(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】区画された小容量反応器
(51)【国際特許分類】
B01J 8/06 20060101AFI20240822BHJP
B01J 8/02 20060101ALI20240822BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240822BHJP
C07C 5/32 20060101ALN20240822BHJP
C07C 15/02 20060101ALN20240822BHJP
【FI】
B01J8/06
B01J8/02 C
C07B61/00 300
C07C5/32
C07C15/02
(21)【出願番号】P 2019546790
(86)(22)【出願日】2018-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2018051966
(87)【国際公開番号】W WO2018158014
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2021-01-21
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-24
(32)【優先日】2017-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(72)【発明者】
【氏名】ノエル ルドヴィク
(72)【発明者】
【氏名】プレ セシル
(72)【発明者】
【氏名】ランベール ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス エリック
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】原 賢一
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-28556(JP,A)
【文献】特開平4-141227(JP,A)
【文献】特開2001-17853(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0269461(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J8/00-8/46
C01B3/38
C07C5/32,15/02
C07B61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状形態の炭化水素供給原料のラジアルフロー式触媒反応器(10)であって、前記反応器(10)は:
- 処理すべき前記供給原料を導入するための少なくとも1つの導入手段と;
- 触媒反応で生じた流出物を排出するための少なくとも1つの排出手段と;
- 垂直軸(AX)に沿って延在する
複数の触媒モジュール(15)の形態をなし、実質上円筒状のアウターシェル(14)に取り囲まれた反応帯域(13)であって、前記触媒モジュール(15)は:
○ 少なくとも1個の触媒床(16)と;
○ 処理すべき供給原料及び触媒反応で生じた流出物のそれぞれに対し透過性である、少なくとも1つの外壁(21)と少なくとも1つの内壁(22)と;
○ 処理すべき供給原料に対し不透過性である、少なくとも1つの第1側壁(23)と少なくとも1つの第2側壁(24)と;
を有する、反応帯域(13)と;
- 前記触媒モジュール(15)を支持するための少なくとも1つの支持手段(25)と;
- 垂直軸(AX)に沿って延在し、前記触媒モジュール(15)の前記外壁(21)又は前記内壁(22)と連通する、触媒反応で生じた流出物を収集するための少なくとも1つの収集手段(29)と;
- 反応帯域(13)の外側に、前記触媒モジュール(15)と同一レベルで位置する環状帯域(30)と;を備え、
複数の触媒モジュール(15)は、構造的に互いに独立し、前記反応器は、少なくとも1つの空間(27)を備え、空間(27)は、反応帯域(13)の外側で、第1触媒モジュール(15)の第1側壁(23)と、第1触媒モジュール(15)の隣の第2触媒モジュール(15)の第2側壁(24)との間に位置して、前記環状帯域(30)に開口しており、
前記空間(27)は、少なくとも1つの
金属プレート(26)を備え、
前記金属プレート(26)はガス状形態の炭化水素供給原料に対し不透過性であり、垂直軸(AX)に沿って延在し且つ収集手段(29)に隣接して位置
