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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】クランプ及びサドルの固定方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 41/12 20060101AFI20240822BHJP
   F16L 47/30 20060101ALI20240822BHJP
   F16L 41/02 20060101ALI20240822BHJP
   F16B 2/08 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
F16L41/12
F16L47/30
F16L41/02
F16B2/08 F
F16B2/08 N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020117936
(22)【出願日】2020-07-08
(65)【公開番号】P2022015232
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】水川 賢司
(72)【発明者】
【氏名】栗尾 浩行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘瑛
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-133662(JP,A)
【文献】実公平07-043591(JP,Y2)
【文献】特開平10-306896(JP,A)
【文献】特開平08-226592(JP,A)
【文献】国際公開第2011/117652(WO,A2)
【文献】特開2018-105370(JP,A)
【文献】特開2006-329427(JP,A)
【文献】実開昭52-041929(JP,U)
【文献】特開平10-169847(JP,A)
【文献】特開2017-214959(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0036309(US,A1)
【文献】国際公開第2015/071907(WO,A1)
【文献】独国実用新案第202019100714(DE,U1)
【文献】特開2021-131101(JP,A)
【文献】特開2021-131107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 41/12
F16L 47/30
F16L 41/02
F16B 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サドルを管に固定するためのクランプであって、
前記管の径方向において前記サドルの反対側に配置され、前記管の周方向に沿って延び、且つ、前記管の管軸方向に間隔をあけて配置された2つのバンド部と、前記2つのバンド部の第1の端同士を接続し、前記サドルに引っ掛けられる第1のクランプ片と、を備え、前記2つのバンド部それぞれの第2の端に形成された穴を有する本体部材と、
前記2つのバンド部それぞれの前記第2の端に形成された前記穴に配置されるシャフト部を備え、前記シャフト部を回転軸として回転し、前記サドルに押し付けられる回転部材と、を備え、
2つの前記穴の少なくとも片方には、前記バンド部を前記穴から、前記穴の軸に直交する方向に貫通する切り欠きが設けられている、
クランプ。
【請求項2】
前記第2の端同士を接続する第2のクランプ片を有し、
前記第2のクランプ片には前記回転部材の回り止め部を備えている、
請求項1に記載のクランプ。
【請求項3】
前記クランプが熱可塑性樹脂からなる、
請求項1または2に記載のクランプ。
【請求項4】
前記バンド部は、突起を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のクランプ。
【請求項5】
前記クランプ片にローレット加工がなされている、
請求項1から4のいずれか1項に記載のクランプ。
【請求項6】
前記バンド部の一部に波型形状を有する、
請求項1から5のいずれか1項に記載のクランプ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のクランプにより、サドルを管に固定するサドルの固定方法であって、
前記サドルに前記第1のクランプ片を引っ掛ける第1工程と、
前記第1工程の後、前記シャフト部を前記穴に配置し、前記サドルと前記クランプとの間に前記管を挟む第2工程と、
前記第2工程の後、前記回転部材を回転させて前記回転部材を前記サドルに押し付け、前記バンド部によって前記管を締め付ける第3工程と、を備え、
前記第2工程で、前記シャフト部を前記穴に配置するときに、前記シャフト部を前記切り欠きを通して前記穴に配置する、サドルの固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン管とサドル継手の融着接合の際に用いられるクランプ及びサドルの固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、水道水やガスを流通させるポリエチレン管(以下、管、あるいは本管という)に枝管を接続する際には、例えば本管に融着されるサドル本体と枝管の接続部となる分岐管部とを備えたサドル継手やサドル付分水栓等を介して行われている。
例えば、サドル継手は、通常EF(エレクロトフュージョン)継手として構成されており、サドル本体の内部に配した電熱線に通電してこれを発熱させることにより、サドル継手と本管の界面を溶融して両者を接合するように構成されている。
【0003】
従来、サドル継手を本管に接合するには、まず、サドル継手を本管に当接させるとともに、これを専用のサドル継手固定用のクランプにより定位置に固定する。この状態において電熱線に通電してサドル継手と本管とを接合する。そして溶融部が固化するのを待ってサドル継手および本管からクランプを取り外して作業を完了する。かかるクランプとしては、例えば特許文献1、特許文献2に示すものが提案されている。
【0004】
特許文献1のクランプは、第1の抑え棒および第2の抑え棒がチェーンで連結されている。第1の抑え棒および第2の抑え棒で、サドルの第1のサドル鍔および第2のサドル鍔を抑え、支持棒に連結されたネジ棒を回転する。ネジ棒を回転することにより、第1の抑え棒を移動させてサドル継手を本管に密着させる。
【0005】
また、特許文献2のクランプは、第1の係止部と第2の係止部(すなわち、レバー状の係止部)とが鋼材等で連結されている。第1の係止部を第1のサドル鍔に引っ掛け、第2の係止部を第2のサドル鍔に配置する。第2の係止部をカムの原理で回転させることにより、鋼材に張力を加えてサドル継手を本管に密着させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-60039号公報
