(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】電気信号サンプリング装置
(51)【国際特許分類】
H03K 17/00 20060101AFI20240822BHJP
G01R 13/02 20060101ALI20240822BHJP
H03K 5/133 20140101ALI20240822BHJP
【FI】
H03K17/00 D
G01R13/02
H03K5/133
(21)【出願番号】P 2023542992
(86)(22)【出願日】2022-02-23
(86)【国際出願番号】 CN2022077435
(87)【国際公開番号】W WO2022179521
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】202110210035.8
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522405886
【氏名又は名称】普源精電科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】史 慧
(72)【発明者】
【氏名】王 悦
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-204443(JP,A)
【文献】特開2016-024197(JP,A)
【文献】特開2019-074520(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0302183(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0183409(US,A1)
【文献】特開2012-083342(JP,A)
【文献】特表2009-544242(JP,A)
【文献】実開平05-063128(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0005640(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/00
G01R 13/02
H03K 5/133
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス信号を生成するように構成されるパルス信号源と、
前記パルス信号を2分割してファンアウトした後にテスト入力信号及びサンプリング入射信号を生成するように構成される結合器を介して前記パルス信号源に接続され、前記テスト入力信号が前記結合器から被測設備に入力された後に反射されてテスト出力信号を形成し、前記テスト出力信号が前記被測設備から前記結合器に伝送され、前記結合器から前記サンプリング入射信号及びテスト出力信号が重畳された信号を採取するように構成される、第1サンプリングモジュールと、
時間遅延を予め設定することでN個の励起信号を生成し、前記N個の励起信号は、前記パルス信号源を前記パルス信号の1周期においてN組のパルス信号を生成するように制御するために用いられ
、Nが1よりも大きい整数である信号遅延モジュールと、を備え、
前記信号遅延モジュールは、
サンプリングクロック信号を生成し、かつ前記パルス信号源及び前記第1サンプリングモジュールが固定の位相関係又は接続関係を有するように保証して、前記パルス信号源がパルス信号を生成する周波数及び位相を前記サンプリングクロック信号に同期させるように構成されるサンプリングクロックユニットと、
前記サンプリングクロック信号を、時間遅延を予め設定することでN個の励起信号を生成するように構成される時間遅延回路と、を備える、
電気信号サンプリング装置。
【請求項2】
前記N個の励起信号が、前記パルス信号源を前記パルス信号の1周期においてN組のパルス信号を生成するように制御するために用いられる場合、
前記パルス信号源は前記時間遅延回路につながり、
前記時間遅延回路は前記サンプリングクロックユニットにつながり、
前記サンプリングクロックユニットは前記第1サンプリングモジュールにつながる、
請求項1に記載の電気信号サンプリング装置。
【請求項3】
前記時間遅延回路は、キャリチェーン、時間遅延チップ、フィールドプログラマブルゲートアレイFPGAの時間遅延ユニット又は移相器のうちの1種類である、
請求項2に記載の電気信号サンプリング装置。
【請求項4】
前記被測設備の信号出力端につながり、前記被測設備の第2テスト出力信号を採取し、第2サンプリング信号を出力するように構成される第2サンプリングモジュールをさらに備える、
