(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】太陽電池管理方法および太陽電池管理システム
(51)【国際特許分類】
H02S 50/00 20140101AFI20240822BHJP
H02S 40/10 20140101ALI20240822BHJP
H02S 40/20 20140101ALI20240822BHJP
E04D 1/30 20060101ALI20240822BHJP
E04D 13/18 20180101ALI20240822BHJP
【FI】
H02S50/00
H02S40/10
H02S40/20
E04D1/30 603H
E04D13/18
(21)【出願番号】P 2020165174
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2019183769
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】澤田 徹
(72)【発明者】
【氏名】棚村 浩匡
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-135957(JP,A)
【文献】特開2017-011914(JP,A)
【文献】特開2015-103589(JP,A)
【文献】特開2015-120871(JP,A)
【文献】特開2014-082272(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0349704(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
H02S 10/00-99/00
E04D 1/30
E04D 13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールによる発電のために前記太陽電池モジュールを設置した設置場所において、前記太陽電池モジュールの受光面を清掃する清掃工程と、
前記設置場所において、前記清掃工程による清掃後の前記受光面に対して、遮光物による被膜を形成することにより、前記太陽電池モジュールによる発電を停止させる遮光工程と、
を含
み、
前記遮光物は、遮光特性を有する成分を含む塗料であり、
前記遮光工程では、前記清掃工程による清掃後の前記受光面に対して、前記塗料を塗布することにより前記被膜の形成を実現する、
太陽電池管理方法。
【請求項2】
太陽電池モジュールによる発電のために前記太陽電池モジュールを設置した設置場所において、前記太陽電池モジュールの受光面を清掃する清掃工程と、
前記設置場所において、前記清掃工程による清掃後の前記受光面に対して、遮光物による被膜を形成することにより、前記太陽電池モジュールによる発電を停止させる遮光工程と、
を含
み、
前記遮光物は、遮光特性を有する材質の粘着剤付きシートであり、
前記遮光工程では、前記清掃工程による清掃後の前記受光面に対して、前記シートを張り付けることにより前記被膜の形成を実現する、
太陽電池管理方法。
【請求項3】
前記太陽電池モジュールは、前記設置場所に存在する建築物の建材として機能する建材一体型の太陽電池モジュールである、
請求項1
または2に記載の太陽電池管理方法。
【請求項4】
前記太陽電池モジュールは、太陽電池セルとして、結晶シリコン型の太陽電池セルを含む、
請求項1から
3までの何れか1項に記載の太陽電池管理方法。
【請求項5】
前記遮光物は、遮光特性に加えて、赤外線反射特性を含む遮光物である、
請求項1から
4までの何れか1項に記載の太陽電池管理方法。
【請求項6】
前記清掃工程と、前記遮光工程の双方が、同一のロボットにより実行される、
請求項1から
5までの何れか1項に記載の太陽電池管理方法。
【請求項7】
太陽電池モジュールに対する遮光処置の実行の可否を、前記太陽電池モジュールを利用する顧客に確認する確認手段と、
太陽電池モジュールによる発電のために前記太陽電池モジュールを設置した設置場所において、前記太陽電池モジュールの受光面を清掃する清掃手段と、
前記設置場所において、前記清掃手段による清掃後の前記受光面に対して、遮光物による皮膜を形成することにより、前記太陽電池モジュールによる発電を停止させる遮光手段と、
を備え、
前記確認手段において、前記顧客から前記遮光処置の実行の許可が確認できた場合に、前記清掃手段および前記遮光手段が動作
し、
前記遮光物は、遮光特性を有する成分を含む塗料であり、
前記遮光手段は、前記清掃手段による清掃後の前記受光面に対して、前記塗料を塗布することにより前記皮膜の形成を実現する、
太陽電池管理システム。
【請求項8】
太陽電池モジュールに対する遮光処置の実行の可否を、前記太陽電池モジュールを利用する顧客に確認する確認手段と、
太陽電池モジュールによる発電のために前記太陽電池モジュールを設置した設置場所において、前記太陽電池モジュールの受光面を清掃する清掃手段と、
前記設置場所において、前記清掃手段による清掃後の前記受光面に対して、遮光物による皮膜を形成することにより、前記太陽電池モジュールによる発電を停止させる遮光手段と、
を備え、
前記確認手段において、前記顧客から前記遮光処置の実行の許可が確認できた場合に、前記清掃手段および前記遮光手段が動作
し、
前記遮光物は、遮光特性を有する材質の粘着剤付きシートであり、
前記遮光手段では、前記清掃手段による清掃後の前記受光面に対して、前記シートを張り付けることにより前記皮膜の形成を実現する、
太陽電池管理システム。
【請求項9】
前記確認手段は、
前記太陽電池モジュールの保証期間が到来してから第1期間が経過すると、前記顧客に前記太陽電池モジュールに対する、点検処置の実行の可否を確認し、
前記太陽電池モジュールの保証期間が到来してから第2期間が経過すると、前記顧客に前記太陽電池モジュールに対する、遮光処置および撤去の何れかの選択および実行の可否を確認する、
請求項
7または8に記載の太陽電池管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池管理方法および太陽電池管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽電池モジュールを用いた太陽光発電は、電力会社のみならず、一般需要者にも広く普及している。一般需要者であるユーザは、自身の敷地内の建築物の屋根等に、太陽電池モジュールを設置する。これにより、ユーザは、太陽電池モジュールにより発電される電力を家庭内で利用したり、余剰分を電力会社に売電をしたりすることができる。
