(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】光電変換装置、光電変換システム及び移動体
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20240822BHJP
H04N 25/70 20230101ALI20240822BHJP
【FI】
H01L27/146 A
H04N25/70
(21)【出願番号】P 2020097704
(22)【出願日】2020-06-04
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】長友 靖浩
【審査官】田邊 顕人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-125784(JP,A)
【文献】特開2019-212737(JP,A)
【文献】特開2010-267680(JP,A)
【文献】特開2013-038176(JP,A)
【文献】特開2019-091745(JP,A)
【文献】特開2013-065688(JP,A)
【文献】特開2000-196055(JP,A)
【文献】特開2007-305675(JP,A)
【文献】特開2013-157367(JP,A)
【文献】特開2012-079979(JP,A)
【文献】特開2012-204562(JP,A)
【文献】特開平05-129572(JP,A)
【文献】特開2013-098503(JP,A)
【文献】特開2019-047392(JP,A)
【文献】特開2014-096540(JP,A)
【文献】国際公開第2019/235179(WO,A1)
【文献】特開2018-195719(JP,A)
【文献】国際公開第2016/143194(WO,A1)
【文献】特開2017-224741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H04N 25/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び第2面を有する半導体基板と、
前記半導体基板に複数の行及び複数の列をなすように配された複数の画素と、
前記半導体基板の前記第1面の一部を覆うように配された遮光層と、
前記半導体基板に対して前記第2面の側に配された配線層と、
を有し、
前記複数の画素は、前記第1面の側からの入射光に基づく画素信号を出力する第1画素と、黒レベルの基準信号を出力する第2画素とを含み、
前記半導体基板は、前記遮光層によって遮光されていない第1領域と、前記遮光層によって遮光されており、前記第2画素が配された第2領域と、平面視において前記第1領域と前記第2領域の間に配された第3領域とを有し、
前記第1領域に入射され、前記半導体基板を導波路として前記第2領域に伝搬する導波光を減衰させる減衰部材が前記第3領域に配されており、
前記第1領域には、前記減衰部材が配されておらず、
前記減衰部材は、前記第2面と前記配線層の間に配され
、
前記半導体基板の前記第1面に平行な方向において、前記減衰部材の前記複数の画素が配された行方向における長さは、前記複数の画素のうちの1つの画素の前記行方向における長さよりも長く、
前記半導体基板の前記第1面に平行な方向において、前記減衰部材の前記複数の画素が配された列方向における長さは、前記複数の画素のうちの1つの画素の前記列方向における長さよりも長い
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記第1領域には前記第1画素が配されている
ことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記第2領域及び前記第3領域のいずれにも前記第1画素が配されていない
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
複数の配線層を有し、
前記複数の配線層は、前記半導体基板に対して前記第2面の側に配された前記配線層を含み、
前記複数の配線層のうち、
前記半導体基板に対して前記第2面の側に配された前記配線層が前記第2面に最も近接している
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記第2面に対する平面視において、
前記減衰部材は、前記複数の画素に亘って延在している
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項6】
第1面及び第2面を有する半導体基板と、
前記半導体基板に複数の行及び複数の列をなすように配された複数の画素と、
前記半導体基板の前記第1面の一部を覆うように配された遮光層と、
前記半導体基板に対して前記第2面の側に配された配線層と、
を有し、
前記複数の画素は、前記第1面の側からの入射光に基づく画素信号を出力する第1画素と、黒レベルの基準信号を出力する第2画素とを含み、
前記半導体基板は、前記遮光層によって遮光されていない第1領域と、前記遮光層によって遮光されており、前記第2画素が配された第2領域と、平面視において前記第1領域と前記第2領域の間に配された第3領域とを有し、
前記第1領域に入射され、前記半導体基板を導波路として前記第2領域に伝搬する導波光を減衰させる減衰部材が前記第3領域に配されており、
前記平面視において、前記第1領域は、前記第2領域よりも前記半導体基板の外周側に配され
、
前記半導体基板の前記第1面に平行な方向において、前記減衰部材の前記複数の画素が配された行方向における長さは、前記複数の画素のうちの1つの画素の前記行方向における長さよりも長く、
前記半導体基板の前記第1面に平行な方向において、前記減衰部材の前記複数の画素が配された列方向における長さは、前記複数の画素のうちの1つの画素の前記列方向における長さよりも長い
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項7】
前記第1領域、前記第2領域及び前記第3領域のいずれにも前記第1画素が配されていない
ことを特徴とする請求項6に記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記減衰部材は、前記第2面に接し、前記配線層に接しない
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記半導体基板の材料は、シリコンを主たる成分とする
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項10】
前記減衰部材は、前記導波光を吸収する光吸収部材である
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項11】
前記光吸収部材の材料はタングステンを主たる成分とする
ことを特徴とする請求項10に記載の光電変換装置。
【請求項12】
前記光吸収部材は、前記半導体基板に対して前記第2面の側に配されている
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の光電変換装置。
【請求項13】
前記光吸収部材は、前記第2面と前記配線層の間に配されている
ことを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項14】
前記光吸収部材は、前記半導体基板に対して前記第1面の側に配されている
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の光電変換装置。
【請求項15】
前記光吸収部材は、前記第1面と前記遮光層の間に配されている
ことを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項16】
前記光吸収部材の材料と前記遮光層の材料は異なる
ことを特徴とする請求項14又は15に記載の光電変換装置。
【請求項17】
前記光吸収部材と前記半導体基板の距離が100nm以下である
ことを特徴とする請求項10乃至16のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項18】
前記光吸収部材と前記半導体基板の距離が80nm以下である
ことを特徴とする請求項10乃至16のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項19】
