(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】呼吸管理制御装置
(51)【国際特許分類】
A61M 16/00 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
A61M16/00 332A
A61M16/00 343
(21)【出願番号】P 2020179467
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】501002079
【氏名又は名称】株式会社ファーレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】平林 剛
(72)【発明者】
【氏名】植田 利久
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0083726(US,A1)
【文献】国際公開第2016/067619(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者に装着するインターフェースと、
前記インターフェースに酸素を供給する吸気経路と、
前記インターフェースから二酸化炭素を排出する呼気経路と、
前記吸気経路又は前記呼気経路を流れるガスの流量を変更するガス流量変更手段と、
前記ガス流量変更手段を制御する駆動手段と、
前記吸気経路および前記呼気経路の少なくともいずれかの圧力を気道内圧として検出する気道内圧検出センサと、
前記気道内圧検出センサで検出される気道内圧検出値を入力し、前記駆動手段に対して駆動信号を出力することで、吸気開始ポイントから呼気開始ポイントまでの吸気相の間における前記気道内圧を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段では、
前記気道内圧として、目標プラトー圧と、前記目標プラトー圧よりも高い導入付加圧とが設定され、
前記駆動手段に対して、
前記吸気開始ポイントからの導入付加時間では、前記導入付加圧になるように前記ガスを供給する前記駆動信号を出力し、
前記導入付加時間経過後から前記呼気開始ポイントまでの間では、前記目標プラトー圧になるように前記ガスの供給を減少させる前記駆動信号を出力
し、
前記導入付加圧及び/又は前記導入付加時間を変更できる設定手段を備えた
ことを特徴とする呼吸管理制御装置。
【請求項2】
前記吸気相の時間を一定時間とする
ことを特徴とする請求項1に記載の呼吸管理制御装置。
【請求項3】
使用者に装着するインターフェースと、
前記インターフェースに酸素を供給する吸気経路と、
前記インターフェースから二酸化炭素を排出する呼気経路と、
前記吸気経路又は前記呼気経路を流れるガスの流量を変更するガス流量変更手段と、
前記ガス流量変更手段を制御する駆動手段と、
前記吸気経路および前記呼気経路の少なくともいずれかの圧力を気道内圧として検出する気道内圧検出センサと、
前記気道内圧検出センサで検出される気道内圧検出値を入力し、前記駆動手段に対して駆動信号を出力することで、吸気開始ポイントから呼気開始ポイントまでの吸気相の間における前記気道内圧を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段では、
前記気道内圧として、目標プラトー圧と、前記目標プラトー圧よりも高い導入付加圧とが設定され、
前記駆動手段に対して、
前記吸気開始ポイントからの導入付加時間では、前記導入付加圧になるように前記ガスを供給する前記駆動信号を出力し、
前記導入付加時間経過後から前記呼気開始ポイントまでの間では、前記目標プラトー圧になるように前記ガスの供給を減少させる前記駆動信号を出力し、
前記吸気経路からの流量を検出する流量検出センサを備え、
前記制御手段では、
前記呼気開始ポイントに至るまでに、前記流量が基準値に至らない場合には、前記導入付加圧を高くする
ことを特徴とす
る呼吸管理制御装置。
【請求項4】
使用者に装着するインターフェースと、
前記インターフェースに酸素を供給する吸気経路と、
前記インターフェースから二酸化炭素を排出する呼気経路と、
前記吸気経路又は前記呼気経路を流れるガスの流量を変更するガス流量変更手段と、