【文献】特開2017-133662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のクランプは、第1の抑え棒および第2の抑え棒がチェーンで連結されている。しかし、チェーンは、第2のサドル鍔を第2の抑え棒で引っ掛け、反対側の第1のサドル鍔に第1の抑え棒を引っ掛ける時、本管から離れた状態に保たれる。このため、第2のサドル鍔に引っ掛けた第2の抑え棒が外れやすく、施工性が悪いという課題があった。
【0008】
また、特許文献2のクランプは、レバー状の第2の係止部に連結され、第2の係止部をカムの原理で回転させることにより張力が付与される。ここで、第2の係止部の回転による変位量は一定量である。このため、サドル継手や本管の寸法、クランプの寸法のバラツキにより、鋼材に一定の張力を作用させることが難く、クランプ力がばらつくという課題があった。
【0009】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、管にサドル継手を被せ、クランプを取付ける時、クランプを外れ難くでき、加えて、サドル継手や管の寸法、クランプの寸法のバラツキを吸収できるクランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るクランプは、間隔をあけて配置された2つのバンド部と、前記2つのバンド部の第1の端同士を接続する第1のクランプ片と、を備える本体部材と、前記2つのバンド部それぞれの第2の端に形成された穴に配置されるシャフト部を備える回転部材と、を備え、2つの前記穴の少なくとも片方には、前記バンド部を前記穴から、前記穴の軸に直交する方向に貫通する切り欠きが設けられている。
【0011】
この発明によれば、本体部材が、間隔をあけて配置された2つのバンド部と、2つのバンド部の第1の端同士を接続する第1のクランプ片とを備えている。また、回転部材が、2つのバンド部の穴に配置されるシャフト部を備えている。このような形状とすることで、管にサドル継手を被せ、サドル継手にクランプを取付ける時、第1のクランプ片をサドル継手に引っ掛けることができる。その後、2つのバンド部を、管を挟んだサドル継手の反対側に配置した状態で、シャフト部を各バンド部の穴に挿入することができる。
【0012】
そして、回転部材を回転させることで、クランプをサドル継手に固定させることができる。すなわち、回転部材を回転させることでバンド部に張力を発生させて管を締め付け、その反力により回転部材も保持される。加えて、バンド部は管を弾性力によって締め付ける。すなわち、バンド部が弾性変形するため、サドル継手及び管の寸法バラツキやサイズ違いが多少生じたとしても、そのバラツキの程度が、弾性変形によって吸収可能な程度であれば、バンド部によって管を締め付けることができる。
【0013】
よって、管にサドル継手を被せ、クランプを取付ける時、クランプを外れ難くでき、加えて、サドル継手や管の寸法、クランプの寸法のバラツキを吸収できるクランプを提供することができる。
【0014】
また、切り欠きが、バンド部を穴から、穴の軸に直交する方向に貫通している。したがって、シャフト部を穴に配置するときに、シャフト部を、穴の外部から切り欠きを通して穴の内部に配置させることができる。このように、切り欠きを介してシャフト部と本体部材とを組み合わせることができる。
【0015】
ここで、切り欠きがない場合は、両シャフト部を穴に配置するとき一方のシャフト部を本体部材の一方の穴に挿入した後、もう一方のシャフト部を本体部材のもう一方の穴に挿入しなければならない。このとき、一方のシャフト部を本体部材の一方の穴に差し込んだ状態で、2つのバンド部を互いに引き離すように変形させ、両バンド部の間に回転部材を配置しなくてはならない。このような操作を不要とすることで、作業の簡素化を図ることができる。
【0016】
また、従来の技術のようにチェーンを用いてネジにより固定する場合と比較してより単純な構造とすることで、部品の点数を少なく、かつ部材の組み立てを容易にすることができる。
【0017】
また、前記第2の端同士を接続する第2のクランプ片を有し、前記第2のクランプ片には前記回転部材の回り止め部を備えていてもよい。
【0018】
この発明によれば、クランプが第2のクランプ片を有することで、クランプの第2の端同士を接続し固定している。よって、より確実にバンド部の間隔を保持することができる。更に、第2のクランプ片に回り止めを備えることで、回転部材が必要以上に回転することを防止することができる。よって、回り止めを有していない場合と比較して回転部材をより確実に適切な角度に設定することができる。
【0019】
また、前記クランプは熱可塑性樹脂からなっていてもよい。
【0020】
この発明によれば、クランプが熱可塑性樹脂からなることから、外部からの入力に対してある程度柔軟に変形することができる。すなわち、クランプが、例えば変形しない部材(金属等)からなる場合と比較して、クランプを締め付けて固定した際に相手部品の寸法バラツキを吸収することができる。
【0021】
更に、熱可塑性樹脂によりクランプを一体成型できる。この場合、クランプの部材構成を少なくして安価にできる。クランプを安価にすることにより、施工業者は複数のクランプを保有できる。
よって、円筒状の管に複数のサドルを連続させて融着でき、施工スピードを速くできる。また、クランプを安価にすることにより、管にサドルを融着した後、クランプをサドルに取り付けた状態にできる。これにより、クランプをサドルから取り外す手間がなくなり、施工スピードを速くできる。
【0022】
また、前記バンド部は、突起を有していてもよい。
【0023】
この発明によれば、バンド部が突起を有する。これによって、突起を管に接触させることで、突起を有していない場合と比較して、バンド部と管とが接触する表面積が小さくなる。よって、同じ締め付け力で固定した際のバンド部と管との摩擦力をより大きくすることができる。すなわち、突起を有していない場合と比較して、クランプを固定した際にバンド部と管とが滑ることを防ぎ、クランプを外れにくくすることができる。
【0024】
また、前記クランプ片にローレット加工がなされていてもよい。
【0025】
この発明によれば、クランプ片にローレット加工がなされている。これによって、クランプ片表面の摩擦力を上げることができる。よって、ローレット加工がされていない場合と比較して、クランプを固定した際にクランプ片とサドルとが滑ることを防ぎ、クランプを外れにくくすることができる。
【0026】
また、前記バンド部の一部に波型形状を有していてもよい。
【0027】
この発明によれば、バンド部に備えられた波型形状が、クランプの固定時等に変形する。これにより、サドルや管等の寸法バラツキに加え、管の長期使用によるクリープ膨張等によって変形した場合等の変形吸収量をより大きくすることができる。
【0028】
また、サドルの固定方法は、前記サドルの周方向の第1側の鍔に前記クランプ片を引っ掛ける第1工程と、前記第1工程の後、前記シャフト部を前記穴に配置し、前記サドルと前記クランプとの間に前記管を挟む第2工程と、前記第2工程の後、前記回転部材を回転させて前記回転部材を前記サドルに押し付け、前記バンド部によって前記管を締め付ける第3工程と、を備え、前記第2工程で、前記シャフト部を前記穴に配置するときに、前記シャフト部を前記切り欠きを通して前記穴に配置する。
