(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】トグル機構の摩耗検出装置および射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/84 20060101AFI20240822BHJP
B29C 45/66 20060101ALI20240822BHJP
B22D 17/26 20060101ALI20240822BHJP
B22D 17/32 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B29C45/84
B29C45/66
B22D17/26 D
B22D17/32 J
(21)【出願番号】P 2021067511
(22)【出願日】2021-04-13
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】中山 清貴
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-005796(JP,A)
【文献】特開2020-062813(JP,A)
【文献】特開平04-172164(JP,A)
【文献】特開平11-270789(JP,A)
【文献】特開2013-244623(JP,A)
【文献】特開2003-112344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/84
B29C 45/66
B22D 17/26
B22D 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型締装置の型盤間に設けられているトグル機構の摩耗を検出する摩耗検出装置であって、
前記トグル機構は複数本のリンクを有し、前記リンク同士の連結部、あるいは前記リンクと前記型盤の連結部が、それぞれ連結ピンによって回転可能に連結されており、
前記摩耗検出装置は、複数箇所の連結部の少なくとも1箇所の監視対象連結部に設けられたレーザ式距離センサを備え、
前記レーザ式距離センサは、前記監視対象連結部に開けられた前記連結ピンに達する孔に挿入され、前記連結ピンまでの距離を測定するようになっている、摩耗検出装置。
【請求項2】
前記摩耗検出装置はコントローラを備え、前記コントローラは前記測定される距離と基準距離の偏差により摩耗の有無を判断する、請求項1に記載の摩耗検出装置。
【請求項3】
前記摩耗検出装置は、複数個の前記レーザ式距離センサを備え、少なくとも1箇所の前記監視対象連結部について前記連結ピンに対して周方向の異なる2箇所以上に前記レーザ式距離センサが設けられている、請求項1または2に記載の摩耗検出装置。
【請求項4】
前記摩耗検出装置は、複数個の前記レーザ式距離センサを備え、少なくとも1箇所の前記監視対象連結部について前記連結ピンに対して軸方向の異なる2箇所以上に前記レーザ式距離センサが設けられている、請求項1~3のいずれかの項に記載の摩耗検出装置。
【請求項5】
前記摩耗検出装置は、複数個の前記レーザ式距離センサを備え、少なくとも1箇所の前記監視対象連結部について前記連結ピンに対して互いに90度異なる2箇所から前記レーザ式距離センサが設けられている、請求項1~4のいずれかの項に記載の摩耗検出装置。
【請求項6】
前記摩耗検出装置は、それぞれの一方の端部が前記型盤に連結されていると共に他方の端部同士が連結されている2本の前記リンクにおいて、前記端部同士の連結部が前記監視対象連結部になっており、前記レーザ式距離センサが設けられている、請求項1~5のいずれかの項記載の摩耗検出装置。
【請求項7】
前記孔には前記レーザ式距離センサと前記連結ピンの間に防塵用のレーザ透過部材が設けられている、請求項1~6のいずれかの項記載の摩耗検出装置。
【請求項8】
射出装置と型締装置とを備えた射出成形機であって、
前記型締装置は、金型が設けられる第1型盤と、
前記第1型盤と離間して設けられている第3型盤と、
前記第1型盤と前記第3型盤の間に設けられ金型が設けられる第2型盤と、
前記第1、第3型盤を連結する複数本のタイバーと、
前記第2、第3型盤の間に設けられているトグル機構と、
前記トグル機構の摩耗を検出する摩耗検出装置と、を備え、
前記トグル機構は複数本のリンクを有し、前記リンク同士の連結部、あるいは前記リンクと前記第2、第3型盤の連結部が、それぞれ連結ピンによって回転可能に連結されており、
前記摩耗検出装置は、レーザ式距離センサを備え、
前記レーザ式距離センサは複数箇所の連結部の少なくとも1箇所の監視対象連結部に対して開けられた前記連結ピンに達する孔に挿入され、前記連結ピンまでの距離を測定するようになっている、射出成形機。
