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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】一定の光強度のための調光方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
A01G7/00 601A
A01G7/00 601B
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020504661
(86)(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-01
(86)【国際出願番号】 EP2018070460
(87)【国際公開番号】W WO2019025317
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】17183929.3
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516043960
【氏名又は名称】シグニファイ ホールディング ビー ヴィ
【氏名又は名称原語表記】SIGNIFY HOLDING B.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 48,5656 AE Eindhoven,The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100163821
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 沙希子
(72)【発明者】
【氏名】クライン マルセリヌス ペトルス カロルス ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン エルムプト ロブ フランシスカス マリア
【審査官】小林 直暉
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-049023(JP,A)
【文献】特表2015-531605(JP,A)
【文献】特開2017-018077(JP,A)
【文献】特開2015-022818(JP,A)
【文献】特開2003-079254(JP,A)
【文献】特開2013-153691(JP,A)
【文献】特開昭62-055025(JP,A)
【文献】国際公開第2016/113330(WO,A1)
【文献】特開2015-198615(JP,A)
【文献】特開2011-188788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物のための園芸用装置であって、
園芸用光を提供するように構成された1つ以上の照明デバイスを備える園芸用照明システムと、
前記園芸用光の一部を反射して反射された園芸用光を提供するように構成された1つ以上の反射要素と、
前記1つ以上の反射要素によって前記園芸用光が反射される程度と反比例の関係で、前記園芸用光の光強度及びスペクトル分布のうちの1つ以上を制御するように構成されている、制御システムと、
を備える、園芸用装置。
【請求項2】
前記1つ以上の反射要素によって前記園芸用光が反射される程度は、利得係数によって表され、前記利得係数は、所定の利得関数を用いて決定され、前記制御システムは、前記利得係数と反比例の関係で、前記園芸用光の光強度及びスペクトル分布のうちの1つ以上を制御するように構成されている、請求項1に記載の園芸用装置。
【請求項3】
反射された園芸用光を検知する及び1つ以上の対応する光センサ信号を生成するように構成された1つ以上の光センサを備え、前記1つ以上の反射要素によって前記園芸用光が反射される程度は、前記1つ以上の対応する光センサ信号を使用して決定された利得係数によって表され、前記制御システムは、前記利得係数と反比例の関係で、前記園芸用光の光強度及びスペクトル分布のうちの1つ以上を制御するように構成されている、請求項1に記載の園芸用装置。
【請求項4】
前記反射された園芸用光の少なくとも一部が、前記1つ以上の照明デバイスの方向に向けられ、1つ以上の第1の反射要素が、前記1つ以上の照明デバイスの方向に向けて前記反射された園芸用光の少なくとも一部を前記植物に反射して戻すように構成されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の園芸用装置。
【請求項5】
前記植物を受け入れるための構造体を備え、前記構造体は、前記植物が配置され得る植物位置と、前記植物位置の間の中間部と、を備え、1つ以上の中間部は、1つ以上の第2の反射要素を備える、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の園芸用装置。
【請求項6】
前記1つ以上の光センサは、センサ表面を有し、前記センサ表面は、直接園芸用光を受光しないように構成されている、請求項3に記載の園芸用装置。
【請求項7】
前記園芸用装置は、成長媒体内で植物を成長させるように構成されており、1つ以上の照明デバイスが、前記成長媒体から照明デバイス高さで前記成長媒体の上方に配置されており、1つ以上の第1の光センサが、前記照明デバイス高さの0~40%の範囲から選択されるセンサ高さで配置されており、前記1つ以上の第1の光センサは、上側に向けられたセンサ表面を伴って構成されている、請求項3乃至6のいずれか一項に記載の園芸用装置。
【請求項8】
前記園芸用装置は、成長媒体内で植物を成長させるように構成されており、1つ以上の照明デバイスが、前記成長媒体から照明デバイス高さで前記成長媒体の上方に配置されており、1つ以上の第2の光センサが、前記照明デバイス高さの50~150%の範囲から選択されるセンサ高さで配置されており、前記1つ以上の第2の光センサは、下側に向けられたセンサ表面を伴って構成されている、請求項3乃至7のいずれか一項に記載の園芸用装置。
【請求項9】
前記制御システムは、既定の光レシピに従って前記園芸用光を制御するように構成されており、前記光レシピは、(i)時間に応じた前記園芸用光の強度、及び(ii)時間に応じた前記園芸用光のスペクトル分布のうちの1つ以上の情報を含み、それによって、前記光レシピは、前記園芸用光の目標光強度及び目標スペクトル分布のうちの1つ以上を定義し、前記制御システムは、前記園芸用光の前記目標光強度及び前記目標スペクトル分布のうちの1つ以上並びに前記1つ以上の反射要素によって前記園芸用光が反射される程度に応じて、前記園芸用光の前記光強度及び前記スペクトル分布のうちの1つ以上を制御するように構成されている、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の園芸用装置。
【請求項10】
前記制御システムは、前記1つ以上の反射要素によって前記園芸用光が反射される程度に応じて、前記園芸用光の前記スペクトル分布を制御するように少なくとも構成されている、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の園芸用装置。
【請求項11】
前記制御システムは、前記1つ以上の反射要素によって前記園芸用光が反射される程度に応じて、前記園芸用光の前記強度を制御するように少なくとも構成されている、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の園芸用装置。
【請求項12】
前記制御システムは、前記園芸用光の目標強度を有する光レシピに従って前記園芸用光の前記強度を制御するように構成されており、前記制御システムは、前記園芸用照明システムによって提供される、μmol/秒/mで表される光強度と、前記植物によって効果的に受光される光強度との間の所定の関係に基づいて、前記光レシピに従った前記園芸用光の園芸用光強度を適合させるように構成されている、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の園芸用装置。
【請求項13】
園芸用光の一部を反射して反射された園芸用光を提供するように構成された1つ以上の反射要素を備える園芸用装置において、前記園芸用光を植物に提供する方法であって、前記園芸用光を前記植物に提供するステップと、前記1つ以上の反射要素によって前記園芸用光が反射される程度と反比例の関係で、前記園芸用光の光強度及びスペクトル分布のうちの1つ以上を制御するステップと、を含む、方法。
【請求項14】
既定の光レシピに従って園芸用光を制御するステップであって、前記光レシピが、(i)時間に応じた前記園芸用光の強度、及び(ii)時間に応じた前記園芸用光のスペクトル分布のうちの1つ以上に関する情報を含み、それによって、前記光レシピが、目標園芸用光強度を定義するステップと、前記目標園芸用光強度及び前記1つ以上の反射要素によって前記園芸用光が反射される程度に応じて、前記園芸用光の前記光強度及び前記スペクトル分布のうちの1つ以上を制御するステップと、を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の前記園芸用装置の前記制御システムに機能的に結合されるか又は前記制御システムによって備えられるコンピュータ上で実行されると、請求項13又は14に記載の方法を引き起こすことができるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、園芸用照明システムを備える園芸用装置に関する。本発明は更に、光を植物に提供するための方法であって、そのような園芸用照明装置が適用され得る方法に関する。本発明は更に、そのような方法を実行するためのコンピュータプログラム製品に関する。本発明はまた、園芸用装置及び/又は園芸用照明方法に使用できる、植物を受け入れるための特定の構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第2014259920号は、実質的に閉じた容器と、閉じた容器内の栄養液と、栄養液内に配置された苗と、成長ライトと、苗の成長を観察するように適合された少なくとも1つのセンサと、
成長ライト及び少なくとも1つのセンサに結合されたコントローラと、を備え、コントローラが、
成長が生じたかどうかを判定するための情報をセンサから読み取ることと、第1の苗が成長システム内に配置されると始まり、第1の苗の成長が観察されると終わる、苗のストレス持続時間を計算することと、苗のストレス持続時間を複数の下位フェーズに分割することと、成長システム内に配置された第2の苗が経過時間に基づいてどの下位フェーズに到達したかに基づいて、第2の苗の副相係数を決定することと、オン/オフ光サイクルの合計数及び各オン/オフサイクルの持続時間を計算することであって、1つのサイクルがライトをオン及びオフすることである、ことと、
