(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】災害一般住宅の布基礎用型枠及び布基礎の施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/01 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
E02D27/01 D
E02D27/01 Z
E02D27/01 102Z
(21)【出願番号】P 2024036426
(22)【出願日】2024-03-10
【審査請求日】2024-03-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】310024398
【氏名又は名称】株式会社 野田設計
(74)【代理人】
【識別番号】100115598
【氏名又は名称】石橋 脩
(72)【発明者】
【氏名】野田 光明
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-279613(JP,A)
【文献】特開2001-032421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開削した地盤上の所定位置に配置するプレキャストコンクリート製の正方形のベース基板と、
配置された前記ベース基板相互を結ぶ領域に配列し、並列に立設するプレキャストコンクリート製の矩形の基礎梁板と、
並列に立設した前記基礎梁板それぞれの直交方向に配置し、該基礎梁板それぞれの下端面同士を支持する第一幅止具及び上端面同士を支持する第二幅止具と、
配置された前記ベース基板相互間に架け渡し、前記第一幅止具の両端を固定する一対の第一桟木及び前記第二幅止具の両端を固定する一対の第二桟木と、
前記一対の第一桟木又は前記一対の第二桟木に平行な主筋及び該主筋に垂直なスターラップ筋を有し、並列に立設された前記基礎梁板それぞれに挟まれた前記領域に配置される配筋セットと、を備え、
前記一対の第一桟木は、前記基礎梁板それぞれの下端から外側に所定の距離離れた位置に架け渡され、前記一対の第二桟木は、該基礎梁板それぞれの上端に外側から密着する位置に架け渡されることを
特徴とする災害一般住宅用布基礎の型枠。
【請求項2】
前記ベース基板は、表面に、前記基礎梁板が並列に立設する狭幅の複数の平坦路と該平坦路よりも高い正方形の高台が該平坦路それぞれの中央に形成され、該正方形の高台の周囲に、該平坦路を隔てて矩形の高台が形成されたことを特徴とする請求項1記載の小規模住宅用布基礎型枠。
【請求項3】
前記基礎梁板は、下部の中央に切り欠かれた部分を有し、
前記スターラップ筋のうちの水平な鉄筋が前記切り欠かれた部分を通過し、
並列に配列された前記基礎梁板それぞれが形成する空間に打設されたコンクリートが前記切り欠かれた部分から前記第一桟木に向けて流出することを特徴とする
請求項1記載の災害一般住宅の布基礎用型枠。
【請求項4】
前記矩形の高台は、所定の高さのコンクリートブロックを載置して前記切り欠かれた部分よりも低い高さまで嵩上し、前記第一幅止具が配置された位置それぞれの中間地点における地盤上に、嵩上した前記矩形の高台と同じ高さのコンクリートブロックを設置し、該コンクリートブロックそれぞれの上に前記配筋セットを載置することを特徴とする
請求項3記載の小規模住宅用布基礎型枠。
【請求項5】
プレキャストコンクリート製の、正方形のベース基板及び下部の中央に切り欠かれた部分を有する矩形の基礎梁板と、並列に立設された該基礎梁板それぞれの、下端面同士を支持する広幅な第一幅止具及び上端面同士を支持する狭幅な第二幅止具と、該第一幅止具の両端を固定する一対の第一桟木と、該第二幅止具の両端を固定する一対の第二桟木と、上下2段の主筋および該主筋に垂直なスターラップ筋を有する配筋セットと、を備え、
地業を行った地盤上に所定の間隔で前記ベース基板を設置する第一工程と、
前記ベース基板相互を結ぶ領域に前記一対の第一桟木を架け渡す第二工程と、
前記一対の第一桟木に固定された前記第一幅止具相互の中間の地盤上及び前記ベース基板上に所定の高さのコンクリートブロックを配置し、該コンクリートブロック上に前記配筋セットを設置する第三工程と、
前記第一幅止具で前記下端面を支持し、配列させて並列に立設した前記基礎梁板それぞれの上端に、前記一対の第二桟木を外側から密着させて架け渡し、前記上端面を前記第二幅止具で支持する第四工程と、
