(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】ストレーナ装置
(51)【国際特許分類】
B01D 35/02 20060101AFI20240822BHJP
B01D 35/16 20060101ALI20240822BHJP
F16L 55/24 20060101ALI20240822BHJP
B01D 29/64 20060101ALI20240822BHJP
B01D 29/11 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B01D35/02 A
B01D35/16
F16L55/24 A
B01D29/38 550A
B01D29/10 510D
B01D29/10 520C
B01D29/10 530A
(21)【出願番号】P 2020154020
(22)【出願日】2020-09-14
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】513090150
【氏名又は名称】株式会社旭テクノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】狹間 克巳
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-145974(JP,A)
【文献】特開2007-098278(JP,A)
【文献】特開昭54-141462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 35/00-34
B01D 29/11-37、62-64
F16L 55/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタエレメントを有するY型ストレーナと、
前記Y型ストレーナに取り付けられ、前記フィルタエレメントの内周面を洗浄する洗浄装置とを備え、
前記Y型ストレーナは、
流体が流入する流入室と、濾過後の流体を外部に流出させる流出室とを有するハウジングと、
中空の円筒形状を有すると共に、周壁部にスクリーンを有し、前記流入室から中空内部に導入された流体を前記スクリーンで濾過して前記流出室に排出する
前記フィルタエレメントとを含み、
前記フィルタエレメントは、その中心軸が前記流入室の流入口と前記流出室の流出口とを結ぶ方向に対して斜め方向となるように配置されており、
前記洗浄装置は、
前記フィルタエレメントの中心軸を中心として回転可能に支持される軸体と、
前記フィルタエレメントの中空内部に配置され、前記軸体の一方端に接続され、前記軸体と共に回転可能な洗浄器具と、
濾過前の流体により回転可能であり、自身の回転に伴って前記軸体を介して前記洗浄器具を回転させる水車と、
前記流入室と前記流出室の圧力差が所定値より小さい第1
の状態において前記水車の回転を停止させ、前記流入室と前記流出室の圧力差が所定値を超える第2の状態において前記水車を回転させる回転制御を、前記流出室内及び前記流入室内の流体が発生させる力を用いて行う回転制御機構とを備え、
前記回転制御機構は、
前記水車を収容する収容部と、前記流入室に流入した流体を前記収容部に供給する第1の流路と、前記収容部内の流体を外部に排出する第2の流路とを有するケースと、
前記第1の流路を介して前記流入室に連通すると共に、連結管を介して前記流出室に連通し、前記流入室と前記流出室の圧力差に応じて移動する弁体を有するバルブとを備え、
前記第1の状態から前記第2の状態に変化すると、前記弁体が前記第1の流路を閉鎖しない位置に移動して、前記第1の流路から前記収容部に供給される流体により前記水車を回転させ、
前記第2の状態から前記第1の状態に変化すると、前記弁体が前記第1の流路を閉鎖
する位置に移動して、前記第1の流路から前記収容部への流体の供給を遮断することにより前記水車の回転を停止させ、
前記フィルタエレメントの一方端及び他方端が開放されており、
前記フィルタエレメントの前記一方端が前記流入室と連通し、前記フィルタエレメントの前記他方端が前記第1の流路に連通する、ストレーナ装置。
【請求項2】
流体が流入する流入室と、濾過後の流体を外部に流出させる流出室とを有するハウジングと、
中空の円筒形状を有すると共に、周壁部にスクリーンを有し、前記流入室から中空内部に導入された流体を前記スクリーンで濾過して前記流出室に排出するフィルタエレメントと、
前記フィルタエレメントの内周面を洗浄する洗浄装置とを備え、
前記洗浄装置は、
前記フィルタエレメントの中心軸を中心として回転可能に支持される軸体と、
前記フィルタエレメントの中空内部に配置され、前記軸体の一方端に接続され、前記軸体と共に回転可能な洗浄器具と、
