(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】車両、熱交換プレート、及び電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 10/633 20140101AFI20240822BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20240822BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240822BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240822BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20240822BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20240822BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20240822BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240822BHJP
B60L 58/26 20190101ALI20240822BHJP
【FI】
H01M10/633
B60K1/04 Z
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/615
H01M10/6556
H01M10/6568
B60L50/60
B60L58/26
(21)【出願番号】P 2023090325
(22)【出願日】2023-05-31
(62)【分割の表示】P 2022115784の分割
【原出願日】2019-10-29
【審査請求日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2018238664
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138771
【氏名又は名称】吉田 将明
(72)【発明者】
【氏名】牧田 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】西尾 剛
【審査官】滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-050000(JP,A)
【文献】特開2012-227164(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0091624(KR,A)
【文献】特開2014-127338(JP,A)
【文献】特開2019-55649(JP,A)
【文献】特開2014-229480(JP,A)
【文献】特開2013-12441(JP,A)
【文献】特開2008-59950(JP,A)
【文献】特開2009-73430(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0202178(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0359211(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/633
B60K 1/04
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/615
H01M 10/6556
H01M 10/6568
B60L 50/60
B60L 58/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面と反対の第2面を有し、
前記第1面と前記第2面の間において冷却液を循環させる冷却液層と、
前記第1面と前記第2面の間において冷媒を循環させる冷媒層と、
前記冷却液層から前記冷却液が出る冷却液出力部と、
前記冷却液出力部から出た前記冷却液が、ポンプを介して前記冷却液層に向かって入る冷却液入力部と、を有する熱交換プレートと、
複数の電池モジュールを有し、前記熱交換プレートの前記第1面に沿って配置された電池モジュール群と、
前記熱交換プレート及び前記電池モジュールを収容する車体と、
前記車体に結合された第1車輪及び第2車輪と、
前記電池モジュール群から供給される電力を用いて、前記第1車輪を駆動する電動機と、を備え、
前記第1車輪及び前記第2車輪を用いて所定の方向に走行可能な車両であって、
前記熱交換プレートの前記第1面と前記第2面の間において、前記冷却液層全体は平面視で第1領域を備え、
前記熱交換プレートの前記第1面と前記第2面の間において、前記冷媒層全体は平面視で第2領域を備え、
前記熱交換プレートの前記第1面において、前記電池モジュール群全体は平面視で第3領域を備え、
前記電池モジュール群の前記第3領域の中心は、前記冷却液層の前記第1領域に重なって配置され、
前記電池モジュール群の前記第3領域の中心は、前記冷媒層の前記第2領域に重なって配置され、
前記電池モジュール群の中央寄りの二次電池セルの温度を温度Aとし、
前記電池モジュール群の周辺寄りの二次電池セルの温度を温度Bとし、
前記温度Aと前記温度Bの差が、一定値を超えた場合、前記ポンプを動作させる、
車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両であって、
前記冷媒層の前記第2領域は、前記第3領域の中心に対応する第1冷媒層領域と、平面視において前記第1冷媒層領域の外側に位置する第2冷媒層領域を備え、
前記第1冷媒層領域の第1冷却能力は、前記第2冷媒層領域の第2冷却能力より大きい、
車両。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両であって、
前記熱交換プレートは、前記所定の方向に沿って配置された、
車両。
【請求項4】
第1面と前記第1面と反対の第2面を有し、
前記第1面と前記第2面の間において冷却液を循環させる冷却液層と、
前記第1面と前記第2面の間において冷媒を循環させる冷媒層と、
前記冷却液層から前記冷却液が出る冷却液出力部と、
前記冷却液出力部から出た前記冷却液が、ポンプを介して前記冷却液層に向かって入る冷却液入力部と、を備え、
前記第1面と前記第2面の間において、前記冷却液層全体は平面視で第1領域を備え、
前記第1面と前記第2面の間において、前記冷媒層全体は平面視で第2領域を備え、
電池モジュール群が前記第1面に沿って配置された場合、前記第1面において、前記電池モジュール群全体は平面視で前記第1面に第3領域を備え、
前記電池モジュール群は、複数の電池モジュールを備え、
前記冷媒層の前記第2領域の少なくとも一部は、前記冷却液層の前記第1領域に重なって配置され、