並列に立設した前記基礎梁板相互間の空間、又は該基礎梁板と前記第一桟木との間の空間にコンクリートを打設する第五工程と、を有することを特徴とする布基礎の施工方法。
【請求項6】
前記第一工程は、前記ベース基板を配置する前に、砂利を敷き、防湿シートを被せる工程を含むことを特徴とする
請求項5記載の布基礎の施工方法。
【請求項7】
前記ベース基板は、表面に、前記基礎梁板が並列に立設する狭幅の複数の平坦路と、該平坦路よりも高い正方形の高台が該平坦路それぞれの中央に形成され、該正方形の高台の周囲に、該平坦路を隔てて矩形の高台が形成されたものであり、
前記第三工程は、該矩形の高台の上に、前記基礎梁板の前記切り欠かれた部分よりも低い高さまでコンクリートブロックを載置して該高台の嵩上を行う工程を含むことを特徴とする
請求項5記載の小規模住宅用布基礎型枠。
【請求項8】
前記第五工程は、前記基礎梁板相互間に形成された基礎梁のセルフレベリングを行い、前記第一幅止具の両端を固定した前記第一桟木、及び前記第二幅止具を固定した前記第二桟木を撤去し、所定の根入れ深さとなるまで土砂の埋め戻しを行い、該土砂を防湿シートで覆う工程を含むことを特徴とする
請求項5記載の布基礎の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場生産されたPC板などの部材を用いて建築基準法に準拠した災害一般住宅の布基礎を簡単かつ短期間に構築することができる布基礎用型枠及び布基礎の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物の基礎は、一般的に、現場にて鉄筋の配筋及び型枠の組み立てを行い、その後、ミキサー車、ポンプ車等の車両を用いて、コンクリートを打設し、養生して構築するので、施工に長時間を要している。
そこで、プレキャストコンクリートを用いて短期間に型枠を構築する方法や、コンクリート打設をすることなく容易に施工する方法が開発されている。
例えば、予め工場で生産され、中央部にコンクリート充填空間を有し、その充填空間に底部が開放された連結開口を備えたコンクリートブロックを用いてべた基礎用型枠を構築し、現場打による作業時間と手間を少なくする方法(特許文献1)や、建築物の布基礎、あるいはべた基礎の基礎梁部分を工場生産によるプレキャストコンクリート製とし、上部及び下部を接続金物で接続するための軸ボルトが両端付近に埋め込まれ、その軸ボルトに、上下方向複数段に配筋された鉄筋を接続したPC基礎梁部材(特許文献2)などである。
しかしながら、内部に鉄筋が埋め込まれているためそれ自体が基礎梁となるが、重量があり人力のみで建て込むことが困難である。
そこで、本出願人は、人力で運べるコンクリート角柱や板状体を工場生産し、人力のみで簡便に型枠が作れるようにすると共に、コンクリートが固化した後も脱型する必要を無くし、工期の短縮化が図れて高品質な基礎梁を施工する方法を開発した(特許文献3)。
【0003】
一方、リース用仮設住宅などの組立式(ユニット工法またはパネル工法)の建物では、1~3年程度のサイクルで何度も解体、再組立して再利用されるが、基礎は現場コンクリート打ちのため、それが廃材となり、廃棄場所の確保に苦慮している。
そこで、プレキャストコンクリート製のベース部材を着脱可能な接続具で接続したものを布基礎のベースとし、基礎立上り部も基礎立上り部材を着脱可能な接続具で接続して形成し、解体および再組立を自在にしたもの(特許文献4)や、長さが異なる複数の矩形のコンクリート板と、それらを連結するプレート金具、L型金具及びく字型金具からなる連結金具とを備え、コンクリート板の左右の端面の上下部に、それぞれ前後面に貫通させて形成した切欠部内に、先端部を端面から突出させた状態で接合プレートを固定すると共に、コンクリート板の前後の壁面下部に、それぞれ鉄筋配設用のスリーブ金具を所定の間隔で埋め込み固着した布基礎用ユニット(特許文献5)が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-96792号公報
【文献】特許第3744922号公報
【文献】特許第7406283号公報
【文献】特許第3612065号公報
