(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】Rxカテーテル用に最適化されたカテーテルシース
(51)【国際特許分類】
A61M 25/01 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
A61M25/01 500
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021107183
(22)【出願日】2021-06-29
【審査請求日】2021-11-30
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596130705
【氏名又は名称】キヤノン ユーエスエイ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CANON U.S.A.,INC
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】ハム マーク アラン
(72)【発明者】
【氏名】ダンフィー アルバート ハロルド
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0163818(US,A1)
【文献】米国特許第05383853(US,A)
【文献】特開2006-297063(JP,A)
【文献】特開平06-134034(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0082965(US,A1)
【文献】特表2010-533049(JP,A)
【文献】特表2012-501225(JP,A)
【文献】特表2015-506749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状シースであって、前記管状シースの近位端から遠位端まで延びる第1のルーメンを画定する、管状シースと、
前記第1のルーメンに挿入されるように構成されたイメージングコアと、
ラピッドエクスチェンジセグメントであって、前記ラピッドエクスチェンジセグメントの入口ポートから出口ポートまで延びる第2のルーメンを画定する、ラピッドエクスチェンジセグメントと、
を備えるイメージング用ラピッドエクスチェンジカテーテルであって、
前記管状シースは、その前記近位端から前記遠位端への順序で、近位セクション、中間シャフトセクション及び窓セクションを含み、前記窓セクションは、それを通るイメージング放射線に対して透過性であり、前記第1のルーメンは、前記近位セクションから前記中間シャフトセクションを通り、前記窓セクションを通って延び、
前記ラピッドエクスチェンジセグメントは、前記第2のルーメンに対して角度を成したスタブ部分を有し、前記スタブ部分は、前記ラピッドエクスチェンジセグメントの前記スタブ部分が前記窓セクションの遠位部分と接続するように、前記管状シースの前記窓セクションと長さ方向に接合され、これにより、前記ラピッドエクスチェンジセグメントの前記スタブ部分は、前記第1のルーメンを封止し、
前記第2のルーメンの軸と前記第1のルーメンの軸が互いに関して角度をなして配置されるように、前記管状シース及び前記ラピッドエクスチェンジセグメントは、互いから横方向にオフセットされた状態で嵌合され、
前記イメージングコアは、前記イメージングコアと前記ラピッドエクスチェンジセグメントの前記スタブ部分との間に非支持ギャップが残るように、前記ラピッドエクスチェンジセグメントの前記スタブ部分から所定の距離を置いて、前記近位セクション、前記中間シャフトセクション及び前記窓セクションを通して前記第1のルーメン内に配置され、
前記カテーテルがガイドカテーテル内及び/又は管腔内に配置されているとき、前記第2のルーメンの前記軸と前記第1のルーメンの前記軸が互いに実質的に平行になるように、前記管状シース及び/又は前記ラピッドエクスチェンジセグメントは、互いに関して真っ直ぐになるように構成され、
前記ラピッドエクスチェンジセグメントの前記スタブ部分の硬度デュロメータは、前記遠位端の硬度デュロメータよりも大きい、
カテーテル。
【請求項2】
前記ラピッドエクスチェンジセグメントの前記スタブ部分は、前記管状シースの前記第1のルーメンに挿入され、その中で溶融接着されて、前記管状シース及び前記ラピッドエクスチェンジセグメントから成るモノリシックカテーテル構造を形成する、
請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記第2のルーメンの前記軸と前記第1のルーメンの前記軸との間の前記角度は、1~15度の範囲にある、
請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記窓セクションは、70~72ショアDの範囲の硬度デュロメータを有し、前記ラピッドエクスチェンジセグメントは、64ショアDから42ショアDまで漸減する硬度デュロメータを有する、
請求項2に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記第2のルーメンは、所定の直径のガイドワイヤを中に通すように構成された内径を有し、
前記第1のルーメンの軸と前記第2のルーメンの軸は、前記ガイドワイヤの前記所定の直径の半分~2倍の範囲のオフセット距離だけ、互いからオフセットされる、
請求項2に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記ラピッドエクスチェンジセグメントは、前記管状シースに対して遠位にこの順序で配置された前記スタブ部分と、管状体と、遠位先端とから成るモノリシック構造であり、
前記第2のルーメンは、前記遠位先端に位置する前記入口ポートを、前記管状体の近位端において、前記スタブ部分の側に位置する前記出口ポートと接続する、
請求項1に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記ラピッドエクスチェンジセグメントは、前記スタブ部分において64ショアDの硬度デュロメータを有し、前記硬度デュロメータは、前記管状体の長さ方向に、前記遠位先端における約42ショアDの硬度デュロメータまで漸減し、
前記ラピッドエクスチェンジセグメントの前記管状体の曲げ弾性率は約285MPaであり、前記遠位先端の曲げ弾性率は約77MPaであり、
「約」との用語は、製造公差内、又は記述された値の±10%以内を意味する、
請求項6に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記出口ポートでの第1の内径が前記ラピッドエクスチェンジセグメントの前記入口ポートの第2の内径よりも小さくなるように、前記第2のルーメンは、前記入口ポートから前記出口ポートまで漸減する内径を有し、又は、
前記出口ポートでの第1の内径が前記ラピッドエクスチェンジセグメントの前記入口ポートの第2の内径よりも大きくなるように、前記第2のルーメンは、前記出口ポートから前記入口ポートまで漸減する内径を有し、又は、
前記出口ポートでの前記第2のルーメンの第1の内径は、前記ラピッドエクスチェンジセグメントの前記入口ポートでの第2の内径と同じ寸法である、
請求項6に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記ラピッドエクスチェンジセグメントの外径は、前記管状体の近位端での第1の外径が前記管状体の遠位端での第2の外径よりも大きくなるように、前記管状体の前記長さ方向に先細になり、
前記遠位先端は、前記第2の外径から第3の外径に先細になり、前記第3の外径は、前記入口ポートの直径に実質的に等しい、
請求項6に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記管状体の外径は、0.0250~0.030インチの範囲にあり、
前記遠位先端の外径は、0.030インチから0.022インチに先細になる、
請求項6に記載のカテーテル。
【請求項11】
前記ラピッドエクスチェンジセグメントの外径は、前記管状体の近位端での第1の外径が遠位端での第2の外径よりも大きくなるように、前記管状体の前記近位端から前記遠位端へ先細になり、
前記第2のルーメンは、前記入口ポートと前記出口ポートのうち少なくとも一方において、前記ラピッドエクスチェンジセグメントの前記外径に関してオフセットされる、
請求項6に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記入口ポートは、前記遠位先端の前記外径の中心にあるとともに前記遠位先端の前記外径と同軸であり、前記出口ポートは、前記ラピッドエクスチェンジセグメントの近位部の前記外径の中心になく、同軸でもない、
請求項11に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記ラピッドエクスチェンジセグメントの前記管状体は、0.0250~0.0300インチの範囲の外径と、0.0070インチの範囲の壁厚と、約285MPaの曲げ弾性率とを有し、
前記ラピッドエクスチェンジセグメントの前記遠位先端は、約0.030インチから約0.022インチに先細になる外径と、約77MPaの曲げ弾性率と、約42ショアDの硬度デュロメータとを有し、
前記管状体の前記硬度デュロメータは、その前記近位端での約64ショアDから、その前記遠位端での約63ショアDまで変化し、
「約」との用語は、製造公差内、又は記述された値の±10%以内を意味する、
請求項6に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記ラピッドエクスチェンジセグメントの前記管状体は、1.0Fr~1.6Frの範囲の直径、又は、0.0131インチ~0.0197インチの範囲の直径を有する、
請求項6に記載のカテーテル。
【請求項15】
前記ラピッドエクスチェンジセグメントは、前記カテーテルのX線透視イメージング誘導ナビゲーション下で可視であるように構成された1つ以上の放射線不透過性マーカバンドを含み、
少なくとも1つの放射線不透過性マーカバンドは、前記ラピッドエクスチェンジセグメントの前記管状体内に埋め込まれる、
請求項6に記載のカテーテル。
【請求項16】
前記管状シースは、その前記近位端から前記遠位端への順序で、近位セクション、中間シャフトセクション及び窓セクションを含み、
前記第1のルーメンは、前記近位セクションから前記中間シャフトセクションを通り、前記窓セクションを通って延びる、
請求項1に記載のカテーテル。
【請求項17】
前記管状シースの前記近位セクションの剛性は、5.0~4.41ミリニュートン-メートル(mN-m)の範囲にあり、前記管状シースの前記剛性は、前記中間シャフトセクションの前記遠位端に向かって、0.20~0.17mN-mの範囲の剛性まで漸減する、
請求項16に記載のカテーテル。
【請求項18】
前記管状シースは、ポリマー材料の層に挟まれたハイポチューブを有し、
前記ハイポチューブは、前記窓セクションに到達することなく、前記中間シャフトセクションの前記近位セクションから前記遠位端まで延び、
前記ハイポチューブは、前記近位セクションでの第1のピッチから、前記中間シャフトセクションの遠位端での、前記第1のピッチよりも小さい第2のピッチまで徐々に変化するピッチで、らせん状スロットを含む、
請求項16に記載のカテーテル。
【請求項19】
前記窓セクションは、約0.0310インチの外径と、約0.0040インチの壁厚と、約500MPaの曲げ弾性率と、約72ショアDの硬度デュロメータと、約0.075mN-mの剛性とを有する円筒形窓セクションであり、
「約」との用語は、製造公差内、又は記述された値の±10%以内を意味する、
請求項16に記載のカテーテル。
【請求項20】
前記非支持ギャップの前記長さは、前記窓セクションのうち前記イメージングコアを含まない長さに対応し、
前記窓セクションのうち前記イメージングコアを含まない前記長さは、10mm~1.0mmの範囲にある、
請求項16に記載のカテーテル。
【請求項21】
前記窓セクションは、約0.150~約0.20の壁厚対内径比と、約500MPaの曲げ弾性率と、約72ショアDの硬度デュロメータと、約0.06~約0.09mN-mの剛性とを有する円筒形窓セクションであり、
「約」との用語は、製造公差内、又は記述された値の±10%以内を意味する、
請求項16に記載のカテーテル。
【請求項22】
前記窓セクションは、造影剤、血液及び血管組織のうちの1つ以上の屈折率と実質的に一致するポリマー材料から作られ、
前記ポリマー材料の屈折率は、1.40~1.60の範囲にあり、
前記窓セクションと前記ラピッドエクスチェンジセグメントの両方は、摩擦低減材料から作られた表面、又は低摩擦親水性コーティングでコーティングされた表面を含む、
請求項16に記載のカテーテル。
【請求項23】
前記第1のルーメン内に非支持領域を形成するように、前記第1のルーメンの前記遠位端から所定の距離をおいて前記第1のルーメン内に配置されたイメージングコア、を更に備え、
前記イメージングコアは、前記窓セクションを通して1つ以上の波長の電磁放射線を伝送及び収集するように構成される、
請求項16に記載のカテーテル。
【請求項24】
前記第1のルーメン内に非支持領域を形成するように、前記管状シースの前記遠位端から所定の距離をおいて前記第1のルーメン内に配置された、回転可能なイメージングコア、を更に備え、
前記イメージングコアは、前記窓セクションを通して1つ以上の波長の電磁放射線を伝送及び収集しながら、前記第1のルーメンの軸を中心に回転し、前記第1のルーメンの前記軸に対して長手方向に平行に並進するように構成される、
請求項16に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2020年8月6日に提出された米国仮特許出願第63/062202号に対する優先権を主張し、その内容は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して医用デバイスに関する。より詳細には、本開示は、ラピッドエクスチェンジカテーテル等に適用可能な最適化されたカテーテルシースを例示する。
【背景技術】
【0003】
カテーテルは、生体適合性材料で作られた細長い管のような(管状)器具を備え、該器具は、「カテーテル法」として知られる医療処置において診断又は治療の目的で患者の体に挿入されるように構成される。様々な医用カテーテル法手順では、長いガイドワイヤを使用し、その上に軟性カテーテルを通すことができるので、ガイドワイヤは、カテーテルを患者の体内の目的の標的位置に誘導することができる。血管内カテーテル法手順には、典型的には、副動脈(例えば上腕動脈や大腿動脈、橈骨動脈)を通してガイドワイヤを挿入することと、それを血管系内の関心血管に通すことと、次に、ガイドワイヤ上でカテーテルを送ることとが含まれる。例えば、脳カテーテル法手順には、患者の脚の動脈にカテーテルを挿入することと、それを脳内の血管まで通すことが含まれる。ガイドワイヤの使用により、前進するカテーテルの先端による患者への外傷のリスクが低減され、迅速なカテーテル配置が可能となる。
【0004】
ガイドワイヤは、典型的には、鋼、ニチノール、タングステン、その他の同様の材料で作られた非常に細いワイヤであり、患者の生体構造を通して(例えば副動脈から血管まで)進み、画像誘導制御下で病変エリア(血管セグメント)に素早く到達するように設計されている。ガイドワイヤの先端が患者の体内の所望の位置までナビゲートされると、ガイドワイヤ上でガイドワイヤに沿ってカテーテルを通すことができ、ワイヤは、軟性カテーテルの支持及びガイドを提供する。最初のカテーテルを異なるサイズのカテーテルと交換する必要がある場合、最初のカテーテルをガイドワイヤ上で引き抜き、別のカテーテルをガイドワイヤ上で所定の位置にスライドさせる。このプロセスにより、手順に時間がかかるおそれがある。カテーテルとガイドワイヤのサイズは、特定の用途向けに標準化されており、それぞれの寸法を簡単に変更することはできない。カテーテル直径はフレンチ(Fr)単位(例えば1Fr=1/3ミリメートル(mm)又は1Fr=0.013インチ(in))で測定され、ガイドワイヤ直径はインチで測定され、例えば、0.018と0.035のガイドワイヤは、それぞれ直径0.018インチと0.035インチである。カテーテルの交換可能性を改良し、処置時間の長さを短縮するために、カテーテルの設計は、標準化された寸法を実質的に変更せずに維持しながらカテーテル構造を変更することによって、継続的に改善されてきた。
【0005】
処置時間を短縮するためのカテーテル設計の一種は、ラピッドエクスチェンジ(Rx)設計として知られている。Rxカテーテル設計には、カテーテルの遠位部分のみを通って延びるガイドワイヤルーメンが含まれる。ラピッドエクスチェンジカテーテルでは、ガイドワイヤルーメンは、カテーテルの遠位先端を始点とし、ガイドワイヤの出口ポート(カテーテルの遠位部分の側に位置し、血管壁面に面する)を終点とする。この構成では、ガイドワイヤは、カテーテルシャフトの長さの一部の間だけカテーテルシャフトを通り、カテーテルは“モノレール”方式でガイドワイヤに沿って動くことができる。しかしながら、ガイドワイヤは少なくとも部分的にカテーテルの側に出て、カテーテルと平行に延びるので、この構成では、血管の直径の要件が増大してしまう(つまり、血管は、カテーテルとガイドワイヤの合計直径に適合する必要がある)。
【0006】
