(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/861 20060101AFI20240822BHJP
H01L 29/868 20060101ALI20240822BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240822BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20240822BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20240822BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H01L29/91 D
H01L29/06 301F
H01L29/06 301G
H01L29/06 301S
H01L29/06 301V
H01L29/06 301R
H01L29/78 655F
H01L29/78 652P
H01L29/78 652N
H01L29/78 658J
(21)【出願番号】P 2020184270
(22)【出願日】2020-11-04
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 航大
(72)【発明者】
【氏名】中西 翔
【審査官】戸川 匠
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-352064(JP,A)
【文献】特開2012-182302(JP,A)
【文献】国際公開第2015/104900(WO,A1)
【文献】特開平02-184074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/06
H01L 29/15
H01L 29/739
H01L 29/78
H01L 29/861
H01L 29/868
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置であって、
表面を有し、前記表面に第1不純物領域が形成されている半導体基板と、
前記第1不純物領域がある前記表面上に形成されている第1電極と、
前記第1電極を取り囲むように前記表面上に形成されている絶縁膜と、
前記第1電極との間に間隔を空けて前記第1電極を環状に取り囲むように前記絶縁膜上に形成されている第2電極と、
半絶縁膜とを備え、
前記第1電極は、外周縁部を有し、
前記半絶縁膜は、前記外周縁部上から前記第2電極上まで連続して形成され、
前記外周縁部は、第1コーナ部を含み、
前記第2電極は、前記第1コーナ部に対向している第2コーナ部を有し、
前記第1コーナ部と前記第2コーナ部との間にある前記絶縁膜上の前記半絶縁膜は、除去されて
おり、
前記半絶縁膜は、前記第1コーナ部上から前記第2コーナ部上まで連続して除去されている、半導体装置。
【請求項2】
前記半導体基板は、前記第1不純物領域に接して前記第1不純物領域を環状に取り囲むように前記表面に形成されている第2不純物領域を有し、
前記第2不純物領域の導電型は、前記第1不純物領域の導電型と同一であり、
前記第2不純物領域中における不純物濃度は、前記第1不純物領域中における不純物濃度よりも低い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体基板は、前記第2不純物領域との間に間隔を空けて前記第2不純物領域を環状に取り囲むように前記表面に形成されている第3不純物領域を有し、
前記第3不純物領域は、接地されており、
前記第2電極は、前記第3不純物領域に電気的に接続されている、請求項
2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半絶縁膜は、半絶縁性シリコン窒化膜である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体装置は、ダイオードであり、
前記第1不純物領域は、前記ダイオードのアノード領域である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体装置は、IGBTであり、
前記第1不純物領域は、前記IGBTのエミッタ領域である、請求項1に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平8-130317号公報(特許文献1)には、ダイオードが記載されている。特許文献1に記載のダイオードは、半導体基板と、絶縁膜と、アノード電極と、等電位リング電極と、半絶縁膜とを有している。
