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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】変位計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/00 20060101AFI20240822BHJP
   G01B 5/24 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
G01B5/00 A
G01B5/24
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021090561
(22)【出願日】2021-05-28
(65)【公開番号】P2022182820
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】596112516
【氏名又は名称】株式会社ジャスティ
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 芳裕
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/100762(WO,A1)
【文献】実開昭62-057109(JP,U)
【文献】特開平10-300409(JP,A)
【文献】特開平07-027554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00ー 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体が伸縮可能なテレスコピック構造の測定子と、
前記測定子の基端部に対する先端部の変位量を計測する計測部と
を備え、
前記測定子は、
1の円筒体又は径が異なる複数の円筒体、及び前記1の円筒体又は前記複数の円筒体のうちの最小径の円筒体に進退自在に挿入されて先端が変位計測対象物に取付固定される円柱状又は円筒状の先端部材からなり、
前記1又は複数の円筒体及び前記先端部材は、外側の円筒体に対して内側の円筒体又は先端部材が伸縮方向に進退動作する際、その進退動作に連動して前記基端部に回転動作を付与する回転付与機構を有し、
前記計測部は、
前記測定子の基端部に設けられて前記先端部材に対する最大径の前記円筒体の回転角度を検出する回転変位計を有し、
前記回転変位計は、前記測定子の最大径の円筒体とほぼ同径の円筒状の外形と、前記円筒状の外形の中心軸に沿って延びる回転シャフトとを有し、
前記回転シャフトは、前記測定子の基端部に連結され、
前記測定子の基端部と前記回転変位計との間には、前記回転変位計と前記測定子とを回転自在に連結するベアリングが装着されている
変位計測装置。
【請求項2】
前記回転変位計は、ポテンショメータである
請求項1記載の変位計測装置。
【請求項3】
前記測定子は、前記基端部に設けられた回転板を有し、
前記ポテンショメータの回転シャフトは、前記回転板に固定されている
請求項2記載の変位計測装置。
【請求項4】
前記計測部は、
前記回転変位計の回転シャフトが延びる第1方向と交差する第2方向に延び、前記回転変位計の側面から前記回転変位計に差し込まれた回動軸と、
前記第1方向に延び、前記回転変位計の底面から挿入されて前記回動軸と螺合することにより前記回動軸を前記回転変位計に固定する固定ねじと、
を有し、
前記回転変位計は、ジンバル機構を構成する回動枠部に、前記回動軸を介して回動自在に支持されている
請求項1~3のいずれか1項記載の変位計測装置。
【請求項5】
前記回転付与機構は、
前記外側の円筒体に設けられた、前記伸縮方向に対して傾斜した溝部と、
前記内側の円筒体又は先端部材の外周部に設けられ前記溝部に遊嵌する突起部とを有する
請求項1~4のいずれか1項記載の変位計測装置。
【請求項6】
前記突起部は、前記円筒体及び前記先端部材の円周方向に沿って均等配置され、且つ隣接する円筒体同士又は隣接する円筒体及び先端部材に設けられた前記突起部は前記伸縮方向から見て前記円周方向にずれて配置されている
請求項5記載の変位計測装置。
【請求項7】
前記計測部は、
前記測定子の軸と直交し且つ互いに直交する軸回りの回転角度をそれぞれ装置全体の傾斜角として検出する複数の回転変位計からなる傾斜角検出手段を有する
