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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】犠牲基板およびコアレス基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20240822BHJP
   B32B 38/10 20060101ALI20240822BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H05K3/28 Z
H05K3/28 C
B32B38/10
H05K3/46 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018211494
(22)【出願日】2018-11-09
(65)【公開番号】P2020077811
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-10-04
【審判番号】
【審判請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】大村 友希
【合議体】
【審判長】高野 洋
【審判官】上田 翔太
【審判官】千葉 輝久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/073121(WO,A1)
【文献】特開2013-110320(JP,A)
【文献】特開2014-210904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H05 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアレス基板を形成するために用いられる犠牲基板であって、
該犠牲基板は、該犠牲基板の少なくとも一方の面に、熱処理を伴う工程により形成された2層以上のビルドアップ層を有するコアレス基板を形成するための犠牲基板であって、
該犠牲基板は、熱硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸してなるプリプレグの硬化物で構成されており、
下記の測定方法1により、熱機械分析装置を用いて、温度50℃から100℃の昇温過程で測定される、当該犠牲基板の線膨張係数α1が10ppm/℃以下であって、
下記の測定方法で測定される、当該犠牲基板の収縮量差Y-X%が-0.0230%以上、0%以下である、犠牲基板であり、
前記熱硬化性樹脂組成物は、無機充填材を含み、
前記熱硬化性樹脂組成物中の前記無機充填材の含有量は、前記熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、60質量%以上98質量%以下である、犠牲基板。
(測定方法1)
前記プリプレグの硬化物を、熱機械分析装置を用いて、温度範囲30~260℃、昇温速度10℃/min、荷重10g、圧縮モードの条件で熱機械分析を2サイクル測定する。50℃から100℃の範囲における平面方向(XY方向)の線膨張係数の平均値を線膨張係数α1とする。なお、線膨張係数は2サイクル目の値を採用する。
(測定方法
・1回目の加熱プレスによる収縮量X%:当該犠牲基板を、ホットプレスを用いて、温度200℃、圧力8kgf/mmの条件で2時間加熱加圧する。一回目の加熱プレス前の室温における当該犠牲基板を基準とし、一回目の加熱プレス後、室温に冷却された当該犠牲基板の収縮量をX%とする。
・2回目の加熱プレスによる収縮量Y%:1回目の加熱プレス後、一度冷却され室温になった犠牲基板を、ホットプレスを用いて、温度200℃、圧力8kgf/mmの条件で2時間加熱加圧する。一回目の加熱プレス前の室温における当該犠牲基板を基準とし、2回目の加熱プレス後、室温に冷却された当該犠牲基板の収縮量をY%とする。
・上記した方法により算出される一回目の加熱プレスにおける収縮量X%及び、二回目の加熱プレスにおける収縮量Y%の差であるY-X%を、収縮量差Y-X%とする。
【請求項2】
請求項1に記載の犠牲基板であって、
前記熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含み、
前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂からなる群より選択される1種以上である、犠牲基板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の犠牲基板であって、
前記コアレス基板の厚みが、50μm以上500μm以下である、犠牲基板。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項に記載の犠牲基板の少なくとも一方の面上に第1の熱硬化性樹脂層を形成する第1の積層工程と、
次いで、前記第1の熱硬化性樹脂層を硬化して第1のビルドアップ層を形成する第1の硬化工程と、
次いで、前記第1のビルドアップ層の上に、第2の熱硬化性樹脂層を形成する第2の積層工程と、
次いで、前記第2の熱硬化性樹脂層を硬化して第2のビルドアップ層を形成する第2の硬化工程と、
次いで、第1のビルドアップ層及び第2のビルドアップ層から、前記犠牲基板を剥離する剥離工程と、を含む、コアレス基板の製造方法。
【請求項5】
請求項に記載のコアレス基板の製造方法であって、
前記第1の積層工程において、前記犠牲基板と、前記第1の熱硬化性樹脂層と、金属層とをこの順で積層した、3層積層構造を形成し、
前記剥離工程の前に、前記金属層をエッチングするエッチング工程を含む、コアレス基板の製造方法。
【請求項6】
請求項又はに記載のコアレス基板の製造方法であって、
前記犠牲基板が、前記犠牲基板上に金属箔を接着した金属箔付犠牲基板であって、
前記剥離工程の後、前記犠牲基板上の前記金属箔をフラッシュエッチングするフラッシュエッチング工程を含む、コアレス基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアレス基板の製造に用いる犠牲基板、及び、該犠牲基板を用いたコアレス基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板(パッケージ基板)の工法において、プリント基板の高密度化、薄化の要求はますます高まっている。従来のプリント基板の工法では、プリント基板を作成する際にコアを用いてきた。しかしながら、コアを用いたプリント配線基板の高密度化、薄化は、コアを薄化するだけでは限界があることから、プリント基板の高密度化、薄化の要求に応えるために、コアレス工法を用いた、コアレス基板の検討が行われている。
【0003】
一般に、コアレス工法は、例えば、犠牲基板の上に熱硬化性樹脂層を形成し、次いで、熱硬化性樹脂層を加熱加圧、冷却することで硬化させてビルドアップ層を作成し、次いで、ビルドアップ層から犠牲基板を剥離し、コアレス基板を得るものである。
また、2層以上の複数層のビルドアップ層を有するコアレス基板を製造する場合は、まず、犠牲コアの上に第1の熱硬化性樹脂を積層し、加熱加圧・冷却することで硬化させて第1のビルドアップ層を作成し、さらに、第1のビルドアップ層の上に第2熱硬化性樹脂層を積層し、加熱加圧・冷却することで硬化させて第2のビルドアップ層を形成する。次いで、ビルドアップ層から犠牲基板を剥離し、2層のビルドアップ層を有するコアレス基板を得ることができる。
特許文献1には、樹脂基板、樹脂シート及び銅箔を積層して構成されたコアレス基板製造用のスタート材料が開示されている。特許文献1では、コアレス基板製造時の補強のため、耐熱性樹脂板や繊維強化樹脂板等の補強板の両面に樹脂シートを真空ラミネートによって形成し、更にその上に互いに剥離可能な銅箔2枚を配置したスタート材料が使用されている。
また、特許文献2には、コアレス基板を製造の際に用いる合成樹脂製の板状キャリアに係る発明が開示されており、回路の位置ずれを抑制するために、板状キャリアが金属箔の熱膨張率の+10%、-30%以内であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-332115号公報
【文献】特開2014-159175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、複数の異なる材料をスタート材料として複数の原材料を使用するため、原材料コストや工費がかさみ、生産効率の低下が避けられないという問題がある。また、既存技術では、得られるコアレス基板において、反りが生じ、歩留り低下の一因となる問題があった。
また、コアレス工法では、例えば、第1のビルドアップ層の上に、第2のビルドアップ層を有するコアレス基板や、第2のビルドアップ層に加えて、さらに第3のビルドアップ層を有する、2層以上のビルドアップ層を有するコアレス基板も製造されるが、このように、2層以上の複数層のビルドアップ層を有するコアレス基板においては特に、反りの問題が顕著であった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、コアレス工法において、2層以上の複数層のビルドアップ層から犠牲基板を剥離した後、犠牲基板剥離後のビルドアップ層に生じる反りを抑制することができる犠牲基板、及び、犠牲基板剥離後のビルドアップ層に生じる反りを抑制することができる、該犠牲基板を用いたコアレス基板の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記したように、2層以上の複数層のビルドアップ層を有するコアレス基板を製造する場合、犠牲基板上に熱硬化性樹脂を積層し、加熱加圧・冷却する工程を複数回行うため、犠牲基板、及び、下層のビルドアップ層は、複数回の熱履歴を経ることとなる。また、犠牲基板・第一のビルドアップ層・第二のビルドアップ層・第nのビルドアップ層は、それぞれ加熱加圧・冷却過程において、熱硬化性樹脂の硬化、冷却等により収縮するため、犠牲基板と第一のビルドアップ層の間、第一のビルドアップ層と第二のビルドアップ層の間、第n-1のビルドアップ層と第nのビルドアップ層の間にはそれぞれ内部応力が蓄積されることとなり、特に2層以上の複数層のビルドアップ層を有するコアレス基板の製造においては、各層を構成する材料の収縮・変形を考慮した犠牲基板及びビルドアップ層の材料設計は非常に困難であった。
【0008】
