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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】ポンプゲートの管理運転方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/20 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
E02B7/20 104
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020160272
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2022053566
(43)【公開日】2022-04-06
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦野 健司
(72)【発明者】
【氏名】野口 真
(72)【発明者】
【氏名】橋本 靖志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 潤弥
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-066901(JP,A)
【文献】特開2018-059277(JP,A)
【文献】特開2018-187540(JP,A)
【文献】特開2019-209281(JP,A)
【文献】特開平09-228980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプを備えた扉体がガイド部材に案内されて昇降するポンプゲートの管理運転方法であって、
扉体を閉位置に下降し、ガイド部材に対する扉体の遊びを無くして扉体をガイド部材に固定する扉体閉鎖工程と、
流水路内におけるポンプの吸込側の水位が所定水位に満たない場合にポンプを起動させないインターロックを解除するインターロック解除工程と、
流水路内で扉体を閉じた閉状態で且つポンプが流水路内の水に浸漬しない気中状態で、ポンプを起動させ、所定の管理項目について測定を行うポンプ測定工程とを有し、
ポンプ測定工程終了後、ポンプを停止し、インターロックを機能させ、扉体を開位置に上昇させることを特徴とするポンプゲートの管理運転方法。
【請求項2】
扉体閉鎖工程を実行した後、ポンプ測定工程の実行指令をポンプゲートの制御装置が受けると、インターロック解除工程とポンプ測定工程とが順次自動的に実行され、
ポンプ測定工程終了後、自動的に、ポンプが停止し、インターロックが機能することを特徴とする請求項1記載のポンプゲートの管理運転方法。
【請求項3】
扉体閉鎖工程とインターロック解除工程とポンプ測定工程とは遠隔操作により実行されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポンプゲートの管理運転方法。
【請求項4】
所定の管理項目としては、ポンプの電流、ポンプの振動、ポンプの騒音、ポンプの回転数、ポンプの消費電力、ポンプの温度、ポンプの潤滑油の温度の少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のポンプゲートの管理運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急の排水等に用いられるポンプゲートの管理運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のポンプゲートとしては、例えば、図12に示すように、流水路101に設置されたポンプゲート102がある。流水路101は、吸込側水路の一例である支川側水路103と、吐出側水路の一例である本川側水路104とを有している。
【0003】
本川側水路104の下流端は本川105に合流している。また、本川側水路104の下流端には開閉自在な下流ゲート106が設置されている。
【0004】
ポンプゲート102は、支川側水路103と本川側水路104との境界部にあり、流水路101を開閉する扉体108と、扉体108を昇降させる昇降装置109とを有している。扉体108には横軸ポンプ110が設けられている。
【0005】