請求項1~6のいずれか1項記載の変位計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直線的に伸縮して変位計測対象物の変位量を計測する変位計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
相対変位する変位計測対象物に接続されて、例えば相対的な三次元の変位を計測する変位計測装置として、三次元変位計測システムが知られている(下記特許文献1参照)。この三次元変位計測システムは、変位計測対象物の6自由度の挙動を的確に計測し、非接触式のものより安価で小型なシステムを実現し、変位計測対象物への取付時の位置決めが容易とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-315815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された従来技術の三次元変位計測システムでは、システムを構成する三次元変位検出ユニットにおいて、変位計測対象物に取付固定される測定子の変位を検出する変位計測装置が、連結ロッドの伸縮に伴い伸び縮みするワイヤの移動量を検出するワイヤタイプのものである。
【0005】
このため、例えば自動車の衝突試験等に用いられる安全性評価用人体ダミーの肋骨部の変位量を計測する場合に、ワイヤタイプの変位計測装置では衝突時の肋骨部の変位速度にワイヤの収縮速度が追い付かないことがあった。また、肋骨部への衝突の力の入力方向が、変位計測装置が設置された2点間を結ぶ線分に対して変位計測装置の固定点に向けて斜め方向であったときには、連結ロッドの収縮が妨げられることがあった。このような場合は、変位計測対象物の変位量を直線的に安定して計測することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消し、変位計測対象物の変位量を直線的に安定して計測することができる変位計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る変位計測装置は、全体が伸縮可能なテレスコピック構造の測定子と、前記測定子の基端部に対する先端部の変位量を計測する計測部とを備え、前記測定子は、1の円筒体又は径が異なる複数の円筒体、及び前記1の円筒体又は前記複数の円筒体のうちの最小径の円筒体に進退自在に挿入されて先端が変位計測対象物に取付固定される円柱状又は円筒状の先端部材からなり、前記1又は複数の円筒体及び前記先端部材は、外側の円筒体に対して内側の円筒体又は先端部材が伸縮方向に進退動作する際、その進退動作に連動して前記基端部に回転動作を付与する回転付与機構を有し、前記計測部は、前記測定子の基端部に設けられて前記先端部材に対する最大径の前記円筒体の回転角度を検出する回転変位計を有し、前記回転変位計は、前記測定子の最大径の円筒体とほぼ同径の円筒状の外形と、前記円筒状の外形の中心軸に沿って延びる回転シャフトとを有し、前記回転シャフトは、前記測定子の基端部に連結され、前記測定子の基端部と前記回転変位計との間には、前記回転変位計と前記測定子とを回転自在に連結するベアリングが装着されている。
【0008】
本発明の一実施形態においては、前記回転変位計は、ポテンショメータである。
【0009】
本発明の他の実施形態においては、前記測定子は、前記基端部に設けられた回転板を有し、前記ポテンショメータの回転シャフトは、前記回転板に固定されている。
【0010】
本発明の更に他の実施形態においては、前記計測部は、前記回転変位計の回転シャフトが延びる第1方向と交差する第2方向に延び、前記回転変位計の側面から前記回転変位計に差し込まれた回動軸と、前記第1方向に延び、前記回転変位計の底面から挿入されて前記回動軸と螺合することにより前記回動軸を前記回転変位計に固定する固定ねじと、を有し、前記回転変位計は、ジンバル機構を構成する回動枠部に、前記回動軸を介して回動自在に支持されている。
【0011】
本発明の更に他の実施形態においては、前記回転付与機構は、前記外側の円筒体に設けられた、前記伸縮方向に対して傾斜した溝部と、前記内側の円筒体又は先端部材の外周部に設けられ前記溝部に遊嵌する突起部とを有する。
【0012】
本発明の更に他の実施形態においては、前記突起部は、前記円筒体及び前記先端部材の円周方向に沿って均等配置され、且つ隣接する円筒体同士又は隣接する円筒体及び先端部材に設けられた前記突起部は、前記伸縮方向から見て前記円周方向にずれて配置されている。
【0013】
