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特許7541716作業支援装置、作業支援プログラム、及び締付工具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】作業支援装置、作業支援プログラム、及び締付工具
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/14 20060101AFI20240822BHJP
   B25B 23/144 20060101ALI20240822BHJP
   B25B 23/142 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B25B23/14 610C
B25B23/144
B25B23/142
B25B23/14 620H
B25B23/14 620C
B25B23/14 610K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020131554
(22)【出願日】2020-08-03
(65)【公開番号】P2022028249
(43)【公開日】2022-02-16
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000161909
【氏名又は名称】京都機械工具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】大河 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 喜晴
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-009750(JP,A)
【文献】特開2013-094898(JP,A)
【文献】特開昭60-056872(JP,A)
【文献】特開2010-194702(JP,A)
【文献】特開2018-202521(JP,A)
【文献】特開2002-052477(JP,A)
【文献】米国特許第04768388(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B23/00-23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
締付工具による締付作業を支援する作業支援装置であって、
前記締付工具の締付トルクを時系列的に取得し、その時間変化を表す波形データを生成する波形データ生成部と、
前記波形データが示す波形において所定の設定トルクに到る前の傾きである実傾きを算出する実傾き算出部と、
前記実傾きの上限値である閾値を記憶する閾値記憶部と、
前記実傾きが前記上限値よりも大きい場合に、締付作業が正しい速さで行われていないと判定する作業判定部と、
前記作業判定部により締付作業が正しい速さで行われていないと判定された場合に、そのことを報知する報知部とを備えることを特徴とする作業支援装置。
【請求項2】
前記実傾きに基づいて、その実傾きが算出された後に要する作業時間である推定作業時間を推定する作業時間推定部をさらに備え、
前記作業判定部が、前記推定作業時間に基づいて締付作業が正しい速さで行われているか否かを判定する、請求項1記載の作業支援装置。
【請求項3】
前記作業判定部が、締付作業が正しい速さで行われているか否かを、その締付作業の途中に判定するものであり、
前記報知部が、前記作業判定部により締付作業が正しい速さで行われていないと判定されたことを、その締付作業の途中に報知する、請求項1又は2のうち何れか一項に記載の作業支援装置。
【請求項4】
前記波形データが、締付トルクの時間変化を表すものであり、
前記実傾き算出部が、前記波形データの示す波形において締付トルクが設定トルクの80%に達する前の傾きを前記実傾きとして算出する、請求項記載の作業支援装置。
【請求項5】
前記閾値記憶部が、前記実傾きの上限値及び下限値を前記閾値として記憶しており、
前記作業判定部が、前記上限値よりも前記実傾きが大きい場合のみならず、前記下限値よりも前記実傾きが小さい場合にも、締付作業が正しく行われていないと判定する、請求項記載の作業支援装置。
【請求項6】
請求項1乃至のうち何れか一項に記載の作業支援装置を備えることを特徴とする締付工具。
【請求項7】
締付工具による締付作業を支援する作業支援プログラムであって、
前記締付工具の締付トルクを時系列的に取得し、その時間変化を表す波形データを生成する波形データ生成部と、
前記波形データが示す波形において所定の設定トルクに到る前の傾きである実傾きを算出する実傾き算出部と、
前記実傾きの上限値である閾値を記憶する閾値記憶部と、
前記実傾きが前記上限値よりも大きい場合に、締付作業が正しい速さで行われていないと判定する作業判定部と、
