(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】フローサイトメータ用フローセルおよびフローサイトメータ用フローセルの洗浄方法
(51)【国際特許分類】
G01N 15/14 20240101AFI20240822BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20240822BHJP
G01N 21/05 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
G01N15/14 Z
G01N37/00 101
G01N21/05
(21)【出願番号】P 2021572784
(86)(22)【出願日】2021-01-21
(86)【国際出願番号】 JP2021002017
(87)【国際公開番号】W WO2021149759
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2023-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2020008711
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】517110494
【氏名又は名称】シンクサイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【氏名又は名称】福原 直志
(72)【発明者】
【氏名】河村 踊子
(72)【発明者】
【氏名】中川 啓史
(72)【発明者】
【氏名】戸田 圭亮
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/053393(WO,A1)
【文献】特開2005-199164(JP,A)
【文献】特開2018-205047(JP,A)
【文献】特開2018-141689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/14
G01N 37/00
G01N 21/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルを含むサンプル流体が流れるサンプル流路と、
前記サンプル流路における前記サンプル流体の流通方向の上流端に連通し、前記サンプル流路に前記サンプル流体を供給するサンプル流体供給部と、
を備え、
前記サンプル流体供給部は、
前記サンプル流路に前記サンプル流体を供給する複数のサンプル用開口部と、
チューブが接続可能とされ、前記サンプル流体供給部を洗浄する洗浄液を供給する洗浄液供給用開口部と、
チューブが接続可能とされ、前記サンプル流体供給部から前記洗浄液を排出する洗浄液排出用開口部と、
を有することを特徴とするフローサイトメータ用フローセル。
【請求項2】
複数の前記サンプル用開口部は、前記サンプル流体を供給する順に並んで配置されることを特徴とする請求項1に記載のフローサイトメータ用フローセル。
【請求項3】
複数の前記サンプル用開口部のうち前記サンプル流体を最も後に供給する前記サンプル用開口部は、前記洗浄液供給用開口部よりも、前記洗浄液供給用開口部から前記洗浄液排出用開口部に流れる前記洗浄液の下流側に配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフローサイトメータ用フローセル。
【請求項4】
前記サンプル流体を最も後に供給する前記サンプル用開口部は、前記洗浄液供給用開口部でもあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフローサイトメータ用フローセル。
【請求項5】
複数の前記サンプル用開口部のうち前記サンプル流体を最も先に供給する前記サンプル用開口部は、前記洗浄液排出用開口部よりも、前記洗浄液供給用開口部から前記洗浄液排出用開口部に流れる前記洗浄液の上流側に配置されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のフローサイトメータ用フローセル。
【請求項6】
前記サンプル流体を最も先に供給する前記サンプル用開口部は、前記洗浄液排出用開口部でもあることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のフローサイトメータ用フローセル。
【請求項7】
複数の前記サンプル用開口部のうち前記サンプル流体を後に供給する前記サンプル用開口部ほど前記洗浄液の上流側に配置される請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のフローサイトメータ用フローセル。
【請求項8】
前記サンプル流体供給部は、両端に前記洗浄液供給用開口部と前記洗浄液排出用開口部とを有する洗浄流路を備え、
複数の前記サンプル用開口部は、前記洗浄流路に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のフローサイトメータ用フローセル。
【請求項9】
前記サンプル流体供給部は、複数の前記サンプル用開口部と前記サンプル流路における前記サンプル流体の流通方向の前記上流端とを連通させる連通路を備え、
前記連通路は、前記サンプル流路よりも太いことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のフローサイトメータ用フローセル。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずか1項に記載のフローサイトメータ用フローセルの洗浄方法であって、
複数の前記サンプル用開口部のうち一の前記サンプル用開口部から前記サンプル流路に前記サンプル流体を流通させるサンプル流通工程と、
前記洗浄液供給用開口部から前記洗浄液排出用開口部まで前記洗浄液を流通させる洗浄工程と、を備えることを特徴とするフローサイトメータ用フローセルの洗浄方法
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローサイトメータ用フローセルおよびフローサイトメータ用フローセルの洗浄方法に関する。
本願は、2020年1月22日に日本に出願された特願2020-008711号について優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
フローサイトメータの流路系に用いられるフローセルが知られている(例えば特許文献1)。
特許文献1に記載のフローセルは、サンプル流体とシース流体とが流れる流路と、サンプル流体を流路に導入するサンプル流路と、シース流体を流路に導入する少なくとも1本のシース流路と、を備えている。サンプル流路の流通方向の上流端には、サンプル流体が供給されるサンプル流体供給部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フローセルに複数種のサンプルを流通させる場合、先に流通させたサンプルが残留すると、後に流通させるサンプルが先に流通させたサンプルと混流し、目的とするサンプルの測定および分取結果に影響が出るおそれがある。
例えば、事前に学習用のサンプルを測定して教師情報を生成し、生成された教師情報を元に予測モデルを作成して目的サンプルの判別を行うフローサイトメータが開発されている。こうした機械学習を用いたフローサイトメータにおいて、生成される教師情報の精度は、学習用のサンプルの純度の影響を受ける。さらに、生成された教師情報に基づいて行われる目的細胞測定の精度は、測定用のサンプルの純度に依存する。よって、機器調整用微粒子や学習用のサンプル、分取用のサンプル等が1つのフローセルに連続して流通される場合、使用されるフローセルは、複数のサンプルの混流を防止することが求められている。
このため、各サンプルを流通させる前に、チューブ、サンプル流路およびサンプル流体供給部を十分に洗浄する必要がある。チューブ、サンプル流路およびサンプル流体供給部の洗浄は、洗浄液を流通させて行われるが、このように洗浄液を流通させて洗浄しても、サンプルが特にチューブとサンプル流体供給部に残留することがある。このため、新しいサンプルをサンプル流体供給部からサンプル流路に流通させて測定を行うと、複数のサンプル流体が混流し、正確な測定および分取結果が得られないおそれがあった。したがって、複数のサンプル流体をフローセルに流通させつつ、それら複数種のサンプルの混流を防止するという点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、複数のサンプルを連続してフローサイトメータに流通して測定する際に、複数のサンプルの混流を防止できるフローサイトメータ用フローセルを提供することを目的とする。本発明は、複数サンプルの混流を防止できるフローサイトメータ用フローセルの洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を達成するために、本発明の一態様に係るフローサイトメータ用フローセルは、以下の構成を採用する。
