IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人土木研究所の特許一覧

特許7541775凍結防止剤自動散布システム、自動散布制御プログラム、自動散布制御方法および自動散布制御装置
<>
  • 特許-凍結防止剤自動散布システム、自動散布制御プログラム、自動散布制御方法および自動散布制御装置 図1
  • 特許-凍結防止剤自動散布システム、自動散布制御プログラム、自動散布制御方法および自動散布制御装置 図2
  • 特許-凍結防止剤自動散布システム、自動散布制御プログラム、自動散布制御方法および自動散布制御装置 図3
  • 特許-凍結防止剤自動散布システム、自動散布制御プログラム、自動散布制御方法および自動散布制御装置 図4
  • 特許-凍結防止剤自動散布システム、自動散布制御プログラム、自動散布制御方法および自動散布制御装置 図5
  • 特許-凍結防止剤自動散布システム、自動散布制御プログラム、自動散布制御方法および自動散布制御装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】凍結防止剤自動散布システム、自動散布制御プログラム、自動散布制御方法および自動散布制御装置
(51)【国際特許分類】
   E01H 10/00 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
E01H10/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023133234
(22)【出願日】2023-08-18
【審査請求日】2023-08-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】301031392
【氏名又は名称】国立研究開発法人土木研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110004392
【氏名又は名称】弁理士法人佐川国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】大廣 智則
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-513451(JP,A)
【文献】特開2002-048878(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2023-0046090(KR,A)
【文献】特許第6830212(JP,B2)
【文献】特開2021-092412(JP,A)
【文献】特開平11-248439(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2380852(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結防止剤散布装置による自動散布を制御する自動散布制御装置と、前記自動散布制御装置がアクセス可能な自動散布制御サーバとからなる凍結防止剤自動散布システムであって、
前記自動散布制御サーバは、
所定地点または所定区間における路面の状態を予測した路面予測情報を取得する路面予測情報取得部と、
凍結防止剤を散布する散布区間と、凍結防止剤を散布しない非散布区間とが事前に設定された基本散布パターンを取得する基本散布パターン取得部と、
前記路面予測情報に基づいて、前記基本散布パターンで設定されている前記散布区間と前記非散布区間とを修正した修正散布パターンを作成する修正散布パターン作成部と、
を有し、
前記修正散布パターン作成部は、前記基本散布パターンにおける非散布区間のうち、事故が少ない直線区間は、前記路面予測情報によらず、非散布区間のままとし、
前記自動散布制御装置は、
前記基本散布パターンまたは前記修正散布パターンに基づいて、前記凍結防止剤散布装置に凍結防止剤の自動散布を実行させる自動散布処理部を有する、凍結防止剤自動散布システム。
【請求項2】
前記修正散布パターン作成部は、
前記基本散布パターンにおける前記散布区間内に、前記路面予測情報により乾燥・湿潤状態と予測される箇所または凍結リスクが低いと予測される箇所がある場合、当該箇所を非散布区間に変更し、前記修正散布パターンとして作成する、請求項1に記載の凍結防止剤自動散布システム。
【請求項3】
前記修正散布パターン作成部は、
前記基本散布パターンにおける前記非散布区間内に、前記路面予測情報により凍結状態と予測される箇所または凍結リスクが高いと予測される箇所がある場合、当該箇所を散布区間に変更し、前記修正散布パターンとして作成する、請求項1に記載の凍結防止剤自動散布システム。
【請求項4】
前記自動散布制御装置は、