前記電池モジュール群の前記第3領域の中心は、前記冷却液層の前記第1領域に重なって配置され、
前記電池モジュール群の前記第3領域の中心は、前記冷媒層の前記第2領域に重なって配置され、
前記電池モジュール群の中央寄りの二次電池セルの温度を温度Aとし、
前記電池モジュール群の周辺寄りの二次電池セルの温度を温度Bとし、
前記温度Aと前記温度Bの差が、一定値を超えた場合、前記ポンプを動作させる様に構成された、
熱交換プレート。
【請求項5】
請求項4に記載の熱交換プレートであって、
前記冷媒層の前記第2領域は、前記第3領域の中心に対応する第1冷媒層領域と、平面視において前記第1冷媒層領域の外側に位置する第2冷媒層領域を備え、
前記第1冷媒層領域の第1冷却能力は、前記第2冷媒層領域の第2冷却能力より大きい、
熱交換プレート。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の熱交換プレートであって、
前記複数の電池モジュールは、複数の電池セルを備える、
熱交換プレート。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の熱交換プレートであって、
前記電池モジュール群の前記第3領域は、前記冷却液層の前記第1領域より小さい、
熱交換プレート。
【請求項8】
請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の熱交換プレートであって、
前記電池モジュール群の前記第3領域の中心において、前記冷媒層と前記電池モジュール群の間に、前記冷却液層が配置される、
熱交換プレート。
【請求項9】
請求項8に記載の熱交換プレートであって、
前記冷却液層は、前記電池モジュール群の前記第3領域の中心において、第1冷却液層と第2冷却液層を備え、
前記電池モジュール群の前記第3領域の中心において、前記冷媒層と前記電池モジュール群の間に、前記第1冷却液層が配置され、
前記電池モジュール群の前記第3領域の中心において、前記第1冷却液層と前記第2冷却液層の間に、前記冷媒層が配置された、
熱交換プレート。
【請求項10】
第1面と前記第1面と反対の第2面を有し、
前記第1面と前記第2面の間において冷却液を循環させる冷却液層と、
前記第1面と前記第2面の間において冷媒を循環させる冷媒層と、
前記冷却液層から前記冷却液が出る冷却液出力部と、
前記冷却液出力部から出た前記冷却液が、ポンプを介して前記冷却液層に向かって入る冷却液入力部と、を有する熱交換プレートと、
複数の電池モジュールを有し、前記熱交換プレートの前記第1面に沿って配置された電池モジュール群と、を備える電池パックであって、
前記熱交換プレートの前記第1面と前記第2面の間において、前記冷却液層全体は平面視で第1領域を備え、
前記熱交換プレートの前記第1面と前記第2面の間において、前記冷媒層全体は平面視で第2領域を備え、
前記熱交換プレートの前記第1面において、前記電池モジュール群全体は、平面視で第3領域を備え、
前記冷媒層の前記第2領域の少なくとも一部は、前記冷却液層の前記第1領域に重なって配置され、
前記電池モジュール群の前記第3領域の中心は、前記冷却液層の前記第1領域に重なって配置され、
前記電池モジュール群の前記第3領域の中心は、前記冷媒層の前記第2領域に重なって配置され、
前記電池モジュール群の中央寄りの二次電池セルの温度を温度Aとし、
前記電池モジュール群の周辺寄りの二次電池セルの温度を温度Bとし、
前記温度Aと前記温度Bの差が、一定値を超えた場合、前記ポンプを動作させる様に構成された、
電池パック。
【請求項11】
請求項10に記載の電池パックであって、
前記冷媒層の前記第2領域は、前記第3領域の中心に対応する第1冷媒層領域と、平面視において前記第1冷媒層領域の外側に位置する第2冷媒層領域を備え、
前記第1冷媒層領域の第1冷却能力は、前記第2冷媒層領域の第2冷却能力より大きい、
電池パック。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の電池パックであって、
前記複数の電池モジュールは、複数の電池セルを備える、
電池パック。
【請求項13】
請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の電池パックであって、
前記電池モジュール群の前記第3領域は、前記冷却液層の前記第1領域より小さい、
電池パック。
【請求項14】
請求項10から請求項13のいずれか1項に記載の電池パックであって、
前記電池モジュール群の前記第3領域の中心において、前記冷媒層と前記電池モジュール群の間に、前記冷却液層が配置される、
電池パック。
【請求項15】
請求項14に記載の電池パックであって、
前記冷却液層は、前記電池モジュール群の前記第3領域の中心において、第1冷却液層と第2冷却液層を備え、
前記電池モジュール群の前記第3領域の中心において、前記冷媒層と前記電池モジュール群の間に、前記第1冷却液層が配置され、
前記電池モジュール群の前記第3領域の中心において、前記第1冷却液層と前記第2冷却液層の間に、前記冷媒層が配置された、
電池パック。
【請求項16】
請求項10から請求項15のいずれか1項に記載の電池パックであって、
前記電池モジュール群と前記熱交換プレートとを収容する筐体を備え、
前記筐体は、前記熱交換プレートの前記第1面に沿って配置された第1筐体面と、前記熱交換プレートの前記第2面に沿って配置された第2筐体面とを備え、
前記電池モジュール群と前記熱交換プレートは、前記第1筐体面と前記第2筐体面の間に配置され、
前記第1筐体面と前記第2筐体面を繋ぐ筐体端面を備え、
前記筐体端面は、前記冷媒層に向かって前記冷媒が入る冷媒入力部と、前記冷媒層から前記冷媒が出る冷媒出力部と、を備える、
電池パック。
【請求項17】
請求項16に記載の電池パックであって、
少なくとも前記冷媒入力部と前記冷媒出力部は、熱交換サイクルシステムに結合可能である、
電池パック。
【請求項18】
請求項16又は請求項17に記載の電池パックであって、
前記筐体端面は、前記冷却液層に向かって前記冷却液が入る冷却液入力部と、前記冷却液層から前記冷却液が出る冷却液出力部と、を更に備える、
電池パック。
【請求項19】
請求項18に記載の電池パックであって、
前記冷却液入力部、前記冷却液出力部、前記冷媒入力部、及び前記冷媒出力部は、それぞれ管で構成される、
電池パック。
【請求項20】
請求項18又は請求項19に記載の電池パックであって、
前記筐体端面は、少なくとも第1筐体端面と第2筐体端面を備え、
前記第1筐体端面は前記第2筐体端面と対向して配置され、
前記冷却液入力部、前記冷却液出力部、前記冷媒入力部、及び前記冷媒出力部は、前記第1筐体端面に配置された、