[1]本発明の一態様に係るフローサイトメータ用フローセルは、サンプルを含むサンプル流体が流れるサンプル流路と、前記サンプル流路における前記サンプル流体の流通方向の上流端に連通し、前記サンプル流路に前記サンプル流体を供給するサンプル流体供給部と、を備え、前記サンプル流体供給部は、前記サンプル流路に前記サンプル流体を供給する複数のサンプル用開口部と、チューブが接続可能とされ、前記サンプル流体供給部を洗浄する洗浄液を供給する洗浄液供給用開口部と、チューブが接続可能とされ、前記サンプル流体供給部から前記洗浄液を排出する洗浄液排出用開口部と、を有する。
【0007】
[2]上記構成[1]において、複数の前記サンプル用開口部は、前記サンプル流体を供給する順に並んで配置されてもよい。
【0008】
[3]上記構成[1]または[2]において、複数の前記サンプル用開口部のうち前記サンプル流体を最も後に供給する前記サンプル用開口部は、前記洗浄液供給用開口部よりも、前記洗浄液供給用開口部から前記洗浄液排出用開口部に流れる前記洗浄液の下流側に配置されてもよい。
【0009】
[4]上記構成[1]または[2]において、前記サンプル流体を最も後に供給する前記サンプル用開口部は、前記洗浄液供給用開口部でもよい。
【0010】
[5]上記構成[1]~[4]のいずれかにおいて、複数の前記サンプル用開口部のうち前記サンプル流体を最も先に供給する前記サンプル用開口部は、前記洗浄液排出用開口部よりも、前記洗浄液供給用開口部から前記洗浄液排出用開口部に流れる前記洗浄液の上流側に配置されてもよい。
【0011】
[6]上記構成[1]~[4]のいずれかにおいて、前記サンプル流体を最も先に供給する前記サンプル用開口部は、前記洗浄液排出用開口部でもよい。
【0012】
[7]上記構成[1]~[6]のいずれかにおいて、複数の前記サンプル用開口部のうち前記サンプル流体を後に供給する前記サンプル用開口部ほど前記洗浄液の上流側に配置されてもよい。
【0013】
[8]上記構成[1]から[7]のいずれかにおいて、前記サンプル流体供給部は、両端に前記洗浄液供給用開口部と前記洗浄液排出用開口部とを有する洗浄流路を備え、複数の前記サンプル用開口部は、前記洗浄流路に設けられていてもよい。
【0014】
[9]上記構成[1]~[8]のいずれかにおいて、前記サンプル流体供給部は、複数の前記サンプル用開口部と前記サンプル流路における前記サンプル流体の流通方向の前記上流端とを連通させる連通路を備え、前記連通路は、前記サンプル流路よりも太くてもよい。
【0015】
上記の課題を達成するために、本発明の他の態様に係るフローサイトメータ用フローセルの洗浄方法は、以下の構成を採用する。
[10]本発明の他の態様に係るフローサイトメータ用フローセルの洗浄方法は、上記構成[1]~[9]のいずれかに記載のフローサイトメータ用フローセルを備えたフローセルの洗浄方法であって、複数の前記サンプル用開口部のうち一の前記サンプル用開口部から前記サンプル流路に前記サンプル流体を流通させるサンプル流通工程と、前記洗浄液供給用開口部から前記洗浄液排出用開口部まで前記洗浄液を流通させる洗浄工程と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数のサンプルを連続してフローサイトメータに流通する際に、複数のサンプルの混流を防止できるフローサイトメータ用フローセルを提供できる。本発明によれば、複数サンプルの混流を防止できるフローサイトメータ用フローセルの洗浄方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係るセルソーターの斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係るセルソーターの平面図である。
【
図3】第2実施形態に係るサンプル流体供給部の拡大平面図である。
【
図4】第2実施形態の変形例に係るサンプル流体供給部の拡大平面図である。
【
図5】第3実施形態に係るサンプル流体供給部の拡大平面図である。
【
図6】第3実施形態の変形例に係るサンプル流体供給部の拡大平面図である。
【
図7】実施例の洗浄試験に用いられたフローセルの一例におけるサンプル流体供給部の拡大概略図である。
【
図8】実施例の洗浄試験に用いられたフローセルの他の例におけるサンプル流体供給部の拡大概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、複数種の細胞を含むサンプルから目的細胞を分取する機能を有するフローサイトメータであるセルソーターに対して、本発明の一態様に係るフローサイトメータ用フローセルを適用した例をもとに、本発明の実施形態について説明する。
【0020】
(第1実施形態)
(セルソーター)
以下、本発明の第1実施形態に係るセルソーターについて図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係るセルソーター1の斜視図である。
図2は、第1実施形態に係るセルソーター1の平面図である。
本実施形態のセルソーター1は、複数種の細胞を含むサンプル流体Aから目的細胞を分取する機能を有するフローサイトメータである。目的細胞は、例えば、サンプル流体Aに含まれる細胞にレーザー光を照射して得られる散乱光や蛍光のデータを元に判別される。目的細胞の判別(分類)には機械学習を用いることができ、その場合、学習用細胞を含有させたサンプル流体Aを用いて事前に測定を行い、得られた教師情報から判別モデルを作成し、その判別モデルを元に目的細胞の判別が行われる。
図1、
図2に示すように、セルソーター1は、フローセル10(請求項のフローサイトメータ用フローセルに相当)と、細胞情報取得装置2と、圧電素子3と、を備えている。
【0021】
(フローセル)
フローセル10は、一方向に延びる矩形板状の部材である。フローセル10は、例えばガラスや石英等の透明な硬質材料により形成することができる。フローセル10を形成する材料として、PDMS(PolyDiMethylSiloxane)のような柔軟な高分子素材を用いることができる。また、フローセル10には、それ以外の材料として、熱硬化性のプラスティック、ポリカーボネート、ポリ4フッ化エチレン、および、PMMA(PolyMethyl MethAcrylate)を代表とするアクリル樹脂のような熱可塑性プラスティック等の「ポリマー」を用いることもできる。フローセル10は、それらの素材を適宜組み合わせて使用できる。
フローセル10は、例えば矩形板状の第1部材4と矩形板状の第2部材5とを張り合わせて形成されている。
第1部材4は、例えばガラス等の透明な材料によって形成されている。
第2部材5は、例えばPDMS(PolyDiMethylSiloxane)等の透明で柔軟な樹脂材料によって形成されている。第2部材5における第1部材4側には、サンプル流路11と、サンプル流体供給部20と、シース流路12と、シース液供給部13と、変流用流体収容部14と、分取用流路15とが形成されている。サンプル流路11と、サンプル流体供給部20と、シース流路12と、シース液供給部13と、変流用流体収容部14と、分取用流路15とは、第1部材4によって覆われている。
【0022】
サンプル流路11は、フローセル10の長手方向に延びている。サンプル流路11には、サンプルを含むサンプル流体Aがフローセル10の長手方向に沿って流通する。サンプル流体Aのサンプルには、例えば細胞やビーズ等の粒子が含まれている。サンプル流路11の一端部はサンプル流体供給部20と連通している。サンプル流路11の他端部は分取用流路15と連通している。サンプル流体Aは、サンプル流体供給部20から供給されてサンプル流路11の一端部から他端部に向かって流通する。
以下、サンプル流体Aの流通方向を流通方向D1とする。
サンプル流路11は、流通方向D1における上流端11aと、流通方向D1に沿って延びる絞り流路11bと、絞り流路11bの下流端に設けられた合流部11cと、合流部11cから流通方向D1に沿って下流側に延びる整列流路11dと、整列流路11dの下流端に設けられた細胞分取部11eと、細胞分取部11eから流通方向D1に沿って下流側に延びる排出流路11fと、を有している。
【0023】
上流端11aには、サンプル流体Aが供給される。
絞り流路11bの下流側端部には、絞り部11gが設けられている。絞り流路11bにおいて、上流端11aから絞り部11gまでの区間は流路幅が同じである。絞り部11gは、下流側に向かうにつれて流路幅が狭くなっている。
合流部11cは、サンプル流路11とシース流路12とを連通させている。
整列流路11dは、サンプル流体A内の細胞を流通方向D1に沿って1列に整列させる。
