(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】間葉系幹細胞の創傷治癒特性を誘導するまたは改善する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/51 20150101AFI20240822BHJP
A61K 35/50 20150101ALI20240822BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240822BHJP
C12N 5/0775 20100101ALI20240822BHJP
C12N 1/00 20060101ALN20240822BHJP
C07K 14/485 20060101ALN20240822BHJP
C07K 14/62 20060101ALN20240822BHJP
【FI】
A61K35/51 ZNA
A61K35/50
A61P17/02
C12N5/0775
C12N1/00 G
C07K14/485
C07K14/62
(21)【出願番号】P 2020555404
(86)(22)【出願日】2019-04-12
(86)【国際出願番号】 SG2019050204
(87)【国際公開番号】W WO2019199234
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-04-08
(32)【優先日】2018-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519096688
【氏名又は名称】セルリサーチ コーポレイション プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ファン トアン タン
(72)【発明者】
【氏名】タン ギャビン
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/094879(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/046775(WO,A1)
【文献】特表2014-525262(JP,A)
【文献】特表2019-530448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P、C12N、C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、F12(ハムF12培地)、M171(培地171)、およびFBS(ウシ胎仔血清)を含む培養液中で間葉系幹細胞集団を培養する段階
を含む、間葉系幹細胞集団の創傷治癒特性
を改善する方法であって、
該間葉系幹細胞集団が、該培養液中で培養する前にその天然環境から単離されており、
該間葉系幹細胞集団が、臍帯の間葉系幹細胞集団、胎盤間葉系幹細胞集団、および臍帯-胎盤接合部の間葉系幹細胞集団からなる群より選択され、
該培養液が、最終濃度55~65% (v/v) のDMEM、最終濃度5~15% (v/v) のF12、最終濃度15~30% (v/v) のM171、および最終濃度1~8% (v/v) のFBSを含み、
該培養液中で該間葉系幹細胞集団を培養すると、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、F12(ハムF12培地)、M171(培地171)、およびFBS(ウシ胎仔血清)のすべてを含まない参照培養液と比較して、間葉系幹細胞集団によるアンジオポエチン1 (Ang-1)、TGF-β(具体的にはTGF-β1)、VEGF、およびHGFのうちの少なくとも
3つの発現および/または分泌が増加する、
前記方法。
【請求項2】
臍帯の間葉系幹細胞集団が、羊膜 (AM) の間葉系幹細胞集団、血管周囲 (PV) の間葉系幹細胞集団、ワルトン膠様質 (WJ) の間葉系幹細胞集団、臍帯の羊膜の間葉系幹細胞集団、および臍帯の混合間葉系幹細胞集団 (MC) からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
培養液が、最終濃度57.5~62.5% (v/v) のDMEM、最終濃度7.5~12.5% (v/v) のF12、最終濃度17.5~25.0% (v/v) のM171、および最終濃度1.75~3.5% (v/v) のFBSを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
培養液が、最終濃度61.8% (v/v) のDMEM、最終濃度11.8% (v/v) のF12、最終濃度23.6% (v/v) のM171、および最終濃度2.5% (v/v) のFBSを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
培養液が最終濃度1 ng/ml~20 ng/mlの上皮増殖因子 (EGF) をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
培養液が最終濃度10 ng/mlのEGFを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
培養液が最終濃度1μg/ml~10μg/mlのインスリンを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
培養液が最終濃度5μg/mlのインスリンを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
培養液が、補充物質であるアデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
培養液が、アデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) の3つすべてを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
培養液が、最終濃度0.01~0.1μg/mlのアデニン、最終濃度0.1~10μg/mlのヒドロコルチゾン、および/または最終濃度0.5~5 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) を含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
参照培地が90% (v/v) CMRL1066および10% (v/v) FBSからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項において定義される培養液中で天然組織を培養することにより、間葉系幹細胞集団を天然組織環境から単離する段階を含む、請求項1~
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
組織が臍帯組織である、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
臍帯組織が、臍帯全体の組織、臍帯の羊膜を含む組織、ワルトン膠様質を含む組織、羊膜を含む組織、羊膜およびワルトン膠様質、単離された臍帯血管、臍帯組織の他の構成成分から分離されたワルトン膠様質、ならびに臍帯の単離された羊膜からなる群より選択される、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
組織が、胎盤の羊膜組織を含むかまたは胎盤の羊膜組織である、請求項
13に記載の方法。
【請求項17】
臍帯組織が、臍帯全体からの小片、臍帯の羊膜からの小片、または胎盤の羊膜からの小片である、請求項
13~
16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
羊膜の間葉系幹細胞集団の細胞増殖が70~80%の集密度に達するまで臍帯組織または胎盤の羊膜組織を培養する段階を含む、請求項
15~
17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
培養に使用した培養容器から間葉系幹細胞集団を取り出す段階を含む、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
培養容器から間葉系幹細胞集団を取り出す段階が酵素処理によって行われる、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
酵素処理がトリプシン処理を含む、請求項
20に記載の方法。
【請求項22】
間葉系幹細胞集団が、継代培養のために継代培養用の培養容器に移される、請求項
19~
21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
間葉系幹細胞集団が、培養のために継代培養用の培養容器に移される、請求項1~
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
間葉系細胞集団が、培養または継代培養のために1.0×10
6細胞/mlの濃度で懸濁される、請求項
22または
23に記載の方法。
【請求項25】
間葉系幹細胞集団が、請求項1~11のいずれか一項において定義される培養液中で継代培養される、請求項
24に記載の方法。
【請求項26】
間葉系幹細胞が70~80%の集密度に達するまで、間葉系幹細胞集団が継代培養される、請求項
25に記載の方法。
【請求項27】
培養または継代培養が自己完結型バイオリアクター中で行われる、請求項
22~
26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
バイオリアクターが、平行平板バイオリアクター、中空繊維バイオリアクター、およびマイクロ流体バイオリアクターからなる群より選択される、請求項
27に記載の方法。
【請求項29】
培養が温度37℃のCO
2細胞培養インキュベーター内で行われる、請求項1~
28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
(継代)培養に使用した培養容器から間葉系幹細胞集団を取り出す段階を含む、請求項
29に記載の方法。
【請求項31】
培養容器から間葉系幹細胞集団を取り出す段階が酵素処理によって行われる、請求項
30に記載の方法。
【請求項32】
酵素処理がトリプシン処理を含む、請求項
31に記載の方法。
【請求項33】
単離された間葉系幹細胞集団を収集する段階をさらに含む、請求項
32に記載の方法。
【請求項34】
単離された間葉系幹細胞の少なくとも90%またはそれ以上、91%またはそれ以上、92%またはそれ以上、93%またはそれ以上、94%またはそれ以上、95%またはそれ以上、96%またはそれ以上、97%またはそれ以上、98%またはそれ以上、99%またはそれ以上が、マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現する、請求項1~
33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
単離された間葉系幹細胞の少なくとも90%またはそれ以上、91%またはそれ以上、92%またはそれ以上、93%またはそれ以上、94%またはそれ以上、95%またはそれ以上、96%またはそれ以上、97%またはそれ以上、98%またはそれ以上、99%またはそれ以上が、マーカーCD34、CD45、およびHLA-DR(ヒト白血球抗原‐抗原D関連)の発現を欠いている、請求項1~
34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
単離された間葉系幹細胞の97%またはそれ以上、98%またはそれ以上、99%またはそれ以上が、CD73、CD90、およびCD105を発現し、かつCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている、請求項34または
35に記載の方法。
【請求項37】
単離された幹/前駆細胞集団をさらなる使用のために保存する段階をさらに含む、請求項1~
36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
保存する段階が凍結保存によって行われる、請求項
37に記載の方法。
【請求項39】
間葉系幹細胞集団の創傷治癒特性
を改善するための、
・55~65% (v/v) の濃度のDMEM、
・5~15% (v/v) の濃度のF12、
・15~30% (v/v) の濃度のM171、および
・1~8% (v/v) の濃度のFBS
を含む細胞培養液のインビトロの使用であって、
該間葉系幹細胞集団が、臍帯の間葉系幹細胞集団、胎盤間葉系幹細胞集団、および臍帯-胎盤接合部の間葉系幹細胞集団からなる群より選択され
、該培養液中で該間葉系幹細胞集団を培養すると、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、F12(ハムF12培地)、M171(培地171)、およびFBS(ウシ胎仔血清)のすべてを含まない参照培養液と比較して、間葉系幹細胞集団によるアンジオポエチン1 (Ang-1)、TGF-β(具体的にはTGF-β1)、VEGF、およびHGFのうちの少なくとも3つの発現および/または分泌が増加する、前記インビトロの使用。
【請求項40】
細胞培養液が、57.5~62.5% (v/v) の濃度のDMEM、7.5~12.5% (v/v) の濃度のF12、17.5~25.0% (v/v) の濃度のM171、および1.75~3.5% (v/v) の濃度のFBS含む、請求項
39に記載の使用。
【請求項41】
細胞培養液が、61.8% (v/v) の濃度のDMEM、11.8% (v/v) の濃度のF12、23.6% (v/v) の濃度のM171、および2.5% (v/v) の濃度のFBS含む、請求項
40に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本出願は、2018年4月12日に出願された米国仮特許出願第62/656,531号の優先権の恩典を主張し、その内容はすべての目的のために全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、間葉系幹細胞集団の創傷治癒特性を誘導するまたは改善する方法に関する。本発明はまた、間葉系幹細胞の創傷治癒特性を誘導するもしくは改善するのに適した、および/または間葉系幹細胞集団を単離するのに適した細胞培養液を対象にする。本発明はまた、単離された間葉系幹細胞集団の薬学的組成物および使用を対象にする。本発明はまた、本発明の間葉系幹細胞集団またはそのような間葉系幹細胞集団を含有する薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与する段階を含む、疾患または障害を処置する方法を対象にする。本発明はまた、例えば臍帯または胎盤の、極めて均一でありかつ明確に定義された間葉系幹細胞集団を対象にする。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
臍帯の羊膜から単離された間葉系幹細胞は、最初に米国特許出願第2006/0078993号(特許文献1)(登録された米国特許第9,085,755号(特許文献2)、米国特許第9,737,568号(特許文献3)、および米国特許第9,844,571号(特許文献4)につながる)ならびに対応する国際特許出願WO2006/019357(特許文献5)において報告された。それ以来、臍帯組織は、多能性細胞の供給源として注目を集めている;臍帯、および具体的には臍帯の羊膜から単離された幹細胞(「臍帯ライニング (cord lining) 幹細胞」とも称される)は、広く入手可能であるため、再生医療用の細胞の優れた代替供給源と見なされている。Jeschke et al. Umbilical Cord Lining Membrane and Wharton's Jelly-Derived Mesenchymal Stem Cells: the Similarities and Differences; The Open Tissue Engineering and Regenerative Medicine Journal, 2011, 4, 21-27(非特許文献1)を参照されたい。
【0004】
その後の研究では、臍帯の羊膜(臍帯ライニング (CL-MSC))、臍帯血 (CB-MSC)、胎盤 (P-MSC)、およびワルトン膠様質 (WJ-MSC) に由来するヒト間葉系幹細胞 (MSC) の表現型、増殖速度、遊走、免疫原性、および免疫調節能が比較された (Stubbendorf et al, Immunological Properties of Extraembryonic Human Mesenchymal Stromal Cells Derived from Gestational Tissue, STEM CELLS AND DEVELOPMENT Volume 22, Number 19, 2013, 2619-2629(非特許文献2))。Stubbendorfらは、胚外妊娠組織に由来するMSC集団が、免疫応答を回避する、および免疫調節効果を発揮する多様な能力を示すと結論づけた。CL-MSCが低い免疫原性を示し、また増殖能および遊走能の増強を示すため、これらの細胞が細胞ベースの療法の最も有望な可能性を示すことを、著者らはまた見出した。そのため、今後の研究は、CL-MSCが投与され得る最良の疾患モデルに焦点を合わせるべきである。
【0005】
羊膜の間葉系幹細胞は、米国特許出願第2006/0078993号(特許文献1)および国際特許出願WO2006/019357(特許文献5)に記載されたプロトコールを用いて容易に得ることができるが、高度に均一でありしたがって臨床試験に使用され得る、これらの臍帯ライニングMSCの集団を単離できるようにする方法が手元にあることは、これらの臍帯ライニングMSCを用いる臨床試験のために有利である。加えて、一般に間葉系幹細胞集団の創傷治癒特性を誘導するまたは改善する方法が手元にあることは有利である。
【0006】
よって、本発明の目的は、間葉系幹細胞集団の創傷治癒特性を誘導するまたは改善する方法を提供することである。また、この要求を満たす、臍帯の羊膜から間葉系幹細胞の集団を単離することも目的である。したがって、間葉系幹細胞の高度に均一な集団を提供することもまた、本発明の目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願第2006/0078993号
【文献】米国特許第9,085,755号
【文献】米国特許第9,737,568号
【文献】米国特許第9,844,571号
【文献】WO2006/019357
【非特許文献】
【0008】
【文献】Jeschke et al. Umbilical Cord Lining Membrane and Wharton's Jelly-Derived Mesenchymal Stem Cells: the Similarities and Differences; The Open Tissue Engineering and Regenerative Medicine Journal, 2011, 4, 21-27
【文献】Stubbendorf et al, Immunological Properties of Extraembryonic Human Mesenchymal Stromal Cells Derived from Gestational Tissue, STEM CELLS AND DEVELOPMENT Volume 22, Number 19, 2013, 2619-2629
【発明の概要】
【0009】
この目的は、独立請求項の特徴を有する方法、間葉系幹細胞集団、各薬学的組成物、および細胞培養液によって達成される。
【0010】
第1局面において、本発明は、間葉系幹細胞集団の創傷治癒特性を誘導するまたは改善する方法を提供し、該方法はDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、F12(ハムF12培地)、M171(培地171)、およびFBS(ウシ胎仔血清)を含む培養液中で間葉系幹細胞集団を培養する段階を含む。間葉系幹細胞集団は、臍帯の間葉系幹細胞集団、胎盤間葉系幹細胞集団、臍帯血の間葉系幹細胞集団、骨髄の間葉系幹細胞集団、または脂肪組織由来の間葉系幹細胞集団であり得る。
【0011】
第2局面において、本発明は、単離された間葉系幹細胞集団を提供し、該幹細胞集団の少なくとも約90%またはそれ以上の細胞は以下のマーカーの各々を発現する:CD73、CD90、およびCD105。好ましくは、単離された間葉系幹細胞集団は、以下のマーカーの発現を欠いている:CD34、CD45、およびHLA-DR。この第2局面の複数の態様では、単離された間葉系幹細胞集団の少なくとも約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上の細胞が、CD73、CD90、およびCD105の各々を発現する。加えて、第2局面のこれらの態様において、単離された間葉系幹細胞集団の少なくとも約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上の細胞が、好ましくマーカーCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている。間葉系幹細胞集団は、第1局面の創傷治癒特性を誘導するまたは改善する方法によって得られ得る。したがって、第1局面の方法はまた、間葉系幹細胞集団を単離する方法であり得る。
【0012】
第3局面において、本発明は、本発明の(第2局面の)哺乳動物細胞を含有する薬学的組成物を提供する。
【0013】
第4局面において、本発明は、間葉系幹細胞集団の創傷治癒特性を誘導するもしくは改善するための、または間葉系幹細胞集団を単離するための培養液を作製する方法を提供し、該方法は、最終容量500 mlの培養液を得るために、
i. DMEM 250 ml
ii. M171 118 ml
iii. DMEM/F12 118 ml
iv. 最終濃度2.5% (v/v) を得るためのウシ胎仔血清 (FBS) 12.5 ml
を混合する段階を含む。
【0014】
第5局面において、本発明は、第4局面の方法によって取得可能である細胞培養液を提供する。
【0015】
第6局面において、本発明は、間葉系幹細胞集団を単離する方法を提供し、該方法は、第4局面の方法によって調製された培養液中で間葉系幹細胞集団を培養する段階を含む。
【0016】
第7局面において、本発明は、
‐最終濃度約55~65% (v/v) のDMEM、
‐最終濃度約5~15% (v/v) のF12、
‐最終濃度約15~30% (v/v) のM171、および
‐最終濃度約1~8% (v/v) のFBS
を含む細胞培養液を提供する。
【0017】
第8局面において、本発明は、間葉系幹細胞集団の創傷治癒特性を誘導するもしくは改善するための、または間葉系幹細胞集団を単離するための、第7局面の細胞培養液の使用を提供する。
[本発明1001]
DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、F12(ハムF12培地)、M171(培地171)、およびFBS(ウシ胎仔血清)を含む培養液中で間葉系幹細胞集団を培養する段階を含む、間葉系幹細胞集団の創傷治癒特性を誘導するまたは改善する方法。
[本発明1002]
間葉系幹細胞集団が、臍帯の間葉系幹細胞集団、胎盤間葉系幹細胞集団、臍帯-胎盤接合部の間葉系幹細胞集団、臍帯血の間葉系幹細胞集団、骨髄の間葉系幹細胞集団、および脂肪組織由来の間葉系幹細胞集団からなる群より選択される、本発明1001の方法。
[本発明1003]
臍帯の間葉系幹細胞集団が、羊膜 (AM) の間葉系幹細胞集団、血管周囲 (PV) の間葉系幹細胞集団、ワルトン膠様質 (WJ) の間葉系幹細胞集団、臍帯の羊膜の間葉系幹細胞集団、および臍帯の混合間葉系幹細胞集団 (MC) からなる群より選択される、本発明1002の方法。
[本発明1004]
培養液が、最終濃度約55~65% (v/v) のDMEM、最終濃度約5~15% (v/v) のF12、最終濃度約15~30% (v/v) のM171、および最終濃度約1~8% (v/v) のFBSを含む、本発明1001~1003のいずれかの方法。
[本発明1005]
培養液が、最終濃度約57.5~62.5% (v/v) のDMEM、最終濃度約7.5~12.5% (v/v) のF12、最終濃度約17.5~25.0% (v/v) のM171、および最終濃度約1.75~3.5% (v/v) のFBSを含む、本発明1004の方法。
[本発明1006]
培養液が、最終濃度約61.8% (v/v) のDMEM、最終濃度約11.8% (v/v) のF12、最終濃度約23.6% (v/v) のM171、および最終濃度約2.5% (v/v) のFBSを含む、本発明1005の方法。
[本発明1007]
培養液が最終濃度約1 ng/ml~約20 ng/mlの上皮増殖因子 (EGF) をさらに含む、本発明1001~1006のいずれかの方法。
[本発明1008]
培養液が最終濃度約10 ng/mlのEGFを含む、本発明1007の方法。
