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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
H01G4/30 201N
H01G4/30 512
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023093268
(22)【出願日】2023-06-06
(62)【分割の表示】P 2019094616の分割
【原出願日】2019-05-20
(65)【公開番号】P2023105085
(43)【公開日】2023-07-28
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 洋一
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-209506(JP,A)
【文献】特開2018-067566(JP,A)
【文献】特開2014-204116(JP,A)
【文献】特開2017-135202(JP,A)
【文献】特開2017-183469(JP,A)
【文献】特開平08-069950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に積層された複数のセラミック層と、前記複数のセラミック層の間に配置された複数の内部電極と、を有する積層体と、
前記第1方向に直交する第2方向から前記積層体を覆うサイドマージン部と、
を具備し、
前記サイドマージン部は、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向並びに前記第1方向における中央部よりもポア率の低い、前記第1方向及び前記第3方向における角部を有する
積層セラミック電子部品。
【請求項2】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記角部のポア率は、3%以下である
積層セラミック電子部品。
【請求項3】
請求項2に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記中央部のポア率は、2%以上であり、
前記角部のポア率は、1%以下である
積層セラミック電子部品。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記サイドマージン部の前記第2方向における厚みは、30μm以下である
積層セラミック電子部品。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記サイドマージン部は、前記角部を含み、前記中央部の前記第1方向及び前記第3方向における外側を取り囲む周縁部を有し、
前記周縁部は、前記中央部よりもポア率が小さい
積層セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドマージン部を備えた積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品は、典型的には、内部電極がセラミック層を挟んで積層された機能部と、内部電極の側部を保護するサイドマージン部と、を有する。このような積層セラミック電子部品の製造方法として、サイドマージン部を薄型化して内部電極の交差面積を増加させる観点等から、内部電極とセラミックグリーンシートからなる未焼成の積層体を作製した後、サイドマージン部を設ける技術が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、内部電極を側面に露出させた状態のグリーンチップの側面に側面用セラミックグリーンシートを貼り付けることで、生のセラミック保護層を形成する、積層セラミック電子部品の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-209539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の製造方法によって製造された積層セラミック電子部品は、サイドマージン部を薄く構成できる一方で、特にサイドマージン部の角部において、外的な衝撃によるクラックや欠損が発生しやすくなるという問題があった。サイドマージン部にクラックや欠損が発生した場合、絶縁劣化が発生して、積層セラミック電子部品の信頼性が低下する。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、信頼性の高い積層セラミック電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層セラミック電子部品は、積層体と、サイドマージン部と、を具備する。