前記基本散布パターンおよび前記修正散布パターンのうち、いずれの散布パターンを使用するかの選択指示を表示・入力手段または音声入力手段を介して受け付ける選択指示受付部を有している、請求項1に記載の凍結防止剤自動散布システム。
【請求項5】
前記自動散布制御装置によって制御され凍結防止剤を散布する前記凍結防止剤散布装置と、前記自動散布制御装置および前記凍結防止剤散布装置を搭載する凍結防止剤散布車とを備える、請求項1から請求項4のいずれかに記載の凍結防止剤自動散布システム。
【請求項6】
凍結防止剤散布装置による自動散布を制御する自動散布制御プログラムであって、
所定地点または所定区間における路面の状態を予測した路面予測情報を取得する路面予測情報取得部と、
凍結防止剤を散布する散布区間と、凍結防止剤を散布しない非散布区間とが事前に設定された基本散布パターンを取得する基本散布パターン取得部と、
前記路面予測情報に基づいて、前記基本散布パターンで設定されている前記散布区間と前記非散布区間とを修正した修正散布パターンを作成する修正散布パターン作成部と、
前記基本散布パターンまたは前記修正散布パターンに基づいて、前記凍結防止剤散布装置に凍結防止剤の自動散布を実行させる自動散布処理部と
してコンピュータを機能させ
前記修正散布パターン作成部は、前記基本散布パターンにおける非散布区間のうち、事故が少ない直線区間は、前記路面予測情報によらず、非散布区間のままとする、自動散布制御プログラム。
【請求項7】
凍結防止剤散布装置による自動散布を制御する自動散布制御方法であって、
所定地点または所定区間における路面の状態を予測した路面予測情報を取得する路面予測情報取得ステップと、
凍結防止剤を散布する散布区間と、凍結防止剤を散布しない非散布区間とが事前に設定された基本散布パターンを取得する基本散布パターン取得ステップと、
前記路面予測情報に基づいて、前記基本散布パターンで設定されている前記散布区間と前記非散布区間とを修正した修正散布パターンを作成する修正散布パターン作成ステップと、
前記基本散布パターンまたは前記修正散布パターンに基づいて、前記凍結防止剤散布装置に凍結防止剤の自動散布を実行させる自動散布処理ステップと、
を有し、
前記修正散布パターン作成ステップでは、前記基本散布パターンにおける非散布区間のうち、事故が少ない直線区間は、前記路面予測情報によらず、非散布区間のままとする、自動散布制御方法。
【請求項8】
凍結防止剤散布装置による自動散布を制御する自動散布制御装置であって、
所定地点または所定区間における路面の状態を予測した路面予測情報を取得する路面予測情報取得部と、
凍結防止剤を散布する散布区間と、凍結防止剤を散布しない非散布区間とが事前に設定された基本散布パターンを取得する基本散布パターン取得部と、
前記路面予測情報に基づいて、前記基本散布パターンで設定されている前記散布区間と前記非散布区間とを修正した修正散布パターンを作成する修正散布パターン作成部と、
前記基本散布パターンまたは前記修正散布パターンに基づいて、前記凍結防止剤散布装置に凍結防止剤の自動散布を実行させる自動散布処理部と、
を有し、
前記修正散布パターン作成部は、前記基本散布パターンにおける非散布区間のうち、事故が少ない直線区間は、前記路面予測情報によらず、非散布区間のままとする、自動散布制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結防止剤散布装置によって凍結防止剤を自動散布するための凍結防止剤自動散布システム、自動散布制御プログラム、自動散布制御方法および自動散布制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、凍結防止剤を自動的に散布するための技術が知られている。例えば、特開2015-090037号公報には、散布区間を設定する散布区間設定部と、路面状態データを取得する路面状態データ取得部と、散布条件データを取得する散布条件データ取得部と、単位区間ごとの散布条件を決定する散布条件決定部と、散布区間に散布する凍結防止剤の総散布量を事前に算出する総散布量事前算出部と、現在位置データを取得する現在位置データ取得部と、現在位置に対応する単位区間を特定する単位区間特定部と、凍結防止剤散布装置に対して、単位区間ごとに前記散布条件を出力する散布条件出力部とを有する凍結防止剤自動散布制御装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-090037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された発明を含め、従来の自動散布技術によれば、事前に設定された箇所や区間においてのみ凍結防止剤が散布されている。