本発明者が複数層のビルドアップ層を有するコアレス基板において、反りが発生する原因について検討した結果、複数層のビルドアップ層を有するコアレス基板の反りは、犠牲基板を剥離した際に生じる場合があり、特定の要件を満たす犠牲基板を用いることによって、得られるコアレス基板の反りの制御がより容易となることが明らかになった。
すなわち、上記したように、複数層のビルドアップ層を有するコアレス基板の製造工程において、該コアレス基板の製造に用いる犠牲基板は、形成するビルドアップ層の数と同じ回数の加熱加圧・冷却過程を経ることとなるが、この際、毎回の加熱加圧・冷却過程において、犠牲基板の収縮量が変動してしまうと、犠牲基板の収縮を考慮したビルドアップ層の設計が困難となる。
【0009】
本発明者は、コアレス基板の製造における、反りに影響を及ぼす数々の因子の中から、犠牲基板の温度50℃から100℃の昇温過程で測定される線膨張係数α及び特定の測定条件における犠牲基板の収縮量差を特定の数値範囲内とし、該犠牲基板を用いてコアレス基板を製造することで、多層のビルドアップ層を有するコアレス基板の反りを制御することができることを新たに知見し、本発明を成し得たものである。
すなわち本発明は、
コアレス基板を形成するために用いられる犠牲基板であって、
該犠牲基板は、該犠牲基板の少なくとも一方の面に、熱処理を伴う工程により形成された2層以上のビルドアップ層を有するコアレス基板を形成するための犠牲基板であって、
該犠牲基板は、熱硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸してなるプリプレグの硬化物で構成されており、
熱機械分析装置を用いて、温度50℃から100℃の昇温過程で測定される、当該犠牲基板の線膨張係数αが10ppm/℃以下であって、
下記の測定方法で測定される、当該犠牲基板の収縮量差Y-X%が-0.0230%以上、0%以下である、犠牲基板である。
(測定方法)
・1回目の加熱プレスの収縮量X%:当該犠牲基板を、ホットプレスを用いて、温度200℃、圧力8kgf/mmの条件で2時間加熱加圧する。一回目の加熱プレス前の室温における当該犠牲基板を基準とし、一回目の加熱プレス後、室温に冷却された当該犠牲基板の収縮量をX%とする。
・2回目の加熱プレスの収縮量Y%:1回目の加熱プレス後、一度冷却され室温になった犠牲基板を、ホットプレスを用いて、温度200℃、圧力8kgf/mmの条件で2時間加熱加圧する。一回目の加熱プレス前の室温における当該犠牲基板を基準とし、2回目の加熱プレス後、室温に冷却された当該犠牲基板の収縮量をY%とする。
・上記した方法により算出される一回目の加熱プレスにおける収縮量X%及び、二回目の加熱プレスにおける収縮量Y%の差であるY-X%を、収縮量差Y-X%とする。
【0010】
また、本発明は、前記犠牲基板の少なくとも一方の面上に第1の熱硬化性樹脂層を形成する第1の積層工程と、
次いで、前記第1の熱硬化性樹脂層を硬化して第1のビルドアップ層を形成する第1の硬化工程と、
次いで、前記第1のビルドアップ層の上に、第2の熱硬化性樹脂層を形成する第2の積層工程と、
次いで、前記第2の熱硬化性樹脂層を硬化して第2のビルドアップ層を形成する第2の硬化工程と、
次いで、第1のビルドアップ層及び第2のビルドアップ層から、前記犠牲基板を剥離する剥離工程と、を含む、コアレス基板の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本実施形態に係る犠牲基板によれば、複数層のビルドアップ層から犠牲基板を剥離する際に、犠牲基板を剥離した後のコアレス基板の反りを低減することができ、不良品発生が少なくなり、歩留りを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係るコアレス基板の製造工程の一例を示す。
図2】収縮量測定用穴あき犠牲基板の一例を示す。
図3】本実施形態に係るコアレス基板を用いた半導体装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について説明する。なお、文中の数字の間にある「~」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。
本明細書における「電子装置」の語は、半導体チップ、半導体素子、プリント配線基板、電気回路ディスプレイ装置、情報通信端末、発光ダイオード、物理電池、化学電池など、電子工学の技術が適用された素子、デバイス、最終製品等を包含する意味で用いられる。
尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
【0014】
本実施形態に係る犠牲基板は、該犠牲基板の少なくとも一方の面に、熱処理を伴う工程により形成された2層以上のビルドアップ層を有するコアレス基板を形成するための犠牲基板である。
コアレス基板製造のためのコアレス工法では、犠牲基板の上に熱硬化性樹脂層を形成し、次いで、熱硬化性樹脂層を加熱加圧・冷却することで硬化させてビルドアップ層を作成し、次いで、ビルドアップ層から犠牲基板を剥離することにより、コアレス基板を得ることができる。
2層以上の複数層のビルドアップ層を有するコアレス基板の一般的な工法は、まず、犠牲コアの上に第1の熱硬化性樹脂を積層し、加熱加圧・冷却することで硬化させて第1のビルドアップ層を作成し、さらに、第1のビルドアップ層の上に第2の熱硬化性樹脂層を積層し、加熱加圧・冷却することで硬化させて第2のビルドアップ層を形成する。また、熱硬化性樹脂層の積層、加熱加圧・冷却を繰り返すことにより、第nのビルドアップ層を形成することもできる。次いで、ビルドアップ層から犠牲基板を剥離し、2層以上の複数層のビルドアップ層を有するコアレス基板を得ることができる。
本実施形態に係る犠牲基板は、犠牲基板の上に熱硬化性樹脂層を形成し、次いで、形成された熱硬化性樹脂層を加熱加圧・冷却することで硬化させて、少なくとも2層以上のビルドアップ層を作成し、次いで、ビルドアップ層から犠牲基板を剥離するコアレス工法によって、2層以上の複数のビルドアップ層を有するコアレス基板を形成するための犠牲基板である。
【0015】
本実施形態に係る犠牲基板は、熱機械分析装置を用いて、温度50℃から100℃の昇温過程で測定される、当該犠牲基板の線膨張係数αが10ppm/℃以下であり、7ppm/℃以下であることがより好ましく、5ppm/℃以下であることが特に好ましい。
線膨張係数αを特定の値以下とすることで、犠牲基板と第一のビルドアップ層との界面に生じる内部応力を低減させることができ、得られるコアレス基板の反りを抑制することができる。上記平均線膨張係数の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.1ppm/℃以上としてもよく、1ppm/℃以上としてもよい。
【0016】
本実施形態に係る犠牲基板の、50℃から250℃の範囲において算出した平均線膨張係数の上限値は、例えば、20ppm/℃以下であり、好ましくは10ppm/℃以下であり、より好ましくは8ppm/℃以下である。これにより、製造プロセス中における犠牲基板及びコアレス基板の反りを低減することができる。一方、上記平均線膨張係数の下限値は、特に限定されないが、例えば、1ppm/℃以上としてもよく、3ppm/℃以上としてもよい。
【0017】
上記線膨張係数は、例えば、熱機械分析装置TMAを用いて測定することができる。具体的には、上記線膨張係数は、例えば、熱機械分析装置TMA(TAインスツルメント社製、Q400)を用いて、温度範囲30~260℃、昇温速度10℃/min、荷重10g、引張りモードの条件で熱機械分析(TMA)を2サイクル測定する。50から100℃又は50℃から250℃の範囲における平面方向(XY方向)の線膨張係数の平均値を算出する。なお、線膨脹係数は、2サイクル目の値を採用する。
【0018】
さらに、本実施形態に係る犠牲基板は、下記の測定方法で測定される、当該犠牲基板の収縮量差Y-Xが-0.0230%以上0%以下である。該収縮量差Y-Xは、-0.0200%以上、0%以下であることがより好ましく、-0.0150%以上、0%以下であることが特に好ましい。
(測定方法)
・1回目の加熱プレスの収縮量X%:当該犠牲基板を、ホットプレスを用いて、温度200℃、圧力8kgf/mmの条件で2時間加熱加圧する。一回目の加熱プレス前の室温における当該犠牲基板を基準とし、一回目の加熱プレス後、室温に冷却された当該犠牲基板の収縮量をX%とする。
・2回目の加熱プレスの収縮量Y%:1回目の加熱プレス後、一度冷却され室温になった犠牲基板を、ホットプレスを用いて、温度200℃、圧力8kgf/mmの条件で2時間加熱加圧する。一回目の加熱プレス前の室温における当該犠牲基板を基準とし、2回目の加熱プレス後、室温に冷却された当該犠牲基板の収縮量をY%とする。
・上記した方法により算出される一回目の加熱プレスにおける収縮量X%及び、二回目の加熱プレスにおける収縮量Y%の差であるY-X%を、収縮量差Y-X%とする。
【0019】
本発明は、コアレス基板の製造の際に生じる反りに関与する数々の因子のうち、犠牲基板の2回目の加熱プレスの収縮量と、1回目の加熱プレスの収縮量の差である、収縮量差Y-X%を特定の値としたところに特徴がある。犠牲基板の2回目の加熱プレスの収縮量と、1回目の加熱プレスの収縮量の差である収縮量差Y-X%を上記した値の範囲内とすると、1回目の加熱プレスと、2回目の加熱プレスの収縮量の差が一定の値以下となるため、例えば、第一のビルドアップ層に係る熱硬化性樹脂層と、第二のビルドアップ層に係る熱硬化性樹脂層の設計において、犠牲基板の収縮を考慮した材料設計、及び、全体として反りの少ないコアレス基板の設計が容易となり、得られるコアレス基板の反りを低減することができる。
【0020】
本実施形態に係る犠牲基板は、熱硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸してなるプリプレグの硬化物で構成される。
ここで、上記線膨張係数α及び上記収縮量差を、それぞれ、上述した特定の数値範囲とするためには、プリプレグに含浸させる熱硬化性樹脂組成物の配合の種類、配合量、及び、特性を適切に選択することが重要である。プリプレグに含浸させる熱硬化性樹脂組成物は、プリプレグの硬化物が、上記した線膨張係数α及び収縮量差を、それぞれ、上記した特定の数値範囲とすることができれば、特に限定されないが、熱硬化性樹脂、硬化剤、無機充填剤を含むことができる。
以下、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物を構成する各成分について詳述する。
