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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】口臭改善用口腔組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20240822BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20240822BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q11/00
A61K8/9789
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023500348
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 KR2021011533
(87)【国際公開番号】W WO2022092522
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2020-0143990
(32)【優先日】2020-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523004464
【氏名又は名称】エコワールドファーム カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オ、ソクジュン
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-154339(JP,A)
【文献】特開2009-091322(JP,A)
【文献】Well-being Functional Toothpaste ,ID 1505378,Mintel GNPD[online],2011年3月,[検索日2024.01.25],https://www.portal.mintel.com
【文献】Double X Toothpaste,ID 7271607,Mintel GNPD[online],2020年2月,[検索日2024.01.25],https://www.portal.mintel.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K31/33-33/44
A61K36/00
A23G3/00、4/00
A23L33/00
Mintel GNPD
CAplus/MEDLINE/KOSMET/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キトサン及び緑茶抽出物を有効成分として含む口臭改善用口腔組成物であり、
前記キトサンは、重量平均分子量(Mw)が10,000Da~57,000Daであり、
前記口臭改善用口腔組成物は、前記口臭改善用口腔組成物100重量部を基準にして、前記キトサンの含有量が0.01~0.05重量部であり、
前記緑茶抽出物はカテキンを含むものであり、
前記緑茶抽出物の含有量は、前記緑茶抽出物に含まれているカテキンの含有量を基準にして、前記口臭改善用口腔組成物100重量部を基準にして、前記カテキンの含有量が0.1~0.2であることを特徴とする口臭改善用口腔組成物。
【請求項2】
前記キトサンは、重量平均分子量(Mw)が10,000Da~13,000Daであることを特徴とする、請求項1に記載の口臭改善用口腔組成物。
【請求項3】
前記キトサンは、重量平均分子量(Mw)が11,150Da~11,200Daであることを特徴とする、請求項2に記載の口臭改善用口腔組成物。
【請求項4】
前記口臭改善用口腔組成物は、ポリオール、ポリマー、殺菌剤、可溶化剤、抗菌成分、口臭除去有効成分、歯茎疾患予防成分、pH調節剤、保存剤、防腐剤、着香剤、甘味剤、香料、色素及び溶剤からなる群から選択された1種以上の追加成分をさらに含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の口臭改善用口腔組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔組成物、具体的には口臭成分を除去して口臭を改善することができる口臭改善用口腔組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会においては、産業化及び西欧化に伴い、生活習慣や食生活の変化により口腔関連疾患の原因と症状が多様化しており、口腔の関連疾患及び関連問題は深刻な社会問題として報告されている。
【0003】
口腔は呼吸と食物摂取を行う上で非常に重要な器官であるが、空気と食物を通じて絶えず外部の環境にさらされる器官でもある。そのため、歯磨きで口腔の清潔さを保たないと、歯と歯茎の周りに歯垢と歯石が発生して、様々な病気を引き起こす可能性がある。
【0004】
世界保健機関(WHO)では、う蝕、歯周疾患、口臭及び口腔痛などの口腔疾患を、未来に解決すべき主要な保健問題の一つとして認識しており、世界保健機関の歯科疾患に関する報告によると、世界的に、青少年の60~90%と成人の60%がう蝕と歯周疾患を患っており、35歳~44歳の中年成人の15~20%は重度の歯周疾患を有している。このような口腔関連疾患は、歯の損失の主な原因となるだけでなく、心血管系疾患、細菌性肺炎、低体重出生児、糖尿合併症や骨粗鬆症などの病気の潜在的な危険要因となると報告されている。
【0005】
前記のように、空気と食物を通じて絶えず外部の環境にさらされる器官である人の口腔は、湿度が高く体温が安定的に保たれて、食物が腐りやすく細菌が繁殖するのに格好の環境である。人の口腔内には700種以上の様々な菌が常在しており、口腔内の細菌は常在菌と病原菌で構成されている。常在菌は病原菌の繁殖を防いで口腔の健康を保たせてくれるのに対し、口腔疾患を引き起こす細菌はほとんどが歯と歯茎の間に形成される細菌膜である歯垢(プラーク)に存在することが知られている。病原菌は歯垢(プラーク)から毒素や酸を産生し、病原菌が産生した毒素は歯周組織内に侵入して歯齦の炎症、歯槽骨の破壊及び感染を起こし、病原菌によって産生された酸は歯の表面を溶かしてう蝕症の原因となり、口臭を誘発する原因として作用することもある。