【0003】
半導体基板は、第1n型領域と、第2n型領域と、p型領域とを有している。第1n型領域は、半導体基板の裏面にある。第2n型領域は、半導体基板の表面にあり、第1n型領域と接している。p型領域は、第2n型領域に取り囲まれるように半導体基板の表面にある。第1n型領域及び第2n型領域はカソード領域であり、p型領域はアノード領域である。絶縁膜は、平面視においてp型領域を取り囲むように、半導体基板の表面上に形成されている。
【0004】
アノード電極は、p型領域がある半導体基板の表面上に形成されている。等電位リング電極は、絶縁膜上に形成されている。等電位リング電極は、アノード電極との間に間隔を空けてアノード電極を環状に取り囲んでいる。半絶縁膜は、アノード電極の外周縁部上から等電位リング上まで連続して形成されている。
【0005】
特許文献1に記載のダイオードが逆バイアスされている状態において、アノード電極と等電位リングとの間の電位差に起因して、半絶縁膜に微小な電流が流れる。これに伴う電位勾配により、p型領域の外周縁周辺において空乏層が延び、特許文献1に記載のダイオードの耐圧が改善される。すなわち、半絶縁膜は、抵抗性のフィールドプレートとして作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らが見出した知見によると、特許文献1に記載のダイオードでは、耐圧特性が変動するおそれがある。また、本発明者らが見出した知見によると、特許文献1に記載のダイオードでは、半絶縁膜にクラックが生じるおそれがある。
【0008】
本発明は、耐圧特性の変動を抑制しつつ、半絶縁膜にクラックが生じることを抑制可能な半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態に係る半導体装置は、表面を有し、表面に第1不純物領域が形成されている半導体基板と、第1不純物領域がある表面上に形成されている第1電極と、第1電極を取り囲むように表面上に形成されている絶縁膜と、第1電極との間に間隔を空けて第1電極を環状に取り囲むように絶縁膜上に形成されている第2電極と、半絶縁膜とを備える。第1電極は、外周縁部を有する。半絶縁膜は、外周縁部上から第2電極上まで連続して形成されている。外周縁部は、第1コーナ部を含む。第2電極は、第1コーナ部に対向している第2コーナ部を有している。第1コーナ部と第2コーナ部との間にある絶縁膜上の半絶縁膜は、除去されている。
【発明の効果】
【0010】
一実施形態に係る半導体装置によると、耐圧特性の変動を抑制しつつ、半絶縁膜にクラックが生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】
図1のIV-IVにおける拡大断面図である。
【
図5】半導体装置DEV1の製造方法を示す工程図である。
【
図6】準備工程S1における半導体装置DEV1の断面図である。
【
図7】エピタキシャル成長工程S2における半導体装置DEV1の断面図である。
【
図8】絶縁膜形成工程S3における半導体装置DEV1の断面図である。
【
図9】イオン注入工程S4における半導体装置DEV1の断面図である。
【
図10】第1電極形成工程S5における半導体装置DEV1の断面図である。
【
図11】半絶縁膜形成工程S6における半導体装置DEV1の断面図である。
【
図12】第2電極形成工程S7における半導体装置DEV1の断面図である。
【
図13】比較例に係る半導体装置における耐圧特性を示す模式的なグラフである。
【
図17】
図16中のXVII-XVIIにおける拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面において、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さない。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る半導体装置(以下「半導体装置DEV1」とする)を説明する。
【0014】
<半導体装置DEV1の構成>
図1は、半導体装置DEV1の平面図である。
図1中では、パッシベーション膜PVの図示が省略されている。
図2は、
図1のII-IIにおける断面図である。
図3は、
図2の領域IIIにおける拡大図である。
図4は、
図1のIV-IVにおける拡大断面図である。
