(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼン
(51)【国際特許分類】
C07D 263/64 20060101AFI20240822BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20240822BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240822BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20240822BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240822BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C07D263/64
A61K8/49
A61Q17/04
A61Q19/08
A61Q19/00
A61K8/06
(21)【出願番号】P 2020545167
(86)(22)【出願日】2019-03-19
(86)【国際出願番号】 EP2019056881
(87)【国際公開番号】W WO2019180042
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-01-12
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100206944
【氏名又は名称】吉川 絵美
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】メンドロク-エディンガー, クリスティーン
(72)【発明者】
【氏名】シュリフク-ポシャルコ, アレクサンダー
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第02/039972(WO,A1)
【文献】特開2017-101091(JP,A)
【文献】特開2003-192557(JP,A)
【文献】米国特許第06030607(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C09K 3/00-3/32
A61K 8/49-8/99
A61Q 17/00-17/04
A61P 17/00-17/00
CA/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
の微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの、非晶質固
体であって、前記微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンが、レーザー回折によって測定される最大300nmの平均粒子径Dn50を有する、非晶質固
体。
【請求項2】
前記平均粒子径は、50~300nmの範囲において選択されることを特徴とする、請求項1に記載の非晶質固
体。
【請求項3】
前記微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンが、0.40~0.55の範囲におけるUVB:UVA比によって特徴付けられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の非晶質固
体。
【請求項4】
前記微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンが、≧780の、320nmにおける比吸光度E 1/1によって特徴付けられることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の非晶質固
体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の非晶質固
体を含む水性分散液。
【請求項6】
前記水性分散液中の前記微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの量は、前記水性分散液の総重量を基準として25~60重量%の範囲において選択されることを特徴とする、請求項5に記載の水性分散液。
【請求項7】
少なくとも1種の磨砕助剤及び/又は少なくとも1種の添加剤を更に含むことを特徴とする、請求項5又は6に記載の水性分散液。
【請求項8】
前記少なくとも1種の磨砕助剤は、アルキルポリグルコシドであり、及び前記少なくとも1種の添加剤は、湿潤剤、増粘剤及び消泡剤並びにこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の水性分散液。
【請求項9】
前記少なくとも1種の添加剤は、プロピレングリコール、キサンタンガム、ジェランガム及びシメチコン並びにこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項7又は8に記載の水性分散液。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の非晶質固
体又はその水性分散液を含む局所用組成物。
【請求項11】
前記局所用組成物中の前記微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの量は、前記局所用組成物の総重量を基準として0.1~20重量%の範囲において選択されることを特徴とする、請求項10に記載の局所用組成物。
【請求項12】
水中油型(O/W)エマルジョンの形態又は油中水型(W/O)エマルジョンの形態であることを特徴とする、請求項10又は11に記載の局所用組成物。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載の非晶質固
体又はその水性分散液を調製する方法であって、
(1)式(I)の前記1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの粗大粒子、水及び粉砕媒体並びに任意選択的に磨砕助剤及び/又は更なる添加剤の混合物を調製するステップと、
(2)前記混合物を、300nm未満の平均粒子径D
n50が得られるまで磨砕するステップと
を包含する方法。
【請求項14】
局所用組成物中に含有される脂肪及び油の表面への移行を低減するための、レーザー回折によって測定される最大300nmの平均粒子径Dn50を有する式(I)の微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼン又はその水性分散液の使用。
【化2】
【請求項15】
微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼン又はその水性分散液が、請求項1~9のいずれか一項に記載の非晶質固体又はその水性分散液である、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、新規な微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼン及び局所用組成物中におけるその使用に関する。
【0002】
サンケア製品は、ここ40年間で大きく進化した。シワ、皮膚疾患及び皮膚癌に寄与する最も重要な因子は、UV-B線であると考えられていたため、初期の製剤は、使用者をUV-B放射(UVB)から保護することを企図していた。しかし、より最近の研究では、UV-A放射(UVA)も、日光による損傷並びに紅斑性狼瘡、黒色腫及び非黒色腫皮膚癌等の皮膚疾患の発生に関して、同程度に又は更にそれを上回って重要性であることが示されている。したがって、現在、皮膚の損傷を回避するために、UVB(290~320nm)光を可能な限り排除すると共に、UVA(320~400nm)光を十分に排除することに焦点が当てられている。それにも関わらず、最新のサンケア製品は、皮膚を日焼けさせるはずであり、これは、主としてUVA光によって誘発されるものである。即ち、日焼け止め製品の効力に関する2006年9月22日付の欧州連合勧告(欧州連合官報L 265/39)によれば、今日のサンケア製品は、UVBのみならずUVAも十分に防御すべきである。即ち、(UVB)日光防御指数(SPF)に対するUVA防御指数(UVA-PF)の比が少なくとも0.33となるべきである。これは、UV遮蔽剤(の組合せ)がUVB光及びUVA光の両方を防御すべきであり、UVB範囲の防御性がUVA範囲の防御性の3倍の高さであるべきであることを意味する。更に、サンケア製品の包装において、円で囲まれたUVAという頭字語を表示するには、臨界波長の値が少なくとも370nmでなければならない。