濾過前の流体により回転可能であり、自身の回転に伴って前記軸体を介して前記洗浄器具を回転させる水車と、
前記流入室と前記流出室の圧力差が所定値より小さい第1
の状態において前記水車の回転を停止させ、前記流入室と前記流出室の圧力差が所定値を超える第2の状態において前記水車を回転させる回転制御を、前記流出室内及び前記流入室内の流体が発生させる力を用いて行う回転制御機構とを備え、
前記回転制御機構は、
前記流入室及び前記流出室のそれぞれと連通し、前記流入室と前記流出室の圧力差に応じて移動するピストンを有するブレーキ機構とを備え、
前記第1の状態から前記第2の状態に変化すると、前記ピストンが前記軸体と当接しない位置に移動して、前記流入室から供給される流体により前記水車を回転させ、
前記第2の状態から前記第1の状態に変化すると、前記ピストンが前記軸体と当接して前記軸体の回転を阻止することにより、前記水車の回転を停止させる、ストレーナ装置。
【請求項3】
前記フィルタエレメントの一方端及び他方端が開放されており、前記フィルタエレメントの前記一方端が前記流入室と連通し、
前記フィルタエレメントの前記他方端に連通し、前記フィルタエレメントの内周面から除去された異物を収容する異物収容部が更に設けられ、
前記洗浄器具は、スクリュー形状を有しており、前記水車の回転に伴う回転によって、前記フィルタエレメントの内周面から除去された異物を前記異物収容部に移動させる、請求項2に記載のストレーナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体中の異物等を補修するためにパイプライン中に設けられるストレーナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場や化学プラント等の各種設備に設けられるパイプラインの途中には、流体中の異物を除去するためのストレーナが設けられる。ストレーナには、流体を濾過し、異物を捕捉するためのフィルタエレメントが用いられるが、フィルタエレメントにおける異物の捕捉量が増加すると流体の流量が減少するため、定期的にフィルタエレメントを洗浄することが必要である。
【0003】
例えば、特許文献1には、エレメントの洗浄を自動的に行うことができるストレーナが記載されている。特許文献1に記載のストレーナは、円筒状のエレメントと、エレメントの内側面に当接するブラシと、ブラシを回転させるモータと、エレメントの上流側及び下流側の流体圧力を測定する圧力センサと、モータを制御する制御部とを備え、エレメントの上流側及び下流側の圧力差が設定値より大きくなると、制御部がモータを駆動してブラシを回転させ、エレメントの内側面に付着いた固形物を掻き落とす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるストレーナのように、自動的にエレメントを洗浄できれば、設備の運用が容易となるため好ましい。しかしながら、特許文献1に記載されるストレーナは、洗浄を自動化するために、圧力センサや制御部、モータ等の電子部品が複数必要であり、製造コストが高くなるという問題がある。
【0006】
それ故に、本発明は、電子部品を用いることなく自動的にフィルタエレメントを洗浄可能なストレーナ装置を低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るストレーナ装置は、流体が流入する流入室と、濾過後の流体を外部に流出させる流出室とを有するハウジングと、中空の円筒形状を有すると共に、周壁部にスクリーンを有し、流入室から中空内部に導入された流体をスクリーンで濾過して流出室に排出するフィルタエレメントと、フィルタエレメントの内周面を洗浄する洗浄装置とを備える。洗浄装置は、フィルタエレメントの中心軸を中心として回転可能に支持される軸体と、フィルタエレメントの中空内部に配置され、軸体の一方端に接続され、軸体と共に回転可能な洗浄器具と、濾過前の流体により回転可能であり、自身の回転に伴って軸体を介して洗浄器具を回転させる水車と、流入室と流出室の圧力差が所定値より小さい第1状態において水車の回転を停止させ、流入室と流出室の圧力差が所定値を超える第2の状態において水車を回転させる回転制御を、流出室内及び流入室内の流体が発生させる力を用いて行う回転制御機構とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電子部品を用いることなく自動的にフィルタエレメントを洗浄可能なストレーナ装置を低コストで提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係るストレーナ装置の断面図
