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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】ズームレンズ及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 15/20 20060101AFI20240822BHJP
   G02B 13/18 20060101ALN20240822BHJP
【FI】
G02B15/20
G02B13/18
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020034806
(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2021139931
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】山中 久幸
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-196238(JP,A)
【文献】特開2016-014841(JP,A)
【文献】特開2006-113565(JP,A)
【文献】特開平05-027172(JP,A)
【文献】特開2012-063662(JP,A)
【文献】特開2011-059597(JP,A)
【文献】特開2016-075742(JP,A)
【文献】特開2017-187639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、全体で負の屈折力を有する前群Fと、正の屈折力を有する中間群Mと、正又は負の屈折力を有する後群Rとから構成され、
前記前群Fは1つ以上のレンズ群を有し、前記中間群Mは物体側から順に正の屈折力を有する物体側部分群Aと、正の屈折力を有する像側部分群Bとから構成され、前記後群Rは1つのレンズ群から構成され、
変倍時に、隣り合う各レンズ群及び部分群の間隔が変化し、
広角端において前記前群Fと前記中間群Mとの間の空気間隔は最大となり、広角端から望遠端への変倍時、前記前群Fと前記中間群Mとの間隔は小さくなり、前記物体側部分群Aと前記像側部分群Bとの間隔は変化し、前記中間群Mと前記後群Rとの間隔は広くなるように隣り合うレンズ群の間隔が変化し、
無限遠から近距離への合焦時、少なくとも前記像側部分群Bが光軸上を物体側へ移動し、以下の条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
0.5 ≦ fb/ft ≦ 1.8 ・・・・・(1)
0.3 ≦ BF/Y ≦ 1.2 ・・・・・(3)
-3.0 ≦ Rbr/Y ≦ -0.9 ・・・・・(7)
1.2 ≦ Hm/Hs ≦ 2.0 ・・・・・(9)
但し、
fb:前記像側部分群Bの焦点距離
ft:前記前群Fと前記中間群Mとの光軸上の間隔が最小となる状態における当該ズームレンズの焦点距離
BF:広角端における当該ズームレンズのバックフォーカス
Y :当該ズームレンズの最大像高
Rbr:前記像側部分群Bの最も像側に配置されるレンズ面の曲率半径
Hm:望遠端において無限遠合焦時の、前記中間群Mの最も物体側に配置されるレンズ面を通る軸上マージナル光線の光軸からの高さ
Hs:望遠端において無限遠合焦時の、開口絞りを通る軸上マージナル光線の光軸からの高さ
【請求項2】
物体側から順に、全体で負の屈折力を有する前群Fと、正の屈折力を有する中間群Mと、正又は負の屈折力を有する後群Rとから構成され、
前記前群Fは1つ以上のレンズ群を有し、前記中間群Mは物体側から順に正の屈折力を有する物体側部分群Aと、正の屈折力を有する像側部分群Bとから構成され、前記後群Rは1つのレンズ群から構成され、
変倍時に、隣り合う各レンズ群及び部分群の間隔が変化し、
広角端において前記前群Fと前記中間群Mとの間の空気間隔は最大となり、広角端から望遠端への変倍時、前記前群Fと前記中間群Mとの間隔は小さくなり、前記物体側部分群Aと前記像側部分群Bとの間隔は変化し、前記中間群Mと前記後群Rとの間隔は広くなるように隣り合うレンズ群の間隔が変化し、
無限遠から近距離への合焦時、少なくとも前記像側部分群Bが光軸上を物体側へ移動し、以下の条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
0.5 ≦ fb/ft ≦ 1.8 ・・・・・(1)
1.7 ≦ Raf / Y ≦ 8.0 ・・・・・(5)
0.7 ≦ Rar/Y ≦ 1.8 ・・・・・(6)
1.2 ≦ Hm/Hs ≦ 2.0 ・・・・・(9)
但し、
fb:前記像側部分群Bの焦点距離
ft:前記前群Fと前記中間群Mとの光軸上の間隔が最小となる状態における当該ズームレンズの焦点距離
Raf:前記物体側部分群Aの最も物体側に配置されるレンズ面の曲率半径
Y :当該ズームレンズの最大像高
Rar:前記物体側部分群Aの最も像側に配置されるレンズ面の曲率半径
Hm:望遠端において無限遠合焦時の、前記中間群Mの最も物体側に配置されるレンズ面を通る軸上マージナル光線の光軸からの高さ
Hs:望遠端において無限遠合焦時の、開口絞りを通る軸上マージナル光線の光軸からの高さ
【請求項3】
物体側から順に、全体で負の屈折力を有する前群Fと、正の屈折力を有する中間群Mと、正又は負の屈折力を有する後群Rとから構成され、
前記前群Fは1つ以上のレンズ群を有し、前記中間群Mは物体側から順に正の屈折力を有する物体側部分群Aと、正の屈折力を有する像側部分群Bとから構成され、前記後群Rは1つのレンズ群から構成され、
変倍時に、隣り合う各レンズ群及び部分群の間隔が変化し、
広角端において前記前群Fと前記中間群Mとの間の空気間隔は最大となり、広角端から望遠端への変倍時、前記前群Fと前記中間群Mとの間隔は小さくなり、前記物体側部分群Aと前記像側部分群Bとの間隔は変化し、前記中間群Mと前記後群Rとの間隔は広くなるように隣り合うレンズ群の間隔が変化し、
無限遠から近距離への合焦時、前記物体側部分群Aと前記像側部分群Bが異なる軌跡で光軸上を物体側へ移動し、以下の条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
0.5 ≦ fb/ft ≦ 1.8 ・・・・・(1)
0.65 ≦ fa/fb ≦ 2.2 ・・・・・(2)
但し、
fb:前記像側部分群Bの焦点距離
ft:前記前群Fと前記中間群Mとの光軸上の間隔が最小となる状態における当該ズームレンズの焦点距離
fa:前記物体側部分群Aの焦点距離
【請求項4】
物体側から順に、全体で負の屈折力を有する前群Fと、正の屈折力を有する中間群Mと、正又は負の屈折力を有する後群Rとから構成され、
前記前群Fは1つ以上のレンズ群を有し、前記中間群Mは物体側から順に正の屈折力を有する物体側部分群Aと、正の屈折力を有する像側部分群Bとから構成され、前記後群Rは1つのレンズ群から構成され、
変倍時に、隣り合う各レンズ群及び部分群の間隔が変化し、
広角端において前記前群Fと前記中間群Mとの間の空気間隔は最大となり、広角端から望遠端への変倍時、前記前群Fと前記中間群Mとの間隔は小さくなり、前記物体側部分群Aと前記像側部分群Bとの間隔は変化し、前記中間群Mと前記後群Rとの間隔は広くなるように隣り合うレンズ群の間隔が変化し、
広角端から望遠端への変倍に際して、前記物体側部分群Aと前記像側部分群Bの間隔が広がるようそれぞれが物体側へ移動し、
前記像側部分群Bは少なくとも2枚の負レンズと、少なくとも2枚の正レンズとを有し、少なくとも1枚の正レンズが以下の条件式を満足し、
72 ≦ νd ・・・・・(8)
無限遠から近距離への合焦時、少なくとも前記像側部分群Bが光軸上を物体側へ移動し、以下の条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
0.5 ≦ fb/ft ≦ 1.8 ・・・・・(1)
但し、
νd:前記像側部分群Bに含まれる正レンズのd線に対するアッベ数
fb:前記像側部分群Bの焦点距離
ft:前記前群Fと前記中間群Mとの光軸上の間隔が最小となる状態における当該ズームレンズの焦点距離
【請求項5】
前記後群Rは、変倍時及び合焦時のいずれにおいても像面に対して固定である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項6】
広角端から望遠端への変倍時、前記物体側部分群Aと前記像側部分群Bの間隔が広がるようそれぞれが光軸上を物体側へ移動する請求項1から請求項のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項7】
前記像側部分群Bは、その最も物体側に配置されるレンズと、その最も像側に配置されるレンズとの間に、開口絞りを有する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項8】
前記中間群Mにおいて最も物体側に配置されるレンズは正レンズである請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項9】
以下の条件式を満足する請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のズームレンズ。
-4.0 ≦ ff/fm ≦ -0.7 ・・・・・(4)
但し、
ff:広角端における前記前群Fの焦点距離
fm:広角端における前記中間群Mの焦点距離
【請求項10】