[本発明1009]
培養液が最終濃度約1μg/ml~10μg/mlのインスリンを含む、本発明1001~1008のいずれかの方法。
[本発明1010]
培養液が最終濃度約5μg/mlのインスリンを含む、本発明1009の方法。
[本発明1011]
培養液が、補充物質であるアデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) のうちの少なくとも1つをさらに含む、本発明1001~1010のいずれかの方法。
[本発明1012]
培養液が、アデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) の3つすべてを含む、本発明1001~1011のいずれかの方法。
[本発明1013]
培養液が、最終濃度約0.01~約0.1μg/mlアデニンのアデニン、最終濃度約0.1~約10μg/mlヒドロコルチゾンのヒドロコルチゾン、および/または最終濃度約0.5~約5 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) を含む、本発明1012または1013の方法。
[本発明1014]
前記本発明1001~1013のいずれかにおいて定義される培養液中で間葉系幹細胞集団を培養すると、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、F12(ハムF12培地)、M171(培地171)、およびFBS(ウシ胎仔血清)のすべてを含まない参照培養液と比較して、間葉系幹細胞集団によるアンジオポエチン1 (Ang-1)、TGF-β(具体的にはTGF-β1)、VEGF、およびHGFのうちの少なくとも1つの発現および/または分泌が増加する、本発明1001~1013のいずれかの方法。
[本発明1015]
参照培地が90% (v/v) CMRL1066および10% (v/v) FBSからなる、本発明1014の方法。
[本発明1016]
前記本発明1001~1013のいずれかにおいて定義される培養液中で培養する前に、間葉系幹細胞集団がその天然環境から単離されている、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1017]
前記本発明1001~1013のいずれかにおいて定義される培養液中で天然組織を培養することにより、間葉系幹細胞集団を天然組織環境から単離する段階を含む、本発明1001~1015のいずれかの方法。
[本発明1018]
組織が臍帯組織である、本発明1017の方法。
[本発明1019]
臍帯組織が、臍帯全体の組織、臍帯の羊膜を含む組織、ワルトン膠様質を含む組織、羊膜を含む組織、羊膜およびワルトン膠様質、単離された臍帯血管、臍帯組織の他の構成成分から分離されたワルトン膠様質、ならびに臍帯の単離された羊膜からなる群より選択される、本発明1018の方法。
[本発明1020]
組織が、胎盤の羊膜組織を含むかまたは胎盤の羊膜組織である、本発明1017の方法。
[本発明1021]
臍帯組織が、臍帯全体からの小片、臍帯の羊膜からの小片、または胎盤の羊膜からの小片である、前記本発明1017~1020のいずれかの方法。
[本発明1022]
羊膜の間葉系幹細胞集団の細胞増殖が約70~約80%の集密度に達するまで臍帯組織または胎盤の羊膜組織を培養する段階を含む、本発明1019~1021のいずれかの方法。
[本発明1023]
培養に使用した培養容器から間葉系幹細胞集団を取り出す段階を含む、本発明1022の方法。
[本発明1024]
培養容器から間葉系幹細胞集団を取り出す段階が酵素処理によって行われる、本発明1023の方法。
[本発明1025]
酵素処理がトリプシン処理を含む、本発明1024の方法。
[本発明1026]
間葉系幹細胞集団が、継代培養のために継代培養用の培養容器に移される、本発明1023~1025のいずれかの方法。
[本発明1027]
間葉系幹細胞集団が、培養のために継代培養用の培養容器に移される、本発明1001~1016のいずれかの方法。
[本発明1028]
間葉系細胞集団が、培養または継代培養のために1.0×10
6
細胞/mlの濃度で懸濁される、本発明1026または1027の方法。
[本発明1029]
間葉系幹細胞集団が、本発明1001~1013のいずれかにおいて定義される培養液中で継代培養される、本発明1028の方法。
[本発明1030]
間葉系幹細胞が約70~約80%の集密度に達するまで、間葉系幹細胞集団が継代培養される、本発明1029の方法。
[本発明1031]
培養または継代培養が自己完結型バイオリアクター中で行われる、本発明1026~1030のいずれかの方法。
[本発明1032]
バイオリアクターが、平行平板バイオリアクター、中空繊維バイオリアクター、およびマイクロ流体バイオリアクターからなる群より選択される、本発明1031の方法。
[本発明1033]
培養が温度37℃のCO
2
細胞培養インキュベーター内で行われる、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1034]
(継代)培養に使用した培養容器から間葉系幹細胞集団を取り出す段階を含む、本発明1033の方法。
[本発明1035]
培養容器から間葉系幹細胞集団を取り出す段階が酵素処理によって行われる、本発明1034の方法。
[本発明1036]
酵素処理がトリプシン処理を含む、本発明1035の方法。
[本発明1037]
単離された間葉系幹細胞集団を収集する段階をさらに含む、本発明1036の方法。
[本発明1038]
単離された間葉系幹細胞の少なくとも約90%またはそれ以上、約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上が、マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現する、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1039]
単離された間葉系幹細胞の少なくとも約90%またはそれ以上、約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上が、マーカーCD34、CD45、およびHLA-DR(ヒト白血球抗原‐抗原D関連)の発現を欠いている、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1040]
単離された間葉系幹細胞の約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上が、CD73、CD90、およびCD105を発現し、かつCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている、本発明1038または1039のいずれかの方法。
[本発明1041]
単離された幹/前駆細胞集団をさらなる使用のために保存する段階をさらに含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1042]
保存する段階が凍結保存によって行われる、本発明1041の方法。
[本発明1043]
単離された間葉系幹細胞集団であって、該幹細胞集団の少なくとも約90%またはそれ以上の細胞が、マーカーCD73、CD90、およびCD105の各々を発現する、前記間葉系幹細胞集団。
[本発明1044]
幹細胞集団の少なくとも約90%またはそれ以上の細胞が、マーカーCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている、本発明1043の間葉系幹細胞集団。
[本発明1045]
単離された間葉系幹細胞集団の少なくとも約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上の細胞が、CD73、CD90、およびCD105の各々を発現し、かつCD34、CD45、およびHLA-DRの各々の発現を欠いている、本発明1044の間葉系幹細胞集団。
[本発明1046]
臍帯の間葉系幹細胞集団、胎盤間葉系幹細胞集団、臍帯血の間葉系幹細胞集団、骨髄の間葉系幹細胞集団、および脂肪組織由来の間葉系幹細胞集団からなる群より選択される、本発明1043~1045のいずれかの間葉系幹細胞集団。
[本発明1047]
臍帯の間葉系幹細胞集団が、羊膜 (AM) の間葉系幹細胞集団、血管周囲 (PV) の間葉系幹細胞集団、ワルトン膠様質 (WJ) の間葉系幹細胞集団、臍帯の羊膜の間葉系幹細胞集団、および臍帯の混合間葉系幹細胞集団 (MC) からなる群より選択される、本発明1043~1046のいずれかの間葉系幹細胞集団。
[本発明1048]
本発明1001~1042のいずれかにおいて定義される方法によって取得可能である、本発明1043~1047のいずれかの間葉系幹細胞集団。
[本発明1049]
本発明1001~1042のいずれかにおいて定義される方法によって得られる、本発明1043~1048のいずれかの間葉系幹細胞集団。
[本発明1050]
本発明1043~1047のいずれかにおいて定義される単離された間葉系幹集団を含む、薬学的組成物であって、該幹細胞集団の少なくとも約90%またはそれ以上の細胞が、マーカーCD73、CD90、およびCD105の各々を発現し、かつマーカーCD34、CD45、およびHLA-DRの各々の発現を欠いている、前記薬学的組成物。
[本発明1051]
全身または局所への適用に適合している、本発明1050の薬学的組成物。
[本発明1052]
薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、本発明1050または1051の薬学的組成物。
[本発明1053]
間葉系幹細胞集団の創傷治癒特性を誘導するまたは改善するための、
‐約55~65% (v/v) の濃度のDMEM、
‐約5~15% (v/v) の濃度のF12、
‐約15~30% (v/v) の濃度のM171、および
‐約1~8% (v/v) の濃度のFBS
を含む細胞培養液の使用。
[本発明1054]
細胞培養液が、約57.5~62.5% (v/v) の濃度のDMEM、約7.5~12.5% (v/v) の濃度のF12、約17.5~25.0% (v/v) の濃度のM171、および約1.75~3.5% (v/v) の濃度のFBS含む、本発明1053の使用。
[本発明1055]
細胞培養液が、約61.8% (v/v) の濃度のDMEM、約11.8% (v/v) の濃度のF12、約23.6% (v/v) の濃度のM171、および約2.5% (v/v) の濃度のFBS含む、本発明1054の使用。
[本発明1056]
間葉系幹細胞集団の単離のための、本発明1053~1055のいずれかにおいて定義される細胞培養液の使用。
[本発明1057]
間葉系幹細胞集団が、臍帯の間葉系幹細胞集団、胎盤間葉系幹細胞集団、臍帯血の間葉系幹細胞集団、骨髄の間葉系幹細胞集団、および脂肪組織由来の間葉系幹細胞集団からなる群より選択される、本発明1053~1056のいずれかの使用。
[本発明1058]
臍帯の間葉系幹細胞集団が、羊膜 (AM) の間葉系幹細胞集団、血管周囲 (PV) の間葉系幹細胞集団、ワルトン膠様質 (WJ) の間葉系幹細胞集団、臍帯の羊膜の間葉系幹細胞集団、および臍帯の混合間葉系幹細胞集団 (MC) からなる群より選択される、本発明1057の使用。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明は、非限定的な実施例および図面と併せて考慮した場合に、詳細な説明を参照してより良く理解されるであろう。
【0019】
【
図1-1】実験の項において本発明の培地 (PTT-6) の実例を作製するために使用したDMEMのカタログ番号を含む、ダルベッコ改変イーグル培地に関するLonzaの技術情報シートを示す。
【
図2】ハムF12培地に関するLonzaの技術情報シートを示す。
【
図3】実験の項において本発明の培地 (PTT-6) の実例を作製するために使用したDMEM:F12 (1:1) 培地のカタログ番号を含む、DMEM:F12 (1:1) 培地に関するLonzaの技術情報シートを示す。
【
図4-1】実験の項において本発明の培地 (PTT-6) の実例を作製するために使用したM171培地のカタログ番号を含む、M171培地に関するLife Technologies Corporationの技術情報シートを示す。
【
図5】培地PTT-6を作製するために実験の項において使用した成分のリストを、それらの商業的供給業者およびカタログ番号を含めて示す。
【
図6A】
図6A~Cは、臍帯から単離された間葉系幹細胞を、間葉系幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105の発現について解析した、フローサイトメトリー実験の結果を示す。これらの実験のために、3種の異なる培養液中で臍帯組織を培養することにより、間葉系幹細胞を臍帯組織から単離し、続いて各培地中で間葉系幹細胞を継代培養した。これらの実験において、以下の3種の培養液を使用した:a) 10 % FBS (v/v) を補充した90% (v/v/ DMEM、b) 90% (v/v) CMRL1066および10% (v/v) FBSからなる、米国特許出願US 2008/0248005および対応する国際特許出願WO2007/046775に記載されている培養液PTT-4(WO2007/046775のパラグラフ [0183] を参照されたい)、ならびにc) 本明細書においてその組成が記載される、本発明の培養液PTT-6。このフローサイトメトリー解析において、臍帯ライニング間葉系幹細胞 (CLMC) 集団の2つの異なるサンプルを、使用した3種の培養液の各々について解析した。結果を
図6A~6Cに示す。より詳細には、
図6Aは、DMEM/10% FBS中で臍帯組織から単離し培養した後の、幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現する、単離された間葉系臍帯ライニング幹細胞の割合を示し、
図6Bは、PTT-4中で臍帯組織から単離し培養した後の、幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現する、単離された間葉系臍帯ライニング幹細胞の割合を示し、ならびに
図6Cは、PTT-6中で臍帯組織から単離し培養した後の、幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現する、単離された間葉系臍帯ライニング幹細胞の割合を示す。
【
図7A】
図7A~Bは、臍帯から単離された間葉系幹細胞を、細胞療法に対する多能性ヒト間葉系幹細胞の適合性を規定するために使用される幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105、CD34、CD45、およびHLA-DR(ヒト白血球抗原‐抗原D関連)のそれらの発現について解析し、骨髄間葉系幹細胞によるこれらのマーカーの発現と比較した、フローサイトメトリー実験の結果を示す。この実験のために、本発明の培養液PTT-6中で臍帯組織を培養することにより、臍帯の羊膜の間葉系幹細胞を臍帯組織から単離する一方で、標準的なプロトコールを用いて、ヒト骨髄から骨髄間葉系幹細胞を単離した。
図7Aは、PTT-6培地中で臍帯組織から単離し培養した後の、幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現し、かつCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている、単離された間葉系臍帯ライニング幹細胞の割合を示し、
図7Bは、CD73、CD90、およびCD105を発現し、かつCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている、単離された骨髄間葉系幹細胞の割合を示す。
【
図8】実験の設定を示し、濃い灰色のウェルは、PTT-4培地を用いて再構成した標準物質、およびPTT-4中で培養したMSCからの対応する試料であり;薄い灰色のウェルは、PTT-6培地を用いて再構成した標準物質、およびPTT-6中で培養したMSCからの対応する試料である。イタリック体の試料は、貯蔵試料の反復試験の一部として試験が行われる対照上清である。
【
図9】TGFβ1のシングルプレックス測定を示す。見られ得るように、培養物CL-MSCおよびWJ-MSCは、PTT-4中で増殖した場合よりもPTT-6中で増殖した場合に、より多くのTGFβ1を産生する。AT-MSCおよびBM-MSC培養物のみが、PTT-6またはPTT-4中で増殖した場合に、多かれ少なかれ同量のTGFβ1を産生した。エラーバーはすべて、3つ組の測定値からの標準偏差である。
【
図10】
図10Aは、PDGF-AAのマルチプレックス測定を示す。見られ得るように、培養物CL-MSC、WJ-MSC、AT-MSC、およびBM-MSC培養物は、PTT-6中で増殖した場合よりもPTT-4中で増殖した場合に、より多くのPDGF-AAを産生する。エラーバーはすべて、3つ組の測定値からの標準偏差である。
図10Bは、VEGFのマルチプレックス測定を示す。見られ得るように、培養物CL-MSC、WJ-MSC、AT-MSC、およびBM-MSC培養物は、PTT-4中で増殖した場合よりもPTT-6中で増殖した場合に、より多くのVEGFを産生する。エラーバーはすべて、3つ組の測定値からの標準偏差である。
図10Cは、Ang-1のマルチプレックス測定を示す。見られ得るように、培養物CL-MSCおよびWJ-MSC培養物は、PTT-4中で増殖した場合よりもPTT-6中で増殖した場合に、はるかにより多くのAng-1を産生する。培養物AT-MSCおよびBM-MSCは、本質的にいかなるAng-1も産生しなかった。エラーバーはすべて、3つ組の測定値からの標準偏差である。
【
図11】HGFのマルチプレックス測定を示す。見られ得るように、培養物CL-MSCおよびWJ-MSC培養物は、PTT-4中で増殖した場合よりもPTT-6中で増殖した場合に、はるかにより多くのHGFを産生する。培養物AT-MSCおよびBM-MSCは、本質的にいかなるHGFも産生しなかった。エラーバーはすべて、3つ組の測定値からの標準偏差である。
【
図12】PDGF-AAのマルチプレックス測定を示す。見られ得るように、培養物CL-MSCおよびWJ-MSC培養物は、PTT-6中で増殖した場合よりもPTT-4中で増殖した場合に、より多くのPDGF-AAを産生する。培養物AT-MSCおよびBM-MSCは、両方の培養液中で同量のPDGF-AAを産生した。エラーバーはすべて、3つ組の測定値からの標準偏差である。
【
図13】
図13Aは、VEGFのマルチプレックス測定を示す。見られ得るように、培養物CL-MSC、WJ-MSC、AT-MSC、およびBM-MSC培養物は、PTT-4中で増殖した場合よりもPTT-6中で増殖した場合に、より多くのVEGFを産生する。エラーバーはすべて、3つ組の測定値からの標準偏差である。
図13Bは、Ang-1のマルチプレックス測定を示す。見られ得るように、培養物CL-MSCおよびWJ-MSC培養物は、PTT-4中で増殖した場合よりもPTT-6中で増殖した場合に、はるかにより多くのAng-1を産生する。培養物AT-MSCおよびBM-MSCは、本質的にいかなるAng-1も産生しなかった。エラーバーはすべて、3つ組の測定値からの標準偏差である。
図13Cは、HGFのマルチプレックス測定を示す。見られ得るように、培養物CL-MSCおよびWJ-MSC培養物は、PTT-4中で増殖した場合よりもPTT-6中で増殖した場合に、はるかにより多くのHGFを産生する。培養物AT-MSCおよびBM-MSCは、本質的にいかなるHGFも産生しなかった。エラーバーはすべて、3つ組の測定値からの標準偏差である。
【
図14】bFGFのマルチプレックス測定を示す。見られ得るように、培養物CL-MSCおよびWJ-MSC培養物は、PTT-4中で増殖した場合よりもPTT-6中で増殖した場合に、より多くのbFGFを産生する。培養物AT-MSCおよびBM-MSCは、PTT-4およびPTT-6中で培養した場合に、同量のbFGFを産生した。エラーバーはすべて、3つ組の測定値からの標準偏差である。
【
図15】5回の異なる実験(170328、170804、170814、180105、180226)にわたるTGFβ1の測定を要約する。実験を通じてTGFβ標準曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側の下のグラフに示す。PTT-4培地およびPTT-6培地で得られたTGFβ標準曲線のMFIを、上のグラフに示す。右側の下のグラフは、培養物CL-MSCおよびWJ-MSCが、PTT-4中で増殖した場合よりもPTT-6中で増殖した場合に、より多くのTGFβ1を産生することを示す。AT-MSCおよびBM-MSC培養物は、PTT-6またはPTT-4中で増殖した場合に、同量のTGFβ1を産生した。エラーバーはすべて、実験170328、170804、170814、180105、180226の異なる測定値からの標準偏差である。
【
図16】6回の異なる実験(170602、170511、170414、170224、180105、180226)にわたるAng-1の測定を要約する。実験を通じてAng-1標準曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側の下のグラフに示す。PTT-4培地およびPTT-6培地で得られたAng-1標準曲線のMFIを、上のグラフに示す。右側の下のグラフは、培養物CL-MSCおよびWJ-MSCが、PTT-4中で増殖した場合よりもPTT-6中で増殖した場合に、より多くのAng-1を産生することを示す。AT-MSCおよびBM-MSC培養物のみが、PTT-6またはPTT-4中で増殖した場合に、本質的に同量のAng-1を産生した。エラーバーはすべて、実験170602、170511、170414、170224、180105、180226の異なる測定値からの標準偏差である。
【
図17】6回の異なる実験(170602、170511、170414、170224、180105、180226)にわたるPDGF-BBの測定を要約する。実験を通じてPDGF-BB標準曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側の下のグラフに示す。PTT-4培地およびPTT-6培地で得られたPDGF-BB標準曲線のMFIを、上のグラフに示す。注目すべきことには、いずれの実験においても、PDGF-BBは検出されなかった。
【
図18】6回の異なる実験(170602、170511、170414、170224、180105、180226)にわたるPDGF-AAの測定を要約する。実験を通じてPDGF-AA標準曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側の下のグラフに示す。PTT-4培地およびPTT-6培地で得られたPDGF-AA標準曲線のMFIを、上のグラフに示す。右側の下のグラフは、培養物CL-MSC、AT-MSC、およびBM-MSC、およびWJ-MSC培養物が、PTT-6中で増殖した場合よりもPTT-4中で増殖した場合に、わずかにより多くのPDGF-AAを産生することを示す。エラーバーはすべて、実験170602、170511、170414、170224、180105、180226の測定値からの標準偏差である。
【
図19】6回の異なる実験(170602、170511、170414、170224、180105、180226)にわたるIL-10の測定を要約する。実験を通じてIL-10標準曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側の下のグラフに示す。PTT-4培地およびPTT-6培地で得られたIL-10標準曲線のMFIを、上のグラフに示す。注目すべきことには、いずれの実験においても、IL-10は検出されなかった。
【
図20】6回の異なる実験(170602、170511、170414、170224、180105、180226)にわたるVEGFの測定を要約する。実験を通じてVEGF標準曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側の下のグラフに示す。PTT-4培地およびPTT-6培地で得られたVEGF標準曲線のMFIを、上のグラフに示す。右側の下のグラフは、培養物CL-MSC、AT-MSC、およびBM-MSC、およびWJ-MSCが、PTT-4中で増殖した場合よりもPTT-6中で増殖した場合に、より多くのVEGFを産生することを示す。エラーバーはすべて、実験170602、170511、170414、170224、180105、180226の異なる測定値からの標準偏差である。
【