上記積層体は、第1方向に積層された複数のセラミック層と、上記複数のセラミック層の間に配置され上記第1方向と直交する第2方向の端部の位置が上記第2方向に0.5μmの範囲内に相互に揃っている複数の内部電極と、を有する。
上記サイドマージン部は、上記第1方向に直交する第2方向から上記積層体を覆う。
さらに、上記サイドマージン部は、上記第1方向及び上記第2方向に直交する第3方向並びに上記第1方向における中央部よりもポア率の低い、上記第1方向及び上記第3方向における角部を有する。
【0008】
この構成では、サイドマージン部において、角部が、中央部よりもポア率の低い緻密な構成となる。これにより、特に外的な衝撃が付加されやすい角部のクラックや欠損を抑制することができる。したがって、サイドマージン部を薄く構成した場合にも、積層セラミック電子部品の機械的強度や耐湿性を高めて絶縁劣化を抑制でき、積層セラミック電子部品の信頼性を高めることができる。
【0009】
具体的には、上記角部のポア率は、3%以下であってもよい。
また、上記中央部のポア率は、2%以上であり、
上記角部のポア率は、1%以下であってもよい。
これにより、角部のポア率が十分低くなり、絶縁劣化をより確実に抑制でき、積層セラミック電子部品の信頼性をより高めることができる。
【0010】
上記サイドマージン部の上記第2方向における厚みは、30μm以下であってもよい。
これにより、サイドマージン部を薄く構成でき、積層セラミック電子部品を小型化することができる。また、内部電極の交差面積を確保でき、小型でかつ大容量の積層セラミック電子部品を実現することができる。
【0011】
上記サイドマージン部は、上記角部を含み、上記中央部の上記第1方向及び上記第3方向における外側を取り囲む周縁部を有し、
上記周縁部は、上記中央部よりもポア率が小さい構成とすることができる。
これにより、角部を含む周縁部が緻密な構成となり、サイドマージン部の機械的強度及び耐湿性をより向上させることができる。したがって、積層セラミック電子部品の信頼性をさらに高めることができる。
【0012】
本発明の他の形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、第1方向に積層された複数のセラミック層と、上記複数のセラミック層の間に配置され上記第1方向に直交する第2方向に向いた側面から露出した複数の内部電極と、を有する積層チップを作製する工程を含む。
上記第1方向及び上記第2方向に直交する第3方向並びに上記第1方向における中央部よりもポア率の低い、上記第1方向及び上記第3方向における角部を有するサイドマージン部が、上記積層チップの上記側面に形成される。
【0013】
上記サイドマージン部を形成する工程では、
上記積層チップの側面に、未焼成のセラミックスからなる未処理サイドマージン部が形成され、
上記未処理サイドマージン部の上記第1方向及び上記第3方向における角部が、上記第2方向から加圧されてもよい。
これにより、未処理サイドマージン部の角部が加圧処理により圧縮され、角部の粉体充填率が上昇する。したがって、角部が粉体充填率の高い状態で焼成され、角部をポア率の低い緻密な状態で焼結させることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、信頼性の高い積層セラミック電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの斜視図である。
図2】上記積層セラミックコンデンサの図1のA-A'線に沿った断面図である。
図3】上記積層セラミックコンデンサの図1のB-B'線に沿った断面図である。
図4】上記積層セラミックコンデンサの図1のC-C'線に沿った断面図である。
図5】上記積層セラミックコンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
図6】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
図7】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
図8】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
図9】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。
図10】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