前記作業判定部により締付作業が正しい速さで行われていないと判定された場合に、そのことを報知する報知部としての機能をコンピュータに発揮させることを特徴とする作業支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締付作業を支援する作業支援装置並びに作業支援プログラム、及び、締付工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のトルクレンチとしては、例えば締付トルクが設定トルクに達した際にトグルが作動するように構成されたものがある(特許文献1)。
【0003】
このようなトルクレンチを用いる場合、作業者は、トグルを頼りに作業するところ、トグルが作動するまでは作業をなるべく速く進めようとしがちである。
【0004】
その結果、例えば1本1本のボルト等に着目すると、作業者や作業の時間帯(例えば作業の開始直後や作業の終了間際など)によって、最終的には設定トルクに達していれども、設定トルクに到るまでの締付トルクのかかり方にばらつきが生じてしまう。そうすると、それぞれのボルト等にかかる軸力にもばらつきが生じるので、作業全体を通してみると、複数の作業対象に対する締付作業の質の均一性が低下し、ひいては作業全体としての締付精度の低下を招来する。
【0005】
なお、このように締付トルクのかかり方にばらつきが生じるといった課題は、トグルを備えたトルクレンチに限らず、例えばデジタル式トルクレンチにおいても共通して生じるものである。さらにいえば、締付トルクによりネジ締結を管理するトルク法に限らず、締付回転角でネジ締結を管理する回転角法においても共通して生じ得るものである。
【0006】
しかしながら、これまでの締付工具では、トルク法において目標とする設定トルクや回転角法において目標とする設定締付回転角に到るまで、締付トルクのかかり方や締付回転角の増え方が適切であるか否かを判断しながら作業を進められるように構成されたものはなく、上述した課題を解決するには作業者の経験や勘に頼らざるを得なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-118955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本願発明は、作業者の経験や勘に頼ることなく上記問題点を解決するべくなされたものであり、設定トルクや設定締付回転角に到るまでの締付作業を支援して、従来よりも締付作業の質を均一にできるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本願発明に係る作業支援装置は、締付工具による締付作業を支援するものであって、前記締付工具の締付トルク又は締付回転角を時系列的に取得し、その時間変化を表す波形データを生成する波形データ生成部と、前記波形データが示す波形の傾きである実傾きを算出する実傾き算出部と、前記実傾きに基づいて締付作業が正しく行われているか否かを判定する作業判定部と、前記作業判定部により締付作業が正しく行われていないと判定された場合に、そのことを報知する報知部とを備えることを特徴とするものである。
【0010】
このように構成された作業支援装置によれば、これまでにない波形の実傾きを締付作業の判定に用いており、締付作業が正しく行われていない場合にはそのことを報知するように構成されているので、作業者は締付トルクのかかり方や締付回転角の増え方が適切であるか否かを判断しながら作業を進めることができる。
これにより、締付トルク又は締付回転角の波形において設定トルクや設定締付回転角に到るまでの傾きを実傾きとして算出することで、設定トルクや設定締付回転角に到るまでの締付作業を支援することが可能となり、従来よりも1本1本のボルト等に対する締付作業の質を均一にすることができ、ひいては作業全体としての締付精度の向上を図れる。
【0011】
実傾きを用いた具体的な判定態様の一例としては、前記実傾きの閾値を記憶する閾値記憶部をさらに備え、前記作業判定部が、前記実傾きと前記閾値とを比較して、締付作業が正しく行われているか否かを判定する態様を挙げることができる。
【0012】
また、実傾きを用いた別の判定態様の一例としては、前記実傾きに基づいて、その実傾きが算出された後に要する作業時間である推定作業時間を推定する作業時間推定部をさらに備え、前記作業判定部が、前記推定作業時間に基づいて締付作業が正しく行われているか否かを判定する態様を挙げることができる。
【0013】
前記作業判定部が、締付作業が正しく行われているか否かを、その締付作業の途中に判定するものであり、前記報知部が、前記作業判定部により締付作業が正しく行われていないと判定されたことを、その締付作業の途中に報知することが好ましい。
このような構成であれば、例えば締付作業が正しくなければ作業を終える前にやり直すことができるので、無駄な作業を減らすことができ、作業効率の向上をも図れる。
【0014】
より具体的な実施態様としては、前記実傾き算出部が、前記波形データの示す波形において所定の設定トルク又は所定の設定締付回転角に到る前の傾きを前記実傾きとして算出する態様を挙げることができる。