【文献】特許第3777667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、地震による被害が多発しており、令和6年1月1日に発生した能登半島地震(最大震度7)では、多くの避難者がプライバシーのない生活を余儀なくされ、仮設住宅の建設が急務になっている。
しかしながら、仮設住宅は、1年毎に延期が可能ではあるものの、基礎が建築基準法を逸脱するため、2年後には解体する必要がある。そこで、被災者は引っ越しを迫られ、コミュニティーの再構築が必要となる他、建築資材が無駄になり勝ちとなる。
今日、住宅の上物はユニット化が進み、比較的短時日に組み上げることが可能になっており、人材も多いが、基礎については、人材が不足し、思い通りに作業が進みにくい。
本発明は、上記事情に鑑み、建築基準法に準拠した災害一般住宅の布基礎を、専門性を要することなくDIY的感覚で、簡単かつ短時日で構築できる布基礎用型枠及び布基礎施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の災害一般住宅用布基礎型枠は、開削した地盤上の所定位置に配置するプレキャストコンクリート製の正方形のベース基板と、配置された上記ベース基板相互を結ぶ領域に配列し、並列に立設するプレキャストコンクリート製の矩形の基礎梁板と、並列に立設した上記基礎梁板それぞれの直交方向に配置し、該基礎梁板それぞれの下端面同士又は上端面同士を支持する幅止具と、配置された上記ベース基板相互間に架け渡し、上記幅止具それぞれの両端を木端に固定する一対の桟木と、上記一対の桟木それぞれに平行な主筋及び該主筋に垂直なスターラップ筋を有し、並列に立設された上記基礎梁板それぞれに挟まれた上記領域に配置される配筋セットと、を備えたことを特徴とする。
ここで、上記幅止具は、上記下端面同士を支持する第一幅止具と上記上端面同士を支持する第二幅止具とを有し、上記一対の桟木は、上記第一幅止具それぞれの両端を固定する一対の第一桟木と上記第二幅止具それぞれの両端を固定する一対の第二桟木とを有し、上記第一桟木は、上記基礎梁板それぞれの下端から外側に所定の距離離れた位置に架け渡され、上記第二桟木は、該基礎梁板それぞれの上端に外側から密着する位置に架け渡すことができるので、構築するのが簡単で容易であり、専門性が不要である。
また、上記ベース基板は、表面に、上記基礎梁板が並列に立設する狭幅の複数の平坦路と該平坦路よりも高い正方形の高台が該平坦路それぞれの中央に形成され、該正方形の高台の周囲に、該平坦路を隔てて矩形の高台が形成されることが好ましい。
また、上記基礎梁板は、下部の中央に切り欠かれた部分を有し、上記スターラップ筋のうちの水平な鉄筋が上記切り欠かれた部分を通過し、並列に配列された上記基礎梁板それぞれが形成する空間に打設されたコンクリートが上記切り欠かれた部分から上記第一桟木に向けて流出することができるので、基礎梁とスラブとを一気に構築することができる。
さらに、上記矩形の高台は、所定の高さのコンクリートブロックを載置して上記切り欠かれた部分よりも低い高さまで嵩上し、上記第一幅止具が配置された位置それぞれの中間地点における地盤上に、嵩上した上記矩形の高台と同じ高さのコンクリートブロックを設置し、該コンクリートブロックそれぞれの上に上記配筋セットを載置することができるので、専門性が不要である。
【0007】
本発明の災害一般住宅用布基礎の施工方法は、プレキャストコンクリート製の、正方形のベース基板及び下部の中央に切り欠かれた部分を有する矩形の基礎梁板と、並列に立設された該基礎梁板それぞれの、下端面同士を支持する広幅な第一幅止具及び上端面同士を支持する狭幅な第二幅止具と、該第一幅止具の両端を固定する一対の第一桟木と、該第二幅止具の両端を固定する一対の第二桟木と、上下2段の主筋および該主筋に垂直なスターラップ筋を有する配筋セットと、を備え、地業を行った地盤上に所定の間隔で上記ベース基板を設置する第一工程と、上記ベース基板相互を結ぶ領域に上記一対の第一桟木を架け渡す第二工程と、上記一対の第一桟木に固定された上記第一幅止具相互の中間の地盤上及び上記ベース基板上に所定の高さのコンクリートブロックを配置し、該コンクリートブロック上に上記配筋セットを設置する第三工程と、上記第一幅止具で上記下端面を支持し、配列させて並列に立設した上記基礎梁板それぞれの上端に、上記一対の第二桟木を外側から密着させて架け渡し、上記上端面を上記第二幅止具で支持する第四工程と、並列に立設した上記基礎梁板相互間の空間、又は該基礎梁板と上記第一桟木との間の空間にコンクリートを打設する第五工程と、を有することを特徴とする。