図1、
図2、
図3及び
図4に示されるように、半導体装置DEV1は、ダイオードである。このダイオードは、好ましくは、ファストリカバリダイオードである。
【0015】
半導体装置DEV1は、半導体基板SUBと、第1電極EL1と、絶縁膜IFと、第2電極EL2と、半絶縁膜SIFと、第3電極EL3と、パッシベーション膜PVを有している。
【0016】
半導体基板SUBは、第1面FS(表面)と、第2面SS(裏面)とを有している。第1面FS及び第2面SSは、厚さ方向における半導体基板SUBの端面である。第2面SSは、第1面FSの反対面である。半導体基板SUBは、例えば、単結晶シリコンにより形成されている。
【0017】
半導体基板SUBは、不純物領域R1と、不純物領域R2と、不純物領域R3と、不純物領域R4と、不純物領域R5とを有している。
【0018】
不純物領域R1は、第2面SSに形成されている。不純物領域R1の導電型は、第1導電型である。第1導電型は、例えば、n型である。不純物領域R2は、第1面FSに形成されている。不純物領域R2の第2面SS側は、不純物領域R1の第1面FS側に接している。不純物領域R2の導電型は、第1導電型である。不純物領域R2中における不純物濃度は、不純物領域R1中における不純物濃度よりも低い。不純物領域R1及び不純物領域R2は、カソード領域である。
【0019】
不純物領域R3は、第1面FSに形成されている。不純物領域R3の導電型は、第2導電型である。第2導電型は、第1導電型の反対の導電型である。第2導電型は、例えば、p型である。不純物領域R3は、不純物領域R2との間でpn接合を形成している。不純物領域R3は、アノード領域である。
【0020】
不純物領域R4は、第1面FSに形成されている。不純物領域R4は、平面視において不純物領域R3を環状に取り囲んでいる。不純物領域R4は、平面視において、不純物領域R3に接している。不純物領域R4の導電型は、第2導電型である。不純物領域R4中における不純物濃度は、不純物領域R3における不純物濃度よりも低い。不純物領域R4は、RESURF(REduced SURface Field)領域である。
【0021】
不純物領域R5は、第1面FSに形成されている、不純物領域R5は、平面視において不純物領域R4を環状に取り囲んでいる。不純物領域R5は、平面視において、不純物領域R4から離間している(不純物領域R4と不純物領域R5との間には、間隔が空いている)。不純物領域R5は、チャネルストッパ領域である。不純物領域R5は、接地されている。
【0022】
第1電極EL1は、第1面FS上に形成されている。より具体的には、第1電極EL1は、不純物領域R3がある第1面FS上に形成されている。第1電極EL1は、不純物領域R3に電気的に接続されている。第1電極EL1は、平面視において、角が丸まっている矩形形状を有している。第1電極EL1は、例えば、アルミニウムにより形成されている。第1電極EL1は、アノード電極である。
【0023】
第1電極EL1は、外周縁部PPを有している。外周縁部PPは、平面視において第1電極EL1の外周縁に位置している第1電極EL1の部分である。外周縁部PPは、絶縁膜IF上に形成されていてもよい。この場合、外周縁部PPは、導電性のフィールドプレートとして機能する。
【0024】
外周縁部PPは、コーナ部PPaと、直線部PPbとを有している。平面視において、コーナ部PPaは、第1電極EL1のコーナに位置している。平面視において、コーナ部PPaは、第2電極EL2側に向かって凸の曲線形状を有している。直線部PPbは、コーナ部PPaの端に連なっている。直線部PPbは、平面視において、直線状に延在している。
【0025】
絶縁膜IFは、第1面FS上に形成されている。絶縁膜IFは、平面視において、第1電極を取り囲んでいる。絶縁膜IFには、開口部OP1と、開口部OP2とが形成されている。開口部OP1及び開口部OP2は、絶縁膜IFを厚さ方向に貫通している。開口部OP1を介して、第1電極EL1は、不純物領域R3に電気的に接続されている。開口部OP2を介して、第2電極EL2は、不純物領域R5に電気的に接続されている。絶縁膜IFは、例えば、シリコン酸化物により形成されている。
【0026】
第2電極EL2は、絶縁膜IF上に形成されている。第2電極EL2は、平面視において、第1電極EL1を取り囲んでいる。第2電極EL2は、平面視において、環状の形状を有している。第2電極EL2は、平面視において、外周縁部PPに沿った形状を有している。第2電極EL2は、不純物領域R5がある第1面FSの上にある絶縁膜IF上に形成されている。