電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両、熱交換プレート、及び電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車や電気自動車には、駆動源であるモータに電力を供給する車載電池が搭載されている。車載電池の温度上昇を抑制するために、冷媒と冷却液の二つを同時に供給するハイブリッド熱交換器が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1は、複数の電池セルを連結してなる電池ブロックと、電池セルに熱結合されて、供給される冷媒で電池セルを冷却する冷却プレートと、冷却プレートに冷媒を供給する冷却機構と、冷却機構を制御して冷却プレートの冷却状態を制御する制御回路とを備える車両用の電源装置であり、電池を効率よく速やかに冷却しながら、電池セルの温度差を少なくして電池セルのアンバランスによる弊害を防止することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、電池セルを水冷しつつ冷媒で冷却することが開示されているが、中央部の温度上昇には配慮されていないので、電池セル中央部にある単電池は温度が高くなってしまうという課題がある。すなわち、車載電池の温度のバラツキが生じ得る。
【0006】
本開示は、車載電池の温度のバラツキを抑制する車両、熱交換プレート、及び電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の車両は、第1面と、前記第1面と反対の第2面を有し、前記第1面と前記第2面の間において冷却液を循環させる冷却液層と、前記第1面と前記第2面の間において冷媒を循環させる冷媒層と、前記冷却液層から前記冷却液が出る冷却液出力部と、前記冷却液出力部から出た前記冷却液が、ポンプを介して前記冷却液層に向かって入る冷却液入力部と、を有する熱交換プレートと、複数の電池モジュールを有し、前記熱交換プレートの前記第1面に沿って配置された電池モジュール群と、前記熱交換プレート及び前記電池モジュールを収容する車体と、前記車体に結合された第1車輪及び第2車輪と、前記電池モジュール群から供給される電力を用いて、前記第1車輪を駆動する電動機と、を備え、前記第1車輪及び前記第2車輪を用いて所定の方向に走行可能な車両であって、前記熱交換プレートの前記第1面と前記第2面の間において、前記冷却液層全体は平面視で第1領域を備え、前記熱交換プレートの前記第1面と前記第2面の間において、前記冷媒層全体は平面視で第2領域を備え、前記熱交換プレートの前記第1面において、前記電池モジュール群全体は平面視で第3領域を備え、前記電池モジュール群の前記第3領域の中心は、前記冷却液層の前記第1領域に重なって配置され、前記電池モジュール群の前記第3領域の中心は、前記冷媒層の前記第2領域に重なって配置され、前記電池モジュール群の中央寄りの二次電池セルの温度を温度Aとし、前記電池モジュール群の周辺寄りの二次電池セルの温度を温度Bとし、前記温度Aと前記温度Bの差が、一定値を超えた場合、前記ポンプを動作させる。
【0008】
本開示の熱交換プレートは、第1面と前記第1面と反対の第2面を有し、前記第1面と前記第2面の間において冷却液を循環させる冷却液層と、前記第1面と前記第2面の間において冷媒を循環させる冷媒層と、前記冷却液層から前記冷却液が出る冷却液出力部と、前記冷却液出力部から出た前記冷却液が、ポンプを介して前記冷却液層に向かって入る冷却液入力部と、を備え、前記第1面と前記第2面の間において、前記冷却液層全体は平面視で第1領域を備え、前記第1面と前記第2面の間において、前記冷媒層全体は平面視で第2領域を備え、電池モジュール群が前記第1面に沿って配置された場合、前記第1面において、前記電池モジュール群全体は平面視で前記第1面に第3領域を備え、前記電池モジュール群は、複数の電池モジュールを備え、前記冷媒層の前記第2領域の少なくとも一部は、前記冷却液層の前記第1領域に重なって配置され、前記電池モジュール群の前記第3領域の中心は、前記冷却液層の前記第1領域に重なって配置され、前記電池モジュール群の前記第3領域の中心は、前記冷媒層の前記第2領域に重なって配置され、前記電池モジュール群の中央寄りの二次電池セルの温度を温度Aとし、前記電池モジュール群の周辺寄りの二次電池セルの温度を温度Bとし、前記温度Aと前記温度Bの差が、一定値を超えた場合、前記ポンプを動作させる。
【0009】
本開示の電池パックは、第1面と前記第1面と反対の第2面を有し、前記第1面と前記第2面の間において冷却液を循環させる冷却液層と、前記第1面と前記第2面の間において冷媒を循環させる冷媒層と、前記冷却液層から前記冷却液が出る冷却液出力部と、前記冷却液出力部から出た前記冷却液が、ポンプを介して前記冷却液層に向かって入る冷却液入力部と、を有する熱交換プレートと、複数の電池モジュールを有し、前記熱交換プレートの前記第1面に沿って配置された電池モジュール群と、を備える電池パックであって、前記熱交換プレートの前記第1面と前記第2面の間において、前記冷却液層全体は平面視で第1領域を備え、前記熱交換プレートの前記第1面と前記第2面の間において、前記冷媒層全体は平面視で第2領域を備え、前記熱交換プレートの前記第1面において、前記電池モジュール群全体は、平面視で第3領域を備え、前記冷媒層の前記第2領域の少なくとも一部は、前記冷却液層の前記第1領域に重なって配置され、前記電池モジュール群の前記第3領域の中心は、前記冷却液層の前記第1領域に重なって配置され、前記電池モジュール群の前記第3領域の中心は、前記冷媒層の前記第2領域に重なって配置され、前記電池モジュール群の中央寄りの二次電池セルの温度を温度Aとし、前記電池モジュール群の周辺寄りの二次電池セルの温度を温度Bとし、前記温度Aと前記温度Bの差が、一定値を超えた場合、前記ポンプを動作させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、車載電池の温度のバラツキを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の電池温調システム1の一例を示す概念図
【
図2】
図1に基づく電池温調システム1の構成図であり、(a)部分分解斜視図、(b)第1のA-A’断面図、(c)第2のA-A’断面図、(d)第3のA-A’断面図
【
図3】本開示の冷却部50の異なる形状の一例を示す上面視における模式図であり、(a)実施形態1、(b)実施形態2
【
図4】本開示の冷却部50の別の実施形態の一例を示す平面視における模式図であり、(a)実施形態3、(b)実施形態4
【
図5】本開示の各二次電池セルの配列例を示す上面視における模式図であり、(a)実施例1、(b)実施例2
【
図6】本開示の二次電池セルの各抵抗に基づいた発熱状態を示す模式図
【
図7】本開示の二次電池セル11及び熱管理システム20の発熱状態を示す模式図
【
図8】本開示の電池温調システム1の冷却制御の一例を説明する模式図
【
図9】本開示の電池温調システム1の加熱制御の一例を説明する模式図
【
図10】本開示の冷却部50の別実施形態を示すブロック図