前記光吸収部材と前記半導体基板の距離が70nm以下である
ことを特徴とする請求項10乃至16のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項20】
前記光吸収部材と前記半導体基板の距離が50nm以下である
ことを特徴とする請求項10乃至16のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項21】
前記光吸収部材と前記半導体基板の距離が40nm以下である
ことを特徴とする請求項10乃至16のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項22】
前記光吸収部材と前記半導体基板の距離が20nm以下である
ことを特徴とする請求項10乃至16のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項23】
前記光吸収部材と前記半導体基板の距離が10nm以下である
ことを特徴とする請求項10乃至16のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項24】
前記半導体基板の前記第1面及び前記第2面に平行な方向において、前記光吸収部材の長さが15μm以上である
ことを特徴とする請求項10乃至23のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項25】
前記半導体基板の前記第1面及び前記第2面に平行な方向において、前記光吸収部材の長さが30μm以上である
ことを特徴とする請求項10乃至23のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項26】
前記半導体基板の前記第1面及び前記第2面に平行な方向において、前記光吸収部材の長さが45μm以上である
ことを特徴とする請求項10乃至23のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項27】
前記減衰部材は、前記導波光を前記半導体基板の外部に回折させる回折格子である
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項28】
前記回折格子は、前記半導体基板の前記第1面又は前記第2面に所定のピッチで配されたトレンチにより構成されている
ことを特徴とする請求項27に記載の光電変換装置。
【請求項29】
前記回折格子は、前記半導体基板の前記第1面又は前記第2面に所定のピッチで配され
たポリシリコンにより構成されている
ことを特徴とする請求項27に記載の光電変換装置。
【請求項30】
前記回折格子は、前記半導体基板の前記第1面又は前記第2面に所定のピッチで配され
た金属層により構成されている
ことを特徴とする請求項27に記載の光電変換装置。
【請求項31】
前記金属層の材料はタングステンである
ことを特徴とする請求項
30に記載の光電変換装置。
【請求項32】
前記半導体基板の前記第1面及び前記第2面に平行な方向において、前記回折格子の長さが35μm以上である
ことを特徴とする請求項27乃至
31のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項33】
前記半導体基板の前記第1面及び前記第2面に平行な方向において、前記回折格子の長さが70μm以上である
ことを特徴とする請求項27乃至
31のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項34】
前記半導体基板の前記第1面及び前記第2面に平行な方向において、前記回折格子の長さが105μm以上である
ことを特徴とする請求項27乃至
31のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項35】
前記複数の画素は、前記画素信号及び前記基準信号をいずれも出力しない第3画素を更に含み、
前記第3領域には前記第3画素が配されている
ことを特徴とする請求項1乃至
34のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項36】
請求項1乃至
35のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置から出力される信号を処理する信号処理部と、
を有することを特徴とする光電変換システム。
【請求項37】
移動体であって、
請求項1乃至
35のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置からの信号に基づく視差画像から、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段と、
前記距離情報に基づいて前記移動体を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置、光電変換システム及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、裏面照射型の光電変換装置が開示されている。裏面照射型の光電変換装置は、配線層が形成された側の面とは反対側の面から入射光を取り込むことができるように半導体基板が薄化されている。これにより、配線層での光の反射による損失の低減等の要因によって光電変換装置の感度が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遮光膜で遮光されている画素を含むオプティカルブラック画素領域を有する光電変換装置がある。オプティカルブラック画素領域の画素は、黒レベルの基準信号を出力する。薄い半導体基板を有する裏面照射型の光電変換装置にこの構成を適用すると、遮光膜がない領域から入射された光が半導体基板を導波路としてオプティカルブラック画素領域に入射する場合がある。この場合、オプティカルブラック画素領域で取得される基準信号の誤差が増大し得る。
【0005】
本発明は、黒レベルの基準信号をより高精度に取得することができる光電変換装置、光電変換システム及び移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、第1面及び第2面を有する半導体基板と、前記半導体基板に複数の行及び複数の列をなすように配された複数の画素と、前記半導体基板の前記第1面の一部を覆うように配された遮光層と、前記半導体基板に対して前記第2面の側に配された配線層と、を有し、前記複数の画素は、前記第1面の側からの入射光に基づく画素信号を出力する第1画素と、黒レベルの基準信号を出力する第2画素とを含み、前記半導体基板は、前記遮光層によって遮光されていない第1領域と、前記遮光層によって遮光されており、前記第2画素が配された第2領域と、平面視において前記第1領域と前記第2領域の間に配された第3領域とを有し、前記第1領域に入射され、前記半導体基板を導波路として前記第2領域に伝搬する導波光を減衰させる減衰部材が前記第3領域に配されており、前記第1領域には、前記減衰部材が配されておらず、前記減衰部材は、前記第2面と前記配線層の間に配され、前記半導体基板の前記第1面に平行な方向において、前記減衰部材の前記複数の画素が配された行方向における長さは、前記複数の画素のうちの1つの画素の前記行方向における長さよりも長く、前記半導体基板の前記第1面に平行な方向において、前記減衰部材の前記複数の画素が配された列方向における長さは、前記複数の画素のうちの1つの画素の前記列方向における長さよりも長いことを特徴とする光電変換装置が提供される。
【0007】