し、
- 触媒反応器は、2~35個の触媒モジュール(15)を備え、
- 反応帯域(13)の外側で測定され、第1触媒モジュール(15)の第1側壁(23)の内側止め部(32)と、前記第1触媒モジュール(15)の隣の触媒モジュール(15)の第2側壁(24)の内側止め部(33)との間で規定される、空間(27)を形成する最短距離「d
min
」が、少なくとも30cmであることを特徴とする、触媒反応器(10)。
【請求項2】
前記触媒モジュール(15)は、実質上、円筒の扇形部分として構造化されて構成されることを特徴とする、請求項1に記載の触媒反応器。
【請求項3】
前記触媒モジュール(15)は、横断面が矩形であることを特徴とする、請求項1に記載の触媒反応器。
【請求項4】
前記触媒モジュール(15)の前記外壁(21)及び前記内壁(22)は、ジョンソン型スクリーンからなることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1つに記載の触媒反応器。
【請求項5】
前記触媒モジュール(15)の触媒床(16)の厚さは、500mm以下であることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか1つに記載の触媒反応器。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1つに記載の触媒反応器であって、前記触媒モジュール(15)は、更に:
- 前記触媒モジュールの上部(18)に位置する、少なくとも1つの触媒入口手段(17)と;
- 前記触媒モジュールの下部(20)に位置する、少なくとも1つの触媒出口手段(19)と、
を備えることを特徴とする、触媒反応器。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1つに記載の触媒反応器を使用する、炭化水素供給原料の接触改質方法であって、該方法において:
- ガス状形態の炭化水素供給原料は、触媒反応器内に含まれる触媒床へと連続的に送られ;
- 触媒床をラジアル方向に通過する炭化水素供給原料は、触媒と接触させられて、ガス状流出物を生じさせ;
- 前記流出物は、収集ダクトを通過した後、抜き出される、
接触改質方法。
【請求項8】
処理すべき炭化水素供給原料の流量の、触媒の質量に対する比は、20h
-1以上であることを特徴とする、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、400~600℃の温度、0.1~4MPaの圧力で、水素/処理すべき供給原料の炭化水素のモル
比0.1~10で実施されることを特徴とする、請求項
7又は
8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理すべき炭化水素供給原料のラジアルフロー式反応器の分野に関する。本発明は、より具体的には、ガソリンの接触改質に適用される。本発明により、微量の触媒を使用すること、及びそれ故に、低い値の残留時間を制御することが可能となる。
【背景技術】
【0002】
処理すべき炭化水素供給原料のラジアル方向流通式触媒床反応器は、精製の分野で知られている。特に、そのような反応器は、接触改質反応を実施するために用いられ、該接触改質反応は、C7~C10パラフィン化合物及びC7~C10ナフテン化合物を転化して、芳香族化合物を得ること及び、それに伴い水素を生成することを目標とする。接触転化は一般的に、500℃程度の高温、0.1~4.0MPaの中程度の圧力で、特定の改質触媒の存在下に実施されて、燃料ベースとして使用され得る芳香族化合物を豊富に含む高オクタン価のリフォメートを生成するようになされる。
【0003】
ラジアル方向移動床の技術に関連した制約が、複数存在する。特に、触媒床を通過する際の、処理すべき炭化水素供給原料の速さが制限され、これにより、床の入口でのキャビテーションを防止し(床が移動床である場合)、床の出口でのインナースクリーンに対する触媒のピニング(pinning)を防止し、且つ、圧力降下を低減させる(速さ及び床の厚さによる)。実際、供給原料の流量が過剰に多いと、中央コレクタに対して触媒の「ピニング」現象が起きることとなる。触媒床の外周から反応器の中央に向かってラジアル方向に流れる供給原料によってかけられる力によって、触媒粒が、中央コレクタの壁に押し付けられて、これにより摩擦応力が増大し、この摩擦応力が、壁に沿った触媒粒の滑りに抗することになる。