ここで、上記第一工程は、上記ベース基板を配置する前に、砂利を敷き、防湿シートを被せる工程を含むことができる。
また、上記ベース基板は、表面に、上記基礎梁板が並列に立設する狭幅の複数の平坦路と、該平坦路よりも高い正方形の高台が該平坦路それぞれの中央に形成され、該正方形の高台の周囲に、該平坦路を隔てて矩形の高台が形成されたものであり、
上記第三工程は、該矩形の高台の上に、上記基礎梁板の上記切り欠かれた部分よりも低い高さまでコンクリートブロックを載置して該高台の嵩上を行う工程を含むことが好ましい。
さらに、上記第五工程は、上記基礎梁板相互間に形成された基礎梁のセルフレベリングを行い、上記第一幅止具の両端を固定した上記第一桟木、及び上記第二幅止具を固定した上記第二桟木を撤去し、所定の根入れ深さとなるまで土砂の埋め戻しを行い、該土砂を防湿シートで覆う工程を含むことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、工場生産された建材や規格化された木材を使用して、建築基準法に準拠した災害用一般住宅用の布基礎を、少人数の一般人が、短時日かつ低コストで、構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態の布基礎用型枠によって構築した布基礎の上に建築した災害一般住宅の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の布基礎用型枠の一例を示す平面図である。
【
図3】
図3は、ベース基板の一例を示す図であり、上段は平面図、下段は正面図である。
【
図4】
図4は、基礎梁板の一例を示す図であり、左側は側面図、右側は正面図である。
【
図5】
図5は、
図2のY1からY5までの間に並列かつ連続的に配列させて立設した基礎梁板の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、
図2のY4地点の布基礎用型枠の断面を一例として示す図である。
【
図7(a)】
図7(a)は第一幅止具の一例を示す図である。
【
図7(b)】
図7(b)は第二幅止具の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、
図2のY4からY5までの間の第二桟木に固定される第二幅止具の位置を例示する図である。
【
図9(a)】
図9(a)は、配筋セットの一例を示す平面図である。
【
図9(b)】
図9(b)は、配筋セットの一例を示す側面図である。
【
図9(c)】
図9(c)は、
図9(a)のA-A断面図である。
【
図10】
図10は、本実施形態の布基礎を構築する型枠の施工方法の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、
図10で示した施工方法によって構築した、
図2のY4―Y5間における布基礎用型枠の伏図である。
【
図12】
図12は、布基礎用型枠にコンクリートを打設した後、桟木を撤去した状態の布基礎を示す断面図である。
【
図13】
図13は、土砂の埋め戻しを行い完成した状態の布基礎を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の災害一般住宅の布基礎用型枠及びその布基礎の施工方法の実施形態について、図に基いて説明する。
図1は、本実施形態の布基礎用型枠によって構築した布基礎の上に建築した災害一般住宅の一例を示す図である。
図1に例示する災害一般住宅は、4.5畳の洋間が二つと6畳のKのほか、浴室とトイレがあり、9坪の2Kタイプの仮設住宅と同じような間取を有する。
【0011】
図2は、本実施形態の布基礎用型枠の一例を示す平面図である。
図2に例示する布基礎用型枠2は、略35平米乃至40平米程度の土地に布基礎用の地業を行ない、防湿シートを被せた地盤の上に一辺が、500ミリメートル程度のプレキャストコンクリート製のベース基板3を設置する。
図の左右の型枠2には、中心から中心までの間隔が1350ミリメートルとなるようにベース基板3を設置し、図の上下の型枠2には、中心から中心までの間隔が1800ミリメートルとなるようにベース基板3を設置する。