【
図4】第2の実施形態に係るストレーナ装置の正面図
【
図5】第2の実施形態に係るストレーナ装置の左側面図
【
図7】
図4に示すVII-VIIラインに沿う断面図
【
図8】
図5に示すVIII-VIIIラインに沿う断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るストレーナ装置の断面図である。また、
図2は、
図1に示した水車部分の断面図であって、
図1に示すII-IIラインの位置の断面図に相当する。
【0011】
ストレーナ装置100は、ハウジング1と、フィルタエレメント2と、洗浄装置3とを備える。
【0012】
ハウジング1は、流体が流入する流入室11と、濾過後の流体を外部に流出させる流出室12とを有し、流出室12内にフィルタエレメント2を収容する。流入室11及び流出室12には、配管と接続するための流入口13及び流出口14がそれぞれ設けられる。流入室11と流出室12との間は、開口部16を有する隔壁15によって区画されている。ハウジング1の流出室12の一部には、洗浄装置3に接続するための開口部26が設けられている。
【0013】
フィルタエレメント2は、流入室11に供給された流体を濾過する部材であり、両端が開放された中空の円筒形状を有する。フィルタエレメント2の周壁部には、流体を濾過するためのスクリーン4が設けられている。スクリーン4の形態は特に限定されず、メッシュ、スリット、パンチングメタルのいずれであっても良い。
【0014】
フィルタエレメント2の一方の端部24aは、隔壁15に設けられた開口部16を介して流入室11に接続されている。フィルタエレメント2の端部24aの外面と隔壁15との間は封止されており、フィルタエレメント2の中空内部には、隔壁15の開口部16介して流入室11から流体を供給可能である。フィルタエレメントの他方の端部24bは、開口部26に取り付けられた接続部材25を介して、洗浄装置3のケース9に接続されている。フィルタエレメント2の端部24bの外面と接続部材25及びハウジング1の間は封止されており、フィルタエレメント2の中空内部に供給された流体は、スクリーン4を通過して流出室12に流入可能であると共に、端部24bの開放部分を通じて洗浄装置3に設けられた第1の流路21に流入可能である。
【0015】
洗浄装置3は、フィルタエレメント2の内周面を洗浄し、スクリーン4に捕捉された異物を除去する。洗浄装置3は、軸体5と、洗浄器具6と、ケース9と、水車7と、バルブ8とを備える。
【0016】
軸体5は、フィルタエレメント2の中心軸と同軸となるように配置され、フィルタエレメント2の中心軸を中心として回転可能となるよう、軸受23及びケース9により支持されている。
【0017】
洗浄器具6は、フィルタエレメント2の中空内部に配置され、軸体5の一方端に接続されている。洗浄器具6は、後述する水車7の回転によって軸体5と共に回転可能であり、フィルタエレメント2の内周面に捕捉された異物を掻き取る。洗浄器具6は、フィルタエレメント2の内周面の異物を掻き取ることができるものであれば特に限定されないが、例えば、ブラシやスクレーパである。
【0018】
ケース9は、接続部材25を介してハウジング1に取り付けられ、水車7及びバルブ8を収容する。ケース9の内部には、水車7を収容する空間である収容部20と、収容部20とフィルタエレメント2の中空内部とを接続する第1の流路21と、収容部20から外部へと流体を排出するための第2の流路22とを有する。
【0019】
水車7は、ケース9の収容部20に収容され、軸体5に取り付けられている。詳細は後述するが、水車7は、第1の流路21を通じて収容部20に供給される、濾過前の流体によりフィルタエレメント2の中心軸周りに回転可能であり、自身の回転に伴って、軸体5及び洗浄器具6を回転させる。
【0020】
バルブ8は、弁体17及びバネ19を備える。弁体17は、第1の流路21及びフィルタエレメント2の中空内部を介して流入室11と連通すると共に、連結管18を介して流出室12と連通する。弁体17は、第1の流路21を閉鎖する第1の位置(
図1に示す位置)と、第1の流路21を閉鎖しない第2の位置(
図3に示す位置)との間を移動可能であり、バネ19の押圧力によって第1の位置側に付勢されている。弁体17には、第1の流路21内の流体の圧力(スクリーン4の上流側の圧力)と、連結管18内の流体の圧力(スクリーン4の下流側の圧力)とが反対方向に加わり、流入室11と流出室12の圧力差に応じて、第1の位置と第2の位置との間を移動する。
【0021】
以下、
図1及び
図3を参照しながら、洗浄装置3の動作を説明する。
【0022】
図3は、洗浄装置が動作中である状態を示す断面図であって、