【0003】
したがって、現在のサンケア製品は、1種又は2種のUV遮蔽剤で上述の要件を達成することが容易でないため、この要件を満たすために多量の異なるUV遮蔽物質を含有している。しかしながら、このようにすることにより、慣用のUV遮蔽物質の多くは、油状であるか又はこれらを可溶化するために多量の油を必要とするかのいずれかであることが多いため、配合がかなり制約を受ける。したがって、そのようなサンケア製品は、多量に油を含有させたことに起因して、消費者の許容性を低下させることが知られている不快な官能特性を呈することが多く、その結果として、製品を皮膚に塗布する量及び/又は回数を、推奨されている使用水準よりも大幅に低下させることになる。
【0004】
したがって、好ましくは単独で機能する遮蔽剤として日焼け止め製品の配合を可能にすると同時に、高いSPFを示し、上に述べたEUのUVA防御要件を満たす新規なUV遮蔽剤が継続的に必要とされている。更に、この種のUV遮蔽剤は、サンケア製品全体の油含有量を低減することを可能にするために、有利には水溶性又は水分散性であるべきである。
【0005】
最近、スマートフォン及びタブレット等の携帯機器の利用が進んでいることから、更に新たな問題が発生している。サンケア製品に含まれる油のタッチスクリーン又は眼鏡のレンズ等の表面への望ましくない移行が起こり、それにより表面が汚れ、これは、当然のことながら最終消費者にとって非常に望ましくない。したがって、物質の移行、特にその中に含有されている油等の硬質表面への移行が低減されたサンケア製品も求められている。
【0006】
PARSOL(登録商標)MAX(INCI:メチレンビス-ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、(nano)MBBT)及びUVINUL(登録商標)A2B(INCI:トリスビフェニルトリアジン(nano)、TBPT)は、2種の市販されている微粉化された広帯域遮蔽剤であり、これらは、UVA吸収性及びUVB吸収性間の間隙をなくすことにより、従来のUV遮蔽剤の吸収特性を補うことを目的として開発された。しかしながら、両方の遮蔽剤は、その吸収特性のため、高いSPFを付与すると同時に、EU勧告及び/又は臨界波長要件を満たす単独で機能する遮蔽剤として使用することができない。したがって、要求された防御性を達成するためには、これらの遮蔽剤は、やはり従来のUV遮蔽剤と組み合わせなければならない。
【0007】
国際公開第200239972号パンフレットは、10nm~5μmの範囲において選択される平均粒子径を有する、1種又は数種のベンズアゾール及び/又はベンゾフランを含む不溶性有機粒子を開示している。更に、国際公開第200239972号パンフレットは、450nmの平均粒子径を有する結晶性1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの水性分散液及びクリームにおけるその使用を開示しており、これは、たとえ使用量を多くしても比較的低いSPFのみが得られ、したがって効果の高い最近のサンケア製品の配合に適していない。
【0008】
驚くべきことに、ここで、1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼン(DBO)を約200nmの平均粒子径に微粉化することにより、単独で機能する遮蔽剤として上述のUV吸収性要件を全て満たす水分散性有機UV遮蔽剤が得られることを見出した。この新規なUV遮蔽剤は、水分散性を有するため、現在の配合の制約を緩和することもできる。更に、そのような1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、サンケア製品の物質移行、即ち前記1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを含む局所用組成物中に含有される物質の移行も大幅に低減する。したがって、この新規なUV遮蔽剤は、最新のサンケア製品の発展においてより柔軟性の高い配合要素となる。
【0009】
更に、驚くべきことに、約200nmの平均粒子径を有する結晶性1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼン(DBO)は、UV性能が比較的低いことに加えて、配合物の保存をより不安定にする一方、それぞれの非晶質固体形態は、非常に優れたUV防御性を付与するのみならず、配合物の保存安定性を向上させることを見出した。
【0010】
したがって、第1の実施形態において、本発明は、最大300nmの平均粒子径を有する、式(I)
【化1】
の微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンに関する。
【0011】
本明細書において用いられる「平均粒子径」という語は、レーザー回折、例えばMalvern Mastersizer 2000(ISO 13320:2009)を用いたレーザー回折によって求められる、平均の個数基準の粒子径分布Dn50(Dn0.5としても知られる)を指す。
【0012】
本明細書において用いられる「物質の移行」という語は、局所用組成物を表面に適用し、その後、前記表面を異なる物体の表面と接触させ、再び分離した場合、局所用組成物又はその何らかの成分がまとまって移行することを指す。この接触により、一部の物質は、最初の表面から異なる物体の表面に移行する。移行した物質の量は、第2の物体の重量増加を測定することによって求めることができる。
【0013】
特に有利な実施形態において、本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、レーザー回折(Malvern Mastersizer 2000)によって測定される50~300nmの範囲、より好ましくは100~300nmの範囲、最も好ましくは120~280nmの範囲、例えば140~240nmの範囲又は150~220nmの範囲のDn50を示す。
【0014】
好ましくは、本発明の全ての実施形態において、本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、更に、レーザー回折(Malvern Mastersizer 2000)によって求められたDn10(Dn0.1としても知られる)が30~230nmの範囲、より好ましくは80~180nmの範囲、最も好ましくは100~160nmの範囲である。
【0015】
好ましくは、本発明の全ての実施形態において、本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、更に、レーザー回折(Malvern Mastersizer 2000)によって求められたDn90(Dn0.9としても知られる)が250~350nmの範囲、より好ましくは300~400nmの範囲、最も好ましくは325~375nmの範囲である。
【0016】
特に有利な本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、レーザー回折(Malvern Mastersizer 2000)によって求められたDn10が100~160nmの範囲であり、Dn50が150~220nmの範囲であり、且つDn90が325~375nmの範囲である。
【0017】
一層好ましい実施形態において、本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、少なくとも400、好ましくは少なくとも500、最も好ましくは少なくとも600の、λmax(即ち吸光スペクトルにおいて吸光度が最大となる波長)におけるE1/1値を示す。比吸光度E1/1(1cm/1%)は、当業者によく知られており、これは、試験化合物を濃度1%(w/v)の溶液又は分散液とし、光学的厚さを1cmとした場合の対応する吸光度である。
【0018】
本発明の全ての実施形態において、微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、非晶質固体形態であることがより好ましく、これは、驚くべきことに、UV吸収/防御、SPFへの寄与及び製剤安定性に関して、それぞれの結晶形態と比較して向上した物理的特性を示す。
【0019】