そして、ベース基板3の両側の縁寄りそれぞれには、一対の桟木4を平行に架け渡し、それら一対の桟木4の内側には、プレキャストコンクリート製の基礎梁板5を並列に立設し、隙間なく連続して配列する。また、ベース基板3上には端寄りに2か所、ベース基板3相互間には2か所に、基礎梁板5を支持する幅止具6が設置され、その両端を桟木4に固定している。なお、基礎梁板5は、下部の中央に切り欠かれた部分(図に現れない)5aがある。
【0012】
図3は、ベース基板の一例を示す図であり、上段は平面図、下段は正面図である。
図3に一例を示すベース基板3は、厚みが25mm、一辺が500mmの正方形をなし、表面には平坦路14と、それよりも高さが高い高台13がある。
高台13の中央には、正方形の高台13aがあり、その周囲には、平坦路14を隔てて矩形の高台13bと、中央のものより小さい正方形の高台が配置されている。
平坦路14は、縦と横に二本づつあり、それらの平坦路14には、ベース基板3が設置される位置に対応して、基礎梁板5の配列が、縦横いずれの方向でも立設できるようになっている。
また、底面3aには、ベース基板3を地盤の上に配置する際に、敷砂利などに指を挟まれないように段差3bが設けてある。
ここで、中央の正方形の高台13aは、一辺が116mmで、矩形の高台13bは、50mm×116mmであり、平坦路14の幅は、29mm、平坦路14と高台13との段差は、10mmに設定されているが、これらの数値は一例であって、必ずしもこれらの数値に限定する必要はない。
【0013】
図4は、基礎梁板の一例を示す図であり、左側は側面図、右側は正面図である。
図4に一例を示す基礎梁板は、高さが540mm、厚みが25mmで、切欠かれた部分の高さは150mm、幅は150mmである。
本実施形態における基礎梁板は、立設する位置に応じて幅が439mmから133mmまでの8種類を作成しているが、これらは一例であって必ずしもこれに限定されない。
【0014】
図5は、
図2のY1からY5までの間に並列かつ連続的に配列させて立設した基礎梁板の一例を示す図である。
図5において、Y1からY5の位置それぞれには、ベース基板が配置され、ベース基板上には端寄りに2か所、ベース基板相互間には2か所に基礎梁板を支持する幅止具(図に現れない)が敷砂利の上に設置され、両端が桟木(図示していない)に固定されている。そして、基礎梁板5の切り欠かれた部分5aよりも上に、地面GLがある。
ここでは、基礎梁板5は、幅が439mmのものが3枚、幅が304mmのものが2枚、幅が307mmのものが4枚、幅が300mmのものが8枚使用されている。
ちなみに、本実施形態の災害一般住宅の布基礎用型枠2を構築するために使用するベース基板3の総枚数は16枚で、基礎梁板5の総枚数は、194枚である。
【0015】
図6は、
図2のY4地点の布基礎用型枠の断面を一例として示す図である。
図6に示す型枠断面は、切削された地盤上に防湿シート15を被せ、その上にベース基板3が配置されている。ベース基板3の上には第一幅止具6aが図の横方向に設置され、その両端それぞれに厚みが40mm、幅が150mm程度の第一桟木4aが固定されている。
ベース基板3の表面には、高台13と平坦路14とがあり、高台13に載せたコンクリートブロック10の上には鉄筋セット7が載置され、平坦路14には基礎梁板5が並列に立設されている。
基礎梁板5の下部には切り欠かれた部分5aがあり、鉄筋セット7の水平方向のスターラップ筋9がその切り欠かれた部分5aから突出し、垂直方向のスターラップ筋9が基礎梁板5の上端付近まで伸びている。
並列に立設した基礎梁板5の上端面それぞれは、第二幅止具6bで支持され、第二幅止具6bは、上端それぞれに外側から密着させて架け渡された厚さが40mm、幅が80mm程度の第二桟木4bにその両端が固定されている。なお、並列に配置された基礎梁板5相互間の距離は170mmに設定しているが、150mmに設定することもできる。
【0016】
図7は幅止具の一例を示す図であり、
図7(a)は第一幅止具、
図7(b)は第二幅止具
である。
図7(a)に示す広幅な第一幅止具6aは、全長が390mmで、中央に基礎梁板5相互間の距離を170mmに幅止する部材Wが2つ設けてあり、そこから110mm離間した端には第一桟木に固定する部材Sが設けてある。
従って、40mmの厚さの第一桟木4aと基礎梁板5との間には、スラブを形成する70mmの空間が生じる。