図11】本発明の第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサを示す斜視図である。
図12】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。
図13】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図面には、適宜相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は全図において共通である。
【0017】
<第1実施形態>
[積層セラミックコンデンサ10の構成]
図1~4は、本発明の第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。図2は、積層セラミックコンデンサ10の図1のA-A´線に沿った断面図である。図3は、積層セラミックコンデンサ10の図1のB-B´線に沿った断面図である。図4は、積層セラミックコンデンサ10の図1のC-C´線に沿った断面図である。
【0018】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、第1外部電極14と、第2外部電極15と、を備える。図1では、外部電極14,15を破線で示している。セラミック素体11は、典型的には、Z軸方向を向いた2つの主面と、X軸方向を向いた2つの端面と、Y軸方向を向いた2つの側面と、を有する。なお、セラミック素体11の各面を接続する稜部は丸みを帯びていてもよい。
【0019】
外部電極14,15は、セラミック素体11の端面を覆い、セラミック素体11を挟んでX軸方向に対向している。外部電極14,15は、セラミック素体11の端面から主面及び側面に延出している。これにより、外部電極14,15では、X-Z平面に平行な断面、及びX-Y平面に平行な断面がいずれもU字状となっている。なお、外部電極14,15の形状は、図1に示すものに限定されない。
【0020】
外部電極14,15は、電気の良導体により形成されている。外部電極14,15を形成する電気の良導体としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0021】
セラミック素体11は、積層体16と、サイドマージン部17と、を有する。積層体16には、X軸方向を向いた2つの端面16aと、Y軸方向を向いた2つの側面16bと、Z軸方向を向いた2つの主面16cと、が形成されている。
【0022】
積層体16は、容量形成部18と、容量形成部18のZ軸方向両側にそれぞれ設けられたカバー部19と、容量形成部18のX軸方向両側にそれぞれ設けられたエンドマージン部20と、を有する。容量形成部18は、本実施形態における機能部として構成される。
【0023】
容量形成部18は、複数のセラミック層21(図2参照)を挟んでZ軸方向に交互に積層された第1内部電極12及び第2内部電極13を有する。内部電極12,13は、電気の良導体により形成されている。内部電極12,13を形成する電気の良導体としては、典型的にはニッケル(Ni)が挙げられ、この他にも銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0024】
内部電極12,13は、それぞれ、X-Y平面に沿って延びるシート状に構成される。第1内部電極12は、積層体16の一方の端面16aに引き出され、第1外部電極14に接続される。第2内部電極13は、積層体16の他方の端面16aに引き出され、第2外部電極15に接続される。これにより、第1外部電極14及び第2外部電極15の間に電圧が印加されると、第1内部電極12と第2内部電極13との間のセラミック層21に電圧が加わり、容量形成部18に当該電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0025】
積層体16では、内部電極12,13間の各セラミック層21の容量を大きくするため、高誘電率の誘電体セラミックスが用いられる。高誘電率の誘電体セラミックスとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の材料が挙げられる。
【0026】
なお、セラミック層21は、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)系、チタン酸カルシウム(CaTiO)系、チタン酸マグネシウム(MgTiO)系、ジルコン酸カルシウム(CaZrO)系、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O)系、ジルコン酸バリウム(BaZrO)系、酸化チタン(TiO)系などで構成してもよい。