【0029】
この発明によれば、サドルにクランプ片を引っ掛け、シャフト部を穴に配置し、サドルとクランプとの間に管を挟み、回転部材を回転させてサドルに押し付けることで、サドルが固定される。すなわち、回転部材を回転させることによってクランプを固定することができるため、固定する際の作業が容易となる。
【0030】
また、シャフト部を本体部材の穴に配置するときは、切り欠きを通して配置する。このことから、穴に切り欠きを有していない場合と比較して作業をより容易かつ短時間で行うことができる。
さらに、本体部材と回転部材とは、クランプを固定する直前まで別体となっている。このことから、万が一本体部材及び回転部材のいずれかに異常が見つかった際に、そのいずれかのみを交換することで対応することができる。
【0031】
よって、あらかじめ本体部材と回転部材とが一体となっている場合と比較して、クランプ全体を交換する必要がないため、部材に異常が見つかったときの対応を容易にすることができ、かつ、より安価に対応することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、管にサドル継手を被せ、クランプを取付ける時、クランプを外れ難くでき、加えて、サドル継手や管の寸法、クランプの寸法のバラツキを吸収できるクランプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明に係る第1実施形態のサドル継手を本管に取り付けた正面図である。
図2図1のサドル継手を矢印II方向から見た側面図である。
図3図1のサドル継手を矢印III方向から見た側面図である。
図4図1のサドルを示す正面図である。
図5図3のサドルの一部を破断した側面図である。
図6図1のクランプを示す正面図である。
図7図6のクランプを矢印VII方向から見た側面図である。
図8図6のクランプを矢印IIX方向から見た平面図である。
図9図7のクランプをIX-IX線で破断した断面図である。
図10図8のクランプをX-X線で破断した断面図である。
図11】第1実施形態のクランプの穴部周辺を示す斜視図である。
図12】第1実施形態の回転部材および一対のシャフト部を示す斜視図である。
図13】第1実施形態の回転部材および一対のシャフト部を示す側面図である。
図14】第1実施形態の回転部材および一対のシャフト部を示す正面図である。
図15】第1実施形態のサドルにクランプを仮固定する工程を説明する正面図である。
図16】第1実施形態の操作片を操作してサドル鍔部から当接部までの距離を変化させる工程を説明する正面図である。
図17】第1実施形態の回転部材をクランプに挿入する工程を説明する正面図である。
図18】第1実施形態の回転部材をクランプに挿入した後の状態を説明する正面図である。
図19】クランプのバンド部に波型形状を設けた場合の正面図である。
図20】本発明に係る第2実施形態のサドル付分水栓を本管に取り付けた側面図である。
図21図20のサドルおよび分水栓を接続した側面図である。
図22図21のサドルおよび分水栓をXXII-XXII線で破断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係るクランプについて説明する。
(第1実施形態)
図1から図3に示すように、サドル継手1は、例えば、水道水やガスを流通させる本管(管)10に枝管(分岐管)12を接続する継手である。サドル継手1は、通常、EF継手(エレクロトフュージョン継手、電気融着継手)として構成されている。サドル継手1は、サドル2が本管10に密着され、サドル2の内部に設けられた電熱線4(図5参照)を発熱させることにより、サドル2と本管10とが融着されるように構成されている。サドル2と本管10とが融着されることにより、サドル2の分岐管部18に枝管12を接続して、本管10に枝管12が接続される。
【0035】
サドル継手1は、本管10の第1側に融着されるサドル2と、本管10の第2側に配置されるクランプ(サドルクランプ、サドルジグ)3と、を備えている。サドル2およびクランプ3には、本管10が挟持される。この状態において、本管10がサドル2に密着される。
以下、本管10の軸方向を「軸方向」、本管10の径方向を「径方向」、本管10の周方向を「周方向」として説明することもある。また、本管10の軸に直交する方向の一方側を「第1側」、他方側を第1側の反対側である「第2側」として説明する。
【0036】
図1図4図5に示すように、サドル2は、サドル本体15と、第1のサドル鍔16と、第2のサドル鍔17と、分岐管部18と、を有する。
サドル本体15は、本管10に沿って半径Rの湾曲に形成され、本管10のうち第1側の外周面10aに融着される。サドル本体15の中央には、本管10と枝管12とを連通させるための円形の孔(不図示)が形成されている。サドル本体15には、円形の孔の外周縁に沿って分岐管部18が形成されている。分岐管部18は、円形の孔の外周縁から本管10の径方向外側(第1側)に向けて突出されている。
サドル本体15には、軸方向において分岐管部18の両側に、端子5,5が設けられている。端子5,5は、サドル本体15に埋設された電熱線4と接続されている。
【0037】
また、サドル本体15は、本管10に融着可能に、本管10と略同じ曲率で半径Rの円弧状に形成されている。サドル本体15は、内面の略全体が、本管10のうち第1側の外周面10aに密着して当接可能に形成されている。サドル本体15のうち、本管10の軸方向に沿った各側縁には、第1のサドル鍔16および第2のサドル鍔17が形成されている。第1のサドル鍔16および第2のサドル鍔17は、サドル本体15がなす円弧状の両側端から径方向外側に突出されている。
サドル本体15、第1のサドル鍔16、および第2のサドル鍔17は、軸方向の長さ(すなわち、軸長さ)L1に形成されている。すなわち、サドル2は、軸方向の長さ(すなわち、軸長さという)L1に形成されている。
【0038】
図1から図3に示すように、サドル2は、円筒状の本管10に対して、本管10のうち第1側の外周面10aに配置されている。この状態において、サドル2は、本管10にクランプ3で固定されている。
クランプ3は、本体部材3aと、回転部材28と、を備えている。図6に示すように、本体部材3aは、間隔をあけて配置された一対の弾性バンド(バンド部)24、弾性バンド24の第1の端同士を接続する第1のクランプ片22、弾性バンド24の第2の端同士を接続する第2のクランプ片23と、を備えている。クランプ3は、一対の位置決め突起25と、穴35(図6も参照)と、切り欠き36と、を更に備えている。
【0039】
本体部材3aは、熱可塑性樹脂材により射出成形で一体成形されている。熱可塑性樹脂材として、硬質塩化ビニル、ABS樹脂、POM(ポリアセタール)樹脂、ナイロン、ガラス入りPP(ポリプロピレン)樹脂等が挙げられる。
クランプ3(回転部材28を除く)を熱可塑性樹脂製の一体成形部材とすることにより、クランプ3の部材構成を少なくしてクランプ3を安価にできる。また、第1のクランプ片22および第2のクランプ片23と、弾性バンド24と、が回転部材28を介さず一体的であることにより、クランプ3全体の形状が安定する。その結果、例えば、施工時において片手での操作を実現すること等ができる。