本発明の更に他の実施形態においては、前記計測部は、前記測定子の軸と直交し且つ互いに直交する軸回りの回転角度をそれぞれ装置全体の傾斜角として検出する複数の回転変位計からなる傾斜角検出手段を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、変位計測対象物の変位量を直線的に安定して計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態に係る変位計測装置を備えた安全性評価用人体ダミーの一部を透過して示す全体的な外観斜視図である。
図2】同変位計測装置の安全性評価用人体ダミーの体幹骨格部内への配置態様を示す上面図である。
図3】同変位計測装置の最大伸長時の状態を示す正面図である。
図4】同変位計測装置を示す上面図である。
図5】同変位計測装置の一部を断面で示す上面図である。
図6図5の一部拡大図である。
図7図4のA-A’線断面図である。
図8図4のB-B’線断面図である。
図9図7のC-C’線断面図である。
図10】同変位計測装置の最大収縮時の状態を示す断面図である。
図11】本発明の第2の実施形態に係る変位計測装置を示す正面図である。
図12】本発明の他の実施形態に係る変位計測装置の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態に係る変位計測装置を詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお、以下の実施形態は、本発明に係る変位計測装置を安全性評価用人体ダミーの体幹骨格部の内部に適用することで安全性評価システムとして構成した場合を例示するものである。
【0017】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る変位計測装置を備えた安全性評価用人体ダミーの一部を透過して示す全体的な外観斜視図である。図2は、この変位計測装置の安全性評価用人体ダミーの体幹骨格部内への配置態様を示す上面図である。図3は、この変位計測装置の最大伸長時の状態を示す正面図である。
【0018】
また、図4は、この変位計測装置を示す上面図、図5はこの変位計測装置の一部を断面で示す上面図である。更に、図6は、図5の一部拡大図、図7図4のA-A’線断面図、図8図4のB-B’線断面図、図9図7のC-C’線断面図である。そして、図10は、この変位計測装置の最大収縮時の状態を示す断面図である。
【0019】
図1に示すように、安全性評価用人体ダミー(以下、「人体ダミー」と略記する。)100は、例えば首骨格部105を有する頭部101と、この頭部101が設置される体幹部102とを備えている。また、人体ダミー100は、この体幹部102に取り付けられる一対の腕部103と、同じくこの体幹部102に取り付けられる一対の脚部104とを備えている。体幹部102は、例えば人体ダミー100の胸部、胴部及び腰部を構成している。
【0020】
体幹部102内には、体幹骨格部110が備えられる。体幹骨格部110は、例えば着座姿勢或いは立ち姿勢の人体ダミー100の体幹部102内に設けられる。また、体幹骨格部110は、例えば首骨格部105を介して頭部101と接続されている。この体幹骨格部110は、例えば人体の脊椎に近似する脊椎部120や人体の胸郭に近似する胸郭部130を備えている。
【0021】
脊椎部120は、例えば複数の椎骨部121を有している。胸郭部130は、一つの椎骨部121に対して人体ダミー100の左右方向に一組ずつ備えられるように複数の肋骨部131を有している。そして、体幹骨格部110の内部には、本発明の第1の実施形態に係る変位計測装置10が複数設置されている。
【0022】
具体的には、図2に示すように、各変位計測装置10は、衝突試験等における人体ダミー100の左右方向からの衝突等によってもたらされる肋骨部131の変形を変位量として計測可能となるように、この左右方向にそれぞれ測定子20が全体的に伸縮可能となる状態で設置されている。すなわち、各変位計測装置10は、例えば体幹骨格部110の中心部を中心として、この中心を通る上記左右方向に沿った椎骨部121と左右の各肋骨部131との間にそれぞれ配置されている。なお、変位計測装置10は、図示は省略するが、例えば人体ダミー100の前後方向からの衝突等によってもたらされる胸郭部130の脊椎部120に対する変位量を計測可能となるように、この前後方向に測定子20が全体的に伸縮可能となる状態で設置されていても良い。
【0023】