本発明の他の一観点によれば、第1面及び第2面を有する半導体基板と、前記半導体基板に複数の行及び複数の列をなすように配された複数の画素と、前記半導体基板の前記第1面の一部を覆うように配された遮光層と、前記半導体基板に対して前記第2面の側に配された配線層と、を有し、前記複数の画素は、前記第1面の側からの入射光に基づく画素信号を出力する第1画素と、黒レベルの基準信号を出力する第2画素とを含み、前記半導体基板は、前記遮光層によって遮光されていない第1領域と、前記遮光層によって遮光されており、前記第2画素が配された第2領域と、平面視において前記第1領域と前記第2領域の間に配された第3領域とを有し、前記第1領域に入射され、前記半導体基板を導波路として前記第2領域に伝搬する導波光を減衰させる減衰部材が前記第3領域に配されており、前記平面視において、前記第1領域は、前記第2領域よりも前記半導体基板の外周側に配され、前記半導体基板の前記第1面に平行な方向において、前記減衰部材の前記複数の画素が配された行方向における長さは、前記複数の画素のうちの1つの画素の前記行方向における長さよりも長く、前記半導体基板の前記第1面に平行な方向において、前記減衰部材の前記複数の画素が配された列方向における長さは、前記複数の画素のうちの1つの画素の前記列方向における長さよりも長いことを特徴とする光電変換装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、黒レベルの基準信号をより高精度に取得することができる光電変換装置、光電変換システム及び移動体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る光電変換装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係る半導体基板の平面模式図である。
【
図4】第1実施形態に係る光電変換装置のA-A’線における断面模式図である。
【
図5】第1実施形態に係る光電変換装置のB-B’線における断面模式図である。
【
図6】第1実施形態に係る半導体基板内の導波光を説明する断面模式図である。
【
図7】第1実施形態に係る光吸収部材への光の侵入量を説明する模式図である。
【
図8】第1実施形態に係る半導体基板と光吸収部材の距離の影響を説明するグラフである。
【
図9】第1実施形態に係る導波光の強度と伝搬距離の関係を示すグラフである。
【
図10】第2実施形態に係る光電変換装置のA-A’線における断面模式図である。
【
図11】第3実施形態に係る光電変換装置のA-A’線における断面模式図である。
【
図12】第3実施形態に係る回折格子における光の反射を説明する断面模式図である。
【
図13】第3実施形態に係る回折格子における光の反射率を示すグラフである。
【
図14】第3実施形態に係る回折格子における光の反射率と回折格子の深さとの関係を示すグラフである。
【
図15】第3実施形態に係る回折格子における光の反射率と回折格子のピッチとの関係を示すグラフである。
【
図16】第3実施形態に係る導波光の強度と伝搬距離の関係を示すグラフである。
【
図17】第4実施形態に係る撮像システムの構成例を示すブロック図である。
【
図18】第5実施形態に係る撮像システム及び移動体の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。複数の図面にわたって同一の要素又は対応する要素には共通の符号が付されており、その説明は省略又は簡略化されることがある。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る光電変換装置の概略構成を示すブロック図である。光電変換装置は、画素アレイ20、垂直走査回路30、列増幅回路40、水平走査回路50、制御回路60及び出力回路70を備える。これらの回路は1又は2以上の半導体基板上に形成され得る。なお、本実施形態の光電変換装置は、画像を取得する撮像装置であるものとするが、これに限定されるものではない。例えば、光電変換装置は、焦点検出装置、測距装置、TOF(Time-Of-Flight)カメラ等であってもよい。
【0012】
なお、本明細書において、「光」とはあらゆる波長の電磁波を含み得る。すなわち、「光」は、可視光に限定されるものではなく、赤外線、紫外線、X線等の不可視光を含み得る。
【0013】
画素アレイ20は、複数の行及び複数の列をなすように配置された複数の画素10を備える。垂直走査回路30は、画素10に含まれるトランジスタをオン(導通状態)又はオフ(非導通状態)に制御するための制御信号を画素10の各行に設けられた制御信号線6を介して供給する走査回路である。垂直走査回路30は、シフトレジスタ又はアドレスデコーダにより構成され得る。ここで、各画素10に供給される制御信号は複数の種類の制御信号を含み得るため、各行の制御信号線6は複数の駆動配線の組として構成され得る。画素10の各列には列信号線5が設けられており、画素10からの信号が列ごとに列信号線5に読み出される。
【0014】
列増幅回路40は列信号線5に出力された画素信号の増幅、相関二重サンプリング処理等の処理を行う。水平走査回路50は、列増幅回路40の増幅器に接続されたスイッチをオン又はオフに制御するための制御信号を供給する。水平走査回路50は、シフトレジスタ又はアドレスデコーダにより構成され得る。出力回路70はバッファアンプ、差動増幅器等から構成され、列増幅回路40からの画素信号を撮像装置1の外部の信号処理部に出力する。なお、撮像装置1が、AD変換部を更に有することにより、デジタルの画像信号を出力し得る構成であってもよい。例えば、列増幅回路40はAD変換部を含み得る。制御回路60は、垂直走査回路30、列増幅回路40、水平走査回路50の動作タイミング等を制御する。
【0015】
図2は、本実施形態に係る画素10の回路図である。画素10は、光電変換部11、フローティングディフュージョン(以下、FD)12、転送トランジスタ13、リセットトランジスタ14、ソースフォロアトランジスタ(以下、SFトランジスタ)15及び選択トランジスタ16を備える。これらのトランジスタは、制御電極としてゲート電極を有するMOSトランジスタにより構成され得る。転送トランジスタ13、リセットトランジスタ14及び選択トランジスタ16のゲートには、垂直走査回路30から制御信号線6を介して、これらのトランジスタを制御するための制御信号が入力される。
【0016】
光電変換部11は、光電変換により入射光に応じた電荷を生成するとともに、当該電荷を蓄積する光電変換素子である。光電変換部11は半導体基板内に形成されたフォトダイオードにより構成され得る。光電変換部11を構成するフォトダイオードのアノードは接地電位を有する接地電位線に接続されており、カソードは転送トランジスタ13のソースに接続されている。
【0017】
転送トランジスタ13のドレイン、リセットトランジスタ14のソース及びSFトランジスタ15のゲートはFD12に接続されている。転送トランジスタ13は、オンとなることにより光電変換部11の電荷をFD12に転送する。
図2中のFD12に接続された容量は、FD12に生じる容量を示している。この容量により、FD12の電位は光電変換部11から転送された電荷に応じて変化する。
【0018】
リセットトランジスタ14のドレイン及びSFトランジスタ15のドレインは、電源電位を有する電位線17に接続されている。SFトランジスタ15のソースは、選択トランジスタ16のドレインに接続されている。選択トランジスタ16のソースは、列信号線5に接続されている。SFトランジスタ15は、列信号線5に接続された不図示の定電流源とともにソースフォロア回路を構成する。このソースフォロア回路は、FD12の電圧に基づく信号を選択トランジスタ16を介して列信号線5に出力する。リセットトランジスタ14は、オンとなることによりFD12の電位をリセットする。
【0019】
画素10の各々は、入射光が光電変換部11に導かれるまでの光路上に配されたマイクロレンズ及びカラーフィルタを有している(マイクロレンズ及びカラーフィルタの配置については
図4等を参照)。マイクロレンズは、入射光を光電変換部11に集光する。カラーフィルタは、所定の色の光を選択的に透過する。
【0020】
図3は、本実施形態に係る半導体基板の平面模式図である。画素アレイ20内には、有効画素領域101、オプティカルブラック画素領域102及びダミー画素領域103a、103bが配されている。有効画素領域101(第1領域)は、入射光に基づく画素信号を出力する画素10である有効画素(第1画素)が配されている領域である。オプティカルブラック画素領域102(第2領域)は、光電変換部11が遮光層によって遮光されることにより、黒レベルの基準信号を出力する画素10であるオプティカルブラック画素(第2画素)が配されている領域である。ダミー画素領域103a、103b(第3領域)は、上述の画素信号と基準信号をいずれも出力しないダミー画素(第3画素)が配されている領域である。
【0021】
