(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】画像形成装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/01 121
B41J2/01 401
B41J2/01 451
(21)【出願番号】P 2019006784
(22)【出願日】2019-01-18
【審査請求日】2021-11-17
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福本 和子
(72)【発明者】
【氏名】田畑 英二
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 麻紀子
【合議体】
【審判長】川俣 洋史
【審判官】嵯峨根 多美
【審判官】門 良成
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-114001(JP,A)
【文献】特開2010-184481(JP,A)
【文献】特開2009-285878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上のインクを乾燥させる乾燥部と、
インクによる画像を形成された記録媒体を前記乾燥部へと搬送する搬送部と、
前記乾燥部および前記搬送部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記乾燥部に、当該乾燥部へ搬送された記憶媒体上の画像を乾燥する第1乾燥工程と、前記第1乾燥工程の後段で、前記画像を構成するインクに振動を付与する第2乾燥工程とを実行させ、
前記制御部は、前記乾燥部に、前記第2乾燥工程において、当該第2乾燥工程に導入された記録媒体について、予測される前記画像の乾燥度合いに応じた態様でさらに熱を付与させ、
前記乾燥部は、
前記第1乾燥工程において記録媒体のインクを付された面側から記録媒体を加熱する第1乾燥用第1加熱手段と、
前記第1乾燥工程において記録媒体のインクを付された面の裏面側から記録媒体を加熱する第1乾燥用第2加熱部材と、を含む、画像形成装置。
【請求項2】
前記乾燥部へ搬送される記録媒体は、インクについて非浸透性である、請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記乾燥部は、前記第2乾燥工程において振動を付与するために、超音波振動子および圧電アクチュエーターの中の少なくとも一方を含む、請求項1
または請求項
2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記乾燥部は、
前記第2乾燥工程において記録媒体のインクを付された面側から記録媒体を加熱する第2乾燥用第1加熱部材と、
前記第2乾燥工程において記録媒体のインクを付された面の裏面側から記録媒体を加熱する第2乾燥用第2加熱部材とを含み、
前記制御部は、前記第2乾燥用第1加熱部材と前記第2乾燥用第2加熱部材の加熱動作を互いに独立して制御する、請求項1~請求項
3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、記録媒体において予測される前記画像の乾燥度合いに応じた前記第2乾燥用第1加熱部材と前記第2乾燥用第2加熱部材の加熱動作を、
前記第2乾燥用第1加熱部材と前記第2乾燥用第2加熱部材の双方をオンする第1状態、
前記第2乾燥用第1加熱部材をオンにし、前記第2乾燥用第2加熱部材をオフにする第2状態、および、
前記第2乾燥用第1加熱部材と前記第2乾燥用第2加熱部材の双方をオフする第3状態、
から選択する、請求項
4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
コンピューターによって実行される、画像形成装置の制御方法であって、
インクによる画像を形成された記録媒体を乾燥部へと搬送するステップと、
前記乾燥部において、記憶媒体上の画像を乾燥する第1乾燥工程を実行するステップと、
前記第1乾燥工程の後段で、前記画像を構成するインクに振動を付与する第2乾燥工程を実行するステップと、を備え、
前記第1乾燥工程は、振動付与以外の態様で前記画像を構成するインクを乾燥させ、
前記第2乾燥工程を実行するステップは、当該第2乾燥工程に導入された記録媒体について、予測される前記画像の乾燥度合いに応じた態様でさらに熱を付与することを含み、