【0006】
前記口臭誘発に関連して、社会発展に伴う対人関係の範囲及び活動の増加、衛生概念の発達に伴い、口臭に対する認識が次第に高まっており、これにより口臭を積極的にケアしようとする消費者がますます増加する傾向にある。このような変化に合わせて口臭除去に効果的な施術を行ったり、薬剤を歯磨き粉、うがい液、カプセル、付着剤などに配合するなど、国内外で様々な研究が行われてきた。
【0007】
口臭の原因は、口腔内原因と口腔外原因の二つに大きく分類することができ、口腔内原因としては、代表的に口腔内の微生物又は未治療のう蝕症、歯周疾患などの口腔疾患が挙げられ、口腔外原因としては、呼吸器系疾患、胃腸系疾患などと、空腹、月経、喫煙、飲酒などの様々な原因が挙げられる。
【0008】
前記原因の中でも主な原因である口腔内原因による口臭は、口腔内の酵素が唾液中に存在する食べかす、微生物、口腔上皮、脱着された口腔粘膜や結合組織などをタンパク質源とし、これらを分解することにより揮発性硫化物を産生して発生することが知られている。前記口臭を引き起こす主成分である揮発性硫化物には、硫化水素、メチルメルカプタン及びジメチルメルカプタンなどがあり、これらの揮発性硫化物の他に、トリエチルアミンなどの揮発性アミン化合物、アルデヒド、脂肪酸及びアンモニアなどがある。
【0009】
従来の口臭除去関連技術を見てみると、主に口臭を引き起こす原因菌に対する抗菌剤及び口臭原因物質に対するマスキング成分を含む歯磨き粉とうがい液に関する研究が行われてきた。しかし、これらの製剤は口臭除去効果を発現し維持するのには使用上の制約が幾つかある。例えば、歯磨き粉の場合、歯を磨いた後は効能成分を維持することができないという短所がある。このような短所を補うために、ポリマーを適用して薬物の送達効果を増大しようとする試みが行われてきたが、従来の歯磨き粉のような軟膏状剤形を使用するためには歯ブラシを用いて歯を磨かなければならず、また水で口をすすがなければならないので、場所に制約があるという短所が依然として残っている。この他に、マウススプレーやブレスフィルムなどの剤形に関わる研究も行われた。しかし、マウススプレーやブレスフィルムの場合、効能の持続時間が短くて効能体感に限界があるという問題点があり、特に、ブレスフィルムの場合は、温度や湿度などにより、製造されたフィルムの収縮や凝集などの現象が発生して流通上の問題点もさらに加わる。
【0010】
この他に、口腔内で発生する口臭を抑制するために、口歯を引き起こす物質、一例として、タンパク質老廃物の分解成分である硫化水素、メチルメルカプタン及びジメチルメルカプタンなどの揮発性硫化物を除去するための研究が進められている。これは、その効果が限定的に認められる口臭発生に関わる微生物の制御に比べてその効果が優れるだろうと評価されており、これに関連して、効果的な口臭除去を通じて口臭を改善できる方法に関する研究の必要性が増大している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、既存の歯磨き粉などとは異なり、効果的な口臭除去を通じて、口臭を改善できる口腔用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前述したように、口臭の原因となる硫化水素、メチルメルカプタン及びジメチルメルカプタンなどの揮発性硫化物を除去するために、前記揮発性硫化物を発生させるタンパク質老廃物の分解成分を効果的に除去できる口腔組成物である口臭改善用口腔組成物を提供する。
【0013】
具体的には、本発明の口臭改善用口腔組成物は、キトサン及び緑茶抽出物を有効成分として含む口臭改善用口腔組成物であってもよい。
【0014】
前記キトサンは、重量平均分子量(Mw)が10,000Da~57,000Daであってもよい。
【0015】
こうした点で、前記口臭改善用口腔組成物は、キトサン及び緑茶抽出物を有効成分として含む口臭改善用口腔組成物であり、前記キトサンは、重量平均分子量(Mw)が10,000Da~57,000Daであることを特徴とするものであってもよい。
【0016】
前記キトサンの含有量は、好ましくは、前記口臭改善用口腔組成物の重量を基準にして、0.01~0.05%(w/w)であってもよい。こうした側面から、前記口臭改善用口腔組成物は、前記口臭改善用口腔組成物100重量部を基準にして、前記キトサンの含有量が0.01~0.05重量部であるものであってもよい。
【0017】
前記緑茶抽出物は、前記緑茶抽出物中に含まれるカテキンの含有量によって口腔組成物全体に渋味を与えて口腔組成物全体の嗜好度を低下させる可能性があるので、前記緑茶抽出物の含有量は、前記緑茶抽出物に含まれるカテキンの含有量によって影響を受ける。
【0018】
こうした側面から、前記緑茶抽出物の含有量は、前記緑茶抽出物に含まれているカテキンの含有量に基づいて調節され得るので、前記口臭改善用口腔組成物の重量を基準にして、前記緑茶抽出物の含有量は前記緑茶抽出物に含まれるカテキンの含有量が前記口臭改善用口腔組成物の重量を基準にして、0.1~0.2%(w/w)となるように調節することができる。
【0019】
従って、前記緑茶抽出物の含有量は、好ましくは、前記緑茶抽出物に含まれているカテキンの含有量を基準にして、前記口臭改善用口腔組成物100重量部を基準にして、前記カテキンの含有量が0.1~0.2重量部であってもよい。
【0020】
また、前記口臭改善用口腔組成物は、ポリオール、ポリマー、殺菌剤、可溶化剤、抗菌成分、口臭除去有効成分、歯茎疾患予防成分、pH調節剤、保存剤、防腐剤、着香剤、甘味剤、香料、色素及び溶剤からなる群から選択された1種以上の追加成分をさらに含むものであってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の口臭改善用口腔組成物は、天然物であるキトサンと緑茶抽出物を主成分として使用するものであるため、人体に有害な合成化合物の使用を最小限に抑えることができるので安全であるだけでなく、口臭除去効果に優れながらも渋味など使用する上で不便さを感じさせることなく嗜好度に優れて、消費者の使用感及び満足感を向上させる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施例に係る、口臭測定器を用いて被験者の本発明の使用前及び使用後の口臭を測定した結果を示すものである。