有効画素領域101は、画素アレイ20が配されている半導体基板の中心付近に配されている。ダミー画素領域103aは、有効画素領域101を囲うように配されている。オプティカルブラック画素領域102は、ダミー画素領域103aを囲うように配されている。ダミー画素領域103bは、オプティカルブラック画素領域102を囲うように配されている。ダミー画素領域103bの外側のチップ端部105との間の領域には、外周領域104(第1領域)が配されている。すなわち、外周領域104は、オプティカルブラック画素領域102よりも半導体基板の外周側に配されている。外周領域104には、例えば、半導体基板と外部との導通のためのパッド及びパッドを形成するために遮光層が開口されている開口部が設けられている。
【0022】
このように、平面視において、オプティカルブラック画素領域102と有効画素領域101との間には、ダミー画素領域103aが配されている。平面視において、オプティカルブラック画素領域102と外周領域104との間には、ダミー画素領域103bが配されている。ダミー画素領域103a、103bが配されていることにより、有効画素領域101又は外周領域104への入射光がオプティカルブラック画素領域102に入射されにくくなる。
【0023】
図4は、本実施形態に係る光電変換装置のA-A’線における断面模式図である。光電変換装置は、半導体基板201、絶縁層202、206、カラーフィルタ203、マイクロレンズ204、遮光層205、配線層207及び光吸収部材208を有している。
【0024】
半導体基板201は、第1面F1及び第2面F2を有している。第1面F1は裏面と呼ばれることがあり、第2面F2は表面(おもて面)と呼ばれることもある。半導体基板201の主たる材料は、典型的にはシリコンである。半導体基板201は主たる材料としてシリコンを含んでいればよく、シリコン以外の材料が含まれていても良い。
図2に示した光電変換部11、各種トランジスタは、半導体基板201内の半導体領域に形成される。半導体基板201の厚さは、典型的には3μm程度である。
【0025】
絶縁層202は半導体基板201の第1面F1の上に配される。絶縁層202の材料は、典型的には酸化シリコンである。絶縁層202の半導体基板201とは反対側の面上には、カラーフィルタ203及びマイクロレンズ204が順に配されている。1つのカラーフィルタ203と1つのマイクロレンズ204とが複数の画素10のうちの1つに対応して配されている。半導体基板201の第1面F1側から入射された光は、マイクロレンズ204、カラーフィルタ203及び絶縁層202を通過して半導体基板201の第1面F1に入射される。このように、本実施形態の光電変換装置は、半導体基板201の裏面側から入射される光を検出する構造を有しているため、裏面照射型と呼ばれる。
【0026】
オプティカルブラック画素領域102及びダミー画素領域103aにおいて、第1面F1の上には絶縁層202を介して遮光層205が配されている。遮光層205の材料は、典型的には、アルミニウムであり、遮光層205の厚さは、典型的には200nm程度である。
【0027】
オプティカルブラック画素領域102及びダミー画素領域103aのマイクロレンズ204に入射された光は、遮光層205によって遮光されるため、半導体基板201に入射されない。これにより、オプティカルブラック画素領域102内の画素10は、黒レベルの基準信号を出力することができる。
【0028】
一方、有効画素領域101においては、遮光層205が配されていないため、有効画素領域101のマイクロレンズ204に入射された光は、半導体基板201に入射される。これにより、有効画素領域101内の画素10は、入射光に基づく画素信号を出力することができる。
【0029】
絶縁層206は半導体基板201の第2面F2の上に配される。絶縁層206の材料は、典型的には酸化シリコンである。半導体基板201の第2面F2の上には、絶縁層206を介して配線層207が配される。裏面照射型の光電変換装置は、配線層207が配されている側の面(表面)とは反対側の面(裏面)から光が入射される構造であるため、配線層207で入射光が反射することに起因する損失が抑制されている。
【0030】
光吸収部材208は、ダミー画素領域103aにおいて、第2面F2の上に長さLにわたって配されている。長さLを定義する向きは、第1面F1又は第2面F2に平行な方向である。光吸収部材208の材料は、半導体基板201を伝搬する光を吸収する材料であればよく、典型的には、アルミニウム、タングステン等の金属である。なお、光吸収部材208の材料としてアルミニウムあるいはタングステンを用いる場合、そのほかの金属をさらに含んでいても良い。光吸収部材208の厚さは、典型的には150nm程度である。光吸収部材208を設けることによる効果については後述する。
【0031】
図5は、本実施形態に係る光電変換装置のB-B’線における断面模式図である。ダミー画素領域103aと同様に、ダミー画素領域103bにおいては、第1面F1の上には絶縁層202を介して遮光層205が配されている。また、ダミー画素領域103aと同様に、ダミー画素領域103bにおいては、光吸収部材208が第2面F2の上に配されている。
【0032】
また、有効画素領域101と同様に、外周領域104においては、遮光層205が配されていないため、外周領域104のマイクロレンズ204に入射された光は、半導体基板201に入射される。外周領域104は、半導体基板201と外部との導通のためのパッドの形成等が行われる領域であるため、
図5に示されているように外周領域104の少なくとも一部において遮光層205が開口されている。有効画素領域101及び外周領域104は、入射光が遮光層205によって遮光されない領域であるため、これらの総称として、非遮光領域(第1領域)と呼ばれることもある。
【0033】
次に、ダミー画素領域103a、103bにおいて光吸収部材208を設けることによる効果を説明する。非遮光領域から入射された光は、半導体基板201を導波路としてオプティカルブラック画素領域102に伝搬される場合がある。
図6は、本実施形態に係る半導体基板内の導波光を説明する断面模式図である。伝搬角θが全反射条件を満たす場合、導波光209は、半導体基板201の内部で全反射を繰り返すことにより、半導体基板201内に閉じ込められて面方向に導波する。導波光は、半導体基板201の内部を伝搬する過程で徐々に半導体基板201に吸収されて減衰するものの、吸収されずに残った光がオプティカルブラック画素領域102に入射することがある。この場合、黒レベルの基準信号のレベルが変動し、精度が低下する場合がある。特に、裏面照射型では、半導体基板201が薄いため、半導体基板201の内部での導波が生じやすく、この要因による精度低下が顕著になり得る。
【0034】
半導体基板201の材料がシリコンである場合、シリコンが光を吸収することによる光の減衰の程度は、光の波長に依存する。例えば、波長550nmの可視光に対するシリコンの吸収係数は約7000cm-1であり、シリコン中を1μm伝搬すると光強度は約半分に減衰する。一方、波長1000nmの近赤外光に対する吸収係数は約100cm-1であり、シリコン中を1μm伝搬したときの吸収率は0.5%程度である。光強度を半分に減衰させるためには波長550nmの約70倍の70μmの伝搬距離が必要となる。以上の理由により、一般的に可視光に比べて近赤外光の方がシリコン内で減衰せずにオプティカルブラック画素領域102まで到達する割合が高く、精度低下の要因となりやすい。
【0035】
オプティカルブラック画素領域102に到達する光を低減するためには、非遮光領域とオプティカルブラック画素領域102との間の距離、すなわち、ダミー画素領域103a、103bを長くすればよい。しかしながら、ダミー画素領域103a、103bを長くすることはチップサイズの増大又は有効画素数の減少の要因になるため好ましくない場合もある。特に、上述のように、近赤外光を減衰させるためには長い距離が必要となるため、ダミー画素領域103a、103bを配置することだけではオプティカルブラック画素領域102に到達する光を十分に低減するためには不十分である場合もある。
【0036】
そこで、本実施形態では、ダミー画素領域103a、103bにおいて光吸収部材208が配されている。これにより、半導体基板201を導波路として導波光が伝搬される際に、ダミー画素領域103a、103bで減衰される割合を大きくすることができ、オプティカルブラック画素領域102に入射される導波光の強度を小さくすることができる。したがって、本実施形態によれば、黒レベルの基準信号をより高精度に取得することができる光電変換装置が提供される。
