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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20240822BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
G01N27/409 100
G01N27/416 331
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021069015
(22)【出願日】2021-04-15
(65)【公開番号】P2022163898
(43)【公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 孫超
(72)【発明者】
【氏名】大場 健弘
(72)【発明者】
【氏名】増田 憲治
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-015507(JP,A)
【文献】特開2014-052363(JP,A)
【文献】実開平02-144762(JP,U)
【文献】特開2009-075066(JP,A)
【文献】特開2007-047093(JP,A)
【文献】米国特許第05246562(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/409
G01N 27/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延び、後端側に電極端子部を有するセンサ素子と、
前記センサ素子の周囲を取り囲む主体金具と、
前記軸線方向に延びる筒状をなし、前記主体金具の後端側の部位に取り付けられた金属製の外筒と、
前記軸線方向に延び、前記センサ素子の前記電極端子部が接続される先端側接続部を有する端子金具と、
前記軸線方向に延びる筒状をなし、前記外筒の内周面から離間する態様で前記外筒の内部に配置され、前記端子金具の前記先端側接続部と前記センサ素子のうち前記電極端子部を有する部位とを、内部に収容するセパレータと、
前記端子金具のうち後端側に位置する後端側接続部に接続されて、後端側へ延びるリード線と、
前記軸線方向に延びる筒状をなし、前記外筒の後端側開口部を閉塞する態様で前記外筒に固定されたゴムキャップと、を備える
ガスセンサにおいて、
前記セパレータは、当該セパレータに対して先端側で最も近くに位置する先端側部材であって前記センサ素子が挿通する筒状の先端側部材と、離間しており、
前記ゴムキャップは、前記セパレータのうち少なくとも後端側部位の外周面を包囲する態様で前記セパレータを保持する筒状のセパレータ保持部を有し、
前記ゴムキャップの前記セパレータ保持部は、前記セパレータの外周面の少なくとも一部を径方向内側に押圧しつつ前記セパレータを保持しており、
前記ゴムキャップは、JIS K 6253に準拠してタイプAデュロメータによって測定される硬度が95以下である
ガスセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のガスセンサであって、
前記ゴムキャップの前記セパレータ保持部は、前記外筒の内周面と前記セパレータの前記外周面とに接触している
ガスセンサ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のガスセンサであって、
前記外筒は、前記ゴムキャップの前記セパレータ保持部に対して径方向外側に位置する部位であって径方向内側に加締められた加締め部を有し、
前記加締め部が、前記ゴムキャップの前記セパレータ保持部を介して前記セパレータの外周面の少なくとも一部を径方向内側に押圧することによって、前記セパレータが前記セパレータ保持部を介して前記外筒に固定されている
ガスセンサ。
【請求項4】
軸線方向に延び、後端側に電極端子部を有するセンサ素子と、
前記センサ素子の周囲を取り囲む主体金具と、
前記軸線方向に延びる筒状をなし、前記主体金具の後端側の部位に取り付けられた金属製の外筒と、
前記軸線方向に延び、前記センサ素子の前記電極端子部が接続される先端側接続部を有する端子金具と、
前記軸線方向に延びる筒状をなし、前記外筒の内周面から離間する態様で前記外筒の内部に配置され、前記端子金具の前記先端側接続部と前記センサ素子のうち前記電極端子部を有する部位とを、内部に収容するセパレータと、
前記端子金具のうち後端側に位置する後端側接続部に接続されて、後端側へ延びるリード線と、
