(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】物量予測に基づく派遣人材調整システム、派遣人材の調整方法および学習モデルの生成方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/105 20230101AFI20240822BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20240822BHJP
【FI】
G06Q10/105
G06Q10/04
(21)【出願番号】P 2023020306
(22)【出願日】2023-02-13
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000108155
【氏名又は名称】センコーグループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181940
【氏名又は名称】緒方 禎浩
(72)【発明者】
【氏名】段坂 直樹
【審査官】松田 岳士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/020982(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/235631(WO,A1)
【文献】特開2017-054317(JP,A)
【文献】特開2022-069970(JP,A)
【文献】特開2021-012565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物量予測に基づく派遣人材調整システムであって、
派遣日における派遣現場の物量予測に必要な情報に基づき物量を予測するサーバと、
前記物量に応じた人材派遣依頼情報を送る発注者端末と、
前記人材派遣依頼情報を受け取る受注者端末と、
がネットワークを介して、前記派遣日までに前記派遣現場の前記サーバによって予測された物量に応じた派遣人材を確保するために必要な情報通信が行われ、
前記サーバの物量予測が、過去の派遣日における前記派遣現場の一般公開情報(パブリック情報)と前記過去の派遣日における前記派遣現場の物量の実績情報とを一対の学習データとして学習、生成され、前記派遣現場のパブリック情報と物量の実績情報の関係性が記憶された学習済みモデルによって、前記発注者端末からの派遣日における前記派遣現場のパブリック情報に基づき行われるものであ
り、
前記一対の学習データは、関連広告費または/および関連割引率が所定値以上となった前記過去の派遣日のパブリック情報と物量の実績情報が除外されたものである物量予測に基づく派遣人材調整システム。
【請求項2】
派遣人材の調整方法であって、
前記発注者端末から、前記派遣日における前記派遣現場の物量予測に必要なパブリック情報を前記サーバに送る第1のステップと、
前記第1のステップに基づき前記サーバで予測された物量情報を、前記発注者端末で受け取る第2のステップと、
前記第2のステップで受け取った物量情報に応じた人材派遣依頼情報を前記受注者端末に送る第3のステップと、を含む、請求項1に記載の派遣人材調整システムを用いた派遣人材の調整方法。
【請求項3】
前記第1~3のステップを、派遣依頼の決定前に所定の回数行い、派遣依頼決定前情報として前記受注者端末に送る請求項2に記載の派遣人材の調整方法。
【請求項4】
前記パブリック情報に基づく物量予測が、その後のパブリック情報の変動によって変わる場合に
、前記第3のステップを追加的に行う請求項2または3に記載の派遣人材の調整方法。
【請求項5】
派遣日における派遣現場のパブリック情報に基づき、前記派遣日における前記派遣現場の物量を予測する学習済みモデルの生成方法であって、
過去の派遣日における前記派遣現場のパブリック情報と物量の実績情報とを取得する第1のステップと、
関連広告費または/および関連割引率が所定値以上となった前記過去の派遣日のパブリック情報と物量の実績情報を第1のステップで取得した情報から除外する第2のステップと、
前記第2のステップで取得したパブリック情報とこれに関連する物量の実績情報とを一対の学習データとする第3のステップと、
前記第3のステップの学習データを用いて、前記過去の派遣日における前記派遣現場のパブリック情報に基づき、派遣日における前記派遣現場の物量を予測する学習モデルを訓練し、学習済みモデルとして生成する第4のステップと、
