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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020194512
(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2022083210
(43)【公開日】2022-06-03
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 竜也
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-039082(JP,A)
【文献】特開2004-225718(JP,A)
【文献】特開2020-067123(JP,A)
【文献】特開2014-196810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00- 31/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁本体と、前記弁本体に接合されるキャンと、前記キャンの内側に配置されるマグネットローターと、前記キャンの外側に配置されるステーターと、前記ステーターを収容するハウジングと、前記ハウジングを前記弁本体に固定する締結部材と、を有する電動弁であって、
前記締結部材が、頭部と、前記頭部より小径の円柱形状の軸部と、を有し、
前記弁本体が、前記軸部を保持する締結穴を有し、
前記ハウジングが、前記軸部が挿入される貫通孔と、前記貫通孔の周縁に配置され、前記弁本体に近づくにしたがって徐々に径が小さくなる環状のテーパー面と、を有し、
前記締結部材が、
前記テーパー面に接する環状の当接部を有し、または、
前記テーパー面に接する、周方向に間隔をあけて配置された複数の当接部を有している、ことを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記締結部材が、ねじであり、
前記軸部には、雄ねじが設けられ、
前記締結穴には、雌ねじが設けられている、請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記締結部材が、圧入ピンであり、
前記軸部が、前記締結穴に圧入される、請求項1に記載の電動弁。
【請求項4】
前記ハウジングが、前記ステーターを収容するハウジング本体と、前記ハウジング本体に固定され、前記貫通孔が設けられたブラケットと、を有し、
前記弁本体と前記ハウジング本体との間に隙間が設けられている、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項5】
弁本体と、前記弁本体に接合されるキャンと、前記キャンの内側に配置されるマグネットローターと、前記キャンの外側に配置されるステーターと、前記ステーターを収容するハウジングと、前記ハウジングを前記弁本体に固定する締結部材と、を有する電動弁であって、
前記締結部材が、頭部と、前記頭部より小径の円柱形状の軸部と、を有し、
前記弁本体が、前記軸部を保持する締結穴を有し、
前記ハウジングが、前記軸部が挿入される貫通孔を有し、
前記軸部には、
前記頭部に近づくにしたがって徐々に径が大きくなる環状のテーパー面が設けられ、または、
前記頭部に近づくにしたがって徐々に径方向外方に向かう傾斜面を有し、周方向に間隔をあけて配置された複数の突部が設けられ、
前記締結部材が、圧入ピンであり、
前記軸部が、前記締結穴に圧入される、ことを特徴とする電動弁。
【請求項6】
弁本体と、前記弁本体に接合されるキャンと、前記キャンの内側に配置されるマグネットローターと、前記キャンの外側に配置されるステーターと、前記ステーターを収容するハウジングと、前記ハウジングを前記弁本体に固定する締結部材と、を有する電動弁であって、
前記締結部材が、頭部と、前記頭部より小径の円柱形状の軸部と、を有し、
前記弁本体が、前記軸部を保持する締結穴を有し、
前記ハウジングが、前記軸部が挿入される貫通孔を有し、
前記軸部には、
前記頭部に近づくにしたがって徐々に径が大きくなる環状のテーパー面が設けられ、または、
前記頭部に近づくにしたがって徐々に径方向外方に向かう傾斜面を有し、周方向に間隔をあけて配置された複数の突部が設けられ、
前記ハウジングが、前記ステーターを収容するハウジング本体と、前記ハウジング本体に固定され、前記貫通孔が設けられたブラケットと、を有し、
前記弁本体と前記ハウジング本体との間に隙間が設けられている、ことを特徴とする電動弁。
【請求項7】
前記軸部には、前記テーパー面が設けられ、前記テーパー面の最大径が、前記ハウジングの前記貫通孔の径以上である、または、