前記第1乾燥工程を実行するステップは、
前記第1乾燥工程において記録媒体のインクを付された面側から記録媒体を加熱する第1乾燥用第1加熱部材と、
前記第1乾燥工程において記録媒体のインクを付された面の裏面側から記録媒体を加熱する第1乾燥用第2加熱部材と、
を制御することを含む、画像形成装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置における、インクを吐出することにより記録媒体上に形成された画像の乾燥に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のMFP(Multi-Functional Peripheral)等の画像形成装置は、印刷用紙などの記録媒体上にインクによって形成された画像を乾燥させた後、記録媒体を排出する。画像の乾燥方法としては、種々の方法が提案されている。たとえば、特許文献1(特開2014-233879号公報)では、インクジェット式プリンターの乾燥部の構成として、加熱されたローラーに記録媒体を当接させるもの、多孔質材料を記録媒体に接触させるもの、冷風および/または温風を記録媒体に提供するもの、赤外線または電磁波の照射による熱により画像を乾燥するもの、超音波の照射によって乾燥させるもの、吸引機構により画像の水分を吸引するもの、が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像形成装置において、一般的に加熱によって画像を乾燥させるが、乾燥時間の短縮等の種々の要望があった。
【0005】
本開示は、係る実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、画像形成装置において、インクによって形成された画像の乾燥時間を短縮するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従うと、記録媒体上のインクを乾燥させる乾燥部と、インクによる画像を形成された記録媒体を乾燥部へと搬送する搬送部と、乾燥部および搬送部を制御する制御部とを備え、制御部は、乾燥部に、当該乾燥部へ搬送された記憶媒体上の画像を乾燥する第1乾燥工程と、第1乾燥工程の後段で、画像を構成するインクに振動を付与する第2乾燥工程とを実行させる、画像形成装置が提供される。
【0007】
第1乾燥工程は、振動付与以外の態様で画像を構成するインクを乾燥させてもよい。
乾燥部へ搬送される記録媒体は、インクについて非浸透性であってもよい。
【0008】
乾燥部は、第2乾燥工程において振動を付与するために、超音波振動子および圧電アクチュエーターの中の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0009】
制御部は、乾燥部に、第2乾燥工程において、当該第2乾燥工程に導入された記録媒体について、予測される画像の乾燥度合いに応じた態様でさらに熱を付与してもよい。
【0010】
本開示の他の局面に従うと、コンピューターによって実行される、画像形成装置の制御方法が提供される。制御方法は、インクによる画像を形成された記録媒体を乾燥部へと搬送するステップと、乾燥部において、記憶媒体上の画像を乾燥する第1乾燥工程を実行するステップと、第1乾燥工程の後段で、画像を構成するインクに振動を付与する第2乾燥工程を実行するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、乾燥部における後段の工程(第2乾燥工程)にて、記録媒体に、画像の乾燥のために振動が付与される。これにより、記録媒体上の画像の乾燥時間が短縮去れ得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】インクによる画像を形成された記録媒体についての、乾燥の進度に従った状態の変化態様の一例を模式的に示す図である。
【
図2】インクによる画像を形成された記録媒体についての、乾燥の進度に従った状態の変化態様の一例を模式的に示す図である。
【
図3】画像形成装置の構成の一例を概略的に示す図である。
【
図4】乾燥ユニット900の構成を説明するための図である。
【
図5】画像形成装置1の制御ブロックの一例を示す図である。
【