成長システムにおいて各サイクルの間にライトがオンである時間及びライトがオフである時間の計算された持続時間にわたって、計算されたオン/オフ光サイクルの合計数を実行するように成長ライトを制御することと、を行うように適合される、システムを記載している。
【0003】
米国特許出願公開第2015/319933A1号は、植物を成長させるためのシステムであって、内向き反射型筐体と、好ましくは上部と、を含むシステムを開示している。好ましくは制御ユニットによって制御される、複数のLEDが、植物の所定の部位に光を選択的に放出する。制御ユニットは、空気ベント及び空気流、オプションのヒータ、並びに光強度センサ及び光色センサからのフィードバックを使用して、筐体内の成長条件を制御する。LEDによって生成された光は全て、筐体の内側に閉じ込められ、システムの効率を高めることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
植物は、光合成のプロセスを使用して、光、CO、及びHOを炭水化物(糖)に変換する。これら糖は、代謝プロセスを行うために使用される。余分な糖は、バイオマス形成に使用される。このバイオマス形成には、茎の伸長、葉面積の増加、花の形成、果実の形成などが挙げられる。光合成を担う光受容体は、クロロフィルである。光合成の他に、光周性、光屈性、及び光形態形成もまた、放射と植物との間の相互作用に関連する代表的なプロセスである。
・光周性とは、(例えば、開花を誘発するために)放射の周期性を感知し、測定するために植物が有する能力を指し、
・光屈性とは、放射に向かう植物の成長運動及び放射から離れる植物の成長運動を指し、
・光形態形成とは、放射の質及び量に応じた形態の変化を指す。
【0005】
クロロフィルa及びクロロフィルbの2つの重要な吸収ピークは、それぞれ、赤色領域及び青色領域内、特に625~675nm、及び425~475nmに位置する。加えてまた、近紫外領域(300~400nm)及び遠赤色領域(700~800nm)に他の局所的なピークもある。主光合成活性は、波長領域400~700nm内で起こるように思われる。この範囲内の放射は、光合成有効放射(photosynthetically active radiation;PAR)と呼ばれる。
【0006】
植物の他の感光性プロセスには、フィトクロムが挙げられる。フィトクロム活性は、葉の拡張、隣接知覚、陰影回避、茎部伸長、種子発芽、及び開花誘導などの異なる応答を導く。フィトクロム光システムは、フィトクロムの2つの形態、Pr及びPfrを含み、これらは、それらの感度ピークを、それぞれ、赤色の660nm及び遠赤色の730nmに有する。
【0007】
園芸では、単位面積当たりの毎秒の光子数(μmol/秒/mで表され、molは、6・1023個の光子に相当)で表される光合成光量子束密度(photosynthetic photon flux density;PPFD)が測定される。実際には、特にトマトの場合、使用される赤色PPFDは典型的に、200μmol/秒/mであってもよく、青色:赤色の比率は典型的に、1:7(赤色及び青色はそれぞれ、625~675nm及び400~475nmの範囲である)であってもよい。特に、光合成光量子束密度は、約10%の青色と約90%の赤色を含んでもよい。PPFDは、フォトダイオードから決定され得る、又は光電子増倍管で直接測定され得る。PPFD内の領域は、光源が配置されている空間の局所受光(植物)領域を指す。多層システムの場合、それは、多層構成に含まれる該当する層の領域であり、PPFDは、各層に関して個別に推定されてもよい(更に以下も参照)。当該領域は、一実施形態では、制御ユニットに手動で供給される値であってもよく、又は一実施形態では、制御ユニットによって(例えばセンサを用いて)評価されてもよい。
【0008】
植物の成長は、光の量だけでなく、植物上の光のスペクトル成分、持続時間、及びタイミングにも依存する。これらの側面の観点におけるパラメータ値の組み合わせは、植物(本明細書では、植物という語と作物という語は入れ替え可能である)の成長のための「光レシピ(light recipe)」と呼ばれる。
【0009】
LEDは、以下のような園芸照明において様々な役割を果たすことができる。
1.補助照明:例えば、作物価格がより高くなり得る秋期、冬期、及び春期中に(例えばトマトの)生産を増加するために又は作物生産を延長するために、自然昼光を補助する照明が使用される。
2.光周期性照明:多くの植物にとって光の日々の継続時間は重要である。24時間周期内の明期と暗期の比率は、多くの植物の開花反応に影響を及ぼす。補助照明を用いてこの比率を操作することで、開花時期の調整を可能にする。
3.植物農場内での昼光を伴わない栽培(垂直農場又は植物工場としても知られる)。
4.組織培養。
【0010】
温室内で秋、冬、及び春の間に(又は多層成長で1年中)補助照明を提供するために、一般に、植物全体にわたる十分に均一な配光を確保するために植物上方の比較的高所に取り付けられる必要がある高出力ガス放電灯が使用される。現在、温室内では、600~1000Wの範囲の異なるタイプの高出力ランプ(例えば、高出力HID)が植物に補助光を供給するために使用されている。1つの欠点は、作物の種類によっては、植物上方の位置から植物の下方部分に達する光の量は、むしろ限定される場合があることである。同時に、植物の下方部分は、多くの場合、補助光を最も必要とする。同じジレンマは、植物の上方に取り付けられた固体照明を使用する場合にも残る。それでもなお、LED照明、特に固体照明は、放電ベースの照明に優るいくらかの利点を有する。
【0011】
北部地域、又は人工のかつ良好に制御された条件に完全に依存するいわゆる「植物農場」、「垂直農場」、又は「植物工場」などの、植物が自然の太陽光から得る光が不十分な状況では、(葉及び果実の)成長、熟成、及び収穫前調整のために植物に光を提供する必要があるように思われる。
【0012】
光は、成長を可能とする唯一のものではなく、大気(湿度レベル、CO/Oレベルなど)、水、栄養素、及び胞子要素も主に重要なものである。温度(及び日中/夜間の温度プロファイル/サイクル)もまた、植物成長の成功に重要な寄与因子である。露地園芸の分野では、現在、高収益/高価値栽培において典型的に使用されている無土壌園芸又は水栽培園芸に対するニーズがあると思われる。このような方法は、また、植物の非自然の成長に基づき、人工的な最適化を必要とし得、又は人工的な最適化から収益を得ることができる。
【0013】
食料生産に利用可能な空間は、不足しつつある。より持続可能(エネルギー及び水の最小限の使用)でありながら、より小さな占有面積によりより高い収量を産出するために、生産方法の革新が必要とされる。植物農場などの閉鎖環境における食料生産は、これらの要求を満たす方法である。植物農場では、食料は複数の層で成長し、屋外での成長又は温室での成長と比較して、利用可能な空間をはるかに良好に使用する。これは、昼光が全ての植物には到達できず、ほとんど全ての光が人工照明によりもたらされなければならないことを意味する。このため、LED照明が使用される。植物農場では、常に最適となる光処理を植物に施す必要がある。同時に、エネルギー消費を低減し、採算がとれるビジネスをもたらすために、LEDモジュールによって生成された光が可能な限り効率的に使用されることが必須である。植物農場では、単位面積当たり生産量が、露地での生産量よりもはるかに高い。水の使用は最小限に抑えられる。植物の病害及び害虫は、より容易に予防することができる。当該技術分野では、用語「都市農場」も使用される。本明細書では、用語「植物農場」が使用され、これは、同じものを指し得るが、農場が必ず都市に位置するという潜在的な関連付けを有していない。
【0014】
高い光使用効率は、植物間及び(LEDモジュール間の)植物の上方に反射係数が高い材料を使用することによって達成することができ、このようにして、植物間に行き着いた光は、反射される可能性があり、植物によって遮られる第2の機会を得る。この光再利用方法の欠点は、植物によって経験される光束が経時的に一定とならないことであり、植物が比較的小さいと、植物間に多くの開放空間が存在することになる。結果として、多くの光が再利用されることになり、期待されるよりもはるかに高くなる、植物によって経験される光強度をもたらす。植物がより成熟すると、植物間に開放空間が少なくなり、それゆえ、光再利用の影響が小さくなる。全体として、この光再利用方法は、植物が若年であるときに露出され過ぎることになり(又は植物が成熟しているときに露出されなさ過ぎることになり)、準最適な成長をもたらす。
【0015】
本明細書では、とりわけ、光に関する高い反射係数を有するベースプレート(以下では、「床」と呼ばれる)に各植物(正確には、植物、基材、及び植物ホルダの組み合わせ)を配置できる成長システムが提案される。植物の上方には、LED照明モジュールが配置される。モジュールの上方又はモジュール間にも、光に関する高い反射係数(以下、「天井」材料と呼ばれる)を有する材料が存在する。床及び天井の材料が広スペクトルの光に関して高反射性であるという事実は、最初に植物間に行き着いた任意の光が、(材料特性に応じて拡散的又は鏡面的に)反射される可能性が高くなるようにし、植物によって遮られる第2の機会を得るようにする。
【0016】
前述のように、光(及びエネルギー)の非常に効率的な使用をもたらす一方で、この光再利用方法は、植物によって経験される光強度(照射量)が、経時的に一定ではなくなる、という欠点を有する(光強度は、単位時間当たり及び単位表面積当たりの光子数として、μmol/秒/mを単位として表される(時にはμmol/m/秒と示される場合もある)ことに留意されたい)。植物が比較的小さい場合、植物間には多くの開放空間が存在することになる。結果として、多くの光が再利用されることになり、期待されるよりもはるかに高くなり得る、植物によって経験される光強度をもたらす。
【0017】