【0027】
平面視において、第2電極EL2は、第1電極EL1から離間している(第1電極EL1と第2電極EL2との間には、間隔が空いている)。このことを別の観点から言えば、第1電極EL1と第2電極EL2との間からは、絶縁膜IFが露出している。第2電極EL2は、例えば、アルミニウムにより形成されている。
【0028】
第2電極EL2は、コーナ部EL2aと、直線部EL2bとを有している。コーナ部EL2aは、コーナ部PPaと間隔を空けて対向している。直線部EL2bは、コーナ部EL2aに連なっている。直線部EL2bは、平面視において、直線状に延在している。直線部EL2bは、平面視において、直線部PPbと平行に延在している。
【0029】
半絶縁膜SIFは、半絶縁性材料により形成されている。半絶縁膜SIFの比抵抗は、例えば、105Ω・cm以上1013Ω・cm以下である。半絶縁膜SIFは、例えば、半絶縁性シリコン窒化物(semi-insulated Silicon Nitride)膜である。半絶縁性シリコン窒化物膜の比抵抗は、膜中のシリコン量を調整することにより調整できる。
【0030】
半絶縁膜SIFは、これに限られない。半絶縁膜SIFは、ポリシリコン膜であってもよい。ポリシリコン膜の比抵抗は、膜中における不純物のドープ量を調整することにより調整される。
【0031】
半絶縁膜SIFは、外周縁部PP上から第2電極EL2上まで、連続して形成されている。すなわち、半絶縁膜SIFは、外周縁部PP上、第2電極EL2上及び第1電極EL1と第2電極EL2との間にある絶縁膜IF上に形成されている。これにより、第1電極EL1と第2電極EL2とが、電気的に接続されている。
【0032】
半導体装置DEV1が逆バイアスされている状態において、第1電極EL1と第2電極EL2との間の電位差に起因して、半絶縁膜SIFには、微小な電流が流れる。この電流が半絶縁膜SIFを流れることによる電位勾配により、平面視における不純物領域R3の外周縁近傍で空乏層が延びやすくなり、半導体装置DEV1の耐圧が改善される。すなわち、半絶縁膜SIFは、抵抗性のフィールドプレートとして機能している。
【0033】
但し、コーナ部PPaとコーナ部EL2aとの間にある絶縁膜IF上の半絶縁膜SIFは、少なくとも部分的に除去されている。これにより、コーナ部PPa上にある半絶縁膜SIFとコーナ部EL2a上にある半絶縁膜SIFとが、分離されている。
【0034】
第3電極EL3は、第2面SS上に形成されている。第3電極EL3は、不純物領域R1と電気的に接続されている。すなわち、第3電極EL3は、カソード電極である。第3電極EL3は、例えば、アルミニウムにより形成されている。
【0035】
パッシベーション膜PVは、半絶縁膜SIFを覆うように形成されている。パッシベーション膜PVには、開口部OP3が形成されている。開口部OP3は、厚さ方向にパッシベーション膜PVを貫通している。第1電極EL1は、開口部OP3から露出している。パッシベーション膜PVは、例えば、ポリイミドにより形成されている。
【0036】
<半導体装置DEV1の製造方法>
図5は、半導体装置DEV1の製造方法を示す工程図である。
図5に示されるように、半導体装置DEV1の製造方法は、準備工程S1と、エピタキシャル成長工程S2と、絶縁膜形成工程S3と、イオン注入工程S4と、第1電極形成工程S5と、半絶縁膜形成工程S6と、第2電極形成工程S7と、パッシベーション膜形成工程S8と、個片化工程S9とを有している。
【0037】
図6は、準備工程S1における半導体装置DEV1の断面図である。
図6に示されるように、準備工程S1では、半導体基板SUBが準備される。準備工程S1で準備される半導体基板SUBは、不純物領域R1のみを有している。
【0038】
図7は、エピタキシャル成長工程S2における半導体装置DEV1の断面図である。
図7に示されるように、エピタキシャル成長工程S2では、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、不純物領域R1上に不純物領域R2がエピタキシャル成長される。
【0039】
図8は、絶縁膜形成工程S3における半導体装置DEV1の断面図である。
図8に示されるように、絶縁膜形成工程S3では、絶縁膜IFが形成される。絶縁膜IFの形成においては、第1に、絶縁膜IFを構成する材料が、熱酸化法、CVD法等を用いて成膜される。第2に、この膜が、フォトリソグラフィ法によりパターンニングされたマスクを用いてエッチングされる。これにより、絶縁膜IFが形成される。