前記軸線方向に延びる筒状をなし、前記外筒の後端側開口部を閉塞する態様で前記外筒に固定されたゴムキャップと、を備える
ガスセンサにおいて、
前記セパレータは、当該セパレータに対して先端側で最も近くに位置する先端側部材であって前記センサ素子が挿通する筒状の先端側部材と、離間しており、
前記ゴムキャップは、前記セパレータのうち少なくとも後端側部位の外周面を包囲する態様で前記セパレータを保持する筒状のセパレータ保持部を有し、
前記外筒は、前記ゴムキャップの前記セパレータ保持部に対して径方向外側に位置する部位であって径方向内側に加締められた加締め部を有し、
前記加締め部が、前記ゴムキャップの前記セパレータ保持部を介して前記セパレータの外周面の少なくとも一部を径方向内側に押圧することによって、前記セパレータが前記セパレータ保持部を介して前記外筒に固定されている
ガスセンサ。
【請求項5】
請求項4に記載のガスセンサであって、
前記ゴムキャップの前記セパレータ保持部は、前記外筒の内周面と前記セパレータの前記外周面とに接触している
ガスセンサ。
【請求項6】
請求項3~請求項5のいずれか1項に記載のガスセンサであって、
前記外筒の前記加締め部の加締め率は、20%以下である
ガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の排気管等に取り付けられて使用され、測定対象ガス(排気ガス)中の特定ガス成分(例えば、酸素やNOxなど)を検出するガスセンサが知られている。このようなガスセンサとして、特許文献1には、軸線方向に延び、後端側に電極端子部を有するセンサ素子と、センサ素子の周囲を取り囲む主体金具と、軸線方向に延びる筒状で、主体金具の後端側の部位に取り付けられた金属製の外筒と、を備えるガスセンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-2936号公報
【0004】
さらに、このガスセンサは、軸線方向に延び、センサ素子の電極端子部が接続される先端側接続部を有する端子金具と、軸線方向に延びる筒状をなし、外筒の内周面から離間する態様で外筒の内部に配置され、端子金具の先端側接続部とセンサ素子のうち電極端子部を有する部位を、内部に収容するセパレータと、端子金具のうち後端側に位置する後端側接続部に接続されて、後端側へ延びるリード線と、軸線方向に延びる筒状をなし、外筒の後端側開口部を閉塞する態様で外筒に固定されたゴムキャップと、を備える。なお、セパレータは、絶縁性セラミックからなる2つの絶縁部材を組み合わせてなる筒状のセパレータ本体部と、2つの絶縁部材を組み合わせて筒状のセパレータ本体部にした状態を保持する本体保持部(セパレータ本体の周囲を包囲してセパレータ本体の筒形状を保持する部位)と、を備える。このガスセンサでは、端子金具の後端側接続部が、ゴムキャップを軸線方向に貫通する貫通孔内に挿入されると共に、リード線のうち後端側接続部よりも後端側に位置してゴムキャップの貫通孔内に挿入されている部位が、貫通孔に密着して固定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のガスセンサでは、セパレータが、先端側部材である内筒と離間している。なお、先端側部材は、セパレータに対して先端側に位置する部材のうちセパレータの最も近くに位置する部材であって、センサ素子が軸線方向に挿通する部材である。さらには、セパレータは、後端側部材であるゴムキャップとも離間している。なお、後端側部材は、セパレータに対して後端側に位置する部材のうちセパレータの最も近くに位置する部材である。従って、上述のガスセンサでは、外筒の内部においてセパレータが固定されていない。
【0006】
このため、上述のガスセンサに外部から力が加えられたり、上述のガスセンサに外部から振動が伝わったりした場合に、外筒に対してセパレータが相対的に軸線方向に交差する方向(例えば、外筒の径方向)へ振動することがあった。これにより、セパレータの内部に収容されている端子金具の先端側接続部が、外筒に対して相対的に軸線方向に交差する方向(軸線交差方向とする)へ振動することがあった。一方、外筒に固定されているゴムキャップは外筒に対して相対的に振動しない(または振動し難い)ので、ゴムキャップ内に挿入されている端子金具の後端側接続部も、外筒に対して相対的に振動しない(または振動し難い)。
【0007】
このため、軸線方向に延びる端子金具において、端子金具の先端側接続部が、後端側接続部に対して相対的に軸線交差方向へ振動し、これによって先端側接続部と後端側接続部との間で応力(例えば、剪断応力)が発生し、先端側接続部と後端側接続部との間で端子金具が折れることがあった。このようなことから、ガスセンサにおいて、外筒に対してセパレータが相対的に軸線交差方向(軸線方向に交差する方向)へ振動することを低減することが求められていた。