図6】第2乾燥部920における乾燥の態様を制御するために実施される処理のフローチャートである。
【
図7】
図4に示された構成および
図6に示された処理に従った画像の乾燥と、他の構成との比較の結果を表す図である。
【
図8】乾燥ユニット900の構成の変形例を示す図である。
【
図9】
図8の乾燥ユニット900を備える画像形成装置の制御ブロックの一例を示す図である。
【
図10】
図8および
図9の例において第2乾燥部920における乾燥の制御のためのフローチャートである。
【
図11】変形例(3)における、第2乾燥部920におけるヒーターのオン/オフを制御する処理の一例である。
【
図12】変形例(4)における、第2乾燥部920におけるヒーターのオン/オフを制御する処理の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照しつつ、画像形成装置の一実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらの説明は繰り返さない。
【0014】
[1.乾燥の進度と画像の状態]
図1および
図2は、インクによる画像を形成された記録媒体についての、乾燥の進度に従った状態の変化態様の一例を模式的に示す図である。
図1において、横軸は、乾燥開始からの経過時間を表し、縦軸は、記録媒体の表面温度を表す。線L1は、58℃の雰囲気下で加熱された場合の、乾燥の進度に従った、画像(を構成するインク)の温度変化を示す。
【0015】
線L1として示されるように、記録媒体の表面温度は、23℃程度から急激に上昇を始め、30℃程度まで上昇した後、しばらく上昇の度合いが緩やかになる。その後、再度、雰囲気温度まで急激に上昇する。
図1では、加熱開始から2度目の温度上昇までの期間に対して「定率乾燥」との段階が付与され、2度目の温度上昇から雰囲気温度で安定する迄の期間に対して「減率乾燥」との段階が付与され、その後の、雰囲気温度で安定した状態に対して「乾燥終了」との段階が付与されている。
【0016】
「定率乾燥」は、画像を構成するインクの表面の水分が蒸発する段階であると考えられる。「減率乾燥」は、インクの固形成分間に存在する水分が蒸発する段階であると考えられる。
【0017】
なお、
図1に示された定率乾燥と減率乾燥の温度変化の態様は、あくまで一例である。インク材料によっては、定率乾燥においてインクの温度が乾燥温度近傍まで上昇する場合もある。このようなインク材料の場合、減率乾燥の開始時に既にインクの温度が乾燥温度近傍まで上昇している場合もあり得る。したがって、このようなインク材料の場合であっても、定率乾燥の期間中の温度と、減率乾燥の期間中の温度と、乾燥温度近傍の温度とが十分に区別して管理されることにより、「定率乾燥」「減率乾燥」「乾燥完了」のそれぞれの段階が区別され得る。
【0018】
図2において、横軸は、
図1と同様に乾燥開始からの経過時間を表し、縦軸は、画像を構成するインクにおける液体の含有量を表す。線L2は、
図1と同様の状況下での、液体量の時間変化を表す。
図2中の「定率乾燥」と「減率乾燥」は、
図1に付されたのと同様の意味を表す。線L2として示されるように、減率乾燥では、定率乾燥と比較して、時間の経過に従った水分の減少量が小さい。
【0019】
本実施の形態の画像形成装置では、記録媒体上の画像を構成するインクの水分含有量が比較的少なくなった期間(減率乾燥の期間)において、超音波の振動を用いて画像を乾燥させる。これにより、振動による画像の乱れの可能性が低い状態で、早期に画像が乾燥され得る。
【0020】
[2.画像形成装置の構成]
図3は、画像形成装置の構成の一例を概略的に示す図である。
図3に示されるように、画像形成装置1は、制御ユニット100と、画像形成ユニット200と、搬送ユニット300と、乾燥ユニット900とを備える。
【0021】
制御ユニット100は、画像形成装置1の動作を全体的に制御する。制御ユニット100は、所与のプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)101と、当該プログラムを格納する記憶装置102とを含む。なお、CPU101によって実行されるプログラムは、CPU101がアクセス可能な記憶装置であれば、画像形成装置1外の記憶装置(たとえば、USBメモリー、ネットワーク上の他の機器を構成する記憶装置、等)に格納されていてもよい。