各変位計測装置10は、図2に示すように、左右方向にそれぞれ全体が伸縮可能なテレスコピック構造の測定子20と、この測定子20の基端(椎骨部121側)に対する先端(肋骨部131側)の変位量を計測する計測部40とを備えて構成されている。従って、変位計測装置10は、本実施形態では変位計測対象物として、左右の肋骨部131の変位量をそれぞれ計測する。
【0024】
図3図5並びに図7図8及び図10に示すように、変位計測装置10の計測部40は、板状の取付ベース41を有する。この取付ベース41は、例えば椎骨部121に取付ボルト41a(図2参照)を介して取付固定される。取付ベース41には、測定子20の方向に向かって立設された一対の取付プレート41bが備えられている。
【0025】
取付プレート41b間には、例えば測定子20の伸縮方向(Z方向)から見てロの字枠状に形成された回動枠部41cが、例えば取付ベース41の主面に平行で、且つZ方向のz軸と直交するx軸回りに、回動軸41dを介して回動可能に取り付けられている。また、取付プレート41bのx軸方向の一方の外側には、この回動枠部41cの回動軸41dを中心とした回転角度を検出するx軸回転変位計51が取り付けられている。
【0026】
一方、回動枠部41cの内側には、例えば測定子20の基端側に測定子20と一体的に設けられたz軸回転変位計50が、例えばz軸及びx軸とそれぞれ直交するy軸回りに、例えば円筒形状の外形を有するz軸回転変位計50の側面に装着された回動軸41fを介して回動可能に取り付けられている。すなわち、z軸回転変位計50は、回動枠部41cに対し、回動軸41fを介してy軸回りに回動自在に支持されている。また、回動枠部41cのy軸方向の一方の外側には、この回動枠部41cを介してz軸回転変位計50から延びた回動軸41fの回転角度、すなわちz軸回転変位計50の回動軸41fを中心とした回転角度を検出するy軸回転変位計52が取り付けられている。
【0027】
なお、取付ベース41及び取付プレート41b、回動枠部41c、回動軸41d、z軸回転変位計50並びに回動軸41fの各部で自由度2のジンバル機構を構成する。また、x軸回転変位計51及びy軸回転変位計52は、x軸及びy軸回りの回転角度をそれぞれ変位計測装置10全体の傾斜角として検出する傾斜角検出手段を構成する。なお、z軸回転変位計50は、例えば、測定子20の最大径の円筒体26の基端側に設けられた回転板26dを介して、測定子20に一体的に設けられている。z軸回転変位計50は、その外径が円筒体26の外径とほぼ同径となるように構成されていると良い。
【0028】
変位計測装置10の測定子20は、全体が伸縮可能となるように、径が異なる複数の円筒体22,23,24,25,26と、各円筒体22~26のうちの最小径の円筒体22に進退自在に挿入されて先端が肋骨部131に取付固定される円柱状又は円筒状の先端部材21とからなる。なお、この先端部材21は、その先端側に設けられた固定環21cを介して、例えば肋骨部131の左右端部内側部分に対して取付固定されている。
【0029】
そして、このように構成された測定子20は、次のような特徴を備えている。すなわち、測定子20の各円筒体22~26及び先端部材21は、外側の円筒体22~26に対して内側の円筒体22~25又は先端部材21がZ方向に進退動作する際、その進退動作に連動して回転動作を付与する回転付与機構を有している。この回転付与機構は、複数の円筒体に設けられた、Z方向に傾斜した溝部又はガイド部と、複数の円筒体のうちの最大径の円筒体を除く円筒体及び先端部材の外周部に設けられ外側に隣接する円筒体の溝部に遊嵌する突起部又はガイドピンとを有する。
【0030】
本実施形態においては、回転付与機構は、例えばそれぞれ外側に配置される円筒体22~26に設けられた傾斜した溝部31,32,33,34,35を有する。
また、回転付与機構は、内側に配置される円筒体22~25及び先端部材21の外周部である外周面21a,22a,23a,24a,25aから突出するように設けられ、外側に隣接する円筒体22~26の溝部31~35に対し遊びをもった状態で嵌まる(遊嵌する)突起部11,12,13,14,15を有する。
【0031】
これら突起部11~15は、例えば円筒体22~25及び先端部材21の円周方向に沿って均等配置されている。また、突起部11~15は、隣接する円筒体22~25同士又は隣接する円筒体22及び先端部材21に設けられたものが、Z方向から見て円周方向にずれて配置されている。具体的には、突起部11を例に挙げると、この突起部11は、例えば図4に示すように先端部材21の円周方向に180°間隔で2つ設けられている。他の突起部12~15も、それぞれ円筒体22~25の円周方向に180°間隔でそれぞれ2つずつ設けられている。