このため、路面状況が時々刻々と変化する路面においては、事前に設定した散布箇所以外の箇所にも散布が必要となったり、事前に設定した散布箇所には散布が不要となる場合もあり、凍結防止剤の散布効果を無駄なく最大化する散布ができていないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、路面予測情報に基づいて、凍結防止剤を必要とする路面に対して高精度に凍結防止剤を自動散布し、凍結防止剤の散布効果を無駄なく最大化することができる凍結防止剤自動散布システム、自動散布制御プログラム、自動散布制御方法および自動散布制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る凍結防止剤自動散布システムは、路面予測情報に基づいて、凍結防止剤を必要とする路面に対して高精度に凍結防止剤を自動散布し、凍結防止剤の散布効果を無駄なく最大化するという課題を解決するために、凍結防止剤散布装置による自動散布を制御する自動散布制御装置と、前記自動散布制御装置がアクセス可能な自動散布制御サーバとからなる凍結防止剤自動散布システムであって、前記自動散布制御サーバは、所定地点または所定区間における路面の状態を予測した路面予測情報を取得する路面予測情報取得部と、凍結防止剤を散布する散布区間と、凍結防止剤を散布しない非散布区間とが事前に設定された基本散布パターンを取得する基本散布パターン取得部と、前記路面予測情報に基づいて、前記基本散布パターンで設定されている前記散布区間と前記非散布区間とを修正した修正散布パターンを作成する修正散布パターン作成部と、を有し、前記自動散布制御装置は、前記基本散布パターンまたは前記修正散布パターンに基づいて、前記凍結防止剤散布装置に凍結防止剤の自動散布を実行させる自動散布処理部を有する。
【0007】
また、本発明の一態様として、実際には凍結防止剤が不要となった路面を非散布区間とすることで散布量を低減し、凍結防止剤にかかる費用を削減するという課題を解決するために、前記修正散布パターン作成部は、前記基本散布パターンにおける前記散布区間内に、前記路面予測情報により乾燥・湿潤状態と予測される箇所または凍結リスクが低いと予測される箇所がある場合、当該箇所を非散布区間に変更し、前記修正散布パターンとして作成してもよい。
【0008】
さらに、本発明の一態様として、実際に凍結防止剤を必要とする路面を散布区間とすることで凍結路面に起因する事故等を低減するという課題を解決するために、前記修正散布パターン作成部は、前記基本散布パターンにおける前記非散布区間内に、前記路面予測情報により凍結状態と予測される箇所または凍結リスクが高いと予測される箇所がある場合、当該箇所を散布区間に変更し、前記修正散布パターンとして作成してもよい。
【0009】
また、本発明の一態様として、表示・入力手段または音声入力手段のどちらからでも簡単に選択指示を入力するという課題を解決するために、前記自動散布制御装置は、前記基本散布パターンおよび前記修正散布パターンのうち、いずれの散布パターンを使用するかの選択指示を表示・入力手段または音声入力手段を介して受け付ける選択指示受付部を有していてもよい。
【0010】
さらに、本発明の一態様として、前記自動散布制御装置によって制御され凍結防止剤を散布する前記凍結防止剤散布装置と、前記自動散布制御装置および前記凍結防止剤散布装置を搭載する凍結防止剤散布車とを備えていてもよい。
【0011】
本発明に係る自動散布制御プログラムは、路面予測情報に基づいて、凍結防止剤を必要とする路面に対して高精度に凍結防止剤を自動散布し、凍結防止剤の散布効果を無駄なく最大化するという課題を解決するために、凍結防止剤散布装置による自動散布を制御する自動散布制御プログラムであって、所定地点または所定区間における路面の状態を予測した路面予測情報を取得する路面予測情報取得部と、凍結防止剤を散布する散布区間と、凍結防止剤を散布しない非散布区間とが事前に設定された基本散布パターンを取得する基本散布パターン取得部と、前記路面予測情報に基づいて、前記基本散布パターンで設定されている前記散布区間と前記非散布区間とを修正した修正散布パターンを作成する修正散布パターン作成部と、前記基本散布パターンまたは前記修正散布パターンに基づいて、前記凍結防止剤散布装置に凍結防止剤の自動散布を実行させる自動散布処理部としてコンピュータを機能させる。
【0012】
本発明に係る自動散布制御方法は、路面予測情報に基づいて、凍結防止剤を必要とする路面に対して高精度に凍結防止剤を自動散布し、凍結防止剤の散布効果を無駄なく最大化するという課題を解決するために、凍結防止剤散布装置による自動散布を制御する自動散布制御方法であって、所定地点または所定区間における路面の状態を予測した路面予測情報を取得する路面予測情報取得ステップと、凍結防止剤を散布する散布区間と、凍結防止剤を散布しない非散布区間とが事前に設定された基本散布パターンを取得する基本散布パターン取得ステップと、前記路面予測情報に基づいて、前記基本散布パターンで設定されている前記散布区間と前記非散布区間とを修正した修正散布パターンを作成する修正散布パターン作成ステップと、前記基本散布パターンまたは前記修正散布パターンに基づいて、前記凍結防止剤散布装置に凍結防止剤の自動散布を実行させる自動散布処理ステップと、を有する。