図21】6回の異なる実験(170602、170511、170414、170224、180105、180226)にわたるHGFの測定を要約する。実験を通じてHGF標準曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側の下のグラフに示す。PTT-4培地およびPTT-6培地で得られたHGF標準曲線のMFIを、上のグラフに示す。右側の下のグラフは、培養物CL-MSCおよびWJ-MSCが、PTT-4中で増殖した場合よりもPTT-6中で増殖した場合に、より多くのHGFを産生することを示す。その一方で、培養物AT-MSCおよびBM-MSCは、他の培養物ほど多くのHGFを産生しなかった。エラーバーはすべて、実験170602、170511、170414、170224、180105、180226の異なる測定値からの標準偏差である。
【
図22】TGFβ1のシングルプレックス測定。実験を通じて標準TGFβ1曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側のグラフに示す。右側のグラフからわかるように、CL-MSC、WJ-MSC、および胎盤MSCのすべてが、PTT-4またはDMEM/F12(
図22ではDMEMとのみ称される)中で増殖した場合よりもPTT-6中で増殖した場合に、より多くのTGFβ1を産生する。
【
図23】PTT-6、PTT-4、またはDMEM/F12中で培養したCL-MSC、WJ-MSC、および胎盤MSCの解析された上清におけるPDGF-BBの測定を要約する。実験を通じてPDGF-BB標準曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側のグラフに示す。注目すべきことには、いずれの実験においても、PDGF-BBは検出されなかった。
【
図24】PTT-6、PTT-4、またはDMEM/F12中で培養したCL-MSC、WJ-MSC、および胎盤MSCの解析された上清におけるIL-10の測定を要約する。実験を通じてVEGF標準曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側のグラフに示す。S6は、アッセイで使用された最も低い標準物質を示す。これを下回る試料はいずれも、検出未満と見なされる。右側のグラフからわかるように、CL-MSC、WJ-MSC、および胎盤MSCのすべてが、PTT-6中で増殖した場合に、検出可能なレベルのIL-10を産生する一方で、MSCがPTT-4またはDMEM/F12中で増殖した場合には、IL-10はほとんどまたは全く検出されなかった。
【
図25】PTT-6、PTT-4、またはDMEM/F12中で培養したCL-MSC、WJ-MSC、および胎盤MSCの解析された上清におけるVEGFの測定を要約する。実験を通じてVEGF標準曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側のグラフに示す。S1は、アッセイで使用された最も高い標準物質を示す。これを上回る試料はいずれも、推定された(濃度が高すぎる)と見なされる。右側のグラフからわかるように、CL-MSC、WJ-MSC、胎盤MSCのすべてが、MSCがPTT-4またはDMEM/F12中で増殖した場合と比較して、PTT-6中で増殖した場合に、はるかにより高レベルのVEGFを産生する。
【
図26】bFGFのマルチプレックス測定を要約する。実験を通じてPDGF-AA標準曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側のグラフに示す。右側のグラフからわかるように、培養したCL-MSCおよびWJ-MSCは、PTT-4中で増殖した場合よりもPTT-6中で増殖した場合に、より多くのbFGFを産生する。見られ得るように、CL-MSC、WJ-MSC、および胎盤MSCのすべてが、MSCがPTT-4またはDMEM/F12中で増殖した場合と比較して、PTT-6中で増殖した場合に、はるかにより低レベルのbFGFを産生する。
【
図27】PDGF-AAの測定を要約する。実験を通じてPDGF-AA標準曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側のグラフに示す。S6は、アッセイで使用された最も低い標準物質を示す。これを下回る試料はいずれも、検出未満と見なされる。見られ得るように、CL-MSC、WJ-MSC、および胎盤MSCのすべてが、MSCがPTT-4またはDMEM/F12中で増殖した場合と比較して、PTT-6中で増殖した場合に、より高レベルのPDGF-ASを産生する。
【
図28】Ang-1の測定を要約する。実験を通じてAng-1標準曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側のグラフに示す。S1は、アッセイで使用された最も高い標準物質を示す。これを上回る試料はいずれも、推定された(濃度が高すぎる)と見なされる。右側のグラフは、CL-MSC、WJ-MSC、および胎盤MSCのすべてが、MSCがPTT-4またはDMEM/F12中で増殖した場合と比較して、PTT-6中で増殖した場合に、はるかにより高レベルのAng-1を産生することを示す。
【
図29】HGFの測定を要約する。実験を通じてHGF標準曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側のグラフに示す。右側のグラフは、CL-MSC、WJ-MSC、および胎盤MSCのすべてが、MSCがPTT-4またはDMEM/F12中で増殖した場合と比較して、PTT-6中で増殖した場合に、はるかにより高レベルのAng-1を産生することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
上記で説明したように、第1局面において、本発明は、間葉系幹細胞集団の創傷治癒特性を誘導するまたは改善する方法を対象にし、該方法は、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、F12(ハムF12培地)、M171(培地171)、およびFBS(ウシ胎仔血清)を含む培養液中で間葉系幹細胞集団を培養する段階を含む。そのような培地を使用することが、間葉系幹細胞集団の天然環境/区画とは無関係に、広範囲の間葉系幹細胞集団の創傷治癒特性を誘導するまたは改善する効果を有することが、本出願において驚くべきことに見出された。理論に縛られることは望まないが、間葉系幹細胞集団の創傷治癒特性の誘導または改善は、本発明の培地が、間葉系幹細胞集団によるアンジオポエチン1 (Ang-1)、TGF-β1、VEGF、およびHGFのうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、または4つすべての発現および/または分泌を増加させる能力によって引き起こされると考えられる。臍帯の羊膜の間葉系幹細胞集団によるアンジオポエチン1 (Ang-1)、TGF-β1、VEGF、およびHGFの発現/分泌が、米国特許出願US 2008/0248005および対応する国際特許出願W02007/046775において優れた創傷治癒特性(そのような臍帯の羊膜の間葉系幹細胞集団 (UCMC) が全層性熱傷(実施例23)、部分層創傷(実施例24)、非治癒性の放射線創傷(実施例25)、ならびに非治癒性の糖尿病性創傷および非治癒性の糖尿病性足創傷(実施例26)を緩和することを示すWO 2007/046775の実施例23~26を参照されたい)を有することが示された、臍帯の羊膜の間葉系幹細胞集団の単離のために米国特許出願US 2008/0248005および国際特許出願W02007/046775において使用された培地 (PTT-4) 中でのそのような間葉系幹細胞集団の培養と比較して、本発明の培養液PTT-6中での培養により増加することを示す実験の項を参照されたい。本明細書において実験の項に示されるように、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、F12(ハムF12培地)、M171(培地171)、およびFBS(ウシ胎仔血清)を含む培地中で培養することにより、臍帯の羊膜の間葉系幹細胞集団のみならず、ワルトン膠様質などの臍帯の他の区画または胎盤などの(隣接)区画の間葉系幹細胞集団におけるアンジオポエチン1 (Ang-1)、TGF-β1、VEGF、および/またはHGFの量も増加する。したがって、本出願は、間葉系幹細胞集団を培地PTT-6などの本発明の培地中で培養することにより、所与の間葉系幹細胞集団の創傷治癒特性を誘導するまたは改善するための一般的に適用可能な教示を提供すると考えられる。
【0021】
これに関連して、間葉系幹細胞集団が産生するAng-1、TGF-β1、VEGF、および/またはHGFの量の組み合わせの増加が、この幹細胞集団の創傷治癒特性を改善するまたは改善するという本発明の知見はまた、唯一の創傷治癒タンパク質としてAng-1、TGF-β1、VEGF、またはHGFのうちの3つまたは4つを含有する組成物/溶液によって幹細胞集団の創傷治癒特性を模倣することにもつながる。
【0022】
これに関連して、タンパク質アンジオポエチン1 (Ang-1)、TGF-β1、VEGF、およびHGFの創傷治癒過程への関与が当業者に公知であることが留意される。アンジオポエチン1の創傷治癒への関与については、例えば、Li et al. Stem Cell Research & Therapy 2013, 4:113 「Mesenchymal stem cells modified with angiopoietin-1 gene promote wound healing」、またはBitto et al, 「Angiopoietin-1 gene transfer improves the impaired wound healing of the genetically diabetic mice without increasing VEGF expression」, Clinical Science May 14, 2008, 114 (12) 707-718を参照されたい。Liらの研究では、アンジオポエチン-1遺伝子を骨髄間葉系幹細胞に挿入し、その結果、「Ang1-MSCが、MSC、Ad-Ang1、または偽処理と比較して、表皮および真皮の再生が増加し、かつ血管新生が増強されて、創傷治癒を有意に促進した」ことが示された。注目すべきことには、Liらの著者は、間葉系幹細胞 (MSC) 単独では十分なAng-1を産生しないと述べており、この理由から、著者らはAng-1遺伝子をMSCに挿入して遺伝子改変細胞を作製した。Liの研究とは対照的に、PTT-6などの培養液中での「天然」間葉系幹細胞の培養が、例えば、臍帯組織間葉系幹細胞(すなわち、PTT-6中で培養される間葉系幹細胞集団)が、上昇したレベルのAng-1を産生し、ひいては間葉系幹細胞を創傷治癒に適した状態にするか、またはその創傷治癒特性をさらに改善する条件を提供することが、本出願において驚くべきことに見出された。このことは、本発明が、間葉系幹細胞の創傷治癒特性を誘導するために天然に存在する間葉系幹細胞を遺伝的に改変する(これは労力を要するのみならず、遺伝子治療の固有のリスクのために治療適用には好ましい選択肢ではない)代わりに、天然に存在する間葉系幹細胞の創傷治癒特性が、本発明の培養液中で間葉系幹細胞集団を「単純に」培養することによって誘導されるまたは増強されるという利点をもたらすことを意味する。このアプローチは、より簡便で、より安全であり、かつまたよりコスト効率が高い。
【0023】
他のタンパク質に戻ると、肝細胞増殖因子 (HGF) の創傷治癒、具体的には慢性/非治癒性創傷の治癒への関与については、例えば、Yoshida et al., 「Neutralization of Hepatocyte Growth Factor Leads to Retarded Cutaneous Wound Healing Associated with Decreased Neovascularization and Granulation Tissue Formation」 J. Invest. Dermatol. 120:335-343, 2003、 Li, Jin-Feng et al. 「HGF Accelerates Wound Healing by Promoting the Dedifferentiation of Epidermal Cells through βl-Integrin/ILK Pathway.」 BioMed Research International 2013 (2013):470418、または Conway et al, 「Hepatocyte growth factor regulation: An integral part of why wounds become chronic」. Wound Rep Reg (2007) 15 683-692を参照されたい。
【0024】
血管内皮成長因子 (VEGF) の創傷治癒、具体的には慢性/非治癒性創傷の治癒への関与については、例えば、Froget et al., Eur. Cytokine Netw., Vol. 14, March 2003, 60-64、またはBao et al., 「The Role of Vascular Endothelial Growth Factor in Wound Healing」 J Surg Res. 2009 May 15; 153(2): 347-358を参照されたい。
【0025】
トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β1、TGF-β2、およびTGF-β3を含む)の創傷治癒、具体的には慢性/非治癒性創傷の治癒への関与については、例えば、Ramirez et al.「The Role of TGFb Signaling in Wound Epithelialization」 Advances In Wound Care, Volume 3, Number 7, 2013, 482-491、またはPakyari et al., Critical Role of Transforming Growth Factor Beta in Different Phases of Wound Healing, Advances In Wound Care, Volume 2, Number 5, 2012, 215-224を参照されたい。
【0026】
これに関連して、本発明が、本発明の培養液中での培養が、臍帯の羊膜の間葉系幹細胞集団などの間葉系幹細胞集団の単離をもたらし、その細胞の90%超またはさらには99%もしくはそれ以上が3つの間葉系幹細胞マーカーCD73、CD90に関して陽性であり、それと同時にこれらの幹細胞がCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いており(実験の項を参照されたい)、このことが、この集団の99%またはさらにはそれ以上の細胞が幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現しながら、マーカーCD34、CD45、およびHLA-DRを発現しないことを意味するというさらなる驚くべき利点を有することもまた留意される。そのように極めて均一でありかつ明確に定義された細胞集団は、例えば、例えばDominici et al,「Minimal criteria for defining multipotent mesenchymal stromal cells. The International Society for Cellular Therapy position statement」, Cytotherapy (2006) Vol. 8, No. 4, 315-317、Sensebe et al,.「Production of mesenchymal stromal/stem cells according to good manufacturing practices: a, review」, Stem Cell Research & Therapy 2013, 4:66)、Vonk et al., Stem Cell Research & Therapy (2015) 6:94、またはKundrotas Acta Medica Lituanica. 2012. Vol. 19. No. 2. P. 75-79によって規定されるような、細胞療法に使用されるべきヒト間葉系幹細胞に関して一般に許容される基準を十分に満たすため、臨床試験および細胞ベースの療法の理想的な候補である。また、Quantum細胞増殖システムなどのバイオリアクターを使用することで、1回の実行当たり3億~7億個の間葉系幹細胞といった多数の間葉系幹細胞を得ることが可能である(実験の項もまた参照されたい)。したがって、本発明は、費用効率の高い様式で、創傷治癒における使用などの治療適用に必要な量の幹細胞を提供するというさらなる利点をもたらす。加えて、本発明の培養液を作製するために使用される構成成分はすべて、GMP品質で市販されている。よって、本発明は、例えば胎盤組織または臍帯組織の高度に均一な間葉系幹細胞集団、例えば臍帯の羊膜の間葉系幹細胞集団またはワルトン膠様質の間葉系幹細胞集団をGMP生産するためのルートを開く。
【0027】
創傷治癒に適した状態にされる(本発明の培養過程を受ける前に創傷治癒特性を有さなかった集団において創傷治癒特性を誘導するか、または創傷治癒特性を改善するかのいずれかによる)間葉系幹細胞集団は、当技術分野で公知の任意の適切な間葉系幹細胞、例えば成体幹細胞集団または新生児幹細胞であってよい。間葉系幹細胞集団は、間葉系幹細胞を含むことが公知である任意の哺乳動物組織または区画/身体部位に由来し得る。実例において、間葉系幹細胞集団は、臍帯の間葉系幹細胞集団(これらは新生児幹細胞の例である)、胎盤間葉系幹細胞集団(同様に新生児幹細胞のさらなる例)、臍帯-胎盤接合部の間葉系幹細胞集団(新生児幹細胞集団のさらなる例)、臍帯血の間葉系幹細胞集団(新生児幹細胞のなおさらなる例)、骨髄の間葉系幹細胞集団(成体幹細胞集団であり得る)、または脂肪組織由来の間葉系幹細胞集団(成体幹細胞集団のさらに別の例)であってよい。
【0028】
臍帯の間葉系幹細胞集団は、間葉系幹細胞を含む臍帯組織の任意の区画によるものであってよい(に由来してよい)。間葉系幹細胞集団は、羊膜 (AM) の間葉系幹細胞集団、血管周囲 (PV) の間葉系幹細胞集団、ワルトン膠様質 (WJ) の間葉系幹細胞集団、臍帯の羊膜の間葉系幹細胞集団だけでなく、これらの区画のうちの2つまたはそれ以上の幹細胞を含む間葉系幹細胞の集団を意味する臍帯の混合間葉系幹細胞集団 (MC) であってもよい。これらの区画の間葉系幹細胞およびそこからの単離は、当業者に公知であり、例えば、Subramanian et al 「Comparative Characterization of Cells from the Various Compartments of the Human Umbilical Cord Shows that the Wharton's Jelly Compartment Provides the Best Source of Clinically Utilizable Mesenchymal Stem Cells」, PLoS ONE 10(6): e0l27992, 2015、およびその中で引用された参考文献、Van Pham et al. 「Isolation and proliferation of umbilical cord tissue derived mesenchymal stem cells for clinical applications」, Cell Tissue Bank (2016) 17:289-302, 2016に記載されている。臍帯の混合間葉系幹細胞集団は、例えば、臍帯組織から動脈および静脈を除去し、残存組織およびワルトン膠様質を小片に切断し、本発明の培養液中で臍帯組織を培養すること(組織外植片による)によって得ることができる。臍帯の混合間葉系幹細胞集団はまた、Schugar et al. 「High harvest yield, high expansion, and phenotype stability of CD 146 mesenchymal stromal cells from whole primitive human umbilical cord tissue. Journal of biomedicine & biotechnology. 2009; 2009:78952」によって記載されるような条件(10%ウシ胎仔血清、10%ウマ血清、および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含む血清補充DMEM中での培養)下で、無傷の臍帯血管を伴う臍帯組織全体を組織外植片として培養することによって得ることもできる。これに関連して、臍帯-胎盤接合部の間葉系幹細胞集団を、Beeravolu et al. 「Isolation and Characterization of Mesenchymal Stromal Cells from Human Umbilical Cord and Fet al. Placenta.」 J Vis Exp. 2017; (122): 55224に記載されているように単離することができることが留意される。
【0029】
上記に従って、その創傷治癒特性を誘導するまたは改善するために、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、F12(ハムF12培地)、M171(培地171)、およびFBS(ウシ胎仔血清)を含む培養液中で本発明において培養される間葉系幹細胞集団は、本発明の培養液中で培養する前にその天然環境から単離され得ることが本明細書において留意される。そのようなアプローチは、具体的には、臍帯血の間葉系幹細胞集団または骨髄の間葉系幹細胞集団などの、組織外植片によって容易に単離することができない間葉系幹細胞集団に使用される。しかしながら、このアプローチはまた、臍帯の間葉系幹細胞集団、胎盤の間葉系幹細胞集団、または脂肪組織由来の間葉系幹細胞集団に採用することもできる。そのような幹細胞集団、例えばワルトン膠様質の間葉系幹細胞集団は、Subramanian et al, 2015, PLoS ONE、前記、または国際特許出願WO 2004/072273 「Progenitor Cells From Wharton's Jelly Of Human Umbilical Cord」によって前述されたように、最初に単離し、次いでDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、F12(ハムF12培地)、M171(培地171)、およびFBS(ウシ胎仔血清)を含む本発明の培養液中での単離された間葉系幹細胞集団の培養に供することができる。また、胎盤間葉系幹細胞集団は、例えば、欧州特許出願EP1 288 293、Talwadekar et al, 「Cultivation and Cryopreservation of Cord Tissue MSCs with Cord Blood AB Plasma」 Biomed Res J 2014;1(2):126-136、Talwadekar et al, 「Placenta-derived mesenchymal stem cells possess better immunoregulatory properties compared to their cord-derived counterparts - a paired sample study」 Scientific Reports 5:15784 (2015)、またはBeeravolu et al. 「Isolation and Characterization of Mesenchymal Stromal Cells from Human Umbilical Cord and Fetal Placenta.」 J Vis Exp. 2017; (122): 55224に記載されているように、胎盤から単離し、その後本発明の培養液中で培養することができる。同様に、脂肪組織由来の間葉系幹細胞集団は、Schneider et al, 「Adipose-derived mesenchymal stem cells from liposuction and resected fat are feasible sources for regenerative medicine」 Eur J Med Res. 2017; 22: 17、およびその中で引用された参考文献に記載されているように単離し、その後本発明の培養液中で培養することができる(実験の項もまた参照されたい)。さらなる実例として、臍帯-胎盤接合部の間葉系幹細胞集団もまた、Beeravolu et al. 「Isolation and Characterizationation of Mesenchymal Stromal Cells from Human Umbilical Cord and Fetal Placenta.」 J Vis Exp. 2017; (122): 55224に記載されているように、最初に単離し、その後本発明の培養液中で培養することができる。
【0030】