図2】本発明の一実施例に係る、本発明の口腔組成物の口臭減少のための口臭誘発物質の除去効果を測定した結果を示す写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、キトサン及び緑茶抽出物を有効成分として含む口臭改善用口腔組成物であり、
前記キトサンは、重量平均分子量(Mw)が10,000Da~57,000Daであり、
前記緑茶抽出物はカテキンを含むものであり、
前記キトサンの含有量は、前記口臭改善用口腔組成物100重量部を基準にして、0.01~0.05重量部であり、
前記緑茶抽出物の含有量は、前記緑茶抽出物に含まれているカテキンの含有量を基準にして、前記口臭改善用口腔組成物100重量部を基準にして、前記カテキンの含有量が0.1~0.2
であることを特徴とする口臭改善用口腔組成物に関する。
【0024】
以下、本発明を詳しく説明するために本発明の好ましい実施例を記載する。下記の実施例は本発明を例示するためのものであって、本発明の権利範囲が下記の実施例によっていかなる形であれ限定されるものではなく、当業界で通常行われる変形なども本発明の範囲内に含まれる。
【0025】
本発明は、キトサン及び緑茶抽出物を有効成分として含む口臭改善用口腔組成物に関する。
【0026】
前記口臭改善用口腔組成物は、キトサン及び緑茶抽出物を有効成分として含む口臭改善用口腔組成物であり、前記キトサンは、重量平均分子量(Mw)が10,000Da~57,000Daであるものであってもよい。
【0027】
前記口臭改善用口腔組成物は、前記口臭改善用口腔組成物100重量部を基準にして、前記キトサンの含有量が0.01~0.05重量部であるものであってもよい。
【0028】
前記キトサンの含有量は、好ましくは、前記口臭改善用口腔組成物の重量を基準にして、0.01~0.05%(w/w)であってもよい。
【0029】
前記緑茶抽出物はカテキンを含むものであってもよく、前記緑茶抽出物の含有量は、前記緑茶抽出物に含まれているカテキンの含有量を基準にして、前記口臭改善用口腔組成物100重量部を基準にして、前記カテキンの含有量が0.1~0.2重量部であってもよい。
【0030】
前記緑茶抽出物はカテキンを含むものであってもよく、前記緑茶抽出物中に含まれるカテキンの含有量は、好ましくは、前記口臭改善用口腔組成物の重量を基準にして、0.1~0.2%(w/w)であってもよい。
【0031】
前記口臭改善用口腔組成物は、ポリオール、ポリマー、殺菌剤、う蝕抑制剤、口臭除去有効成分、pH調節剤、保存剤、防腐剤、着香剤、甘味剤、香料、色素及び溶剤からなる群から選択された1種以上の追加成分をさらに含むものであってもよい。
【0032】
本明細書において特に断りのない限り、平均分子量(average molecular weight)とは、分子量が異なる複数の分子種の混合物である高分子化合物の分子量、すなわち分子量が異なる複数の分子種の分子量の平均値を意味する。前記平均分子量は、数平均分子量、重量平均分子量のように、平均をとる方法を明示的に表示する。
【0033】
本明細書において特に断りのない限り、組成物とは、明示された成分を明示された量で含む生成物だけでなく、明示された量の明示された成分の配合物から直接又は間接的に生じる生成物を含むことを意味する。
【0034】
本明細書において特に断りのない限り、有効量とは、目的とする治療、軽減、抑制又は予防効果をもたらすのに効果的な本発明の抽出物又は組成物の量を意味する。
【0035】
本明細書において特に断りのない限り、可溶化剤(solubilizing agent)とは、水に溶解しない物質を可溶化するために使用される界面活性剤を意味する。前記界面活性剤は、陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤又は非イオン界面活性剤であってもよく、一例として、アミド系非イオン界面活性剤、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンの共重合体(ポロキサマー)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、タウレート系などの陰イオン界面活性剤又はベタイン系両性界面活性剤であってもよい。
【0036】
本発明の発明者らは、既存の口臭改善用口腔組成物が主に口臭を除去するために、口臭の原因物質である硫化水素、メチルメルカプタン及びジメチルメルカプタンなどの揮発性硫化物を除去するためにタンパク質老廃物の分解成分を発生させる微生物の制御に集中し、そのために既存の口臭改善用口腔組成物に天然物由来の抗菌物質や化合物由来の抗菌物質を添加したにもかかわらず、口臭除去効果が限定的であることに着目し、微生物の制御ではなくタンパク質老廃物自体に焦点を当ててタンパク質老廃物を効果的に除去できる口腔組成物に関する研究を進めた。
【0037】
安全性が問題となる人工化合物ではなく、安全性が検証された天然物をもとにこれらの研究を進めた結果、キトサンと緑茶抽出物を併用する場合、簡単なうがいだけでもタンパク質老廃物の除去が容易であることを確認し、このようなタンパク質老廃物の除去効果がキトサンの分子量によって影響を受け、緑茶抽出物の添加量も老廃物の除去効果に影響を及ぼすことを確認しただけでなく、キトサン添加量と緑茶抽出物、具体的に緑茶抽出物中に含まれるカテキンの含有量が口腔組成物全体の嗜好度に影響を及ぼすことを確認して、前記実験結果に基づいて、キトサンの重量平均分子量(Mw)が11,170Daであり、キトサンの含有量が0.05%(w/w)であり、緑茶抽出物の含有量が前記緑茶抽出物に含まれているカテキンの含有量を基準にして、0.1~0.2%(w/w)である場合が最も適していることを確認した。前記結果に基づいて作製された口臭改善用口腔組成物は、天然物であるキトサンと緑茶抽出物を主成分として使用するものであるため、人体に有害な合成化合物の使用を最小限に抑えることができるので安全であるだけでなく、口臭除去効果に優れながらも渋味など使用する上で不便さを感じさせることなく嗜好度に優れて、消費者の使用感及び満足感を向上させて、既存の口臭改善用口腔組成物が有する問題を解決できるということに基づいて本発明を完成した。
