IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱農機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-コンバイン 図1
  • 特許-コンバイン 図2
  • 特許-コンバイン 図3
  • 特許-コンバイン 図4
  • 特許-コンバイン 図5
  • 特許-コンバイン 図6
  • 特許-コンバイン 図7
  • 特許-コンバイン 図8
  • 特許-コンバイン 図9
  • 特許-コンバイン 図10
  • 特許-コンバイン 図11
  • 特許-コンバイン 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 61/00 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
A01D61/00 301L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020187195
(22)【出願日】2020-11-10
(65)【公開番号】P2022076686
(43)【公開日】2022-05-20
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阿川 陽一
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-23224(JP,U)
【文献】実公昭49-41055(JP,Y1)
【文献】特開2013-39093(JP,A)
【文献】特開2016-182093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 61/00
A01D 57/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立毛穀稈を引起装置と刈刃装置によって引起こしながら刈取って穀稈搬送装置によって脱穀装置に向けて搬送するコンバインにあって、前記穀稈搬送装置は突起付きの搬送チェーンからなる株元搬送体と係止爪を装着した搬送チェーンからなる穂先搬送体を備え、この内、穂先搬送体はワンウェイクラッチを介して駆動する駆動スプロケットと従動スプロケット又は従動輪と、これらに巻掛ける搬送チェーンと、この搬送チェーンに所定間隔を空けて取付ピンによって起伏自在に取付ける多数の係止爪を設ける一方、これ等を覆う搬送ケースには、係止爪を起立姿勢に保持するガイドと、このガイドから外れた係止爪の基部が通過する箇所にあって、係止爪をその取付ピンを打撃して搬送チェーンから取外す際に、この取付ピンを打撃する工具を通すために用いる脱着穴と、その工具によって打撃された取付ピンを通り抜けさせて回収する脱着穴の2つの脱着穴を対向させて設け、そして、新たな係止爪をその取付ピンを打撃して搬送チェーンに取付ける際には、前記2つの脱着穴の内、1つの脱着穴に取付ピンをその脱着穴の外方側から通し、また、その脱着穴の外方側から工具により取付ピンを打撃して、係る取付ピンを脱着穴の内方側に向けて通り抜けさせることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記搬送ケースは、その脱着穴を設ける近傍にあって係止爪を搬送チェーンから離脱乃至は装着可能な開口を備え、係る開口から突出する係止爪の先端寄りを作業者が把持しながら搬送チェーンと共に係止爪を搬送方向に移動させて、その脱着穴と係止爪の基部に設ける取付ピンの取付孔を合致させることを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記穂先搬送体は、その側方を引起装置と掻込装置と刈刃装置と共にサイドカバーによって覆い、このサイドカバーを取外すと、搬送ケースのガイドから外れた係止爪の基部が通過する箇所に設ける脱着穴を露出させて設けることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、稲や麦等を刈取って穀粒を収穫するコンバインに係り、詳しくは立毛穀稈を引起装置と刈刃装置によって引起こしながら刈取って穀稈搬送装置によって脱穀装置に向けて搬送するコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
稲や麦等を刈取って穀粒を収穫するコンバインは、圃場の立毛穀稈を刈取部に設ける引起装置や刈刃装置によって引起こしながら刈取り、また、刈取った穀稈を穂先及び株元搬送体によって構成する穀稈搬送装置によって脱穀部に設ける脱穀装置に搬送し、さらに、脱穀装置は扱歯を備える扱胴や揺動流板等によって刈取部から搬送された穀稈から穀粒を脱粒・選別処理して収穫する。
【0003】
そして、このようなコンバインで刈幅を広くして能率的に刈取作業を行う場合は、引起装置や穂先及び株元搬送体を多数設けて、刈取った穀稈を遅滞なくもれなく脱穀装置に搬送する必要があり、例えば、5条乃至6条刈りのコンバインでは、その刈取条数と同数の5つ乃至6つの引起装置と3つの穂先及び株元搬送体を設ける。
【0004】
また、この場合、5つ乃至6つの引起装置と刈刃装置によって刈取った穀稈を脱穀装置に搬送すべく、操縦部側となる機体の右側寄りに設ける右穂先及び株元搬送体の搬送経路の中途に、中央に設ける穂先及び株元搬送体によって搬送した穀稈を合流させ、更に機体の左側寄りに設ける左穂先及び株元搬送体によって搬送した穀稈を右穂先搬送体の搬送経路の中途と右株元搬送体の搬送経路の終端部において合流させ、その後、穀稈の穂先寄りは引き続き右穂先搬送体によって、また、穀稈の株元寄りは扱深さ搬送体等によって扱ぎ深さ調節を加えながら脱穀装置に搬送する。
【0005】
しかし、このように右穂先及び株元搬送体の搬送経路の中途や終端部に中央や左側に位置する穂先及び株元搬送体によって搬送した穀稈を合流させると、特に株元搬送体の合流部における搬送通路は稈こぼれを防止するためにあまり広く取っていないため、一時に多量の穀稈が合流しようとすると穀稈が停滞気味となる。そして、この合流部でひとたび停滞が生ずると次々に搬送されてくる後続の穀稈によって搬送通路は穀稈で満たされて詰まりを生じ、これによって株元搬送体は過負荷となって搬送不能に陥る。
【0006】