【0027】
カバー部19は、絶縁性セラミックスで形成され、容量形成部18のZ軸方向における絶縁性を確保するとともに、容量形成部18を保護する。
【0028】
エンドマージン部20は、絶縁性セラミックスで形成され、容量形成部18と外部電極14,15の間にそれぞれ設けられる。つまり、エンドマージン部20は、第1内部電極12とそれが引き出されていない側の端面16aとの間、及び、第2内部電極13とそれが引き出されていない側の端面16aとの間に、それぞれ設けられる。エンドマージン部20は、第1内部電極12と第2外部電極15との絶縁性を確保し、かつ、第2内部電極13と第1外部電極14との絶縁性を確保する。
【0029】
エンドマージン部20及びカバー部19に用いられる絶縁性セラミックスは、セラミック層21で用いられた誘電体セラミックスを含んでいてもよい。これにより、エンドマージン部20及びカバー部19と容量形成部18との間に発生し得る内部応力が抑制される。
【0030】
内部電極12,13は、容量形成部18のY軸方向の全幅にわたって形成され、積層体16の両側面16bに露出している。これらの内部電極12,13の端部の位置は、Y軸方向に0.5μmの範囲内に相互に揃っている。両側面16bには、内部電極12,13間及びこれらと外部との間の絶縁性を確保する等の観点から、サイドマージン部17が設けられている。
【0031】
[サイドマージン部17の構成]
サイドマージン部17は、積層体16の2つの側面16bをそれぞれ被覆している。サイドマージン部17も、絶縁性セラミックスで形成されるが、カバー部19及びエンドマージン部20と同様に内部応力抑制等の観点から、セラミック層21で用いられた誘電体セラミックスで形成されてもよい。
【0032】
サイドマージン部17は、本実施形態において、非常に薄く構成される。具体的に、サイドマージン部17のY軸方向における厚みは、30μm以下で構成される。これにより、積層セラミックコンデンサ10を小型化できるとともに、内部電極12,13の交差面積を十分に確保し、大容量化を実現できる。
【0033】
図1、3及び4に示すように、サイドマージン部17は、Z軸方向及びX軸方向における中央部Cと、中央部CのZ軸方向及びX軸方向における外側を取り囲む周縁部Eと、を有する。中央部C及び周縁部Eは、後述するポア率の観点から規定されたサイドマージン部17内の領域である。図1では、周縁部Eをドットパターンで示している。図3及び4では、周縁部Eを高密度の斜線で、中央部Cを低密度の斜線で示している。
【0034】
周縁部Eは、図1に示すように、サイドマージン部17の周縁を環状に取り囲む領域として規定される。周縁部EのZ軸方向内方における境界面は、図3に示すように、容量形成部18とカバー部19との境界面をY軸方向に延長した面に一致するものとする。同様に、周縁部EのX軸方向内方における境界面は、図4に示すように、容量形成部18とエンドマージン部20との境界面をY軸方向に延長した面に一致するものとする。また、周縁部EのY軸方向内方における境界面は、サイドマージン部37と積層体16との境界面に一致するものとする。
【0035】
中央部Cは、図1に示すように、Y軸方向から見たときに、サイドマージン部17のZ軸方向及びX軸方向における中心点を中心とする略矩形の平面形状を有する領域として規定される。具体的に、中央部Cは、Z軸方向において、サイドマージン部17をZ軸方向に2等分する仮想線を中心として、サイドマージン部17のZ軸方向における寸法の50%の寸法を有する領域とする。同様に、中央部Cは、X軸方向において、サイドマージン部17をX軸方向に2等分する仮想線を中心として、サイドマージン部17のX軸方向における寸法の50%の寸法を有する領域とする。なお、中央部CのY軸方向内方における境界面は、サイドマージン部37と積層体16との境界面に一致するものとする。
【0036】
本実施形態では、周縁部Eと中央部Cとのポア率が比較される。ポア率は、例えば以下の手順により算出される。まず、サイドマージン部17の周縁部E及び中央部Cの断面をSEM(Scanning Electron Microscope)によって所定の倍率(例えば10000倍)で撮像する。周縁部E及び中央部Cの断面は、それぞれ複数個所(例えば5箇所)撮像される。次に、周縁部E及び中央部Cの断面を撮像した各画像に写っているポアの断面積を測定し、複数の画像中のポアの断面積から、周縁部Eにおけるポアの断面積の平均値及び中央部Cにおけるポアの断面積の平均値をそれぞれ算出する。そして、周縁部E及び中央部Cの断面積に対する当該平均値の割合から、それぞれ、周縁部Eにおけるポア率及び中央部Cにおけるポア率を算出する。