前記軸部には、前記複数の突部が設けられ、前記複数の突部の傾斜面における最も径方向外方の箇所を円で結んだときに、当該円の直径が前記ハウジングの前記貫通孔の径以上である、請求項5または請求項6に記載の電動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電動弁の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1の電動弁は、弁室が設けられた弁本体を有している。弁室には、弁体が配置されている。弁本体には、円筒状のキャンが接合されている。電動弁は、マグネットローターとステーターとを有している。マグネットローターとステーターとは、ステッピングモーターを構成する。マグネットローターは、キャンの内側に配置されている。ステーターは、キャンの外側に配置されている。ステーターは、ハウジングに収容されている。ハウジングは、弁本体にねじによって固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-173102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電動弁で用いられる固定構造を図8に示す。図8の固定構造は、ハウジング970の貫通孔979aにねじ983の軸部985を挿入するとともに、軸部985を弁本体910の締結穴918に螺合して、ハウジング970を弁本体910に固定するものである。
【0005】
しかしながら、ハウジング970の貫通孔979aの径が、軸部985の外径よりも大きいため、電動弁の組立時に弁本体910に対してハウジング970が位置ずれして固定される可能性があった。また、電動弁の組立後に強い衝撃や振動などが加わった場合に弁本体910に対してハウジング970が位置ずれする可能性があった。そのため、マグネットローターとステーターとの位置がずれてしまい、電動弁の動作不良が生じるおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、弁本体とステーターを収容するハウジングとの位置ずれを抑制できる電動弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電動弁は、弁本体と、前記弁本体に接合されるキャンと、前記キャンの内側に配置されるマグネットローターと、前記キャンの外側に配置されるステーターと、前記ステーターを収容するハウジングと、前記ハウジングを前記弁本体に固定する締結部材と、を有する電動弁であって、前記締結部材が、頭部と、前記頭部より小径の円柱形状の軸部と、を有し、前記弁本体が、前記軸部を保持する締結穴を有し、前記ハウジングが、前記軸部が挿入される貫通孔を有し、前記軸部には、前記頭部に近づくにしたがって徐々に径が大きくなる環状のテーパー面が設けられ、または、前記頭部に近づくにしたがって徐々に径方向外方に向かう傾斜面を有し、周方向に間隔をあけて配置された複数の突部が設けられている、ことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、弁本体が、締結部材の軸部を保持する締結穴を有している。ハウジングが、締結部材の軸部が挿入される貫通孔を有している。そして、締結部材の軸部には、締結部材の頭部に近づくにしたがって徐々に径が大きくなる環状のテーパー面が設けられている。または、締結部材の軸部には、締結部材の頭部に近づくにしたがって徐々に径方向外方に向かう傾斜面を有し、周方向に間隔をあけて配置された複数の突部が設けられている。このようにしたことから、締結部材の軸部を貫通孔に挿入するとともに当該軸部を締結穴に保持させると、締結部材のテーパー面または傾斜面がハウジングにおける貫通孔の周縁部に接して、締結穴と貫通孔との位置関係が修正される。そのため、弁本体とハウジングとの位置ずれを抑制できる。
【0009】
本発明において、前記軸部には、前記テーパー面が設けられ、前記テーパー面の最大径が、前記ハウジングの前記貫通孔の径以上であることが好ましい。このようにすることで、締結部材によって、弁本体の締結穴の中心軸とハウジングの貫通孔の中心軸とが一致するように、締結穴と貫通孔との位置関係が修正される。そのため、弁本体とハウジングとの位置ずれをさらに抑制できる。
【0010】