カテーテルに長いワイヤを使用するか、ラピッドエクスチェンジタイプのガイドワイヤ配置を使用するかに関係なく、カテーテルが湾曲して患者の生体構造を通って効果的に前進する能力は、一般に、カテーテルの「追従性」及び「押込み性」として知られるパラメータによって定義される。追従性は、カテーテルが曲がりくねった生体構造を進む能力として理解されることが多く、つまり、カテーテルの柔軟性によって定義される。押込み性とは、医師が管腔の狭窄領域を含む血管又は他の管腔系を通してカテーテルを押せるように、カテーテルに沿ってその近位端から遠位端までねじれることなく、長手方向の力を効果的に伝達することを指す。効果的なカテーテルは、患者の生体構造の難しいカーブ及び/又は障害物を効果的に進むために、追跡性と押込み性を有する必要がある。
【0007】
冠動脈カテーテルでは、ねじれを最小限に抑え、押込み力とねじり力をカテーテルの遠位端までより効果的に伝達するために、柔軟性の移行は、硬い近位セクションからより柔軟な遠位セクションへと徐々に移行する必要があると認識されている。したがって、今日の市場には、様々な設計、材料、工法及び寸法公差を備えた多数のタイプのカテーテルが存在する。例えば、以下の米国特許第4739768号、第4988356号、第6004291号及び米国特許出願公開第2009/0018393号を参照されたい(その開示は、あらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる)。
【0008】
言い換えれば、一般的なカテーテルやその各種セクションに共通の設計パラメータ及び/又は材料はない。代わりに、それぞれの設計は、設計者及び/又は設計組織によって適切であると見なされる材料を用いて、その用途の個々のニーズを満たすように最適化されている。例えば、冠動脈カテーテル法では、5Fr又は6Frのガイドカテーテルと直径0.014インチのガイドワイヤに対応するシース直径が一般的である。しかしながら、このようなカテーテルの構造は、設計者、メーカー、更にはモデル番号によっても、大幅に変わる可能性がある。これにより、ユーザが特定のカテーテル法に最も適切な解決策を決定することが困難になってしまう。
【0009】
曲がりくねった生体構造内をカテーテルが効率的に進むのに役立つ望ましい属性の各々の寄与を特定し、ランク付けする必要がある。材料、直径、剛性、潤滑性、形状、寸法、公差等のパラメータは全て、カテーテルのナビゲーションを支援又は妨害する何らかの要因である。更に、カテーテルがイメージングコアと併用されるように設計される場合、イメージングコアは、曲がりくねった生体構造内での良好なカテーテルナビゲーションを支援する場合もあるし、妨害する場合もある。例えば、イメージングコアが硬すぎると、カテーテル全体の剛性が優位になり、急カーブに遭遇したときに、イメージングコアに対して遠位の領域でカテーテルにかなりのねじれが生じるおそれがある。したがって、イメージングコアは、正確なイメージングを容易にするためのねじれと、横方向の硬さ(カテーテルシースがねじれないように制限する必要がある)の両方において、適度な剛性及び/又は硬さを備えている必要がある。
【発明の概要】
【0010】
本開示の少なくとも1つの実施形態によれば、最適化されたカテーテルシース及びラピッドエクスチェンジカテーテルを有するカテーテル装置が提供される。一例の実施形態によれば、生体管腔内の配置用に構成されたカテーテル(100)は、以下を備える:管状シース(190)であって、管状シースの近位端から遠位端まで延びる第1のルーメン(LM1)を画定する、管状シース;及び、管状シース(190)の遠位端で管状シースと嵌合するように構成されたラピッドエクスチェンジセグメント(110)。ラピッドエクスチェンジセグメント(110)は、ガイドワイヤ入口ポート118及びガイドワイヤ出口ポート(119)を有し、第2のルーメン(LM2)を画定する。管状シース(190)及びラピッドエクスチェンジセグメント(110)は、第2のルーメン(LM2)が第1のルーメン(LM1)に関して長手方向にオフセットされるとともに角度を成すような形で、嵌合される。
【0011】
本開示は、冠血管系等の曲がりくねった生体構造を通して最適化されたカテーテル追従及びナビゲーション特性を取得するために必要な、望ましいカテーテル設計の要素、特徴、ジオメトリ、材料及びプロセスの様々な例示の実施形態を教示する。一例の実施形態では、カテーテル設計は、回転イメージングコアを採用する冠動脈イメージングカテーテル用に最適化される。そのために、本開示は、カテーテルシース及びイメージングコアの滅多に議論されない望ましい特徴を教示し、具体的には、カテーテルが冠動脈の生体構造内の所望の標的目的地までシームレスに進むことができることを保証するために必要な、カテーテルシースとイメージングコアの間の相互作用を開示する。実施形態の一部は、末梢用途等の生体構造の他の部分にアクセスすることを目的とした非Rxカテーテルにも包括的に適用可能である。しかし、イメージングカテーテルシース及びそのサイズ範囲を含む、本開示の属性のほとんどは、特に冠動脈用途向けに最適化されている。Rxカテーテル用途の別の例として、頭蓋内アクセスカテーテルも記載される。
【0012】
本開示のこれら及び他の目的、特徴及び利点は、本開示の例示の実施形態の以下の詳細な説明を添付の図面及び提供された特許請求の範囲と併せて読むと、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示の更なる目的、特徴及び利点は、本開示の例示の実施形態を示す添付の図と併せて解釈すると、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0014】
【
図1】
図1Aは、本開示に係る、ラピッドエクスチェンジセクション110及びカテーテルシース190を備えるカテーテル100の例示の実施形態を示す図である。
図1Bは、カテーテルシース190の中間シャフトセクション130の断面図である。
【
図2】
図2Aは、カテーテル100のラピッドエクスチェンジセクション110の斜視図であり、
図2Bは、その断面図である。
【
図3】
図3Aは、カテーテルシース190の窓セクション120に配置されたイメージングコア200を含むカテーテル100の別の例示の実施形態を示す図である。
図3Bは、窓セクション120に対するラピッドエクスチェンジセクション110の取付けを示す角度付きジョイント115を示す図である。
図3Cは、ラピッドエクスチェンジセクション110の構造の詳細を示す図である。
図3Dは、中間シャフトセクション130から窓セクション120への遷移の詳細を示す図である。
【
図5】
図5は、窓セクション120の剛性値のグラフである。
【
図6】
図6は、イメージングコア200の例示の実施形態を示す図である。
【
図7】
図7Aは、本開示に係るカテーテル100が実施され得る例示のイメージングシステム700を示す図である。
図7Bは、ルーメン内で用いられるRxセグメントの例示の実施形態を示す図である。
【
図8】
図8Aは、カテーテルシース190との組立て前の遠位先端112のないラピッドエクスチェンジセクション110の例示の実施形態を示す図である。
図8Bは、遠位先端112との組立て後であり、かつカテーテルシース190との組立て前のラピッドエクスチェンジセクション110の例示の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ラピッドエクスチェンジセグメントを有する最適化されたカテーテルシースの特定の例及び実施形態の以下の説明は、特許請求の範囲を限定するために使用されるべきではない。図全体を通して、別段の記載がない限り、同じ参照番号及び文字は、例示される実施形態の同様の特徴、要素、コンポーネント又は部分を示すために用いられる。更に、同封の図を参照して本開示を詳細に説明するが、それは、例示の実施形態に関連してなされる。添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の真の範囲及び主旨から逸脱することなく、説明される例示の実施形態に対して変更及び修正を行うことができることが意図される。図面はいくつかの可能な構成及びアプローチを表すが、図面は必ずしも縮尺どおりではなく、本開示の特定の態様をより分かりやすく図示及び説明するために、特定の特徴が誇張、削除又は部分的に切断される場合がある。本明細書に記載の説明は、網羅的であること、そうでなければ、図面に示され以下の詳細な説明に開示される正確な形態及び構成に特許請求の範囲を限定又は制限することを意図するものではない。
【0016】
当業者には当然のことながら、一般に、本明細書、特に添付の特許請求の範囲(例えば添付の特許請求の範囲の本文)で使用される用語は、概して、“オープン”な用語として意図されている(例えば、「含む(including)」という用語は「含むが、これに限定されない」と解釈されるべきであり、「有する」という用語は「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む(includes)」は「含むが、これに限定されない」と解釈されるべきである、等)。更に、当業者には当然のことながら、導入された請求項記載の具体的な数字が意図されている場合、そのような意図は特許請求の範囲に明示的に記載され、また、そのような記載がない場合、そのような意図は存在しない。例えば、理解の助けとして、以下の添付の特許請求の範囲は、請求項記載を導入するために、「少なくとも1つの」や「1つ以上の」という導入句の使用を含む場合がある。ただし、そのような語句の使用は、同じ請求項に「1つ以上の」又は「少なくとも1つの」との導入句と、“a”又は“an”等の不定冠詞とが含まれている場合でも、不定冠詞“a”又は“an”による請求項記載の導入により、そのような導入された請求項記載を含む特定の請求項が、そのような記載を1つだけ含む請求項に限定されることを意味すると解釈されるべきではない(例えば、“a”及び/又は“an”は、典型的には、「少なくとも1つの」又は「1つ以上の」を意味すると解釈されるべきである)。請求項記載を導入するために使用される定冠詞の使用についても、同じことが言える。
【0017】
更に、導入された請求項記載の具体的な数字が明示的に記載されている場合であっても、当業者には当然のことながら、そのような記載は、典型的には、少なくとも記載された数を意味すると解釈されるべきである(例えば、他の修飾語を伴わずに「2つの記載」とだけ記載される場合、典型的には、少なくとも2つの記載、又は2つ以上の記載を意味する)。更に、「A、B及びC等のうちの少なくとも1つ」に類似した規定が使用される場合、概して、そのような構文は、当業者が該規定を理解し得るという意味で意図されている(例えば、「A、B及びCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、A単独で、B単独で、C単独で、AとBを併せて、AとCを併せて、BとCを併せて、かつ/又は、A、B及びCを併せて有するシステム等を含み得る)。「A、B又はC等のうちの少なくとも1つ」に類似した規定が使用される場合、概して、そのような構文は、当業者が該規定を理解し得るという意味で意図されている(例えば、「A、B又はCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、A単独で、B単独で、C単独で、AとBを併せて、AとCを併せて、BとCを併せて、かつ/又は、A、B及びCを併せて有するシステム等を含み得る)。更に、当業者には当然のことながら、典型的には、離接語、及び/又は2つ以上の代替用語を表す語句(明細書、特許請求の範囲、又は図面のいずれにおいても)は、文脈上別段の指示がない限り、該用語の一方、該用語のいずれか、又は該用語の両方を含む可能性を企図するものと理解されるべきである。例えば、「A又はB」という表現は、典型的には、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むと理解される。
【0018】
本明細書において、特徴又は要素が別の特徴又は要素の「上」にあるとして言及されるとき、それは、当該他の特徴又は要素の直上に存在してよく、又は、介在する特徴及び/又は要素も存在してよい。対照的に、特徴又は要素が別の特徴又は要素の「直上」にあるとして言及されるとき、介在する特徴又は要素は存在しない。また、当然のことながら、特徴又は要素が別の特徴又は要素に「接続される」、「取り付けられる」、「結合される」等として言及されるとき、それは、当該他の特徴に直接的に接続されてよく、取り付けられてよく、又は結合されてよく、又は、介在する特徴又は要素が存在してもよい。対照的に、特徴又は要素が別の特徴又は要素に「直接的に接続される」、「直接的に取り付けられる」又は「直接的に結合される」として言及されるとき、介在する特徴又は要素は存在しない。一実施形態に関して説明又は図示したが、一実施形態においてそのように説明又は図示された特徴及び要素は、他の実施形態に適用することができる。また、当業者であれば理解できるように、別の特徴に「隣接」して配置されている構造又は特徴への言及は、当該隣接する特徴にオーバーラップするかその下にある部分をもつ場合がある。
【0019】
本明細書では、様々な要素、コンポーネント、領域、部品及び/又は部分を説明するために、第1、第2、第3等の用語が使用される場合がある。当然のことながら、これらの要素、コンポーネント、領域、部品及び/又は部分はこれらの指定の用語によって限定されない。これらの指定の用語は、ある要素、コンポーネント、領域、部品又は部分を別の領域、部品又は部分から区別するためにのみ使用されている。よって、後述する第1の要素、コンポーネント、領域、部品又は部分は、単に区別を目的として、しかし限定をすることなく、また、構造的又は機能的な意味から逸脱することなく、第2の要素、コンポーネント、領域、部品又は部分と呼ぶことができる。
【0020】
本明細書において用いられる場合、単数形は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数形も含むことを意図している。更に、当然のことながら、「含む」、「備える」、「成る」という用語は、本明細書及び特許請求の範囲において用いられる場合、記載の特徴、整数、ステップ、動作、要素及び/又はコンポーネントの存在を指定するが、明示的に記載されていない1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、コンポーネント及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものではない。更に、本開示では、「~から成る」という移行句は、クレームで指定されていないいかなる要素、ステップ又はコンポーネントも除外する。更に、留意すべきこととして、一部のクレーム又はクレームの一部の特徴は、任意の要素を除外するように起草される場合があり、このようなクレームは、クレーム要素の記載に関連して「単独で」、「~のみ」等の排他的な用語を使用する場合があり、又は、「否定的な」限定を使用する場合がある。
【0021】
本明細書で使用される「約」又は「およそ」という用語は、例えば10%以内、5%以内又はそれ未満を意味する。一部の実施形態では、「約」という用語は、測定誤差内を意味することがある。これに関して、説明され又はクレームされる際に、用語が明示的に表示されていなくても、全ての数値は「約」又は「およそ」という語が前置されているかのように読まれてよい。「約」又は「およそ」という語句は、大きさ及び/又は位置を記述するとき、記載の値及び/又は位置が値及び/又は位置の妥当な予想範囲内にあることを示すために使用されることがある。例えば、数値は、記述された値(又は値の範囲)の±0.1%、記述された値(又は値の範囲)の±1%、記述された値(又は値の範囲)の±2%、記述された値(又は値の範囲)の±5%、記述された値(又は値の範囲)の±10%等である値を含み得る。本明細書に記載されている場合、あらゆる数値範囲は、具体的に別段の記載がない限り、終了値を含むことを意図しており、そこに属する全ての部分範囲を含む。本明細書で用いられる場合、「実質的に」という用語は、意図された目的に悪影響を及ぼさない、記述子からの逸脱を許容することを意味する。例えば、測定値の限定に由来する逸脱、製造公差内の差異、又は5%未満の変動は、実質的に同じ範囲内にあると見なすことができる。指定された記述子は、絶対値(例えば、実質的に球形、実質的に垂直、実質的に同心等)又は相対語(例えば、実質的に類似、実質的に同じ等)であり得る。
【0022】
具体的に別段の記載がない限り、以下の開示から明らかであるように、本開示を通して、「処理する」、「コンピュータで計算する」、「計算する」、「決定する」、「表示する」等の用語を用いた議論は、コンピュータシステム、又は同様の電子コンピューティングデバイス、又は、コンピュータシステムのレジスタ及びメモリ内の物理(電子)量として表されるデータを操作し、同様にコンピュータシステムのメモリ又はレジスタ又は他のそのような情報の記憶、伝送又は表示用のデバイス内の物理量として表される他のデータに変換するデータ処理デバイスの、動作及びプロセスを指すものと理解される。本明細書に記載されているか、若しくは添付の特許請求の範囲に記載されているコンピュータ動作又は電子動作は、文脈上別段の指示がない限り、一般に、任意の順序で実行することができる。また、様々な動作フロー図が順番に提示されているが、当然のことながら、各種動作は、図示又は特許請求されている順序以外の順序で実行することができ、或いは、動作を同時に実行することができる。そのような代替の順序付けの例としては、文脈上別段の指示がない限り、重複、インターリーブ、中断、再順序付け、増分、準備、補足、同時、逆、又は他の変形の順序付けが挙げられる。更に、「~に応答して」、「~に応えて」、「~に関連して」、「~に基づいて」等の用語、又は他の同様の過去形容詞は、文脈上別段の指示がない限り、通常、そのような変形を除外することを意図していない。
【0023】
