(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】撮像装置および車両
(51)【国際特許分類】
G03B 17/02 20210101AFI20240822BHJP
B60R 1/00 20220101ALI20240822BHJP
B60R 11/04 20060101ALI20240822BHJP
G02B 13/00 20060101ALI20240822BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20240822BHJP
G03B 17/55 20210101ALI20240822BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20240822BHJP
H04N 23/51 20230101ALI20240822BHJP
H04N 23/52 20230101ALI20240822BHJP
【FI】
G03B17/02
B60R1/00
B60R11/04
G02B13/00
G03B15/00 V
G03B17/55
G03B30/00
H04N23/51
H04N23/52
(21)【出願番号】P 2020053301
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【氏名又は名称】坪内 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】北村 信雄
(72)【発明者】
【氏名】大和田 祥武
(72)【発明者】
【氏名】渡部 貴昭
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-259101(JP,A)
【文献】特開2014-011565(JP,A)
【文献】国際公開第2012/137267(WO,A1)
【文献】特開2018-137401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/02
G03B 15/00
G03B 17/55
G03B 30/00
B60R 1/00
H04N 23/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系と、
前記撮像光学系を介して結像する被写体像を受光可能に配置される撮像素子と、
前記撮像光学系の光束を遮らない開口を有して前記撮像光学系と前記撮像素子との間に位置する板金と、
前記撮像素子の受光面の側面を囲み
、前記板金と接触する金属筐体と、を備え
、
前記金属筐体は前記撮像光学系の光軸を挟んで両側にある外壁部分を結ぶ連結部を有し、断面視でHの形状となる撮像装置。
【請求項2】
前記撮像光学系を保持する鏡筒を備え、前記鏡筒と前記金属筐体とは直接接触しない請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記鏡筒と前記金属筐体とは断熱性の部材を介して接触する請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記金属筐体は、前記撮像素子
より前記撮像光学系の側に比べて、前記撮像素子より前記撮像光学系の反対側の方が肉厚である請求項1から3のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記撮像素子と前記板金との間に位置し、前記撮像素子からの熱を前記板金に伝える第1の伝熱部材を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記撮像素子を実装する第1の基板と前記金属筐体の連結部との間に位置し、前記第1の基板からの熱を前記金属筐体に伝える第2の伝熱部材を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記撮像素子から出力される画像信号に基づいて処理を行うプロセッサを更に備え、
前記プロセッサは、前記金属筐体の連結部を挟んで、前記撮像素子の反対側に位置する、請求項1から6のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記プロセッサを実装する第2の基板と前記金属筐体の連結部との間に位置し、前記第2の基板からの熱を前記金属筐体に伝える第3の伝熱部材を備える、請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
外周の少なくとも一部が前記金属筐体から張り出すように位置する第4の伝熱部材を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項10】
撮像光学系と、前記撮像光学系を介して結像する被写体像を受光可能に配置される撮像素子と、前記撮像光学系の光束を遮らない開口を有して前記撮像光学系と前記撮像素子との間に位置する板金と、前記撮像素子の受光面の側面を囲み
、前記板金と接触する金属筐体と、を備え