【0032】
また、隣接する円筒体22~25同士に設けられた突起部12~15は、Z方向から見て円周方向にずれて配置されている。更に、隣接する円筒体22及び先端部材21に設けられた突起部12,11は、Z方向から見て円周方向にずれて配置されている。より具体的には、突起部11~15は、Z方向から見て円周方向にそれぞれ90°ずつずれた状態で配置されている。
【0033】
一方、溝部31~35は、各円筒体22~26の軸(z軸)に対して所定角度、例えば2°~30°の範囲の角度(本実施形態では、例えば25°)で傾斜した状態で形成されている。各溝部31~35は、例えば各突起部11~15に対応する位置にそれぞれ設けられている。各溝部31~35は、このように所定角度傾斜した状態で設けられることにより、突起部11~15と共に、外側の円筒体22~26に対して内側の円筒体22~25又は先端部材21がZ方向に進退動作する際に、その進退動作に連動して、外側の各円筒体22~26をz軸回りに回転動作させる回転付与機構を構成する。
【0034】
なお、各突起部11~15及び各溝部31~35は、例えば上記のような円周方向に沿って、120°間隔で3つ均等配置されたり、それ以上の数設けられたりしてもよい。このように円周方向に均等配置することで、測定子20を伸縮させる力の偏りを極力防ぐことが可能となる。
【0035】
なお、各溝部31~35及び各突起部11~15は、次のように形成されることが好ましい。ここでは、図6に示すように、突起部13及び溝部33を例に挙げて説明するが、他の溝部31,32,34,35及び突起部11,12,14,15も同様に形成され得る。
【0036】
溝部33は、その開口部分の切欠内周面36が、円筒体24の内周面27側から外周面24a側に向けて開口径が広がるようなテーパ状に形成され得る。これに伴い、この溝部33に遊嵌する突起部13は、切欠内周面36に合致するテーパ状の突起外周面16を有するように形成され得る。
【0037】
なお、図示のように、突起部13は、例えば円筒体23の外周面23aに対して波ワッシャ17を介して取付ボルト18により取り付けられる。取付ボルト18のヘッド部と突起部13との間には、平ワッシャ17aが備えられる。このような構造により、合致する溝部33の切欠内周面36と突起部13の突起外周面16とが、上記進退動作に伴う回転動作時の摺動の際にも最適な角度及び最適な当接力の下での面接触による遊嵌状態となるよう保たれる。
【0038】
また、図示は省略するが、各突起部11~15は、円周方向に均等配置されるのみならず、各溝部31~35の長手方向に沿うように、複数設けられていてもよい。このようにすれば、測定子20の伸縮に伴い、先端部材21及び各円筒体22~26がz軸に対して傾いて進退動作することをより効果的に防止することができる。
【0039】
なお、z軸回転変位計50は、例えば、ポテンショメータにより構成され得る。z軸回転変位計50がポテンショメータにより構成される場合、ポテンショメータの回転シャフト57は、ポテンショメータの外形の中心軸に沿って第1方向(Z方向)に延び、最大径の円筒体26の軸中心に取り付けられる。具体的には、図9に示すように、先端部材21に対する最大径の円筒体26の基端側には、回転板26dが取り付けられている。回転板26dは、円筒体26の外周面26a側から、例えばx軸方向に沿ってそれぞれ螺合された一対の止めねじ41eによって円筒体26に取り付けられる。
【0040】
そして、ポテンショメータと回転板26dとの間にベアリング59を介在させた上で、回転板26dの中心孔にネジ山を有する回転シャフト57を挿入し、ナット58を回転シャフト57に取り付ける。その後、ナット58を締め込むことにより、ポテンショメータと回転板26dとでベアリング59を挟み込んだ状態で、回転シャフト57が円筒体26の軸中心に据えられたz軸回転変位計50が、測定子20の基端部に一体的に接続される。なお、ベアリング59は、ポテンショメータと測定子20とを回転自在に連結するものであるが、回転自在な連結構造を可能にするものであれば、これに限定されるものではない。
【0041】
このように、測定子20に回転板26dを介して一体的に接続されたz軸回転変位計50は、測定子20の基端に対する先端の変位量を得るために、測定子20の伸縮に伴い回転する各円筒体22~26のうちの最大径の円筒体26の回転角度を検出し得る。なお、各回転変位計50~52からの出力は、例えば取付ベース41に設けられた演算手段としてのセンサ回路42に入力される。特に、ポテンショメータからなるz軸回転変位計50は、測定子20の全変位量を表す任意の回転角が、所定の範囲で極力分解能が高くなるような検出信号を出力するように設定されている。