【0013】
本発明に係る自動散布制御装置は、路面予測情報に基づいて、凍結防止剤を必要とする路面に対して高精度に凍結防止剤を自動散布し、凍結防止剤の散布効果を無駄なく最大化するという課題を解決するために、凍結防止剤散布装置による自動散布を制御する自動散布制御装置であって、所定地点または所定区間における路面の状態を予測した路面予測情報を取得する路面予測情報取得部と、凍結防止剤を散布する散布区間と、凍結防止剤を散布しない非散布区間とが事前に設定された基本散布パターンを取得する基本散布パターン取得部と、前記路面予測情報に基づいて、前記基本散布パターンで設定されている前記散布区間と前記非散布区間とを修正した修正散布パターンを作成する修正散布パターン作成部と、前記基本散布パターンまたは前記修正散布パターンに基づいて、前記凍結防止剤散布装置に凍結防止剤の自動散布を実行させる自動散布処理部と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、路面予測情報に基づいて、凍結防止剤を必要とする路面に対して高精度に凍結防止剤を自動散布し、凍結防止剤の散布効果を無駄なく最大化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る凍結防止剤自動散布システムを示す全体図である。
図2】本実施形態の自動散布制御装置および自動散布制御サーバの一実施形態を示すブロック図である。
図3】本実施形態の表示手段に表示される操作パネルの一例であって、(a)基本散布パターンのみを表示した状態、および(b)基本散布パターンおよび修正散布パターンを表示した状態を示す図である。
図4】本実施形態における路面予測情報の一例であって、(a)所定地点における路面の状態を時系列で予測した情報、および(b)所定区間における路面の状態を凍結リスクとして予測した情報である。
図5】本実施形態の凍結防止剤自動散布システム、自動散布制御プログラムおよび自動散布制御方法によって実行される処理を示すフローチャートである。
図6】本発明に係る自動散布制御装置の他の実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る凍結防止剤自動散布システム、自動散布制御プログラムおよび自動散布制御方法の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0017】
本実施形態の凍結防止剤自動散布システム1は、図1に示すように、凍結防止剤散布装置12による凍結防止剤の自動散布を制御する自動散布制御装置10と、この自動散布制御装置10がアクセス可能な自動散布制御サーバ11と、自動散布制御装置10によって制御され凍結防止剤を散布する凍結防止剤散布装置12と、自動散布制御装置10および凍結防止剤散布装置12を搭載する凍結防止剤散布車13とから構成されている。
【0018】
本実施形態において、自動散布制御装置10は、パーソナルコンピュータ、タブレット、スマートフォン等のコンピュータによって構成されており、図2に示すように、主として、表示・入力手段2と、音声入力手段3と、通信手段4と、位置検出手段5と、記憶手段6と、演算処理手段7とを有している。また、自動散布制御サーバ11は、WEBサーバ等のコンピュータによって構成されており、図2に示すように、主として、通信手段4と、記憶手段6と、演算処理手段7とを有している。以下、各構成について説明する。
【0019】
表示・入力手段2は、表示機能および入力機能を兼ね備えたものであり、タッチインターフェース等で構成されている。本実施形態において、表示・入力手段2には、図3(a),(b)に示すように、後述する散布パターンや、各種の操作ボタン等を備えた操作パネルが表示される。そして、運転手やオペレータに各種の情報を視認および視聴させるとともに、各種の選択指示を入力させるようになっている。
【0020】
音声入力手段3は、マイク等で構成されており、運転手やオペレータによって発せられた音声による選択指示を演算処理手段7の選択指示受付部75へ入力するものである。
【0021】
通信手段4は、自動散布制御装置10および自動散布制御サーバ11に通信機能を実装するためのものである。本実施形態において、通信手段4は、Wi-Fi(登録商標)等の無線LAN規格や、第5世代移動通信ネットワーク(5G)等のキャリアネットワーク規格に対応した無線モジュールによって構成されている。そして、図示しないアクセスポイント等を介してネットワークにアクセスし、路面予測情報、選択指示および修正散布パターン等の送受信を可能にする。