図1に対応する断面図である。
【0023】
スクリーン4に異物が付着していない場合、スクリーン4に若干の濾過抵抗があるが、流入室11の内圧と流出室12の内圧は略等しい。流体の濾過によりスクリーン4に異物が付着すると、スクリーン4の濾過抵抗が増加するため、流入室11の内圧よりも流出室12の内圧が低下する。
【0024】
スクリーン4による異物の捕捉が進行して流出室12の内圧が低下し、流入室11と流出室12の圧力差が、所定の閾値より小さい状態(第1の状態)から所定の閾値を超えた状態(第2の状態)に変化すると、第1の流路21内の流体による弁体17への押圧力が、第2の流路22内の流体による弁体17への押圧力とバネ19の付勢力の和より大きくなる。弁体17は、流入室11と流出室12の圧力差によって、
図1に示す第1の位置から
図3に示す第2の位置に移動する。尚、流入室11と流出室12との圧力差の閾値は、バネ19の付勢力によって設定することができ、バネ19の付勢力は、スクリーン4の洗浄頻度を変更できるように調整可能であることが好ましい。弁体17が第1の流路21を閉鎖しない第2の位置に配置されると、
図3の矢印で示すように、流入室11内の流体が、フィルタエレメント2の中空内部及び第1の流路21を通じて収容部20に流入し、収容部20内の水車7を回転させる。収容部20内の流体は、順次、第2の流路22から外部に排出(廃棄)される。水車7の回転に伴って、軸体5及び洗浄器具6が回転し、洗浄器具6がスクリーン4の内面に捕捉された異物を掻き取る。掻き取られた異物は、第1の流路21、収容部20及び第2の流路22を流れる流体と共に外部に排出される。
【0025】
洗浄器具6によってスクリーン4の内面の異物が除去されると、スクリーン4の濾過抵抗が減少し、流入室11と流出室12の圧力差が小さくなる。流入室11と流出室12の圧力差が、所定の閾値を超えた状態(第2の状態)から所定の閾値より小さい状態(第1の状態)に変化すると、第1の流路21内の流体による弁体17への押圧力が、第2の流路22内の流体による弁体17への押圧力とバネ19の付勢力の和より小さくなる。弁体17は、流入室11と流出室12の圧力差によって、
図3に示す第2の位置から
図1に示す第1の位置に移動する。弁体17が第1の流路21を閉鎖する第1の位置に配置されると、
図1の矢印で示すように、第1の流路21から収容部20への流体の供給が遮断される。この結果、水車7の回転が停止し、軸体5及び洗浄器具6の回転も停止する。
【0026】
以上説明したように、本実施形態に係るストレーナ装置100においては、水車7、バルブ8、第1の流路21、収容部20及び第2の流路22を有するケース9が、水車7の回転を制御する回転制御機構を構成する。この回転制御機構は、圧力センサや制御装置、モータ等を用いることなく、流入室11内及び流出室12内の流体が発生させる力を用いて洗浄器具6の回転を制御することができる。したがって、本実施形態によれば、スクリーン4の自動洗浄が可能であり、低コストで製造可能なストレーナ装置100を実現できる。本実施形態に係るストレーナ装置100は、Y型ストレーナと呼ばれるストレーナ装置に洗浄装置3を取り付けたものである。Y型ストレーナは比較的安価な汎用品であるため、電子制御による自動洗浄装置を付加すると製造コストが高くなりすぎ、Y型ストレーナとして現実的ではない。本実施形態に係るストレーナ装置100は、電子部品を用いないシンプルな部品構成で、流入室11及び流出室12の内圧差をバルブ8が機械的に検出して第1の流路21を開閉し、流入室11に供給される流体の圧力によって水車7及び洗浄器具6を回転させることができるため、製造コストを大幅に増加させることなく、自動洗浄が可能なY型ストレーナを構成できる。
【0027】
また、本実施形態では、第1の流路21をフィルタエレメント2の端部24bに接続しているため、洗浄器具6が掻き取った異物を効率的かつ速やかに外部に排出することができる。
【0028】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係るストレーナ装置の正面図であり、
図5は、第2の実施形態に係るストレーナ装置の左側面図であり、
図6は、
図5に示すVI-VIラインに沿う断面図であり、
図7は、
図4に示すVII-VIIラインに沿う断面図であり、
図8は、
図5に示すVIII-VIIIラインに沿う断面図である。
【0029】
ストレーナ装置200は、ハウジング1と、フィルタエレメント2と、洗浄装置39とを備える。
【0030】