細胞分取部11eは、整列流路11dで1列に整列された細胞のうち、分取したい目的細胞を分取する。
排出流路11fは、細胞分取部11eを通過したサンプル流体Aが流通する。排出流路11fを通過したサンプル流体Aは、排出流路11fの下流端よりも下流側に配置された試験管(不図示)等に排出される。
【0024】
サンプル流体供給部20のサンプル流体Aの流通方向D1の下流端は、サンプル流路11におけるサンプル流体Aの流通方向D1の上流端11aに連通している。サンプル流体供給部20は、サンプル流路11にサンプル流体Aを供給する。サンプル流体供給部20は、2個のサンプル用開口部21と、洗浄液供給用開口部24と、洗浄液排出用開口部25と、2個のサンプル用開口部21を連通させる連通路22と、洗浄流路26と、を備えている。
サンプル用開口部21は、第2部材5を厚さ方向に貫通している。サンプル用開口部21は、サンプル流路11にサンプル流体Aを供給する。2個のサンプル用開口部21は、流通方向D1の上流側から下流側に向かってフローセル10にサンプル流体Aを供給する順に並んで配置されている。2個のサンプル用開口部21のうち、流通方向D1における上流側に配置されたものを第1サンプル用開口部21aとする。2個のサンプル用開口部21のうち、流通方向D1における下流側に配置されたものを第2サンプル用開口部21bとする。第1サンプル用開口部21aと第2サンプル用開口部21bとは、連通路22により連通している。
第1サンプル用開口部21aは、
図1、
図2では、連通路22の流通方向D1における上流側の端部に設けられている。
第2サンプル用開口部21bは、
図1、
図2では、連通路22の流通方向D1における下流側の端部に設けられている。
2個のサンプル用開口部21のうち第1サンプル用開口部21aには、第2サンプル用開口部21bよりも先にフローセル10にサンプル流体Aが供給される。第1サンプル用開口部21aは第2サンプル用開口部21bよりも連通路22における流通方向D1の上流側に設けられている。
図1では、第1サンプル用開口部21aは、連通路22の端部に設けられている第2サンプル用開口部21bとは反対側の連通路22の端部に配置されている。
【0025】
第1サンプル用開口部21aには、第1チューブ23a(請求項のチューブに相当)が接続されている。第2サンプル用開口部21bには、第2チューブ23b(請求項のチューブに相当)が接続されている。サンプル流体Aは、第1チューブ23aまたは第2チューブ23bを通じてサンプル流体供給部20に供給される。
第1サンプル用開口部21aは、
図1、
図2では、サンプル流体供給部20を洗浄する洗浄液Gを排出する洗浄液排出用開口部25を兼ねている。第2サンプル用開口部21bは、
図1、
図2では、サンプル流体供給部20を洗浄する洗浄液Gを供給する洗浄液供給用開口部24を兼ねている。
連通路22は、流通方向D1に沿って延びている。連通路22は、サンプル流路11よりも太い。連通路22は、
図1、
図2では、両端に洗浄液供給用開口部24と洗浄液排出用開口部25とを有する洗浄流路26を兼ねている。洗浄液Gは、洗浄流路26を、洗浄液供給用開口部24から洗浄液排出用開口部25に流通する。
洗浄流路26の洗浄液Gの流通方向における上流端26aは、
図1、
図2では、サンプル流路11の上流端11aに連通している。
【0026】
シース流路12は、サンプル流路11に並んで形成されている。シース流路12は、
図1、
図2では、2本形成されている。2本のシース流路12は、サンプル流路11を挟んで対称に形成されている。シース流路12には、シース液Bが流通する。シース液Bは、整列流路11dで細胞を1列に整列させて連続的に流通させる。
シース液Bは、サンプル流体Aの流通方向D1の上流側から下流側に向かって、サンプル流体Aと同じ方向にシース流路12を流通する。
2本のシース流路12は、シース液Bの流通方向における上流端12a同士および下流端12b同士で連通している。
2本のシース流路12の下流端12bは、サンプル流路11の合流部11cに連通している。
シース液供給部13は、
図1、
図2では、2本のシース流路12の上流端12aに設けられている。シース液供給部13は、2本のシース流路12の上流端12aに連通している。シース液供給部13は、2本のシース流路12にシース液Bを供給する。
【0027】
変流用流体収容部14は、
図1、
図2では、サンプル流路11を挟んで一対配置されている。変流用流体収容部14は、サンプル流路11を挟んで対称に形成されている。変流用流体収容部14は、フローセル10を構成する第1部材4の壁部4aと、フローセル10を構成する第2部材5の壁部5aとの間に設けられている。変流用流体収容部14は、サンプル流路11の細胞分取部11eに連通している。変流用流体収容部14の内部には、変流用流体Eが収容されている。
変流用流体収容部14は、本体部30と、支持板33と、を有している。
【0028】
本体部30は、サンプル流体Aの流通方向D1に直交する方向に延びている。本体部30は、サンプル流路11の細胞分取部11eに連通している。本体部30は、細胞分取部11eに連通する先端部30aと、先端部30aから流通方向D1に直交する方向に延びる平行部30bとを有している。
先端部30aは、サンプル流体Aの流通方向D1に直交する方向に沿って、細胞分取部11eから離間するにつれて幅広となっている。平行部30bは、流通方向D1に直交する方向に幅が一定のまま延びている。
チャンバー31は、本体部30よりも細胞分取部11eから離間した位置に設けられている。チャンバー31は、第2部材5を厚さ方向に貫通している。チャンバー31は、平面視で円形状に形成されている。一対のチャンバー31のうち一方のチャンバー31には、圧電素子3によって蓋をされている。圧電素子3の中心は、チャンバー31の中心と一致している。一対のチャンバー31のうち他方のチャンバー31は、例えば透明なガラス板6によって蓋をされている。一対のチャンバー31の両方に圧電素子3が設置されていてもよい。
【0029】
変流用流体排泄路32は、チャンバー31から流通方向D1の上流側に向かって延びている。変流用流体排泄路32は、チャンバー31とは反対側の端部に変流用流体排泄部(不図示)を有している。変流用流体Eは、変流用流体収容部14に変流用流体Eを充填する際に、変流用流体排泄部から排泄される。整列流路11dから供給された変流用流体Eは、本体部30を流通してチャンバー31を通過し、過剰な変流用流体Eは、変流用流体排泄路32から排泄される。変流用流体Eは、本体部30において、圧電素子3側からサンプル流路11側に向かって、サンプル流体Aの流通方向D1に直交するように流通する。
以下、本体部30における、変流用流体Eの流通方向を流通方向D2とする。
【0030】
支持板33は、本体部30の内部に複数設けられる。支持板33は、変流用流体Eの流通方向D2に延びている。支持板33は、第1部材4の壁部4aと第2部材5の壁部5aとを接続している(
図1参照)。支持板33に沿って、変流用流体Eが流通する複数の変流用流路34が形成されている。
変流用流路34は、変流用流体Eの流通方向D2に延びている。
【0031】
分取用流路15は、変流用流体収容部14よりも、サンプル流体Aの流通方向D1における下流側に配置されている。分取用流路15は、サンプル流路11の細胞分取部11eに連通している。分取用流路15は、サンプル流路11を挟んで設けられる。分取用流路15は、サンプル流路11の排出流路11fに沿って、流通方向D1に延びている。分取用流路15の下流端よりも下流側には、分取された目的細胞を収集するための試験管(不図示)等が配置されている。
【0032】
(細胞情報取得装置)
細胞情報取得装置2は、サンプル流路11の整列流路11dに接続されている。細胞情報取得装置2は、例えばレーザー光源(不図示)や検出器(不図示)、制御部(不図示)等を備えている。細胞情報取得装置2は、サンプル流体Aに含まれる細胞にレーザー光を照射する。細胞情報取得装置2は、レーザー光の照射によって細胞から生じた散乱光や蛍光を検出器により検出して、例えば、細胞の形態や核、顆粒等の細胞内部構造に関する情報を取得する。細胞情報取得装置2は、取得した情報に基づき、サンプル流体Aに含まれる複数の細胞から分取したい目的細胞を制御部で判別する。なお、本実施形態に係る細胞情報取得装置2は、機械学習によって目的の細胞の特徴を学習する機能を有しているものがより望ましいが、これに限られない。細胞情報取得装置2は、例えば、整列流路11dを流通する細胞について個別に情報を取得できるものであればよい。このような細胞情報取得装置2として、JSANセルソーター(ベイバイオサイエンス株式会社製)等を用いることができる。
【0033】
(圧電素子)
圧電素子3は、円柱状に形成されている。圧電素子3は、チャンバー31の貫通孔に蓋をしている。平面視で、圧電素子3とチャンバー31の中心は一致するよう配置されている。支持板33の端部は、平面視でチャンバー31の外形に沿うように設けられている。