図7(b)に示す狭幅の第二幅止具6bは、全長が250mmで、中央に基礎梁板5相互間の距離を170mmに幅止する部材Wが2つ設けてあり、そこから40mm離間した端に第二桟木4bに固定する部材Sが設けてある。
従って、40mmの厚さがある第二桟木4bと基礎梁板5とは密着し、第二桟木4bに両端が固定された第二幅止具6bは基礎梁板5同士の間隔を一定に保持することができる。
【0017】
図8は、
図2のY4からY5までの間の第二桟木に固定される第二幅止具の位置を例示する図である。
図8に例示すように、並列に立設して連続的に配列した基礎梁板5の外側に密着して第二桟木4bが平行に架け渡されている。ベース基板3が配置されたY4、Y5を中心とする前後2カ所ずつに配置された第二幅止具6b及びベース基板3相互の間の2カ所の第二幅止具6bは、それらの第二桟木4bに固定されている。
また、基礎梁板5相互間の空間には主筋8が通筋している。
【0018】
図9は、配筋セットの一例を示す図であり、
図9(a)は平面図、
図9(b)は側面図、
図9(c)は
図9(a)のA-A断面図である。
図9に示すように、配筋セット7は、ベース基板3相互間に架け渡される一対の第一桟木4aに平行な5本の鉄筋と垂直な鉄筋とそれらに直交する水平な鉄筋によって形成されている。平行な5本の鉄筋のうち、上段中央及び下段中央の鉄筋は主筋8で、中段中央の鉄筋は腹筋8aである。主筋8に直交する鉄筋はスターラップ筋9で、両端が折れ曲がり、上段及び下段の主筋に係合する垂直な鉄筋9aと、下段の主筋8に直交する水平な鉄筋9bとがある。
図示していないが、第一桟木9aには基礎梁板5を支持する第一幅止具6aが直交方向に配置され、第一幅止具6a相互間にはベース基板3の高台13を嵩上したコンクリートブロック10の高さと同じ高さのコンクリートブロック10が設置されている。そして、下段の主筋8及び水平な鉄筋9bは、それらのコンクリートブロック10の上に載置される。
【0019】
図10は、本実施形態の布基礎を構築する型枠の施工方法の一例を示す図である。
図10に一例を示すように、まず型枠を構築するのに必要な下記の部材を用意する。
(1)プレキャストコンクリート製の、正方形のベース基板3及び下部の中央に切り欠かれた部分5aを有する矩形の基礎梁板5
(2)並列に立設された基礎梁板5それぞれの、下端面同士を支持する広幅な第一幅止具6a及び上端面同士を支持する狭幅な第二幅止具6b
(3)第一幅止具6sの両端それぞれを固定する一対の第一桟木4a
(4)第二幅止具6bの両端それぞれを固定する一対の第二桟木4b
(5)上下2段の主筋8およびその主筋8に垂直なスターラップ筋9を有する配筋セット7
【0020】
次に、地業を行い、砂利を敷き、防湿シート15を被せた地盤の上に、所定の間隔でベース基板3を配置する。
ベース基板3の表面には、基礎梁板5を立設する狭幅の平坦路14、及びその平坦路14よりも高さが高い高台13が形成され、正方形の高台13aが中央に配置され、その周りに矩形の高台13bが平坦路14を挟んで配置されている。
【0021】
次に、配置されたベース基板それぞれの矩形の高台の外側に一対の第一桟木を平行に並べて架け渡し、両者が所定間隔となるようにベニヤ板で仮止めする。そして、その第一桟木の下側に、所定の間隔毎に第一幅止具を直交させて配置し、その両端を第一桟木それぞれの木端に固定する。
【0022】
次に、矩形の中央の高台13bの上に、基礎梁板5の切り欠かれた部分5aよりも高さが低くなる程度の高さのコンクリートブロック10を載せて嵩上すると共に、第一幅止具6a相互の間の地盤上にも、嵩上した矩形の高台13bと同じ高さのコンクリートブロック10を配置する。そして、それらのコンクリードブロック10の上に配筋セット7を載せる。
【0023】
次に、基礎梁板5の下端面を第一幅止具6aで支持して配列し、並列に立設する。
また、一対の第二桟木4bで基礎梁板5の上端それぞれを挟持すると共に、第二桟木4bそれぞれに両端を固定した第二幅止具6bで基礎梁板5の上端面相互の間隔が一定になるように保持する。
【0024】
図11は、
図10で示した施工方法によって構築した、
図2のY4―Y5間における布基礎用型枠の伏図である。