【請求項9】
前記射出成形機はコントローラを備え、前記コントローラは前記測定される距離と基準距離の偏差により摩耗の有無を判断する、請求項
8に記載の射出成形機。
【請求項10】
前記摩耗検出装置は、複数個の前記レーザ式距離センサを備え、少なくとも1箇所の前記監視対象連結部について前記連結ピンに対して周方向の異なる2箇所以上に前記レーザ式距離センサが設けられている、請求項
8または9に記載の射出成形機。
【請求項11】
前記摩耗検出装置は、複数個の前記レーザ式距離センサを備え、少なくとも1箇所の前記監視対象連結部について前記連結ピンに対して軸方向の異なる2箇所以上に前記レーザ式距離センサが設けられている、請求項
8~10のいずれかの項に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トグル機構を備えた型締装置においてトグル機構の摩耗を検出する摩耗検出装置、および射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機を構成しているトグル式型締装置は、複数個の型盤と、型盤間に設けられているトグル機構とを備えている。トグル機構は複数本のリンクからなり、リンク同士あるいはリンクと型盤とがそれぞれ連結ピンによって回転可能に連結されている。型締シリンダあるいはモータとボールネジ機構等によってクロスヘッドを駆動すると、これら連結ピンによって連結されている複数本のリンクが回転し、トグル機構が屈伸する。すなわち型開閉される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
トグル機構は長期間の運転により摩耗する。具体的には複数本の連結ピン、あるいは連結ピンが挿入されているブッシュ、つまりリンクまたは型盤の連結部に設けられているブッシュが摩耗する。特許文献1には、トグル機構のブッシュの摩耗を検出する摩耗検出装置が記載されている。この摩耗検出装置は、竪型射出成形機のトグル機構の下可動盤に設けられている。具体的には、下可動盤のクレビスの近傍に設けられている光学センサと、クレビスとリンクとを回転可能に連結している連結ピンに貼られているマーカとから構成されている。この連結ピンが挿入されているブッシュが摩耗するとマーカが下方に下がる。光学センサによりマーカの位置を監視してよってブッシュの摩耗を検出する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の摩耗検出装置はブッシュの摩耗を検出することができ優れている。しかしながら、型盤のクレビスとリンクとを連結している連結部の摩耗しか検出できないし、摩耗量が比較的大きくならないと検出できないという問題がある。
【0006】
本開示において、リンク同士の連結部および型盤とリンクの連結部のいずれにおいても、比較的小さな摩耗から検出できるトグル機構の摩耗検出装置、および射出成形機を提供する。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、型締装置のトグル機構を構成しているリンク同士の連結部、あるいはリンクと型盤との連結部のうち少なくとも1箇所を監視対象連結部とし、連結ピンに達する孔を開け、この孔にレーザ式距離センサを設ける。レーザ式距離センサによって連結ピンまでの距離を測定して摩耗を検出する。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、リンク同士の連結部、およびリンクと型盤の連結部について、発生している摩耗が比較的小さくても検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係るトグル機構の摩耗検出装置を備えた、本実施の形態に係る竪型射出成形機を示す正面図である。
【
図2】トグル機構を構成する2本のリンクの一部と、これら2本のリンクの連結部に設けられている本実施の形態に係るトグル機構の摩耗検出装置とを示す正面断面図である。
【
図3】トグル機構を構成するリンクの一部と、このリンクの連結部に設けられている本実施の形態に係るトグル機構の摩耗検出装置とを示す側面断面図である。
【
図4】トグル機構を構成するリンクの一部と、このリンクの連結部に設けられている本実施の形態に係るトグル機構の摩耗検出装置とを示す側面断面図である。
【
図5】トグル機構を構成するリンクの一部と、このリンクの連結部に設けられている本実施の形態に係るトグル機構の摩耗検出装置とを示す側面断面図である。
【
