(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/42 20060101AFI20240822BHJP
H01Q 1/40 20060101ALI20240822BHJP
H05K 1/03 20060101ALN20240822BHJP
【FI】
H01Q1/42
H01Q1/40
H05K1/03 610D
(21)【出願番号】P 2020212440
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(74)【代理人】
【識別番号】100182718
【氏名又は名称】木崎 誠司
(72)【発明者】
【氏名】加賀 敦史
(72)【発明者】
【氏名】岩田 宗之
(72)【発明者】
【氏名】森 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】山下 大輔
(72)【発明者】
【氏名】杉本 康宏
(72)【発明者】
【氏名】市川 順一
(72)【発明者】
【氏名】杉山 裕一
(72)【発明者】
【氏名】井場 政宏
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-238103(JP,A)
【文献】特開2006-311497(JP,A)
【文献】国際公開第2019/116718(WO,A1)
【文献】特開2015-213285(JP,A)
【文献】特開2017-152848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/42
H01Q 1/40
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ装置であって、
セラミックにより形成され、アンテナ素子が内部に埋設されたアンテナ基板と、
前記アンテナ基板の少なくとも一部を収容
するレドーム部であって、
平板形状であり開口が形成された
平板部を有するレドーム部と、
を備え、
前記アンテナ基板は、
平板形状であり、
前記レドーム部の前記開口を塞ぐように配置されており、前記アンテナ基板のうち前記開口から露出している表面が電波放射面として機能
し、
前記アンテナ基板の表面の一部と、前記平板部の内側面の一部とを当接させた状態で、前記レドーム部に固定され、
前記電波放射面は、前記平板部の外側面と同一面上に位置し、
前記アンテナ基板中の前記アンテナ素子は、前記平板部の厚さ方向において、前記平板部の外側面と内側面との間に対応する位置に配置されていることを特徴とする、アンテナ装置。
【請求項2】
アンテナ装置であって、
セラミックにより形成され、アンテナ素子が内部に埋設されたアンテナ基板と、
前記アンテナ基板の少なくとも一部を収容し、開口が形成されたレドーム部と、
を備え、
前記アンテナ基板は、前記レドーム部の前記開口を塞ぐように配置されており、前記アンテナ基板のうち前記開口から露出している表面が電波放射面として機能し、
前記電波放射面と、前記アンテナ基板中の前記アンテナ素子とは、いずれも、前記レドーム部の外側に位置していることを特徴とする、アンテナ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のアンテナ装置であって、
前記アンテナ基板は、平板形状であり、
前記レドーム部は、平板形状であり前記開口が形成された平板部を有しており、
前記アンテナ基板は、前記アンテナ基板の表面の一部と、前記平板部の内側面の一部とを当接させた状態で、前記レドーム部に固定されていることを特徴とする、アンテナ装置。
【請求項4】
請求項1から請求項
3までのいずれか一項に記載のアンテナ装置であって、
複数の前記アンテナ基板を備え、
前記レドーム部には、格子状に配列された複数の前記開口が形成されており、
各前記アンテナ基板は、前記複数の開口をそれぞれ塞ぐように、格子状に配列されていることを特徴とする、アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナ素子を備えるアンテナ装置が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。特許文献1に記載されたアンテナ装置では、アンテナ素子が、FRP(Fiber Reinforced Plastics)やPVC(polyvinyl chloride)で形成されたレドーム(radome)によって覆われている。特許文献2には、自動車などの移動体に搭載されるアンテナ装置が記載されている。このアンテナ装置では、アンテナ基板内にアンテナ素子が埋設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平05-145317号公報