請求項1に記載の電気信号サンプリング装置。
【請求項5】
前記パルス信号源は前記時間遅延回路につながり、
前記時間遅延回路は前記サンプリングクロックユニットにつながり、
前記サンプリングクロックユニットは前記第2サンプリングモジュールにつながる、
請求項
4に記載の電気信号サンプリング装置。
【請求項6】
リアルタイムオシロスコープである、
請求項1に記載の電気信号サンプリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年2月24日に中国専利局に出願された、出願番号が202110210035.8である中国特許出願の優先権を主張し、当該出願の全ての内容が引用により本願に組み込まれている。
【0002】
本願の実施例は、電子回路の技術分野に関し、例えば電気信号サンプリング装置に関する。
【背景技術】
【0003】
特性インピーダンステスト(Time Domain Reflectometry、TDR)及び時間領域伝送特性テスト(Time Domain Transmission、TDT)は信号完全性分析、ケーブル、プリント基板(Printed Circuit Board、PCB)のテストなどのシーンに広く応用されており、最も常用されているTDRテスト設備はサンプリングオシロスコープであり、サンプリングオシロスコープは非常に低いサンプリングレートで非常に高いサンプリング帯域幅を実現可能であるが、サンプリングオシロスコープは一般的に、コストが高く、繰り返し信号のテストにしか設定できない。
【0004】
リアルタイムオシロスコープは被測信号をリアルタイムでテストすることができ、リアルタイムオシロスコープにTDR又はTDT機能を集積することで、TDR又はTDTのコストを効果的に削減することができる。時間分解能はTDRの1つの重要な指標であり、周波数分解能はTDTの1つの重要な指標であり、この2つの指標に影響する要素にはオシロスコープの帯域幅(Bandwidth、BW)、パルス信号源の立ち上がり時間Trがあり、帯域幅BWが大きく、立ち上がり時間Trが小さいほど、TDRの時間分解能が高くなり、かつTDTがTDRの周波数領域変換であるため、TDRの時間分解能が高いほどTDTの周波数分解能も高くなる。
【0005】
TDRの時間分解能/TDTの周波数分解能を向上させる一般的な方法には、帯域幅を向上させるという方法、及びパルス信号源の信号立ち上がり時間を減少させるという方法がある。帯域幅を向上させるという方法について、リアルタイムオシロスコープのアナログ帯域幅が10GHzに達すると、リアルタイムオシロスコープが応答可能な速いエッジの立ち上がり時間はT
R=35ピコ秒(picosecond、ps)で、信号が被測設備に送信されてから反射を経て送信点に戻るまでの時間が2Tであれば、2T<T
Rで、T<17.5psであり、即ち、リアルタイムオシロスコープのアナログ帯域幅が10GHzに向上すると、TDRの時間分解能は17.5psに達することができ、パルス源信号の立ち上がり時間を減少させるという方法について、現在最も速いエッジの立ち上がり時間は35psであり、即ち、リアルタイムオシロスコープによりテストされた速いエッジの立ち上がり時間T
測、パルス源信号の立ち上がり時間T
S及びオシロスコープが応答可能な速いエッジの立ち上がり時間T
scopeの間の関係である式(1)から分かるように、パルス源信号の立ち上がり時間T
Sが、リアルタイムオシロスコープが応答可能な速いエッジの立ち上がり時間T
scopeよりも遥かに小さい場合に限り、パルス源信号のエッジ速度を上げないと、TDRの時間分解能&TDTの周波数分解能を効果的に上げることができないが、35psよりも遥かに小さいパルス幅信号の設計はさらに困難である。
【数1】
【0006】
以上のことから、関連技術におけるTDR又はTDT機能を集積したリアルタイムオシロスコープの時間又は周波数分解能を向上させる方法は、実現コストが高く、かつ実現が複雑、困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願の実施例は、サンプリングオシロスコープと等価の効果を実現し、サンプリング帯域幅を増大させ、時間分解能を上げるための電気信号サンプリング装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の実施例は、
パルス信号を生成するように構成されるパルス信号源と、