【0022】
なお、本実施形態では、図1に示すように、自動散布制御サーバ11が、気象予測情報提供会社等のWEBサーバから路面予測情報をダウンロードするとともに、自動散布制御装置10からの選択指示に応じて修正散布パターンを送信するため、通信手段4を有しているが、この構成に限定されるものではない。例えば、SDカードやUSBメモリ等の記録媒体を用いて路面予測情報や修正散布パターンをやりとりするようにしてもよく、この場合には、通信手段4を有している必要はない。
【0023】
位置検出手段5は、自動散布制御装置10が搭載された凍結防止剤散布車13の現在位置を検出するものである。本実施形態において、位置検出手段5は、全地球航法衛星システム(Global Navigation Satellite System:GNSS)からの衛星情報を受信する機能を備えたGNSS受信機から構成されており、所定の時間間隔ごとに位置情報(緯度・経度・高度)を検出する。また、車速センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ等が別途、内蔵されており、トンネル等のGNSS不感地帯でも、位置情報を検出しうるようになっている。
【0024】
記憶手段6は、各種のデータを記憶するとともに、演算処理手段7が演算処理を行う際のワーキングエリアとして機能するものである。本実施形態において、記憶手段6は、ソリッドステートドライブ(SSD)、ハードディスクドライブ(HDD)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等で構成されており、図2に示すように、プログラム記憶部61と、基本散布パターン記憶部62と、修正散布パターン記憶部63とを有している。
【0025】
プログラム記憶部61には、本実施形態の自動散布制御プログラム1aがインストールされている。そして、演算処理手段7が自動散布制御プログラム1aを実行することにより、自動散布制御装置10および自動散布制御サーバ11としてのコンピュータを後述する各構成部として機能させるようになっている。
【0026】
なお、自動散布制御プログラム1aの利用形態は、上記構成に限られるものではない。例えば、SDカード、CFカード、USBメモリ、外付けHDD(Hard Disk Drive)、外付けSSD(Solid State Drive)、CD-ROM、DVD-ROM等のように、コンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に自動散布制御プログラム1aを記憶させておき、当該記録媒体から直接読み出して実行してもよい。また、外部サーバ等からクラウドコンピューティング方式やASP(Application Service Provider)方式で自動散布制御プログラム1aを利用してもよい。
【0027】
基本散布パターン記憶部62は、凍結防止剤散布装置12に自動散布させる際の散布条件が設定された基本散布パターンを記憶するものである。本実施形態において、基本散布パターンとしては、図3(a)の操作パネルに示すように、湿潤の路面状態に適した「A:湿潤」と、アイスバーンの路面状態に適した「B:アイスバーン」と、圧雪の路面状態に適した「C:圧雪」と、凍結防止剤の代わりに防滑材(砕石や砂)を使用する「D:防滑材」の4つが用意されている。
【0028】
各基本散布パターンには、凍結防止剤を散布する散布区間と、凍結防止剤を散布しない非散布区間とが事前に設定されている。その他、各基本散布パターンには、凍結防止剤の散布量、湿式割合、散布幅、散布向き等が設定されている。なお、散布区間または非散布区間の一方のみが設定されている場合でも、当該一方の区間以外の区間が他方の区間であるため、双方の区間が設定されているといえる。
【0029】
修正散布パターン記憶部63は、路面予測情報に基づいて修正された修正散布パターンを記憶するものである。本実施形態において、修正散布パターンは、路面予測情報に基づいて、所定の基本散布パターンで事前に設定されている散布区間と非散布区間とが修正されたものであり、後述する修正散布パターン作成部73によって作成される。
【0030】
また、本実施形態において、修正散布パターンは、上述した4つの基本散布パターンのそれぞれに対して用意され、図3(a)における「散布パターン更新」ボタンを選択すると、図3(b)に示すように、「E:湿潤(凍結予測)」、「F:アイスバーン(凍結予測)」、「G:圧雪(凍結予測)」および「H:防滑材(凍結予測)」として選択可能に表示される。
【0031】
