(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】トランスアクスル
(51)【国際特許分類】
F16H 63/34 20060101AFI20240822BHJP
B60K 6/36 20071001ALI20240822BHJP
B60K 6/405 20071001ALI20240822BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20240822BHJP
B60T 1/06 20060101ALI20240822BHJP
B60K 17/04 20060101ALN20240822BHJP
【FI】
F16H63/34
B60K6/36 ZHV
B60K6/405
B60K6/46
B60T1/06 G
B60K17/04 G
(21)【出願番号】P 2020189134
(22)【出願日】2020-11-13
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】中川 光路
(72)【発明者】
【氏名】日下部 慧
(72)【発明者】
【氏名】藁科 秀平
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2011/141947(JP,A1)
【文献】特開2020-100272(JP,A)
【文献】特開2012-17825(JP,A)
【文献】特開2021-55762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 63/34
B60K 6/36
B60K 6/405
B60K 6/46
B60T 1/06
B60K 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーキングレバーの揺動に応じて移動するロッドを備えたパーキング装置と、
磁力を有するロータを備えた電動機と、を有し、
前記ロッドと前記電動機とが、連通する空間に配置されており、
前記ロッドが、前記電動機に向くように配置され、
前記ロータの磁力によって引きつけられるものであり、
前記ロッドの前記電動機に向く先端は、前記電動機のロータと対向していることを特徴とする、トランスアクスル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーキング装置を備えるトランスアクスルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パーキングギヤ、ポール、カム、ロッドなどを備えたパーキング装置が提供されている。例えば、下記特許文献1には、ハイブリッド車に搭載されるものであって、パーキングギヤ19及び断接機構20は、出力軸12の軸方向と直交する方向において互いに重なる位置に配置されることで、トランスアクスルの軸方向の寸法を拡大させることなく電費を向上させることができるトランスアクスルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、トランスアクスルのパーキング装置では、Pレンジとされた場合に物理的に駆動輪をロックする。そのため、走行中にPレンジに入った時には、駆動輪がロックされないようにパーキングギヤがポールを弾いてロックしない構造が取られている。また、パーキングギヤがポールを弾く際、ポールがカムに接触し、カムやロッドには大きな衝撃(荷重)が入って激しく弾かれる。より詳細に説明すると、走行中にPレンジとされると、パーキングギヤがポールを繰り返し弾き、ロッドが繰り返し叩き付けられて大きな衝撃(荷重)が生じる。
【0005】
そのため、従来のパーキング装置では、ロッドなどの部品の破損を防ぐため、あるいはロッドの位置を保持するため、強固な構造となるような設計が必要とされていた。そのため、衝撃が入ったとしてもロッドの位置を設定通りの位置に維持するため、サポートで位置を規定したり、パーキングレバーの穴で位置を規定したりしている。その一方で、衝撃が入ったとしてもパーキング装置の不具合を抑制して信頼性を高めたい、あるいはパーキング装置を構成する部品を軽量化したいといった要望は高い。
【0006】
そこで本発明は、パーキング装置の信頼性を高め、部品の軽量化を実現することができるトランスアクスルの提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、本発明の発明者らは、走行中にPレンジとされた場合に、ロッドの挙動を抑制することでパーキング装置の信頼性を向上させることについて検討した。その結果、走行中にPレンジとされた場合に、電動機の磁力を積極的に活用してポールに弾かれたカムやロッドの動きを抑制すれば、従来と比較してパーキング装置の信頼性を向上させ、ロッドなどの部品の軽量化に貢献することができるとの知見に至った。