を含む学習済みモデルの生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人材派遣会社に対して、派遣日に現場で必要とされる派遣人材を現場当日の物量予測に基づいて伝え、人材派遣会社が、派遣当日までに要求数に応じた人材を確保できるようにするための派遣人材決定システム、派遣人材の調整方法および学習モデルの生成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のIT技術の進歩に伴い、人材派遣市場では、IT技術により企業の人材ニーズと人材派遣会社の人材供給のマッチングを高度化する技術が増えてきた。
【0003】
例えば、人材派遣ニーズのある企業と、人材派遣会社との人材マッチングを行う技術としては、複数の人材派遣会社に備え付けられた派遣会社端末と、複数の企業に備え付けられた企業端末と、前記派遣会社端末および前記企業端末とネットワークを介して接続されたシステムサーバと、前記システムサーバに接続されたデータベースとを備えた人材派遣業務を管理する人材派遣システムであって、前記システムサーバは、前記データベースに記憶された複数の人材派遣会社を第1の優先順位に基づいた複数のグループに分類し、前記グループ内では、第2の優先順位に基づき優先順位の高い人材派遣会社が上位に配置されるように一覧表示した一覧表を含む入力画面を生成する生成手段を備え、前記企業端末は、前記入力画面から人材派遣会社を選択する選択手段と、求人条件を入力する入力手段とを備え、前記システムサーバは、選択された人材派遣会社に前記求人条件を送信する送信手段を備えたことを特徴とする人材派遣システムが挙げられる(特許文献1)。
【0004】
また、求人シフトに応じて労働者の提供を行えるようにする技術として、プロセッサ又はプログラムで制御可能な回路により実行可能な命令が記憶される非一時的プログラム記憶媒体であって、複数のシフト要員の一員になるように、共通雇用主団体の複数の被雇用者の中から被雇用者を指定するシフト要員指定コマンドを受信することと、対話式求人顧客カレンダーとのユーザー対話により生成された空きシフトデータであって、前記共通雇用主団体の複数の求人顧客のうちの1つの空き仕事シフトを表す空きシフトデータを受信することと、前記空きシフトデータと前記複数のシフト要員との間の1つ以上の一致を確立することと、前記空き仕事シフトの視覚的表現を含むように、一致が確立された前記複数のシフト要員の各々の対話式シフト要員カレンダーを更新することと、一致が確立された前記複数のシフト要員のうちの第1のシフト要員の前記シフト要員カレンダーとのユーザー対話により生成されたシフト選択データであって、前記第1のシフト要員による前記空き仕事シフトの選択を含むシフト選択データを受信することと、前記第1のシフト要員による前記選択の視覚的表現を含むように、前記求人顧客カレンダーを更新することと、を含む動作を実行する、非一時的プログラム記憶媒体が挙げられる(特許文献2)。
【0005】
これらの技術は、様々な人材派遣会社の中から適した人材のいる会社の選択や、求人シフトに応じた労働者の提供においては有用である。しかしながら、これらの技術は、当日必要となる人材数が不明な現場において、人材派遣会社を選択する、人材派遣会社に労働者の提供の用意を行わせる、といったものではない。
【0006】
また、経験豊富な発注者は、過去の経験等に基づき、一定程度の精度で物量を予測し、これに伴う必要な人材数を割り出して人材派遣会社に人材を発注することができるが、経験が不足する者は、このような予測ができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-54317号公報
【文献】特表2019-527439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする課題は、簡易かつ精度よく、現場における物量の予測に基づき、派遣当日までに要求に応じた人材を調整できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、物量予測に基づく派遣人材調整システムであって、派遣日における派遣現場の物量予測に必要な情報に基づき物量を予測するサーバと、前記物量に応じた人材派遣依頼情報を送る発注者端末と、前記人材派遣依頼情報を受け取る受注者端末と、がネットワークを介して、前記派遣日までに前記派遣現場の前記サーバによって予測された物量に応じた派遣人材を確保するために必要な情報通信が行われ、前記サーバの物量予測が、過去の派遣日における前記派遣現場の一般公開情報(パブリック情報)と前記過去の派遣日における前記派遣現場の物量の実績情報とを一対の学習データとして学習、生成され、前記派遣現場のパブリック情報と物量の実績情報の関係性が記憶された学習済みモデルによって、前記発注者端末からの派遣日における前記派遣現場のパブリック情報に基づき行われるものである物量予測に基づく派遣人材調整システムである。