このような構成であれば、締付トルクが設定トルクに到るまで或いは締付回転角が設定締付回転角に到るまでの締付作業を支援することができる。
【0015】
ところで、例えばトルクレンチの精度検査の一例として、トルクレンチの締付作業により生じた実際の実トルクと、そのトルクレンチに予め設定しておいた設定トルクとを比較する検査があり、この検査における検査基準の一例として、締付トルクが設定トルクの80%から設定トルクに達するまでに1.5秒以上かけなければならないといったものがある。
そこで、前記波形データが、締付トルクの時間変化を表す場合において、前記実傾き算出部が、前記波形データの示す波形において締付トルクが設定トルクの80%に達する前の傾きを前記実傾きとして算出することが好ましい。
このような構成であれば、上述した検査基準やこれに準じた規則に従った締付作業を行うことができ、その結果、締付精度の向上を図れる。
【0016】
上述した検査基準に従った締付作業を行えるようにするための具体的な態様としては、前記閾値記憶部が、前記実傾きの上限値を前記閾値として記憶しており、前記作業判定部が、前記上限値よりも前記実傾きが大きい場合に、締付作業が正しく行われていないと判定する態様を挙げることができる。
【0017】
締付作業の質の均一性をさらに向上させるためには、前記閾値記憶部が、前記実傾きの上限値及び下限値を前記閾値として記憶しており、前記作業判定部が、前記上限値よりも前記実傾きが大きい場合のみならず、前記下限値よりも前記実傾きが小さい場合にも、締付作業が正しく行われていないと判定することが好ましい。
【0018】
また、上述した作業支援装置を備える締付工具も本発明の1つである。
さらに、本発明に係る作業支援プログラムは、締付工具による締付作業を支援するプログラムであって、前記締付工具の締付トルク又は締付回転角を時系列的に取得し、その時間変化を表す波形データを生成する波形データ生成部と、前記波形データが示す波形の傾きである実傾きを算出する実傾き算出部と、前記実傾きに基づいて締付作業が正しく行われているか否かを判定する作業判定部と、前記作業判定部により締付作業が正しく行われていないと判定された場合に、そのことを報知する報知部としての機能をコンピュータに発揮させることを特徴とするものである。
このように構成された締付工具や作業支援プログラムにおいても、上述した作業支援装置と同様の作用効果を発揮させることができる。
【発明の効果】
【0019】
このように構成した本発明によれば、設定トルクや設定締付回転角に到るまでの締付作業を支援して、従来よりも締付作業の質を均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態における締付工具の構成を示す模式図。
図2】同実施形態の作業支援装置の機能を示す機能ブロック図。
図3】同実施形態の作業支援装置の動作を示すフローチャート。
図4】同実施形態の波形データが示す波形の一例を示す図。
図5】その他の実施形態の作業支援装置の機能を示す機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明に係る作業支援装置の一実施形態について説明する。
【0022】
本実施形態の作業支援装置100は、図1に示すように、締付工具Xによる締付作業を支援するものであり、複数回の作業における作業の均一性の向上を図るためのものである。
【0023】
まず、作業支援装置100を説明する前に、締付工具Xについて簡単に説明する。
締付工具Xは、例えばボルト、ナット、ネジ等の締付対象を締め付けるものであり、具体的にはトルクレンチやトルクドライバー等である。以下では、トルクレンチを例に挙げて説明する。
【0024】
トルクレンチXは、締付対象の締付トルクを検出するトルクセンサSを少なくとも備えたものである。この実施形態のトルクレンチXは、締付トルクが所定の設定トルクに達すると作動するトグル(不図示)をさらに備えたものである。なお、締付工具Xとしては、トグルを備えることなく、トルクセンサSを備えたデジタル式のものであっても良い。
【0025】
次に、作業支援装置100について説明する。
作業支援装置100は、上述したトルクセンサSから該トルクセンサSにより検出された締付トルクの大きさを示す検出データを取得するものであり、物理的には、CPU、メモリ、AD変換器等を備えたものである。
【0026】
本実施形態では、図1に示すように、上述した締付工具Xが作業支援装置100を備えてなり、具体的には、締付工具Xのケーシング内に作業支援装置100がトルクセンサSとともに内蔵されている。
【0027】
然して、この作業支援装置100は、上述したメモリに格納された作業支援プログラムに従ってCPUやその周辺機器が協働することにより、図2に示すように、波形データ生成部1、実傾き算出部2、閾値記憶部3、作業判定部4、及び報知部5としての機能を発揮するように構成されている。
【0028】