本開示は、概して医用デバイスに関し、分光装置(例えば内視鏡)、光干渉断層撮影(OCT)装置、又は当該装置の組合せ(例えばマルチモダリティ光学プローブ)に適用可能であり得る光学コアを含む軟性シャフト(シース又はスリーブ)の実施形態を例示する。光プローブ及びその部分の実施形態を、三次元空間におけるそれらの状態に関して説明する。本明細書で用いられる場合、「位置」という用語は、3次元空間における物体又は物体の一部の位置(例えばデカルトX、Y、Z座標に沿った3自由度の並進自由度)を指し、「向き」という用語は、物体又は物体の一部の回転配置(回転の3自由度―例えばロール、ピッチ、ヨー)を指し、「姿勢」という用語は、少なくとも1つの並進自由度にある物体又は物体の一部の位置と、少なくとも1つの回転自由度にある物体又は一部の物体の向きとを指し(合計で最大6つの自由度)、「形状」という用語は、物体の長尺体に沿って測定された一連の姿勢、位置及び/又は方向を指す。
【0024】
医療機器の分野において既知であるように、「近位」及び「遠位」という用語は、ユーザから手術部位又は診断部位まで延びる器具の端部の操作に関して用いられる。これに関して、「近位」という用語は、器具のユーザに近い部分(例えばハンドル)を指し、「遠位」という用語は、ユーザから離れており外科部位又は診断部位に近い器具の部分(先端)を指す。更に、当然のことながら、便宜上簡潔にするために、本明細書では、図面に関して「垂直」、「平行」、「上」、「下」等の空間用語が用いられる場合がある。ただし、手術器具は多くの向きと位置で使用されるものであり、これらの用語は限定的かつ/又は絶対的であることを意図していない。
【0025】
本明細書で用いられる場合、「カテーテル」との用語は、概して、広範囲の医療機能を実行するために、狭い開口を通して体腔(例えば血管)の中に挿入されるように設計された、医療グレードの材料から作られる軟性の薄い管状器具を指す。より具体的な「光学カテーテル」との用語は、医療グレード材料から作られた保護シース内に配置され光学イメージング機能をもつ1つ以上の軟性の光伝導ファイバの細長い束を含む医用器具を指す。光学カテーテルの特定の例は、シース、コイル、プロテクタ及び光学プローブを備える光ファイバカテーテルである。一部の用途では、カテーテルは、シースと同様に機能する「ガイドカテーテル」を含み得る。一部の実施形態は、内視鏡に適用可能であり得る。本明細書で用いられる場合、「内視鏡」との用語は、光学プローブによって導かれる光を用いて体腔又は臓器の内部を観察する、硬性又は軟性の医用器具を指す。内視鏡が自然開口を通して挿入される医療処置は、内視鏡検査と呼ばれる。
【0026】
本開示では、「光ファイバ」又は単に「ファイバ」等の用語は、全反射として知られる効果によって一端から他端に光を伝導することができる、細長い軟性の光伝導管を指す。「導光コンポーネント」又は「導波管」との用語も、光ファイバを指す場合があり、又は光ファイバの機能をもつ場合がある。「ファイバ」との用語は、1つ以上の光伝導ファイバを指す場合がある。光ファイバは、一般に透明で均質なコアをもち、それを通して光が誘導され、また、コアは均質なクラッディングによって囲まれている。コアの屈折率は、クラッディングの屈折率よりも大きい。設計上の選択に応じて、一部のファイバは、コアを囲む複数のクラッディングをもつことができる。
【0027】
<カテーテルの一般のパラメータ>
前述したように、カテーテルシースの柔軟性の変化は、近位端から遠位端へと徐々に変化することが望ましい。より具体的には、ねじれを最小限に抑え、押込み力とねじり力をカテーテルの遠位端までより効果的に伝達するために、硬い近位セクションからより柔軟な遠位セクションへの滑らかで段階的な遷移が望ましい。本開示では、剛性の滑らかで段階的な遷移を達成するために、カテーテルの各セクションは、他の検討事項の中でも、材料、デュロメータ、寸法、アスペクト比等の点で特定の属性をもつように設計される。
【0028】
周知されているように、カテーテル又はガイドワイヤが蛇行進路を(例えば大腿動脈から大動脈へ)通されるとき、カテーテルは、その形状が血管の形状に適応するように、弾性的に変形する。前進しているカテーテル先端が血管壁に触れると、カテーテルに作用する力によって先端のたわみが生じる。血管壁に作用する力は、血管壁又はカテーテル自体への損傷のリスクを最小限に抑えるために、可能な限り小さくする必要がある。したがって、カテーテルは、曲げ剛性、ねじり剛性、引張強度、並びに座屈及びねじれへの耐性に関する適切な機械的特性を備えている必要がある。別の要件は、小さな血管を進むためにカテーテルの外径(OD)を小さくし、造影剤の高流量とイメージング及び/又は操作デバイス(ツール)の容易な通過を可能にするために内径(ID)を大きくする必要があることである。大きなIDと小さなOD、並びに適切な剛性及び引張強度を提供するには、カテーテル壁の厚さ(壁厚)を慎重に設計しなければならない。曲げ剛性とはカテーテルの曲げを指し、ねじり剛性とは回転を指す。望ましくは、カテーテルは、カテーテルをねじる際のねじり剛性が高く、ねじれ又は座屈を防ぐために曲げ剛性が低い必要がある。しかしながら、ねじり剛性のレベルを上げて曲げ剛性のレベルを下げた、バランスの取れたカテーテルを製造することは、困難であった。
【0029】
カテーテル剛性:剛性に関して、本開示のカテーテルは、遠位端よりも近位端の方が硬く、近位端から遠位端に向かって徐々に剛性が漸減する。カテーテルは非外傷性遠位先端で終端し、非外傷性遠位先端は、カテーテルがガイドワイヤを介して関心部位に誘導されるように、同心的にガイドワイヤを受け入れる短いラピッドエクスチェンジセグメントを含んでよい。一般に、デュロメータと曲げ弾性率に関連して、剛性は、直径サイズ及び壁厚に大きく影響される。その点で、同じデュロメータ材料を使用しても、外形の大きいカテーテルの方がはるかに剛性が高い。
【0030】
曲げ剛性に関しては、カテーテル剛性が、中心静脈カニューレ挿入後に生じる血栓形成(血栓の形成)の主要な要因であることが知られている。したがって、全てのタイプのカテーテルの曲げ剛性と弾性挙動を評価するために、多くの方法が設計されてきた。カテーテル剛性を測定する周知の方法は、カンチレバービーム技術であり、例えば米国特許第6406442号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。この技術では、非支持長さ“L”のビームを偏向又は曲げるのに必要な力“F”は、次の式y=(F×L3)/(3×E×I)による偏向量“y”に関連し、式中、Eはビーム材料のヤング率であり、Iは、ビームのセクションの慣性モーメントである。ビームの曲げ剛性に寄与する要因は、すなわち弾性率とビーム材料であるので、ビームの剛性(E×I)は、次の式EI=(F×L3)/(3×y)に従って、ビームを所定の距離(偏向“y”)だけ偏向させるのに必要な力を決定することによって、計算することができる。国際単位系では、剛性は、典型的にはニュートン/メートル(N/m)で測定され、インペリアル単位ではポンド(lbs)/インチで表されることもある。カテーテルの曲げ剛性は、ミリニュートン-メートル(mN-m)単位で表されることもある。
【0031】
プロファイルとカラム強度:近位端において、カテーテル直径の主な制限は、使用するガイドカテーテルのサイズである。一方、遠位端では、カテーテルが安全基準を満たしている限り、通常は直径が小さい方が良い。また、カテーテルサイズは、ほとんどのポリマーで良好なカラム強度を示し、これは、曲がりくねった生体構造や血管を通してカテーテルを押すときに必要な属性である。
【0032】
最新のカテーテルのほとんどは強化ポリマーでできているので、カテーテルの設計者が検討する最も一般的なポリマー属性は、「デュロメータ」である。デュロメータは、特定のカテーテル要件に直接相関するポリマー硬度の尺度である。柔らかいポリマー先端を備えたカテーテルでは外傷が最小限に抑えられるが、カテーテルを通して誘導されるガイドワイヤ及び/又は器具からの摩耗に抵抗するには、柔軟であるが硬い管状表面を備えたカテーテルが好ましい。いずれの場合も、デュロメータ値は、ポリマーの柔軟性の尺度である「曲げ弾性率」を、カテーテルシャフトの各セクション又は表面に相関させる。材料の曲げ弾性率は、その材料が曲がる能力を示す物理的特性である。機械用語では、曲げ弾性率とは、カテーテルのたわみ変形(曲げ)中の応力とひずみの比率である。
【0033】
デュロメータ硬度計は、1920年代にアルバート・ショアによって開発された。これは、「押さえ金」として知られている剛体によるポリマー表面へのくぼみの深さを測定する。くぼみの深さは、ポリマーの硬度と、押さえ金の形状と、押さえ金にかかる圧力と、圧力の持続時間とによって決まる。米国材料試験協会(ASTM)は、使用目的と材料の種類に応じて、合計12通りのデュロメータスケールを確立している。ASTM試験スケールは、A、B、C、D、DO、E、M、O、OO、OOO、OOO-S及びRである。ショア“A”スケールは、直径0.031インチ(0.79mm)の平らな先端で終端する35°の円錐形テーパを備えた鋼棒押さえ金を使用する。先端は、1.8ポンド(822グラム)の力で試験片に適用される。ショアDは、30°の円錐形テーパと半径0.004インチ(0.1mm)の丸い先端を備えた同様の鋼棒を使用し、10ポンド(4.5Kg)の力で適用される。硬度の最終的な値は、押さえ金によるくぼみの深さによって決まる。先端が0.1インチ(2.54mm)以上貫通する場合、デュロメータは、該スケールではゼロである。先端が全く貫通しない場合、デュロメータは、該スケールでは100である。0~100のショア値は、0~0.1インチのくぼみに比例する。
【0034】
各ASTMスケールは、0~100の値になり、値が高いほど材料が硬いことを示す。しかしながら、異なるASTMデュロメータスケールが重複することがある。例えば、Aスケール上で90のデュロメータ(90ショアA)は、Dスケール上の40のデュロメータ(40ショアD)に等しい。わずかに異なる測定系を使用する2つの最も一般的なスケールは、ASTMD2240のタイプAとタイプDのスケールである。Aスケールは、一般に柔らかいプラスチック用であり、Dスケールは、硬いプラスチックやその他のポリマーベースの材料用である。ポリマーの柔軟性は、製造品の曲げ弾性率によって最も正確に決定される。曲げ弾性率(“flex modulus”、“flex mod”、又は「弾性率(modulus)」とも呼ばれる)は、荷重下での物品の変形を測定する。ただし、デュロメータの高さは弾性率の高さと相関するので、デュロメータは、競合ポリマーの柔軟性を評価するための代理として使用されることがある。引張強度は、材料が破損する前に引き伸ばされたり引っ張られたりするときに耐えられる最大応力である。これは、繊細な薄壁の管を押し出すプロセスや、カテーテル技術で使用される管の性能を決定するための、重要なパラメータである。カテーテル、バルーン及び高圧編組カテーテルガイド(ガイドカテーテル)は全て、材料の引張強度特性に依存している。ポリイミド(PI)やポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の材料は、最高の圧力性能を備えた材料のひとつである。更に、これらの特性を改善するために、押出し管を編組して、管状構造に強度と補強を追加することが多い。
【0035】
ポリエーテルブロックアミドコポリマー(例えば、ArkemaによるPebax(登録商標)ブランド)は、カテーテルシャフトの製造に使用される非常に一般的なポリマーである。しかしながら、本願では、他の医療グレードの熱可塑性ポリウレタン(TPU)及び熱可塑性エラストマー(TPE)の材料も、精度と一貫性が要求される医用カテーテル及び内視鏡デバイスの管押出材料として適用可能である。一般に知られているカテーテルチューブ材料としては、とりわけ、PVC、HDPE、ポリウレタン、ナイロン、PEBAX(登録商標)、FEP、PFA、ETFE、PTFE(ライナー)、PEEK、TPE、Grilamid(登録商標)が挙げられる。
【0036】
本願では、非外傷性の柔らかいポリマー先端と、ガイドワイヤ及び器具からの摩耗に抵抗するために柔軟であるが硬い管状表面とを有するカテーテルの要件を満たすために、カテーテルシースのデュロメータは、カテーテルの各セクションに従ってカテーテルの長さに沿って変化する。カテーテルシースの内径及び/又は外径も、カテーテルの各セクションに従って変化する。更に、カテーテルの長さに沿って、カテーテルシースの壁厚も、所与のセクションに従って変化し得る。更に、カテーテルの各種セクションは、冠動脈内カテーテル、頭蓋内カテーテル、末梢カテーテル及びびRxカテーテル等の特定のカテーテル用途に合わせて最適化することができる。
【0037】
<カテーテル構造>
図1A及び
図1Bを参照して、本開示に係るカテーテル100の例示の実施形態の概観を説明する。
図1Aは、本開示の実施形態に係る、近位端(左手側)から遠位端(右手側)から見た、カテーテル100の全体構造を示す。デカルト座標(x,y,z)で定義される3次元環境では、カテーテルの長さはz軸に沿って延び、カテーテルの断面はx-y平面上にある。カテーテル1は、その近位端から遠位端に向かって、カテーテルシース190及びラピッドエクスチェンジ(Rx)セクション110を備える。ほとんどの実施形態では、Rxセクション110は、カテーテルシース190よりもかなり短い。少なくとも1つの実施形態では、カテーテルシース190は、モノレール又はRxセクション100よりも少なくとも50倍、最大100倍長い。例えば、カテーテルシースが約140cmであるとき、モノレールセクションは約20mm(2cm)である。カテーテルシース190は、近位セクション140、中間シャフトセクション130及び窓セクション120から成る。カテーテルコネクタ150は、後でより詳細に説明するように、カテーテルの近位セクション140を患者インタフェースユニット(PIU)720に接続するように構成される。近位セクション140、中間シャフトセクション130及び窓セクション120は、一緒に少なくとも1つのルーメン(第1のルーメン)LM1を画定する。
【0038】
カテーテルシース190は、互いに同軸に配置されるとともに第1のルーメンLM1を囲む壁を画定する外表面及び内表面を有するほぼ円筒形のシース又はスリーブである。第1のルーメンLM1は、長手方向軸A1に沿って近位端から遠位端へ延びる。また、ラピッドエクスチェンジセクション110は、第2のルーメンLM2を囲む壁を画定する外表面及び内表面を有するほぼ円筒形であり、第2のルーメンLM2は、長手方向軸A2に沿って延びる。第1のルーメンLM1と第2のルーメンLM2が互いに横方向にオフセットされ、カテーテルシース190の軸A1がラピッドエクスチェンジセクション110の軸A2に関して小さな角度βを成すような形で、ラピッドエクスチェンジセクション110は、カテーテルシース190に対して遠位に取り付けられる。少なくとも一部の実施形態では、ラピッドエクスチェンジセクション110の内表面と外表面は、互いに対して同軸ではない。
【0039】
カテーテルシースセクションのルーメンLM1(つまり第1のルーメン)は、ツール、イメージングデバイス及び/又は流体を患者の体の外側から患者の体の内側の標的位置まで通すためのチャネルである。ラピッドエクスチェンジセクションのルーメンLM2(つまり第2のルーメン)は、所定のサイズのガイドワイヤを通すためのチャネルである。したがって、第1のルーメン(LM1)は、カテーテルのツールチャネル又は作業チャネルと呼ばれる場合もあり、第2のルーメン(LM2)は、ガイドワイヤ(GW)ルーメンと呼ばれる場合もある。当然のことながら、近位セクション140、中間シャフトセクション130及び窓セクション120は、典型的には、本明細書ではカテーテルシース190と呼ばれる単一の管状体として形成されることになる。しかしながら、説明の便宜上、カテーテルシース190は、異なる部分又はセクション(140、130及び120)を有するものとして説明される。Rxセクション110(Rxセグメント又はモノレールセグメントとも呼ばれる)は、角度付きジョイント115(近位スタブ)を用いた既知のプロセス(例えば溶接、接着、圧着等)によって、カテーテルシース190の遠位端に取り付けられる。一例の実施形態では、Rxセグメントの近位スタブは、管状シース190の開放遠位端(第1のルーメンLM1)に挿入され、その中で溶融接着されて、管状シースを備えたモノリシック構造を形成する。角度付きジョイント115又は近位スタブは、Rxセクション110の一体部分である。
【0040】
ラピッドエクスチェンジセクション110は、Rxセクションの近位部をシース190の遠位端(すなわち窓セクション120)に圧入することによって、カテーテルシース190と嵌合するように構成される。カテーテルシース190の窓セクション120とラピッドエクスチェンジセクション110とが嵌合されると、第2のルーメンLM2の長手方向軸A2と第1のルーメンLM1の長手方向軸A1は、距離ΔLMだけ互いに横方向にオフセットされ、鋭角βを成す。軸A1と軸A2の間のオフセットの距離(オフセット距離)ΔLMは、管状シース190とラピッドエクスチェンジセグメント110が嵌合する場所(角度付きジョイント115)において測定することができる。しかしながら、管状シース190の軸とラピッドエクスチェンジセグメント110の軸は、最小の力で互いに実質的に平行になることができるので、第1のルーメンと第2のルーメンの軸間のオフセット距離は、2つの軸が互いに平行であるときにカテーテルに沿った任意のポイントで測定することができる。
【0041】