【0008】
より詳細に説明すると、ハイブリッド車やEV車の場合、動力源や発電のために電動機(モータ)を搭載しており、モータのロータには永久磁石がはめこまれ、磁力を持っている。また、従来のトランスアクスルでは、コントロール部品(パーキング装置を構成する部品)と電動機(モータ)とは、ケース体の中で別々の部屋(ギヤ室とモータ室)に配置する場合が多く、これらの部屋はケース体に設けられた壁(区画壁)で仕切られている。
【0009】
本発明の発明者らは、ロータの磁力がロッドに及ぶような構成としてロータの磁力を積極的に利用し、ロータの磁力によりコントロールロッドを引きつけることで、パーキングギヤに弾かれたロッドの挙動(動き)を抑制してポールに弾かれた際のロッド等の暴れるような動きを小さくすることができるとの知見に至った。
【0010】
具体的には、コントロール部品と電動機(モータ)とをケース体の中で同じ部屋に配置する、あるいは二つの部屋を区画する壁に連通する部分(貫通孔など)を設けることで、アルミケース(ケース体)の壁でモータ(ロータ)の磁力を遮ることなくコントロール部品に伝達することができる。また、ロッドがモータに向くように配置することで、モータの磁力によりロッドが引っ張られる。
【0011】
これにより、走行中にPレンジとされた場合、ロッドがロータの磁力により引きつけられて、ポールに弾かれた際の動きを小さくすることができる。その結果、パーキング装置の不具合を抑制してパーキング装置の設計信頼性を高め、部品(サポート、レバー、ロッド等)の軽量化を実現することができる。
【0012】
(1)上述の知見に基づき提供される本発明のトランスアクスルは、ロッドを備えたパーキング装置と、電動機と、を有し、前記ロッドと前記電動機とが、連通する空間に配置されており、前記ロッドが、前記電動機に向くように配置されていることを特徴とする。
【0013】
本発明のトランスアクスルによれば、モータの磁力によりロッドが引っ張られ、パーキングギヤによりポールが弾かれる際のロッドの衝撃を抑えることができる。その結果、パーキング装置の信頼性を高めつつ、部品の軽量化を実現することができる。
【0014】
(2)本発明のトランスアクスルは、前記電動機及び前記パーキング装置が収容されるケース体を備え、前記ケース体の内部には、前記電動機が収容されるモータ室と、前記パーキング装置が収容されるギヤ室とが形成されており、前記モータ室と前記ギヤ室とが、区画壁により区画されており、前記区画壁には、前記ロッドと前記電動機との間を連通させる連通部が形成されているものであるとよい。
【0015】
(3)本発明のトランスアクスルは、前記電動機及び前記パーキング装置が収容されるケース体を備え、前記ケース体の内部には、一又は複数の部屋が形成されており、前記ロッドの少なくとも前記電動機と対向する端部と前記電動機とが、同一の前記部屋に配置されているものであるとよい。
【0016】
(4)本発明のトランスアクスルの前記ロッドは、長手方向が前記電動機の軸線に沿うように配置されており、かつ、前記電動機の軸線から径方向に外れた位置に配置されているものであるとよい。
【0017】
上述の構成によれば、走行中にPレンジとされた場合にロッドが暴れるように動く方向と、電動機(ロータ)がロッドを引きつける方向とを一致させることができる。これにより、パーキングギヤによりポールが弾かれる際のロッドの衝撃をより効率的に抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、パーキング装置の信頼性を高め、部品の軽量化を実現することができるトランスアクスルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係るトランスアクスルの要部を示す平面図である。
【
図2】
図1のトランスアクスルにおいてパーキング装置の配置を示す側面図である。
【
図3】
図1のトランスアクスルのパーキング装置を示す斜視図である。
【
図4】
図3のパーキング装置のレンジ位置に対応するロッドの位置を示す図である。
【
図5】
図3のパーキング装置のロッドの位置に対応するポールの姿勢を示す図である。
【
図6】
図1のトランスアクスルにおいて走行中にPレンジとされた場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係るトランスアクスル10について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