【0040】
図2に示すように、第1のクランプ片22は、断面矩形状(図1参照)に形成され、軸方向に延びている。第1のクランプ片22は、第1のサドル鍔16に第1側から対向するように引っ掛けられている。第1のクランプ片22は、軸方向の長さ(すなわち、軸長さ)L2が第1のサドル鍔16の軸長さL1より大きく形成されている。よって、第1のクランプ片22は、軸方向において、第1のサドル鍔16の両端から両側に突出されている。また、第1クランプ片22のうち、第1のサドル鍔16に接触する面22aには、ズレ防止のためのローレット加工がなされている。
【0041】
図7から図9に示すように、第2のクランプ片23は、連結部32を有し、一対の接続部33と接続されている。連結部32は、例えば、断面5角形に形成され、軸方向に延びている。
連結部32は、接触面32aと、凹部(回り止め)34と、を有する。連結部32の接触面32aは、サドル本体15(図1参照)の外周面に沿って接触可能に湾曲に形成されている。凹部34は、連結部32の軸方向の中央に形成されている。凹部34は、連結部32において、サドル本体15の反対側に開口するとともに、弾性バンド24側の面32bから弾性バンド24の反対側の面32cにかけて貫通されている。
【0042】
図6図7に示すように、連結部32の軸方向の両端部に接続部33が一体に形成されている。接続部33は、連結部32の両端部において、弾性バンド24側の面32bから弾性バンド24側に張り出されている。接続部33は、接触面33aと、穴35と、切り欠き36を有する。接続部33の接触面33aは、連結部32の接触面32aに連続して形成され、サドル本体15(図1参照)の外周面に沿って接触可能に湾曲に形成されている。穴35は、接続部33の略中央において軸方向に貫通されている。
【0043】
図3図7に示すように、第2のクランプ片23は、軸方向の長さ(すなわち、軸長さ)L2が第2のサドル鍔17の軸長さL1より大きく形成されている。よって、第2のクランプ片23は、軸方向において、第2のサドル鍔17の両端から両側に突出されている。
これにより、第2のクランプ片23の両端部に設けられた接続部33は、第2のサドル鍔17の両端から軸方向に離れた位置に配置されている。第2のクランプ片23は、第2のサドル鍔17に第1側から対向するように配置される。なお第2のクランプ片23の軸長さL2は、第1のクランプ片22の軸長さL2と等しい。
【0044】
図1図6図7に示すように、第1のクランプ片22と第2のクランプ片23とが一対の弾性バンド24で連結されている。一対の弾性バンド24のうち一方の弾性バンド24は、第1のクランプ片22の軸方向の一端部と、第2のクランプ片23のうち一方の接続部33とに一体に連結されている。また、一対の弾性バンド24のうち他方の弾性バンド24は、第1のクランプ片22の軸方向の他端部と、第2のクランプ片23のうち他方の接続部33とに一体に連結されている。
弾性バンド24は、本管10に対して、第1側(すなわち、サドル2)の反対側である第2側に配置されている。
【0045】
弾性バンド24は、熱可塑性樹脂材で弾性変形可能に形成されている。弾性バンド24は、湾曲バンド部24aと、第1の傾斜バンド部24bと、第2の傾斜バンド部24cと、を有する。湾曲バンド部24aは、本管10のうち第2側の外周面10bに沿って湾曲状に形成されている。
第1の傾斜バンド部24bは、湾曲バンド部24aの一端部から第1のクランプ片22まで傾斜状に延びている。第1の傾斜バンド部24bは、第1のクランプ片22のうち、第1のサドル鍔16に接触する面22aにおいて、軸方向の両端部に連結されている。
第2の傾斜バンド部24cは、湾曲バンド部24aの他端部から接続部33まで傾斜状に延びている。第2の傾斜バンド部24cは、接続部33のうち、連結部32の反対側の面33bに連結されている。
【0046】
このように、第1のクランプ片22、第2のクランプ片23および弾性バンド24が熱可塑性樹脂材で一体に成形されている。よって、第2のサドル鍔17に回転部材28(後述する)を第1側から引っ掛けることにより、弾性バンド24を本管10の外周面10bに接触させた状態でクランプ3をサドル2に仮固定できる。これにより、クランプ3をサドル2に取り付ける施工時にクランプ3を外れ難くできる。
【0047】
また、例えば、第1のクランプ片22を第1のサドル鍔16に引っ掛けた状態において、第2のサドル鍔17に回転部材28を引っ掛けることにより、クランプ3をサドル2に容易に仮固定できる。
さらに、弾性バンド24に連結された第2のクランプ片23を、第2のサドル鍔17に対向させることにより、回転部材28を第2のサドル鍔17に容易に引っ掛けることができる。これにより、クランプ3をサドル2に容易に仮固定できる。
【0048】
また、弾性バンド24は、クランプ3がサドル2に仮固定された状態において、サドル本体15に配置された本管10のうち第2側の外周面10bに嵌るように形成されている。換言すれば、弾性バンド24は、湾曲バンド部24aが外周面10bに接触され、弾性嵌合されるように形成されている。これにより、サドル本体15と弾性バンド24との間に本管10を挟むことができる。
【0049】
図8図10に示すように、弾性バンド24には、第1の突起(突起)41と、第2の突起(突起)42とが一体に形成されている。第1の突起41は、弾性バンド24の内周面のうち軸方向の中央において、周方向へ向けて内周面に沿って湾曲状に形成されている。第1の突起41は、例えば、弾性バンド24から本管10の外周面10bへ向けて徐々に断面幅(軸方向の大きさ)が減少するように断面三角形に形成されている。
【0050】
第2の突起42は、弾性バンド24の内周面のうち周方向の中央において、軸方向へ向けて内周面に沿って直線状に形成されている。第2の突起42は、例えば第1の突起41と同様に、弾性バンド24から本管10の外周面10bへ向けて徐々に断面幅(周方向の大きさ)が減少するように断面三角形に形成されている。
これらの第1の突起41および第2の突起42は、互いの中央において交差している。
【0051】
第1実施形態では、弾性バンド24に第1の突起41と第2の突起42との両方の突起を形成する例について説明するが、これに限らない、例えば、弾性バンド24に第1の突起41、第2の突起42の一方のみを形成してもよい。
また、第1実施形態では、弾性バンド24に第1の突起41、第2の突起42をそれぞれ1つ形成した例について説明するが、これに限らない、例えば、弾性バンド24に第1の突起41、第2の突起42を複数設けてもよい。
【0052】
また、図19に示すように、弾性バンド24には、波型形状37を設けていてもよい。波型形状37は、例えば、弾性バンド24の第2の傾斜バンド部24cに設けられている。波型形状37は、弾性バンド24の湾曲バンド部24aにおける接続部33側の位置に設けられている。波型形状37は、本管10から径方向外側に一旦離れ、また本管10に沿うように戻る形状となっている。言い換えると、波型形状37は、径方向外側に凸をなすように波打っている。また、前述の通り波型形状37は第2の傾斜バンド部24cの中に設けられている。すなわち、波型形状37は、第2の傾斜バンド部24cの範囲に収まる程度の大きさを有している。このような形状とすることで、波型形状37を有していない場合と比較して、弾性バンド24の長さに余裕を持たせることができる。すなわち、弾性変形代をより大きく持たせることができる。よって、サドル2や本管10等の寸法バラツキに加え、管の長期使用によるクリープ膨張等によって変形した場合等の変形吸収量をより大きくすることができる。