オフセット距離は、主に、カテーテルと併用されるガイドワイヤの直径に依存し、次に窓セクション120の直径及びジョイント又は近位スタブ115の角度に依存する。少なくとも1つの実施形態によれば、直径0.014インチの例示の冠動脈ガイドワイヤを考えると、直径0.031インチの窓外形を備えた例示のカテーテルの場合、ガイドワイヤ上のカテーテルの摩擦のないナビゲーションのために窓セクショとガイドワイヤの間に十分な間隙を提供するために、第1及び第2の軸の間のオフセット距離ΔLMは、約0.024インチ~0.026インチ(ガイドワイヤ直径の約2倍)の範囲にある。しかしながら、これらの例示の寸法は限定ではない。一般に、オフセット距離は、Rxセグメントの長さとその剛性の観点から定めることもできる。本開示によれば、最小ガイドワイヤルーメン長さ(Rxセグメント長さ)は、ガイドワイヤ直径のおよそ40倍である。本開示の他の箇所で論じられるように、カテーテルがルーメン(ガイドカテーテル又は患者の生体構造)に挿入されたとき、カテーテルシース(190)及び/又はラピッドエクスチェンジセグメント110は、互いに対して真っ直ぐになり、その結果、2つのルーメンの軸は、互いに実質的に平行に動作する。したがって、第1のルーメンと第2のルーメンの間のオフセット距離は、少なくとも、ガイドワイヤルーメンの直径又はガイドワイヤの厚さに相当するはずである。ガイドワイヤ直径に関して、少なくとも1つの実施形態では、第1のルーメンの軸と第2のルーメンの軸は、ガイドワイヤ直径の約半分~2倍の範囲のオフセット距離だけ、互いからオフセットされる。最小オフセット距離は、カテーテルの全体直径を小さくするのに有利であり、一方、オフセット距離を増大させることは、ガイドワイヤ上のカテーテルの摩擦のないナビゲーションのために、窓セクションとガイドワイヤの間に十分な間隙を提供するのに有利である。
【0042】
更に、少なくとも1つの実施形態によれば、ガイドワイヤルーメン(LM2)は、細いガイドワイヤの場合にはカテーテルシースルーメン(LM1)に関して約1~3度だけ角度を成すが、他の実施形態では、角度は、中型のガイドワイヤの場合は約2~9度の範囲内で、太いガイドワイヤの場合は3~15度の範囲内で変動してよい。言い換えれば、カテーテルシースルーメン(LM1)とガイドワイヤルーメン(LM2)の間の角度は、少なくともガイドワイヤの厚さ(直径)と、Rxセクション110及び/又はシース190の長さに応じて、約1~15度の範囲にあってよい。
【0043】
図1Bは、z軸に垂直なx-y平面上から見た、線A-Aに沿って取られた中間シャフトセクション130の断面図を示す。カテーテルシース190の中間シャフトセクション130は、多層ポリマー構造によって強化されたハイポチューブ体を備える。ハイポチューブは、その長さに沿ってレーザカットすることによって形成されたマイクロエンジニアリング特徴を備えた長い金属管である。中間シャフトセクション130は、カテーテル100の重要なコンポーネントであり、それは、バルーンやステント等の他のデバイスと組み合せて、或いは少なくとも1つの実施形態によれば、特にRxセクション110と組み合せて、利用することができる。本開示の1つ以上の実施形態によれば、中間シャフトセクション130は、体の生体構造に入り、窓セクション120を、長く曲がりくねった複雑な経路を通して関心箇所(例えば詰まった動脈)に向かって押すように構成される。そのような蛇行進路を通して安全にナビゲートするために、中間シャフトセクション120は、生体構造を容易に滑走する能力を損なうことなく、ねじれに抵抗しなければならない。曲がりくねった生体構造を通してカテーテル100を容易にナビゲートするための主なパラメータは、押込み性及び追従性として知られている。これらのパラメータを満たすために、中間シャフトセクション130は、いくつかの層のポリマー材料で覆われたハイポチューブとして一般に知られている、マイクロエンジニアリングされた金属構造から成る。
【0044】
より具体的には、
図1Bに示されるように、カテーテルシース190の断面
図A-Aは、中間シャフトセクション130が、金属層(ハイポチューブ体134)、内側ポリマー層135及び外側ポリマー層137、並びに保護層又は外部表面層136を含むいくつかの同心層から形成されていることを示す。更に、少なくとも一部の実施形態では、血管内の摩擦抵抗を低減するために、滑りやすい層が外部表面層136に追加される。金属層又はハイポチューブ体134は、らせん状スロットを画定する切込み139を有する。主要ルーメン(LM1)の長手方向に沿って取られた断面図は、ハイポチューブ体134の切込み139によって作られたらせん状スロットを示し、これは、中間シャフトから窓への遷移部で終了する(
図3D参照)。
図3Dはまた、2つのセグメント(窓セグメント120と中間シャフトセクション130)の間に滑らかなテーパを作成するために用いられる充填材料129を示す。
【0045】
窓の押出しは全長に広がり、アウタージャケットはこの遷移部で終了し、両端にフィラーがある。とりわけ、
図1A及び
図1Bに示される実施形態によれば、近位部分140及び中間シャフトセクション130は、マイクロエンジニアリングされたレーザカット(らせん状スロット139であってよい)を備えた金属管(ハイポチューブ体134)を有する。らせん状スロット139は、近位部分140での第1のピッチP1から遠位端131又はその近くの第2のピッチP2に変化する可変ピッチを有する。ピッチP2は、所望の横方向硬さ及び/又は曲げ剛性の程度に応じて、ピッチP1からピッチP2までのn個のステップの数を変えることができる。らせん状スロットを有するハイポチューブ体134は、ポリマーの複数の層の間に挟まれており、該複数の層は、ハイポチューブ体の内表面上の第1のポリマー層135と、ハイポチューブ体の外表面上の第2のポリマー層137と、保護層又は外部ポリマー層136とを含む。ポリマー層は、カテーテルシースの内表面及び外表面に潤滑性を提供できる、PTFEや同様のもの等の生体適合性ポリマーを含んでよい。ハイポチューブ体134は、生体適合性の金属又は金属合金、例えばニチノール(ニッケルチタン合金)、ステンレス鋼、タンタル、金、白金、チタン、銅、ニッケル、バナジウム、それらの亜鉛金属合金、銅-亜鉛-アルミニウム合金、及びそれらの組合せを含み得る。
【0046】
被覆層に特定のポリマー材料を用いて、ハイポチューブに作製されたらせん状スロット139のピッチパラメータを変化させ、中間シャフトセクション130の壁厚を制御することによって、カテーテル100は、近位部分140で非常に剛性が高く、窓セクションが始まる遠位端131に向かって徐々に剛性が低くなるように特に設計される。より具体的には、中間シャフトセクション130の剛性は、近位部分140での非常に高い剛性から、遠位端131、すなわちシース190が中間シャフトセクション130から窓セクション120に遷移する箇所でのかなり低い剛性まで漸減する。一実施形態によれば、中間シャフトセクション130は、近位部分140では約4.7ミリニュートン-メートル(mN-m)の剛性を有し、遠位端131では約0.18mN-mまで漸減する。遠位端131は、シースのうち、中間シャフトセクション130が窓セクション120に遷移して窓セグメントの剛性にほぼ一致する部分である。これにより、中間シャフトセクション130とイメージング窓セクション120の間の滑らかな剛性遷移が可能になり、カテーテルのねじれが防止される。
【0047】
<Rxセクション110>
カテーテルシースの各種セグメントの適切な壁厚対直径の比率によって定義される最適化された剛性の重要性は、どれだけ誇張してもしすぎることはない。なぜなら、低摩擦コーティングとともに、曲がりくねった生体構造に適合する適度な横方向の柔軟性を維持しながら、適度な押込み性(カラム強度)と、押潰し及び楕円化への耐性(フープ強度)と、曲がりくねった生体構造でのナビゲーションの容易さとが可能になるからである。カテーテルが内外を移動する血管と同様に、カテーテルシースは、各セグメントのニーズを満たすように、外形と剛性の両方で先細になっている。
【0048】
図2Aは、カテーテル100のラピッドエクスチェンジセクション110の斜視図を示し、
図2Bは、長手方向に沿って取った断面図(断面B-B)を示す。
図2A及び
図2Bを参照して、Rxセクション110の設計属性を説明する。
図2Bに示されるように、角度付きジョイント115(ジョイント接続)は、例えばRxセクション110の近位部114の所定の長さ219を窓セクション120の遠位端に接着することによって、取り付けられる。
【0049】
ラピッドエクスチェンジセクション110は、角度付きジョイント115によって窓セクション120の遠位端に取り付けられ、角度付きジョイント115は、Rxセクション110と同じ材料から作製され、好ましくはRxセクション110と一緒に成形される。角度付きジョイント115は、Rxセクション110の近位部114が少なくとも特定の長さ219で窓セクション120と重なるように、窓セクション120の遠位端と嵌合する。ラピッドエクスチェンジセクション110は、その遠位端にガイドワイヤ入口ポート118を含み、近位部114にガイドワイヤ出口ポート119を含み、遠位端に非外傷性遠位先端112を含む。更に、ラピッドエクスチェンジセクション110は、1つ以上の放射線不透過性マーカバンド113を含む。放射線不透過性マーカバンドは、柔らかい遠位先端112のすぐ近位に、通常は遠位先端112の3mm~5mm以内に配置することができる。これら及び他の放射線不透過性(R-O)マーカは、X線透視法下でのカテーテルの視認性を高めるために、10%イリジウムを含むプラチナ等のわずかに放射能をもつ物質から形成されてよい。R-Oマーカバンドは、純金から形成することもできる。純金は、密度が高いので、X線透視法下でプラチナ-イリジウムとほぼ同じ視認性がある。R-Oマーカバンド113は、利用可能な壁厚のかなりの部分を占めることができる。したがって、少なくとも1つの実施形態によれば、Rxセクション110の必要な引張強度を維持するために、より柔らかい遠位先端112よりも堅く強い材料内にマーカバンド113を配置することが好ましい。
【0050】
1つ以上の実施形態では、Rxセクション110の遠位先端112は、比較的柔らかく、非外傷性である。遠位先端112は、患者の生体構造(例えば血管壁その他の組織)の外傷を防ぐために、Rxセグメントシャフトの残りの部分よりも実質的に低い剛性を有するポリマー材料から作製することができる。遠位先端112は、近位端から遠位端への方向に先細になる外径を有する。患者の生体構造の外傷を防止するために、遠位先端112は滑らかで柔らかく、鋭い縁やばりを有さない。ばりは、成形部品の表面に形成される余分なプラスチック又はゴム材料である。
【0051】
Rxセクション110の近位部114の出口ポート119は、カテーテルが生体構造から引き抜かれるときに敏感な生体構造に損傷を与えたり、ステントストラットに引っ掛かったりするおそれのある鋭い縁、まくれ又はばりがないように、形成されなければならない。この理由から、少なくとも一部の実施形態では、ガイドワイヤ出口ポート119のガイドワイヤルーメンの近位端は、管腔生体構造への損傷を生じる機会を低減するために、直径が縮小される。
【0052】
カテーテルを所望の位置により容易に送達可能にするのに役立つラピッドエクスチェンジセクション110の望ましい属性は、最初に材料の曲げ弾性率(flex modulus)に関して説明され、次に剛性パラメータに関して説明された。曲げ弾性率(又は屈曲弾性率)は、材料の曲げ変形(曲げに抵抗する傾向)における応力とひずみの比率として計算され、主に、デバイスの形態(形状又はサイズ)を考慮せずに材料特性を記述する。一方、剛性は、カテーテルデバイスのサイズ、直径、壁厚に加えて、デバイスを構成する材料の材料曲げ弾性率とデュロメータの値に依存する。本願では、ガイドワイヤルーメンLM2を囲む壁を画定する外表面及び内表面を有するほぼ円筒形の管状シャフトと見なされるRxセクション110にとって、以下の属性が特に望ましい。
【0053】
(1)患者の組織の生体構造(血管壁等)に接触する全てのセグメント表面の最小化された外形。その点に関して、特定の用途では、ラピッドエクスチェンジセクション110の外形は、そのような特定の用途と互換性のあるパラメータをもたなければならない(例えば、冠動脈用ガイドカテーテルの最大直径6Frと、0.014インチのガイドワイヤと互換性のあるガイドワイヤルーメン)。
【0054】
(2)ほとんどのカテーテルには、敏感な生体構造への損傷を防止するために、柔らかい遠位先端が取り付けられる。しかしながら、本開示によれば、約42ショアDの硬度デュロメータ及び約77MPaの曲げ弾性率を有する柔らかく非外傷性の遠位先端112は、カテーテル100の他のセクションを考慮して特別に設計されている。最適化された遠位先端設計により、非外傷性遠位先端112は、敏感で破壊された血管を損傷することがなく、また、ガイドワイヤにフィットする先細の丸みを帯びた柔らかい遠位先端のおかげで、位置の悪いステントストラット又は損傷した組織に引っ掛かることがない。この柔らかい遠位先端112は、患者の生体構造を損傷することなく、カテーテルをきついカーブの周りに誘導することにより、ガイドワイヤ機能を増強し始めるので、ナビゲーション機能にとっても重要である。
【0055】
(3)Rxセクション110は、近位部114(エクスチェンジ体部分)から遠位先端112(非外傷性先端)へ延びるモノリシック管状シャフトセグメントを有する。Rxセクションは、近位部114において約64ショアDの硬度デュロメータ及び約285MPaの曲げ弾性率を有する成形材料から成る単一のモノリシック部材として、一体的に形成される。これらの値は、遠位先端112における約77MPaの曲げ弾性率と約42ショアDの硬度デュロメータまで漸減する。これらの値により、ラピッドエクスチェンジセクション110は、容易に蛇行に適合し、引張要件を満たしながらねじれに抵抗することができる。
【0056】
一実施形態によれば、Rxセグメント110は、近位部114から遠位先端112まで延びる管状体を有し、該管状体では、外径(OD)対壁厚比と曲げ弾性率は、近位部から遠位先端に向かって変化する。例えば、Rxセグメント体は、およそ0.0300インチのODと、約0.0070インチの壁厚と、約285MPaの曲げ弾性率と、約64ショアDの硬度デュロメータとを有する。更に、Rxセグメントの外径は、約0.0300インチから約0.0220インチまで漸減してよい。この点に関して、Rxセグメント110の壁厚を外径対壁厚の特定の比率内に維持することが重要である。壁厚が薄すぎると、半剛体の管状シャフトは容易にねじれるおそれがある。これは、特に本明細書に開示されるように、イメージングコアがカテーテルシース内で自由に回転できるある種のイメージングカテーテルでは、回避されるべきである。
【0057】
柔らかい遠位先端112は、約0.0300インチから約0.022インチに先細になる外径(OD)と、約77MPaの曲げ弾性率と、約42ショアDの硬度デュロメータとを有してよい。上記のデータ、曲げ弾性率及び剛性の値は、技術データシート等の公開されているポリマー製品情報と、本発明者が設計したプロトタイプのカテーテルシース及びRxセグメントについてNordson Medicalが行った試験から得られた実際の試験データとに基づく。
【0058】
(4)Rxセグメントは、窓セグメント120の材料と比較して柔らかい材料で作製される(すなわち、最遠位セクション又はRxセグメント110の材料は、窓セクション120の材料よりも低いデュロメータ及び曲げ弾性率の値を有する)。この特性は、ラピッドエクスチェンジセクション110が硬くなりすぎないようにし(例えばRxセグメントの壁が厚いことにより)、窓セクション120がRxセグメント110の近くでねじれないようにする。
【0059】
(5)Rxセグメントとイメージング窓セクションの中心線をオフセットする。Rxセクション110と窓セクション120の中心線(それぞれ長手方向軸A1と軸A2)は、ガイドワイヤ300がガイドワイヤ入口ポート118にスライドして入り、ガイドワイヤルーメンLM2を通って進み、窓セクション120からの干渉を受けずに出口ポート119を通過できるように、互いからオフセットされる。更に、Rxセクション110はまた、窓セクション120に関しておよそ5度(°)の角度βを成す。Rxセクション110をシース190に関して小さな角度を付けて配置することにより、ガイドワイヤは、窓セクション120からの干渉を受けずに、容易に出口ポート119を通り抜けることができる。更に、Rxセクション110をシース190に関して角度を付けて配置することにより、カテーテルの全体外形を全体として最小化しながら、構築方法を容易にすることができる。より具体的には、Rxセクション110の長手方向軸A1は、
図2Bに示されるように、カテーテルシースセクション190の長手方向軸A2に関して角度βを付けて配置される。該角度は、角度付きジョイント115によって与えられる。一方、従来のカテーテルでは、Rxセグメントは、典型的には、カテーテルシースの作業ルーメンと同一線上に、又は平行に配置される。例えば、とりわけ米国特許公開第2011/0144581号、第2018/0214120号、第2014/0309533号、第2014/0180076号、第2012/0303054号を参照。本開示では、角度βは、成形と、成形されたRxセグメントコンポーネントの組立ての役に立ち、また、ガイドワイヤがガイドワイヤルーメンから出るときにカテーテルシースに押し付けられる可能性を低減する。
【0060】
(6)Rxセグメント110は、Rxセグメント材料に埋め込まれた1つ又は複数の放射線不透過性(R-O)マーカバンド113を有する。特定の実施形態では、R-Oマーカバンドは、遠位先端112から所定の距離に形成することができる。他の実施形態では、R-Oマーカバンドは、遠位先端112に形成することもできる。放射線不透過性マーカバンド113は、カテーテル遠位先端112の位置する場所をX線透視法を介してユーザに示す。遠位先端材料に放射線不透過性マーカバンド113を埋め込むことにより、全体的に低い外形を維持しながら、画像誘導下で高い視認性が提供される。追加の放射線不透過性マーカバンドは、Rxセクション110の近位部114、窓セクション120及び/又はイメージングコア200に追加することができる。