【0040】
図9は、イオン注入工程S4における半導体装置DEV1の断面図である。
図8に示されるように、イオン注入工程S4では、イオン注入が行われることにより、不純物領域R3、不純物領域R4及び不純物領域R5が形成される。
【0041】
図10は、第1電極形成工程S5における半導体装置DEV1の断面図である。
図10に示されるように、第1電極形成工程S5では、第1電極EL1及び第2電極EL2が形成される。第1電極EL1及び第2電極EL2の形成においては、第1に、第1電極EL1及び第2電極EL2を構成している材料が、例えばスパッタリング法を用いて成膜される。第2に、この膜が、フォトリソグラフィ法によりパターンニングされたマスクを用いてエッチングされる。これにより、第1電極EL1及び第2電極EL2が形成される。
【0042】
図11は、半絶縁膜形成工程S6における半導体装置DEV1の断面図である。
図11に示されるように、半絶縁膜形成工程S6では、半絶縁膜SIFが形成される。半絶縁膜SIFの形成においては、第1に、半絶縁膜SIFを構成している材料が、CVD法等により成膜される。第2に、この膜が、フォトリソグラフィ法によりパターンニングされたマスクを用いてエッチングされる。これにより、半絶縁膜SIFが形成される。
【0043】
図12は、第2電極形成工程S7における半導体装置DEV1の断面図である。
図12に示されるように、第2電極形成工程S7では、第3電極EL3が形成される。第3電極EL3は、例えばスパッタリング法を用いて第3電極EL3を構成している材料を成膜することにより形成される。
【0044】
パッシベーション膜形成工程S8では、パッシベーション膜PVが形成される。パッシベーション膜PVの形成においては、第1に、パッシベーション膜PVを構成している材料が成膜される。第2に、この膜が、フォトリソグラフィ法を用いてパターンニングされる。これにより、パッシベーション膜PVが形成される。
【0045】
個片化工程S9では、半導体装置DEV1の個片化が行われる。この個片化は、例えばダイシングブレードを用いたダイシングにより行われる。以上により、
図1~
図4に示される構造の半導体装置DEV1が製造される。
【0046】
上記の例では、準備工程S1において、不純物領域R1のみを有する半導体基板SUBを準備した。しかしながら、準備工程S1においては、不純物領域R2のみを有する半導体基板SUBが準備されてもよい。この場合、エピタキシャル成長工程S2は行われず、第2面SS側からのイオン注入により不純物領域R1が形成される。このイオン注入による不純物領域R1の形成は、第2電極形成工程S7の前に行われる。
【0047】
<半導体装置DEV1の効果>
比較例に係る半導体装置は、コーナ部PPaとコーナ部EL2aとの間にある絶縁膜IF上の半絶縁膜SIFが除去されていない点を除き、半導体装置DEV1と同様の構成を有している。
【0048】
図13は、比較例に係る半導体装置における耐圧特性を示す模式的なグラフである。
図13中において、横軸は逆方向電圧であり、縦軸は逆方向電流である。
図13に示されるように、比較例に係る半導体装置における耐圧特性は、測定を重ねる毎に変動する。不純物領域R2と不純物領域R3との間のpn接合は、不純物領域R2の平面視におけるコーナ部近傍でアバランシェ崩壊しやすい。
【0049】
このアバランシェ崩壊の際、半導体基板SUB中に生成された過剰なキャリア(電子)の一部が、コーナ部PPaとコーナ部EL2aとの間にある絶縁膜IF上の半絶縁膜SIFに蓄積される。その結果、半絶縁膜SIFの下方にある半導体基板SUB中において電界分布が変化する。このことが、比較例に係る半導体装置の耐圧特性が測定を重ねる毎に変動する原因であると考えられる。
【0050】
他方で、半導体装置DEV1においては、コーナ部PPaとコーナ部EL2aとの間にある絶縁膜IF上の半絶縁膜SIFが、少なくとも部分的に除去されている。そのため、半導体装置DEV1においては、アバランシェ崩壊の際に形成された過剰なキャリアがコーナ部PPaとコーナ部EL2aとの間にある絶縁膜IF上の半絶縁膜SIFに蓄積されがたい。したがって、半導体装置DEV1によると、耐圧特性の変動を抑制できる。
【0051】
コーナ部PPaとコーナ部EL2aとの間にある絶縁膜IF上の半絶縁膜SIFは、半導体装置DEV1に温度サイクルが加わった場合等に、応力集中箇所となりやすい。そのため、比較例に係る半導体装置においては、コーナ部PPaとコーナ部EL2aとの間にある絶縁膜IF上の半絶縁膜SIFにクラックが発生することがある。