圧電素子3は、変流用流体収容部14の内部の液圧を変化させ、サンプル流体Aの流通方向D1と交差する方向(流通方向D2)に変流用流体Eを流通させる。圧電素子3は、細胞情報取得装置2と電気的に接続している。圧電素子3には、細胞情報取得装置2から例えばパルス状に電圧が印加される。圧電素子3は、印加された電圧に応じて変形する。変流用流体収容部14およびチャンバー31内の液圧は、圧電素子の3の変形によって変化する。変流用流体Eは、圧電素子3による変流用流体収容部14およびチャンバー31内の液圧の変化によって、流通方向D2に流通される。
【0034】
(セルソーターの使用方法およびフローセルの洗浄方法)
以下、
図1に基づいてセルソーター1の使用方法およびフローセル10の洗浄方法の一例について説明する。
セルソーター1の使用方法およびフローセル10の洗浄方法は、機器調整工程(請求項のサンプル流通工程に相当)と、機器調整工程後の洗浄工程と、学習工程(請求項のサンプル流通工程に相当)と、学習工程後の洗浄工程と、分取工程(請求項のサンプル流通工程に相当)とを備えている。セルソーター1の使用において、複数の測定サンプルを含むサンプル流体Aが、フローセル10を流通する。以下のセルソーター1の使用方法では、異なった測定サンプルを流通させる際に各工程の間に洗浄工程を備える例について説明を記載するが、これに限られない。フローセル10を流通するサンプル流体Aに含まれるサンプル数や、サンプルの性質によっては、その後の洗浄工程を省略することができる。
また以下の記載では、上記のサンプル流体Aには、機器調整工程で流通される標準ビーズ等の粒子を含む機器調整用サンプル流体A1と、学習工程で流通される学習用サンプルを含む学習用サンプル流体A2と、分取工程で流通される分取用サンプルを含む分取用サンプル流体A3とが含まれている例について説明するが、これに限られない。サンプル流体Aは、必要に応じて、分取工程の調整用のサンプルなどをさらに含むことができる。
【0035】
(機器調整工程)
機器調整工程では、サンプル流体供給部20の第1サンプル用開口部21aから機器調整用サンプルを含む機器調整用サンプル流体A1を供給する。機器調整工程は、使用するセルソーター1が測定に適した状態にあるかを確認し、必要な場合には事前に調整するための工程である。機器調整用サンプル流体A1には、例えば、粒子特性が予め分かっている標準ビーズ(例えば、後述の実施例で使用されている蛍光標識されたビーズ(蛍光ビーズ))が含まれている。機器調整用サンプル流体A1は、サンプル流体供給部20およびサンプル流路11を例えば10μL/minから30μL/minの流速で流通する。機器調整用サンプル流体A1に含まれる粒子は、サンプル流路11の整列流路11dで1列に整列して流通する。次いで、整列流路11dを流通する個々の粒子に関する情報が細胞情報取得装置2により取得され、セルソーター1の動作状態を確認することができる。
機器調整用サンプル流体A1の流通時、機器調整用サンプル流体A1が供給されていない第2サンプル用開口部21bは、閉口されている。
【0036】
(機器調整工程後の洗浄工程)
セルソーター1の使用において、機器調整工程から学習工程に移行する際、フローセル10を洗浄する必要がある。特に、機器調整用に用いられたサンプルが残留しやすいサンプル流体供給部20を洗浄する必要がある。
機器調整工程後の洗浄工程では、第2チューブ23bを通して第2サンプル用開口部21b(洗浄液供給用開口部24)からサンプル流体供給部20に洗浄液Gを供給する。洗浄液Gは、第2チューブ23b内で、サンプル流体供給部20に向かって加圧される。サンプル流体供給部20に供給された洗浄液Gは、第1サンプル用開口部21a(洗浄液排出用開口部25)から吸引される。これにより、洗浄液Gは、洗浄液供給用開口部24から洗浄液排出用開口部25へ洗浄流路26を通じて流通する。(即ち、サンプル流体供給部20は、機器調整用サンプル流体A1がサンプル流体供給部20を流通した方向とは逆の方向に洗浄される。)洗浄液Gは、例えばサンプル流体供給部20を0.1mL/minから10mL/minの流速で流通する。これにより、サンプル流体供給部20と、第1チューブ23aと、第2チューブ23bとが、確実に洗浄される。サンプル流体供給部20と第1チューブ23aとに残留していた機器調整用サンプル流体A1は、除去される。
【0037】
(学習工程)
学習工程では、まず、サンプル流体供給部20の第1サンプル用開口部21aから学習用サンプルを含む学習用サンプル流体A2を供給する。第1サンプル用開口部21aからサンプル流路11に学習用サンプル流体A2を流通させる。学習用サンプル流体A2には、例えば、学習用に用いられる細胞が含まれている。学習用サンプル流体A2は、サンプル流体供給部20およびサンプル流路11を例えば10μL/minから30μL/minの流速で流通する。学習用サンプル流体A2に含まれる細胞は、サンプル流路11の整列流路11dで1列に整列して流通する。
次いで、細胞情報取得装置2は、整列流路11dを流通する個々の細胞から情報を読み取り、目的細胞を判別する基準を学習する。本実施形態のセルソーター1では、本学習工程において、正解ラベル付けされた学習用の細胞サンプルを流通させて機械学習用の訓練データを取得することができる。本実施形態に係る細胞情報取得装置2は、機械学習によって目的の細胞の特徴を学習する機能を有しているものが望ましく、その場合、取得された訓練データを用いて目的細胞を判別するモデル(基準)が機械学習により作製される。
学習用サンプル流体A2の流通時、学習用サンプル流体A2が供給されていない第2サンプル用開口部21bは、閉口されている。
【0038】
(学習工程後の洗浄工程)
セルソーター1の使用において、学習工程から分取工程に移行する際、フローセル10を洗浄する必要がある。特に、学習用に用いられたサンプルが残留しやすいサンプル流体供給部20を洗浄する必要がある。
学習工程後の洗浄工程では、第2チューブ23bを通して第2サンプル用開口部21b(洗浄液供給用開口部24)からサンプル流体供給部20に洗浄液Gを供給する。洗浄液Gは、第2チューブ23b内で、サンプル流体供給部20に向かって加圧される。サンプル流体供給部20に供給された洗浄液Gは、第1サンプル用開口部21a(洗浄液排出用開口部25)から吸引される。これにより、洗浄液Gは、洗浄液供給用開口部24から洗浄液排出用開口部25へ洗浄流路26を通じて流通する。(即ち、サンプル流体供給部20は、学習用サンプル流体A2がサンプル流体供給部20を流通した方向とは逆の方向に洗浄される。)洗浄液Gは、例えばサンプル流体供給部20を0.1mL/minから10mL/minの流速で流通する。これにより、サンプル流体供給部20と、第1チューブ23aと、第2チューブ23bとは、必要量の溶液で確実に洗浄される。洗浄液Gの流速は、5mL/minから10mL/minの高速にするか、0.1mL/min程度の低速にするか、適宜選択可能である。サンプル流体供給部20と第1チューブ23aとに残留していた学習用サンプル流体A2は、除去される。
【0039】
(分取工程)
分取工程では、まず、サンプル流体供給部20の第2サンプル用開口部21bから分取用サンプルを含む分取用サンプル流体A3を供給する。第2サンプル用開口部21bからサンプル流路11に分取用サンプル流体A3を流通させる。分取用サンプル流体A3には、分取したい目的細胞を含む複数種の細胞が含まれている。分取用サンプル流体A3は、サンプル流体供給部20およびサンプル流路11を例えば10μL/minから30μL/minの流速で流通する。分取用サンプル流体A3に含まれる複数の細胞は、サンプル流路11の整列流路11dで1列に整列して流通する。
分取用サンプル流体A3の流通時、分取用サンプル流体A3が供給されていない第1サンプル用開口部21aは、閉口されている。
複数の細胞は、細胞情報取得装置2の検出可能域を1個ずつ並んで等速で通過する。このため、細胞情報取得装置2は、複数の細胞を1個ずつ検出できる。
次いで、細胞情報取得装置2は、学習工程で学習した目的細胞の判別基準により、整列流路11dを流通する多種の細胞から目的細胞を判別する。細胞情報取得装置2は、目的細胞を判別すると、例えばパルス状の電圧を圧電素子3に印加する。
【0040】
圧電素子3は、細胞情報取得装置2からパルス状の電圧を印加されると、変形する。圧電素子3が設けられた一方の変流用流体収容部14は、圧電素子3の変形により減圧される。変流用流体Eは、変流用流体収容部14が減圧されると、流通方向D1と直交する流通方向D2に沿って流通する。