【0022】
画像形成ユニット200は、記録媒体上に、インクによる画像を形成する。一例では、画像形成装置1は、インクジェット方式のプリンターである。画像形成ユニット200は、制御ユニット100の制御の下でインクを吐出するユニットを含む。
【0023】
搬送ユニット300は、画像形成装置1内で記録媒体を搬送し、記録媒体を搬送するためのローラー(後述する搬送ローラー951等)を回転駆動するための駆動モーター301~303を含む。一例では、記録媒体はコピー用紙である。画像形成装置1は、コピー用紙を収容する用紙カセットを備える。搬送ユニット300は、用紙カセットから1枚ずつコピー用紙をピックアップし、当該コピー用紙を画像形成ユニット200へ送り、画像形成ユニット200から乾燥ユニット900へ送った後、排紙トレイ上に排出する。他の例では、記録媒体として、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PS(プリスチレン)などの樹脂フィルムであって、コピー用紙よりも熱の影響を受けやすい素材の記録媒体が採用され得る。
【0024】
コピー用紙は、インクが浸透する記録媒体の一例であり、樹脂フィルムは、インクが浸透しない記録媒体(非浸透性の記録媒体)の一例である。非浸透性の記録媒体の他の例は、発色やインクの仮止め(ピニング)のために基材表面にプレコートが施された記録媒体である。
【0025】
乾燥ユニット900は、記録媒体上の画像を乾燥させるための複数の工程を実施する。
図3の例では、乾燥ユニット900は、第1乾燥工程を実施するための第1乾燥部910と、第2乾燥工程を実施するための第2乾燥部920とを含む。
【0026】
[3.乾燥ユニットの構成]
図4は、乾燥ユニット900の構成を説明するための図である。
【0027】
図4に示されるように、乾燥ユニット900には、第1乾燥部910と、第2乾燥部920とが設けられている。矢印DR1は、記録媒体の搬送方向を示す。搬送経路290は、記録媒体の搬送経路を表す。
【0028】
第2乾燥部920は、第1乾燥部910に対して下流側に配置されている。第1乾燥部910の前段には、画像形成ユニット200で画像を形成された記録媒体を第1乾燥部910へ搬送するための搬送ローラー951が設置されている。搬送ローラー951は、駆動モーター301の駆動に従って回転する。
【0029】
第1乾燥部910は、上部ヒーター911と、下部ヒーター912と、温度センサー913と、搬送ローラー952とを備える。上部ヒーター911は、たとえば、ハロゲンヒーターによって実現され、下部ヒーター912は、たとえば、シート状のヒーター(たとえば、シリコンラバーヒーター)によって実現される。上部ヒーター911/下部ヒーター912のそれぞれは、搬送経路上の記録媒体を上方/下方から加熱する。第1乾燥部910は、上部ヒーター911および下部ヒーター912から放出される熱によって、記録媒体上の画像を乾燥させる。温度センサー913は、記録媒体の表面の温度を検出する。
【0030】
搬送ローラー952は、第1乾燥部910から第2乾燥部920へ記録媒体を搬送する。搬送ローラー952は、駆動モーター302の駆動に従って回転する。
【0031】
第2乾燥部920は、超音波発振器921と、上部ヒーター925と、下部ヒーター927とを備える。超音波発振器921は、ピエゾ素子等の超音波発振子を備え、搬送経路290を介して記録媒体に超音波の振動を与えることにより、記録媒体上の画像を乾燥させる。超音波発振器921は、圧電アクチュエーターなど、他の手段を用いて超音波を発振する構成を備えていても良い。第2乾燥部920では、超音波発振器921の後段で、上部ヒーター925と下部ヒーター927とによって、記録媒体に熱が与えられる。上部ヒーター925は、たとえば、ハロゲンヒーターによって実現され、下部ヒーター927は、たとえば、シート状のヒーターによって実現される。
【0032】
搬送ローラー953は、画像形成装置1において、第2乾燥部920からさらに下流側へ記録媒体を搬送する。搬送ローラー953は、駆動モーター303の駆動に従って回転する。
【0033】
[4.制御ブロック]
図5は、画像形成装置1の制御ブロックの一例を示す図である。なお、
図5には、乾燥ユニット900における記録媒体上の画像の乾燥に関連した部分のみの制御ブロックが示される。
【0034】