本明細書において用いられる「非晶質固体形態」という語は、溶液又は混合物において液相から固相が急速に形成/分離することによって形成される固体粒子を指し、そのため、固体は、結晶ネットワークを選択的に形成する時間がなく、したがって、得られた固体は、主として無秩序形態(本明細書では「非晶質固体1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼン」とも称する)となる。この形態は、本明細書に例示するようにXRPD解析によって同定することができる。本発明による非晶質固体1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、UV吸収/防御、SPFへの寄与及び製剤安定性に関して、それぞれの結晶形態と比較して向上した物理的特性を示す。
【0020】
本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの非晶質固体形態は、それぞれの結晶形態がそれよりもはるかに低い比吸光度E 1/1を示し、即ち320nmにおけるE 1/1が719のみである一方、≧750、好ましくは≧780の、320nmにおける比吸光度E 1/1によって特徴付けられる(全て活性物質を基準とする)。したがって、好ましい実施形態において、本発明による1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの非晶質固体形態は、少なくとも750、より好ましくは少なくとも780の、320nmにおける比吸光度E 1/1によって特徴付けられる。一層好ましくは、320nmにおける比吸光度E 1/1は、780~850の範囲、最も好ましくは800~845の範囲において選択される。
【0021】
比吸光度E 1/1(1cm/1%)は、当業者によく知られており、試験化合物を濃度1%(w/v)の溶液又は分散液とし、光学厚さを1cmとした場合の、λmax(即ち吸光スペクトルにおいて吸光度が最大になる波長)における(ベースライン補正した)吸光度である。
【0022】
微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの非晶質固体形態は、実質的に
図2の線3及び4に示す通りのX線粉末回折(XRPD)パターンによって更に特徴付けられ、これは、結晶性1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンのもの(
図2、線1及び2)と実質的に異なる。
図1から読み取れるように、結晶形態は、2θ=25~28°のピーク(CuΚ-α線)が明確なベースライン分離によって特徴付けられる一方、非晶質固体形態は、上述のベースライン分離を示さない。X線回折パターンは、Bruker D8 Advance powder X-ray diffractometerを使用し、反射(ブラッグ-ブレンターノ(Bragg-Brentano)型)配置でLynxEye検出器及びCuΚα線を用いて記録した。
【0023】
本発明の全ての実施形態において、本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、好ましくは、0.40~0.55の範囲、より好ましくは0.44~0.54の範囲、最も好ましくは0.47~0.51の範囲において選択されるUVB対UVA吸光度の比を示す。この比は、微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを0.001%(w/v)の濃度で水中に分散させて、そのUVスペクトルを測定し、290~320nm(UVB)に対する面積%を320~400nm(UVA)に対する面積%で除すことによって比を算出することによって決定される。前記比は、本発明による非晶質固体形態の1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンに特徴的なものである。
【0024】
他の実施形態において(又は追加の実施形態においてさえも)、1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの非晶質固体形態は、示差走査熱量分析(DSC)サーモグラムによる開始温度が約345~351の範囲であり、熱容量が約115~135J/gの範囲であることで特徴付けることもできる。DSCによる吸熱は、実施例に概要を説明するように、Mettler Toledo DSC1(温度範囲:25℃~400℃;昇温速度:4℃/min)において記録した。
【0025】
本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、一般的な化粧用油に不溶であることが十分に理解されており、ここで、「不溶」という語は、室温(即ち約22℃)における一般的な化粧用油、例えば安息香酸アルキル(C12~15)、プロピレングリコール、鉱油等であるのみならず、水中においても、その溶解性が0.01重量%未満、好ましくは0.05重量%未満、最も好ましくは0.03重量%未満であることを指し、したがってサンケア製品等の局所用組成物に添加した後も特定の状態のままとなる。
【0026】
本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、例えば、国際公開第9522959号パンフレット及び国際公開第9703643号パンフレットに概説されている、当該技術分野における標準的な微粉化方法によって製造することができ、それらは、参照により本明細書に援用される。
【0027】
式(I)の1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの粗大粒子、即ち>350nmの粒子径を有する粒子は、例えば、国際公開第2002039972号パンフレットの実施例1に概説されており、実施例において例示されているように、析出及び/又は(再)結晶に続いて、任意選択的に予備粉砕(例えば、コロイドミルを用いて)を行うことによって調製することができる。
【0028】
非晶質固体形態の1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの粗大粒子は、好ましくは、(1)テレフタル酸及び2-アミノフェノールを反応させることにより、1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを生成するステップと、(2)こうして得られた1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを好ましくは(氷)水の存在下で析出させることにより、1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの非晶質固体を得るステップとを包含するプロセスによって調製される。任意選択的に、このプロセスは、中間体の精製ステップを含むことができる。代わりに、1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの非晶質固体は、溶媒で洗浄することによって更に精製することができ、その場合、1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、これらに限定されるものではないが、例えばトルエン及び/又は1-ブタノール等のアルコール等に殆ど又は全く溶解しない。
【0029】
次いで、本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを得るために、この粗大粒子は、当該技術分野における従来の磨砕方法により、本明細書に記載するあらゆる定義及び好ましい事項を有する粒子径が得られるまで、例えば公知の磨砕装置、例えばジェットミル、ボールミル、振動ミル又はハンマーミル、好ましくは高速撹拌ミルを使用して、任意選択的に好ましくは磨砕助剤及び微粉化された有機UV遮蔽剤の調製に慣用されている更なる添加剤の存在下で粗大粒子を磨砕することによって微粉化される。好ましくは、最新のボールミルが使用される。このような種類の粉砕機の製造業者は、例えば、Netzsch(LMZ mill)、Drais(DCP-Viscoflow又はCosmo)、Buehler AG(遠心ミル)又はBachhoferである。
【0030】
本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、粉末形態又はその分散液として使用することができる。有利には、本発明の全ての実施形態において、本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、例えば、湿式粉砕法によって得られるその水性分散液の形態で使用される。