あるいは、および具体的には組織外植片によって単離することができる間葉系幹細胞については、本発明の細胞培養液中で天然組織を培養することにより、間葉系幹細胞集団をその天然組織環境から直接単離することができる。そのような方法論は、臍帯組織、胎盤組織(胎盤組織は、例えば、胎盤の羊膜を含み得るか、もしくは胎盤の羊膜であってよい)、または臍帯-胎盤接合部由来の間葉系幹細胞集団の培養に特に適している。
【0031】
これに関連して、本発明の培養液により、その結果として、間葉系幹細胞集団(本明細書において「間葉系幹細胞」とも称される)をその天然環境から単離することもまた可能になることが留意される。したがって、本発明の培養液により、間葉系幹/前駆細胞を分化させることなく間葉系幹/前駆細胞の細胞増殖を可能にする条件下で、間葉系幹細胞集団を単離することもまた可能になる。
【0032】
1つの態様では、本発明の培養液によって、間葉系幹/前駆細胞を分化させることなく間葉系幹/前駆細胞の細胞増殖を可能にする条件下で、羊膜から間葉系幹細胞集団を単離することが可能になる。したがって、本明細書に記載されるように羊膜から間葉系幹細胞を単離した後、単離された間葉系幹/前駆細胞集団は、例えば米国特許出願第2006/0078993号、米国特許第9,085,755号、国際特許出願WO2006/019357、米国特許第8,287,854号、またはWO2007/046775に記載されるように、複数の細胞型に分化する能力を有する。例えば米国特許出願第2006/0078993号に記載されるように、臍帯の羊膜の間葉系幹細胞は、紡錘形を有し、遺伝子POU5f1、Bmi-1、白血病抑制因子 (LIF) を発現し、かつアクチビンAおよびフォリスタチンを分泌する。本発明において単離された間葉系幹細胞は、これらに限定されないが、皮膚線維芽細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、腱細胞、靱帯維芽細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、脂肪細胞、ムチン産生細胞、インスリン産生細胞(例えば、β島細胞)などの内分泌腺由来の細胞、または神経外胚葉細胞などの、間葉系細胞のいかなる型にも分化させることができる。本発明において単離された幹細胞は、後に医療目的で分化細胞を使用するために、インビトロで分化させることができる。そのようなアプローチの実例は、間葉系幹細胞のインスリン産生β島細胞への分化であり、この細胞は次いで、糖尿病などのインスリン欠乏に罹患している患者に、例えば移植によって投与することができる(この点において、WO2007/046775もまた参照されたい)。あるいは、本発明の間葉系幹細胞は、例えば、熱傷または慢性糖尿病創傷の処置などの創傷治癒の目的で、細胞ベースの療法のために未分化状態で使用することができる。これらの治療適用において、本発明の間葉系幹細胞は、周囲の罹患組織と相互作用することによって創傷治癒を促進するのに役立ち得るか、またはそれぞれの皮膚細胞にも分化し得る(例えば、再度WO2007/046775を参照されたい)。
【0033】
上記開示に従って、本明細書において記載されるそのような間葉系幹細胞集団は、臍帯組織が羊膜(「臍帯ライニング」とも称される)を含有する限りにおいて、任意の臍帯組織から単離し培養することができる(すなわち、任意の臍帯組織に由来する)ことがここで留意される。よって、間葉系幹細胞集団は、本出願の実験の項に記載されているように、臍帯全体(からの小片)から単離することができる。したがってこの臍帯組織は、羊膜に加えて、臍帯の任意の他の組織/構成成分を含有してもよい。例えば、米国特許出願第2006/0078993号または国際特許出願WO2006/019357の
図16に示されるように、臍帯の羊膜は、臍帯を覆っている、臍帯の最も外側の部分である。加えて、臍帯は、1本の静脈(酸素化し栄養分に富んだ血液を胎児に運ぶ)および2本の動脈(脱酸素化され栄養分が枯渇した血液を胎児から運び出す)を含有する。保護および機械的支持のために、これら3本の血管は、大部分がムコ多糖でできているゼラチン状物質であるワルトン膠様質内に包埋されている。よって、本発明において用いられる臍帯組織はまた、この1本の静脈、2本の動脈、およびワルトン膠様質を含み得る。臍帯のそのような全体(無傷)部分の使用は、羊膜を臍帯の他の構成成分から分離する必要がないという利点を有する。これによって、単離段階が減少し、ひいては本発明の方法が、より簡便になり、より迅速になり、間違いが起こりにくくなり、かつより経済的になる‐これらはすべて、間葉系幹細胞の治療適用に必要なGMP生産の重要な局面である。したがって間葉系幹細胞の単離は、組織外植片から開始することができ、その後、より多くの量の間葉系幹細胞が例えば臨床試験において使用するために所望される場合には、単離された間葉系幹細胞を続いて継代培養(培養)することができる。あるいは、最初に臍帯の他の構成成分から羊膜を分離し、本発明の培養液中で羊膜を培養することによって、羊膜から間葉系臍帯ライニング幹細胞を単離することもまた可能である。この培養はまた、組織外植片で行うこともでき、任意にその後、単離された間葉系幹細胞の継代培養が行われる。
【0034】
これに関連して、「組織外植片」または「組織外植片法」という用語は、当技術分野におけるその通常の意味で用いられて、ひとたび回収された組織(例えば、胎盤組織または臍帯組織)またはその組織片が、培養液(増殖培地)を含む細胞培養ディッシュ中に配置され、時間と共に幹細胞が組織からディッシュの表面上に遊走する方法を指す。次いでこれらの初代幹細胞を、本明細書においても記載されるように、大量増殖 (micropropagation)(継代培養)により、さらに増大させ、新たなディッシュに移すことができる。これに関連して、治療目的のための細胞の生成の観点において、本発明の間葉系幹細胞集団、例えば、羊膜間葉系幹細胞またはワルトン膠様質間葉系幹細胞などの臍帯間葉系幹細胞を単離/取得する第1段階において、単離された間葉系幹細胞のマスター細胞バンクが得られ、その後の継代培養においてワーキング細胞バンクが得られ得ることが留意される。本発明の間葉系幹細胞集団(具体的には、そのうちの少なくとも約97%もしくはそれ以上、98%もしくはそれ以上、または99%もしくはそれ以上の細胞が、マーカーCD73、CD90、およびCD105の各々を発現し、かつマーカーCD34、CD45、およびHLA-DRの各々の発現を欠いている、間葉系幹細胞の集団)が、臨床試験のためにまたは認可された治療として用いられる場合には、この目的のために、ワーキング細胞バンクの細胞集団が典型的に用いられる。単離段階の幹細胞集団(マスター細胞バンクを構成し得る)および継代培養段階の幹細胞集団(ワーキング細胞バンクを構成し得る)はいずれも、例えば凍結保存形態で貯蔵することができる。
【0035】
上記のように、間葉系幹細胞集団の創傷治癒特性を誘導するまたは改善する(および任意で、ワルトン膠様質または臍帯の羊膜などの組織から間葉系幹細胞を単離するのと同時での)本方法は、本発明の培養液中で使用される全構成成分がGMP品質で入手可能であり、したがって、間葉系幹細胞がその後の治療的投与のためにGMP条件下で単離される可能性をもたらすという利点を有する。
【0036】
「間葉系幹細胞集団の創傷治癒特性を誘導するまたは改善する」とは、本明細書において、培養液が、間葉系幹細胞集団によるタンパク質Ang-1、TGF-β1、VEGF、およびHGFのうちの少なくとも1つの発現および/または分泌を増加させるまたは開始する(誘導する)能力を意味する。上記で説明したように、これら4つのタンパク質のすべての創傷治癒への関与が公知である。「創傷治癒特性を誘導するまたは改善する」ことは、米国特許出願US 2008/0248005および対応する国際特許出願W02007/046775において優れた創傷治癒特性を有することが示された、臍帯の羊膜の間葉系幹細胞集団の単離および培養のために米国特許出願US 2008/0248005および国際特許出願W02007/046775において使用された培地PTT-4(90% (v/v) CMRL1066および10% (v/v) FBSからなる)などの参照(培養)培地中での間葉系幹細胞集団の培養と比較して評価される。間葉系幹細胞集団の参照培地中での培養と比較して、本発明の培養液中で培養した場合に、間葉系幹細胞集団が、4つのマーカータンパク質Ang-1、TGF-β1、VEGF、HGFのうちの少なくとも1つを上清/培養液中により大量に分泌する(より高い分泌レベルまたはより高い濃度に対応する)場合、間葉系幹細胞集団の創傷治癒特性は増加する。参照培地中での培養中に、間葉系幹細胞集団によるこれら4つのマーカータンパク質のいずれの(検出可能な)分泌も観察されず、一方で本発明の培養液中での間葉系幹細胞集団の培養中または培養後に、4つのマーカーのうち少なくとも1つの検出可能な分泌が観察される場合、幹細胞集団の創傷治癒特性は誘導される。間葉系幹細胞集団の創傷治癒特性はまた、参照培地中での幹細胞集団の培養と比較して、4つのマーカータンパク質Ang-1、TGF-β1、VEGF、およびHGFのうちの少なくとも2つまたは少なくとも3つまたはすべての発現または分泌が増加している場合にも改善される。4つのマーカータンパク質の培養液中への分泌(およびひいては幹細胞集団によるこれらの因子の産生)は、任意の適切な方法で、例えば市販の抗体/免疫測定法によりタンパク質の量を測定することによって、測定/決定することができる(実験の項を参照されたい)。そのような測定は、例えばFLEXMAP 3Dシステム (Luminex Corportion、Austin, Texas, USA)などのシステムを使用して、自動化様式で行うことができる。
【0037】
「DMEM」とは、1969年に開発され、基本培地イーグル (BME) の改変物であるダルベッコ改変イーグル培地を意味する(Lonzaから入手可能なDMEMのデータシートを示す
図1を参照されたい)。最初のDMEM処方は1000 mg/Lのグルコースを含有し、胚性マウス細胞の培養について初めて報告された。それ以来DMEMは細胞培養のための標準的な培地となり、ほんの数例の供給業者を挙げると、ThermoFisher Scientific(カタログ番号11965-084)、Sigma Aldrich(カタログ番号D5546)、またはLonzaなどの、様々な供給源から市販されている。したがって、いかなる市販のDMEMも、本発明において使用することができる。好ましい態様において、本明細書で用いられるDMEMは、Lonzaからカタログ番号12-604Fで入手可能なDMEM培地である。この培地は、4.5 g/L グルコースおよびL-グルタミンが補充されているDMEMである。別の好ましい態様において、本明細書で用いられるDMEMは、Sigma Aldrichカタログ番号D5546のDMEM培地であり、これは1000 mg/L グルコースおよび炭酸水素ナトリウムを含有するが、L-グルタミンを含まない。
【0038】
「F12」培地とは、ハムF12培地を意味する。この培地もまた標準的な細胞培養液であり、ホルモンおよびトランスフェリンと組み合わせて血清と共に使用された場合に、幅広い種類の哺乳動物細胞およびハイブリドーマ細胞を培養できるように、当初設計された栄養混合物である(LonzaからのハムF12培地のデータシートを示す
図2を参照されたい)。いかなる市販のハムF12培地(例えば、ほんの数例の供給業者を挙げると、ThermoFisher Scientific(カタログ番号11765-054)、Sigma Aldrich(カタログ番号N4888)、またはLonzaからのもの)も、本発明において使用することができる。好ましい態様では、LonzaからのハムF12培地が用いられる。
【0039】
「DMEM/F12」または「DMEM:F12」とは、DMEMとハムF12培養液の1:1混合物を意味する(LonzaからのDMEM: F12 (1:1) 培地のデータシートを示す
図3を参照されたい)。DMEM/F12 (1:1) 培地もまた、多くの異なる哺乳動物細胞の増殖を支持するために広く使用されている基本培地であり、ThermoFisher Scientific(カタログ番号11330057)、Sigma Aldrich(カタログ番号D6421)、またはLonzaなどの様々な供給業者から市販されている。いかなる市販のDMEM:F12培地も、本発明において使用することができる。好ましい態様において、本明細書で用いられるDMEM:F12培地は、Lonzaからカタログ番号12-719Fで入手可能なDMEM/F12 (1:1)培地(L-グルタミン、15 mM HEPES、および3.151 g/Lグルコースを伴うDMEM: F12である)である。
【0040】
「M171」とは、正常ヒト乳腺上皮細胞の増殖について培養するための基本培地として開発された培養液171を意味する(Life Technologies CorporationからのM171培地のデータシートを示す
図4を参照されたい)。この基本培地もまた広く使用されており、例えばThermoFisher ScientificまたはLife Technologies Corporation(カタログ番号M171500)などの供給業者から市販されている。いかなる市販のM171培地も、本発明において使用することができる。好ましい態様において、本明細書で用いられるM171培地は、Life Technologies Corporationからカタログ番号M171500で入手可能なM171培地である。
【0041】
「FBS」とは、ウシ胎仔血清(ウシ胎児血清とも称される)、すなわち、天然の血液凝固後に残存し、続いて遠心分離によっていかなる残存赤血球も除去された血液画分を意味する。ウシ胎仔血清は、非常に低レベルの抗体を有し、より多くの増殖因子を含有し、多くの異なる細胞培養適用における多用途性を可能にするという理由で、真核細胞のインビトロ細胞培養のために最も広く使用されている血清補充物質である。FBSは、その主眼が、適切な起源追跡管理、表示の真実性、ならびに適切な規格化および監視を通した血清および動物由来製品の安全性および安全使用であるInternational Serum Industry Association (ISIA) のメンバーから入手することが好ましい。ISIAメンバーであるFBSの供給業者には、少し記述するだけでも、Abattoir Basics Company、Animal Technologies Inc.、Biomin Biotechnologia LTDA、GE Healthcare、Gibco by Thermo Fisher Scientific、およびLife Science Productionが含まれる。現在好ましい態様において、FBSはGE Healthcareからカタログ番号A15-151で得られる。
【0042】
ここで本発明の培養液に目を向けると、培養液は、間葉系幹細胞の創傷治癒特性を誘導するもしくは改善するために、または間葉系幹細胞の単離もしくは培養のために、最終濃度約55~65% (v/v) のDMEM、最終濃度約5~15% (v/v) のF12、最終濃度約15~30% (v/v) のM171、および最終濃度約1~8% (v/v) のFBSを含み得る。本明細書で用いられる「% (v/v)」という値は、培養液の最終容量に対する個々の構成成分の容量を指す。これは、DMEMが例えば最終濃度約55~65% (v/v) で培養液中に存在するのであれば、1リットルの培養液が約550~650 ml DMEMを含有することを意味する。
【0043】
他の態様において、培養液は、最終濃度約57.5~62.5% (v/v) のDMEM、最終濃度約7.5~12.5% (v/v) のF12、最終濃度約17.5~25.0% (v/v) のM171、および最終濃度約1.75~3.5% (v/v) のFBSを含み得る。さらなる態様において、培養液は、最終濃度約61.8% (v/v) のDMEM、最終濃度約11.8% (v/v) のF12、最終濃度約23.6% (v/v) のM171、および最終濃度約2.5% (v/v) のFBSを含み得る。
【0044】
上記の構成成分に加えて、培養液は、間葉系臍帯ライニング幹細胞の培養に有利な補充物質を含み得る。本発明の培養液は、例えば上皮増殖因子 (EGF) を含み得る。存在する場合には、EGFは最終濃度約1 ng/ml~約20 ng/mlで培養液中に存在し得る。これらの態様のいくつかにおいて、培養液は最終濃度約10 ng/mlのEGFを含み得る。
【0045】
本発明の培養液はまた、インスリンを含み得る。存在する場合には、インスリンは最終濃度約1μg/ml~10μg/mlで存在し得る。これらの態様のいくつかにおいて、培養液は最終濃度約5μg/mlのインスリンを含み得る。
【0046】
培養液は、以下の補充物質のうちの少なくとも1つをさらに含み得る:アデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) 。そのような態様において、培養液は、アデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) の3つすべてを含み得る。これらの態様において、培養液は、最終濃度約0.05~約0.1μg/mlアデニンのアデニン、最終濃度約1~約10μg/mlヒドロコルチゾンのヒドロコルチゾン、および/または最終濃度約0.5~約5 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) を含み得る。
【0047】
本発明の方法の1つの態様では、臍帯組織または胎盤などの組織を、適切な数の(初代)間葉系幹細胞、例えば臍帯ライニング幹細胞、ワルトン膠様質または胎盤幹細胞が組織から増殖するまで培養することができる。典型的な態様では、臍帯組織を、各組織の間葉系幹細胞の細胞増殖が約70~約80%の集密度に達するまで培養する。本明細書において、「集密度」または「集密」という用語は、細胞培養の技術分野におけるその通常の意味で用いられ、細胞によって覆われた表面の割合を参照した、培養ディッシュまたはフラスコ中の接着細胞の数の推定値/指標を意味することが留意される。例えば、50パーセントの集密とは、表面のおよそ半分が覆われており、細胞が増殖する余地がなお存在することを意味する。100パーセントの集密とは、表面が細胞によって完全に覆われており、細胞が単層として増殖する余地が残されていないことを意味する。
【0048】
ひとたび適切な数の初代細胞(間葉系幹細胞)が組織外植片による各組織から得られたならば、培養に使用した培養容器から間葉系幹細胞を取り出す。そうすることによって、例えば臍帯または胎盤の(初代)単離間葉系幹細胞を含有するマスター細胞バンクを得ることができる。典型的には、そのような間葉系幹細胞は接着細胞であるため、細胞の回収は標準的な酵素処理を用いて行われる。例えば、酵素処理は、国際米国特許出願第2006/0078993号、国際特許出願WO2006/019357、または国際特許出願WO2007/046775に記載されているようにトリプシン処理を含んでよく、これは、増殖している細胞をさらなる増大のためにトリプシン処理(0.125%トリプシン/0.05% EDTA)によって回収できることを意味する。回収された間葉系幹細胞が、例えばマスター細胞バンクを作製するために用いられる場合には、本明細書において以下に説明されるように、細胞を凍結保存し、さらなる使用のために貯蔵することもできる。
【0049】
ひとたび回収されたならば、間葉系幹細胞を継代培養用の培養容器に移すことができる。継代培養または培養(両用語は本明細書において以後、互換的に使用される)は、以前にその天然環境から単離された間葉系幹細胞集団が用いられる場合にも実施される(上記で説明したように、本発明の方法で使用されるそのような単離された幹細胞は、臍帯血、骨髄、または脂肪組織だけでなく、臍帯組織または胎盤組織にも由来し得る)。継代培養はまた、凍結された初代細胞から、すなわちマスター細胞バンクから開始することもできる。継代培養のために、任意の適切な量の細胞を、細胞培養プレートなどの培養容器中に播種することができる。間葉系細胞を、この目的のために、例えば約0.5×106細胞/ml~約5.0×106細胞/mlの濃度で、継代培養用の適切な培地(最も好都合には、本発明の培養液)中に懸濁することができる。1つの態様では、細胞を、継代培養のために約1.0×106細胞/mlの濃度で懸濁する。継代培養は、単純な培養フラスコ中で培養することによって行うこともできるが、例えば、インキュベーター内で積み重ねることができる、CellStack(Corning、Corning, NY, USA)またはCellfactory(Nunc、Thermo Fisher Scientific Inc.の一部、Waltham, MA, USA)などの多層システム中で培養することによって行うこともできる。あるいは、継代培養はまた、バイオリアクターなどの閉鎖自己完結型システムで行うこともできる。様々なデザインのバイオリアクターが当業者に周知であり、例えば、平行平板、中空繊維、またはマイクロ流体バイオリアクターがある。例えば、Sensebe et al. 「Production of mesenchymal stromal/stem cells according to good manufacturing practices: a review」、前記を参照されたい。市販の中空繊維バイオリアクターの実例は、例えば、臨床試験のための骨髄間葉系幹細胞の増大に使用されているQuantum(登録商標)細胞増殖システム (Terumo BCT, Inc) である(Hanley et al, Efficient Manufacturing of Therapeutic Mesenchymal Stromal Cells Using the Quantum Cell Expansion System, Cytotherapy. 2014 August ; 16(8): 1048-1058を参照されたい)。本発明の間葉系幹細胞集団の継代培養に使用され得る市販のバイオリアクターの別の例は、GE Heathcareから入手可能なXuri細胞増殖システムである。Quantum(登録商標)細胞増殖システムなどの自動化システムにおける間葉系幹細胞の培養は、治療適用のためのワーキング細胞バンクがGMP条件下で生成されるべきであり、多数の細胞が必要である場合に、特に有効である。
【0050】
本発明の間葉系幹細胞の継代培養は、本発明の培養液中で行われる。よって、本発明の培養液は、例えば胎盤の羊膜からの、羊膜からの、または臍帯のワルトン膠様質からの間葉系幹細胞集団の単離、および継代培養による単離初代細胞のその後の培養の両方のために使用され得る。継代培養についても同様に、間葉系幹細胞は、適切な量の細胞が増殖するまで培養することができる。例証的な態様において、間葉系幹細胞は、それらが約70~約80%の集密度に達するまで継代培養される。
【0051】
間葉系幹細胞集団の単離/培養は、哺乳動物細胞を培養するための標準的な条件下で行われ得る。典型的には、間葉系幹細胞集団を単離する本発明の方法は典型的に、その細胞の由来元の種の細胞を培養するために通常用いられる条件(温度、雰囲気)下で行われる。例えば、ヒト臍帯組織および間葉系臍帯ライニング幹細胞はそれぞれ、通常は5% CO2を含む通常の雰囲気中、37℃で培養される。これに関連して、本発明において間葉系細胞集団は、マウス、ラット、モルモット、ブタ、ウサギ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ヒツジ、サル、またはヒトなどの任意の哺乳動物種に由来してよく、1つの態様においてはヒト起源の間葉系幹細胞が好ましいことが留意される。
【0052】
ひとたび所望の/適切な数の間葉系幹細胞が培養または継代培養から得られたならば、継代培養に使用した培養容器から間葉系幹細胞を取り出すことにより、それらを回収する。間葉系幹細胞の回収は典型的には、この場合も同様に、細胞のトリプシン処理を含む酵素処理によって行われる。単離された間葉系幹細胞をその後収集し、直接使用するかまたはさらなる使用のために保存する。典型的に、保存は凍結保存によって行われる。「凍結保存」という用語は、本明細書においてその通常の意味で用いられて、間葉系幹細胞が、(典型的に)-80℃または-196℃(液体窒素の沸点)などの氷点下の温度まで冷却することによって保存される過程を表す。凍結保存は、当業者に公知のように行うことができ、臍帯の細胞中の氷晶の形成を遅らせる、ジメチルスルホキシド (DMSO) またはグリセロールなどの凍結保護剤の使用を含み得る。
【0053】
本発明の培養および/または単離方法によって得られた間葉系幹細胞の単離された集団は、高度に明確でありかつ高度に均一である。本方法の典型的な態様において、単離された間葉系幹細胞の少なくとも約90%またはそれ以上、約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上が、以下のマーカーを発現する:CD73、CD90、およびCD105。加えて、これらの態様において、単離された間葉系幹細胞の少なくとも約90%またはそれ以上、約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上が、以下のマーカーの発現を欠き得る:CD34、CD45、およびHLA-DR。特定の態様において、単離された間葉系幹細胞集団の約97%もしくはそれ以上、約98%もしくはそれ以上、または約99%もしくはそれ以上が、CD73、CD90、およびCD105を発現しながら、CD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている。