【0052】
他方で、半導体装置DEV1においては、コーナ部PPaとコーナ部EL2aとの間にある絶縁膜IF上の半絶縁膜SIFが少なくとも部分的に除去されているため、コーナ部PPaとコーナ部EL2aとの間にある絶縁膜IF上の半絶縁膜SIFが応力集中箇所となり得ない。このように、半導体装置DEV1によると、半絶縁膜SIFにクラックが発生することを抑制できる。
【0053】
半導体装置DEV1においては、コーナ部PPaとコーナ部EL2aとの間にある絶縁膜IFの下方において不純物領域R4が分断されていない。加えて、半導体装置DEV1においては、直線部PPbと直線部EL2bとの間にある絶縁膜IF上の半絶縁膜SIFが、コーナ部PPaとコーナ部EL2aとの間にある絶縁膜IFの下方にある半導体基板SUBに対しても、ある程度電界緩和効果を及ぼす。そのため、半導体装置DEV1においては、コーナ部PPaとコーナ部EL2aとの間にある絶縁膜IF上の半絶縁膜SIFが少なくとも部分的に除去されていても、耐圧が維持されている。
【0054】
半導体装置DEV1においては、コーナ部PPa上及びコーナ部EL2a上の半絶縁膜SIFが残存している。そのため、半導体装置DEV1においては、これらの半絶縁膜SIFにより、パッシベーション膜PVを通過してきた水分等でコーナ部PPa及びコーナ部EL2aが腐食されることを抑制できる。
【0055】
半導体装置DEV1においては、半絶縁膜SIFの除去が、コーナ部PPaとコーナ部EL2aとの間にある絶縁膜IF上で行われる。コーナ部PPaとコーナ部EL2aとの間にある絶縁膜IFは平坦であるため、この除去を行う際に用いられるマスクをフォトリソグラフィ法で精度良く形成しやすい。
【0056】
上記においては、半導体装置DEV1がダイオードである場合について説明したが、半導体装置DEV1はこれに限られない。半導体装置DEV1は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であってもよい。なお、この場合、不純物領域R3は、IGBTのエミッタ領域となる。
【0057】
(第2実施形態)
以下に、第2実施形態に係る半導体装置(以下「半導体装置DEV2」とする)を説明する。ここでは、半導体装置DEV1と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0058】
<半導体装置DEV2の構成>
半導体装置DEV2は、半導体基板SUBと、第1電極EL1と、絶縁膜IFと、第2電極EL2と、半絶縁膜SIFと、第3電極EL3と、パッシベーション膜PVを有している。この点に関して、半導体装置DEV2の構成は、半導体装置DEV1の構成と共通している。
【0059】
図14は、半導体装置DEV2の平面図である。なお、
図14中では、パッシベーション膜PVの図示が省略されている。
図15は、
図14中のXV-XVにおける拡大断面図である。
図14及び
図15に示されるように、半導体装置DEV2においては、コーナ部PPa上及びコーナ部EL2a上においても、半絶縁膜SIFが除去されている。この点に関して、半導体装置DEV2の構成は、半導体装置DEV1の構成と異なっている。
【0060】
<半導体装置DEV2の製造方法>
半導体装置DEV2の製造方法は、半絶縁膜形成工程S6を除き、半導体装置DEV1の製造方法と共通している。半導体装置DEV2の製造方法では、半絶縁膜形成工程S6において、成膜された半絶縁膜SIFを構成している材料が、コーナ部PPa上及びコーナ部EL2a上に半絶縁膜SIFが残らないようにパターンニングされる。
【0061】
<半導体装置DEV2の効果>
外周縁部PP上にある半絶縁膜SIFのうち、コーナ部PPa上にある半絶縁膜SIFには、温度サイクル等が加わった際に、相対的に応力が集中しやすい。同様に、第2電極EL2上にある半絶縁膜SIFのうち、コーナ部EL2a上にある半絶縁膜SIFには、相対的に応力が集中しやすい。半導体装置DEV2においては、コーナ部PPa上及びコーナ部EL2a上の半絶縁膜SIFも除去されているため、半絶縁膜SIF中のクラック発生がさらに抑制される。
【0062】
(第3実施形態)
以下に、第3実施形態に係る半導体装置(以下「半導体装置DEV3」とする)を説明する。ここでは、半導体装置DEV1と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0063】