前記前群Fは少なくとも1つの負レンズ群を有し、広角端から望遠端への変倍時、前記負レンズ群は像側に移動する請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のズームレンズと、当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子と、を備えたことを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、ズームレンズ及び撮像装置に関し、特に、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等の固体撮像素子(CCDやCMOS等)を用いた撮像装置に好適なズームレンズ及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一眼レフレックスカメラやミラーレス一眼カメラ等のレンズ交換式の撮像装置のズームレンズとして、Fナンバーがズーム全域で2.8程度の明るさを有した大口径比のズームレンズがよく知られている。近年、ミラーレス一眼カメラ等の小型の撮像装置においても、35mm判フルサイズ(以下、フルサイズと称する。)等のサイズの大きな撮像素子を搭載することが行われている。このような大きな撮像素子を搭載した撮像装置についても、Fナンバーのより小さいズームレンズが求められている。
【0003】
しかしながら、監視カメラ等の比較的小さな撮像素子を有する撮像装置では、ズーム全域でFナンバーが2.0よりも小さい明るいズームレンズも用いられているものの、フルサイズ等のサイズの大きい撮像素子を用いたレンズ交換式撮像装置用のズームレンズではズーム全域でFナンバーが2.0よりも小さいものはあまり実現されていない。
【0004】
ところで、ズームレンズの構成として、ポジティブリード型のものと、ネガティブリード型のものが知られている。ポジティブリード型のズームレンズでは、最も物体側に正の屈折力の第1レンズ群を配置し、その像側に強い負の屈折力の第2レンズ群を配置して、第2レンズ群に大きな変倍作用を持たせることが一般的である。ポジティブリード型のズームレンズでは、このようにテレフォト型の屈折力配置とすることが容易であり、高変倍比を実現しやすく、焦点距離に比して光学全長を短くすることができる。
【0005】
一方、ネガティブリード型のズームレンズでは、最も物体側に負の屈折力の第1レンズ群を配置し、その像側に正の屈折力の第2レンズ群を配置して、第2レンズ群により変倍作用を持たせることが行われている。ネガティブリード型のズームレンズは、ポジティブリード型のズームレンズに比べて大きな変倍比を得ることは困難であるものの、広角ズーム等と称される画角の広いズームレンズを得るのに適した構成として知られている。ネガティブリード型のズームレンズとして、例えば特許文献1-特許文献3に開示のものがある。
【0006】
上記いずれのタイプのズームレンズにおいても、Fナンバーの小さい大口径比のズームレンズを実現しようとすると、レンズ径や絞り径が大きくなったり、光学全長が長くなる他、これらに伴う各機構部品やアクチュエータも大型化し、ズームレンズシステム全体が大型化するという問題が生じる。
【0007】
特に、大口径化を図ろうとすれば、像側に強い正の屈折力を有するレンズ群を配置する、いわゆるレトロフォーカス型の屈折力配置が採用される場合が多くなる。その場合、絞り径が大きくなりやすく、それを抑制するには、各レンズ群に対するパワー配置や、各レンズ群のレンズ構成、開口絞り位置などを適切に設定することが重要となる。さらに、大口径化を図ったときに、レンズの敏感度が増大し、それに伴い製造難易度が飛躍的に高くなる。そのため、変倍時に移動させるレンズ群の数を可能限り少なくして、簡素な変倍機構とすることが求められる。
【0008】
これらの観点から従来のズームレンズについてみる。上記特許文献1に記載のズームレンズは物体側から順に、負・正・正・負の屈折力配置を採用し、望遠端における第3レンズ群の横倍率を適切に規定することで、変倍時の収差変動を低減し、物体距離全般にわたり高い光学性能を実現している。しかしながら、当該ズームレンズのFナンバーは望遠端で5.8程度であり、フォーカス群である第3レンズ群に配置される屈折力が強い。そのため、当該ズームレンズの更なる大口径化を図ると、物体距離の変動に伴う収差変動が大きくなり、これらを良好に補正することが困難になる。
【0009】
特許文献2に記載のズームレンズは、物体側から順に、負・正・正・正の屈折力配置を採用し、広角端では広い画角を実現しつつ、Fナンバーも2.0未満を実現している。しかしながら、当該ズームレンズの望遠端のFナンバーは3程度であり、大口径化が十分とはいえない。また、第3レンズ群に配置される屈折力が弱いため、光学全長の小型化が十分ではない。
【0010】
特許文献3に記載のズームレンズは、物体側から順に、負・正・正・正の屈折力配置を採用している。また、開口絞りを第2レンズ群内または第2レンズ群の近傍に配置し、広角端から望遠端への変倍時に第1レンズ群と第2レンズ群の間隔が狭まり、第2レンズ群と第3レンズ群の間隔が狭まるように各レンズ群を移動させている。しかしながら、第2レンズ群に配置される屈折力は弱く、且つ、変倍時に固定されているため、光学全長の小型化が十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2016-75742号公報
【文献】特開2017-187639号公報
【文献】特開2017-116679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本件発明は大口径でありながら、全体的に小型で、簡素な変倍機構を採用することができ、且つ、高い光学性能を有するズームレンズ及び撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本件発明に係るズームレンズは、物体側から順に、全体で負の屈折力を有する前群Fと、正の屈折力を有する中間群Mと、正又は負の屈折力を有する後群Rとから構成され、前記前群Fは1つ以上のレンズ群を有し、前記中間群Mは物体側から順に正の屈折力を有する物体側部分群Aと、正の屈折力を有する像側部分群Bとから構成され、前記後群Rは1つのレンズ群から構成され、広角端において前記前群Fと前記中間群Mとの間の空気間隔は最大となり、広角端から望遠端への変倍時、前記前群Fと前記中間群Mとの間隔は小さくなり、前記中間群Mと前記後群Rとの間隔は広くなるように各レンズ群の間隔が変化し、無限遠から近距離への合焦時、前記像側部分群Bが光軸上を物体側へ移動し、以下の条件式を満足することを特徴とする。
0.5 ≦ fb/ft ≦ 1.8 ・・・・・(1)
但し、
fb:前記像側部分群Bの焦点距離
ft:前記前群Fと前記中間群Mとの光軸上の間隔が最小となる状態における当該ズームレンズの焦点距離
【0014】
また、上記課題を解決するために本件発明に係る撮像装置は、上記ズームレンズと、当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換にする撮像素子とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本件発明によれば、大口径でありながら、全体的に小型で、簡素な変倍機構を採用することができ、且つ、高い光学性能を有するズームレンズ及び撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本件発明の実施例1のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図である。
図2】実施例1のズームレンズの広角端における諸収差図である。
図3】実施例1のズームレンズの中間焦点距離状態における諸収差図である。
図4】実施例1のズームレンズの望遠端における諸収差図である。
図5】本件発明の実施例2のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図である。
図6】実施例2のズームレンズの広角端における諸収差図である。
図7】実施例2のズームレンズの中間焦点距離状態における諸収差図である。
図8】実施例2のズームレンズの望遠端における諸収差図である。
図9】本件発明の実施例3のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図である。
図10】実施例3のズームレンズの広角端における諸収差図である。
図11】実施例3のズームレンズの中間焦点距離状態における諸収差図である。
図12】実施例3のズームレンズの望遠端における諸収差図である。
図13】本件発明の実施例4のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図である。
図14】実施例4のズームレンズの広角端における諸収差図である。
図15】実施例4のズームレンズの中間焦点距離状態における諸収差図である。
図16】実施例4のズームレンズの望遠端における諸収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本件発明に係るズームレンズ及び撮像装置の実施の形態を説明する。但し、以下に説明するズームレンズ及び撮像装置は本件発明に係るズームレンズ及び撮像装置の一態様であって、本件発明に係るズームレンズ及び撮像装置は以下の態様に限定されるものではない。
【0018】
1.ズームレンズ
1-1.光学構成
当該ズームレンズは物体側から順に、全体で負の屈折力を有する前群Fと、正の屈折力を有する中間群Mと、正または負の屈折力を有する後群Rとから構成される。
【0019】
(1)前群F
前群Fは全体で負の屈折力を有し、1つ以上のレンズ群を有する限り、その具体的な群構成は特に限定されるものではない。前群Fが1つのレンズ群から構成される場合、そのレンズ群は負レンズ群であるものとする。前群Fが2つ以上のレンズ群から構成される場合、前群Fには少なくとも1つの負レンズ群を有する限り、他のレンズ群は負の屈折力を有していてもよいし、正の屈折力を有していてもよい。