【0053】
図2に示すように、第1のクランプ片22には、例えば、一対の位置決め突起25が軸方向に間隔をおいて一体に形成されている。一対の位置決め突起25は、第1のクランプ片22のうち、第1のサドル鍔16に接触する面22aにおいて、第1のサドル鍔16の両側に形成されている。この位置決め突起25は、第1のサドル鍔16に接触する面22aから周方向に突出されている。
第1のサドル鍔16に一対の位置決め突起25が形成されることにより、本管10の軸方向において、クランプ3の中心をサドル2の中心に合わせる、あるいは近づける位置に簡単に配置できる。
【0054】
ここで、サドル2の中には、例えばサドル2(具体的には、サドル本体15)の内径R(図3参照)が同じでも、サドル2の軸長さL1が異なるものがある。
このような、軸長さL1の異なる多種のサドル2に対応させて、位置決め突起25の位置が異なるクランプ3を射出成形するために、多種の金型を用意することは経済的に好ましくない。そこで、例えば、クランプ3の位置決め突起25がサドル2の軸長さL1に対応しない場合には、クランプ3から位置決め突起25を除去して使用するようにした。
よって、一種類の金型で成形したクランプ3を、軸長さL1の異なる多種のサドル2に適用させることができる。これにより、軸長さL1の異なる多種のサドル2に合わせて、多種のクランプ3を射出成形する必要がなく、多種のサドル2に適用するクランプ3を一種類の金型で兼用できる。
【0055】
多種のサドル2に適用できるクランプ3に一種類の金型で兼用する具体的な方法として、次の方法が考えられる。
すなわち、金型に位置決め突起25用の入れ子を備える。クランプ3に位置決め突起25が必要な場合には、金型に位置決め突起25用の入れ子を配置することにより、クランプ3に位置決め突起25を一体成形できる。一方、クランプ3から位置決め突起25を除去する場合には、金型から位置決め突起25用の入れ子を外して、クランプ3に位置決め突起25を成形しないようにできる。
【0056】
また、他の方法として、クランプ3の全種に位置決め突起25を金型で一体成形してもよい。そして、施工現場において、位置決め突起25を必要としないクランプ3から位置決め突起25を取り除く。
あるいは、クランプ3を金型で成形する際に、位置決め突起25をクランプにインサート成形してもよい。一方、位置決め突起25を必要としないクランプ3の場合には、クランプ3を金型で成形する際に、位置決め突起25をインサート成形しないことにより、クランプに位置決め突起25を形成しないようにする。
【0057】
なお、第1実施形態では、一対の位置決め突起25を第1のクランプ片22に形成した例について説明したが、これに限らない。その他の例として、例えば、一対の位置決め突起25を第2のクランプ片23、あるいは弾性バンド24に設けてもよい。一対の位置決め突起25を第2のクランプ片23に設ける場合には、位置決め突起25を本管10の周方向に突出する。また、一対の位置決め突起25を弾性バンド24に設ける場合には、位置決め突起25を本管10の軸方向に突出する。
【0058】
図11に示すように、弾性バンド24内の接続部33には穴35が設けられている。穴35は、例えば、長方形状に形成されている。また、一対の弾性バンド24に存在する穴35の少なくともいずれか一方には、弾性バンド24を穴35から、穴35の軸に対して直交する方向に貫通する切り欠き36を備えている。
穴35は、第1側から第2側にかけての方向を長辺として、長方形状に形成されている。また、穴35は、接続部33を軸方向に貫通している。穴35の短辺の大きさは、回転部材28のシャフト部29を回転可能に保持するため、シャフト部29の幅よりも大きくなっている。また、穴35の長辺の大きさは、クランプ3を回転部材28によってサドル2に固定する際(後述する)にシャフト部29が穴35内で長辺方向に動くことを許容する程度に設定される。例えば、穴35の長辺と短辺の長さの比は、2:1であることが好ましい。
【0059】
切り欠き36は、穴35を、接続部33の接触面33aの側から開口するように設けられている。切り欠き36の幅は、回転部材28のシャフト部29を円滑に挿入することができるよう、シャフト部29の幅よりも大きくなっていることが好ましい。例えば、穴35の短辺部と同程度であることが好ましい。また、接触面33aから穴35までの距離は短いことが好ましい。切り欠き36は、穴35の長辺に対して直角に設けられている。
【0060】
図12、13に示すように、回転部材28は、一対のシャフト部29と、抑え部30と、操作片38と、を備えている。
抑え部30は、軸方向を長手方向として延びている。抑え部30は、例えば、軸方向から見て長方形状をなしている。なお、長方形状は抑え部30の厚さ方向を短辺とすることが好ましい。また、長辺は短辺の3倍程度の長さを有することが好ましい。例えば、短辺(抑え部30の厚さ)が6mmであるのに対し、長辺が18~19mm程度であることが好ましい。詳細の寸法については、相手部品の仕様に合わせて適宜決定する。
第1実施形態においては、抑え部30の断面形状を、一例として、長方形状として説明するが、本発明はこれに限らない。その他の例として、長方形状を他の形状としてもよい。
【0061】
シャフト部29は、抑え部30の軸方向の両端において、軸方向の断面(長方形)の中心位置から、軸方向に突出されている。シャフト部29は、例えば、軸方向から見て正方形状をなしている。またその際の正方形の一片の長さは、抑え部30の短辺(厚さ方向)の長さと等しくなっていることが好ましい。シャフト部29は、弾性バンド24の穴35に配置される。
また、シャフト部29の断面形状を、一例として、正方形状として説明するが、本発明はこれに限らない。その他の例として、正方形状を他の形状としてもよい。
【0062】
図12に示すように、操作片(操作部)38は、抑え部30の軸方向の中央部から、軸方向に対して垂直に突出している。操作片38は、抑え部30のうち、軸方向(長手方向)の一辺と厚さ方向の一辺からなる面30aに設けられている。また、操作片38の軸方向の幅は、施工者の手によって操作可能の広さに設定される。例えば、30mm程度の広さが好ましい。
【0063】
面30aは、連結部32の弾性バンド24側の面32bと接する(当接する)部位である。以下、抑え部30のうち、一方の面30aを「当接部30a」ということがある。また、面30aの反対側の面30bは、第2のサドル鍔17と接する(当接する)部位である。以下、抑え部30のうち、面30aの反対側の面30bを「当接部30b」ということがある。
【0064】