【0008】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、外筒に対してセパレータが相対的に軸線交差方向へ振動し難いガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、軸線方向に延び、後端側に電極端子部を有するセンサ素子と、前記センサ素子の周囲を取り囲む主体金具と、前記軸線方向に延びる筒状をなし、前記主体金具の後端側の部位に取り付けられた金属製の外筒と、前記軸線方向に延び、前記センサ素子の前記電極端子部が接続される先端側接続部を有する端子金具と、前記軸線方向に延びる筒状をなし、前記外筒の内周面から離間する態様で前記外筒の内部に配置され、前記端子金具の前記先端側接続部と前記センサ素子のうち前記電極端子部を有する部位とを、内部に収容するセパレータと、前記端子金具のうち後端側に位置する後端側接続部に接続されて、後端側へ延びるリード線と、前記軸線方向に延びる筒状をなし、前記外筒の後端側開口部を閉塞する態様で前記外筒に固定されたゴムキャップと、を備えるガスセンサにおいて、前記セパレータは、当該セパレータに対して先端側で最も近くに位置する先端側部材であって前記センサ素子が挿通する筒状の先端側部材と、離間しており、前記ゴムキャップは、前記セパレータのうち少なくとも後端側部位の外周面を包囲する態様で前記セパレータを保持する筒状のセパレータ保持部を有し、前記ゴムキャップの前記セパレータ保持部は、前記セパレータの外周面の少なくとも一部を径方向内側に押圧しつつ前記セパレータを保持しており、前記ゴムキャップは、JIS K 6253に準拠してタイプAデュロメータによって測定される硬度が95以下であるガスセンサである。
【0010】
上述のガスセンサでは、セパレータが先端側部材と離間している。なお、先端側部材は、セパレータに対して先端側に位置する部材のうちセパレータの最も近くに位置する部材であって、センサ素子が挿通する部材である。従って、上述のガスセンサでは、セパレータを先端側から固定する先端側部材は存在しない。なお、上述のガスセンサでは、セパレータが、外筒の内周面から離間する態様で外筒の内部に配置されているが、セパレータの外周面と外筒の内周面との間に、後述するセパレータ保持部が介在し、このセパレータ保持部を介してセパレータの外周面と外筒の内周面とが接続する態様も、「セパレータが外筒の内周面から離間する態様」に含まれる。
【0011】
さらに、上述のガスセンサは、外筒の後端側開口部を閉塞するゴムキャップを備える。このゴムキャップは、軸線方向に延びる筒状をなし、外筒の内側において外筒に固定されている。さらに、このゴムキャップは、セパレータ保持部を有する。セパレータ保持部は、セパレータのうち少なくとも後端側部位の外周面を包囲する態様でセパレータを保持する筒状の部位である。従って、上述のガスセンサでは、外筒に固定されたゴムキャップによって、セパレータが保持されている。
【0012】
これにより、外部からガスセンサに力が加えられたり、外部からガスセンサに振動が伝わったりした場合に、外筒に固定されているゴムキャップと同様に、セパレータについても、外筒に対して相対的に軸線方向に交差する方向(例えば、外筒の径方向)へ振動することが生じ難くなる。従って、上述のガスセンサは、外筒に対してセパレータが相対的に軸線交差方向へ振動し難いガスセンサである。
しかも上述のガスセンサでは、ゴムキャップのセパレータ保持部が、セパレータの外周面の少なくとも一部を径方向内側(軸線直交方向)に押圧しつつセパレータを保持している。これにより、セパレータ保持部によってセパレータが強固に保持されるので、「セパレータが、外筒に対して相対的に軸線交差方向へ振動すること」が、より一層生じ難くなる。
【0013】
なお、セパレータとしては、例えば、絶縁性セラミックからなる筒状のセパレータを挙げることができる。また、絶縁性セラミックからなる複数の絶縁部材を組み合わせてなる筒状のセパレータ本体部と、複数の絶縁部材を組み合わせて筒状のセパレータ本体部にした状態を保持する本体保持部(例えば、セパレータ本体部の周囲を包囲してセパレータ本体部の筒形状を保持する本体保持部)と、を備えるセパレータを挙げることもできる。
【0014】
さらに、前記のガスセンサであって、前記ゴムキャップの前記セパレータ保持部は、前記外筒の内周面と前記セパレータの前記外周面とに接触しているガスセンサとすると良い。