【0054】
したがって、上記の開示と一致して、本発明はまた、間葉系幹細胞集団、例えば胎盤間葉系幹細胞集団、または臍帯間葉系幹細胞集団(例えば、ワルトン膠様質または臍帯の羊膜から単離された)を対象にし、該幹細胞集団の少なくとも約90%またはそれ以上の細胞は以下のマーカーの各々を発現する:CD73、CD90、およびCD105。好ましい態様において、単離された間葉系幹細胞集団の少なくとも約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上の細胞が、CD73+、CD90+、かつCD105+であり、このことは、単離された細胞集団のこの割合が、CD73、CD90、およびCD105の各々を発現することを意味する(本出願の実験の項を参照されたい)。加えて、単離された間葉系幹細胞の少なくとも約90%またはそれ以上、約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上が、以下のマーカーの発現を欠き得る:CD34、CD45、およびHLA-DR。特定の態様において、単離された間葉系幹細胞集団の約97%もしくはそれ以上、約98%もしくはそれ以上、または約99%もしくはそれ以上が、CD73、CD90、およびCD105を発現しながら、CD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている。臍帯の羊膜に由来する間葉系幹細胞のそのように高度に均一な集団は、本明細書において初めて報告され、細胞療法に使用されるべき間葉系幹細胞の基準を満たす(実験の項、および例えばSensebe et al.「Production of mesenchymal stromal/stem cells according to good manufacturing practices: a review」、前記もまた参照されたい)。これに関連して、この間葉系幹細胞集団は、本発明の単離方法によって得ることができるが、望ましい場合には、細胞選別などの異なる方法によって得ることもできることが留意される。幹細胞集団の少なくとも約91%またはそれ以上の細胞が、各CD73、CD90、およびCD105を発現し、かつCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている、本発明の臍帯のそのような間葉系幹細胞集団の1つの態様では、臍帯の羊膜から単離された間葉系幹細胞集団は除外される。
【0055】
上記と一致して、本発明はまた、本明細書に記載される間葉系幹細胞集団を含む薬学的組成物を対象にし、該幹細胞集団の少なくとも約90%またはそれ以上の細胞はマーカーCD73、CD90、およびCD105の各々を発現し、かつ任意にCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている。薬学的組成物は、任意の薬学的に許容される賦形剤を含んでよく、任意の所望の薬学的投与方法のために製剤化され得る。薬学的組成物は、例えば全身または局所への適用に適合していてもよい。関連する局面において、本発明はまた、唯一の創傷治癒タンパク質としてAng-1、TGF-β1、VEGF、またはHGFのうちの3つまたは4つを含有する薬学的組成物を提供する。そのような薬学的組成物は、例えば0.9%生理食塩水、リンゲル液、もしくはリン酸緩衝生理食塩水 (PBS) などの薬学的に適した緩衝液を使用することにより、液体として、または凍結乾燥物質/凍結乾燥製剤として製剤化され得る。
【0056】
さらなる局面において、本発明は、創傷治癒特性を誘導するもしくは改善するための、および/または間葉系幹細胞集団を単離するための培養液を作製する方法を対象にし、該方法は、最終容量500 mlの培養液を得るために、
i. DMEM 250 ml
ii. M171 118 ml
iii. DMEM/F12 118 ml
iv. 最終濃度2.5% (v/v) に達するためのウシ胎仔血清 (FBS) 12.5 ml
を混合する段階を含む。
【0057】
上記で説明したように、DMEM/F12培地は、DMEMとハムF12培養液の1:1混合物である。したがって、DMEM/F12培地118 mlは、DMEM 59 mlおよびF12 59 mlを含有する。よって、培養液を作製するこの方法を用いた場合、全容量500 mlにおける最終濃度 (v/v) は以下の通りである:
DMEM:250 ml + 59 ml = 309 ml、309/500 = 61.8 % (v/v) に相当する。
M171:118 ml、118/500 = 23.6 % (v/v) に相当する。
F12:59 ml、59/500 = 11.8 % (v/v) に相当する。
【0058】
培養液を作製する本方法の態様は、
v. 最終EGF濃度10 ng/mlを達成するためのEGF保存溶液 (5μg/ml) 1 ml、および
vi. 最終インスリン濃度5μg/mlを達成するためのインスリン保存溶液 (14.28 mg/ml) 0.175 ml
を添加する段階をさらに含む。
【0059】
これらの態様において、これらの構成成分i~viの、混合した場合の上記の容量が、最終容量499.675 mlの培養液をもたらすことが、本明細書において留意される。さらなる構成成分が培養液に添加されない場合、残りの0.325 ml(合計して500 mlの容量とするため)は、例えば、DMEM、M171、DMEM/F12、またはFBSのいずれかを意味する、構成成分i~ivのいずれかであってよい。あるいは、培養液の全容量が500 mlとなるように、EGFまたはインスリンの保存溶液の濃度を当然ながら調整することもできる。加えて、構成成分i~viは、必ずしもそれらが列挙されている順に添加しなければならないわけではなく、本発明の培養液に達するように、任意の順序を用いてこれらの構成成分を混合することも当然ながら可能であることもまた留意される。このことは、例えば、M171とDMEM/F12を共に混合し、次いでDMEMおよびFBSと組み合わせて、本明細書に記載される最終濃度、すなわち、DMEMの最終濃度 約55~65% (v/v)、F12の最終濃度 約5~15% (v/v)、M171の最終濃度 約15~30% (v/v)、およびFBSの最終濃度 約1~8% (v/v) とすることができることを意味する。
【0060】
他の態様において、本方法は、補充物質であるアデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) のうちの1つまたは複数を0.325 mlの容量でDMEMに添加し、それによって全容量500 mlの培養液とする段階をさらに含む。この態様において、DMEM中のこれらの補充物質の最終濃度は、以下の通りであってよい:
約0.05~0.1μg/mlのアデニン、例えば約0.025μg/mlのアデニン、
約1~10μg/mlのヒドロコルチゾン、
約0.5~5 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3)、例えば1.36 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3)。
【0061】
上記の開示と一致して、本発明はまた、本明細書に記載される培地を作製する方法によって取得可能であるまたは得られる細胞培養液を対象にする。
【0062】
加えて、本発明はまた、臍帯の羊膜から間葉系幹細胞を単離する方法に関係し、該方法は、本明細書に記載される方法によって調製された培養液中で羊膜組織を培養する段階を含む。
【0063】
したがって、本発明はまた、
‐最終濃度約55~65% (v/v) のDMEM、
‐最終濃度約5~15% (v/v) のF12、
‐最終濃度約15~30% (v/v) のM171、および
‐最終濃度約1~8% (v/v) のFBS
を含む細胞培養液を対象にする。
【0064】
本明細書において記載される培養液のある特定の態様において、培地は、最終濃度約57.5~62.5% (v/v) のDMEM、最終濃度約7.5~12.5% (v/v) のF12、最終濃度約17.5~25.0% (v/v) のM171、および最終濃度約1.75~3.5% (v/v) のFBSを含む。他の態様において、培養液は、最終濃度約61.8% (v/v) のDMEM、最終濃度約11.8% (v/v) のF12、最終濃度約23.6% (v/v) のM171、および最終濃度約2.5% (v/v) のFBSを含み得る。
【0065】
加えて、培養液は、最終濃度約1 ng/ml~約20 ng/mlの上皮増殖因子 (EGF) をさらに含み得る。ある特定の態様において、培養液は最終濃度約10 ng/mlのEGFを含む。本明細書に記載される培養液は、最終濃度約1μg/ml~10μg/mlのインスリンをさらに含み得る。そのような態様において、培養液は最終濃度約5μg/mlのインスリンを含み得る。
【0066】
本発明の細胞培養液は、以下の補充物質のうちの少なくとも1つをさらに含み得る:アデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) 。ある特定の態様において、培養液は、アデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) の3つすべてを含む。存在する場合には、培養液は、最終濃度約0.01~約0.1μg/mlアデニンもしくは約0.05~約0.1μg/mlアデニンのアデニン、最終濃度約0.1~約10μg/mlヒドロコルチゾンもしくは約1~約10μg/mlヒドロコルチゾンのヒドロコルチゾン、および/または最終濃度約0.5~約5 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) を含み得る。
【0067】
細胞培養液の態様において、本発明の細胞培養液500 mlは、
i. DMEM 250 ml
ii. M171 118 ml
iii. DMEM/F12 118 ml
iv. ウシ胎仔血清 (FBS) 12.5 ml(最終濃度2.5%)
を含む。
【0068】
さらなる態様において、細胞培養液は、
v. 最終濃度10 ng/mlのEGF、および
vi. 最終濃度5μg/mlのインスリン
をさらに含み得る。
【0069】
インスリンおよびEGFはいずれも、培養液の全容量が500 mlを超えないように、最適な保存溶液を用いて培養液に添加することができる。
【0070】
特定の例において、本発明の培養液の構成成分i~viは、
図5に示される構成成分であり、これは、それらが
図5に示されるカタログ番号を用いて各製造業者から入手されることを意味する。
図5に示されるような構成成分i~viを混合して得られる培地は、本明細書において「PTT-6」とも称される。これに関連して、任意の他の商業的供給業者の、構成物質i~vi、および抗生物質などの任意の他の成分が、本発明の培地を作製する上で使用され得ることが再度留意される。
【0071】
加えて、本発明の細胞培養液は、最終濃度約0.01~約0.1μg/mlアデニンもしくは約0.05~約0.1μg/mlアデニンのアデニン、最終濃度約0.1~10μg/ml、約0.5~約10μg/ml、もしくは約1~約10μg/mlヒドロコルチゾンのヒドロコルチゾン、および/または最終濃度約0.1~約5 ng/mlもしくは約0.5~約5 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) を含み得る。
【0072】
最後に、本発明はまた、疾患を有するかまたは状態に苦しむ非ヒト哺乳動物(ほんのわずかな例を挙げると、ネコ、イヌ、ウマなど)またはヒト患者を処置する方法を提供し、該方法は、本明細書に開示されるような間葉系幹細胞集団または幹細胞集団を含有する薬学的組成物を非ヒト哺乳動物またはヒト患者に投与する段階を含む。疾患は、任意の疾患または状態、具体的には創傷の治癒が望まれる/必要とされる任意の疾患または状態であってよい。対象(患者または非ヒト哺乳動物)は、熱傷、咬傷、外傷、手術、または皮膚疾患もしくは代謝障害などの疾患によって生じる創傷を患っている可能性がある。そのような代謝障害の一例として、患者は、例えばI型またはII型糖尿病に罹患している可能性があり、慢性足部潰瘍を患っている。対象を処置するために、本発明の間葉系幹細胞集団を、例えば、これらに限定されないが、局所投与、移植、または注射を含む任意の適切な方法で投与することができる。原理上は、任意の局所投与方法が本明細書において意味される。間葉系幹細胞集団の投与は、シリンジによって行うことができる。しかしながら、間葉系幹細胞を対象に適用する前に、間葉系幹細胞をクリーム、軟膏、ゲル、懸濁液、または任意の他の適切な物質中に接触させることも可能である。幹細胞集団を、例えば、次いで熱傷または糖尿病創傷などの創傷上に直接配置してもよい(国際特許出願WO2007/046775を参照されたい)。対象に適用した後、例えばTegaderm(登録商標)ドレッシング材などのドレッシング材およびTegaderm(登録商標)ドレッシング材を覆うためのクレープ包帯によって、間葉系幹細胞集団を所定の位置に保持してもよい。あるいは、幹細胞集団を、皮下に、例えば皮膚下に直接、体脂肪中に、または腹膜内に移植してもよい。
【0073】
本発明はまた、本明細書に記載される間葉系幹細胞集団の細胞約2000万個を含む、細胞約1500万個の、細胞約1000万個の、細胞約500万個の、細胞約400万個の、細胞約300万個の、細胞約200万個の、細胞約100万個の、細胞約50万個の、細胞約25万個の、または細胞25万個未満の単位投与量に関する。
【0074】
単位投与量が、細胞約1000万個、約900万個、約800万個、約700万個、約600万個、約500万個、約400万個、約300万個、約200万個、約100万個、約50万個、約25万個、または約10万個を含むこともまた想定される。好ましくは、単位投与量は細胞約1000万個を含む。単位投与量が細胞約1000個~細胞約500万個を含むことがさらに想定される。単位投与量は、細胞約100,000個、細胞300,000個、または細胞500,000個の投与量で適用することができる。本明細書に記載されるように、単位投与量は、具体的には創傷治癒のために使用される場合、局所的に適用され得る。例えば、単位投与量は、cm2ごとに局所的に適用され得る。
【0075】
必要に応じて、単位投与量は、1週間に1回、2回、3回、またはそれ以上適用することができる。例えば、単位投与量は、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、またはそれ以上にわたって適用することができる。細胞約100,000個、細胞約300,000個、または細胞約500,000個を含む単位投与量は、好ましくは1 cm2に対して、1週間に2回、8週間にわたって適用することができる。
【0076】
単位投与量は、任意の適切な容器中に含まれ得る。例えば、単位投与量は1 mlバイアル中に含まれ得る。そのような場合、例えばバイアルの0.1 mlを、好ましくは1 cm2ごとに、対象に適用することができる。単位投与量はあるいは、シリンジ中に含まれてもよい。
【0077】
本発明の単位投与量では、細胞は、薬学的に許容される担体、例えば液体担体と接触していてよい。担体は、HypoThermosol(商標)、Hypothermosol(商標)-FRS、またはPlasmaLyteなどの任意の公知の担体であってよい。本発明の培養液もまた、本発明の間葉系幹細胞集団の(単位投与量)のための担体として使用することができる。その場合、間葉系幹細胞は、投与前に担体から分離され得る。例えば、対象に投与する前に、細胞を遠心分離し、単離することができる。
【0078】
本発明の処置の方法および単位投与量は、生細胞の利用を含み得る。間葉系幹細胞集団の生存率は、公知の方法、例えば、実験の項に記載されるようにトリパンブルーによる染色で試験することができる。
【0079】
本発明は、以下の非限定的な実験実施例によってさらに例証される。
【0080】
本発明は、以下の非限定的な実験実施例によってさらに例証される。
【0081】
本明細書で用いられた配列を、以下の表1に示す。
【0082】
【実施例】
【0083】
実験実施例
1. 間葉系幹細胞を単離する前の臍帯組織の凍結保存
臍帯組織(臍帯は、母親のインフォームドコンセントを得て供与された)を、臍帯の羊膜から間葉系幹細胞をその後単離するために、以下のように処理した。
【0084】
1.1 臍帯組織サンプルの洗浄:
a. 外科用メスを保護カバーから外す。
b. 鉗子を用いて臍帯をしっかりと保持し、外科用メスを用いて臍帯を10 cm長の小片に切断する。使用できない組織は、元の組織カップに戻す。
c. 10 cm長の臍帯小片を新たな150 mm培養ディッシュに移す。150 mm培養ディッシュをカップの代わりに使用することもできる。
d. 150 mm培養ディッシュのカバーを、鉗子および外科用メスの置き場所として使用する。
e. 30 mlシリンジでPlasmalyte A(Baxter、カタログ# 2B2543Q)25 mlを取り出す。片手でシリンジを45°の角度に保持し、Plasmalyte Aを臍帯組織上に直接分注する。
f. 培養ディッシュをわずかな角度で保持しながら、30 mlシリンジおよび鈍針でPlasmalyte Aを除去する。
g. 使用済みのPlasmalyte Aを、廃物容器となる300 mlトランスファーバッグ中に収集し、それをバイオハザードゴミ箱中に処分する。
h. 必要に応じて各洗浄につき新たな培養ディッシュを用いて、洗浄手順を繰り返す。表面上の血塊がすべて除去されたことを確認する。組織の清浄化が必要である場合には、さらなるPlasmalyte Aを使用することができる。
i. 組織をラベル付きの新たな組織培養ディッシュに入れて、組織の切断を継続する。切断中に組織が乾燥しないように、20 mlのPlasmalyte Aをディッシュ中に入れる。
j. 臍帯を同等のおよそ1-cm切片になるよう切断し、合計で10個の切片とする。
k. 各1 cm切片を、切片当たりおよそ0.3 cm×0.3 cm~0.5 cm×0.5 cmのより小さな小片になるようさらに切断する。
l. ディッシュ中のPlasmalyte Aをすべて除去する。
m. 元のPlasmalyte Aバッグから30 mlシリンジでPlasmalyte A 25 mlを引き出しし、臍帯組織片上に直接分注する。
n. 培養ディッシュを斜めに保持して、組織の洗浄に使用したすべてのPlasmalyte Aを片側に収集し、シリンジおよび鈍針でそれを除去する。
o. 洗浄をもう一度繰り返す。いかなる血塊も残ってはならない。
【0085】
注記:臍帯を直ちに凍結しない場合には、凍結直前まで臍帯組織をPlasmalyte A中で維持する。
【0086】
1.2 臍帯組織の凍結保存:
a. 凍結保存溶液を調製する:
i. 60% Plasmalyte A、30%の5%ヒト血清アルブミン、および10%ジメチルスルホキシド (DMSO) からなる凍結溶液 50mlを調製する。
ii. 150 mlトランスファーバッグに「組織凍結溶液」のラベルを貼り、無菌技法を用いて血漿トランスファーセットをポートに取り付ける。
iii. 元のPlasmalyte Aバッグから30 mlシリンジでPlasmalyte A 30 mlを取り出し、溶液の作製日時と共に「組織凍結溶液」のラベルが貼られたトランスファーバッグ中に移す。
iv. 20 mlシリンジで15 mlの5%ヒト血清アルブミンを取り出し、それをラベル付きのトランスファーバッグ中に移す。
v. DMSO 5 mlをトランスファーバッグに添加する。
vi. 十分に混合し、凍結溶液の混合を記録する。
b. 凍結溶液を添加する前に、組織からPlasmalyte Aを除去する。
c. 60 mlシリンジを用いて、全50 mlの凍結溶液をシリンジ中に引き出し、臍帯組織を含む150 mm細胞培養ディッシュに凍結溶液およそ30 mlを添加する。鈍針をシリンジ上に取り付けて、それを無菌状態に保つ。
d. 組織および凍結溶液を含む培養ディッシュを10分間にわたって1分ごとに旋回させる。
e. 鉗子を用いて、ランダムに選択された切片8個を選び、それらを4本の4 mlクライオバイアルの各々に入れる。ランダムに選択された切片4個を選び、それらを1本の1.8 mlクライオバイアルに入れる。これらの切片は、血塊を含んではならない。
f. 臍帯組織を含む各クライオバイアルに、残っている凍結溶液を、4 mlチューブについては3.6 ml充填線まで、および1.8 ml Nuncバイアルについては1.8 ml線まで満たす。
g. Bactec Lytic/10 - Anaerobic/Fボトル1本およびBactec Pluc Aerobic/Fボトル1本に組織IDのラベルを貼る。
h. シリンジおよび鈍針で培養ディッシュから凍結溶液20 mlを取り出し、Bactecバイアルをアルコール綿で拭いた後、鈍針を18g針に交換し、好気性および嫌気性Bactecボトルにそれぞれ10 mlを接種する。
i. 制御速度フリーザーを起動する。
j. 制御速度フリーザーが完了した後、ユニットをさらなる使用時まで連続温度モニター付き液体窒素フリーザー中に置いておく。
【0087】
2. 臍帯組織からの間葉系臍帯ライニング幹細胞の単離
2.1. 臍帯組織からMSCを処理するための培地の調製:
a. PTT-6(培養液/増殖培地) 500 mlを作製するため、以下のものを列挙されている順に添加する:
i. DMEM 250 ml
ii. M171 118 ml
iii. DMEM F12 118 ml
iv. FBS 12.5 ml(最終濃度2.5%)
v. EGF 1 ml(最終濃度10 ng/ml)
vi. インスリン0.175 ml(最終濃度5μg/ml)。
【0088】
構成成分i~viの上記の容量は、最終容量499.675 mlの培養液をもたらす。さらなる構成成分が培養液に添加されない場合、残りの0.325 ml(合計して500 mlの容量とするため)は、例えば、DMEM、M171、DMEM/F12、またはFBSのいずれかを意味する、構成成分i~ivのいずれかであってよい。あるいは、培養液の全容量が500 mlとなるように、EGFまたはインスリンの保存溶液の濃度を当然ながら調整することもできる。あるいは、ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンなどの抗生物質の保存溶液を、最終容量500 mlとなるように添加することもできる。補充物質であるアデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) のうちの1つまたは複数を0.325 mlの容量で培養液に添加し、それによって全容量500 mlの培養液とすることも可能である。
【0089】
vii. ボトルに、培地の調製日、操作者のイニシャル、および「有効期限」という語句とそれに続く有効期限日と共に、「PTT-6」のラベルを貼る。有効期限日は、構成成分のいずれかの最も早い有効期限日か、または調製日から1ヵ月後かの、いずれか早い方である。
【0090】
b. リンス培地(カルシウムおよびマグネシウム不含かつ5% FBS含有ハンクス緩衝塩類溶液 (HBSS))を作製するため、50 ml遠心管中のHBSS 47.5 mlにFBS 2.5 mlを添加する。チューブに、操作者のイニシャルおよび培地の作製日と共に、「リンス培地」のラベルを貼る。
c. Bactec Lytic/10 - Anaerobic/F (Becton Dickinson & Company) およびBactec Plus + Aerobic/F (Becton Dickinson & Company) を用いて、すべての培地を無菌性について試験する。調製済みの培地20 mlを各ボトルに注入する。
【0091】
2.2 MSC回収のための臍帯組織の解凍:
a. 操作者がクリーンルーム内でサンプルを処理する準備ができた時点で、解凍を開始する。バイアルが同じドナーに由来する場合を除いて、一度に2本以上のバイアルを解凍してはならない。
b. ウォーターバスを消毒剤および続いて70%イソプロパノールで拭き、これを滅菌水1 Lで満たす。ウォーターバスを36~38℃まで加熱する。
c. クリーンルーム内のバイオセーフティキャビネット下で、70%~90% PlasmaLyte Aからなるリンス培地10 mlを調製する。10 mlシリンジに取り付けられた0.2-μmシリンジフィルターでこの溶液を滅菌濾過し、使用時まで溶液を冷蔵して維持する。
d. 50 mlコニカルチューブに処理ラベルを貼る。
e. ウォーターバス温度が36~38℃であることを確認する。
f. 液体窒素貯蔵から組織のバイアルを取り出し、滅菌水1 Lで満たされた37℃ウォーターバス内で迅速に解凍する。Mr. Frosty Nalgene Cryo 1℃凍結容器のバイアルホルダーは、バイアルを所定の位置に収めて浮遊し、サンプルを解凍する場合に浮遊ラックとして使用することができる。