【0038】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0039】
本発明は、既存の合成界面活性剤を使用するペーストタイプの歯磨き粉が有する問題点を解決するために、合成界面活性剤を使用しなくとも、一定水準の粘性が持続して、滑らかな使用感など優れた使用感を確保できるペーストタイプの口臭改善用口腔組成物に関する。
【0040】
本発明の口臭改善用口腔組成物は、キトサン及び緑茶抽出物を有効成分として含む口臭改善用口腔組成物に関する。
【0041】
前記キトサンは、タンパク質老廃物の除去効果及び口臭の原因となる硫化水素、メチルメルカプタン及びジメチルメルカプタンなどの揮発性硫化物の生成抑制効果の側面から、重量平均分子量(Mw)が10,000Da~57,000Da、好ましくは10,000Da~13,000Da、より好ましくは11,150~11,200Da、さらに好ましくは11,170Daであってもよい。
【0042】
こうした点で、前記口臭改善用口腔組成物は、キトサン及び緑茶抽出物を有効成分として含む口臭改善用口腔組成物であり、前記キトサンは、重量平均分子量(Mw)が10,000Da~57,000Daであることを特徴とするものであってもよい。
【0043】
前記キトサン(chitosan)は、カニ、エビなどの甲殻類の殻に存在するキチン(chitin)を高温、強アルカリで処理して脱アセチル化させた天然高分子物質を意味する。前記キトサンは、抗菌活性、抗真菌活性、免疫活性の増強効果などの様々な生理機能性を有する物質である。
【0044】
前記キトサンは口腔細菌の生育を抑制して歯茎疾患を予防すると同時に、キトサンの吸着、凝集作用によって口腔の清潔を維持することができる。前記キトサンは分子内に、水素結合が非常に強いアセチルアミノ基を有しているため、水に溶解しない特性があるが、前記キトサンを低分子、一例として、分子量10,000~70,000Daに低分子化する場合水溶性を有する。前記キトサンは、好ましくは、水に溶解可能な水溶性キトサンでありながら、効果に優れた高分子量のキトサン、一例として、キチンを脱アセチル化させて得られた通常のキトサン(非水溶性キトサン)にカルボキシエチル(Carboxyethyl)基を結合させたカルボキシエチルキトサン(N-Carboxyethyl Chitosan)であってもよい。
【0045】
前記キトサンの含有量は、口腔組成物の全体的な嗜好度と使用感の側面から、好ましくは、前記口臭改善用口腔組成物の重量を基準にして、0.01~0.05%(w/w)であってもよい。
【0046】
こうした側面から、前記口臭改善用口腔組成物は、前記口臭改善用口腔組成物100重量部を基準にして、前記キトサンの含有量が0.01~0.05重量部であるものであってもよい。
【0047】
前記緑茶抽出物は、前記緑茶抽出物中に含まれるカテキンの含有量によって口腔組成物全体に渋味を与えて口腔組成物全体の嗜好度を低下させる可能性があるので、前記緑茶抽出物の含有量は、前記緑茶抽出物に含まれるカテキンの含有量によって影響を受ける。
【0048】
こうした側面から、前記緑茶抽出物の含有量は、前記緑茶抽出物に含まれているカテキンの含有量に基づいて調節され得るので、前記口臭改善用口腔組成物の重量を基準にして、前記緑茶抽出物の含有量は前記緑茶抽出物に含まれるカテキンの含有量が前記口臭改善用口腔組成物の重量を基準にして、0.1~0.2%(w/w)となるように調節することができる。
【0049】
従って、前記緑茶抽出物の含有量は、好ましくは、前記緑茶抽出物に含まれているカテキンの含有量を基準にして、前記口臭改善用口腔組成物100重量部を基準にして、前記カテキンの含有量が0.1~0.2重量部であってもよい。
【0050】
本発明において、緑茶抽出物はチャノキの葉の抽出物を意味する。
【0051】
前記チャノキ(tea plant)はチャノキ科に属する常緑喬木又は常緑広葉低木であり、学名はCamellia sinensisである。チベットと中国四川省との境界に当たる山岳地帯が原産地として知られており、熱帯地方、亜熱帯地方及び温帯地方に自生し、現在は主に韓国、日本、中国、インド及び東南アジア地域に分布している。前記チャノキには変種が多く、これらの変種はその形がそれぞれ大きく異なる。主に、中国や日本で栽培される小葉種は、自然状態でも高さが約2m~約3m程度まで成長する低木であり、インドのアッサム地方の大葉種は、高さが約15m~約30mに達する喬木である。
【0052】
前記チャノキの葉は品種や位置によって変異が大きいが、主に長さ6cm~20cm及び幅3cm~4cmの長い楕円形であり、縁に鈍い鋸歯があり、先端と下部が尖っているのが特徴である。葉の質は硬くてやや厚く、表面に光沢がある。品種によって葉色の濃薄に差があり、しわにも変化がある。幼葉や幼芽の裏面には柔らかい毛がある。韓国では、智異(チリ)山に育つ野生種は中国産小葉種であり、栽培茶の場合は中国産小葉種を改良した日本産やぶきた種が主に栽培される。
【0053】
前記緑茶抽出物、すなわちチャノキの葉の抽出物は、通常の植物抽出物の製造方法に従って製造されたものであってもよい。より具体的には、不純物を除去したチャノキの葉、前記チャノキの葉の粉砕物又は前記チャノキの葉の粉砕物の乾燥物に対して溶媒抽出法、超臨界抽出法又は超音波抽出法を行って抽出したものであってもよい。こうした意味で、前記抽出物は、抽出溶媒で抽出した溶媒抽出物、超臨界抽出物、すなわち超臨界流体による超臨界抽出を通じた抽出物又は超音波抽出物であってもよい。
【0054】
前記溶媒抽出物は、当業界で公知の通常の方法に従って、通常の温度と圧力の条件下で通常の溶媒、具体的には抽出溶媒を使用して製造されたものであってもよい。
【0055】
