IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大成建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-柱梁架構構造 図1
  • 特許-柱梁架構構造 図2
  • 特許-柱梁架構構造 図3
  • 特許-柱梁架構構造 図4
  • 特許-柱梁架構構造 図5
  • 特許-柱梁架構構造 図6
  • 特許-柱梁架構構造 図7
  • 特許-柱梁架構構造 図8
  • 特許-柱梁架構構造 図9
  • 特許-柱梁架構構造 図10
  • 特許-柱梁架構構造 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】柱梁架構構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/21 20060101AFI20240822BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
E04B1/21 D
E04B1/58 505A
E04B1/58 506A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021071799
(22)【出願日】2021-04-21
(65)【公開番号】P2022166535
(43)【公開日】2022-11-02
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 正樹
(72)【発明者】
【氏名】藤山 淳司
【審査官】齋藤 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-169536(JP,A)
【文献】特開昭63-197736(JP,A)
【文献】特開2010-019017(JP,A)
【文献】特開2017-040122(JP,A)
【文献】特開平03-257234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/21
E04B 1/38 ー 1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート製の柱と、梁材とによる柱梁架構に、内部梁が接合された柱梁架構構造であって、
前記柱と前記梁材との接合部において前記梁材から前記柱梁架構の構面に直交する建物の室内側方向に突出して設けられブラケットを備え、
前記内部梁は端部が前記ブラケットの上面に接合されることにより、前記接合部とピン接合または半剛接合されている
ことを特徴とする柱梁架構構造。
【請求項2】
前記ブラケットは、前記内部梁の下側に向けて突出するように設けられ、
前記内部梁の前記端部は、上側が前記下側よりも前記接合部に向けて突出する突出部を備えるように形成され、
前記ブラケットの上面に前記突出部が設置される
ことを特徴とする請求項1に記載の柱梁架構構造。
【請求項3】
前記ブラケットには、鉛直鋼材の下端部が埋設されているとともに、前記鉛直鋼材の上端部は前記内部梁の前記端部に埋設されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の柱梁架構構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱梁架構構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、梁受け用顎を一体的に設けた柱と、梁受け用顎が嵌合する凹部を端部に形成した梁とで構成され、梁受け用顎に凹部を嵌合させて柱に梁を架設し、両者間をプレストレス導入用のPC鋼材に緊張力を付与して接合する柱梁の接合構造が開示されている。
特許文献1に開示されたような構成では、柱と梁とがPC鋼材により剛接合されている。このため梁から柱と梁の接合部に曲げ応力が作用した際に、接合部で柱や梁を形成するコンクリートにひび割れが生じることがある。
【0003】
また、特許文献2には、柱の梁接合用顎に、鉄骨梁材の接合用端部が載置され、接合用端部が、接合用端部から柱にかけて配設されたPC鋼材で接合された梁と柱の接合構造が開示されている。
特許文献2に開示されたような梁と柱の接合構造では、鉄骨梁材と柱とがPC鋼材により剛接合されている。このため梁から柱と梁の接合部に曲げ応力が作用した際に、接合部で柱を形成するコンクリートにひび割れが生じることがある。
【0004】
また、特許文献3には、建物構造の柱梁接合部において、PC梁とPC柱に配置されたPCケーブルを柱梁接合部に貫通させて緊張導入力を与えることで、柱梁接合部にプレストレスを導入する構成が開示されている。