【文献】特開平07-202548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたアンテナ装置のように、アンテナ素子がレドームに覆われていると、アンテナ素子から放射された電波がレドームを透過する際に電波が減衰してしまう。そのため、レドームの材料は、レドームを透過する電波の周波数に応じて選択されるが、依然として、レドームによる電波の減衰を完全に抑制することは難しいという課題があった。特に、使用周波数が広帯域である場合や、広スキャン角をカバーするような場合には、レドームによる減衰がさらに大きくなる。
【0005】
特許文献2に記載のアンテナ装置を、外部環境から保護する目的でレドームに収容した場合、特許文献1と同様に、アンテナ素子から放射された電波がレドームを透過する際に電波が減衰するという課題がある。また、特許文献2に記載のアンテナ装置が、レドームに覆われずに移動体の内部に配置された場合であっても同様に、アンテナ装置を覆う移動体の部材によって電波が減衰するという課題がある。一方で、特許文献2に記載のアンテナ装置において、レドーム等のアンテナ装置を覆う部材を用いない場合には、アンテナ装置が外部環境から保護されないため、アンテナ装置の用途が限定される。そのため、特許文献1,2に記載されたアンテナ装置には、ミリ波等の高周波領域に対応する通信機器(例えば、携帯端末や基地局)に適用することは難しいという課題がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、アンテナ素子から放射される電波の減衰を抑制した上で、外部環境に対しての耐性を有するアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。アンテナ装置であって、セラミックにより形成され、アンテナ素子が内部に埋設されたアンテナ基板と、前記アンテナ基板の少なくとも一部を収容するレドーム部であって、平板形状であり開口が形成された平板部を有するレドーム部と、を備え、前記アンテナ基板は、平板形状であり、前記レドーム部の前記開口を塞ぐように配置されており、前記アンテナ基板のうち前記開口から露出している表面が電波放射面として機能し、前記アンテナ基板の表面の一部と、前記平板部の内側面の一部とを当接させた状態で、前記レドーム部に固定され、前記電波放射面は、前記平板部の外側面と同一面上に位置し、前記アンテナ基板中の前記アンテナ素子は、前記平板部の厚さ方向において、前記平板部の外側面と内側面との間に対応する位置に配置されていることを特徴とする、アンテナ装置。そのほか、本発明は、以下の形態としても実現可能である。
【0008】
(1)本発明の一形態によれば、アンテナ装置が提供される。このアンテナ装置は、セラミックにより形成され、アンテナ素子が内部に埋設されたアンテナ基板と、前記アンテナ基板の少なくとも一部を収容し、開口が形成されたレドーム部と、を備え、前記アンテナ基板は、前記レドーム部の前記開口を塞ぐように配置されており、前記アンテナ基板のうち前記開口から露出している表面が電波放射面として機能する。
【0009】
この構成によれば、アンテナ基板における電波放射面がレドーム部により覆われていないため、アンテナ素子から放射される電波がレドーム部により減衰されなくても済む。さらに、アンテナ基板が耐候性を有するセラミックにより形成されているため、アンテナ装置全体として外部環境に対する耐性を有する。そのため、本構成のアンテナ装置では、耐候性および電波伝播効率が向上する。また、レドーム部が電波放射面を覆っていないため、アンテナ素子から放射される電波は減衰しない。これにより、電波の減衰が考慮されてレドーム部の材質や形状が設計される必要がないため、レドーム部の設計自由度が向上する。
【0010】