図11に示すように、斜線で示したベース基板3の両側縁間に一対の第一桟木4aを架け渡し、ベース基板3の端寄り、及びそれら第一桟木4aの底面には第一幅止具6aが所定間隔毎に6個、直交方向に設置され、その両端が第一桟木4aの木端に固定されている。そして、ベース基板3が配置されない個所を含め、地業を行なった箇所には、砂利が敷かれている。一対の第一桟木4aそれぞれの内側には、第一幅止具6aに支持された基礎梁板5が並列に立設され、配列されている。また、基礎梁板5それぞれの内側には、配筋セット7が設置され、スターラップ筋9のうちの桟木に直交する7本の水平な鉄筋が基礎梁板5の切り欠かれた部分5aを通過し、スラブを形成するために第一桟木4a寄りに突き出している。
【0025】
図12は、布基礎用型枠にコンクリートを打設した後、桟木を撤去した状態の布基礎を示す断面図であり、
図13は、土砂の埋め戻しを行い完成した状態の布基礎を示す断面図である。
図に示すように、第一桟木4aと、第二桟木4b及び第二幅止具6bは撤去され、第一幅止具6a、ベース基板3の嵩上した高台13、スターラップ筋9の水平な鉄筋9b及び垂直な鉄筋9aは、打設されたコンクリートに埋没している。ベース基板3の切り欠かれた部分5aと撤去された第一桟木4aとで仕切られた空間には、布基礎のスラブ1aが形成され、基礎梁1bは基礎梁板5を含んだ形で形成される。そして、基礎梁1bの天面は、凸凹を無くすためにセルフレベリング材が注入され、平らにしてある。
コンクリートが固まったら、ベース基板3から240mm程度の高さになるまで地面の埋め戻しを行い、埋め戻した地面に防湿シートで覆う。
この結果、布基礎の厚さは、170mm、基礎梁1bの地面からの高さは、300mm程度、根入れ深さは240mm程度となり、建築基準法の布基礎の基準を満たしている。
【0026】
本実施形態の布基礎を施工する工数は、地面の開削から防湿シートを被せてベース基板を配置する工数が二人で1日。桟木に幅止具を固定し、配筋セットを作成し、基礎梁板を立設して幅止具で支持する工数が二人で1日。小型ミキサーとポンプでコンクリートを打設し、セルフレベリングする工数が二人で1日。養生と桟木の脱型などの工数が二人で1日である。従って、二人で4日あれば災害一般住宅の布基礎を構築することが可能であり、しかも施工に際して専門性は不要となり、一般人によってDIY的感覚で施工することが可能になる。
また、費用についても、敷砂利、コンクリートを含む材料費が115万円程度で、土工・地業、鉄筋、型枠、コンクリート等の施工費は、ミキサー車・ポンプ車使用料、諸経費を含めて85万円程度であり、総経費が200万円程度とリーズナブルである。
従って、仮設住宅によることなく、当初から長期居住が可能な災害一般住宅を建築して被災者に提供することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
災害住宅用一般住宅の布基礎を、簡単に、短期間で、安価に構築できるので、災害が発生したときに当初から長期間居住できる住宅を建築することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 布基礎
1a スラブ
1b 基礎梁
2 布基礎用型枠
3 ベース基板
3a 底面
3b 段差
4 桟木
4a 第一桟木
4b 第二桟木
5 基礎梁板
5a 切り欠かれた部分
6 幅止具
6a 第一幅止具
6b 第二幅止具
7 鉄筋セット
8 主筋
8a 腹筋
9 スターラップ筋
9a 垂直な鉄筋
9b 水平な鉄筋
10 コンクリートブロック
13 高台
13a 正方形の高台
13b 矩形の高台
14 平坦路
15 防湿シート
【要約】
【課題】建築基準法に準拠した災害一般住宅の布基礎を、専門性を要することなくDIY的感覚で、簡単かつ短時日で構築できる布基礎用型枠及び布基礎施工方法を提供する。
【解決手段】開削した地盤上の所定位置に配置するプレキャストコンクリート製の正方形のベース基板と、配置されたベース基板相互を結ぶ領域に配列し、並列に立設するプレキャストコンクリート製の矩形の基礎梁板と、並列に立設した基礎梁板それぞれの直交方向に配置し、基礎梁板それぞれの下端面同士又は上端面同士を支持する幅止具と、配置されたベース基板相互間に架け渡し、幅止具それぞれの両端を木端に固定する一対の桟木と、一対の桟木それぞれに平行な主筋及び該主筋に垂直なスターラップ筋を有し、並列に立設された前記基礎梁板それぞれに挟まれた領域に配置される配筋セットと、を備えた。
【選択図】
図2