変流用流体Eは、細胞分取部11eからチャンバー31に向かって流通し、変流用流路34内を通過する。変流用流体Eの流れは、細胞分取部11eに到達した目的細胞を、サンプル流路11を挟んで圧電素子3側の変流用流体収容部14側に引き込む。目的細胞は、流圧によって引き込まれて移動方向が流通方向D1から分取用流路15に沿う方向に変化する。目的細胞は、一対の分取用流路15のうち、サンプル流路11を挟んで圧電素子3側の分取用流路15に移動する。
【0041】
分取用流路15に移動した目的細胞は、分取用流路15の下流端で採取され、例えば下流に設置された試験管内に移動する。
以上の工程により、目的細胞は分取される。
本実施形態では、圧電素子3によって、変流用流体収容部14を減圧したが、加圧してもよい。この場合、変流用流体Eは、圧電素子3によって減圧した場合と逆方向に流通し、目的細胞は、サンプル流路11を挟んで圧電素子3とは反対側の分取用流路15に移動される。
なお上記説明には記載されていないが、セルソーター1の使用において分取工程に移行する際、分取工程の調整のために機器調製用のサンプルを流通させる場合がある。その場合には、分取工程調整用サンプル(以下、Delay調整用サンプルともいう)を含むサンプル流体Aを事前に流し、細胞をソートするタイミングを計るための調整を行ってもよい。その後、適宜、洗浄工程を行い、前記の分取工程を実施してもよい。
【0042】
(作用、効果)
上述の第1実施形態によれば、以下の作用および効果が得られる。
サンプル流体供給部20は、第1サンプル用開口部21a、第2サンプル用開口部21bを有している。これにより、機器調整用サンプル流体A1および学習用サンプル流体A2と分取用サンプル流体A3をそれぞれ第1サンプル用開口部21aおよび第2サンプル用開口部21bから供給できる。したがって、フローセル10は、サンプル流体供給部20における混流を防止しつつ、フローセル10に機器調整用サンプル流体A1、学習用サンプル流体A2および分取用サンプル流体A3を流通できる。
サンプル流体供給部20は、洗浄液Gを供給する洗浄液供給用開口部24と、サンプル流体供給部20から洗浄液Gを排出する洗浄液排出用開口部25と、を有している。これにより、サンプル流体供給部20において、洗浄液供給用開口部24から洗浄液排出用開口部25まで、機器調整用サンプル流体A1(および学習用サンプル流体A2)がサンプル流体供給部20を流通した方向とは逆の方向に、洗浄液Gを流通させることができる。したがって、サンプル流体供給部20を洗浄できるので、フローセル10は、サンプル流体A同士(即ち、機器調整用サンプル流体A1、学習用サンプル流体A2および分取用サンプル流体A3)の混流を防止できる。ここでのサンプル流体A同士の混流には、サンプル流体Aが、それより以前に流通させたサンプル流体Aに包含されていたサンプルにより汚染されることが含まれる。例えば、分取用サンプル流体A3が残留していた機器調整用サンプルあるいは学習用サンプルにより汚染されることが含まれる。この場合、複数のサンプルが混合して流通する。
したがって、フローセル10は、複数のサンプル流体A(即ち、機器調整用サンプル流体A1、学習用サンプル流体A2および分取用サンプル流体A3)に含まれる複数のサンプル(即ち、機器調整用サンプル、学習用サンプルおよび分取用サンプル)を連続してセルソーター1に流通する際に、複数のサンプルの混流を防止できる。
【0043】
第1サンプル用開口部21aおよび第2サンプル用開口部21bは、学習用サンプル流体A2および分取用サンプル流体A3を供給する順に並んで配置されている。これにより、学習用サンプル流体A2が供給された第1サンプル用開口部21aと、学習用サンプル流体A2が供給されていない第2サンプル用開口部21bと、を容易に区別できる。このため、分取用サンプル流体A3を、第1サンプル用開口部21aとは別の第2サンプル用開口部21bからサンプル流体供給部20に確実に供給できる。したがって、学習用サンプル流体A2と分取用サンプル流体A3との混流を防止できる。よって、フローセル10は、学習用サンプルおよび分取用サンプルを連続してセルソーター1に流通する際に学習用サンプルと分取用サンプルとの混流を防止できる。
【0044】
図1では、第1サンプル用開口部21aは、第2サンプル用開口部21bよりもサンプル流路11の上流端11aの反対側に配置されている。即ち、第2サンプル用開口部21bは、第1サンプル用開口部21aよりも洗浄液Gの上流側に配置されている。これにより、分取用サンプル流体A3が供給されない第1サンプル用開口部21aと、分取用サンプル流体A3が供給される第2サンプル用開口部21bと、を容易に区別できる。このため学習用サンプル流体A2等が供給された第1サンプル用開口部21aを確実に洗浄できる。したがって、分取用サンプル流体A3とそれ以外の機器調整用サンプル流体A1あるいは学習用サンプル流体A2との混流を防止できる。よって、フローセル10は、複数のサンプルを連続してセルソーター1に流通する際に分取用サンプルとそれ以外の機器調整用サンプルあるいは学習用サンプルとの混流を防止できる。
【0045】
第1サンプル用開口部21aおよび第2サンプル用開口部21bは、洗浄流路26に設けられている。これにより、洗浄流路26に洗浄液Gを流通させることで、洗浄液Gが第1サンプル用開口部21aおよび第2サンプル用開口部21bを通過するので、第1サンプル用開口部21aおよび第2サンプル用開口部21bをまとめて洗浄できる。したがって、サンプル流体供給部20を効率良く洗浄できるので、フローセル10は、機器調整用サンプル流体A1と学習用サンプル流体A2と分取用サンプル流体A3との混流を効率良く防止できる。よって、フローセル10は、複数のサンプルを連続してセルソーター1に流通する際に複数のサンプルの混流を防止できる。
【0046】
第2サンプル用開口部21bよりも先にサンプル流体A(即ち、機器調整用サンプル流体A1および学習用サンプル流体A2)が供給される第1サンプル用開口部21aは、洗浄液排出用開口部25となる。これにより、フローセル10は、第1サンプル用開口部21aに接続される第1チューブ23aの内部に洗浄液Gを流通できるので、第1チューブ23a内に残留した機器調整用サンプル流体A1および学習用サンプル流体A2を除去できる。加えて、除去されたサンプル流体A(即ち、機器調整用サンプル流体A1および学習用サンプル流体A2)は第1チューブ23aを通じてサンプル流体供給部20の外部に排出される。除去されたサンプル流体Aは、第1サンプル用開口部21a(即ち、洗浄液排出用開口部25)からサンプル流体供給部20の外部に排出される際に、フローセル10のサンプル流体供給部20およびサンプル流体供給部20から下流の流路を通過しない。したがって、サンプル流体供給部20を確実に洗浄できるので、分取用サンプル流体A3とそれ以外の機器調整用サンプル流体A1および学習用サンプル流体A2との混流を防止できる。よって、フローセル10は、複数のサンプルを連続してセルソーター1に流通する際に分取用サンプルとそれ以外の機器調整用サンプルあるいは学習用サンプルとの混流を防止できる。
この構成によれば、第1サンプル用開口部21aを確実に洗浄できる。したがって、分取用サンプル流体A3が第1サンプル用開口部21aで機器調整用サンプル流体A1および学習用サンプル流体A2と混流するのを防止できる。よって、フローセル10は、複数のサンプルを連続してセルソーター1に流通する際に分取用サンプルとそれ以外の機器調整用サンプルあるいは学習用サンプルとの混流を防止できる。
この構成によれば、第1サンプル用開口部21aの他に別途、洗浄液排出用開口部25を設ける必要がない。このため、サンプル流体供給部20を小型化できる。したがって、フローセル10を小型化できる。
【0047】
第1サンプル用開口部21aよりも後にサンプル流体Aが供給される第2サンプル用開口部21bは、洗浄液供給用開口部24となる。これにより、第2サンプル用開口部21bから洗浄液Gを供給できるので、サンプル流体供給部20に機器調整用サンプル流体A1あるいは学習用サンプル流体A2によって汚染されていない洗浄液Gを流通できる。したがって、汚染されていない洗浄液Gで第2サンプル用開口部21bを含むサンプル流体供給部20を洗浄できるので、分取用サンプル流体A3とそれ以外の機器調整用サンプル流体A1あるいは学習用サンプル流体A2との混流を防止できる。よって、複数のサンプルを連続してセルソーター1に流通する際に、フローセル10は、分取用サンプルとそれ以外の機器調整用サンプルあるいは学習用サンプルとの混流を防止できる。
この構成によれば、第2サンプル用開口部21bを確実に洗浄できる。したがって、分取用サンプル流体A3が第2サンプル用開口部21bで機器調整用サンプル流体A1あるいは学習用サンプル流体A2と混流するのを防止できる。よって、複数のサンプルを連続してセルソーター1に流通する際に、フローセル10は、分取用サンプルとそれ以外の機器調整用サンプルあるいは学習用サンプルとの混流を防止できる。