前記ガス流量変更手段を制御する駆動手段と、
前記吸気経路および前記呼気経路の少なくともいずれかの圧力を気道内圧として検出する気道内圧検出センサと、
前記気道内圧検出センサで検出される気道内圧検出値を入力し、前記駆動手段に対して駆動信号を出力することで、吸気開始ポイントから呼気開始ポイントまでの吸気相の間における前記気道内圧を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段では、
前記気道内圧として、目標プラトー圧と、前記目標プラトー圧よりも高い導入付加圧とが設定され、
前記駆動手段に対して、
前記吸気開始ポイントからの導入付加時間では、前記導入付加圧になるように前記ガスを供給する前記駆動信号を出力し、
前記導入付加時間経過後から前記呼気開始ポイントまでの間では、前記目標プラトー圧になるように前記ガスの供給を減少させる前記駆動信号を出力し、
前記吸気経路からの流量を検出する流量検出センサを備え、
前記制御手段では、
前記呼気開始ポイントに至るまでに、前記流量が基準値に至らない場合には、前記導入付加時間を長くする
ことを特徴とす
る呼吸管理制御装置。
【請求項5】
前記制御手段では、
前記流量検出センサで検出される前記流量から1回換気量を算出し、
算出される前記1回換気量が目標1回換気量となるように、前記目標プラトー圧を変更する
ことを特徴とする
請求項3又は
請求項4に記載の呼吸管理制御装置。
【請求項6】
前記導入付加圧を、前記目標プラトー圧に対して130%以下とする
ことを特徴とする請求項1から
請求項5のいずれか1項に記載の呼吸管理制御装置。
【請求項7】
前記導入付加時間を、前記吸気相の1/2以下とする
ことを特徴とする請求項1から
請求項6のいずれか1項に記載の呼吸管理制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工呼吸器や麻酔器に用いる呼吸管理制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、呼気の波形からauto PEEPを推定し、意図的に適切なtotal PEEPが存在するポイントで吸気を開始することで、肺胞の虚脱を防ぎかつ換気効率を向上できる人工呼吸器を提案している(特許文献1)。
なお、特許文献1で記載しているdPEEPは、現在のISO規格ではauto PEEPに変わっており、total PEEP(呼気終末肺胞圧)=PEEP(呼気終末気道圧)+auto PEEP(肺胞~気道圧格差)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、気道内圧と肺胞圧は必ずしも一致しない。
図3(a)及び
図3(b)は、気道内圧を制御する呼吸管理制御装置における気道内圧と流量の変化を示すグラフである。
図3(a)に示すように、気道内圧を制御する呼吸管理制御装置では、気道内圧を一定圧となるように、
図3(b)に示すように流量を制御する。
すべての肺胞が健康であれば、
図3(a)に破線で示すように、肺胞圧は素早く気道内圧に一致し、肺胞圧が気道内圧に一致することで、流量は速やかに基線に戻る(ゼロとなる)。流量が基線に戻り、圧損失が無くなった定常状態をプラトーという。
正常呼吸コンプライアンス症例では、流量が素早く基線に戻り、素早くプラトーに達する。
しかし、低呼吸コンプライアンス症例(肥満、気腹・頭低位、小児、拘束性肺障害、呼吸促迫症候群ARDS)では、肺胞が不健康であり、広がりにくい肺胞が不均一に存在し、プラトーに達するまでに時間を要する。
図3(c)に示す破線は、低呼吸コンプライアンス症例における肺胞圧の変化を示しており、肺胞圧の立ち上がりが遅く、吸気時間内に気道内圧に到達しない。また、
図3(d)に示すように、低呼吸コンプライアンス症例では、流量の減衰が遅く、肺胞圧が気道内圧に到達しない場合には、流量が基線に戻らず、プラトーに達しない。
このように、肺胞圧が気道内圧に到達せずに吸気相が終了して呼気相に移行すると、肺胞と肺動脈との間でのガス拡散が阻害されるため、死腔が増加するとともに換気効率が悪化する。
【0005】