前記抽出溶媒は、天然物抽出に使用できる水、有機溶媒又はこれらの混合溶媒、好ましくは水、炭素数1~5のアルコール及びこれらの混合物からなる群から選択されたいずれか一つ、より好ましくは水であってもよい。前記有機溶媒は、メタノール、エタノールなどの炭素数1~5の直鎖又は分枝鎖アルコール、エチルアセテート又はアセトンなどの極性溶媒とヘキサン又はジクロロメタンの非極性溶媒、炭素数3~5のケトンなどの中性溶媒又はこれらの混合溶媒であってもよく、好ましくは30~90%のエタノールなどの炭素数1~5の直鎖又は分枝鎖アルコール水溶液、又は30~90%の炭素数3~5のケトン、より好ましくは50~80%のエタノール水溶液又は50~80%のアセトン水溶液、さらに好ましくは60~75%のエタノール水溶液であってもよい。
【0056】
前記抽出溶媒は、実質的に同じ効果を示すことができる当業者に公知の通常の他の溶媒に代替することができる。
【0057】
前記超臨界抽出物は、二酸化炭素を流体とし減圧及び高温による超臨界条件で行う超臨界抽出法又は超臨界流体抽出法(supercritical fluid extraction)によって抽出されたものであり得る。一般に、超臨界流体は、気体が高温高圧の条件で臨界点に達したときに有する液体及び気体の性質を持っており、化学的に非極性溶媒と類似した極性を有しているため、脂溶性物質の抽出に有効である。具体的には、前記二酸化炭素は、超臨界流体機器の作動によって圧力及び温度が臨界点まで達する過程を経て、液体及び気体の性質を同時に有する超臨界流体となり、その結果、脂溶性溶質に対する溶解度が増加する。従って、前記超臨界二酸化炭素が一定量の試料を含む抽出容器を通過すると、試料に含まれた脂溶性物質は超臨界二酸化炭素に抽出され、脂溶性物質を抽出した後、抽出容器に残っている試料に再び少量の共溶媒が含まれた超臨界二酸化炭素を流して通過させると、純粋な超臨界二酸化炭素だけでは抽出されなかった成分が抽出されて出てくるようにすることができる。
【0058】
こうした側面から、前記超臨界抽出法に使用される超臨界流体は、超臨界二酸化炭素又は二酸化炭素にさらに共溶媒を混合した混合流体であってもよい。前記共溶媒は、クロロホルム、エタノール、メタノール、水、エチルアセテート、ヘキサン、ジエチルエーテル及びこれらの混合物からなる群から選択されるいずれか一つであってもよい。
【0059】
前記抽出過程で使用された二酸化炭素は室温で空気中に揮発するため、前記方法で得られた抽出物を化粧料組成物として用いることができ、共溶媒の場合、減圧蒸発器で除去することができる。
【0060】
前記超音波抽出物は、超音波抽出法によって抽出されたことを意味する。前記超音波抽出法は、超音波振動によって発生するエネルギーを利用する抽出方法であり、前記超音波が抽出溶媒中の試料に伝達されると、前記超音波によって温度が上昇するようになり、高い局部温度によって周囲に位置する反応物粒子の運動エネルギーを大きくするため、反応に必要な十分なエネルギーを得るようになり、超音波エネルギーの衝撃効果で高い圧力が誘導されて、試料に含まれた物質と抽出溶媒の混合効果を高めてくれて抽出効率が上昇することになる。
【0061】
前記超音波抽出法に使用できる抽出溶媒は、クロロホルム、エタノール、メタノール、水、エチルアセテート、ヘキサン、ジエチルエーテル及びこれらの混合物からなる群から選択されるいずれか一つであってもよい。
【0062】
前記溶媒抽出法は、冷浸抽出法、温浸抽出法、加圧抽出法又は還流抽出法であり得る。
【0063】
また、前記抽出物は抽出過程を遂行した後、減圧濾過過程を行うか、或いは追加で濃縮及び/又は凍結乾燥を行って濃縮するか、或いは溶媒を除去することができる。従って、本発明におけるチャノキの葉の抽出物は、通常の方法で乾燥された抽出物の乾燥物と通常の方法で濃縮された抽出物の濃縮物、前記抽出物、乾燥物又は濃縮物の希釈液を含む意味で使用される。前記得られたチャノキの葉の抽出物は、使用するときまで急速冷凍冷蔵庫(deep freezer)に保管することができる。
【0064】
また、前記口臭改善用口腔組成物は、ポリオール、ポリマー、可溶化剤、抗菌成分、口臭除去有効成分、歯茎疾患予防成分、pH調節剤、保存剤、防腐剤、着香剤、甘味剤、香料、色素及び溶剤からなる群から選択された1種以上の追加成分をさらに含むものであってもよい。
【0065】
本発明の口臭改善用口腔組成物は、前記有効成分の他に当業界で通常用いられる口腔組成物に含まれる補助成分を、当業者が容易に選択して添加することができる。
【0066】
前記可溶化剤とは、水に溶解しない物質を可溶化するために使用される界面活性剤のことを意味し、一例として、陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤又は非イオン界面活性剤であってもよく、一例として、アミド系非イオン界面活性剤、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンの共重合体(ポロキサマー)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、タウレート系などの陰イオン界面活性剤又はベタイン系両性界面活性剤であってもよい。
【0067】
前記抗菌成分とは、抗菌活性を有する物質であり、虫歯菌、歯周炎原因菌又は歯齦炎原因菌などに対する抗菌活性を有する成分を意味する。一例として、強い浸透圧効果を発揮できる塩化ナトリウムや前記虫歯菌、歯周炎原因菌、歯齦炎原因菌などに対する抗菌活性を有する天然抽出物、一例として、グレープフルーツ種子抽出物、プロポリス抽出液、蒲公英抽出物、桔梗濃縮エキス、黄柏濃縮エキス、ペパーミント抽出物、松葉抽出物、柳抽出物、海藻類抽出物又は天然抽出物由来の成分、一例として、トリクロサン(triclosan)、クルクマザントリザ油、塩化セチルピリジニウム(cetyl pyridium chloride)、塩化ベンゼトニウム(benzothonium chloride)、塩化ベンザルコニウム(benzalconium chloride)又はセチルピリジニウムクロリドやグルコン酸クロルヘキシジン(chlorohexidin gluconate)であってもよいが、これらに限定されるものではない。前記抗菌成分は、口臭改善用口腔組成物100重量部に0.01~10重量部又は0.05~5重量部の含有量で含まれてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0068】