回転部材28の、シャフト部29、抑え部30、および操作片38は、熱可塑性樹脂材で一体に成形されている。熱可塑性樹脂材として、例えば、硬質塩化ビニル、ABS樹脂、POM(ポリアセタール)樹脂、ナイロン、ガラス入りPP(ポリプロピレン)樹脂等が挙げられる。これにより、回転部材28、操作片38、およびシャフト部29を簡素な形状かつ安価にできる。
【0065】
図12図13図14に示すように、シャフト部29は正方形状となっている。シャフト部29の四角形の斜辺の長さは穴35の短辺の長さよりも小さくなっている。そのため、シャフト部29は穴35の中を自在に回転することができる。シャフト部29の端は、一対の弾性バンド24それぞれの第2の端に形成された穴35に配置される。
例えば、シャフト部29の斜辺の長さが7.7mm(シャフト部29の一片の長さが6mmで、角には面取りR1を施している場合)に対し、穴35の短辺が8mmとすることが好ましい。
【0066】
ここで、一対のシャフト部29は、例えば、以下の手順で一対の穴35に嵌め込まれる。
すなわち、まず、一方のシャフト部29を一方の穴35に挿入する。次に、他方のシャフト部29を他方の穴35に備えられた切り欠き36から挿入する。
また本実施形態のように、切り欠き36が両方の穴35に備えられている場合は、一対のシャフト部29を同時に穴35へ挿入してもよい。
【0067】
この状態において、一対のシャフト部29は、一対の穴35に自由回転に支持されている。よって、回転部材28は、一対のシャフト部29を介して一対の穴35に回転自在に支持されている。この状態において、抑え部30の当接部30bを第2のサドル鍔17(図1参照)に第1側から引っ掛けることができる。
【0068】
また、図1に示すように、一対のシャフト部29が一対の穴35に嵌め込まれた状態において、回転部材28を操作片38で矢印A方向(すなわち、操作方向)に回転させることができる。すなわち、回転部材28は、シャフト部29を介して本体部材3aに矢印A方向へ回転可能に取り付けられている。
【0069】
ここで、例えば、長方形状をなす抑え部30は、図16に示すように、当接部30bが第2のサドル鍔17に引っ掛けられた状態において、当接部30bの角30c(当接部30bが備える2つの角のうち、管10に対してより離れている角)を支点にして矢印A方向(一方側)に回転される。よって、回転部材28の矢印A方向への回転により、シャフト部29の位置が変位する。
【0070】
つぎに、サドル継手1を本管10に取り付ける固定方法を図15から図18を参照して説明する。
図15に示すように、第1工程において、本管10のうち第1側の外周面10aにサドル2をかぶせる。本管10にかぶせたサドル2の第1のサドル鍔16に、クランプ3の第1のクランプ片22を第1側から引っ掛ける(係止する)。
【0071】
図17に示すように、第2工程において、シャフト部29を切り欠き36を介して穴35に配置することで、回転部材28と本体部材3aとを組み合わせる。このとき、回転部材28の向きを調整し、操作片38が本管10に対し径方向の外側になるようにする。
【0072】
その後、第2のクランプ片23を第2のサドル鍔17から離す方向に弾性バンド24を弾性変形させる。弾性変形した弾性バンド24を復元させることにより、第2のクランプ片23を矢印C方向に移動させる。第2のクランプ片23が第2のサドル鍔17を乗り越えて、回転部材28の当接部28bが第2のサドル鍔17に第1側から引っ掛けられる(係止される)。
この状態において、弾性バンド24が、本管10のうち第2側の外周面10bに嵌るように配置され、外周面10bに接触して弾性嵌合する。また、第1のクランプ片22が第1のサドル鍔16に引っ掛けられ、回転部材28の当接部28bが第2のサドル鍔17に引っ掛けられる。よって、クランプ3は、サドル2に安定的に仮固定される。
【0073】
図16に示すように、第3工程において、操作片38を矢印A方向に、当接部30bにおける角30cを支点にして操作する。それに伴い、操作片38の操作によって当接部30aが矢印A方向に移動する。その結果、当接部30aにおける角30dが面32bと接触する。そこから更に操作片38を矢印A方向に移動させると、当接部30aが面32bと接し、当接部30bが第2のサドル鍔17と完全に接する。
このとき、当接部30aが面32bを本管10の第1側へ押し上げることで、面32bと第2のサドル鍔17とのD方向の距離が徐々に大きくなる。すなわち、第2のクランプ片23が第2のサドル鍔17から離れるように矢印D方向に移動する。
【0074】
よって、抑え部30で弾性バンド24に張力P1を付与できる。これにより、弾性バンド24を好適に伸ばし、弾性バンド24で本管10を締め付けることができる。したがって、本管10にサドル本体15を密着させた状態で、サドル継手1を本管10に取り付けて固定できる。
【0075】
ここで、第2のクランプ片23の連結部32に凹部34が形成されている。また、回転部材28で弾性バンド24に張力P1を付与した状態(当接部30aが面32bと、当接部30bが第2のサドル鍔17と接している状態)において、凹部34の底面34aと操作片38が接するように配置されている。よって、回転部材28が張力P1を付与している状態において、回転部材28がA方向に必要以上に回転することを防ぐことができる。
【0076】
また、回転部材28によって張力P1を付与している状態のとき、回転部材28も、弾性バンド24から、当接部28a及び28bから保持力P2を、回転部材28の長方形状の長辺と平行に受けている状態となる。更に、回転部材28が長方形状となっているため、一度保持力P2を受けている状態となった後は、弾性バンド24による固定を解除する方向への力(B方向への回転力)は発生しない。
【0077】
このように、操作片38を移動させ弾性バンド24に張力P1を付与した後は、回転部材28が操作位置に保持され、弾性バンド24に張力P1を付与した状態に保つことができる。更に、抑え部30が第1側から第2側にかけて保持力P2により抑えられている状態となる。これにより、外力などによって回転部材28がB方向に回転することを防ぎ、クランプ3をサドル2から外れにくくすることができる。
【0078】
さらに、弾性バンド24に回転部材28で張力P1を付与する前に、弾性バンド24を本管10に嵌めるように配置する。すなわち、弾性バンド24を本管10の外周面10bに接触させて弾性嵌合させることができる。よって、クランプ3を第1のサドル鍔16および第2のサドル鍔17に安定的に仮固定できる。これにより、弾性バンド24に回転部材28で張力P1を付与するとともに、張力P1を調整する施工時に、クランプ3をサドル2から外れ難くできる。
【0079】
また、図8図10に示すように、弾性バンド24から第1の突起41および第2の突起42が突出されている。第1の突起41は本管10の周方向に向けて配置されている(周方向に延びている)。よって、本管10をサドル2にクランプ3で把持した状態において、本管10の外周面10bに第1の突起41を押し付けることができる。これにより、本管10に作用する外力等でサドル2と本管10が軸方向にずれることを防止できる。
【0080】
また、第2の突起42は本管10の軸方向に向けて配置されている(軸方向に延びている)。よって、本管10をサドル2にクランプ3で把持した状態において、本管10の外周面10bに第2の突起42を押し付けることができる。これにより、本管10に作用する外力等でサドル2と本管10が周方向にずれることを防止できる。