【0020】
ここで、レンズ群は、変倍の際に光軸に沿って同じ軌跡で同じ移動量だけ移動する1枚又は互いに隣接する複数枚のレンズからなる群をいい、一つのレンズ群が複数枚のレンズから構成される場合、その一つのレンズ群に含まれる各レンズ間の光軸上の距離は変倍の際には変化しないものとする。また、隣接するレンズ群の光軸上の距離は変倍の際に変化するものとする。
【0021】
前群Fを2つ以上のレンズ群から構成すれば、各レンズ群間の光軸上の間隔を変倍時に変化させることができるため、変倍時の各レンズ群の移動可能な位置についての設計自由度が高くなる。その結果、収差変動を抑制することが容易になり、光学性能の高いズームレンズを得ることができる。また、前群Fにおいて最も物体側に配置されるレンズ群に正の屈折力を配置した場合は、ポジティブリード型の屈折力配置となり、高変倍比化や絞り径の小型化、及び光学全長の小型化が容易な構成となる。また、前群Fの最も物体側に配置されるレンズ群に負の屈折力を配置した場合は、ネガティブリード型の屈折力配置となり画角の広いズームレンズを得るのに容易な構成となる。
【0022】
(2)中間群M
中間群Mは物体側から順に、正の屈折力を有する物体側部分群Aと正の屈折力を有する像側部分群Bとから構成されており、全体で正の屈折力を有する。物体側部分群A及び像側部分群Bはそれぞれ1つのレンズ群として構成されている。広角端から望遠端への変倍に際して、物体側部分群Aと像側部分群Bの間隔が変化する。このとき、物体側部分群Aと像側部分群Bの間隔が広がるようにそれぞれが物体側に移動することが好ましい。このように各群を移動させることで、無限遠から近距離への合焦時、像側部分群Bが光軸上を物体側へ移動する。このように中間群Mを2つのレンズ群から構成し、像側部分群Bをフォーカス群とすることでフォーカス群の軽量化が容易となる。
【0023】
物体側部分群Aの具体的なレンズ構成は特に限定されるものではないが、最も物体側に配置されるレンズは正レンズであることが好ましい。このようなレンズ配置とすることで、後述するように、像側部分群B内に開口絞りを配置したとき、絞り径の小型化を図ることがより容易になる。
【0024】
像側部分群Bの具体的なレンズ構成についても特に限定されるものではないが、像側部分群Bは少なくとも2枚のレンズを備え、最も物体側に配置されるレンズと、最も像側に配置されるレンズとの間に開口絞りを備えることが好ましい。このような構成とすることで、Fナンバーが1.4程度と大口径比で明るいズームレンズを実現しつつ、絞り径の小型化を図り、開口絞りを開閉するための絞り機構の小型化及び軽量化が容易になり、ズームレンズ全体の小型化及び軽量化を図ることができる。
【0025】
また、像側部分群Bは少なくとも2枚の負レンズと、少なくとも2枚の正レンズとから構成されることが好ましい。像側部分群Bをこのような構成とすることで、物体距離全般に亘り、球面収差及び像面湾曲等の収差変動の少ないズームレンズを実現することが容易になる。
【0026】
(3)後群R
後群Rは1つのレンズ群から構成される。すなわち、後群Rを構成する各レンズの光軸上の間隔は変倍の際に変化しないものとする。後群Rの屈折力は正でも負でもよいが、負であることがより好ましい。後群Rを負の屈折力とすることで、中間群Mで発生したアンダー方向の像面湾曲を良好に補正することが容易となる。
【0027】
後群Rの具体的なレンズ構成は特に限定されるものではないが、少なくとも正レンズ1枚と、少なくとも負レンズ1枚とを有することが好ましい。後群Rをこのような構成とすることで、軸外光束に対する像面湾曲を良好に補正することができる。また、後群Rは負の屈折力を有する空気レンズを含むことが好ましい。当該空気レンズは光軸上の間隔を空けて隣接配置される2枚のレンズの互いに対向する2つのレンズ面によって形成されるものをいう。後群Rを負の屈折力を有する空気レンズを含む構成とすることで、中間群Mで発生したアンダー方向の像面湾曲を良好に補正することが容易になる。
【0028】
1-2.動作
(1)変倍
当該ズームレンズは、上記構成を採用し、変倍に際して、前群Fと中間群Mと後群Rの光軸上の間隔を変化させることにより変倍する。その際、前群Fと中間群Mの光軸上の間隔は広角端で最大となり、中間群Mと後群Rの光軸上の間隔は望遠端で最大となるように各レンズ群を移動させる。このように各レンズ群を移動させることで、前群Fのパワーを無理に強くすることがなく、変倍全域で良好な光学性能を得ることが容易となる。
【0029】
前群Fが2つ以上のレンズ群を有する場合は、上述したとおり、変倍時に各レンズ群間の光軸上の間隔が変化する。このとき、前群Fを構成する全てのレンズ群が光軸方向に移動してもよいし、その一部のレンズ群が光軸方向に固定されていてもよい。ただし、前群Fを構成するレンズ群のうち最も負の屈折力が強いレンズ群は、広角端から望遠端への変倍に際して、像側に移動させることが好ましい。このように移動させることで、各レンズ群の変倍負担に無理が生じにくくなり、高変倍比と高性能化の両立を図ることが容易になる。
【0030】
中間群Mは上述したとおり、広角端から望遠端への変倍に際して、物体側部分群Aと像側部分群Bが変化する。このとき、物体側部分群Aと像側部分群Bの間隔が広がるようにそれぞれが光軸上を物体側へ移動することが好ましい。
【0031】
後群Rは変倍時に光軸方向に移動させてもよいが、固定であることがより好ましい。後群Rを固定群とすることで、変倍時に移動させるレンズ群の数が少なくなり変倍機構の簡素化を図ることができる。これと同時に、製造誤差を生じさせにくくすることができる。
【0032】
(2)合焦
当該ズームレンズでは、無限遠から近距離への合焦時、少なくとも像側部分群Bを光軸上物体側へ移動させる。像側部分群Bに開口絞りを配置し、像側部分群Bをフォーカス群とすれば、無限遠から近距離の物体距離全域に亘って、像面湾曲変動の少ないズームレンズを得ることが容易になる。また、当該ズームレンズにおいて、像側部分群Bは他のレンズ群と比較すると小径のレンズにより構成することができるため、像側部分群Bをフォーカス群とすることで、フォーカス群の小型化及び軽量化を図ることができ、迅速なフォーカシングが可能となる。また、無限遠から近距離への合焦に際し、物体側部分群Aと像側部分群Bとを異なる軌道でそれぞれ独立に光軸上を物体側に移動させてもよい。2つのレンズ群によるフローティングフォーカスを行うことで、物体距離全域に亘り、より像面湾曲の変動を抑えたズームレンズを得ることができる。
【0033】
合焦時、前群F及び後群Rは光軸方向に固定することが好ましい。特に後群Rを変倍時及び合焦時共に光軸方向に固定すれば、当該ズームレンズの最も像側に配置されるレンズ群を光軸方向に移動させるための機構が不要になるため、機構の簡素化を図り、製造誤差の少ないズームレンズを実現することがより容易になる。
【0034】
1-3. 条件式
当該ズームレンズは、上述した構成を採用すると共に、次に説明する条件式を少なくとも1つ以上満足することが望ましい。
【0035】
1-3-1.条件式(1)
0.5 ≦ fb/ft ≦ 1.8 ・・・・・(1)
但し、
fb:像側部分群Bの焦点距離
ft:前群Fと中間群Mとの光軸上の間隔が最小となる状態における当該ズームレンズの焦点距離
【0036】
条件式(1)は像側部分群Bの焦点距離を規定するための条件式である。条件式(1)を満足させることで、像側部分群Bの屈折力が適切な範囲内となり、物体距離全域に亘る収差変動の抑制と小型化との両立を図ることが容易になる。
【0037】
これに対して、条件式(1)の値が下限値未満になると、フォーカス群である像側部分群Bの焦点距離が短くなりすぎて、フォーカシングによる球面収差変動、及び像面湾曲変動を良好に補正することが困難となる。一方、条件式(1)の値が上限値を超えると、合焦時におけるフォーカス群の移動量が大きくなるため、当該ズームレンズの光学全長を短くすることが困難になる。
【0038】
上記効果を得る上で、条件式(1)の上限値は1.7であることが好ましく、1.6であることがより好ましく、1.5であることがさらに好ましい。また、条件式(1)の下限値は0.6であることが好ましく、0.7であることがより好ましく、0.8であることがさらに好ましい。なお、これらの好ましい下限値又は上限値を採用する場合、条件式(1)において等号付不等号(≦)を不等号(<)に置換してもよい。他の条件式についても原則として同様である。
【0039】
ここで、当該ズームレンズでは望遠端において前群Fと中間群Mの光軸上の間隔が最小となることが好ましい。すなわち、上記「ft」は望遠端における当該ズームレンズの焦点距離であることが好ましい。また、前群Fと中間群Mの光軸上の間隔が最小となる状態のとき、前群Fと中間群Mとの光軸上の間隔を「D」とし、このときの光学全長を「L」とすると、両者の比「D/L」が0.12以下であることが好ましい。条件式(2)を満足させると共に、「D/L」が0.12以下である場合、当該ズームレンズでは大口径でありながら、所望の変倍比を確保することが容易となる。このとき、「D/L」は0.10以下であることが好ましく、0.05以下であることがさらに好ましい。
【0040】
1-3-2.条件式(2)
0.5 ≦ fa/fb ≦ 3.0 ・・・・・(2)
但し、
fa:物体側部分群Aの焦点距離
fb:像側部分群Bの焦点距離
【0041】
条件式(2)は像側部分群Bの焦点距離に対する物体側部分群Aの焦点距離の比を規定するための条件式である。条件式(2)を満足させることで、開口絞りの径を小さくすることができ、光学性能のより高いズームレンズを得ることができる。
【0042】
これに対して条件式(2)の値が下限値未満になると、開口絞りの径を小さくする上では有利であるが、物体側部分群Aで発生するアンダー方向の像面湾曲を良好に補正することが困難となる。一方、条件式(2)の値が上限値を超えると、開口絞りの径を小さくすることが困難となる。