【
図11】本開示の車両100に電池温調システム1を搭載した状態を説明する模式図であり、(a)車両100の側面図、(b)車両100の背面図
【
図12】
図11の車両100の経路や目的情報を用いた電池温調システム1の制御の一例を示す模式図
【
図13】車両100に設置された電池パックαを示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る車両、熱交換プレート、及び電池パックを具体的に開示した実施形態(以下、「本実施形態」という)を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0013】
以下、本開示を実施するための好適な本実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本開示の電池温調システム1の一例を示す概念図である。
図2は、
図1に基づく電池温調システム1の構成図であり、(a)部分分解斜視図、(b)第1のA-A’断面図、(c)第2のA-A’断面図、(d)第3のA-A’断面図である。
図1及び
図2に基づいて本開示の電池温調システム1を詳述する。
【0015】
電池温調システム1は、車載電池10と、車載電池10を載置し冷却する熱管理システム20とを備える。熱管理システム20は熱交換器21を有する。車載電池10は複数の二次電池セル11を含み、熱交換器21の第1面22上に直線的に並べて配置される。なお、熱交換器21の第1面22とは反対側を第2面23とする。二次電池セル11は、例えば、ハイブリッド車または電気自動車における走行用モータの駆動源となる電気エネルギーを蓄積する電池であり、冷却など温度調節を要する部品である。また、二次電池セル11(単電池)が複数組み合わされものは、電池モジュールと呼ばれる。電池モジュールが複数組み合わされたものは、電池モジュール群と呼ばれる。車載電池10は、1つの電池モジュールに相当してもよく、複数の電池モジュールを有する電池モジュール群に相当してもよい。ここでは、車載電池10は電池モジュール群であるとして説明する。図示したのと同様に、電池モジュール群は熱交換器21の第1面22上に沿って配置される。電池モジュール群は、平面視で前記第1面22に第3領域REG3を備える。
【0016】
熱管理システム20は、車載電池10を冷却するための装置であり、車載電池10に隣接して配置され熱交換器21を備えている。更に、熱管理システム20は、熱交換器21に収納され冷却液を流す冷却液通路30と、冷媒を流す冷媒配管40とを備えている。冷却液通路30は、
図2(b)~
図2(d)に示したように、層状であってよい。すなわち、冷却液通路30は、冷却液を循環させる冷却液層である。この冷却液層は第1面22と第2面23の間において、平面視で第1領域REG1を備える(
図2(a)参照)。熱管理システム20は、さらに、冷却液通路30と連通する冷却液通路配管31と、冷却液通路配管31と連結し冷却液を循環させるポンプ32と、ヒータ33と、冷媒配管40に冷媒を循環させるコンプレッサ41と、コンデンサ42と、膨張弁43とを備える。
【0017】
冷媒配管40は、コンプレッサ41、コンデンサ42及び膨張弁43と連通しており、
図1において冷却液通路30内に配置されている冷媒配管40は、冷却部50を構成している。冷却部50は、
図2(b)~
図2(d)に示したように、層状であってよく、冷却部50の中を冷媒が流れる。すなわち、冷却部50は、冷媒を循環させる冷媒層である。この冷媒層は第1面22と第2面23の間において、平面視で第2領域REG2を備える(
図2(a)参照)。
【0018】
上記で示した第1領域REG1、第2領域REG2、及び第3領域REG3の相互関係は、以下の通りである。
・冷媒層の第2領域REG2は、冷却液層の第1領域REG1より小さい(
図2(a)参照)。すなわち、冷媒層の領域(第2領域REG2)を、冷却液層の第1領域REG1より小さくなるよう、集中して配置する。これにより、冷媒用の配管を短くまとめることができる。配管が短いことにより、圧力損失(圧損)が低減される効果がある。
・冷媒層の前記第2領域REG2の少なくとも一部は、冷却液層の第1領域REG1に重なって配置される(
図2(a)~
図2(d)参照)。これにより、冷媒層の前記第2領域REG2が冷却液層の第1領域REG1と重なる部分において、冷却液と冷媒との間の熱交換を行うことができる。
・電池モジュール群の第3領域REG3の中心Oが、冷媒層の前記第2領域REG2に重なって配置される(
図2(a)~
図2(d)参照)。これにより、電池モジュール群における第3領域REG3の中心O付近が、冷媒層を流れる冷媒によって集中的に冷却される。第3領域REG3の中心O付近は、熱がこもり、温度がより高くなる部分である。従って、中心O付近を集中的に冷却することにより、電池モジュール群の温度ばらつきが低減される。
【0019】
なお、電池モジュール群の第3領域REG3は、冷却液層の第1領域REG1より小さいと好適である。この場合、電池モジュール群の全体を、冷却液層によって冷却することができる。
【0020】
また、第1領域REG1、第2領域REG2、及び第3領域REG3の上下方向の相互関係は、以下のようになる。
・電池モジュール群(車載電池10)の第3領域REG3の中心Oにおいて、冷媒層(冷却部50)と前記電池モジュール群の間に、冷却液層(冷却液通路30)が配置される。
図2(b)~
図2(d)のいずれの状態においても、そのような配置となっている。冷媒層と電池モジュール群の間に冷却液層があることにより、冷媒による冷却時のムラを冷却液が拡散するので、電池モジュール群をより均一に冷却することができる。
【0021】
図2(b)においては、冷媒層が冷却液層の内部に埋まっている。
図2(c)においては、冷媒層が冷却液層の内部かつ底部にある。
図2(d)においては、冷媒層の上に、冷却液層が載っている。ここで、
図2(b)に示した構成は、冷媒層を2つの冷却液層で挟み込んだ、サンドイッチ構造であると解釈することもできる。すなわち、冷却液層は、電池モジュール群の第3領域REG3の中心Oにおいて、第1冷却液層30aと第2冷却液層30bを備え、電池モジュール群の第3領域REG3の中心Oにおいて、冷媒層と電池モジュール群の間に、第1冷却液層30aが配置され、電池モジュール群の前記第3領域REG3の中心Oにおいて、第1冷却液層30aと第2冷却液層30bの間に、冷媒層が配置されている。このような配置により、冷媒層を第1冷却液層30aおよび第2冷却液層30bとで取り囲むことができ、冷媒層と冷却液層との間の熱交換が円滑に行われる。
【0022】
冷却部50は、配管により構成されている。冷却部50には、
図1の概略図に示されているように冷媒の入口配管51と出口配管52が設けられており、一側方側に第1の点53と他の側方側に第2の点54を有している。