本発明は、吸気相における肺胞圧の立ち上がりを早めて確実にプラトーに至らせることで換気効率の高い呼吸管理制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の呼吸管理制御装置は、使用者に装着するインターフェース1と、前記インターフェース1に酸素を供給する吸気経路2と、前記インターフェース1から二酸化炭素を排出する呼気経路3と、前記吸気経路2又は前記呼気経路3を流れるガスの流量を変更するガス流量変更手段7と、前記ガス流量変更手段7を制御する駆動手段8と、前記吸気経路2および前記呼気経路3の少なくともいずれかの圧力を気道内圧として検出する気道内圧検出センサ5と、前記気道内圧検出センサ5で検出される気道内圧検出値を入力し、前記駆動手段8に対して駆動信号を出力することで、吸気開始ポイントから呼気開始ポイントまでの吸気相の間における前記気道内圧を制御する制御手段10とを備え、前記制御手段10では、前記気道内圧として、目標プラトー圧と、前記目標プラトー圧よりも高い導入付加圧とが設定され、前記駆動手段8に対して、前記吸気開始ポイントからの導入付加時間では、前記導入付加圧になるように前記ガスを供給する前記駆動信号を出力し、前記導入付加時間経過後から前記呼気開始ポイントまでの間では、前記目標プラトー圧になるように前記ガスの供給を減少させる前記駆動信号を出力し、前記導入付加圧及び/又は前記導入付加時間を変更できる設定手段6を備えたことを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の呼吸管理制御装置において、前記吸気相の時間を一定時間とすることを特徴とする。
請求項3記載の本発明の呼吸管理制御装置は、使用者に装着するインターフェース1と、前記インターフェース1に酸素を供給する吸気経路2と、前記インターフェース1から二酸化炭素を排出する呼気経路3と、前記吸気経路2又は前記呼気経路3を流れるガスの流量を変更するガス流量変更手段7と、前記ガス流量変更手段7を制御する駆動手段8と、前記吸気経路2および前記呼気経路3の少なくともいずれかの圧力を気道内圧として検出する気道内圧検出センサ5と、前記気道内圧検出センサ5で検出される気道内圧検出値を入力し、前記駆動手段8に対して駆動信号を出力することで、吸気開始ポイントから呼気開始ポイントまでの吸気相の間における前記気道内圧を制御する制御手段10とを備え、前記制御手段10では、前記気道内圧として、目標プラトー圧と、前記目標プラトー圧よりも高い導入付加圧とが設定され、前記駆動手段8に対して、前記吸気開始ポイントからの導入付加時間では、前記導入付加圧になるように前記ガスを供給する前記駆動信号を出力し、前記導入付加時間経過後から前記呼気開始ポイントまでの間では、前記目標プラトー圧になるように前記ガスの供給を減少させる前記駆動信号を出力し、前記吸気経路2からの流量を検出する流量検出センサ4を備え、前記制御手段10では、前記呼気開始ポイントに至るまでに、前記流量が基準値に至らない場合には、前記導入付加圧を高くすることを特徴とする。
請求項4記載の本発明の呼吸管理制御装置は、使用者に装着するインターフェース1と、前記インターフェース1に酸素を供給する吸気経路2と、前記インターフェース1から二酸化炭素を排出する呼気経路3と、前記吸気経路2又は前記呼気経路3を流れるガスの流量を変更するガス流量変更手段7と、前記ガス流量変更手段7を制御する駆動手段8と、前記吸気経路2および前記呼気経路3の少なくともいずれかの圧力を気道内圧として検出する気道内圧検出センサ5と、前記気道内圧検出センサ5で検出される気道内圧検出値を入力し、前記駆動手段8に対して駆動信号を出力することで、吸気開始ポイントから呼気開始ポイントまでの吸気相の間における前記気道内圧を制御する制御手段10とを備え、前記制御手段10では、前記気道内圧として、目標プラトー圧と、前記目標プラトー圧よりも高い導入付加圧とが設定され、前記駆動手段8に対して、前記吸気開始ポイントからの導入付加時間では、前記導入付加圧になるように前記ガスを供給する前記駆動信号を出力し、前記導入付加時間経過後から前記呼気開始ポイントまでの間では、前記目標プラトー圧になるように前記ガスの供給を減少させる前記駆動信号を出力し、前記吸気経路2からの流量を検出する流量検出センサ4を備え、前記制御手段10では、前記呼気開始ポイントに至るまでに、前記流量が基準値に至らない場合には、前記導入付加時間を長くすることを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項3又は請求項4に記載の呼吸管理制御装置において、前記吸気経路2からの流量を検出する流量検出センサ4を備え、前記制御手段10では、前記流量検出センサ4で検出される前記流量から1回換気量を算出し、算出される前記1回換気量が目標1回換気量となるように、前記目標プラトー圧を変更することを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の呼吸管理制御装置において、前記導入付加圧を、前記目標プラトー圧に対して130%以下とすることを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の呼吸管理制御装置において、前記導入付加時間を、前記吸気相の1/2以下とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、導入付加時間では、目標プラトー圧より高い導入付加圧とすることで、肺胞圧の立ち上がりを早めることができ、その後はガスの供給を減少させることで肺過膨張を防ぎ、確実にプラトーに至らせることで肺胞へのガス拡散を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施例による呼吸管理制御装置を機能実現手段で現したブロック図
【
図2】同実施例による呼吸管理制御装置での気道内圧と流量の変化を示すグラフ
【
図3】気道内圧を制御する呼吸管理制御装置における気道内圧と流量の変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による呼吸管理制御装置は、制御手段では、気道内圧として、目標プラトー圧と、目標プラトー圧よりも高い導入付加圧とが設定され、駆動手段に対して、吸気開始ポイントからの導入付加時間では、導入付加圧になるようにガスを供給する駆動信号を出力し、導入付加時間経過後から呼気開始ポイントまでの間では、目標プラトー圧になるようにガスの供給を減少させる駆動信号を出力し、導入付加圧及び/又は導入付加時間を変更できる設定手段を備えたものである。
本実施の形態によれば、導入付加時間では、目標プラトー圧より高い導入付加圧とすることで、肺胞圧の立ち上がりを早めることができ、その後はガスの供給を減少させることで肺過膨張を防ぎ、確実にプラトーに至らせることで肺胞へのガス拡散を促すことができる。また、低呼吸コンプライアンス症例に応じて確実にプラトーに至らせることができる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による呼吸管理制御装置において、吸気相の時間を一定時間とするものである。
本実施の形態によれば、吸気相の時間を一定時間とする一般的な圧規定換気モードに適用できる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態による呼吸管理制御装置は、制御手段では、気道内圧として、目標プラトー圧と、目標プラトー圧よりも高い導入付加圧とが設定され、駆動手段に対して、吸気開始ポイントからの導入付加時間では、導入付加圧になるようにガスを供給する駆動信号を出力し、導入付加時間経過後から呼気開始ポイントまでの間では、目標プラトー圧になるようにガスの供給を減少させる駆動信号を出力し、吸気経路からの流量を検出する流量検出センサを備え、制御手段では、呼気開始ポイントに至るまでに、流量が基準値に至らない場合には、導入付加圧を高くするものである。
本実施の形態によれば、導入付加圧を変更することでプラトーに到達させることができる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態による呼吸管理制御装置は、制御手段では、気道内圧として、目標プラトー圧と、目標プラトー圧よりも高い導入付加圧とが設定され、駆動手段に対して、吸気開始ポイントからの導入付加時間では、導入付加圧になるようにガスを供給する駆動信号を出力し、導入付加時間経過後から呼気開始ポイントまでの間では、目標プラトー圧になるようにガスの供給を減少させる駆動信号を出力し、吸気経路からの流量を検出する流量検出センサを備え、制御手段では、呼気開始ポイントに至るまでに、流量が基準値に至らない場合には、導入付加時間を長くするものである。