植物成長に最適な典型的な光強度は、200μmol/秒/mである。光再利用の結果、植物によって知覚されるレベルは、この値のほぼ2倍に増加し、400μmol/秒/mになる場合がある。このレベルでは、植物は光に露出され過ぎ、成長は準最適となる。低い光強度では、光合成(それゆえ成長)が、光強度と共に線形的に増大することが確認される。光強度を更に増加させると、光合成が徐々に飽和し始め、このことは、成長効率が低下することを意味し、成長効率の低下は、同じ量のバイオマスを生産するためにより多くのエネルギーを要することを意味する。これが、解決しようとする課題である。光強度を増加させることの別の態様は、植物が成長障害(葉先焼けなど)を発症するリスクの増大につながることである。植物が成熟すると、植物間に開放空間が少なくなり、それゆえ、光再利用の影響が小さくなる(一般的に、植物の葉は、その葉に入射した光のわずかな部分のみを反射することに留意されたい)。植物が重なり合い始めると、ほとんどの光が葉によって吸収され、光がほとんど再利用されなくなる。その場合、植物によって経験される光強度は、LEDモジュールによって放出される光強度とほぼ等しくなる。床材料が光を反射しない場合(例えば、黒い表面)、(葉によって反射され、続いて天井材料から反射されるいくらかの光子を除いて)光再利用が起きなくなることに留意されたい。その場合、植物によって経験される光強度は、実装された光強度(すなわち、LEDモジュールによって1秒当たりに放出された光子の数と、1平方メートル当たりに設置されたモジュールの数とを乗算することによって得られる光強度)と一致する。
【0018】
それゆえ、本発明の一態様は、好ましくは上述された欠点の1つ以上を更に少なくとも部分的に取り除く、代替的な園芸用装置及び/又は園芸用照明方法を提供することである。本発明は、従来技術の欠点のうちの少なくとも1つを克服若しくは改善すること、又は有用な代替物を提供することを、目的として有してもよい。
【課題を解決するための手段】
【0019】
第1の態様では、本発明は、植物のための園芸用装置(「装置」又は「システム」)であって、(i)特に、園芸用光(「光」)を植物に提供するように構成された1つ以上の照明デバイス(特に、複数の照明デバイスなど)を備えた、園芸用照明システム(「照明システム」)と、(ii)園芸用光の一部を反射して反射された園芸用光を提供するように構成された1つ以上の反射要素(特に、複数の反射要素)と、(iii)制御システム(「コントローラ」又は「プロセッサ」)と、を備え、制御システムが、(1つ以上の反射要素による)園芸用光の反射に応じて、園芸用光の光強度(「園芸用光強度」又は「光強度」又は「強度」)及びスペクトル分布のうちの1つ以上を制御するように構成される、園芸用装置を提供する。
【0020】
そのような装置により、植物が受ける実際の光強度を考慮することが可能である。そのような装置により、光による植物の過負荷を防止することも可能であるが、そのような装置により、エネルギーを節約することも可能である。既定の光強度は、植物が小さいと、反射により植物がより多くの光を受光するため、下げられてもよく、これは、既定の強度の1/2以下にすることができる。植物がより成熟すると、反射が減少することになり、選ばれる光強度は、既定の光強度に収束し得る。
【0021】
反射要素は特に、植物が装置内にある期間の少なくとも一部の間、未使用の光及び/又は反射光の一部を植物に反射するように配置される。用語「未使用の光」は、実施形態では、通常であれば、土、粒状材料、又は水などの成長基材(又は成長媒体)によって少なくとも部分的に吸収されるであろう、園芸用光を指し得る。
【0022】
それゆえ、また更なる態様では、本発明はまた、植物のための園芸用装置であって、(i)園芸用光を植物に提供するように構成された園芸用照明システムと、(ii)園芸用光の一部を植物に反射する(反射して戻す)ように構成された1つ以上の反射要素と、(iii)植被(の発達)に応じて、園芸用光の光強度及びスペクトル分布のうちの1つ以上を制御するように構成される、制御システムとを備える、園芸用装置を提供する。例えば、実施形態では、制御システムは、葉面積指数に応じて、園芸用光の光強度を制御するように構成されてもよい。葉面積指数(leaf area index;LAI)は、単位地表面積(又は基材面積)当たりの葉面積を示す。用語「植被」は、個々の植物の冠部の集合によって形成された植物群又は作物の地上部位を指す。用語「植物に反射する」又は「植物に反射して戻す」及び同様の用語は、使用中の園芸用照明システム又は園芸用装置を指し得る。実施形態では、それは、植物が成長し得るか又は構成され得る位置に反射することとして定義されてもよい。
【0023】
用語「園芸用装置」は特に、植物がその内又は上で成長し得る植物支持体(本明細書では、「支持体」とも示される)と、植物がその内又は上で成長し得る(成長する)植物支持体に園芸用光を導くように構成された照明システムと、園芸用光を制御する制御システムと、を備える装置を指す。
【0024】
使用中、装置は、植物を有する植物支持体、種子を有する植物支持体、又は苗を有する植物支持体などを含んでもよい。それゆえ、使用中、(装置を構成する)システムは、植物を有する植物支持体、種子を有する植物支持体、又は苗を有する植物支持体などを含んでもよい。
【0025】
本明細書では、用語「植物」は、本質的に全ての段階について使用される。用語「植物部位」は、根、茎、葉、(もしあれば)果実などを指し得る。園芸用光は特に、植物の地上部位に提供される。「園芸」という用語は、人が利用するための(集約型の)植物栽培に関連し、その活動は非常に多種多様であり、食糧用植物(果物、野菜、キノコ、料理用ハーブ)及び非食糧用作物(花、樹木及び低木、芝草、ホップ、ブドウ、薬用ハーブ)を組み込む。園芸は、植物栽培の芸術、科学、技術、及び事業を扱う農業の分野である。これには、薬用植物、果実、野菜、堅果、種子、ハーブ、スプラウト、キノコ、藻類、花、海藻、並びに草及び装飾用樹木及び植物などの非食糧用作物の栽培を含み得る。ここで、用語「植物」は、薬用植物、野菜、ハーブ、スプラウト、キノコ、堅果を作る植物、種子を作る植物、花を作る植物、果実を作る植物、草及び装飾用樹木などの非食糧用作物等から選択される、本質的にあらゆる種を指すために使用される。更に具体的に、用語「植物」は、薬用植物、野菜、ハーブ、スプラウト、堅果を作る植物、種子を作る植物、花を作る植物、果実を作る植物、非食糧用作物から選択される、本質的にあらゆる種を指すために使用される。
【0026】
「作物」という用語は、本明細書では、栽培される園芸植物又は栽培された園芸植物を示すために使用される。食糧、衣料等のために大規模栽培される同一種類の植物は、作物と呼ばれる場合がある。作物は、例えば、食糧、家畜飼料、燃料として、又は任意の他の経済的目的で収穫されるために栽培される非動物種又は非動物種類である。「作物」という用語はまた、複数の作物に関連する場合もある。園芸作物は特に、食用作物(トマト、コショウ、キュウリ、及びレタス)、並びにトマト植物、コショウ植物、キュウリ植物などのような、そのような作物を(潜在的に)作る植物を指し得る。園芸は、本明細書では、例えば、作物植物及び非作物植物などに全般的に関連し得る。作物植物の例は、米、小麦、大麦、燕麦、ヒヨコマメ、エンドウマメ、ササゲ、レンズマメ、リョクトウ、クロリョクトウ、大豆、インゲンマメ、モスビーン、アマニ、ゴマ、ガラスマメ、サンヘンプ、トウガラシ、ナス、トマト、キュウリ、オクラ、ピーナッツ、ジャガイモ、トウモロコシ、パールミレット、ライ麦、アルファルファ、ハツカダイコン、キャベツ、レタス、コショウ、ヒマワリ、テンサイ、トウゴマ、ムラサキツメクサ、シロツメクサ、ベニバナ、ホウレンソウ、タマネギ、ニンニク、カブ、トウナス、マスクメロン、スイカ、キュウリ、カボチャ、ケナフ、アブラヤシ、ニンジン、ココナツ、パパイヤ、サトウキビ、コーヒ、カカオ、茶、リンゴ、セイヨウナシ、モモ、サクランボ、ブドウ、アーモンド、イチゴ、パイナップル、バナナ、カシュ、男爵イモ(Irish)、キャッサバ、タロイモ、ゴム、サトウモロコシ、綿、ライコムギ、キマメ、及びタバコである。特に対象となるのは、トマト、キュウリ、コショウ、レタス、スイカ、パパイヤ、リンゴ、セイヨウナシ、モモ、サクランボ、ブドウ、及びイチゴである。
【0027】
用語「植物」は、本明細書では、特にアーケプラスチダを指す場合がある。アーケプラスチダは、灰色藻と呼ばれる淡水単細胞藻類の小さな群と共に、紅藻(紅藻植物)、緑藻、及び陸上植物を含む、真核生物の主要な群である。それゆえ、実施形態では、用語「植物」は、陸上植物を指す場合がある。実施形態では、用語「植物」は(また)、藻類(緑藻及び紅藻、並びに灰色藻と呼ばれる単細胞藻類のうちの1つ以上など)を指す場合がある。
【0028】
用語「園芸用光」は特に、400~475nmの第1の波長領域及び625~675nmの第2の波長領域のうちの1つ以上における1つ以上の波長を有する光を指す。これらの領域において提供される相対エネルギー(ワット)は、植物の種類及び/又は成長相に依存し得る。それゆえ、レシピが、1種類以上の植物について、オプションとして時間に応じた、比率を定義してもよい。特に、用語「園芸用光」は、PAR領域(400~700nmによる光合成活性領域)を指してもよい。用語「園芸用光」はまた、水栽培用途で植物に適用される光に使用されてもよい。当該技術分野で知られているように、PAR領域(400~700nmによる光合成活性領域)では、葉の反射係数が非常に小さい(5~10%)。近赤外線に向かって700nmを超えると、反射係数が増加する。それゆえ、特定の実施形態では、園芸用光はまた、PAR光に加えて、わずかな(出力の≦25%、特に出力の最大で約10%)遠赤色、すなわち、700~850nmを含んでもよい。
【0029】
特に、用語「園芸用装置」は、植物が、制御された条件の下で成長し、実質的に昼光を受光しない、植物農場又は気候セルを指す。更に、そのような植物農場は、気候セルの場合のように、温度管理されてもよい。したがって、実施形態では、園芸用装置は、そのような植物農場又は気候セルを含む。他の実施形態では、植物農場又は気候セルは、園芸用装置の少なくとも一部を含む。例えば、気候セルは、植物支持体及び照明システムを備えてもよく、制御システムは、気候セルの内部又は外部に構成されてもよい。特に、植物農場は、気候セルを備えてもよい。
【0030】
そのような園芸用装置の制御システムは、温度、湿度、COレベル、灌注水、栄養供給、園芸用光の光強度、気温、空気組成、空気流などのうちの1つ以上を含む空気条件のうちの1つ以上を制御してもよい。そのような園芸用システムは、これらの条件のうちの1つ以上を装置内の異なる場所で制御するように構成されてもよい。それゆえ、園芸用光の照射は、実施形態では、例えば、時刻、季節、(局所的な)照明条件、植物の年齢、植物の状態、植栽期間等のうちの1つ以上に応じて行われてもよい。それゆえ、園芸用光の照射は、実施形態では、植物関連データ、時間関連パラメータ、植物が曝される条件(自然光、温度、相対湿度、COレベル、灌注水、栄養供給など)などに応じて行われてもよい。