【0015】
上述のガスセンサでは、ゴムキャップのセパレータ保持部が、外筒の内周面とセパレータの外周面とに接触して配置されている。これにより、セパレータ保持部が外筒に対して相対的に軸線交差方向に振動することを防止できる。従って、上述のガスセンサでは、セパレータ保持部に保持されているセパレータが、外筒に対して相対的に軸線交差方向に振動することを抑制できる。
【0018】
ところで、ゴムキャップの硬度が高すぎる場合は、セパレータ保持部によって押圧されるセパレータが割れてしまう虞がある。これに対し、上述のガスセンサでは、ゴムキャップとして、JIS K 6253に準拠してタイプAデュロメータによって測定される硬度(測定値)が95以下であるゴムキャップを用いている。これにより、セパレータ保持部によって押圧されるセパレータが割れることを防止できる。
【0019】
さらに、前記いずれかのガスセンサであって、前記外筒は、前記ゴムキャップの前記セパレータ保持部に対して径方向外側に位置する部位であって径方向内側に加締められた加締め部を有し、前記加締め部が、前記ゴムキャップの前記セパレータ保持部を介して前記セパレータの外周面の少なくとも一部を径方向内側に押圧することによって、前記セパレータが前記セパレータ保持部を介して前記外筒に固定されているガスセンサとすると良い。
【0020】
上述のガスセンサでは、外筒が、ゴムキャップのセパレータ保持部に対して径方向外側に位置する部位であって径方向内側に加締められた加締め部を有している。そして、この加締め部が、ゴムキャップのセパレータ保持部を介してセパレータの外周面の少なくとも一部を径方向内側に押圧することによって、セパレータがセパレータ保持部を介して外筒に固定されている。これにより、外筒に対してセパレータが相対的に軸線交差方向へ振動することを防止できる。
【0021】
さらに本発明の他の態様は、軸線方向に延び、後端側に電極端子部を有するセンサ素子と、前記センサ素子の周囲を取り囲む主体金具と、前記軸線方向に延びる筒状をなし、前記主体金具の後端側の部位に取り付けられた金属製の外筒と、前記軸線方向に延び、前記センサ素子の前記電極端子部が接続される先端側接続部を有する端子金具と、前記軸線方向に延びる筒状をなし、前記外筒の内周面から離間する態様で前記外筒の内部に配置され、前記端子金具の前記先端側接続部と前記センサ素子のうち前記電極端子部を有する部位とを、内部に収容するセパレータと、前記端子金具のうち後端側に位置する後端側接続部に接続されて、後端側へ延びるリード線と、前記軸線方向に延びる筒状をなし、前記外筒の後端側開口部を閉塞する態様で前記外筒に固定されたゴムキャップと、を備えるガスセンサにおいて、前記セパレータは、当該セパレータに対して先端側で最も近くに位置する先端側部材であって前記センサ素子が挿通する筒状の先端側部材と、離間しており、前記ゴムキャップは、前記セパレータのうち少なくとも後端側部位の外周面を包囲する態様で前記セパレータを保持する筒状のセパレータ保持部を有し、前記外筒は、前記ゴムキャップの前記セパレータ保持部に対して径方向外側に位置する部位であって径方向内側に加締められた加締め部を有し、前記加締め部が、前記ゴムキャップの前記セパレータ保持部を介して前記セパレータの外周面の少なくとも一部を径方向内側に押圧することによって、前記セパレータが前記セパレータ保持部を介して前記外筒に固定されているガスセンサである。
また上述のガスセンサであって、前記ゴムキャップの前記セパレータ保持部は、前記外筒の内周面と前記セパレータの前記外周面とに接触しているガスセンサとすると良い。
さらに、前記のガスセンサであって、前記外筒の前記加締め部の加締め率は、20%以下であるガスセンサとすると良い。
【0022】
上述のガスセンサでは、外筒の加締め部の加締め率(変形率)を20%以下にしている。このように、加締め部の加締め率を小さくして、外筒の変形率を小さくすることで、外筒にクラックが発生することを抑制することができる。なお、加締め率は、外筒を径方向内側に加締めることによる外筒(加締めた部位)の外径の低減率に相当する値であり、以下の演算式(1)によって求められる。
【0023】
加締め率(%)={(加締め部を形成する前の外筒(加締める部位)の外径-外筒のうち加締め部を含む部位の外径)/加締め部を形成する前の外筒(加締める部位)の外径}×100・・・(1)
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態にかかるガスセンサの縦断面図である。
図2】同ガスセンサの部分拡大縦断面図である。
図3】ゴムキャップの縦断面図である。