図1の例において、冷媒は、入口配管51から出口配管52に向かって一筆書きの様に構成された冷却部50を流れ、循環し、車載電池10を冷却する。なお、冷却部50は第1の点53から第2の点54を経由して第1の点53に向かって折り返す部分を構成している。すなわち、冷媒は、入口配管51から流入し、第1の点53付近と第2の点54付近とを往復して、出口配管52から流出する。
【0023】
本実施形態において、冷却部50は、車載電池10の平面視における中央領域S内に配置され、中央領域Sは、車載電池10の平面視における縦方向および横方向において、略1/3の長さをもつ中央寄りの領域に設定されている。
【0024】
冷却液通路30を流れる冷却液は、例えばエチレングリコールを含む不凍液である。冷媒配管40内を流れる冷媒は、気体(ガス)と液体とが混じった2相状態のものであってよく、一例は、HFC(Hydrofluorocarbon)である。ただし、冷媒はHFC以外のものであってもよい。
【0025】
冷却液通路30内を循環する冷却液は、
図1に示したポンプ32の駆動により行われ、ポンプ32は、例えば冷却液圧送用ポンプ、電動ウォーターポンプなどである。
【0026】
コンプレッサ41は、気化された冷媒を圧縮し、コンデンサ42に供給し、コンデンサ42は、コンプレッサ41で圧縮された冷媒を冷却して液化させ、膨張弁43に供給し、冷媒配管40内を循環させる。
【0027】
熱交換器21は、例えば平板状を呈し、高さは、前後方向および左右方向の長さよりも短い板状形状をなしており、熱交換プレートと呼ばれる。しかしながら熱交換器21は、左右方向よりも前後方向に短い箱形形状、正方形状、あるいは円筒形状であってもよい。熱交換器21には、冷却部50に連通する入口配管51及び出口配管52と、冷却液通路30に連通する冷却液通路配管31の導入管31a及び排出管31bがそれぞれ設けられている。
【0028】
図3は、本開示の冷却部50の異なる形状の一例を示す上面視における模式図であり、(a)実施形態1、(b)実施形態2である。
図3に基づいて、冷却部50の配管構造を説明する。
【0029】
図3(a)に示した実施形態1は、第1の点53及び第2の点54における折り返す部分の形状が平面である。個々の配管部分おける冷媒の流れは、第1の点53及び第2の点54間において平行である。入口配管51と出口配管52の位置は任意に設定できる。これにより、冷媒配管40が連続的に繋がり、コンパクトで低コストな配管構成が可能となる。
【0030】
冷却部50の冷媒配管40は、
図3(a)に示したように、一筆書きのように、複数に分岐することなく連続で1本の管形状で配管されている。尚、上面視で説明した配管形状が、冷却液通路30内の縦方向(平面視)に対して複数配列されていても良い。
【0031】
また、
図3(b)に示した実施形態2に示すように、冷媒配管40を途中で複数の流路に分岐させてもよい。
図3(a)および
図3(b)いずれの場合においても、複数の配管をつなぎ合わせることにより、図示したような管の形状を形成してよい。
【0032】
図4は、本開示の冷却部50の別の実施形態の一例を示す平面視における模式図であり、(a)実施形態3、(b)実施形態4である。
図4に基づいて、冷却部50の配管構造を説明する。
【0033】
実施形態3および実施形態4において、冷媒配管40は、冷却部50の中央に向かって渦巻き状に配列されている。入口配管51は、冷却部50の周辺近傍に配置され、出口配管52は、冷却部50の中央近傍に配置される。また、入口配管51と出口配管52の位置は逆でも良い。この場合、冷却部50の中央近傍に配置される入口配管51から、液相の冷媒が入り、冷媒が液相から気相に変わりつつ中央近傍を冷却しつつ、周辺近傍に配置される出口配管52に向かって、冷媒が流れる。これにより、冷却部50の中央近傍を効率的に冷却することができる。
【0034】
ここで、
図4(b)に示した実施形態4と比較すると、
図4(a)に示した実施形態3においては、冷媒配管40が、冷却部50の中央付近に密集している。すなわち、冷却部50の中央付近は、冷却液通路30を流れる冷却液と接触する表面積が大きくなるため、冷却能力が大きくなる。ここで、冷媒層の第2領域REG2を、さらに2つの領域に分けて考える。第3領域REG3の中心O(
図2参照)に対応する第1冷媒層領域REG21と、平面視において前記第1冷媒層領域の外側に位置する第2冷媒層領域REG22とである。これらの2つの冷媒層領域REG21及びREG22が、図中の破線によって示されている。このとき、第1冷媒層領域REG21の第1冷却能力は、第2冷媒層領域REG22の第2冷却能力より大きくなる。
【0035】
冷却部50の形状は、熱管理システム20に載置される車載電池10の温度上昇、特に中央領域Sの温度上昇値により決定される。車載電池10を構成する二次電池セル11の数、容量が多ければ熱交換器21、冷却液通路30及び冷却部50を大きくする必要があり、実施形態1から実施形態4に示される代表的な形状の配列を選択することが可能であり、複数配列、多段配列なども選択される。尚、配管の配列構成は、実施形態に限らない。
【0036】
図5は、各二次電池セル11の配列例を示す上面視における模式図であり、(a)は実施例1、(b)は実施例2である。
図5に基づいて、複数の二次電池セル11の配列を説明する。
【0037】
実施例1では、二次電池セル11は熱交換器21の第1面22上に、図面横方向に一端が面一になるように隣接して直列状に複数配列されている。実施例2では、実施例1の配列が、図面縦方向に対して2列に配列されている。図面上では、二次電池セル11の長手方向が図面縦方向に沿っているが、図面横方向に配列されていてもよく、同様に配列が2列に限らず、3列以上であっても良い。
【0038】
図6は、直列に接続された二次電池セル11の各抵抗に基づいた発熱状態を示す模式図である。
図6では、二次電池セル11の上に温度を示すグラフを描き、二次電池セル11の下に二次電池セル11の抵抗を示している。
【0039】
二次電池セル11のそれぞれの抵抗(内部抵抗)をR、二次電池セル11に流れる充電電流をiとすると、各二次電池セル11の抵抗Rが同じであれば、各二次電池セル11の発熱量Pは、R×i2で表すことができ、発熱量Pは同じである(P=R×i2)。しかしながら、二次電池セル11は隣接する二次電池セル11とほぼ密接した状態で配列されているため、中央よりの二次電池セル11の方が周辺に配置される二次電池セル11よりも熱がこもるため、温度上昇が高くなる。
【0040】