また、第2の発明は、派遣人材の調整方法であって、前記発注者端末から、前記派遣日における前記派遣現場の物量予測に必要なパブリック情報を前記サーバに送る第1のステップと、前記第1のステップに基づき前記サーバで予測された物量情報を、前記発注者端末で受け取る第2のステップと、前記第2のステップで受け取った物量情報に応じた人材派遣依頼情報を前記受注者端末に送る第3のステップと、を含む、第1の発明の派遣人材調整システムを用いた派遣人材の調整方法である。また、第3の発明は、前記第1~3のステップを、派遣依頼の決定前に所定の回数行い、派遣依頼決定前情報として前記受注者端末に送る第2の発明の派遣人材の調整方法である。また、第4の発明は、前記パブリック情報に基づく物量予測が、その後のパブリック情報の変動によって変わる場合に、必要に応じて前記第3のステップを追加的に行う第2または3の発明の派遣人材の調整方法である。また、第5の発明は、派遣日における派遣現場のパブリック情報に基づき、前記派遣日における前記派遣現場の物量を予測する学習済みモデルの生成方法であって、過去の派遣日における前記派遣現場のパブリック情報と物量の実績情報とを取得する第1のステップと、関連広告費または/および関連割引率が所定値以上となった前記過去の派遣日のパブリック情報と物量の実績情報を第1のステップで取得した情報から除外する第2のステップと、前記第2のステップで取得したパブリック情報とこれに関連する物量の実績情報とを一対の学習データとする第3のステップと、前記第3のステップの学習データを用いて、前記過去の派遣日における前記派遣現場のパブリック情報に基づき、派遣日における前記派遣現場の物量を予測する学習モデルを訓練し、学習済みモデルとして生成する第4のステップと、を含む学習済みモデルの生成方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、派遣人材数の根拠となる物量予測が、過去の実績物量と関係するパブリック情報に基づき学習済みモデルによって行われるため、簡易かつ精度よく、現場における要求人材数を予測し、派遣当日までに要求に応じた人材を調整することができる。また、本発明は、ネットワークを介して、端末間で、派遣日までに派遣現場の前記予測物量に応じた派遣人材を確保するために必要な情報通信が行われ、派遣当日までに要求に応じた人材数を調整できる。また、本発明は、物量予測に影響を与える情報がパブリック情報であるため、物量予測に影響を与える情報が変化した場合や変化する可能性がある場合に、いち早くその変化に伴って用意すべき派遣人材の調整を行うことができる。また、本発明は、学習データから、関連広告費、関連割引が所定値以上となる派遣日のパブリック情報と物量の実績情報が除外されることで、物量の予測精度の高い学習済みモデルを生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】物量予測に基づく人材派遣システムの構成の概念図である。
【
図2】パブリック情報と物量の実績情報との間の関係性イメージである。
【
図3】発注者、サーバ、受注者のアクションイメージである。
【
図5】発注者から受注者に送信される人材派遣依頼情報の例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<用語>
本発明において、現場または派遣現場とは、物資等の運搬や仕分け、販売等(以下、運搬等と言う。)が行われる店舗、工場、事務所、その他所定の作業に要する人材が必要になる人材派遣先のことである。
【0013】
物量とは、運搬等、所定作業の対象となる販売品、原材料、荷物、その他搬送品等(以下、販売品等と言う。)が運搬等される量や数のことである。物量の単位は、重量、個数(単品としての個数や梱包されたものの個数等)等が挙げられるが、限定されるものではない。物量の実績情報は、現場において運搬等された販売品等の過去データに基づくものである。また、関連広告費、関連割引率は、販売品等に関連する広告費、割引率のことである。
【0014】
人材派遣依頼情報とは、現場で必要とされる能力の特性、当日必要とされる人材数、当日予測される物量、物量の予測に用いられた情報等である。これらが、必要に応じて、人材派遣依頼情報として選択され、端末間で送受信される。
【0015】
発注者端末、受注者端末とは、端末所有者が誰であるかに関係なく、派遣人材の発注者によって利用される端末、人材派遣会社によって利用される端末のことである。端末として、具体的には、モニターやスピーカ等の画像、音声出力に係る装置、キーボード、マウス等の映像画面等操作や情報入力に係る装置、制御、演算、記憶に係る装置を備えるものが挙げられるが、これに限定されるものではなく、派遣人材の発注、受注、その他必要な情報の通信が可能なものであればよい。