そこで、特に多量の穀稈が合流して穀稈の詰まりが発生し易い左右の株元搬送体の終端側合流部において穀稈の詰まりが発生した場合には、左株元搬送体に設ける突起付きの搬送チェーンを巻掛ける終端側回転体を搬送通路から後退させることによって搬送通路を開放し、合流部に詰まった穀稈の圧縮状態を解除して合流部から穀稈を取り除き易くする。また、それでも穀稈の除去が難しい場合は、左株元搬送体に設ける搬送チェーンを手動駆動手段によって逆転又は正転駆動して合流部に詰まった穀稈を搬送上流側や下流側に移動させて穀稈の圧縮状態を更に解除して穀稈を取り除き易くすることが知られている(特許文献1参照)。
【0007】
一方、ケース内に係止爪を装着する搬送チェーンを掛架してあるコンバインにおける穀稈搬送装置において、このケースの前方部分に係止爪を挿抜するに足りる大きさの開口を形成して、搬送チェーンに対して係止爪の交換等のメンテナンスを簡便容易に行えるようにすることが知られている(特許文献2参照)。
【0008】
また、刈取機やコンバインの穀稈引起装置において、枠体内に複数の引起爪を起伏自在に装着したチェーンを適宜の動力で回動するように張設し、この枠体のチェーンの回動面と平行な1側面に引起爪を出し入れできる程度の切欠部を設け、この切欠部の反対側の側面における引起爪の枢支ピンの回動軌跡と対向する部位に枢支ピンを抜き挿しできる孔を設けることが知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2016-67263号公報
【文献】実願昭55-118926号(実開昭57-41037号)のマ イクロフィルム
【文献】実公昭53-42506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述の特許文献1に記載されたコンバインでは、左株元搬送体に設ける突起付きの搬送チェーンを巻掛ける終端側回転体の支持プレートを固定フレームに対して移動自在に支持し、左右の株元搬送体の終端側合流部で穀稈が詰まった際には、この支持プレートの前方側への移動規制を解除して詰まった穀稈の圧力で搬送チェーンと共に終端側回転体を搬送通路から後退させ、それにより搬送通路を開放して詰まった穀稈の圧縮状態を解除して穀稈を取り除き易くする。
【0011】
また、穀稈の詰まりが酷く穀稈を取り除くことが出来ない場合は、搬送チェーンを手動駆動手段によって逆転駆動して詰まった穀稈を合流部から上流側に移動させて穀稈の圧縮状態を更に解除して穀稈を取り除き易くする。或いは、搬送チェーンを手動駆動手段によって正転駆動して詰まった穀稈を合流部から下流側に放出して穀稈の圧縮状態を更に解除して穀稈を取り除き易くする。
【0012】
そして、係る合流部における穀稈の詰まりは常に一様に定まっているわけではなく、搬送する穀稈の量や稈剛性、或いは乾き度合等によって種々の詰まり方をする。そこで、穀稈の詰まり具合によって搬送チェーンを逆転駆動したり又は正転駆動したり、或いは正逆回転駆動を繰り返して、穀稈の圧縮の解除状態を見ながら最良の方法を選択して詰まった穀稈の除去作業を行う。
【0013】
なお、穂先搬送体に設ける搬送チェーンを駆動する駆動軸と、この搬送チェーンの駆動スプロケットとの間には、ワンウェイクラッチを設ける。そして、前述の左株元搬送体に設ける突起付きの搬送チェーンを手動駆動手段によって逆転駆動した場合であっても、ワンウェイクラッチによって穂先搬送体の駆動スプロケットが回転しないようになして、穂先搬送体に設ける搬送チェーンに装着する係止爪が破損しないようにする。
【0014】
ところで、前述のように株元搬送体の合流部等に多量の穀稈が搬送されてきた際には、この多量の穀稈の穂先側を穂先搬送体に設ける搬送チェーンに装着する係止爪によって搬送することになるから係止爪にしても過負荷を受け易く、また、経年変化によって係止爪が脆くなって摩耗したり破損するといった問題がある。そこで、この係止爪を搬送チェーンから取外して新しい係止爪に交換する必要がある。
【0015】
しかし、穂先搬送体の駆動スプロケットや従動スプロケット又は従動輪、これらに巻掛ける搬送チェーン等を取付けて覆う搬送ケースは、搬送チェーンに所定間隔を空けて取付ピンによって起伏自在に取付ける多数の係止爪を起立姿勢に保持するガイドを設ける他、その搬送ケースの上方に搬送する穀稈の穂先側を受け止めて案内するガイド板等を取付けて設けるから、これらのガイド板等を取外したうえで搬送ケースを分解する。また、それによって露出させた係止爪を取付けた搬送チェーンを駆動スプロケットや従動スプロケット又は従動輪から取外し、さらに、取外した搬送チェーンから係止爪を取外して新しい係止爪に交換する必要がある。
【0016】
そのため、穂先搬送体の搬送チェーンから係止爪を取外して新しい係止爪に交換するためには多大の労力と作業時間を要して、極めて煩わしい作業を強いられるという問題があった。そこで、前述の特許文献2や特許文献3に記載されているように、ケースの前方部分に係止爪を挿抜するに足りる大きさの開口を形成して、搬送チェーンに対して係止爪の交換等のメンテナンスを簡便容易に行えるようにしたり、枠体のチェーンの回動面と平行な1側面に引起爪を出し入れできる程度の切欠部を設け、この切欠部の反対側の側面における引起爪の枢支ピンの回動軌跡と対向する部位に枢支ピンを抜き挿しできる孔を設けるといった係止爪の交換手段を採用することが考えられている。
【0017】
然し乍ら、これ等の穂先搬送体や穀稈引起装置は係止爪を出し入れできる開口や切欠部を設ける他、これらを塞ぐ蓋やカバーを設けなければならないと共に、そもそもチェーンに取付けた係止爪を開口や切欠部に臨ませる手段や引起爪の枢支ピンを抜き挿しできる孔に臨ませる手段については格別、示されていないから想像を働かせるしかないが、例えばコンバインの動力源となるエンジンを始動させたうえで刈取クラッチを入り切りしながら、穂先搬送体や穀稈引起装置を断続駆動させて係止爪を開口や切欠部に臨ませるしかなく、また、一般的には刈取クラッチを切断しても穂先搬送体や穀稈引起装置の係止爪は、その係止爪等を把持して移動させようとしても刈取伝動系に設ける他の装置も合わせて駆動することになるから、それらの負荷も加わって手動によっては移動させることが困難である。
【0018】