本発明において、前記軸部には、前記複数の突部が設けられ、前記複数の突部の傾斜面における最も径方向外方の箇所を円で結んだときに、当該円の直径が前記ハウジングの前記貫通孔の径以上であることが好ましい。このようにすることで、締結部材によって、弁本体の締結穴の中心軸とハウジングの貫通孔の中心軸とが一致するように、締結穴と貫通孔との位置関係が修正される。そのため、弁本体とハウジングとの位置ずれをさらに抑制できる。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る電動弁は、弁本体と、前記弁本体に接合されるキャンと、前記キャンの内側に配置されるマグネットローターと、前記キャンの外側に配置されるステーターと、前記ステーターを収容するハウジングと、前記ハウジングを前記弁本体に固定する締結部材と、を有する電動弁であって、前記締結部材が、頭部と、前記頭部より小径の円柱形状の軸部と、を有し、前記弁本体が、前記軸部を保持する締結穴を有し、前記ハウジングが、前記軸部が挿入される貫通孔と、前記貫通孔の周縁に配置され、前記弁本体に近づくにしたがって徐々に径が小さくなる環状のテーパー面と、を有し、前記締結部材が、前記テーパー面に接する環状の当接部を有し、または、前記テーパー面に接する、周方向に間隔をあけて配置された複数の当接部を有している、ことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、弁本体が、締結部材の軸部を保持する締結穴を有している。ハウジングが、締結部材の軸部が挿入される貫通孔と、貫通孔の周縁に配置され、弁本体に近づくにしたがって徐々に径が小さくなる環状のテーパー面と、を有している。そして、締結部材が、テーパー面に接する環状の当接部を有している。または、締結部材が、テーパー面に接する、周方向に間隔をあけて配置された複数の当接部を有している。このようにしたことから、締結部材の軸部を貫通孔に挿入するとともに当該軸部を締結穴に保持させると、締結部材の当接部がハウジングのテーパー面に接して、弁本体の締結穴の中心軸とハウジングの貫通孔の中心軸とが一致するように、締結穴と貫通孔との位置関係が修正される。そのため、弁本体とハウジングとの位置ずれを抑制できる。
【0013】
本発明において、前記締結部材が、ねじであり、前記軸部には、雄ねじが設けられ、前記締結穴には、雌ねじが設けられていることが好ましい。このようにすることで、比較的簡易な構成で、弁本体とハウジングとの位置ずれを抑制できる。
【0014】
本発明において、前記締結部材が、圧入ピンであり、前記軸部が、前記締結穴に圧入されることが好ましい。このようにすることで、比較的簡易な構成で、弁本体とハウジングとの位置ずれを抑制できる。
【0015】
本発明において、前記ハウジングが、前記ステーターを収容するハウジング本体と、前記ハウジング本体に固定され、前記貫通孔が設けられたブラケットと、を有し、前記弁本体と前記ハウジング本体との間に隙間が設けられていることが好ましい。このようにすることで、締結部材によって弁本体にブラケットを固定したときに、ハウジング本体が弁本体に接して移動しにくくなってしまうことを抑制できる。そのため、弁本体とハウジングとの位置ずれをさらに抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、弁本体とハウジングとの位置ずれを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施例に係る電動弁の正面図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3図1の電動弁の弁本体およびハウジングの固定構造を示す図である。
図4図3の固定構造で用いられる締結部材の変形例の構成を示す斜視図である。
図5図1の電動弁に適用可能な他の固定構造を示す図である。
図6図5の固定構造で用いられる締結部材の変形例の構成を示す斜視図である。
図7図1の電動弁に適用可能なさらに他の固定構造を示す断面図である。
図8】従来の電動弁のねじによる固定構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施例に係る電動弁について、図1図3を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施例に係る電動弁の正面図である。図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。図2は、図1の電動弁の軸線に沿う断面図(縦断面図)でもある。図3は、図1の電動弁の弁本体およびハウジングの固定構造を示す図である。図3(a)は、締結部材およびその近傍の断面図である。図3(b)は、図3(a)に示す固定構造で用いられる締結部材の斜視図である。
【0020】
図1図2に示すように、電動弁1は、弁本体10と、キャン20と、駆動機構30と、弁体40と、ステーターユニット50と、を有している。
【0021】
弁本体10は、例えば、アルミニウム合金などの金属製である。弁本体10は、本体部11と、円筒部12と、鍔部13と、を有している。本体部11は、直方体形状を有している。円筒部12は、本体部11の上面から突出するように配置されている。円筒部12は、本体部11にねじ構造により取り付けられている。本体部11には、弁室14と、流路15、16と、が設けられている。流路15は、弁室14に接続されている。流路16は、ポート17を介して弁室14に接続されている。鍔部13は、円環板形状を有している。鍔部13の内周縁は、円筒部12の上端に接合されている。