ハウジング1は、中空の箱形形状を有する分割体31a及び31bから構成される。分割体31a及び31bは、それぞれが有するフランジ部同士を付き合わせた状態でボルト等により一体化されている。ハウジング1は、流体が流入する流入室11と、濾過後の流体を外部に流出させる流出室12とを有し、流出室12内にフィルタエレメント2を収容する。流入室11及び流出室12には、配管と接続するための流入口13及び流出口14がそれぞれ設けられる。流入室11と流出室12との間は、開口部16を有する隔壁15によって区画されている。
【0031】
フィルタエレメント2は、流入室11に供給された流体を濾過する部材であり、両端が開放された中空の円筒形状を有する。フィルタエレメント2の周壁部には、流体を濾過するためのスクリーン4が設けられている。スクリーン4の形態は特に限定されず、メッシュ、スリット、パンチングメタルのいずれであっても良い。
【0032】
フィルタエレメント2の一方の端部24aは、隔壁15に設けられた開口部16を介して流入室11に接続されている。フィルタエレメント2の端部24aの外面と隔壁15との間は封止されており、フィルタエレメント2の中空内部には、隔壁15の開口部16介して流入室11から流体を供給可能である。フィルタエレメント2の他方の端部24bは、
図8に示すように、フィルタエレメント2の内周面から除去された異物を収容及び蓄積するための異物収容部38に接続されている。フィルタエレメント2の端部24bの外面と分割体31bとの間は封止されており、フィルタエレメント2の中空内部に供給された流体は、スクリーン4を通過して流出室12に流入可能である。
【0033】
洗浄装置39は、フィルタエレメント2の内周面を洗浄し、スクリーン4に捕捉された異物を除去する。本実施形態において、洗浄装置39は、軸体5及び32と、洗浄器具37と、水車7と、ブレーキ機構35とを備える。
【0034】
軸体5は、フィルタエレメント2の中心軸と同軸となるように配置され、フィルタエレメント2の中心軸を中心として回転可能となるよう、分割体31aにより支持されている。
図6に示すように、軸体5には、ウォームホイール34が取り付けられている。
【0035】
洗浄器具37は、フィルタエレメント2の中空内部に配置され、軸体5の一方端に接続されている。洗浄器具37は、後述する水車7の回転によって軸体5と共に回転可能であり、フィルタエレメント2の内周面に捕捉された異物を掻き取る。これに加え、本実施形態に係る洗浄器具37は、スクリュー形状を有しており、回転に伴って異物収容部38の方向へと流体の流れを生じる。スクリュー形状の洗浄器具37を回転させることにより、スクリーン4の内面から掻き取った異物を異物収容部38に移動させ、異物を異物収容部38内に蓄積させることができる。洗浄器具37は、フィルタエレメント2の内周面の異物を掻き取ることができるスクリュー形状のものであれば特に限定されないが、例えば、ブラシやスクレーパである。
【0036】
水車7は、流入室11内において、流入口13に対向する位置に配置され、軸体32に取り付けられている。軸体32は、その軸方向が軸体5の軸方向と直交するねじれの位置に配置される。
図6に示すように、軸体32には、軸体5に設けられたウォームホイール34と噛み合うウォーム33が取り付けられている。詳細は後述するが、水車7は、流入口13から供給される濾過前の流体により軸体32と共に回転可能である。水車7及び軸体32の回転は、ウォーム33及びウォームホイール34(これらを併せて、「ウォームギヤ」という)を介して軸体5に伝達され、軸体5及び洗浄器具37をフィルタエレメント2の中心軸周りに回転させる。
【0037】
ブレーキ機構35は、
図8に示すようにピストン36及びバネ19を備える。ブレーキ機構35は、流入室11と連通すると共に、連結管18を介して流出室12と連通する(
図5参照)。ピストン36は、軸体5と当接する第1の位置(
図8に示す位置)と、軸体5と当接しない第2の位置(
図9に示す位置)との間を移動可能であり、バネ19の押圧力によって第1の位置側に付勢されている。ピストン36には、流入室11内の流体の圧力(スクリーン4の上流側の圧力)と、流出室12内の流体の圧力(スクリーン4の下流側の圧力)とが反対方向に加わり、流入室11と流出室12の圧力差に応じて、第1の位置と第2の位置との間を移動する。
【0038】
以下、
図8及び
図9を参照しながら、洗浄装置3の動作を説明する。
【0039】
図9は、洗浄装置が動作中である状態を示す断面図であって、
図8に対応する断面図である。
【0040】
スクリーン4に異物が付着していない場合、スクリーン4に若干の濾過抵抗があるが、流入室11の内圧と流出室12の内圧は略等しい。流体の濾過によりスクリーン4に異物が付着すると、スクリーン4の濾過抵抗が増加するため、流入室11の内圧よりも流出室12の内圧が低下する。