従って、これ等の特許文献2や特許文献3に記載されている技術は参考とはなるものの、凡そそのままでは実用的に役に立たない技術でしかない。そこで、本発明は、立毛穀稈を引起装置と刈刃装置によって引起こしながら刈取って穀稈搬送装置によって脱穀装置に向けて搬送するコンバインにあって、この穀稈搬送装置の穂先搬送体に設ける係止爪を搬送チェーンから取外して新しい係止爪に交換する際に、係止爪の取外し空間等を新たに設けることなく多数の係止爪を一時に簡単に交換することができる、コンバインを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のコンバインは、前述の課題を解決するため第1に、立毛穀稈を引起装置と刈刃装置によって引起こしながら刈取って穀稈搬送装置によって脱穀装置に向けて搬送するコンバインにあって、前記穀稈搬送装置は突起付きの搬送チェーンからなる株元搬送体と係止爪を装着した搬送チェーンからなる穂先搬送体を備え、この内、穂先搬送体はワンウェイクラッチを介して駆動する駆動スプロケットと従動スプロケット又は従動輪と、これらに巻掛ける搬送チェーンと、この搬送チェーンに所定間隔を空けて取付ピンによって起伏自在に取付ける多数の係止爪を設ける一方、これ等を覆う搬送ケースには、係止爪を起立姿勢に保持するガイドと、このガイドから外れた係止爪の基部が通過する箇所にあって、係止爪をその取付ピンを打撃して搬送チェーンから取外す際に、この取付ピンを打撃する工具を通すために用いる脱着穴と、その工具によって打撃された取付ピンを通り抜けさせて回収する脱着穴の2つの脱着穴を対向させて設け、そして、新たな係止爪をその取付ピンを打撃して搬送チェーンに取付ける際には、前記2つの脱着穴の内、1つの脱着穴に取付ピンをその脱着穴の外方側から通し、また、その脱着穴の外方側から工具により取付ピンを打撃して、係る取付ピンを脱着穴の内方側に向けて通り抜けさせることを特徴とする。
【0020】
また、本発明のコンバインは第2に、前記搬送ケースは、その脱着穴を設ける近傍にあって係止爪を搬送チェーンから離脱乃至は装着可能な開口を備え、係る開口から突出する係止爪の先端寄りを作業者が把持しながら搬送チェーンと共に係止爪を搬送方向に移動させて、その脱着穴と係止爪の基部に設ける取付ピンの取付孔を合致させることを特徴とする。
【0021】
さらに、本発明のコンバインは第3に、前記穂先搬送体は、その側方を引起装置と掻込装置と刈刃装置と共にサイドカバーによって覆い、このサイドカバーを取外すと、搬送ケースのガイドから外れた係止爪の基部が通過する箇所に設ける脱着穴を露出させて設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明のコンバインによれば、立毛穀稈を引起装置と刈刃装置によって引起こしながら刈取って穀稈搬送装置によって脱穀装置に向けて搬送するコンバインにあって、前記穀稈搬送装置は突起付きの搬送チェーンからなる株元搬送体と係止爪を装着した搬送チェーンからなる穂先搬送体を備え、この内、穂先搬送体はワンウェイクラッチを介して駆動する駆動スプロケットと従動スプロケット又は従動輪と、これらに巻掛ける搬送チェーンと、この搬送チェーンに所定間隔を空けて取付ピンによって起伏自在に取付ける多数の係止爪を設ける一方、これ等を覆う搬送ケースには、係止爪を起立姿勢に保持するガイドと、このガイドから外れた係止爪の基部が通過する箇所にあって、係止爪をその取付ピンを打撃して搬送チェーンから取外す際に、この取付ピンを打撃する工具を通すために用いる脱着穴と、その工具によって打撃された取付ピンを通り抜けさせて回収する脱着穴の2つの脱着穴を対向させて設け、そして、新たな係止爪をその取付ピンを打撃して搬送チェーンに取付ける際には、前記2つの脱着穴の内、1つの脱着穴に取付ピンをその脱着穴の外方側から通し、また、その脱着穴の外方側から工具により取付ピンを打撃して、係る取付ピンを脱着穴の内方側に向けて通り抜けさせる。
【0023】
そのため、穀稈搬送装置の穂先搬送体に設ける係止爪を搬送チェーンから取外して新しい係止爪に交換する際に、係止爪の取外し空間等を新たに設けることもなく、単に係止爪を搬送チェーンに装着する取付ピンを通り抜けさせたり打撃する工具を通す2つの脱着穴を搬送ケースに対向させて設けるだけで、多数の係止爪を一時に簡単に交換することができる。
【0024】
即ち、係止爪を交換する際には先ず、搬送ケースに設ける2つの脱着穴の何れかの穴から目視によって、取付ピンを取付ける係止爪の基部に設ける取付孔が、脱着穴の上方又は下方に位置するように係止爪を移動させる。そして、この場合に穂先搬送体の駆動スプロケットは、ワンウェイクラッチを介して駆動するので、他の株元搬送体等を合わせて駆動することなく例えば、係止爪を把持して搬送チェーンと共に係止爪を搬送方向に移動させて、交換する係止爪の基部に設ける取付孔が脱着穴の上方や下方に位置するように移動させることができる。
【0025】
また、係止爪の基部に設ける取付孔が脱着穴の上方や下方に位置するように移動させた後、脱着穴の一方にピンポンチ等の工具の先端を差し込んでハンマーを用いて取付ピンを打撃して、係止爪を搬送チェーンから取外すことができる。なお、打撃した取付ピンは脱着穴の他方から通り抜けさせて回収することができ、また、取付ピンを工具によって打撃すると係止爪の基部は、脱着穴周辺の搬送ケースの内面に当接して支持させることができるので係止爪の取付孔から取付ピンを容易に離脱させることができる。
【0026】
そして、予め用意しておいた新しい係止爪を搬送チェーンに装着し、また、回収した取付ピンを、その取外す際にピンポンチ等の工具の先端を差し込んだ脱着穴とは逆の、取付ピンを通り抜けさせた他方の脱着穴に通して係止爪の取付孔に差し込み、更に、ハンマーやピンポンチを用いて取付ピンを打撃して係止爪を搬送チェーンに取付ける。なお、取付ピンの頭部や或いは長手方向の中程寄りには、ピンの外周から突出させる突起が一体形成され、係る突起が合成樹脂製の係止爪の基部に設ける取付孔の外周部に喰い込んで係止爪を搬送チェーンに取付けることになるので、打撃する取付ピンの長手方向を間違えないようにする必要がある。また、以上の工程を繰り返して交換する必要のある係止爪を次々に能率的に多数交換することができる。
【0027】
また、本発明のコンバインによれば、前記搬送ケースは、その脱着穴を設ける近傍にあって係止爪を搬送チェーンから離脱乃至は装着可能な開口を備え、係る開口から突出する係止爪の先端寄りを作業者が把持しながら搬送チェーンと共に係止爪を搬送方向に移動させて、その脱着穴と係止爪の基部に設ける取付ピンの取付孔を合致させる。
【0028】
そのため、前述の交換する係止爪の基部に設ける取付孔が脱着穴の上方や下方に位置するように移動させる際に、開口から突出する交換しようとする係止爪の先端寄りを直接把持したり、或いは先端が欠損していれば残った基部寄りを把持して移動させることができ、例えば、搬送ケースから起立する他の係止爪を、居場所を変えたり或いは伸ばす手の方向を大きく変えて把持して搬送チェーンを移動させ、それにより交換しようとする係止爪を間接的に移動させる場合より、スムーズに取付孔と脱着穴との位置合わせを行うことができる。