【0003】
このような、太陽電池モジュールの一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示の技術では、太陽電池モジュールを瓦形状の建材一体型とすることにより、建築物の美観を損ねることなく、太陽電池モジュールを設置することを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、太陽電池モジュールは、メーカ等によって、安全に使用可能な耐用年数や、これに応じた保証期間が設定されている。
しかしながら、ユーザによっては、保証期間が経過した後も、長期に渡って太陽電池モジュールの使用を継続することがある。このような使用を行うと、太陽電池モジュールの仕様や設置環境によっては、絶縁不良状態や電気的接触不良状態が発生し得る。このことが、異常発熱、発火等に繋がるおそれがある。そのため、保証期間が経過した後は、速やかに太陽電池モジュールを含むシステムの点検を行い、必要に応じて、太陽電池モジュールの廃棄や交換を行うことが望ましい。
【0006】
ただし、太陽電池モジュールの廃棄や交換を行うためには、太陽電池モジュールを設置場所から取り外す作業が必要となる。そして、このような太陽電池モジュールの取り外し作業には、所定のコストが発生し、ユーザの負担が増大する。特に、上述したような建材一体型の太陽電池モジュールの場合には、太陽電池モジュールを取り外すだけでなく、その後に、建材(例えば、通常の瓦)を新たに設置する必要もある。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものである。そして、その目的は、太陽電池モジュールの取り外し作業を行うことなく、太陽電池モジュールに対する安全措置を講じるための、太陽電池管理方法および太陽電池管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る太陽電池管理方法は、太陽電池モジュールによる発電のために前記太陽電池モジュールを設置した設置場所において、前記太陽電池モジュールの受光面を清掃する清掃工程と、前記設置場所において、前記清掃工程による清掃後の前記受光面に対して、遮光物による被膜を形成することにより、前記太陽電池モジュールによる発電を停止させる遮光工程と、を含む。
【0009】
本発明に係る太陽電池管理システムは、太陽電池モジュールに対する遮光処置の実行の可否を、前記太陽電池モジュールを利用する顧客に確認する確認手段と、太陽電池モジュールによる発電のために前記太陽電池モジュールを設置した設置場所において、前記太陽電池モジュールの受光面を清掃する清掃手段と、前記設置場所において、前記清掃手段による清掃後の前記受光面に対して、遮光物による皮膜を形成することにより、前記太陽電池モジュールによる発電を停止させる遮光手段と、を備え、前記確認手段において、前記顧客から前記遮光処置の実行の許可が確認できた場合に、前記清掃手段および前記遮光手段が動作する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、太陽電池モジュールの取り外し作業を行うことなく、太陽電池モジュールに対する安全措置を講じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る太陽電池管理システムの全体構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るユーザ端末の構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る管理サーバの構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るロボットの構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】本発明の一実施形態において、行われる遮光処置について説明するための第1の模式図である。
【
図6】本発明の一実施形態において、行われる遮光処置について説明するための第2の模式図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る太陽電池管理システムが実行する、発電装置管理処理の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。
[システム構成]
図1は、本実施形態に係る太陽電池管理システムSの全体構成を示すブロック図である。
図1に示すように、太陽電池管理システムSは、太陽光発電装置11、発電装置用パワーコンディショナ12、蓄電池21、蓄電池用パワーコンディショナ22、負荷機器30、ユーザ端末40、電力系統51、ユーザ側配線52、管理サーバ60、ロボット70、およびネットワークNを含む。なお、図中では「パワーコンディショナ」を「PCS」と表記する。
【0013】
ここで、太陽光発電装置11、発電装置用パワーコンディショナ12、蓄電池21、蓄電池用パワーコンディショナ22、負荷機器30、およびユーザ端末40は、例えば、需要家であるユーザの敷地内に設置して利用される。ここで、ユーザは、例えば、住宅を利用する一般ユーザであってもよいし、工場等を運営する事業者であってもよい。
【0014】
このユーザの敷地内には、電力系統51と接続された、ユーザ側配線52が敷設される。そして、太陽光発電装置11、発電装置用パワーコンディショナ12、蓄電池21、蓄電池用パワーコンディショナ22、負荷機器30、およびユーザ端末40は、このユーザ側配線52のAC端に並列接続され、太陽光発電装置11が発電した電力あるいはユーザが電力系統51を介して電力会社から購入した電力の供給を受けて駆動する。
【0015】
管理サーバ60は、太陽電池管理システムSの運営事業者により利用される。また、ロボット70も、管理サーバ60と同様に、太陽電池管理システムSの運営事業者により利用される。太陽電池管理システムSの運営事業者は、例えば、太陽光発電装置11を製造するメーカであってもよいし、太陽光発電装置11の設置や管理を行う委託事業者等であってもよい。
【0016】
これら太陽電池管理システムSに含まれる各機器(例えば、管理サーバ60とユーザ端末40とロボット70)は、ネットワークNを介して相互に通信可能に接続される。この各機器の間での通信は、任意の通信方式に準拠して行われてよく、その通信方式は特に限定されない。また、各機器の間での通信は、ネットワークNを介することなく機器同士で直接行われてもよい。例えば、ユーザ端末40と、ユーザ側配線52に接続される他の各機器との通信は、短距離無線通信や、図示を省略した信号線を用いた有線通信によって、直接行われてもよい。