【0037】
導波光の減衰をより効果的なものとするためには、光吸収部材208の材料は、半導体基板201の材料よりも吸収係数が大きい材料であることが望ましい。波長1000nmにおいて、シリコンの吸収係数は約100cm-1であるのに対し、アルミニウムの吸収係数は約1.2×106cm-1であり、タングステンの吸収係数は約4.3×105cm-1である。このように、アルミニウム、タングステン等の金属は、シリコンに比べて吸収係数がはるかに大きい。したがって、半導体基板201がシリコンである場合には、光吸収部材208の材料がアルミニウム、タングステン等の金属であれば、上述の条件が満たされる。
【0038】
光吸収部材208は、減衰量を十分に確保する観点から、ダミー画素領域103a、103b内に可能な限り広範囲に設けられていることが望ましい。より具体的には、ダミー画素領域103a、103bは、最低でも1画素の長さよりも長いことから、光吸収部材208の長さLも1画素分の長さよりも長いことが望ましい。
【0039】
光吸収部材208は、有効画素領域101及びオプティカルブラック画素領域102には配されていない。有効画素領域101及びオプティカルブラック画素領域102には、画素10を構成する回路等が配置されるためである。なお、外周領域104には、光吸収部材208は配されていてもよく、配されていなくてもよい。
【0040】
次に、光吸収部材208の材料、配置等についてのより好ましい形態について、シミュレーション結果を適宜示しつつ説明する。なお、以下のシミュレーション等において、半導体基板201の材料はシリコンであるものとする。シリコン中を導波する光には、異なる伝搬角で伝搬する複数の導波モードが存在する。また、偏光方向の違いによりTEモードとTMモードが存在する。これらのモードに応じて導波モードの伝搬損失は異なる。ここでは、そのうちの典型的な1つのモードとして、TEモードでかつ伝搬角45°付近のモードの計算結果を示す。ここで言う伝搬角とは、水平方向に対して光の進行方向がなす角(
図6におけるθ)と定義する。
【0041】
この導波モードにおいて、波長1000nmにおける伝搬損失を計算した結果、光吸収部材208を設けない場合、つまりシリコンの吸収のみの場合、導波モードの伝搬損失は140cm-1であった。一方、光吸収部材208としてアルミニウムを用いた場合の導波モードの伝搬損失は360cm-1であった。また、光吸収部材208としてタングステンを用いた場合の導波モードの伝搬損失は1840cm-1であった。
【0042】
上述の計算結果を用いて、特定の距離、例えば30μmの距離を光が伝搬した場合の光強度は、光吸収部材208を設けない場合には0.66倍に減衰する。これに対し、光吸収部材208としてアルミニウムを用いた合には光強度は0.34倍に減衰し、光吸収部材208としてタングステンを用いた場合には光強度は0.004倍に減衰する。このように、光吸収部材208を設けない場合に比べ、光吸収部材208としてアルミニウムを用いた場合は光強度を約半分にすることができ、光吸収部材208としてタングステンを用いた場合は光強度を約165分の1に低減することができる。
【0043】
上述のように、材料自体の吸収係数の大きさは、アルミニウムの方がタングステンより大きい。それにも関わらず光吸収部材208としてアルミニウムを用いた場合よりもタングステンを用いた場合の方が伝搬損失が大きくなる理由について、
図7(a)及び
図7(b)を用いて説明する。
【0044】
図7(a)及び
図7(b)は、本実施形態に係る光吸収部材208への光の侵入量を説明する模式図である。
図7(a)及び
図7(b)は、波長1000nmにおける導波モードの、半導体基板201(シリコン)と光吸収部材208(アルミニウム又はタングステン)との界面付近の光強度の分布を計算した結果を示している。
図7(a)及び
図7(b)の縦軸は厚さ方向の位置を示しており、横軸は導波モードの光強度を示している。また、
図7(a)及び
図7(b)の曲線は光強度の分布を示している。この曲線において、各層におけるハッチングされた部分の面積が大きい程、その層に多くの導波光が伝搬しているといえる。
【0045】
図7(a)は、光吸収部材208としてアルミニウムが設けられている場合の光強度分布を示しており、
図7(b)は、光吸収部材208としてタングステンが設けられている場合の光強度分布を示している。いずれの分布においても、半導体基板201から光吸収部材208に染み出した光(エバネッセント波)は指数関数的に減衰している。しかしながら、
図7(a)と
図7(b)を対比すると、光吸収部材208がタングステンである場合に比べて、光吸収部材208がアルミニウムである場合の方が、光吸収部材208への光の侵入量が少ないことがわかる。
【0046】
光の侵入量に差が生じる理由は、アルミニウムの屈折率(n=1.35)がタングステンの屈折率(n=3.04)に比べて小さいためである。半導体基板201を構成するシリコンの屈折率(n=3.58)との差が大きいほど、半導体基板201を導波する光が光吸収部材208に染み出す量が小さくなり、結果として光吸収量が小さくなる。したがって、光吸収部材208の材料としては、タングステンの方がアルミニウムよりも好適である。以上説明したように、光吸収部材208の材料の選定にあたっては、材料自身の吸収係数だけでなく、半導体基板201との屈折率の関係も考慮する必要がある。
【0047】
次に、半導体基板201と光吸収部材208との間の距離による伝搬損失への影響について説明する。上述の伝搬損失の計算結果は、半導体基板201と光吸収部材208とが接している場合のものである。しかしながら、半導体基板201と光吸収部材208とが接していない場合、すなわち、両者の間に別の層が挟まれている場合であっても、伝搬損失を増大させる効果はある。ただし、半導体基板201から染み出すエバネッセント波が十分に存在する範囲に光吸収部材208を配する必要がある。また、十分な伝搬損失を得るためには、半導体基板201に近い位置に光吸収部材208を配することが望ましい。
【0048】
図8は、半導体基板201と光吸収部材208の距離の影響を説明するグラフである。
図8の横軸は、半導体基板201(シリコン)と光吸収部材208(タングステン)の間の距離を示している。ここで、半導体基板201と光吸収部材208との間には酸化シリコンが配されている。すなわち、
図8の横軸は、酸化シリコンの厚さである。
図8の縦軸は、伝搬損失を示している。
図8に示されているように、半導体基板201と光吸収部材208の距離が離れるにしたがって伝搬損失が減少し、光吸収部材208を設けない場合の伝搬損失(140cm
-1)に漸近する。
【0049】
半導体基板201と光吸収部材208の間の距離は100nm以下であることが望ましく、その場合、光吸収部材208を設けない場合に比べて伝搬損失を2倍大きくすることができる。
【0050】
半導体基板201と光吸収部材208の間の距離は80nm以下であることが更に望ましく、その場合、光吸収部材208を設けない場合に比べて伝搬損失を2.5倍大きくすることができる。
【0051】
半導体基板201と光吸収部材208の間の距離は70nm以下であることが更に望ましく、その場合、光吸収部材208を設けない場合に比べて伝搬損失を3倍大きくすることができる。
【0052】
半導体基板201と光吸収部材208の間の距離は50nm以下であることが更に望ましく、その場合、光吸収部材208を設けない場合に比べて伝搬損失を4倍大きくすることができる。
【0053】
半導体基板201と光吸収部材208の間の距離は40nm以下であることが更に望ましく、その場合、光吸収部材208を設けない場合に比べて伝搬損失を5倍大きくすることができる。
【0054】
半導体基板201と光吸収部材208の間の距離は20nm以下であることが更に望ましく、その場合、光吸収部材208を設けない場合に比べて伝搬損失を8倍大きくすることができる。
【0055】
半導体基板201と光吸収部材208の間の距離は10nm以下であることが更に望ましく、その場合、光吸収部材208を設けない場合に比べて伝搬損失を10倍大きくすることができる。
【0056】
半導体基板201と光吸収部材208の間の距離がゼロ、すなわち、半導体基板201と光吸収部材208が接していることが更に望ましく、その場合、伝搬損失を最大化することができる。