【0029】
なお、搬送ケースの脱着穴を設ける箇所は、係止爪を起立姿勢に保持するガイドから外れた箇所、例えば、穀稈を搬送しない非作用側の終端箇所(係止爪を起立姿勢に保持するガイドの始端の直前箇所)にあって、その脱着穴の近傍に設ける開口も係止爪がガイドによって起立姿勢に保持されていない箇所となるから、穂先搬送体が搬送下流側が高くなるように傾斜配置されておらず、自らの自重によって係止爪が開口から突出しないのであれば、これを手で引き出して開口から突出させて移動させてもよい。
【0030】
さらに、本発明のコンバインによれば、前記穂先搬送体は、その側方を引起装置と掻込装置と刈刃装置と共にサイドカバーによって覆い、このサイドカバーを取外すと、搬送ケースのガイドから外れた係止爪の基部が通過する箇所に設ける脱着穴を露出させて設ける。そのため、サイドカバーを取外すだけで係止爪の交換作業を開始することができ、例えば、搬送ケースの上面に取付ける穀稈の穂先側を受け止めて案内するガイド板等を何等取外すこともなく、取外したサイドカバーを設ける側方の作業スペースに居ながらにして、或いは刈取部を上昇させて係止爪の交換高さを調整したうえでスムーズに係止爪の交換作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明を適用するコンバインの右側面図である。
図2】コンバインの左側面図である。
図3】コンバインの平面図である。
図4】刈取部の側面図である。
図5】刈取部の入力軸の駆動構造を示す斜視図である。
図6】刈取部の動力伝達図である。
図7】右穂先搬送体の平面図である。
図8】右穂先搬送体の要部の斜視図である。
図9】係止爪の取外しを示す斜視図である。
図10】係止爪の取外しを示す断面図である。
図11】サイドカバーを取外したコンバインの右側面図である。
図12】中穂先搬送体の斜視図と専用工具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図3に示すように稲や麦を刈取りながら脱穀する6条刈りの自脱型コンバイン1は、略矩形状に枠組みする機体フレーム(機体)2の下方に走行フレーム3を介して左右のクローラ走行装置4を設ける。なお、左右のクローラ走行装置4は、トランスミッションケース5の左右から突出する駆動軸に取付ける駆動スプロケット6と、走行フレーム3に軸支するアイドルホイール7及びトラックローラ8と、これらに巻回するゴムクローラ9を備える。
【0033】
また、機体フレーム2の機体前進方向の右側前部には、略矩形状になす運転フレーム10を一体的に連結し、この運転フレーム10及びその後方の機体フレーム2にかけて操縦部11を設ける。なお、操縦部11はフロアの後方に運転席を設け、また、フロアの前部にはフロントコンソール(前部操作盤)を、フロアと運転席の左側にはサイドコンソール(側部操作盤)を設け、さらに、キャビン12で操縦部11を覆っている。
【0034】
また、機体フレーム2の左側前部から操縦部11の前方にかけて刈取部13を図示しない油圧シリンダによって昇降自在に設ける。そして、刈取部13は図4及び図5にも示すように、その前端下部に設ける分草体14とナローガイド15によって、圃場の立毛穀稈を刈取穀稈と未刈取穀稈とに区分けし、左右の最も外方となる分草体14の間に入った刈取穀稈を引起爪16を備える6つの引起装置17によって引起し、その後、6つの突起付き掻込ベルト18とスターホイール19で構成する掻込装置20で寄せ集めながら穀稈の株元をレシプロ方式の刈刃装置21によって切断する。
【0035】
さらに、刈刃装置21によって切断して刈取った穀稈は掻込装置20で後方に送り、また、後方に送った穀稈は穀稈搬送装置で後述する脱穀装置に向けて搬送する。なお、この穀稈搬送装置は突起付きの搬送チェーンからなる株元搬送体と、係止爪を装着した搬送チェーンからなる穂先搬送体で構成し、その内、株元搬送体は左右と中央に設ける3つの株元搬送体22、23、24を備え、また、穂先搬送体も左右と中央に設ける3つの穂先搬送体25、26、27を備える。
【0036】
そして、中央に設ける株元搬送体24と穂先搬送体27の終端部は、右株元搬送体22と右穂先搬送体25の搬送経路の中途に設ける合流部に臨み、この中株元搬送装置24と中穂先搬送体27によって搬送した穀稈は、右株元搬送体22と右穂先搬送体25によって搬送してきた穀稈と合流し、以後、右株元搬送体22と右穂先搬送体25に引き継がれる。
【0037】
また、左株元搬送体23の終端部は右株元搬送体22の搬送経路の終端部に臨み、この左株元搬送体23によって搬送した穀稈は、右株元搬送体22によって搬送してきた穀稈と、両搬送装置の終端部となる合流部において合流する。さらに、左穂先搬送体26の終端部は右穂先搬送体25の搬送経路の中穂先搬送体27との合流部より下流側の中途に設ける合流部に臨み、この左穂先搬送体26によって搬送した穀稈は、右穂先搬送体25によって搬送してきた穀稈と合流し、以後、右穂先搬送体25に引き継がれる。
【0038】
なお、右株元搬送体22と左株元搬送体23の終端部で合流した穀稈は、その始端部を両合流部に臨ませる扱深さ搬送体28に引き継がれ、また、穀稈の穂先側は引き続き右穂先搬送体25によって搬送する。そして、この間で扱深さ搬送体28はその終端部側の上下動によって搬送する穀稈に扱ぎ深さの調節作用を加える。さらに、扱深さ搬送体28によって搬送した穀稈の株元寄りは、扱深さ搬送体28の終端部から補助搬送体29を経由して脱穀フィードチェーン30に引き継がれる。
【0039】
また、刈取部13の後方となる機体フレーム2の左側には脱穀装置31を設ける。この脱穀装置31はその上方を覆うシリンダーカバー32の下方に扱室と処理室を設ける。この内、扱室には刈取部13から搬送してきた穀稈を扱口に沿って搬送する前述の脱穀フィードチェーン30と、その挟持レール33、扱歯を備える扱胴とその受網等を設ける。また、処理室は扱胴の後端穂先側より機体の後方に向かうように扱室に併設し、扱室で脱粒処理しきれなかった穀粒の混ざった藁屑等を処理する処理胴とその受網を設ける。
【0040】
一方、扱室と処理室の下方には選別室を設ける。この選別室には揺動運動する揺動流板、1番螺旋及び2番螺旋、唐箕ファン及び吸引ファン等を設け、扱室と処理室の受網より漏下した穀粒等を揺動流板上において選別し、選別した穀粒は1番螺旋から揚穀装置34を介してグレンタンク35に移送し、藁屑等が混じった2番物は2番螺旋から2番還元装置を介して揺動流板上に戻す。