この構成によれば、第2サンプル用開口部21bの他に別途、洗浄液供給用開口部24を設ける必要がない。このため、サンプル流体供給部20を小型化できる。したがって、フローセル10を小型化できる。
【0048】
連通路22は、サンプル流路11よりも太い。これにより、連通路22の流体に対する流路抵抗を低減できるので、連通路22を高速かつ大量の液体により洗浄できる。したがって、サンプル流体供給部20をより確実に洗浄できるので、学習用サンプル流体A2と分取用サンプル流体A3との混流を防止できる。よって、フローセル10は、学習用サンプルおよび分取用サンプルを連続してセルソーター1に流通する際に学習用サンプルと分取用サンプルとの混流を防止できる。
【0049】
フローセル10の洗浄方法は、洗浄液供給用開口部24から洗浄液排出用開口部25へ洗浄液Gを流通させる洗浄工程を備えている。これにより、サンプル流体供給部20を洗浄できる。したがって、分取用サンプル流体A3と、機器調整用サンプル流体A1あるいは学習用サンプル流体A2との混流を防止できる。即ち、分取用サンプルを流通させる前に、機器調整用サンプルと学習用サンプルとをセルソーター1に流通させる場合でも、フローセル10は、分取用サンプルと、機器調整用サンプルあるいは学習用サンプルとの混流を防止できる。
【0050】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について図面を参照して説明する。
図3は、第2実施形態に係るサンプル流体供給部20の拡大平面図である。
第1実施形態では、サンプル流体供給部20は、第1サンプル用開口部21aおよび第2サンプル用開口部21bの2個の開口部(サンプル用開口部)21を備えている。これに対して第2実施形態では、サンプル流体供給部20は、4個の開口部7を備えている点で、第1実施形態と異なる。第2実施形態において、上述した第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略または簡略化する。
【0051】
図3に示すように、サンプル流体供給部20は、4個の開口部7を備えている。4個の開口部7のうち1個の開口部7は、第1サンプル用開口部21aである。4個の開口部7のうち1個の開口部7は、第2サンプル用開口部21bである。4個の開口部7のうち1個の開口部7は、洗浄液供給用開口部24である。4個の開口部7のうち1個の開口部7は、洗浄液排出用開口部25である。
4個の開口部7は、サンプル流路11の上流端11a側に近い側から順に、洗浄液供給用開口部24、第2サンプル用開口部21b、第1サンプル用開口部21a、洗浄液排出用開口部25の順で配置されている。
図3に示す通り、第2サンプル用開口部21bよりも先にサンプル流体Aが供給される第1サンプル用開口部21aは、洗浄液排出用開口部25よりも、洗浄液供給用開口部24から洗浄液排出用開口部25に流通する洗浄液Gの流れにおいて、上流側に配置されている。第2サンプル用開口部21bは、洗浄液供給用開口部24よりも、洗浄液供給用開口部24から洗浄液排出用開口部25に流通する洗浄液Gの流れにおいて、下流側に配置されている。
【0052】
(セルソーターの使用方法およびフローセルの洗浄方法)
以下、本実施形態に係るセルソーター1の使用方法およびフローセル10の洗浄方法のうち洗浄工程について説明する。
(洗浄工程)
機器調整工程または学習工程終了後、洗浄液供給用開口部24からサンプル流体供給部20に洗浄液Gを供給する。洗浄液Gは、サンプル流体供給部20に向かって加圧される。サンプル流体供給部20に供給された洗浄液Gは、洗浄液排出用開口部25から吸引される。これにより、洗浄液Gは、洗浄液供給用開口部24から洗浄液排出用開口部25へ流通する。洗浄液Gは、例えばサンプル流体供給部20を0.1mL/minから10mL/minの流速で流通する。これにより、サンプル流体供給部20は、必要量の溶液で確実に洗浄される。
【0053】
(作用、効果)
上述の第2実施形態によれば、以下の作用および効果が得られる。
第1サンプル用開口部21aよりも後にサンプル流体Aが供給される第2サンプル用開口部21bは、洗浄液供給用開口部24よりも、洗浄液供給用開口部24から洗浄液排出用開口部25に流通する洗浄液Gの流れにおいて、下流側に配置されている。これにより、洗浄液Gは第2サンプル用開口部21bを通過するので、第2サンプル用開口部21bを洗浄液Gにより確実に洗浄できる。したがって、分取用サンプル流体A3が第2サンプル用開口部21bに残留する機器調整用サンプル流体A1あるいは学習用サンプル流体A2と混流するのを防止できる。よって、複数のサンプルを連続してセルソーター1に流通する際に分取用サンプルとそれ以外の機器調整用サンプルおよび学習用サンプルとの混流を防止できる。
【0054】
さらに、第2サンプル用開口部21bよりも先にサンプル流体Aが供給される第1サンプル用開口部21aは、洗浄液排出用開口部25よりも、洗浄液供給用開口部24から洗浄液排出用開口部25に流通する洗浄液Gの流れにおいて、上流側に配置されている。これにより、洗浄液Gは第1サンプル用開口部21aを通過するので、第1サンプル用開口部21aを洗浄液Gにより確実に洗浄できる。第2サンプル用開口部21bは第1サンプル用開口部21aよりも、洗浄液供給用開口部24から洗浄液排出用開口部25に流通する洗浄液Gの流れにおいて、上流側に配置されている。これにより、第1サンプル用開口部21aを洗浄した洗浄液Gは、第2サンプル用開口部21bを通過せずに洗浄液排出用開口部25より排泄される。したがって、分取用サンプル流体A3が第1サンプル用開口部21aに残留する機器調整用サンプル流体A1あるいは学習用サンプル流体A2と混流するのを防止できる。よって、複数のサンプルを連続してセルソーター1に流通する際に分取用サンプルとそれ以外の機器調整用サンプルおよび学習用サンプルとの混流を防止できる。
【0055】
(セルソーターの使用方法およびフローセルの洗浄方法の変形例)
以下、第2実施形態におけるセルソーター1の使用方法およびフローセル10の洗浄方法の変形例について説明する。
図4は、第2実施形態の変形例に係るサンプル流体供給部20の拡大平面図である。
上述の第2実施形態では、サンプル流体供給部20は、第1サンプル用開口部21aおよび第2サンプル用開口部21bの他に別途、洗浄液供給用開口部24と洗浄液排出用開口部25とを有していた。これに対して、
図4に示すように、4個の開口部7を全てサンプル用開口部21としてもよい。本第2実施形態の変形例において、上述した第1実施形態または第2実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略または簡略化する。
4個のサンプル用開口部21に、サンプル流路11の上流端11aから離間している順に1番目、2番目、3番目、4番目と番号をふる。1番目のサンプル用開口部21は、上流端11aから最も離間している。4番目のサンプル用開口部21は、上流端11aに最も接近している。1番目から3番目のサンプル用開口部21は、それぞれ異なる学習用サンプル流体A2(それぞれ第1の学習用サンプル流体A2a、第2の学習用サンプル流体A2b、第3の学習用サンプル流体A2cとする)が供給される第1サンプル用開口部21aである(それぞれ21a1、21a2、21a3とする)。具体的に、1番目の第1サンプル用開口部21a(21a1)には、学習用サンプル流体A2のうち第1の学習用サンプル流体A2aが供給される。2番目の第1サンプル用開口部21a(21a2)には、学習用サンプル流体A2のうち第2の学習用サンプル流体A2bが供給される。3番目の第1サンプル用開口部21a(21a3)には、学習用サンプル流体A2のうち第3の学習用サンプル流体A2cが供給される。4番目のサンプル用開口部21は、分取用サンプル流体A3が供給される第2サンプル用開口部21bである。1番目から3番目のサンプル用開口部21(第1サンプル用開口部21a1、21a2、21a3)は、洗浄液排出用開口部25となる。4番目のサンプル用開口部21(第2サンプル用開口部21b)は、洗浄液供給用開口部24となる。
セルソーター1の使用方法およびフローセル10の洗浄方法は、機器調整工程と、第1洗浄工程(請求項の洗浄工程に相当)と、第1学習工程と、第2洗浄工程(請求項の洗浄工程に相当)と、第2学習工程と、第3洗浄工程(請求項の洗浄工程に相当)と、第3学習工程と、第4洗浄工程(請求項の洗浄工程に相当)と、分取工程とを備えている。
(機器調整工程)
機器調整工程では、1番目のサンプル用開口部21(第1サンプル用開口部21a1)から機器調整用サンプル流体A1を供給して流通させる。機器調整用サンプル流体A1の流通時、機器調整用サンプル流体A1が供給されていない他の第1サンプル用開口部21aは、閉口されている。第2サンプル用開口部21bは、閉口されている。機器調整用サンプル流体A1には、機器調整用サンプルが含まれている。機器調整用サンプル流体A1に含まれる粒子は、サンプル流路11の整列流路11dで1列に整列して流通する。次いで、整列流路11dを流通する個々の粒子に関する情報が細胞情報取得装置2により取得され、セルソーター1の動作状態を確認することができる。