【0057】
このように、光吸収部材208は半導体基板201のできるだけ近傍に配置することが望ましい。通常、電気的な接続等に用いられる配線層207のうちの最も半導体基板201に近い層であっても、半導体基板201から上述した距離よりも離れた位置に配されている。そのため、光吸収部材208は、配線層207とは共用せず、配線層207よりも半導体基板201に近い位置に設けることが望ましい。
【0058】
半導体基板201内の導波光は、伝搬距離と単位長さあたりの伝搬損失の積に応じて指数関数的に減衰する。
図9は、本実施形態に係る導波光の強度と伝搬距離の関係を示すグラフである。
図9の計算においては、半導体基板201(シリコン)の第2面F2に接するように光吸収部材208(タングステン)が配されている。光吸収部材208の厚さは150nmであり、半導体基板201の厚さは3μmである。半導体基板201の上下の絶縁層202、206の材料は酸化シリコンである。
図9のグラフの縦軸は波長1000nmの光に対する導波光の強度を示しており、横軸は伝搬距離を示している。また、
図9には、光吸収部材208を配置していない場合のグラフが破線で示されており、光吸収部材208が配置されている場合のグラフが実線で示されている。なお、縦軸の値は、伝搬距離が0のときの強度によって規格化されている。
【0059】
図9の破線により示されているように、光吸収部材208が配置されていない場合であっても、半導体基板201自体の吸収のため、伝搬距離に応じて光強度が徐々に低下する。しかしながら、仮に300μm伝搬したとしても約1%の光が吸収されずに残る。一方、光吸収部材208が配置されている場合は伝搬距離が約30μmにおいて光強度が1%以下に低減される。伝搬距離、すなわち、光吸収部材208が設けられる長さLは、導波光をどれだけ減衰させる必要があるかに応じて決定される。
【0060】
光吸収部材208を設ける長さは15μm以上であることが望ましく、その場合、導波光の強度を1/10に低減させることができる。
【0061】
光吸収部材208を設ける長さは30μm以上であることが更に望ましく、その場合、導波光の強度を1/100に低減させることができる。
【0062】
光吸収部材208を設ける長さは45μm以上であることが更に望ましく、その場合、導波光の強度を1/1000に低減させることができる。
【0063】
上述の長さは、一般に光電変換装置の1画素以上の長さである。したがって、光吸収部材208を設ける長さLは1画素以上にわたっていることが望ましい。なお、光吸収部材208の一部が途切れていてもよく、その場合であっても、合計の長さが上述の値を満たしていれば同等の効果を得ることができる。
【0064】
オプティカルブラック画素領域102に光が侵入する経路は、
図3及び
図4における有効画素領域101からの経路と、オプティカルブラック画素領域102の外側、すなわち
図3及び
図5における外周領域104からの経路がある。したがって、光吸収部材208は、有効画素領域101とオプティカルブラック画素領域102の間のダミー画素領域103aと、オプティカルブラック画素領域102と外周領域104の間のダミー画素領域103bとの両方に配置されていることが望ましい。
【0065】
また、
図4及び
図5に示されている構造図では、
図3のA-A’線及びB-B’線、すなわち、
図3の横方向の断面のみが示されている。しかしながら、
図3の縦方向の断面においても同様の構造を有していることが望ましい。すなわち、
図3の縦方向の断面においても光吸収部材208が
図4及び
図5と同様に設けられていることが望ましい。この場合、
図3において縦方向にオプティカルブラック画素領域102に侵入する導波光の影響を低減することができる。
【0066】
[第2実施形態]
本実施形態の光電変換装置は、第1実施形態における光吸収部材208が設けられる位置を変えた変形例である。光吸収部材208の位置が異なること以外の装置構造は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0067】
図10は、本実施形態に係る光電変換装置のA-A’線における断面模式図である。本実施形態においては、光吸収部材208は、ダミー画素領域103aにおいて第1面F1と遮光層205の間に配されている。言い換えると、半導体基板201の第1面F1の側には、光吸収部材208と遮光層205の積層構造が設けられている。
【0068】
本実施形態の構成においても、第1実施形態と同様のメカニズムにより、半導体基板201を導波路とする導波光が光吸収部材208によって減衰する。したがって、本実施形態の構成においても、第1実施形態と同様に黒レベルの基準信号をより高精度に取得することができる光電変換装置が提供される。
【0069】
光吸収部材208と遮光層205には異なる性能が要求されるため、これらは異なる材料であることが望ましい。より具体的には、光吸収部材208の材料がタングステンであり、遮光層205の材料がアルミニウムであることが望ましい。その理由について詳細に説明する。
【0070】
第1実施形態で述べたように、材料自体の吸収係数としては、タングステンの吸収係数よりもアルミニウムの吸収係数の方が大きい。したがって、入射面からオプティカルブラック画素領域102への入射光を遮光する遮光層205の材料としては、タングステンよりもアルミニウムの方が好適である。これに対し、半導体基板201内の導波光に対する減衰の効果は、吸収係数だけでなく、屈折率にも依存する。この影響により、第1実施形態で述べたように、光吸収部材208の材料としては、アルミニウムよりもタングステンの方が好適である。光吸収部材208の材料がタングステンであり、遮光層205の材料がアルミニウムである構成を採用することにより、これらを両立することができる。
【0071】
光吸収部材208が設けられる層は、
図10に示したものに限定されるものではないが、
図10に示されているように半導体基板201の第1面F1と遮光層205の間の層であることが望ましい。遮光層205による遮光の効果は半導体基板201との距離にあまり依存しないため、遮光層205と半導体基板201との距離はある程度離れていてもよい。これに対し、第1実施形態で述べたように、光吸収部材208と半導体基板201との距離の伝搬損失に対する影響は大きいため、光吸収部材208と半導体基板201との距離はできる限り近いことが望ましい。そのため、光吸収部材208は、半導体基板201の第1面F1と遮光層205の間に配されていることが望ましい。なお、遮光層205と光吸収部材208は接していてもよく、これらの間に酸化シリコン等の別の層が配されていてもよい。
【0072】
[第3実施形態]
本実施形態の光電変換装置は、第1実施形態における光吸収部材208に代えて回折格子210が設けられている変形例である。光吸収部材208が回折格子210に置き換えられている点以外の装置構造は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0073】
図11は、本実施形態に係る光電変換装置のA-A’線における断面模式図である。本実施形態においては、第1実施形態の光吸収部材208に代えて、回折格子210が半導体基板201の第2面F2の近傍に配されている。回折格子210は、導波光の一部を回折させて半導体基板201の外部に漏出させることにより、導波光を減衰させる。
【0074】
回折格子210が導波光の一部を回折させて半導体基板201の外部に漏出させるメカニズムについて、
図12(a)及び
図12(b)を参照して説明する。
図12(a)及び
図12(b)は、本実施形態に係る回折格子210における光の反射を説明する図である。
【0075】
図12(a)は、回折格子210が設けられていない場合における半導体基板201の界面での反射を示している。半導体基板201の内側から界面に光が入射される場合、入射角δが全反射条件を満たしていれば
図12(a)に示されているように、界面において全反射が起こり、光は半導体基板201内に閉じ込められる。
【0076】
図12(b)は、回折格子210が設けられている場合における半導体基板201の界面での反射を示している。このとき、半導体基板201の内側から回折格子210に光が入射されると、光の一部が回折により伝搬角度が変化して全反射条件を満たさなくなる。そのため、