本実施の形態によれば、導入付加時間を変更することでプラトーに到達させることができる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第3又は第4の実施の形態による呼吸管理制御装置において、吸気経路からの流量を検出する流量検出センサを備え、制御手段では、流量検出センサで検出される流量から1回換気量を算出し、算出される1回換気量が目標1回換気量となるように、目標プラトー圧を変更するものである。
本実施の形態によれば、1回換気量を適切に維持することができる。
【0014】
本発明の第6の実施の形態は、第1から第5のいずれかの実施の形態による呼吸管理制御装置において、導入付加圧を、目標プラトー圧に対して130%以下とするものである。
本実施の形態によれば、安全性の高い制御を行える。
【0015】
本発明の第7の実施の形態は、第1から第6のいずれかの実施の形態による呼吸管理制御装置において、導入付加時間を、吸気相の1/2以下とするものである。
本実施の形態によれば、十分なプラトー時間を確保でき、肺胞の均一な広がりを促し、ガス交換効率が向上する。
【実施例】
【0016】
以下に本発明の実施例について説明する。
図1は本発明の一実施例による呼吸管理制御装置を機能実現手段で現したブロック図、
図2は同実施例による呼吸管理制御装置での気道内圧と流量の変化を示すグラフである。なお、本実施例では、人工呼吸器として説明するが、麻酔器として用いる場合には、酸素と圧縮空気だけでなく、亜酸化窒素、揮発性麻酔ガスの供給も行う。
【0017】
図1に示すように、本実施例による呼吸管理制御装置は、使用者に装着するインターフェース1と、インターフェース1に酸素を供給する吸気経路2と、インターフェース1から二酸化炭素を排出する呼気経路3と、流量検出センサ4と、気道内圧検出センサ5と、設定手段6と、ガス流量変更手段7と、駆動手段8と、制御手段10とを備えている。
インターフェース1としては、フェースマスク、鼻マスク、気管チューブ、又は気管カニューレが用いられる。
流量検出センサ4は、吸気経路2からの流量および呼気経路3への流量を検出する。従って、流量検出センサ4を吸気経路2と呼気経路3との合流点からインターフェース1までの間に設ける場合には、一つの流量検出センサ4によって吸気経路2からの流量および呼気経路3への流量を検出できるが、吸気経路2と呼気経路3とにそれぞれ流量検出センサ4を設けて各流量を検出してもよい。
気道内圧検出センサ5は、吸気経路2および呼気経路3の少なくともいずれかの圧力を気道内圧として検出する。
設定手段6は、入力装置で構成されて各種の設定値を設定する。
【0018】
吸気経路2には吸気弁7aを、呼気経路3には呼気弁7bを設けている。
吸気経路2には、圧縮空気供給源7cから供給される圧縮空気と、圧縮酸素供給源7dから供給される圧縮酸素とが混合器7eで混合されて供給される。
ガス流量変更手段7は、吸気弁7a、呼気弁7b、圧縮空気供給源7c、圧縮酸素供給源7d、混合器7e、及びその他のガス流量変更機構の少なくとも一つを用いて吸気経路2又は呼気経路3を流れるガスの流量を変更する。
ガス流量変更手段7は、駆動手段8によって制御される。
【0019】
制御手段10は、流量検出センサ4の流量検出値及び気道内圧検出センサ5の気道内圧検出値を入力し、駆動手段8に対して駆動信号を出力することで、吸気開始ポイントから呼気開始ポイントまでの吸気相の間における気道内圧を制御する。なお、制御手段10は、本実施例では吸気相での制御だけを説明する。
【0020】
制御手段10は、設定値記憶部11、比較部12、駆動信号出力部13、計時部14、及び換気量算出部15を有している。
設定値記憶部11では各種設定値が記憶される。
比較部12では、気道内圧検出センサ5で検出される気道内圧と、目標プラトー圧又は設定された導入付加圧とが比較される。