機器調整用サンプル流体A1の流通時、機器調整用サンプル流体A1が供給されていない他の第1サンプル用開口部21aは、閉口されている。第2サンプル用開口部21bは、閉口されている。
(第1洗浄工程)
第1洗浄工程では、機器調整用サンプル流体A1が供給された1番目のサンプル用開口部21(第1サンプル用開口部21a1)を洗浄液排出用開口部25として、洗浄液Gを流通させる。洗浄液Gの流通時、洗浄液排出用開口部25とされていない他の第1サンプル用開口部21aは、閉口されている。
【0056】
(第1学習工程)
第1学習工程では、1番目のサンプル用開口部21(第1サンプル用開口部21a1)から第1の学習用サンプル流体A2aを供給して流通させる。学習用サンプル流体A2aの流通時、学習用サンプル流体A2aが供給されていない他の第1サンプル用開口部21aは、閉口されている。第2サンプル用開口部21bは、閉口されている。学習用サンプル流体A2aには、第1の学習用細胞が含まれている。細胞情報取得装置2は、第1の学習用細胞を測定し情報を学習する。
(第2洗浄工程)
第2洗浄工程では、第1の学習用細胞が含まれている学習用サンプル流体A2aが供給された第1サンプル用開口部21a1を洗浄液排出用開口部25として、洗浄液Gを流通させる。洗浄液Gの流通時、洗浄液排出用開口部25とされていない他の第1サンプル用開口部21aは、閉口されている。
【0057】
(第2学習工程)
第2学習工程では、2番目のサンプル用開口部21(第1サンプル用開口部21a2)から第2の学習用サンプル流体A2bを供給して流通させる。学習用サンプル流体A2bの流通時、学習用サンプル流体A2bが供給されていない他の第1サンプル用開口部21aは、閉口されている。第2サンプル用開口部21bは、閉口されている。学習用サンプル流体A2bには、第2の学習用細胞が含まれている。細胞情報取得装置2は、第2の学習用細胞を測定し情報を学習する。
(第3洗浄工程)
第3洗浄工程では、第2の学習用細胞が含まれている学習用サンプル流体A2bが供給された2番目のサンプル用開口部21(第1サンプル用開口部21a2)を洗浄液排出用開口部25として、洗浄液Gを流通させる。洗浄液Gの流通時、洗浄液排出用開口部25とされていない他の第1サンプル用開口部21aは、閉口されている。
【0058】
(第3学習工程)
第3学習工程では、3番目のサンプル用開口部21(第1サンプル用開口部21a3)から第3の学習用サンプル流体A2cを供給して流通させる。学習用サンプル流体A2cの流通時、学習用サンプル流体A2cが供給されていない他の第1サンプル用開口部21aは、閉口されている。第2サンプル用開口部21bは、閉口されている。学習用サンプル流体A2cには、第3の学習用細胞が含まれている。細胞情報取得装置2は、第3の学習用細胞を測定し情報を学習する。
(第4洗浄工程)
第4洗浄工程では、第3の学習用細胞が含まれている学習用サンプル流体A2cが供給された3番目のサンプル用開口部21(第1サンプル用開口部21a3)を洗浄液排出用開口部25として、洗浄液Gを流通させる。洗浄液Gの流通時、洗浄液排出用開口部25とされていない他の第1サンプル用開口部21aは、閉口されている。
【0059】
(分取工程)
分取工程では、4番目のサンプル用開口部21(第2サンプル用開口部21b)から分取用サンプル流体A3を供給して流通させる。分取用サンプル流体A3には、第1の学習用細胞と第2の学習用細胞と第3の学習用細胞とが含まれている。分取用サンプル流体A3の流通時、3個の第1サンプル用開口部21aは、閉口されている。
細胞情報取得装置2は、第1学習工程、第2学習工程および第3学習工程で学習し作成した予測モデルに基づいて、サンプル流路11の整列流路11dを通過した細胞を、第1の学習用細胞か第2の学習用細胞か第3の学習用細胞か判別する。
細胞情報取得装置2は、例えば第1の学習用細胞が目的細胞である場合、細胞を第1の学習用細胞と判別すると、圧電素子3に電圧を印加する。圧電素子3は、変流用流体収容部14を加圧する。これにより、細胞は、サンプル流路11を挟んで圧電素子3とは反対側の分取用流路15に移動する。
細胞情報取得装置2は、例えば第2の学習用細胞が目的細胞でない場合、細胞を第2の学習用細胞と判別すると、圧電素子3に電圧を印加しない。このため、細胞の流通方向は変化しないので、細胞は排出流路11fを流通する。
細胞情報取得装置2は、例えば第3の学習用細胞がもう1つの目的細胞である場合、細胞を第3の学習用細胞と判別すると、圧電素子3に電圧を印加する。圧電素子3は、変流用流体収容部14を減圧する。これにより、細胞は、サンプル流路11を挟んで圧電素子3側の分取用流路15に移動する。
以上の工程により、第1の学習用細胞と第2の学習用細胞と第3の学習用細胞とが分離され、目的とする細胞が分取される。
【0060】
(作用、効果)
上述のセルソーター1の使用方法およびフローセル10の洗浄方法の変形例によれば、以下の作用および効果が得られる。
4個の開口部7のうち3個の開口部7は、第1サンプル用開口部21aである。これにより、3個の第1サンプル用開口部21aからそれぞれ別の学習用サンプル流体A2を供給できる。このため、複数の学習用サンプル流体A2を流通できる。
セルソーター1の使用方法およびフローセル10の洗浄方法は、機器調整工程と第1洗浄工程と第1学習工程と第2洗浄工程と第2学習工程と第3洗浄工程と第3学習工程と第4洗浄工程と分取工程とを備えている。これにより、機器調整工程と第1学習工程との間、第1学習工程と第2学習工程との間、第2学習工程と第3学習工程との間および第3学習工程と分取工程との間で、それぞれサンプル流体供給部20を洗浄できる。このため、複数の学習用サンプル流体A2同士の混流および機器調整用サンプル流体A1と複数の学習用サンプル流体A2と分取用サンプル流体A3との混流を防止できる。
したがって、本変形例によれば、複数の学習用サンプル流体A2を流通できるとともに、複数の学習用サンプル流体A2同士の混流および機器調整用サンプル流体A1と複数の学習用サンプル流体A2と分取用サンプル流体A3との混流を防止できる。よって、機器調整用サンプルと複数の学習用サンプルと分取用サンプルとを連続してセルソーター1に流通する際に、本変形例のフローセル10によれば、複数の学習用サンプル同士および機器調整用サンプルと複数の学習用サンプルと分取用サンプルとの混流を防止できる。
第2実施形態では、サンプル流体供給部20は、4個の開口部7を有しているとしたが、開口部7の個数は、適宜選択可能である。
【0061】
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態について図面を参照して説明する。
図5は、第3実施形態に係るサンプル流体供給部20の拡大平面図である。
第1実施形態および第2実施形態では、洗浄流路26はその一方の端においてサンプル流路11に連通している。例えば
図1あるいは
図2に記載される第1実施形態では、洗浄流路26は洗浄液Gの流通方向における上流端26aにおいてサンプル流路11の上流端11aに連通している。しかしながら、
図5の例では、洗浄流路26は洗浄液Gの流通方向における中間部でサンプル流路11の上流端11aに連通している点で上述の第1実施形態の例とは異なる。第3実施形態の説明において、上述した第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略または簡略化する。
図5に示すように、洗浄流路26には、洗浄液Gの流通方向における上流端26aの位置に洗浄液供給用開口部24が配置され、その反対側の端に洗浄液排出用開口部25が配置されている。洗浄流路26は、サンプル流体供給部20を兼ねている。洗浄流路26には、洗浄液Gの流通方向における上流端26aの位置に第2サンプル用開口部21bが配置され、その反対側の端に第1サンプル用開口部21aが配置されている。また、前記サンプル流体供給部20は、連通路22の中間部でサンプル流路11の上流端11aに連通している。
図5では、第2サンプル用開口部21bが図の右側に配置され、第1サンプル用開口部21aが図の左側に配置されている。しかしながら、第1サンプル用開口部21a(洗浄液排出用開口部25を兼ねる)と第2サンプル用開口部21b(洗浄液供給用開口部24を兼ねる)の位置が逆になってもよい。
【0062】
(第3実施形態の変形例)
以下、第3実施形態の変形例について図面を参照して説明する。
図6は、第3実施形態の変形例に係るサンプル流体供給部20の拡大平面図である。
第3実施形態では、サンプル流体供給部20は、第1サンプル用開口部21aおよび第2サンプル用開口部21bの2つのサンプル用開口部21を備えていた。これに対して