図12(b)に示されているように、導波光の一部が半導体基板201の外部に漏出する。このように回折格子を用いて導波光を外に取り出す技術は、グレーティングカップラと呼ばれている。
【0077】
回折格子210は、屈折率を周期的に変調させるように構成する。回折格子210の材料は、誘電体材料、半導体材料又は金属材料であり得る。回折格子210は、導波光が回折格子210に入射される位置に配される。
【0078】
回折格子210は、例えば、導波路である半導体基板201の表面に直接形成され得る。半導体基板201の表面に回折格子210を直接形成する手法の一例としては、半導体基板201の表面に酸化シリコンのトレンチを周期的に形成するというものが挙げられる。トレンチは、半導体デバイスにおいて一般的に用いられているシャロートレンチアイソレーション(STI)と同様の工程によって形成することができる。
【0079】
半導体基板201に回折格子210を直接形成せず、半導体基板201の近傍に回折格子210を形成してもよい。その場合、回折格子210は、半導体基板201からエバネッセント波として光が染み出す程度の近傍に設けられる。半導体基板201の近傍に回折格子210を形成する手法の一例としては、半導体基板201の表面に酸化シリコンを間に挟んでポリシリコンの回折格子210を形成するというものが挙げられる。酸化シリコンの厚さが十分に薄ければエバネッセント波がポリシリコンの回折格子210にまで染み出すため、光の回折が生じる。ポリシリコンの回折格子210は、半導体デバイスにおいて一般的に用いられているポリシリコンゲートと同様の工程によって形成することができる。
【0080】
半導体基板201の近傍に回折格子210を形成する手法の別の例としては、金属層(例えば、タングステン)により形成された回折格子210を半導体基板201の近傍に配するというものも挙げられる。金属層によって形成された回折格子210は、回折により導波光を漏出させる効果と導波光を吸収する効果の両方を有するため、半導体基板201の伝搬損失をより大きくすることができる。第1実施形態で述べたようにタングステンは光吸収部材208の材料として好適であるため、回折格子210用の金属層の材料としても好適である。
【0081】
回折格子210は、有効画素領域101及びオプティカルブラック画素領域102には配されていない。有効画素領域101及びオプティカルブラック画素領域102には、画素10を構成する回路等が配置されるためである。なお、外周領域104には、回折格子210が配されていてもよく、配されていなくてもよい。
【0082】
図13は、本実施形態に係る回折格子210における光の反射率を示すグラフである。
図13の縦軸は反射率を示しており、
図13の横軸は
図12(a)のδにより示されている入射角を示している。
図13の実線は回折格子210に波長1000nmの光が半導体基板201側から入射した場合の反射率の計算結果を示しており、
図13の破線は回折格子210がない場合の比較例の計算結果を示している。なお、半導体基板201の材料はシリコンであり、回折格子210は、シリコンの表面に酸化シリコンによって形成されたトレンチである。トレンチの深さは200nmであり、トレンチの幅は300nmであり、トレンチのピッチは600nmである。
【0083】
回折格子210が設けられていない場合、全反射が起こる臨界角(シリコンと酸化シリコンの界面では23.9°)以上の角度で入射した光は100%反射されている。そのため、臨界角以上の角度の光は全反射を繰り返して半導体基板201内を導波する。一方、回折格子210が設けられている場合、臨界角以上の光であっても反射率が100%にならず、半導体基板201の外側に光が漏れる。これは上述のように回折により一部の光の伝搬角度が変化して臨界角以下となることにより、全反射しない成分が生じるためである。
【0084】
図13に示した反射率は一例であり、反射率は回折格子210の深さ、ピッチ等の形状にも影響される。
図14は、本実施形態に係る回折格子210における光の反射率と回折格子210の深さとの関係を示すグラフである。
図14には、トレンチの深さを0~300nmの範囲で変えた場合の、反射率の計算結果が示されている。なお、光の波長は1000nm、回折格子210のトレンチの幅は300nm、トレンチのピッチは600nmである。
【0085】
トレンチの深さが0~200nmの範囲の計算結果を比較すると、溝の深さが深くなるほど臨界角以上での反射率の低減効果が大きいことがわかる。しかしながら、トレンチの深さが200nmの場合とトレンチの深さが300nmの場合とを比較すると、反射率の低減効果はほぼ同等であることがわかる。この結果より、回折格子210のトレンチがある臨界値(本例では200nm程度)の範囲まではトレンチが深いほど光を漏出させる効果が向上するが、その臨界値を超えるとそれ以上トレンチを深くしても光を漏出させる効果は飽和するといえる。したがって、反射率の低減効果を十分に得るためには、トレンチの深さは、200nm以上であることが望ましい。
【0086】
図15は、本実施形態に係る回折格子210における光の反射率と回折格子210のピッチとの関係を示すグラフである。
図15には、トレンチのピッチを400~700nmの範囲で変えた場合の、反射率の計算結果が示されている。なお、光の波長は1000nm、回折格子210のトレンチの幅はピッチの半分、トレンチの深さは200nmである。
【0087】
図15の計算結果から理解されるように、ピッチを変えることにより、反射率の低減効果が変化する。最適なピッチは屈折率、波長等に依存して変化し得るが、上述の計算条件の下ではピッチが600nmの場合が最も反射率を低減する効果が高いという結果が得られている。
【0088】
図16は、導波光の強度と伝搬距離の関係を示すグラフである。
図16のグラフの縦軸は導波光の強度を示しており、横軸は伝搬距離を示している。
図16の計算においては、半導体基板201(シリコン)の第1面F1に酸化シリコンにより構成されたトレンチにより回折格子210が配されている。光の波長は1000nm、入射角は45°、トレンチの深さは200nm、トレンチの幅は300nm、トレンチのピッチは600nmである。この構成では光が回折格子210で1回反射されるごとに約34%の光が半導体基板201の外側に漏出する。なお、この計算では半導体基板201を構成するシリコンによる光の吸収は無視しており、回折格子210による効果のみを考慮している。
【0089】
図16の計算結果から理解されるように、伝搬距離に応じて導波光が減衰する。必要な伝搬距離、すなわち、回折格子210が設けられる長さLは、導波光をどれだけ減衰させる必要があるかに応じて決定される。
【0090】
回折格子210を設ける長さは35μm以上であることが望ましく、その場合、導波光の強度を1/10に低減させることができる。
【0091】
回折格子210を設ける長さは70μm以上であることが更に望ましく、その場合、導波光の強度を1/100に低減させることができる。
【0092】
回折格子210を設ける長さは105μm以上であることが更に望ましく、その場合、導波光の強度を1/1000に低減させることができる。
【0093】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態による撮像システムについて、
図17を用いて説明する。
図17は、本実施形態による撮像システムの概略構成を示すブロック図である。
図17に示す撮像装置1は、上述の第1乃至第3実施形態で述べた光電変換装置である。すなわち、本実施形態による撮像システム500は、上述の第1乃至第3実施形態で述べた光電変換装置が適用され得る光電変換システムの一例である。
【0094】
本実施形態による撮像システム500は、特に限定されるものではないが、例えば、デジタルスチルカメラ、デジタルカムコーダ、カメラヘッド、複写機、ファックス、携帯電話、車載カメラ、観測衛星等に適用可能である。
【0095】
撮像システム500は、
図17に示すように、撮像装置1、レンズ502、絞り504、バリア506、信号処理部508、タイミング発生部520、全体制御・演算部518を有している。撮像システム500は、また、メモリ部510、記録媒体制御I/F部516、外部I/F部512を有している。
【0096】