【0037】
本実施形態において、周縁部Eは、中央部Cよりもポア率が小さく構成される。これにより、周縁部Eは、中央部Cよりもセラミックスの緻密性が高く、機械的強度が高くなる。したがって、周縁部Eでは、外的な衝撃に対するクラックや欠損が抑制される。また、周縁部Eでは、クラックやポアを介した水分の進入が抑制され、耐湿性も高められる。したがって、積層セラミックコンデンサ10によれば、外的な衝撃を受けやすい周縁部Eにおける絶縁劣化を抑制でき、信頼性の高い構成を得ることができる。
【0038】
具体的には、周縁部Eのポア率は、3%以下であると良く、1%以下であるとより良い。これにより、周縁部Eの機械的強度及び耐湿性を十分に高めることができる。
周縁部Eのポア率が1%以下である場合、中央部Cのポア率は、例えば2%以上とすることができる。
また、周縁部Eのポア率は、例えば、中央部Cのポア率よりも1%以上低くすることができる。これにより、周縁部Eのポア率を十分低くすることができる。
【0039】
上記構成の積層セラミックコンデンサ10は、以下のように製造される。
【0040】
[積層セラミックコンデンサ10の製造方法]
図5は、積層セラミックコンデンサ10の製造方法を示すフローチャートである。図6~10は積層セラミックコンデンサ10の製造過程を模式的に示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、図5に沿って、図6~10を適宜参照しながら説明する。
【0041】
(ステップS01:セラミック積層チップ116の作製)
ステップS01では、容量形成部18を形成するための第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102と、カバー部19を形成するための第3セラミックシート103と、を積層し、切断することで、未焼成のセラミック積層チップ(積層チップ)116を作製する。
【0042】
図6に示すセラミックシート101,102,103は、誘電体セラミックスを主成分とする未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。第1セラミックシート101には、第1内部電極12に対応する未焼成の第1内部電極112が形成される。第2セラミックシート102には、第2内部電極13に対応する未焼成の第2内部電極113が形成される。第3セラミックシート103には、内部電極が形成されていない。
【0043】
各内部電極112,113は、X軸方向に平行な切断線Lxを横切り、かつY軸方向に平行な切断線Lyに沿って延びる複数の帯状の電極パターンを有する。これらの内部電極112,113は、印刷法等により、導電性ペーストをセラミックシート101,102に塗布することで形成される。
【0044】
セラミックシート101,102は、図6に示すように、Z軸方向に交互に積層される。セラミックシート101,102の積層体は、容量形成部18に対応する。セラミックシート103は、セラミックシート101,102の積層体のZ軸方向上下面に積層される。セラミックシート103の積層体は、カバー部19に対応する。
なお、セラミックシート101,102,103の積層枚数等は、適宜調整可能である。
【0045】
続いて、セラミックシート101,102,103の積層体をZ軸方向から圧着し、切断線Lx,Lyに沿って切断する。これにより、図7に示す積層チップ116が作製される。
【0046】
積層チップ116は、未焼成の内部電極112,113が形成された未焼成の容量形成部118と、未焼成のカバー部119と、を有する。積層チップ116には、切断線Lxに対応する切断面である側面116bと、切断線Lyに対応する切断面である端面116aと、が形成される。側面116bからは、未焼成の内部電極112,113の端部が露出している。
【0047】
(ステップS02:未処理サイドマージン部117u形成)
ステップS02では、積層チップ116の側面116bに、未処理サイドマージン部117uを形成する。未処理サイドマージン部117uは、後述する加圧処理前のサイドマージン部である。
【0048】
未処理サイドマージン部117uは、未焼成のセラミックスからなり、具体的にはセラミックシートやセラミックスラリーから形成される。未処理サイドマージン部117uは、例えば、セラミックシートを積層チップ116の側面116bに貼り付けることにより形成することができる。また、未処理サイドマージン部117uは、積層チップ116の側面116bを、例えば塗布やディップなどによってセラミックスラリーでコーティングすることにより形成することもできる。