図4】センサ素子の斜視図である。
図5】変形形態にかかるガスセンサの部分拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<実施形態>
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。図1は、実施形態のガスセンサ1の縦断面図であり、ガスセンサ1の軸線AXを通る位置で軸線方向DXにガスセンサ1を切断した(但し、センサ素子5は切断していない)断面図である。なお、図1において、下側がガスセンサ1の先端側であり、上側がガスセンサ1の後端側である。また、図2は、ガスセンサ1の部分拡大縦断面図であり、図1とは異なる位置(ゴムキャップ15の2つの貫通孔15bを通る位置、図1よりも紙面奥側の位置)で軸線方向DXにガスセンサ1を切断した(但し、センサ素子5、端子金具41~44、及び、リード線31~34は切断していない)部分拡大断面図である。
【0026】
ガスセンサ1は、先端側部位が図示しない自動車等の排気管内に挿入される態様で排気管に取り付けられ、先端側を下方に向けた状態で使用される。具体的には、ガスセンサ1は、排気ガス(測定対象ガス)中の特定ガス成分(例えば、酸素やNOxなど)を検出する。このガスセンサ1は、図1に示すように、センサ素子5と主体金具3とプロテクタ9と外筒11とを備える。
【0027】
このうち、センサ素子5は、軸線方向DX(ガスセンサ1の軸線AXに沿う方向、図1において上下方向)に延びる棒状をなし、測定対象ガス(排気ガス)に晒される先端側に、保護層(図示省略)に覆われた検出部5bを有する。この検出部5bは、排気ガス(測定対象ガス)中の特定ガス成分(例えば、酸素やNOxなど)を検出する。さらに、センサ素子5は、その後端側に、4つの電極端子部(第1電極端子部5f、第2電極端子部5g、第3電極端子部5j、第4電極端子部5k)を有する(図4参照)。このセンサ素子5は、主体金具3の貫通孔3f内に挿入されている。詳細には、このセンサ素子5は、先端側に位置する検出部5bが、主体金具3の先端面3dから先端側に突出すると共に、後端側に位置する4つの電極端子部(第1電極端子部5f~第4電極端子部5k)が、主体金具3の後端から後端側に突出した状態で、主体金具3の貫通孔3f内に固定されている。
【0028】
主体金具3は、センサ素子5の周囲を取り囲みつつ、センサ素子5を保持(他部材を介して保持)している。この主体金具3は、軸線方向DXに延びる筒状をなし、先端側から後端側に延びる貫通孔3fを有すると共に、その外表面に自身を排気管に固定するためのネジ部3mを備える(図1参照)。なお、貫通孔3fには、径方向内側に突出する棚部3kが形成されている。さらに、主体金具3は、先端面3dを含む円筒状の先端側壁部3cを有する。この主体金具3は、金属材料(例えば、ステンレスなど)によって形成されている。
【0029】
主体金具3の貫通孔3fの内部には、絶縁性材料(例えばアルミナなど)からなる環状のホルダ61と、滑石粉末充填層63、65と、絶縁性材料(例えばアルミナなど)からなる環状のスリーブ67とが、センサ素子5の径方向周囲を取り囲む状態で配置されている(図1参照)。スリーブ67と主体金具3の後端部との間には、加締パッキン69が配置されている。また、ホルダ61と主体金具3の棚部3kとの間には、滑石リング63やホルダ61を保持するための筒状の金属ホルダ71が配置されている。なお、主体金具3の後端部は、加締パッキン69を介してスリーブ67を先端側に押し付けるようにして、加締められている(図1参照)。
【0030】
また、プロテクタ9は、筒状をなし、主体金具3の先端側の部位に固定されている。具体的には、プロテクタ9は、センサ素子5の先端側の部位(主体金具3の先端面3dから先端側に突出する部位)を包囲する態様で、主体金具3の先端側壁部3cの外周面に溶接等(図示せず)によって固定されている。このプロテクタ9は、耐熱性材料(例えばNCF601など)によって形成されている。プロテクタ9は、センサ素子5の検出部5bが配置される測定室Sを構成する筒状の第1プロテクタ9b(内側プロテクタ)と、第1プロテクタ9bの外周を取り囲む筒状の第2プロテクタ9d(外側プロテクタ)とを備える二重筒構造を有している。第1プロテクタ9bには、測定対象ガスの通過が可能な複数の通気孔9cが形成されている。第2プロテクタ9dには、測定対象ガスの通過が可能な複数の通気孔9fが形成されている(図1参照)。
【0031】
また、外筒11は、金属製であり、軸線方向DXに延びる円筒状をなしている。この外筒11は、主体金具3の後端側の部位に取り付けられて(溶接されて)、センサ素子5の後端側の部位を包囲している(図1参照)。