【0021】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸してなるプリプレグの硬化物である犠牲基板が、上記した線膨張係数α及び収縮量を、それぞれ、上記した特定の数値範囲とすることができれば、特に限定されない。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。また、熱硬化性樹脂は、少なくともエポキシ樹脂またはマレイミド化合物を含有してもよく、少なくともエポキシ樹脂を含有してもよい。
また、熱硬化性樹脂は、25℃室温において、液状であることが好ましい。これにより、熱硬化性樹脂組成物における各成分の分散性を向上させることができる。また、無機充填材の充填量を高めることが可能になる。
【0022】
本実施形態の熱硬化性樹脂の、25℃における粘度の下限値は、例えば、0.1Pa・s以上であり、より好ましくは0.5Pa・s以上であり、さらに好ましくは1Pa・s以上である。これにより、熱硬化性樹脂組成物の成膜性を向上させることができる。一方、25℃における粘度の上限値は、例えば、200Pa・s以下であり、好ましくは100Pa・s以下であり、より好ましくは50Pa・s以下である。これにより、熱硬化性樹脂組成物の分散性を向上させることができる。
【0023】
本実施形態のエポキシ樹脂のエポキシ当量の下限値は、例えば、300g/eq以上であり、好ましくは330g/eq以上であり、より好ましくは350g/eq以上である。これにより、架橋点分子量を適切に制御できるので、最適な架橋密度の熱硬化性樹脂組成物の硬化物を実現することができる。また、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の破断伸び率を向上させることができる。一方、上記エポキシ当量の上限値は、特に限定されないが、例えば、700g/eq以下としてもよく、600g/eq以下としてもよく、500g/eq以下としてもよい。これにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の強度を向上させることができる。
【0024】
また、本実施形態のエポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)の下限は、特に限定されないが、Mw300以上としてもよく、好ましくはMw800以上としてもよい。Mwが上記下限値以上であると、樹脂膜の硬化物にタックが生じるのを抑制することができる。Mwの上限は、特に限定されないが、Mw20,000以下としてもよく、好ましくはMw15,000以下としてもよい。Mwが上記上限値以下であると、ハンドリング性が向上し、樹脂膜を形成するのが容易となる。エポキシ樹脂のMwは、例えばGPCで測定することができる。
【0025】
本実施形態のエポキシ樹脂は、25℃室温において液状であり、そのエポキシ当量が上記範囲内である第1エポキシ樹脂を少なくとも一種以上含むことが好ましい。
第1エポキシ樹脂の種類としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能ナフタレン型エポキシ樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂等のナフタレン型エポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;フェノキシ型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂;アダマンタン型エポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂;ポリエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。第1エポキシ樹脂としては、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。第1エポキシ樹脂の中でも、粘度の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、2官能ナフタレン型エポキシ樹脂、およびポリエーテル型エポキシ樹脂からなる群から選択される一種以上を用いることができる。
【0026】
また、本実施形態のエポキシ樹脂としては、上記第1エポキシ樹脂の他に、他の第2エポキシ樹脂を併用してもよい。この第2エポキシ樹脂としては、第1エポキシ樹脂として挙げられたエポキシ樹脂の種類から選択することができる。
【0027】
エポキシ樹脂の中でも、得られる犠牲基板の耐熱性の観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂からなる群から選択される一種または二種以上が好ましく、アラルキル型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂およびナフタレン型エポキシ樹脂からなる群から選択される一種または二種以上がより好ましい。
【0028】
エポキシ樹脂の含有量の下限値は、熱硬化性樹脂組成物全体(溶媒を除く全固形分)100質量%に対して、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、8質量%以上がさらに好ましい。エポキシ樹脂の含有量が上記下限値以上であると、ハンドリング性が向上し、樹脂膜を形成するのが容易となる。一方、エポキシ樹脂の含有量の上限値は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、特に限定されないが、例えば、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましい。エポキシ樹脂の含有量が上記上限値以下であると、得られる犠牲基板の強度や耐熱性が向上したり、犠牲基板の線膨張係数が低下し、反りの低減効果が向上したりする場合がある。
なお、熱硬化性樹脂組成物の全固形分とは、熱硬化性樹脂組成物中に含まれる溶剤を除く成分全体を指す。以下、本明細書において同様である。
【0029】
(マレイミド化合物)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、マレイミド化合物を含むことができる。
本実施形態において、マレイミド化合物のマレイミド基は、5員環の平面構造を有し、マレイミド基の二重結合が分子間で相互作用しやすく極性が高いため、マレイミド基、ベンゼン環、その他の平面構造を有する化合物等と強い分子間相互作用を示し、分子運動を抑制することができる。そのため、熱硬化性樹脂組成物は、マレイミド化合物を含むことにより、得られる犠牲基板の線膨張係数を下げ、ガラス転移温度を向上させることができ、さらに、耐熱性を向上させることができる。
【0030】
上記マレイミド化合物としては、分子内に少なくとも2つのマレイミド基を有するマレイミド化合物が好ましい。
イミド拡張型ビスマレイミドとしては、例えば、以下の式(a1)により示されるマレイミド化合物、以下の式(a2)により示されるマレイミド化合物、以下の式(a3)により示されるマレイミド化合物等が挙げられる。式(a1)により示されるマレイミド化合物の具体例のとしてはBMI-1500(デジグナーモレキュールズ社製、分子量1500)等が挙げられる。式(a2)により示されるマレイミド化合物の具体例のとしてはBMI-1700(デジグナーモレキュールズ社製、分子量1700)、BMI-1400(デジグナーモレキュールズ社製、分子量1400)等が挙げられる。式(a3)により示されるマレイミド化合物の具体例のとしてはBMI-3000(デジグナーモレキュールズ社製、分子量3000)等が挙げられる。
【0031】
【化1】
上記式(a1)において、nは1以上10以下の整数を示す。
【0032】
【化2】
上記式(a2)において、nは1以上10以下の整数を示す。
【0033】
【化3】
上記式(a3)において、nは1以上10以下の整数を示す。
【0034】
上記マレイミド化合物の重量平均分子量(Mw)の下限は、特に限定されないが、Mw400以上が好ましく、特にMw800以上が好ましい。Mwが上記下限値以上であると、絶縁層にタックが生じるのを抑制することができる。Mwの上限は、特に限定されないが、Mw4000以下が好ましく、Mw2500以下がより好ましい。Mwが上記上限値以下であると、犠牲基板作製時、ハンドリング性が向上し、犠牲基板を形成するのが容易となる。マレイミド化合物のMwは、例えばGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、標準物質:ポリスチレン換算)で測定することができる。
また、両末端にマレイミドを有する上記イミド拡張型ビスマレイミドのMwは、架橋点間分子量と見なすことができる。
【0035】
熱硬化性樹脂組成物中に含まれるマレイミド化合物の含有量は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物の全固形分(すなわち、溶媒を除く成分)を100質量%としたとき、1.0質量%以上25.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以上20.0質量%以下がより好ましい。マレイミド化合物の含有量が上記範囲内であると、得られる犠牲基板の低熱収縮性および耐薬品性のバランスをより一層向上させることができる。
【0036】
(硬化剤)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、硬化剤を含むことができる。
上記硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6-トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP-30)などの3級アミン化合物;2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(EMI24)、2-フェニル-4-メチルイミダゾール(2P4MZ)、2-フェニルイミダゾール(2PZ)、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシイミダゾール(2P4MHZ)、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール(1B2PZ)などのイミダゾール化合物;BF3錯体などのルイス酸などの触媒型の硬化剤が挙げられる。