以下、各部の機能の説明を兼ねて、図3のフローチャートを参照しながら、作業支援装置100の動作について説明する。
【0029】
まず、波形データ生成部1は、締付工具Xの締付トルクを時系列的に取得し、その時間変化を表す波形データを生成する(S1)。
ここでの波形データは、図4に示すように、一方の軸(横軸)を時間とし、他方の軸(縦軸)を締付トルクの大きさとしたグラフに締付トルクをプロットしてなるトルク波形を示すものである。本実施形態では、波形データ生成部1が、上述したトルクセンサSにより検出された検出データを逐次取得し、取得した検出データを用いて波形データをリアルタイムで生成・更新するように構成されている。なお、本実施形態の締付工具Xはトグルを備えるものであり、トルク波形の初めに現れるピーク値がトグルが作動する締付トルク、すなわち設定トルクである。
【0030】
次に、実傾き算出部2が、波形データが示すトルク波形の傾きである実傾きを算出する(S2)。
この実傾き算出部2は、上述した波形データが示すトルク波形のうち、少なくとも設定トルクに到る前の傾きを実傾きとして算出するように構成されており、ここでは、締付トルクが設定トルクの80%に達する前の傾きを実傾きとして算出する。
なお、設定トルクは、予め作業者により設定されて例えば前記メモリに記憶されており、本実施形態ではトグルが作動する際の締付トルクである。
【0031】
実傾きの具体的な算出方法の一例について説明すると、例えば設定トルクよりも小さい第1トルク(第1の値)と、この第1トルクよりも大きく設定トルクよりも小さい第2トルク(第2の値)とを予め設定しておき、実傾き算出部2が、第1トルクと第2トルクとの差、及び、第1トルクから第2トルクに到るまでの時間を用いて実傾きを算出する態様を挙げることができる。なお、この態様では、第2トルクが設定トルクの80%以下であることが好ましい。
【0032】
また、別の算出方法としては、設定トルクよりも小さい第1トルク(第1の値)を予め設定しておき、実傾き算出部2が、第1トルクから所定時間経過した際の第2トルク(第2の値)を取得し、第1トルクと第2トルクとの差及び所定時間を用いて実傾き算出する態様を挙げることができる。
【0033】
なお、実傾き算出部2の具体的な態様は上記に限らず、例えば複数のタイミングで傾きを算出し、それらの傾きの平均値を実傾きとしても良いし、算出した傾きを実傾きとして逐次更新しても良い。
【0034】
閾値記憶部3は、前記メモリの所定領域に設定されており、実傾き算出部2により算出された実傾きの閾値を記憶するものである。
この閾値記憶部3は、入力手段を介して入力された閾値を記憶するものであり、少なくとも実傾きの上限値を閾値として記憶しており、ここでは実傾きの下限値も閾値として記憶している。すなわち、閾値である上限値と下限値との間の傾きが、実傾きの目標範囲として設定されている。なお、本実施形態では、上限値の設定に特徴があり、締め付け作業が速すぎる場合に、実傾きが上限値を上回るように設定されている。具体的には、実傾きが上限値を上回る場合に、その実傾きのまま締付作業を進めると設定トルクの80%から設定トルクに到るまでの時間が1.5秒を下回るように上限値を設定してある。言い換えると、設定トルクの80%から、上限値を上回る傾きで締付作業を進めると、作業が速すぎており、設定トルクに到るまでの時間が1.5秒を下回る。
【0035】
作業判定部4は、実傾き算出部2により算出された実傾きと、閾値記憶部3に記憶されている閾値とを比較して、締付作業が正しく行われているか否かを判定するものである。
本実施形態の作業判定部4は、締付作業が正しく行われているか否かを、その締付作業の途中に判定するものであり、具体的には締付トルクが少なくとも設定トルクの80%に達する前に上記の判定を行うように構成されている。
より具体的に説明すると、作業判定部4は、まず実傾きと上限値とを比較する(S3)。そして、実傾きが上限値よりも大きい場合、締付作業が正しくないと判定する(S4)。一方、実傾きが上限値よりも小さい場合、ここでの作業判定部4は、実傾きと下限値とを比較する(S5)。そして、実傾きが下限値よりも小さい場合は、締付作業が正しくないと判定する(S6)。すなわち、本実施形態の作業判定部4は、実傾きが上限値よりも大きい場合のみならず、実傾きが下限値よりも小さい場合にも、締付作業が正しくないと判定する。一方、S5において、実傾きが下限値よりも大きい場合は、締付作業が正しく行われていると判定する(S7)。
【0036】
報知部5は、作業判定部4により締付作業が正しく行われていないと判定された場合に、そのことを報知する(S8)。
本実施形態の報知部5は、作業判定部4により締付作業が正しく行われていないと判定されたことを、その締付作業の途中に報知するものであり、具体的には例えば音、光、振動などを発する1又は複数の報知手段を動作させるように構成されている。