前記パルス信号を2分割してファンアウトした後にテスト入力信号及びサンプリング入射信号を生成するように構成される結合器を介して前記パルス信号源に接続され、前記テスト入力信号が前記結合器から被測設備に入力された後に結合されてテスト出力信号を形成し、前記結合器から前記サンプリング入射信号及びテスト出力信号を採取するように構成される第1サンプリングモジュールと、
時間遅延を予め設定することでN個の励起信号を生成し、前記N個の励起信号は、前記パルス信号源を前記パルス信号の1周期においてN組のパルス信号を生成するように制御するために用いられ、又は、前記N個の励起信号は、前記サンプリング入射信号の1周期において前記第1サンプリングモジュールをN組のサンプリング入射信号を生成するように制御するために用いられ、そのうち、Nが1よりも大きい整数である信号遅延モジュールと、を備える電気信号サンプリング装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本願の実施例に係る1つの電気信号サンプリング装置の構造模式図である。
【
図2】本願の実施例に係る他の電気信号サンプリング装置の構造模式図である。
【
図3】本願の実施例に係る更なる電気信号サンプリング装置の構造模式図である。
【
図4】本願の実施例に係る1つのキャリチェーン方式を用いて時間遅延させる時間遅延回路の構造模式図である。
【
図5】本願の実施例に係る電気信号サンプリング装置の時間遅延サンプリングの波形模式図である。
【
図6】本願の実施例に係る電気信号サンプリング装置の時間遅延サンプリングの波形模式図である。
【
図7】本願の実施例に係る電気信号サンプリング装置の時間遅延サンプリングの波形模式図である。
【
図8】本願の実施例に係る電気信号サンプリング装置の時間遅延サンプリングの波形模式図である。
【
図9】本願の実施例に係る更なる電気信号サンプリング装置の構造模式図である。
【
図10】本願の実施例に係る更なる電気信号サンプリング装置の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本願の具体的な実施例について詳細に説明する。
【0011】
なお、説明を容易にするために、図面に示しているのは、本願に関連する一部に過ぎず、全ての内容ではない。いくつかの例示的な実施例がフローチャートに図示される処理又は方法として説明されていることは、例示的な実施例についてより詳しく論じる前に言及しておくべきである。フローチャートにおいて各操作(又はステップ)が順序的な処理として説明されているが、その中の多くの操作が並行的、併発的又は同時に実施可能である。また、各操作の順序は新たにアレンジされてもよい。その操作が完了すると、前記処理が終了されてもよいが、図面に含まれていない付加ステップをさらに有してもよい。前記処理は方法、関数、規定、サブルーチン、及びサブプログラムなどに対応することができる。
【0012】
図1は、本願の実施例に係る1つの電気信号サンプリング装置の構造模式図であり、本実施例は、TDR又はTDT機能を集積したリアルタイムオシロスコープの時間分解能又は周波数分解能を向上させる場合に適用できる。
【0013】
当該電気信号サンプリング装置100の構造は、
パルス信号を生成するように構成されるパルス信号源110と、
前記パルス信号を2分割してファンアウトした後にテスト入力信号及びサンプリング入射信号を生成するように構成される結合器120を介して前記パルス信号源110に接続され、前記テスト入力信号が前記結合器120から被測設備150に入力された後に結合されてテスト出力信号を形成し、前記結合器120から前記サンプリング入射信号及びテスト出力信号を採取するように構成される第1サンプリングモジュール130と、
時間遅延を予め設定することでN個の励起信号を生成し、前記N個の励起信号は、パルス信号源110を前記パルス信号の1周期においてN組のパルス信号を生成するように制御するために用いられ、又は、前記N個の励起信号は、前記サンプリング入射信号の1周期において前記第1サンプリングモジュールをN組のサンプリング入射信号を生成するように制御するために用いられ、そのうち、Nが1よりも大きい整数である信号遅延モジュール140と、を備える。
【0014】
そのうち、パルス信号源110は、電気信号サンプリング装置100の入射信号源として、パルス信号を生成するように構成され、当該パルス信号は、速い立ち上がりエッジを有し、即ち、信号のエッジの立ち上がり時間が非常に短く、例示的に、パルス信号のエッジの立ち上がり時間が約35ピコ秒である。
【0015】
好ましくは、パルス信号源110は、コンパレータ又は整形回路を用いて実現する高速パルス源であってもよい。