トランスアクスル10は、車両Vに設けられている。また、車両Vは、図示を省略したエンジンやバッテリなどを備えている。車両Vは、いわゆるシリーズ式ハイブリッド車とされている。具体的には、車両Vは、エンジンを動力源として後述する第一電動機14を駆動させ、第一電動機14の駆動により後述する第二電動機を駆動させて走行可能とされている。車両Vは、エンジンを停止させてバッテリを動力源とし、第二電動機を駆動させて走行(EV走行)することができる。
【0022】
なお、本発明の車両は、シリーズ式ハイブリッド車に限定されず、パラレル式ハイブリッド車、AT車、電気自動車などに好適に採用することができる。
【0023】
なお、以下の説明では、トランスアクスル10を車両Vに搭載した状態における上下方向を、単に「上下方向H」と記載して説明する。また、上下方向Hにおいて、上方を単に「上方Up」と、下方を単に「下方Lw」と記載して説明する。
【0024】
また、以下の説明では、電動機12の軸線Lが延びる方向を、「軸線方向X」と記載して説明する場合がある。
【0025】
図1に示すとおり、トランスアクスル10は、ケース体30、電動機12、デファレンシャル機構、パーキング装置40、及びシフト装置を備えている。また、トランスアクスル10には、二つの電動機12(第一電動機14及び第二電動機)が設けられている。なお、第二電動機、デファレンシャル機構、及びシフト装置は図示を省略している。
【0026】
トランスアクスル10には、第二電動機から動力が伝達されて回転する動力伝達軸20が設けられており、動力伝達軸20には、後で説明するパーキングギヤ41が取り付けられている(
図2参照)。
【0027】
第一電動機14(MG1)は、モータジェネレータからなる。第一電動機14には、インバータなどを内蔵する発電機コントローラが接続されている。第一電動機14から出力される交流電力は、発電機コントローラにより直流電力に変換されて、その直流電力が電池に供給されることにより、電池が充電される。第一電動機14は、エンジン(図示を省略)の駆動により回転動力が伝達されて駆動する。
【0028】
第二電動機(MG2)は、モータジェネレータからなる。第二電動機には、インバータなどを内蔵するモータコントローラが接続されている。モータコントローラには、電池が接続されている。電池から出力される直流電力がモータコントローラに供給され、その直流電力がモータコントローラにより交流電力に変換されて、交流電力が第二電動機に供給されることにより、第二電動機が駆動される。
【0029】
なお、以下の説明では、第一電動機14(MG1)及び第二電動機(MG2)を総称して、単に「電動機12」と記載して説明する場合がある。
【0030】
電動機12は、ロータ17及びステータ18を備えている。ロータ17は永久磁石を備えており、磁力を発生させる。また、ロータ17の近傍(ロータ17からの離間距離が小さい位置)では、鉄素材の部材(ロッド46)がロータ17の磁力により引きつけられる。
【0031】
電動機12は、軸線Lが横向きとなるように配置されている。すなわち、電動機12は、略円柱状をなす外観において、円柱の底面に相当する二つの面が側方となるように配置されている。なお、以下の説明では、電動機12の軸線方向Xに配置される面(略円柱をなす電動機12の二つの底面)を、単に「側方面F」と記載して説明する場合がある。また、側方面Fを含め、電動機12の側方を、単に「側方」と記載して説明する場合がある。
【0032】
デファレンシャル機構は、左右の駆動輪を駆動する左右一対のドライブシャフト(図示を省略)の間の差動を許容するとともに、これら左右一対のドライブシャフトに回転動力を伝達するように構成されている。
【0033】
第二電動機から動力伝達軸20に伝達された動力は、デファレンシャル機構を介して駆動輪(図示を省略)に伝達される。これにより、駆動輪が回転し、車両Vが走行する。また、車両Vは、パーキングギヤ41がロックされると、駆動輪がロックされる。
【0034】
ケース体30は、第一電動機14や第二電動機等を収容するための収容体である。ケース体30は、アルミニウムにより構成されている。
図1に示すとおり、ケース体30には、区画壁34、サポート取付部36、及び連通部38が設けられている。
【0035】
なお、本実施形態のケース体30は、三つの構成部材(ケース30a、ハウジング30b、及び図示を省略したリアカバー)によりひとつの収容体をなしている。なお、本実施形態では、ケース体30を三つの構成部材により構成されるものとした例を示したが、二つ、あるいは四つ以上の構成体により形成されるものであってもよい。
【0036】
ケース体30の内部空間は、区画壁34によりモータ室31とギヤ室32とに仕切られている。
図1に示すとおり、モータ室31には、電動機12が収容されている。ギヤ室32には、パーキング装置40を構成する部品(ポール42、ロッド46等)や、デファレンシャル機構を構成するギヤ等が収容されている。
【0037】