供給原料の流れが十分に多い場合、その結果得られる摩擦力は、触媒床の重量を支持するのに十分であるため、触媒粒の重力による流れが、中央コレクタの壁に隣接する少なくとも一部の領域において止まる。これらの領域において、触媒粒は、供給原料の流れによって「ピン止め」されて、中央コレクタの壁に対して不動の状態で保持される。このような触媒粒の固定化現象は、炭化水素供給原料の接触改質反応において大いに回避されるべきである。なぜならこの現象により、例えばコーキングによる触媒の失活反応が促進されて、これにより反応器の連続操作が妨げられることとなるからである。実際、触媒の集塊が管に沿って厚くなりすぎた場合は、処理すべき供給原料の流れを低減させるか、或いは更には装置(unit)を完全にシャットダウンして、前記管の詰まりを取り除く必要がある。
【0004】
特許文献1には、供給原料の流れと、触媒の重力による流れとを用いる触媒反応器が開示されている。この触媒反応器は反応帯域を備える。反応帯域は、互いに並列させられて、円形状の反応帯域内に規則的に分散させられた複数の触媒モジュールを備える。上記の、ラジアル方向床の技術に関連する制約、すなわち、床の入口におけるキャビテーションの防止、床の出口における触媒の、インナースクリーンに対するピニングの防止、及び圧力降下の低減、並びに、このような反応器の構造上の制約(インナースクリーンとアウタースクリーンとの間に十分な空間を設ける必要がある)のために、触媒の体積を最小限にすることが強いられている。従って、このタイプの反応器は、高いPPH値を得るには最適ではない。なぜなら、反応帯域の横断面全体に触媒床を備えていることを考慮すると、PPH値が高いと、中央コレクタに対して触媒のピニング現象が起きることとなるからである。このタイプの反応器の最大PPH値は、20h-1程度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、新たなタイプの触媒反応器を提案することである。そのような反応器の設計により、高いPPH値で作動することが可能となる。本出願人は、薄い触媒床を備える、少なくとも1個の触媒モジュールを含む反応帯域を有する触媒反応器を開発した。これにより、圧力降下を制御することが可能となり、且つそれ故に、PPH値(すなわち、処理すべき供給原料の流量の、触媒の質量に対する比)を、40h-1超、或いは更には50h-1超へと高めることが可能となる。上記数値は、従来のラジアル方向床反応器が取り得るPPH値の範囲(20~35h-1)よりも著しく高い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の主題は、炭化水素供給原料のラジアルフロー式触媒反応器に関し、前記触媒反応器は:
― 処理すべき前記供給原料を導入するための少なくとも1つの導入手段と;
― 触媒反応で生じた流出物を排出するための少なくとも1つの排出手段と;
― 垂直軸(AX)に沿って延在する少なくとも1個の触媒モジュールの形態をなし、実質上円筒状のアウターシェルに取り囲まれた反応帯域であって、前記触媒モジュールは:
○ 少なくとも1個の触媒床と;
○ 処理すべき供給原料及び触媒反応で生じた流出物のそれぞれに対し透過性である、少なくとも1つの外壁と1つの内壁と;
○ 処理すべき供給原料に対し不透過性である、少なくとも1つの第1側壁と1つの第2側壁と;
を有する、反応帯域と;
― 前記触媒モジュールを支持するための少なくとも1つの支持手段と;
― 垂直軸(AX)に沿って延在し、前記触媒モジュールの前記外壁又は前記内壁と連通する、触媒反応で生じた流出物を収集するための少なくとも1つの収集手段と;
― 反応帯域の外側に、前記触媒モジュールと同一レベルで位置する環状帯域と;を備え、
前記触媒反応器は:
― 前記触媒反応器が単一の触媒モジュールを備える場合、前記触媒反応器は、空間を備え、空間は、反応帯域の外側(反応帯域基準)で、前記触媒モジュールの第1側壁及び第2側壁の間に位置して、前記環状帯域に開口しており、
― 前記触媒反応器が複数の触媒モジュールを備える場合、前記触媒反応器は、少なくとも1つの空間を備え、空間は、反応帯域の外側(反応帯域基準)で、第1触媒モジュールの第1側壁と、第1触媒モジュールの隣の第2触媒モジュールの第2側壁との間に位置して、前記環状帯域に開口しており、
前記空間は、少なくとも1つの固形ネットを備え、固形ネットは、垂直軸(AX)に沿って延在し且つ収集手段に隣接して位置することを特徴とする。
【0008】