【0022】
キャン20は、例えば、ステンレスなどの金属製である。キャン20は、上端部が塞がれた円筒形状を有している。キャン20の下端部は、鍔部13の外周縁に接合されている。
【0023】
駆動機構30は、弁体40を上下方向に移動させる。駆動機構30は、マグネットローター31と、弁軸ホルダー32と、ガイドブッシュ33と、弁軸34と、を有している。
【0024】
マグネットローター31は、円筒形状を有している。マグネットローター31は、キャン20の内側に配置されている。マグネットローター31の外径は、キャン20の内径より若干小さい。マグネットローター31の外周面には、複数のN極および複数のS極が設けられている。複数のN極および複数のS極は、上下方向に延在しており、周方向に等間隔でかつ交互に配置されている。
【0025】
弁軸ホルダー32は、上端が塞がれた円筒形状を有している。弁軸ホルダー32の上端部には支持リング35が固定されている。支持リング35を介して、マグネットローター31と弁軸ホルダー32とが一体的に結合されている。弁軸ホルダー32の内周面には、雌ねじ32cが設けられている。
【0026】
ガイドブッシュ33は、第1円筒部33aと、第2円筒部33bと、を一体的に有している。第2円筒部33bの外径は、第1円筒部33aの外径より小さい。第2円筒部33bは、第1円筒部33aの上端部に同軸に連設されている。第2円筒部33bの外周面には、雄ねじ33cが設けられている。雄ねじ33cは、弁軸ホルダー32の雌ねじ32cと螺合される。第1円筒部33aは、弁本体10の円筒部12に設けられた嵌合孔12aに圧入されている。ガイドブッシュ33は、弁本体10と結合されている。
【0027】
弁軸34は、円柱形状を有している。弁軸34の上端部34aは、弁軸ホルダー32を貫通している。弁軸34の上端部34aには、抜け止め用のプッシュナット36が取り付けられている。弁軸34は、ガイドブッシュ33および円筒部12を通り、その下端部が弁室14に配置されている。弁軸ホルダー32と弁軸34の段部34bとの間には、閉弁ばね37が配置されている。閉弁ばね37は、圧縮コイルばねである。閉弁ばね37は、弁軸34を下方に向けて押している。
【0028】
弁体40は、弁軸34の下端部に一体的に設けられている。弁体40は、弁室14に配置されている。弁体40は、駆動機構30によって上下方向に移動される。弁体40の移動によってポート17が開閉される。
【0029】
ステーターユニット50は、ステーター60と、ハウジング70と、を有している。
【0030】
ステーター60は、円筒形状を有している。ステーター60は、キャン20の外側に配置される。ステーター60は、マグネットローター31とともにステッピングモーターを構成している。ステーター60は、上段ステーター61と、下段ステーター62と、合成樹脂製のモールド63と、を有している。
【0031】
上段ステーター61と下段ステーター62とは、上下に重ねて配置されている。上段ステーター61と下段ステーター62とは、周方向に等間隔に並んで配置された複数のクローポール型の極歯を有している。モールド63は、上段ステーター61および下段ステーター62内に充填されている。モールド63は、ステーター60の内周面を構成している。モールド63は、端子支持部64を有している。
【0032】
端子支持部64は、上段ステーター61および下段ステーター62から横方向に延びるように配置されている。端子支持部64は、複数の端子65を支持している。複数の端子65は、端子支持部64の先端から横方向に突出している。複数の端子65は、上段ステーター61および下段ステーター62が有するコイルに接続されている。
【0033】
ハウジング70は、ハウジング本体71と、ブラケット77と、を有している。
【0034】
ハウジング本体71は、合成樹脂製である。ハウジング本体71は、ステーター60を収容している。ハウジング本体71は、周壁部72と、上壁部73と、ドーム部74と、筒状部75と、コネクタ部76と、を一体的に有している。
【0035】
周壁部72は、円筒形状を有している。上壁部73は、周壁部72の上端に連設されている。ドーム部74は、上壁部73の中央部から上方に突出している。ステーター60およびドーム部74にキャン20が挿入される。筒状部75は、周壁部72より小径の円筒形状を有している。筒状部75は、周壁部72から下方に突出している。筒状部75は、弁本体10の円筒部12を囲むように配置されている。筒状部75と円筒部12との間には、円環形状の封止部材80が配置されている。封止部材80は、ゴム材などの弾性材料で構成されている。筒状部75の下端と本体部11の上面11aとの間には隙間が設けられている。なお、筒状部75の下端と上面11aとが接していてもよい。コネクタ部76は、楕円筒形状を有している。コネクタ部76は、周壁部72から横方向に伸びている。コネクタ部76の内側には、端子支持部64および複数の端子65が配置されている。