平常時は、図12に示すように、下流ゲート106を開くとともに、横軸ポンプ110を停止し、扉体108を流水路101内の水面114上に上昇させた開状態にしておく。これにより、水115が、支川側水路103から本川側水路104へ自然流下し、本川側水路104から本川105に合流する。尚、集中豪雨や台風が多い出水期以外の非出水期では、通常、支川側水路103から本川側水路104へ自然流下する水115の流量は僅かである。
【0006】
また、集中豪雨等の増水により本川側水路104の水位が上昇した場合、本川側水路104から支川側水路103への逆流を防止するために、図13に示すように、扉体108を下降させた閉状態で、横軸ポンプ110を作動して、支川側水路103から本川側水路104へ水115を緊急かつ強制的に排水する。
【0007】
このようなポンプゲート102において、平常時は開状態に保たれているが、緊急に排水が必要となった際に横軸ポンプ110を確実に運転できることを確認するため、平常時において定期的に管理運転が行われている。
【0008】
管理運転を行う場合、先ず、ポンプゲート102の扉体108を開いた状態で、下流ゲート106を下降して本川側水路104の下流端を閉鎖する。これにより、流水路101の上流側の水115が支川側水路103から本川側水路104へ流れて下流ゲート106で堰き止められるため、流水路101内に水115が貯留され、流水路101内の水位が次第に上昇する。
【0009】
これにより、管理運転の際に必要な量の水115が支川側水路103内に貯留され、支川側水路103内の水位が所定水位に達すると、図14に示すように、ポンプゲート102の扉体108を下降して、扉体108を寸開状態にする。これにより、横軸ポンプ110が支川側水路103内の水面114下に水没し、この状態で横軸ポンプ110を駆動させることで、横軸ポンプ110内の羽根車が回転し、支川側水路103の水115が強制的に横軸ポンプ110内に吸い込まれて本川側水路104へ排水される。
【0010】
このような管理運転において、例えば横軸ポンプ110の電流等を測定することにより、横軸ポンプ110の不具合の有無を確認している。
【0011】
尚、上記寸開状態とは、扉体108が閉位置まで下降するのではなく、閉位置よりも僅かに上方位置に下降することで、扉体108の下方が僅かに開いている状態である。このような寸開状態では、支川側水路103の水115は、強制的に横軸ポンプ110内に吸い込まれて本川側水路104へ排水された後、本川側水路104から扉体108の下方を通って支川側水路103に戻る。このように、管理運転に必要な量の水115を貯留し、支川側水路103と本川側水路104との間で水115を循環させながら管理運転を行っている。
【0012】
尚、管理運転を終了した後、横軸ポンプ110を停止し、図12に示すように、扉体108を寸開状態から上昇して開状態に戻し、下流ゲート106を上昇して本川側水路104の下流端を開放する。
【0013】
上記のように、扉体108に横軸ポンプ110を備えたポンプゲート102は例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特許第4614135号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら上記の従来形式では、管理運転を行う際、図14に示すように、下流ゲート106を下降して、横軸ポンプ110が水面114下に水没する水位になるまで、水115を流水路101内に貯留する必要があるため、長時間を要するといった問題がある。特に、非出水期では流水路101内を流れる水量が少ないので、管理運転の準備に要する時間が長くなった。また、下流ゲート106を設置することができない場合には、水115を流水路101内に貯留することができない。
【0016】
本発明は、管理運転に要する時間を短縮することが可能なポンプゲートの管理運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本第1発明は、ポンプを備えた扉体がガイド部材に案内されて昇降するポンプゲートの管理運転方法であって、
扉体を閉位置に下降し、ガイド部材に対する扉体の遊びを無くして扉体をガイド部材に固定する扉体閉鎖工程と、
流水路内におけるポンプの吸込側の水位が所定水位に満たない場合にポンプを起動させないインターロックを解除するインターロック解除工程と、
流水路内で扉体を閉じた閉状態で且つポンプが流水路内の水に浸漬しない気中状態で、ポンプを起動させ、所定の管理項目について測定を行うポンプ測定工程とを有し、