、前記金属筐体は前記撮像光学系の光軸を挟んで両側にある外壁部分を結ぶ連結部を有し、断面視でHの形状となる撮像装置を搭載する車両。
【請求項11】
前記連結部は前記撮像素子を搭載する基板の前記撮像素子の搭載面とは反対の面と対向する請求項1から9のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記撮像素子からの画像信号に基づいて処理を実行するプロセッサを更に備え、当該プロセッサは前記連結部の前記撮像素子側とは反対の面と対向する請求項11に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像装置および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ルームミラーまたはサイドミラーに代えて、撮像装置によって撮像された車両後方の映像を運転者に対して表示する電子ミラーが普及しつつある。電子ミラーは、光学ミラーに比べて、夜間の視認性の向上および死角の減少という利点を有する。
【0003】
光学ミラーに使用される撮像装置は、車両に搭載されて高温環境下で使用され得る。そのため、このような撮像装置は高い放熱性能を有することが好ましい。例えば特許文献1は、撮像素子基板を包囲する電磁シールド周壁を外部コネクタと電気的に接続して放熱器として機能させることによって、省スペースで放熱性を向上させる車載カメラを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、車載用の撮像装置に対して、さらなる高画素化および高機能化が求められている。そのため、撮像素子および周辺回路の駆動によって放出される熱量は増加しており、特許文献1のように電磁シールド周壁が放熱器を兼ねる構成では放熱が不十分である場合があった。特に撮像素子はレンズ等を含む撮像光学系の近くに配置される熱源であり、その熱が撮像光学系に伝わることによって光学性能に影響を与えるおそれがある。
【0006】
かかる点に鑑みてなされた本開示の目的は、撮像光学系の温度上昇を抑えて、光学性能の劣化を防ぐことが可能な撮像装置および車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態に係る撮像装置は、撮像光学系と、前記撮像光学系を介して結像する被写体像を受光可能に配置される撮像素子と、前記撮像光学系の光束を遮らない開口を有して前記撮像光学系と前記撮像素子との間に位置する板金と、前記撮像素子の受光面の裏側および側面を囲み、前記板金と接触する金属筐体と、を備える。
【0008】
本開示の一実施形態に係る車両は、撮像光学系と、前記撮像光学系を介して結像する被写体像を受光可能に配置される撮像素子と、前記撮像光学系の光束を遮らない開口を有して前記撮像光学系と前記撮像素子との間に位置する板金と、前記撮像素子の受光面の裏側および側面を囲み、前記板金と接触する金属筐体と、を備える撮像装置を搭載する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施形態によれば、撮像光学系の温度上昇を抑えて、光学性能の劣化を防ぐことが可能な撮像装置および車両が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る撮像装置の分解図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係る撮像装置の外観図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態に係る撮像装置の断面図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態に係る撮像装置の車両への搭載例を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態に係る撮像装置の熱解析結果を示す図である。
【
図6】
図6は、比較例の撮像装置の熱解析結果を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の別の実施形態に係る撮像装置の外観図である。
【
図8】
図8は、本開示の別の実施形態に係る撮像装置の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(撮像装置の構成)
図1は、本実施形態に係る撮像装置10の分解図である。
図2は、本開示の一実施形態に係る撮像装置10の外観図である。また、
図3は、本実施形態に係る撮像装置10の断面図である。
図3は
図2に示されるA-Aにおける撮像装置10の断面図である。ここで、
図1~
図3に示すように、撮像装置10の向きに対応する直交座標が設定される。y軸方向は、撮像装置10の光軸と平行な方向である。撮像装置10は、撮像装置10よりy軸正方向に存在する被写体を撮像する。y軸正方向を前方と表現することがある。また、y軸負方向の後方と表現することがある。x軸方向は、撮像装置10の幅方向に対応する。また、z軸方向は、撮像装置10の高さ方向に対応する。