g. ウォーターバスからバイアルを取り出し、それらに70%イソプロパノール溶液をスプレーする。ウォーターバスからバイアルを引き上げるのに適したタイミングは、バイアル中に小さな氷が浮いているのが見える時である‐バイアルの内部温度が37℃未満であることを示唆する。
h. バイアルをパススルーに置き、クリーンルーム処理技術者に知らせる。
【0092】
2.3 組織処理の準備:
a. 臍帯組織処理は、環境モニター (EM) クリーンルーム内で行わなければならない。各シフトの終了時には、部屋およびフードの完全な清掃を行う。
b. バイオセーフティキャビネットを準備/清掃する。
c. バイオセーフティキャビネット内での作業中は、生物粒子計数を行う。
d. 包装の破損および有効期限日についてそれぞれチェックしながら、必要な物品をすべてバイオセーフティキャビネット内に集める。シリンジ、血清用ピペット、滅菌鉗子、外科用メス、組織プレート、および針を取り扱う場合には、滅菌生成物と接触するであろう表面に決して触れないようにする。注射筒、管類、プランジャーチップ、および/または針のキャップもしくはケースの外部のみ、安全に取り扱ってもよい。表面に触れるか、または表面が非滅菌表面に触れた場合には、物品を廃棄する。
e. 使用するすべての試薬および物品のロット番号および有効期限日(該当する場合)を記録する。
f. 70%アルコールで湿らせたリントフリーワイプでバイアルを清浄化してから、バイオセーフティキャビネット内に移動させることにより、解凍バイアルを受け取る。
g. シリンジに装着した吸引用針を用いて、バイアルからできるだけ多くの液体を抜き取る。組織を吸引しないようにする。
h. 滅菌鉗子を用いて、組織を滅菌100 mmペトリ皿に移す。
i. 組織断片に一定分割量5 mlのリンス培地を添加する。
j. 内容物を15~30秒間旋回させ、次いでピペットまたは吸引針付きシリンジでリンス培地を除去する。このリンス過程を2回繰り返す。
k. 組織が乾燥しないように、リンス培地 2 mLを組織に添加する。
【0093】
2.4. 組織からのMSC増殖の開始:
a. 6ウェルプレートの底に、MSCロット番号または臍帯組織IDおよび増殖の開始日と共に、「増殖1」のラベルを貼る。60 mm組織培養ディッシュを使用する場合には、ディッシュの底にグリッドを描いて、プレートを4つの区分に分割する。
b. 滅菌使い捨て鉗子を用いて、3×3 mm~5×5 mmの組織1個を各ウェルに入れる。60 mm組織培養ディッシュを使用する場合には、組織を各区分の中央に置いて組織を離しておく(互いに1 cm超)。
c. 各ウェルをPTT-6 3 mlで満たす。
d. 30 mlシリンジに連結した吸引用針を用いて、組織をかろうじて覆う程度に十分な培地を抜き取る。プレートを傾けてはならない。吸引針でウェルの底を触れてはならない。
e. 倒立光学顕微鏡を用いて、細胞増殖を毎日観察する(24±6時間)。光学顕微鏡の代わりに、リアルタイム細胞培養イメージングシステムを使用してもよい。
f. 培地を毎日交換する。必ず使用前に培地を室温に平衡化する。
i. 培地を吸引除去する。
ii. PTT-6 3 mlを添加する。
iii. 組織が培地中にかろうじて浸っている状態まで、吸引する。
g. 組織から細胞増殖が観察された時点で、プレートに「増殖2」のラベルを貼ることを除いて上記の4.a~4.eと同じ手順を用いて、組織を新たな6ウェルプレートに移す。PTT-6 2 mlを各ウェルに添加することにより、「増殖1」プレート中の細胞増殖を維持する。集密度について毎日観察する。培地を2~3日ごとに置換する(必ず使用前に培地を室温に平衡化する)。
h. 「増殖2」プレート中で細胞増殖が観察された時点で、プレートに「増殖3」のラベルを貼ることを除いて段階4.a~4.eを繰り返す。PTT-6 2 mlを各ウェルに添加することにより、「増殖2」プレート中の細胞増殖を維持する。集密度について毎日観察する。培地を2~3日ごとに置換する(必ず使用前に培地を室温に平衡化する)。
i. 「増殖3」プレート中で増殖が観察された時点で、組織を廃棄する。組織が非常に小さく、細胞増殖を妨げないようであれば、継代培養の際に組織を処分する。
j. 細胞が40~50%の集密度に達した時点で、細胞を毎日観察して過剰な増大を防ぐ。
k. 細胞が70~80%の集密度に達した時点で、細胞を継代培養する。細胞を80%の集密を超えるまで増大させてはならない。
【0094】
組織外植片のサイズが約1~3 mmであり、組織外植片/細胞の培養が175 mm角型培養ディッシュ中で行われる場合、外植片から回収される間葉系幹細胞の平均数は、典型的に細胞約4,000~6,000個/外植片である。よって、間葉系幹細胞を外植片48個から同時に増殖させる場合、約300,000個の細胞が回収時に得られ得る。外植片から収集されたこれら300,000個の間葉系幹細胞は次いで、以下の実施例2.5に記載されるように、175 cm2細胞培養フラスコにそのような300,000個の細胞を播種することにより、継代培養に使用することができる(これは継代1代目と称され得る)。次いでこの継代1代目から得られた間葉系幹細胞を用いて、以下の実施例2.5に記載されるように、再度175 cm2フラスコに播種し(継代2代目)、細胞を増大させることができる。継代1代目および継代2代目の両方から得られた細胞を凍結保存によって「バンク化」することができ、継代2代目後に得られた間葉系幹細胞がマスターセルバンクを表すと見なし、これは、以下の実施例2.7において説明されるように、例えばバイオリアクター中で間葉系幹細胞をさらに増大させるためのものとなる。
【0095】
2.5. 細胞培養ディッシュ中でのMSCの継代培養
a. バイオセーフティキャビネット内での作業中は、生物粒子計数を行う。使用前にすべての培地を室温に平衡化する。
b. 細胞増殖が約70~80%の集密度に達した時点で、細胞を継代培養する。
i. ペトリ皿からPTT-6を除去する。
ii. カルシウムおよびマグネシウム不含HBSSでリンスする。
iii. 1×TrypLE-EDTA 0.2 mlを添加し、1~2分間旋回させる。
iv. ディッシュを30~45°傾けて、細胞が重力流により下方に移動できるようにする。プレートの側面を穏やかにタッピングして、脱離を促進させる。
v. PTT-6 1 mlを添加する。ピペットで穏やかに上下させ、次いで細胞を15 ml遠心管に移す。各ウェルごとに清潔なピペットチップを使用する。全6ウェルからの細胞を単一の15 mlチューブ中にプールする。
vi. 1200 rpmで10分間遠心分離する。
vii. 上清を除去し、PTT-6 5 mlで細胞を再懸濁する。
c. MSCを継代培養する。
i. 細胞懸濁液50μlを分取し、トリパンブルー排除アッセイによりTNCおよび生存率についてアッセイする。
ii. 血球計算盤を用いて細胞を計数する。細胞20~100個/区画を計数するよう予測する。数が100よりも多い場合には、元のサンプルを1:5に希釈し、血球計算盤を用いてトリパンブルー法を繰り返す。
iii. 生細胞/mlおよび全生細胞を計数する:
1. 生細胞/ml = 生細胞数×希釈係数×104
2. 全生細胞 = 生細胞数×希釈係数×全容量×104
iv. %生存率を計数する:
1. %生存率= 生細胞数×100 /(生細胞数 + 死細胞数)
v. 細胞懸濁液を1.0×106細胞/mlに希釈する:
1. 「X」容量 = 全生細胞/106細胞/ml
2. 例えば、全生細胞数が1.0×107個である場合;
3. 「X」= 107/106細胞/ml、すなわち10 mlであり、したがって、細胞懸濁液(5 mlである)に5 mlを添加することにより、全細胞容量を10 mlにする。
vi. 細胞懸濁液が106個/ml未満である場合には、各150 mmペトリ皿または175 cm2フラスコに細胞2×106個を播種するのに必要な容量を決定する。
1. 細胞2×106個に対する容量 = 細胞2×106個÷生細胞/ml
2. 例えば、生細胞/mlが8×105細胞/mlである場合、細胞2×106個÷8×105細胞/ml、すなわち2.5 mlが必要である。
vii. MSCマーカー解析のために0.5 mlを取り分けておく。
viii. 細胞2×106個をPTT-6 30 mlで各150 mmペトリ皿または175 cm2フラスコに播種する。
ix. 接着、コロニー形成、集密について、3日ごとに観察する。細胞が40~50%の集密に達した時点で、細胞を毎日~2日ごとに観察して過剰な増大を防ぐ。細胞を80%の集密を超えるまで増大させてはならない。光学顕微鏡の代わりに、リアルタイム細胞培養モニタリングシステムを使用することができる。
x. 培地を2~3日ごとに置換する。
【0096】
2.6 MSC細胞の凍結保存
a. バイオセーフティキャビネット内での作業中は、生物粒子計数を行う。
b. 細胞が70~80%の集密に達した時点で、各150 mmペトリ皿または175 cm2フラスコに対して1×TrypLE-EDTA 2 mlを用いて細胞を脱離させる。
i. ペトリ皿からPTT-6を除去する。
ii. カルシウムおよびマグネシウム不含のHBSSまたはPBS 5 mlで洗浄する。
iii. 1×TrypLE-EDTA 2 mlを添加し、1~2分間旋回させる。
iv. ディッシュを30~45°傾けて、細胞が重力流により下方に移動できるようにする。ペトリ皿の側面を穏やかにタッピングして、脱離の促進を助ける。
v. PTT-6 10 mlを添加して、TrypLEを不活性化する。十分に混合して、細胞塊を解離させる。
vi. パスツールピペットを用いて、細胞を15 ml遠心管に移す。
vii. 1200 rpmで10分間遠心分離する。
viii. 培地を吸引し、PTT-6 10 mlで再懸濁する。
ix. 50μlを分取し、上記のように全生細胞数および%生存率を決定する。細胞が凝集し始める可能性があるため、細胞計数は15分以内に行う必要がある。
c. 凍結保存用の細胞を調製する。
i. 細胞懸濁培地および凍結保存培地を調製し、細胞を凍結させる。
【0097】
2.7. Quantumバイオリアクター (Terumo BTC, Inc.) 中でのMSCの継代培養(増大)
Quantumバイオリアクターを用いてMSCを増大させることも可能である。Quantumバイオリアクター中で増大させるための出発細胞数は、1回の実行当たり2000~3000万個の細胞であるべきである。1回の実行当たりの典型的な収量は、回収時に3億~7億個のMSCである。バイオリアクターは、製造業者のプロトコールに従って操作される。そのようにして得られた間葉系幹細胞は典型的に凍結保存され(以下を参照されたい)、ワーキング細胞バンクとなる。
【0098】
材料/試薬:
1. Quantum増大セット
2. Quantum廃液バッグ
3. Quantum培地バッグ
4. Quantumインレットバッグ
5. PTT-6
6. PBS
7. フィブロネクチン
8. TrypLE
9. 3 mlシリンジ
10. グルコース試験紙
11. 乳酸試験紙
12. 60 ml細胞培養プレートまたはその同等物
13. 医療等級5% CO2気体混合物
14. 50 mlコンビチップ
【0099】
装置:
1. バイオセーフティキャビネット
2. グルコース測定器(Bayer Healthcare/Ascensia Contour血糖測定器)
3. Lactate Plus (Nova Biomedical)
4. ヘッドを備えた蠕動ポンプ
5. 遠心分離機、Eppendorf 5810
6. 滅菌チューブコネクター
7. M4連続ピペッター
8. RFシーラー
【0100】
手順:
1. Quantumバイオリアクターの準備
a) Quantumバイオリアクターの事前準備
b) バイオリアクターのコーティング:
1) バイオセーフティキャビネット内でフィブロネクチン溶液を調製する。
1) 凍結乾燥フィブロネクチンを室温に順化させる(室温で≧15分)。
2) 滅菌蒸留水5 mlを添加する;旋回も撹拌もしてはならない。
3) 30分間かけてフィブロネクチンを溶液の状態にする。
4) 18g針を取り付けた10 mlシリンジを用いて、PBS 95 mlを含むCcellインレットバッグにフィブロネクチン溶液を移す。
2) バッグを「試薬」ラインに接続する。
3) 気泡をチェックする(気泡は、「IC空気の除去」または「EC空気の除去」を使用することにより、およびインレット供給源として「洗浄」を使用することにより、除去することができる)。
4) バイオリアクターのコーティングのプログラムを開くまたは設定する(
図1、段階3~5)。
5) プログラムを実行する。
6) プログラムを実行してバイオリアクターをコーティングしている間に、PTT-6培地4 Lの培地バッグを準備する。
7) 滅菌チューブコネクターを用いて、培地バッグをIC培地ラインに接続する。
8) バイオリアクターのコーティング段階が完了した時点で、RFシーラーを用いて、フィブロネクチン溶液に使用した細胞インレットバッグを取り外す。
c) 過剰なフィブロネクチンの洗浄除去
d) 培地によるバイオリアクターの馴化
2. Quantumバイオリアクター中での細胞の培養
a) 均一な懸濁液を用いた細胞の負荷および接着:
b) 細胞の栄養補給および培養
1) 培地流速を選択して細胞に栄養を補給する。
2) 乳酸およびグルコースについて毎日サンプリングする。
3) 乳酸レベルが上昇するにつれて、培地の流速を調整する。実際の最大の許容乳酸濃度は、細胞の由来元のフラスコ培養物によって規定される。十分なPTT-6培地が培地バッグ中に入っているかを確認する。必要に応じて、PTT-6培地バッグを新たなPTT-6培地バッグと交換する。
4) 流速が所望の値に達した時点で、乳酸レベルを8~12時間ごとに測定する。乳酸レベルが低下しない場合、または乳酸レベルが上昇し続ける場合、細胞を回収する。
3. Quantumバイオリアクターからの細胞の回収
a) 乳酸濃度が低下しない時点で、乳酸およびグルコースについて最後にサンプリングした後、細胞を回収する。
b) 細胞の回収:
1) 滅菌チューブコネクターを用いて、TrypLE 100 mlで満たした細胞インレットバッグを「試薬」ラインに接続する。
2) 十分なPBSがPBSバッグ中に入っていることを確かめる。そうでない場合には、滅菌チューブコネクターを用いて、少なくとも1.7リットルのPBSが入った新たなバッグを「洗浄」ラインに接続する。
3) 回収プログラムを実行する。
4. 細胞の凍結保存
1) ひとたび細胞が回収されたならば、細胞を50 ml遠心管に移して、細胞をペレット化する。
2) 冷細胞懸濁溶液25 mlを用いて再懸濁する。SysmexまたはBiorad細胞計数器を用いて、細胞を計数する。細胞数レポートを各Quantum処理バッチ記録に添付する。
3) 細胞濃度を2×10
7個/mlに調整する。
4) 等容量の凍結保存溶液を添加し、十分に混合する(振盪もボルテックスもしてはならない)。
5) 連続ピペッターを用いて、凍結保存剤中の細胞懸濁液1 mlを各1.8 mlバイアル中に添加する。制御速度フリーザーを用いて、SOP D6.100 CB凍結保存に記載されているように、CRFプログラムを用いて凍結保存する。
6) バイアルを指定の液体窒素貯蔵スペース内に貯蔵する。
7) CRF実行レポートを各MSC P3-Quantum処理バッチ記録の用紙に添付する。
【0101】
3. 異なる培養液を用いて臍帯組織から単離された間葉系臍帯ライニング幹細胞集団における幹細胞マーカー発現の解析
フローサイトメトリー実験を実施して、臍帯から単離された間葉系幹細胞を間葉系幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105の発現について解析した。
【0102】
これらの実験のために、実施例2に記載されるように、3種の異なる培養液中で臍帯組織を培養することにより、間葉系幹細胞を臍帯組織から単離し、続いて各培地中で間葉系幹細胞を継代培養した。
【0103】
これらの実験において、以下の3種の培養液を使用した:a) 10% FBS (v/v) を補充した90% (v/v/ DMEM、b) 90% (v/v) CMRL1066および10% (v/v) FBSからなる、米国特許出願第2008/0248005号および対応する国際特許出願WO2007/046775に記載されている培養液PTT-4(WO2007/046775のパラグラフ [0183] を参照されたい)、ならびにc) 本明細書においてその組成が記載される、本発明の培養液PTT-6。このフローサイトメトリー解析において、臍帯ライニング間葉系幹細胞 (CLMC) 集団の2つの異なるサンプルを、使用した3種の培養液の各々について解析した。
【0104】
フローサイトメトリー解析のために以下のプロトコールを使用した。
【0105】
【0106】
手順
a) 臍帯ライニング膜からの細胞の単離および培養
1. 実施例2で説明されているように、外植片組織サンプルを細胞培養プレート内でインキュベートし、各培地中に浸漬させ、次いで37℃のCO2インキュベーター内でこれを維持した。
2. 3日ごとに培地を交換した。
3. 組織培養外植片からの細胞増殖を光学顕微鏡下でモニターした。
4. 約70%の集密の時点で、細胞をトリプシン処理(0.0125%トリプシン/0.05% EDTA)によってディッシュから分離し、フローサイトメトリー実験に使用した。
b) 実験用の細胞のトリプシン処理
1. 細胞培養プレートから培地を除去する。
2. FBSはトリプシンの酵素作用を妨げるため、滅菌1×PBSで穏やかにリンスして微量のFBSを除去する。
3. 1Xトリプシンを細胞培養プレートに添加し、37℃で3~5分間インキュベートする。
4. 顕微鏡下で細胞を観察して、それらが除去されたことを確実にする。FBSを含有する完全培地(10% FBSを含むDMEM)を添加することにより、トリプシンを中和する。
5. ピペットを使用して、培地中でプレートの壁に対して細胞をピペッティングすることによって細胞塊を破壊する。細胞懸濁液を収集し、50 ml遠心管に移す。
6. 滅菌1×PBSをプレートに添加しこれをリンスし、細胞懸濁液を同じ遠心管に収集する。
7. これを1800 rpmで10分間遠心分離する。
8. 上清を廃棄し、細胞ペレットをPBA培地で再懸濁する。
c) 細胞の計数
1. 好ましくは血球計算盤およびそのカバーガラスを70%エタノールで洗浄し、乾燥させてからキムワイプ(リントフリー紙)で拭くことにより、それらが清潔でかつ乾燥していることを確実にする。
2. 懸濁状の少量の細胞を微量遠心管に分取し、BSCフードから取り出す。
3. 等容量のトリパンブルーで懸濁状の細胞を染色する、例えば、懸濁液500μlに対してトリパンブルー500μlを添加する(希釈係数 = 2X、0.2%トリパンブルー溶液となる)。
4. トリパンブルーは毒性であり、非生存細胞の増加につながり、偽細胞数を生じるため、細胞をトリパンブルーに30分よりも長く曝露しないようにする。
5. 細胞懸濁液混合物20μlを血球計算盤の各チャンバーに添加し、光学顕微鏡下で見る。
a. 上部および下部チャンバー内の合計8つの区分について、血球計算盤の各区分内の生細胞(明るい細胞;非生細胞は容易にトリパンブルーを取り込み、したがって色が濃い)の数を計数する。全細胞数は、(平均細胞数/区分)×104細胞/mlとして与えられる。
d) 細胞の染色
i. 細胞を染色する前の準備
・それぞれ50,000個の細胞を含有する細胞懸濁液を、2つ組で3本のチューブ(CD73、CD90、CD105)および2本のチューブ(陰性対照)に分取する。
ii. 一次抗体 (Ab) による染色
・一次抗体1μl [0.5 mg/ml Ab] を細胞懸濁液100 ulに添加する、4℃で45分間インキュベートする。
・PBAで1 mlに合わせる。
・8000 rpm、4℃で5分間遠心分離する。
・上清を除去する。
・PBA 1 mlを添加し、ペレットを再懸濁する。
・8000 rpm、4℃で5分間遠心分離する。
・上清を除去する。
・PBA 100 ul中に再懸濁する。
iii. 二次Abによる染色‐暗下で
・二次抗体1 ul [0.5 mg/ml ab] を細胞懸濁液100 ulに添加する、4℃で30分間インキュベートする。
・PBAで1 mlに合わせる。
・8000 rpm、4℃で5分間遠心分離する。
・上清を除去する。
・PBA 1 mlを添加し、ペレットを再懸濁する。
・8000 rpm、4℃で5分間遠心分離する。
・上清を除去する。
・フローサイトメトリー解析のために、PBA 200~300 ul中に再懸濁する。
・BD FACS CANDOフローサイトメトリーで読み取るために、細胞をFACSチューブに移す。
【0107】
フローサイトメトリー解析の結果を
図6a~
図6cに示す。
図6aは、DMEM/10% FBS中で臍帯組織から単離し培養した後の、幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現する、単離された間葉系臍帯ライニング幹細胞の割合を示し、
図6bは、PTT-4中で臍帯組織から単離し培養した後の、幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現する、単離された間葉系臍帯ライニング幹細胞の割合を示し、ならびに
図6cは、PTT-6中で臍帯組織から単離し培養した後の、幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現する、単離された間葉系臍帯ライニング幹細胞の割合を示す。
図6aからわかるように、培養液培養としてDMEM/10% FBSを用いて単離された集団は、約75% CD73+細胞、78% 90+細胞、および80% CD105+細胞(2つの実験の平均値)を有するのに対して、PTT-4培養液を用いて臍帯組織を単離/培養した後の(
図6bを参照されたい)、CD73陽性、CD90陽性、およびCD105陽性である間葉系幹細胞の数は、2つの実験の平均値で約87%(CD73+細胞)、93% /CD90+細胞)、および86%(CD105+細胞)である。本発明のPTT-6培地中で培養することによって得られた間葉系幹細胞集団の純度は、3つすべてのマーカー(CD73、CD90、CD105)について少なくとも99.0%であり、このことは、この細胞集団の純度が、PTT-4培地またはDMEM/10% FBSを用いた培養の場合よりも有意に高いことを意味する。加えて、およびさらにより重要なことには、PTT-6中で培養することによって得られた間葉系幹細胞集団は、本質的に100%純粋でかつ明確な幹細胞集団である。これにより、本発明の幹細胞集団は、幹細胞ベースの療法の理想的な候補となる。したがって、間葉系臍帯ライニング幹細胞のこの集団は、そのような幹細胞ベースの治療アプローチの至適基準になり得る。
【0108】
図6に示される知見は、
図7aおよび
図7bに示されるフローサイトメトリー解析の結果によってさらに裏付けられる。
図7aは、PTT-6培地中で臍帯組織から単離し培養した後の、幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現し、かつCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている、単離された間葉系臍帯ライニング幹細胞(臍帯の羊膜の間葉系幹細胞)の割合を示す。
図7aに示されるように、間葉系幹細胞集団は97.5%の生細胞を含有し、そのうちの100%がCD73、CD90、およびCD105の各々を発現するのに対して(「CD73+CD90+」および「CD73+CD105+」の列を参照されたい)、幹細胞集団の99.2%がCD45を発現せず、かつ幹細胞集団の100%がCD34およびHLA-DRを発現しなかった(「CD34-CD45-」および「CD34-HLA-DR-」の列を参照されたい)。したがって、PTT-6培地中で培養することによって得られた間葉系幹細胞集団は、間葉系幹細胞が細胞療法に使用されることを実現させるための基準(幹細胞集団の95%またはそれ以上がCD73、CD90、およびCD105を発現する一方で、幹細胞集団の98%またはそれ以上がCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている、Sensebe et al. 「Production of mesenchymal stromal/stem cells according to good manufacturing practices: a review」、前記を参照されたい)を満たす、本質的に100%純粋でかつ明確な幹細胞集団である。本明細書において、本発明の羊膜の間葉系幹細胞が標準的な培養条件においてプラスチックに対して接着性であり、インビトロで骨芽細胞、脂肪細胞、および軟骨芽細胞に分化し、米国特許第9,085,755号、米国特許第8,287,854号、またはWO2007/046775を参照されたい、したがって細胞療法における間葉系幹細胞の使用に関して一般に許容される基準を満たすことが留意される。
【0109】