【0036】
ブラケット77は、金属製である。ブラケット77は、ブラケット本体78と、取付片79と、を一体的に有している。ブラケット本体78は、円環板形状を有している。ブラケット本体78は、ハウジング本体71の周壁部72の下端に固定されている。取付片79は、板形状を有している。取付片79は、ブラケット本体78から下方に延びている。取付片79には、貫通孔79aが設けられている。取付片79は、締結部材83によって本体部11に固定されている。
【0037】
締結部材83は、ねじである。図3(a)、(b)に示すように、締結部材83は、円柱形状の頭部84と、頭部84より小径の円柱形状の軸部85と、を有している。軸部85の外周面には、雄ねじ85aが設けられている。軸部85には、環状のテーパー面86が設けられている。テーパー面86は、軸部85における頭部84側の端部に配置されている。テーパー面86は、軸部85の先端側から頭部84側に近づくにしたがって徐々に径が大きくなるように形成されている。テーパー面86における頭部84側の端部の径は、当該テーパー面86の最大径である。本実施例において、テーパー面86の最大径は、貫通孔79aの径と等しい。テーパー面86の最大径は、貫通孔79aの径以上であることが好ましい。なお、テーパー面86の最大径は、貫通孔79aの径より小さくてもよいが、軸部85(雄ねじ85a)の径より大きくなければならない。軸部85は、本体部11に設けられた締結穴18に保持される。締結穴18の内周面には、雌ねじ18aが設けられている。雌ねじ18aには、雄ねじ85aが螺合される。
【0038】
電動弁1において、弁本体10の円筒部12、ポート17、キャン20、マグネットローター31、弁軸ホルダー32、ガイドブッシュ33、弁軸34、弁体40、ステーター60、ハウジング70(ドーム部74、筒状部75、ブラケット本体78)は、それぞれの中心軸が軸線Lに一致する。
【0039】
次に、電動弁1の動作について説明する。
【0040】
電動弁1において、マグネットローター31が一方向に回転するように、上段ステーター61および下段ステーター62に通電する。マグネットローター31とともに弁軸ホルダー32が回転する。弁軸ホルダー32の雌ねじ32cとガイドブッシュ33の雄ねじ33cとのねじ送り作用により、弁軸ホルダー32が下方に移動する。弁軸ホルダー32とともに弁軸34も下方に移動して弁体40がポート17を閉じる(閉弁状態)。
【0041】
電動弁1において、マグネットローター31が他方向に回転するように、上段ステーター61および下段ステーター62に通電する。マグネットローター31とともに弁軸ホルダー32が回転する。弁軸ホルダー32の雌ねじ32cとガイドブッシュ33の雄ねじ33cとのねじ送り作用により、弁軸ホルダー32が上方に移動する。弁軸ホルダー32とともに弁軸34も上方に移動して弁体40がポート17を開く(開弁状態)。
【0042】
次に、弁本体10にハウジング70を固定する方法の一例について説明する。
【0043】
弁本体10に接合されたキャン20を、ハウジング70に収容されたステーター60およびハウジング70のドーム部74に挿入する。弁本体10の本体部11の締結穴18とハウジング70の取付片79の貫通孔79aとの位置をおおまかに合わせる。締結部材83の軸部85を貫通孔79aに挿入するとともに、軸部85の雄ねじ85aを締結穴18の雌ねじ18aに螺合させる。このとき、締結部材83のテーパー面86が取付片79における貫通孔79aの周縁部に当接する。これにより、締結部材83によって、締結穴18の中心軸と貫通孔79aの中心軸とが軸線L1上で一致するように、締結穴18と貫通孔79aとの位置関係が修正される。そのため、弁本体10とハウジング70とが正しい位置に配置される。そして、締結部材83の頭部84と本体部11との間に取付片79が挟まれて、弁本体10にハウジング70が固定される。
【0044】
以上説明したように、本実施例の電動弁1は、弁本体10と、弁本体10に接合されるキャン20と、キャン20の内側に配置されるマグネットローター31と、キャン20の外側に配置されるステーター60と、ステーター60を収容するハウジング70と、ハウジング70を弁本体10に固定する締結部材83と、を有している。締結部材83が、頭部84と、頭部84より小径の円柱形状の軸部85と、を有している。弁本体10が、軸部85を保持する締結穴18を有している。ハウジング70が、軸部85が挿入される貫通孔79aを有している。そして、軸部85には、頭部84に近づくにしたがって徐々に径が大きくなる環状のテーパー面86が設けられている。
【0045】