図1に示すとおり、サポート取付部36及び連通部38は、区画壁34に形成されている。サポート取付部36は、区画壁34からギヤ室32側に突出するように形成された部分である。サポート取付部36には、パーキング装置40のサポート45が取り付けられる。
【0038】
連通部38は、区画壁34の貫通孔として形成されている。より具体的には、連通部38は、モータ室31とギヤ室32とを連通させる貫通孔として形成されている。すなわち、連通部38は、ロッド46と電動機12との間を連通させるように形成されている。
図1に示すとおり、本実施形態の連通部38は、サポート取付部36に取り囲まれる部分に形成された貫通孔とされている。
【0039】
シフト装置(図示を省略)は、図示を省略したシフトレバーを備えており、シフトレバーに対する運転者の操作により、複数のレンジ位置から一のレンジ位置を選択可能とされている。シフト装置には、例えば、PレンジやDレンジ、Bレンジ、Rレンジ等の複数のシフト位置が設けられている。
【0040】
パーキング装置40は、車両Vの駆動輪をロックするためのものである。
図3に示すとおり、パーキング装置40は、パーキングギヤ41、ポール42、ピン43、トーションスプリング44、サポート45、ロッド46、カム47、アウターレバー48、コントロールシャフト49、パーキングレバー50、コンプレッションスプリング52等の構成部材(コントロール部品)を備えている。
【0041】
パーキング装置40は、運転者の操作に基づいて車両Vの駆動輪をロックする。より具体的には、パーキング装置40は、運転者がPレンジとする操作(パーキング操作)を行うことに基づき、動力伝達軸20の回転を制限して駆動輪をロックする。以下、パーキング装置40を構成する各部品について説明する。
【0042】
ポール42は、パーキングギヤ41をロックするための部材である。
図5に示すとおり、ポール42は、ピン43を揺動支点として上下方向Hに揺動可能に設けられている。また、
図3に示すとおり、ポール42は、一端側がカム47と接触可能な位置に配置されており、他端がパーキングギヤ41と嵌合可能な位置に配置されている。なお、以下の説明では、ポール42のカム47側の端部を「基端42a」と、パーキングギヤ41側の端部を「先端42b」と記載して説明する場合がある。
【0043】
ロッド46は、シフト位置に応じてストロークするように変位可能な棒状の部材である。ロッド46は、パーキングレバー50の揺動に応じて、ロッド46の長手方向に沿って往来するように移動する。ロッド46は金属素材により構成されている。より具体的には、ロッド46は、鉄製の部材とされている。
図1及び
図3に示すとおり、ロッド46は、略L字状の棒状部材であり、一端がパーキングレバー50に対して連結され、自由端とされた他端が電動機12と向かい合うように配置されている。
【0044】
なお、以下の説明では、ロッド46の直線状の部分(ストロークするように移動する部分)において、パーキングレバー50側の端部を基端46aと、電動機12側の端部を先端46bと記載して説明する場合がある。また、ロッド46の変位方向を、単に「進退方向A」と記載して説明する場合がある。さらに、進退方向Aのうち、電動機12に向かう方向を「近接方向A1」と記載し、電動機12と離間する方向を「離間方向A2」と記載して説明する場合がある。
【0045】
図6に示すとおり、ロッド46は、電動機12の側方面F(側方)と対向する位置に配置されており、かつ先端46bが電動機12に向くように配置されている。また、ロッド46は、長手方向が電動機12の軸線Lに沿うように配置されており、かつ、電動機12の軸線Lから径方向に外れた位置(軸線Lから上方Upに外れた位置)に配置されている。
【0046】
さらに、
図1に示すとおり、ロッド46と電動機12との間には、連通部38が形成されている。すなわち、ロッド46と電動機12とは、連通する空間に配置されている。また、ロッド46は、先端46bがサポート取付部36の内側となるように、連通部38の近傍に配置されている。さらに、連通部38(貫通孔)の先には電動機12が配置されている。そのため、ロッド46と電動機12(ロータ17)との離間距離が所定値よりも小さくなると、鉄素材であるロッド46がロータ17の磁力により引きつけられることとなる。
【0047】
カム47は、コマ状の部材であり、ロッド46に取り付けられている。カム47は、ロッド46と一体的に移動して、ポール42の基端42aに接触する位置と、ポール42の基端42aから離間する位置とに変位する(
図5参照)。
【0048】
サポート45は、ロッド46をガイドするための部材である。上述のとおり、サポート45は、区画壁34に形成されたサポート取付部36に取り付けられており、ロッド46の進退動作をガイドする。