図7bは、CD73、CD90、およびCD105を発現し、かつCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている、単離された骨髄間葉系幹細胞の割合を示す。
図7bに示されるように、骨髄間葉系幹細胞集団は94.3%の生細胞を含有し、そのうちの100%がCD73、CD90、およびCD105の各々を発現するのに対して(「CD73+CD90+」および「CD73+CD105+」の列を参照されたい)、骨髄幹細胞集団の62.8%のみがCD45の発現を欠き、かつ幹細胞集団の99.9%がCD34およびHLA-DRの発現を欠いていた(「CD34-CD45-」および「CD34-HLA-DR-」の列を参照されたい)。したがって、間葉系幹細胞の至適基準であると見なされる骨髄間葉系幹細胞は、本出願の(臍帯の羊膜の)間葉系幹細胞集団よりも、幹細胞マーカーに関して均一性/純度がはるかに低い。この知見から、本発明の幹細胞集団が、幹細胞ベースの療法の理想的な候補となり得、幹細胞ベースの治療アプローチの至適基準になり得ることもまた示される。
【0110】
4. 本発明の培養液中で培養した、単離された間葉系幹細胞集団における創傷治癒マーカータンパク質分泌の解析
(PTT-6中で培養することにより、本質的に100%純粋でかつ定義された間葉系幹細胞集団が得られるという)非常に顕著な結果に基づいて、単離された様々な間葉系幹細胞集団をPTT-6中で培養し、創傷治癒マーカータンパク質の分泌について、PTT-4培地(参照培地としての役割を果たす)中での培養と比較して解析した。
【0111】
より詳細には、以下の単離された間葉系幹細胞集団を解析した。
‐臍帯の羊膜の間葉系幹細胞(臍帯ライニングMSC/CL-MSC)。このCL-MSCの集団は、WO2007/046775の実施例2に記載されているように、ヒト臍帯ライニング膜の組織外植片より単離した(10%ウシ胎仔血清を補充したDMEM、DMEM/10% FBS中での培養)。
‐ワルトン膠様質の間葉系幹細胞 (WJ-MSC)。このWJ-MSCの集団は、Beeravolu et al. 「Isolation and Characterizationation of Mesenchymal Stromal Cells from Human Umbilical Cord and Fetal Placenta.」 J Vis Exp. 2017; (122): 55224に記載されているように、ヒト臍帯のワルトン膠様質の組織外植片(10%ヒト血清/FBSおよび抗生物質溶液を補充した、4,500 mg/mLグルコースおよび2 mM L-グルタミンを含むDMEM中での培養)により単離した。
‐脂肪組織由来の間葉系幹細胞 (AT-MSC)。このAT-MSCの集団は、Schneider et al, 「Adipose-derived mesenchymal stem cells from liposuction and resected fat are feasible sources for regenerative medicine」 Eur J Med Res. 2017; 22: 17に記載されているように、組織外植片(5%ペニシリン/ストレプトマイシンおよび10% FBSを補充したDMEM中での培養)により、腹壁形成術後に供与された皮膚組織の脂肪組織から単離した。
‐骨髄間葉系幹細胞 (BM-MSC)。このBM-MSCの集団は、AO Foundation、Davos, Switzerlandから供与されたものである。
‐胎盤間葉系幹細胞 (PT-MSC)。このPT-MSCの集団は、Beeravolu et al. 「Isolation and Characterizationation of Mesenchymal Stromal Cells from Human Umbilical Cord and Fetal Placenta.」 J Vis Exp. 2017; (122): 55224に記載されているように、胎盤から単離した。
【0112】
単離されたMSCを培養するための培養プロトコール
・各供給源由来の500万個のMSCを、100 mm組織培養ディッシュにおいてDMEM/F12/10%FCS中にプレーティングし、24時間置いた。
・培地を廃棄し、PTT-6/PTT-4を培養物に24時間添加した。
・培地を廃棄し、細胞をPBSで洗浄した。
・10ml DMEMを培養物に24時間添加した。
・培地を廃棄し、5ml DMEMを培養物に添加した。
・24時間培養した後、馴化培地を回収し、遠心分離して細胞片を除去し、-80℃での貯蔵、およびその後のサイトカインアッセイによるマーカータンパク質分泌の解析のために、上清をチューブに分取した。
【0113】
CL-MSC、WJ-MSC、骨髄MSC、および脂肪MSC起源のMSCからのPTT-6対PTT-4培地上清におけるサイトカインアッセイ
サイトカインの検出は、MSC上清で実施した。測定および解析は、Luminex 200およびXponentソフトウェアを使用して行った。
【0114】
この実験の目的は、細胞培養上清において、マルチプレックス(PDGF-AA、PDGF-BB、IL-10、VEGF、Ang-1、およびHGF)、TGFβ1シングルプレックス、ならびにbFGF2シングルプレックスサイトカインの相対的レベルを測定することであった。上清は以下の通りである(MSC、間葉系幹細胞;CL、臍帯ライニング;WJ、ワルトン膠様質;AT、脂肪組織;BM、骨髄):
・PTT-4中で培養したCL-MSC
・PTT-4中で培養したWJ-MSC
・PTT-4中で培養したAT-MSC
・PTT-4中で培養したBM-MSC
・PTT-6中で培養したCL-MSC
・PTT-6中で培養したWJ-MSC
・PTT-6中で培養したAT-MSC
・PTT-6中で培養したBM-MSC
【0115】
各試料は、6ウェルで試験した、PTT-4中に供給された試料を除き、3つ組(3ウェル)で試験した。加えて、サイトカインアッセイを検証するための陽性対照として、試料CR001A、CR001C、CR001D、およびCR001Gを含めた(CR001A、CR001C、CR001D、およびCR001Gからの馴化培地は、PTT-6またはPTT-4中で細胞を培養して調製したものではない)。
【0116】
この実験の目的は、PTT-4中またはPTT-6中のいずれかで培養したMSCのサイトカインプロファイルを作成すること、および異なる組織起源(臍帯ライニング 対 ワルトン膠様質 対 脂肪組織 対 骨髄)からのMSCのプロファイルを比較することであった。このプロファイルにより、どの培地中で増殖したどの幹細胞集団が、創傷治癒を促進するために関心対象のサイトカインをより多く分泌するかが明らかになるであろう。
【0117】
全プレートのプレート設定を
図8に記載する。以下では、以下の頭字語を使用する:MSC、間葉系幹細胞;CL、臍帯ライニング;WJ、ワルトン膠様質;AT、脂肪組織;BM、骨髄。
【0118】
マルチプレックス解析
マルチプレックス情報:
R&D Systems/Bio-techneカタログ番号LXSAHM。このキットはロット番号L123680であり、2018年8月28日に有効期限が切れ、以下の分析物に対応する:
・Ang-1、アンジオポエチン
・VEGF、血管内皮増殖因子
・PDGF-AA、血小板由来増殖因子(PDGF-AAは、A鎖からなるジスルフィド結合ホモ二量体を指し、PDGF-BBはBホモ二量体からなる。R&Dは、PDGF-BB抗体はPDGF-ABヘテロ二量体も同様に検出すると述べている)
・PDGF-BB
・HGF、肝細胞増殖因子
・IL-10、インターロイキン-10
【0119】
TGFβ1シングルプレックス情報:R&D Systems/Bio-techne):
・基本キット、カタログ番号LTGM00、ロット番号P156217、2018年2月27日受領、有効期限2018年8月30日。
・TGFβ1構成成分、カタログ番号LTGM100、ロット番号P161760、2018年2月27日受領、有効期限2019年11月27日。
【0120】
bFGF2シンプレックス情報(2018年3月19日に使用):eBioscience/Thermo:
・基本キット、カタログ番号EPX010-10420-901、ロット番号172174000、有効期限2020年1月31日。
・bFGF2構成成分、カタログ番号EPX01A-12074-901、ロット番号169751102、有効期限2019年12月31日。
【0121】
bFGF2シンプレックス情報(2018年3月22日に使用):eBioscience/Thermo:
・基本キット、カタログ番号EPX010-10420-901、ロット番号172174000、有効期限2020年1月31日。
・bFGF2構成成分、カタログ番号EPX01A-12074-901、ロット番号166916102、有効期限2019年12月31日。
【0122】
マルチプレックス情報:
R&D Systems/Bio-techneカタログ番号LXSAHM。このキットはロット番号L123999であり、2018年9月25日に有効期限が切れ、以下の分析物に対応する:
・Ang-1、アンジオポエチン
・VEGF、血管内皮増殖因子
・PDGF-AA、血小板由来増殖因子2
・PDGF-BB
・HGF、肝細胞増殖因子
・IL-10、インターロイキン-10
・bFGF、塩基性線維芽細胞成長因子
【0123】
データ入力
生データの出力は、PDF形式およびExcel形式である。Excel形式のデータをデータ処理に使用する。
【0124】
手順
MSC上清におけるサイトカイン検出は、詳細なプロトコール情報に従って実施した。この実験の一部として、プロトコールに単一の修正がある:マルチプレックスキットにおける標準物質8はもはや使用されない。標準物質8の中断の理由は、R&D Systemsのプロトコール自体が標準物質1~6のみを使用しているからである。さらに、標準物質8は、マルチプレックスを構成する6つの分析物のうちの2つ:PDGF-BBおよびHGFについてのみ、ClinImmuneにおいて検証された。PDGF-BBの場合、この分析物は上清中に全く検出されなかった。HGFの場合、この分析物は標準曲線の中間領域に収まる。標準物質は増殖培地を用いて再構成するため、標準曲線はPTT-6およびPTT-4の両方を用いて構築した。PTT-6中またはPTT-4中のいずれかで増殖した試験試料は、それぞれの標準曲線から推定した。
【0125】
結果は、同じソフトウェアによって作成された分析物特異的な標準曲線から、Luminexソフトウェアにより推定した:解析アルゴリズムは、重み付けに1/y2を使用する、重み付け解析を用いるLogistic 5P Weightedに設定する。
【0126】
試料
1. PTT-4倍地およびPTT-6倍地(MSCに曝露されていない)
2. 試験されるべきMSCの上清
3. 任意:異なるドナー由来のCL-MSCからの上清;CR001A、C、D、およびG。
【0127】
実験結果の概要
TGFβ1シングルプレックスアッセイ
・3つのうちの一定分割量1を使用したものを
図9に示す。エラーバーはすべて、3つ組の測定値からの標準偏差である。
【0128】
図9:TGFβ1のシングルプレックス測定。見られ得るように、培養物CL-MSCおよびWJ-MSCは、PTT-4中で増殖した場合よりもPTT-6中で増殖した場合に、より多くのTGFβ1を産生する。AT-MSCおよびBM-MSC培養物のみが、PTT-6またはPTT-4中で増殖した場合に、多かれ少なかれ同量のTGFβ1を産生した。エラーバーはすべて、3つ組の測定値からの標準偏差である。
【0129】
1回目のマルチプレックスアッセイ
・3つのうちの一定分割量1を使用した。
・PDGF-BBおよびIL-10は、いずれの試料中にも検出されなかった。
【0130】
【0131】
図10:
図10A PDGF-AAのマルチプレックス測定。見られ得るように、培養物CL-MSC、WJ-MSC、AT-MSC、およびBM-MSC培養物は、PTT-6中で増殖した場合よりもPTT-4中で増殖した場合に、より多くのPDGF-AAを産生する。エラーバーはすべて、3つ組の測定値からの標準偏差である。
図10B VEGFのマルチプレックス測定。見られ得るように、培養物CL-MSC、WJ-MSC、AT-MSC、およびBM-MSC培養物は、PTT-4中で増殖した場合よりもPTT-6中で増殖した場合に、より多くのVEGFを産生する。エラーバーはすべて、3つ組の測定値からの標準偏差である。
図10C Ang-1のマルチプレックス測定。見られ得るように、培養物CL-MSCおよびWJ-MSC培養物は、PTT-4中で増殖した場合よりもPTT-6中で増殖した場合に、はるかにより多くのAng-1を産生する。培養物AT-MSCおよびBM-MSCは、本質的にいかなるAng-1も産生しなかった。エラーバーはすべて、3つ組の測定値からの標準偏差である。
【0132】
図11:HGFのマルチプレックス測定。見られ得るように、培養物CL-MSCおよびWJ-MSC培養物は、PTT-4中で増殖した場合よりもPTT-6中で増殖した場合に、はるかにより多くのHGFを産生する。培養物AT-MSCおよびBM-MSCは、本質的にいかなるHGFも産生しなかった。エラーバーはすべて、3つ組の測定値からの標準偏差である。
【0133】
マルチプレックスアッセイ(bFGFを含む)
・3つのうちの一定分割量3を使用した。データを
図12~14に示す。
【0134】
図12:PDGF-AAのマルチプレックス測定。見られ得るように、培養物CL-MSCおよびWJ-MSC培養物は、PTT-6中で増殖した場合よりもPTT-4中で増殖した場合に、より多くのPDGF-AAを産生する。培養物AT-MSCおよびBM-MSCは、両方の培養液中で同量のPDGF-AAを産生した。エラーバーはすべて、3つ組の測定値からの標準偏差である。
【0135】
図13:
図13A VEGFのマルチプレックス測定。見られ得るように、培養物CL-MSC、WJ-MSC、AT-MSC、およびBM-MSC培養物は、PTT-4中で増殖した場合よりもPTT-6中で増殖した場合に、より多くのVEGFを産生する。エラーバーはすべて、3つ組の測定値からの標準偏差である。
図13B Ang-1マルチプレックスアッセイのマルチプレックス測定。見られ得るように、培養物CL-MSCおよびWJ-MSC培養物は、PTT-4中で増殖した場合よりもPTT-6中で増殖した場合に、はるかにより多くのAng-1を産生する。培養物AT-MSCおよびBM-MSCは、本質的にいかなるAng-1も産生しなかった。エラーバーはすべて、3つ組の測定値からの標準偏差である。
図13C。HGFのマルチプレックス測定。見られ得るように、培養物CL-MSCおよびWJ-MSC培養物は、PTT-4中で増殖した場合よりもPTT-6中で増殖した場合に、はるかにより多くのHGFを産生する。培養物AT-MSCおよびBM-MSCは、本質的にいかなるHGFも産生しなかった。エラーバーはすべて、3つ組の測定値からの標準偏差である。
【0136】
図14:bFGFのマルチプレックス測定。見られ得るように、培養物CL-MSCおよびWJ-MSC培養物は、PTT-4中で増殖した場合よりもPTT-6中で増殖した場合に、より多くのbFGFを産生する。培養物AT-MSCおよびBM-MSCは、PTT-4およびPTT-6中で培養した場合に、同量のbFGFを産生した。エラーバーはすべて、3つ組の測定値からの標準偏差である。
・bFGF試料は、存在量が非常に少なく、検出限界の下限にあるかまたはそれに近いことに留意すべきである。
【0137】
図15~
図21は、異なる実験にわたって得られたデータの概要を示す。
【0138】
図15:5回の異なる実験(170328、170804、170814、180105、180226)にわたるTGFβ1の測定を要約する。実験を通じてTGFβ標準曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側の下のグラフに示す。PTT-4培地およびPTT-6培地で得られたTGFβ標準曲線のMFIを、上のグラフに示す。右側の下のグラフは、培養物CL-MSCおよびWJ-MSCが、PTT-4中で増殖した場合よりもPTT-6中で増殖した場合に、より多くのTGFβ1を産生することを示す。AT-MSCおよびBM-MSC培養物は、PTT-6またはPTT-4中で増殖した場合に、同量のTGFβ1を産生した。エラーバーはすべて、実験170328、170804、170814、180105、180226の異なる測定値からの標準偏差である。
【0139】
図16:6回の異なる実験(170602、170511、170414、170224、180105、180226)にわたるAng-1の測定を要約する。実験を通じてAng-1標準曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側の下のグラフに示す。PTT-4培地およびPTT-6培地で得られたAng-1標準曲線のMFIを、上のグラフに示す。右側の下のグラフは、培養物CL-MSCおよびWJ-MSCが、PTT-4中で増殖した場合よりもPTT-6中で増殖した場合に、より多くのAng-1を産生することを示す。AT-MSCおよびBM-MSC培養物のみが、PTT-6またはPTT-4中で増殖した場合に、本質的に同量のAng-1を産生した。エラーバーはすべて、実験170602、170511、170414、170224、180105、180226の異なる測定値からの標準偏差である。
【0140】
図17:6回の異なる実験(170602、170511、170414、170224、180105、180226)にわたるPDGF-BBの測定を要約する。実験を通じてPDGF-BB標準曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側の下のグラフに示す。PTT-4培地およびPTT-6培地で得られたPDGF-BB標準曲線のMFIを、上のグラフに示す。注目すべきことには、いずれの実験においても、PDGF-BBは検出されなかった。
【0141】
図18:6回の異なる実験(170602、170511、170414、170224、180105、180226)にわたるPDGF-AAの測定を要約する。実験を通じてPDGF-AA標準曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側の下のグラフに示す。PTT-4培地およびPTT-6培地で得られたPDGF-AA標準曲線のMFIを、上のグラフに示す。右側の下のグラフは、培養物CL-MSC、AT-MSC、およびBM-MSC、およびWJ-MSC培養物が、PTT-6中で増殖した場合よりもPTT-4中で増殖した場合に、わずかにより多くのPDGF-AAを産生することを示す。エラーバーはすべて、実験170602、170511、170414、170224、180105、180226の測定値からの標準偏差である。
【0142】
図19:6回の異なる実験(170602、170511、170414、170224、180105、180226)にわたるIL-10の測定を要約する。実験を通じてIL-10標準曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側の下のグラフに示す。PTT-4培地およびPTT-6培地で得られたIL-10標準曲線のMFIを、上のグラフに示す。注目すべきことには、いずれの実験においても、IL-10は検出されなかった。
【0143】
図20:6回の異なる実験(170602、170511、170414、170224、180105、180226)にわたるVEGFの測定を要約する。実験を通じてVEGF標準曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側の下のグラフに示す。PTT-4培地およびPTT-6培地で得られたVEGF標準曲線のMFIを、上のグラフに示す。右側の下のグラフは、培養物CL-MSC、AT-MSC、およびBM-MSC、およびWJ-MSCが、PTT-4中で増殖した場合よりもPTT-6中で増殖した場合に、より多くのVEGFを産生することを示す。エラーバーはすべて、実験170602、170511、170414、170224、180105、180226の異なる測定値からの標準偏差である。
【0144】
図21:6回の異なる実験(170602、170511、170414、170224、180105、180226)にわたるHGFの測定を要約する。実験を通じてHGF標準曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側の下のグラフに示す。PTT-4培地およびPTT-6培地で得られたHGF標準曲線のMFIを、上のグラフに示す。右側の下のグラフは、培養物CL-MSCおよびWJ-MSCが、PTT-4中で増殖した場合よりもPTT-6中で増殖した場合に、より多くのHGFを産生することを示す。その一方で、培養物AT-MSCおよびBM-MSCは、他の培養物ほど多くのHGFを産生しなかった。エラーバーはすべて、実験170602、170511、170414、170224、180105、180226の異なる測定値からの標準偏差である。
【0145】
CL-MSC、WJ-MSC、および胎盤MSC起源のMSCからのPTT-6対PTT-4培地またはDMEM/F12上清におけるサイトカインアッセイ
サイトカインの検出は、MSC上清で実施した。測定および解析は、上記の通りに行った。
【0146】
この実験の目的は、細胞培養上清において、マルチプレックス(PDGF-AA、PDGF-BB、IL-10、VEGF、Ang-1、およびHGF)、TGFβ1シングルプレックス、ならびにbFGF2シングルプレックスサイトカインの相対的レベルを測定することであった。上清は、臍帯ライニング (CL)、ワルトン膠様質 (WJ)、および胎盤由来の間葉系幹細胞から得られる。間葉系幹細胞は、PTT-6、PPT-4、またはDMEM/F12培地中で培養した。
・PTT-4中で培養したCL-MSC
・PTT-4中で培養したWJ-MSC
・PTT-4中で培養した胎盤MSC
・PTT-6中で培養したCL-MSC
・PTT-6中で培養したWJ-MSC
・PTT-6中で培養した胎盤MSC
・DMEM/F12中で培養したCL-MSC
・DMEM/F12中で培養したWJ-MSC
【0147】
各試料は、胎盤の上清の試料を除き、3つ組で試験した。この実験の目的は、PTT-4中またはPTT-6中のいずれかで培養したMSCのサイトカインプロファイルを作成すること、および異なる組織起源(臍帯ライニング 対 ワルトン膠様質 対 胎盤MSC)からのMSCのプロファイルを比較することであった。サイトカイン測定は、上記の通りに実施した。このプロファイルにより、どの培地中で増殖したどの幹細胞集団が、創傷治癒を促進するために関心対象のサイトカインをより多く分泌するかが明らかになるであろう。
【0148】
図22:TGFβ1のシングルプレックス測定。実験を通じて標準TGFβ1曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側のグラフに示す。右側のグラフからわかるように、CL-MSC、WJ-MSC、および胎盤MSCのすべてが、PTT-4またはDMEM/F12(
図22ではDMEMとのみ称される)中で増殖した場合よりもPTT-6中で増殖した場合に、より多くのTGFβ1を産生する。
【0149】
図23:PTT-6、PTT-4、またはDMEM/F12中で培養したCL-MSC、WJ-MSC、および胎盤MSCの解析された上清におけるPDGF-BBの測定を要約する。実験を通じてPDGF-BB標準曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側のグラフに示す。注目すべきことには、いずれの実験においても、PDGF-BBは検出されなかった。
【0150】
図24:PTT-6、PTT-4、またはDMEM/F12中で培養したCL-MSC、WJ-MSC、および胎盤MSCの解析された上清におけるIL-10の測定を要約する。実験を通じてVEGF標準曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側のグラフに示す。S6は、アッセイで使用された最も低い標準物質を示す。これを下回る試料はいずれも、検出未満と見なされる。右側のグラフからわかるように、CL-MSC、WJ-MSC、および胎盤MSCのすべてが、PTT-6中で増殖した場合に、検出可能なレベルのIL-10を産生する一方で、MSCがPTT-4またはDMEM/F12中で増殖した場合には、IL-10はほとんどまたは全く検出されなかった。
【0151】
図25:PTT-6、PTT-4、またはDMEM/F12中で培養したCL-MSC、WJ-MSC、および胎盤MSCの解析された上清におけるVEGFの測定を要約する。実験を通じてVEGF標準曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側のグラフに示す。S1は、アッセイで使用された最も高い標準物質を示す。これを上回る試料はいずれも、推定された(濃度が高すぎる)と見なされる。右側のグラフからわかるように、CL-MSC、WJ-MSC、胎盤MSCのすべてが、MSCがPTT-4またはDMEM/F12中で増殖した場合と比較して、PTT-6中で増殖した場合に、はるかにより高レベルのVEGFを産生する。