図5に示されるように、温度センサー913は、制御ユニット100へ計測結果を出力する。制御ユニット100は、各種のヒーター(上部ヒーター911,925および下部ヒーター912,927)、超音波発振器921、駆動モーター301,302,303の動作を制御する。
【0035】
[5.乾燥ユニットの制御]
画像形成装置1は、乾燥ユニット900において、第1乾燥部910で、熱により記録媒体上の画像を乾燥させた後、第2乾燥部920で、振動によって記録媒体上の画像を乾燥させる。なお、画像形成装置1は、第2乾燥部920で、必要に応じて、振動だけでなく熱を加えて、上記画像を乾燥させる。
図6は、第2乾燥部920における乾燥の態様を制御するために、制御ユニット100のCPU101によって実施される処理のフローチャートである。
図6の処理は、たとえば、CPU101が所与のプログラムを実行することによって実現され、記録媒体の先頭部分が第1乾燥部910の出口近傍の所与の位置に到達したことに応じて開始される。
【0036】
ステップS10にて、CPU101は、温度センサー913によって計測された温度T1(記録媒体の表面温度)をチェックする。CPU101は、温度T1が40℃未満であればステップS20へ制御を進め、温度T1が40℃以上50℃未満であればステップS30へ制御を進め、温度T1が50℃以上であればステップS40へ制御を進める。
【0037】
ステップS20にて、CPU101は、上部ヒーター925および下部ヒーター927をオンにする。これにより、第2乾燥部920では、記録媒体上の画像の乾燥に、超音波発振器921からの振動に加え、上部ヒーター925および下部ヒーター927からの熱が利用される。その後、CPU101は、
図6の処理を終了させる。
【0038】
ステップS30にて、CPU101は、上部ヒーター925をオンにし、下部ヒーター927をオフにする。これにより、第2乾燥部920では、記録媒体上の画像の乾燥に、超音波発振器921からの振動に加え、上部ヒーター925からの熱が利用される。その後、CPU101は、
図6の処理を終了させる。
【0039】
ステップS40にて、CPU101は、上部ヒーター925および下部ヒーター927をオフにする。これにより、第2乾燥部920では、記録媒体上の画像の乾燥に、超音波発振器921からの振動が利用される。その後、CPU101は、
図6の処理を終了させる。
【0040】
以上、
図6を参照して説明された処理では、第1乾燥部910から排出される記録媒体上の画像の温度が高いほど、第2乾燥部920における記録媒体上の画像の乾燥に、より少ない熱が利用される。
図1を参照して説明されたように、記録媒体上の画像の乾燥が進むほど、記録媒体上の画像(インク)の温度が高くなる。
図6を参照して説明された処理によれば、記録媒体上の画像の乾燥が進んでいるほど、第2乾燥部920における記録媒体上の画像の乾燥に利用される熱量が低く抑えられる。これにより、第2乾燥部920において記録媒体に供給される熱を必要最小限に抑えることができる。
【0041】
[6.評価]
図7は、
図4に示された構成および
図6に示された処理に従った画像の乾燥と、他の構成との比較の結果を表す図である。
図7には、実施例とともに、3種類の比較例(比較例A~比較例C)の結果が示される。実施例は、
図4に示された構成および
図6に示された処理に従った画像に対応する。比較例A~比較例Cは、以下の通りである。
【0042】
(比較例)
比較例A:
図4に対して、超音波発振器921が省略された構成
比較例B:
図4に対して、第1乾燥部910と第2乾燥部920とを入替えられた構成
比較例C:比較例Aにおいて、第1乾燥部および第2乾燥部の雰囲気温度が110℃
(条件)
実施例および比較例に共通する条件は以下の通りである。
【0043】
記録媒体の搬送速度:15m/min
記録媒体上に形成された画像のインク液量:20g/m2
記録媒体:厚さ50μmのPETフィルム
温度センサー913の位置:第2乾燥部920との境界から10cm上流側
第1乾燥部910内の雰囲気温度:60℃
第1乾燥部910内の温風速度(上流から下流向き:記録媒体表面):5m/sec
第1乾燥部910の上部ヒーター911の温度:300℃(ハロゲンヒーター)
第1乾燥部910の下部ヒーター912の温度:50℃(シリコンヒーター)
第2乾燥部920内の雰囲気温度:60℃