このようにしたことから、締結部材83の軸部85を貫通孔79aに挿入するとともに当該軸部85を締結穴18に保持させると、締結部材83のテーパー面86がハウジング70の取付片79における貫通孔79aの周縁部に接して、締結穴18と貫通孔79aとの位置関係が修正される。そのため、弁本体10とハウジング70との位置ずれを抑制できる。
【0046】
また、軸部85には、環状のテーパー面86が設けられている。そして、テーパー面86の最大径が、ハウジング70の貫通孔79aの径以上である。このようにすることで、締結部材83によって、弁本体10の締結穴18の中心軸とハウジング70の貫通孔79aの中心軸とが一致するように、締結穴18と貫通孔79aとの位置関係が修正される。そのため、弁本体10とハウジング70との位置ずれをさらに抑制できる。
【0047】
テーパー面86の最大径を貫通孔79aの径以上として、軸部85の雄ねじ85aを締結穴18の雌ねじ18aに螺合させていき、テーパー面86が貫通孔79aの周縁部によってつぶされる(すなわち、削られる)ことで、締結部材83の頭部84と本体部11との間に取付片79が挟まれるようにしてもよい。この場合、弁本体10にハウジング70をより強固に固定できる。
【0048】
また締結部材83が、ねじである。軸部85には、雄ねじ85aが設けられている。締結穴18には、雌ねじ18aが設けられている。このようにすることで、比較的簡易な構成で、弁本体10とハウジング70との位置ずれを抑制できる。
【0049】
また、ハウジング70が、ステーター60を収容するハウジング本体71と、ハウジング本体71に固定され、貫通孔79aが設けられたブラケット77と、を有している。そして、弁本体10とハウジング本体71との間に隙間が設けられている。このようにすることで、締結部材83によって弁本体10にブラケット77を固定したときに、ハウジング本体71が弁本体10に接して移動しにくくなってしまうことを抑制できる。そのため、弁本体10とハウジング70との位置ずれをさらに抑制できる。
【0050】
次に、上述した電動弁1の変形例の構成について、図4図7を参照して説明する。
【0051】
図4は、図3の固定構造で用いられる締結部材の変形例の構成を示す斜視図である。図5は、図1の電動弁に適用可能な他の固定構造を示す図である。図5(a)は、締結部材およびその近傍の断面図である。図5(b)は、図5(a)に示す固定構造で用いられる締結部材の斜視図である。図6は、図5の固定構造で用いられる締結部材の変形例の構成を示す斜視図である。図7は、図1の電動弁に適用可能なさらに他の固定構造を示す断面図である。図7の固定構造は、締結部材として圧入ピンを用いた固定構造である。図7(a)は、締結部材およびその近傍の断面図である。図7(b)は、図7(a)の固定構造の変形例の構成を示す、締結部材およびその近傍の断面図である。図4図7において、上述した電動弁1と同一(実質的に同一含む)の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
図4に示す締結部材83Aは、上述した電動弁1において、締結部材83の代わりに用いることができる。締結部材83Aの軸部85には、複数の突部87が設けられている。複数の突部87は、軸部85における頭部84側の端部に周方向に等間隔をあけて配置されている。本実施例において、4つの突部87が周方向に90度間隔で配置されている。複数の突部87は、軸部85に対して傾斜した傾斜面87aを有している。傾斜面87aは、軸部85の先端側から頭部84側に近づくにしたがって徐々に径方向外方に向かうように形成されている。複数の突部87の傾斜面87aの頭部84側の端部(傾斜面87aにおける最も径方向外方の箇所)を円で結んだときに、当該円の直径がハウジング70の取付片79の貫通孔79aの径以上であることが好ましい。締結部材83Aを用いた構成においても、上記電動弁1と同様の作用効果を奏する。
【0053】
図5に示す固定構造は、上述した電動弁1において、図3に示す固定構造の代わりに用いることができる。図5の固定構造は、ブラケット77の取付片79Bの貫通孔79aおよびテーパー面79bと、締結部材83Bと、弁本体10の締結穴18と、を有している。取付片79Bは、貫通孔79aと、テーパー面79bと、を有している。テーパー面79bは、貫通孔79aを囲むように配置されている。テーパー面79bは、取付片79Bの外面(頭部84が接する面)から弁本体10の本体部11に近づくにしたがって徐々に径が小さくなるように形成されている。テーパー面79bにおける本体部11側の端部は、貫通孔79aの内周面に連なっている。締結部材83Bは、ねじである。図5に示すように、締結部材83Bの軸部85には、円環状の当接部88が設けられている。当接部88は、軸部85における頭部84側の端部に配置されている。当接部88は、軸部85より大径に形成されている。当接部88は、軸部85を取付片79Bの貫通孔79aに挿入するとともに、軸部85の雄ねじ85aを締結穴18の雌ねじ18aに螺合させたとき、テーパー面79bに接するように形成されている。具体的には、当接部88における軸部85の先端側の端部がテーパー面79bに接する。図5の固定構造を用いた構成においても、上記電動弁1と同様の作用効果を奏する。