【0031】
園芸用照明システムは特に、園芸用光を植物に提供するように構成される。これは特に、園芸用照明システムが、植物がその内又は上で成長し得る植物支持体の方向に園芸用光を提供するように構成されることを意味し得る。そのような植物支持体は、トレイであってもよい。特に、用語「植物支持体」はまた、植物が上下の層において成長し得る(「多層システム」)ため、複数の植物支持体を指す場合がある。それゆえ、それぞれが各植物の上にある、2つ以上の植物支持体をそれぞれに有するラックが、光システムを支持する。更に、用語「照明システム」はまた、複数の(個々に制御される)照明システムを指す場合がある。
【0032】
更に、制御システムは、園芸用光の光強度及びスペクトル分布のうちの1つ以上を制御するように構成される。用語「制御」及び類似の用語は、特に、少なくとも、行為を決定すること、又は要素の運転を監督することを指す。それゆえ、本明細書では、「制御する」及び類似の用語は、要素に対し、例えば、測定すること、表示すること、作動すること、開くこと、移動すること、温度を変えること等などの、挙動を課すこと(挙動を決定すること又は要素の動作を管理すること)等を例えば指す場合がある。そのほか、用語「制御」及び類似の用語は、付加的に、モニタリングを含んでもよい。したがって、用語「制御」及び類似の用語は、行為を強制することを含んでもよい。表現「園芸用光の光強度及びスペクトル分布のうちの1つ以上」は、照明システムによって提供される園芸用光のスペクトル分布全体、すなわち、特に可視域の出力を指してもよい。しかし、特定の実施形態では、制御システムはまた、スペクトル分布を制御するように、例えば、スペクトル分布の部分をスペクトル分布の他の部分に対して低減又は増加させるように構成されてもよい。それゆえ、実施形態では、制御システムは、例えば、1つ以上の光センサ信号に応じて、園芸用光の強度及びスペクトル分布のうちの1つ以上を制御するように構成されてもよい。
【0033】
上記のように、制御システムは、1つ以上の反射要素による園芸用光の反射に応じて、園芸用光の光強度及びスペクトル分布のうちの1つ以上を制御するように構成される。
【0034】
用語「反射」は、園芸用光が反射される程度を指し得る。光が反射されずに、植物が成熟している場合、植物は、園芸用光の目標強度を本質的に受け得る一方、園芸用光の反射が生じると、植物はより高い強度を受ける。それゆえ、(上向きに(又は、例えば、基材の上に配置された場合に下向きに)検知する)基材に近接したセンサ、及び/又は、(特に下向きに検知する場合)支持体よりも照明デバイスに近いセンサが、反射、すなわち、園芸用光の反射を評価するために使用されてもよい。これは、本明細書ではまた、利得に関連する(更に以下も参照)。基材(以下も参照)は、土であってもよく、基材は、特定の実施形態では水であってもよい(水栽培用途の場合)。基材に関する別の語句が、「成長媒体」であってもよい。反射はまた、実施形態では、波長依存性であってもよい。特定の実施形態では、制御システムは、(また)反射光のスペクトル分布に応じて、園芸用光のスペクトル分布を制御してもよい。
【0035】
(成長中の)植物が曝される条件は、一般にレシピにおいて定義される。それゆえ、制御システムは、レシピに従って植物を成長させてもよい。そのようなレシピは、目標園芸用光強度(target horticulture light intensity)を定義する光レシピを含んでもよい。これは、レシピが目標園芸用光強度を経時的に定義することを意味する場合がある。代わりに又は加えて、レシピは、栄養素の摂取、葉のサイズ、葉の形状、植物の温度、葉の温度、根の温度、茎の長さ、果実のサイズ、新しい葉の発生、葉先焼け又は病害などの異常など、検知されるパラメータに応じて、目標園芸用光強度を定義してもよい。
【0036】
そのようなレシピに加えて、制御システムは、レシピによって課される光強度を、特に、レシピに従うが、植物に実際に提供される、光強度に補正するように構成されてもよい。換言すれば、植物によって受ける園芸用光の強度は、そのような補正により、反射により高くなる代わりに、目標強度に準拠し得る。上記のように、植物によって実際に受けられる光強度は、反射要素の反射により、レシピによって定義されるよりも高くなる場合がある。したがって、本発明は、特に、植物に対する一定の光強度のための、及び/又は、ほぼ目標強度であるとともに、反射により目標光強度よりも高くなっていない、実際に受けられる光強度のための、調光法を提供する。
【0037】
同様に、制御システムは、レシピによって課されるスペクトル分布を、特に、レシピに従うが、植物に実際に提供される、スペクトル分布に補正するように構成されてもよい。換言すれば、植物によって受光される園芸用光のスペクトル分布は、そのような補正により、反射により異なるものになる代わりに、目標スペクトル分布に準拠し得る。植物によって実際に受けられるスペクトル分布は、反射要素の反射により、レシピによって定義されるものと異なる場合がある。
【0038】
したがって、実施形態では、制御システムは、既定の光レシピに従って園芸用光を制御するように構成され、光レシピは、(i)時間に応じた園芸用光の強度、及び(ii)時間に応じた園芸用光のスペクトル分布のうちの1つ以上の情報を含み、それによって、光レシピは、(時間に応じた)目標園芸用光強度(及び/又は、(時間に応じた)園芸用光の目標スペクトル分布)を定義し、制御システムは、1つ以上の反射要素による園芸用光の反射に応じて、(時間に応じた)園芸用光の光強度及びスペクトル分布のうちの1つ以上を制御するように更に構成される。園芸用光の反射に応じて園芸用光を制御することにより、目標園芸用光強度(及び/又は目標スペクトル分布)に準拠する(よって、反射による園芸用光の再利用を考慮した)園芸用光強度(及び/又はスペクトル分布)を植物に提供することができる。
【0039】
光レシピは、目標光強度自体を定義してもよいが、またスペクトル分布を定義してもよく、それによって、スペクトル分布を構成し得る異なる光源の強度が定義される必要があるため、光強度もまた定義され得る。レシピによって目標とされる強度は、目標強度が植物によって実際に受けられるように適合されてもよい。それゆえ、早い段階では、光強度の実質的な低下が存在してもよく、後の段階では、低下が小さくなってもよく、又は低下がなくてもよい。
【0040】
したがって、(また)特定の条件では、制御システムは、園芸用光に露出され過ぎることが防止されるように、園芸用光の強度を制御するように構成される。
【0041】
システムは特に、センサの使用によるなどの、フィードバックループに基づいてもよい(以下も参照)。センサ信号と植物で受けた(推定)出力との間の所定の関係に組み合わせて、園芸用光の目標強度は、実際に所望される又は必要とされる強度を植物に提供するために修正することができる。それゆえ、更なる実施形態では、制御システムは、園芸用光の目標強度を有する光レシピに従って園芸用光の強度を制御するように構成され、制御システムは、園芸用照明システムによって提供される、μmol/秒/mで表される光強度と、植物によって効果的に受光される光強度との間の所定の関係に基づいて、光レシピに従った園芸用光の園芸用光強度を適合させるように構成される。更なる実施形態では、制御システムは、園芸用光の目標スペクトル分布を有する光レシピに従って園芸用光のスペクトル分布を制御するように構成され、制御システムは、園芸用照明システムによって提供されるスペクトル分布と、植物によって効果的に受光されるスペクトル分布との間の所定の関係に基づいて、光レシピに従った園芸用光のスペクトル分布を適合させるように構成される。
【0042】
それゆえ、実施形態では、制御システムは、((1つ以上の反射要素による)園芸用光の反射に応じて)園芸用光のスペクトル分布を制御するように少なくとも構成される。代わりに又は加えて、実施形態では、制御システムは、((1つ以上の反射要素による)園芸用光の反射に応じて)園芸用光の強度を制御するように少なくとも構成される。
【0043】
上記のように、装置は反射要素を含んでもよい。そのような反射要素は、光を拡散反射するように構成されたミラー様要素、及び/又は光を鏡面反射するように構成された反射要素を含んでもよい。例えば、反射要素は、アルミニウムコーティングなどの金属コーティングを含んでもよい。代わりに、反射要素は、チタン含有塗料などの白色塗料を含んでもよい。異なる反射要素の組み合わせもまた使用されてもよい。反射要素は特に、入射する園芸用光の少なくとも50%、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%のような、更に具体的には少なくとも80%、少なくとも90%などを反射するように構成される。それゆえ、そのような反射要素は、比較的高反射性であってもよい。
【0044】
照明デバイスはまた、実施形態では反射要素を含んでもよいが、本発明は特に、照明デバイス間又は照明デバイスの後方に構成され得る追加の反射要素に関する。そのような反射要素は、本明細書では、第1の反射要素としても示される。そのような反射要素は特に、園芸用光を、特に、天井又は別の他のトレイの背面へと照明デバイス間を伝播する際に、通常であれば実質的に失われる園芸用光を、支持体の方向に反射して戻すように構成される。更に、そのような反射要素は特に、水平に対して垂直な方向にかつ支持体から離れる方向に進む光が、少なくとも50%、例えば少なくとも60%、更に具体的には少なくとも70%、例えば少なくとも80%、更に具体的には少なくとも90%だけ反射して戻されるように、園芸用装置内に構成される。それゆえ、装置は、支持体から離れる方向に上の方向に伝播する光の実質的な部分が、支持体の方向に再び反射して戻されるようなものであってもよい。それゆえ、実施形態では、トレイの背面は反射性であってもよい。例えば、トレイの背面の表面積の少なくとも50%、例えば少なくとも60%、少なくとも70%など、更に具体的には、トレイの背面の少なくとも80%が、園芸用光に関して反射性であってもよい。それゆえ、一態様では、本発明はまた、反射性の背面を、及びオプションとして背面に物理的に結合された照明デバイスを、有するトレイを提供する。したがって、実施形態では、園芸用装置は、複数の照明デバイスを備え、1つ以上の反射要素が、照明デバイスの方向に向けられた園芸用光を反射するように、特に、植物の方向に(すなわち、支持体の方向に)反射して戻すように構成される。したがって、実施形態では、反射された園芸用光の少なくとも一部が、1つ以上の照明デバイスの方向に向けられ、1つ以上の(第1の)反射要素が、1つ以上の照明デバイスの方向に向けられた反射された園芸用光の少なくとも一部を植物に反射して戻すように構成される。