【0017】
このような構成を有する太陽電池管理システムSは、「発電装置管理処理」を実行する。ここで、発電装置管理処理は、太陽光発電装置11を適切に管理するために行われる一連の処理である。
【0018】
具体的に、発電装置管理処理において、管理サーバ60は、太陽光発電装置11に含まれる太陽電池モジュールに対する清掃工程と遮光工程を含む遮光処置の実行の可否を、太陽電池モジュールを利用する顧客(すなわち、ユーザ)に確認する。また、管理サーバ60は、ユーザから遮光処置の実行の許可が確認できた場合に、ロボット70に対して、清掃工程と遮光工程を含む遮光処置を実行させる。
【0019】
この場合、ロボット70は、太陽電池モジュールによる発電のために太陽電池モジュールを設置した設置場所において、太陽電池モジュールの受光面を清掃する。更に、ロボット70は、設置場所において、清掃後の受光面に対して、遮光物による皮膜を形成する(例えば、遮光特性を有する成分を含む塗料を塗布して表面を覆う)ことにより、遮光状態として、太陽電池モジュールによる発電を停止させる。
【0020】
これにより、仮に絶縁不良状態や電気的接触不良状態が発生しても、遮光物により太陽電池モジュールは発電を停止しているため、異常発熱、発火等の発生のおそれもなくなる。また、清掃工程と遮光工程を1つのセットとして実行することにより、受光面に付着した異物や汚れ等に起因して、遮光物による被膜が破損(例えば、遮光特性を有する成分を含む塗料が脱落)して、発電が再開してしまうことを防止することができる。
【0021】
以上説明したように、発電装置管理処理によれば、太陽電池モジュールの取り外し作業を行うことなく、太陽電池モジュールに対する安全措置を講じることができる。すなわち、太陽電池モジュールを備えた太陽光発電装置11を、簡便かつ安全に管理することができる。
【0022】
次に、太陽電池管理システムSに含まれる各機器について詳細に説明をする。
太陽光発電装置11は、太陽光の光エネルギーを、光起電力効果により電力に変換することによって発電を行う装置である。太陽光発電装置11は、例えば、複数の太陽電池モジュールを直列につなげた太陽電池ストリングを1つの回線とし、それぞれの回線を接続箱に接続することにより、各太陽電池モジュールにより発電した直流電流を1つにまとめる。この1つにまとめられた直流電流は、接続箱内の逆流防止用のダイオードおよび開閉器等を介して、発電装置用パワーコンディショナ12に対して出力される。
【0023】
発電装置用パワーコンディショナ12は、太陽光発電装置11から出力される直流電流を、施設や住居等で一般に用いられる交流電流に変換するインバータを含む。発電装置用パワーコンディショナ12が変換した交流電流は、蓄電池用パワーコンディショナ22、負荷機器30およびユーザ端末40に対して供給される。ここで、発電装置用パワーコンディショナ12は、太陽電池管理システムSの運営事業者やユーザによる制御設定に基づいて、太陽光発電装置11の出力する発電電力を抑制する。
【0024】
蓄電池21は、電力を蓄電する二次電池である。蓄電池用パワーコンディショナ22が蓄電池21に蓄電をすることにより、例えば、停電の際に負荷機器30を使用したり、昼間に発電された余剰電力を夜間に使用したりすることが可能となる。また、単価の安い夜間電力を充電して昼間に使用することが可能となる。
【0025】
蓄電池用パワーコンディショナ22は、蓄電池21に蓄えられていた直流電流を、住居等で一般に用いられる交流電流に変換するインバータを含む。蓄電池用パワーコンディショナ22が変換した交流電流は負荷機器30およびユーザ端末40に対して供給される。ここで、蓄電池用パワーコンディショナ22は、太陽電池管理システムSの運営事業者やユーザによる制御設定に基づいて、太陽光発電装置11の出力する発電電力により、蓄電池21に対する充電を行う。
【0026】
なお、本実施形態では、発電装置用パワーコンディショナ12と蓄電池用パワーコンディショナ22とは、太陽光発電装置11と蓄電池21とに対応して、別体として設けられているが、これに限定されるものでない。例えば、太陽光発電装置11と蓄電池21とに対応する1台のハイブリッド型パワーコンディショナで、発電装置用パワーコンディショナ12と蓄電池用パワーコンディショナ22とを実現するようにしてもよい。
【0027】
負荷機器30は、太陽光発電装置11が発電した電力、および電力会社から購入(すなわち、買電)した電力によって稼働する複数の電気機器を含む。負荷機器30に含まれる電気機器は特に限定されず、例えば、工場で稼働する各種機械やエアコン、あるいは、冷蔵庫、テレビ、および電気給湯器(例えば、エコキュート)等の電気機器が負荷機器30に含まれる。
【0028】
ユーザ端末40は、ユーザ端末40は、太陽光発電装置11の運用に関する各種の実績情報を収集する。更に、ユーザ端末40は、収集した実績情報を、管理サーバ60に対して送信する。
また、ユーザ端末40は、上述した発電装置管理処理を実現するために、管理サーバ60との間で相互に通信を行い、ユーザに対する通知等を行う。
【0029】
管理サーバ60は、ユーザ端末40から受信した各実績情報や、太陽電池管理システムSの運営事業者の操作等に基づいて、上述した発電装置管理処理を実現するために、各種期限の管理や、ユーザに対する通知等を行う。
ロボット70は、管理サーバ60の制御等に基づいて、上述した発電装置管理処理を実現するために、清掃工程と遮光工程を含む遮光処置を行う。
なお、これらユーザ端末40、管理サーバ60およびロボット70の構成および更なる詳細については、
図2、
図3および
図4を参照して後述する。
【0030】
ネットワークNは、例えば、インターネット、LAN(Local Area Network)、および携帯電話網の何れかまたはこれらを組み合わせたネットワークにより実現される。
【0031】
以上、太陽電池管理システムSに含まれる各機器について説明をした。なお、図中では、各機器を1台ずつ図示しているがこれは例示に過ぎず、太陽電池管理システムSには、これら各機器が任意の台数含まれていてよい。例えば、複数のユーザそれぞれに対応して、複数の太陽光発電装置11等の機器が存在し、これら複数の機器を単一の管理サーバ60で管理するような構成としてもよい。あるいは、例えば、クラウドサーバのような態様で、複数のサーバ装置にて、単一の管理サーバ60を実現する構成としてもよい。