駆動信号出力部13では、吸気相であれば、比較部12で比較された結果、検出される気道内圧が目標プラトー圧又は設定された導入付加圧より低ければガスの供給量を増加させる駆動信号を出力し、検出される気道内圧が目標プラトー圧又は設定された導入付加圧より高ければガスの供給量を減少させ又は停止する駆動信号を出力する。
計時部14では時間を計測し、設定値記憶部11に記憶された設定時間に応じて駆動信号出力部13から駆動信号が出力される。ここで、設定時間とは、吸気開始ポイントから呼気開始ポイントまでの吸気相の時間、呼気開始ポイントから吸気開始ポイントまでの呼気相の時間、及び、導入付加圧を与える導入付加時間である。
吸気相の時間を一定時間とする場合には、設定値記憶部11に記憶された吸気時間を刑事部14が計測すると、駆動信号出力部13では、ガスを排出する駆動信号を出力する。
このように、時間通りに吸気を終了させることで、例えば筋弛緩薬使用時に用いる麻酔器の制御に適している。
【0021】
制御手段10では、気道内圧として、目標プラトー圧と、目標プラトー圧よりも高い導入付加圧とが設定され、駆動手段8に対して、吸気開始ポイントからの導入付加時間では、導入付加圧になるようにガスを供給する駆動信号を出力し、導入付加時間経過後から呼気開始ポイントまでの間では、目標プラトー圧になるようにガスの供給を減少させる駆動信号を出力する。
目標プラトー圧と導入付加圧とは、例えば設定手段6によって設定され、設定値記憶部11に記憶されている。
【0022】
設定手段6では、導入付加圧及び導入付加時間の少なくともいずれかを変更できることが好ましい。
このように、設定手段6において、導入付加圧及び導入付加時間の少なくともいずれかを変更できることで、低呼吸コンプライアンス症例に応じて確実にプラトーに至らせることができる。
【0023】
制御手段10では、吸気相において、呼気開始ポイントに至るまでに、流量が基準値に至らない場合には、導入付加圧を高くすることが好ましい。
また、制御手段10では、吸気相において、呼気開始ポイントに至るまでに、流量が基準値に至らない場合には、導入付加時間を長くすることが好ましい。
なお、導入付加圧を高くするとともに導入付加時間を長くしてもよい。
流量が基準値に至っているか否かは、流量検出センサ4によって検出することができる。ここで、基準値は基本的には流量がゼロである。
このように、導入付加圧や導入付加時間を変更することでプラトーに到達させることができる。
制御手段10では、流量検出センサ4で検出される流量から1回換気量を算出し、算出される1回換気量が目標1回換気量となるように、目標プラトー圧を変更することが好ましい。
このように、目標1回換気量となるように、目標プラトー圧を変更することで、1回換気量を適切に維持することができる。
【0024】
図2に示すように、制御手段10は、駆動手段8に対して、吸気開始ポイントからの導入付加時間では、導入付加圧になるようにガスを供給する駆動信号を出力し、導入付加時間経過後は呼気開始ポイントに至るまでは、目標プラトー圧になるようにガスの供給を減少させ又は停止させる駆動信号を出力する。
ここで、導入付加圧は、目標プラトー圧に対して130%以下、更には110%~120%とすることで、安全性の高い制御を行える。
また、導入付加時間は、吸気相の1/2以下、特に1秒から2秒とすることで、十分なプラトー時間を確保でき、肺胞の均一な広がりを促し、ガス交換効率が向上する。
【0025】
以上のように、本実施例によれば、導入付加時間では、目標プラトー圧より高い導入付加圧とすることで、肺胞圧の立ち上がりを早めることができ、その後はガスの供給を減少させることで肺過膨張を防ぎ、確実にプラトーに至らせることで肺胞へのガス拡散を促すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明による呼吸管理制御装置は、低呼吸コンプライアンス症例(肥満、気腹・頭低位、拘束性肺障害)に対して換気効率を向上できる。
【符号の説明】
【0027】
1 インターフェース
2 吸気経路
3 呼気経路
4 流量検出センサ
5 気道内圧検出センサ
6 設定手段
7 ガス流量変更手段
7a 吸気弁
7b 呼気弁
7c 圧縮空気供給源
7d 圧縮酸素供給源
7e 混合器
8 駆動手段
10 制御手段
11 比較部
12 吸気時間設定手段
13 駆動信号出力部
14 計時部
15 換気量算出部