演算処理手段7は、CPU(Central Processing Unit)等で構成されており、プログラム記憶部61にインストールされた自動散布制御プログラム1aを実行することにより、図2に示すように、自動散布制御サーバ11では、路面予測情報取得部71と、基本散布パターン取得部72と、修正散布パターン作成部73と、修正散布パターン送信部74として機能する。また、自動散布制御装置10では、選択指示受付部75と、修正散布パターン取得部76と、自動散布処理部77として機能する。以下、各構成部についてより詳細に説明する。
【0032】
路面予測情報取得部71は、所定地点または所定区間における路面の状態を予測した路面予測情報を取得するものである。本実施形態において、路面予測情報取得部71は、所定の時間間隔ごとに、路面予測情報を提供する気象予測情報提供会社等のWEBサーバに通信手段4を介してアクセスし、当該WEBサーバから最新の路面予測情報を取得する。
【0033】
なお、路面予測情報としては、図4(a)に示すように、所定地点における路面の状態を時系列で予測した情報が含まれる。路面の状態としては、凍結(アイスバーン)状態、圧雪状態、シャーベット状態、湿潤状態および乾燥状態の5つに分類されている。また、路面予測情報としては、図4(b)に示すように、所定区間における路面の状態を100m~1km毎に3段階(高い(危険)・中(注意)・低い)の凍結リスクとして予測した情報も含まれる。
【0034】
基本散布パターン取得部72は、基本散布パターンを取得するものである。本実施形態において、基本散布パターン取得部72は、路面予測情報取得部71が最新の路面予測情報を取得し、路面予測情報が更新されるたびに、基本散布パターン記憶部62に記憶されている全ての基本散布パターンを取得する。取得した基本散布パターンは、修正散布パターン作成部73に受け渡されて修正散布パターンを作成する際の修正元として使用される。なお、本実施形態において、基本散布パターン取得部72は、全ての基本散布パターンを取得しているが、この構成に限定されるものではなく、初期設定で事前に選択された基本散布パターンを取得してもよい。
【0035】
修正散布パターン作成部73は、路面予測情報に基づいて、基本散布パターンで設定されている散布区間と非散布区間とを修正した修正散布パターンを作成するものである。本実施形態において、修正散布パターン作成部73は、基本散布パターンにおける散布区間内に、路面予測情報により乾燥・湿潤状態と予測される箇所または凍結リスクが低いと予測される箇所がある場合、当該箇所を非散布区間に変更し、修正散布パターンとして作成する。
【0036】
また、本実施形態において、修正散布パターン作成部73は、基本散布パターンにおける非散布区間内に、路面予測情報により凍結状態と予測される箇所または凍結リスクが高いと予測される箇所がある場合、当該箇所を散布区間に変更し、修正散布パターンとして作成する。ただし、基本散布パターンにおける非散布区間は、事故が少ない直線区間等に設定されることが多いため、路面予測情報によらず、非散布区間のままとしてもよい。そして、修正散布パターン作成部73は、作成した修正散布パターンを修正散布パターン記憶部63に記憶させる。
【0037】
以上のように修正された修正散布パターンによれば、最新の路面予測情報が反映されるため、実際には凍結防止剤が不要となった路面に対しては、凍結防止剤を無駄に散布することなく散布量が低減するため、凍結防止剤にかかる費用が削減される。一方、実際に凍結防止剤を必要とする路面に対しては、漏れなく凍結防止剤が散布されるため、凍結路面に起因する事故等が低減する。
【0038】
修正散布パターン送信部74は、修正散布パターンを自動散布制御装置10へ送信するものである。本実施形態において、修正散布パターン送信部74は、自動散布制御装置10から修正散布パターンを要求されると、修正散布パターン記憶部63に記憶されている全ての修正散布パターンを読み出し、通信手段4を介して自動散布制御装置10へ送信する。
【0039】
選択指示受付部75は、運転手またはオペレータからの選択指示を受け付けるものである。本実施形態において、選択指示受付部75は、図3(a)に示す操作パネルにおいて、「散布パターン更新」ボタンの選択指示を表示・入力手段2または音声入力手段3を介して受け付けると、当該選択指示を修正散布パターン取得部76へ受け渡す。
【0040】
また、選択指示受付部75は、図3(b)に示す操作パネルにおいて、4種類の基本散布パターンおよび4種類の修正散布パターンのうち、いずれの散布パターンを使用するかの選択指示を表示・入力手段2または音声入力手段3を介して受け付ける。そして、当該選択指示を自動散布処理部77へ受け渡すようになっている。なお、音声入力手段3からの選択指示は、音声認識処理によって特定される。
【0041】
修正散布パターン取得部76は、自動散布制御サーバ11から修正散布パターンを取得するものである。本実施形態において、修正散布パターン取得部76は、選択指示受付部75が「散布パターン更新」ボタンの選択指示を受け付けると、通信手段4を介して自動散布制御サーバ11に最新の修正散布パターンを要求するとともに、取得した修正散布パターンを修正散布パターン記憶部63に保存する。また、既に修正散布パターン記憶部63に修正散布パターンが保存されている場合は上書き保存する。