【0041】
また、揺動流板の終端に至った藁屑、吸引ファンに捕捉された藁屑、或いは処理胴の終端から排出された藁屑は、脱穀装置31の後方の機外に排出する。さらに、脱穀処理を完了して扱室から排出する排稈は、排藁搬送装置36によってディスク型カッター37に向けて搬送し、さらに、ディスク型カッター37は、排藁搬送装置36で搬送してきた排稈を細断して刈取跡地に切藁として放出する。
【0042】
そして、前述のグレンタンク35は、操縦部11の下方から後方に設けるディーゼルエンジン38やラジエータ、エアクリーナ等から構成する原動部39のさらに後方に設け、揚穀装置34によって移送してきた穀粒を一時的に貯留する。また、グレンタンク35内に穀粒が満杯になると、グレンタンク35から穀粒を排出して機外のコンテナ等に放出すべく排出オーガ40を作動させる。
【0043】
なお、排出オーガ40は、グレンタンク35の底部に設ける横螺旋と縦螺旋を内装する縦パイプを備え、この縦パイプはグレンタンク35の後方にオーガ旋回モータによって回動可能に立設する第1縦パイプ41と、第1縦パイプ41の上部に互に回動自在に連結する1対のギヤケース42と、油圧シリンダ43によって昇降可能になす第2縦パイプ44によって構成する。
【0044】
以上、コンバイン1の概要について説明したが、次に、刈取部13への動力伝達系について説明すると、図6並びに図4に示すようにコンバイン1は、原動部39にディーゼルエンジン38を設け、このエンジン38が機体各部を駆動する動力源となる。そして、このエンジン38の動力は刈取部13に対して先ず、ベルトテンションクラッチ式の脱穀クラッチ45を介して搬送HST46に伝達され、この搬送HST46によって変速された動力はギヤ変速装置47を介して脱穀フィードチェーン30を駆動すると共に、ベルトテンションクラッチ式の刈取クラッチ48を介して刈取部13の入力ケース49内に設ける入力軸50に伝達される。
【0045】
なお、刈取部13の入力ケース49は、機体フレーム2の左前部に設けるリフトフレームの上部に回動自在支持され、刈取部13はこの入力ケース49を中心として前部側を油圧シリンダによって昇降自在に設ける。また、入力ケース49から前下方に延びる縦ケース51内には入力軸50によって駆動される縦伝動軸52を設け、さらに、縦ケース51の前部に設ける左右の下ケース53内には縦伝動軸52によって駆動される横伝動軸54を設ける。
【0046】
また、左下ケース53の左端寄りから上方に向けて設ける下縦ケーース55内には横伝動軸54によって駆動される下縦伝動軸56を設け、この下縦伝動軸56は引起変速装置57を経由して引起横ケース58内に設ける引起伝動軸59を駆動する。そして、この引起伝動軸59から分岐させて6つの引起装置17を駆動する。また、下縦伝動軸56から分岐させた左株元駆動軸60から左株元搬送体23と左穂先搬送体26を駆動する。なお、左株元駆動軸60の上部と左穂先搬送体26の駆動スプロケット61との間にはワンウェイクラッチ62を設ける。
【0047】
さらに、左掻込駆動軸63は左株元搬送体23によって駆動され、この左掻込駆動軸63によって最も左側の突起付き掻込ベルト18とスターホイール19で構成する掻込装置20が駆動される。また、左側から右側にかけて設ける4つのスターホイール19は一連に噛み合って夫々駆動されると共に、その上方に設ける各々の突起付き掻込ベルト18も同時に駆動される。なお、2分割した左右の刈刃装置21は横伝動軸54の両端部から分岐させて駆動する。
【0048】
そして、縦伝動軸52の下部寄りから中継軸64と歯車対65を介して駆動される中株元駆動軸66は中株元搬送体24と中穂先搬送体27を駆動する。なお、中株元駆動軸66の上部と中穂先搬送体27の駆動スプロケット67との間にはワンウェイクラッチ68を設ける。また、縦伝動軸52の中間部寄りから分岐させて右株元駆動軸69を駆動し、この右株元駆動軸69は右株元搬送体22を駆動すると共に、中途から分岐させて扱深さ搬送体28を駆動する。
【0049】
さらに、右株元搬送体22は右掻込駆動軸70を駆動し、この右掻込駆動軸70によって右側の互いに噛み合う2つのスターホイール19とその上方に設ける夫々の突起付き掻込ベルト18を駆動する。そして、縦伝動軸52の上部寄りから中継軸71を介して右穂先駆動軸72を駆動し、この右穂先駆動軸72は右穂先搬送体25と補助搬送体29を駆動する。なお、右穂先駆動軸72の上部と右穂先搬送体25の駆動スプロケット73との間にはワンウェイクラッチ74を設ける。
【0050】
また、前述の入力軸50は、図5に示すように脱穀フィードチェーン30の前部寄りの軌道内を通って外方まで延長し、この延長軸50の外端部にラチェットレンチ等の工具75を差し込んで入力軸50を手動で正転や逆転させることができるようにする。そのため、刈取作業中に刈取部13の穀稈搬送装置に穀稈の詰まりが発生した場合は、脱穀クラッチ45や刈取クラッチ48を切ってコンバイン1の各部を停止させると共にエンジン38を停止させる。
【0051】
そして、ここで詰まった穀稈の除去作業を行うが、この際、工具75を用いて入力軸50を手動で正転や逆転させると、穀稈搬送装置の搬送経路に詰まった穀稈を株元搬送体22、23、24の突起付きの搬送チェーンによって搬送上手側や下手側に移動させて、詰まって絡み合う穀稈を解きほぐして搬送経路から取り除き易くなる。なお、入力軸50を手動で逆転させると、株元搬送体22、23、24のみならず刈取部13の各装置が逆回転駆動される。
【0052】
そのため、特に穂先搬送体25、26、27や引起装置17は、そのチェーンに装着した係止爪や引起爪が逆転に伴ってケース内に設けるガイド等に当たって破損する虞がある。或いは搬送体の部品に重大な損傷を与える虞がある。
【0053】
そこで、各穂先搬送体25、26、27は、夫々の駆動軸72、60、66の上部と穂先搬送体25、26、27の駆動スプロケット73、61、67との間にワンウェイクラッチ74、62、68を設けて、仮に駆動軸72、60、66が逆回転駆動されても係止爪を装着する搬送チェーンが駆動されないようにして、前述の虞を無くす。また、引起装置17は事前に、引起変速装置57を中立位置となして動力伝達を遮断しておくことによって破損等を防ぐことができる。
【0054】