特許文献3に開示されたような構成では、PC梁とPC柱とがPCケーブルにより剛接合されている。このため梁から柱と梁の接合部に曲げ応力が作用した際に、接合部でPC梁やPC柱を形成するコンクリートにひび割れが生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-196089号公報
【文献】特開2009-114742号公報
【文献】特許第6747734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、内部梁から柱と梁材の接合部に作用する曲げ応力を低減して、柱や接合部のコンクリートのひび割れを抑制することができる、柱梁架構構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鉄筋コンクリート柱と梁材による柱梁架構の接合部と、内部梁との柱梁架構構造として、接合部の建物の室内側側面にブラケットを突出して設け、そのブラケットの上面に内部梁を設置して接合させることで、接合部と内部梁がピン接合または半剛接合状態で接合される。よって、本発明の柱梁架構構造によれば、内部梁から柱と梁材の接合部に作用する曲げ応力が低減され、内部梁から柱に伝達される応力が低くなり、柱や接合部のコンクリートのひび割れを抑制できる点に着眼して、本発明に至った。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の柱梁架構構造は、鉄筋コンクリート製の柱と、梁材とによる柱梁架構に、内部梁が接合された柱梁架構構造であって、前記柱と前記梁材との接合部から、前記柱梁架構の構面に直交する方向に突出して設けられ、前記内部梁の端部が上面に接合されるブラケットを備え、前記内部梁の前記端部は、前記ブラケットを介して前記接合部とピン接合または半剛接合されていることを特徴とする。
このような構成によれば、鉄筋コンクリート製の柱と梁材との柱梁架構において、柱と梁材との接合部から建物の室内側に向かって突出するブラケットを設け、ブラケットの上面に接合される内部梁の端部を、ブラケットを介して接合部とピン接合または半剛接合するようにした。これにより、柱と梁材との接合部に接する内部梁の梁端部に発生する曲げモーメントを小さくすることができる。その結果、内部梁から柱と梁材の接合部に作用する曲げ応力を低減して、柱や接合部のコンクリートのひび割れを抑制することができる。
【0008】
本発明の一態様においては、本発明の柱梁架構構造では、前記ブラケットは、前記内部梁の下側に向けて突出するように設けられ、前記内部梁の端部は、上側が下側よりも前記接合部に向けて突出する突出部を備えるように形成され、前記ブラケットの上面に前記突出部が設置される。
このような構成によれば、柱と梁材との接合部に設けられるブラケットを、内部梁の下側に向けて突出させ、内部梁の端部に設けられた突出部を、ブラケットの上面に設置するようにした。これにより、内部梁から柱と梁材との接合部への曲げ応力の伝達を低減しつつ、内部梁と、柱と梁材との接合部との間でのせん断応力の伝達を確実に行うことができる。
【0009】
本発明の一態様においては、本発明の柱梁架構構造では、前記ブラケットには、鉛直鋼材の下端部が埋設されているとともに、前記鉛直鋼材の上端部は前記内部梁の端部に埋設されている。
このような構成によれば、柱と梁材との接合部に設けられるブラケットと、ブラケットの上面に接合される内部梁の端部とが、双方に埋設される鉛直鋼材によって接合される。これにより、柱と梁材との接合部と、内部梁の端部とを、ブラケットを介してピン接合または半剛接合することができる。したがって、内部梁の梁端部に発生する曲げモーメントが小さくなり、内部梁から、柱と梁材との接合部に伝達される曲げ応力を低減することができる。その結果、柱や梁材のコンクリートのひび割れを抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、内部梁から柱と梁材の接合部に作用する曲げ応力を低減して、柱や接合部のコンクリートのひび割れを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る柱梁架構構造が適用された建物の一例を示す伏図である。
図2】本発明の実施形態に係る柱梁架構構造を示す斜視図である。
図3図2のI―I矢視断面図である。
図4図2のII―II矢視断面図である。
図5】本発明の実施形態の第1変形例に係る柱梁架構構造を示す縦断面図である。
図6】本発明の実施形態の第1変形例に係る柱梁架構構造を示す横断面図である。
図7】本発明の実施形態の第1変形例に係る柱梁架構構造において、柱の両側に設けた支圧板を示す図である。
図8】本発明の実施形態の第2変形例に係る柱梁架構構造を示す縦断面図である。
図9】本発明の実施形態の第3変形例に係る柱梁架構構造を示す縦断面図である。
図10図9のIII―III矢視断面図である。