【0061】
(7)射出成形製造。ラピッドエクスチェンジセクション110は、既知の押出法によって作製することができ、かつ/又は、射出成形によって作製されることが好ましい。Rxセクション110の射出成形により、最小限の変動で、ガイドワイヤの入口ポート118及び出口ポート119を備えた一貫したガイドワイヤルーメンLM2が提供される。これにより、ばりを除去したり、残っている材料を削ったり(除去)したりする必要なく、最小限の製造後の操作でクリーンアップすることができる。したがって、射出成形製造により、製造コストを抑えることができ、デバイスの精度を高く維持し、ばらつきを低く抑えることができる。これは、引張強度の仕様にとって重要であり、ガイドワイヤ出口ポートでのねじれの可能性を最小限に抑えるためにも重要である。
【0062】
放射線不透過性とマーカバンド。様々な放射線不透過性の充填剤及び添加剤が、カテーテルの設計者に知られており、入手可能である。しかしながら、このような周知の放射線不透過性材料の一部には、カテーテルシースの材料特性を変更する傾向がある。したがって、一部の放射線不透過性充填シース材料は、X線透視イメージングを介して高コントラスト(放射線不透過性)を発揮しない場合がある。したがって、Rxセクション110に用いられる放射線不透過性材料の種類を決定する際には、慎重に検討をする必要がある。一般に、プラチナ-イリジウム及び/又は金(所与の壁厚に対して最良の放射線不透過性を発揮する傾向がある)から作られたマーカバンドは、シースの遠位端で一般に使用され、生体構造に関して先端が位置する場所を臨床医に示す。
【0063】
他の実施形態によれば、1つ以上の放射線不透過性バンド113は、Rxセクション構造体の外形に組み込まれた既知の放射線不透過性金属又はその合金を含んでよい。例えば、硫酸バリウム(BaSO)、塩素酸バリウム(BiCO)、次炭酸ビスマス(Bi2O2CO3)、オキシ塩化ビスマス(BiOCI)、酸化ビスマス(III)(Bi2O3)等の放射線不透過性の粉末又は化合物を、Rxセクション110又は遠位先端112の構造を形成しているポリマーに組み込むことができる。高い放射線不透過性及び光透過性を示す医用デバイス(カテーテル等)を製造するための他の放射線不透過性材料又は加工条件は、例えば刊行物US2011/0264080(参照により全体として本明細書に組み込まれる)から、当業者には既知である。放射線不透過性バンド113の材料は、X線透視法誘導経皮経管冠動脈形成術(PTCA)等の画像ガイドインターベンション下でカテーテル100のRxセクション110の容易な可視化を可能にしさえすれば、特定の組成物又は合金に限定されない。
【0064】
図3Aは、窓セクション120に配置されたイメージングコア200を含むカテーテル100の別の実施形態を示す。
図3Bは、角度付きジョイント115を示し、これは、カテーテルシース190の遠位端に対するRxセクション110の取付けを示す。
図3Cは、Rxセクション110の追加の詳細と、ガイドワイヤルーメンLM2と、Rxセグメント110の内径(ID)及び外径(OD)の漸減の詳細を示す。
【0065】
図3Aを参照すると、Rxセクション110(モノレールセグメント又はRxセグメントとも呼ばれる)は、ガイドワイヤ300上で実質的に同心に乗るカテーテル100の最も遠位の部分である(
図4A~
図4C及び
図7Bに示される)。Rxセクション110は、ガイドワイヤに沿ってカテーテルシャフトの残りの部分を導くので、曲がりくねった生体構造を通してカテーテル100をナビゲートする際に重要な役割を果たす。Rxセクション110は、ねじれることなく、ステントストラット又は損傷した血管壁構造に引っ掛かることなく、或いはさもなければ患者の生体構造又はデバイス自体に損傷をもたらすことなく、曲がりくねった生体構造を通って関心部位まで前進しなければならない。Rxセクション110は、カテーテルシース190よりもかなり短い。しかしながら、Rxセクション110は、その短い長さの範囲内でさえ、複数のデュロメータ値及び/又は材料を採用する。以下の詳細は、Rxセクション110の設計に関連している。
【0066】
第1に、前述したように、Rxセクション110の材料は、最も近い近位セグメントの材料よりも柔らかい。カテーテル100のほとんどの実施形態では、最も近い近位セグメントは窓セクション120であり、つまり、シース190のうち、イメージングコア200を収容し、イメージングコア200の放射線に対して透過性の窓を含むセクションである。
【0067】
Rxセクション110のひとつの重要な態様は、遠位先端112が、ばり表面のない先細の丸い非外傷性先端を備えていることである。少なくとも1つの実施形態によれば、遠位先端112は、ガイドワイヤルーメンが患者の生体構造内の露出したステントストラット、石灰化プラークそのは他のアーチファクトを捕らえるのを防ぐためにのみ、先端でガイドワイヤを抱えるように設計された開口又は入口ポート118を有する。別の実施形態によれば、出口ポート119は、カテーテルが患者から引き抜かれるときに、ガイドワイヤルーメンが生体構造内の露出したステントストラット、石灰化プラークその他のアーチファクトを捕らえてしまうことを防止するように、設計される。代替の実施形態では、ガイドワイヤルーメンの直径が両端で同じであり、生体構造内の露出したステントストラット、石灰化プラークその他のアーチファクトを捕らえないように、Rxセクション110の入口ポート118と遠位ポート119の両方を、特定のガイドワイヤ直径に対して最適化することができる。更なる実施形態では、Rxセクション110のガイドワイヤルーメンLM2は、両端が先細になっており、入口ポート118及び出口ポート119でガイドワイヤを抱えて、カテーテルが前述のようにステントストラット及び/又は敏感な生体構造に引っ掛かる可能性がないようにする。外表面では、Rxセクション110全体が滑らかで先細になっており、敏感な生体構造に引っ掛かったり、血管系内で合併症を引き起こしたりするおそれのある隆起した縁又は特徴がない。
【0068】
図3Cに示されるように、一例の実施形態では、ガイドワイヤルーメン(LM2)は、ガイドワイヤ出口ポート119が露出又は突出したステントストラットに引っ掛かる可能性を低減するために、遠位先端112から近位部114に向かって逆に先細になっている。より具体的には、Rxセクション110のルーメンLM2は、遠位先端112での内径(ID2)よりも小さい近位部114での内径(ID1)を有する。すなわち、Rxセクション110では、ルーメンLM2の遠位端での内径(ID2)は、Rxセクション110の近位部での内径(ID1)よりも大きく、つまりID2>ID1である。
【0069】
一方、Rxセクション110の外径(OD)は、その近位部114から遠位端への方向に先細になる。具体的には、
図3Cに示されるように、Rxセクション110は、第1の外径(OD1)を有する近位部114から始まり、遠位先端112付近では、Rxセクション110は、OD1よりも小さい第2の外径(OD2)を有する。つまり、Rxセクション110において、外径は近位端から遠位端へ先細になり、すなわちOD1>OD2である。
【0070】
更に、ガイドワイヤルーメンLM2は、少なくともRxセクション110の一端でオフセットされる。具体的には、
図3Cに示されるように、遠位先端112では、ガイドワイヤルーメンLM2は外径の中心にある(又は同軸である)。言い換えれば、ID2はOD2と同心である。一方、近位部114では、ガイドワイヤルーメンLM2は、その外径の中心にない(同軸ではない)。つまり、ID1はOD1と同心ではない。この特定の設計により、カテーテル100の全体外形を最小に維持しながら、Rxセクション110をカテーテルシース190に関して角度を付けて配置することが可能となる。
【0071】
図3Bは角度付きジョイント115を示し、Rxセクション110がカテーテルシース190の遠位端(すなわち窓セクション120)に嵌合する方法の例を示している。
図3Bに示されるように、カテーテルシース190の遠位端(すなわち窓セクション120)は、側視窓217と、第1のルーメンLM1及びイメージングコア200を収容するための内側空間210とを有する。一方、Rxセクション110は、シースの遠位端と接続する角度付き特徴と一体に形成される。
【0072】
具体的には、Rxセグメント110の近位端(近位部114)に接合特徴(角度付きジョイント115)が設けられて、シースの遠位セグメントに対するRxセグメントの取付けを容易にする。
図3Aの場合では、イメージング窓セクション120は、冠状血管その他の所望の生体構造内での安全な操作を確実にするために、適度な引張強度と曲げ強度でRxセクション110に取り付けられなければならない。体内の他の場所の例としては、神経血管系、胃腸(GI)及び尿路等が挙げられる。取付けジョイント115は、第1のルーメンLM1の軸A1と第2のルーメンLM2の軸A2との間に角度βを確立するように機能する。すなわち、取付けジョイント115により、カテーテルシース190の軸A1がRxセグメントの軸A2から角度を成して延び、接着剤、溶融接着その他の手段を介した信頼性が高く再現性のある強力な取付けを容易にする。この角度βは、製造及び/又は組立てを容易にするために、シース軸A1からわずかな角度でRxセグメント軸A2を位置付ける傾向があるが、これらの材料は柔軟性があるので、ガイドワイヤルーメン及び/又は解剖学的管腔内の拘束により、シースとRxセクションの間のこの角度は使用中に真っすぐになる。このように、Rxセグメント110がカテーテルシース190に取り付けられ、カテーテル100が解剖学的管腔を通してナビゲートされるとき、Rxセグメントの軸A2とカテーテルシースの軸A1は、互いに横方向のオフセットを維持したまま、実質的に平行になり得る。
【0073】
両方のコンポーネント(カテーテルシース190とRxセグメント110)は同様の材料でできているので、通常はマンドレルと熱収縮性チューブを用いて、組立てを容易にするようにわずかな締まりばめがある状態で、窓セグメントのIDに挿入された成形先端の「ポスト」を介して熱で溶融接着される(
図2B及び
図4Aを参照)。
【0074】
図4A~
図4Cは、カテーテル100がガイドワイヤ300上で遠位に前進するときの、Rxセクション110の詳細及び利点を示す。
図4Aは、ガイドワイヤ300がガイドワイヤルーメンLM2に沿って挿入された、Rxセクション110の例示の実施形態を示す。
図4B及び
図4Cは、カテーテル100がガイドワイヤ300上を遠位に前進するときの、ガイドワイヤとカテーテルの相互作用の詳細を示す。
図4Cにおいて、カテーテルが遠位方向102に遠位に前進するとき、ガイドワイヤ300は、矢印302の近位方向に入口ポート118を通って進入する。
図4Cにおいて、カテーテルが遠位方向101に進むとき、ガイドワイヤは、矢印302の方向に出口ポート119を通ってRxセグメント110から出る。主要ルーメン(LM1)の軸A1とガイドワイヤルーメン(LM2)の軸A2が互いにオフセットしており角度を成しているので、ガイドワイヤ300は、窓セクション120からの干渉又は抵抗なしに出口ポート119から出て、カテーテルは、障害物なしにガイドワイヤ上を遠位に前進する。
【0075】
本明細書に開示されるように、ラピッドエクスチェンジセクション110は、モノレールのようなガイドワイヤ300に乗って、カテーテル100を関心部位に誘導する。ガイドワイヤ300は、たとえ曲がりくねっていても、両方向に自由にスライドできなければならない。このような動きを改善するために、カテーテル100では、生体構造に接触する全てのセグメントの外形が最小化される。例えば、前述したように、遠位先端112は、ガイドワイヤを抱えるとともに、ガイドワイヤルーメンLM2がステントストラット又は損傷した血管壁に引っかかるのを防ぐ、非常に柔らかい非外傷性先端を有する。そして、Rxセグメント110は、最も近い近位部(すなわち窓セクション)よりも低い硬度デュロメータ及び曲げ弾性率を有する成形材料でできている。Rxセグメント110と隣接する近位シースセグメントの中心線は、ガイドワイヤ300が自由にスライドできるように、互いにオフセットされ、角度を成している。放射線不透過性マーカバンド113は、遠位外形を低く抑えるために、Rxセクション110の壁内に埋め込まれている。Rxセグメント110は、カテーテルシース190の遠位端(すなわち窓セクション120)と位置合せ及び係合されるように、正確な形状及び寸法に射出成形される。これには、スカイビング、まくれとばりの除去、及び/又はリフロー操作等の最小限の後操作が必要となる。
【0076】
特に
図4Cに示されるように、遠位先端112は、近位端から遠位端への方向に先細になっている。ガイドワイヤルーメンLM2の入口ポート118の内径ID2は、ガイドワイヤ300の直径に等しい。一方、ガイドワイヤルーメンLM2の出口ポート119の内径ID1は、ガイドワイヤ300の直径よりもわずかに大きい。
図4Bに示されるように、ガイドワイヤ300は、ガイドワイヤルーメンLM2の長手方向軸A2に沿って進む。このように、長手方向軸A2は長手方向軸A1に対して角度を成しているので、ガイドワイヤ300は、窓セクション120からの干渉なしに、矢印300の方向に自由に前進することができる。
【0077】
一実施形態によれば、Rxセクション110のやや剛性のある本体(およそ63ショアDの硬度デュロメータ)は、ガイドワイヤ直径とRxセグメントルーメンLM2の内表面との間、特に出口ポート119での適度な間隙及び潤滑のおかげで、ガイドワイヤ300上を容易にスライドする。ガイドワイヤ300は、Rxセグメントとガイドワイヤの間の摩擦抵抗を最小限にするために、低摩擦材料でコーティングされることが期待される。更に、ニュージャージーのPolymerDynamixから入手可能なEverGlide(登録商標)MED等の潤滑性添加剤を追加することにより、Rxセグメントの材料を変更して摩擦を低減することができる。この摩擦低減添加剤は、カテーテルガイドワイヤルーメンLM2とガイドワイヤ300の間の摩擦抵抗を低減するように作用する。ガイドワイヤ300が既に親水性コーティングでコーティングされている場合でも、ガイドワイヤ300が過度の摩擦抵抗なしに自由にスライドできるように、ガイドワイヤルーメンLM2に潤滑性添加剤を添加することも有利である。潤滑性添加剤は、本開示のように、入口ポート118、ガイドワイヤルーメンLM2の内径及び出口ポート119が、ガイドワイヤ300が破壊された血管又は位置の悪いステントストラットを捕らえないように最適化される場合に、特に関連する。
【0078】
<窓セクション120>
イメージングカテーテルの場合、窓の押出し自体が、カテーテルシース190の遠位端近くのカテーテルの全体的な剛性又は硬さの大部分に寄与する。更に、ある程度の剛性は、シースの内側に配置された回転するイメージングコアに由来する。イメージングコアは、駆動ケーブルと、1つ以上の光ファイバと、遠位光学アセンブリと、イメージングコアを最小限の摩擦でカテーテルシース内で回転及び/又は並進できるようにするように構成された他のコンポーネントとから成る。アセンブリ全体がシース内で回転する。
図3Aに示されるイメージングカテーテル等の回転イメージングコア200を採用するカテーテルでは、設計及び組立ての公差は、イメージングコア200の先端と窓セクション120の遠位端との間に隙間があるべきであることを指示する。これにより、窓セクション120の遠位端に、非支持領域220が生じる(
図3B及び
図3Cを参照)。イメージングコアがシースの壁を支持していないので、領域220は支持されていない領域である。したがって、シースのこの部分は柔らかく、ねじれの影響を受けやすくなる可能性がある。非支持領域220が長くない場合でも、その横方向剛性は、窓セクションのうちイメージングコアを含む部分、及び/又は、窓セクションの非支持領域220に遠位に隣接するRxセグメント110の近位部114よりも、著しく低い。過酷な動作条件下、例えば、イメージング中に蛇行進路を進み、かつ/又はイメージングコアの推進又はプルバック操作を実行するとき、非支持領域220は、シースがねじれてヒンジする傾向がある「ヒンジ」効果を引き起こす可能性があり、深刻なナビゲーションの課題及び起こり得る画像の欠陥につながる。
【0079】
したがって、Rxセクション110の近位端には、シース190の遠位端への取付けを容易にするために、角度付きジョイント又は近位スタブ115の形態の取付け特徴が提供される。角度付きジョイント又はスタブ115の形態のこのジョイント取付け特徴により、窓セクション120をRxセクション110に容易に取り付け、適度な引張強度及び曲げ強度でRxセクション110に正しく位置合わせすることができ、冠動脈又は他の所望の生体構造内での安全な操作を保証することができる。窓セクションに配置されたイメージングコアのねじり剛性に対する曲げ(横方向)剛性のアスペクト比は、0.025又はその近くに維持される。取付け特徴が有利である患者の体内の場所の例としては、とりわけ、神経血管系、GI及び尿路等が挙げられる。接着剤、溶融接着、超音波溶接、その他の同様の手順を用いて、信頼性が高く再現性のある強力な取付けを容易にするために、取付け特徴の軸は、Rxセクション及びシースセクションの軸から角度を成す。この角度付きジョイント又はスタブ115は、製造(組立て)を容易にするために、シース軸A1からわずかな角度でRxセグメント軸A2を位置付ける傾向があるが、これらの材料は柔軟性があるので、ガイドワイヤルーメン及び/又は解剖学的管腔内の拘束により、該2つの取付けコンポーネント間の角度は使用中に真っ直ぐになる。