【0032】
[ユーザ端末の構成]
次に、ユーザ端末40の構成について、
図2のブロック図を参照して説明をする。
図2に示すように、ユーザ端末40は、CPU(Central Processing Unit)41と、ROM(Read Only Memory)42と、RAM(Random Access Memory)43と、通信部44と、記憶部45と、入力部46と、表示部47と、を備えている。これら各部は、信号線によりバス接続されており、相互に信号を送受する。
【0033】
CPU41は、ROM42に記録されているプログラム、または、記憶部45からRAM43にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM43には、CPU41が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0034】
通信部44は、CPU41が、太陽電池管理システムSに含まれる他の装置との間で通信を行うための通信制御を行う。
記憶部45は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の半導体メモリで構成され、各種データを記憶する。
【0035】
入力部46は、各種ボタンおよびタッチパネル、またはマウスおよびキーボード等の外部入力装置で構成され、ユーザの指示操作に応じて各種情報を入力する。
表示部47は、液晶ディスプレイ等で構成され、CPU41が出力する画像データに対応する画像を表示する。
【0036】
また、ユーザ端末40が発電装置管理処理を行う場合、
図2に示すように、CPU41において、端末側通知部411が機能する。
【0037】
端末側通知部411は、太陽光発電装置11の運用に関する各種の実績情報を収集する。端末側通知部411は、例えば、太陽光発電装置11等の設置や交換が行われた場合に、設置等を行う業者の操作等に応じて、太陽光発電装置11等の出荷日や使用開始日や型番等を実績情報として収集する。また、端末側通知部411は、太陽光発電装置11等を監視することにより、太陽光発電装置11等に不具合が発生した場合に、その不具合の内容を示すエラー信号等を実績情報として収集する。
【0038】
更に、端末側通知部411は、発電装置用パワーコンディショナ12を介して、太陽光発電装置11の発電電力量を実績情報として収集する。更に、端末側通知部411は、蓄電池21、負荷機器30、および端末側通知部411に供給される電力を監視することにより、電力消費量を実績情報として収集する。更に、端末側通知部411は、電力系統を監視することにより、購入電力量(すなわち、買電量)を実績情報として収集する。
【0039】
端末側通知部411は、このようにして収集した実績情報を、記憶部45に記憶する。そして、端末側通知部411は、記憶部45に記憶した実績情報を、太陽光発電装置11の識別情報と紐付けた上で、管理サーバ60に対して周期的に送信する。
【0040】
なお、端末側通知部411は、実績情報を、電力を計測する住居内の電力計、または電力会社の設置したスマートメータから取得してもよいし、HEMS(Home Energy Management System)に接続し、HEMSから収集してもよい。あるいは、端末側通知部411は、実績情報を、負荷機器30に含まれる電気機器から、ECHONET Lite(登録商標)等の規格に準拠した通信により収集してもよい。また、実績情報の管理サーバ60への送信は、このように端末側通知部411により行われてもよいがこれに限らない。例えば、ユーザ端末40以外の各機器(例えば、太陽光発電装置11)から、端末側通知部411を介することなく、直接管理サーバ60に対して実績情報が送信されてもよい。
【0041】
また、端末側通知部411は、管理サーバ60からのユーザに対する通知の内容を、表示部47にて表示する。ユーザは、この通知を参照することにより、管理サーバ60からの通知の内容を把握することができる。また、端末側通知部411は、この通知を参照したユーザからの入力部46を介した操作内容を、管理サーバ60に対して返信する。
例えば、管理サーバ60から、清掃工程と遮光工程を含む遮光処置の実行の可否が、ユーザに対して通知されたとする。この場合、端末側通知部411は、この遮光処置の実行の可否が通知された旨を、表示部47にて表示する。また、端末側通知部411は、この通知を参照したユーザからの回答(すなわち、遮光処置の実行を許可する旨の回答または許可しない旨の回答)を管理サーバ60に対して返信する。
【0042】
[管理サーバ60の構成]
次に、管理サーバ60の構成について、
図3のブロック図を参照して説明をする。
図3に示すように、管理サーバ60は、CPU61と、ROM62と、RAM63と、通信部64と、記憶部65と、入力部66と、表示部67と、を備えている。これら各部は、信号線によりバス接続されており、相互に信号を送受する。
【0043】
ここで、これら各部のハードウェアとしての機能は、上述のユーザ端末40が備える、符号のみが異なる同名の各部のハードウェアとしての機能と同等である。従って、重複する説明を省略する。
【0044】
また、管理サーバ60が発電装置管理処理を行う場合、
図3に示すように、CPU61において、管理部611と、サーバ側通知部612とが機能する。
また、記憶部65の一領域には、管理情報記憶部651が設定される。
【0045】
管理情報記憶部651は、ユーザ端末40から受信した各種の実績情報や、太陽電池管理システムSの運営事業者から取得した、ユーザが利用する太陽光発電装置11等の各機器に関する保証期間等の情報や、電力会社との契約条件等の情報を管理情報として記憶する。
【0046】
管理部611は、発電装置管理処理を実現するための管理をする。具体的に、管理部611は、管理情報記憶部651が記憶する管理情報の取得および更新を行う。管理情報の取得は、例えば、ユーザ端末40との通信や、入力部66を介した太陽電池管理システムSの運営事業者の操作等により実現される。また、管理部611は、このような管理情報の取得を周期的に行うことにより、管理情報記憶部651に記憶される管理情報を、最新の内容に更新する。
【0047】