【0016】
図1を引き続き参照し、結合器120が電気信号サンプリング装置100に外付け可能であり、結合器120は、パルス信号を2分割してファンアウトした後、一方を被測設備150のテスト入力信号として、他方をサンプリング入射信号として第1サンプリングモジュール130に接続する。
【0017】
上記実施例において、結合器120が電気信号サンプリング装置100の外部に置かれているため、信号の伝送はいずれも電気信号サンプリング装置100及び外部の結合器120を介して交互に完成することが理解できる。
【0018】
図2は、本願の実施例に係る1つの電気信号サンプリング装置の構造模式図であり、
図2を参照すると、前記結合器120は電気信号サンプリング装置100の内部に置かれているため、信号の伝送はいずれも電気信号サンプリング装置100の内部で完成する。
【0019】
結合器120が電気信号サンプリング装置100の内部に置かれると、電気信号サンプリング装置100のサンプリングチャネルに追加、切り替えが必要とされるか、又は電気信号サンプリング装置100が時間領域反射測定器(TDR計)として固定されて、本願の実施例に係る電気信号サンプリング装置がTDR/TDT機能を行って使用されることが実現できず、同時に、操作が煩わしく、結合器120が電気信号サンプリング装置100の外部に置かれた方が柔軟であることが理解できる。
【0020】
上記実施例を踏まえ、前記結合器120は、パワー分配器、方向性結合器、定在波比ブリッジ、又は演算増幅器のうちの1種類であってもよい。
【0021】
第1サンプリングモジュール130は電気信号サンプリング装置100のアナログ信号サンプリングチャネルであり、第1サンプリングモジュール130はパルス信号源110のサンプリング入射信号及び被測設備150のテスト出力信号を採取するように構成される。
【0022】
第1サンプリングモジュール130は当業者が同時に採取された波形信号に対して分析することを容易にするために、採取したサンプリング入射信号及びテスト出力信号が重畳された後に得られた信号波形を時間領域ディスプレイに表示させるように構成されることが理解できる。第1サンプリングモジュール130のサンプリングは、電気信号サンプリング装置100の制御を受けるとともに、信号遅延モジュール140のサンプリングクロックの位相関係に基づいてサンプリングを行う。
【0023】
信号遅延モジュール140は、時間遅延を予め設定することでN個の励起信号を生成し、N個の励起信号は、パルス信号源110に対する制御のため、即ちパルス信号源110を前記パルス信号の1周期においてN組のパルス信号を生成するように制御するために用いられ、又は、N個の励起信号は、第1サンプリングモジュール130に対するサンプリング制御のため、即ち前記サンプリング入射信号の1周期において前記第1サンプリングモジュール130をN組のサンプリング入射信号を生成するように制御するために用いられ、信号遅延モジュール140は、時間遅延を予め設定してN個の励起信号を生成することでサンプリングオシロスコープと等価の効果を実現し、ひいては、TDR測定の時間分解能又はTDT測定の周波数分解能を向上させる。
【0024】
なお、上記実施例を踏まえ、前記電気信号サンプリング装置100はリアルタイムオシロスコープであってもよい。被測設備150は、配線板などの、インピーダンステストを行う必要がある素子であってもよく、本実施例は、これについて限定しない。
【0025】
本願の実施例に係る技術案において、当該電気信号サンプリング装置100は、パルス信号を生成するように構成されるパルス信号源110と、前記パルス信号を2分割してファンアウトした後にテスト入力信号及びサンプリング入射信号を生成するように構成される前記結合器120を介して前記パルス信号源110に接続され、前記テスト入力信号が前記結合器120から被測設備150に入力された後に結合されてテスト出力信号を形成し、そして、テスト出力信号が被測設備150から前記結合器120に伝送され、前記結合器120から前記サンプリング入射信号及びテスト出力信号を採取するように構成される第1サンプリングモジュール130と、時間遅延を予め設定することでN個の励起信号を生成し、前記N個の励起信号は、パルス信号源110を前記パルス信号の1周期においてN組のパルス信号を生成するように制御するために用いられ、又は、前記N個の励起信号は、前記サンプリング入射信号の1周期において前記第1サンプリングモジュールをN組のサンプリング入射信号を生成するように制御するために用いられ、そのうち、Nが1よりも大きい整数である信号遅延モジュール140と、を備える。関連技術におけるTDRの時間分解能の向上が技術改善に依存するという問題を解決し、サンプリングオシロスコープと等価の効果を実現し、サンプリング帯域幅を増大させ、時間分解能を向上させた。