【0049】
これにより、図8に示すように、積層チップ116の側面116bに未処理サイドマージン部117uが形成された、未処理素体111uが作製される。
【0050】
未処理サイドマージン部117uにおいて、上述の中央部Cと周縁部Eと同様に、Z軸方向及びX軸方向における中央部Cuと、Z軸方向及びX軸方向における周縁部Euと、を規定する。但し、未処理サイドマージン部117uは、全体としてほぼ均一な密度でセラミック粒子間のポアを含む。つまり、未処理サイドマージン部117uでは、周縁部Euのポア率と中央部Cuのポア率はほぼ同じである。本実施形態では、未処理サイドマージン部117uに以下の加圧処理を行い、周縁部Euのポア率を低下させる。
【0051】
(ステップS03:加圧処理)
ステップS03では、未処理サイドマージン部117uの周縁部Euを、Y軸方向から加圧する。
【0052】
図9は、本実施形態の加圧処理を模式的に示す断面図である。同図に示すように、本実施形態では、まず、弾性部材Pが配置される。弾性部材Pには、Y軸方向から見た際に、未処理サイドマージン部117uの中央部Cuの形状に即した略矩形の孔が形成されている。次に、弾性部材P上に、未処理素体111uを、Y軸方向が鉛直方向(加圧方向)に一致する姿勢で配置する。未処理素体111uは、弾性部材P上に周縁部Euが接する位置に配置される。弾性部材Pは、フッ素ゴム、シリコーンゴム等、弾性を鑑みて適宜選択できる。
【0053】
弾性部材P上には、位置決め用の枠体Sが配置されていてもよい。枠体Sは、内壁面のY軸方向からみた平面形状が、未処理サイドマージン部117uのY軸方向から見た平面形状に即した形状となるように設計されている。このような枠体Sの内部に未処理素体111uを配置することで、弾性部材Pに対して未処理素体11uを容易に位置決めでき、周縁部Euを的確に加圧できる。また、枠体Sの平面形状を上記形状に設計することで、未処理サイドマージン部117uが上下に配置された姿勢で未処理素体111uを整列させることが容易になる。
【0054】
次に、弾性部材P上であって枠体Sの内部に配置された未処理素体111uが、Y軸方向下方に向かって加圧される。加圧方法は限定されず、例えば一軸加圧法を用いることができる。これにより、未処理素体111uがY軸方向下方に加圧されるとともに、周縁部Euが弾性部材PからY軸方向上方に向かって抗力を受ける。
【0055】
この加圧処理により、未処理サイドマージン部117uの周縁部Euが圧縮され、周縁部Euの粉体充填率が上昇する。一方、中央部Cuは弾性部材Pからの抗力を受けないため、加圧されても粉体充填率が上昇しない。したがって、周縁部Euの粉体充填率が中央部Cuよりも高くなる。周縁部Euの粉体充填率は、加圧の大きさや弾性部材Pの弾性率等によって調整することができる。
【0056】
この結果、図10に示すように、積層チップ116の側面116bに、周縁部Euの方が中央部Cuよりも粉体充填率が高い未焼成のサイドマージン部117が形成された、未焼成のセラミック素体111が作製される。図10では、図1と同様に、周縁部Euをドットパターンで示している。
【0057】
(ステップS04:焼成)
ステップS04では、ステップS03で得られた未焼成のセラミック素体111を焼成する。ステップS04における焼成温度は、未焼成のセラミック素体の焼結温度に基づいて決定することができる。また、焼成は、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。
【0058】
焼成により、粉体充填率が高い周縁部Euは、ポア率の低い緻密な状態で焼結する。一方で、周縁部Euよりも粉体充填率が低い中央部Cuは、周縁部Euより緻密性の低い状態で焼結する。つまり、本ステップにより、中央部Cよりも低いポア率を有する周縁部Eが形成される。
【0059】
(ステップS05:バレル研磨)
ステップS05では、焼成されたセラミック素体に対してバレル研磨を施し、面取りする。バレル研磨は、例えば、複数のセラミック素体をバレル容器に封入し、当該バレル容器に回転や振動を与えることにより行われる。バレル容器には、複数のセラミック素体とともに、研磨媒体や液体が封入されてもよい。本ステップのバレル研磨により、各面を接続する稜部及び角部が丸みを帯び、図1~4に示すようなセラミック素体11が作製される。
【0060】
(ステップS06:外部電極形成)
ステップS06では、ステップS05で得られたセラミック素体11のX軸方向両端部に外部電極14,15を形成する。一例として、まず、導電性ペーストをセラミック素体11のX軸方向両端部に塗布し、この導電性ペーストを焼き付けて下地膜を形成する。次に、下地膜が形成されたセラミック素体11をメッキ液に浸漬させて電解メッキを行うことで、1又は複数のメッキ膜を形成する。