また、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、o-キシレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、1,5-ジアミノナフタレン、4,4'-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルジフェニルメタン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジエチル-5,5'-ジメチルジフェニルメタン、3,3'-ジエチル-4,4'-ジアミノジフェニルメタンなどの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドララジドなどを含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類などの重付加型の硬化剤;2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4'-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)トリオンなどのフェノール系化合物も用いることができる。
さらに、第2硬化剤としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂などのフェノール樹脂系硬化剤;メチロール基含有尿素樹脂のような尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂のようなメラミン樹脂などの縮合型の硬化剤も用いてもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
上記フェノール樹脂系硬化剤は、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂などの多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂などの変性フェノール樹脂;フェニレン骨格および/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂などのアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール化合物等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。これらのうち、硬化性の点から水酸基当量は90g/eq以上、250g/eq以下のものを使用してもよい。
フェノール樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量4×10以上1.8×10以下としてもよく、好ましくは5×10以上1.5×10以下としてもよい。重量平均分子量を上記下限値以上とすることでプリプレグにタック性が生じるなどの問題がおこりにくくなり、上記上限値以下とすることで、プリプレグ作製時、繊維基材への含浸性が向上し、より均一な犠牲基板を得ることができる。
【0038】
硬化剤の含有量の下限値は、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、特に限定されないが、例えば、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上がさらに好ましい。硬化剤の含有量を上記下限値以上とすることにより、硬化を促進する効果を十分に発揮することができる。一方、硬化剤の含有量の上限値は、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、特に限定されないが、例えば、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、8質量%以下がさらに好ましい。硬化剤の含有量が上記上限値以下であるとプリプレグの保存性をより向上できる。
【0039】
(無機充填材)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、無機充填材を含むことができる。
無機充填材としては、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩;酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、シリカ、溶融シリカ等の酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素等の窒化物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩等を挙げることができる。
これらの中でも、タルク、アルミナ、ガラス、シリカ、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましく、シリカが特に好ましい。無機充填材としては、これらの中の1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0040】
上記無機充填材の平均粒子径の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.01μm以上としてもよく、0.05μm以上としてもよい。
これにより、上記熱硬化性樹脂のワニスの粘度が高くなるのを抑制でき、絶縁層作製時の作業性を向上させることができる。また、無機充填材の平均粒子径の上限値は、特に限定されないが、例えば、5.0μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましく、1.5μm以下がさらに好ましい。これにより、上記熱硬化性樹脂のワニス中における無機充填材の沈降等の現象を抑制でき、より均一な樹脂膜を得ることができる。
本実施形態において、無機充填材の平均粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA社製、LA-500)により、粒子の粒度分布を体積基準で測定し、そのメディアン径(D50)を平均粒子径とすることができる。
【0041】
また、本実施形態において、無機充填材の含有量が60質量%以上である場合には、当該無機充填材の平均粒子径の下限値は、例えば、0.5μm以上であり、好ましくは0.6μm以上であり、さらに好ましくは0.8μm以上である。一方、当該無機充填材の平均粒子径の上限値は、たとえば、2μm以下であり、好ましくは1.9μm以下であり、より好ましくは1.8μm以下である。無機充填材の含有量を上記範囲内とすることにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の反りを低減しつつ強度を一層高めることができる。
【0042】
また、無機充填材は、特に限定されないが、平均粒子径が単分散の無機充填材を用いてもよいし、平均粒子径が多分散の無機充填材を用いてもよい。さらに平均粒子径が単分散および/または多分散の無機充填材を1種類または2種類以上で併用してもよい。
【0043】
上記無機充填材はシリカ粒子を含むことが好ましい。上記シリカ粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、5.0μm以下としてもよく、0.01μm以上4.0μm以下としてもよく、0.02μm以上2.0μm以下としてもよい。これにより、無機充填材の充填性をさらに向上させることができる。
【0044】
無機充填材の含有量の下限値は、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、特に限定されないが、例えば、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。これにより、樹脂膜の硬化物を特に低熱膨張、低吸水とすることができる。これにより、犠牲基板及び得られるコアレス基板の反りを抑制することができる。また、本実施形態のプリプレグの硬化物は、高い伸び率を維持したまま、無機充填材の含有量を高めることができるので、応力緩和性を向上させることができる。一方で、無機充填材の含有量の上限値は、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、特に限定されないが、例えば、98質量%以下としてもよく、95質量%以下としてもよく、90質量%以下としてもよい。プリプレグの硬化物の加工性を向上させることができる。
【0045】
(シアネート樹脂)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、シアネート樹脂をさらに含むことができる。
シアネート樹脂は、分子内にシアネート基(-O-CN)を有する樹脂であり、シアネート基を分子内に2個以上を有する樹脂を用いることができる。このようなシアネート樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン化シアン化合物とフェノール類やナフトール類とを反応させ、必要に応じて加熱等の方法でプレポリマー化することにより得ることができる。また、このようにして調製された市販品を用いることもできる。
シアネート樹脂を用いることにより、プリプレグの硬化物の線膨張係数を小さくすることができる。さらに、プリプレグの硬化物の機械強度等を高めることができる。
【0046】
シアネート樹脂は、例えば、ノボラック型シアネート樹脂;ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂;ナフトールアラルキル型フェノール樹脂と、ハロゲン化シアンとの反応で得られるナフトールアラルキル型シアネート樹脂;ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂;ビフェニルアルキル型シアネート樹脂等を挙げることができる。これらの中でもノボラック型シアネート樹脂、ナフトールアラルキル型シアネート樹脂が好ましく、ノボラック型シアネート樹脂がより好ましい。ノボラック型シアネート樹脂を用いることにより、プリプレグの硬化物の架橋密度が増加し、耐熱性が向上する。
【0047】