【0032】
さらに、ガスセンサ1は、4つの端子金具(第1端子金具41、第2端子金具42、第3端子金具43、第4端子金具44)と、セパレータ13と、4本のリード線(第1リード線31、第2リード線32、第3リード線33、第4リード線34)と、ゴムキャップ15とを備える(図1及び図2参照)。このうち、4つの端子金具(第1端子金具41~第4端子金具44)は、それぞれ、弾性を有する耐熱性金属(例えばステンレス鋼など)からなり、軸線方向DXに延びる形態をなしている。
【0033】
第1端子金具41は、センサ素子5の第1電極端子部5fが接続される第1先端側接続部41bと、第1リード線31(詳細には、第1リード線31中の金属芯線31b)が接続される第1後端側接続部41cとを有する。第2端子金具42は、センサ素子5の第2電極端子部5gが接続される第2先端側接続部42bと、第2リード線32(詳細には、第2リード線32中の金属芯線32b)が接続される第2後端側接続部42cとを有する。第3端子金具43は、センサ素子5の第3電極端子部5jが接続される第3先端側接続部43bと、第3リード線33(詳細には、第3リード線33中の金属芯線33b)が接続される第3後端側接続部43cとを有する。第4端子金具44は、センサ素子5の第4電極端子部5kが接続される第4先端側接続部44bと、第4リード線34(詳細には、第4リード線34中の金属芯線34b)が接続される第4後端側接続部44cとを有する(図2参照)。
【0034】
セパレータ13は、セラミック(例えば、アルミナ、ステアタイトなど)からなり、軸線方向DXに延びる円筒状をなしている。このセパレータ13は、外筒11の内周面11bから離間する態様(すなわち、外筒11の内周面11bに対して直接に接触しない態様)で、外筒11の内部に配置されている(図1及び図2参照)。なお、本実施形態のガスセンサ1では、後述するように、セパレータ13の外周面13gと外筒11の内周面11bとの間に、セパレータ保持部15dが介在するが、このセパレータ保持部15dを介してセパレータ13の外周面13gと外筒11の内周面11bとが接続する態様も、「セパレータ13が外筒11の内周面11bから離間する態様」に含まれる。
【0035】
さらに、セパレータ13は、自身を軸線方向DXに貫通する貫通孔13cを有する。この貫通孔13cには、4つの端子金具(第1端子金具41~第4端子金具44)の4つの先端側接続部(第1先端側接続部41b~第4先端側接続部44b)と、センサ素子5のうち4つの電極端子部(第1電極端子部5f~第4電極端子部5k)を有する後端部5cとが収容されている(図1及び図2参照)。
【0036】
また、ゴムキャップ15は、耐熱性ゴムからなり、軸線方向DXに延びる筒状をなしている。このゴムキャップ15は、外筒11の後端側開口部11cを閉塞する態様で、外筒11に固定されている(図1参照)。具体的には、ゴムキャップ15は、外筒11の後端部を径方向内側に加締めることによって、外筒11に固定されている。このゴムキャップ15は、図3に示すように、2段円筒状の本体部15cと円筒状のセパレータ保持部15dとを有する。ゴムキャップ15は、当該ゴムキャップ15(本体部15c)を軸線方向DXに貫通する4つの貫通孔15bを有する。
【0037】
本実施形態のガスセンサ1では、4つの端子金具(第1端子金具41~第4端子金具44)の4つの後端側接続部(第1後端側接続部41c~第4後端側接続部44c)のうち少なくとも後端部(第1後端部41d、第2後端部42d、第3後端部43d、第4後端部44d)が、それぞれ、ゴムキャップ15の4つの貫通孔15b内に挿入されている。なお、本実施形態では、4つの後端側接続部(第1後端側接続部41c~第4後端側接続部44c)の略全体が、それぞれ、ゴムキャップ15の貫通孔15b内に挿入されている(図2参照)。
【0038】
さらに、4本のリード線(第1リード線31~第4リード線34)のうち4つの後端側接続部(第1後端側接続部41c~第4後端側接続部44c)よりも後端側に位置してゴムキャップ15の貫通孔15b内に挿入されている部位(第1部位31c、第2部位32c、第3部位33c、第4部位34c)が、ゴムキャップ15の貫通孔15b(貫通孔15bを構成する筒状面)に密着して固定されている。4本のリード線(第1リード線31~第4リード線34)は、ゴムキャップ15の貫通孔15bの後端側からゴムキャップ15の外部に延出している(図2参照)。
【0039】