また、管理部611は、発電装置管理処理を実現するための通知を行う。この場合、管理部611は、管理情報記憶部651に記憶される各種の情報に基づいて、ユーザに対して所定の通知を行う。この通知は、管理部611からの指示を受けたサーバ側通知部612により、ユーザ端末40に送信される。そして、ユーザ端末40の説明として上述したように、この通知は、ユーザ端末40にてユーザに対して表示される。また、ユーザからの通知に対する回答は、ユーザ端末40からサーバ側通知部612に対して送信される。管理部611は、この回答に応じて発電装置管理処理を継続する。
【0048】
このような、発電装置管理処理における通知や、その回答に応じて継続される処理の内容の一例について、以下具体的な数値を用いて説明する。
一例として、本実施形態では、太陽光発電装置11に含まれる太陽電池モジュールの保証期間をメーカの出荷から20年として想定する。この場合、保証期間を過ぎた時点で太陽電池モジュール(封止材、ケーブル、およびコネクタ等も含む。)に対する点検を行い、この点検において異常箇所が発見された場合には、異常箇所(例えば、異常が発生した太陽電池モジュール)を交換することが望ましい。そこで、管理部611およびサーバ側通知部612は、保証期間が近づいた時点(例えば、出荷から19年目)である第1の期限が到来すると、ユーザに対して第1の通知を行う。この第1の通知は、保証期間が終了する旨の案内と、太陽電池モジュールを含んだ太陽光発電装置11の点検の案内とを含む。
【0049】
そして、この第1の通知に応じて、ユーザからの点検依頼があった場合には、管理部611およびサーバ側通知部612は、点検を行う事業者に、点検の実行を指示する。例えば、表示部67による表示や、事業者が利用する端末(図示を省略する)との通信より、点検の実行を指示する。
【0050】
これに応じて、事業者による、太陽電池モジュール等の点検と、それに伴う異常箇所の交換が実行される。なお、この点検の実行は、保証期間が経過して間もない時点(例えば、出荷から21年目)までに行われるようにすることが望ましい。そのため、例えば、ユーザからの点検依頼がない場合には、第1の通知を繰り返し行うことにより、ユーザからの点検依頼を促すようにするとよい。
【0051】
そして、点検が実行された後は、ユーザは、太陽光発電装置11を継続して利用することができる。しかし、保証期間が経過した後に、長期間利用を継続することは望ましくない。
そこで、このように点検が実行された場合であっても、保証期間からある程度の長期間が経過した時点(例えば、出荷から29年目)である第2の期限が到来すると、第2のユーザに対して第2の通知を行う。この通知は、保証期間から長期間が経過した旨の案内と、仮に太陽光発電装置11の利用を継続していたとしても、遮光処置を行うべき旨の案内とを含む。
【0052】
そして、この第2の通知に応じて、ユーザからの遮光処置依頼があった場合には、管理部611およびサーバ側通知部612は、遮光処置を行う事業者に、ロボット70による遮光処置の実行を指示する。例えば、表示部67による表示や、事業者が利用する端末(図示を省略する)との通信より、点検の実行を指示する。なお、点検を行う事業者と、遮光処置を行う事業者とは、同一の事業者であってもよいし、異なる事業者であってもよい。
【0053】
これに応じて、事業者の管理の元、ロボット70による遮光処置が実行される。この遮光処置は、上述したように、清掃工程と遮光工程とを含むものである。なお、遮光処置の詳細については、
図5および
図6を参照して後述する。なお、この遮光処置の実行は、保証期間が経過してある程度以上の長期間が経過しない時点(例えば、保証期間が経過して10年後である出荷から30年目)までに行われるようにすることが望ましい。そのため、例えば、ユーザからの遮光処置依頼がない場合には、第2の通知を繰り返し行うことにより、ユーザからの遮光処置依頼を促すようにするとよい。あるいは、事前にユーザと契約を締結しておき、第2の通知後は、ユーザの回答を要することなく、遮光処置を行うようにしてもよい。
【0054】
以上説明したようにして、管理サーバ60の管理により、発電装置管理処理は実現される。これにより、太陽電池モジュールの取り外し作業を行うことなく、太陽電池モジュールに対する安全措置を講じることができる。
【0055】
なお、上述の説明に用いた期間はあくまで一例に過ぎず、特に限定されない。例えば、太陽電池モジュールの保証期間をメーカの出荷から25年と想定した場合には、第1の通知を出荷から24年目で行い、点検を25年目までに行い、第2の通知を34年目で行い、遮光処置を35年目で行うようにすることでもよい。
また、保証期間の起算日を、太陽電池モジュールのメーカからの出荷日ではなく、太陽電池モジュールの製造日や、太陽電池モジュールのユーザの敷地への設置日としてもよい。
更に、ユーザに知らせている保証期間に基づいて各通知を実行するのではなく、太陽電池モジュールのメーカが想定する耐用年数に基づいて各通知を実行するようにしてもよい。
【0056】
[ロボット70の構成]
次に、ロボット70の構成について、
図4のブロック図を参照して説明をする。
図4に示すように、ロボット70は、CPU71と、ROM72と、RAM73と、通信部74と、記憶部75と、移動部76と、清掃部77と、遮光部78と、を備えている。これら各部は、信号線によりバス接続されており、相互に信号を送受する。
【0057】
ここで、これら各部に含まれる、CPU71と、ROM72と、RAM73と、通信部74と、記憶部75と、について、ハードウェアとしての機能は、上述のユーザ端末40や管理サーバ60が備える、符号のみが異なる同名の各部のハードウェアとしての機能と同等である。従って、重複する説明を省略する。
【0058】
移動部76は、後述する駆動制御部711の制御に基づいて、ロボット70を移動させる。例えば、移動部76は、ロボット70を移動させるための駆動輪や、この駆動輪を回転させるモータ等の機構を含む。移動部76は、後述する駆動制御部711の制御に基づいて、これらの機構を動作させることにより、ロボット70を、太陽電池モジュールの受光面上で直線的に移動させたり、旋回させたりすることができる。
【0059】
清掃部77は、後述する駆動制御部711の制御に基づいて、太陽電池モジュールの受光面を清掃する。例えば、清掃部77は、太陽電池モジュールの受光面を清掃するためのブラシや、このブラシを回転させるモータ等の機構を含む。清掃部77は、後述する駆動制御部711の制御に基づいて、これらの機構を動作させることにより、移動部76によりロボット70が太陽電池モジュールの受光面を移動している際に、太陽電池モジュールの受光面の清掃を行うことができる。
【0060】