【0016】
ネットワークとは、各端末、サーバ、その他必要な装置が、必要な情報通信可能なつながりである。インターネットを介したものでもよいし、ローカルなネットワークを介したものでもよい。
【0017】
パブリック情報とは、アクセス制限がなく、一般人が入手可能な情報であり、販売品の購入に訪れる人の数等の物量に影響を与える情報である。派遣日における派遣現場のパブリック情報とは、派遣日において派遣現場における気象予測情報(晴れ、曇り、雨等の天候、気温、湿度、気圧等)、派遣日の日付、曜日、祝祭日であるか否か、等である。これらの情報から所望の情報がパブリック情報として選択され、利用される。
【0018】
学習とは、いわゆる畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が用いられた機械学習である。機械学習のアルゴリズムは、特に限定されない。また、本発明に係る学習済みモデルとは、派遣現場におけるパブリック情報と物量の実績情報の関係性の学習(教師あり学習)がなされたものである。パブクリック情報は、現場の特性に応じて選択され、学習に用いられる。例えば、天候、曜日が物量に影響する現場では、パブリック情報として、天候、曜日が利用されるし、さらに気温も物量に影響する現場では、パブリック情報として気温も利用される。
【0019】
<実施例1>
本発明の実施形態を以下に示す。
【0020】
図1は、本発明に係る物量予測に基づく人材派遣システム1の構成の概念図である。本発明に係る物量予測に基づく人材派遣システム1は、派遣日における派遣現場の物量予測に必要な情報に基づき物量を予測するサーバ2と、前記予測物量に応じた派遣人材情報を送る発注者端末3と、前記派遣人材情報を受け取る受注者端末4と、がネットワークでつながったものである。
【0021】
サーバ2は、CPU(制御装置、演算装置)、記憶装置(主記憶装置、補助記憶装置)を備える(図省略)。サーバ2は、補助記憶装置に記憶された物量予測のための学習済みモデルやその他の処理を実行するためのプログラムを主記憶装置に読み出し、CPUで各種処理を実行する。
【0022】
ただし、このような構成が一台のサーバコンピュータで実現される必要はなく、複数のコンピュータに設けられているものでも良い。また、サーバ2は、一箇所に集中的に配置されている必要もない。また、サーバ2内の情報やプログラムの確認、実行、変更、修正、保存等の処理は、
図1の発注者端末3やこれ以外の端末から直接またはネットワークを通じて行われるものでよい。
【0023】
物量予測のための学習済みモデルには、派遣現場におけるパブリック情報と物量の実績情報を一対の学習データとして学習、生成された、前記派遣現場におけるパブリック情報と物量情報の関係性が記憶される。
図2は、CNNによって表された天候、曜日等のパブリック情報と物量の実績情報との間の関係性イメージである。
【0024】
図3は、本発明に係る物量予測に基づく人材派遣システム1における発注者、サーバ2、受注者のアクションを示すものである。次に、これらのアクションの流れについて述べる。
【0025】
発注者は、派遣人材が必要となる派遣現場における当日の物量予測に必要な情報を収集する(A100)。必要な情報が気象情報である場合、発注者は、派遣現場の地域の当日の気象庁からの公開情報(パブリック情報)を入手する。発注者は、学習済みモデルに物量予測させるために、サーバ2に情報送信する(A110)。サーバ2は、発注者が送信した情報を取得し(A120)、これを入力として、学習済みモデルに予測物量を出力させる(A130)。発注者は、サーバ2から予測物量を取得し(A140)、当該物量に応じて、当日、派遣現場で必要となる人材数等の人材派遣依頼情報を受注者に送信する(A150)。受注者は、人材派遣依頼情報に基づき派遣人材の確保等を行う(A160)。時間経過とともに派遣人材数、すなわち、予測物量に影響を与える変化が生じた場合、例えば、当初の気象予測情報に変化があった場合、必要に応じて、情報のやり取り、物量予測の修正等が行われる。これらの情報のやり取り等を経て、受注者は、派遣人材を確定し、派遣現場に人材を派遣する(A170)。
【0026】
学習済みモデルは、入力と出力に係る過去の実績情報の組合せが複数用いられることで生成される。
図4は、入力と出力に係る情報の例である。