図3は、撮像装置10をyz平面に平行な面で切った断面を示す。以下において、この直交座標の軸または平面を用いて、位置関係を説明することがある。また、以下において、断面視とは、撮像装置10をyz平面に平行な面で切った場合であることを意味する。
【0012】
図1に示すように、撮像装置10は、前部筐体12と、撮像光学系20と、鏡筒21と、板金15と、第1の伝熱部材37と、撮像素子31と、第1の基板32と、第2の伝熱部材38と、金属筐体14と、第3の伝熱部材39と、プロセッサ33と、第2の基板34と、後部筐体13と、を備える。撮像装置10が備える構成要素の詳細については後述する。ここで、
図1は例示である。撮像装置10は
図1に示す構成要素の全てを含まなくてよい。また、撮像装置10は
図1に示す以外の構成要素を備えていてよい。
【0013】
図2に示すように、撮像装置10の筐体11は、前部筐体12と、金属筐体14と、後部筐体13とで構成される。金属筐体14の前方の端部は前部筐体12と接続される。金属筐体14の後方の端部は後部筐体13と接続される。また、撮像光学系20および、撮像光学系20を支持する鏡筒21は、撮像装置10の前方において一部が露出する。
【0014】
前部筐体12は、撮像装置10の前方に位置する筐体であって、衝撃等から内部の部品を保護する。前部筐体12は、撮像光学系20への入射光を遮らない開口を有する。前部筐体12は、前部筐体12の開口と、鏡筒21の突出部分とが嵌合することによって、鏡筒21と接続されてよい。別の例として、前部筐体12と鏡筒21とは、接着剤または溶着等の別の手法によって接続されてよい。前部筐体12は、撮像光学系20を後方へと押圧し、鏡筒21に挿入された撮像光学系20が開口から脱落することを防止する機能も有する。前部筐体12の材料は例えば樹脂であるが、樹脂に限定されない。前部筐体12の材料となる樹脂は、例えばポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリスチレン(PS)等であってよいが、これらに限定されない。
【0015】
撮像光学系20は、少なくとも1つの光学部材を有し、焦点距離および焦点深度等の所望の光学特性を満たすように設計される。
図3に示すように、撮像光学系20は、光学部材として、例えば複数のレンズ201、202、203、204、205および206を含む。撮像光学系20はさらに絞りおよび光学フィルタ等を含み得る。レンズ201、202、203、204、205および206は、例えばプラスチックレンズであるが、一部または全部がガラスレンズであってよい。また、撮像光学系20が含むレンズの数は、1つであってよいし、6つ以外の複数であってよい。
【0016】
鏡筒21は、撮像光学系20を保持する部材である。鏡筒21は、レンズ201、202、203、204、205および206の光軸を囲む筒状の形を有する。鏡筒21は、レンズ201、202、203、204、205および206、絞り、ならびに光学フィルタ等の外周部分を挿入して保持するための穴または溝を有してよい。鏡筒21の材料は例えば樹脂であるが、樹脂に限定されない。鏡筒21の材料となる樹脂は、例えば前部筐体12の説明で列挙した樹脂であるが、それらに限定されない。鏡筒21は、板金15、第1の伝熱部材37、撮像素子31、第1の基板32および第2の伝熱部材38を挟んだ状態で、金属筐体14に対して位置が固定されてよい。鏡筒21と金属筐体14とは、例えばネジ留めされるが、接着剤、溶着または嵌合等の別の手法によって接続されてよい。
【0017】
板金15は、平らな金属に対して切断および曲げ等の加工を実行して所定の形状とした部材である。板金15は伝熱性の高い金属を材料とする。板金15の材料となる金属は、例えばアルミ、銅、ニッケル、洋白、マグネシウム合金および亜鉛合金等であり得るが、これらに限定されない。
図1に示すように、板金15は、撮像光学系20と撮像素子31との間に位置する。平板部15aは、撮像光学系20の光束を遮らない開口を有する。板金15は、例えば平板部15aと、平板部15aから突出して後方に延びる突出部15bと、を含む形状を有する。突出部15bは少なくとも一部が金属筐体14に接する。そのため、板金15の熱は、金属筐体14へと伝わる。
【0018】
第1の伝熱部材37は、光軸方向(y軸方向)において、撮像素子31と板金15との間に位置する。第1の伝熱部材37は、撮像光学系20の光束を遮らない開口を有する。第1の伝熱部材37は、撮像素子31および板金15に接しており、撮像素子31からの熱を板金15に伝える。第1の伝熱部材37は、例えば柔軟性を有する伝熱シートである。第1の伝熱部材37の材料は、例えばシリコーンであってよいが、これに限定されず他の伝熱性を有する材料であり得る。
【0019】