レンズ502は、被写体の光学像を撮像装置1の画素アレイ20に結像するためのものである。絞り504は、レンズ502を通った光量を可変にするためのものである。バリア506は、レンズ502の保護のためのものである。撮像装置1は、先の実施形態で説明した光電変換装置であって、レンズ502により結像された光学像に基づく信号を信号処理部508に出力するものである。
【0097】
信号処理部508は、撮像装置1より出力される信号に対して、所望の処理、補正、データ圧縮等を行うものである。信号処理部508は、撮像装置1と同じ基板に搭載されていてもよいし、別の基板に搭載されていてもよい。また、信号処理部508の一部の機能が撮像装置1と同じ基板に搭載され、信号処理部508の他の一部の機能が別の基板に搭載されていてもよい。また、撮像装置1はデジタル信号ではなく、AD変換前のアナログ信号を出力するものであってもよい。その場合、信号処理部508には、AD変換器が更に含まれ得る。
【0098】
タイミング発生部520は、撮像装置1及び信号処理部508に、各種タイミング信号を出力するためのものである。全体制御・演算部518は、撮像システム500の全体の駆動及び演算処理を司る制御部である。ここで、タイミング信号等の制御信号は撮像システム500の外部から入力されてもよく、撮像システム500は、少なくとも撮像装置1と、撮像装置1から出力された信号を処理する信号処理部508とを有していればよい。
【0099】
メモリ部510は、画像データを一時的に記憶するためのフレームメモリ部である。記録媒体制御I/F部516は、記録媒体514への記録或いは記録媒体514からの読み出しを行うためのインターフェース部である。外部I/F部512は、外部コンピュータ等と通信するためのインターフェース部である。記録媒体514は、撮像データの記録又は読み出しを行うための半導体メモリ等の着脱可能な記録媒体である。
【0100】
このようにして、第1乃至第3実施形態による光電変換装置を適用した撮像システム500を構成することにより、高品質な画像を取得し得る高性能の撮像システム500を実現することができる。
【0101】
[第5実施形態]
図18(a)及び
図18(b)は、本実施形態による撮像システム600及び移動体の構成を示す図である。
図18(a)は、車載カメラに関する撮像システム600の一例を示したものである。撮像システム600は、上述の第1乃至第3実施形態のいずれかに記載の光電変換装置の一例である撮像装置1を有する。撮像システム600は、撮像装置1により取得された複数の画像データに対し、画像処理を行う画像処理部612と、撮像システム600により取得された複数の画像データから視差(視差画像の位相差)の算出を行う視差算出部614を有する。また、撮像システム600は、算出された視差に基づいて対象物までの距離を算出する距離計測部616と、算出された距離に基づいて衝突可能性があるか否かを判定する衝突判定部618と、を有する。ここで、視差算出部614及び距離計測部616は、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段の一例である。すなわち、距離情報とは、視差、デフォーカス量、対象物までの距離等に関する情報である。衝突判定部618はこれらの距離情報のいずれかを用いて、衝突可能性を判定してもよい。距離情報取得手段は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールによって実現されてもよい。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。
【0102】
撮像システム600は、車両情報取得装置620と接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの車両情報を取得することができる。また、撮像システム600には、衝突判定部618での判定結果に基づいて、車両に対して制動力を発生させる制御信号を出力する制御装置である制御ECU630が接続されている。すなわち、制御ECU630は、距離情報に基づいて移動体を制御する移動体制御手段の一例である。また、撮像システム600は、衝突判定部618での判定結果に基づいて、ドライバーへ警報を発する警報装置640とも接続されている。例えば、衝突判定部618の判定結果として衝突可能性が高い場合、制御ECU630はブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制するなどして衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置640は、音等の警報を鳴らす、カーナビゲーションシステムなどの画面に警報情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与える等によりユーザに警告を行う。
【0103】
本実施形態では、車両の周囲、例えば前方又は後方を撮像システム600で撮像する。
図18(b)に、車両前方(撮像範囲650)を撮像する場合の撮像システム600の構成を示す。車両情報取得装置620は、撮像システム600を動作させ撮像を実行させるように指示を送る。
【0104】
このようにして、第1乃至第3実施形態による光電変換装置を適用した撮像システム600及び移動体を構成することにより、高品質の画像を取得し得る高性能の撮像システム600及び高精度に制御を行い得る移動体を実現することができる。
【0105】
以上の説明では、他の車両と衝突しないように制御する例を述べたが、他の車両に追従して自動運転する制御、車線からはみ出さないように自動運転する制御等にも適用可能である。更に、撮像システムは、自車両等の車両に限らず、例えば、船舶、航空機、産業用ロボット等の移動体(移動装置)に適用することができる。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)等、広く物体認識を利用する機器に適用することができる。
【0106】
[変形実施形態]
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、種々の変形が可能である。
【0107】
第1実施形態及び第2実施形態では、ダミー画素領域103a、103bに光吸収部材208が設けられており、第3実施形態では、ダミー画素領域103a、103bに回折格子210が設けられている。これらの光吸収部材208及び回折格子210は、本発明に適用可能な減衰部材の一例である。しかしながら、本発明に適用可能な減衰部材はこれらに限定されるものではない。すなわち、オプティカルブラック画素領域102に伝搬する導波光を減衰させることができるものであれば、減衰部材の構造は、第1乃至第3実施形態で述べた光吸収部材208又は回折格子210に限定されない。
【0108】
第1実施形態では、光吸収部材208が半導体基板201の第2面F2に配されており、第2実施形態では、光吸収部材208が半導体基板201の第1面F1に配されているが、これらを組み合わせてもよい。すなわち、光吸収部材208が半導体基板201の第1面F1と第2面F2の両面に配されていてもよい。この場合、半導体基板201の両面で導波光が吸収されるため、オプティカルブラック画素領域102に入射される導波光の強度を更に小さくすることができる。
【0109】
第1実施形態及び第2実施形態の光吸収部材208と第3実施形態の回折格子210を組み合わせてもよい。例えば、第1面F1に光吸収部材208が配され、第2面F2に回折格子210が配される構成であってもよい。この場合も、光吸収部材208と回折格子210の一方のみを設ける場合と比べてオプティカルブラック画素領域102に入射される導波光の強度を更に小さくすることができる。
【0110】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0111】
なお、上述の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を、他の実施形態に追加した実施形態、あるいは他の実施形態の一部の構成と置換した実施形態も本発明を適用し得る実施形態であると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0112】
10 画素
101 有効画素領域
102 オプティカルブラック画素領域
103a、103b ダミー画素領域
104 外周領域
201 半導体基板
205 遮光層
207 配線層
208 光吸収部材
210 回折格子
F1 第1面
F2 第2面