図11】柱梁架構構造の関連実施例としての柱梁架構構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、鉄筋コンクリート柱と梁材による柱梁架構の接合部において、その接合部の建物の室内側側面にブラケットを突出して設け、そのブラケットを介して、接合部と内部梁をピン接合または半剛接合させた柱梁架構構造である。
以下、添付図面を参照して、本発明による柱梁架構構造を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
本発明の実施形態に係る柱梁架構構造が適用された建物の一例を示す伏図を図1に示す。図2は、本発明の実施形態に係る柱梁架構構造を示す斜視図である。図3は、図2のI―I矢視断面図である。図4は、図2のII―II矢視断面図である。
図1図2に示されるように、本実施形態における柱梁架構構造1Aは、例えば、建物2の外周部に配置される柱20と梁材30とによる柱梁架構10Aに、建物2の内部に配置される内部梁40が接合された構成を有している。
柱20は、上下方向Dvから見たときに長方形状の断面を有した扁平柱であり、建物2の外周に設けられている。柱20は、例えば柱20の位置する部分において建物2の内外を結ぶ第一方向D1の厚みよりも、建物2の外周面に沿った、第一方向D1に直交する第二方向D2の幅が大きい。
【0013】
図3図4に示すように、柱20は、例えば鉄筋コンクリート製で、柱コンクリート21中に、複数本の柱主筋22、および柱せん断補強筋23が埋設されている。複数本の柱主筋22は、上下方向Dvに延びている。柱せん断補強筋23は、複数本の柱主筋22を取り囲むように配筋されている。柱せん断補強筋23は、上下方向Dvに間隔をあけて複数配置されている。
梁材30は、建物2の外周部に沿って水平方向に延びている。梁材30は、建物2の外周部で互いに隣り合う梁材30同士を結ぶように、第二方向D2に延在して設けられている。梁材30は、第二方向D2に直交する断面形状が、上下方向Dvを長辺とする長方形状とされている。梁材30は、柱20に対して建物2の室内側に偏心して設けられている。これにより、柱20と梁材30との接合部J1において、梁材30の一部が、柱20の室内側を向く柱側面20sに対し、室内側に突出した梁突出部30tが形成されている。
梁材30は、例えば鉄筋コンクリート製で、梁コンクリート31中に、複数本の梁主筋32、および梁せん断補強筋33が埋設されている。複数本の梁主筋32は、第二方向D2に延びている。梁せん断補強筋33は、複数本の梁主筋32を取り囲むように配筋されている。梁せん断補強筋33は、第二方向D2に間隔をあけて複数配置されている。
【0014】
内部梁40は、柱20の延伸方向(上下方向Dv)と梁材30の延伸方向(第二方向D2)とを含む柱梁架構10Aの構面に対し、直交する第一方向D1に延びている。内部梁40は、建物2の内部に配置されている。内部梁40は、柱20と梁材30の接合部J1から、建物2の内側に向かって延びている。本実施形態において、内部梁40は、例えば鉄筋コンクリート製で、内部梁コンクリート41中に、複数本の内部梁主筋42、および内部梁あばら筋43が埋設されている。複数本の内部梁主筋42は、第一方向D1に延びている。内部梁あばら筋43は、複数本の内部梁主筋42を取り囲むように配筋されている。内部梁あばら筋43は、第一方向D1に間隔をあけて複数配置されている。
【0015】
内部梁40の端部44には、突出部45が形成されている。突出部45は、内部梁40の端部44の上側44aに形成されている。突出部45は、内部梁40の端部44の下側44bよりも接合部J1に向けて突出している。内部梁40の端部44の上側44aには、ブラケット出隅部補強筋46が、第一方向D1に延在して設けられている。ブラケット出隅部補強筋46の一端は、突出部45の下面に沿って設けられている。ブラケット出隅部補強筋46の他端は、突出部45よりも内部梁40の延伸方向中央部側に所定長延び、内部梁コンクリート41中に定着されている。
【0016】
内部梁40の端部44は、ブラケット50を介して、接合部J1に接合されている。ブラケット50は、柱20と梁材30との接合部J1から、柱梁架構10Aの構面に直交する方向に突出して設けられている。本実施形態において、ブラケット50は、接合部J1において梁材30が室内側に突出した梁突出部30tに設けられている。ブラケット50は、梁突出部30tの下部から、柱梁架構10Aの構面に直交して室内側に突出している。ブラケット50は、内部梁40の下側44bに向けて突出するように設けられている。ブラケット50は、直方体状で、その上面50tに、内部梁40の端部44に形成された突出部45が設置されている。