本発明による一実施形態では、前記触媒モジュールは、実質上、円筒の扇形部分として構造化されて構成される。
【0009】
本発明による別の実施形態では、前記触媒モジュールは、横断面が矩形である。
【0010】
有利には、前記触媒モジュールの前記外壁及び内壁は、ジョンソン型スクリーンからなる。
【0011】
本発明による一実施形態では、前記触媒反応器は、複数の触媒モジュールを備え、複数の触媒モジュールは、構造的に互いに独立している。
【0012】
本発明による別の実施形態では、前記触媒反応器は、単一の触媒モジュールを備える。
【0013】
この実施形態では、反応帯域の外側で測定され、触媒モジュールの第1側壁の内側止め部(inner stop)と、触媒モジュールの第2側壁の内側止め部との間で規定され、空間を形成する最短距離「dmin」が、少なくとも30cmである。
本発明による一実施形態では、前記触媒反応器は、2~35個の触媒モジュールを備える。
【0014】
この実施形態では、反応帯域の外側で測定され、第1触媒モジュールの第1側壁の内側止め部と、前記第1触媒モジュールの隣の触媒モジュールの第2側壁の内側止め部との間で規定され、空間を形成する最短距離「dmin」が、少なくとも30cmである。
【0015】
有利には、前記触媒モジュールの触媒床の厚さは、500mm以下である。
【0016】
有利には、前記固形ネットは金属プレートの形態である。
【0017】
本発明による一実施形態では、前記触媒モジュールは、更に:
― 前記触媒モジュールの上部に位置する、少なくとも1つの触媒入口手段と;
― 前記触媒モジュールの下部に位置する、少なくとも1つの触媒出口手段と;
を備える。
【0018】
本発明による別の主題は、本発明による触媒反応器を使用する、炭化水素供給原料の接触改質方法に関し、該方法において:
― ガス状形態の炭化水素供給原料は、触媒反応器内に含まれる触媒床へと連続的に送られ;
― 触媒床をラジアル方向に通過する炭化水素供給原料は、触媒と接触させられて、ガス状流出物を生じさせ;
― 前記流出物は、収集ダクトを通過した後、抜き出される。
【0019】
好ましくは、処理すべき炭化水素供給原料の流量の、触媒の質量に対する比は、20h-1以上である。
【0020】
有利には、前記方法は、400~600℃の温度、0.1~4MPaの圧力で、水素/処理すべき供給原料の炭化水素のモル比が0.1~10で実施される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の説明を読むことにより明らかになるであろう。以下に記載の詳細な説明は、例として示されるものであり本発明を限定するものではない。詳細な説明には以下の図面が添付される。
【
図1】は、先行技術によるラジアルフロー式反応器の分解斜視図である。
【
図2b】はそれぞれ、本発明によるラジアルフロー式反応器の断面図であり、反応器の主軸に対して直交する平面を示す。これらの図において、触媒モジュールは、横断面が矩形であり(
図2a)、或いは、円筒の扇形部分として実質上構造化されて構成されている(
図2b)。
【
図3】は、本発明の一実施形態によるラジアルフロー式反応器の一部の分解斜視図である。この図において、触媒モジュールは、円筒の扇形部分として実質上構造化されて構成された断面を有する(
図2b)。
【
図4】は、本発明による反応器の触媒モジュールの斜視図であり、
図2bの実施形態に対応している。
【
図5】は、本発明による反応器の断面図であり、反応器の主軸に対して直交する平面を示す。
図5において、反応器は、求心的ラジアル方向の流通を有する。
【
図6】は、本発明による反応器の断面図であり、反応器の主軸に対して直交する平面を示す。
図6において、反応器は、遠心的ラジアル方向の流通を有する。
【0022】
【発明の詳細な説明】
【0023】
定義
本発明の意味合いにおいて、ラジアルフローとは、処理すべき炭化水素供給原料の流れであって、一組の方向のうちいずれかの方向に沿って、触媒床、一般的に移動床を移動する流れであり、該一組の方向とは、チャンバの周囲から中心に向かう半径に相当する方向(求心的ラジアル方向の流通)及び、チャンバの中心から周囲に向かう半径に相当する方向(遠心的ラジアル方向の流通)であることを意味するものとして理解される。
【0024】
反応器
図1を参照する。先行技術によるラジアルフロー式反応器1は、外面上、ガスシリンダーの形態である。ガスシリンダーは、実質上円筒状のアウターシェル2を形成し、アウターシェル2は、対称軸AXに沿って延在する。チャンバ2は、その上部に、処理すべき供給原料を導入するための導入手段3と、その下部に、触媒反応で生じた流出物を排出するための排出手段4とを備える。