第2乾燥部920内の温風速度(上流から下流向き:記録媒体表面):5m/sec
第2乾燥部920の超音波の周波数:35kHz
第2乾燥部920の上部ヒーター925の温度:300℃(ハロゲンヒーター)
第2乾燥部920の下部ヒーター927の温度:50℃(ハロゲンヒーター)
なお、第1乾燥部910内の風速および第2乾燥部920内の風速は、たとえばアネモメーターの測定値として表される。
【0044】
(評価項目)
図7には、3種類の評価項目について、各例に従って処理された記録媒体に対する、画像形成装置1の製造者による評価が示される。
【0045】
画像乱れ:画像に乱れがなければ「○」であり、乱れがあれば「×」である。
乾燥完了:画像表面を擦った部材にインクが付着しなければ「○」、付着すれば「×」。
【0046】
記録媒体変形:記録媒体に変形(そり、縮み、等)が無ければ「○」、あれば「×」。
実施例では、3種類の評価項目のすべてについて、結果「○」が得られた。これに対し、比較例Aでは、評価項目「乾燥完了」について、結果「×」が得られた。このことから、実施例では、超音波振動が与えられることにより、確実に画像が乾燥されたとの知見が得られる。
【0047】
比較例Bでは、評価項目「画像乱れ」および評価項目「乾燥完了」において、結果「×」が得られた。このことから、乾燥開始時から画像に振動が与えられることにより画像の乱れが生じるとの知見が得られる。また、振動による乾燥が熱による乾燥に先行して実施されると、逆の順序で行われる実施例よりも、画像の乾燥の度合いが低いとの知見が得られる。
【0048】
比較例Cでは、振動による加熱の代わりに高熱で画像を乾燥させた場合、画像の乾燥を完了させることはできても、記録媒体に変形が生じるとの知見が得られる。
【0049】
[7.変形例(1)]
(乾燥ユニット)
図8は、乾燥ユニット900の構成の変形例を示す図である。
図8の例では、
図4の例と比較して、第2乾燥部920はさらに超音波発振器922を備える。すなわち、
図8の例では、第2乾燥部920は、記録媒体に対して、2段階で振動を与えることができる。
【0050】
図8の第2乾燥部920は、
図4の第2乾燥部920と比較して、超音波発振器921によって振動を与えられる記録媒体の表面温度を検出するための温度センサー923と、超音波発振器922によって振動を与えられる記録媒体の表面温度を検出するための温度センサー924とをさらに備える。
【0051】
図8の第2乾燥部920は、
図4の第2乾燥部920と比較して、超音波発振器922によって振動を与えられた記録媒体を加熱する、上部ヒーター926と下部ヒーター928をさらに備える。
【0052】
(制御ブロック)
図9は、
図8の乾燥ユニット900を備える画像形成装置の制御ブロックの一例を示す図である。
図9の例では、温度センサー923,924のそれぞれが、計測結果を制御ユニット100に出力する。制御ユニット100は、各種のヒーター(上部ヒーター911,925,926および下部ヒーター912,927,298)、駆動モーター301~303、ならびに、超音波発振器921,922の動作を制御する。
【0053】
(処理の流れ)
図10は、
図8および
図9の例において第2乾燥部920における乾燥の制御のためのフローチャートである。
図10の処理は、たとえば、CPU101が所与のプログラムを実行することによって実現され、記録媒体の先頭部分が第1乾燥部910の出口近傍の所与の位置または第2乾燥部920の入り口の所与の位置に到達したことに応じて開始される。
【0054】
図10のステップS10~ステップS40の制御は、
図6のステップS10~ステップS40の制御と同様である。すなわち、ステップS10にて、温度センサー923によって計測された温度T1(記録媒体の表面温度)がチェックされ、温度T1が40℃未満であれば、ステップS20にて、上部ヒーター925および下部ヒーター927がオンされる。温度T1が40℃以上50℃未満であれば、ステップS30にて、上部ヒーター925がオンされ、下部ヒーター927がオフされる。温度T1が50℃以上であれば、ステップS40にて、上部ヒーター925および下部ヒーター927がオフされる。
【0055】