さらに、本実施形態のガスセンサ1では、セパレータ13が、先端側部材であるスリーブ67と離間している(図1参照)。なお、先端側部材は、セパレータ13に対して先端側(図1において下側)に位置する部材のうちセパレータ13の最も近くに位置する部材であって、センサ素子5が挿通する部材である。従って、本実施形態のガスセンサ1では、セパレータ13を先端側から固定する先端側部材は存在しない。
【0040】
しかしながら、本実施形態のガスセンサ1では、ゴムキャップ15が、セパレータ保持部15dを有する。このセパレータ保持部15dは、セパレータ13のうち少なくとも後端側部位13dの外周面13fを包囲する態様でセパレータ13を保持している(図1図3参照)。従って、本実施形態のガスセンサ1では、外筒11に固定されたゴムキャップ15によって、セパレータ13が保持されている。なお、外筒11は、主体金具3の後端側の部位に、溶接によって固定されている。また、主体金具3は、ネジ部3mによって図示しない排気管に固定される。従って、外筒11は、主体金具3を通じて排気管に固定される。
【0041】
このようなガスセンサ1では、外部からガスセンサ1に力が加えられたり、外部からガスセンサ1に振動が伝わったりした場合に、外筒11に固定されているゴムキャップ15と同様に、セパレータ13についても、外筒11に対して相対的に軸線方向DXに交差する方向(例えば、外筒11の径方向)へ振動することが生じ難くなる。従って、本実施形態のガスセンサ1は、外筒11に対してセパレータ13が相対的に軸線交差方向(軸線方向DXに交差する方向)へ振動し難いガスセンサであるといえる。
【0042】
さらに、このようなガスセンサ1では、4つの端子金具(第1端子金具41~第4端子金具44)について、ゴムキャップ15の貫通孔15b内に挿入されている4つの後端側接続部(第1後端側接続部41c~第4後端側接続部44c)と同様に、セパレータ13の内部に収容されている4つの先端側接続部(第1先端側接続部41b~第4先端側接続部44b)においても、外筒11に対して相対的に軸線方向DXに交差する方向(軸線交差方向とする)へ振動することが生じ難くなる。
【0043】
このため、本実施形態のガスセンサ1では、軸線方向DXに延びる4つの端子金具(第1端子金具41~第4端子金具44)において、「先端側接続部(第1先端側接続部41b~第4先端側接続部44b)が、後端側接続部(第1後端側接続部41c~第4後端側接続部44c)に対して相対的に軸線交差方向へ振動すること」が生じ難くなるので、端子金具(第1端子金具41~第4端子金具44)に応力(例えば、剪断応力)が生じ難くなり、端子金具(第1端子金具41~第4端子金具44)の折損も生じ難くなる。
【0044】
さらに、本実施形態のガスセンサ1では、ゴムキャップ15のセパレータ保持部15dが、外筒11の内周面11bとセパレータ13の外周面13gとに接触して配置されている。これにより、セパレータ保持部15dが外筒11に対して相対的に軸線交差方向に振動することを防止できる。従って、本実施形態のガスセンサ1では、セパレータ保持部15dに保持されているセパレータ13が、外筒11に対して相対的に軸線交差方向に振動することを抑制できる。これにより、端子金具(第1端子金具41~第4端子金具44)の折損がより一層生じ難くなる。
【0045】
さらに、本実施形態のガスセンサ1では、ゴムキャップ15のセパレータ保持部15dが、セパレータ13の外周面13gの少なくとも一部(具体的には、後端側部位13dの外周面13f)を径方向内側(中心に向かう方向)に押圧しつつセパレータ13を保持している。具体的には、本実施形態のガスセンサ1では、セパレータ13の後端側部位13dがセパレータ保持部15dの内部に圧入されている。これにより、セパレータ保持部15dが、セパレータ13の後端側部位13dの外周面13fを径方向内側に押圧しつつセパレータ13を保持している。これにより、セパレータ保持部15dによってセパレータ13が強固に保持されるので、「セパレータ13が、外筒11に対して相対的に軸線交差方向へ振動すること」が、より一層生じ難くなる。これにより、端子金具(第1端子金具41~第4端子金具44)の折損がより一層生じ難くなる。
【0046】
ところで、ゴムキャップ15の硬度が高すぎる場合は、セパレータ保持部15dによって押圧されるセパレータ13が割れてしまう虞がある。これに対し、本実施形態のガスセンサ1では、ゴムキャップ15として、JIS K 6253に準拠してタイプAデュロメータによって測定される硬度(測定値)が95以下(より具体的には、50以上95以下の範囲内の値)であるゴムキャップ15を用いている。これにより、セパレータ保持部15dによって押圧されるセパレータ13が割れることを防止できる。なお、ゴムキャップ15は、その全体が1種類のゴム材料(例えばフッ素樹脂)によって形成されている。