本実施形態の熱管理システム20において、充放電によって温度上昇が発生する車載電池10の中央寄りに対応する、熱管理システム20の冷却液通路30内にあるいは冷却液通路30に重なる位置に、冷媒配管40で構成される冷却部50が設けられている。特に、車載電池10の平面視における縦方向および横方向において、略1/3の長さをもつ中央寄りの領域に設定されている中央領域Sに冷却部50を設けることにより、冷却時は車載電池10の中央寄りの温度上昇を低減、もしくは中央寄りの温度を周辺より低下させることができる。また、車載電池10の中心寄りは熱がこもり二次電池セル11の温度が上がるため、冷却時は中央領域Sの冷却部50の冷媒により冷却し、車載電池10周辺寄りは冷却液の循環による熱拡散と車載電池10の周辺への自然放熱によって冷却することにより、車載電池10の温度を低減させると共にばらつきを低減することができる。
【0041】
冷媒配管40は、熱管理システム20の中央領域Sに集中させることにより、冷媒配管40を短く構成できるので圧損を低減することが可能となる。さらに、一筆書きの様に冷媒配管40を連続形成させることにより、熱管理システム20全体を冷却でき、冷媒を複数に分配する場合と比較して冷媒の流れの偏りを低減することが可能となる。そして、熱管理システム20内の冷却液通路30を流れる冷却液をポンプ32で循環させ冷熱、温熱を拡散させることにより、車載電池10を構成する複数の二次電池セル11の温度ばらつきを低減し、また最高温度を許容範囲にすることができる。
【0042】
図7は、直列に接続された二次電池セル11及び熱管理システム20の発熱状態を示す模式図である。
図7では、二次電池セル11の上に温度を示すグラフを描き、二次電池セル11及び熱管理システム20を熱抵抗で接続した状態を示している。
【0043】
個々の二次電池セル11と冷却液(冷却液通路30)及び冷媒(冷却部50)とを熱抵抗で接続したものとして考えると、二次電池セル11は充放電による発熱源と考えることができる。ここで、外気に相当する構成を二次電池外60とする。二次電池外(外気)60は、周辺環境によって温度変化するため、放熱(受熱)が発生する。車載電池10よりも周囲温度の方が低ければ放熱となり、二次電池外60に近い二次電池セル11ほど放熱されて冷却され、逆に中心寄りの二次電池セル11は熱がこもりやすいことになる。
【0044】
冷却液と冷媒による熱管理システム20があることで、二次電池セル11から冷却液(冷却液通路30)、冷媒(冷却部50)へも放熱(受熱)ルートができる。特に、中央寄りの二次電池セル11では冷却液との間の温度差が大きくなるため、冷却液への放熱が支配的となる。そして、二次電池外60と冷却部50への放熱量(=冷却能力)が、各二次電池セル11の発熱量と釣り合うことで車載電池10としての温度上昇が均衡する。さらに、コンプレッサ41等により、冷却部50への冷却能力が可変となり、必要に応じて増減できる。また、ポンプ32で冷却液を循環させることで、冷却部50の冷却効果、ヒータ33の加熱効果を各々の二次電池セル11に早く届けることとなり、冷却液通路30内の冷却液部分の熱抵抗を大きく下げることができる。
【0045】
冷却部50の冷却能力、冷却部50のサイズは、冷却のためのエネルギーとポンプ32の駆動のためのエネルギーの和が最小となるよう決定すると良い。最小エネルギーで冷却するには、車載電池10の充放電による発熱量と、熱管理システム20の発生する冷熱量および周辺環境への放熱量の推定から冷却能力を決定し、熱管理システム20に必要な動作量を決定して動作させ、更に測定温度を用いたフィードバック制御によって補正を実施する。
【0046】
車載電池10の温度の推定には、二次電池セル11の充放電電流i、内部抵抗Rから発熱量Pを取得し、予め得る熱容量、熱伝達モデルから二次電池セル11の温度を推定することができる。冷却部50およびポンプ32の熱抵抗低減効果の推定には、予め熱管理システム20の冷却液の温度、周辺温度とコンプレッサ41の制御量、ポンプ32の動作量の関係を使うことができ、車載電池10の温度を略均一化し、最高温度を許容範囲に低減することができる。
【0047】
更に、後述する車両100の目的地に向けた地図情報、気象情報等を用いて発熱量、必要冷却能力を推定してフィードフォーワード制御しても良い。車載電池10を加熱する必要がある場合は、周囲温度が低温の際の走行開始時や充電開始時である。加熱が必要となるのは、外気温度の影響を受けやすい車載電池10の周辺寄りの二次電池セル11であるため、ポンプ32で循環する冷却液をヒータ33で加熱して加熱のための液とし、車載電池10全体を加熱することが好ましい。
【0048】
図8は、本開示の電池温調システム1の冷却制御の一例を説明する模式図である。
図8を用いて冷却制御の方法を説明する。
【0049】
パラメータは以下の通りであり、測定により得られる。
(1)車載電池10の中央寄りの二次電池セル11の温度をAとする(中央寄りの代表温度)
(2)車載電池10の周辺寄りの二次電池セル11の温度をBとする(周辺寄りの代表温度)
(3)外部温度をCとする
(4)充放電電流をiとする
(5)二次電池セル11の内部抵抗をRとする(予め取得、もしくは計算等で求める)
(6)冷却液の温度をEとする(排出管31b近傍での測定)
【0050】
満たすべき温度条件は以下の通りである。
許容最高温度Gが二次電池セル温度A、B以上である。G≧AかつG≧B
許容温度バラツキHが二次電池セル温度A、Bの温度差以上である。H≧|A-B|
【0051】
冷却制御における冷却動作量の考え方について説明する。
充放電電流i、内部抵抗Rより個々の二次電池セルnの発熱量Wn、車載電池10の総発熱量Wallを計算できる。Wall=W1+W2+・・・Wnである。そして、二次電池セル温度A、B及び外部温度Cより、車載電池10からの放熱量Woutを推定することができる。予め熱抵抗モデル化及びデータ取得しておいたものを使用する。また、冷却に必要な冷却能力をWcoolとすると、Wcool>Wall-Woutとなり、当該冷却能力Wcoolが冷却の目標値となる。尚、二次電池セル11及び熱管理システム20はWallに対して大きな熱容量があるので、Wcoolは過去時間(Tcool)のWallの平均値を用いることもできる。
【0052】
Wcoolの推定:外部温度C、冷却液の温度E、コンプレッサ41の設定値の組合せに対し予めWcoolの期待値を得ておき、この値を使用する。必要なWcoolとなるようコンプレッサ41の設定を調整しても良い。更に、二次電池セル温度A、Bの測定値から、許容最高温度G≧二次電池セル温度Aかつ許容最高温度G≧二次電池セル温度Bが満たされるようWcoolを調整する。これはWcool推定値の過不足を補正するフィードバック制御となる。
【0053】
冷却制御におけるポンプ32動作量の考え方を説明する。
二次電池セル温度差の測定値(|A-B|)が一定値を超えたらポンプ32を動作させる。ポンプ32は測定値により多段、無段に変化させても良い。充放電電流iが大きく、Wallが大きいほど二次電池セル温度差(|A-B|)が大きくなることは自明であり、二次電池セル温度差(|A-B|)に関わらず、充放電電流iに基づいてポンプ32の動作量を増やすよう制御しても良い。そして、冷却部50とポンプ32の動作量は、同時又は順次判断し、冷却部50とポンプ32は併用することができる。
【0054】