【0043】
上記効果を得る上で、条件式(2)の上限値は2.7であることが好ましく、2.4であることがより好ましく、2.2であることがさらに好ましく、2.0であることが一層好ましい。また、条件式(2)の下限値は0.55であることが好ましく、0.6であることがより好ましく0.65であることがさらに好ましい。
【0044】
1-3-3.条件式(3)
0.3 ≦ BF/Y ≦ 1.5 ・・・・・(3)
但し、
BF:広角端における当該ズームレンズのバックフォーカス
Y :当該ズームレンズの最大像高
【0045】
上記条件式(3)は当該ズームレンズの最大像高に対する広角端のバックフォーカスを規定するための条件式である。条件式(3)を満足することで、広角端でバックフォーカスが短くなり、光学全長の短縮化を図り小型のズームレンズを実現できる。
【0046】
これに対して、条件式(3)の値が下限値未満になると、バックフォーカスが短くなり過ぎて、撮像センサへの入射光に対する傾斜角度が大きくなり過ぎる。そのため、撮像センサにおいて入射光を効率的に受光するために設けられるオンチップマイクロレンズと、ズームレンズの射出瞳とのミスマッチによる周辺減光(シェーディング)が目立ち易くなる問題がある。一方、条件式(3)の値が上限値を超えると、バックフォーカスが長くなり過ぎて、広角端における当該ズームレンズの光学全長の短縮化が困難になる。
【0047】
上記効果を得る上で、条件式(3)の上限値は1.3であることが好ましく、1.2であることがより好ましく、1.1であることがさらに好ましい。また、条件式(3)の下限値は0.4であることが好ましく、0.5であることがより好ましい。
【0048】
1-3-4.条件式(4)
-4.0 ≦ ff/fm ≦ -0.7 ・・・・・(4)
但し、
ff:広角端における前群Fの焦点距離
fm:広角端における中間群Mの焦点距離
【0049】
上記条件式(4)は広角端における中間群Mの焦点距離に対する広角端における前群Fの焦点距離の比を規定するための条件式である。条件式(4)を満足させることで、光学全長の短縮化を図りつつ、光学性能のより高いズームレンズを得ることができる。
【0050】
これに対して、条件式(4)の値が下限値未満になると、特に広角端で光学全長が長くなると共に、前群Fを構成するレンズの有効径が大きくなるため当該ズームレンズの小型化が困難になる。一方、条件式(4)の値が上限値を超えると、当該ズームレンズの小型化を図る上では有利であるが、物体距離の変化に伴う像面湾曲の変動を抑制することが困難となる。
【0051】
上記効果を得る上で、条件式(4)の上限値は-0.75であることが好ましく、-0.8であることがより好ましく、-0.85であることがさらに好ましい。また、条件式(4)の下限値は-3.6であることが好ましく、-3.3であることがより好ましく、-3.0であることがさらに好ましい。
【0052】
1-3-5. 条件式(5)
1.1 ≦ Raf/Y ≦ 15.0 ・・・・・(5)
但し、
Raf:物体側部分群Aの最も物体側に配置されるレンズ面の曲率半径
Y :当該ズームレンズの最大像高
【0053】
条件式(5)は当該ズームレンズの最大像高に対する物体側部分群Aの最も物体側に配置されるレンズ面の曲率半径の比を規定するための条件式である。条件式(5)を満足させることで、開口絞りの径を小さくすることができ、且つ、光学性能のより高いズームレンズを得ることができる。
【0054】
これに対して、条件式(5)の値が下限値未満になると、開口絞りの径を小さくする上では有利であるが、球面収差のアンダー作用が強くなり過ぎて、その補正が困難となる。一方、条件式(5)の値が上限値を超えると、開口絞りの径を小さくすることが困難となる。
【0055】
上記効果を得る上で、条件式(5)の上限値は12.0であることが好ましく、10.0であることがより好ましく、8.0であることがさらに好ましい。また、条件式(5)の下限値は1.3であることが好ましく、1.5であることがより好ましく、1.7であることがさらに好ましい。
【0056】
1-3-6. 条件式(6)
0.7 ≦ Rar/Y ≦ 1.8 ・・・・・(6)
但し、
Rar:物体側部分群Aの最も像側に配置されるレンズ面の曲率半径
Y :当該ズームレンズの最大像高
【0057】
条件式(6)は当該ズームレンズの最大像高に対する物体側部分群Aの最も像側に配置されるレンズ面の曲率半径を規定するための条件式である。条件式(6)を満足することで、Fナンバーが1.4程度と明るいズームレンズでありながら、球面収差を良好に補正することが容易となる。
【0058】
これに対して、条件式(6)の値が下限値未満になると、当該レンズ面の発散作用が強くなり過ぎて、球面収差を良好に補正することが困難となる。一方、条件式(6)の値が上限値を超えると、当該レンズ面の発散作用が弱くなるため、物体側部分群Aに強い正の屈折力を配置することが困難になるため、開口絞りの径を小さくすることが困難になる。
【0059】
上記効果を得る上で、条件式(6)の上限値は1.75であることが好ましく、1.7であることがより好ましく、1.65であることがさらに好ましい。また、条件式(6)の下限値は0.75であることが好ましく、0.8であることがより好ましく、0.85であることがさらに好ましい。
【0060】
1-3-7. 条件式(7)
-4.0 ≦ Rbr/Y ≦ -0.9 ・・・・・(7)
但し、
Rbr:像側部分群Bの最も像側に配置されるレンズ面の曲率半径
Y :当該ズームレンズの最大像高
【0061】
条件式(7)は当該ズームレンズの最大像高に対する像側部分群Bの最も像側に配置されるレンズ面の曲率半径の比を規定するための条件式である。条件式(7)を満足させることで、大口径化を図りつつ、光学性能の高いズームレンズを得ることができる。
【0062】
これに対して、条件式(7)の値が下限値未満になると、球面収差とコマ収差のバランスを保つことは容易になるが、中間群Mの像側NA(開口数)を小さくすることが困難になるため、当該ズームレンズのFナンバーを小さくすることが困難となる。一方、条件式(7)の値が上限値を超えると、当該ズームレンズのFナンバーを小さくすることは容易になるが、球面収差とコマ収差のバランスを保ちながらこれらの補正を行うことが困難になる。
【0063】
上記効果を得る上で、条件式(7)の上限値は-1.0であることが好ましく、-1.1であることがより好ましく、-1.2であることがさらに好ましい。また、条件式(7)の下限値は-3.7であることが好ましく、-3.4であることがより好ましく、-3.0であることがさらに好ましい。
【0064】
1-3-8. 条件式(8)
70 ≦ νd ・・・・・(8)
但し、
νd:像側部分群Bに含まれる正レンズのd線に対するアッベ数
【0065】
条件式(8)は像側部分群Bに含まれる正レンズのd線に対するアッベ数を規定するための条件式である。像側部分群Bが上記条件式(8)を満足する正レンズを少なくとも1枚含むことで、軸上色収差をより良好に補正することが可能になる。
【0066】
これに対して、像側部分群Bが上記条件式(8)を満足する正レンズを1枚も含まない場合、F線とC線の軸上色収差の幅を良好に補正することが困難となる。
【0067】
上記効果を得る上で、条件式(8)の下限値は72であることが好ましく、76であることがより好ましい。条件式(8)の値が高いほど好ましいため、上限値は特に規定する必要はない。自然界に存在する材料、現在の人工的材料のアッベ数を考慮すると、条件式(8)の上限値は100であることが好ましい。
【0068】
1-3-9.条件式(9)
1.15 ≦ Hm/Hs ≦ 2.0 ・・・・・(9)
但し、
Hm : 望遠端において無限遠合焦時の、前記中間群Mの最も物体側のレンズ面を通る軸上マージナル光線の光軸からの高さ
Hs : 望遠端において無限遠合焦時の、前記開口絞りを通る軸上マージナル光線の光軸からの高さ
【0069】
上記条件式(9)は望遠端において無限遠合焦時の、中間群Mの最も物体側のレンズ面を通る軸上マージナル光線の高さと、開口絞りを通る軸上マージナル光線の高さとの比を規定した条件式である。条件式(9)を満足させることで、開口絞りの小型化を図り、絞り機構の小型化及び軽量化を図ることが容易となる。
【0070】
これに対して、条件式(9)の値が下限値未満になると、開口絞りの径を小さくすることが困難になるため、開口絞り及び絞り機構が大型化する。一方、条件式(9)の値が上限値を超えると、物体側部分群Aの正の屈折力が強くなり過ぎて、球面収差を良好に補正することが困難となる。
【0071】
上記効果を得る上で、条件式(9)の上限値は1.8であることが好ましく、1.7であることがより好ましく、1.6であることがさらに好ましい。また、条件式(9)の下限値は1.2であることが好ましく、1.25であることがより好ましく、1.3であることがさらに好ましい。
【0072】
2.撮像装置
次に、本件発明に係る撮像装置について説明する。本件発明に係る撮像装置は、上記本件発明に係るズームレンズと、当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする。なお、撮像素子はズームレンズの像側に設けられることが好ましい。
【0073】