(2)上記態様のアンテナ装置において、前記アンテナ基板は、平板形状であり、前記レドーム部は、平板形状であり前記開口が形成された平板部を有しており、前記アンテナ基板は、前記アンテナ基板の表面の一部と、前記平板部の内側面の一部とを当接させた状態で、前記レドーム部に固定されていてもよい。
この構成によれば、アンテナ基板の表面の一部と、アンテナ基板における平板部の内側面との一部とが当接しているため、平板状のアンテナ基板は、開口を塞ぐために開口よりも大きい面積を有していればよい。これにより、アンテナ基板は、開口よりも大きい平板状に加工されるだけでよく、アンテナ装置を簡単に製造できる。
【0011】
(3)上記態様のアンテナ装置において、前記電波放射面は、前記平板部の外側面と同一面上に位置し、前記アンテナ基板中の前記アンテナ素子は、前記平板部の厚さ方向において、前記平板部の外側面と内側面との間に対応する位置に配置されていてもよい。
この構成によれば、アンテナ素子は、平板部の内側面よりも外側のアンテナ基板中に埋設されている。そのため、アンテナ素子が平板部の内側面よりも内側のアンテナ基板中に埋設されている場合と比較して、アンテナ基板を形成するセラミックによる電波の減衰を抑制できる。
【0012】
(4)上記態様のアンテナ装置において、前記電波放射面と、前記アンテナ基板中の前記アンテナ素子とは、いずれも、前記レドーム部の外側に位置していてもよい。
この構成によれば、アンテナ素子は、レドーム部の外側に位置するアンテナ基板中に埋設されているため、レドーム部の内側に位置するアンテナ基板中に埋設されている場合と比較して、アンテナ素子から放射される電波に対するレドーム部による減衰が抑制される。この結果、本構成のアンテナ素子は、レドーム部によって減衰されていない電波をより広い角度で放射できる。
【0013】
(5)上記態様のアンテナ装置において、複数の前記アンテナ基板を備え、前記レドーム部には、格子状に配列された複数の前記開口が形成されており、各前記アンテナ基板は、前記複数の開口をそれぞれ塞ぐように、格子状に配列されていてもよい。
この構成によれば、複数のアンテナ基板から放射された電波が合成されて、アンテナ装置がより強度の高い合成波を放射できる。
【0014】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、アンテナ装置、通信機器、およびこれらを備える部品または装置等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態としてのアンテナ装置の概略断面図である。
【
図2】第1実施形態のアンテナ装置の概略上面図である。
【
図3】第2実施形態のアンテナ装置の概略断面図である。
【
図4】第3実施形態のアンテナ装置の概略断面図である。
【
図5】第4実施形態のアンテナ装置の概略断面図である。
【
図6】第5実施形態のアンテナ装置の概略断面図である。
【
図7】第6実施形態のアンテナ装置の概略断面図である。
【
図8】第6実施形態のアンテナ装置の概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態としてのアンテナ装置100の概略断面図である。本実施形態のアンテナ装置100は、携帯端末および基地局等の通信分野や、工場、オフィス、医療、インフラ、プラント、および交通信号機等のローカル5G(5th Generation)を含めた5G通信、およびBeyond5G/6G通信の分野に用いられる。本実施形態のアンテナ装置100では、アンテナ素子11が埋設されたアンテナ基板10の一部がレドーム部20に覆われずに露出しているため、アンテナ素子11が放射する電波RWに対するレドーム部20による減衰が抑制される。
【0017】
図1に示されるように、アンテナ装置100は、アンテナ素子11が内部に埋設されているアンテナ基板10と、はんだSLによりアンテナ基板10に装着されているIC(Integrated Circuit:集積回路)40と、IC40を覆うシールド70と、はんだSLによりアンテナ基板10が接着されているプリント基板30と、プリント基板30に接続しているコネクタ60と、コネクタ60を介してプリント基板30に接続しているケーブル50と、プリント基板30を覆った状態で固定しているレドーム部20と、を備えている。
【0018】
図2は、第1実施形態のアンテナ装置100の概略上面図である。