ポンプ測定工程終了後、ポンプを停止し、インターロックを機能させ、扉体を開位置に上昇させるものである。
【0018】
これによると、ポンプ測定工程において、気中状態でポンプを起動させて、所定の管理項目について測定を行うため、従来のようにポンプが水面下に水没する水位になるまで、水を流水路内に貯留する必要は無い。これにより、管理運転に要する時間を短縮することができる。
【0020】
また、インターロック解除工程においてインターロックを解除するため、その後のポンプ測定工程において、気中状態でポンプを起動させることができる。
【0021】
本第発明におけるポンプゲートの管理運転方法は、扉体閉鎖工程を実行した後、ポンプ測定工程の実行指令をポンプゲートの制御装置が受けると、インターロック解除工程とポンプ測定工程とが順次自動的に実行され、
ポンプ測定工程終了後、自動的に、ポンプが停止し、インターロックが機能するものである。
【0022】
本第発明におけるポンプゲートの管理運転方法は、扉体閉鎖工程とインターロック解除工程とポンプ測定工程は遠隔操作により実行されるものである。
【0023】
これによると、ポンプゲートの設置場所に人がいない場合であっても、ポンプゲートから離れた場所で遠隔操作により管理運転を行うことができる。
【0024】
本第発明におけるポンプゲートの管理運転方法は、所定の管理項目としては、ポンプの電流、ポンプの振動、ポンプの騒音、ポンプの回転数、ポンプの消費電力、ポンプの温度、ポンプの潤滑油の温度の少なくともいずれか1つである。
【0025】
これによると、ポンプ測定工程において、ポンプは気中状態で作動するため、ポンプの吸込側の水位と吐出側の水位とが変動してポンプの運転状態が変化するようなことは無く、ポンプの運転状態が安定している。これにより、気中状態でポンプが作動しているときの電流値や振動値等に基づいてポンプの回転体のバランス異常や回転摺動部分の異常を検知することができる。
【0026】
また、ポンプ測定工程において、ポンプは水で冷却されないので、ポンプの温度変化が大きくなり、温度変化の傾向に基づいてポンプの異常を検知することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように本発明によると、ポンプゲートの管理運転に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1の実施の形態におけるポンプゲートの一部断面側面図であり、扉体を開位置まで上昇させた様子を示す。
図2】同、ポンプゲートの扉体とガイドレールの側面図であり、扉体を開位置まで上昇させた様子を示す。
図3】同、ポンプゲートを上流側から見た一部断面正面図であり、扉体を開位置まで上昇させた様子を示す。
図4】同、ポンプゲートの扉体の平面図である。
図5】同、ポンプゲートの扉体の側面図である。
図6】同、ポンプゲートの一部断面側面図であり、扉体を閉位置まで下降させた様子を示す。
図7】同、ポンプゲートを上流側から見た一部断面正面図であり、扉体を閉位置まで下降させた様子を示す。
図8】同、ポンプゲートの扉体とガイドレールの側面図であり、扉体を閉位置まで下降させた様子を示す。
図9図8におけるX-X矢視図である。
図10】同、ポンプゲートの一部断面側面図であり、管理運転を実行している際の様子を示す。
図11】本発明の第2の実施の形態におけるポンプゲートの制御系のブロック図である。
図12】従来のポンプゲートおよびポンプゲートの上流側と下流側の概略図であり、平常時に扉体を開いた状態を示す。
図13】同、ポンプゲートおよびポンプゲートの上流側と下流側の概略図であり、増水時に扉体を閉じた状態を示す。
図14】同、ポンプゲートおよびポンプゲートの上流側と下流側の概略図であり、管理運転を実行している際の様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。尚、既に上記背景技術で述べた従来のものと同じ部材については同一の符号を付記して、詳細な説明を省略する。
【0030】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、図1図5に示すように、1は流水路101に設置されたポンプゲートである。ポンプゲート1は、流水路101を開閉する昇降自在な扉体2と、扉体2を上下方向に案内するガイド部材3と、扉体2を昇降させる昇降駆動装置4とを有している。