図10の処理は、第2乾燥部920に導入された記録媒体に対して、超音波発振器921からの振動が提供されることが前提とされる。ステップS10~ステップS40では、温度センサー923によって計測される記録媒体の表面温度に従って、上部ヒーター925および下部ヒーター927の熱が提供されるか否かが決定される。その後、ステップS50へ制御が進められる。
【0056】
ステップS50にて、CPU101は、温度センサー924によって計測された温度T2(記録媒体の表面温度)をチェックする。CPU101は、温度T2が50℃未満であればステップS60へ制御を進め、温度T2が50℃以上60℃未満であればステップS70へ制御を進め、温度T2が60℃以上であればステップS80へ制御を進める。
【0057】
ステップS60にて、CPU101は、上部ヒーター926および下部ヒーター928をオンにする。
【0058】
ステップS70にて、CPU101は、上部ヒーター926をオンにし、下部ヒーター928をオフにする。
【0059】
ステップS80にて、CPU101は、上部ヒーター926および下部ヒーター928をオフにする。
【0060】
第2乾燥部920では、記録媒体上の画像の乾燥に、超音波発振器922からの振動は利用される。
【0061】
ステップS50~ステップS80では、記録媒体上の表面温度に従って、当該記憶媒体上の画像の乾燥に、超音波発振器922からの振動に加えて、上部ヒーター926および下部ヒーター928の熱が提供されるか否かが決定される。その後、
図10の処理が終了される。
【0062】
[8.変形例(2)]
図6および
図10に示された処理では、記録媒体の表面温度に従って、第2乾燥部920における乾燥に、振動に加えて、熱を利用するか否かが決定された。この例において、記録媒体の表面温度は、記録媒体上に形成された画像の乾燥度合いの指標として利用されている。画像形成装置1は、第1乾燥部910において、記録媒体上の画像を熱を用いて乾燥させる。
図1を参照して説明されたように、乾燥の度合いが進むほど、記録媒体上の画像の温度が高くなる。
【0063】
画像形成装置1において、記録媒体上の画像の乾燥度合いの指標として、他の物理量が利用されてもよい。他の物理量の一例は、画像の光沢度である。画像を構成するインクにおける液体の含有量が高いほど、画像の光沢度は高くなる。このことから、画像の乾燥度が高くなるほど、当該画像の光沢度は低くなる。したがって、
図6および
図10の処理において、ステップS10およびステップS50における判断は、記録媒体上の画像の温度の代わりに、当該画像の光沢度に従って実施されても良い。
【0064】
たとえば、ステップS10において、記録媒体上の画像の光沢度が高い場合には、ステップS20へ制御が進められ、光沢度が低い場合にはステップS40へ制御が進められ、光沢度が中間であればステップS30へ制御が進められる。より具体的には、ステップS10において、記録媒体上の画像の光沢度が第1の値を超えていれば、ステップS20へ制御が進められる。当該光沢度が第1の値以下であり第2の値(第2の値の方が第1の値よりも低い光沢度に対応する)を超えていれば、ステップS30へ制御が進められる。当該光沢度が第2の値以下であれば、ステップS40へ制御が進められる。
【0065】
ステップS50~ステップS80においても、ステップS10~ステップS40と同様に、記録媒体上の画像の光沢度に従って制御が進められ得る。
【0066】
[9.変形例(3)]
第2乾燥部920に搬送される記録媒体上の画像の乾燥の度合いは、温度センサー(または、光沢度計)によって計測される値の代わりに、形成される画像のパターンから予測されてもよい。
【0067】
画像形成ユニット200がY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、および、K(ブラック)の4種類のインクを選択的に利用してカラーの画像を形成する場合、使用されるインクの種類が多い部分は、使用されるインクの種類が少ない部分よりも、第1乾燥部910における乾燥後に予測される液体の含有量、すなわち、乾燥の進行の度合いは異なる。より具体的には、使用されるインクの種類が多い部分は、使用されるインクの種類が少ない部分よりも、第1乾燥部910による乾燥の後、より多くの液体成分を含むことが予測される。このことから、CPU101は、第2乾燥部920において各種のヒーターのオン/オフを、記録媒体上に形成された画像に使用されたインクの種類に従って決定しても良い。CPU101は、記録媒体ごとにヒーターのオン/オフを決定しても良いし、記録媒体の部分ごとにヒーターのオン/オフを決定しても良い。