撮像素子31は、撮像光学系20を介して結像する被写体像を受光可能に配置される。撮像素子31は、受光面上に結像される被写体像を撮像して電気信号に変換して出力する。以下において、撮像素子31が出力する電気信号は画像信号と称される。撮像素子31としては、例えばCCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等を用いることができる。
【0020】
第1の基板32は、回路基板であって、少なくとも撮像素子31を含む電子部品を実装する。電子部品は、例えばプロセッサ33と撮像素子31との間で、画像信号および制御信号を送受信する通信用の部品をさらに含んでよい。第1の基板32は、前方の面に撮像素子31を実装する。つまり、第1の基板32は、撮像素子31の受光面が、撮像光学系20介して結像する被写体像を受光できるように実装する。第1の基板32は、第1の伝熱部材37を挟んだ状態で、板金15に対して位置が固定されてよい。第1の基板32と板金15の平板部15aとは、例えばネジ留めされるが、接着剤、溶着または嵌合等の別の手法によって接続されてよい。ここで、第1の基板32は伝熱シートを間に挟んで撮像素子31を実装してよい。このとき、撮像素子31で生じた熱の一部は、第1の基板32を介して、第2の伝熱部材38に伝わる。
【0021】
第2の伝熱部材38は、光軸方向(y軸方向)において、第1の基板32と金属筐体14の連結部14bとの間に位置する。連結部14bについては後述する。第2の伝熱部材38は、第1の基板32および金属筐体14と接しており、第1の基板32からの熱を金属筐体14に伝える。第2の伝熱部材38は、例えば柔軟性を有する伝熱シートである。第2の伝熱部材38の材料は、例えばシリコーンであってよいが、これに限定されず他の伝熱性を有する材料であり得る。
【0022】
金属筐体14は、金属製のカバーであって衝撃等から内部の部品を保護する。また、金属筐体14は、伝熱性に優れており、内部の部品で生じた熱を大気に放熱する。金属筐体14の材料となる金属は、例えば板金15の説明で列挙した金属であるが、それらに限定されない。また、金属筐体14は、生産性を高めるために、金属材料を金型内に圧入して形成されるダイカスト筐体であってよい。
【0023】
図3に示すように、金属筐体14は、薄肉部14aと連結部14bとを含む。金属筐体14は、内部の部品を囲む外壁部分が連結部14bによって接続される構造を有する。金属筐体14は、断面視で、両側にある外壁部分を連結部14bが結ぶ、アルファベットのHに似た形状(以下、H型という)を有する。金属筐体14の外壁部分は、断面視で、厚さが薄い薄肉部14aと、それ以外の厚い部分とを有する。
【0024】
図3に示すように、薄肉部14aは、連結部14bよりも前方の外壁部分が対応する。例えば、撮像素子31の位置を基準とした場合に、金属筐体14は、撮像素子31より撮像光学系20の側(前方)に比べて、撮像素子31より撮像光学系20の反対側(後方)の方が肉厚である。また、金属筐体14は、撮像素子31の受光面の裏側および側面を囲んでいる。つまり、金属筐体14は、薄肉部14aによって撮像素子31の側面を、および、連結部14bによって、撮像素子31の受光面の裏側を囲んでいる。
【0025】
ここで、撮像装置10が備える部品は、連結部14bによって、第2の伝熱部材38より前方に配置される部品群と、第3の伝熱部材39より後方に配置される部品群と、に区分される。ただし、連結部14bは、これらの部品群を完全に分離する構造でなくてよい。例えば連結部14bは、撮像素子31とプロセッサ33とを接続する配線を通すために、一つまたは複数の開口を有してよい。ただし、第2の伝熱部材38および第3の伝熱部材39からの伝熱性を高めるために、連結部14bの開口は、第2の伝熱部材38および第3の伝熱部材39と接しない部分に位置することが好ましい。
【0026】
金属筐体14は、上記のように、板金15の突出部15bと直接的に接する。しかし、金属筐体14は鏡筒21と直接接触しない。
図3に示すように、金属筐体14と鏡筒21との間には隙間が存在する。そして、金属筐体14は、断熱部材21aを介して、鏡筒21と接触する。断熱部材21aは、断熱性を有する部材であって、例えば発泡性樹脂等が用いられてよい。ここで、撮像装置10は、金属筐体14を含む筐体11によって外部からの水分を防ぐ、防水密閉構造であることがさらに好ましい。このとき、金属筐体14と鏡筒21とが熱伝導率の低い接着剤または充填剤で接続されて、接着剤または充填剤が断熱部材21aとして機能してよい。別の例として、金属筐体14と鏡筒21とが例えばゴム等でできたパッキンを介在させた状態で結合されて、パッキンが断熱部材21aとして機能してよい。
【0027】
第3の伝熱部材39は、光軸方向(y軸方向)において、第2の基板34と金属筐体14の連結部14bとの間に位置する。第3の伝熱部材39は、第2の基板34および金属筐体14と接しており、第2の基板34からの熱を金属筐体14に伝える。第3の伝熱部材39は、例えば柔軟性を有する伝熱シートである。第3の伝熱部材39の材料は、例えばシリコーンであってよいが、これに限定されず他の伝熱性を有する材料であり得る。
【0028】