ここで、撮像素子等に特に限定はなく、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの固体撮像素子等も用いることができる。本件発明に係る撮像装置は、デジタルカメラやビデオカメラ等のこれらの固体撮像素子を用いた撮像装置に好適である。また、当該撮像装置は、一眼レフカメラ、ミラーレス一眼カメラ、デジタルスチルカメラ、監視カメラ、車載用カメラ、ドローン搭載用カメラ等の種々の撮像装置に適用することができる。また、これらの撮像装置はレンズ交換式の撮像装置であってもよいし、レンズが筐体に固定されたレンズ固定式の撮像装置であってもよい。特に本発明に係るズームレンズはフルサイズ等のサイズの大きな撮像素子を搭載した撮像装置のズームレンズに好適である。当該ズームレンズは変倍全域でFナンバーが1.4程度の大口径でありながら、全体的に小型で、簡素な変倍機構を採用することができ、且つ、高い光学性能を有するため、このような撮像装置用のズームレンズとしたときにも高画質な撮像画像を得ることができる。
【0074】
次に、実施例を示して本件発明を具体的に説明する。但し、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0075】
(1)光学構成
図1に実施例1のズームレンズのレンズ断面図を示す。図1に示すように当該ズームレンズは、物体側から順に、全体で負の屈折力を有する前群Fと、正の屈折力を有する中間群Mと、負の屈折力を有する後群Rとから構成される。
【0076】
実施例1のズームレンズでは、前群Fは負の屈折力を有する第1レンズ群G1のみから構成される。中間群Mは、物体側から順に、正の屈折力を有する物体側部分群Aと、正の屈折力を有する像側部分群Bとから構成される。後群Rは1つのレンズ群から構成されている。
【0077】
広角端から望遠端への変倍に際し、第1レンズ群G1は像側に移動し、中間群Mは物体側へ移動し、後群Rは光軸方向に固定される。その際、物体側部分群Aと像側部分群Bとの間隔が広がるように、物体側部分群A及び像側部分群Bはそれぞれ異なる移動量で物体側へ移動する。また、前群Fと中間群Mの光軸上の間隔は広角端で最大となり、中間群Mと後群Rの光軸上の間隔は望遠端で最大となる。さらに、無限遠から近距離への合焦時、像側部分群B全体が光軸上を物体側へ移動し、前群F、物体側部分群A及び後群Rは光軸方向に固定される。以下、各レンズ群の構成を説明する。
【0078】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL1と、両凹レンズL2と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL3とから構成される。
【0079】
中間群Mは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL4と、両凸レンズL5と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL6と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL7及び物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL8を接合した接合レンズと、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL9及び物体側が凹面の凹平レンズL10を接合した接合レンズと、像側が凹面の凹平レンズL11及び物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL12を接合した接合レンズと、両凸レンズL13とから構成される。正メニスカスレンズL4は、物体側面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。正メニスカスレンズL12は像側面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。物体側部分群Aは正メニスカスレンズL4から負メニスカスレンズL6により構成される。像側部分群Bは負メニスカスレンズL7から両凸レンズL13により構成され、開口絞りSを正メニスカスレンズL8と正メニスカスレンズL9との間に備える。
【0080】
後群Rは、物体側から順に、両凸レンズL14、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL15、両凹レンズL16と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL17との接合レンズで構成される。負メニスカスレンズL15は両面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。負メニスカスレンズL15の像側面と両凹レンズL16の物体側面とで形成される凸形状の空気レンズを有する。当該空気レンズは負の屈折力を有する。
【0081】
なお、図1において、「IP」は像面であり、具体的には、CCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子の撮像面、或いは、銀塩フィルムのフィルム面等を示す。また、IPの物体側にはカバーガラスCG等を備える。この点は、他の実施例で示す各レンズ断面図においても同様であるため、以後説明を省略する。
【0082】
(2)数値実施例
次に、当該ズームレンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。以下に、「レンズデータ」、「諸元表」、「可変間隔」、「非球面係数」、「レンズ群データ」を示す。また、各条件式の値(表1)及び各条件式の値を求めるために用いる諸数値等(表2)は実施例4の後にまとめて示す。
【0083】
「レンズデータ」において、「面番号」は物体側から数えたレンズ面の順番、「r」はレンズ面の曲率半径、「d」は光軸上のレンズ肉厚又は空気間隔、「nd」はd線(波長λ=587.6nm)における屈折率、「νd」はd線におけるアッベ数を示している。また、「面番号」の欄において面番号の次に付した「ASPH」はそのレンズ面が非球面であることを示し、「S」はその面が開口絞りであることを示す。「d」の欄において、「d(0)」、「d(6)」等と示すのは、当該レンズ面の光軸上の間隔が変倍時に変化する可変間隔であることを意味する。また、曲率半径の欄の「∞」は無限大を意味し、そのレンズ面が平面であることを意味する。
【0084】
「諸元表」において、「f」は当該ズームレンズの焦点距離、「FNo.」はFナンバー、「ω」は半画角、「Y」は最大像高である。それぞれ広角端、中間焦点距離、望遠端における値を示している。
【0085】
「可変間隔」において、広角端、中間焦点距離、望遠端における無限遠合焦時と、有限物体合焦時(物体距離500mm)との値をそれぞれ示している。なお、物体距離は物体面から像面までの距離をいう。他の実施例についても同じである。
【0086】
「非球面係数」は、次のようにして非球面形状を定義したときの非球面係数を示す。但し、xは光軸方向の基準面からの変位量、rは近軸曲率半径、Hは光軸に垂直な方向の光軸からの高さ、kは円錐係数、Anはn次の非球面係数とする。また「非球面係数」の表において「E±XX」は指数表記を表し「×10±XX」を意味する。
【0087】
【数1】
【0088】
これらの各表における事項は他の実施例で示す各表においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0089】
また、図2図3及び図4に当該ズームレンズの広角端、中間焦点距離及び望遠端における無限遠物体合焦時における縦収差図を示す。各図に示す縦収差図は、図面に向かって左側から順に、それぞれ球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)である。球面収差図は実線がd線(波長587.56nm)、破線がC線(波長656.28nm)、一点鎖線がg線(波長435.84nm)における球面収差をそれぞれ示す。非点収差図は縦軸が半画角(ω)、横軸がデフォーカスであり、実線がd線のサジタル像面(ds)を示し、破線がd線のメリディオナル像面(dm)をそれぞれ示す。歪曲収差図は、縦軸が半画角(ω)、横軸が歪曲収差である。これらの事項は、他の実施例において示す各収差図においても同じであるため、以下では説明を省略する。
【0090】
(レンズデータ)
面番号 r d nd νd
物体面 ∞ d(0)
1 129.9884 2.2000 1.84666 23.78
2 47.7346 13.0335
3 -183.8859 1.7000 1.48749 70.44
4 117.5182 4.4404
5 83.2704 5.2454 1.92286 20.88
6 253.5790 d(6)
7ASPH 64.2097 4.5000 2.00178 19.32
8 144.7192 8.2354
9 41.3208 8.7000 1.72916 54.67
10 -820.7314 0.1500
11 82.0968 1.3000 1.80518 25.46
12 27.5885 d(12)
13 38.7998 1.3000 1.84666 23.78
14 21.0000 8.0000 1.87070 40.73
15 52.1504 3.8111
16S ∞ 2.6264
17 -96.1477 5.6796 1.49700 81.61
18 -22.5690 1.2000 1.84666 23.78
19 ∞ 0.2000
20 ∞ 1.2000 1.76182 26.61
21 27.3142 5.3904 1.76450 49.10
22ASPH 171.2660 0.4463
23 79.3536 6.6269 1.92286 20.88
24 -39.8855 d(24)
25 78.9800 4.0000 1.87070 40.73
26 -264.7952 0.5000
27ASPH 28.4812 1.5000 1.85135 40.10
28ASPH 19.7120 4.7765
29 -226.1997 1.5000 1.68893 31.07