図1に示すように、チャンバ2内に配置されているのは、触媒床7である。触媒床7は、垂直状円筒形リングの形状を有する。触媒床7は、その内側が、触媒を保持する所謂「内側」スクリーンによって形成された中央円筒管8によって画定され、その外側が、所謂「外側」スクリーン5によって画定される。「外側」スクリーン5は、「内側」スクリーンと同じタイプのものである。或いは、触媒床7の外側は、長さ方向に延在するシェル状スクリーン部材6のアッセンブリからなる装置によって画定される。これらのシェル状スクリーン要素6は、管を形成し、「スカロップ」(scallops)としても知られている。これらのダクト6は、容器(reservoir)によって保持されて、チャンバの内面にピン止めされており、軸AXと平行である。これにより、実質上円筒状のインナーシェルが形成される。シェル状スクリーン要素6は、その上端部を介して、処理すべき供給原料を導入するための導入手段3と直接連通することで、処理すべき供給原料の流れを受けている。ガス状形態の供給原料の流れは、ダクト6の多孔壁を通って拡散し、反応器1の中心に向かってラジアル方向に集束しながら固体触媒粒子7の床を通過する。供給原料は、このようにして触媒と接触させられて、化学的転換、例えば接触改質反応を経て、これにより反応流出物が生成される。反応流出物は、次いで、軸AXに沿って延在し且つ多孔壁を有する中央円筒管8(すなわち、収集ダクト)によって収集される。ここで、この中央シリンダ8(すなわち、収集ダクト)は、その下端部を介して、反応器の排出手段4と連通している。
【0025】
操作中、導入手段3に導入された、処理すべき供給原料は、「外側」スクリーン5をラジアル方向に通過し、次いで、触媒粒子の床7をラジアル方向に通過する。ここで、供給原料は、触媒と接触させられて、これにより、流出物が生成される。その後、流出物は、中央シリンダ8によって収集されて、排出手段4によって排出される。
【0026】
このような反応器は、環状触媒床7中の、触媒の重力による連続的な流れを用いて作動してもよい。
図1の場合、反応器1は更に、触媒を環状床に導入するための導入手段9aと、触媒を抜き出すための抜出手段9bとを備える。ここで、導入手段9aは、反応器の上部に配置され、抜出手段9bは、反応器の下部に配置されている。
【0027】
本発明による触媒反応器10を
図2~6に示す。この実施形態では、処理すべき炭化水素供給原料のラジアルフロー式触媒反応器10は、少なくとも:
― 処理すべき前記供給原料を導入するための導入手段であって、触媒反応器の上部に位置する管の形態である、導入手段と;
― 垂直軸(AX)に沿って延在する少なくとも1個の触媒モジュール15の形態をなし、実質上円筒状のアウターシェル14に取り囲まれた反応帯域13であって、この中で触媒床16が取り囲まれている、反応帯域13と;
― 反応帯域13の外側に、前記触媒モジュールと同一レベルで位置する環状帯域30と;
― 前記触媒モジュール15を支持するための支持手段25と;
― 垂直軸(AX)に沿って延在し、触媒反応で生じた流出物を収集するための収集手段29と;
― 触媒反応で生じた流出物を排出するための排出手段であって、触媒反応器の下部に位置する管の形態である、排出手段と;
― 反応帯域13の外側に位置して、前記環状帯域30に開口している、少なくとも1つの空間27であって、前記空間27は、垂直軸(AX)に沿って延在し且つ収集手段29に隣接して位置する少なくとも1つの固形ネット26を備える、空間27と;
を備える。
【0028】
本発明による一実施形態では、前記触媒モジュール15は、横断面が矩形である(
図2a参照)。本発明による別の実施形態では、前記触媒モジュール15は、実質上、円筒の扇形部分として構造化されて構成される(
図2b参照)。触媒モジュール15が上記2つの実施形態のうち、いずれのものであっても、触媒モジュール15は、以下によって画定される:
― 外壁21及び内壁22であって、処理すべき供給原料及び触媒反応で生じた流出物のそれぞれに対し透過性である外壁21及び内壁22と;
― 処理すべき供給原料に対し不透過性である、2つの側壁23及び24と;
― 処理すべき供給原料に対し不透過性である、上部18及び下部20。
【0029】
触媒モジュール15の外壁21及び内壁22は、好ましくは、ジョンソン型スクリーンからなる。