【0031】
好ましい実施形態において、本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、湿式粉砕法によって調製される。
【0032】
したがって、本発明は、本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを湿式粉砕法によって調製する方法にも関する。好ましい実施形態において、本発明は、本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを調製する方法に関し、前記方法は、式(I)の1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの粗大粒子、水並びに任意選択的に磨砕助剤及び/又は更なる添加剤の混合物(以下では磨砕混合物と称する)を調製するステップと、前記混合物を粉砕媒体の存在下において、1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの粗大粒子が本発明による微粉化形態に変換されるまで、即ち本明細書に示すあらゆる定義及び好ましい事項を有する粒子径が達成されるまで磨砕するステップとを包含する。最も好ましくは、前記方法は、ボールミルにおいて、最も好ましくは粉砕媒体としてケイ酸ジルコニウムボールを使用して、50~300nmの範囲、より好ましくは100~300nmの範囲、最も好ましくは120~280nmの範囲、例えば140~240nmの範囲又は150~220nmの範囲の平均粒子径Dn50が得られるまで混合物を磨砕することを包含する。
【0033】
前記磨砕混合物中の1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの粗大粒子の量は、好ましくは、磨砕混合物の総重量を基準として10~90重量%、20~80重量%又は30~70重量%の範囲、より好ましくは25~60重量%の範囲、例えば25~55重量%の範囲において選択される。
【0034】
前記磨砕混合物中の磨砕助剤及び/又は添加剤の量は、好ましくは、磨砕混合物の総重量を基準として0.01~25重量%の範囲、より好ましくは2~20重量%の範囲、最も好ましくは3~15重量%の範囲、例えば5~10重量%の範囲において選択される。
【0035】
本明細書において用いられる「添加剤」という語は、微粉化プロセス、特に微粉化された有機UV遮蔽剤の水性分散液を調製する微粉化プロセス等において慣用されている添加剤等を指す。好ましい添加剤は、消泡剤、湿潤剤、塩、防腐剤及び増粘剤である。これらの添加剤は、例えば、湿式粉砕法によって得ることができる本発明による非晶質固体形態の1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの水性分散液を安定化させるために、磨砕前/中又は磨砕後のいずれかで添加することができる。
【0036】
粉砕媒体、例えば石英砂、ガラスボール又はケイ酸ジルコニウムボールを濾別した後、本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼン、水並びに任意選択的に磨砕助剤及び/又は添加剤から基本的になる濾液は、そのままで使用することができるか、又は例えば水性分散液を安定化させるために添加剤を更に混合することができる。代わりに、粉末形態である微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを得るために濾液を乾燥させることができる。
【0037】
本発明の全ての実施形態において、微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、好ましくは、(混合された)濾液の形態、即ち本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼン、水並びに任意選択的に磨砕助剤及び/又は添加剤から基本的になる水性分散液の形態で使用される。
【0038】
したがって、他の実施形態において、本発明は、本発明による微粉化されたUV遮蔽剤、水並びに任意選択的に少なくとも1種の磨砕助剤及び/又は少なくとも1種の添加剤から基本的になる水性分散液にも関する。
【0039】
本発明による微粉化されたUV遮蔽剤がその水性分散液の形態で使用される場合、前記水性分散液は、好ましくは、微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを、水性分散液の総重量を基準として10~90重量%、20~80重量%又は30~70重量%の範囲、より好ましくは25~60重量%の範囲、最も好ましくは25~55重量%の範囲、例えば20~40重量%の範囲又は25~35重量%の範囲において選択される量で含む。
【0040】
更に、前記水性分散液は、好ましくは、少なくとも1種の磨砕助剤及び/又は少なくとも1種の添加剤を、水性分散液の総重量を基準として0.01~25重量%の範囲、より好ましくは2~20重量%の範囲、最も好ましくは3~15重量%の範囲、例えば5~10重量%の範囲において選択される(総)量で含む。
【0041】
本発明による特に好適な磨砕助剤は、特に、アニオン性、非イオン性、両性及びカチオン性界面活性剤並びにその混合物等、分散剤として使用することができる界面活性成分である。この種の界面活性磨砕助剤は、例えば、国際公開第9522959号パンフレット及び国際公開第9703643号パンフレットに開示されており、それらは、参照により本明細書に援用される。
【0042】
最も好ましくは、全ての実施形態において、本発明による少なくとも1種の磨砕助剤は、アルキルポリグルコシドである。
【0043】
「アルキルポリグルコシド(APG)」という語は、一般式CnH2+nO(C6H10O5)xH(式中、nは、2~22の範囲において選択される整数であり、xは、グルコシド部分の平均重合度を表す(モノ-、ジ-、トリ-、オリゴ-及びポリ-グルコシド))を有する種類の非イオン性界面活性剤を表す。このAPGは、家庭用途及び産業用途に幅広く利用されている。これらは、一般に、トウモロコシ由来のグルコース及び植物由来の脂肪族アルコール等の再生可能な原料から得られる。これらのアルキルポリグルコシドは、一般に、グルコシド部分の平均重合度が1~1.7の範囲、好ましくは1.2~1.6の範囲、例えば1.4~1.6の範囲である。
【0044】
特に有利なアルキルポリグルコシドは、カプリリル(C8)及びカプリル(C10)ポリグルコシドから基本的になるC8~10アルキルポリグルコシドである。好ましくは、この種のカプリリル(C8)及びカプリル(C10)ポリグルコシドは、更に、カプリリル(C8)モノグルコシド対カプリル(C10)モノグルコシドの比(%/%、%は、全てHPLC-MSによって求められた面積%である)が3:1~1:3の範囲、好ましくは約2:1~1:2の範囲、最も好ましくは1.5:1~1:1.5の範囲である。加えて、この種のC8~10アルキルポリグルコシドは、好ましくは、C12アルキルモノグルコシドを3重量%以下、より好ましくは2重量%以下、最も好ましくは1.5重量%以下(HPLC-MSによって測定)で含む。この種のアルキルポリグルコシドは、より高級な(即ちC14~16)アルキルポリグルコシドを基本的に含まないことが理解される。
【0045】
本発明の全ての実施形態において、特に有利なC8~10アルキルポリグルコシドは、トウモロコシ由来のグルコースと、ヤシ油及びパーム核油から誘導されたC8及びC10脂肪族アルコールとから製造されたものであり、これは、例えば、商品名Green APG0810でShanghai Fine Chemicalから水性分散液として販売されている。
【0046】
本発明による水性分散液における磨砕助剤の量は、好ましくは、水性分散液の総重量を基準として1~20重量%の範囲、より好ましくは2~15重量%の範囲、最も好ましくは5~10重量%の範囲において選択される。
【0047】
担体油は、水不溶性のパラフィン系及びナフテン系鉱油をトール油、ヒマシ油、大豆油又は落花生油等の植物油と合わせたものである。有用な剤としては、オキソアルコール合成の残留物、アルキルベンゼン及び褐炭又は他の瀝青物質の低温炭化に由来するルードオイルが挙げられる。
【0048】
最も重要なシリコーン油は、鎖末端がトリメチルシリル基で飽和しているポリジメチルシロキサンである。シロキサン単位の数は、典型的には2~2000の範囲である。