【0049】
パーキング装置40では、運転者のシフト操作に連動してコントロールシャフト49が回転し、コントロールシャフト49に取り付けられたパーキングレバー50が揺動する。また、パーキングレバー50の揺動により、ロッド46及びカム47が電動機12に向けて移動する(
図4参照)。
【0050】
シフト位置に応じたロッド46の位置について、
図4を参照しつつより詳細に説明する。
図4(a)に示すとおり、Bレンジの場合には、ロッド46は、先端46bと電動機12との離間距離が大きい距離D1となる位置(位置P1)に配置される。また、カム47は、ポール42と接触しない位置となる。
【0051】
また、
図5(a-1)に示すとおり、ポール42は、トーションスプリング44の付勢力により先端42bが持ち上げられた状態で維持される。そのため、Bレンジの場合には、ポール42の先端42bがパーキングギヤ41と噛み合わない位置で維持される。
【0052】
図4(b)に示すとおり、Rレンジの場合には、ロッド46は、先端46bがと電動機12との離間距離が距離D2となる位置(位置P2)に配置される。また、カム47は、ポール42と接触しない位置となる。
【0053】
また、
図5(a-1)に示すとおり、ポール42は、トーションスプリング44の付勢力により先端42bが持ち上げられた状態で維持される。そのため、Bレンジの場合には、ポール42の先端42bがパーキングギヤ41と噛み合わない位置で維持される。
【0054】
図4(c)に示すとおり、Pレンジの場合には、ロッド46は、先端46bと電動機12との離間距離が小さい距離D3となる位置(位置P3)に配置される。また、カム47は、ポール42と接触する位置となる。
【0055】
図5(b-2)に示すとおり、ポール42は、基端42aがカム47に押されてカム47に乗り上げ、トーションスプリング44の付勢力に逆らって上方Upに押し上げられる。また、
図5(b-1)に示すとおり、ポール42は、ピン43を支点として揺動して先端42bが下方Lwに押し下げられ、パーキングギヤ41と噛み合う。これにより、車両Vの駆動輪がロックされる。
【0056】
このように、トランスアクスル10では、Bレンジの場合にはロッド46の先端46bが電動機12から遠い位置(位置P1)となり、Pレンジの場合にはロッド46の先端46bが電動機12から近い位置(位置P3)となる。なお、ロッド46が位置P1にある場合(離間距離D1の場合)には、ロッド46に及ぶロータ17の磁力が弱くなる。その一方、ロッド46が位置P3にある場合(離間距離D3の場合)には、ロッド46に及ぶロータ17の磁力が大きくなる。
【0057】
次いで、走行中にPレンジとされた場合のロッド46の挙動について説明する。
【0058】
車両Vの走行中にPレンジとされると、動力伝達軸20と同期して回転するパーキングギヤ41の回転により、ポール42の先端42bが弾かれながら揺動を繰り返す。より具体的に説明すると、ポール42は基端42aがカム47に押し上げられるため、先端42bがパーキングギヤ41と噛み合う姿勢となる一方、先端42bはパーキングギヤ41の回転によりパーキングギヤ41の歯に弾かれる。そのため、ポール42は駆動輪が一回転する間にパーキングギヤ41の歯の数の分(本実施形態では六つ)だけ弾かれて揺動を繰り返す。
【0059】
また、ポール42の揺動する動きにより、カム47がポール42の基端42aに押されて、カム47及びロッド46が下方Lwに振れつつ進退動作を繰り返す。すなわち、ロッド46は電動機12に近い位置(位置P3付近)に配置されている状態で、先端46bが軸線方向に往来しつつ、下方Lwに振れるような動きをとる。
【0060】
ここで、上述のとおりトランスアクスル10には、モータ室31とギヤ室32とを連通する連通部38が形成されている。また、連通部38は、ロッド46の先端46bと電動機12との間に形成されている。さらに、上述のとおり、Pレンジの場合には、ロッド46と電動機12との距離が小さくなり(距離D3)、ロッド46に及ぶロータ17の磁力が大きくなる。すなわち、トランスアクスル10では、Pレンジの場合(パーキングへのシフト時)、ロッド46が電動機12に近づくように変位する。そのため、Pレンジの場合には、ロッド46に及ぶ電動機12の磁力が大きくなり、ロッド46を引き付ける力が大きくなる。そのため、ロッド46は、電動機12(ロータ17)の磁力により電動機12側に(軸線方向Xに)引きつけられる。これにより、ロッド46が暴れるような動きを抑制することができる。
【0061】
このように、トランスアクスル10では、電動機12(ロータ17)の磁力を積極的に利用して、パーキングギヤ41によりポール42が弾かれる際のロッド46の衝撃(変位量や動き)を抑えることができる。その結果、パーキング装置40の信頼性を高めつつ、部品の軽量化を実現することができる。