この理由としては、ノボラック型シアネート樹脂は、硬化反応後にトリアジン環を形成することが挙げられる。さらに、ノボラック型シアネート樹脂は、その構造上ベンゼン環の割合が高く、炭化しやすいためと考えられる。また、ノボラック型シアネート樹脂を含む樹脂膜の硬化物は優れた剛性を有する。よって、プリプレグの硬化物の耐熱性をより一層向上できる。
【0048】
ノボラック型シアネート樹脂としては、例えば、下記一般式(I)で示されるものを使用することができる。
【0049】
【化4】
【0050】
一般式(I)で示されるノボラック型シアネート樹脂の平均繰り返し単位nは任意の整数である。平均繰り返し単位nは、特に限定されないが、1以上が好ましく、2以上がより好ましい。平均繰り返し単位nが上記下限値以上であると、ノボラック型シアネート樹脂の耐熱性が向上し、加熱時に低量体が脱離、揮発することを抑制できる。また、平均繰り返し単位nは、特に限定されないが、10以下が好ましく、7以下がより好ましい。nが上記上限値以下であると、溶融粘度が高くなるのを抑制でき、プリプレグの成形性を向上させることができる。
【0051】
また、シアネート樹脂としては、下記一般式(II)で表わされるナフトールアラルキル型シアネート樹脂も好適に用いられる。下記一般式(II)で表わされるナフトールアラルキル型シアネート樹脂は、例えば、α-ナフトールあるいはβ-ナフトール等のナフトール類とp-キシリレングリコール、α,α'-ジメトキシ-p-キシレン、1,4-ジ(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ベンゼン等との反応により得られるナフトールアラルキル型フェノール樹脂とハロゲン化シアンとを縮合させて得られるものである。一般式(II)の繰り返し単位nは10以下の整数であることが好ましい。繰り返し単位nが10以下であると、より均一なプリプレグを得ることができる。また、合成時に分子内重合が起こりにくく、水洗時の分液性が向上し、収量の低下を防止できる傾向がある。
【0052】
【化5】
(式中、Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、nは1以上10以下の整数を示す。)
【0053】
また、シアネート樹脂は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよく、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーとを併用してもよい。
【0054】
シアネート樹脂の含有量の下限値は、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、たとえば、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましい。プリプレグの硬化物の低線膨張化、高弾性率化を図ることができる。一方、シアネート樹脂の含有量の上限値は、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、特に限定されないが、例えば、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。耐熱性や耐湿性を向上させることができる。また、シアネート樹脂の含有量が上記範囲内であると、プリプレグの硬化物の貯蔵弾性率E'をより一層向上させることができる。
【0055】
(硬化促進剤)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、例えば、硬化促進剤を含んでもよい。これにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化性を向上させることができる。硬化促進剤としては、熱硬化性樹脂の硬化反応を促進させるものを用いることができ、その種類は特に限定されない。本実施形態においては、硬化促進剤として、例えば、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等の3級アミン類、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-エチルイミダゾール、2-フェニル-4-エチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシイミダゾール等のイミダゾール類、フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノール等のフェノール化合物、酢酸、安息香酸、サリチル酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸、およびオニウム塩化合物から選択される一種または二種以上を含むことができる。これらの中でも、硬化性をより効果的に向上させる観点からは、オニウム塩化合物を含むことがより好ましい。
【0056】
硬化促進剤として用いられるオニウム塩化合物は、特に限定されないが、例えば、下記一般式(2)で表される化合物を用いることができる。
【0057】
【化6】
(式(2)中、Pはリン原子、R、R、RおよびRは、それぞれ、置換もしくは無置換の芳香環または複素環を有する有機基、あるいは置換もしくは無置換の脂肪族基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。A-は分子外に放出しうるプロトンを少なくとも1個以上分子内に有するn(n≧1)価のプロトン供与体のアニオン、またはその錯アニオンを示す)
【0058】
硬化促進剤の含有量の下限値は、例えば、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、たとえば、0.01質量%以上としてもよく、好ましくは0.05質量%以上としてもよい。硬化促進剤の含有量を上記下限値以上とすることにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化性をより効果的に向上させることができる。一方、硬化促進剤の含有量の上限値は、例えば、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、2.5質量%以下としてもよく、好ましくは1質量%以下としてもよい。硬化促進剤の含有量を上記上限値以下とすることにより、熱硬化性樹脂組成物の保存性を向上させることができる。
【0059】
(カップリング剤)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、カップリング剤を含んでもよい。カップリング剤は熱硬化性樹脂組成物の調製時に直接添加してもよいし、無機充填材にあらかじめ添加しておいてもよい。カップリング剤の使用により無機充填材と各樹脂との界面の濡れ性を向上させることができる。したがって、カップリング剤を使用することは好ましく、プリプレグの硬化物の耐熱性を改良することができる。また、後述のように、本実施形態の犠牲基板上には、金属箔を接着するが、カップリング剤を用いることにより、金属箔との密着性を向上させることができる。さらに、吸湿耐性を向上できるので、湿度環境下後においても、銅箔との密着性を維持することができる。
【0060】
カップリング剤としては、例えば、エポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤等のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤等が挙げられる。カップリング剤は一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。本実施形態において、カップリング剤はシランカップリング剤を含有してもよい。
これにより、無機充填材と各樹脂との界面の濡れ性を高くすることができ、プリプレグの硬化物の耐熱性をより向上させることができる。
【0061】
シランカップリング剤としては、各種のものを用いることができるが、例えば、エポキシシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン、ビニルシラン等が挙げられる。
【0062】
具体的な化合物としては、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニルγ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニルγ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-6-(アミノヘキシル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(3-(トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ベンゼンジメタナン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらのうちの一種または二種以上を組み合せて用いることができる。これらのうちエポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシランが好ましく、アミノシランとしては、1級アミノシラン又はアニリノシランがより好ましい。
【0063】
カップリング剤の添加量は、無機充填材の比表面積に対して適切に調整することができる。このようなカップリング剤の添加量の下限値は、例えば、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、0.05質量%以上としてもよく、好ましくは0.1質量%以上としてもよい。カップリング剤の含有量が上記下限値以上であると、無機充填材を十分に被覆することができ、樹脂膜の硬化物の耐熱性を向上させることができる。一方、カップリング剤の添加量の上限値は、例えば、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、3質量%以下としてもよく、好ましくは1.5質量%以下としてもよい。カップリング剤の含有量が上記上限値以下であると、反応に影響を与えるのを抑制でき、プリプレグの硬化物の曲げ強度等の低下を抑制することができる。
【0064】
(添加剤)