ブラケット50は、例えば鉄筋コンクリート製で、ブラケットコンクリート51中に、複数本のブラケット補強筋52、およびブラケット横筋53が埋設されている。ブラケット横筋53は、ブラケット50の上下にそれぞれ2本ずつ設けられている。各ブラケット横筋53は、第二方向D2に延びている。ブラケット補強筋52は、ブラケット50内で複数本のブラケット横筋53を囲むように設けられている。ブラケット補強筋52は、ブラケット横筋53よりも内部梁40側で上下方向Dvに延在し、その上下両側で接合部J1に向けて屈曲して、ブラケット50内から接合部J1(梁材30)内に向けて延び、端部が柱コンクリート21、梁コンクリート31に定着されている。ブラケット補強筋52は、第二方向D2に間隔をあけて複数本設けられている。
【0017】
内部梁40の端部44は、ブラケット50を介して接合部J1とピン接合または半剛接合されている。本実施形態において、内部梁40の端部44とブラケット50とは、鉛直鋼材60によってピン接合されている。鉛直鋼材60は、第二方向D2に間隔をあけて、例えば4本設けられている。各鉛直鋼材60は、ブラケット50に下端部60bが埋設されているとともに、上端部60tが内部梁40の端部44に設けられた突出部45に埋設されている。内部梁40の突出部45内には、鉛直鋼材60の上部を2本ずつ取り囲む上部ダボ拘束筋47が設けられている。上部ダボ拘束筋47は、鉛直鋼材60よりも接合部J1側で第二方向D2に延在し、その両側で屈曲して、突出部45内から内部梁40の延伸方向中央部側に延び、内部梁コンクリート41中に定着されている。ブラケット50内には、上部ダボ拘束筋47と同様に、鉛直鋼材60の下部を2本ずつ取り囲む下部ダボ拘束筋54が設けられている。下部ダボ拘束筋54は、鉛直鋼材60よりも接合部J1とは反対側で第二方向D2に延在し、その両側で屈曲して、ブラケット50内から接合部J1側に延び、梁材30の梁コンクリート31中に定着されている。
本実施形態においては、全ての鉛直鋼材60は、第二方向D2と上下方向Dvにより形成される一つの平面内に設けられ、結果として、図3のように第一方向D1から視たときに一列となるように配置されている。これにより、内部梁40は、ブラケット50を基点として回動容易となるように、ブラケット50にピン接合されている。これに替えて、例えば鉛直鋼材60を、第一方向D1から視たときに複数列となるように、すなわち内部梁の延伸する方向に、例えば2段あるいは3段となるように配置してもよい。これにより、内部梁40は、ブラケット50を基点として回動するが、その回動がピン接合の場合に比べると制限されて、なおかつ内部梁40とブラケット50との接合強度がピン接合の場合よりも強固となる、半剛接合された状態となる。
【0018】
また、内部梁40の端部44には、図3及び図4に示すように、端部44の梁材30に対向する表面を覆うように、梁端鋼板49が設けられている。梁端鋼板49は、内部梁40の端部44の上側44a(突出部45)の、接合部J1を向く表面に沿って、ブラケット50の上側に位置する梁突出部30tの表面に対向するように接合される上部プレート部49aと、突出部45の下面とブラケット50の上面50tとの間に挟み込まれる中間プレート部49bと、内部梁40の端部44の下側44bの、接合部J1を向く表面に沿って、ブラケット50の表面に対向するように接合される下部プレート部49cとを一体に有している。このような梁端鋼板49は、内部梁40の端部44を形成するために用いられた鋼製型枠であってもよい。
【0019】
内部梁40の端部44と、梁突出部30t及びブラケット50との間には、上部緩衝材71、および下部緩衝材72が設けられている。上部緩衝材71は、内部梁40の端部44の上側44aに沿う上部プレート部49aと、ブラケット50の上側に位置する梁突出部30tの表面との間に所定の厚さで充填されている。下部緩衝材72は、内部梁40の端部44の下側44bに沿う下部プレート部49cと、ブラケット50との間に所定の厚さで充填されている。上部緩衝材71、下部緩衝材72としては、例えばポリスチレンフォーム等の、弾性を有した材料が用いられる。
【0020】
上述したような柱梁架構構造1Aによれば、鉄筋コンクリート製の柱20と、梁材30とによる柱梁架構10Aに、内部梁40が接合された柱梁架構構造1Aであって、柱20と梁材30との接合部J1から柱梁架構10Aの構面に直交する方向に突出して設けられ、内部梁40の端部44が上面50tに接合されるブラケット50を備え、内部梁40の端部44は、ブラケット50を介して接合部J1とピン接合または半剛接合されている。