【0026】
図3は、本願の実施例に係る1つの電気信号サンプリング装置の構造模式図であり、
図3を参照し、上記実施例を踏まえ、前記信号遅延モジュール140は、サンプリングクロック信号を生成するように構成されるサンプリングクロックユニット142と、前記サンプリングクロック信号を、時間遅延を予め設定することでN個の励起信号を生成するように構成される時間遅延回路141と、を備える。
【0027】
図3を引き続き参照し、上記実施例を踏まえ、前記パルス信号源110は前記時間遅延回路141につながり、前記時間遅延回路141は前記サンプリングクロックユニット142につながり、前記サンプリングクロックユニット142は前記第1サンプリングモジュール130につながる。
【0028】
そのうち、前記サンプリングクロックユニット142は、電気信号サンプリング装置100のパルス信号源110及び第1サンプリングモジュール130にクロック源を提供し、即ちサンプリングクロック信号を生成し、かつパルス信号源110及び第1サンプリングモジュール130が固定の位相関係又は接続関係を有するように保証して、パルス信号源110がパルス信号を生成する周波数及び位相をサンプリングクロック信号に同期させるように構成される。
【0029】
サンプリングクロックユニット142が生成するのは、2つの時間遅延、位相、幅値が完全に同じである2本のクロック信号、即ち2本の時間遅延、位相、幅値が完全に同じであるサンプリングクロック信号であり、それぞれが時間遅延回路141及び第1サンプリングモジュール130に出力されることが理解できる。
【0030】
例示的に、サンプリングクロックユニット142は位相同期ループ回路を用いてもよいし、その他の関連案における2本を同期して出力し、クロック源を同期させることができるモジュールを用いてもよく、本実施例はサンプリングクロックユニット142の実現方式について何ら限定しない。
【0031】
時間遅延回路141は、励起信号及びサンプリングクロック信号が一定の位相関係を有する高速パルス信号になるように、サンプリングクロック信号に対してΔtの遅延の決定を行い、即ち時間遅延を予め設定して、Δt順次時間遅延する複数の励起信号を生成するように構成される。
【0032】
時間遅延回路141の実現方式によって、それが向上させる時間分解能の大きさも異なることを決めたことが理解できる。
【0033】
図3を引き続き参照し、上記実施例を踏まえ、時間遅延回路141は、キャリチェーン、時間遅延チップ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array、FPGA)の時間遅延ユニット又は移相器のうちの1種類であってもよい。
【0034】
例示的に、時間遅延回路141は、RC回路により時間遅延を行い、即ち抵抗器R又はコンデンサCの調節により異なる時間遅延を実現可能であり、ひいては、100フェムト秒(femtosecond、fs)レベルの時間遅延を実現可能であり、時間遅延回路141は時間遅延チップによっても実現可能であり、関連技術の時間遅延チップが、ステップが最小で2psである時間遅延を実現可能であり、時間遅延回路141はさらに、FPGAの時間遅延ユニットを用いて実現可能であり、その時間遅延ユニットの最小時間遅延ステップが30psであり、時間遅延回路141はさらに、キャリチェーンを用いて時間遅延を実現可能であり、実現可能な最小遅延時間が10psである。時間遅延回路141はさらに、移相器を用いて実現可能である。上記実施例を踏まえ、時間遅延回路141の実現方式によって、対応する時間遅延の時間も異なるため、向上可能な等価サンプリングレートも異なり、向上させるTDRの時間分解能&TDTの周波数分解能も異なり、本実施例は時間遅延回路141の実現方式について何ら限定しない。
【0035】
例示的に、時間遅延回路141がキャリチェーンを用いて実現されることを例にとると、キャリチェーン(Carry chain)はFPGA内で高速演算を実現するためのユニットであり、その時間遅延量は非常に小さく、一般的に10ps程度まで可能であり、即ち入力されたステップ信号が1段のキャリチェーンを経て、10ps程度時間遅延されることができる。したがって、キャリチェーンは、より大きな時間遅延を実現するためにカスケード接続することができる。