図1および
図2に示されるように、レドーム部20は、内部に空間SP1が形成された箱状の筐体のうち、一部に開口24Aが形成された形状を有している。
図1に示されるように、レドーム部20は、封止材21を介してアンテナ基板10により開口24Aが塞がれているレドーム上部24と、封止材22を介してレドーム上部24に接続されているレドーム下部25と、を備えている。レドーム上部24のうち、開口24Aが形成された部分は、平板形状を有している。換言すると、レドーム上部24は、平板形状であり開口24Aが形成された平板部を有している。レドーム上部24の一部には、ケーブル50が挿入されるための開口部が封止材51により封止されている。本実施系形態におけるレドーム上部24およびレドーム下部25は、所定の厚さを有するPC(poly carbonate:ポリカーボネート)により形成されている。
【0019】
なお、本実施形態では、
図1および
図2に示されている直交座標系CSが設定されている。直交座標系CSでは、
図2に示されるように、開口24Aが形成された矩形状のレドーム上部24の平板部において、直交する二辺のそれぞれに対応するX軸とY軸とが定義され、X軸とY軸とのそれぞれに直交する方向としてZ軸方向が定義されている。本実施形態では、Z軸正方向側を上側、Z軸負方向側を下側として、各部を説明する。
【0020】
アンテナ基板10は、アルミナ(Al
2O
3)等のセラミックにより形成されている。
図1に示されるように、アンテナ基板10は平板形状を有している。アンテナ基板10は、箱状のレドーム部20内に収容されている。アンテナ基板10の内部には、複数のアンテナ素子11が埋設されている。アンテナ素子11は、所定の制御を受け付けることにより、電波RWを放射する。この結果、
図1および
図2に示されるように、アンテナ基板10のうち、レドーム上部24に形成された開口24Aから露出している露出表面10Sが、電波RWを放射する電波放射面として機能する。なお、露出表面10Sは、アンテナ基板10のZ軸正方向側の上面のうち、露出している一部の面をいう。
【0021】
図1に示されるように、アンテナ基板10の下側の面の一部に、IC40と複数の受動部品31とが装着されている。IC40と、アンテナ基板10に搭載された複数の受動部品31とは、シールド70により覆われている。本実施形態の受動部品とは、例えば、MLCC(Multi-layer Ceramic Capacitor:積層セラミックチップコンデンサ)、フィルタ(SAWフィルタ、BAWフィルタ)、スイッチモジュール、およびデュプレクサである。シールド70は、金属スパッタによりIC40と複数の受動部品31とを覆う様に形成されたモールド樹脂である。
【0022】
プリント基板30の上面(Z軸正方向側の面)は、はんだSLを介してアンテナ基板10の下面に接合されている。プリント基板30には、空間SP2が形成されている。本実施形態の空間SP2には、IC40の一部とシールド70の一部とが挿入されている。なお、シールド70の外表面とプリント基板30との間には空間があり、シールド70とプリント基板30とは接触していない。プリント基板30の下面には、複数の受動部品31が装着されている。プリント基板30の上面の一部に接続しているコネクタ60は、ケーブル50に装着されている。プリント基板30は、コネクタ60を介してケーブル50から、電波RWの放射を制御する制御信号および電力を供給される。
【0023】
プリント基板30は、XY平面に沿う端部付近において、複数のボルト23によりレドーム上部24に固定されている。ボルト23は、プリント基板30に形成された貫通孔に挿入されて、レドーム上部24の内側面24Iに形成されたねじ部に嵌合することにより、プリント基板30をレドーム上部24に固定している。この結果、プリント基板30に固定されているアンテナ基板10のうち、露出表面10SがXY平面に沿ってレドーム部20内に延長し、かつ、レドーム上部24の内側面24Iに対向している面は、内側面24Iに当接した状態で、レドーム上部24に固定されている。そのため、アンテナ基板10は、レドーム上部24の開口24Aを塞ぐように配置されている。
【0024】