なお、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、緑、赤、青、黄、および黒等の染料、黒色顔料等の顔料、色素からなる群から選択される一種以上を含む着色剤、低応力剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、イオン捕捉剤、ゴム粒子等の上記の成分以外の添加剤を含んでもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
顔料としては、カオリン、合成酸化鉄赤、カドミウム黄、ニッケルチタン黄、ストロンチウム黄、含水酸化クロム、酸化クロム、アルミ酸コバルト、合成ウルトラマリン青等の無機顔料、フタロシアニン等の多環顔料、アゾ顔料等が挙げられる。
【0066】
染料としては、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、キサンテン、ジケトピロロピロール、ペリレン、ペリノン、アントラキノン、インジゴイド、オキサジン、キナクリドン、ベンツイミダゾロン、ビオランスロン、フタロシアニン、アゾメチン等が挙げられる。
【0067】
ゴム粒子としては、例えば、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子、シリコーン粒子などが挙げられる。
【0068】
(プリプレグの製造方法)
本実施形態における犠牲基板を構成するプリプレグは、繊維基材を内部に含む、熱硬化性樹脂組成物を当該繊維基材に含浸してなるプリプレグである。本実施形態に係るプリプレグは、例えば、繊維基材に一または二以上の熱硬化性樹脂および充填材を含む樹脂組成物を含浸させ、その後、半硬化させて得られる。
本実施形態において、樹脂組成物を繊維基材に含浸させる方法としては、とくに限定されないが、例えば、樹脂組成物を溶剤に溶かして樹脂ワニスを調製し、樹脂ワニスを繊維基材に塗布する方法、などが挙げられる。
【0069】
本実施形態において、ワニス状の熱硬化性樹脂組成物は、溶剤を含むことができる。
上記溶剤としては、たとえばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケト ン、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール、およびN-メチルピロリドン等の有機溶剤が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
熱硬化性樹脂組成物がワニス状である場合において、熱硬化性樹脂組成物の固形分含有量は、たとえば30質量%以上80質量%以下としてもよく、より好ましくは40質量%以上70質量%以下としてもよい。これにより、作業性や成膜性に非常に優れた熱硬化性樹脂組成物が得られる。
【0071】
ワニス状の熱硬化性樹脂組成物は、上述の各成分を、たとえば、超音波分散方式、高圧衝突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、および自転公転式分散方式などの各種混合機を用いて溶剤中に溶解、混合、撹拌することにより調製することができる。本実施形態において、熱硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸させる方法としては、特に限定されないが、例えば、熱硬化性樹脂組成物を溶剤に溶かして樹脂ワニスを調製し、繊維基材を上記樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターにより上記樹脂ワニスを繊維基材に塗布する方法、スプレーにより上記樹脂ワニスを繊維基材に吹き付ける方法、熱硬化性樹脂組成物からなる上記樹脂膜で繊維基材の両面をラミネートする方法等が挙げられる。
【0072】
また、上記熱硬化性樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度は、好ましくは150℃以上350℃以下であり、より好ましくは200℃以上290℃以下である。
熱硬化性樹脂組成物の硬化物のガラス転移点Tgが大きくなるほど、線膨張係数αは大きくなる傾向にあり、一方、上記収縮量は小さくなる傾向にある。したがって、上記線膨張係数α及び上記収縮量を所望の数値範囲とするためには、熱硬化性樹脂組成物の硬化物のガラス転移点Tgを特定の数値範囲内とすることが好ましい。
【0073】
上記ガラス転移温度は、動的粘弾性分析装置(DMA)を用いて測定することができる。また、上記ガラス転移温度は、昇温速度5℃/min、周波数1Hzの条件での動的粘弾性測定により得られる曲線において、損失正接tanδが最大値を示す温度である。
【0074】
本実施形態において、熱硬化性樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度は、200℃、2時間で熱処理して得られる樹脂膜の硬化物に対して、たとえば動的粘弾性測定装置を用いて周波数1Hz、昇温速度5℃/分の条件で動的粘弾性試験を行うことにより得られる測定結果から算出することができる。動的粘弾性測定装置としては、とくに限定されないが、たとえばDMA装置(TAインスツルメント社製、Q800)を用いることができる。
【0075】
(繊維基材)
上記繊維基材としては、例えば、ガラス繊布、ガラス不繊布等のガラス繊維基材、あるいはガラス以外の無機化合物を成分とする繊布又は不繊布等の無機繊維基材、芳香族ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等の有機繊維で構成される有機繊維基材等が挙げられる。これら基材の中でも強度の点でガラス織布に代表されるガラス繊維基材を用いると、プリント配線基板の機械的強度、耐熱性を良好なものとすることができる。
繊維基材の厚みは、とくに限定されないが、好ましくは10μm以上、200μm以下であり、より好ましくは15μm以上、180μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上、150m以下である。このような厚みを有する繊維基材を用いることにより、プリプレグ製造時のハンドリング性が向上し、得られる犠牲基板の熱膨張、熱収縮を制御することが容易となる。
繊維基材の厚みが上記上限値以下であると、繊維基材中の熱硬化性樹脂組成物の含浸性が向上し、ボイドの発生を抑制することができる。また、繊維基材の厚みが上記下限値以上であると、繊維基材やプリプレグの強度を向上させることができる。その結果、ハンドリング性が向上できたり、プリプレグの作製が容易となったり、得られる犠牲基板の反りを抑制できたりする。
【0076】
上記ガラス繊維基材として、例えば、Eガラス、Sガラス、Dガラス、Tガラス、NEガラス、UTガラス、Lガラス、HPガラスおよび石英ガラスから選ばれる一種または二種以上のガラスにより形成されたガラス繊維基材が好適に用いられる。
【0077】
(プリプレグを用いた、犠牲基板の製造方法)
上記の方法で得られたプリプレグを硬化し、本実施形態に係る犠牲基板を得る。1枚以上のプリプレグを積層し、硬化することで本実施形態に係る犠牲基板を得ることもできる。プリプレグの積層枚数は、例えば1枚から4枚である。
プリプレグの硬化物で構成される犠牲基板の厚みは、好ましくは20μm以上300μm以下であり、より好ましくは25μm以上250μm以下であり、さらに好ましくは30μm以上200m以下である。このような厚みを有する犠牲基板とすることで、コアレス工法の過程における反り量、及び、ビルドアップ層との内部応力を制御することができ、犠牲基板剥離時のコアレス基板の反り量をより低減することができる。
【0078】
本実施形態に係る犠牲基板は、片側又は両側の表面に金属箔を接着することもできる。プリプレグの硬化と、金属箔の接着は、同じタイミングで行うことも、異なるタイミングで行うこともできるが、プリプレグの硬化と、金属箔の接着を同時に行うことが好ましい。
【0079】
(犠牲基板に接着する金属箔)
金属箔を構成する金属としては、例えば、銅、銅系合金、アルミ、アルミ系合金、銀、銀系合金、金、金系合金、亜鉛、亜鉛系合金、ニッケル、ニッケル系合金、錫、錫系合金、鉄、鉄系合金、コバール(商標名)、42アロイ、インバー、スーパーインバー等のFe-Ni系の合金、W、Mo等が挙げられる。これらの中でも、金属箔を構成する金属としては、導電性に優れ、エッチングによる回路形成が容易であり、また安価であることから銅または銅合金が好ましい。すなわち、金属箔としては、銅箔が好ましい。
犠牲基板上に接着する金属箔は、剥離可能なピーラブル金属箔であることが好ましい。犠牲基板上に2層以上の所望のビルドアップ層を積層した場合において、ピーラブル金属箔は、犠牲基板と、第一のビルドアップ層とで、挟まれた状態となる。この状態で、ピーラブル銅箔を剥離することにより、犠牲基板とビルドアップ層とをデタッチすることが好ましい。剥離後は、ピーラブル金属箔の一方がビルドアップ層側に、ピーラブル金属箔の他方が犠牲基板側に残ることになる。ピーラブル金属箔としては、例えば、三井金属鉱業株式会社製、型番MT18Ex-S等を用いることができる。また、ピーラブル金属箔は、その剥離前の全厚みが、15μm~30μmの厚さの箔を使用することが好ましく、18μm~25μmの厚さの箔を使用することがより好ましい。また、ピーラブル金属箔は、その剥離後の薄膜の厚みが1μm~6μmの厚さの箔を使用することが好ましく、2μm~5μmの厚さの箔を使用することがより好ましく、ピーラブル金属箔は、その剥離後の厚膜の厚みが14μm~24μmの厚さの箔を使用することが好ましく、16μm~20μmの厚さの箔を使用することがより好ましい。ピーラブル金属箔は、薄膜側がビルドアップ層側に、厚膜側が犠牲基板側に残るよう接着することが好ましい。
また、金属箔は犠牲基板の片面又は両面に接着することができ、両面に接着することがより好ましい。
【0080】
金属箔付犠牲基板の製造方法は以下の通りである。
プリプレグまたはプリプレグを2枚以上重ね合わせた積層体の外側の上下両面または片面に金属箔を重ね、ラミネーター装置やベクレル装置を用いて高真空条件下でこれらを接合する、あるいはそのままプリプレグの外側の上下両面または片面に金属箔を重ねる。また、プリプレグを2枚以上積層するときは、積層したプリプレグの最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔を重ねる。次いで、プリプレグと金属箔とを重ねた積層体を加熱加圧成形することで金属箔付犠牲基板を得ることができる。ここで、加熱加圧成形時に、冷却終了時まで加圧を継続することが好ましい。