【0054】
図6に示す締結部材83Cは、図5に示す固定構造において、締結部材83Bの代わりに用いることができる。締結部材83Cの軸部85には、複数の当接部89が設けられている。複数の当接部89は、軸部85における頭部84側の端部に周方向に等間隔をあけて配置されている。本実施例において、4つの当接部89が周方向に90度間隔で配置されている。複数の当接部89は、それぞれの高さ(軸部85の外周面から当接部89の径方向外方を向く面までの距離)が同一となるように形成されている。複数の当接部89は、軸部85を取付片79Bの貫通孔79aに挿入するとともに、軸部85の雄ねじ85aを締結穴18の雌ねじ18aに螺合させたとき、テーパー面79bに接するように形成されている。具体的には、当接部89における軸部85の先端側の端部がテーパー面79bに接する。締結部材83Cを用いた構成においても、上記電動弁1と同様の作用効果を奏する。
【0055】
また、上述した電動弁1では、弁本体10とハウジング70とをねじを用いた固定構造で固定するものであったが、このような固定構造に代えて、図7(a)、(b)に示すような、圧入ピンを用いた固定構造を採用してもよい。
【0056】
図7(a)に示す固定構造は、ブラケット77の取付片79の貫通孔79aと、締結部材183と、弁本体10の締結穴19と、を有している。締結部材183は、圧入ピンである。締結部材183は、円柱形状の頭部184と、頭部184より小径の円柱形状の軸部185と、を有している。軸部185の径は、締結穴19の径よりわずかに大きい。軸部185は、締結穴19に圧入される。また、軸部185には、環状のテーパー面186が設けられている。テーパー面186は、軸部185における頭部184側の端部に配置されている。テーパー面186は、軸部185の先端側から頭部184側に近づくにしたがって徐々に径が大きくなるように形成されている。テーパー面186における頭部184側の端部の径は、当該テーパー面186の最大径である。テーパー面186の最大径は、貫通孔79aの径と等しい。テーパー面186の最大径は、貫通孔79aの径以上であることが好ましい。軸部185は、締結穴19に保持される。図7(a)の固定構造を用いた構成においても、上記電動弁1と同様の作用効果を奏する。
【0057】
図7(b)に示す固定構造は、ブラケット77の取付片79Bの貫通孔79aおよびテーパー面79bと、締結部材183Bと、弁本体10の締結穴19と、を有している。締結部材183Bは、圧入ピンである。締結部材183Bは、円柱形状の頭部184Bと、頭部184Bより小径の円柱形状の軸部185と、を有している。頭部184Bの径は、テーパー面79bの最大径より小さく、テーパー面79bの最小径より大きい。頭部184Bは、軸部185を取付片79Bの貫通孔79aに挿入するとともに、軸部185を締結穴19に圧入したとき、テーパー面79bに当接するように形成されている。頭部184Bは、テーパー面79bに接する当接部である。図7(b)の固定構造を用いた構成においても、上記電動弁1と同様の作用効果を奏する。
【0058】
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の実施例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1…電動弁、10…弁本体、11…本体部、11a…上面、12…円筒部、12a…嵌合孔、13…鍔部、14…弁室、15、16…流路、17…ポート、18、19…締結穴、18a…雌ねじ、20…キャン、30…駆動機構、31…マグネットローター、32…弁軸ホルダー、32c…雌ねじ、33…ガイドブッシュ、33a…第1円筒部、33b…第2円筒部、33c…雄ねじ、34…弁軸、34a…上端部、34b…段部、35…支持リング、36…プッシュナット、37…閉弁ばね、40…弁体、50…ステーターユニット、60…ステーター、61…上段ステーター、62…下段ステーター、63…モールド、64…端子支持部、65…端子、70…ハウジング、71…ハウジング本体、72…周壁部、73…上壁部、74…ドーム部、75…筒状部、76…コネクタ部、77…ブラケット、78…ブラケット本体、79…取付片、79a…貫通孔、79b…テーパー面、80…封止部材、83、83A、83B、83C、183、183B…締結部材、84、184、184B…頭部、85、185…軸部、85a…雄ねじ、86、186…テーパー面、87…突部、87a…傾斜面、88、89…当接部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8