なお、報知部5としては、実傾きが上限値よりも大きい場合と、実傾きが下限値よりも小さい場合とで、報知態様(例えば、音や光や振動の発生パターン)を異ならせても良い。さらに報知部5は、作業判定部4により締付作業が正しく行われている場合に、そのことを別の報知態様で報知しても良い。
【0037】
そして、S8において、締付作業が正しく行われていないことを報知部5により報知された場合、作業者は、例えば実傾きが上限値よりも大きい場合であれば、よりゆっくり締め付けるようにすれば良いし、実傾きが下限値をよりも小さい場合であれば、より速く締め付けるようにすれば良い。
【0038】
このように構成された作業支援装置100によれば、トルク波形の実傾きといったこれまでにない指標を締付作業の判定に用いており、締付作業が正しく行われていない場合にはそのことを報知するように構成されているので、作業者は締付トルクのかかり方が適切であるか否かを判断しながら作業を進めることができる。
より具体的には、締付トルクが設定トルクに到るまでの傾きを実傾きとして算出しているので、締付トルクが設定トルクに到るまでの締付作業を支援することが可能となり、従来よりも1本1本のボルト等に対する締付作業の質を均一にすることができ、ひいては作業全体としての締付精度の向上を図れる。
【0039】
また、報知部5が、作業判定部4により締付作業が正しく行われていないと判定されたことを、その締付作業の途中に報知するので、例えば締付作業が正しくなければ作業を終える前にやり直すことができ、無駄な作業を減らして作業効率の向上をも図れる。
【0040】
さらに、作業判定部4が、締付トルクが設定トルクの80%に達する前に実傾きと上限値とを比較して締付作業が正しく行われているかを判断するので、例えば締付トルクが設定トルクの80%から設定トルクに達するまでに1.5秒以上かけなければならないといった検査基準に従った締付作業を行うことができ、ひいては締付精度の向上を図れる。
【0041】
そのうえ、作業判定部4が、上限値よりも実傾きが大きい場合のみならず、下限値よりも実傾きが小さい場合にも、締付作業が正しく行われていないと判定するので、作業の均一性のさらなる向上を図れる。
【0042】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0043】
例えば、前記実施形態では、締付工具Xが、波形データ生成部1、実傾き算出部2、閾値記憶部3、作業判定部4、及び報知部5としての機能を備えていたが、トルクセンサSから検出データを取得する情報処理装置が、上述した機能の一部又は全部を備えていても良い。
【0044】
また、作業支援装置100としては、図5に示すように、実傾き算出部2が算出した実傾きに基づいて、その実傾きが算出された後に要する作業時間である推定作業時間を推定する作業時間推定部6としての機能を備えていても良い。
具体的に作業推定部としては、実傾きが算出された後、設定トルクに達するまでの時間を推定作業時間として推定するものなどを挙げることができ、より詳細には例えば設定トルクの80%から設定トルクに達するまでの時間を推定するものを挙げることができる。
この場合の作業支援装置100は、閾値記憶部3は、推定作業時間の閾値を記憶するものであれば良い。
このような構成であれば、作業判定部4は、作業時間推定部6により推定された推定作業時間と、閾値記憶部3に記憶された閾値とを比較して締付作業が正しく行われているか否かを判定するように構成されていても良い。
【0045】
さらに、実傾き算出部2としては、波形データが示す波形の直線性を実傾きとして算出するものであっても良い。
具体的に直線性の算出方法としては、例えば締付トルクの波形において、設定トルクに到るまでの2箇所(例えば設定トルクの50%から70%まで)を結んだ直線を引き、この直線と実際の締付トルクの差(乖離)を時間軸に沿った複数箇所において求め、これらの差の例えば最大値や平均を直線性として算出する方法を挙げることができる。
このような構成であれば、作業判定部4は、波形の直線性に基づいて締付作業が正しく行われているか否かを判定することができる。
【0046】
さらに、前記実施形態の作業支援装置100は、締付トルクによりネジ締結を管理するトルク法に用いられていたが、締付回転角でネジ締結を管理する回転角法に用いられても良い。
この場合、波形データは、一方の軸(横軸)を時間とし、他方の軸(縦軸)を締付回転角としたグラフに締付回転角をプロットしてなる角度波形を示すものとなる。
このような回転角法に作業支援装置100を用いることにより、例えば所定トルクから所定の設定締付回転角に到るまでの締付作業を支援することができ、前記実施形態と同様に締付作業の質の均一性の向上を図れる。
【0047】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0048】
100・・・作業支援装置
X ・・・締付工具
S ・・・トルクセンサ
1 ・・・波形データ生成部
2 ・・・実傾き算出部
3 ・・・閾値記憶部
4 ・・・作業判定部
5 ・・・報知部
6 ・・・作業時間推定部
図1
図2
図3
図4
図5