【0031】
尚、扉体2に対して支川側水路103の側を上流側とし、本川側水路104の側を下流側とする。
【0032】
扉体2は、扉本体6と、扉本体6に備えられた2台の横軸ポンプ7と、上下複数の案内車輪9,10とを有している。横軸ポンプ7は、扉体2の幅方向Wにおいて並設されており、支川側水路103の水37を吸い込んで本川側水路104に強制的に吐出する。また、横軸ポンプ7は、吐出口を開閉するフラップ型の逆止弁8(図5参照)を有している。
【0033】
扉本体6の両側部の上下二箇所にはそれぞれ水平方向の車軸28が設けられ、各案内車輪9,10は各車軸28に回転自在に設けられている。
【0034】
扉本体6の上流側の面の両側部にはそれぞれ、受け体25と振れ止め用ローラ27とが設けられている。受け体25は扉本体6から上流側へ突出している。また、振れ止め用ローラ27は扉体2が幅方向Wに振れるのを防止するためのものである。
【0035】
扉本体6の下流側の面には、ゴム等からなる四角枠形状のシール部材11が設けられている。
【0036】
昇降駆動装置4は、扉体2の上方に設置されており、昇降自在な2本のロッド12と、両ロッド12を同期して昇降させる電動機13とを有している。尚、両ロッド12はそれぞれ扉体2の上端部に連結されている。
【0037】
ガイド部材3は、流水路101に立設された左右一対のガイドレール14を有している。両ガイドレール14はそれぞれ、平面視において凹形状のレールであり、扉体2の厚さ方向Tにおいて相対向する一対のガイド板15,16と、一対のガイド板15,16の外側縁間に設けられた外側板17とを有している。一対のガイド板15,16間には上下方向に長い戸溝19が形成されており、案内車輪9,10および扉本体6の両側部は戸溝19内に挿入されている。
【0038】
また、振れ止め用ローラ27は、扉本体6と共に、上流側のガイド板15に案内されて転動自在に昇降する。
【0039】
尚、図9に示すように、扉本体6とガイド板15との間には隙間35が形成され、案内車輪9,10とガイド板15との間にも隙間36が形成され、これにより、扉体2は、ガイド部材3に対して、厚さ方向Tにおける僅かな遊びを有している。
【0040】
一方のガイドレール14の下流側のガイド板16と他方のガイドレール14の下流側のガイド板16との間には横部材21が設けられている。両方の下流側のガイド板16と横部材21とで戸当り22が形成されている。
【0041】
扉体2の昇降経路上には、扉体2が最下位まで下降して流水路101を閉鎖する閉位置PS(図6図8参照)と、流水路101内の水面38上に上昇している開位置PO(図1図3参照)とが設定されている。
【0042】
ガイドレール14の上流側のガイド板15の下部には、第1楔部材29と第2楔部材30とが設けられている。第1楔部材29は、図6図9に示すように、閉位置PSまで下降した扉体2の下部案内車輪10を戸当り22(すなわち下流側のガイド板16)に押し当てるためのものである。また、第2楔部材30は、図6図9に示すように、閉位置PSまで下降した扉体2の受け体25に当接して、扉本体6を戸当り22(すなわち下流側のガイド板16と横部材21)に押し当てるためのものである。
【0043】
尚、受け体25と第1楔部材29と第2楔部材30とはそれぞれ、下位ほど下流側へ傾斜した傾斜面を有している。
【0044】
また、ポンプゲート1は、支川側水路103の水位(すなわち横軸ポンプ7の吸込側の水位)が所定水位に満たない場合、横軸ポンプ7を起動させないようにインターロックされている。
【0045】
上記構成における作用を以下に説明する。
【0046】
平常時は、図1図3に示すように、扉体2を開位置POまで上昇させた状態に保つ。これにより、扉体2が流水路101内の水面38よりも上方に位置し、流水路101内の水37が支川側水路103から本川側水路104へ自然流下する。尚、非出水期では、通常、支川側水路103から本川側水路104へ自然流下する水37の流量は僅かである。
【0047】
また、集中豪雨等の増水により本川側水路104の水位が上昇した場合、本川側水路104から支川側水路103への逆流を防止するために、図6図9に示すように、昇降駆動装置4の電動機13を駆動して扉体2を開位置POから閉位置PSまで下降し、横軸ポンプ7を起動する。
【0048】