以上説明したように、本実施形態のアンテナ装置100では、レドーム部20は、アンテナ基板10を収容し、開口24Aが形成されている。アンテナ基板10は、レドーム部20の開口24Aを塞ぐように配置されている。アンテナ基板10の内部には、アンテナ素子11が埋設されている。アンテナ基板10のうち、開口24Aをから露出している露出表面10Sは、電波RWを放射する電波放射面と機能している。本実施形態では、電波放射面であるアンテナ基板10の露出表面10Sがレドーム部20により覆われていないため、アンテナ素子11から放射される電波RWがレドーム部20により減衰されなくても済む。さらに、アンテナ基板10が耐候性を有するセラミック(Al2O3)により形成されているため、アンテナ装置100全体として外部環境に対する耐性を有する。そのため、本実施形態のアンテナ装置100では、耐候性および電波伝播効率が向上する。また、本実施形態では、レドーム部20が電波放射面である露出表面10Sを覆っていないため、アンテナ素子11から放射される電波RWを減衰しない。これにより、電波RWの減衰が考慮されてレドーム部20の材質や形状(例えば厚さ)が設計される必要がないため、レドーム部20の設計自由度が向上する。
【0025】
また、本実施形態のアンテナ基板10は、平板形状を有している。また、レドーム上部24は、平板形状であり、開口24Aが形成された平板部を有している。アンテナ基板10のうち、露出表面10SがXY平面に沿ってレドーム部20内に延長し、かつ、レドーム上部24の内側面24Iに対向している面が、内側面24Iに当接した状態で、レドーム上部24に固定されている。すなわち、本実施形態のアンテナ基板10は、開口24Aを塞ぐために開口24Aよりも大きい面積を有していればよい。そのため、アンテナ基板10は平板状に加工されるだけでよく、アンテナ装置100を簡単に製造できる。
【0026】
<第2実施形態>
図3は、第2実施形態のアンテナ装置100aの概略断面図である。第2実施形態のアンテナ装置100aでは、第1実施形態のアンテナ装置100と比較して、アンテナ基板10aの形状が異なる。そのため、第2実施形態では、アンテナ基板10aの形状について説明し、第1実施形態と同じ構成についての説明を省略する。
【0027】
図3に示されるように、第2実施形態のアンテナ基板10aは、第1実施形態のアンテナ基板10のようにレドーム上部24の内側面24Iよりもレドーム部20内に位置する基板下部12と、基板下部12の上側に位置してレドーム上部24の開口24Aを塞いでいる基板上部13と、を備えている。基板下部12は、XY平面において、開口24Aと同じ面積を有している。なお、基板下部12と基板上部13とは、一体のアルミナで形成されている。
【0028】
アンテナ素子11は、レドーム上部24の厚さ方向(Z軸方向)において、レドーム上部24の外側面24Oと内側面24Iとの間に対応する位置に配置されている。基板上部13のうちの露出している上面の全てが、露出表面10Saであり、電波放射面として機能する。
図3に示されるように、電波放射面である露出表面10Saは、レドーム上部24の外側面24Oと同一面上に位置する平面を形成している。
【0029】
以上説明したように、第2実施形態のアンテナ装置100aでは、アンテナ基板10aに埋設されたアンテナ素子11は、レドーム上部24の厚さ方向において、レドーム上部24の外側面24Oと内側面24Iとの間に対応する位置に配置されている。すなわち、アンテナ素子11は、アンテナ基板10aのうちのより外側にある基板上部13に埋設されている。そのため、第2実施形態のアンテナ装置100aでは、アンテナ素子11が基板下部12に埋設されている場合と比較して、アンテナ基板10aを形成するセラミックによる電波RWの減衰を抑制できる。
【0030】
<第3実施形態>
図4は、第3実施形態のアンテナ装置100bの概略断面図である。第3実施形態のアンテナ装置100bでは、第1実施形態および第2実施形態のアンテナ装置100,100aと比較して、アンテナ基板10bの形状が異なる。そのため、第3実施形態では、アンテナ基板10bの形状と、アンテナ基板10bの形状に起因して第1実施形態および第2実施形態のアンテナ装置100,100aに対して異なる部分とについて説明し、第1実施形態および第2実施形態と同じ構成についての説明を省略する。
【0031】