前記口臭除去有効成分は、非発酵性糖アルコール(nonfermented sugar alcohol)、天然抽出物(extracts)、無機化合物(inorganic compounds)、酵素(enzyme)、酵素阻害剤(enzyme inhibitor)などであってもよい。
【0069】
前記非発酵性糖アルコールは、キシリトール(xylitol)、ソルビトール(sorbitol)、エリスリトール(erythritol)、マンニトール(mannitol)、マルチトール(maltitol)、ラクチトール(lactitol)、パラチニトール(palatinitol)、パラチノース(palatinose)、オリゴ糖(oligosaccharide)などであってもよく、前記天然抽出物は、柿葉抽出物(pancil extract)、サンギナリア抽出物(Sanguinaria extract)、牡丹皮抽出物などであってもよく、前記無機化合物(inorganic compounds)は、塩化亜鉛(zinc chloride)、グルコン酸銅(cupper gluconate)、ピロリン酸ナトリウム(tetrasodium pyrophosphate,TSPP)、酸性ピロリン酸ナトリウム(sodium acid pyrophosphate,SAPP)、ヘキサメタリン酸ナトリウム(sodium hexametaphosphate,SHMP)、トリポリリン酸ナトリウム(sodium tripolyphosphate,STP)、トリポリリン酸ナトリウムカリウム(sodium potassium tripolyphosphate,SKTP)、ピロリン酸カリウム(tetrapotassium pyrophosphate,TKPP)、酸性メタポリリン酸ナトリウム(acidic sodium meta-polyphosphate)、酸性ポリリン酸ナトリウム(acidic sodium polyphosphate)であってもよく、前記酵素(enzyme)は、デキストラナーゼ(dextranase)、ブドウ糖酸化酵素(glucose oxidase)、グルコースペルオキシダーゼ(glucose peroxidase)、ラクトペルオキシダーゼ(lactoperoxidase)、グルカナーゼ(glucanase)、プロテアーゼ(protease)又はリゾチーム(lysozyme)であってもよく、前記酵素阻害剤は、ペプチド(peptides)阻害剤及びコラゲナーゼ阻害剤など、口腔内の口臭発生に関与する酵素の阻害剤であってもよい。
【0070】
前記口臭除去有効成分は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0071】
前記口臭除去有効成分は、前記口臭改善用口腔組成物の重量を基準にして、0.001~30重量%又は0.01~10重量%の濃度で添加することができる。
【0072】
前記歯茎疾患予防成分は、塩化ナトリウム、酢酸トコフェロール、塩酸ピリドキシン、アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、トラネキサム酸又はアミノカプロン酸であってもよい。
【0073】
前記歯茎疾患予防成分は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0074】
前記歯茎疾患予防成分は、前記口臭改善用口腔組成物の重量を基準にして、0.001~30重量%又は0.01~10重量%の濃度で添加することができる。
【0075】
前記pH調節剤は、pHを調節したり、pHに敏感な有効成分、一例として、抗菌成分や薬効物質のためにpHの変化を緩衝するための物質を意味する。前記pH調節剤は、リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、クエン酸(citric acid)、リンゴ酸(malic acid)、コハク酸(succinic acid)、酒石酸(tartar acid)、ギ酸(formic acid)又は乳酸(lactic acid)であってもよい。
【0076】
前記pH調節剤は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0077】
前記pH調節剤は、前記口臭改善用口腔組成物の重量を基準にして、0.001~30重量%又は0.01~10重量%の濃度で添加することができる。
【0078】
前記着香剤は、口臭改善用口腔組成物に爽やかさを与え、不潔な臭いを抑制して使用感と嗜好度を向上させる目的で付加される成分であり、一例として、高麗人参抽出物、プロポリス抽出物、みかん油、L-メントール、クールミント香(HF-61399)、ミント香着香剤又は調合香料(リンゴ香、HF-30630)などであってもよい。
【0079】
前記甘味剤は、口臭改善用口腔組成物にある程度の甘味を与え、清涼感などを付与するための目的で付加される成分であり、一例として、サッカリンナトリウム、サッカリンナトリウム水和物、アスパルテーム、ステビオシド、ステビオール配糖体、キシリトール、D-キシロース(D-Xylose)、グリチルリチン酸、カモミール抽出物、セージエキス又はプロポリス抽出物であってもよい。
【0080】
前記香料は、食用可能な香料が使用され、一例として、メントール(Mentol)、アネトール(Anetol)、オイゲノール(Eugenol)、リモネン(Limonene)、オシメン(Ocimene)、n-ドデシルアルコール(n-Dodecyl Alcohol)、シトロネロール(Citronellol)、α-テルピネオール(a-Terpineol)、サリチル酸メチル(Methyl salicylate)、メチルアセテート(Methyl Acetate)、シトロネリルアセテート(Citronellyl Acetate)、シネオール(Cineol)、リナロール(Linalool)、エチルリナロール(Ethyl Linalool)、バニリン(Vanillin)、チモール(Thymol)、スペアミント(Spearmint)オイル、セージ(Sage)オイル、ローズマリー(Rosemary)オイル、シナモン(Cinamon)オイル、ペパーミントオイル、ユーカリプトールオイル又は果物抽出物であってもよい。