【0062】
また、ロッド46は、走行中にPレンジとされた場合において、先端46bが下方Lw側に振れるように動く。さらに、ロッド46は、電動機12の軸線Lから径方向に外れた位置(本実施形態では上方Upに外れた位置)に配置されている。
【0063】
ここで、電動機12では、回転中(走行中)に磁束線が一定の方向(正回転や逆回転など回転方向に応じた方向)に向くような磁界が形成される、本実施形態では、車両Vの走行中には、ロッド46を下方Lwに引きつけるような磁界が形成される。すなわち、トランスアクスル10では、ロッド46が暴れる動きを取る際の動く方向(下方Lw)と、ロータ17の磁束線とが概ね一致するような配置とされている。そのため、ロッド46は、弾かれて動く際にロータ17の磁束線に沿うように下方Lwに引きつけられる(
図6中の矢印B参照)。これにより、より効果的にロッド46の動きを抑制することができる。
【0064】
上述のとおり、トランスアクスル10では、走行中にPレンジとされた場合にロッド46が暴れるように動く方向と、電動機12(ロータ17)がロッド46を引きつける方向とを一致させている。これにより、パーキングギヤ41によりポール42が弾かれる際のロッド46の衝撃をより効率的に抑えることができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態に係るトランスアクスル10について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。
【0066】
例えば、上述の実施形態に係るトランスアクスル10では、電動機12をモータ室31に配置し、ロッド46等のパーキング装置40をギヤ室32に配置する構成、すなわち、電動機12とロッド46等のパーキング装置40とを、別の部屋に配置する構成としたが、本発明は上述の実施形態に限定されない。
【0067】
具体的には、本発明のトランスアクスルは、電動機とロッドとを同じ部屋(モータ室など)に配置して、電動機とロッドとが連通する空間に配置されるものとしてもよい。
【0068】
また、本発明のトランスアクスルは、電動機とロッドとを別の部屋に配置させつつ、これらの部屋を区画する部材を設けないもの(区画壁がないもの)として、電動機とロッドとが連通する空間に配置されるものとしてもよい。
【0069】
また、上述の実施形態に係るトランスアクスル10では、ロッド46が第一電動機14に対向するように配置されるものとした例を示したが、本発明のトランスアクスルは上述の実施形態に限定されない。例えば、本発明のトランスアクスルは、ロッドが第二電動機に対向するように配置されるものとしてもよい。
【0070】
さらに、上述の実施形態に係るトランスアクスル10では、ロッド46が電動機12の軸線Lから上方Upに外れた位置に配置されるものとした例を示したが、本発明のトランスアクスルは本実施形態に限定されない。例えば、本発明のトランスアクスルは、ロッドが電動機の軸線から下方、あるいは横方向に外れた位置に設けられたものであってもよい。また、ロッドは、電動機の軸線と同軸上に配置されるものであってもよい。
【0071】
さらに、上述の実施形態に係るトランスアクスル10では、ロッド46を電動機12の側方面Fに向くように配置させた例を示したが、本発明のトランスアクスルは上述の実施形態に限定されない。すなわち、本発明のトランスアクスルは、電動機の磁力が及ぶ範囲にロッドが到達可能なものであればよく、電動機の周面(側方や上方、あるいは下方)に向くようにロッドを配置してもよい。
【0072】
ロッドの位置は、パーキング装置が設けられる位置や電動機の配置などに応じて、適宜選択可能である。
【0073】
また、上述の実施形態では、連通部38を電動機12とロッド46との間に設けた例を示したが、本発明は本実施形態に限定されない。具体的に説明すると、本発明のトランスアクスルでは、連通部は電動機の磁力が及ぶ範囲に形成されたものであればよい。例えば、本発明のトランスアクスルは、区画壁において電動機と対向する位置など、電動機とロッドとの間から外れた位置(オフセットする位置)に設けられたものであってもよい。すなわち、本発明のトランスアクスルは、電動機による磁力の影響が及ぶ範囲であれば、いかなる位置に連通部が設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、電動機を備える車両のトランスアクスルとして、好適に採用することができる。
【符号の説明】
【0075】
10 トランスアクスル
12 電動機
14 第一電動機(電動機)
30 ケース体
31 モータ室
32 ギヤ室
34 区画壁
38 連通部
40 パーキング装置
42 ポール
46 ロッド
X 軸線方向