【0049】
シリコン消泡剤は、焼成又は疎水化シリカのシリコーン油中の無水分散液形態で供給されている。この種の混合物は、油状であるか又は濁っている。場合により、これらは、ペーストの粘稠性を有するが、水系用に最も一般的に使用されている抑泡剤は、5~50%エマルジョンである。
【0050】
本発明に使用することができる消泡剤の更なる例は、疎水性シリカである。
【0051】
疎水性脂肪誘導体及びワックスとして、以下に示す材料が挙げられる:単官能性及び多官能性アルコールの脂肪酸エステル;脂肪酸アミド及びスルホンアミド;パラフィン系炭化水素ワックス、オゾケライト及びモンタンロウ;短鎖及び長鎖脂肪族アルコールのリン酸モノ-、ジ-及びトリエステル;短鎖及び長鎖天然又は合成脂肪族アルコール;ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム及びベヘン酸カルシウム等の長鎖脂肪酸の水不溶性石鹸;過フッ化脂肪族アルコール。水不溶性ポリマーの例としては、低分子量脂肪酸変性アルキル樹脂;低分子量ノボラック;酢酸ビニルと長鎖マレイン酸及びフマル酸ジエステルとのコポリマー;及びメタクリル酸メチル-ビニルピロリドンポリマーである。他の該当する高分子材料としては、ポリ(プロピレングリコール)及びグリセロール、トリメチルプロパン、ペンタエリスリトール、トリエタノールアミン、ジペンタエリスリトール又はポリグリセロールの高分子量プロピレンオキシド付加物、ブチレンオキシド又は長鎖[α]-エポキシドと多価アルコールとの付加物が挙げられる。
【0052】
両親媒性化合物としては、その抑泡作用が様々な機構に由来する様々な水溶性を有する消泡成分が挙げられる。その例としては、オレイン酸ナトリウム及び洗剤中で整泡剤として使用されている魚由来硬化脂肪酸石鹸、適度にエトキシ化された、アルコール、脂肪酸、ロジン酸、脂肪アミン及びアルキルフェノール誘導体等、HLB(親水性-親油性バランス)値が<10である非イオン性界面活性剤が挙げられる。更なる例は、シリコン界面活性剤である。これらは、ポリエーテル基が化学結合したシリコーン油である。
【0053】
カップリング剤の例は、グリコール、低分子量アルコール又は可溶化剤として知られている他の成分である。
【0054】
消泡剤又はその混合物は、存在する場合、0.01~10重量、好ましくは0.1~5重量%、最も好ましくは0.5~2.5重量%(総量)で使用される。
【0055】
好適な塩としては、リン酸のアルカリ及びアルカリ土類金属塩、水酸化物、例えばリン酸水素二ナトリウム及び/又は水酸化ナトリウム等が挙げられる。塩又はその混合物は、存在する場合、磨砕混合物又は水性分散液の総重量を基準として0.01~5重量、好ましくは0.1~4重量%、最も好ましくは0.5~2.5重量%(総量)で使用される。
【0056】
好適な増粘剤としては、キサンタンガム、ジェランガム及び/又はカルボキシメチルセルロースが挙げられる。
【0057】
本発明の全ての実施形態において、特に好適な添加剤は、好ましくは、(ポリ)プロピレングリコール等の湿潤剤である。最も好ましくは、本発明の全ての実施形態において、湿潤剤は、プロピレングリコールである。この種の湿潤剤は、好ましくは、磨砕混合物又は水性分散液の総重量を基準として0.1~1重量%の範囲において選択される(総)量、より好ましくは0.2~0.6重量%の量で使用される。
【0058】
特に好適な消泡剤は、シリコーン油(特にポリジメチルシロキサン等)及び/又はシリコン消泡剤(特に焼成若しくは疎水化シリカのシリコーン油中無水分散液等)である。最も好ましくは、本発明の全ての実施形態において、消泡剤は、シメチコンである。消泡剤は、好ましくは、水性分散液の総重量を基準として0~1重量%の範囲の(総)量、より好ましくは0.01~0.2重量%の量において選択される量で使用される。
【0059】
水性分散液に使用するのに特に好適な増粘剤としては、キサンタンガム、ジェランガム及び/又はカルボキシメチルセルロースが挙げられる。最も好ましくは、本発明の全ての実施形態において、増粘剤は、キサンタンガム又はジェランガムである。この種の増粘剤は、好ましくは、磨砕混合物又は水性分散液の総重量を基準として0.1~1重量%の範囲、より好ましくは0.1~0.5重量%の範囲において選択される(総)量で使用される。
【0060】
特に有利な実施形態において、磨砕は、式(I)の1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの粗大粒子を、本明細書に示すあらゆる定義及び好ましい事項を有するアルキルポリグルコシドの存在下及び任意選択的に消泡剤、好ましくはシメチコン等の存在下で水中に分散させ、次いで前記分散液を粉砕機、好ましくは、ボールミル等において、最も好ましくはケイ酸ジルコニウムボールを用いて、式(I)の1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの粗大粒子が本発明による微粉化形態に変換されるまで、即ち本明細書に示すあらゆる定義及び好ましい事項を有する粒子径が得られるまで磨砕することによって実施される。
【0061】
更なる実施形態によれば、本発明は、本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼン又は好ましくはその水性分散液、最も好ましくは本明細書に示すあらゆる定義及び好ましい事項を有する非晶質固体形態の1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの水性分散液を含む局所用組成物にも関する。
【0062】
本発明の局所用組成物は、粉末形態又はその水性分散液の形態である、本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを、化粧的に許容される担体と、任意の従来法、例えば2種の材料を単純に一緒に撹拌することにより、物理的に混合することによって製造することができる。
【0063】
しかしながら、好ましい実施形態において、本発明による局所用組成物の調製に使用される微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、例えば、上に概要を示した湿式粉砕法によって得られるものなど、その水性分散液の形態で使用される。
【0064】
有利には、本発明の全ての実施形態において、この種の水性分散液は、
(i)水性分散液の総重量を基準として20~70重量%、好ましくは25~60重量%の、本明細書に示すあらゆる好ましい事項及び定義を有する微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンと、
(ii)水性分散液の総重量を基準として2~15重量%、好ましくは5~10重量%の、上に示したあらゆる好ましい事項及び定義を有するC8~16アルキルポリグルコシドと、
(iii)水性分散液の総重量を基準として0~3重量%、好ましくは0.1~2重量%の、少なくとも1種の添加剤と、
(iv)水性分散液の総重量を基準として25~60重量%、好ましくは30~45重量%の水と
から基本的になる。
【0065】
本発明に従って使用される「~から基本的になる」という語は、成分(i)~(iv)の量の総和が100重量%以下となることを意味する。但し、例えば、成分(i)~(iv)のそれぞれの原料を介して導入される少量の不純物又は添加剤が存在し得ることは、排除されない。
【0066】
特に有利な実施形態において、少なくとも1種の添加剤は、増粘剤、湿潤剤及び消泡剤並びにこれらの混合物からなる群から選択される。一層好ましくは、本発明による水性分散液中には、少なくとも1種の増粘剤及び少なくとも1種の湿潤剤が存在する。最も好ましくは、本発明による水性分散液は、添加剤としての(iii-1)プロピレングリコールと、(iii-2)キサンタンガム又はジェランガムから選択される1種の増粘剤と、任意選択的に(iii-3)シメチコンとを含有する。
【0067】
本発明による局所用組成物中の微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの量(活性物質を基準とする)は、好ましくは、局所用組成物の総重量を基準として0.1~20重量%の範囲、より好ましくは0.5~15重量%の範囲、最も好ましくは1~10重量%の範囲において選択される。更に有利な範囲は、2~8重量%又は5~7.5重量%である。
【0068】