<半導体装置DEV3の構成>
半導体装置DEV2は、半導体基板SUBと、第1電極EL1と、絶縁膜IFと、第2電極EL2と、半絶縁膜SIFと、第3電極EL3と、パッシベーション膜PVを有している。この点に関して、半導体装置DEV3の構成は、半導体装置DEV1の構成と共通している。
【0064】
図16は、半導体装置DEV3の平面図である。なお、
図16中では、パッシベーション膜PVの図示が省略されている。
図17は、
図16中のXVII-XVIIにおける拡大断面図である。
図16及び
図17に示されるように、半導体装置DEV3において、第1電極EL1は、平面視において、十字形状を有している。このことを別の観点から言えば、半導体装置DEV3における第1電極EL1は、半導体装置DEV1における第1電極EL1から平面視におけるコーナ部が除去された形状を有している。その結果、半導体装置DEV3における外周縁部PPは、コーナ部PPaを有しない。
【0065】
半導体装置DEV3において、第2電極EL2は、コーナ部EL2aを有しない。すなわち、半導体装置DEV3において、第2電極EL2は、環状ではなく、4つの直線部EL2bのみから構成されている。
【0066】
半導体装置DEV3においては、外周縁部PPがコーナ部PPaを有さず、第2電極EL2がコーナ部EL2aを有さないため、コーナ部PPa上からコーナ部EL2a上まで連続して形成されている半絶縁膜SIFが存在しない。
【0067】
第1電極EL1及び第2電極EL2の厚さを、厚さTとする。半導体装置DEV3における厚さTは、半導体装置DEV1における厚さTよりも大きいことが好ましい。半導体装置DEV3において、厚さTは、例えば、5μm以上である。これらの点に関して、半導体装置DEV3の構成は、半導体装置DEV1の構成と異なっている。
【0068】
<半導体装置DEV3の製造方法>
半導体装置DEV3の製造方法は、第1電極形成工程S5及び半絶縁膜形成工程S6を除き、半導体装置DEV1の製造方法と共通している。半導体装置DEV3の製造方法では、第1電極形成工程S5において、第1電極EL1及び第2電極EL2が、
図16に示される形状にパターンニングされる。
【0069】
また、半導体装置DEV3の製造方法では、半絶縁膜形成工程S6において、成膜された半絶縁膜SIFを構成している材料が、直線部PPb上から直線部EL2b上まで連続的に形成されている部分のみが残存するようにパターンニングされる。これらの点に関して、半導体装置DEV3の製造方法は、半導体装置DEV1の製造方法と異なっている。
【0070】
<半導体装置DEV3の効果>
厚さTが大きくなると、第1電極EL1及び第2電極EL2の表面と絶縁膜IFの表面との間の段差が大きくなる。その結果、コーナ部PPaとコーナ部EL2aとの間にある絶縁膜IF上の半絶縁膜SIFを局所的に除去するためのマスクをフォトリソグラフィ法を用いてパターンニングすることが困難になる。
【0071】
半導体装置DEV3においては、外周縁部PPがコーナ部PPaを有さず、第2電極EL2がコーナ部EL2aを有さないため、コーナ部PPa上からコーナ部EL2a上まで連続して形成されている半絶縁膜SIFが存在しない。
【0072】
そのため、半導体装置DEV3によると、コーナ部PPaとコーナ部EL2aとの間にある絶縁膜IF上の半絶縁膜SIFにアバランシェ崩壊時に生成された過剰なキャリアの蓄積に伴う耐圧変動の問題は生じない。また、半導体装置DEV3によると、コーナ部PPaとコーナ部EL2aとの間にある絶縁膜IF上の半絶縁膜SIFを局所的に除去する必要がないため、厚さTを大きくすることができる。
【0073】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0074】
DEV1,DEV2,DEV3 半導体装置、EL1 第1電極、EL2 第2電極、EL2a コーナ部、EL2b 直線部、EL2 第2電極、EL3 第3電極、FS 第1面、IF 絶縁膜、OP1,OP2,OP3 開口部、PP 外周縁部、PPa コーナ部、PPb 直線部、PV パッシベーション膜、R1,R2,R3,R4,R5 不純物領域、S1 準備工程、S2 エピタキシャル成長工程、S3 絶縁膜形成工程、S4 イオン注入工程、S5 第1電極形成工程、S6 半絶縁膜形成工程、S7 第2電極形成工程、S8 パッシベーション膜形成工程、S9 個片化工程、SIF 半絶縁膜、SS 第2面、SUB 半導体基板、T 厚さ。