【0152】
図26:bFGFのマルチプレックス測定を要約する。実験を通じてPDGF-AA標準曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側のグラフに示す。右側のグラフからわかるように、培養したCL-MSCおよびWJ-MSCは、PTT-4中で増殖した場合よりもPTT-6中で増殖した場合に、より多くのbFGFを産生する。見られ得るように、CL-MSC、WJ-MSC、および胎盤MSCのすべてが、MSCがPTT-4またはDMEM/F12中で増殖した場合と比較して、PTT-6中で増殖した場合に、はるかにより低レベルのbFGFを産生する。
【0153】
図27:PDGF-AAの測定を要約する。実験を通じてPDGF-AA標準曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側のグラフに示す。S6は、アッセイで使用された最も低い標準物質を示す。これを下回る試料はいずれも、検出未満と見なされる。見られ得るように、CL-MSC、WJ-MSC、および胎盤MSCのすべてが、MSCがPTT-4またはDMEM/F12中で増殖した場合と比較して、PTT-6中で増殖した場合に、より高レベルのPDGF-ASを産生する。
【0154】
図28:Ang-1の測定を要約する。実験を通じてAng-1標準曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側のグラフに示す。S1は、アッセイで使用された最も高い標準物質を示す。これを上回る試料はいずれも、推定された(濃度が高すぎる)と見なされる。右側のグラフは、CL-MSC、WJ-MSC、および胎盤MSCのすべてが、MSCがPTT-4またはDMEM/F12中で増殖した場合と比較して、PTT-6中で増殖した場合に、はるかにより高レベルのAng-1を産生することを示す。
【0155】
図29:HGFの測定を要約する。実験を通じてHGF標準曲線について測定された平均蛍光強度 (MFI) を、左側のグラフに示す。右側のグラフは、CL-MSC、WJ-MSC、および胎盤MSCのすべてが、MSCがPTT-4またはDMEM/F12中で増殖した場合と比較して、PTT-6中で増殖した場合に、はるかにより高レベルのAng-1を産生することを示す。
【0156】
上記の実験から、以下のことが結論づけられ得る。間葉系幹細胞、具体的には臍帯の区画から単離された、または胎盤から単離された間葉系幹細胞をPTT-6培地中で培養した場合、間葉系幹細胞集団による因子アンジオポエチン1 (Ang-1)、TGF-β1、VEGF、およびHGFの分泌は、PTT-4培地、またはDMEM/F12などの市販の培養液中でのそれらの産生レベルと比較して有意に増加する。注目すべきことには、PTT-6培地は、間葉系幹細胞集団の天然環境/区画とは無関係に、これらの因子の産生/分泌を増加させることができる。
【0157】
PTT-6培地は、間葉系幹細胞集団においてAng-1、TGF-β1、VEGF、およびHGF(本明細書において考察されるように、その創傷治癒への関与が公知である)のすべての分泌を引き起こすため、PTT-6培地は、間葉系幹細胞の最初の由来元の間葉系幹細胞集団の天然環境/区画とは無関係に、広範囲の間葉系幹細胞集団の創傷治癒特性を誘導するまたは改善する効果を有することが明らかである‐実験4が、PTT-6中で培養する前にその天然環境から単離された細胞集団を用いて行われたことが、ここで再度留意される。
【0158】
加えて、組織外植片によるPTT-6中での間葉系幹細胞の培養は、臍帯の羊膜の高度に均一な間葉系幹細胞集団(97.5%の生細胞を含み、そのうちの100%がCD73、CD90、およびCD105の各々を発現した一方で、該幹細胞集団の99.2%がCD45を発現せず、該幹細胞集団の100%がCD34およびHLA-DRを発現しなかった(「CD34-CD45-」および「CD34-HLA-DR-」の行を参照されたい)をもたらす。PTT-6中でのワルトン膠様質の間葉系幹細胞の培養も、臍帯ライニング幹細胞におけるこれらのサイトカインの産生に及ぼす影響と同様に、サイトカインAng-1、TGF-β1、VEGF、およびHGFの産生にプラスの効果を及ぼすため、PTT-6中でのワルトン膠様質の培養もまた、そのような高度に均一な間葉系ワルトン膠様質幹細胞集団をもたらすことが予測され得る。したがって、臍帯血管の培養などの臍帯の他の区画の組織外植片が、同様の均一性の血管周囲 (PV) 間葉系幹細胞集団をもたらすこともまた予測される。同様に、PTT-6中での培養による、胎盤の羊膜を含む胎盤組織の組織外植片も、同様の均一性の胎盤間葉系幹細胞集団をもたらすことが予測され得る。したがって、本発明は、間葉系幹細胞集団を得るための一般的に適用可能な方法論を提供し、この場合、単離された間葉系幹細胞集団の少なくとも約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上の細胞が、CD73、CD90、およびCD105の各々を発現し、かつCD34、CD45、およびHLA-DRの各々の発現を欠いている。
【0159】
本発明はまた、以下の項目によって特徴づけられる。
1. DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、F12(ハムF12培地)、M171(培地171)、およびFBS(ウシ胎仔血清)を含む培養液中で間葉系幹細胞集団を培養する段階を含む、間葉系幹細胞集団の創傷治癒特性を誘導するまたは改善する方法。
2. 間葉系幹細胞集団が、臍帯の間葉系幹細胞集団、胎盤間葉系幹細胞集団、臍帯-胎盤接合部の間葉系幹細胞集団、臍帯血の間葉系幹細胞集団、骨髄の間葉系幹細胞集団、および脂肪組織由来の間葉系幹細胞集団からなる群より選択される、項目1の方法。
3. 臍帯の間葉系幹細胞集団が、羊膜 (AM) の間葉系幹細胞集団、血管周囲 (PV) の間葉系幹細胞集団、ワルトン膠様質 (WJ) の間葉系幹細胞集団、臍帯の羊膜の間葉系幹細胞集団、および臍帯の混合間葉系幹細胞集団 (MC) からなる群より選択される、項目2の方法。
4. 培養液が、最終濃度約55~65% (v/v) のDMEM、最終濃度約5~15% (v/v) のF12、最終濃度約15~30% (v/v) のM171、および最終濃度約1~8% (v/v) のFBSを含む、項目1~3のいずれか一つの方法。
5. 培養液が、最終濃度約57.5~62.5% (v/v) のDMEM、最終濃度約7.5~12.5% (v/v) のF12、最終濃度約17.5~25.0% (v/v) のM171、および最終濃度約1.75~3.5% (v/v) のFBSを含む、項目4の方法。
6. 培養液が、最終濃度約61.8% (v/v) のDMEM、最終濃度約11.8% (v/v) のF12、最終濃度約23.6% (v/v) のM171、および最終濃度約2.5% (v/v) のFBSを含む、項目5の方法。
7. 培養液が最終濃度約1 ng/ml~約20 ng/mlの上皮増殖因子 (EGF) をさらに含む、項目1~6のいずれか一つの方法。
8. 培養液が最終濃度約10 ng/mlのEGFを含む、項目7の方法。
9. 培養液が最終濃度約1μg/ml~10μg/mlのインスリンを含む、項目1~8のいずれか一つの方法。
10. 培養液が最終濃度約5μg/mlのインスリンを含む、項目9の方法。
11. 培養液が、補充物質であるアデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) のうちの少なくとも1つをさらに含む、項目1~10のいずれか一つの方法。
12. 培養液が、アデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) の3つすべてを含む、項目1~11のいずれか一つの方法。
13. 培養液が、最終濃度約0.01~約0.1μg/mlアデニンのアデニン、最終濃度約0.1~約10μg/mlヒドロコルチゾンのヒドロコルチゾン、および/または最終濃度約0.5~約5 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) を含む、項目12または13の方法。
14. 前記項目1~13のいずれか一つにおいて定義される培養液中で間葉系幹細胞集団を培養すると、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、F12(ハムF12培地)、M171(培地171)、およびFBS(ウシ胎仔血清)のすべてを含まない参照培養液と比較して、間葉系幹細胞集団によるアンジオポエチン1 (Ang-1)、TGF-β(具体的にはTGF-β1)、VEGF、およびHGFのうちの少なくとも1つの発現および/または分泌が増加する、項目1~13のいずれか一つの方法。
15. 参照培地が90% (v/v) CMRL1066および10% (v/v) FBSからなる、項目14の方法。
16. 前記項目1~13のいずれか一つにおいて定義される培養液中で培養する前に、間葉系幹細胞集団がその天然環境から単離されている、前記項目のいずれか一つの方法。
17. 前記項目1~13のいずれか一つにおいて定義される培養液中で天然組織を培養することにより、間葉系幹細胞集団を天然組織環境から単離する段階を含む、項目1~15のいずれか一つの方法。
18. 組織が臍帯組織である、項目17の方法。
19. 臍帯組織が、臍帯全体の組織、臍帯の羊膜を含む組織、ワルトン膠様質を含む組織、羊膜を含む組織、羊膜およびワルトン膠様質、単離された臍帯血管、臍帯組織の他の構成成分から分離されたワルトン膠様質、ならびに臍帯の単離された羊膜からなる群より選択される、項目18の方法。
20. 組織が、胎盤の羊膜組織を含むかまたは胎盤の羊膜組織である、項目17の方法。
21. 臍帯組織が、臍帯全体からの小片、臍帯の羊膜からの小片、または胎盤の羊膜からの小片である、前記項目17~20のいずれか一つの方法。
22. 羊膜の間葉系幹細胞集団の細胞増殖が約70~約80%の集密度に達するまで臍帯組織または胎盤の羊膜組織を培養する段階を含む、項目19~22のいずれか一つの方法。
23. 培養に使用した培養容器から間葉系幹細胞集団を取り出す段階を含む、項目22の方法。
24. 培養容器から間葉系幹細胞集団を取り出す段階が酵素処理によって行われる、項目23の方法。
25. 酵素処理がトリプシン処理を含む、項目24の方法。
26. 間葉系幹細胞集団が、継代培養のために継代培養用の培養容器に移される、項目23~25のいずれか一つの方法。
27. 間葉系幹細胞集団が、培養のために継代培養用の培養容器に移される、項目1~16のいずれか一つの方法。
28. 間葉系細胞集団が、培養または継代培養のために1.0×106細胞/mlの濃度で懸濁される、項目26または27の方法。
29. 間葉系幹細胞集団が、項目1~13のいずれか一つにおいて定義される培養液中で継代培養される、項目28の方法。
30. 間葉系幹細胞が約70~約80%の集密度に達するまで、間葉系幹細胞集団が継代培養される、項目29の方法。
31. 培養または継代培養が自己完結型バイオリアクター中で行われる、項目26~30のいずれか一つの方法。
32. バイオリアクターが、平行平板バイオリアクター、中空繊維バイオリアクター、およびマイクロ流体バイオリアクターからなる群より選択される、項目31の方法。
33. 培養が温度37℃のCO2細胞培養インキュベーター内で行われる、前記項目のいずれか一つの方法。
34. (継代)培養に使用した培養容器から間葉系幹細胞集団を取り出す段階を含む、項目33の方法。
35. 培養容器から間葉系幹細胞集団を取り出す段階が酵素処理によって行われる、項目34の方法。
36. 酵素処理がトリプシン処理を含む、項目35の方法。
37. 単離された間葉系幹細胞集団を収集する段階をさらに含む、項目36の方法。
38. 単離された間葉系幹細胞の少なくとも約90%またはそれ以上、約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上が、マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現する、前記項目のいずれか一つの方法。
39. 単離された間葉系幹細胞の少なくとも約90%またはそれ以上、約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上が、マーカーCD34、CD45、およびHLA-DR(ヒト白血球抗原‐抗原D関連)の発現を欠いている、前記項目のいずれか一つの方法。
40. 単離された間葉系幹細胞の約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上が、CD73、CD90、およびCD105を発現し、かつCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている、項目38または39のいずれか一つの方法。
41. 単離された幹/前駆細胞集団をさらなる使用のために保存する段階をさらに含む、前記項目のいずれか一つの方法。
42. 保存する段階が凍結保存によって行われる、項目41の方法。
43. 単離された間葉系幹細胞集団であって、該幹細胞集団の少なくとも約90%またはそれ以上の細胞が、マーカーCD73、CD90、およびCD105の各々を発現する、前記間葉系幹細胞集団。
44. 幹細胞集団の少なくとも約90%またはそれ以上の細胞が、マーカーCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている、項目43の間葉系幹細胞集団。
45. 単離された間葉系幹細胞集団の少なくとも約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上の細胞が、CD73、CD90、およびCD105の各々を発現し、かつCD34、CD45、およびHLA-DRの各々の発現を欠いている、項目44の間葉系幹細胞集団。
46. 臍帯の間葉系幹細胞集団、胎盤間葉系幹細胞集団、臍帯血の間葉系幹細胞集団、骨髄の間葉系幹細胞集団、および脂肪組織由来の間葉系幹細胞集団からなる群より選択される、項目43~45のいずれか一つの間葉系幹細胞集団。
47. 臍帯の間葉系幹細胞集団が、羊膜 (AM) の間葉系幹細胞集団、血管周囲 (PV) の間葉系幹細胞集団、ワルトン膠様質 (WJ) の間葉系幹細胞集団、臍帯の羊膜の間葉系幹細胞集団、および臍帯の混合間葉系幹細胞集団 (MC) からなる群より選択される、項目43~46のいずれか一つの間葉系幹細胞集団。
48. 項目1~42のいずれか一つにおいて定義される方法によって取得可能である、項目43~47のいずれか一つの間葉系幹細胞集団。
49. 項目1~42のいずれか一つにおいて定義される方法によって得られる、項目43~48のいずれか一つの間葉系幹細胞集団。
50. 項目43~47のいずれか一つにおいて定義される単離された間葉系幹集団を含む、薬学的組成物であって、該幹細胞集団の少なくとも約90%またはそれ以上の細胞が、マーカーCD73、CD90、およびCD105の各々を発現し、かつマーカーCD34、CD45、およびHLA-DRの各々の発現を欠いている、前記薬学的組成物。
51. 全身または局所への適用に適合している、項目50の薬学的組成物。
52. 薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、項目50または51の薬学的組成物。
53. 間葉系幹細胞集団の創傷治癒特性を誘導するまたは改善するのに適した培養液を作製する方法であって、最終容量500 mlの培養液を得るために、
i. DMEM 250 ml
ii. M171 118 ml
iii. DMEM/F12 118 ml
iv. ウシ胎仔血清 (FBS) 12.5 ml(最終濃度2.5%)
を混合する段階を含む、前記方法。
54. v. 最終濃度10 ng/mlを達成するためのEGF保存溶液 (5μg/ml) 1 ml
vi. 最終濃度5μg/mlを達成するためのインスリン保存溶液 (14.28 mg/ml) 0.175 ml
を添加する段階をさらに含む、項目53の方法。
55. 補充物質であるアデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) のうちの1つまたは複数をDMEMに添加し、それによって全容量500 mlの培養液とする段階をさらに含む、項目53または54の方法。
56. DMEM中の補充物質の最終濃度が、
約0.05~0.1μg/mlのアデニン、例えば約0.025μg/mlのアデニン、
約1~10μg/mlのヒドロコルチゾン、
約0.5~5 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3)、例えば1.36 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3)
である、項目55の方法。
57. 項目53~56のいずれか一つの方法によって取得可能である、細胞培養液。
58. 項目53~56のいずれか一つにおいて定義される方法によって調製された培養液中で羊膜組織を培養する段階を含む、間葉系幹細胞の創傷治癒特性を誘導するまたは改善する方法。
59. 間葉系幹細胞集団が、臍帯の間葉系幹細胞集団、胎盤間葉系幹細胞集団、臍帯血の間葉系幹細胞集団、骨髄の間葉系幹細胞集団、および脂肪組織由来の間葉系幹細胞集団からなる群より選択される、項目58の方法。
60. 臍帯の間葉系幹細胞集団が、羊膜 (AM) の間葉系幹細胞集団、血管周囲 (PV) の間葉系幹細胞集団、ワルトン膠様質 (WJ) の間葉系幹細胞集団、臍帯の羊膜の間葉系幹細胞集団、および臍帯の混合間葉系幹細胞集団 (MC) からなる群より選択される、項目59の方法。
61. ‐最終濃度約55~65% (v/v) のDMEM、
‐最終濃度約5~15% (v/v) のF12、
‐最終濃度約15~30% (v/v) のM171、および
‐最終濃度約1~8% (v/v) のFBS
を含む、細胞培養液。
62. 最終濃度約57.5~62.5% (v/v) のDMEM、最終濃度約7.5~12.5% (v/v) のF12、最終濃度約17.5~25.0% (v/v) のM171、および最終濃度約1.75~3.5% (v/v) のFBSを含む、項目61の細胞培養液。
63. 最終濃度約61.8% (v/v) のDMEM、最終濃度約11.8% (v/v) のF12、最終濃度約23.6% (v/v) のM171、および最終濃度約2.5% (v/v) のFBSを含む、項目62の細胞培養液。
64. 最終濃度約1 ng/ml~約20 ng/mlの上皮増殖因子 (EGF) をさらに含む、項目61~62のいずれか一つの細胞培養液。
65. 最終濃度約10 ng/mlのEGFを含む、項目61~65のいずれか一つの細胞培養液。
66. 最終濃度約1μg/ml~10μg/mlのインスリンを含む、項目61~65のいずれか一つの細胞培養液。
67. 最終濃度約5μg/mlのインスリンを含む、項目66の細胞培養液。
68. 補充物質であるアデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) のうちの少なくとも1つをさらに含む、項目61~67のいずれか一つの細胞培養液。
69. アデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) の3つすべてを含む、項目68の細胞培養液。
70. 最終濃度約0.05~約0.1μg/mlアデニンのアデニン、最終濃度約1~約10μg/mlヒドロコルチゾンのヒドロコルチゾン、および/または最終濃度約0.5~約5 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) を含む、項目68または69の細胞培養液。
71. 細胞培養液500 mlが、
i. DMEM 250 ml
ii. M171 118 ml
iii. DMEM/F12 118 ml
iv. ウシ胎仔血清 (FBS) 12.5 ml(最終濃度2.5%)
を含む、項目61~70のいずれか一つの細胞培養液。
72. v. 最終濃度10 ng/mlのEGF
vi. 最終濃度5μg/mlのインスリン
vi. インスリン0.175 ml(最終濃度5μg/ml)
をさらに含む、項目71の細胞培養液。
73. 最終濃度約0.05~約0.1μg/mlアデニンのアデニン、最終濃度約1~約10μg/mlヒドロコルチゾンのヒドロコルチゾン、および/または最終濃度約0.5~約5 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) をさらに含む、項目71または72の細胞培養液。
74. 間葉系幹細胞集団の創傷治癒特性を誘導するまたは改善するための、項目61~73のいずれか一つにおいて定義される細胞培養液の使用。
75. 間葉系幹細胞集団の単離のための、項目61~73のいずれか一つにおいて定義される細胞培養液の使用。
76. 間葉系幹細胞集団が、臍帯の間葉系幹細胞集団、胎盤間葉系幹細胞集団、臍帯血の間葉系幹細胞集団、骨髄の間葉系幹細胞集団、および脂肪組織由来の間葉系幹細胞集団からなる群より選択される、項目74または75の使用。
77. 臍帯の間葉系幹細胞集団が、羊膜 (AM) の間葉系幹細胞集団、血管周囲 (PV) の間葉系幹細胞集団、ワルトン膠様質 (WJ) の間葉系幹細胞集団、臍帯の羊膜の間葉系幹細胞集団、および臍帯の混合間葉系幹細胞集団 (MC) からなる群より選択される、項目76の方法。
78. 間葉系幹細胞集団の少なくとも約90%またはそれ以上の細胞が、マーカーCD73、CD90、およびCD105の各々を発現する、項目74~77のいずれか一つの使用。
79. 間葉系幹細胞集団の少なくとも約90%またはそれ以上の細胞が、マーカーCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている、項目78の使用。
80. 単離された間葉系幹細胞集団の少なくとも約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上の細胞が、CD73、CD90、およびCD105の各々を発現し、かつCD34、CD45、およびHLA-DRの各々の発現を欠いている、項目79の使用。
81. 唯一の創傷治癒タンパク質としてAng-1、TGF-β1、VEGF、またはHGFのうちの3つまたは4つを含有する、薬学的組成物。
82. 液体としてまたは凍結乾燥物質/凍結乾燥製剤として製剤化される、項目81の薬学的組成物。
【0160】
本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に開示された本発明に対して種々の置き換えおよび修正を行うことができることは、当業者に容易に明白であろう。
【0161】
本明細書において言及されるすべての特許および出版物は、本発明が関連する当技術分野における当業者のレベルを示す。特許および出版物はすべて、個々の出版物が具体的にかつ個別に参照により組み入れられることが示されるのと同程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
【0162】
本明細書において例示的に記載された発明は、本明細書において具体的に開示されていない任意の1つまたは複数の要素、1つまたは複数の制限の不在下で適切に行うことができる。したがって、例えば、「含む (comprising)」、「含む (including)」、「含有する」等の用語は、包括的にかつ非限定的に読み取られるものとする。さらに、本明細書において使用される用語および表現は、限定の用語ではなく説明の用語として使用されており、そのような用語および表現の使用には、示されかつ説明された特徴またはその一部のいかなる等価物も除外する意図はなく、特許請求される本発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。したがって、本発明を好ましい態様および任意選択の特徴によって具体的に開示してきたが、本明細書において開示されているその中で具体化された発明の修正および変更が、当業者に委ねられてよいこと、ならびにそのような修正および変更が本発明の範囲内であると見なされることが理解されるべきである。本発明は、本明細書において幅広くかつ総称的に記載されている。総称的な開示の範囲内に入るより狭い種および亜属集団の各々もまた、本発明の一部を形成する。これには、除かれた題材が本明細書において具体的に挙げられているか否かにかかわらず、任意の主題を属から除外する条件付きのまたは負の限定を用いた本発明の総称的記載も含まれる。加えて、本発明の特徴または局面がマーカッシュ群の観点から記載されている場合、当業者は、本発明がまたそれにより、そのマーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループの観点からも記載されていることを認識するであろう。本発明のさらなる態様は、添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【配列表】