【0045】
実施形態では、1つ以上の反射要素が、隣接する2つの照明デバイス間に構成されてもよい。更なる実施形態では、1つ以上の反射要素が、2つ以上の照明デバイス間を装置から離れるように逃げ得る光のために照明デバイスの下流に構成されてもよい。代わりに、1つ以上の反射要素が、照明デバイスの上流に構成されてもよく、そこでは、1つ以上の反射要素内又はそれらの間の1つ以上の開口が、園芸用光が植物に伝播することを可能にする。
【0046】
用語「上流」及び「下流」は、光生成手段(本明細書では特に、光源)からの光の伝搬に対する、物品又は特徴部の配置に関するものであり、光生成手段からの光のビーム内での第1の位置に対して、光のビーム内の、光生成手段により近い第2の位置が「上流」であり、光のビーム内の、光生成手段からより遠く離れた第3の位置が「下流」である。
【0047】
同様に、植物間に反射要素が構成されてもよい。そのような反射要素は、本明細書では、第2の反射要素とも示される。例えば、実施形態では、植物は基材内で成長され、植物間に1つ以上の反射要素が構成されてもよい。それゆえ、反射要素は、植物のための開口を有する基材の上に配置されてもよい。
【0048】
実施形態では、本発明は、植物が配置され得る、植物を受け入れるための構造体を提供し、植物間に反射要素が構成されてもよい。それゆえ、また更なる態様では、本発明はまた、特に植物を受け入れるための構造体など、そのような構造体自体を提供し、構造体は、植物が配置され得る植物位置と、植物位置間の中間部と、を備え、1つ以上の中間部は、1つ以上の(第2の)反射要素を備える。オプションとして、構造体は、反射された園芸用光を検知するように構成された1つ以上の光センサを更に備えてもよい。表現「園芸用光を検知する」及び同様の表現は、センサによって直接受光される園芸用光、及び1回以上の反射の後に受光される園芸用光を検知することを指す。
【0049】
反射要素は、反射表面を有するプレートを備えてもよい。他の実施形態では、反射要素は、別の要素上の反射性コーティングである。実施形態では、反射要素は、反射箔であってもよい。例えば、反射箔が、固体基材などの基材の上に構成されてもよく、又は、反射基板が、水上に浮かんでもよく、反射箔又は反射基板には、植物が内部に構成され得る(又は、それを通じて茎が成長し得る)孔が構成される。反射箔又は反射基板が、複数の中間反射部を提供してもよい。
【0050】
更に、そのような反射要素は特に、水平に対して垂直な方向にかつ支持体の方向に進むが、植物の一部に達しない光が、少なくとも50%、例えば少なくとも60%、更に具体的には少なくとも70%、例えば少なくとも80%、更に具体的には少なくとも90%だけ反射して戻されるように、園芸用装置内に構成される。それゆえ、装置は、支持体の方向に下の方向に伝播する光の実質的な部分が、支持体の方向に再び反射して戻されるようなものであってもよい。それゆえ、実施形態では、中間部は反射性であってもよい。例えば、中間部の表面積の少なくとも50%、例えば少なくとも60%、少なくとも70%など、更に具体的には、中間部の少なくとも80%が、園芸用光に関して反射性であってもよい。これは特に、植物が利用可能でない段階、又は植物が初期成長段階にある段階に適用されてもよい。それゆえ、実施形態では、園芸用装置は、植物を受け入れるための構造体を備え、構造体は、植物が配置され得る植物位置と、植物位置間の中間部と、を備え、1つ以上の中間部は、1つ以上の(第2の)反射要素を備える。
【0051】
それゆえ、園芸用装置は、特定の実施形態では、支持体を備える構造体を備えてもよく、支持体は、支持体上又は基材上の1つ以上の(第2の)反射要素と、植物の上方の1つ以上の(第1の)反射要素の配列と、を有する。それゆえ、実施形態では、植被の少なくとも一部の下方に1つ以上の反射要素と、植被の上方に1つ以上の反射要素と、が配置されてもよい。
【0052】
園芸用システムは、よって、1つ以上の反射要素を備え、そのうちの1つ以上が第1の反射要素として構成されてもよく、及び/又は、1つ以上が第2の反射要素として構成されてもよい。第1及び第2の反射要素の両方が存在する場合、園芸用システムは、よって、少なくとも2つの反射要素を備えてもよい。
【0053】
上述のように、制御システムは、光センサ(のセンサ信号)に応じて、園芸用光を制御してもよい。したがって、実施形態では、園芸用装置は、反射された園芸用光を検知する及び(1つ以上の)対応する光センサ信号を生成するように構成された1つ以上の光センサを更に備えてもよく、制御システムは、光センサ信号に応じて、園芸用光の光強度を制御するように構成される。相対的に多くの園芸用光が反射されると、センサは、より多くの放射線を検知し、その後、実質的に全ての園芸用光が植物によって吸収される。光センサは、園芸用光を検知するように構成されてもよい。実施形態のように、園芸用光のスペクトル分布は可変であってもよく、そのような実施形態では、またオプションとして、上記の波長範囲のうちの1つ(の一部)に関して選択的なセンサが適用されてもよい。代わりに又は加えて、青色及び赤色の両方を検知できる1つ以上のセンサが適用されてもよい。特定の実施形態では、1つ以上の光センサが、赤色の園芸用光を検知するためのチャネルと、青色の園芸用光を検知するためのチャネルと、を含む(当該光センサが適用されてもよい)。特定の実施形態では、1つ以上の光センサが、赤色の園芸用光を検知するためのチャネルと、遠赤色の園芸用光を検知するためのチャネルと、を含む(当該光センサが適用されてもよい)。特定の実施形態では、1つ以上の光センサが、青色の園芸用光を検知するためのチャネルと、赤色の園芸用光を検知するためのチャネルと、遠赤色の園芸用光を検知するためのチャネルと、を含む(当該光センサが適用されてもよい)。赤色光の種類の再利用が異なる場合があるため、制御システムは、そのようなセンサを用いてこれらの種類の光を区別するとともに、(オプションとして、遠赤色光を含んでもよい)園芸用光のスペクトル分布を制御してもよい。
【0054】
光センサは、実施形態では、基材に近接して、すなわち、照明デバイスよりも基材の近くに構成されてもよい。光センサはまた、実施形態では、基材よりも照明デバイスの近くに配置されてもよい。前者の実施形態では、センサは、上向きに検知するように構成されてもよい。葉が成長すると、反射が減少し、センサは、放射線をほとんど受けなくなる。後者の実施形態では、センサは、下向きに検知するように構成されてもよい。葉が成長すると、光の摂取が増加し、基材、支持体、又は基材に近接した反射要素による光反射が減少し、よって反射が減少し、センサは放射線をほとんど受けなくなる。
【0055】
したがって、実施形態では、園芸用装置は、成長媒体内で植物を成長させるように構成され、1つ以上の照明デバイスが、成長媒体から照明デバイス高さ(h1)で、成長媒体の上方に配置され、1つ以上の第1の光センサが、照明デバイス高さ(h1)の0~80%、例えば0~50%、0~40%のような、照明デバイス高さ(h1)の0~20%などの範囲から選択されるセンサ高さ(h2)で配置される。そのようなセンサは、(実施形態では)支持体に比較的近接してもよい。上述のように、特に、1つ以上の第1の光センサは、上側に向けられたセンサ表面を伴って構成されてもよい。更に、特に1つ以上の第1の光センサのうちの1つ以上が、1つよりも多くの植物を捉えるように構成される。これは、センサ読み取り値がより広い領域から来る光から導出され、それによって、植物間の任意の差異が概ね平均化される、という事実をふまえて、センサ読み取り値の精度を向上させるために有用であり得る。
【0056】
代わりに又は加えて、実施形態では、園芸用装置は、成長媒体内で植物を成長させるように構成され、1つ以上の照明デバイスが、成長媒体から照明デバイス高さ(h1)で、成長媒体の上方に配置され、(また)1つ以上の第2の光センサが、照明デバイス高さ(h1)の50~150%などの範囲から選択されるセンサ高さ(h2)で配置されてもよい。上述のように、特に、1つ以上の第2の光センサは、下側に向けられたセンサ表面を伴って構成される。更に、特に1つ以上の第2の光センサのうちの1つ以上が、1つよりも多くの植物を捉えるように構成される。これは、センサ読み取り値がより広い領域から来る光から導出され、それによって、植物間の任意の差異が概ね平均化される、という事実をふまえて、センサ読み取り値の精度を向上させるために有用であり得る。
【0057】
代わりに又は加えて、センサは、構造体などの支持体に近接するが、例えば、構造体などの支持体の上方で照明デバイス高さの5~40%で構成され、下側を向いてもよい。
【0058】
特に、実施形態では、1つ以上の光センサが、本質的に反射された園芸用光のみを受光するように構成されてもよい。これは特に、照明デバイスに近接して構成されたセンサに、そのような照明デバイスが植物の上/構造体の上に配置され、下向きに検知するように構成されるとき、及び/又は、そのようなセンサが照明デバイスの下流に構成されるときに、適用されてもよい。
【0059】
したがって、特定の実施形態では、1つ以上の光センサが、センサ表面を含み、センサ表面は、直接園芸用光を受光しないように構成される。それゆえ、センサは、照明デバイスの直接見通し線内に存在しなくてもよい。または、照明デバイスは、センサの直接見通し線内に存在しなくてもよい。
【0060】
光センサは、特定の方向情報なしに、光を検知するように構成された、例えばフォトセルなどのセンサを含んでもよい。特定の実施形態では、光センサは、CCDカメラなどのカメラを含んでもよい。カメラによって受けた光強度は、(また)反射要素による園芸用光の反射を評価するために使用することができる。加えて又は代わりに、そのようなカメラは、植被(の発達)を評価するために使用することができる。そのようなカメラはまた、葉面積指数など、葉の数及び/又はサイズに関連するパラメータを(制御システムによって)評価するために使用されてもよい。特定の実施形態では、制御システムは、葉の数及び/又はサイズに関連するパラメータと、植物によって効果的に受光される光強度との間の所定の関係に基づいて、園芸用光(強度)を制御してもよい。このようにして、園芸用光(強度)は、例えば、光レシピによって定義される目標光強度に準拠する有効光強度を提供するように制御されてもよい。カメラは特に、実施形態では、照明デバイス高さ(h1)の50~150%の範囲から選択されるセンサ高さ(h2)で配置されてもよい。