図6】トグル機構を構成するリンクの一部と、このリンクの連結部に設けられている本実施の第2の形態に係るトグル機構の摩耗検出装置とを示す側面断面図である。
【
図7】トグル機構を構成するリンクの一部と、このリンクの連結部に設けられている本実施の第3の形態に係るトグル機構の摩耗検出装置とを示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0012】
本実施の形態を説明する。
<竪型射出成形機>
本実施の形態に係る竪型射出成形機1は、
図1に示されているように、トグル式の型締装置2と、この型締装置2の上部に設けられている射出装置3と、これらを制御するコントローラ4と、を備えている。本実施の形態に係る竪型射出成形機1には、型締装置2に本実施の形態に係るトグル機構の摩耗検出装置5が設けられているが、詳しくは後で説明する。
【0013】
<型締装置>
型締装置2は、筐体7に固定されている固定盤9と、この固定盤9の上方に設けられている上可動盤10と、固定盤9の下方に設けられている下可動盤12とを備えている。上可動盤10と下可動盤12は複数本、例えば3本のタイバー13、13、…で連結されており、下可動盤12と固定盤9の間に後で詳しく説明するトグル機構14が設けられている。本実施の形態においては固定盤9の上にターンテーブルは設けられていないが、適宜設けることができる。固定盤9と上可動盤10とに、それぞれ下側金型16と上側金型17とが設けられている。
【0014】
<射出装置>
射出装置3は、型締装置2の上可動盤10の上に設けられている。射出装置3は、加熱シリンダ19と、加熱シリンダ19内に設けられている図示されていないスクリュと、を備えている。射出装置3は、スクリュを回転して射出材料を溶融し、スクリュを軸方向に駆動して射出材料を射出するようになっている。
【0015】
<トグル機構>
トグル機構14は、複数本のリンク21、22、…と、クロスヘッド20と、を備えている。複数本のリンクは、具体的には下リンク21、21と、上リンク22、22と、クロスリンク23、23と、からなる。下リンク21、21は、これらの一方の端部が下可動盤12に設けられているクレビス25、25に下連結ピン27、27によって回転可能に連結されている。上リンク22、22は、これらの一方の端部が固定盤9に設けられているクレビス28、28に上連結ピン30、30によって回転可能に連結されている。下リンク21、21と上リンク22、22は、それぞれの他方の端部同士が中連結ピン32、32によって回転可能に連結されている。
【0016】
下リンク21、21と、クロスヘッド20とはクロスリンク23、23によって連結されている。具体的には、クロスリンク23、23のそれぞれの一方の端部が下リンク21、21の側部においてクロス連結ピン33、33によって回転可能に連結され、他方の端部がクロスリンク23、23にクロスヘッド連結ピン34、34によって回転可能に連結されている。クロスヘッド20は、ボールネジ機構36と図に示されていないモータとによって駆動されるようになっており、モータを駆動するとトグル機構14が屈伸して、型開閉される。
【0017】
<トグル機構の摩耗検出装置>
トグル機構の摩耗検出装置5は、レーザ式距離センサ40、40、…から構成されている。レーザ式距離センサ40、40、…は、小型のレーザ同軸変位計からなる。レーザ式距離センサ40、40、…は、トグル機構14を構成している複数本のリンク21、22、23同士の連結部、あるいはリンク21、22と型盤つまり下可動盤12、固定盤9との連結部に設けられている。これら全ての連結部に設けるようにしてもよいが、本実施の形態においては次の連結部に設けられている。
【0018】
まず、レーザ式距離センサ40、40、…は、下連結ピン27、27によって連結されている下リンク21、21と型盤つまり下可動盤12の連結部に設けられている。次いで、上連結ピン30、30によって連結されている上リンク22、22と型盤つまり固定盤9の連結部に設けられている。そして、中連結ピン32、32によって連結されている下リンク21、21と上リンク22、22の連結部に設けられている。トグル機構14の複数箇所の連結部のうち、レーザ式距離センサ40、40、…が設けられている連結部は、摩耗監視対象になっているので監視対象連結部ということができる。本明細書ではこのような連結部について、単に連結部と記載することもあるが、必要に応じて監視対象連結部と記載する。
【0019】
いずれの監視対象連結部においてもレーザ式距離センサ40、40、…は同様に設けられているが、