30 27.8514 5.0000 1.87070 40.73
31 69.3940 14.5000
32 ∞ 2.5000 1.51680 64.20
33 ∞ 1.0000
像面 ∞
【0091】
(諸元表)
広角端 中間 望遠端
f 36.0021 42.0024 48.5988
FNo. 1.4521 1.4526 1.4528
ω 31.4582 27.0653 23.4677
Y 21.6330 21.6330 21.6330
【0092】
(可変間隔)
広角端 中間 望遠端 広角端 中間 望遠端
d(0) ∞ ∞ ∞ 330.0000 346.2790 358.6450
d(6) 40.2777 19.1066 1.3000 40.2777 19.1066 1.3000
d(12) 6.9664 8.9264 10.9463 3.3021 4.1645 4.7220
d(24) 1.4940 4.4262 7.8468 5.1583 9.1881 14.0712
【0093】
(非球面係数)
面番号 k A4 A6 A8 A10 A12
7 0.0000 -7.91027E-07 -4.73758E-10 1.88417E-13 -1.99490E-16 0.00000E+00
22 0.0000 5.61116E-06 -2.01714E-10 -5.22811E-13 -3.85996E-15 0.00000E+00
27 0.0000 -6.80207E-05 2.35284E-07 -6.07552E-10 6.63709E-13 0.00000E+00
28 0.0000 -7.59536E-05 2.45251E-07 -6.74523E-10 5.60196E-13 0.00000E+00
【0094】
(群の焦点距離)
群番号 焦点距離
F -102.7965
物体側部分群A 89.0654
像側部分群B 56.5672
R -189.1802
【実施例2】
【0095】
(1)光学構成
図5に実施例2のズームレンズのレンズ断面図を示す。図5に示すように当該ズームレンズは、物体側から順に、全体で負の屈折力を有する前群Fと、正の屈折力を有する中間群Mと、負の屈折力を有する後群Rとから構成される。
【0096】
実施例2のズームレンズでは、前群Fは負の屈折力を有する第1レンズ群G1のみから構成される。中間群Mは、物体側から順に、正の屈折力を有する物体側部分群Aと、正の屈折力を有する像側部分群Bとから構成される。後群Rは1つのレンズ群から構成されている。
【0097】
広角端から望遠端への変倍に際し、第1レンズ群G1は像側に移動し、中間群Mは物体側へ移動し、後群Rは光軸方向に固定される。その際、物体側部分群Aと像側部分群Bとの間隔が広がるように、物体側部分群A及び像側部分群Bはそれぞれ異なる移動量で物体側へ移動する。また、前群Fと中間群Mの光軸上の間隔は広角端で最大となり、中間群Mと後群Rの光軸上の間隔は望遠端で最大となる。さらに、無限遠から近距離への合焦時、像側部分群B全体が光軸上を物体側へ移動し、前群F、物体側部分群A及び後群Rは光軸方向に固定される。以下、各レンズ群の構成を説明する。
【0098】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL1と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL2と、両凹レンズL3と、両凸レンズL4とから構成される。負メニスカスレンズL2は両面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。
【0099】
中間群Mは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL5と、両凸レンズL6と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL7と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL8及び物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL9を接合した接合レンズと、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL10及び物体側に凹面を向けた凹平レンズL11を接合した接合レンズと、像側が凹面の凹平レンズL12及び両凸レンズL13を接合した接合レンズと、両凸レンズL14とから構成される。正メニスカスレンズL5は、物体側面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。両凸レンズL13は像側面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。物体側部分群Aは正メニスカスレンズL5から負メニスカスレンズL7により構成される。像側部分群Bは負メニスカスレンズL8から両凸レンズL14により構成され、開口絞りSを正メニスカスレンズL9と正メニスカスレンズL10との間に備える。
【0100】
後群Rは、物体側から順に、両凸レンズL15と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL16と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL17及び物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL18を接合した接合レンズとから構成される。負メニスカスレンズL16は両面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。負メニスカスレンズL16の像側面と負メニスカスレンズL17の物体側面とにより形成される両凸形状の空気レンズを有する。当該空気レンズは負の屈折力を有する。
【0101】
(2)数値実施例
次に、当該ズームレンズの具体的数値を適用した数値実施例として、「レンズデータ」、「諸元表」、「可変間隔」、「非球面係数」、「レンズ群データ」を示す。また、図6図7及び図8に当該ズームレンズの広角端、中間焦点距離及び望遠端における無限遠物体合焦時における縦収差図を示す。
【0102】
(レンズデータ)
面番号 r d nd νd
物体面 ∞ d(0)
1 182.0985 2.5000 1.83400 37.34
2 42.5222 5.0000
3ASPH 67.2631 2.2000 1.69350 53.18
4ASPH 35.2665 13.7723
5 -93.9672 2.2000 1.49700 81.61
6 623.0580 0.1500
7 89.6327 6.8000 1.87070 40.73
8 -615.9795 d(8)
9ASPH 92.8489 4.5000 2.00178 19.32
10 498.8083 9.1779
11 51.9706 8.3000 1.72916 54.67
12 -156.2932 0.1500
13 67.1114 1.5000 1.71736 29.52
14 29.5181 d(14)
15 44.3796 1.3000 1.80518 25.46
16 22.0000 6.7000 1.87070 40.73
17 54.3173 3.6244
18S ∞ 2.5945
19 -95.3133 5.9411 1.49700 81.61
20 -21.1670 1.2000 1.76182 26.61
21 ∞ 0.2000
22 ∞ 1.2000 1.85478 24.80
23 25.3608 7.0595 1.72903 54.04
24ASPH -144.3052 2.0206
25 100.2770 6.5730 1.92286 20.88
26 -42.1307 d(26)
27 146.6566 4.0000 1.49700 81.61
28 -81.7679 0.5000
29ASPH 30.5400 1.5000 1.88202 37.22
30ASPH 20.2915 3.5739
31 273.0256 1.3000 1.69895 30.13
32 26.5473 4.4347 1.87070 40.73
33 60.0000 14.5000
34 ∞ 2.5000 1.51680 64.20
35 ∞ 1.0000
像面 ∞
【0103】
(諸元表)
広角端 中間 望遠端
f 24.6995 28.0011 34.0009
FNo. 1.4521 1.4521 1.4521
ω 42.4409 37.8493 31.6266
Y 21.6330 21.6330 21.6330
【0104】
(可変間隔)
広角端 中間 望遠端 広角端 中間 望遠端
d(0) ∞ ∞ ∞ 330.0000 340.9929 354.0108
d(8) 35.8282 21.5737 2.2786 35.8282 21.5737 2.2786
d(14) 4.6984 5.7019 7.6594 3.2254 3.9161 5.2007
d(26) 1.5013 3.7594 8.0792 2.9744 5.5453 10.5378
【0105】
(非球面係数)
面番号 k A4 A6 A8 A10 A12
3 -5.7429 1.86587E-06 -1.76596E-09 1.29427E-12 -5.55264E-16 0.00000E+00
4 -0.6895 -2.34577E-07 -1.43319E-09 1.36348E-12 -9.10600E-16 0.00000E+00
9 0.0000 -1.17951E-06 -3.42281E-10 1.68594E-13 -2.08017E-16 0.00000E+00