本発明による局所用組成物は、溶媒又は脂肪質物質中の懸濁液又は分散液の形態とするか、又は代替的に、エマルジョン又はマイクロエマルジョン(特に水中油型(O/W)又は油中水型(W/O)、水中シリコーン型(Si/W)又はシリコーン中水型(W/Si)、PITエマルジョン、多重エマルジョン(例えば、油中水中油型(O/W/O)又は水中油中水型(W/O/W))、ピッカリングエマルジョン、ヒドロゲル、アルコール性ゲル、リポゲル、単相若しくは多相溶液若しくはベシクル分散液の形態とするか、又は他の通常の形態(ペン型容器で、パックとして又はスプレーとして適用することもできるもの)とすることもできる。
【0069】
特に有利な実施形態において、本発明は、微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンに加えて少なくとも1種の油又は脂肪を含む、本発明による局所用組成物にも関する。これは、この種の組成物が、本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを含有しない対応する組成物と比較して、ガラス表面への物質の移行、特にその中に含有されている油又は脂肪の移行などを大幅に低減することによる。
【0070】
したがって、本発明の全ての実施形態における好ましい局所用組成物は、油相及び水相を含有する、特にO/W、W/O、Si/W、W/Si、O/W/O、W/O/W多重又はピッカリングエマルジョン等のエマルジョンである。本発明による全ての実施形態において、O/Wエマルジョンは、本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを組み込むと、対応するW/Oエマルジョンと比較して物質の移行が大幅に低下するため、O/Wエマルジョンが最も好ましい。
【0071】
この種のエマルジョン中に存在する油相(即ち極性油を含む、全ての油及び脂肪を含む相)の量は、好ましくは、局所用組成物の総重量を基準として少なくとも10重量%、例えば、10~60重量%の範囲、好ましくは15~50重量%の範囲、最も好ましくは15~40重量%の範囲である。
【0072】
この種のエマルジョン中に存在する水相の量は、好ましくは、局所用組成物の総重量を基準として少なくとも20重量%、例えば、20~90重量%の範囲、好ましくは30~80重量%の範囲、最も好ましくは30~70重量%の範囲である。
【0073】
好ましい実施形態において、少なくとも1種の油又は脂肪は、液体UV遮蔽油である。したがって、他の特定の実施形態において、本発明は、本明細書に示すあらゆる定義及び好ましい事項を有する微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼン並びに少なくとも1種の液体UV遮蔽油を含む局所用組成物に関する。
【0074】
本発明による局所用組成物における液体UV遮蔽油の(総)量は、好ましくは、0.1~30重量%の範囲、より好ましくは1~25重量%の範囲、最も好ましくは5~20重量%の範囲において選択される。
【0075】
本明細書において用いられる「液体UV遮蔽油」という語は、UVB及び/又はUVA範囲の光を吸収する、周囲温度(即ち25℃)で液体である任意の物質を指す。この種のUV遮蔽油は、当業者によく知られており、特にケイ皮酸エステル、例えばメトキシケイ皮酸オクチル(PARSOL(登録商標)MCX)及びメトキシケイ皮酸イソアミル(Neo Heliopan(登録商標)E 1000)等、サリチル酸エステル、例えばホモサレート(サリチル酸ホモメンチルとしても知られる2-ヒドロキシル安息香酸3,3,5-トリメチルシクロヘキシル、PARSOL(登録商標)HMS)及びサリチル酸オクチル(サリチル酸エチルヘキシルとしても知られる2-ヒドロキシ安息香酸2-エチルヘキシル、PARSOL(登録商標)EHS)等、アクリル酸エステル、例えばオクトクリレン(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸2-エチルヘキシル、PARSOL(登録商標)340)及び2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸エチル等、ベンザルマロン酸のエステル、特にベンザルマロン酸ジアルキル等、例えば4-メトキシベンザルマロン酸ジ-(2-エチルヘキシル)等、及びポリシリコーン-15(PARSOL(登録商標)SLX)、ナフタリンジカルボン酸のジアルキルエステル、例えばナフタリンジカルボン酸ジエチルヘキシル(Corapan(登録商標)TQ)等、マロン酸シリンギリデン、例えばマロン酸ジエチルヘキシルシリンギリデン(Oxynex(登録商標)ST liquid)等、並びにベンゾトリアゾールドデシルp-クレゾール(Tinoguard(登録商標)TL)を包含する。
【0076】
本発明の全ての実施形態において、特に有利な液体UV遮蔽油は、メトキシケイ皮酸オクチル、ホモサレート、サリチル酸オクチル、オクトクリレン、ポリシリコーン-15、ナフタリンジカルボン酸ジエチルヘキシル、マロン酸ジエチルヘキシルシリンギリデン及びベンゾトリアゾールドデシルp-クレゾール並びにこれらの混合物である。
【0077】
最も好ましくは、本発明の全ての実施形態において、液体UV遮蔽油は、メトキシケイ皮酸オクチル、ホモサレート、サリチル酸オクチル、オクトクリレン、ポリシリコーン-15及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0078】
本発明による局所用組成物は、有利には、水中油型(O/W)乳化剤の存在下で水相中に分散させた油相を含むO/Wエマルジョンの形態又は油中水型(W/O)乳化剤の存在下で油相中に分散させた水相を含むW/Oエマルジョンの形態である。この種のエマルジョンの調製は、当業者に知られており、実施例において例示する。
【0079】
この種のO/W又はW/Oエマルジョン中に存在する油相の量(即ちUV遮蔽油を含む全ての油及び脂肪を含む相)は、好ましくは、局所用組成物の総重量を基準として少なくとも10重量%、例えば10~60重量%の範囲、好ましくは15~50重量%の範囲、最も好ましくは15~40重量%の範囲である。
【0080】
この種のO/W又はW/Oエマルジョン中に存在する水相の量は、好ましくは、局所用組成物の総重量を基準として少なくとも20重量%、例えば20~90重量%の範囲、好ましくは30~80重量%の範囲、最も好ましくは30~70重量%の範囲である。
【0081】
少なくとも1種のO/W乳化剤の量は、好ましくは、局所用組成物の総重量を基準として0.5~10重量%の範囲、より好ましくは0.5~5重量%の範囲、最も好ましくは0.5~4重量%の範囲において選択される。
【0082】
少なくとも1種のW/O乳化剤の量は、好ましくは、局所用組成物の総重量を基準として0.001~10重量%の範囲、より好ましくは0.2~7重量%の範囲において選択される。
【0083】
本発明の全ての実施形態において、特に有利なO/W乳化剤は、リン酸エステル乳化剤である。本発明による最も好ましいO/W乳化剤は、例えば、Amphisol(登録商標)KとしてDSM Nutritional Products Ltd Kaiseraugstから市販されているセチルリン酸カリウムである。
【0084】
本発明の全ての実施形態において、特に有利なW/O乳化剤は、ポリグリセリル-2-ジポリヒドロキシステアラートである。
【0085】
その吸収性が極めて優れていることから、本発明による更なる実施形態は、本明細書に示すあらゆる定義及び好ましい事項を有する本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの、単独で機能する遮蔽剤、即ち局所用組成物における単独のUV遮蔽剤としての使用を包含する。
【0086】
更に、本発明は、日焼け止め剤(サンケア製品)に使用するための、本明細書に記載する実施形態による局所用組成物又は本明細書に記載する実施形態による局所用組成物の日焼け止め剤としての使用に関する。
【0087】
本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、他の従来のUV遮蔽物質の性能を増強するのにも適し、即ち少なくとも1種の更なるUV遮蔽物質、好ましくは少なくとも1種の更なるUV-B遮蔽剤物質を含む日焼け止め組成物のSPFを相乗的に高めることもできる。
【0088】
本発明は、本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの、性能増強剤としての使用、即ち少なくとも1種の更なるUV遮蔽剤、好ましくは少なくとも1種のUVB遮蔽剤を含む日焼け止め組成物のSPFを相乗的に高めるための使用にも関する。