図9は、本開示の電池温調システム1の加熱制御の一例を説明する模式図である。
図9を用いて加熱制御の方法を説明する。
【0055】
パラメータは、冷却制御と同じであるため省略する。また、冷却制御と同じ符号は説明を省略する。
【0056】
満たすべき温度条件は、以下の通りである。
二次電池セル温度A、Bが、許容最高温度G以下であり許容最低温度L以上である。G≧A≧LかつG≧B≧L
許容温度バラツキHが二次電池セル温度A、Bの温度差以上である。H≧|A-B|
【0057】
加熱制御におけるヒータ33の動作量の考え方を説明する。
充放電電流D、内部抵抗Rより個々の二次電池セルnの発熱量Wn、車載電池10の総発熱量Wallを計算できる。Wall=W1+W2+・・・Wnである。そして、二次電池セル温度A、B及び外部温度Cより、車載電池10からの放熱量Woutを推定することができる。予め熱抵抗モデル化及びデータ取得しておいたものを使用する。
【0058】
ヒータ33に必要な能力をWheatとすると、Wheat>Wout-Wallであり、Wheatがヒータ33の目標値となる。尚、二次電池セル11及び熱管理システム20はWallに対して大きな熱容量があるので、Wheatは過去時間(Tcool)のWallの平均値を用いることもできる。
【0059】
Wheatの計算:Wheatはヒータ33の電源電圧×電流で計算できる。必要なWheatとなるようヒータ33の電流を調整する。更に二次電池セル温度A、Bの測定値から、許容最高温度G≧二次電池セル温度A≧許容最低温度Lかつ許容最高温度G≧二次電池セル温度B≧許容最低温度Lが満たされるようWheat、Wcoolを調整する。
【0060】
加熱制御におけるポンプ32動作量の考え方を説明する。
Wheatを冷却液通路30内に拡散するためにポンプ32を動作させる。二次電池セル温度差の測定値|A-B|が一定値を超えたらポンプ32を動作させる。ポンプ32は測定値により多段、無段に変化させても良い。冷却部50とポンプ32の動作量は、同時又は順次判断し、冷却部50とポンプ32は併用することができる。
【0061】
図10は、本開示の冷却部50の別実施形態を示すブロック図である。
【0062】
特に、車載電池10を2列以上(
図5(b)参照)に配置した場合、冷却液及び冷媒における熱管理システム20が物理的に大きくなるため、熱管理システム20内の温度の均一化が課題となる。冷却部50を車載電池10の中央領域Sに配置して、1台のポンプ32による循環を作る場合、
図10に示すようにポンプ32によって循環された冷却液が冷却部50の外周を回る形態となる(
図10において、冷却液通路30内の冷却液の流れを破線矢印で示している)。ここで冷却部50、入口配管51及び出口配管52とは、循環する冷却液の流れに略直交することから、例えば入口配管51近傍に冷却部50を拡張することで、外周の冷却液にも適切な冷却が可能となる。このため、少なくとも冷却部50と膨張弁43とを連結する入口配管51の一部は冷却液通路30内に配置されることが好ましい。
【0063】
図11は、本開示の車両100に電池温調システム1を搭載した状態を説明する模式図であり、(a)車両100の側面図、(b)車両100の背面図である。
【0064】
電池温調システム1を搭載する車両100は、進行方向に沿って回転する車輪101と、車体102と、車体102の床面103とを備える。車体102は、熱交換器21及び電池モジュールを収容する。車輪101は、車体102に結合された第1車輪101aと第2車輪101bとを含んでいてよい。車輪101は、車体102に結合された第3車輪101c等も含んでいてよく、典型的には車両100は4輪である。ただしオート3輪などの、4輪以外の車両であってもよい。図示を省略する電動機が、電池モジュール(群)から供給される電力を用いて、前記第1車輪101aを駆動する。第2車輪101bは操舵輪であってよい。ただし、電動機は第1車輪101a以外の車輪を駆動してもよい。車両100は、第1車輪101a及び第2車輪101bを用いて所定の方向に走行可能である。
【0065】
図11(a)では、熱交換器21の長手方向を車両100の進行方向に沿って配置し、
図11(b)では、熱交換器21の長手方向を車両100の幅方向に沿って配置している。すなわち
図11(b)では、熱交換器21の短手方向を車両100の進行方向に沿って配置している。これらのように、熱交換器21は、所定の方向に沿って配置される。なお、車両100の配置スペースや電池温調システム1の耐震性等を考慮して、熱交換器21の配置方向を適宜決めることができる。
【0066】
図12は、
図11の車両100の経路や目的情報を用いた電池温調システム1の制御の一例を示す模式図である。
【0067】
車両100が、自動走行や、カーナビゲーションによる経路案内を行っている場合は、通信でクラウド上の情報を使用することで、今後の走行で発生する様々なパラメータの変化を、推定することができる。例えば、外部温度Cの変化、天候や標高による変化、充放電電流iの変化、標高によるアップダウン、走行するルートによる速度、信号、制限速度、渋滞による速度、所要時間の変化などである。外部温度C、充放電電流iは、電池温調システム1の制御を行う上で重要なパラメータであり、予めこれらの情報を得ることで、二次電池セル温度A、Bの変化を予め推定することができる。
【0068】
許容最高温度G≧二次電池セル温度A、B、及び許容温度バラツキH≧二次電池セル温度差(|A-B|)を必要十分に満たすことができるよう、コンプレッサ41の設定値、ポンプ32の動作量をフィードフォーワード制御することができる。これにより冷却のための消費電力が低減でき、また冷媒回路の能力を必要十分に小さく設計できる。また、経路や目的地情報を使った推定、コンプレッサ41の設定値、ポンプ32の動作量の調整はクラウド上で演算を実施して、通信で車両100に伝えるようにしても良い。
【0069】
図13は、車両100に設置された電池パックαを示す側面図である。
【0070】
車両100の車体102の下部に電池パックαが設置されている。電池パックαは筐体α1を備え、筐体α1は、少なくとも車載電池10と熱交換器21を収容している。なお、図示した例において、電池温調システム1は、3つの電池モジュール(車載電池10)と、3つの熱交換器21(熱交換プレート)とを備えている。ただし、1つの熱交換器21上に、3つの電池モジュール(車載電池10)からなる電池モジュール群を載せてもよい。電池温調システムが備える熱交換器21及び車載電池10の数は、特に限定しない。
【0071】
筐体α1は、熱交換器21の第1面22に沿って配置された第1筐体面α11と、熱交換器21の第2面23に沿って配置された第2筐体面α12を備える。そして、電池モジュール群(車載電池10)と熱交換器21は、第1筐体面α11と第2筐体面α12の間に配置される。
【0072】