【0042】
自動散布処理部77は、基本散布パターンまたは修正散布パターンに基づいて、凍結防止剤散布装置12に凍結防止剤の自動散布を実行させるものである。本実施形態において、自動散布処理部77は、選択指示受付部75によって受け付けられた選択指示が基本散布パターンのいずれかであれば、当該基本散布パターンを基本散布パターン記憶部62から取得する。一方、自動散布処理部77は、選択指示受付部75によって受け付けられた選択指示が修正散布パターンであれば、当該修正散布パターンを修正散布パターン記憶部63から取得する。
【0043】
また、自動散布処理部77は、位置検出手段5によって検出された位置情報に基づいて凍結防止剤散布車13の現在位置を特定する。そして、取得した基本散布パターンまたは修正散布パターンから、現在位置に設定されている散布条件を読み出し、当該散布条件に従って散布処理の実行命令を凍結防止剤散布装置12に出力し、凍結防止剤の自動散布を実行させるようになっている。
【0044】
つぎに、本実施形態の凍結防止剤自動散布システム1、自動散布制御プログラム1aおよび自動散布制御方法による作用について説明する。
【0045】
本実施形態の凍結防止剤自動散布システム1、自動散布制御プログラム1aおよび自動散布制御方法を用いて道路に凍結防止剤を散布する場合、図5に示すように、自動散布制御サーバ11側では、路面予測情報取得部71が所定の時間間隔ごとに路面予測情報を取得し(ステップS1:路面予測情報取得ステップ)、最新の路面予測情報に更新されるたびに(ステップS2:YES)、基本散布パターン取得部72が、修正散布パターンの修正元となる基本散布パターンを取得する(ステップS3:基本散布パターン取得ステップ)。これにより、修正散布パターン作成ステップ(ステップS4~S7)を実行するのに必要な情報が揃うこととなる。
【0046】
つぎに、修正散布パターン作成部73が、ステップS3で取得された基本散布パターンにおける散布区間内に、ステップS1で取得された路面予測情報により乾燥・湿潤状態と予測される箇所または凍結リスクが低いと予測される箇所があるか否かを判定する(ステップS4)。当該判定の結果、そのような箇所がある場合(ステップS4:YES)、当該箇所を非散布区間に変更する(ステップS5)。
【0047】
これにより、実際には凍結防止剤が不要となった路面に対しては、無駄に散布されることなく散布量が低減するため、凍結防止剤にかかる費用が削減する。一方、そのような箇所がなくなれば(ステップS4:NO)、ステップS6へと進む。
【0048】
ステップS6では、修正散布パターン作成部73が、ステップS3で取得された基本散布パターンにおける非散布区間内に、ステップS1で取得された路面予測情報により凍結状態と予測される箇所または凍結リスクが高いと予測される箇所があるか否かを判定する(ステップS6)。当該判定の結果、そのような箇所がある場合(ステップS6:YES)、当該箇所を散布区間に変更する(ステップS7)。
【0049】
これにより、実際に凍結防止剤を必要とする路面に凍結防止剤が散布されることとなるため、凍結路面に起因する事故等が低減する。一方、そのような箇所がなくなれば(ステップS6:NO)、上述した修正散布パターン作成ステップ(ステップS4~S7)によって作成された修正散布パターンが、修正散布パターン記憶部63に保存される(ステップS8)。なお、上述したとおり、路面予測情報によらず、非散布区間のままとする場合、ステップS6~S7の処理は実行しない。
【0050】
一方、自動散布制御装置10側では、選択指示受付部75が、図3(a)に示す操作パネルにおいて、運転手またはオペレータによる「散布パターン更新」ボタンの選択指示を受け付けると(ステップS11:選択指示受付ステップ)、修正散布パターン取得部76が、散布制御サーバ11に最新の修正散布パターンを要求する(ステップS12:修正散布パターン要求ステップ)。
【0051】
これに応じて、自動散布制御サーバ11側の修正散布パターン送信部74が、修正散布パターンを送信するため(ステップS9:修正散布パターン送信ステップ)、最新の修正散布パターンが取得される(ステップS13:修正散布パターン取得ステップ)。これにより、自動散布制御装置10の操作パネルには、図3(b)に示すように、修正散布パターンが選択可能に表示される。
【0052】
つづいて、選択指示受付部75が、運転手またはオペレータによる散布パターンの選択指示を受け付ける(ステップS14:選択指示受付ステップ)。このとき、表示・入力手段2または音声入力手段3のどちらからでも簡単に選択指示を入力でき、ユーザーフレンドリーである。
