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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】スクレイパー
(51)【国際特許分類】
   B23K 7/10 20060101AFI20240822BHJP
   B25B 33/00 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B23K7/10 Q
B25B33/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020194186
(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2022082982
(43)【公開日】2022-06-03
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】515077700
【氏名又は名称】株式会社セブンティ・エイト
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100143199
【弁理士】
【氏名又は名称】磯邉 毅
(72)【発明者】
【氏名】水谷 哲也
【審査官】杉田 隼一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第01350241(US,A)
【文献】英国特許出願公開第02502637(GB,A)
【文献】米国特許第02350157(US,A)
【文献】米国特許第04164801(US,A)
【文献】実開昭55-070926(JP,U)
【文献】特開2005-095970(JP,A)
【文献】特開2018-149635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 7/10
B25B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクレイパーの先端側に設けられた平刃状の刃部と、後端側に設けられた打撃部と、前記刃部と前記打撃部の中間に設けられた把持部と、を備えるスクレイパーであって、
前記刃部の幅方向に沿う平面の一つの面に、前記刃部の長さ方向に延びるスリットが形成され、
前記スリットは、前記刃部の刃先で開口され、かつ、長さ方向に側壁を有し、
溶断や溶接によって被加工物に付着した溶着物に前記刃先を押し付けることにより、被加工物から溶着物を削り取る際に、溶着物が前記スリット内に挿入されて前記側壁と当接することで、前記幅方向への前記刃先の移動が規制されることを特徴とするスクレイパー。
【請求項2】
前記刃部の前記スリットが形成された面と、この面に連なる先端側の面との成す角度が、側面視で鋭角であることを特徴とする請求項1に記載のスクレイパー。
【請求項3】
前記スリットは、前記刃部の厚さ方向内部に向かって幅が狭まるV溝であり、前記溝の開き角度が90度であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスクレイパー。
【請求項4】
前記スリットは、前記刃先の幅方向中央に1つ形成されていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のスクレイパー。
【請求項5】
前記スリットは、前記刃先の幅方向に沿って複数並設されていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のスクレイパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接や溶断時に被加工物に付着する溶着物を除去するスクレイパーに関する。特に溶断時に発生する溶断ノロを除去するスクレイパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、溶接や溶断時に被加工物に付着する溶着物を除去するため、先端側に設けられた平刃状の刃部と、後端側に設けられた打撃部と、刃部と打撃部の中間に設けられた把持部と、を備えるスクレイパーが使用されてきた。
【0003】
このスクレイパーの使用方法は、把持部を把持し、刃部の刃先を溶着物が付着する被加工物に押し当て、打撃部にハンマーで叩くことにより、刃先を溶着物に向かって押し出させて、被加工物から溶着物を削り取るというものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、溶断ノロ・ドロス等、溶断時に被加工物に付着した溶融金属を削り取る際、従来のスクレイパーでは、刃部の幅方向へと滑って刃先が押し出されることがあり、上手く溶断ノロを削り取ることができなかった。
【0005】
そこで本発明は、刃先が滑ることなく、的確に溶断ノロを削り取ることが可能なスクレイパーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のスクレイパーは、スクレイパーの先端側に設けられた平刃状の刃部と、後端側に設けられた打撃部と、前記刃部と前記打撃部の中間に設けられた把持部と、を備えるスクレイパーであって、前記刃部の幅方向に沿う平面の一つの面に、前記刃部の長さ方向に延びるスリットが形成され、前記スリットは、前記刃部の刃先で開口され、かつ、長さ方向に側壁を有し、溶断や溶接によって被加工物に付着した溶着物に前記刃先を押し付けることにより、被加工物から溶着物を削り取る際に、溶着物が前記スリット内に挿入されて前記側壁と当接することで、前記幅方向への前記刃先の移動が規制されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明のスクレイパーでは、刃先で開口されかつ、長さ方向に側壁を有するスリットが刃部に形成されているので、削り取る際、溶着物の一部がスリット内に入り込む。刃先が滑ろうとしても、溶着物がスリットの側壁とぶつかるので幅方向へ刃先は移動できないこととなる。従って、刃先は先方に向かってのみ移動するので、滑ることなく的確に溶着物を被加工物から削り取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るスクレイパーを示す平面側からの斜視図である。