このような構成によれば、鉄筋コンクリート製の柱20と梁材30との柱梁架構10Aにおいて、柱20と梁材30との接合部J1から建物2の室内側に向かって突出するブラケット50を設け、ブラケット50の上面50tに接合される内部梁40の端部44を、ブラケット50を介して接合部J1とピン接合または半剛接合するようにした。これにより、柱20と梁材30との接合部J1に接する内部梁40の梁端部に発生する曲げモーメントを小さくすることができる。その結果、内部梁40から柱20と梁材30の接合部J1に作用する曲げ応力を低減して、柱20や梁材30のコンクリートのひび割れを抑制することができる。
特に、内部梁40の端部44がブラケット50の上面50tに接合されているため、上記のように内部梁40から柱20と梁材30の接合部J1に作用する曲げ応力を低減しつつも、内部梁40に作用する荷重を、ブラケット50を介して、効率的に柱20に伝達することができる。
【0021】
また、ブラケット50は、内部梁40の下側44bに向けて突出するように設けられ、内部梁40の端部44は、上側44aが下側44bよりも接合部J1に向けて突出する突出部45を備えるように形成され、ブラケット50の上面50tに突出部45が設置される。
このような構成によれば、柱20と梁材30との接合部J1に設けられるブラケット50を、内部梁40の下側44bに向けて突出させ、内部梁40の端部44に設けられた突出部45を、ブラケット50の上面50tに設置するようにした。これにより、内部梁40から柱20と梁材30との接合部J1への曲げ応力の伝達を低減しつつ、内部梁40と、柱20と梁材30との接合部J1との間でのせん断応力の伝達を確実に行うことができる。
【0022】
また、ブラケット50には、鉛直鋼材60の下端部60bが埋設されているとともに、鉛直鋼材60の上端部60tは内部梁40の端部44に埋設されている。
このような構成によれば、柱20と梁材30との接合部J1に設けられるブラケット50と、ブラケット50の上面50tに接合される内部梁40の端部44とが、双方に埋設される鉛直鋼材60によって接合される。これにより、柱20と梁材30との接合部J1と、内部梁40の端部44とを、ブラケット50を介してピン接合することができる。したがって、内部梁40の梁端部に発生する曲げモーメントが小さくなり、内部梁40から、柱20と梁材30との接合部J1に伝達される曲げ応力を低減することができる。その結果、柱20や接合部J1のコンクリートのひび割れを抑制することができる。
また、内部梁40の端部44と接合部Jおよびブラケット50との間に、上部緩衝材71、および下部緩衝材72が介在することで、内部梁40から、柱20と梁材30との接合部J1に伝達される曲げ応力を、更に低減することができる。
【0023】
(実施形態の第1変形例)
なお、本発明の柱梁架構構造は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
図5図6は、上記実施形態の第1変形例に係る柱梁架構構造を示す縦断面図と横断面図である。図7は、第1変形例に係る柱梁架構構造において、柱の両側に設けた支圧板を示す図である。
例えば、上記実施形態では、梁材30、および内部梁40を鉄筋コンクリート製としたが、これに限られない。例えば、図5図7に示す柱梁架構構造1Bのように、梁材130、および内部梁140を、鉄骨製としてもよい。
柱20と梁材130は、柱梁架構10Bを構成する。梁材130は、柱20を貫通している。本変形例において、梁材130は、柱20に対して偏心しておらず、柱20の中心部に接合されている。梁材130は、断面I型の鉄骨材からなり、上下のフランジ131、132と、上下のフランジ131、132の間に設けられたウェブ133と、を一体に有している。
【0024】
梁材130は、柱20と梁材130との接合部J2において、ウェブ133の両面にタブラープレート134、135が接合されている。タブラープレート134、135をウェブ133に接合することで、内部梁140が接合される接合部J2において、梁材130のウェブ厚を増大させることができる。
また、梁材130は、柱20の第二方向D2における両側に支圧板136、137を有している。支圧板136、137は、それぞれ梁材130の延伸方向に直交し、柱20の側面20mに沿うように設けられている。支圧板136、137は、ウェブ133の両側で、上下のフランジ131、132の間を塞ぐように設けられている。
更に、梁材130には、フランジ131の上側に、支圧板136、137が上方に向けて延伸して柱20の側面20mに沿うように、上部延長支圧板138が設けられている。フランジ131の上側には、リブ131rが、柱20の両端部内で上方に突出し、かつ上部延長支圧板138に直交するように設けられている。リブ131rは、上部延長支圧板138に接合されている。
フランジ132の下側には、支圧板136、137が下方に向けて延伸して柱20の側面20mに沿うように、下部延長支圧板139が設けられている。フランジ132の下側には、リブ132rが、柱20の両端部内で下方に突出し、かつ下部延長支圧板139に直交するように設けられている。リブ132rは、下部延長支圧板139に接合されている。