図4に示されるように、第3実施形態のアンテナ基板10bは、レドーム上部24の外側面24Oよりもレドーム部20の内部側に位置する基板下部12bと、基板下部12bの上側に位置してレドーム上部24の開口24Aを塞いでいる基板上部13bと、を備えている。なお、第3実施形態のアンテナ基板10bでは、第2実施形態のアンテナ基板10aとは異なり、基板下部12bと基板上部13bとを分ける境界が、レドーム上部24の外側面24OをXY平面に沿って延長した面である。
【0032】
基板上部13bは、XY平面において、基板下部12bおよびレドーム上部24の開口24Aよりも大きい断面積の平板形状を有する。第3実施形態では、封止材21bは、基板上部13bの開口24Aからはみ出た下面と、レドーム上部24の外側面24Oとの間を封止している。アンテナ素子11は、レドーム上部24の厚さ方向(Z軸方向)において、レドーム上部24の外側面24Oよりも外側に位置している。そのため、基板上部13bのうちの上面の全てが、露出表面10Sbであり、電波放射面として機能する。換言すると、第3実施形態におけるアンテナ素子11と電波放射面である露出表面10Sbとは、いずれも、レドーム上部24の外側面24Oよりも外側に位置している。なお、レドーム部20の外側とは、開口24Aを形成するレドーム部20の壁面を除くレドーム部20外部の領域をいう。
【0033】
以上説明したように、第3実施形態のアンテナ素子11と、アンテナ基板10bにおける電波放射面である露出表面10Sbとは、いずれも、レドーム上部24の外側面24Oよりも外側に位置している。そのため、第3実施形態のアンテナ装置100bでは、アンテナ素子11がレドーム上部24の外側面24Oよりもレドーム部20内の方向に配置されている場合と比較して、アンテナ素子11からXY平面に平行な方向に放射される電波RWに対するレドーム上部24による減衰が抑制される。この結果、第3実施形態のアンテナ素子11は、レドーム部20によって減衰されていない電波RWをより広い角度で放射できる。
【0034】
<第4実施形態>
図5は、第4実施形態のアンテナ装置100cの概略断面図である。第4実施形態のアンテナ装置100cでは、第2実施形態のアンテナ装置100aと比較して、アンテナ基板10cのうちの基板下部12cの形状と、アンテナ基板10cの形状に起因して第2実施形態のアンテナ装置100aに対して異なる部分とについて説明し、第2実施形態と同じ構成についての説明を省略する。
【0035】
図5に示されるように、第4実施形態の基板下部12cは、XY平面において基板上部13と同じ面積を有する、すなわち、レドーム上部24に形成された開口24Aと同じ面積を有する。また、基板下部12cは、基板上部13と一体のアルミナで形成されている。第3実施形態の封止材21cは、開口24Aにおいて、基板上部13とレドーム上部24とが当接している面であり、かつ、XY平面に直交しているYZ平面およびZY平面(
図5では不図示)を封止している。
【0036】
以上説明したように、第4実施形態のアンテナ装置100cでは、第2実施形態のアンテナ装置100aと同じように、アンテナ素子11は、レドーム上部24の厚さ方向において、レドーム上部24の外側面24Oと内側面24Iとの間に対応する位置に配置されている。すなわち、アンテナ素子11は、アンテナ基板10cのうちのより外側にある基板上部13に埋設されている。そのため、第4実施形態のアンテナ装置100cでは、アンテナ素子11が基板下部12cに埋設されている場合と比較して、アンテナ基板10cを形成するセラミックによる電波RWの減衰を抑制できる。
【0037】
<第5実施形態>
図6は、第5実施形態のアンテナ装置100dの概略断面図である。第5実施形態のアンテナ装置100dでは、第2実施形態のアンテナ装置100aと比較して、アンテナ基板10dのうちの基板上部13dの形状と、アンテナ基板10dの形状に起因して第2実施形態のアンテナ装置100aに対して異なる部分とについて説明し、第2実施形態と同じ構成についての説明を省略する。
【0038】