図4に示された入出力情報は、実際には、変数化され、学習に供される。サーバ2は、当該入出力情報を発注者端末3等の外部端末から取得し、主記憶装置内の学習済みモデル生成機能によって学習済みモデルを生成し、補助記憶装置内の学習済みモデルとして反映する。また、派遣現場当日の実際の物量結果も学習に利用されることで、学習済みモデルの利用とともに、当該学習済みモデルが強化、更新される。本実施例では、H
2O Driverless AI(IBM製)が用いられたが、これに限定されるものではない。
【0027】
発注者から受注者への人材派遣依頼情報は、依頼確定前であれば派遣依頼決定前情報(予測情報)として、依頼が確定したものであれば確定情報として送信される。
図5は、ネットワークを介して発注者から受注者に送信される人材派遣依頼情報の例である。この場合、物量予測に必要な情報は人材派遣日の4週間前には入手されている。発注者は、人材派遣日の4週間前に予測情報を受注者に送信する。受注者は、予測情報に基づき、人材派遣日の4週間前から人材の調整が可能になる。
【0028】
通常、物量予測は、人材派遣日が近くなるほど情報の精度が上がり、これに伴い、予測情報の精度も上がる。このようなことから、人材派遣日の3週間前、2週間前、1週間前に発注者は、受注者に予測情報を送信する。これにより、受注者は、人材派遣日の4週間前に予想された大まかな人材数等をベースに、人材派遣日までに微調整を行う。最後(前日)に、発注者は、受注者に人材派遣依頼情報(確定情報)を送信する。これを受けて、受注者は、派遣する人材数等の最終調整を行う。
【0029】
従来、物量予測とこれに伴う派遣人材の発注誤差は、熟練の発注者であっても平均7%であった。これに対し、本実施例では、約4%の誤差まで精度が上がった。また、最大で、人材派遣日の45日前から物量予測し、受注者に情報提供ができるようになった。また、本発明による効果として、通常の運用においては、未経験者であっても、熟練者と同レベルの品質で発注等作業が可能になることが確認された。
【0030】
<実施例2>
実施例1に基づく考察および実施例1を通じて得られた知見から導かれる他の技術構成を実施例2として、以下に述べる。
【0031】
本発明は、学習済みモデルを備えたサーバ2と、発注者端末3と、受注者端末4がネットワークでつながり、必要な情報通信が可能となっている。実施例1では、発注者やその関連者が発注者端末3等からサーバ2に物量予測のための情報を送信していた。
【0032】
ここで、物量予測のための情報は、誰もが入手可能なパブリック情報であるため、どのような者が入手した情報であっても、所望とする日、派遣現場に係る情報であれば物量予測結果は変わらない。そのため、本発明は、派遣現場のパブリック情報を自動入手し、物量予測に供する機能を有するものでもよいし、そのような物量予測のための情報供与を外部組織に行わせるものであってもよい。
【0033】
実施例1では、サーバ2へのアクセス権限は、発注者だけにあり、受注者には与えられていなかった。サーバ2へのアクセス権限の有無は、任意に設定される。そのため、アクセス権限が与えられることで、受注者は、発注者からの情報を待たずとも、自らサーバ2にアクセスし、物量予測結果を取得することができるようになる。これにより、物量予測に影響を与える情報が変化した場合、受注者は、いち早くその変化に伴って用意すべき派遣人材の調整を行うことが可能になる。
【0034】
このような運用のためには、発注者と受注者において、派遣人材数を決定するための情報が共有されている必要がある。受注者が、発注者からの予測情報の妥当性を判断できるようにするためである。そのため、発注者から受注者に送られる派遣依頼情報には、派遣現場、派遣日、所望人数の他に、物量予測に用いられた予測情報等が含まれることが望ましい。
【0035】
ただし、物量予測のためのパブリック情報の当否のみに焦点が当てられるのであれば、当該パブリック情報が変化した場合に派遣人材数がどう変化するか、受注者が把握できるものでもよい。また、サーバ2は、学習済みモデルによる物量予測結果だけでなく、当該結果に応じて必要となる派遣人材数を結果として出力するものでもよい。
【0036】
また、本発明は、パブリック情報を入力、物量を出力とする関係性が記憶された学習モデルを用いるものである。ここで、パブリック情報に加えて一定の者しか入手し得ない情報(非パブリック情報)との組み合わせにより物量予測の精度が上がるのであれば、パブリック情報および非パブリック情報と、物量の関係性についての学習済みモデルが生成され、利用されるものでもよい。非パブリック情報としては、例えば、店舗の販売量に影響を与える広告費や割引率等、社内政策に関わる情報等が挙げられる。
【0037】