遮光部78は、後述する駆動制御部711の制御に基づいて、清掃部77が清掃後の太陽電池モジュールの受光面に対して、遮光物による皮膜を形成することにより、遮光状態として、太陽電池モジュールによる発電を停止させる。例えば、遮光部78は、遮光特性を有する成分を含む塗料を保管するタンク部や、タンク部に保管されている塗料を必要なときに必要な量だけ吐出することにより受光面に塗料を塗布する塗布部等の機構を含む。遮光部78は、後述する駆動制御部711の制御に基づいて、これらの機構を動作させることにより、移動部76によりロボット70が太陽電池モジュールの受光面を移動している際に、太陽電池モジュールの受光面に対して、遮光物による皮膜を形成する(ここでは、遮光特性を有する成分を含む塗料を塗布して表面を覆う)ことにより、遮光状態として、太陽電池モジュールによる発電を停止させる。
【0061】
また、ロボット70が発電装置管理処理を行う場合、
図4に示すように、CPU71において、駆動制御部711が機能する。
【0062】
駆動制御部711は、上述した、移動部76、清掃部77、および遮光部78を制御することにより、遮光処置を実現する。この制御は、例えば、予め設定された制御情報に基づいて自律して行われる。あるいは、遮光処置を行う事業者が利用する端末(図示を省略する)や、ユーザ端末40や、管理サーバ60からの遠隔指示操作に基づいて行われる。ロボット70には、このような自律または遠隔操作に基づいた遮光処置を行うために、ロボット70や太陽電池モジュールの状態や位置関係等を検出するための各種センサや、操作者がモニタリングを行うためのカメラ等が搭載されていてもよい。
【0063】
なお、このような移動部や清掃部を含んだ、自律または遠隔操作で太陽電池モジュール等を走行させることができるロボットは、例えば、特開2012-211668号公報や、再表2014-103290号公報に開示されているので、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0064】
また、遮光部78を実現するための機構は、例えば、インクジェットプリンタ等に搭載されている印刷用の機構を流用することができる。更に、遮光部78が用いる遮光特性を有する成分を含む塗料としては、任意の塗料を用いてよいが、一例として、カーボンブラックを成分として含む既存の黒色塗料を用いることができる。
【0065】
塗料の材料としては、シリコーンまたはアクリル等の有機物、またはポリシラザン由来のシリカ(SiO2)等の無機物が挙げられる。この中でも、長期信頼性を考慮すると、樹脂と比較して信頼性が高く、また下地ガラス(太陽電池モジュールの表面保護ガラス)との熱膨張係数の差が小さい無機物が好ましく、シリカがより好ましい。このような塗料材料に、上述したカーボンブラック等の黒色微粒子を混ぜることにより、遮光特性を有する塗料が得られる。塗料材料に対する黒色微粒子の割合は、長期信頼性を考慮して、剥離が生じない程度とすることが好ましい。
【0066】
なお、長期信頼性(塗料の密着性、塗料の剥離抑制)の観点で、下地ガラス(太陽電池モジュールの表面保護ガラス)の表面には、凹凸構造(Uneven structure、Depression- Protrusion structure)が形成されていてもよい。ガラス表面の凹凸構造の形成方法としては、
・サンドブラスト加工(例えば、ガラスの防眩加工と兼用)
・エンボス加工(フロートガラス製造時の型板エンボス加工)
・シリカ系微粒子の塗布・焼結(例えば、ガラスのAR膜形成と兼用)
等が挙げられる。
【0067】
[遮光処置]
駆動制御部711の制御に基づいて行われる遮光処置について、
図5および
図6を参照して、より詳細に説明をする。ここで、
図5および
図6は、駆動制御部711の制御に基づいて行われる遮光処置について説明するための模式図である。
【0068】
図5にユーザの敷地内に存在する家屋である家屋80を示す。この家屋80の屋根である屋根81には、太陽光発電装置11に含まれる太陽電池モジュールである太陽電池モジュール82が設置されている。なお、図中では、太陽電池モジュール82に対してハッチングを施して示す。
図5では、一例として、太陽電池モジュール82は、設置場所に存在する建築物の建材(ここでは、屋根81を構成する屋根瓦)として機能する建材一体型の太陽電池モジュールであることを想定する。例えば、このような状態において、ロボット70は、遮光処置を実行する。
【0069】
図6にロボット70の遮光処置時の状態を示す。ロボット70は、例えば、遮光処置を行う事業者により屋根81上の、ロボット70が図示されている位置に配置される。なお、
図6では、図の視認性を考慮して、太陽電池モジュール82に対するハッチングを省略する。
【0070】
その後、ロボット70は、例えば、図中に移動経路83として実線で示すような経路を移動部76により移動しながら、清掃部77が清掃を実行する。これにより、太陽電池モジュール82の受光面全体が清掃される。
【0071】
次に、ロボット70は、例えば、図中に移動経路84として破線とした経路を移動部76により移動する。そして、ロボット70は、図中に移動経路83として実線で示すような経路を移動部76により再度移動しながら、今度は遮光部78が遮光物による皮膜の形成を実行する。これにより、ロボット70は、太陽電池モジュール82の受光面全体を遮光状態として、太陽電池モジュールによる発電を停止させる。
【0072】
なお、
図6における移動経路83および移動経路84は、非常に模式化して図示されており、且つ、一例に過ぎない。ロボット70の移動経路は、太陽電池モジュール82の受光面の全領域に対して清掃工程および遮光工程を実行できる移動経路であればよく、
図6における移動経路83および移動経路84に限定されない。
【0073】
最後に、ロボット70は、例えば、図中に移動経路84として破線とした経路を移動部76により移動する。そして、遮光処置を行う事業者は、ロボット70を回収する。
【0074】
以上説明したようにして、ロボット70により、発電装置管理処理における遮光処置は実現される。これにより、ロボット70という1つの装置により、清掃工程と遮光工程とを含む遮光処置を実現することができる。これにより、仮に絶縁不良状態や電気的接触不良状態が発生した場合であっても、遮光物により太陽電池モジュールは発電を停止しているため、異常発熱や発火等の発生のおそれもなくなる。また、清掃工程と遮光工程を1つのセットとして実行することにより、受光面に付着した異物や汚れ等に起因して、遮光物による被膜が破損(例えば、遮光特性を有する成分を含む塗料が脱落)して、発電が再開してしまうことを防止することができる。