【0081】
前記色素は、主に食用色素が用いられる。
【0082】
前記溶剤は、一例として、水又は有機溶媒であってもよく、好ましくは水又はエタノール水溶液であってもよく、より好ましくは水であってもよい。
【0083】
また、本発明の一具現例に係る口臭改善用口腔組成物は、口臭改善用口腔組成物に配合できる他の添加剤も含むことができる。
【0084】
前記口腔組成物は、口腔洗浄剤又はうがい剤であってもよく、うがいを容易にするために液状で製造されてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0085】
[製造例:口臭改善用口腔組成物の有効成分の製造]
【0086】
口臭改善用口腔組成物を製造するために、有効成分であるキトサン及び緑茶抽出物を製造した。
【0087】
まず、キトサンは高分子キトサンを0.5%酢酸に添加して溶解した後、前記酢酸キトサン溶液にキトサン分解酵素を用いて適度な分子量となるように分解時間を調節して反応させた後、それぞれの時間別の分解酵素を処理したキトサン溶液をGPCを用いて平均分子量を測定して、重量平均分子量(MW)がそれぞれ108,210Da、55,130Da、11,170Da、5,208Da及び815Daとなるキトサンを得た。
【0088】
また、前記緑茶抽出物の添加による嗜好度は、カテキンの渋味によって影響を受けるため、緑茶抽出物はカテキンの含有量が20%である緑茶抽出物の粉末を購入して使用した。
【0089】
前記購入した緑茶抽出物を口腔洗浄剤に添加して、緑茶抽出物の濃度が0.1%(w/w、カテキン含有量0.02%w/w)、0.3%(w/w、カテキン含有量0.06%w/w)、0.5%(w/w、カテキン含有量0.1%w/w)、1%(w/w、カテキン含有量0.2%w/w)となるように緑茶抽出物の添加量を調節して使用した。
【発明を実施するための形態】
【0090】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるよう本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は種々の異なる形態で具現化することができ、ここで説明する実施例は本発明を例示するためのものであって、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【0091】
本実験は、それぞれ同じ実験を3回以上繰り返して行い、それぞれの実験結果から得られたデータは、SPSS/WIN 12.0version統計プログラム(Statistical Package for social Science,IBM,USA)を用いて、平均及び平均偏差(Mean±SEM)で表した。集団間の有意性を検証するために、一元配置分散分析(one-way ANOVA)を通じて分析し、事後検定(Post-Hoc test)は、ダンカンの多重範囲検定(Duncan’s multiple range test)によってP<0.05水準で各実験群間の有意性を検証した。
【0092】
[実験例:有効成分による口臭改善効果の確認]
【0093】
実験例1-1.嗜好度による有効成分の添加量の確認
【0094】
口腔組成物の場合、口臭除去効果が重要ではあるが、使用者の好みと嗜好によって様々な製品が選択され得るので、まず有効成分の添加量による嗜好度を添加して有効成分の含有量を確認した。
【0095】
実験に使用した口腔組成物は、有効成分の他に溶剤として精製水を使用し、緑茶抽出物(表1)及びキトサン(表2)の他にメントール(0.05%(w/w))、キシリトール(3%(w/w))及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(0.05%(w/w))をさらに添加して製造した。前記キトサンは、平均分子量が11,170Daであるキトサンを使用した。
【0096】
製造された口腔組成物の有効成分添加量による嗜好度調査は、実験に影響を及ぼしうる口腔疾患及びその他の疾患がなく、官能実験に基づいた訓練を受けた成人男女10人ずつを選別し、それぞれの口腔組成物を使用し、全体的な嗜好度を5点測定法で測定した。5点が一番良いことを意味し、1点は渋味が非常に強くて非常に良くないことを意味する。前記測定結果を下記表3に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
【表3】
【0100】
前記表3に示すように、緑茶抽出物及びキトサンの含有量が増加する場合、渋味が強くなって全体的な嗜好度が低下することが確認され、特に、一定水準の含有量を超える場合は、強い渋味によって嗜好度が著しく減少することを確認した。前記結果により、緑茶抽出物の場合、1.5%以上添加される場合(カテキン含有量基準で0.3%(w/w))は、非常に強い渋味によって使用が難しいと判断され、緑茶抽出物が1.0%以下添加される場合(カテキン含有量基準で0.2%(w/w))は、一定水準以上の嗜好度を確保できて、緑茶抽出物は1.0%以下の使用が求められると評価された。
【0101】
また、キトサンの場合、0.15%以上添加される場合は、非常に強い渋味によって使用が難しいと判断され、0.1%以上添加される場合でも製品として販売されて使用されることが制限的であると判断され、キトサンが0.05%以下添加される場合は、一定水準以上の嗜好度を確保できて、キトサンは0.05%以下の使用が求められると評価された。
【0102】
実験例1-2.キトサン分子量による口臭制御効果の確認
【0103】
前記実験例1-1で確認された添加量を基準にして、各有効成分の口臭制御効果を確認した。まず、キトサン分子量による口臭制御効果を下記表4の口腔組成物を用いて確認した。
【0104】
【表4】
【0105】