これにより、横軸ポンプ7は水面38下に水没した状態になり、支川側水路103の水37が横軸ポンプ7の吸込口から吸い込まれ、横軸ポンプ7の逆止弁8が開いて、横軸ポンプ7内の水37が吐出口から本川側水路104に吐出される。このため、支川側水路103から本川側水路104へ水37が緊急かつ強制的に排水される。
【0049】
この際、図8図9に示すように、閉位置PSまで下降した扉体2の受け体25が第2楔部材30に上方から当接して、扉本体6が戸当り22(すなわち下流側のガイド板16と横部材21)に押し当てられるとともに、閉位置PSまで下降した扉体2の下部案内車輪10が第1楔部材29に上方から当接して、下部案内車輪10が戸当り22(すなわち下流側のガイド板16)に押し当てられる。
【0050】
これにより、ガイド部材3に対する扉体2の遊びが無くなり、閉位置PSにおいて扉体2がガイド部材3に固定されるとともに、扉本体6のシール部材11が戸当り22(すなわち下流側のガイド板16と横部材21)に押付けられて圧縮するため、扉本体6と戸当り22(すなわち下流側のガイド板16と横部材21)との間の水密性が確保される。
【0051】
尚、扉体2がガイドレール14に案内されて昇降している際、振れ止め用ローラ27が上流側のガイド板15に当接して転動することにより、扉体2が幅方向Wに振れることを防止している。
【0052】
また、平常時においてポンプゲート1の管理運転を実施する際の管理運転方法を以下に説明する。
【0053】
管理運転方法は以下のような扉体閉鎖工程とインターロック解除工程とポンプ測定工程を行う。
【0054】
先ず、扉体閉鎖工程において、図10に示すように、昇降駆動装置4の電動機13を駆動して扉体2を開位置POから閉位置PSまで下降する。これにより、閉位置PSにおいて扉体2がガイド部材3に固定される。この際、支川側水路103内の水37の流量は僅かであるため、ある程度の時間にわたって横軸ポンプ7は支川側水路103内の水37に浸漬しない気中状態に保たれる。
【0055】
その後、インターロック解除工程を行って、ポンプゲート1に対するインターロックを解除する。これにより、支川側水路103の水位が所定水位に満たない場合であっても、横軸ポンプ7を起動することが可能となる。
【0056】
その後、ポンプ測定工程において、横軸ポンプ7を気中状態で起動させ、横軸ポンプ7を空運転している状態で、所定の管理項目について測定を行う。
【0057】
尚、所定の管理項目としては、横軸ポンプ7の電流、振動、騒音、回転数、消費電力、温度、潤滑油の温度の少なくともいずれか1つである。また、ポンプゲート1には、上記所定の管理項目について測定するポンプ測定機器(各種センサ等)が備えられている。
【0058】
これらの管理項目については、予め、工場又は設置現場等にて正常時における横軸ポンプ7の空運転の電流値、振動振幅値、騒音値、回転数値、消費電力値、温度値、潤滑油の温度値を測定して、それぞれの管理項目についての標準測定データを作成しておき、管理運転時に測定された電流値、振動振幅値、騒音値、回転数値、消費電力値、温度値、潤滑油の温度値と標準測定データとを比較して、異常の有無を判断する。
【0059】
また、管理運転を行う度に、それぞれの管理項目についてデータを取得しておき、これらデータの傾向を観察することで、異常の有無を判断することも可能である。
【0060】
上記のようなポンプゲート1の管理運転方法によると、インターロック解除工程においてインターロックを解除するため、その後のポンプ測定工程において、気中状態で横軸ポンプ7を起動させることができる。
【0061】
また、扉体閉鎖工程において、図10に示すように、閉位置PSにおいて、ガイド部材3に対する扉体2の遊びが無くなり、扉体2がガイド部材3に固定されるため、その後のポンプ測定工程において、扉体2のがたつきにより発生する測定ノイズを抑えることができ、正確な測定が行える。
【0062】
また、ポンプ測定工程において、横軸ポンプ7を気中状態で起動させて、所定の管理項目について測定を行うため、従来のように横軸ポンプが水面下に水没する水位になるまで、水37を支川側水路103内に貯留する必要は無い。これにより、管理運転に要する時間を短縮することができる。
【0063】