【0053】
そして、基本散布パターンおよび修正散布パターンのうち、いずれの散布パターンを使用するかの選択指示を受け付けると(ステップS14:YES)、自動散布処理部77が当該選択指示に対応する散布パターンを取得し、当該取得した基本散布パターンまたは修正散布パターンに基づいて、凍結防止剤散布装置12に凍結防止剤の自動散布を実行させる(ステップS15:自動散布処理ステップ)。これにより、修正散布パターンに基づいて自動散布されると、自動散布制御サーバ11において所定時間毎に更新される最新の路面予測情報に基づき、凍結防止剤を必要とする路面に対して高精度に凍結防止剤が自動散布される。
【0054】
その後、自動散布作業が継続する限り(ステップS16:NO)、ステップS15の自動散布処理ステップを繰り返す。そして、自動散布作業の終了に伴って(ステップS16:YES)、本処理が終了する。
【0055】
以上のような本実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
1.路面予測情報に基づいて、凍結防止剤を必要とする路面に対して高精度に凍結防止剤を自動散布し、凍結防止剤の散布効果を無駄なく最大化することができる。
2.実際に凍結防止剤を必要とする路面を散布区間とすることで凍結路面に起因する事故等を低減することができる。
3.実際には凍結防止剤が不要となった路面を非散布区間とすることで散布量を低減し、凍結防止剤にかかる費用を削減することができる。
4.表示・入力手段2または音声入力手段3のどちらからでも簡単に選択指示を入力することができる。
【0056】
なお、本発明に係る自動散布制御装置10、これを備えた凍結防止剤自動散布システム1、自動散布制御プログラム1aおよび自動散布制御方法は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0057】
例えば、上述した本実施形態では、自動散布制御サーバ11において、路面予測情報を取得し、修正散布パターンを作成していたが、この構成に限定されるものではなく、これらの処理も自動散布制御装置10において実行するようにしてもよい。具体的には、図6に示すように、自動散布制御装置10側の演算処理手段7が、路面予測情報取得部71と、基本散布パターン取得部72と、修正散布パターン作成部73と、選択指示受付部75と、自動散布処理部77として機能するようにしてもよい。なお、この構成のうち、上述した本実施形態と同一もしくは相当する構成については同一の符号を付し、再度の説明を省略する。
【0058】
この構成によれば、自動散布制御サーバ11を介することなく、自動散布制御装置10が、気象予測情報提供会社等のWEBサーバから直接、最新の路面予測情報を取得し、当該路面予測情報に基づいて修正散布パターンを作成する。そして、予め用意しておいた基本散布パターンまたは最新の路面予測情報に基づく修正散布パターンを用いて、凍結防止剤散布装置12に凍結防止剤を自動散布させる。このため、上述した本実施形態と同様の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0059】
1 凍結防止剤自動散布システム
1a 自動散布制御プログラム
2 表示・入力手段
3 音声入力手段
4 通信手段
5 位置検出手段
6 記憶手段
7 演算処理手段
10 自動散布制御装置
11 自動散布制御サーバ
12 凍結防止剤散布装置
13 凍結防止剤散布車
61 プログラム記憶部
62 基本散布パターン記憶部
63 修正散布パターン記憶部
71 路面予測情報取得部
72 基本散布パターン取得部
73 修正散布パターン作成部
74 修正散布パターン送信部
75 選択指示受付部
76 修正散布パターン取得部
77 自動散布処理部
【要約】
【課題】路面予測情報に基づいて、凍結防止剤を必要とする路面に対して高精度に凍結防止剤を自動散布し、凍結防止剤の散布効果を無駄なく最大化することができる凍結防止剤自動散布システム、自動散布制御プログラム、自動散布制御方法および自動散布制御装置を提供する。
【解決手段】自動散布制御装置10と、自動散布制御サーバ11とからなる凍結防止剤自動散布システム1であって、自動散布制御サーバ11は、路面予測情報を取得する路面予測情報取得部71と、散布区間と非散布区間とが設定された基本散布パターンを取得する基本散布パターン取得部72と、路面予測情報に基づいて基本散布パターンを修正した修正散布パターンを作成する修正散布パターン作成部73とを有し、自動散布制御装置10は、基本散布パターンまたは修正散布パターンに基づいて、凍結防止剤散布装置12に凍結防止剤の自動散布を実行させる自動散布処理部77を有する。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6