これにより、図1~4に示すような積層セラミックコンデンサ10が形成される。
【0061】
[実施例及び比較例]
本実施形態の実施例及び比較例として、上記の製造方法に基づいて積層セラミックコンデンサ10のサンプルを作製した。このサンプルでは、X軸方向の寸法を1mmとし、Y軸方向及びZ軸方向の寸法を0.5mmとした。
【0062】
実施例のサンプルでは、ステップS03の加圧処理を行い、サイドマージン部の周縁部のポア率が中央部よりも高くなるように形成した。サイドマージン部の周縁部のポア率は0.8%以下であり、中央部のポア率は3.0%以上であった。
一方、比較例のサンプルでは、ステップS03を行わなかった。
【0063】
各サンプルについて、ステップS05のバレル研磨後におけるIR不良率を評価した。この評価では、6Vの定格電圧を印加した後の抵抗値を測定し、抵抗値が1MΩ以下のものをショートが発生したサンプルと判定した。そして、実施例及び比較例各々のサンプル1000個における、ショート発生と判定されたサンプルの割合を、バレル研磨後のショート発生率として算出した。
【0064】
この結果、サイドマージン部にポア率の分布を形成しなかった比較例のサンプルでは、バレル研磨後のショート発生率が5%であった。これにより、比較例のサンプルでは、バレル研磨によってサイドマージン部の周縁部にクラックや欠損が発生し、絶縁劣化が生じやすくなることが確認された。
【0065】
一方、実施例のサンプルでは、バレル研磨後のショート発生率が0%であった。これにより、実施例のサンプルでは、サイドマージン部の周縁部が緻密に構成され、バレル研磨によってもクラックや欠損が発生しにくいことが確認された。
【0066】
さらに、バレル研磨後にショートが発生していないと判定された実施例及び比較例のサンプルに対し、床上30cmの位置から落下させ、再度ショートの発生率を算出した。具体的には、各サンプルの落下後の抵抗値を測定し、実施例及び比較例各々のサンプル1000個における、抵抗値が1MΩ以下のサンプルの割合を、落下試験後のショート発生率として算出した。
【0067】
この結果、比較例のサンプルでは、落下試験後のショート発生率が3%であった。一方、実施例のサンプルでは、落下試験後のショート発生率が0%であった。
これにより、実施例のサンプルは、周縁部のポア率が低く緻密であるため、落下などの外的な衝撃にも高い耐性を有し、絶縁劣化しにくく信頼性が高い構成であることが確認された。
【0068】
<第2実施形態>
サイドマージン部は、周縁部の中でも、特に角部における強度が重要となる。
そこで、本実施形態では、サイドマージン部の角部のポア率が高い構成について説明する。
【0069】
図11は、本発明の第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサ30を示す斜視図である。
以下の説明において、上述の第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して
、説明を省略する。
【0070】
積層セラミックコンデンサ30は、セラミック素体31と、第1外部電極14と、第2外部電極15と、を備える。図11では、外部電極14,15を破線で示している。セラミック素体31は、第1実施形態と同様の積層体16と、第1実施形態と異なるサイドマージン部37と、を有する。
【0071】
サイドマージン部37は、角部Eaと、中央部Cと、を有する。図11では、角部Eaをドットパターンで示している。
角部Eaは、周縁部Eに含まれ、Z軸方向及びX軸方向における各サイドマージン部37の角(四隅)を構成する。つまり、各サイドマージン部37には、4つの角部Eaが規定される。各角部EaのZ軸方向内方における境界面は、容量形成部18とカバー部19との境界面をY軸方向及びX軸方向に延長した面に一致するものとする。同様に、各角部EaのX軸方向内方における境界面は、容量形成部18とエンドマージン部20との境界面をY軸方向及びZ軸方向に延長した面に一致するものとする。また、各角部EaのY軸方向内方における境界面は、サイドマージン部37と積層体16との境界面に一致するものとする。
中央部Cは、第1実施形態と同様に、Y軸方向から見たときに、Z軸方向及びX軸方向における中心点を中心とする略矩形の平面形状を有する領域として規定される。
【0072】
本実施形態において、角部Eaは、中央部Cよりもポア率が小さく構成される。
具体的には、角部Eaのポア率は、3%以下であると良く、1%以下であるとより良い。これにより、角部Eaの機械的強度及び耐湿性を十分に高めることができる。