なお、詰まった穀稈の除去作業を行う場合に、特許文献1に記載されているように左株元搬送体23に設ける突起付きの搬送チェーンを巻掛ける終端側回転体を搬送通路から後退させることによって搬送通路を開放し、合流部に詰まった穀稈の圧縮状態を解除して合流部から穀稈を取り除き易くしたり、右株元搬送体22の穀稈搬送側の背面を案内、支持する支持部材を、回動フレームと共に回動して、右株元搬送体22の穀稈の圧縮状態を解除して合流部から穀稈を取り除き易くしたり、さらに、扱深さ搬送体28の突起付きの搬送チェーンに対向させて設ける挟持レール76を取外して、詰まった穀稈を取り除き易くしても勿論構わない。
【0055】
ところで、前述のように株元搬送体22、23、24の合流部等に多量の穀稈が搬送されてきた際には、この多量の穀稈の穂先寄りを穂先搬送体25、26、27に設ける搬送チェーンに装着する係止爪によって搬送することになるから係止爪にしても過負荷を受け易く、また、経年変化によって係止爪が脆くなって係止爪の基部が摩耗して搬送能力が低下したり、係止爪の先端寄りが破損して使用に耐えないといった問題がある。そこで、この係止爪を搬送チェーンから取外して新しい係止爪に交換する必要がある。
【0056】
しかし、穂先搬送体25、26、27の駆動スプロケット73、61、67や従動スプロケット又は従動輪、これらに巻掛ける搬送チェーン等を取付けて覆う搬送ケースは、搬送チェーンに所定間隔を空けて取付ピンによって起伏自在に取付ける多数の係止爪を起立姿勢に保持するガイドを設ける他、その搬送ケースの上面に搬送する穀稈の穂先側を受け止めて案内するガイド板等を取付けて設けるから、これらのガイド板等を取外したうえで搬送ケースを分解する。また、それによって露出させた係止爪を取付けた搬送チェーンを駆動スプロケット73、61、67や従動スプロケット又は従動輪から取外し、さらに、取外した搬送チェーンから係止爪を取外して新しい係止爪に交換する必要がある。
【0057】
そこで、穂先搬送体25、26、27に設ける係止爪を搬送チェーンから取外して新しい係止爪に交換する際の煩わしい作業を、係止爪の取外し空間等を新たに設けることもなく、多数の係止爪を一時に簡単に交換することができるようにするために、数十個にも及ぶ最も多数の係止爪77を備える右穂先搬送体25に今回、係止爪77の新たな交換機能を付け加える形態について説明する。
【0058】
先ず、現状の右穂先搬送体25は、図4及び図7乃至図10に示すように右穂先駆動軸72を内装する駆動ケース78の上部に設ける取付座や下方に設ける右株元搬送体22のフレームにブラケットを介して取付ける搬送ケース79を備え、この搬送ケース79は操縦部11の前方から脱穀装置31の穀稈供給口に亘って機体フレーム2の前方を斜めに横断するように、その穀稈の搬送始端となる前部を低く、また、搬送終端となる後部を高く傾斜させて設ける。
【0059】
そして、搬送ケース79は相当長尺となるため略長手方向の中間で前ケース部と後ケース部に分割して形成し、その後、両者を連結片で結合して一体となす。また、係る搬送ケース79は、基本的に穀稈の搬送作用側となる搬送チェーンの軌跡に沿う平板で形成する上搬送板80と下搬送板81を結合して構成するが、穀稈の搬送始端となる前部にその縁部を多少折り曲げて形成する補強板80a、81aを上搬送板80と下搬送板81に溶着して一体に設ける。さらに、係止爪77の基部77bを摺動させて起立姿勢に保持するガイドを上下の搬送板80、81の穀稈の搬送作用側となる前面の内側に設け、このガイドは断面矩形状の細長いガイド80b、81bをケースの縁側に、また、その後方に長尺な板状のガイド80c、81cを固着して一体に設ける。
【0060】
また、上下の搬送板80、81内には、駆動スプロケット73と3つの従動スプロケット82、83、84を設け、この内、搬送始端側の従動スプロケット82はその左右に係止爪77の基部77bと当接して起立させる輪体を一体に備え、この従動スプロケット82をベアリングを介して取付ける取付シャフトSの両端部をナットで取付ける上下のプレート85を上下の搬送板80、81の補強板80a、81a上において押しボルト86を用いてその長穴80d、81dの範囲でチェーンの伸びに対応して移動調節できるように設ける。また、搬送板80、81の2箇所の屈曲部に設ける従動スプロケット83、84は、下搬送板81の内側に突設するピンにベアリングを介して設ける。
【0061】
さらに、上下の搬送板80、81内には、係止爪77を装着する搬送チェーン87を駆動スプロケット73と3つの従動スプロケット82、83、84に巻き掛けて設ける。なお、搬送チェーン87は、その瓢箪形となす上下のプレートの内、例えば3つ空けて連結するプレート毎にその瓢箪形から外方に膨らませた突出部に係止爪77の取付ピン88を通す穴87bを穿設するプレート87aを備え、係止爪77はこの上下のプレート87aに取付ピン88を用いて起伏回動自在に装着する。
【0062】
また、穀稈の搬送非作用側となる上下の搬送板80、81の後方にはその後面側を覆う断面コ字状のカバー89を搬送板80、81に取付ける。さらに、帯状に湾曲するプレート90をカバー89の内面に収めてその両端部をカバー89の両端部にボルトで取付け、このプレート90は搬送チェーン87に装着する係止爪77を当接させて、係止爪77が搬送チェーン87に沿って必ず倒れるように弾性をもって案内するものであって、これにより搬送非作用側の係止爪77と操縦部11のコーナー部との干渉を防止して操縦部11の居住スペースの拡大を図ると共に、搬送チェーン87の弛みや係止爪77のバタ付きを無くして騒音の発生を少なくする。
【0063】
但し、このように構成すると右穂先搬送体25の駆動系に前述のワンウェイクラッチ74を設けない場合に、詰まった穀稈を除去し易くするために右株元搬送体22を逆回転駆動すると、これに伴って右穂先駆動軸72を逆回転駆動することになって、搬送チェーン87に装着する係止爪77がプレート90やカバー89の前端部に当接して、係止爪77が搬送チェーン87に沿って倒れるのではなく逆に起立しようとするから全体の逆回転駆動は阻止され、また、無理やり逆回転駆動すると係止爪77や取付ピン88、或いは搬送チェーン87のプレート87aが破損したり、プレート90やカバー89を変形させてしまう要因となる。
【0064】