上記の加熱加圧成形するときの加熱温度は、100℃以上250℃以下が好ましく、150℃以上240℃以下がより好ましい。
また、上記の加熱加圧成形するときの圧力は、0.5MPa以上5MPa以下が好ましく、1.5MPa以上5.0MPa以下の高圧がより好ましい。
【0081】
(コアレス基板の製造方法)
続いて、本実施形態に係る犠牲基板を用いた、コアレス基板の製造方法について説明する。
一般に、コアレス工法は、例えば、犠牲基板の上に熱硬化性樹脂層を形成し、次いで、熱硬化性樹脂層を加熱加圧、冷却することで硬化させてビルドアップ層を作成し、次いで、ビルドアップ層から犠牲基板を剥離し、コアレス基板を得るものである。
本実施形態に係る製造方法は、犠牲基板の少なくとも一方の面上に第1の熱硬化性樹脂層を形成する第1の積層工程と、
次いで、前記熱硬化性樹脂層を硬化して第1のビルドアップ層を形成する第1の硬化工程と、
次いで、前記第1のビルドアップ層の上に、第2の熱硬化性樹脂層を形成する第2の積層工程と、
次いで、前記第2の熱硬化性樹脂層を硬化して第2のビルドアップ層を形成する第2の硬化工程と、
次いで、第1のビルドアップ層及び第2のビルドアップ層から、前記犠牲基板を剥離する剥離工程と、を含む。
本発明は、2層以上の複数層のビルドアップ層を有するコアレス基板の製造方法であって、3層、4層、4層以上の複数層のビルドアップ層を有するコアレス基板を含む。
すなわち、本実施形態に係る犠牲基板は、積層されるビルドアップ層の総数が多く、製造に多くの熱履歴を要し、犠牲基板と第一のビルドアップ層の間、及び、各ビルドアップ層の層間に内部応力が蓄積し、犠牲基板及び、各ビルドアップ層の設計が困難となる場合、特に効果が大きい。
また、本発明に係るコアレス基板は、その厚みが、50μm以上500μm以下であることが好ましく、150μm以上450m以下であることがより好ましく、200μm以上400m以下であることが特に好ましい。
【0082】
本実施形態に係るコアレス基板の製造方法において、前記第1の積層工程において、前記犠牲基板と、前記第1の熱硬化性樹脂層と、金属層とをこの順で積層した、3層積層構造を形成し、
前記剥離工程の前に、前記金属層をエッチングするエッチング工程を含むことが好ましい。
【0083】
以下、本願発明の犠牲基板を支持体として作製するコアレス基板の具体的な製造工程を説明する。図1は、本実施形態に係るコアレス基板の製造工程の一例である。本実施形態に係るコアレス基板の製造方法は、例えば
(A)金属箔付犠牲基板に回路を形成する工程
(B-1)第1の熱硬化性樹脂層を積層し、加熱加圧プレスし、回路を形成する工程
(B-2)第2の熱硬化性樹脂層を積層し、加熱加圧プレスし、回路を形成する工程
(B-N)第Nの熱硬化性樹脂層を積層し、加熱加圧プレスし、回路を形成する工程
(C)犠牲基板からの剥離
(D)フラッシュエッチング
を順次行うことで得られる。
【0084】
(A)金属箔付犠牲基板に回路を形成する工程
本実施形態に係る製造方法においては、まず、犠牲基板10に、ピーラブル銅箔20を接合した金属箔付犠牲基板に回路を形成することが好ましい。金属箔付犠牲基板に回路パターン21を形成する場合、回路の形成方法には公知の手法を用いることができるが、例えば、以下の方法で回路を形成することができる。金属箔上に所定の開口パターンを有するめっきレジストを形成する。この開口パターンは、例えば回路パターンに相当する。めっきレジストとしては、特に限定されず、公知の材料を用いることができるが、液状およびドライフィルムを用いることができる。微細配線形成の場合には、めっきレジストとしては、感光性ドライフィルム等を用いることが好ましい。感光性ドライフィルムを用いた一例を説明する。例えば、金属箔上に感光性ドライフィルムを積層し、非回路形成領域を露光して光硬化させ、未露光部を現像液で溶解、除去する。硬化した感光性ドライフィルムを残存させることにより、めっきレジストを形成する。
【0085】
次いで、少なくともめっきレジストの開口パターン上に、電気めっき処理により、電解金属めっき層を形成する。電気めっき処理としては、通常のプリント配線基板で用いられる公知の方法を使用することができ、例えば、硫酸銅等のめっき液中に浸漬させた状態で、めっき液に電流を流す等の方法を使用することができる。電解金属めっき層は単層でもよく多層構造を有していてもよい。電解金属めっき層の材料としては、例えば、銅、銅合金、42合金、ニッケル、鉄、クロム、タングステン、金、半田のいずれか一種以上を用いることができる。
次いで、アルカリ性剥離液や硫酸または市販のレジスト剥離液等を用いてめっきレジストを除去し、犠牲基板上に回路パターン21を得ることができる。
【0086】
(B)熱硬化性樹脂層を積層し、加熱加圧プレスし、回路を形成する工程
続いて得られた回路形成後の金属箔付犠牲基板上に第一の熱硬化性樹脂層41を積層する。
積層する第一の熱硬化性樹脂層41は、上記した犠牲基板作製用のプリプレグに用いた熱硬化性樹脂組成物と同じ熱硬化性樹脂組成物を用いても構わないし、異なる熱硬化性樹脂組成物を用いても構わない。
積層する熱硬化性樹脂組成物は特に制限されないが、例えば、その厚みを10~200μmとしてもよく、15~150μmとしてもよい。
【0087】
積層する熱硬化性樹脂層の硬化物の熱膨張率は、熱機械分析装置を用いて、温度50℃から100℃の昇温過程で測定される、当該熱硬化性樹脂層の硬化物の線膨張係数αが20ppm/℃以下であることが好ましく、15ppm/℃以下であることがより好ましく、10ppm/℃以下であることが特に好ましい。
さらに、積層する熱硬化性樹脂層の硬化物は、下記の測定条件で測定される、当該積層する熱硬化性樹脂層の硬化物の収縮量差Y-Xが-1%以上1%以下であることが好ましく、該収縮量差Y-Xは、-0.5%以上0.5%以下であることがより好ましく、-0.2%以上0%以下であることが特に好ましい。
また、上記熱硬化性樹脂層の硬化物のガラス転移温度は、好ましくは150℃以上400℃以下であり、より好ましくは180℃以上320℃以下である。
【0088】
積層する熱硬化性樹脂層は、熱硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸させ、その後、半硬化させて得られるシート状のプリプレグとしてから積層することができる。熱硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸させる方法としては、特に限定されないが、例えば、熱硬化性樹脂組成物を溶剤に溶かして樹脂ワニスを調製し、繊維基材を上記樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターにより上記樹脂ワニスを繊維基材に塗布する方法、スプレーにより上記樹脂ワニスを繊維基材に吹き付ける方法、繊維基材の両面から熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層で繊維基材をラミネートする方法等が挙げられる。
【0089】
第1の熱硬化性樹脂層41となるプリプレグを犠牲基板(または、下層のビルドアップ層)に積層し、加熱加圧する際、積層した熱硬化性樹脂層の上に金属箔を重ね、同時に金属箔を積層することもできる。
プリプレグまたはプリプレグを2枚以上重ね合わせた積層体の上面に金属箔を重ね、ラミネーター装置やベクレル装置を用いて高真空条件下でこれらを接合する、あるいはそのままプリプレグの上に金属箔を重ねる。また、プリプレグを2枚以上積層するときは、積層したプリプレグの最も外側の面に金属箔を重ねる。
次いで、プリプレグと金属箔とを重ねた積層体を加熱加圧成形する。ここで、加熱加圧成形時に、冷却終了時まで加圧を継続することが好ましい。
熱硬化性樹脂層を硬化する際の加熱加圧プレスの条件は、100℃以上250℃以下が好ましく、150℃以上240℃以下がより好ましい。
また、上記の加熱加圧成形するときの圧力は、0.5MPa以上5MPa以下が好ましく、1.5MPa以上5.0MPa以下の高圧がより好ましい。
積層したビルドアップ層上に回路を形成する場合、回路の形成方法は公知の手法を用いることができ、例えば、セミアディティブプロセス(SAP)や、上記した犠牲基板上への回路形成方法と同じ手法によって、回路パターン42を形成することができる。以上の方法で、第1の熱硬化性樹脂層41の上に回路パターン42が積層した第1のビルドアップ層40を得ることができる。また、第1のビルドアップ層40を得た工程と同様の工程を繰り返すことによって、第2の熱硬化性樹脂層51の上に回路パターン52が積層した第2のビルドアップ層50を得ることができる。
熱硬化性樹脂層・金属箔の積層と、硬化、回路の形成の工程を必要な回数繰り返すことで、所望の多層のビルドアップ層を得ることができる。
【0090】
(C)犠牲基板からの剥離
所望のビルドアップ層を得た後、複数層のビルドアップ層から犠牲基板を剥離する。所望のビルドアップ層を得た後、犠牲基板と、第一のビルドアップ層との間には、金属箔が挟まれた状態となる。この状態で、ピーラブル銅箔を剥離することにより、犠牲基板とビルドアップ層とをデタッチすることが好ましい。剥離後、ピーラブル金属箔は、厚みの薄い方が、ビルドアップ層側に残り、厚みの厚い方が、犠牲基板側に残ることが好ましい。
この場合、剥離後、ビルドアップ層側には、厚み1~6umのピーラブル金属箔の全部又は一部である、ピーラブル銅箔(剥離後残存部)22が残存する。
【0091】
(D)フラッシュエッチング
次いで、犠牲基板を剥離した後、ビルドアップ層に残るピーラブル銅箔(剥離後残存部)22を、例えば、ソフトエッチング(フラッシュエッチング)等を用いることにより、除去することでコアレス基板100を得ることができる。ここで、ソフトエッチング処理は、例えば、硫酸および過酸化水素を含むエッチング液を用いたエッチングにより行うことができる。以上の方法により、2層以上のビルドアップ層を有するコアレス基板100を得ることができる。
本実施形態に係る犠牲基板を用いて製造されたコアレス基板100は、犠牲基板側において、回路が埋め込まれた構造となり、金属の残渣が残りにくいので、狭い幅のピッチの回路形成をすることが容易となり、より高密度化が可能である効果を有する。
【0092】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0093】
(プリント配線基板)