【0042】
センサ回路42は、肋骨部131の変位に伴い検出された最大径の円筒体26の回転角度を電圧に変換するz軸回転変位計50からの出力値に基づき、肋骨部131のZ方向の変位量(距離)を算出する。また、センサ回路42は、x軸回転変位計51及びy軸回転変位計52からの出力値に基づき、変位計測装置10のx軸及びy軸の傾斜角を算出する。そして、センサ回路42は、これら回転変位計50~52からの出力値に基づいて、肋骨部131の三次元的な変位量を算出する。
【0043】
第1の実施形態に係る変位計測装置10は、このような構造により、肋骨部131の変位量を計測するときに、肋骨部131の変位速度に追従して測定子20が全体的に収縮し得る。また、肋骨部131への衝突の力の入力方向が上述したような斜め方向であったとしても、各突起部11~15及び溝部31~35による回転付与機構の作用により、測定子20の収縮が妨げられることはない。このため、各肋骨部131の変位量を直線的に安定して計測することが可能となる。なお、変位計測装置10は、測定子20が上記のような回転付与機構を備えたテレスコピック構造からなるため、繰り返し計測に供することが可能であり、また測定子20及び計測部40を含む各部の機構自体も簡易な構成であるため、安価に製造することが可能である。
【0044】
また、本実施形態によれば、z軸回転変位計50は、測定子20の基端部に直接取り付けられているので、ジンバル機構の他の枠部等に設置する場合に比べて、外径を大きくすることができる。例えば、本実施形態のように、z軸回転変位計50の外径を円筒体26の外径とほぼ同径となるようにすることができる。このため、回転角度に対する周長を長くすることができ、測定精度を向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、z軸回転変位計50が測定子20の基端部に直接取り付けられているので、測定子20及び計測部40のz軸回転変位計50をコンパクトに設計することが可能である。これにより、変位計測装置10は、例えば、胸郭部130の内側スペースよりも、より狭い設置スペースにおける変位量の計測等に用いることも可能となる。
【0046】
[第2の実施形態]
図10は、本発明の第2の実施形態に係る変位計測装置を示す正面図である。なお、図10を含む以降の説明においては、第1の実施形態と同一の構成要素に関しては同一の符号を付しているので、以下では重複する説明は省略する。
【0047】
図11に示すように、本発明の第2の実施形態に係る変位計測装置10Aは、測定子20及び計測部40の各部の構成は、第1の実施形態の変位計測装置10と同様であるが、計測部40において、z軸回転変位計50と共に、更に測定子20に可変抵抗器60が設けられた点が、第1の実施形態とは相違している。これにより、変位量を直線的に安定して計測することについて、z軸回転変位計50の出力と可変抵抗器60の出力とを利用することで、より精度を期すことが可能となる。
【0048】
可変抵抗器60は、例えば先端部材21に対する最大径の円筒体26とその一つ内側の円筒体25とのZ方向の変位を検出し得る。可変抵抗器60は、具体的には、円筒体25の外周面25a上に設けられた摺動子61と、円筒体26の内周面27上に設けられた抵抗体62とから構成される。なお、図11中の円筒体25及び円筒体26に跨がる曲線は、曲線により区分けされた部分が、装置全体の断面とは異なる部分断面を表すことを示している。この可変抵抗器60からの出力値は、上述したようにz軸回転変位計50の出力値と共にセンサ回路42に入力され、これに基づき肋骨部131のZ方向の変位量(距離)が算出される。なお、センサ回路42では、例えば入力した出力値に基づき、円筒体22~26の段数を係数として利用しこれに乗した結果により、先端部材21のZ方向への移動距離を求めて肋骨部131の変位量を算出するようにしてもよい。このような構成によっても、第1の実施形態と同様の作用効果を奏することが可能である。
【0049】
なお、第2の実施形態に係る変位計測装置10Aも、上述したようにz軸回転変位計50が測定子20に一体的に設けられており、例えば、ポテンショメータにより構成されている。このため、z軸回転変位計50の全体の小型化を図りつつ、抵抗体に対してワイパーの位置を動かす回転体の直径をz軸回転変位計50の内部で比較的大きく取ることが可能となる。これにより、小型化が可能にも拘わらず、z軸回転変位計50の分解能を求められる性能に維持或いはその向上を図ることが可能である。