筐体α1は、第1筐体面α11と第2筐体面α12を繋ぐ筐体端面α13を備え、筐体端面α13は、冷媒層に向かって冷媒が入る冷媒入力部α51と、冷媒層から冷媒が出る冷媒出力部α52とを備える。なお、冷媒入力部α51及び冷媒出力部α52は管で構成されてよく、それぞれ、
図1等の模式図における入口配管51及び出口配管52に相当する。すなわち、少なくとも冷媒入力部α51と冷媒出力部α52は、コンプレッサ41、コンデンサ42および膨張弁43等を備えた、熱交換サイクルシステムに結合可能である。この熱交換サイクルシステムは車室空調用のものであってよく、熱交換サイクルシステムは冷却部50に冷媒を循環させるだけでなく、車室空調装置(カーエアコン)に対しても冷媒を循環させてよい。
【0073】
また、筐体端面α13は、冷却液層に向かって冷却液が入る冷却液入力部α31aと、冷却液層から冷却液が出る冷却液出力部α31bとを、更に備えてよい。なお、冷却液入力部α31a及び冷却液出力部α31bは管で構成されてよく、それぞれ、
図1等の模式図における導入管31a及び排出管31bに相当する。
【0074】
ここで、図示したように、筐体端面α13は複数存在し得る。筐体端面α13は、少なくとも第1筐体端面α131と第2筐体端面α132を備えている。第1筐体端面α131は第2筐体端面α132と対向して配置されている。冷却液入力部α31a、冷却液出力部α31b、冷媒入力部α51、及び前記冷媒出力部α52は、第1筐体端面α131に配置されている。これらの管が第1筐体端面α131に集中して配置されることにより、電池パックαの外側に延びる配管がコンパクトにまとまり、配管の長さも短くすることができる。ただし、冷却液入力部α31a、冷却液出力部α31b、冷媒入力部α51、及び前記冷媒出力部α52は、それぞれ異なる筐体端面(α131、α132等)に配置されていてもよい。複数の筐体端面のうちどの端面にむけて、それぞれの配管を伸ばすかは、車体102の床面103の形状や、空きスペースの形状に応じて、適宜決定される。
【0075】
以上のように、冷媒層の第2領域REG2は、第3領域REG3の中心に対応する第1冷媒層領域と、平面視において第1冷媒層領域の外側に位置する第2冷媒層領域を備え、第1冷媒層領域の第1冷却能力は、第2冷媒層領域の第2冷却能力より大きい。これにより、第3領域REG3の中心付近にこもった熱を集中的に除去し、電池モジュール群の温度ばらつきを低減することができる。
【0076】
また、熱交換プレートは、所定の方向に沿って配置される。これにより、車両100の配置スペースや電池温調システム1の耐震性等を考慮して、熱交換プレートの配置方向を決定することができる。
【0077】
また、複数の電池モジュールは、複数の電池セルを備える。これにより、電池セルを複数まとめて電池モジュールとして管理することができる。
【0078】
また、電池モジュール群の第3領域REG3は、冷却液層の第1領域REG1より小さい。これにより、電池モジュール群の全体を、冷却液層によって冷却することができる。
【0079】
また、電池モジュール群の第3領域REG3の中心Oにおいて、冷媒層と電池モジュール群の間に、冷却液層が配置される。これにより、冷媒による冷却時のムラを冷却液が拡散するので、電池モジュール群をより均一に冷却することができる。
【0080】
また、冷却液層は、電池モジュール群の第3領域REG3の中心において、第1冷却液層と第2冷却液層を備え、電池モジュール群の第3領域REG3の中心Oにおいて、冷媒層と電池モジュール群の間に、第1冷却液層が配置され、電池モジュール群の第3領域REG3の中心Oにおいて、第1冷却液層と第2冷却液層の間に、冷媒層が配置される。これにより、冷媒層を第1冷却液層および第2冷却液層とで取り囲むことができ、冷媒層と冷却液層との間の熱交換が円滑に行われる。
【0081】
また、上記の電池パックが、電池モジュール群と熱交換プレートとを収容する筐体を備え、筐体は、熱交換プレートの第1面に沿って配置された第1筐体面と、熱交換プレートの第2面に沿って配置された第2筐体面とを備え、電池モジュール群と熱交換プレートは、第1筐体面と第2筐体面の間に配置され、第1筐体面と第2筐体面を繋ぐ筐体端面を備え、
筐体端面は、冷媒層に向かって冷媒が入る冷媒入力部と、冷媒層から冷媒が出る冷媒出力部と、を備える。これにより、電池モジュール群と熱交換プレートを筐体内にまとめて1つに収容し、1つの電池パックとして扱うことができる。すなわち、車両等に電池温調システムを容易に設置することができる。
【0082】
また、少なくとも冷媒入力部と冷媒出力部は、熱交換サイクルシステムに結合可能である。これにより、カーエアコン等の熱交換サイクルシステムにおける冷媒を併用して、電池モジュール群を冷却することができる。
【0083】
また、筐体端面は、冷却液層に向かって冷却液が入る冷却液入力部と、冷却液層から冷却液が出る冷却液出力部と、を更に備える。これにより、電池パックを、冷媒と冷却液の双方を用いたハイブリッド型にすることができる。
【0084】
また、冷却液入力部、冷却液出力部、冷媒入力部、及び冷媒出力部は、それぞれ管で構成される。これにより、熱交換サイクルシステム等と電池パックとを、管によって結合することができる。
【0085】
また、筐体端面は、少なくとも第1筐体端面と第2筐体端面を備え、第1筐体端面は第2筐体端面と対向して配置され、冷却液入力部、冷却液出力部、冷媒入力部、及び冷媒出力部は、第1筐体端面に配置される。これにより、電池パックの外側に延びる配管がコンパクトにまとまり、配管の長さも短くすることができる。
【0086】
以上、図面を参照して本開示に係る車両、熱交換プレート、及び電池パックの実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本開示の車両、熱交換プレート、及び電池パックは、車載電池の中央寄りの温度を周辺寄りの温度よりも低減し、温度均一性を維持することを望む分野に有用である。
【符号の説明】
【0088】
1:電池温調システム
10:車載電池
11:二次電池セル
20:熱管理システム
21:熱交換器
22:第1面
23:第2面
30:冷却液通路
30a:第1冷却液層
30b:第2冷却液層
31:冷却液通路配管
31a:導入管
31b:排出管
32:ポンプ
33:ヒータ
40:冷媒配管
41:コンプレッサ
42:コンデンサ
43:膨張弁
50:冷却部
51:入口配管
52:出口配管
53:第1の点
54:第2の点
100:車両
101:車輪
101a:第1車輪
101b:第2車輪
101c:第3車輪
102:車体
103:床面
REG1:第1領域
REG2:第2領域
REG21:第1冷媒層領域
REG22:第2冷媒層領域
REG3:第3領域
S:中央領域
α:電池パック
α1:筐体
α11:第1筐体面
α12:第2筐体面
α13:筐体端面
α131:第1筐体端面
α132:第2筐体端面
α31a:冷却液入力部
α31b:冷却液出力部
α51:冷媒入力部
α52:冷媒出力部