【0080】
更に、イメージングコア200用に十分な空間を提供しながら、非支持領域220の長さを最小化することが重要である。窓セクション120の遠位端とRxセクション110の近位部114は中実の接合部を形成しなければならないので、第1のルーメン(LM1)を含まない窓部分120内の小さな空間がRxセクション110の近位部114と重なることができるようにする必要がある。しかしながら、窓部分120のうち第1のルーメン(LM1)を含まない長さ219は、カテーテルのねじれを防ぐために最小化される。
【0081】
窓セクション120の遠位端で最小化された長さの非支持領域220を証明することは、様々な方法で達成することができ、そのひとつは、イメージングコアの長さに基づいて最終アセンブリでのシースセクションの長さを設定し、長さを比較し、最終アセンブリでシースの近位端を切り取ってイメージングコアの長さに一致させ、支持されていない隙間を最小限に抑えることである。同時に、シース190の遠位端をRxセクション110の近位部114に確実に嵌合及び位置合せするために、十分な支持を提供する必要がある。したがって、イメージング手順の開始時、システムの自己較正及びデバイスの“ホーミング”中にイメージングコア200がおよそ1.5mmプルバックされるので、イメージング窓120の遠位端に小さな隙間(非支持領域220)が残ることになる。
【0082】
次に、カテーテルの送達可能性を更に高め、優れた画像を生成するのに役立つイメージング窓セクション120及び遠位シャフトセグメント構造の望ましい属性について説明する。ここでも、最初に材料の曲げ弾性率の観点からパラメータを説明し、次に剛性パラメータを介して説明する。窓セクション120に固有の他の材料特性は、窓材料の屈折率及び/又は音響インピーダンスであり、これらは、特定のイメージングモダリティに従って選択される。
【0083】
イメージングシステムを備えたカテーテルは、正確な画面上の測定を確実にするためにオンサイト較正(例えばz較正)を必要とするので、窓セクション120の遠位部と窓材料には、非常に厳しい窓壁厚公差及び同心度の仕様が必要となる。臨床医は、医学的診断を行い、適切なステントサイズやバルーン直径等を決定するためにこのような測定値に依存するので、このような測定値は臨床医にとって重要である。したがって、慎重に同心性と壁厚のバランスを取る必要がある。特に、カテーテルに大きめの直径のルーメンが必要となる場合、壁厚と同心性は、カテーテルシースがねじれに抵抗するように、曲げ弾性率とデュロメータ値に基づいて調整する必要がある。
【0084】
イメージングカテーテルにおいて、窓セグメントは、外径(OD)、壁厚、デュロメータ及び材料曲げ弾性率に基づいて、適切な押込み性(カラム強度)と比較的柔らかい横方向剛性との間の妥協点を提供するように構成され、冠動脈の生体構造内で優れたナビゲーション性能を実現することができる。繰返しになるが、窓セグメントの表面の低摩擦コーティングは、カテーテルと生体構造の間の摩擦抵抗を実質的に排除し、その結果、カテーテルは容易にスライドし、繊細な又は破壊された冠状血管を損傷することなく、曲がりくねった生体構造を通って、関心部位に容易に進むことができる。これらのコーティングは、親水性又は疎水性のいずれかであってよいが、親水性が最も一般的であり、利用可能な摩擦係数も最も低くなる。
【0085】
イメージングカテーテルにおいて、イメージング窓セクション120の遠位部は、血管壁の最適なイメージングを容易にするために、イメージングモダリティに応じて光(OCTカテーテルの場合)又は音(IVUSカテーテルの場合)を効率的に通すように最適化される必要がある。得られるカテーテルは、心血管疾患を治療するために、局所的な病状をより正確に診断することができる。窓セクション120を介した適切なイメージングにとって重要なのは、それぞれIVUSと光学イメージングカテーテルのための、窓材料の音響インピーダンス(Z)及び/又は屈折率(n)である。
【0086】
したがって、本開示の少なくとも1つの実施形態によれば、約72ショアDの硬度デュロメータと、約513MPaの曲げ弾性率と、約0.06~0.09mN-m(ミリニュートン-メートル)の曲げ剛性とを備える窓セクション120が有利であると考えられる。押込み性及びイメージングコアの動きを向上させるために、高デュロメータ及び滑りやすい添加剤による自然な潤滑性と組み合された改善されたカラム強度を提供するために、窓セクション120の曲げ剛性は、好ましくは、約0.07~0.08mN-mの範囲にあってよい。窓セクション120は、横方向硬さでは曲がりくねった冠状血管系を損傷することなく進むのに十分な柔らかさでありながら、カラム強度では優れた押込み性を得るために十分に剛性が高いカテーテル特徴を組み合せる。特定の一実施形態では、窓セクションは、約0.0040インチの壁厚と、約0.0310インチの外径(OD)と、約500MPaの曲げ弾性率と、約72ショアDの硬度デュロメータと、約0.075mN-mの横方向剛性とを有する。
【0087】
図5は、マルチモダリティ光干渉断層撮影法(OCT)イメージングカテーテルのイメージング窓セクション120に関する例示のデータを示す。各セクションが必要な仕様を満たしていることを確認するために、プロトタイプ作製中にシースの各種セグメントの横方向剛性の値を測定した。
図5に示される窓セグメント120の剛性値は、遠位の窓セグメントが冠動脈の生体構造を損傷することなく該生体構造に適合するのに十分な程度に横方向に柔軟であることを保証しながら、押込み性のための適切なカラム強度を提供するために、重要である。
【0088】
遠位シャフト/窓セクションのインタフェースでは、壁厚対内径(ID)比が材料特性と組み合わさって、回転するイメージングコアを挟んで過剰なNURDを発生し得る楕円化や押し潰しに耐える、ねじれに強い窓を作り出す。カテーテルの窓セクションのねじれを最小限に抑えるために、窓セクションの壁厚対内径比は、約0.150~0.20の範囲にある必要があり、或いは約0.174であることが好ましい。なお、使用中、カテーテルのうち窓セクションがRxセグメントに接合する部分(ジョイント115)は、蛇行が原因で生体構造とかなり接触するおそれがある。したがって、ジョイントがねじれる可能性を最小限に抑える必要がある。更に、窓セクションの非支持領域が楕円化せず、84%を超える同心性を維持することが重要である。「壁厚/ID比」は、単純な算術演算で求めることができる。例えば、少なくとも1つの実施形態によれば、内径ID=0.023インチであり、窓壁厚WWT=0.004インチである窓の場合、WWT/ID比=0.004/0.023=0.174である。
【0089】
本開示では、様々な寸法とその範囲を説明するとき、製造及び組立ての公差を考慮して、値は「およそ」又は「約」として与えられる。その点で、およそは±10%を意味し(例えば、およそ0.0310インチは0.0341~0.0279インチの間である)、或いは±5%を意味する(例えば、およそ0.0310インチは0.0326~0.0294インチの間である)。
【0090】
イメージングカテーテルは、アーチファクトのないイメージングを容易にするとともに最適化された特性(IVUSカテーテルの場合は最適化された音響インピーダンス、或いは、OCTカテーテルの場合は最適化された屈折率と低蛍光等)をもつ材料を利用することが好ましい。OCTカテーテルの場合、血液の屈折率と合致する屈折率をもつ窓材料が好ましい。また、窓を通して可視光と赤外線を効率的に透過する窓材料の能力も重要である。IVUSイメージングカテーテルの場合、適切な音響インピーダンスをもつ窓材料が好ましい。蛍光検出カテーテルの場合、低天然蛍光材料で作られた窓セクションが好ましい。
【0091】
窓の遠位端での最小非支持長さ(窓がねじれやすい、イメージングコアを越えるデッドスペース)が好ましい。(1)シースの遠位端(窓セクションの一部)がイメージングコアの存在によって支持されなくなり、(2)シースには、イメージングコアの剛性によって提供される追加の剛性と窓の剛性がなくなるので、イメージングコアに十分な空間を提供しながらデッドスペースを最小限に抑えることが重要である。したがって、イメージングコアの後ろにありRxセクション110の近位部114の前にあるシースのセクションは、更に捻れやすくなる。シース190の遠位端とRxセクション110の間のねじれを防止するために、角度付きジョイント115において最小化された長さ219が許容される。
【0092】
カテーテルシースの遠位部分(約50cm)は、カテーテルとガイドカテーテル(及び患者の生体構造)の間の摩擦抵抗を最小化する低摩擦コーティング材料でコーティングされる。ここで、「遠位部分」は、窓セクション単体よりも少しだけ長く、それは、(ガイドカテーテルを越えて)生体構造と接触し得るシースの部分である。
【0093】
イメージング窓セクション120とRxセグメント110の材料は、正確なイメージングとシースを通したコア動作を容易にするために、回転可能なイメージングコア又は閉塞具とシースIDとの間の摩擦を低減する、追加の摩擦低減材料の添加剤を含んでよい。EverGlide(登録商標)等を、最大8%の濃度で使用することができる。ここで、濃度とは、PEBAXに対する摩擦低減添加剤(例えばEverGlide)の割合を指す。
【0094】
好ましいシース材料は、体温に著しい影響を与えないように、ヒトの体内温度に適合するように慎重に選択される。これにより、カテーテル特性が生体構造内で変化しないことが保証される。
【0095】
<イメージングコア200>
図6は、カテーテル100の第1のルーメン(LM1)内に配置されるように構成されたイメージングコア200の例示の実施形態を示す。一実施形態によれば、マルチモダリティOCT(MMOCT)カテーテル100は、その遠位端に(すなわち窓セクション120に)、カテーテルシース190内に配置された回転イメージングコア200を含んでよい。
図6は、中間シャフトセクション130の一部と、窓セクション120の一部を示す。中間シャフトセクション130は、金属ハイポチューブ体134と、ポリマー層に挟まれたスロット139とを備えるように示されている。一方、窓セクション120は、ハイポチューブ134を備えておらず、放射線625を通す材料から作られているように示されている。
【0096】
カテーテル100は、その近位端において、患者インタフェースユニット(PIU)720(
図7Aに図示される)と結合される。イメージングコア200は、カテーテルシース190の近位端から遠位端へ延びる駆動ケーブル602を含む。駆動ケーブル602は、長手方向軸Oxを中心に方向Rに、イメージングコア200を回転又は振動させるように構成される。更に、駆動ケーブル602は、イメージングコア200を軸Oxに平行に、順方向又は逆方向のいずれかに並進(長手方向に移動)させるように構成されてもよい。このように、イメージングコア200は、標的サンプル600(例えば血管等の体腔)をらせんパターンでスキャンすることができる。駆動ケーブル602を回転させるトルク及び/又は並進させる線形力は、光ファイバ回転継手(FORJ)の近位モータと、PIU720内に配置された線形アクチュエータとによって供給される。窓セクション120内のイメージングコアの回転及び/又は並進運動を容易にするために、イメージングコアと窓セクション120の内径との間に最小間隙613が維持される。イメージングコアは最小間隙内のサイズであるので、イメージングコアは、窓セクションの横方向の剛性又は曲げ剛性を強化し、それにより、カテーテルシースをより一貫して追従するようにし、変動(楕円化等)を低減し、NURD等を低減し、そして最終的にはコストを削減できるようにする。
【0097】
駆動ケーブル602の内側に配置され、それに対して固定されているのは、光ファイバ604と遠位光学系アセンブリ610である。カテーテルシャフト190の遠位端では、光ファイバ604は、GRINレンズやボールレンズ等の集束要素612と、1つ以上の反射表面を含む透明スペーサ614と、プリズム等の分散要素616とに接続される。光ファイバ604及び遠位光学系アセンブリ610は、イメージングプローブと呼ばれる場合があり、標的サンプル600に対して電磁波電磁放射線625を伝送(及び収集)するように機能する。ファイバ604は、シングルモードファイバ(SMF)であってもよいし、ダブルクラッドファイバ(DCF)であってもよい。電磁放射線625は、ファイバ604を通して伝送され、遠位光学系610によって、光学プローブの遠位端から作業距離にある標的サンプル600上に集束される、1つ以上の波長の光を含んでよい。電磁放射線625は、同じ遠位光学系610によって収集されファイバ604を通して逆方向に検出系(図示なし)に送られる反射光及び/又は散乱光を含んでもよい。
【0098】
患者の手術部位の位置を特定できるようにし、かつ/又は、患者の生体構造に対するカテーテル100の位置決め情報を提供するために、窓セクション120は、イメージングコア200の構造内に配置された複数の放射線不透過性マーカを含んでよい。放射線不透過性マーカは、イメージング面のおよその位置を示すように配置された第1のマーカ620と、例えばカテーテルの遠位先端がどこにあるかを臨床医に示すために、Rxセグメンの遠位先端付近に配置された第2のマーカ621とを含んでよい。第1のマーカ620は、遠位光学系アセンブリ610を保護する管又は金属管615の外径(OD)内に組み込まれる(すなわち、金属管615は遠位光学系アセンブリを収納している)。マーカ113は、Rxセグメントの遠位先端付近に位置し、モノレールセグメントの壁内に封入される。非外傷性の先の丸い先端609は、金属製の管又は缶615の遠位端に配置される(取り付けられる)。非外傷性先端609は、放射線不透過性材料で作られてもよく、追加のマーカとして用いられてもよい。
【0099】
<中間シャフトセクション130>
中間シャフトセクション130の構成は、カテーテル100を所望の場所に容易に到達可能にするように、慎重に設計される。中間シャフトセクション130のパラメータを、最初に例示の材料の曲げ弾性率に関して説明し、次にカテーテル構造の剛性特性に関して説明する。先に述べたように、曲げ弾性率は材料特性を説明するにすぎないが、シース剛性は、実際のカテーテル構造のサイズ、直径、壁厚、材料の曲げ弾性率及びデュロメータ値によっても大きく左右される。
【0100】
中間シャフトセクション130の剛性は、近位部分140では高く、窓セクション120の遠位端での低い剛性まで漸減する。この特性は、優れた押込み性とねじれ耐性を提供し、また、ユーザに、関心部位への(例えば冠動脈生体構造内での)操作及びナビゲーション中にカテーテルを損傷することがないという確信を与える。中間シャフトセグメントの長さに沿った先細りの剛性には、近位部分での横方向剛性の高い硬性が含まれ、遠位端での非常に低い横方向剛性まで漸減する。
【0101】
中間シャフトセクション130は、必要なテーパ剛性を提供する複合構造を有する。具体的には、中間シャフトセクション130は、様々なピッチ(P)のらせん状スロット139を備えた、らせん状溝付きハイポチューブ体を有する。らせん状スロット139は、近位部分140又はその付近で最大のピッチを有し、遠位端131又はその付近(つまり、中間シャフトセクション130が窓セクション120に遷移するポイント)で最小のピッチを有する。ハイポチューブ体は、
図1Bに関して図示及び説明されたように、ポリマー層に挟まれている。
【0102】
らせん状スロット139の変化するピッチにより、近位端又はその付近では非常に剛性の高い構造が提供され、中間シャフトセクション130の遠位端131又はその付近では、よりコンプライアントな構造が提供される。一実施形態によれば、中間シャフトセクション130は、近位部分140又はその付近では約4.7mN-mの剛性を有し、遠位点131では約0.18mN-mの剛性まで漸減する。しかしながら、これらの値は一例にすぎない。一般に、中間シャフトセクション130とイメージング窓セクション120の間で剛性が滑らかに遷移するように、遠位端131又はその付近の中間シャフトセクション130の剛性は、窓セグメント120の剛性とほぼ一致することが望ましい。
【0103】
また、中間シャフトセクション130は、窓セクション120よりも大きい外形を有する。結果として、中間シャフトセクション130の可変剛性により、近位端でのカラム強度が増大するので、優れた押込み性がもたらされる。中間シャフトセクション130の剛性は、滑らかな剛性遷移のために窓の剛性と一致するように、漸減する。カテーテルシースの近位端又はその付近で剛性が高いことと、中間シャフトセクションと窓セクションの間のシームレスな遷移により、ユーザは、カテーテルがねじれないというより高い確信を持つことができる。また、中間シャフトセクション構造は、追加の耐破砕性を提供するので、後でより詳細に説明するように、イメージングコア200は、最小NRUDの有無にかかわらず自由に回転することができる。
【0104】
中間シャフトセクション130の横方向(曲げ)剛性:カテーテルシースの各種セグメントの剛性は、Rxセクションで直径0.014インチのガイドワイヤを用いるサイズ5Fr又は6Frのガイドカテーテルを介した最適な冠動脈カテーテル法に合わせて、特別に調整される。手順中、窓セクション120は冠動脈の血管に接触するので、良好な押込み性に十分なカラム強度を提供するように調整された適度な剛性を有する必要がある。しかしながら、同時に、窓セクション120は、繊細な冠状血管系に損傷を与えないように、横方向硬さでは十分に柔らかくなければならない。このような要件は、中間シャフトセクション130の可変剛性を窓セクション120の剛性に一致させることによって達成される。具体的には、中間シャフトセクション130のらせん状溝付きハイポチューブ層は、ハイポチューブ長さの大部分に沿って近位端から遠位端へらせん状スロット139のピッチを変化させることにより、耐破砕性を高め可変剛性をもたらすらせん状スロット139を備えるように設計される。