24 0.0000 4.39879E-06 1.49720E-09 5.98883E-13 -2.08619E-14 0.00000E+00
29 0.0000 -7.65341E-05 2.66051E-07 -6.72113E-10 7.42847E-13 0.00000E+00
30 0.0000 -8.25166E-05 2.84595E-07 -7.60881E-10 7.35601E-13 0.00000E+00
【0106】
(群の焦点距離)
群番号 焦点距離
F -58.1131
物体側部分群A 66.4113
像側部分群B 47.7002
R -113.5620
【実施例3】
【0107】
(1)光学構成
図9に実施例3のズームレンズのレンズ断面図を示す。図9に示すように当該ズームレンズは、物体側から順に、全体で負の屈折力を有する前群Fと、正の屈折力を有する中間群Mと、正の屈折力を有する後群Rとから構成される。
【0108】
実施例3のズームレンズでは、前群Fは負の屈折力を有する第1レンズ群G1のみから構成される。中間群Mは、物体側から順に、正の屈折力を有する物体側部分群Aと、正の屈折力を有する像側部分群Bとから構成される。後群Rは1つのレンズ群から構成されている。
【0109】
広角端から望遠端への変倍に際し、第1レンズ群G1は像側に移動し、中間群Mは物体側へ移動し、後群Rは光軸方向に固定される。その際、物体側部分群Aと像側部分群Bとの間隔が広がるように、物体側部分群A及び像側部分群Bはそれぞれ異なる移動量で物体側へ移動する。また、前群Fと中間群Mの光軸上の間隔は広角端で最大となり、中間群Mと後群Rの光軸上の間隔は望遠端で最大となる。さらに、無限遠から近距離への合焦時、像側部分群B全体が光軸上を物体側へ移動し、前群F、物体側部分群A及び後群Rは光軸方向に固定される。以下、各レンズ群の構成を説明する。
【0110】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL1と、両凹レンズL2と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL3とから構成される。負メニスカスレンズL1は両面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。
【0111】
中間群Mは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL4と、両凸レンズL5及び両凹レンズL6を接合した接合レンズと、両凸レンズL7及び両凹レンズL8を接合した接合レンズと、両凸レンズL9及び両凹レンズL10を接合した接合レンズと、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL11及び両凹レンズL12を接合した接合レンズと、両凸レンズL13及び両凹レンズL14を接合した接合レンズと、両凸レンズL15とから構成される。正メニスカスレンズL4は、物体側面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。両凸レンズL15は両面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。物体側部分群Aは正メニスカスレンズL4から両凹レンズL6により構成される。像側部分群Bは両凸レンズL7から両凸レンズL15により構成され、開口絞りSを両凹レンズL10と正メニスカスレンズL11との間に備える。
【0112】
後群Rは、物体側から順に、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL15と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL17と、両凹レンズL18及び両凸レンズL19を接合した接合レンズとから構成される。負メニスカスレンズL17は両面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。負メニスカスレンズL17の像側面と両凹レンズL18の物体側面とにより形成される凸形状の空気レンズを有する。当該空気レンズは負の屈折力を有する。
【0113】
(2)数値実施例
次に、当該ズームレンズの具体的数値を適用した数値実施例として、「レンズデータ」、「諸元表」、「可変間隔」、「非球面係数」、「レンズ群データ」を示す。また、図10図11及び図12に当該ズームレンズの広角端、中間焦点距離及び望遠端における無限遠物体合焦時における縦収差図を示す。
【0114】
(レンズデータ)
面番号 r d nd νd
物体面 ∞ d(0)
1ASPH 181.7891 2.5000 1.69350 53.18
2ASPH 43.0956 13.1562
3 -328.8674 2.0000 1.48749 70.44
4 77.7560 0.1500
5 61.8601 5.8556 1.91082 35.25
6 128.0813 d(6)
7ASPH 63.3935 5.4263 1.85135 40.10
8 292.9960 9.3841
9 65.1076 7.5740 1.87070 40.73
10 -85.1233 1.5000 1.67300 38.26
11 34.6028 d(11)
12 50.4869 6.0015 1.87070 40.73
13 -288.0263 1.3000 1.67270 32.10
14 34.6562 0.7982
15 40.9711 6.0002 1.87070 40.73
16 -394.6548 1.2000 1.71736 29.52
17 59.6594 3.7611
18S ∞ 1.5067
19 -18936.7748 6.7604 1.49700 81.61
20 -27.4313 1.0000 1.78880 28.43
21 57.2075 0.1500
22 44.5214 10.9683 1.69680 55.46
23 -25.6726 1.2000 1.72825 28.46
24 62.0368 0.1548
25ASPH 62.0214 6.6911 2.00178 19.32
26ASPH -54.8906 d(26)
27 -527.9767 5.0000 1.69680 55.46
28 -67.0392 0.1500
29ASPH 29.2864 1.5000 1.85135 40.10
30ASPH 21.9267 4.6268
31 -117.4469 1.5000 1.67270 32.10
32 37.1629 7.0000 1.88300 40.80
33 -5000.0000 14.7536
34 ∞ 2.5000 1.51680 64.20
35 ∞ 1.0000
像面 ∞
【0115】
(諸元表)
広角端 中間 望遠端
f 36.0000 41.9992 48.5995
FNo. 1.4800 1.4802 1.4801
ω 31.4501 27.2380 23.6670
Y 21.6330 21.6330 21.6330
【0116】
(可変間隔)
広角端 中間 望遠端 広角端 中間 望遠端
d(0) ∞ ∞ ∞ 320.0000 332.1080 340.6119
d(6) 34.2458 16.5465 1.7416 34.2458 16.5465 1.7416
d(11) 8.4301 9.5776 10.8457 4.5645 4.2764 3.1552
d(26) 4.2553 8.6996 13.7320 8.1209 14.0008 21.4225
【0117】
(非球面係数)
面番号 k A4 A6 A8 A10 A12
1 0.0000 1.28205E-07 -7.61776E-11 2.90013E-14 2.52672E-18 0.00000E+00
2 0.0000 -1.75547E-07 -8.82990E-11 -1.44086E-13 7.03145E-17 0.00000E+00
7 0.0000 -7.40646E-07 -2.07238E-10 3.62994E-14 -7.35770E-17 0.00000E+00
25 0.0000 -1.55377E-06 -9.36615E-12 -7.78095E-12 1.20925E-14 0.00000E+00
26 0.0000 2.16087E-08 6.27888E-10 -8.18507E-12 1.29649E-14 0.00000E+00
29 0.0000 -6.66962E-05 1.20767E-07 -1.70726E-10 8.98809E-14 0.00000E+00
30 0.0000 -7.18706E-05 1.28186E-07 -1.93820E-10 2.80768E-14 0.00000E+00
【0118】
(群の焦点距離)
群番号 焦点距離
F -80.7517
物体側部分群A 106.8290
像側部分群B 53.8770
R 1500.0000
【実施例4】
【0119】
(1)光学構成
図13に実施例4のズームレンズのレンズ断面図を示す。図13に示すように当該ズームレンズは、物体側から順に、全体で負の屈折力を有する前群Fと、正の屈折力を有する中間群Mと、負の屈折力を有する後群Rとから構成される。
【0120】
実施例4のズームレンズでは、前群Fは物体側から順に正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2とから構成される。中間群Mは、物体側から順に、正の屈折力を有する物体側部分群Aと、正の屈折力を有する像側部分群Bとから構成される。後群Rは1つのレンズ群から構成されている。
【0121】