図2】同上スクレーパーの背面側からの斜視図である。
図3】同上スクレーパーの側面図である。
図4】同上スクレーパーの拡大側面図である。
図5図1のA-A線断面図である。
図6】同上スクレーパーの使用方法を示す図である。
図7】同上スクレーパーの他の使用方法を示す図である。
図8】(a),(b)は本発明の他の実施形態に係るスクレイパーを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係るスクレイパーを図1図5を用いて詳細に説明する。これら図において、スクレイパー1の先端側を正面、後端側を背面として以下説明する。
【0010】
スクレイパー1は、先端側に設けられた平刃状の刃部2と、後端側に設けられた打撃部3と、刃部2と打撃部3の中間に設けられた把持部4と、を備えている。刃部2の後端は、後方に向かって延びる平板状の連続部5と一体化されていおり、連続部5の後端に打撃部3は固定されている。
【0011】
打撃部3は、連続部5より肉厚に形成されており、この打撃部3の後端にハンマーが打ち付けられることとなる。把持部4は、木製の平板6,6で連続部5の表裏面を挟み、ピン7,7で平板6,6及び連続部5を固定することにより形成されている。
【0012】
刃部2は、図3図4に示すように、刃部2の幅方向に沿う平面の一つの面2a(底面)と、この底面に連なる先端側の面2b(正面)との成す角度θが、側面視で鋭角に形成されている。この鋭角に形成されている二つの面2a,2bの交差する線が刃部2の刃先21となる。
【0013】
また、図5に示すように、刃部2の面2aには刃部2の長さ方向(先後方向)に延びるスリット22が形成されている。このスリット22は、刃先21で開口され、かつ、長さ方向に延びる側壁23,24を有している。このスリット22は、10~30mm程度の長さとされればよく、刃部2の幅方向中央に1つ形成されている。このスリット22は、刃部の厚さ方向内部に向かって幅が狭まるV溝に形成されており、溝の開き角度は90°とされている。なお、溝の開き角度は、90°が適切であるが、これに限られるものではない。
【0014】
次に、このスクレイパー1の使用方法を図6~7を用いて説明する。まず、図6に示すような、溶断された鋼板8の表面81に付着した溶断ノロ9をスクレイパー1を用いて研削する方法を説明する。
【0015】
図6に示すように、予め鋼板8は溶断されており、鋼板8の表面81及び切断面82の角付近には、表面81及び切断面82を跨いで不定形の溶断ノロ9が付着している。スクレイパー1の使用者は、把持部4を片手で把持し、刃部2の刃先21を表面81の溶断ノロ9に当てる。もう一方の片手でハンマー10を把持し、そのハンマー10を打撃部3に打ち付けると、刃先21が先方に向かって押し出される。この刃先21が先方に向かって押し出されることにより、溶断ノロ9は、表面81から削り取られる。
【0016】
刃先21が先方に向かって押し出されるとき、スクレイパー1には、スリット22が形成されているので、溶断ノロ9の一部がスリット22内に入り込む。ここで、溶断ノロ9は溶融金属であるので固く、形が不定形であるので、刃先21を先方に向かって押し出そうとしても、刃部2の幅方向、例えば左右方向に刃部2が滑ることがある。
【0017】
しかしながら、スクレイパー1にはスリット22が形成されているので、刃刃先21が左右方向に滑ろうとすると、スリット22内に入り込んだ溶断ノロ9がスリット22の側壁23又は24と当接する。側壁23又は24がスリット22内に入り込んだ溶断ノロ9と当接し、それ以上左右方向に移動できなくなるので、刃先21は左右方向に滑ることができない。よって、刃先21の左右方向移動が規制されるので、滑ることなく刃先22を
先方へと押し出すことが可能となり、的確に溶断ノロ9を研削することができる。
【0018】
次に、図7に示すような、鋼板8の表面81と切断面82が接する角部83の溶断ノロ9を研削する方法を説明する。この場合、角部83の溶断ノロ9が付着されていない箇所にスクレイパー1のスリット22を移動させ、スリット22内に角部83を入り込ませる。このとき、スリット22はV溝に形成されており、その開き角度が90度であるので、側壁23は切断面82と当接し、側壁24は表面81と当接する。
【0019】
そして、刃先21を先方に向かって押し出させると、側壁23の先端によって角部83の表面81側の溶断ノロ9は研削され、側壁24の先端によって角部83の切断面82側の溶断ノロ9は研削されることとなる。このように、スクレイパー1のスリット22は開き角度が90度のV溝に形成されているので、スクレイパー1は溶断ノロ9の研削が困難な角部83に対し、容易に溶断ノロを研削することができる。
【0020】
本実施形態では、刃部2の幅方向中央に1つスリット22が形成されているが、このスリット22は幅方向に沿って複数形成されていてもよい。例えば、図8(a)に示すように、4本のスリット22,・・・22を形成してもよいし、刃部2の幅が長い場合は、図8(b)に示すように、9本のスリット22,・・・22を形成してもよく、スリットの数は限定されない。但し、本実施形態の1本のみのものが、最もスクレイパー1に力が入り易く、溶断ノロを研削し易くなる。
【0021】
また、図7に示すような鋼板の角部83の溶断ノロ9が削りにくくはなるが、スリット22のV溝の開き角度は、90度以外の角度であってもよい。また、V溝以外の溝であってもよく、側壁が溶断ノロと当接することにより刃先の幅方向への移動が規制されるなら、断面視台形状や断面視半円状であってもよい。
【0022】
スリット22の長さは10~30mm程度としたが、これに限定されず、側壁が溶断ノロと当接することにより刃先の幅方向への移動が規制されるなら、10mm以下でもよく、30mm以上であってもよい。但し、溶断ノロの研削を行えば行う程、刃部2は擦り減っていくので、擦り減っても使用できるようスリット22の長さは少なくとも10mm程度以上あることが望ましい。
【符号の説明】
【0023】
1 スクレイパー
2 刃部
21 刃先
22 スリット
23 側壁
24 側壁
2a 面
2b 面
3 打撃部
4 把持部
5 連続部
6 平板
7 ピン
8 鋼板
81 表面
82 切断面
9 溶断ノロ
10 ハンマー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8