【0025】
図5に示すように、内部梁140は、柱梁架構10Bの構面に対して直交し、第一方向D1に延びるように設けられている。本実施形態において、内部梁140は、例えば断面I型の鉄骨製で上下のフランジ141、142と、上下のフランジ141、142の間に設けられたウェブ143と、を一体に有している。
内部梁140の端部144には、突出部145が形成されている。突出部145は、内部梁140の端部144の上側144aに形成されている。突出部145は、内部梁140の端部144の下側144bよりも接合部J2に向けて突出している。突出部145の下端部には、中間フランジ146が設けられている。中間フランジ146は、突出部145よりも内部梁140の延伸方向中央部側に所定長延びている。
また、内部梁140の端部144において、突出部145よりも内部梁140の中央部寄りには、ウェブ143の両側で、上側のフランジ141と中間フランジ146との間、および中間フランジ146と下側のフランジ142との間を塞ぐように、リブプレート147、148が設けられている。
【0026】
内部梁140の端部144は、ブラケット150を介して、接合部J2に接合されている。ブラケット150は、柱20と梁材130との接合部J2から、柱梁架構10Bの構面に直交する方向に突出して設けられている。ブラケット150は、内部梁140の下側144bに向けて突出するように設けられている。ブラケット150は、例えば断面I型の鉄骨製で上下のフランジ151、152と、上下のフランジ151、152の間に設けられたウェブ153と、を一体に有している。ブラケット150の基端部は、柱20の柱コンクリート21内で梁材130に接合されている。ブラケット150の上側のフランジ151の上面150tに、内部梁140の端部144に形成された突出部145が設置されている。
内部梁140の端部144は、ブラケット150を介して接合部J2とピン接合または半剛接合されている。本実施形態において、内部梁140の端部144の中間フランジ146と、ブラケット150の上側のフランジ151とが、ボルト・ナット160によって接合されている。ボルト・ナット160は、第二方向D2に間隔をあけて、例えば4本設けられている。
【0027】
上述したような柱梁架構構造1Bによれば、鉄筋コンクリート製の柱20と、梁材130とによる柱梁架構10Bに、内部梁140が接合された柱梁架構構造1Bであって、柱20と梁材130との接合部J2から柱梁架構10Bの構面に直交する方向に突出して設けられ、内部梁140の端部144が上面150tに接合されるブラケット150を備え、内部梁140の端部144は、ブラケット150を介して接合部J2とピン接合または半剛接合されている。
このような構成によれば、鉄筋コンクリート製の柱20と梁材130との柱梁架構10Bにおける、柱20と梁材130との接合部J2に、柱梁架構10Bの構面から突出するブラケット150を設け、ブラケット150の上面150tに接合される内部梁140の端部144を、ブラケット150を介して接合部J2とピン接合または半剛接合するようにした。これにより、柱20と梁材130との接合部J2に接する内部梁140の梁端部に発生する曲げモーメントを小さくすることができる。その結果、内部梁140から柱20と梁材130の接合部J2に作用する曲げ応力を低減して、柱20のコンクリートのひび割れを抑制することができる。
【0028】
また、ブラケット150は、内部梁140の下側144bに向けて突出するように設けられ、内部梁140の端部144は、上側144aが下側144bよりも接合部J2に向けて突出する突出部145を備えるように形成され、ブラケット150の上面150tに突出部145が設置される。
このような構成によれば、柱20と梁材130との接合部J2に設けられるブラケット150を、内部梁140の下側144bに向けて突出させ、内部梁140の端部144に設けられた突出部145を、ブラケット150の上面150tに設置するようにした。これにより、内部梁140から柱20と梁材130との接合部J2への曲げ応力の伝達を低減しつつ、内部梁140と、柱20と梁材130との接合部J2との間でのせん断応力の伝達を確実に行うことができる。
【0029】
(実施形態の第2変形例)
図8は、上記実施形態の第2変形例に係る柱梁架構構造を示す縦断面図である。
例えば、図8に示す柱梁架構構造1Cのように、柱220、および梁材230を鉄筋コンクリート造とし、内部梁240を、鉄骨製としてもよい。
梁材230は、柱220に対して建物2の室内側に偏心し、かつ内部梁240よりも上方に延びており、この部分に、上階のスラブ8が接合されている。