【0105】
ハイポチューブ体のスロット139は、連続したらせん状の切込みに限定されない。ハイポチューブ体の切込みパターンは、例えば医療手順に応じて変化してよい。その点で、切込みパターンは、医用デバイスのサイズと、患者の生体構造の位置と、挿入点から標的位置に到達するために必要なカテーテルの長さとに応じて変化してよい。例えば、連続したらせん状の切込みを形成する代わりに、スロット139は、連続したらせん状経路の後に、複数の断続的ならせん状の切込みを含んでよい。更に、特定の実施形態では、切込みの形状や切込みの向き、切込みのサイズ等は、所望の剛性プロファイルを達成できるように変化してよい。更に、単位長さあたりの切込みの密度は、カテーテルシャフトに所望の柔軟性を提供するように、交互に増加及び減少してよい。
【0106】
同様に、中間シャフトセクション130の形成に用いられる材料は、カテーテルの所望の柔軟性及び押込み性のパラメータ、並びに用途又はその医療処置によって決まってよい。1つ以上の実施形態では、ハイポチューブ体は、ステンレス鋼、コバルトクロム、ニチノール、その他の同様の金属又は金属化合物等の既知の材料で構成されてよい。特定の実施形態では、ハイポチューブ体は別々の部品から形成することができ、各部品は、異なる金属又は金属合金で作ることができる。軟性カテーテル体に適した金属及び金属合金のいくつかの既知の例としては、ステンレス鋼、タングステン、ニチノール、ニッケル-クロム合金、ニッケル‐クロム‐鉄合金、コバルト合金、タングステン合金、ベリリウム銅、銀メッキ銅等が挙げられる。
【0107】
スロット139の可変ピッチ及びその有利な効果の詳細。ピッチが長い=破砕に抵抗するハイポチューブのセグメントが長いことから、耐破砕性が増大する。当業者には当然のことながら、これらのパラメータは特定の用途に応じて変化し得るので、スロット139の実際の寸法及びピッチパラメータは、ここでは特に定義されない。とはいえ、特定の可変横方向剛性を提供できる少なくとも2つの異なるピッチセグメントが存在することに留意されたい。
【0108】
一例によれば、表1に、中間シャフトセクション130の様々な例のテーバー剛性データを要約する。テーバーは、剛性試験機及び/又は方法であり、クランプされた試験片の自由端を所定の角度だけ偏向させるのに必要な曲げモーメントをミリニュートン-メートル(mN-m)単位で決定することにより、試験片の剛性を測定する。表1において、N=15は、試験サンプルの数である。表1は、試験結果の最小値、最大値及び平均値を表にしたものである。これらの試験結果は、本明細書に開示される1つ以上の実施形態に係る、マルチモダリティOCT(MMOCT)カテーテルに適用可能な中間シャフトセクション130について許容可能であり得る剛性値の範囲を提供する。
【0109】
表1:MMOCT中間シャフトのテーバー剛性データ
【表1】
【0110】
中間シャフトセクション130について実施可能なカテーテルシース材料の例。冠動脈イメージングカテーテルは、概して、血管内超音波検査(IVUS)カテーテル又は光干渉断層撮影法(OCT)イメージングカテーテルとして提供される。両タイプのイメージングカテーテルは、患者の生体構造(例えば冠動脈血管)の画像を取得するために回転及び/又は並進するイメージングコアを利用するので、潤滑性の低摩擦材料の恩恵を受けることができる。いずれかのタイプのイメージングカテーテル(IVUS又はOCT)から取得される画像は、病状の正確な診断を容易にするために、理想的にはアーチファクトがないものである必要がある。IVUS及びOCTのイメージングカテーテルの中間シャフトセクションを作製するための材料は周知であるが、IVUSとOCTの動作原理の違いにより、これら2つのタイプのカテーテルの窓セクション120を作製するために必要な材料は大いに区別され得る。
【0111】
IVUSカテーテルは血液を通して画像を取得することができるので、血液のクリアランスは不要である。IVUSタイプのカテーテルでは、窓材料の音響インピーダンス(Z)が重要である。したがって、理想的なイメージング窓材料の一例として、ポリエチレン(PE)(特に中密度PE)が考えられる。音響インピーダンスが血液に適していない場合、目に見える画像アーチファクトが生じることになり、臨床医を誤解させたり、冠状血管の画像を評価する作業を困難にしたりするおそれがある。その理由は、音響エネルギーが血管壁に伝播してトランスデューサに戻るときにインピーダンスが十分に一致していないせいで、カテーテルシース、血液及び血管組織、各種プラーク等を介した音響エネルギーの伝達が不完全であることである。
【0112】
OCTイメージングカテーテルは、約900~1300ナノメートル(nm)の波長範囲の電磁放射線を利用する。したがって、イメージング窓材料の屈折率(n)は、アーチファクトのないOCT画像を取得できるカテーテルを作製するために考慮すべき重要なパラメータである。OCTイメージングでは、血液細胞の平均サイズが、OCTイメージングに一般に用いられる放射線の波長に近いので、良好なOCTイメージングのために、フラッシング剤によって血液を置換しなければならない。血液の置換に用いられるフラッシング剤の一例は、造影剤である。レノグラフィンと呼ばれるある種の造影剤は、ジアトリゾ酸メグルミン及びジアトリゾ酸ナトリウムの注射であり、時々使用される。したがって、OCTカテーテルの窓セクション120の材料は、OCTイメージングで最も一般的に使用される造影剤の波長及び屈折率を考慮して、選ばなければならない。そうでなければ、IVUSカテーテルと同様に、光学イメージング窓材料の屈折率が造影剤及び/又は組織の屈折率と十分に一致しない場合、イメージングアーチファクトが発生し、最適なイメージング及び診断を妨げるおそれがある。
【0113】
更に、マルチモダリティOCTイメージング(MMOCTイメージング)用に構成されたイメージングカテーテルでは、X線透視法によって軟部組織をイメージングする必要があることが多い。したがって、この場合でも、冠状血管のOCT-X線透視法マルチモダリティイメージング中に血液を置換するために、血液及び造影剤の粘度及び屈折率に厳密に一致する粘度及び屈折率が、最も一般的に使用される。
【0114】
OCTイメージング窓材料は、造影剤、血液及び血管組織の屈折率に厳密に適合する必要がある。一般的に使用される窓材料としては、TOPAS(登録商標)COC等の特定のグレードの環状コポリマー(COP)、特定のグレードのポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン、ウレタン、ポリカーボネート、PEBAX(登録商標)ブロックコポリマー、PMMA、ULTEM、OKP-4、及びZeonex(登録商標)と、プラスチック光学系に一般に使用される他のセミフレキシブル材料が挙げられる。繰り返しになるが、約1.40~1.60、好ましくは約1.47~1.53の屈折率は、血液、造影剤及び/又は体組織の屈折率と一致するので、アーチファクトのない画像を作成するのに役立ち得る。すなわち、少なくとも1つの実施形態によれば、窓セクション(120)は、造影剤、血液及び血管組織のうちの1つ以上の屈折率に実質的に一致するポリマー材料でできており、ポリマー材料は、約1.40から1.60の範囲、好ましくは1.47から1.53の範囲の屈折率を有する。医用イメージングカテーテルでは安全性が最も重要であるので、イメージング手順中にカテーテルが無傷のままであることを保証するには、引張ガイドラインを満たすカテーテルシース材料が最適である。
【0115】
特定のイメージングカテーテルは、自家蛍光や、特定の電磁波長による照射後に組織から放出される光、或いは、様々な組織を標的とするとともに既知の波長で蛍光を発する適用された蛍光ダイ又は蛍光剤の蛍光も検出する。これらのイメージングカテーテルシースは、それ自体が蛍光(組織の低レベルの蛍光の効率的な検出を妨げるおそれがある)を発しない材料で構成される必要がある。
【0116】
追従性及びナビゲーション性能に寄与するイメージングコアの特性は、具体的な用途によって決まる。回転コアを採用するカテーテルの場合、特定の設計上の考慮事項は、比較的低い横方向のイメージングコア剛性等のナビゲーション性能の向上に寄与するので、イメージングコアが窓セグメントの剛性を支配することはない。適切に設計されたイメージングコア特性は、優れたナビゲーション性能に貢献する。例えば、イメージングコアがシース剛性を支配しない場合、低い横方向/曲げ剛性を達成することができる。したがって、回転イメージングコアのハウジングの遠位にある短く硬い長さ部分は、厳しい蛇行でも窓セクションを拘束したりねじったりすることがない。イメージングコアには、1つ以上の放射線不透過性マーカが設けられることが多い。イメージングコア先端マーカは、イメージング面の位置を示し、駆動ケーブルの遠位端に取り付けられるので、イメージングコアの外形を増大又は追加せず、デバイスの全体的な外形を低く保つ。
【0117】
<近位部分140>
次に、カテーテルシースの各種セグメントの最適化された剛性と直径比の重要性について、詳しく説明する。カテーテルに最適化された特性と低摩擦コーティングにより、曲がりくねった生体構造に適合する適度な横方向の柔軟性を維持しながら、適度な押込み性(カラム強度)、押し潰し及び楕円化に対する耐性(フープ強度)、並びに曲がりくねった生体構造での容易なナビゲーションが可能となる。カテーテルが内外を移動する管腔内の蛇行進路と同様に、カテーテルシースは、各セグメントのニーズを満たすために、外形と剛性の両方で先細になっている。
【0118】
<カテーテルの例示のタイプ>
前述したように、曲げ弾性率は、カテーテルシャフトの直径に反比例して変化する。カテーテルシャフトの壁厚も、使用中にシースがねじれる可能性を低減するために、カテーテルの直径に追従する必要がある。経皮的冠動脈インターベンション(PCI)カテーテル等の冠動脈カテーテルの場合、カテーテルの非支持領域(イメージングコア先端を越えて窓ルーメンの遠位端に形成された隙間等)でのねじれを防止するには、約0.15~0.20の内径対壁厚の比が有利であろう。
【0119】
ニューロアクセスカテーテル等の小径カテーテルの場合、特定の検討事項を考慮する必要がある。例えば、頭蓋内アクセス(ICA)カテーテル等の小型カテーテルの場合、1Fr~1.6Fr(直径約0.0131~0.0197インチ)のオーダーの非常に小型の遠位端が好ましい。このサイズのカテーテルは、冠動脈カテーテルと同様に、外形と剛性の両方で先細になっている必要がある。良好な押込み性を達成するために、小型カテーテルは、カテーテルの壁内(特に中間シャフトセクション130)に編組又はジュート巻きされたワイヤによる機械的補強を含む、より硬い材料を使用する。中間シャフトセクション130は、外形に沿って剛性が漸減するので、外側外形と横方向剛性にステップがなく、シャフトの遠位端で中間シャフトセクションから窓セクションへの滑らかな剛性遷移がある。1つ以上の実施形態では、テーパ剛性は、シースセクション190の中間シャフトセクション壁内に封入されたらせん状溝付きハイポチューブを用いることによって、達成される。代替の実施形態では、遠位の窓セクション120の壁内のジュート巻き(コイル巻き)されたワイヤを用いて、耐破砕性を提供し、きついカーブでの楕円化を防ぎながら、壁厚と外形を最小限に抑えることができる。光と音は鋼等の金属を容易に通らないので、窓セクション120の金属補強は、イメージング用途では注意深く使用する必要がある。
【0120】
ICA用途のカテーテルは非常に繊細であり、アクセスを提供する血管は非常に曲がりくねっている傾向があるので、カテーテルは相対的な剛性を下げるために外形を小さくすることに大きく依存しており、外形が小さいほど、曲げ弾性率を低下させることなくそれ自体で剛性が低下するので、有効剛性は冠動脈カテーテルよりも低いが、比例して低くはない。より具体的には、頭蓋内アクセスの血管は冠動脈よりも小さく、繊細で曲がりくねっているので、ICAカテーテルの遠位端のRxセグメント110は、冠動脈カテーテルの対応するRxセグメントよりも更に柔らかく長い。したがって、ICAカテーテルは、曲がりくねった繊細な血管に適合して進むために、テーパ剛性と親水性コーティング等の低摩擦コーティングに更に大きく依存する。
【0121】
末梢での使用を目的としたカテーテル。末梢での使用を目的としたカテーテルは、一般に、PCI又はICAカテーテルの上記の例のいずれよりも大きくて硬い。末梢使用カテーテルは、一般に、より大きな血管にアクセスし、より大きな外形のガイドカテーテル(例えば8Fr)と、より大きなガイドワイヤ(例えば直径0.025又は0.035インチのガイドワイヤ)を利用して、所与のカテーテルを所定の位置に誘導する。このようなカテーテルは、PCI又はICAカテーテルのデュロメータ値と同様に、約63ショアD~72ショアDの硬度デュロメータの範囲にあるポリマーを用いることができる。しかしながら、末梢用カテーテルは壁が厚く、外形が大きいので、このようなカテーテルは、デュロメータ値が高い材料を使用しなくても、十分に横方向剛性を高めることができる。
【0122】
一般に、末梢カテーテルは冠動脈又は頭蓋内アクセスのカテーテルよりもはるかに大きな外形であるので、効果的に所定の位置に誘導するには、はるかに大きくて硬いガイドワイヤが必要となる。末梢の大きな血管には非常に多くの余分な空間があるので、このようなカテーテルにはRx構成さえ使用していないものもある。一部の用途では、末梢カテーテルは、むしろ、カテーテルの全長を走る非常に長いガイドワイヤルーメンを有する“オーバー・ザ・ワイヤ”構成のカテーテルを使用する場合がある。これにより、カテーテルの外形が大きくなるだけでなく、はるかに長いガイドワイヤが必要となり、ガイドワイヤとカテーテルを操作するために2人の操作者が必要になることもある。本開示は、長いカテーテルシースセクションと短いRxセグメントを有するカテーテルに着目しているので、オーバー・ザ・ワイヤ(OTW)カテーテルの構造を詳細に説明する必要はない。しかしながら、テーパ剛性、テーパデュロメータ値、並びにカテーテル直径対壁厚比を対象とする本開示の詳細は、OTWカテーテルにも非常に良好に適用できる可能性がある。
【0123】
末梢カテーテルは、Rxタイプのカテーテルとは異なり、トルク伝達性を有する必要がある場合がある。トルク伝達性は、Rx型カテーテルでは通常考慮されない特性である。しかしながら、本開示の様々な実施形態によれば、特に回転イメージングコアを備えるイメージングカテーテルでは、トルク伝達性(又はトルク伝達性の阻止)は重要な側面であり得る。編組及び/又はジュード巻き(コイル巻き)されたワイヤで補強され、場合によっては中間シャフト壁内のらせん溝付きハイポチューブで補強されたカテーテルを利用して、トルクを近位端から遠位端へ効率的に伝達し、曲がりくねった生体構造を通した優れたナビゲーションを容易にする。また、このような補強技術は、破砕を防ぎ、カテーテルの楕円化に抵抗するように機能する。これは、自由に動かなければならないシース内に閉塞具又は(例えばイメージングカテーテル用の)回転機構がある場合に、重要である。閉塞具(補強カニューレとも呼ばれる)は、着脱可能な内径(ID)支持具であり、薄壁カテーテルのIDを補強及び支持し、所望の関心部位に到達した後にカテーテルから完全に取り外され、薄壁構造を介して可能な最大の開放IDを提供する。
【0124】
マルチモダリティOCT(MMOCT)カテーテルの実施形態では、Rxセグメントの内径の中心線(又はルーメン軸)は、窓ルーメンの中心線からオフセットされており、Rxセグメントが摩擦抵抗をほとんど伴わずにガイドワイヤ上を自由にスライドすることを可能にする。また、Rxセグメントの中心線は、製造時に窓セグメントの中心線からわずかに角度を成す。しかしながら、この小さな角度は、Rxセグメントのデュロメータが柔らかいことが原因で、カテーテルがガイドカテーテル内にあり、かつ/又は、狭い血管内にあるときに、真っ直ぐになる。これにより、Rxセグメントの横方向剛性が容易になり、窓セグメントからRxセグメントへ(逆も同様)剛性がシームレスに遷移する。ガイドワイヤは横方向により硬く、ガイドワイヤとカテーテルの両方がルーメン内に拘束されるので、カテーテルは、ルーメン内を自由にスライドするために、曲がりくねった生体構造に容易に適合しなければならない。オフセットされた中心線と角度の付いたRx配置により、ガイドワイヤとイメージング窓セクションの間(Rxセグメントのすぐ近位のカテーテル部分)の接触量を減らすことにより、カテーテルとガイドワイヤ及び患者の管腔(生体構造)の間のこの自由な相対移動が可能となる。
【0125】
<イメージングシステム>
図7Aは、例示のカテーテルベースのイメージングシステム700を示す。
図7Bは、使用環境におけるカテーテル100の配置を示す。イメージングシステム700は、システムコンソール710及びカテーテル100を含む。患者インタフェースユニット(PIU)720は、ケーブル束719を用いて、カテーテル100をシステムコンソール710に接続する。システムコンソール710は、とりわけ、コンピュータカート702及び1つ以上の表示デバイス704を含む。システムコンソール710は、コンピュータシステム706を含む。カテーテル100は、例えば、カテーテルシース190の作業チャネル内に配置された光ファイバベースのイメージングコア200を含んでよい。カテーテルシース190は、その近位端で、ファイバコネクタ152及び1つ以上のアクセスポート151を含み得るカテーテルハンドル150を介して、PIU720に接続される。カテーテルハンドル150は、カテーテル100をPIU720に着脱可能に係合する。PIU720は、光ファイバ回転継手721及びユーザインタフェース722を含んでよい。