【0036】
図4は本願の実施例に係る1つの、キャリチェーン方式を用いて時間遅延させる時間遅延回路の構造模式図であり、
図4を参照し、1つのFPGAデバイス内にはキャリチェーン1、キャリチェーン2……キャリチェーンNという計N段のキャリチェーンが備えられ、各段のキャリチェーンの出力はタップを介してFPGAデバイスの出力端に接続することができ、各段のタップに対応する時間遅延は異なり、異なる時間遅延を選択して出力するように、すべてのタップがスイッチを使用して選択可能で、1つのステップ信号を入力し、図示されたキャリチェーンの時間遅延を経て出力し、各キャリチェーンの出力がΔt順次時間遅延され、そのうち、Δtの大きさはFPGAデバイスにより決められ、スイッチにより異なるタップを対応して選択し、ひいては、入力されたステップ信号への精細な時間遅延調節を実現する。
【0037】
例示的に、
図5から
図8は本願の実施例に係る電気信号サンプリング装置の時間遅延サンプリングの模式図であり、なお、図面におけるTpは1回のサンプリングの持続時間、即ち1回に多くのサンプリングポイントをサンプリングする時間を表し、CLKはサンプリングクロック信号であり、Tclkはサンプリングクロック信号の周期である。
図5から
図8を参照し、本実施例において、パルス信号の1周期がtであり、時間遅延回路が時間遅延可能な最小ステップがΔt
0であり、時間遅延回路の実際の遅延の時間がΔtであり、かつΔt>Δt
0であると仮定し、サンプリングクロック信号とパルス信号とが同期している場合、電気信号サンプリング装置100がサンプリングクロック信号の立ち上がりエッジに基づいて、第1サンプリングモジュール130に入力されたパルス信号に対して1回目のサンプリングを行うと、
図5に示すようなパルス信号の黒色の塗りつぶしのサンプリングポイントがサンプリングクロック信号の立ち上がりエッジでサンプリングされ、その後、時間遅延回路がサンプリングクロック信号に対してΔtの時間の遅延を行った後、電気信号サンプリング装置100が引き続きサンプリングクロック信号の立ち上がりエッジに基づいて、第1サンプリングモジュール130に入力されたパルス信号に対して2回目のサンプリングを行うと、
図6に示すようなパルス信号の黒色の塗りつぶしなしのサンプリングポイントがサンプリングクロック信号の立ち上がりエッジでサンプリングされ、そして、時間遅延回路がサンプリングクロック信号に対して2*Δtの時間の遅延を行った後、電気信号サンプリング装置100がサンプリングクロック信号の立ち上がりエッジに基づいて、第1サンプリングモジュール130に入力されたパルス信号に対して3回目のサンプリングを行うと、
図7に示すようなパルス信号の黒色菱形サンプリングポイントがサンプリングクロック信号の立ち上がりエッジでサンプリングされる。
【0038】
以上から、サンプリングされた波形及びサンプリングクロック信号は固定の位相関係を有するものであるため、この固定の位相関係により、アルゴリズムを利用してこの3回のサンプリング点を位相関係に従って順次並べれば、
図8に示すような高サンプリングレートで採取された波形を得ることができる。これから分かるように、パルス信号の元の1つのサンプリング周期はtであり、サンプリングレートは1/tであることがわかる。それであれば、上記のパルス信号を遅延させる方法を経て、サンプリング周期は元のtからΔtに変わり(即ち3*Δt=t)、対応するサンプリングレートは3/tに変わり、サンプリングレートが3倍に向上すると、この時の時間分解能がΔtに達する。したがって、時間遅延回路141の最小時間遅延ステップが小さいほど、電気信号サンプリング装置100の時間分解能が高くなるため、従来のFPGAのキャリチェーンを用いれば、時間分解能を10psに向上させることができる。
【0039】
図9は本願の実施例に係る1つの電気信号サンプリング装置の構造模式図であり、
図9を参照し、上記実施例を踏まえ、前記パルス信号源110は前記サンプリングクロックユニット142につながり、前記時間遅延回路141は前記サンプリングクロックユニット142につながり、前記時間遅延回路141は前記第1サンプリングモジュール130につながる。
【0040】
本実施例において、電気信号サンプリング装置100が前記サンプリング入射信号の1周期において前記第1サンプリングモジュール130をN組のサンプリング入射信号を生成するように制御することで実現する、TDR&TDT時間分解能の向上は、パルス信号源を前記パルス信号の1周期においてN組のパルス信号を生成するように制御することに用いられる原理と同じであり、ここではこれ以上説明しない。