内部梁240の端部244は、ブラケット250を介して、接合部J3に接合されている。ブラケット250は、鉄筋コンクリート造であり、内部梁240の下方において、柱220と梁材230との接合部J3から、柱梁架構10Cの構面に直交する方向に突出して設けられている。ブラケット250は、接合部J3において梁材230と一体に設けられている。ブラケット250は、直方体状で、その上面250tに、内部梁240の端部244が設置されている。
【0030】
内部梁240は、柱梁架構10Cの構面に対し、直交して延びている。本実施形態において、内部梁240は、例えば断面I型の鉄骨製で上下のフランジ241、242と、上下のフランジ241、242の間に設けられたウェブ243と、を一体に有している。
内部梁240の端部244は、ブラケット250を介して接合部J3とピン接合または半剛接合されている。本実施形態において、内部梁240の端部244において、下側のフランジ242と、ブラケット250とが、ボルト260によって接合されている。
【0031】
上述したような柱梁架構構造1Cによれば、鉄筋コンクリート製の柱220と、梁材230とによる柱梁架構10Cに、内部梁240が接合された柱梁架構構造1Cであって、柱220と梁材230との接合部J3から柱梁架構10Cの構面に直交する方向に突出して設けられ、内部梁240の端部244が上面250tに接合されるブラケット250を備え、内部梁240の端部244は、ブラケット250を介して接合部J3とピン接合または半剛接合されている。
このような構成によれば、鉄筋コンクリート製の柱220と梁材230との柱梁架構10Cにおける、柱220と梁材230との接合部J3に、柱梁架構10Cの構面から突出するブラケット250を設け、ブラケット250の上面250tに接合される内部梁240の端部244を、ブラケット250を介して接合部J3とピン接合または半剛接合するようにした。これにより、柱220と梁材230との接合部J3に接する内部梁240の梁端部に発生する曲げモーメントを小さくすることができる。その結果、内部梁240から柱220と梁材230の接合部J3に作用する曲げ応力を低減して、柱220や梁材230のコンクリートのひび割れを抑制することができる。
【0032】
(実施形態の第3変形例)
図9は、上記実施形態の第3変形例に係る柱梁架構構造を示す縦断面図である。図10は、図9のIII―III矢視断面図である。
例えば、図9図10に示す柱梁架構構造1Dのように、内部梁340を鉄骨製とし、ブラケット350を2分割構造としてもよい。
内部梁340は、柱梁架構10Dの構面に対し、直交して延びている。本実施形態において、内部梁340は、例えば断面I型の鉄骨製で上下のフランジ341、342と、上下のフランジ341、342の間に設けられたウェブ343と、を一体に有している。内部梁340の端部344には、突出部345が形成されている。突出部345は、上側のフランジ341に連続する突出部フランジ346と、ウェブ343に連続する突出部ウェブ347と、を有した断面T字状である。突出部フランジ346の上側には、補強リブ348が形成されている。補強リブ348は、突出部フランジ346から上方に突出している。補強リブ348は、第二方向D2に延びている。補強リブ348は、第一方向D1に沿って間隔をあけて複数(例えば3枚)設けられている。
内部梁340の端部344において、突出部345よりも内部梁340の中央部寄りには、ウェブ343の両側で、上下のフランジ341、342との間を塞ぐように、リブプレート349が設けられている。
【0033】
ブラケット350は、柱20と梁材30との接合部J4から、柱梁架構10Dの構面に直交する方向に突出して設けられている。本実施形態において、ブラケット350は、接合部J4において梁材30が室内側に突出した梁突出部30tに設けられている。ブラケット350は、梁突出部30tから、柱梁架構10Dの構面に直交して室内側に突出している。ブラケット350は、第二方向D2に間隔をあけて二個一対で設けられている。
各ブラケット350は、例えば鉄筋コンクリート製で、ブラケットコンクリート351中に、複数本のブラケット補強筋352、およびブラケット横筋353が埋設されている。ブラケット横筋353は、ブラケット350の上下にそれぞれ2本ずつ設けられている。各ブラケット横筋353は、第一方向D1と上下方向Dvに直交する方向に延びている。ブラケット補強筋352は、ブラケット350内で複数本のブラケット横筋353を囲むように設けられている。ブラケット補強筋352は、ブラケット横筋353よりも内部梁340側で上下方向Dvに延在し、その上下両側で接合部J4に向けて屈曲して、ブラケット350内から接合部J4(梁材30)内に向けて延び、端部が柱コンクリート21、梁コンクリート31中に定着されている。