図7Bは、解剖学的管腔750内のRxセグメント110及び窓セクション120を示す。
図7Bに示されるように、ガイドワイヤ300は、実質的に摩擦なしに第2のルーメンLM2(ガイドワイヤルーメン)を通ることができ、第1のルーメンと第2のルーメンは、距離ΔLMだけオフセットされていると同時に、実質的に平行なままである。
【0126】
先の説明では、曲がりくねった生体構造を通る安全かつ効率的なカテーテルナビゲーションに望ましい又は必要な、カテーテルシース190とラピッドエクスチェンジセグメント110の具体的な組合わせを開示した。そのカテーテル属性は、冠動脈内カテーテルや頭蓋内カテーテル、末梢カテーテル、並びに全てのRx設計カテーテル等の、一般のカテーテルシースやイメージングカテーテルシース等を対象とする。
【0127】
本明細書に記載のカテーテルの利点の一部は、この属性と設計特徴の組合わせにより、現在市販されている冠動脈イメージングカテーテルでは通常アクセスできない冠動脈血管系の蛇行の一例である回旋動脈等の曲がりくねった生体構造にうまくナビゲートできるカテーテルが作製されることである。他の利点としては、中間シャフトセクションの近位部分の実質的な剛性と硬い感触によってもたらされる使いやすさと迅速なナビゲーションが挙げられる。これにより、関心部位への迅速な導入と、従来のカテーテル設計で観察されたようなねじれによってカテーテルが損傷しないという確信が得られる。
【0128】
ガイドワイヤルーメンの軸は、シースの軸からのオフセット距離だけオフセットされ、シースの軸に関して角度を成している。このオフセット距離は、いくつかの理由から、ガイドカテーテル及び/又は患者の生体構造(冠状血管等)内に配置されている間にガイドワイヤがシースに適合するように曲がる必要性を減らすことによって、ガイドワイヤ追従を強化する。従来、ガイドワイヤの剛性は、カテーテルアセンブリの横方向硬さの大部分を占めていた。対称的に、本開示によれば、ガイドワイヤの比較的直線的な経路は、Rxセグメントを通り、出口ポートから出るように設けられる。ガイドカテーテルルーメンは、2つのデバイス(カテーテルとガイドワイヤ)を小さな空間にまとめて拘束するので、ガイドワイヤとシースの両方が狭い空間内で平行になるように、ガイドワイヤルーメンの中心線とシースの窓中心線の間にオフセットを設ける必要があり、これにより、シースは最小限の摩擦抵抗でガイドワイヤ上を自由にスライドすることができる。本開示では、シースの軸とガイドワイヤルーメンの軸との間のオフセット距離は、ガイドカテーテル及び/又は解剖学的管腔(冠動脈等)内に拘束されているRxセグメントを通過するときにガイドワイヤがほぼ真っ直ぐであり続けるのにちょうど十分である。直径0.014インチの例示の冠動脈ガイドワイヤを考えると、直径0.031インチの窓外形を有する本開示のカテーテルでは、ガイドワイヤ上で十分な摩擦のないナビゲーションを提供するには、第1のルーメンと第2のルーメンの軸間のオフセット距離を約0.024~0.026インチの範囲にする必要がある。
【0129】
Rxセクション110は、シースセクション(つまり、シースのうちRxセグメントに最も近い部分である窓セクション)の中心線に関して角度を成している。角度付きのRxセグメントの利点は、製造プロセスと、得られたカテーテルの使用の両方で感じられる。製造プロセスでは、その角度付き接合部を備えたRxセグメントは、成形ステップで形成され、この角度によって金型の加工が容易になる。使用時では、窓セクションとRxセクションの柔軟性が調整されているので、角度付きRxセグメント及び/又はシースは、カテーテルが動作しているガイドカテーテル及び/又は解剖学的管腔の内径によって真っ直ぐになる。
【0130】
製造時には、Rxセグメントが窓セクションに溶融接着されるときに、ガイドカテーテルがシース/ガイドワイヤアセンブリを拘束するのと同様に、熱収縮チューブの拘束により、角度がわずかに小さくなる場合がある。Rxセグメンがガイドカテーテルに挿入されてから体腔を通して誘導されるとき、Rxセグメントと窓セクションの間の角度は、ガイドカテーテル内径内の拘束によって真っ直ぐになる。このたわみは、Rxセグメントと窓セクションの間のオフセットを強化する傾向があり、Rxセグメント及び窓セグメントに対するガイドワイヤの摩擦のない動きの改善に寄与する。
【0131】
図8Aは、カテーテルシース190との組立て前の遠位先端112のないラピッドエクスチェンジセクション110の例示の実施形態を示す。
図8Bは、遠位先端112との組立て後であり、かつカテーテルシース190との組立て前のラピッドエクスチェンジセクション110の例示の実施形態を示す。ラピッドエクスチェンジセクション110は、押出成形又は射出成形又は積層造形(3D印刷)等の既知のプロセスによって作製することができる。
図8Aの例示の実施形態では、ラピッドエクスチェンジセクション110は、入口ポート118と、出口ポート118と、近位スタブ115aを含むジョイント115の形態の接続構造とを含む。
図8Bの例示の実施形態では、ラピッドエクスチェンジセクション110は、入口ポート118と、出口ポート118と、遠位先端112と、1つ以上の放射線不透過性マーカバンド113と、ジョイント115及び近位スタブ115aによって形成される接続構造とを含む。成形されたRxセグメントの近位スタブ115aは、管状シースの開放遠位端に挿入され、その中で溶融接着される。少なくとも一部の用途では、
図8Aに示されるRxセグメントをカテーテルシース190に組み立てることによってカテーテルを使用することができるが、他の実施形態では、
図8Bに示されるRxセグメントは、カテーテルシース190と組み立てられて、モノリシック円筒シャフトを形成する。Rxセクション110の取付けスタブ115aが窓ルーメン内に入り、その中でカテーテルシース190の遠位端に溶融接着されると、カテーテル全体は、互いに関してオフセットされ角度を成す第1のルーメンLM1及び第2のルーメンLM2を有するモノリシックシャフトとなる。
【0132】
先に述べたように、製造(組立て)中、開放ルーメンLM1の小さな空間のみが支持されないままになり、手順の前にイメージングコアを収容できるようになる。具体的には、イメージングコア200は、第1のルーメン内に小さな非支持エリア220のみを形成するように、第1のルーメンの遠位端から所定の距離219をおいて第1のルーメンLM1内に配置される。しかしながら、第1のルーメンLM1の遠位端は、完全に封止され、曲がったり液体にアクセスしたりすることはない。一実施形態では、窓セクションのうちイメージングコアを含まない長さは、10mm未満である。他の実施形態では、窓セクションのうちイメージングコアを含まない長さは5mm未満であり、或いは、窓セクションのうちイメージングコアを含まない長さは、2mm未満かつ1mm超とすることができる。
【0133】
このタイプの従来のカテーテルは、一般に、生理食塩水その他の流体で満たされるように設計される。したがって、当該タイプの従来のカテーテルは、空気や生理食塩水等の流体を排出するために小さな遠位ルーメンを有する必要があり、また、ルアーサイドアームフィッティングと遠位ベアリングも有する必要がある。このような要素により、カテーテルの全体直径が増大する。本開示の少なくとも1つの実施形態によれば、カテーテルは空気で満たされ、通気孔がなく(出口や開口がない)、いくつかの図に示されるように、ベアリングやルアーフィッティングがない。したがって、得られるカテーテルは、より手頃なコストで全体的に小さな直径をもつことができる。更に、本明細書に開示されるカテーテルは、十分な横方向の柔軟性と、最適な押込み性と、耐破砕性を有することができるので、カテーテルは、より良好により一貫して追従し、直径の変動が少なく、発生するNURDが少なく、最終的にはコストが低くなる。したがって、本明細書に開示されるカテーテルの1つ以上の実施形態により、カテーテルを液体で満たし、理想的なイメージングを妨げ得る液体内に存在する可能性のある気泡を除去するという、望ましくない臨床ステップが省略される。
【0134】
前述の開示は、冠動脈内カテーテル、頭蓋内カテーテル、末梢カテーテル、並びに全てのRx設計カテーテルのための新規かつ有利な特徴を提示する。(1)カテーテルルーメンの非支持領域でのギャップ制御と組み合せた曲げ弾性率及び直径対壁厚比、(2)テーパ剛性プロファイルとオフセット/角度をもつRxセグメントを備えたシースセクションのカテーテル構成、(3)カテーテル材料、コーティング及び摩擦低減設計等の、このようなカテーテルのほとんどに共通する3つの主な特徴が開示されている。その他の有利な特徴には、以下が含まれるが、これらに限定されない。
【0135】
曲げ弾性率:曲がりくねった生体構造のきついカーブに適合するのに十分な横方向の柔軟性と、内径(ID)のねじれや押し潰しに抵抗するのに適度なカラム強度をもつのに十分な軸方向の硬さ。
【0136】
窓セクションの内径と壁厚の関係-内径に対する壁厚のアスペクト比(0.15~0.20に保持される)は、ねじれのリスクを最小限に抑えるために重要であると同時に、硬度デュロメータが窓セグメントにおいて約72ショアD(曲げ弾性率≦500MPa)に設定されている場合、適度な耐破砕性とカラム強度をもたらす。
【0137】
滑らかな遠位先端:非外傷性の遠位先端は、カテーテルが血管形成術の結果として繊細な動脈及び/又は破壊されたプラークを損傷しないことを保証するために、重要である。Rxセグメントの遠位先端は柔らかく、薄壁に向かって先細になっており、ステントストラットや石灰化プラークに引っ掛からないように丸みを帯びたポートを有し、また、ガイドワイヤルーメンの内径は、実質的に摩擦のない動きに十分な間隙を伴ってガイドワイヤを抱える。これらの機能は全て、鋭い縁やばりのない非外傷性の遠位先端につながる。
【0138】
同心性:特に窓セグメントでは、窓材料が入射角を変化させ、窓を通る光のビーム特性に影響を与えるので、同心性が重要である。壁厚の大きな変動は、測定精度とシステム較正に悪影響を与えるおそれがある。
【0139】
ギャップ距離:イメージングコアの組立てには、Rxセグメントの近位でイメージングコアの遠位にある非支持領域が必要となる。イメージングコアの遠位端とイメージング窓ルーメンの遠位端との間のギャップを最小限に抑えることで、支持されていないギャップ領域でのねじれやヒンジのリスクを最小限に抑えることができる。
【0140】
Rxセグメント中心線と窓セクション中心線の間の定められた角度:Rxセグメント中心線とシース中心線の間の角度により、ガイドワイヤとシースの間の摩擦が最小限に抑えられ、ガイドワイヤがガイドワイヤルーメン内を自由にスライドできるようになり、優れたナビゲーション特性と関心部位への迅速な挿入が容易になる。
【0141】
窓セグメントからのRx部分のオフセット:Rxセグメントと窓セクションの中心線は、ガイドワイヤとシースの間の摩擦抵抗を最小限に抑えるために、ガイドワイヤ(GW)に直線進路を提供するために必要な距離だけ互いにオフセットされている。これにより、ガイドワイヤがGWルーメン内を自由にスライドできるようになり、優れたナビゲーション特性と関心部位への迅速な挿入が容易になる。
【0142】
窓部分の剛性:約70ショアD~72ショアDの窓材料のデュロメータは、0.15~0.20(好ましくは0.17)の壁厚/内径アスペクト比と合わさって、適度のカラム強度及びねじれ耐性を提供して、使いやすさと、優れたナビゲーション特性と、適度な引張強度を促進して、カテーテルの設計が安全であり、望ましくない故障モードにさらされないことを保証する。
【0143】
Rxセクションの剛性:Rxセグメントの剛性は、窓セグメントの剛性に比較的近いものの、より柔らかく、優れたナビゲーション特性と、適度な引張強度と、柔軟性と、優れたねじれ耐性とを実現する。
【0144】
1つ以上の実施形態によれば、他の特徴は、遠位端から近位端に向かって、エクスチェンジ先端と、エクスチェンジ部分と、窓部分と、遠位シャフト部分と、近位シャフト部分とを有するカテーテル管を備えるカテーテルを含むが、これに限定されない。窓部分は、およそ0.0310”の外径(OD)と、およそ0.0040”の壁厚とを有する。窓部分は、およそ500MPaの曲げ弾性率と、72ショアDデュロメータの硬度を有する。エクスチェンジ部分は、およそ0.0300”のODと、およそ0.0070”の壁厚を有し、エクスチェンジ部分は、およそ285MPaの曲げ弾性率と、64ショアDの硬度デュロメータを有する。エクスチェンジ先端は、エクスチェンジ部分の一部であり、およそ0.030”からおよそ0.022”まで漸減するODを有する。エクスチェンジ先端は、およそ77MPaの曲げ弾性率と、24ショアDの硬度デュロメータを有する。
【0145】
1つ以上の実施形態によれば、他の特徴は、遠位端から近位端に向かってRxセグメントと、窓セグメント及びカテーテルシャフトセグメントを備えるカテーテルを含むが、これに限定されない。Rxセグメントは、非外傷性先端及びエクスチェンジ体部分から成る。窓セグメントは、側視イメージング用の窓を有する。カテーテルシャフトセグメントは、遠位シャフト部分、中間シャフト部分及び近位シャフト部分から成る。中間シャフト部分は、高い近位剛性と低い遠位剛性をもち、遠位シャフト部分への急激な剛性遷移がない。非外傷性先端は、ガイドワイヤ用の入口ポートをその遠位端に有し、入口ポートは、ガイドワイヤを抱えるために丸みを帯びた滑らかで丸いエッジを有する。エクスチェンジ体部分は、その近位側で非外傷性先端に一体的に取り付けられ、ガイドワイヤ用の出口ポートを有し、出口ポートは、ガイドワイヤを抱えるために丸みを帯びた滑らかで丸いエッジを有する。窓セグメントは、外径(OD)及び壁厚を有し、およそ0.0310”のOD/0.0040”の壁厚≧およそ500MPaの曲げ弾性率であり、およそ72ショアDのデュロメータと、およそ0.075mN-mの剛性を有する。Rxセグメントのエクスチェンジ体部分は、およそ0.0300”のOD/0.0070”の壁厚≧およそ285MPaの曲げ弾性率であり、およそ64ショアDのデュロメータを有する。Rxセグメントの非外傷性先端は、およそ0.030”からおよそ0.022”まで先細になっており、およそ77MPaの曲げ弾性率と、42ショアDのデュロメータを有する。
【0146】
1つ以上の実施形態によれば、他の特徴は、非支持領域が第1のルーメンの遠位端に形成されるように、近位部分と、中間シャフト部分と、少なくとも部分的に窓部分とを介して第1のルーメン内に配置されたイメージングコア、を更に備えるカテーテルを含むが、これに限定されない。中間シャフト部分はハイポチューブ体を備え、ハイポチューブ体は、ハイポチューブ体の内表面上の第1のポリマー層と、ハイポチューブ体の外表面上の第2のポリマー層とに封入されたらせん状スロットを有し、らせん状スロットの切込みパターンは、ハイポチューブ体の近位部分での第1のピッチから遠位端又はその付近での第2のピッチへ徐々に変化する可変ピッチを有する、カテーテル。シースの剛性は、その近位部分では約4.7mN-mであり、剛性は、その遠位端での約0.18mN-mまで漸減する、カテーテル。第1のポリマー層及び第2のポリマー層に封入されたハイポチューブ体は、3.0~6.0Frの範囲の直径プロファイルを備えたカテーテル体を形成し、ラピッドエクスチェンジ部分は、1.0Fr~1.6Frの範囲、又は約0.0131~0.0197インチの範囲の直径プロファイルを有する、カテーテル。
【0147】
1つ以上の実施形態によれば、他の特徴を含むが、これに限定されない:ガイドワイヤルーメンの長手方向軸とツールルーメンの長手方向軸が互いに関して約2~9度の角度で配置されるように、管状シースとエクスチェンジセグメントが嵌合される、カテーテル。管状シースの遠位部分がおよそ0.0310インチの外径と、およそ0.0040インチの壁厚を有し、管状シースの遠位部分がおよそ500MPaの曲げ弾性率と、約72ショアDの硬度デュロメータを有する、カテーテル。エクスチェンジセグメントがおよそ0.0300インチの外径と、およそ0.0070インチの壁厚を有し、エクスチェンジセグメントがおよそ285MPaの曲げ弾性率と、約64ショアDの硬度デュロメータを有する、カテーテル。エクスチェンジセグメントがその近位端でおよそ0.030インチの外径を有し、外径がその遠位端においておよそ0.022インチまで漸減する、カテーテル。エクスチェンジセグメントは遠位先端を含み、遠位先端は、およそ77MPaの曲げ弾性率と、約42ショアDの硬度デュロメータとを有し、遠位先端は、近位端から遠位端への方向に約0.030インチから約0.022インチまで先細になる外径を有する、カテーテル。
【0148】
説明に言及する際、開示する例を完全に理解できるようするために、具体的な詳細が記載される。他の例では、本開示を不必要に長くしないように、周知の方法、手順、コンポーネント及び回路は、詳細には説明されない。本明細書において別段の定義がされない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の広さは、本明細書によって限定されるのではなく、むしろ、採用される特許請求の範囲の用語の平易な意味によって限定される。
【0149】
図面に示された例示の実施形態を説明する際、分かりやすくするために、具体的な専門用語が使用される。しかしながら、本特許明細書の開示は、そのように選択された具体的な専門用語に限定されることを意図するものではなく、当然ながら、具体的な要素の各々は、同様に機能する技術的な均等物を全て含む。
【0150】
本開示は、例示の実施形態を参照して説明されたが、当然のことながら、本開示は、開示された例示の実施形態に限定されない。以下の特許請求の範囲は、そのような変更並びに均等の構造及び機能を全て包含するように、最も広い解釈が与えられるべきである。