【0081】
ここで、図2に示すように、クランプ3の一対の位置決め突起25は、第1のクランプ片22のうち第1のサドル鍔16に接触する面22aから周方向に突出されている。一対の位置決め突起25は、本管10の軸方向において、第1のサドル鍔16の両側に配置される。よって、一対の位置決め突起25により、クランプ3の軸方向の中心をサドル2の中心に合わせる、あるいはサドル2の中心に近づける位置に簡単に配置できる。
【0082】
これにより、弾性バンド24に張力P1を付与する回転部材28が、例えばクランプ3の1か所に設けられた場合でも、サドル2にクランプ3をバランスよく取り付けることができる。これにより、クランプ3による本管10の取付性(すなわち、施工性)を高めることができる。
【0083】
以上説明したように、第1実施形態のクランプ3によれば、本体部材3aが、間隔をあけて配置された2つのバンド部24と、2つのバンド部24の第1の端同士を接続する第1のクランプ片22とを備えている。また、回転部材28が、2つのバンド部24の穴35に配置されるシャフト部29を備えている。このような形状とすることで、管10にサドル継手1を被せ、サドル継手1にクランプ3を取付ける時、第1のクランプ片22をサドル継手1に引っ掛けることができる。その後、2つのバンド部24を、管10を挟んだサドル継手1の反対側に配置した状態で、シャフト部29を各バンド部24の穴35に挿入することができる。
【0084】
そして、回転部材28を回転させることで、クランプ3をサドル継手1に固定させることができる。すなわち、回転部材28を回転させることでバンド部24に張力P1を発生させて管10を締め付け、その反力P2により回転部材28も保持される。加えて、バンド部24は管10を弾性力によって締め付ける。すなわち、バンド部24が弾性変形するため、サドル継手1及び管10の寸法バラツキやサイズ違いが多少生じたとしても、そのバラツキの程度が、弾性変形によって吸収可能な程度であれば、バンド部24によって管10を締め付けることができる。
【0085】
よって、管10にサドル継手1を被せ、クランプ3を取付ける時、クランプ3を外れ難くでき、加えて、サドル継手1や管10の寸法、クランプ3の寸法のバラツキを吸収できるクランプ3を提供することができる。
【0086】
また、切り欠き36が、バンド部24を穴35から、穴35の軸に直交する方向に貫通している。したがって、シャフト部29を穴35に配置するときに、シャフト部29を、穴35の外部から切り欠きを通して穴35の内部に配置させることができる。このように、切り欠き36を介してシャフト部29と本体部材3aとを組み合わせることができる。
【0087】
ここで、切り欠き36がない場合は、両シャフト部29を穴35に配置するとき一方のシャフト部29を本体部材3aの一方の穴35に挿入した後、もう一方のシャフト部29を本体部材3aのもう一方の穴35に挿入しなければならない。このとき、一方のシャフト部29を本体部材3aの一方の穴35に差し込んだ状態で、2つのバンド部24を互いに引き離すように変形させ、両バンド部24の間に回転部材28を配置しなくてはならない。このような操作を不要とすることで、作業の簡素化を図ることができる。
【0088】
また、従来の技術のようにチェーンを用いてネジにより固定する場合と比較してより単純な構造とすることで、部品の点数を少なく、かつ部材の組み立てを容易にすることができる。
【0089】
また、クランプ3が第2のクランプ片23を有することで、クランプ3の第2の端同士を接続し固定している。よって、より確実にバンド部24の間隔を保持することができる。更に、第2のクランプ片23に凹部34を備えることで、回転部材28が必要以上に回転することを防止することができる。よって、凹部34を有していない場合と比較して回転部材28をより確実に適切な角度に設定することができる。
【0090】
また、クランプ3が熱可塑性樹脂からなることから、外部からの入力に対してある程度柔軟に変形することができる。すなわち、クランプ3が、例えば変形しない部材(金属等)からなる場合と比較して、クランプ3を締め付けて固定した際に相手部品の寸法バラツキを吸収することができる。
【0091】
更に、熱可塑性樹脂によりクランプ3を一体成型できる。この場合、クランプ3の部材構成を少なくして安価にできる。クランプ3を安価にすることにより、施工業者は複数のクランプ3を保有できる。
よって、円筒状の管10に複数のサドル2を連続させて融着でき、施工スピードを速くできる。また、クランプ3を安価にすることにより、管10にサドル2を融着した後、クランプ3をサドル2に取り付けた状態にできる。これにより、クランプ3をサドル2から取り外す手間がなくなり、施工スピードを速くできる。
【0092】
また、バンド部24が突起41、42を有する。これによって、突起41、42を管10に接触させることで、突起41、42を有していない場合と比較して、バンド部24と管10とが接触する表面積が小さくなる。よって、同じ締め付け力で固定した際のバンド部24と管10との摩擦力をより大きくすることができる。すなわち、突起41、42を有していない場合と比較して、クランプ3を固定した際にバンド部24と管10とが滑ることを防ぎ、クランプ3を外れにくくすることができる。
【0093】
また、クランプ片22、23にローレット加工がなされている。これによって、クランプ片22、23表面の摩擦力を上げることができる。よって、ローレット加工がされていない場合と比較して、クランプ3を固定した際にクランプ片22、23とサドル鍔16、17とが滑ることを防ぎ、クランプ3を外れにくくすることができる。
【0094】
また、バンド部24に備えられた波型形状37が、クランプ3の固定時等に変形する。これにより、サドル2や管10等の寸法バラツキに加え、経年劣化による膨張等によって変形した場合等の変形吸収量をより大きくすることができる。
【0095】
また、サドル2に第1のクランプ片22を引っ掛け、シャフト部29を穴35に配置し、サドル2とクランプ3との間に管10を挟み、回転部材28を回転させてサドル2に押し付けることで、サドル2が固定される。すなわち、回転部材28を回転させることによってクランプ3を固定することができるため、固定する際の作業が容易となる。
【0096】
また、シャフト部29を本体部材3aの穴35に配置するときは、切り欠き36を通して配置する。このことから、穴35に切り欠き36を有していない場合と比較して作業をより容易かつ短時間で行うことができる。
さらに、本体部材3aと回転部材28とは、クランプ3を固定する直前まで別体となっている。このことから、万が一本体部材3a及び回転部材28のいずれかに異常が見つかった際に、そのいずれかのみを交換することで対応することができる。
【0097】
よって、あらかじめ本体部材3aと回転部材28とが一体となっている場合と比較して、クランプ3全体を交換する必要がないため、部材に異常が見つかったときの対応を容易にすることができ、かつ、より安価に対応することができる。