図6に示されるように、第5実施形態の基板上部13dは、第2実施形態の基板上部13と同じように、XY平面においてレドーム上部24に形成された開口24Aと同じ面積を有する。基板上部13dにおけるZ軸正方向側の上面である露出表面10Sdは、開口24Aが形成されているレドーム上部24の外側面24Oよりも、Z軸正方向側に突出している。また、基板上部13dに埋設されたアンテナ素子11は、レドーム上部24の厚さ方向(Z軸方向)において、レドーム上部24の外側面24Oよりも外側に位置している。そのため、第5実施形態におけるアンテナ素子11と電波放射面として機能する露出表面10Sdとは、いずれも、レドーム上部24の外側面24Oよりも外側に位置している。なお、基板上部13dは、基板下部12と一体のアルミナで形成されている。
【0039】
以上説明したように、第5実施形態のアンテナ素子11と、アンテナ基板10dにおける電波放射面である露出表面10Sdとは、いずれも、レドーム上部24の外側面24Oよりも外側に位置している。そのため、第5実施形態のアンテナ装置100dでは、アンテナ素子11がレドーム上部24の外側面24Oよりもレドーム部20内の方向に配置されている場合と比較して、アンテナ素子11からXY平面に平行な方向に放射される電波RWは、レドーム上部24による減衰が抑制される。この結果、第5実施形態のアンテナ素子11は、レドーム部20によって減衰されていない電波RWをより広い角度で放射できる。
【0040】
<第6実施形態>
図7は、第6実施形態のアンテナ装置100eの概略断面図である。
図8は、第6実施形態のアンテナ装置100eの概略上面図である。第6実施形態のアンテナ装置100eは、第1実施形態のアンテナ装置100と比較して、格子状に配列された4つのアンテナ基板10を備える点が大きく異なる。そのため、第6実施形態では、4つのアンテナ基板10を備えることに起因して第1実施形態のアンテナ装置100に対して異なる部分について説明し、第1実施形態のアンテナ装置100と同じ構成についての説明を省略する。
【0041】
図7および
図8に示されるように、第6実施形態のアンテナ装置100eは、4つのアンテナ基板10と、4つのアンテナ基板10のそれぞれに装着されているIC40と、IC40のそれぞれを覆うシールド70と、はんだSLを介して4つのアンテナ基板10が接着されているプリント基板30eと、プリント基板30eに接続しているコネクタ60と、コネクタ60を介してプリント基板30eに接続しているケーブル50と、プリント基板30eを覆った状態で固定しているレドーム部20eと、を備えている。
【0042】
レドーム部20eは、格子状に配列された4つの開口24Aが形成されたレドーム上部24eと、封止材22を介してレドーム部20の下側に接続されているレドーム下部25eと、を備えている。レドーム上部24eに形成された4つの開口24Aのそれぞれは、第1実施形態の開口24Aのように、4つのアンテナ基板10により塞がれている。各アンテナ基板10間は、
図7に示されるように、封止材14により封止されている。各アンテナ基板10に埋設されているアンテナ素子11は、電波RWを放射する。各アンテナ基板10から放射された複数の電波RWは、合成されてアンテナ装置100eの合成波RWeとして放射される。
【0043】
以上説明したように、第6実施形態のアンテナ装置100eは、4つのアンテナ基板10を備えている。
図8に示されるように、レドーム上部24には、格子状に配列された4つの開口24Aが形成されている。4つのアンテナ基板10のそれぞれは、4つの開口24Aをそれぞれ塞ぐように、格子状に配列されている。第6実施形態では、複数のアンテナ基板10から放射された電波RWが合成されて合成波RWeとしてアンテナ装置100eから放射される。そのため、アンテナ装置100eは、強度がより高い合成波RWeを放射できる。
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0044】