【0061】
このようなシステム及び/又は構成によって、システム及び/又は構成を、例えば、照明条件及び/又は他の条件を植物の物理的サイズ等に適応させるなど、成長する植物に対して作用する(反応する)ことを含む、日々適応させることなど、動的に制御することも可能であってもよい。
【0062】
上記のように、園芸用構成は、したがって、園芸照明用の園芸用照明システム(及びシステムの使用中に園芸光を受け得る植物)を含んでもよい。本明細書では、園芸用装置は特に、植物が利用可能である状況に関連して説明される。しかし、園芸用装置はまた、それ自体で特許請求される。
【0063】
園芸用照明システムは、(オプションとして、照明デバイスの光のスペクトル分布をいくらか修正した後に)園芸用光を提供するために特に使用される照明デバイスを備える。用語「園芸用光」は特に、(システムの使用中に)システムによって提供され、植物の1つ以上の部位に提供され得る、光を指す。「光」という用語は、可視光線を特に指すが、実施形態では、紫外線及び赤外線のうちの1つ以上を指す場合もある。光生成用デバイスは、特に、固体照明デバイスである。更に、「光生成用デバイス」という用語はまた、複数の(異なる)光生成用デバイスを指す場合がある。照明デバイスは、オプションとして色調整可能であってもよい。それゆえ、また更なる態様では、本発明はまた、園芸用照明システム自体を提供する。
【0064】
例えば、一態様では、本発明はまた、園芸用光を提供するように構成された園芸用照明システムであって、園芸用光を提供するように構成された1つ以上の照明デバイス(特に、複数の照明デバイス)と、(ii)反射された園芸用光を検知する及び(1つ以上の)対応する光センサ信号を生成するように構成された1つ以上の光センサと、(iii)1つ以上の光センサ信号に応じて、園芸用光の光強度及びスペクトル分布のうちの1つ以上を、特に、少なくとも園芸用光の光強度を、制御するように構成された制御システムと、を備える園芸用照明システムを提供する。
【0065】
園芸用装置又は園芸用照明システムは、園芸用光を植物に提供するための方法に使用されてもよい。また更なる態様では、本発明は、(園芸用光の一部を反射して反射された園芸用光を提供するように構成された)1つ以上の反射要素を備える園芸用装置において、園芸用光を植物に提供する方法であって、園芸用光を植物に提供するステップと、(1つ以上の反射要素による)園芸用光の反射に応じて、園芸用光の光強度及びスペクトル分布のうちの1つ以上を制御するステップと、を含む方法を提供する。また更なる態様では、本発明は、(園芸用光の一部を反射して反射された園芸用光を提供するように構成された)1つ以上の反射要素を備える園芸用装置において、園芸用光を植物に提供する方法であって、園芸用光を植物に提供するステップと、植被(の発達)に応じて、園芸用光の光強度及びスペクトル分布のうちの1つ以上を制御するステップと、を含む方法を提供する。例えば、実施形態では、制御システムは、葉面積指数に応じて、園芸用光の光強度を制御するように構成されてもよい。
【0066】
上記のように、そのような方法は、本明細書に記載される園芸用装置又は園芸用照明システムと組み合わせて使用されてもよい。それゆえ、実施形態では、園芸用装置又は園芸用照明システムは特に、本明細書に記載される方法を実行するように構成される。
【0067】
上記のように、園芸用照明システムは、xμmol/秒/mの光が提供されるように構成されてもよい。同様に、方法は、園芸用照明システムによってxμmol/秒/mの光を提供することを意味し得る。しかし、反射により、受けられる実際の強度は、nxμmol/秒/m(n≧1、例えば1≦n≦2)になる場合がある。方法によって、強度は、照明システムによって提供される強度が、反射に関して補正され、それにより、植物が目標値であるxμmol/秒/mの光を本質的に受光するように、制御することができる。時間と共に、植被が閉じるにつれて、nは約2~1に収束し得る。当然のことながら、最終値はまた、植物間の距離に依存し得る。しかし、最適な条件の下では、隣接する成熟(した)植物間に比較的小さな空間が存在するが、これは作物の種類に依存し得る。1つ以上の反射要素による園芸用光の反射は、反射要素によって光が本質的に向け直されない場合、実質的にゼロである。当然のことながら、植物自体による向け直しがいくらか存在し得る。1つ以上の反射要素による園芸用光の反射は、植物が小さく、又は基材レベルよりも下方にある場合、非常に多くなり得る。
【0068】
上記のように、本発明の制御は、例えば光レシピに基づくような基本的な制御に加えた制御であってもよい。それゆえ、実施形態では、方法は、既定の光レシピに従って園芸用光を制御するステップであって、光レシピが、(i)時間に応じた園芸用光の強度、及び(ii)時間に応じた園芸用光のスペクトル分布のうちの1つ以上の情報を含み、それによって、光レシピが、目標園芸用光強度及び/又は園芸用光の目標スペクトル分布を定義する、ステップと、(1つ以上の反射要素による)園芸用光の反射に応じて、園芸用光の光強度及びスペクトル分布のうちの1つ以上を制御するステップと、を含む。
【0069】
表現「園芸用光を制御する」及び同様の表現は特に、園芸用光の(i)(特に、ワット又は光子で表される)強度、(ii)スペクトル分布、(iii)カラーポイント、(iv)色温度などのうちの1つ以上など、園芸用光の1つ以上の照明特性を制御することを意味する。表現「園芸用光強度を制御する」及び同様の表現は特に、(特にワット又は光子で表される)積分強度を制御することを意味する。スペクトル分布を制御することにより、青色、赤色、及び/又は遠赤色などのスペクトル範囲が、(個々に)制御されてもよい。
【0070】
よって、反射は、園芸用光のより高い利得をもたらし得る。この利得は、葉の量及び数の関数である。光センサによって、利得が取得されてもよく、又は所定の(経時的な)利得関数を用いて、利得が推定されてもよい。それに基づいて、制御システムは、反射による高い強度(又は他のスペクトル分布)ではなく、ほぼ目標の光を植物に受けさせるように、園芸用光(強度及び/又はスペクトル分布)を適合させてもよい。本明細書では、用語「反射」はまた、「複数回の反射」を指し得る。よって、本発明は、反射要素における光の(複数回の)反射の補正を可能にしてもよい。
【0071】
したがって、また更なる態様では、本発明はまた、例えば、本明細書に記載されるような、1つ以上の反射要素を備える園芸用装置の制御システムに機能的に結合されるか又はそれによって備えられるコンピュータ上で実行されると、本明細書に記載される方法を引き起こすことができるコンピュータプログラム製品を提供する。
【0072】
したがって、本発明は、例えば、コンピュータにロードされると、本明細書に定義される方法を実施できるコンピュータプログラムを更に提供する。また更なる態様では、本発明は、請求項に記載されるコンピュータプログラムを記憶している記録担体(又はUSBスティック、CD、DVDなどのデータ担体)を提供する。それゆえ、当該コンピュータプログラム製品は、コンピュータ上で実行されるか、又はコンピュータ内にロードされると、本明細書で説明されるような方法を実現するか、又は実現することが可能となる。
【0073】
記録担体又はコンピュータ可読媒体及び/又はメモリは、任意の記録可能媒体(例えば、RAM、ROM、着脱式メモリ、CD-ROM、ハードドライブ、DVD、フロッピーディスク、又はメモリカード)であってもよく、又は、伝送媒体(例えば、光ファイバ、ワールドワイドウェブ、ケーブルを含む、ネットワーク、及び/又は、例えば、時分割多元接続、符号分割多元接続、若しくは他の無線通信システムを使用する、無線チャネル)であってもよい。コンピュータシステムで使用するために好適な情報を記憶することが可能な、既知又は開発された任意の媒体が、コンピュータ可読媒体及び/又はメモリとして使用されてもよい。追加的メモリもまた、使用されてもよい。メモリは、長期メモリ、短期メモリ、又は長期メモリと短期メモリとの組み合わせであってもよい。メモリという用語はまた、複数のメモリを指す場合もある。メモリは、本明細書で開示される方法、操作行為、及び機能を実施するように、プロセッサ/コントローラをコンフィギュレーションしてもよい。メモリは、分散されるか、又はローカルのものであってもよく、プロセッサは、追加的プロセッサが設けられてもよい場合、分散されるか、又は単一の形であってもよい。メモリは、電気、磁気、又は光メモリ、あるいは、これらのタイプ又は他のタイプの記憶デバイスの任意の組み合わせとして、実装されてもよい。更には、用語「メモリ」は、プロセッサによってアクセスされるアドレス可能空間内のアドレスに対して読み出し又は書き込みが可能な、あらゆる情報を包含するように、十分に広範に解釈されるべきである。この定義により、インターネットなどのネットワーク上の情報も、例えば、プロセッサが、当該ネットワークから当該情報を取得してもよいため、やはりメモリの範囲内である。
【0074】
コントローラ/プロセッサ及びメモリは、任意のタイプであってもよい。プロセッサは、説明される様々な動作を実行し、メモリ内に記憶されている命令を実行することが可能であってもよい。プロセッサは、特定用途向け集積回路、又は汎用集積回路であってもよい。更には、プロセッサは、本システムに従って実行するための専用プロセッサであってもよく、又は、本システムに従って実行するために、多くの機能のうちの1つのみが動作する、汎用プロセッサであってもよい。プロセッサは、プログラム部分、複数のプログラムセグメントを利用して動作してもよく、又は、専用集積回路若しくは多目的集積回路を利用する、ハードウェアデバイスであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
ここで、実施形態が、添付の概略図面を参照して例としてのみ説明され、図面中、対応する参照記号は、対応する部分を示す。
図1】園芸用装置を概略的に示す。
図2】典型的な成長層の断面で園芸用装置を概略的に示す。
図3】測定された光合成P(CO同化率)対レタス成長のための照射量(μmol/m/秒の光で表される)の概略図である。
図4】RFloor=80%、RCeiling=60%、並びにPAR及びFRで示される曲線についてそれぞれRPlant=5%及び35%で、式1から計算された利得対被覆率を示す。