【0089】
更なる実施形態において、本発明は、少なくとも1種の油及び脂肪を含む局所用組成物の、表面、好ましくは硬質表面、最も好ましくはガラス又はプラスチック表面、例えばタッチスクリーン又は眼鏡のレンズ等への物質の移行を低減するために、本明細書に記載及び定義する本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンをその局所用組成物中に使用する方法にも関する。
【0090】
他の実施形態において、本発明は、物質の移行、特に局所用組成物に含有される脂肪及び油等の、表面、特にガラス又はプラスチック表面等、例えばタッチスクリーン又は眼鏡のレンズ等への移行を低減するための、本明細書に記載及び定義する本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの使用に関する。
【0091】
更なる実施形態において、本発明は、物質の移行、特に局所用組成物に含有される脂肪及び/又は油等の、表面、特にガラス又はプラスチック表面等、例えばタッチスクリーン又は眼鏡のレンズ等への移行を低減するための方法に関し、前記方法は、本明細書に記載及び定義する微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを、この種の脂肪及び油を含む局所用組成物に組み込むことを包含する。
【0092】
本発明による局所用組成物は、局所的に適用することが意図されているため、これらは、生理学的に許容される媒体、即ち皮膚、粘膜及びケラチン繊維等のケラチン物質と適合する媒体を含む。特に、生理学的に許容される媒体は、化粧的に許容される媒体である。
【0093】
「化粧的に許容される担体」という語は、化粧用組成物に従来使用されているあらゆる担体、及び/又は賦形剤、及び/又は希釈剤を指す。
【0094】
スキンケア産業に慣用されている本発明の局所用組成物中に使用するのに適した化粧品用賦形剤、希釈剤、補助剤、添加剤及び活性成分の例は、例えば、オンラインINFO BASE(http://online.personalcarecouncil.org/jsp/Home.jsp)からアクセス可能なInternational Cosmetic Ingredient Dictionary&Handbook by Personal Care Product Council(http://www.personalcarecouncil.org/)に記載されているが、これらに限定されるものではない。
【0095】
賦形剤、希釈剤、補助剤、添加剤等の必要量は、所望の製品形態及び用途に基づき、当業者によって容易に決定することができる。追加の成分は、油相に、水相に又は適切と見なされる場合には別個にのいずれかで添加することができる。
【0096】
有利な実施形態において、本発明による局所用組成物は、局所用組成物の総重量を基準として50%~99%、好ましくは60%~98%、より好ましくは70%~98%、例えば特に80%~95%の担体を含む。
【0097】
特に有利な実施形態において、担体は、少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、最も好ましくは少なくとも55重量%、例えば特に55~90重量%の水から更になる。
【0098】
それぞれ局所用組成物中に含まれるか又は本発明によるO/W若しくはW/Oエマルジョンの油相に包含されるのに特に好適な油及び/又は脂肪は、液体UV遮蔽油及びこの種の局所用組成物の調製に慣用されている油である。この種の局所用組成物中に使用するのに好ましい液体UV遮蔽油は、オクトクリレン、メトキシケイ皮酸オクチル、ホモサレート及び/又はサリチル酸オクチルである。この種の局所用組成物に使用するのに好ましい慣用されている油は、ステアリン酸グリセリル、ステアリルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル及びこれらの混合物である。
【0099】
本発明によるO/Wエマルジョン形態にある組成物は、例えば、O/Wエマルジョンのためのあらゆる製剤形態、例えば美容液、乳液又はクリームの形態で提供することができ、これらは、通常の方法に従って調製される。本発明の主題である組成物は、局所的に適用することが意図されており、特に例えばヒトの皮膚をUV放射による悪影響から保護する(抗シワ、抗老化、保湿、抗日光防御(anti-sun protection)等)ことを意図した皮膚科用又は化粧用組成物を構成することができる。
【0100】
本発明の有利な実施形態によれば、組成物は、皮膚に局所適用することが意図されている化粧用組成物から構成される。
【0101】
本出願に使用される「化粧用組成物」という語は、Roempp Lexikon Chemie,10th edition 1997,Georg Thieme Verlag Stuttgart,New Yorkの見出し“Kosmetika”の下に定義されている化粧用組成物及びA.Domsch,“Cosmetic Compositions”,Verlag fuer chemische Industrie(ed.H.Ziolkowsky),4th edition,1992に開示されている化粧用組成物を指す。
【0102】
最後に、本発明の主題は、特に皮膚等のケラチン質物質を化粧的に処置するための方法であって、上に定義した組成物は、特に皮膚等の前記ケラチン質物質に適用される、方法にある。この方法は、特にサンバーン及び/又は光老化等のUV放射の悪影響から皮膚を保護するのに特に適している。
【0103】
以下に示す実施例は、本発明の組成物及び効果を更に例示するために提供するものである。これらの実施例は、例示のみを目的とし、決して本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0104】
[実施例]
[1.微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの調製]
[1.1 一般的方法]
粒子径は、全てISO 13320:2009に概説されている方法に準拠し、Malvern Mastersizer 2000(レーザー回折)により、且つ/又はCoulter Delsa Nano S(動的レーザー散乱)により測定した。
【0105】
示差走査熱量分析(DSC)は、Mettler Toledo DSC1(温度範囲25℃~400℃;昇温速度:4℃/min;空気中、試料2~3mg、2回測定の平均値)を用いて実施した。
【0106】
X線回折パターンは、Bruker D8 Advance powder X-ray diffractometerを使用し、反射(ブラッグ-ブレンターノ)配置で記録した。PXRD回折計にLynxEye検出器を取り付けた。一般に、試料の調製では、平坦な面を得るために軽く押しつけたことを除いて特別な処理を施さなかった。多形スクリーニングを行うための深さ1.0mmの単結晶シリコン試料ホルダー。試料は、カバーを載せずに測定した。管電圧を40kVとし、管電流を40mAとした。可変発散スライトを、開き角を3°として使用した。ステップサイズを0.02°2θとし、計数時間を37秒間とした。測定時に試料を0.5rpsで回転させた。
【0107】
E 1/1値は、UV/(vis)分光器(Perkin Elmer Lambda 650S)を用いて、320nmにおいで、次式に従ってベースライン補正を行うことによって求めた:E 1/1=(E 1/1@320nm)-(E 1/1@650nm)。
【0108】
UVB:UVA比は、それぞれ微粉化されたUV遮蔽剤を水中に活性成分の濃度を0.001%(w/v)として分散させて、UVスペクトルを測定し、290~319nm(UVB)の面積%を320~400nm(UVA)の面積%で除すことによって求めた。
【0109】
[1.2 1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの粗大非晶質固体粒子(DBO-400(A))の調製]