【0075】
[動作処理]
以上、ユーザ端末40、管理サーバ60およびロボット70の構成について詳細に説明をした。次に、
図7のフローチャートを参照して、発電装置管理処理の流れについて説明する。なお、端末側通知部411による、管理サーバ60に対しての実績情報の送信や、管理部611による管理情報記憶部651の更新は、以下の
図7のフローチャートに示す処理と並行して適宜実行される。また、複数のユーザが存在し、この複数のユーザそれぞれに対応して、複数の太陽光発電装置11を管理する場合には、複数の太陽光発電装置11それぞれについて、以下の
図7のフローチャートに示す処理が実行される。
【0076】
ステップS11において、管理部611は、第1の通知を実行する期限である第1の期限が到来したか否かを判定する。第1の期限が到来した場合は、ステップS11においてYesと判定され、処理はステップS12に進む。一方で、未だ第1の期限が到来していない場合は、ステップS11においてNoと判定され、処理はステップS11の判定を繰り返す。
【0077】
ステップS12において、管理部611およびサーバ側通知部612は、ユーザ端末40に対して第1の通知を実行する。この第1の通知に応じて、ユーザ端末40から、ユーザの点検依頼が返信される。なお、上述したように、仮にユーザの点検依頼が返信されない場合には、第1の通知を繰り返し行うようにするとよい。
【0078】
ステップS13において、管理部611およびサーバ側通知部612は、点検を行う事業者に対して、点検の実行を指示する。これにより、点検を行う事業者は、点検を実行する。なお、この場合に、管理部611は、点検を行う事業者が利用する端末(図示を省略する)や、ユーザ端末40からの通知に基づいて、点検結果や、太陽電池モジュールの交換が生じた場合にはその情報を取得し、管理情報記憶部651を更新するようにしてもよい。
【0079】
ステップS14において、管理部611は、第2の通知を実行する期限である第2の期限が到来したか否かを判定する。第2の期限が到来した場合は、ステップS14においてYesと判定され、処理はステップS15に進む。一方で、未だ第2の期限が到来していない場合は、ステップS14においてNoと判定され、処理はステップS14の判定を繰り返す。
【0080】
ステップS15において、管理部611およびサーバ側通知部612は、ユーザ端末40に対して第2の通知を実行する。この第2の通知に応じて、ユーザ端末40から、ユーザの遮光処置依頼が返信される。なお、上述したように、仮にユーザの遮光処置依頼が返信されない場合には、第2の通知を繰り返し行うようにしたり、ユーザとの契約に基づいて無条件に遮光処置を実行したりしてもよい。
【0081】
ステップS16において、ロボット70は、
図5および
図6を参照して上述したようにして、清掃工程を実行する。
【0082】
ステップS17において、ロボット70は、
図5および
図6を参照して上述したようにして、遮光工程を実行する。これにより、発電装置管理処理は終了する。
【0083】
以上説明した発電装置管理処理により、太陽電池モジュールの取り外し作業を行うことなく、太陽電池モジュールに対する安全措置を講じることができる。すなわち、太陽電池モジュールを備えた太陽光発電装置11を、簡便かつ安全に管理することができる。
【0084】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、この実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略および置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態およびその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲および要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、本発明の実施形態を以下に示す変形例のように変形してもよい。また、この場合に、以下に示す変形例を組み合わせるように変形してもよい。
【0085】
<第1の変形例>
上述した実施形態において
図7に示すようにして発電装置管理処理を実行していた。これに限らず、ユーザからの依頼等に基づいて、発電装置管理処理の内容を変形するようにしてもよい。
例えば、ステップS12の第1の通知を行った時点で、ユーザから点検依頼ではなく遮光処置依頼があった場合には、ステップS13からステップS15までを行うことなく、ステップS16およびステップS17による遮光処置を実行するようにしてもよい。
【0086】
あるいは、ステップS15の第2の通知を行った時点で、ユーザから遮光処置依頼ではなく撤去処理依頼があった場合には、ステップS16およびステップS17による遮光処置を実行するのではなく、太陽光発電装置11の撤去を行うようにしてもよい。
本変形例のようにすることにより、ユーザの要望に応じて、より柔軟な対応を行うことが可能となる。
【0087】
<第2の変形例>
上述した実施形態において、太陽電池モジュールの受光面に対して、遮光特性を有する成分を含む塗料を塗布して表面を覆うことにより、遮光物による皮膜を形成していた。これに限らず、他の方法で、遮光物による皮膜を形成するようにしてもよい。
例えば、ロボット70の遮光部78が、遮光特性を有する材質にて作成された、粘着性を有するテープまたはシート(フィルム)を太陽電池モジュールの受光面に対して貼り付けることにより、遮光物による皮膜を形成し、遮光状態として、太陽電池モジュールによる発電を停止させるようにしてもよい。
【0088】
例えば太陽電池モジュールが設置された場所で遮光処理を行う場合、作業の容易性または品質(密着力、膜厚)の安定性の観点で、塗料の塗布よりも、テープまたはシートの貼付の方が好ましいことがある。
【0089】
遮光特性を有する材質のテープまたはシートとしては、黒色のフッ素系フィルム、黒色のポリエチレンまたはポリエチレンテレフタレート系フィルム表面にフッ素コートされたフィルム、または黒色の極薄ガラス(フレキシブルガラス)等が挙げられる。また、粘着性を有する接着剤としては、シリコーン系またはアクリル系の材料が挙げられる。これにより、離型シートで保護された接着剤付きのテープまたはシートであって、ロール状のテープまたはシートが得られる。なお、このような層構造によれば、テープまたはシートによって赤外線が遮断され、接着剤の劣化が抑制される。