図5】光強度の利得の測定結果対植物の年齢。Aで示されるグラフは、RFloor=0%及びRCeiling=0%(すなわち、黒色の床及び天井)の場合を示す。Dは、RFloor=80%及びRCeiling=60%(すなわち、光を良好に反射する床及び天井)の場合を指す。
図6】更なる実施形態を概略的に示す。この図は、成長層の幅に沿った断面の一部を示す。層は、容器(図面の平面の内外に回転する回転ベンチ)を含む。各容器には、灌注水を含むプラスチック製インレイが存在する。植物を伴うトレイは、各インレイ内に配置される。通気及びCO供給のための空気が層に入る側には、シールドが存在する。
【0076】
これらの概略図面は、必ずしも正しい縮尺ではない。
【発明を実施するための形態】
【0077】
植物農場(参照:図1)では、単位面積当たり生産量が、露地での生産量よりもはるかに高い。水の使用は、最小限に抑えられる。植物の病害及び害虫は、より容易に予防することができる。典型的に、植物農場では、植物が気候セル内で成長する。各セルは、1つ以上のラックを備える。各ラックは、植物を成長させるための複数の層を有する。図2は、本発明の一実施形態による、植物を成長させるための層の断面図を概略的に示す。植物(バジルなどのハーブ又はレタスなどの葉野菜)は、水栽培で成長する(植物は、水に溶けたミネラル又は有機栄養素によって土なしで成長する)。
【0078】
図1は、植物1のための園芸用装置1000の一実施形態を概略的に示す。園芸用装置1000は、園芸用光101を植物1に提供するように構成された園芸用照明システム100と、制御システム200と、を備える。制御システム200は、園芸用光101の光強度及びスペクトル分布のうちの1つ以上を制御するように構成される。照明システムは、1つ以上の照明デバイス110を備えてもよい。参照符号20は、気候セルを示す。内部は、照明デバイス110からの人工光のみを受け、昼光を本質的に受けなくてもよい。植物は、ラック上で成長する。参照符号400は、植物1を上又は内に配置できる構造体を示す。
【0079】
とりわけ、本明細書では、光に関する高い反射係数を有するベースプレート(以下では、「床」と呼ばれる)に各植物(正確には、植物、基材、及び植物ホルダの組み合わせ)を配置できる成長システムが提案される。植物の上方には、LED照明モジュールが配置される。モジュールの上方又はモジュール間には、また光に関する高い反射係数(以下、「天井」材料と呼ばれる)を有する材料(例えば図2を参照)が存在する。床及び天井の材料が広いスペクトルの光に関して高反射性であるという事実は、最初に植物間に行き着いた任意の光が、(材料特性に応じて拡散的又は鏡面的に)反射される可能性が高くなり、植物によって遮られる第2の機会を得ることになる。
【0080】
図2は、1つ以上の反射要素310が園芸用光101を植物1に向け直すように構成された一実施形態を示す。更に、制御システム200は、1つ以上の反射要素310による園芸用光101の反射に応じて、園芸用光101の光強度及びスペクトル分布のうちの1つ以上を制御するように構成される。
【0081】
Aで示される光線は、植物によって遮られる。Bで示される光線は、最初に植物間に行き着き、床材料により拡散反射され、その後に植物によって遮られる。光線Cは、最初に植物間に行き着き、その後に、植物によって遮られる前に天井材料によって反射される。それゆえ、園芸用光101は、参照符号102で示される反射された園芸用光をもたらすように反射されてもよい。植物の側にある1つ以上の反射要素310などによって植物の側で反射された園芸用光が、反射された園芸用光104として示され得る。照明デバイスの側にある1つ以上の反射要素310などによって植物の(十分に)上方の側で反射された園芸用光が、反射された園芸用光103として示され得る。
【0082】
図2に示されるように、園芸用装置1000は、植物1を受け入れるための構造体400を備える。構造体400は、植物1が配置され得る植物位置410と、植物位置410の間の中間部420と、を備える。ここで、1つ以上の中間部420は、1つ以上の反射要素310を備える。
【0083】
それゆえ、1つ以上の反射要素310は、第1の反射要素311を備えてもよい。これらは特に、植物の上方に配置される。1つ以上の反射要素310は、第2の反射要素312を備えてもよい。これらは特に、支持体上など、植被の少なくとも一部の下方に配置される。したがって、1つ以上の反射要素310は、(i)1つ以上の第1の反射要素311、及び(ii)1つ以上の第2の反射要素312のうちの1つ以上を備えてもよい。
【0084】
更に、園芸用装置1000は、反射された園芸用光101を検知する及び対応する光センサ信号を生成するように構成された1つ以上の光センサ210を備えてもよい。上記のように、制御システムは、光センサ信号に応じて、園芸用光101の光強度を制御するように構成される。
【0085】
よって、図2は、植物(1)を受け入れるための構造体(400)であって、植物(1)が配置され得る植物位置(410)と、植物位置(410)の間の中間部(420)と、を備え、1つ以上の中間部(420)が、1つ以上の反射要素(310)を備え、構造体(400)が、反射された園芸用光を検知するように構成された1つ以上の光センサ(210)を更に備える、構造体(400)を開示する。
【0086】
特に、園芸用装置1000は、成長媒体1010において植物1を成長させるように構成される。1つ以上の照明デバイス110は、成長媒体1010から照明デバイス高さh1で成長媒体1010の上方に配置される。1つ以上の第1の光センサ211が、照明デバイス高さh1の0~80%、例えば0~40%などの範囲から選択されるセンサ高さh2で配置される。特に、1つ以上の第1の光センサ211は、上側に向けられたセンサ表面202を伴って構成される。これらのセンサは、例えば、「床」に構成することができる。特に、1つ以上の第1の光センサ211のうちの1つ以上が、1つよりも多くの植物1を捉えるように構成される。
【0087】
更に、代わりに又は加えて、1つ以上の照明デバイス110が、成長媒体1010から照明デバイス高さh1で成長媒体1010の上方に配置され、1つ以上の第2の光センサ221が、照明デバイス高さh1の50~150%の範囲から選択されるセンサ高さh2で配置される。これらのセンサは、「天井」に構成することができる。特に、1つ以上の第2の光センサ221は、下側に向けられたセンサ表面202を伴って構成される。更に、特に1つ以上の第2の光センサ221のうちの1つ以上が、1つよりも多くの植物1を捉えるように構成される。
【0088】
光(及びエネルギー)の非常に効率的な使用をもたらす一方で、図2に示されるような園芸用装置1000は、植物によって経験される光強度(照射量)が経時的に一定にならない、という欠点を有する(光強度は、単位時間当たり及び単位表面積当たりの光子数として、μmol/秒/mの単位で表されることに留意されたい)。植物が比較的小さい場合、植物間には多くの開放空間が存在することになる。結果として、多くの光が再利用されることになり、期待されるよりもはるかに高くなり得る、植物によって経験される光強度をもたらす。
【0089】
植物成長に最適な典型的な光強度は、200μmol/秒/mである。光再利用の結果、植物によって知覚されるレベルは、この値のほぼ2倍に増加し、400μmol/秒/mになる場合がある。このレベルでは、植物は光に露出され過ぎ、成長は準最適となる。低い光強度では、光合成(それゆえ成長)が、光強度と共に線形的に増大することが確認される。光強度を更に増加させると、光合成が徐々に飽和し始め、このことは、成長効率が低下すること(図3も参照)を意味しており、成長効率の低下は、同じ量のバイオマスを生産するためにより多くのエネルギーを要することを意味する。これが、解決しようとする課題である。
【0090】
光強度を増加させることの別の態様は、それが、植物が成長障害(葉先焼けなど)を発症するリスクの増大につながることである。
【0091】
植物が成熟すると、植物間に開放空間が少なくなり、それゆえ、光再利用の影響が小さくなる(一般的に、植物の葉は、その葉に入射した光のわずかな部分のみを反射することに留意されたい)。
【0092】
植物が重なり合い始めると、ほとんどの光が葉によって吸収され、光がほとんど再利用されなくなる。その場合、植物によって経験される光強度は、LEDモジュールによって放出される光強度とほぼ等しくなる。
【0093】
床材料が光を反射しない場合(例えば、黒い表面)、(葉によって反射され、続いて天井材料から反射されるいくらかの光子を除いて)光再利用が起きないことに留意されたい。その場合、植物によって経験される光強度は、実装された光強度(すなわち、LEDモジュールによって1秒当たりに放出された光子の数と、1平方メートル当たりに設置されたモジュールの数とを乗算することによって得られる光強度)と一致することになる。
【0094】
一実施形態について、図4を参照して説明する。植物が比較的小さい場合、植物間には多くの開放空間が存在することになる。結果として、多くの光が再利用され、期待されるよりもはるかに高くなり得る、植物によって経験される光強度をもたらすことになる。図4では、「C」が被覆率を示し、「G」が利得を示す。
【0095】
床材料及び天井材料が光を反射しない状況を基準とみなす。その場合、光は再利用されず、植物によって経験される光強度は、(成長層の隣に行き着く光を別にすると)実装された光強度に等しい。
【0096】
この基準状況と比較して、床材料及び天井材料が光を反射する場合、光再利用の影響により、植物によって経験される光強度はより高くなる。この影響の大きさ(すなわち、基準状況に対する利得)は、以下の式から近似によって得ることができる。
【数1】
【0097】
ここで、RFloor及びRCeilingはそれぞれ、床材料及び天井材料の光反射係数である。CPlantは、植物によって覆われている床領域の割合である。RPlantは、植物の反射係数である。これらパラメータの典型的な値については、以下を更に参照されたい。
【0098】
式1は、利得の値が、被覆率(CPlant)と、床(RFloor)、天井(RCeiling)、及び植物(RPlants)の反射特性とから推定できることを示す。
【0099】
一般的に被覆率は事前に分からないため、以下の方法のうちの1つによって利得を推定することを提案する。
1.床を見下す光センサの読み取り値を使用するか、又は...
2.天井を見上げる光センサの読み取り値を使用するか、又は...