プロセッサ33は、撮像素子31からの画像信号に基づいて処理を実行する。プロセッサ33は、処理を実行した画像信号を出力信号として、撮像装置10の外部に出力してよい。配線出力部13aについては後述する。ここで、プロセッサ33が画像信号に基づいて実行する処理は、例えば外光に応じて輝度を調整する画像処理であってよいし、撮像された画像に含まれる特定物を強調して表示する画像処理であってよい。特定物は、例えば交通標識および道路上の白線であってよい。また、光軸方向(y軸方向)において、プロセッサ33は、金属筐体14の連結部14bを挟んで、撮像素子31の反対側に位置する。つまり、熱源である撮像素子31とプロセッサ33とは、連結部14bを挟んで配置されている。
【0029】
第2の基板34は、回路基板であって、少なくともプロセッサ33を含む電子部品を実装する。電子部品は、例えばプロセッサ33等に供給する電力を制御する部品をさらに含んでよい。また、電子部品は、例えばプロセッサ33の出力信号を、撮像装置10の外部に送信する通信用の部品をさらに含んでよい。第2の基板34は、前方の面にプロセッサ33を実装してよい。つまり、第2の基板34は、プロセッサ33が第3の伝熱部材39と直接に接するように実装してよい。第2の基板34は、第3の伝熱部材39を挟んだ状態で、金属筐体14に対して位置が固定されてよい。第2の基板34と金属筐体14の連結部14bとは、例えばネジ留めされるが、接着剤、溶着または嵌合等の別の手法によって接続されてよい。
【0030】
後部筐体13は、撮像装置10の後方に位置する筐体であって、衝撃等から内部の部品を保護する。後部筐体13は、撮像装置10への電力供給線およびプロセッサ33の出力信号を出力する信号線等の配線を通すための開口である配線出力部13aを有する。後部筐体13は、第3の伝熱部材39、プロセッサ33および第2の基板34を挟んだ状態で、金属筐体14に対して位置が固定されてよい。後部筐体13と金属筐体14とは、例えばネジ留めされるが、接着剤、溶着または嵌合等の別の手法によって接続されてよい。後部筐体13の材料は例えば樹脂であるが、樹脂に限定されない。後部筐体13の材料となる樹脂は、例えば前部筐体12の説明で列挙した樹脂であるが、それらに限定されない。
【0031】
(撮像装置の車両への搭載)
上記の構成の撮像装置10は、例えば車載カメラとして車両1に搭載されてよい。撮像装置10は、例えば
図4に示すように、電子ミラーのシステムにおける撮像装置10として、サイドミラー内にあってよい。別の例として、撮像装置10は、車両1の後続車を正面から撮影可能なように、車両1の後方外部に固定されてよい。撮像装置10は車両1の後方の画像を撮像する。撮像装置10によって撮像された車両1の後方の画像は、車両1の室内にある表示装置に表示される。表示装置は、運転席の運転者が視認可能である位置にある。表示装置は、例えばルームミラーまたはインストルメントパネルの位置にあってよい。
【0032】
(撮像装置の放熱性)
上記のように、車載カメラは高温環境下で使用される。さらに、車載カメラに対して、さらなる高画素化および高機能化が求められている。そのため、撮像素子31、プロセッサ33および周辺回路の駆動によって放出される熱量は増加している。したがって、車載カメラには高い放熱性能が要求されるが、本実施形態に係る撮像装置10は、以下に説明するように高い放熱性能を有しており、車載カメラとしての用途に適している。
【0033】
撮像装置10において、撮像素子31は熱源となり得る。撮像素子31で生じた熱は、撮像素子31と接する第1の伝熱部材37を介して板金15に伝わる。また、板金15に伝わった熱は、突出部15bを介して金属筐体14に伝わる。金属筐体14は、伝熱性に優れており、伝わった熱を大気に放熱する。よって、撮像装置10は、撮像素子31で生じた熱を、金属筐体14によって大気に放熱することができる。ここで、金属筐体14は鏡筒21と直接接触しておらず、断熱部材21aを介して位置関係が保たれている。そのため、金属筐体14から鏡筒21に熱が伝わることもない。
【0034】
また、金属筐体14は、撮像素子31より撮像光学系20の側において薄肉部14aを有する。薄肉部14aにおいては、肉厚の部分と比較して、熱を大気へと放出する効果が高い。そのため、薄肉部14aからの高い放熱性によって、鏡筒21の周囲の温度は、他の部分と比べて低い温度が保たれる。また、金属筐体14が撮像素子31より撮像光学系20の側において薄肉部14aを有することによって、撮像光学系20を配置する内部空間が狭くなることを回避できる。そのため、このような構造は、特に小型の撮像装置10に適している。
【0035】
また、撮像装置10において、第1の基板32および第2の基板34は熱源となり得る。ここで、撮像装置10の金属筐体14は、光軸方向(y軸方向)において、第1の基板32と第2の基板34との間に位置する連結部14bを含む。第1の基板32で生じた熱は、第1の基板32と接する第2の伝熱部材38を介して、金属筐体14の連結部14bに伝わる。また、プロセッサ33の熱を含め、第2の基板34で生じた熱は、第2の基板34と接する第3の伝熱部材39を介して、金属筐体14の連結部14bに伝わる。金属筐体14は、伝熱性に優れており、伝わった熱を大気に放熱する。よって、撮像装置10は、第1の基板32および第2の基板34で生じた熱を、金属筐体14によって大気に放熱することができる。