【0090】
また、上述したように、長期信頼性(接着剤付きのテープまたはシートの密着性)の観点で、下地ガラス(太陽電池モジュールの表面保護ガラス)の表面には、凹凸構造が形成されていてもよい。
【0091】
<第3の変形例>
上述した実施形態において、ロボット70の遮光部78は、遮光特性を有する成分を含む塗料を塗布していた。この塗料として、遮光特性を有する成分に加えて、赤外線反射特性を含む成分が更に含まれていてもよい。このような塗料を用いることにより、単に太陽電池モジュールが遮光されるのみならず、太陽電池モジュールが、断熱材として機能する。これにより、太陽電池モジュールが設置された場所(例えば、屋根)からの家屋に対する太陽光の熱の伝達を抑制することができる。そのため、家屋の室温を、太陽光の有無に関わらず安定して保持することが可能となる。
【0092】
<第4の変形例>
上述した実施形態において、太陽電池モジュールが建材一体型の場合を想定した。これは、上述した実施形態において好適な形状の一例に過ぎず、他の形状の太陽電池モジュールを対象として、上述した発電装置管理処理を実行してもよい。
【0093】
また、太陽電池モジュール自体はどのような製法で作成されたものであってもよいが、特に長寿命の太陽電池セルを用いた太陽電池モジュールを対象として、上述した発電装置管理処理を実行すると好適である。その理由について説明する。
【0094】
背景技術として述べたように、太陽電池モジュールを、保証期間が経過した後も長期間利用すると、太陽電池モジュールの仕様や設置環境によっては、絶縁不良状態や電気的接触不良状態が発生し得る。特に結晶シリコンセルを用いた太陽電池モジュールにおいては、薄膜シリコンセルや化合物薄膜セルを用いた太陽電池モジュールに比べて、セル自体が相当の耐候性を有する。そのため、セルの寿命が封止材やケーブル、コネクタといった部材の寿命よりも長くなることが想定される。
【0095】
従って、結晶シリコンセルを用いた太陽電池モジュールのよう長寿命のセルを用いた太陽電池モジュールをその保証期間後も製品が壊れるまで使用を続けた場合に、絶縁不良状態や電気的接触不良状態が発生し得る。そのため、上述した実施形態における発電装置管理処理は、このような、長寿命のセルを用いた太陽電池モジュールを対象として、実行すると好適である。
【0096】
これら変形例として例示したように、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。また、上述の実施形態では、サーバ等の装置により実施形態を実現したが、特にこれに限定されず、情報処理機能を有する電子機器一般で実現することができる。
【0097】
また、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
換言すると、
図2、
図3および
図4に図示した機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。すなわち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が太陽電池管理システムSに備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に
図2、
図3および
図4の例に限定されない。
【0098】
例えば、本実施形態に含まれる機能的構成を、演算処理を実行するプロセッサによって実現することができ、本実施形態に用いることが可能なプロセッサには、シングルプロセッサ、マルチプロセッサおよびマルチコアプロセッサ等の各種処理装置単体によって構成されるものの他、これら各種処理装置と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の処理回路とが組み合わせられたものを含む。
【0099】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークまたは記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0100】
このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布されることによりユーザに提供されてもよく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供されてもよい。装置本体とは別に配布される記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、光ディスク、または光磁気ディスク等により構成される。光ディスクは、例えば、CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc),Blu-ray(登録商標) Disc(ブルーレイディスク)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini Disc)等により構成される。また、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体は、例えば、プログラムが記録されている
図2のROM42、
図3のROM62、および
図47のROM72、または
図2の記憶部45、
図3の記憶部65、および
図4の記憶部75に含まれるハードディスクあるいはSSD(Solid State Drive)等で構成される。
【0101】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置および複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【符号の説明】
【0102】
11 太陽光発電装置
12 発電装置用パワーコンディショナ
21 蓄電池
22 蓄電池用パワーコンディショナ
30 負荷機器
40 ユーザ端末
41、61、71 CPU
42、62、82 ROM
43、63、73 RAM
44、64、74 通信部
45、65、75 記憶部
46、66 入力部
47、67 表示部
51 電力系統
52 需要家側配線
60 管理サーバ
70 ロボット
76 移動部
77 清掃部
78 遮光部
80 家屋
81 屋根
82 太陽電池モジュール
83、84 移動経路
411 端末側通知部
611 管理部
612 サーバ側通知部
651 管理情報記憶部
711 駆動制御部
S 太陽電池管理システム
N ネットワーク