3.下向きのセンサの読み取り値及び上向きのセンサの読み取り値の組み合わせを使用する
【0100】
ランプによって放出される光強度(μmol/秒/mで表される)をLEmittedとする。下向き光センサの較正されたセンサ読み取り値(またμmol/秒/mで表される)をSDownwardとする。同様に、上向きのセンサの読み取り値をSUpwardとする。
【0101】
上記の3つの方法のそれぞれについて、利得が、以下のように推定され得る、と示すことができる。
下向きのセンサについて、
【数2】
上向きのセンサについて、
【数3】
下向き及び上向きのセンサの組み合わせについて、
【数4】
【0102】
これらの3つの方法のうち、方法1は、(センサが、植物被覆率が決定され得る画像を提供するカメラでない限り)植物被覆率CPlantの知識を依然として必要とするため、魅力的ではない。方法2は、1つのセンサのみが必要であるため、魅力的であるが、それは、放出光強度LEmittedを知っていることに依拠する。方法3はまた、放出光強度の知識が必要とされないため、魅力的である。それは、SDownward/SUpwardの比に依拠するため、センサは、相対的なレベルでのみ較正される必要があり、これは有利である。
【0103】
典型的に、植物によって知覚される光強度の利得対植物の被覆率は、図4に示されるようなものである。この図から、この場合、最初に植物によって知覚される光強度が、実装された光強度のほぼ2倍に高まる、と推測することができる。植物が徐々に大きく成長するにつれて、光強度は、実装レベルに近接したレベルに低下する。
【0104】
本発明者らは、成長中のこの利得を測定する実験を行い、その結果が図5に示される。結果は、図4に示されたモデル計算の結果と一致する。図4は、利得係数を被覆率の関数として示しており、図5は、利得(「G」)を時間(日数)の関数として示していることに留意されたい。
【0105】
利得は、上向きの光センサによって測定することができる。まず、光強度は、植物が存在せず、床及び天井の材料が黒色にされた状態について測定される。これは、(実装された光強度に等しい)基準光強度である。次に、光強度は、植物並びに床及び天井の反射性材料が所定位置にある状態で測定される。
【0106】
植物は、光レシピに基づいて成長される:光レシピは、1日及び日々の成長における時間の関数として、どのレベル及びスペクトルの光を提供するかの処方を提供する。例えば、レタスの場合、典型的な光レシピは、若年植物から成熟植物の全成長期間にわたり1日当たり18時間で200μmol/秒/mの光強度を提供するものとなるであろう。植物によって知覚される光強度に関する光再利用の前述の影響により、この光レシピは、成長中に維持することができない。
【0107】
本発明の主要な要素として、本発明者らは、(i)光再利用による利得、又は(ii)植物被覆率(式1を参照)に応答して、光強度(L)を調整することを提案する。
【0108】
植物に提供されることを意図した光強度をLとする。その場合、時間依存性の調光レベルは、L(t)≒L/Gain(t)となる。ここで、Lは、光再利用がない場合(利得=1)の光強度である。これは、以下のように、より複雑な光レシピに拡張することができる。L(t)は、植物成長に最適であると想定される(植物によって知覚される)時間依存性の光強度であると想定する。無視できない光再利用の場合、光強度を以下のように調整すること:L(t)≒L(t)/Gain(t)、すなわち、放出光と利得との間の反比例関係を使用することを提案する。
【0109】
一般に、可視光の放出に次いで、照明モジュールは、遠赤色光を放出するLEDを備えていることが多い。遠赤色(far-red;FR)光に関する葉の反射係数は、PAR光の反射係数と比較して大きいため、遠赤色光に関する利得係数も大きくなる。また、可視PAR光は、葉の発光をもたらすことになる。この発光はまた、遠赤外のスペクトル領域にあり、それによって、遠赤色光に関する利得係数を更に増加させる(図4も参照)。換言すれば、理想的な調光係数は、植物に提供される光の波長に依存することになる。
【0110】
前述のように、光レシピは、最適な成長をもたらすために、植物によって知覚される光強度及びスペクトルをどのように調節するかについての全般的な処方を提供する。この処方は、若年植物から成熟植物への植物の発達をカバーする。光再利用の影響は、植物によって知覚される光強度及びスペクトルを改変するため、この影響は考慮されなければならない。更に、光再利用の量は、植物農場に固有であり、成長層の構成、LEDモジュールの放出プロファイル、特に床及び天井の材料の光特性に依存する。
【0111】
これらの考えを考慮すると、本実施形態は、全般的な光レシピを実行可能にするために、以下の特徴を有する。
・選択される植物品種の最適な成長のための光レシピが、記憶媒体(例えば、クラウド内のデータベース)に記憶されている。
・ユーザは、記憶されている光レシピの1つを実行するように、植物農場の制御システムに指示する。
・センサは、植物成長の特性を測定するために使用される。センサ読み取り値は、生じる光再利用の量(すなわち、利得)を確認するために、コンピュータ上のアルゴリズムによって使用される。
・センサは、光センサ(例えば、単純なフォトダイオード、異なるスペクトル感度を有するフォトダイオードのアレイ、スペクトル計、又は(ハイパースペクトル)カメラ)である。センサは、天井に近接して配置され、床を見下ろす、及び/又は床に近接して配置され、天井を見上げる。好ましくは、センサの視野は、実質的に1つよりも多くの植物が当該視野に入るようなものである。
・光強度及びスペクトルは、測定又は推定された利得に基づいて調節される。
・調節された光設定に基づいて、照明システムの電力消費が測定又は推定される。この情報は、気候制御システムに対して分割される。気候制御システムは、気候制御を改善するために、この情報を考慮するアルゴリズムを実行する。気候制御システムは、植物農場制御システムの一部である。
【0112】
更なる実施形態について、図6を参照して説明する。ここで、Fは、オプションの空気流を示し、LSは光シールドを示し、Iは灌注水入口を示す。本実施形態は、以下の機能を有するシールドを説明する。
・それは、藻類の成長を防止するために、光が灌注水に到達することを防止する。
・それは、利得係数などの光特性を決定するためのセンサ(図中のセンサS1)、及び植物成長に関連する他の特性を決定するためのセンサ(センサS2:温度、相対湿度、空気速度、COレベル)、又は灌注水の特性を決定するためのセンサ(センサS3:水温、水位、水のO含有量)などのセンサを取り付けるために使用される。
・シールドは、成長層の縁において作物に対する直接的な空気流を防止する。
【0113】
加えて、
・各成長層の両縁にシールドを設置することが推奨される。
・シールドは、光を(鏡面的に又は拡散的に)反射するように作られ、これは、縁における光利用率及び作物均一性を向上させることになる。
・シールドは、灌注水供給管のための機械的支持体として使用することができる。
【0114】
したがって、一態様では、本発明はまた、植物のための園芸用装置であって、(i)園芸用光を植物に提供するように構成された園芸用照明システムと、(ii)園芸用光の一部を植物に反射するように構成された1つ以上の反射要素と、(iii)制御システムと、を備え、制御システムが、推定又は測定された利得(係数)に応じて、園芸用光の光強度及びスペクトル分布のうちの1つ以上を制御するように構成される、園芸用装置を提供する。更に一態様では、本発明はまた、(i)園芸用光を(植物に)提供するように構成された1つ以上の照明デバイス(特に、複数の照明デバイス)と、(ii)制御システムと、(iii)オプションとして、1つ以上のセンサと、を備え、制御システムが、推定又は測定された利得(係数)に応じて、園芸用光の光強度及びスペクトル分布のうちの1つ以上を制御するように構成され、利得(係数)が、1つ以上のセンサの1つ以上のセンサ信号に基づいて推定又は測定され得る、園芸用照明デバイスを提供する。また、一態様では、本発明はまた、1つ以上の反射要素を備える園芸用装置において園芸用光を植物に提供する方法であって、園芸用光を植物に提供するステップと、推定又は測定された利得(係数)に応じて、園芸用光の光強度及びスペクトル分布のうちの1つ以上を制御するステップと、を含む方法を提供する。上述のように、利得(係数)は、1つ以上のセンサの1つ以上のセンサ信号に基づいて推定又は測定されてもよい。この装置、照明システム、及び/又は方法に関連する実施形態が、とりわけ上述されている。
【0115】
「実質的に全ての光(substantially all light)」、又は「実質的になる(substantially consists)」などにおける、本明細書の用語「実質的に(substantially)」は、当業者には理解されるであろう。用語「実質的に」はまた、「全体的に(entirely)」、「完全に(completely)」、「全て(all)」などを伴う実施形態も含み得る。それゆえ、実施形態では、当該形容詞はまた、実質的に削除される場合もある。適用可能な場合、用語「実質的に」はまた、95%以上、特に99%以上、更に特に99.5%以上などの、100%を含めた90%以上にも関連し得る。用語「備える(comprise)」は、用語「備える(comprises)」が「からなる(consists of)」を意味する実施形態もまた含む。用語「及び/又は」は、特に、その「及び/又は」の前後で言及された項目のうちの1つ以上に関連する。例えば、語句「項目1及び/又は項目2」、及び同様の語句は、項目1及び項目2のうちの1つ以上に関連し得る。用語「含む(comprising)」は、一実施形態では、「からなる(consisting of)」を指す場合もあるが、別の実施形態ではまた、「少なくとも定義されている種、及び任意選択的に1つ以上の他の種を包含する」も指す場合がある。
【0116】
更には、明細書本文及び請求項での、第1、第2、第3などの用語は、類似の要素を区別するために使用されるものであり、必ずしも、連続的又は時系列的な順序を説明するために使用されるものではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書で説明される本発明の実施形態は、本明細書で説明又は図示されるもの以外の、他の順序での動作が可能である点を理解されたい。
【0117】
本明細書のデバイスは、とりわけ、動作中について説明されている。当業者には明らかとなるように、本発明は、動作の方法又は動作中のデバイスに限定されるものではない。
【0118】
上述の実施形態は、本発明を限定するものではなく、むしろ例示するものであり、当業者は、添付の請求項の範囲から逸脱することなく、多くの代替的実施形態を設計することが可能となる点に留意されたい。請求項では、括弧内のいかなる参照符号も、その請求項を限定するものとして解釈されるべきではない。動詞「備える、含む(to comprise)」及びその活用形の使用は、請求項に記述されたもの以外の要素又はステップが存在することを排除するものではない。文脈が明らかにそうではないことを必要としない限り、明細書本文及び請求項の全体を通して、単語「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」などは、排他的又は網羅的な意味ではなく包括的な意味で、すなわち、「含むが、限定されない」という意味で解釈されたい。要素に先行する冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、複数のそのような要素が存在することを排除するものではない。本発明は、いくつかの個別要素を含むハードウェアによって、及び、好適にプログラムされたコンピュータによって実施されてもよい。いくつかの手段を列挙するデバイスの請求項では、これらの手段のうちのいくつかは、1つの同一のハードウェア物品によって具現化されてもよい。特定の手段が、互いに異なる従属請求項内に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが、有利に使用され得ないことを示すものではない。
【0119】
本発明は更に、明細書本文で説明される特徴及び/又は添付図面に示される特徴のうちの1つ以上を含む、デバイスに適用される。本発明は更に、明細書本文で説明される特徴及び/又は添付図面に示される特徴のうちの1つ以上を含む、方法又はプロセスに関する。
【0120】
本特許で論じられている様々な態様は、更なる利点をもたらすために組み合わされることも可能である。更には、当業者は、実施形態が組み合わされることが可能であり、また、3つ以上の実施形態が組み合わされることも可能である点を理解するであろう。更には、特徴のうちのいくつかは、1つ以上の分割出願のための基礎を形成し得るものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6