【0036】
図5は、本実施形態に係る撮像装置10の熱解析シミュレーションの結果を示す図である。撮像素子31、第1の基板32および第2の基板34で生じた熱は、金属筐体14で効率的に放熱される。そのため、
図5に示すように、撮像素子31、第1の基板32および第2の基板34は高温にならず、撮像装置10の光学性能の劣化が防止されることがわかる。
【0037】
ここで、板金15および金属筐体14の少なくとも1つを備えない従来技術では、撮像素子31、第1の基板32および第2の基板34で生じた熱は、鏡筒21を介して、撮像光学系20に伝わる。そのため、従来技術では、撮像素子31で生じた熱によって光学性能に影響が生じていた。
【0038】
図6は、H型の金属筐体14を備えない比較例の撮像装置110の熱解析シミュレーション結果を示す図である。設定条件は
図5の場合と同じである。
図6に示すように、比較例の撮像装置110は、撮像素子31、第1の基板32および第2の基板34が高温になっており、その熱が鏡筒21にまで伝わっていることがわかる。このように、比較例の撮像装置110では、光学性能の劣化を防止することができない。
【0039】
比較例との対比から明らかなように、本実施形態の撮像装置10は撮像光学系20の温度上昇を抑えて、光学性能の劣化を防ぐことが可能である。また、撮像装置10は高い放熱効果を備えるため、車両1に搭載される場合のように高温環境下で使用され得る。
【0040】
(別の実施形態)
図7および
図8は、本開示の別の実施形態に係る撮像装置10の外観図である。本実施形態に係る撮像装置10は、上記で説明した構成に加えて、第4の伝熱部材50を備える。第4の伝熱部材50は、外周の少なくとも一部が金属筐体14から張り出すように位置する。また、第4の伝熱部材50は、少なくとも一部が金属筐体14と接しており、金属筐体14からの熱を大気に放熱する。第4の伝熱部材50はブラケットとも呼ばれる。
【0041】
図7に示すように、第4の伝熱部材50は板状の伝熱体であってよい。例えば、第4の伝熱部材50は、第1の伝熱部材37、第2の伝熱部材38および第3の伝熱部材39に比べて、硬質の材料で構成されてよい。第4の伝熱部材50は、例えば金属板であってよい。第4の伝熱部材50の材料となる金属は、例えば板金15の説明で列挙した金属であるが、それらに限定されない。
【0042】
図7に示すように、第4の伝熱部材50は、後部筐体13に延びた金属筐体14の突起と接するように固定されてよい。また、第4の伝熱部材50は、放熱の効率を向上させるために穴を有していてよい。別の例として、第4の伝熱部材50は、放熱の効率を向上させるために、表面積を大きくするための凹凸を表面に有していてよい。別の例として、第4の伝熱部材50は、スリットを有していてよい。
【0043】
撮像素子31および第1の基板32からの熱、ならびに、プロセッサ33および第2の基板34からの熱は、
図8に示すように、金属筐体14だけでなく第4の伝熱部材50において大気に放熱される。そのため、本実施形態に係る撮像装置10は、第4の伝熱部材50を備えることによって放熱性を向上させて、撮像光学系20の温度上昇をさらに抑えることが可能である。よって、本実施形態に係る撮像装置10、および、この撮像装置10を搭載する車両1は、光学性能の劣化を防ぐ効果を更に高めることが可能である。ここで、第4の伝熱部材50の位置は、撮像装置10の金属筐体14に直接的に接する場所に限定されない。例えば第4の伝熱部材50は、撮像装置10から離れた位置に固定されており、伝熱シート等の他の伝熱部材を介して撮像装置10と接続されてよい。
【0044】
本開示を図面および実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形および修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段などに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段などを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 車両
10 撮像装置
11 筐体
12 前部筐体
13 後部筐体
13a 配線出力部
14 金属筐体
14a 薄肉部
14b 連結部
15 板金
15a 平板部
15b 突出部
20 撮像光学系
21 鏡筒
21a 断熱部材
31 撮像素子
32 第1の基板
33 プロセッサ
34 第2の基板
37 第1の伝熱部材
38 第2の伝熱部材
39 第3の伝熱部材
50 第4の伝熱部材
110 撮像装置
201、202、203、204、205、206 レンズ