【0068】
図11は、変形例(3)のCPU101が第2乾燥部920におけるヒーターのオン/オフを制御する処理の一例である。
図11では、記録媒体ごとに、ヒーターをオン/オフする制御が例示される。CPU101は、たとえば、
図4の第2乾燥部920に記録媒体が導入されるごとに、
図11の処理を開始する。
【0069】
ステップS92にて、CPU101は、第2乾燥部920に導入される記録媒体上の画像の形成に利用されたインクの種類をチェックする。4種類のインクが使用された場合、CPU101は、ステップS94へ制御を進める。2種類または3種類のインクが使用された場合、CPU101は、ステップS96へ制御を進める。1種類のインクが使用された場合、CPU101は、ステップS98へ制御を進める。
【0070】
ステップS94,ステップS96,ステップS98のそれぞれにて、CPU101は、
図6のステップS20,ステップS30,ステップS40のそれぞれと同様の制御を実行する。これにより、ステップS94では、上部ヒーター925および下部ヒーター927がオンされる。ステップS96では、上部ヒーター925がオンされ、下部ヒーター927がオフされる。ステップS98では、上部ヒーター925および下部ヒーター927がオフされる。
【0071】
図11の例では、形成に使用されるインクの種類が少ないほど、記録媒体に提供される熱量がより少なくされる。すなわち、記録媒体に対し、当該記録媒体上に形成された画像の乾燥について必要最小限の熱が提供される。
【0072】
[10.変形例(4)]
第2乾燥部920に搬送される記録媒体上の画像の乾燥の度合いは、温度センサー(または、光沢度計)によって計測される値の代わりに、形成される画像の印字率(記録媒体の表面積に対する、インクが付与される面積の割合)から予測されてもよい。
【0073】
図12は、変形例(4)のCPU101が第2乾燥部920におけるヒーターのオン/オフを制御する処理の一例である。CPU101は、たとえば、
図4の第2乾燥部920に記録媒体が導入されるごとに、
図12の処理を開始する。
【0074】
ステップSA10にて、CPU101は、第2乾燥部920に導入される記録媒体における印字率をチェックする。印字率は、たとえば、記録媒体上に形成される画像のパターンに基づいて導出される。印字率が40%以上の場合、CPU101は、ステップSA20へ制御を進める。印字率が20%以上40%未満の場合、CPU101は、ステップSA30へ制御を進める。印字率が20%未満の場合、CPU101は、ステップSA40へ制御を進める。
【0075】
ステップSA20,ステップSA30,ステップSA40のそれぞれにて、CPU101は、
図6のステップS20,ステップS30,ステップS40のそれぞれと同様の制御を実行する。これにより、印字率が最も高い場合の制御であるステップSA20では、上部ヒーター925および下部ヒーター927がオンされる。中間の印字率の制御であるステップSA30では、上部ヒーター925がオンされ、下部ヒーター927がオフされる。印字率が最も低い場合の制御であるステップSA40では、上部ヒーター925および下部ヒーター927がオフされる。
【0076】
図12の例では、記録媒体上の印字率が低いほど、記録媒体に提供される熱量がより少なくされる。すなわち、記録媒体に対し、当該記録媒体上に形成された画像の乾燥について必要最小限の熱が提供される。
【0077】
今回開示された各実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、実施の形態および各変形例において説明された発明は、可能な限り、単独でも、組合わせても、実施することが意図される。
【符号の説明】
【0078】
1 画像形成装置、100 制御ユニット、101 CPU、102 記憶装置、200 画像形成ユニット、290 搬送経路、298,912,927,928 下部ヒーター、300 搬送ユニット、301,302,303 駆動モーター、900 乾燥ユニット、910 第1乾燥部、911,925,926 上部ヒーター、913,923,924 温度センサー、920 第2乾燥部、921,922 超音波発振器、951,952,953 搬送ローラー。