一方、以上のように構成する搬送ケース79は、これらの搬送部品を取り付けて両搬送板80、81を閉じる場合は、下搬送板81の内側に上方を向けて突出させた数本のピンや従動スプロケット83、84を取付けるピンの上部に上搬送板80を被せてナットを用いて取付け、取付け後の搬送ケース79内の高さは係止爪77の基部77b間の高さに若干の隙間を加えた高さとし、これにより搬送ケース79内における係止爪77の上下動を抑制する。また、上下の搬送板80、81の外側には数箇所取付座Zを設けているので、この取付座Zに搬送する穀稈の穂先側を受け止めて案内するガイド板91を取付ける。さらに、引起装置17等を支えるサポートフレーム92には係止爪77の先端からの穀稈の離脱を防止するガイド杆93を取付ける。
【0065】
そして、以上のように構成する右穂先搬送体25の搬送チェーン87に装着する係止爪77を取外して新しい係止爪77に交換するために、前述の搬送ケース79(補強板80a、81a)に、その係止爪77を起立姿勢に保持するガイド80b、81b、80c、81cから外れた係止爪77の通過する箇所に、係止爪77をその取付ピン88を打撃して搬送チェーン87から取外したり取付けたりする際に、この取付ピン88を通り抜けさせたり打撃する工具を通す2つの脱着穴80e、81eを対向させて設ける。
【0066】
また、搬送ケース79は、その脱着穴80e、81eを設ける近傍にあって係止爪77を搬送チェーン87から離脱乃至は装着可能な開口Oを備え、係る開口Oから突出する係止爪77を把持しながら搬送チェーン87と共に係止爪77を搬送方向に移動させて、脱着穴脱着穴80e、81eに係止爪77に設ける取付ピン88の取付孔77aが望むようになす。さらに、右穂先搬送体25は、その側方を引起装置17と共にサイドカバー94によって覆い、このサイドカバー94を取外すと、搬送ケース79のガイドから外れた係止爪77の通過する箇所に設ける脱着穴脱着穴80e、81eを露出させて設ける。
【0067】
即ち、刈取部13は引起装置17、掻込装置20、刈刃装置21、並びに穀稈搬送装置の前部寄りの側方を安全のためにサイドカバー94によって覆っている。そこで、図11に示すように右サイドカバー94を取付フックの操作部94aを引き操作してサポートフレーム91から取外すと、右穂先搬送体25の搬送ケース79の前部寄りを露出させることができる。そのため、搬送ケース79のガイドから外れた係止爪77の通過する箇所に設ける脱着穴脱着穴80e、81eを露出させて目視することができる。
【0068】
従って、右サイドカバー94を取外すだけで係止爪77の交換作業を開始することができ、例えば、搬送ケース79の上面や下面に取付ける穀稈の穂先側を受け止めて案内するガイド板91等を何等取外すこともなく、取外した右サイドカバー94を設ける側方の作業スペースに居ながらにして、或いは刈取部13を上昇させて係止爪77の交換高さを調整したうえでスムーズに係止爪77の交換作業を行うことができる。
【0069】
そして、係止爪77を実際に交換する際には、摩耗したり破損した係止爪77を脱着位置に移動移動させる必要があるが、この場合、右穂先搬送体25の駆動スプロケット73は、ワンウェイクラッチ74を介して駆動するので、他の右株元搬送体22等を合わせて駆動することなく例えば、係止爪77を作業者が把持して、搬送チェーン87と共に係止爪77を右穂先駆動軸72を正回転駆動するのと同じ穀稈の搬送方向に引っ張ると、対象とする係止爪77を脱着位置に移動させることができる。なお、係止爪77を逆方向に引っ張ると係止爪77を移動させることができないので注意を要する。
【0070】
また、右穂先搬送体25の搬送ケース79は、その穀稈の搬送始端部に補強板80a、81aを固着し、この補強板80a、81aは搬送ケース79のガイド80b、81b、80c、81cから外れた係止爪77の通過する箇所、より詳細には、搬送始端側の従動スプロケット82に設ける左右の輪体に係止爪77の基部が当接して起立する前に係止爪77が通過する箇所に、2つの脱着穴脱着穴80e、81eを対向させて設ける。
【0071】
さらに、係る補強板80a、81aの係止爪77に対する入口は、上下方向に折り曲げて拡開させると共に、後方に向けて若干膨出させて形成している。また、ガイド80b、81bはその端部寄りを上方や下方に折り曲げて、上下の補強板80、81の後部側に係止爪77を搬送チェーン87から離脱及び装着可能な開口Oを設ける。そのため、補強板80a、81aはプレート90によって倒伏の規制を解除されて自重によって起立を開始した係止爪77を上下の補強板80、91の間に案内してスムーズに取り込むことができる。
【0072】
また、上下の補強板80a、81aの間に取り込まれた係止爪77はその先端部を上下の補強板80a、81aの後縁から後方に向けて突出させるので、上下の補強板80a、81aの開口Oから突出する係止爪77の先端を、直接把持したり或いは先端が欠損していれば残った基部寄りを把持しながら、搬送チェーン87と共に係止爪77を搬送方向に移動させることができ、また、その係止爪77が交換しようとする係止爪77であれば、脱着穴脱着穴80e、81eに係止爪77に設ける取付ピン87の取付孔77aが望むように移動させて両者の正確な位置合わせを行うことができる。
【0073】
なお、搬送ケース79の脱着穴脱着穴80e、81eを設ける箇所は、係止爪77を起立姿勢に保持するガイドから外れた箇所、例えば、前述の穀稈を搬送しない非作用側の終端箇所(係止爪77を起立姿勢に保持するガイド80b、81bの始端の直前箇所)にあって、その脱着穴脱着穴80e、81eの近傍に設ける開口Oも係止爪77がガイド80b、81bによって起立姿勢に保持されていない箇所となるから、仮に実施形態に示すように穂先搬送体25が搬送下流側が高くなるように傾斜配置されておらず、自らの自重によって係止爪77が開口Oから突出しないのであれば、これを手で引き出して開口Oから突出させて移動させてもよい。
【0074】
そして、このように交換しようとする係止爪77の取付孔77aが脱着穴脱着穴80e、81eの上方や下方に位置するように脱着穴脱着穴80e、81eから目視して係止爪77移動させた後、次に搬送チェーン87から係止爪77を取外すことになるが、その場合、図10に示すように脱着穴脱着穴80e、81eの一方(実施形態の場合は脱着穴(81e)にピンポンチ95の先端を差し込んでハンマー96等の工具を用いて取付ピン88を打撃して係止爪77を搬送チェーン87から取外す。
【0075】