本実施形態通常のプリント配線基板に用いることができ、単数又は複数の半導体素子を搭載することができる。また、プリント配線基板に搭載された複数の半導体素子を一括封止した後、これらを個片化することにより、複数の半導体パッケージを得ることができる。
【0094】
本実施形態のプリント配線基板の一例を説明する。図3は、プリント配線基板500の製造プロセス一例の工程断面図である。図3(c)は、コア層を有しないプリント配線基板500を示す。
本実施形態のプリント配線基板500は、繊維基材を有するコア層を備えないものであり、例えば、ビルドアップ層やソルダーレジスト層で構成されているコアレス基板とすることができる。例えば、図3(c)に示すプリント配線基板500は、2層のビルドアップ層(絶縁層540,550)とソルダーレジスト層(絶縁層560)を備えるものである。上記プリント配線基板は、例えば、犠牲基板510上に、ビルドアップ層、ソルダーレジスト層を形成した後、この犠牲基板510を剥離することにより得ることができる。具体的には、図3に示すように、大面積の犠牲基板510上に、ピーラブル金属箔520、530(例えば、銅箔)を配置する。ピーラブル金属箔520、530は後に、ピーラブル金属箔520(上面)と、ピーラブル金属箔530(下面)とに剥離することができる。続いて、ピーラブル金属箔530上に金属層542を形成する。この金属層542を、たとえば、SAP(セミアディティブプロセス)方法等の通常の手法によりパターニングする。続いて、加熱加圧成形法等により、熱硬化性樹脂層や、金属箔を所望の層数積層した後、ピーラブル金属箔520と、530とを剥離することによって、犠牲基板からビルドアップ層を剥離する。そして、ピーラブル金属箔530をエッチング等により除去する。
以上により、図3に示すプリント配線基板500が得られる。
【0095】
本実施形態のプリント配線基板において、コアレス基板は、複数層の層間絶縁層で構成されている。このような層間絶縁層中には、層間接続配線としてビア配線および金属層が形成されていてもよい。また、本実施形態において、ビア配線、金属層、または金属層は、例えば、銅などの金属で構成されていてもよい。また、コアレス樹脂基板の上面と下面は、ソルダーレジスト層(絶縁層)で覆われていてもよい。
【実施例
【0096】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0097】
(1)樹脂ワニスの調整
まず、表1に示す固形分割合で各成分を溶解または分散させ、メチルエチルケトンで不揮発分70%となるように調整し、高速撹拌装置を用い撹拌して、樹脂ワニスP1、P2、P3を調製した。
なお、表1における各成分の配合割合を示す数値は、熱硬化性樹脂組成物の固形分全体に対する各成分の配合割合(質量%)を示している。
【0098】
表1における各成分の詳細は下記のとおりである。
実施例および比較例では、以下の原料を用いた。
【0099】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂1:多官能型マレイミド(BMI-2300、大和化成工業社製)
熱硬化性樹脂2:ジアミノジフェルメタン型ベンゾオキサジン(P-d型ベンゾオキサジン、四国化成工業社製)
熱硬化性樹脂3:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学製、jER828EL)
熱硬化性樹脂4:ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、HP-5000)
熱硬化性樹脂5:シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製、PT-30、重量平均分子量700)
【0100】
(硬化剤)
硬化剤1:2-フェニルイミダゾール(四国化成社製、2PZ-PW)
硬化剤2:テトラフェニルホスホニウムのビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート付加物
【0101】
(無機充填材)
無機充填材1: シリカ粒子(アドマテックス社製、SC4050、平均粒径1.1μm)
無機充填材2: シリカナノ粒子(アドマテックス社製、アドマナノ、平均粒径50nm)
【0102】
【表1】
【0103】
各実施例・比較例で用いた繊維基材について以下に示す。
(繊維基材)
繊維基材1:ガラスクロス(日東紡績(株)製、WEA-116E)
繊維基材2:ガラスクロス(ユニチカグラスファイバー社製、E10T)
【0104】
(2)コアレス基板の製造
<実施例1>
(プリプレグの製造)
得られた樹脂ワニスP1を厚み90μmのガラス繊維に含浸させ、樹脂ワニスを繊維基材1に塗布した後、160℃、5分間の条件で溶剤を除去して、厚さ105μmのプリプレグ1を形成した。
【0105】
(金属箔付犠牲基板)
得られたプリプレグ1を1枚準備し、その両面にピーラブル銅箔(メーカー:三井金属鉱業株式会社、型番MT18Ex、厚み5μm)を接着して、金属箔付の犠牲基板を得た。接着条件は、圧力2MPa、温度220℃、2時間とした。得られた金属箔付の犠牲基板の厚みは151μmであった。
【0106】
(ビルドアップ層の形成)
上記のようにして得られた金属箔付犠牲基板の両面に、それぞれビルドアップ用プリプレグと金属箔(メーカー:三井金属鉱業株式会社、型番MT18Ex、厚み5μm)とを重ね合わせ、圧力2MPa、温度220℃で2時間加熱加圧成形することにより、金属箔付犠牲基板の両面に、第一のビルドアップ層を形成した。さらに、同工程を繰り返すことにより、第2のビルドアップ層を形成した。
【0107】
(犠牲基板の剥離)
得られた犠牲基板から、ピーラブル銅箔を剥離することにより、ビルドアップ層を犠牲基板から剥離し、コアレス基板1を得た。
【0108】
(エッチング)
得られたコアレス基板の犠牲基板側の金属箔をフラッシュエッチングで除去した。エッチング後の、犠牲基板剥離後に得られたコアレス基板の厚みは60μmであった。
【0109】
(実施例2)
得られた樹脂ワニスP2を厚み90μmのガラス繊維に含浸させ、樹脂ワニスを繊維基材2に塗布した後、160℃、5分間の条件で溶剤を除去して、厚さ105μmのプリプレグ2を形成した。
得られたプリプレグ2を用い、実施例1と同様の方法で、コアレス基板2を作成した。なお、実施例2では、金属箔付犠牲基板の厚みは150μm、得られたコアレス基板2の厚みは60μmであった。
【0110】
(比較例1)
得られた樹脂ワニスP3を厚み90μmのガラス繊維に含浸させ、樹脂ワニスを繊維基材2に塗布した後、160℃、5分間の条件で溶剤を除去して、厚さ105μmのプリプレグを形成した。
得られたプリプレグを用い、実施例1と同様の方法で、コアレス基板を作成した。比較例1では、金属箔付犠牲基板の厚みは150μm、得られたコアレス基板の厚みは60μmであった。
【0111】
(線膨張係数)
ビルドアップ層を積層する前の金属箔付犠牲基板から4mm×15mmのテストピースを切り出し、エッチング液(第二塩化鉄溶液、35℃)で銅箔を除去し、線膨張係数評価用の試験片を得た。次いで、得られた試験片に対し、熱機械分析装置TMA(TAインスツルメント社製、Q400)を用いて、温度範囲30~260℃、昇温速度10℃/min、荷重10g、圧縮モードの条件で熱機械分析(TMA)を2サイクル測定した。50℃から100℃の範囲における平面方向(XY方向)の線膨張係数の平均値αを算出した。
なお、線膨脹係数は、2サイクル目の値を採用した。
【0112】
(収縮量)
収縮量差Y-Xは、パンチングされた犠牲基板の、穴の中心間の距離を測定することにより算出した(図2)。測定方法、加熱条件、及び、算出方法は以下の通りである。
(1)収縮量測定用穴あき犠牲基板
各実施例・比較例の金属箔付犠牲基板から、250mm×250mmの試験片を切り出した。試験片の4つの角に直径1mmの穴を開けた。穴の位置は各試験片の板端から10mmの距離の直線の交点を中心とした4カ所とした。
【0113】
(2)加熱プレス前の犠牲基板の寸法測定
4つの直径1mmの穴について、対角線を除いた、穴の中心から他の穴の中心までの長さ4か所(図中A、B、C、D)を測定し、各測定値をD0A、D0B、D0C、D0Dとし、その平均を、Dとした。
【0114】
(3)1回目の加熱プレス後の寸法測定
犠牲基板を、ホットプレスを用いて、温度200℃、圧力8kgf/mmの条件で2時間加熱加圧した。加圧は、2時間加熱加圧の終了後犠牲基板が50℃に冷却されるまで、続けて行った。当該犠牲基板が25℃に冷却されてから、25℃で穴の中心から他の穴の中心までの長さ4か所(図中A、B、C、D)を測定し、各測定値をD1A、D1B、D1C、D1Dとし、その平均を、Dとした。
【0115】
(4)2回目の加熱プレス後の寸法測定
1回目の加熱プレス後、25℃に冷却された犠牲基板を、ホットプレスを用いて、温度200℃、圧力8kgf/mmの条件で2時間加熱加圧した。加圧は、2時間加熱加圧の終了後犠牲基板が50℃に冷却されるまで、続けて行った。当該犠牲基板が25℃に冷却されてから、25℃で穴の中心から他の穴の中心までの長さ4か所(図中A、B、C、D)を測定し、各測定値をD2A、D2B、D2C、D2Dとし、その平均を、Dとした。
【0116】
(5)算出方法
1回目の加熱プレスの収縮量Xを、
X=(D―D)/D×100[%]
とした。
2回目の加熱プレスの収縮量Yを、
Y=(D―D)/D×100[%]
とした。
上記した方法により算出される一回目の加熱プレスにおける収縮量X%及び、二回目の加熱プレスにおける収縮量Y%の差であるY-X%を、収縮量差Y-X%とした。
【0117】
(反り)
得られた各実施例・比較例のコアレス基板の25℃での反りをノギスで測定した。具体的には、各コアレス基板を水平な平面におき、変位差の最も大きい値を反り量とした。評価基準は以下の通りである。
◎:反り量が10mm未満
〇:反り量が10mm以上20mm未満
×:反り量が20mm以上
【0118】
【表2】
【符号の説明】
【0119】
10 犠牲基板
20 ピーラブル金属箔
21 回路パターン
22 ピーラブル銅箔(剥離後残存部)
40 第1のビルドアップ層
41 第1の熱硬化性樹脂層
42 回路パターン
50 第2のビルドアップ層
51 第2の熱硬化性樹脂層部材名
52 回路パターン
100 コアレス基板
500 プリント配線基板
510 支持基板
520 ピーラブル金属箔
530 ピーラブル金属箔
540 絶縁層
542 金属層
550 絶縁層
552 金属層
560 絶縁層
562 金属層
図1
図2
図3