【0030】
触媒反応器のこのような配置により、前記触媒モジュール15に含まれる触媒床16の厚さ「e」を著しく低減させることが可能となる。より具体的には、触媒床16の厚さ「e」は、500mm以下、好ましくは400mm以下、より好ましくは300mm以下、さらに一層好ましくは200mmである。前記触媒モジュール15に含まれる触媒床が薄いことによって、圧力降下をより良く制御することが可能となり、且つPPHを、20h-1以上、好ましくは50h-1以上、より好ましくは100h-1以上、更に一層好ましくは200h-1以上の値に高めることが可能となる。
【0031】
しかし、薄い触媒床を有する反応帯域を備えた反応器が存在することによって、触媒モジュール15内の保守及び検査時の操作の実施が可能となるわけではない。このように、反応帯域13と同一レベルに少なくとも1つの空間27が存在することによって、収集手段及び触媒モジュール15の検査及び/又は保守を容易に実施することが可能となっている。
【0032】
本発明による反応器が単一の触媒モジュールを備える場合(図示されていない実施形態)、前記反応器は、空間27を備える。空間27は、反応帯域13の外側で、前記触媒モジュール15の第1側壁23及び第2側壁24の間に位置して、前記環状帯域30に開口している。この実施形態では、触媒モジュール15の第1側壁23の内側止め部32と、触媒モジュールの第2側壁24の内側止め部33との間で規定され、空間27を形成する最短距離「dmin」は、少なくとも30cm、好ましくは少なくとも50cmである。
【0033】
空間27は更に、少なくとも1つの固形ネット26を備える。固形ネット26は、垂直軸(AX)に沿って延在し且つ収集ダクト29に隣接して位置する。本発明の文脈では、処理すべき炭化水素供給原料は、ガス状流体の形態であり、前記固形ネット26は、炭化水素供給原料に対し不透過性の要素である。例えば、固形ネット26は、収集ダクト29の外側部分に固定された金属プレートの形態であり、そのため前記固形ネット26は、炭化水素供給原料が収集ダクト29を通過することを防止する。本発明の文脈では、前記固形ネット26の高さは、実質上、前記触媒モジュール15の高さに等しい。固定ネット26は、取り外し可能であってもよく、そのようにすることで、反応器内の保守操作を容易にすることが可能となる。
【0034】
本発明による、ある特定の実施形態では、触媒モジュール15の側壁23、固形ネット26、及び触媒モジュール15の側壁24が、単一の構成要素を形成する。単一の構成要素とすることで、反応帯域13のシール性が向上する。
【0035】
本発明による、ある特定の実施形態では、
図2a及び
図2bに示されるように、触媒反応器10の反応帯域13は、複数の触媒モジュール15を備え、複数の触媒モジュール15は、構造的に互いに独立している。反応帯域13は、1~35個の触媒モジュール15、好ましくは2~20個の触媒モジュール15を備えてよい。幾つかの触媒モジュール15が存在することにより、故障の際、触媒モジュール15の1つを遮断して、他の触媒モジュールでシステムの操作を続行させることを想定することが可能となる。好ましくは、各触媒モジュールは、互いに同一の構造及び形状を有する(横断面が矩形であるか、或いは、円筒の扇形部分として構造化されて構成されるか、のいずれかである)。
【0036】
本発明による装置が複数の触媒モジュール15を備える場合、前記反応器は、少なくとも1つの空間27を備える。空間27は、反応帯域13の外側で、第1触媒モジュール15の第1側壁23と、第1触媒モジュール15の隣の第2触媒モジュール15の第2側壁24との間に位置して、前記環状帯域30に開口している。この実施形態では、第1触媒モジュール15の第1側壁23の内側止め部32と、第1触媒モジュールの隣の第2触媒モジュール15の第2側壁24の内側止め部33との間で規定され、空間27を形成する最短距離「d
min」(
図2a又は
図2bに示されている)は、少なくとも30cm、好ましくは少なくとも50cmである。
【0037】
前述の実施形態と同様に、空間27は、少なくとも1つの固形ネット26を備え、固形ネット26は、垂直軸(AX)に沿って延在し且つ収集ダクト29に隣接して位置している。固形ネット26の技術的特徴は、前述の固形ネットの技術的特徴と同一である。
【0038】