なお、打撃した取付ピン88は脱着穴脱着穴80e、81eの他方(実施形態の場合は脱着穴80e)から通り抜けさせて回収する。また、取付ピン88を打撃すると係止爪77は脱着穴脱着穴80e、81e周辺の搬送板80a、81aの内面に当接して支持されるので係止爪77から取付ピン88を離脱させ易くなる。さらに、このように係止爪77の左右に膨出させた取付孔77aを備える基部77bの端面を搬送板80a、81aの内面に当接して支持されるべく、脱着穴脱着穴80e、81eの径は係止爪77の取付孔77aより勿論大径にするが、基部77bが通らない大きさとなす。
【0076】
そして、以上のように搬送チェーン87から係止爪77を開口Oを通して取外すと、次に、用意した新しい係止爪77を搬送チェーン87に開口Oを通して装着し、回収した取付ピン88を通り抜けさせた他方の脱着穴80eを通して係止爪77の取付孔77aに差し込んで、ハンマー96やピンポンチ95を用いて取付ピン88を打撃して係止爪77を搬送チェーン87に取付ける。
【0077】
なお、取付ピン88の長手方向の中程寄りにはピン88の外周から突出させる突起部88aが一体形成され、係る突起部88aが合成樹脂製の係止爪77の取付孔77aの外周部に喰い込んで係止爪を搬送チェーンに取付けることになるので、打撃する取付ピン88の長手方向を間違えないようにする必要がある。そして、実施形態の場合はピン88の突起部88aを係止爪77の上方側となる基部77bの取付孔77aの外周部に喰い込ませるので取付ピン88が自重で下方側に脱落することを防止することができる。
【0078】
また、取付ピン88の突起部88aは釘のように取付ピン88の頭部に形成することもでき、さらに、取付ピン88の径を係止爪77の取付孔77aの径より少々大きくして取付ピン88の両端を突起の代わりにする場合は、打撃する取付ピン88の長手方向は問わないものとすることができる。そして、以上の工程を繰り返して交換する必要のある係止爪77を次々に能率的に多数交換することができ、そのため、係止爪77の交換作業を、係止爪77の取外し空間等を新たに設けることもなく、単に係止爪77を搬送チェーン87に装着する取付ピン88を通り抜けさせたり打撃する工具95を通す2つの脱着穴脱着穴80e、81eを搬送板80a、81aに対向させて設けるだけで、係止爪77を簡単に交換することができる。
【0079】
以上、右穂先搬送体25における係止爪77の交換形態について説明したが、左穂先搬送体26における係止爪77の交換形態も右穂先搬送体25と同様の形態で係止爪77を交換することができる。但し、左穂先搬送体26は刈取部13の左側に設けるので、左サイドカバー94を同様に取外して係止爪77の交換作業を行う。そして、中穂先搬送体27における係止爪77の交換形態については、以下の通りである。
【0080】
図12に示すように中穂先搬送体27は、上下の搬送板97、98を互いに結合して構成する搬送ケース99を備え、この上下の搬送板97、98の内側には、係止爪77の基部77bを摺動させて起立姿勢に保持するガイドを、上下の搬送板97、98の穀稈の搬送作用側となる前面の内側に設け、このガイドは断面矩形状の細長いガイド97a、98aをケースの縁側に、また、その後方に板状のガイド97b、98bを固着して一体に設ける。
【0081】
また、上下の搬送板97、98内には、駆動スプロケット67と従動スプロケット100と従動輪101を設け、この内、従動輪101は上下の輪体間の溝部に搬送チェーン102を位置させて搬送チェーン102を巻き掛けるものであって、この従動輪101を回転自在に支持する取付軸103の両端寄りはテンションアーム104に係合させる。また、スプリング105はテンションアーム104を前方に向けて付勢するから、従動輪101は上搬送板97上に設けるプレート106の長穴の範囲で前方側に向けて常時付勢されて、搬送チェーン102の弛みは自動的にを無くすことができる。
【0082】
一方、駆動スプロケット67は、下搬送板98の搬送非作用側に膨出させた突出部に設けた穴から上方に突出させた中株元駆動軸66にワンウェイクラッチ68を介して取付ける。但し、従動スプロケット100と駆動スプロケット67と従動輪101に至る穀稈の搬送非作用側の上方及び下方には搬送板97、98が存在しない。そのため、係る箇所に係止爪77の基部77bを移動させて、その取付孔77aにピンポンチ95を差し込んでハンマー96によって取付ピン88に打撃を加えても搬送板97、98による支えがない状態では、係止爪77が搬送チェーン102と共に撓んだり回転してしまい、これにより打撃力が失われて取付ピン88を取外したり取付けることができない。
【0083】
そこで、例えば、係止爪77の左右の基部77bを支えて保持しながら取付ピン88を手動で抜き差しできる専用の工具106を用いれば、係止爪77の交換作業を行うことができると考えられる。しかし、このような専用の工具106を用意することはコストパーフォーマンスに欠けると共に、交換の際に相当な操作力を作業者に強いることになるから実用性に欠けるものとなる。
【0084】
一方、この場合、係止爪77の基部77bを駆動スプロケット67の近くに位置させれば、取付ピン88の打撃力によって移動しようとする係止爪77の基部77bを、搬送チェーン102を介して間接的に駆動スプロケット67によって受け止めることができ、これにより取付ピン88の取外しや取付けによる係止爪77の交換作業を成し遂げることができる。しかし、このように係止爪77の基部77bを駆動スプロケット67の近くに位置させても、取付ピン88の取外しや取付けが困難な場合は、右穂先搬送体25と同様に上下の搬送板97、98を搬送非作用側に延長させて2つの脱着穴を対向させて設けることになる。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明したが、同様に係止爪をチェーンに装着して穀稈を引き起こす引起装置17や排藁搬送装置36の穂先搬送体にワンウェイクラッチに代えて動力を個々に遮断するクラッチを設ければ、係止爪77の交換作業をチェーンを取外すことなく交換作業を行えるのであって、本発明を各所の搬送体に実用的に応用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 コンバイン
25 右穂先搬送体
26 左穂先搬送体
27 中穂先搬送体
74 ワンウェイクラッチ
77 係止爪
79 搬送ケース
80 上搬送板
80b ガイド
80c ガイド
80e 脱着穴
81 下搬送板
81b ガイド
81c ガイド
81e 脱着穴
87 搬送チェーン
88 取付ピン
95 ピンポンチ(工具)
O 開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12