ポリリン酸702g及びメタンスルホン酸4.28mlの混合物を90℃に加熱した。テレフタル酸65g及び2-アミノフェノール107gを加えた。混合物を180℃の不活性雰囲気中、8時間撹拌した後、氷水に移した。析出した生成物を濾過して水及び酢酸で洗浄した。析出物を水中に分散させ、pHを水酸化ナトリウムでpH8.0に調整し、濾過して水で洗浄した。粗生成物をトルエン及び1-ブタノールの3.3:1混合物中に懸濁させ、85℃で1時間撹拌し、濾過してジエチルエーテルで洗浄し、乾燥させた。得られた非晶質固体1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの粗大粒子は、粒子径Dn50が380nm(Malvern)であった。
【0110】
[1.3 非晶質固体1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’イル)ベンゼンの水性分散液の調製(DBO-200分散液(A))]
(1.2)で概説したように得られたDBO-400が175g、水が324g及びGreen APG 0810が65gの懸濁液を調製した。次いで、この懸濁液をLabStar実験用粉砕機において、イットリウム安定化酸化ジルコニウム磨砕ビーズ(0.3mm、東ソーセラミックス(Tosoh Ceramic)、日本国)を使用して2時間粉砕し、粉砕室を冷却した(-12℃の飽和食塩水)。磨砕ビーズを除去した後、微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの30%水性分散液を得た。
粒子径:
Malvern:D
n50 186nm(D
n10=126nm、D
n90=355nm)
Coulter:平均値(強度分布):171nm
E 1/1:839
DSC:開始温度:350℃;熱容量:132J/g
UVB:UVA比:0.49
X線:
図1、線4
【0111】
[1.4 結晶性1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの水性分散液(DBO-200分散液(C))の調製]
(1.2)に概説したように得られた粗大粒子をo-ジクロロベンゼンから再結晶させた後、乾燥させることにより、結晶性1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの粗大粒子73.0%を得、次いでこれを、(1.3)に概説したプロセスと同様に粉砕した。磨砕ビーズを除去した後、結晶性1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの30%水性分散液を得た。
粒子径:
Coulter:平均値(強度分布):193nm
E 1/1:719;
DSC:開始温度:352℃;熱容量:153J/g。
UVB:UVA比:0.35
X線:
図1、線2
【0112】
[1.5 粗大非晶質固体1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの水性分散液(DBO-400分散液(A))の調製]
(1.2)で概説した通りに得られたDBO-400(A)が1.8g、水が3.51g及びGreen APG 0810が0.69gの懸濁液を調製した。次いで、この懸濁液を、周囲温度(22℃)で磁気的撹拌を用いて、均質な分散液が得られるまで撹拌した。マグネチックスターラーバーを取り出した後、平均粒子径Dn50が380nm(Malvern)である微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの30%水性分散液を得た。
【0113】
[2.粒子径に応じたUV性能]
表1に概要を示す配合物(O/Wエマルジョン)を当該技術分野における標準的な方法に従って調製した。
【0114】
in vitro SPF試験をPMMAプレート(SchoenbergからのWW5、5cm×5cm、粗さ5μm)上で実施し、各配合物32.5mg(即ち1.3mg/cm2)をPMMAプレート上に均一に塗布して15分間乾燥させた。
【0115】
in vitro SPFを、Labsphere 2000 UV Transmittance Analyzerを用いて測定した。各PMMAプレートをプレート上の異なる点で9回測定し、それにより27個のデータ点を得た。結果を27個のデータ点の平均として求めた。
【0116】
全て3回反復測定を行った。
【0117】
in vitro SPFに基づき、in vitro UVA-PFをISO 24443に準拠して決定した。
【0118】
【0119】
表1に概要を示した結果から読み取れるように、高いSPFを示すことが可能であると同時に、EU勧告で要求されているように、SPF/UVA-PF比が>0.33であるのは、本発明による微粉化されたUV遮蔽剤のみである。
【0120】
[3.UVスペクトルの比較:溶液対分散液]
活性物質の濃度を0.001%(w/v)として、1-メチル-2-ピロリジノン中に可溶化するか又は水中に分散するかのいずれかとし、それぞれの微粉化されたUV遮蔽剤のUVスペクトルを測定し、290~320nm(UVB)の面積%を320~400nm(UVA)の面積%で除すことによって比を算出することにより、UVB:UVA比を求めた。
【0121】
【0122】
驚くべきことに、表2から読み取れるように、微粉化を行うことにより、他の微粉化された有機UV遮蔽剤がUVA範囲に移行する一方、本発明による微粉化されたUV遮蔽剤は、UVB範囲への移行を示す。
【0123】
[4.非晶質固体形態対結晶形態のUV性能]
表3に概要を示す配合物を当該技術分野における標準的な方法に従って調製した。その後、in vitro SPFを製造直後(t0)及び室温で1か月間保管した後(t1)に評価した。in vitro SPF試験をPMMAプレート(SchoenbergからのWW5、5cm×5cm、粗さ5mμ)上で実施し、各配合物32.5mg(即ち1.3mg/cm2)をPMMAプレート上に均一に塗布して15分間乾燥させた。
【0124】
in vitro SPFを、Labsphere 2000 UV Transmittance Analyzerを用いて測定した。各PMMAプレートについてプレート上の異なる点で9回測定を行い、それにより27個のデータ点を得た。結果を27個のデータ点の平均として求めた。
【0125】
【0126】
表3から読み取れるように、非晶質固体DBOを使用することにより、対応する結晶形態と比較してSPFが非常に高くなる。更にこの種の配合物は、非晶質固体形態の場合には室温で1ヵ月間保管した後のin vitro SPF不変により反映されるように、対応する結晶形態では室温で1ヵ月間保管した後のSPFが大幅に低下することと比較して、より保存安定性が高い。
【0127】
[5.物質の移行]
以下に概説するスポンジ試験を用いて物質の移行を測定した。
- スポンジクロス(Weita AGからのWeitawip Claire:セルロース/綿繊維混合物、200g/m2、厚さ5mm)を76mm×26mmの小片に裁断する
- スポンジ試料を風袋引きする
- 各試料(=化粧用組成物)400mgを適用し、76mm×26mmのスポンジ表面全体に均一に分布させる
- 適用した試料を含むスポンジを秤量する
- スライドガラス(ガラスプレート76mm×26mm×1mm)を風袋引きする
- スライドガラス(ガラスプレート)をスポンジ上面に載せ、天秤用の500gの錘(高さ:6.3cm、接触面の直径:3.7cm)を10秒間載せて、試料に一定の圧力を印加する
- スライドガラスを垂直方向に慎重に取り除く
- 取り除いたスライドガラスを秤量し、これに従ってガラスプレートに移行した試料の量を決定する
- 各組成物に関して試験を10回ずつ繰り返すことにより、各試料の平均値(中間値)を得る。
【0128】
表4に概要を示した配合物を当該技術分野における標準的な方法に従って調製した。次いで、物質の移行を、上に概説したように評価した。
【0129】
【0130】
表4から読み取れるように、本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを、少なくとも1種の油を含む局所用組成物に組み込むことにより、ガラス表面に移行する組成物の量が大幅に低減され、参照品と比較してガラス表面の汚れが少なくなる。
【0131】
表3から読み取れるように、非晶質固体DBOを使用することにより、対応する結晶形態と比較してSPFが非常に高くなる。更に、この種の配合物は、非晶質固体形態の場合には室温で1ヵ月間保管した後のin vitro SPF不変によって反映されるように、対応する結晶形態では室温で1ヵ月間保管した後のSPFが大幅に低下することと比較してより保存安定性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0132】