内部梁340の端部344は、突出部フランジ346を、二個一対のブラケット350の上面350tに設置し、突出部ウェブ347を、二個一対のブラケット350同士の間に挿入している。突出部フランジ346と、各ブラケット350の上面350tとの間には、グラウト材やプレート材360を介在させるようにしてもよい。
【0034】
内部梁340の端部344は、ブラケット350を介して接合部J4とピン接合または半剛接合されている。本実施形態において、内部梁340の端部344とブラケット350とは、アンカーボルト370によって接合されている。アンカーボルト370は、第二方向D2に間隔をあけて、例えば4本設けられている。各アンカーボルト370は、上端が突出部フランジ346に固定され、下端がブラケットコンクリート351中に定着されている。
【0035】
上述したような柱梁架構構造1Dによれば、鉄筋コンクリート製の柱20と、梁材30とによる柱梁架構10Dに、内部梁340が接合された柱梁架構構造1Dであって、柱20と梁材30との接合部J4から柱梁架構10Dの構面に直交する方向に突出して設けられ、内部梁340の端部344が上面350tに接合されるブラケット350を備え、内部梁340の端部344は、ブラケット350を介して接合部J4とピン接合または半剛接合されている。
このような構成によれば、鉄筋コンクリート製の柱20と梁材30との柱梁架構10Dにおける、柱20と梁材30との接合部J4に、柱梁架構10Dの構面から突出するブラケット350を設け、ブラケット350の上面350tに接合される内部梁340の端部344を、ブラケット350を介して接合部J4とピン接合または半剛接合するようにした。これにより、柱20と梁材30との接合部J4に接する内部梁340の梁端部に発生する曲げモーメントを小さくすることができる。その結果、内部梁340から柱20と梁材30の接合部J4に作用する曲げ応力を低減して、柱20や梁材30のコンクリートのひび割れを抑制することができる。
【0036】
(その他の変形例)
また、上記の実施形態(図1図4)では、柱梁架構の接合部J1に設けられるブラケット50と内部梁40との間には、緩衝材71、72、梁端鋼板49、及び鉛直鋼材60が設けられているが、緩衝材、及び梁端鋼板を設けることなく、鉛直鋼材を介してコンクリート造のブラケットの上面に内部梁を設置して接合させても良い。このような接合方法によれば、柱梁架構の接合部と内部梁とが直接接合されるのではなく、接合部に設けるブラケットを介して接合することで、接合部と内部梁が半剛接合状態で接合されるために、内部梁から柱と梁材の接合部に作用する曲げ応力を低減できる。よって、内部梁から柱に伝達される応力が低くなるために、柱や接合部のコンクリートのひび割れを抑制することができる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0037】
(関連技術)
次に、本発明の関連技術について説明する。
上記実施形態のような柱梁架構構造に関して、次のような特徴を備えた柱梁架構構造が考えられる。
図11に、柱梁架構構造の関連実施例としての柱梁架構構造を示す。
すなわち、図11に示されるように、柱梁架構構造1Eは、鉄筋コンクリート製の柱420と、梁材430とによる柱梁架構10Eに、内部梁440が接合された柱梁架構構造1Eであって、柱420と梁材430との接合部J5から、柱梁架構10Eの構面に直交する方向に突出して設けられたブラケット450を備え、内部梁440の端部444は、ブラケット450を介して接合部J5とピン接合または半剛接合されていることを特徴とする。
この構成において、例えば、内部梁440は、上下のフランジ441、442と、ウェブ443とを有した断面I型の鉄骨製である。ブラケット450は、梁材430の側面から離間した位置で、当該側面に平行に設けられた第一板部451と、第一板部451に接合されてウェブ443に沿うように設けられた第二板部452と、を有している。ブラケット450の第一板部451と梁材430の側面との間には、グラウト材460が充填されている。第一板部451は、アンカーボルト480によって、接合部J5の梁材430内に定着固定されている。また、ウェブ433と第二板部452は、ボルト・ナット490によって締結されている。
【符号の説明】
【0038】
1A~1D 柱梁架構構造 50、150、250、350 ブラケット
10A~10D 柱梁架構 50t、150t、250t、350t 上面
20、220 柱 60 鉛直鋼材
30、130、230 梁材 60b 下端部
40、140、240、340 内部梁 60t 上端部
44、144、244、344 端部 D1 第一方向
44a、144a 上側 D2 第二方向
44b、144b 下側 Dv 上下方向
45、145、345 突出部 J1~J4 接合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11