図2に示されている、下リンク21と上リンク22の連結部を例として詳しく説明する。下リンク21と上リンク22は、前記したように中連結ピン32によって回転可能に連結されている。より詳しく説明すると、下リンク21は、端部が中連結ピン32の軸方向において二股に、上リンク22は、端部が中連結ピン32の軸方向において三股に分岐している。一方の分岐が他方の分岐の間に挿入されるようにして、下リンク21と上リンク22が組み合わされ、中連結ピン32によって連結されている。そして、下リンク21と上リンク22のいずれか一方にブッシュ42、42が設けられている。この実施の形態においては下リンク21にブッシュ42、42が設けられている。中連結ピン32はブッシュ42、42に対して摺動的に回転するようになっている。
【0020】
レーザ式距離センサ40、40は、下リンク21と上リンク22の連結部におけるブッシュ42、42が配置されている部分に設けられている。この実施の形態においては、レーザ式距離センサ40、40は、下リンク21におけるブッシュが配置されている箇所に設けられている。
図2だけでなく、
図3に拡大して示されている下リンク21の側面断面図も参照しながら説明する。この連結部は監視対象連結部になっており、下リンク21には下リンク21とブッシュ42、42とを貫通する孔44、44が開けられている。つまり、中連結ピン32に達する孔44、44が開けられている。レーザ式距離センサ40、40は、この孔44、44に入れられている。
【0021】
なお、この実施の形態においては孔44、44の中に、レーザ透過部材46、46が入れられている。レーザ透過部材46、46はレーザ光を透過する部材、例えばガラスからなり、レーザ式距離センサ40、40と中連結ピン32との間に設けられている。これによってレーザ式距離センサ40、40は粉塵からを保護される。
【0022】
ところで本実施の形態においては、
図2に示されているように、1本の中連結ピン32に対し、軸方向の異なる2箇所においてレーザ式距離センサ40、40が設けられている。これによって、次に説明するように摩耗により生じている中連結ピン32の傾きが検出できるようになっている。また、
図3に示されているように、1本の中連結ピン32に対し、周方向の異なる2箇所においてレーザ式距離センサ40、40が設けられている。つまり、横方向をX方向、縦方向をY方向として見ると、次に説明するようにブッシュ42、あるいは中連結ピン32に生じている摩耗量のX、Y方向の偏りを検出できるようになっている。実際には1本の中連結ピン32に対しては、軸方向に異なる2箇所、周方向に異なる2箇所の、合計4個のレーザ式距離センサ40、40、…が設けられている。
【0023】
ここで、1本の中連結ピン32に対し、周方向において、レーザ式距離センサ40、40を、90度位相をずらして2箇所に配置するのが、検出精度とコストのバランスに鑑みたときに好ましい。
図3に示されている例では、1本の中連結ピン32に対し、周方向においてレーザ式距離センサ40、40を配置する位相は、中心軸から下リンク21の長手方向(Y方向)に対し、反時計回りに、0度及び90度としている。
【0024】
これらの連結ピン27、30、32、…に設けられているレーザ式距離センサ40、40、…はコントローラ4に接続されている。これによってリンク21、22、…同士の連結部、リンク21、22、…と型盤との連結部、つまりこれら監視対象連結部における摩耗がコントローラ4によって検出されるようになっている。
【0025】
<トグル機構の摩耗検出装置の作用>
本実施の形態に係るトグル機構の摩耗検出装置5は、トグル機構14(
図1参照)の監視対象連結部の摩耗を検出することができる。具体的には、ブッシュ42、42、…(
図2、
図3参照)の摩耗、もしくは連結ピン27、30、32、…の摩耗を検出することができる。
図4、
図5によってブッシュ42が摩耗した場合を例として説明する。
【0026】
中連結ピン32が挿入されているブッシュ42が摩耗している場合、具体的には
図4において符号48で示されている部分が摩耗している場合を考える。型締装置2(
図1参照)において型締めを行うと、中連結ピン32は上リンク22(
図1参照)によって下方に押し付けられる。そうすると
図4に示されているように監視対象連結部において中連結ピン32は相対的に下方にずれる。符号49で示されているように、Y方向の距離を検出するレーザ式距離センサ40によって中連結ピン32までの距離が大きくなったことが検出される。すなわちブッシュ42の摩耗が検出される。コントローラ4に、レーザ式距離センサ40から中連結ピン32までの距離について基準距離を設定しておき、この基準距離との偏差が許容範囲にあるか否かで摩耗を検出してもよい。
【0027】