【0041】
スクリーン4による異物の捕捉が進行して流出室12の内圧が低下し、流入室11と流出室12の圧力差が、所定の閾値より小さい状態(第1の状態)から所定の閾値を超えた状態(第2の状態)に変化すると、流入室11内の流体によるピストン36への押圧力が、流出室12内の流体によるピストン36への押圧力とバネ19の付勢力の和より大きくなる。ピストン36は、流入室11と流出室12の圧力差によって、
図8に示す第1の位置から
図9に示す第2の位置に移動する。尚、流入室11と流出室12との圧力差の閾値は、バネ19の付勢力によって設定することができ、バネ19の付勢力は、スクリーン4の洗浄頻度を変更できるように調整可能であることが好ましい。ピストン36が第2の位置にある場合、ピストン36は、軸体5に当接せず、軸体5の回転を規制しない。軸体5が回転可能になると、ウォームギヤを介して接続される軸体32も回転可能となる。したがって、第2の状態においては、流入口13から流入室11に供給される流体により水車7が回転し、水車7の回転に伴って軸体5及び洗浄器具37が回転し、洗浄器具37がスクリーン4の内面に捕捉された異物を掻き取る。掻き取られた異物は、スクリュー形状の洗浄器具37によって異物収容部38に集められる。尚、異物収容部38に蓄積された異物は、ドレンプラグ40を通じて適宜外部に排出することが可能である。
【0042】
洗浄器具37によってスクリーン4の内面の異物が除去されると、スクリーン4の濾過抵抗が減少し、流入室11と流出室12の圧力差が小さくなる。流入室11と流出室12の圧力差が、所定の閾値を超えた状態(第2の状態)から所定の閾値より小さい状態(第1の状態)に変化すると、流入室11内の流体によるピストン36への押圧力が、流出室12内の流体によるピストン36への押圧力とバネ19の付勢力の和より小さくなる。ピストン36は、流入室11と流出室12の圧力差によって、
図9に示す第2の位置から
図8に示す第1の位置に移動する。ピストン36が第1の位置にある場合、ピストン36が軸体5に当接し、軸体5及び洗浄器具37の回転を停止させる。軸体5の回転が規制された状態となると、ウォームギヤを介して接続される軸体32の回転も規制されるため、水車7の回転も停止する。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係るストレーナ装置200においては、ブレーキ機構35が水車7の回転を制御する回転制御機構を構成する。この回転制御機構は、圧力センサや制御装置、モータ等を用いることなく、流入室11内及び流出室12内の流体が発生させる力を用いて洗浄器具37の回転を制御することができる。したがって、本実施形態によれば、スクリーン4の自動洗浄が可能で、低コストで製造可能なストレーナ装置200を実現できる。本実施形態に係るストレーナ装置200においては、スクリーン4から除去された異物を異物収容部38に濃縮して蓄積することができ、スクリーン4の洗浄時に必ずしも流体を外部に排出する必要がないため、異物収容部38に蓄積された異物を除去する際に、異物と共に廃棄される流体の量を低減することができる。したがって、本実施形態に係るストレーナ装置200は、清涼飲料水や薬品等の水以外の液体を送液するパイプラインのように、スクリーン4の洗浄に伴う流体の廃棄量を低減したい場合に好適に利用できる。
【0044】
(その他の変形例)
上記の第1及び第2の実施形態において、流入室、流出室、フィルタエレメント及び洗浄装置の構成部品の配置は一例であり、流入室に流入する流体によって水車を回転可能柄あり、流入室と流出室の圧力差に応じて水車の回転を機械的に制御できる限り、各部の配置は任意である。
【0045】
上記の第1の実施形態において、第2の実施形態と同様にスクリュー形状の洗浄器具を採用しても良い。回転に伴って第1の流路の下流方向に流れを生じるスクリュー形状の洗浄器具を採用することによって、スクリーンの内面から掻き取った異物を速やかに外部に排出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、工場や化学プラント等の各種設備において、パイプラインを流れる液体を濾過するストレーナ装置として利用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 ハウジング
2 フィルタエレメント
3 洗浄装置
4 スクリーン
5 軸体
6 洗浄器具
7 水車
8 バルブ
9 ケース
11 流入室
12流出室
17 弁体
20 収容部
21 第1の流路
22 第2の流路
35 ブレーキ機構
36 ピストン
37 洗浄器具
38 異物収容部
39 洗浄装置