図6に示す第3実施形態の変形例では、サンプル流体供給部20は、全てをサンプル用開口部21とする3個の開口部7を備えている例が記載されている。以降の変形例の説明では、上述した第3実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略または簡略化する。
図6に示すように、サンプル流体供給部20は、3個の開口部7を備えている。連通路22は、サンプル流路11の上流端11aから流通方向D1の上流側に向かって、3本延びている。3本の連通路22は、対応する3個の開口部7と連通している。
【0063】
(セルソーターの使用方法およびフローセルの洗浄方法)
上述の通り
図6の説明では、3個の開口部7が全てサンプル用開口部21として使用される例が記載されている。
この場合、まず、3個のサンプル用開口部21について、サンプル流体Aを供給する順番を任意に決定する。3個のサンプル用開口部21のうち、3番目にサンプル流体Aを供給するサンプル用開口部21を洗浄液供給用開口部24とする。
次いで、3個のサンプル用開口部21のうち、1番目にサンプル流体Aを供給するサンプル用開口部21からサンプル流体Aを供給する。
次いで、1番目にサンプル流体Aを供給するサンプル用開口部21を洗浄液排出用開口部25として、洗浄液Gを流通させる。これにより、サンプル流体供給部20のうち、サンプル流体Aに汚染された部分が洗浄される。
3個のサンプル用開口部21のうち、2番目、3番目にサンプル流体Aを供給するサンプル用開口部21についても、同様の手順で順にサンプル流体Aを供給し、洗浄液Gを流通させて洗浄する。
本変形例では、サンプル流体供給部20は、一例として3個の開口部7を有しているとした。しかしながら、サンプル流体供給部20に設置される開口部7の個数は、適宜選択可能である。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0065】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせても構わない。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を適用した実施例について、図を参照しながら説明する。
図7は、後述するフローセル110における、サンプル流体供給部20(第1サンプル用開口部21a及び第2サンプル用開口部21b)の拡大概略図である。
図7は、
図2に示すVIIで囲まれた部分を示す。
図8は、後述するフローセル120における開口部121の拡大概略図である。
図8に示すフローセル120は、
図2に示すVIIで囲まれた部分を変更したフローセルである。
図7および
図8に示す箇所以外は、
図2に示すフローセル10(セルソーター1)と同様の構成を有するため、説明を省略する。
【0067】
本発明を適用したフローセルを評価するために、洗浄試験を行った。
実施例1には、洗浄液供給用開口部24と洗浄液排出用開口部25とが設けられた洗浄機構を有するフローセル110を用いた。フローセル110は、
図7に示す通り、洗浄液供給用開口部24が、洗浄液排出用開口部25より、サンプル流体Aの流れに対して下流側に配置されている構成を有していた。洗浄液供給用開口部24と、洗浄液排出用開口部25とは、サンプル流体供給部20により連通していた。また、フローセル110は、
図7に示す通り、サンプル流路11の一端部は、サンプル流体供給部20と連通していた。
【0068】
フローセル110は、
図1、
図2に記載のフローセル10の例と同じく、サンプルを流し入れる第2サンプル用開口部21bが、洗浄液供給用開口部24を兼ねていた。第2サンプル用開口部21b(洗浄液供給用開口部24)は、テストポートとして機能していた。テストポートとは、分取用サンプルを送液するためのポートであるが、本洗浄試験では、テストポートから細胞を含まないシース液を流して本発明のフローセルの洗浄効果を評価した。
また、フローセル110では、キャリブレーション用の蛍光ビーズと細胞(Delay調整用サンプル及び学習用サンプル)を流し入れる第1サンプル用開口部21aが、洗浄液排出用開口部25を兼ねていた。第1サンプル用開口部21a(洗浄液排出用開口部25)は、キャリブレーションポートとして機能していた。キャリブレーションポートとは、Delay調整用サンプル及び学習用サンプルを送液するためのポートである。
【0069】
比較例1には、洗浄機構を有しておらず、開口部121がキャリブレーションポート(第1サンプル用開口部21a)とテストポート(第2サンプル用開口部21b)とを兼ねるフローセル120を用いた。そのため、
図8において、第1サンプル用開口部21a及び第2サンプル用開口部21bは、同一の開口部121を示している。
【0070】
<実施例1>
フローセル110に対して、以下のサンプル流通工程S11および洗浄工程S12を行い、実施例1を得た。
【0071】
(サンプル流通工程(機器調整工程):S11)
フローセル110に流通させるサンプル流体として、蛍光ビーズ(Bay Bioscience社製、SPHERO FP-10052-2 Fluorescent Yellow Particles, 10.0-14.0μm)とRH30細胞(ヒト横紋筋肉腫細胞株)を使用した。
【0072】
具体的に、フローセル110に対して、洗浄液排出用開口部25から、
図7における矢印A方向に、キャリブレーション用の蛍光ビーズを20万個程度流通させた。続けて、フローセル110に対して、洗浄液排出用開口部25から、
図7における矢印A方向に、Delay調整用サンプルおよび学習用サンプルとして、RH30細胞を合計50万個程度流通させた。
【0073】
(洗浄工程:S12)
上述のサンプル流通工程の後、洗浄用のシース液(洗浄液G)20mLを、洗浄液供給用開口部24から洗浄液排出用開口部25に流し(
図7における矢印G方向)、サンプル流体供給部20を洗浄した。
【0074】
<比較例1>
フローセル120に対して、以下のサンプル流通工程S21を行い、比較例1を得た。
【0075】
(サンプル流通工程(機器調整工程):S21)
サンプル流通工程S21では、フローセル120に対して、フローセル110で使用したサンプル流体と同様のサンプル流体を用いた。
具体的に、フローセル120に対して、開口部121から、
図8における矢印A方向に、キャリブレーション用の蛍光ビーズを20万個程度流通させた。続けて、フローセル120のサンプル流路11に対して、開口部121から、
図8における矢印A方向に、Delay調整用サンプルおよび学習用サンプルとして、RH30細胞を合計50万個程度流通させた。
【0076】
<洗浄試験の評価>
本洗浄試験では、フローセル110及びフローセル120をJSANセルソーター(ベイバイオサイエンス株式会社製)に組み込み、残留ビーズと残留細胞の総数の検出を行った。
より具体的に、フローセル110に対しては、洗浄工程S12の後に、サンプル流路11に対して、洗浄液供給用開口部24から細胞を含まないシース液を1mL流し、
図1における整列流路11dに流れてくる残留ビーズと残留細胞の総数をJSANセルソーターで検出した。これにより、フローセル110内の洗浄試験の評価をした。
フローセル120に対しては、サンプル流通工程S21の後に、サンプル流路11に対して、第2サンプル用開口部21bから細胞を含まないシース液を1mL流し、
図1における整列流路11dに流れてくる残留ビーズと残留細胞の総数をJSANセルソーターで検出した。これにより、フローセル120内の洗浄試験の評価をした。
その結果、実施例1から検出された残留ビーズと残留細胞の総数は、0個であった。
一方、比較例1から検出された残留ビーズと残留細胞の総数は、29493個であった。
【0077】
上述の通り、本発明を適用したフローセル110およびフローセル110の洗浄方法によれば、サンプル流体供給部20に残留するサンプル流体(残留ビーズおよび残留細胞)が検出されず、複数のサンプルの混流を防止できることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、複数のサンプルを連続してフローサイトメータに流通する際に、複数のサンプルの混流を防止できるフローサイトメータ用フローセルを提供できる。本発明によれば、複数サンプルの混流を防止できるフローサイトメータ用フローセルの洗浄方法を提供できる。
【符号の説明】
【0079】
10…フローセル(フローサイトメータ用フローセル)、11…サンプル流路、11a…上流端、20…サンプル流体供給部、21…サンプル用開口部、22…連通路、23a…第1チューブ(チューブ)、23b…第2チューブ(チューブ)、24…洗浄液供給用開口部、25…洗浄液排出用開口部、26…洗浄流路、A…サンプル流体、E…変流用流体、G…洗浄液