【0047】
<変形形態>
次に、変形形態にかかるガスセンサ101について説明する。本変形形態のガスセンサ101は、実施形態のガスセンサ1と比較して、外筒111が加締め部111dを有する点が異なり、その他は同等である。具体的には、本変形形態のガスセンサ101では、円筒状の外筒111が、ゴムキャップ15のセパレータ保持部15dに対して径方向外側に位置する部位であって径方向内側に加締められた加締め部111dを有している(図5参照)。
【0048】
そして、この加締め部111dが、ゴムキャップ15のセパレータ保持部15dを介してセパレータ13の外周面13gの少なくとも一部(具体的には、後端側部位13dの外周面13f)を径方向内側に押圧することによって、セパレータ13がセパレータ保持部15dを介して外筒111に固定されている(図5参照)。これにより、外筒111に対してセパレータ13が相対的に軸線交差方向へ振動することを防止できる。これにより、端子金具(第1端子金具41~第4端子金具44)の折損を防止できる。
【0049】
ところで、ゴムキャップ15の硬度が高すぎる場合は、セパレータ保持部15d(加締め部111dによって径方向内側に押圧された部位)によって径方向内側に押圧されるセパレータ13が、割れてしまう虞がある。これに対し、本変形形態のガスセンサ101でも、ゴムキャップ15として、JIS K 6253に準拠してタイプAデュロメータによって測定される硬度(測定値)が95以下(より具体的には、50以上95以下)であるゴムキャップ15を用いている。これにより、セパレータ保持部15dによって押圧されるセパレータ13が割れることを防止できる。
【0050】
さらに、本変形形態のガスセンサ101では、外筒111の加締め部111dの加締め率を20%以下(具体的には、0.5%以上20%以下の範囲内の値)にしている。このように、加締め部111dの加締め率を小さくして、外筒111の変形率を小さくすることで、外筒111にクラックが発生することを抑制することができる。なお、加締め率(%)は、外筒111を径方向内側に加締めることによる外筒111(加締めた部位)の外径の縮小率に相当する値であり、以下の演算式(1)によって求められる。
【0051】
加締め率(%)={(加締め部111dを形成する前の外筒111(加締める部位)の外径D1-外筒111のうち加締め部111dを含む部位の外径D2)/加締め部111dを形成する前の外筒111(加締める部位)の外径D1}×100・・・(1)
【0052】
なお、「加締め部111dを形成する前の外筒111(加締める部位)の外径D1」は、外筒111のうち加締め部111dを含む環状部位に対して軸線方向DXに隣接する環状部位の外径に等しい(図5参照)。また、本実施形態では、加締め部111dは、外筒111の周方向に等間隔で4カ所に離間して形成されている。換言すれば、径方向に対向する2つの加締め部111dからなる組が、2組形成されている。従って、「加締め部111dを形成する前の外筒111(加締める部位)の外径D1」は、外筒111の周方向に隣り合う2つの加締め部111dの間の位置(加締められていない位置)における外筒111の外径にも等しい。
【0053】
以上において、本発明を実施形態及び変形形態に即して説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0054】
例えば、実施形態等では、セパレータとして、絶縁性セラミックからなる筒状のセパレータ13を例示した。しかしながら、セパレータとして、絶縁性セラミックからなる複数の絶縁部材を組み合わせてなる筒状のセパレータ本体部と、複数の絶縁部材を組み合わせて筒状のセパレータ本体部にした状態を保持する本体保持部(例えば、セパレータ本体部の周囲を包囲してセパレータ本体部の筒形状を保持する本体保持部)と、を備えるセパレータを用いるようにしても良い。
【符号の説明】
【0055】
1,101 ガスセンサ
3 主体金具
5 センサ素子
5b 検出部
5f,5g,5j,5k 電極端子部
11,111 外筒
111d 加締め部
13 セパレータ
15 ゴムキャップ
15b 貫通孔
15d セパレータ保持部
31,32,33,34 リード線
41,42,43,44 端子金具
41b,42b,43b,44b 先端側接続部
41c,42c,43c,44c 後端側接続部
67 スリーブ(先端側部材)
AX 軸線
DX 軸線方向
図1
図2
図3
図4
図5