なお型開時には、
図5に示されているように、監視対象連結部において中連結ピン32は相対的に上にずれる。このとき、レーザ式距離センサ40から中連結ピン32までの距離は基準距離とほぼ同じになる。つまり、摩耗はほとんど検出されない。型開閉を繰り返すことによって、レーザ式距離センサ40から中連結ピン32までの距離が変化して摩耗が検出される。
【0028】
ところで、
図4、
図5から理解されるように、X方向の距離を検出するレーザ式距離センサ40によって検出される中連結ピン32までの距離は、型開閉してもわずかしか変化しない。これによってブッシュ42にはY方向に偏った摩耗が生じていることがわかる。つまり中連結ピン32、…に対して、その周方向において異なる2箇所にレーザ式距離センサ40、40、…が設けられていると、摩耗がどの方向に偏って発生しているかを検出することができる。
【0029】
図2に示されているように、中連結ピン32に対して軸方向の異なる2箇所にレーザ式距離センサ40、40、…が設けられているとき、摩耗によって生じる中連結ピン32の傾きが検出できる。ブッシュ42、42の摩耗、あるいは中連結ピン32の摩耗が生じているとき、中連結ピン32は、符号50で示されている正常な位置から、符号51で示されている位置に傾く。このとき、2箇所のレーザ式距離センサ40、40によって検出される中連結ピン32までの距離が異なって検出される。つまり中連結ピン32の傾きすなわちアライメントのズレが生じていることがわかる。これによってブッシュ42、42あるいは中連結ピン32が摩耗していることがわかる。
【0030】
<第2の実施の形態に係るトグル機構の摩耗検出装置>
本実施の形態に係るトグル機構の摩耗検出装置5は色々な変形が可能である。
図6には、第2の実施の形態に係るトグル機構の摩耗検出装置5‘が示されている。この実施の形態においては、レーザ式距離センサ40、40、…と中連結ピン32の間に、保護部材は設けられていない。また、1本の中連結ピン32に対して、周方向の異なる3箇所にレーザ式距離センサ40、40、…が設けられている。
【0031】
<第3の形態に係るトグル機構の摩耗検出装置>
図7には第3の実施の形態に係るトグル機構の摩耗検出装置5‘’が示されている。この実施の形態において下リンク21‘は変形されており、一部にくり抜き53が形成されている。このくり抜き53の方向からもレーザ式距離センサ40が設けられている。この実施の形態においてレーザ式距離センサ40、40、…は0度、90度、180度、270度の位相の異なる4箇所から設けられている。このようにレーザ式距離センサ40、40、…が配置されているので、高い精度でブッシュ42または中連結ピン32の摩耗を検出することができる。
【0032】
<他の変形例>
他の変形例も可能である。例えば、クロスリンク23(
図1参照)とクロスヘッド20の連結部を監視対象連結部とすることもできる。つまりクロスヘッド連結ピン34に関連してレーザ式距離センサ40を設けてもよい。さらにはクロスリンク23と下リンク21の連結部を監視対象連結部として、クロス連結ピン33に関連してレーザ式距離センサ40を設けてもよい。レーザ式距離センサ40によって摩耗を監視する監視対象連結部は1箇所のみであってもよい。また1本の連結ピン27、30、32、…に対して設けるレーザ式距離センサ40の個数には制約はない。1個のみであってもよいし、軸方向の異なる3箇所以上に設けてもよいし、
図6、7に示されているように、周方向の異なる3箇所以上に設けてもよい。本実施の形態に係るトグル機構の摩耗検出装置5は竪型射出成形機1に設けられるように説明したが、横置き型の射出成形機に設けることもできる。
図2及び
図3を参照して説明した実施の形態1に係るトグル機構の摩耗検出装置5において、レーザ式距離センサ40、40、…と中連結ピン32の間に、保護部材を設けないようにしてもよい。
【0033】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0034】
1 竪型射出成形機 2 型締装置
3 射出装置 4 コントローラ
5 トグル機構の摩耗検出装置 7 筐体
9 固定盤 10 上可動盤
12 下可動盤 13 タイバー
14 トグル機構 16 下側金型
17 上側金型 19 加熱シリンダ
20 クロスヘッド 21 下リンク
22 上リンク 23 クロスリンク
25 クレビス 27 下連結ピン
28 クレビス 30 上連結ピン
32 中連結ピン 33 クロス連結ピン
34 クロスヘッド連結ピン 36 ボールネジ機構
40 レーザ式距離センサ 42 ブッシュ
44 孔 46 レーザ透過部材