例えば、ある日曜日の広告費や割引率が平均実績から大きく外れる場合(例えば、広告費や割引率が特売日以外の平均実績よりも15%以上の場合等)、パブリック情報に基づく物量の予測値から大きく外れることが多い。例えば、販売品の特売日における物量が挙げられる。特売日が販売品の物量に与える影響は、天候等が物量に与える影響を上回ることが多い。理由は様々であるが、例えば、特売日には普段扱われない戦略商材が多く用意され、その分、普段の商材が減少することが挙げられる。そのため、特売日の情報は学習済みモデルを生成するための学習データとしては不向きである(特売日は、学習済みモデルによる予測の対象外となる運用でよい)。
【0038】
すなわち、
図2に示されるパブリック情報と物量情報の関係性を学習モデルに学習させるための学習データとして、予定する派遣日における広告費や割引率が所定値以上の日(特売日)の情報が除外されることで有用な学習データが得られる。除外データであるか否かの指標としては、予定する派遣日における広告費または割引率のいずれかでもよいし、両方であってもよい。また、広告費や割引率以外の指標として、所定のクーポンの発行の有無や所定の戦略商材の有無等が挙げられる。また、除外データとするか否かの閾値としては、経験的には、10%~15%の範囲内の値が挙げられる。
【0039】
また、本発明は、機械学習による学習済みモデルによって物量予測するものである。ここで、派遣現場によっては、機械学習によるまでもなく、物量予測情報と物量の相関図表等によっても十分である場合がある。例えば、天候に影響しない通信販売品の倉庫作業等は、カレンダーの日付と曜日に基づく過去の平均値だけで、一定レベルの物量予測ができる可能性がある。実際に、そのような派遣現場において、機械学習に変えて行われた試みでは、従来方法と同等レベルの精度が得られた例もある(詳細は省略)。
【0040】
実施例1では、発注者は、派遣日4週間前から1週間ごとに、受注者に派遣依頼情報を送った。これにより、受注者は、派遣日4週間前から派遣人材の調整が可能になった。ここで、発注者から受注者に派遣依頼情報が送られるタイミングは、定期的である必要はない。例えば、気象予測の変化が発生した場合に、必要に応じて、追加的に派遣依頼情報が送られるものでもよい。
【0041】
物量予測に用いられた情報が大きく変動する場合、これを受けて必要となる派遣人材数も大きく変わるため、出来るだけ早く情報共有されるべきだからである。発注者から受注者に派遣依頼情報が送られるタイミングは、最初の派遣依頼情報が送られてから派遣日前日の確定情報が送られるまでの任意のタイミングのものでもよいし、定期的な情報送信と組み合わされてもよい。
【0042】
本発明では、あらかじめ所定の派遣現場の学習済みモデルが生成され、物量予測に利用されている。この物量予測に基づくことで、受注者は、前もって派遣人材のシフト調整等の準備を行うことができる。ここで、物量予測の精度は、派遣現場によって異なってくる場合がある。例えば、一般消費者を対象にした派遣現場では、屋外現場の方が屋内現場よりも気象の影響を受けやすい。このような派遣現場の違いを踏まえて、派遣人材が調整される運用が求められる。
【0043】
例えば、物量予測に基づく派遣人材数の変動率の大きさによって派遣現場が類型化される等して、派遣依頼情報に反映される運用が考えられる。すなわち、派遣人材数の変動が大きい派遣現場の場合、受注者は、これを踏まえて、確保すべき派遣人材を多めに見積もっておく等、派遣人材数の変動に耐え得る調整が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、派遣人材数の調整が求められる現場への適用が可能である。例えば、物流や小売の現場だけでなく、飲食物等のサービス提供現場や映画等の娯楽現場への適用が挙げられる。
【符号の説明】
【0045】
1 物量予測に基づく人材派遣システム
2 サーバ
3 発注者端末
4 受注者端末
【要約】
【課題】 簡易かつ精度よく、物量予測に基づき、派遣人材の調整を行うこと。
【解決手段】 派遣日、派遣現場の物量予測に必要な情報に基づき物量を予測するサーバ2と、前記物量に応じた人材派遣依頼情報を送る発注者端末3と、前記人材派遣依頼情報を受け取る受注者端末4と、がネットワークを介して、前記派遣日までに前記派遣現場の前記予測物量に応じた派遣人材を確保するために必要な情報通信が行われ、サーバ2の物量予測が、過去の派遣日の前記派遣現場における一般公開情報(パブリック情報)と物量の実績情報を一対の学習データとして学習、生成され、前記派遣現場におけるパブリック情報と物量情報の関係性が記憶された学習済みモデルによって、前記発注者端末3からの前記派遣日における前記派遣現場におけるパブリック情報に基づき行われるものようにすること。
【選択図】
図3