0052】
このような構成によれば、温度センサTによる流体制御装置Vの異常検知が可能である。例えばダイヤフラム22が破損すると、測温結果が異常値を示す。また、温度センサTによれば、流体制御装置V自体の異常がなくても、流体制御装置Vに接続されている周辺装置の異常を検知可能である。例えば、流体の設定温度と、温度センサTの測温結果に大きな差がある場合、流体の温度を管理する装置、例えばヒータの異常が発生している可能性がある。そこで、流体制御装置Vは、ヒータの異常の可能性を管理者に報知することができる。また、異常判定部71は、温度センサTによる測定結果と、圧力センサPおよび磁気センサMの少なくともいずれかの測定結果とに基づいて、発生している異常の種類を判定してもよい。例えば、圧力センサPの測定結果と温度センサTの測定結果の両方に異常がある場合、ダイヤフラム22が割れていると判定してもよい。圧力センサPの測定結果には異常がない一方、温度センサTの測定結果に異常がある場合には、ヒータ等の周辺装置に異常があると判定してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 バルブボディ部
11 基台部
12 円筒部
12a 凹部
12b スリット
13シート
2 ボンネット部
22 ダイヤフラム
23 ディスク
24 センサボンネット
25 ダイヤフラム押さえ
26 押さえアダプタ
4 第2ボンネット部
41 第2ボンネットボディ
43 ステム
44 バネ
60 フレキシブルケーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6