上記第1実施形態ないし第6実施形態では、開口24Aが形成されたレドーム部と、開口24Aを塞ぐように配置されたアンテナ基板と、を備えるアンテナ装置の一例について説明したが、アンテナ装置の構成および形状については種々変形可能である。レドーム部20は、アンテナ基板の少なくとも一部を収容し、開口24Aが形成された範囲で変形可能である。例えば、レドーム部20は、箱状の筐体ではなく、球状の筐体であってもよい。また、レドーム部20のうちの開口24Aが形成されている部分は、平板形状ではなく曲面であってもよい。レドーム上部24とレドーム下部25とを分ける位置は変形可能である。レドーム上部24とレドーム下部25とは、封止材22により接着された別部材ではなく、一体で形成されていてもよい。レドーム部20を形成する材料は、PC以外でもよく、例えばGFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics:ガラス繊維強化プラスチック)、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維強化プラスチック)に代表されるFRPや、PVC(Poly Vinyl Chloride:ポリ塩化ビニル)、テフロン(登録商標)、PTFE(Poly Tetra Fluoro Ethylene)繊維等であってもよい。
【0045】
アンテナ基板10は、セラミックにより形成され、アンテナ素子11が埋設され、レドーム部20の開口24Aを塞ぐように配置されている範囲で変形可能である。アンテナ基板10は、アルミナ以外のセラミックで形成されていてもよく、例えば、窒化アルミ(AlN)、ガラス、窒化珪素などで形成されていてもよい。アンテナ基板10内でアンテナ素子11が埋設される位置は、変形可能であり、例えば、第2実施形態のアンテナ装置100a(
図3)において基板下部12に埋設されていてもよい。また、第3実施形態のアンテナ装置100b(
図4)において、アンテナ素子11は、基板下部12bに埋設されていてもよい。アンテナ基板10が開口24Aを塞ぐ形状についても変形可能である。例えば、第3実施形態のアンテナ基板10bの基板下部12bは、レドーム部20内でXY平面に沿って、開口24Aよりも大きい面積を有するように広がっていてもよい。
【0046】
第6実施形態のアンテナ装置100eでは、4つのアンテナ基板10が格子状に配列された4つ開口24Aのそれぞれを塞いでいたが、アンテナ装置100eの構成については変形可能である。例えば、アンテナ装置100eは、さらに、レドーム部20e内に4つのアンテナ基板10とは異なるアンテナ基板を収容していてもよい。アンテナ装置100eは、4つよりも多いアンテナ基板10を備えていてもよいし、3つ以下のアンテナ基板10を備えていてもよい。レドーム部20eに形成された複数の開口24Aは、格子状以外の配列で形成されていてもよい。
【0047】
アンテナ装置100が備えるIC40、シールド70、プリント基板30、受動部品31、コネクタ60、およびケーブル50の構成部品については、周知技術の範囲で変形可能である。構成部品の変化に応じて、封止材21,22,51およびボルト23についても変形可能である。例えば、封止材の代わりに接着剤が用いられてもよい。第6実施形態のアンテナ装置100eにおいて、封止材14に応じて、4つの開口24Aを分けている十字形状であるレドーム上部24eの一部がなくてもよい。この場合に、4つの開口24Aが1つの大きな開口となり、格子状に配列された4つの格子状に配列されたアンテナ基板10と、アンテナ基板10間を封止する封止材14とが、アンテナ装置100eの上面に露出する。
【0048】
上記第1実施形態ないし第6実施形態では、定義された直交座標系CSにおけるZ軸正方向側を上側としてアンテナ装置100~100eの各部が説明されているが、直交座標系CSの設定と各部の位置関係についての呼び方は変形可能である。他の変形では、異なる座標系が設定されて、異なる位置関係の呼び方であってもよく、例えば上側と下側が入れ替わってもよい。
【0049】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0050】
10,10a,10b,10c,10d…アンテナ基板
10S,10Sa,10Sb,10Sd…露出表面(電波放射面)
11…アンテナ素子
12,12a,12b…基板下部
13,13b,13d…基板上部
14,21,21b,21c,22,51…封止材
20,20e…レドーム部
23…ボルト
24,24e…レドーム上部
24A…開口
24I…レドーム上部の内側面
24O…レドーム上部の外側面
25,25e…レドーム下部
30,30e…プリント基板
31…受動部品
40…IC
50…ケーブル
60…コネクタ
70…シールド
100,100a,100b,100c,100d,100e…アンテナ装置
CS…直交座標系
RW…電波
RWe…合成波
SP1,SP2…空間