角部Eaのポア率が1%以下である場合、中央部Cのポア率は、例えば2%以上とすることができる。
また、角部Eaのポア率は、例えば、中央部Cのポア率よりも1%以上低くすることができる。これにより、角部Eaのポア率を十分低くすることができる。
【0073】
このような構成により、積層セラミックコンデンサ30では、角部Eaのセラミックスの緻密性が高くなり、機械的強度が高くなるとともに、耐湿性も高くなる。したがって、積層セラミックコンデンサ30によって、特に外的な衝撃を受けやすい角部Eaにおける絶縁劣化を抑制でき、信頼性の高い構成を得ることができる。
【0074】
上記構成の積層セラミックコンデンサ30は、上述の積層セラミックコンデンサ10と同様の工程を経て作製される。但し、サイドマージン部37は、ステップS03の加圧処理において、角部EaのみをY軸方向から加圧することで形成される。
【0075】
図12は、本実施形態におけるステップS03の加圧処理を模式的に示す断面図である。同図に示すように、本実施形態では、Y軸方向が鉛直方向となる姿勢で配置された未処理素体111uの未処理サイドマージン部117uの角部Eauの下方にのみ、弾性部材Pが配置される。これにより、Y軸方向下方に向かって未処理素体111uが加圧された場合、未処理サイドマージン部117uの角部Eauが圧縮され、角部Eauの粉体充填率が上昇する。一方、中央部Cuを含む他の領域は弾性部材Pからの抗力を受けないため、加圧されても粉体充填率が上昇しない。したがって、角部Eauの方が中央部Cuよりも粉体充填率が高くなる。
【0076】
この処理により、図13に示すように、積層チップ116の側面116bに、中央部Cuよりも粉体充填率が高い角部Eauを有する未焼成のサイドマージン部137が形成された未焼成のセラミック素体131が作製される。このセラミック素体131を焼成、バレル研磨し、X軸方向両端部に外部電極14,15が形成されることで、積層セラミックコンデンサ30が作製される。すなわち、焼成によって粉体充填率が高い角部Eauが緻密化し、ポア率の低い角部Eaが形成される。図13では、図11と同様に、角部Eauをドットパターンで示している。
【0077】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0078】
以上の各実施形態では、ステップS03において周縁部Eu又は角部Eauを加圧することによりポア率を調整したが、ポア率の調整方法はこれに限定されない。
例えば、サイドマージン部の周縁部又は角部と中央部とで、異なるセラミック材料が用いられてもよい。具体的には、周縁部又は角部は、中央部のセラミック材料よりも、セラミック粒子径が小さいセラミック材料で形成されてもよい。また、周縁部又は角部は、中央部のセラミック材料よりも、ガラス質の含有量が少ないセラミック材料で形成されてもよい。
あるいは、脱バインダ処理が施されたサイドマージン部の周縁部又は角部に、選択的にセラミックスを堆積させ、脱バインダ処理によって生じた空隙を埋めることで、ポア率を小さくしてもよい。セラミックスの堆積方法としては、例えばセラミックスの粉体を吹き付けるスプレードライ法や、スパッタ法、真空蒸着法等が挙げられる。
【0079】
上記のステップS06における処理の一部を、ステップS04の前に行ってもよい。例えば、ステップS04の前に未焼成のセラミック素体111のX軸方向両端面に未焼成の電極材料を塗布し、ステップS06において、未焼成のセラミック素体111を焼成すると同時に、未焼成の電極材料を焼き付けて外部電極14,15の下地層を形成してもよい。また、脱バインダ処理したセラミック素体111に未焼成の電極材料を塗布して、これらを同時に焼成してもよい。これらの場合、ステップS05におけるバレル研磨は、未焼成のセラミック素体111に対して行ってもよい。
【0080】
例えば、上記実施形態では、セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサについて説明したが、本発明は、対を成す内部電極が交互に配置される積層セラミック電子部品全般に適用可能である。このような積層セラミック電子部品としては、例えば、チップバリスタ、チップサーミスタ、積層インダクタ、圧電素子などが挙げられる。
【符号の説明】
【0081】
10,30…積層セラミックコンデンサ(積層セラミック電子部品)
12,13…内部電極
16…積層体
17,37…サイドマージン部
E…周縁部
Ea…角部
C…中央部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13