【0098】
次に、本発明に係る第2実施形態を、図20から図22を参照して説明する。なお、第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一、類似の部分については同じ符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0099】
(第2実施形態)
図20から図22に示すように、サドル付分水栓50は、サドル51と、分水栓52と、クランプ(サドルクランプ、サドルジグ)53と、を備えている。分水栓52は、サドル51の継手部56に接続されている。分水栓52は、一般に使用されている分水栓と概ね同じ構成であり、詳しい説明を省略する。
【0100】
サドル51は、第1実施形態のサドル2と同様に、通常、EFサドル(エレクロトフュージョンサドル、電気融着サドル)として構成されている。サドル51およびクランプ53には、第1実施形態のサドル継手1と同様に、本管10が挟持される。この状態において、本管10の外周面10a(図1参照)がサドル51に密着される。本管10の外周面10aにサドル51が密着された状態において、サドル2の内部に設けられた電熱線(不図示)を発熱させる。これにより、サドル51と本管10の外周面10aとが融着される。
【0101】
サドル51は、サドル本体61と、第1のサドル鍔62と、第2のサドル鍔63と、を有する。サドル本体61は、例えば、第1実施形態のサドル本体15と概ね同様に形成されている。サドル51は、例えば、内径Rが第1実施形態のサドル2と同じで、軸長さL1が第1実施形態のサドル2より大きく形成されている。すなわち、第1のサドル鍔62および第2のサドル鍔63は、第1実施形態の第1のサドル鍔16および第2のサドル鍔17より軸長さL1が大きく形成されている。
【0102】
クランプ53は、第1実施形態のクランプ3から一対の位置決め突起25(図2参照)を除去したもので、その他の構成は第1実施形態のクランプ3と同様である。よって、例えば、第1実施形態のクランプ3を成形する金型から位置決め突起25用の入れ子を外し、その金型でクランプ53を形成できる。
その他の方法として、例えば、第1実施形態のクランプ3を成形する金型でクランプ3を成形する。成形したクランプ3から位置決め突起25を取り除くことによりクランプ53を形成できる。
さらに、他の方法として、例えば、第1実施形態のクランプ3を成形する金型でクランプ53を成形する際に、位置決め突起25をインサート成形しないことにより、クランプ53を成形できる。
これにより、クランプ53の金型を、第1実施形態のクランプ3を形成する金型と兼用できる。
【0103】
上述したように、第1実施形態のサドル継手1に備えられたサドル2、第2実施形態のサドル付分水栓50に備えられたサドル51には、サドル2の内径Rが同じでも軸長さL1が異なるものがある。サドル2,51の種類による内径R、軸長さL1等の具体例を表1に示す。
【0104】
表1において、本管10の口径を「本管口径」、サドル継手1やサドル付分水栓50の種類を「EF継手種類」、枝管12の口径を「サドル分岐口径」、サドル2,51の軸長さL1を「軸長さL1」、サドル2,51の内径Rを「サドル内径R」で示す。「EF継手種類」の列において、第1実施形態のサドル継手1を「EFサドル」と示し、第2実施形態のサドル付分水栓50を「EFサドル付分水栓」と示している。「サドル分岐口径」の列において、数値がコンマを挟んで並列していることは、枝管12の口径の大きさが複数種類あることを示している。表中の数値の単位は、いずれも「mm」である。
【0105】
【表1】
【0106】
表1に示すように、内径Rが同じで、軸長さL1の異なる多種のサドル2,51が存在する。このため、多種のサドル2,51に対応させて、クランプに位置決め突起25(図2参照)を成形する場合、クランプを射出成形する多種の金型を用意する必要があり、経済的に好ましくない。
そこで、クランプ3の位置決め突起25がサドル51の軸長さL1に対応しない場合には、第2実施形態のクランプ53のように位置決め突起25を設けないようにした。これにより、クランプ53をサドル51に対応させることができる。
よって、第2実施形態のクランプ53の金型を、第1実施形態のクランプ3を形成する金型と兼用できる。兼用の金型で形成したクランプ3,53は、軸長さL1の異なる多種のサドル2,51に適用させることができる。
【0107】
以上説明したように、第2実施形態のクランプ53によれば、第1実施形態のサドル継手1と同様に、樹脂製で、かつ部材構成を少なくすることによりクランプ53を安価にできる。さらに、本管10にサドル51を被せ、クランプ53を取付ける施工時に、クランプ53を外れ難くできる。加えて、サドル51や本管10の寸法、クランプ53の寸法のバラツキを吸収できる。
【0108】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0109】
上述の実施形態では、操作片38が回転部材28における軸方向の中央にあること、かつ、凹部34は、連結部32の軸方向の中央に形成されていることを説明したが、本発明のこれらの位置は適宜選択できる。
例えば、操作片38及び凹部34の位置は、軸方向においてどちらかの側に偏っていてもよい。このことによって、例えば施工現場において操作片を操作する空間が足りず、回転部材が軸方向中央部にあっては操作できないといった問題等に対応することができる。
【0110】
また、上述の実施形態では位置決め突起25が一対に位置していることを説明したが、どちらかの側に一つだけ位置していてもよい。
このような形状にすることで、サドル2におけるどちらかの側のみに位置合わせをすることで、多種のサドル2に対応することができる。
【0111】
また、上述の実施形態では波型形状37が弾性バンド24の一か所に位置していることを説明したが、複数位置していてもよい。このような形状とすることで、さらにサドル2や本管10のバラツキの吸収代を大きくすることができる。
【0112】
また、上述の実施形態ではシャフト部29が正方形状であることを説明したが、円形状となっていてもよい。このような形状とすることで、回転部材28を回転させる際の動きを滑らかにすることができる。
【0113】
例えば、前記実施形態では、連結部材として樹脂製の弾性バンド24を例示したが、これに限らない。その他の例として、弾性変形する金属製のバンドが挙げられ、例えば、バネ鋼製の弾性バンドやチェーンやワイヤ等を連結部材として使用してもよい。バンドの形状は、断面平板状に限らず断面円形状であってもよく、特に限定されない。
【0114】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0115】
2,51 サドル
3,53 クランプ
3a 本体部材
22 第1のクランプ片
23 第2のクランプ片
24 バンド部
25 突起
28 回転部材
29 シャフト部
35 穴
36 切り欠き
37 波型形状
41 第1の突起
42 第2の突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図18
図19
図20
図21
図22