前記製造された口腔組成物の口臭制御効果を確認するために、実験に影響を及ぼしうる口腔疾患及びその他の疾患のない成人男女10人ずつを選別し、口臭変化の有無を確認した。具体的には、前記実験群が2時間ごとに、口腔組成物の使用前と口腔組成物12mLを使用して30秒間うがいを行った後1時間が経過した時点で、口臭測定器(Oral Chroma CHM-2、韓国)を用いて図1と同様に、口臭原因物質(硫化水素(H2S)、メチルメルカプタン(CH3SH)、ジメチルスルフィド((CH32S)を用いて口臭値を測定し、その結果を下記表5~表7に示す。下記表5~表7での減少率は、使用前と比べた使用後の口臭成分の含有量が減少した程度を示す。
【0106】
【表5】
【0107】
【表6】
【0108】
【表7】
【0109】
前記表5~表7に示すように、キトサンを使用した場合、対照群に比べて口臭除去の効果を確認したものの、キトサンの平均分子量によって口臭除去の効果が異なることが確認された。特に、最も効果が良いことが確認された11,170Daの場合は、815Daに比べて抑制効果が約175%以上改善され、108,210Daに比べても約46%以上改善されることが確認され、対照群に比べては約9倍近く改善されることが確認された。従って、口腔洗浄のためにキトサンを使用するためには、平均分子量が11,170Daであるキトサンを使用することが最も好ましいことが確認された。
【0110】
実験例1-3.緑茶抽出物の量による口臭制御効果の確認
【0111】
前記実験例1-2と同様に、緑茶抽出物の量による口臭制御効果を下記表8の口腔組成物を用いて確認した。
【0112】
【表8】
【0113】
前記製造された口腔組成物の口臭制御効果を確認するために、実験に影響を及ぼしうる口腔疾患及びその他の疾患のない成人男女10人ずつを選別し、前記実験例1-2のように口臭変化の有無を確認し、結果を下記表9~表11に示す。下記表9~表11での減少率は、使用前と比べた使用後の口臭成分の含有量が減少した程度を示す。
【0114】
【表9】
【0115】
【表10】
【0116】
【表11】
【0117】
前記表9~表11に示すように、緑茶抽出物を使用した場合、対照群に比べて口臭除去効果が改善され、使用量が増加するにつれて口臭除去効果は改善されたものの、0.5%添加した場合と1.0%添加した場合はその差が制限的であり、むしろ0.5%添加した場合の方が口臭除去効果により優れていることが確認された。特に、最も効果が良いことが確認された0.5%とは異なり、1.0%で前記実験例1-1及び表3に記載されたように、嗜好度も急激に減少することが確認され、口腔組成物に含まれる緑茶抽出物の含有量は、0.5%(w/w)であるものが最も好ましいことが確認された。
【0118】
実験例1-4.緑茶抽出物とキトサン分子量による口臭制御効果の確認
【0119】
前記実験例1-2及び実験例1-3で確認された結果に基づいて緑茶抽出物及びキトサンを併用した場合、口臭制御効果を確認した。口臭制御効果を下記表12の口腔組成物を用いて確認した。
【0120】
【表12】
【0121】
前記製造された口腔組成物の口臭制御効果を確認するために、実験に影響を及ぼしうる口腔疾患及びその他の疾患のない成人男女10人ずつを選別し、前記実験例1-2及び1-3のように口臭変化の有無を確認し、結果を下記表13~表15に示す。下記表13~表15での減少率は、使用前と比べた使用後の口臭成分の含有量が減少した程度を示す。
【0122】
【表13】
【0123】
【表14】
【0124】
【表15】
【0125】
前記表13~表15に示すように、緑茶抽出物とキトサンを併用した場合、全般的に口臭除去効果が著しく改善されたが、キトサン分子量による傾向性は、緑茶抽出物を使用しなかった実験例1-2と同様の傾向を示して、緑茶抽出物がキトサン分子量による口臭除去効果に影響を及ぼすものではないことが確認された。具体的に、最も効果が良いことが確認された11,170Daの場合は、815Daに比べて抑制効果が約58以上改善され、108,210Daに比べても約21%以上改善されることが確認され、対照群に比べては約8倍近く改善されることが確認された。従って、口腔洗浄のためにキトサンを使用するためには、緑茶抽出物と併用する場合でも、平均分子量が11,170Daであるキトサンを使用するのが最も好ましいことが確認された。
【0126】
実験例1-5.緑茶抽出物とキトサンによるタンパク質老廃物除去効果の確認
【0127】
前記実験例1-2~実験例1-4で確認された結果に基づいて、緑茶抽出物0.5%及び平均分子量が11,170Daであるキトサン0.05%を使用した口腔組成物を用いて30秒間うがいを行った後、口腔内のタンパク質分解副産物、すなわちタンパク質老廃物の除去効果を確認した。前記口腔内のタンパク質分解副産物の吸着排出の確認のために、キャラメル色素を口腔洗浄剤に溶解させて、吸着された副産物が茶色のキャラメル色素に染まってうがいの後吐き出した時、茶色の副産物としてタンパク質の分解副産物を確認した。前記実験結果を図2に示す。
【0128】
前記図2に示すように、緑茶抽出物0.5%及び平均分子量が11,170Daであるキトサン0.05%を使用した口腔組成物を用いて30秒間うがいをした後吐き出した場合、使用前に比べて著しく多くの口腔内のタンパク質分解副産物が除去されることが確認された。
【0129】
前記の結果から、本発明の口腔組成物は、口腔内のタンパク質分解副産物を除去して口臭を効果的に制御できることが確認された。
【0130】
以上、本発明は一実施例を参考にして説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、ここから様々な変形及び均等な実施例が可能であることを理解できるだろう。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明は、天然物であるキトサンと緑茶抽出物を主成分として使用するものであるため、人体に有害な合成化合物の使用を最小限に抑えることができるので安全であるだけでなく、口臭除去効果に優れながらも渋味など使用する上で不便さを感じさせることなく嗜好度に優れて、消費者の使用感及び満足感を向上させる効果を有するので、様々な用途の口臭改善用口腔組成物として使用することができる。
図1
図2