さらに、横軸ポンプ7は気中状態で作動するため、横軸ポンプ7の吸込側の水位(すなわち支川側水路103の水位)と吐出側の水位(すなわち本川側水路104の水位)とが大きく変動して横軸ポンプ7の運転状態(運転点)が大幅に変化するようなことは無く、横軸ポンプ7の運転状態が安定している。これにより、気中状態で横軸ポンプ7が作動しているときの電流値や振動値等に基づいて横軸ポンプ7の回転体(羽根車、回転軸等)のバランス異常や回転摺動部分の異常を検知することができる。
【0064】
また、ポンプ測定工程において、横軸ポンプ7は水37で冷却されないので、横軸ポンプ7自体が発する熱による温度変化が大きくなり、温度変化の傾向に基づいて横軸ポンプ7の異常を検知することができる。
【0065】
ポンプ測定工程が終了すると、横軸ポンプ7を停止させ、図1に示すように、扉体2を閉位置PSから開位置POに上昇させる。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、図11に示すように、ポンプゲート1には、昇降駆動装置4の電動機13および横軸ポンプ7を制御したり、管理運転のインターロック解除工程およびポンプ測定工程を実行する制御装置43が備えられている。尚、水位計45で計測された支川側水路103内の水位は制御装置43に送られる。
【0066】
また、ポンプゲート1の設置場所から離れた場所に設置された建屋内に、ポンプゲート1を遠隔操作するための操作盤44が設けられている。操作盤44には、扉体2を開閉させる開閉ボタン47,48と、横軸ポンプ7を起動させる起動ボタン49と、横軸ポンプ7を停止させる停止ボタン50と、管理運転のポンプ測定工程を実行させるポンプ測定工程実行ボタン51と、管理運転で得られた測定データを記憶する記憶部53等が設けられている。
【0067】
以下、上記構成における作用を説明する。
【0068】
管理運転を行う場合、先ず、閉ボタン48を押すことにより、閉鎖指令が操作盤44からポンプゲート1の制御装置43に送られ、制御装置43が昇降駆動装置4の電動機13を制御して扉体2を閉位置PSまで下降させる(図10参照)。これにより、遠隔操作で扉体閉鎖工程が実行される。
【0069】
その後、ポンプ測定工程実行ボタン51を押すことにより、ポンプ測定工程の実行指令が操作盤44からポンプゲート1の制御装置43に送られる。制御装置43は、上記実行指令を受けると、インターロックを解除し、その後、自動的に横軸ポンプ7を起動させ、ポンプ測定機器52を用いて所定の管理項目について測定を行い、得られた測定データを操作盤44の記憶部53に送って記憶させる。これにより、遠隔操作でインターロック解除工程とポンプ測定工程が実行される。
【0070】
ポンプ測定工程を開始してから所定時間が経過してポンプ測定工程が終了すると、制御装置43は、横軸ポンプ7を自動的に停止するとともに、ポンプゲート1に対してインターロックを機能させる。その後、開ボタン47を押すことにより、開放指令が操作盤44からポンプゲート1の制御装置43に送られ、制御装置43が昇降駆動装置4の電動機13を制御して扉体2を閉位置PSから開位置POに上昇させる(図1参照)。
【0071】
これによると、ポンプゲート1の設置場所に人がいない場合であっても、ポンプゲート1から離れた場所で遠隔操作により管理運転を行うことができる。
【0072】
上記各実施の形態では、図10に示すように、扉体2を閉位置PSまで下降して管理運転を実行している際、横軸ポンプ7を支川側水路103内の水37に浸漬しない気中状態で作動させているが、横軸ポンプ7内の羽根車が支川側水路103内の水面38よりも上方になる低水位であれば、横軸ポンプ7の底部が多少水37に接していても、気中状態とみなす。
【0073】
上記各実施の形態では、ポンプゲート1に、各管理項目について測定するポンプ測定機器(各種センサ等)が備えられているが、管理運転を行う度に、ポンプ測定機器をポンプゲート1の横軸ポンプ7、扉体2、操作盤44等に取り付けて、各種データを取得してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 ポンプゲート
2 扉体
3 ガイド部材
7 横軸ポンプ
37 水
43 制御装置
101 流水路
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
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図10
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