触媒は、固定触媒床反応器であってもよく、或いは移動触媒床反応器、すなわち、触媒が連続的に反応器へと導入されて反応器から抜き出されるものであってもよいことに注目すべきである。反応器が移動触媒床反応器である特定の実施形態において、触媒は、触媒モジュールの上部18に位置する入口管17を介して触媒モジュール15に導入されてよい。触媒は、触媒モジュールの下部に位置する出口管19を介して触媒モジュール15から排出されてよい。
【0039】
このように、本発明による触媒反応器によって、少量の触媒を備え、現実的で調整可能且つ容易な保守が出来るような機械的設計を提供すると同時に、接触改質方法において反応性能を最適化するために高いPPH値をもたらすという目的を達成することが可能となる。
方法
本発明による反応器は、ラジアルフローのガス状流体との反応において用いられてよい。このような反応には、例えば、炭化水素供給原料の接触改質のための反応、オレフィンの骨格異性化、プロピレン生成のためのメタセシス(metathesis)、オリゴ分解(oligocracking)反応等が含まれる。
【0040】
より具体的には、本発明はまた、本発明による反応器を用いた炭化水素供給原料の接触改質方法に関する。本発明による反応器は実際、ガソリンの改質方法及び芳香族化合物の製造方法において用いられてよい。このような改質方法によって、原油の蒸留及び/又は他の精製方法に由来するガソリンフラクションのオクタン価を高めることが可能となる。他の精製方法には、例えば、接触分解又は熱分解等が含まれる。芳香族化合物の製造方法により、石油化学産業において用いられ得るベース製品(ベンゼン、トルエン、キシレン)が提供される。これらの方法は、更なる利点をもたらす。すなわち、該方法は、精製所で行われる水素化処理方法又は水素化転化方法に必須である大量の水素の製造に寄与する。
【0041】
処理すべき供給原料は、一般的に、分子当たり5~12個の炭素原子を含有する、パラフィン炭化水素、ナフテン炭化水素、及び芳香族炭化水素を含む。これらの供給原料は、とりわけ、その密度及び重量組成によって規定される。これらの供給原料は、40~70℃の初留点、及び160~220℃の終点を有してよい。これらの供給原料は、初留点及び終点が40~220℃であるガソリンフラクション又はガソリンフラクションの混合物によって構成されてもよい。処理すべき供給原料は、従って、160~200℃の沸点を有する重質ナフサによって構成されてもよい。
【0042】
典型的に、供給原料は、水素の存在下、反応器内に導入され、水素/供給原料の炭化水素のモル比は、通常0.1~10の範囲、好ましくは1~8の範囲である。改質の操作条件は、一般的に以下の通りである:好ましくは400~600℃、より好ましくは450~540℃の温度;好ましくは0.1~4MPa、より好ましくは0.25~3.0MPaの圧力。生成した水素の全て又は一部が、改質反応器の入口に再循環させられてよい。処理すべき炭化水素供給原料の流量の、触媒の質量に対する比は、20h-1以上、好ましくは50h-1以上、より好ましくは100h-1以上、更に一層好ましくは200h-1以上である。
【0043】
第1実施形態の反応器を、
図5に示す。反応器は、求心的ラジアル方向の流通を有する(すなわち、ガス流が、チャンバの周囲からチャンバの中心に向かって流れる)。操作中、ガス状形態の炭化水素供給原料は、反応器の底部又は頂部のいずれかを通って環状帯域30に注入され、次いで前記少なくとも1個の触媒モジュール15の外壁21を通過し、その後、前記触媒モジュール15内に位置する触媒粒子の床を実質上ラジアル方向に通過する。触媒モジュール15内で、ガス状流体が触媒と接触させられて、通常はガス状の反応流出物が生じる。反応流出物は、収集ダクト29のスペース内に収集されて、次いで(供給原料が反応器の底部で導入される場合)反応器の頂部、或いは(供給原料が反応器の頂部を通って導入される場合)反応器の底部のいずれかで抜き出される。
【0044】
本発明による別の実施形態の反応器(
図6に示されている)は、遠心的ラジアル方向の流通(すなわち、ガス流が、チャンバの中心からチャンバの周囲に向かって流れる)を有する反応器である。操作中、ガス状形態の炭化水素供給原料は、触媒モジュール15の内壁22を介して、反応器の頂部又は底部のいずれかを通って導入される。供給原料は、内壁22を通って拡散し、触媒モジュール15内の触媒床を実質上ラジアル方向に通過する。反応流出物が、収集ダクトとして機能する環状帯域30内に収集されて、次いで(供給原料が反応器の底部で導入される場合)反応器の頂部、又は(供給原料が反応器の頂部で導入される場合)反応器の底部のいずれかで抜き出される。