【0050】
[他の実施形態]
図12は、本発明の他の実施形態に係る変位計測装置の一部を示す断面図である。
本発明の他の実施形態に係る変位計測装置は、z軸回転変位計50が回転板26dを介して測定子20に一体的に接続されている点は、上述した第1及び第2の実施形態の変位計測装置10,10Aと同様であるが、z軸回転変位計50に別部材からなる回動軸41fが取り付けられた点が、第1及び第2の実施形態とは相違している。
【0051】
すなわち、図12に示すように、別部材の回動軸41fは、z軸回転変位計50のy軸方向所定箇所にy軸方向(第2方向)に沿って設けられた一対の差込孔50bにそれぞれ差し込まれる。回動軸41fは、差込孔50bに差し込まれる際に、z軸回転変位計50側から順に、スラストワッシャー52d、y軸回転変位計52の筐体52a及びベアリング52bを介して差し込まれる。
【0052】
回動軸41fの一方の端部に近い所定箇所には、z軸方向に貫通する穴部41faが備えられている。穴部41faは、z軸回転変位計50にz軸方向に延びるように設けられた固定孔50dと連通する。この固定孔50dに、z軸回転変位計50の下方側から固定ねじ50cを螺合することにより、固定ねじ50cの少なくとも先端部が回動軸41fの穴部41faにねじ止めされ、回動軸41fがz軸回転変位計50に固定される。なお、回動軸41fの他方の端部側には、y軸回転変位計52の変位計測軸52eのI字状先端部が嵌合するスリット部41fbが設けられている。このような嵌合構造によれば、y軸回転変位計52の原点位置を調整しやすい。
【0053】
このような構成によっても、第1及び第2の実施形態と同様の作用効果を奏することができると共に、z軸回転変位計50の外径に対してポテンショメータの回転体50aの直径を大きく取ることができる。これにより、第1及び第2の実施形態と同様に、z軸回転変位計50の分解能を求められる性能に維持或いはその向上を図ることが可能である。
【0054】
以上、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0055】
例えば、上記の実施形態では、変位計測装置10,10Aの測定子20の基端に対する先端の変位量を、変位計測装置10ではz軸回転変位計50で、また変位計測装置10Aではz軸回転変位計50及び可変抵抗器60を用いてそれぞれ検出することができるものとしたが、z軸回転変位計50の代わりに可変抵抗器60のみを備えるように、変位計測装置を構成するようにしてもよい。この場合でも、測定子20の伸縮に伴って測定子20の基端側が回転付与機構によって回転するので、可変抵抗器60をz軸回転変位計50と同様に回転板26dを介して接続され、円筒体26の回転変位を抵抗値の変化として検出して出力する構成とすれば、直線動作のみでの計測よりも、軋みや歪みなどの影響が出にくくなり、正確な測定が可能になる。また、回転付与機構は、溝部31~35が円筒体22~26に対して螺旋状(スパイラル、ヘリカル)に形成されていたり、突起部11~15と溝部31~35との形成位置関係が上記の例と反対であったりしてもよい。更に、上述した実施形態における突起部11~15や溝部31~35の形状は、遊嵌状態を維持可能であればその他の種々の態様を採用し得る。また、z軸回転変位計50は、例えば最大径の円筒体26が基端側が閉塞された円筒体で構成される場合は、回転板26dを介さずに回転シャフト57をナット58で円筒体26に直付けして一体的に構成されても良い。
【符号の説明】
【0056】
10,10A 変位計測装置
11~15 突起部
16 突起外周面
20 測定子
21 先端部材
21a 外周面
21c 固定環
22~26 円筒体
22a~26a 外周面
26d 回転板
27 内周面
31~35 溝部
36 切欠内周面
40 計測部
41 取付ベース
41c 回動枠部
41e 止めねじ
42 センサ回路
50 z軸回転変位計
51 x軸回転変位計
52 y軸回転変位計
57 回転シャフト
58 ナット
59 ベアリング
60 可変抵抗器
61 摺動子
62 抵抗体
100 安全性評価用人体ダミー
102 体幹部
110 体幹骨格部
120 脊椎部
121 椎骨部
130 胸郭部
131 肋骨部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12