【0041】
例示的に、1回目はクロックの立ち上がりエッジでサンプリング入射信号に対して1回のサンプリングを行い、2回目はクロック信号をΔt時間遅延させた後、サンプリングクロック信号を使用してもう一回サンプリング入射信号に対してサンプリングを行い、3回目はクロック信号を2*Δt時間遅延させた後、サンプリングクロック信号を使用してもう一回サンプリング入射信号に対してサンプリングを行う。この3回の時間遅延は固定して決定された位相関係を有するため、アルゴリズムを用いてこの3回のサンプリングされたデータをインターリーブして結合した後、高サンプリングレートの波形信号を得ることができ、これにより、等価サンプリングレートを向上させるという目的、及び時間分解能を向上させるという目的を達成する。
【0042】
上記実施例を踏まえ、時間遅延回路141は、キャリチェーン、アナログデジタル変換チップ、位相同期ループ、又は時間遅延チップのうちの1種類であってもよい。
【0043】
そのうち、時間遅延回路141は、デジタルアナログ変換チップが所持する時間遅延調節機能を用いており、その最小時間遅延時間が約fsレベルにあるため、デジタルアナログ変換チップによっても時間分解能をよりよく上げることができる。
【0044】
上記実施例を踏まえ、時間遅延回路141は、移相器、位相同期ループ、又は時間遅延チップのうちの1種類により実現されてもよい。
【0045】
図10は本願の実施例に係る1つの電気信号サンプリング装置の構造模式図であり、
図10を参照し、上記実施例を踏まえ、前記電気信号サンプリング装置100は、前記被測設備150の信号出力端につながり、前記被測設備150の第2テスト出力信号を採取し、第2サンプリング信号を出力するように構成される第2サンプリングモジュール160をさらに備える。
【0046】
そのうち、第2サンプリングモジュール160は電気信号サンプリング装置100のアナログ信号サンプリングチャネルであり、第2サンプリングモジュール160は被測設備150の第2テスト出力信号を採取するように構成され、第2テスト出力信号に関しては、被測設備150がテスト入力信号を受信した後、被測設備150から直接第2テスト出力信号を出力する。
【0047】
第2サンプリング信号は即ち、第2サンプリングモジュール160が第2テスト出力信号に対してサンプリングを行った後に得られた信号である。
【0048】
図1に係る電気信号サンプリング装置100は、前記結合器120が前記電気信号サンプリング装置100の外部に置かれている場合であり、本願の実施例に開示されている電気信号サンプリング装置100に第2サンプリングモジュール160がさらに備えられている場合は同様に、
図2に示すような結合器120が前記電気信号サンプリング装置100の内部に置かれている場合に適用していることが理解でき、本願の実施例は、これについて説明を省略する。
【0049】
上記実施例を踏まえ、
図3及び10に示す電気信号サンプリング装置の構造模式図を引き続き参照し、電気信号サンプリング装置にTDT機能が集積され、即ち第2サンプリングモジュール160が備えられている場合、示された第2サンプリングモジュール160は、それぞれ被測設備150及び信号遅延モジュール140につながっている。
【0050】
対応して、前記信号遅延モジュール140は、サンプリングクロックユニット及び時間遅延回路を備え、上記実施例を踏まえ、前記パルス信号源は前記時間遅延回路につながり、前記時間遅延回路は前記サンプリングクロックユニットにつながり、前記サンプリングクロックユニットは前記第2サンプリングモジュールにつながる。このとき、N個の励起信号が、前記パルス信号源を前記パルス信号の1周期においてN組のパルス信号を生成するように制御するために用いられることに対応すると、前記サンプリングクロックユニットは、電気信号サンプリング装置100のパルス信号源110及び第2サンプリングモジュール160にクロック源を提供し、即ちサンプリングクロック信号を生成し、かつパルス信号源110及び第2サンプリングモジュール160が固定の位相関係又は接続関係を有するように保証して、パルス信号源110がパルス信号を生成する周波数及び位相をサンプリングクロック信号の生成に同期させるように構成される。時間遅延回路の動作原理は、上述実施例と同じであり、ここでは説明しない。
【0051】