広角端から望遠端への変倍に際し、前群Fは像側に移動し、中間群Mは物体側へ移動し、後群Rは光軸方向に固定される。その際、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔が広がるように、第1レンズ群G1及び第2レンズ群G2はそれぞれ異なる移動量で像側へ移動する。また、物体側部分群Aと像側部分群Bとの間隔が広がるように、物体側部分群A及び像側部分群Bはそれぞれ異なる移動量で物体側へ移動する。また、前群Fと中間群Mの光軸上の間隔は広角端で最大となり、中間群Mと後群Rの光軸上の間隔は望遠端で最大となる。さらに、無限遠から近距離への合焦時、像側部分群B全体が光軸上を物体側へ移動し、前群F、物体側部分群A及び後群Rは光軸方向に固定される。以下、各レンズ群の構成を説明する。
【0122】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL1及び物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL2を接合した接合レンズから構成される。
【0123】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL3と、両凹レンズL4と、両凸レンズL5とから構成される。
【0124】
中間群Mは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL6と、両凸レンズL7と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL8と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL9及び物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL10を接合した接合レンズと、両凸レンズL11及び物体側が凹面の凹平レンズL12を接合した接合レンズと、像側が凹面の凹平レンズL13及び物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL14を接合した接合レンズと、両凸レンズL15とから構成される。正メニスカスレンズL6は、物体側面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。正メニスカスレンズL14は像側面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。物体側部分群Aは正メニスカスレンズL6から負メニスカスレンズL8により構成される。像側部分群Bは負メニスカスレンズL9から両凸レンズL15により構成され、開口絞りSを正メニスカスレンズL10と両凸レンズL11との間に備える。
【0125】
後群Rは、物体側から順に、両凸レンズL16と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL17と、両凹レンズL18及び物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL19を接合した接合レンズとから構成される。負メニスカスレンズL17は両面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。負メニスカスレンズL17の像側面と両凹レンズL18の物体側面とで形成される凸形状の空気レンズを有する。当該空気レンズは負の屈折力を有する。
【0126】
(2)数値実施例
次に、当該ズームレンズの具体的数値を適用した数値実施例として、「レンズデータ」、「諸元表」、「可変間隔」、「非球面係数」、「レンズ群データ」を示す。また、図14図15及び図16に当該ズームレンズの広角端、中間焦点距離及び望遠端における無限遠物体合焦時における縦収差図を示す。
【0127】
(レンズデータ)
面番号 r d nd νd
物体面 ∞ d(0)
1 202.6119 1.8000 1.84666 23.78
2 126.5135 6.5000 1.87070 40.73
3 2320.1957 d(3)
4 2021.0550 2.0000 1.92119 23.96
5 48.2232 11.7572
6 -115.0105 1.8000 1.49700 81.61
7 123.3035 7.4614
8 111.3859 5.2233 1.92286 20.88
9 -1887.8262 d(9)
10ASPH 78.8902 5.4837 2.00178 19.32
11 468.2162 7.8789
12 43.8588 8.7791 1.72916 54.67
13 -414.9150 0.1500
14 132.8662 1.3000 1.80518 25.46
15 30.2017 d(15)
16 42.8107 1.3000 1.85025 30.05
17 21.7333 7.3929 1.87070 40.73
18 65.7617 3.5951
19S ∞ 1.5054
20 796.5846 7.2618 1.49700 81.61
21 -25.1993 1.2000 1.84666 23.78
22 ∞ 0.2000
23 ∞ 1.2000 1.80518 25.46
24 24.2004 6.5096 1.76450 49.10
25ASPH 222.9218 3.5507
26 106.7391 6.1818 1.92286 20.88
27 -43.0769 d(27)
28 109.9215 5.0000 1.69680 55.53
29 -123.4893 0.1500
30ASPH 29.9663 1.5000 1.85135 40.10
31ASPH 19.9322 5.5671
32 -68.8696 1.5000 1.68893 31.07
33 28.2513 5.5000 1.87070 40.73
34 165.5752 13.5005
35 ∞ 2.5000 1.51680 64.20
36 ∞ 1.0000
像面 ∞
【0128】
(諸元表)
広角端 中間 望遠端
f 36.0003 42.0017 48.5986
FNo. 1.4801 1.4801 1.4800
ω 31.7782 27.1529 23.4655
Y 21.6330 21.6330 21.6330
【0129】
(可変間隔)
広角端 中間 望遠端 広角端 中間 望遠端
d(0) ∞ ∞ ∞ 320.2228 329.0526 334.6454
d(3) 1.5000 5.8109 9.8482 1.5000 5.8109 9.8482
d(9) 33.4593 16.1850 1.5000 33.4593 16.1850 1.5000
d(15) 6.2243 7.6198 9.6385 3.3430 3.8865 4.7816
d(27) 2.3449 5.0832 8.1192 5.2262 8.8165 12.9761
【0130】
(非球面係数)
面番号 k A4 A6 A8 A10 A12
10 0.0000 -6.17675E-07 -2.17981E-10 -6.77418E-15 -3.82599E-17 0.00000E+00
25 0.0000 4.74951E-06 1.16096E-09 -5.84160E-12 -4.44329E-16 0.00000E+00
30 0.0000 -6.90825E-05 2.58167E-07 -7.01856E-10 8.08278E-13 0.00000E+00
31 0.0000 -7.66362E-05 2.72004E-07 -7.84158E-10 7.54957E-13 0.00000E+00
【0131】
(群の焦点距離)
群番号 焦点距離
G1 250.0030
G2 -62.2253
物体側部分群A 84.9027
像側部分群B 51.6965
R -108.5500
【0132】
[表1]
実施例1 実施例2 実施例3 実施例4
条件式(1)fb / ft 1.164 1.403 1.109 1.064
条件式(2)fa / fb 1.575 1.392 1.983 1.642
条件式(3)BF / Y 0.793 0.793 0.804 0.746
条件式(4)ff / fm -1.879 -1.195 -1.411 -1.539
条件式(5)Raf / Y 2.968 4.292 2.930 3.647
条件式(6)Rar / Y 1.275 1.364 1.600 1.396
条件式(7)Rbr / Y -1.844 -1.948 -2.537 -1.991
条件式(8)νd 81.610 81.610 81.61 81.61
条件式(9)Hm / Hs 1.471 1.324 1.28 1.43
【0133】
[表2]

実施例1 実施例2 実施例3 実施例4
BF 17.148 17.148 17.402 16.149
Y 21.633 21.633 21.633 21.633
Raf 64.210 92.849 63.394 78.890
Rar 27.590 29.518 34.603 30.202
Rbr -39.890 -42.131 -54.891 -43.077
Hm 22.090 19.499 20.536 23.203
Hs 15.013 14.722 16.080 16.214
【産業上の利用可能性】
【0134】
本件発明によれば、大口径でありながら、全体的に小型で、簡素な変倍機構を採用することができ、且つ、高い光学性能を有するズームレンズ及び撮像装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0135】
G1 ・・・第1レンズ群
G2 ・・・第2レンズ群
S ・・・開口絞り
CG ・・・カバーガラス
IP ・・・像面

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