上記実施例を踏まえ、前記パルス信号源は前記サンプリングクロックユニットにつながり、前記時間遅延回路は前記サンプリングクロックユニットにつながり、前記時間遅延回路は前記第2サンプリングモジュールにつながる。このとき、前記N個の励起信号が、前記第2テスト出力信号の1周期において前記第2サンプリングモジュールをN組の第2サンプリング信号を生成するように制御するために用いられることに対応すると、電気信号サンプリング装置100が前記サンプリング入射信号の1周期において前記第1サンプリングモジュール130をN組のサンプリング入射信号を生成するように制御することで実現する、TDR&TDT時間分解能の向上の原理と同じであり、ここでは説明しない。
【0052】
本願の実施例に係るTDR/TDT機能を集積した電気信号サンプリング装置に巧妙な回路構造が用いられ、パルス信号源に対する時間遅延の制御、あるいはサンプリングクロックに対する制御によりサンプリングオシロスコープと等価の効果を実現し、大きなオシロスコープのアナログ帯域幅及び超高速エッジ信号の難題を克服し、等価サンプリングレートを向上させ、より大きなシステム帯域幅を実現し、TDR及びTDTの時間分解能を向上させるという目的が手軽で簡単に実現される。
【0053】
(付記)
(付記1)
パルス信号を生成するように構成されるパルス信号源と、
前記パルス信号を2分割してファンアウトした後にテスト入力信号及びサンプリング入射信号を生成するように構成される結合器を介して前記パルス信号源に接続され、前記テスト入力信号が前記結合器から被測設備に入力された後に結合されてテスト出力信号を形成し、前記テスト出力信号が前記被測設備から前記結合器に伝送され、前記結合器から前記サンプリング入射信号及びテスト出力信号を採取するように構成される、第1サンプリングモジュールと、
時間遅延を予め設定することでN個の励起信号を生成し、前記N個の励起信号は、前記パルス信号源を前記パルス信号の1周期においてN組のパルス信号を生成するように制御するために用いられ、又は、前記N個の励起信号は、前記サンプリング入射信号の1周期において前記第1サンプリングモジュールをN組のサンプリング入射信号を生成するように制御するために用いられ、Nが1よりも大きい整数である信号遅延モジュールと、を備える、
電気信号サンプリング装置。
【0054】
(付記2)
前記信号遅延モジュールは、
サンプリングクロック信号を生成するように構成されるサンプリングクロックユニットと、
前記サンプリングクロック信号を、時間遅延を予め設定することでN個の励起信号を生成するように構成される時間遅延回路と、を備える、
付記1に記載の電気信号サンプリング装置。
【0055】
(付記3)
前記パルス信号源は前記時間遅延回路につながり、
前記時間遅延回路は前記サンプリングクロックユニットにつながり、
前記サンプリングクロックユニットは前記第1サンプリングモジュールにつながる、
付記2に記載の電気信号サンプリング装置。
【0056】
(付記4)
前記時間遅延回路は、キャリチェーン、時間遅延チップ、フィールドプログラマブルゲートアレイFPGAの時間遅延ユニット又は移相器のうちの1種類である、
付記3に記載の電気信号サンプリング装置。
【0057】
(付記5)
前記パルス信号源は前記サンプリングクロックユニットにつながり、
前記時間遅延回路は前記サンプリングクロックユニットにつながり、
前記時間遅延回路は前記第1サンプリングモジュールにつながる、
付記2に記載の電気信号サンプリング装置。
【0058】
(付記6)
前記時間遅延回路はキャリチェーン、アナログデジタル変換チップ、位相同期ループ、又は時間遅延チップのうちの1種類である、
付記5に記載の電気信号サンプリング装置。
【0059】
(付記7)
前記被測設備の信号出力端につながり、前記被測設備の第2テスト出力信号を採取し、第2サンプリング信号を出力するように構成される第2サンプリングモジュールをさらに備える、
付記2に記載の電気信号サンプリング装置。
【0060】
(付記8)
前記パルス信号源は前記時間遅延回路につながり、
前記時間遅延回路は前記サンプリングクロックユニットにつながり、
前記サンプリングクロックユニットは前記第2サンプリングモジュールにつながる、
付記7に記載の電気信号サンプリング装置。
【0061】
(付記9)
前記パルス信号源は前記サンプリングクロックユニットにつながり、
前記時間遅延回路は前記サンプリングクロックユニットにつながり、
前記時間遅延回路は前記第2サンプリングモジュールにつながる、
付記7に記載の電気信号サンプリング装置。
【0062】
(付記10)
リアルタイムオシロスコープである、
付記1に記載の電気信号サンプリング装置。