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特許7541974PLK1標的のリン酸化状態及びPLK1阻害剤を用いた癌の治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】PLK1標的のリン酸化状態及びPLK1阻害剤を用いた癌の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240822BHJP
   C12N 9/99 20060101ALI20240822BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20240822BHJP
   C12Q 1/48 20060101ALI20240822BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20240822BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61K45/00
C12N9/99
C12Q1/06
C12Q1/48 Z
C12Q1/686 Z
G01N33/574 A
A61P35/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021510704
(86)(22)【出願日】2019-08-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 US2019048044
(87)【国際公開番号】W WO2020046767
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】62/722,934
(32)【優先日】2018-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520305502
【氏名又は名称】カーディフ・オンコロジー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CARDIFF ONCOLOGY,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ライディンガー マヤ
(72)【発明者】
【氏名】アダムス トーマス エイチ
(72)【発明者】
【氏名】アーランダー マーク
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/066799(WO,A1)
【文献】Cancer Res ,2018年07月01日,78 (13_Supplenment),Abstract 4833
【文献】Expert Opinion on Investigational Drugs,2012年,21(8),1069-1074
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00
G01N 33/574
C12Q 1/48
C12N 9/99
C12Q 1/06
C12Q 1/686
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポロ様キナーゼ1(PLK1)阻害剤を含む、患者の癌を処置する方法において使用するための医薬品であって、
前記方法が、
(1)(a)(i)前記患者又は(ii)前記患者の癌試料の前記PLK1阻害剤を用いた処置前、及び
(b)前記処置後
に、PLK1標的のリン酸化を測定すること、その後
(2)(a)前記処置前の前記PLK1標的のリン酸化を、(b)前記処置後の前記PLK1標的のリン酸化と比較すること、
を含み、
(i) 前記PLK1標的のリン酸化の測定が翻訳制御腫瘍タンパク質(TCTP)のリン酸化の測定であるか、又は、(ii) 前記PLK1標的のリン酸化が免疫化学的に測定され、 前記PLK1阻害剤がオンバンセルチブ、BI2536、ボラセルチブ(BI6727)、GSK461364、HMN-176、HMN-214、AZD1775、CYC140、リゴセルチブ(ON-01910)、MLN0905、TKM-080301、TAK-960又はRo3280であり、
前記PLK1標的がTRF1、Mre11、PTP1B、Orc2、Hbo1、BubR1、WDR62、IRS2、LSD1、カスパーゼ-8、NudC、PTEN、BORA、BUB1B/BUBR1、CCNB1、CDC25C、CEP55、ECT2、ERCC6L、FBXO5/EMI1、FOXM1、KIF20A/MKLP2、CENPU、NEDD1、NINL、NPM1、NUDC、PKMYT1/MYT1、KIZ、PPP1R12A/MYPT1、PRC1、RACGAP1/CYK4、SGO1、STAG2/SA2、TEX14、TOPORS、p73/TP73、WEE1、HNRNPU、又は翻訳制御腫瘍タンパク質(TCTP)であ及び
前記方法において、(a)前記処置前の前記PLK1標的のリン酸化と比較して、(b)前記処置後の前記PLK1標的のリン酸化が低下している場合、前記患者が前記PLK1阻害剤で処置され、かつ
前記方法において、(a)前記処置前の前記PLK1標的のリン酸化と比較して、(b)前記処置後の前記PLK1標的のリン酸化が低下していない場合、前記患者が前記PLK1阻害剤で処置されない、
前記医薬品。
【請求項2】
前記方法において、(i) 前記PLK1標的のリン酸化の測定が翻訳制御腫瘍タンパク質(TCTP)のリン酸化により測定される場合記TCTPのリン酸化が免疫PCRによって測定されるか又はTCTPのセリン46及び/又はスレオニン65のリン酸化が測定され
又は、
前記方法において、(ii) 前記PLK1標的のリン酸化が免疫化学的に測定される場合、前記免疫化学的測定がウェスタンブロットまたは固相免疫法によるものであるか又は(b)前記処置後の前記PLK1標的のリン酸化が処置の少なくとも2時間後、又は3時間後に決定されるか又は(b)前記処置後の前記PLK1標的のリン酸化が、(a)前記処置前の前記PLK1標的のリン酸化に対し、少なくとも35%、または少なくとも50%低下すると、その処置が有効であることを示、請求項1に記載の医薬品。
【請求項3】
前記方法において、前記患者、又は前記患者から採取した癌試料が前記PLK1阻害剤で処置され、さらに任意に前記癌試料が血液又は組織の試料であってもよい、請求項1に記載の医薬品。
【請求項4】
前記方法において、前記PLK1標的が前記患者のリンパ、骨髄又は血液の試料に含まれるか、前記癌の細胞中に含まれるか、又は前記患者の血液において無細胞である、
請求項1に記載の医薬品。
【請求項5】
前記方法において、前記癌が卵巣癌、乳癌、結腸癌、肺癌、膵癌、前立腺癌、皮膚癌、扁平上皮癌腫、リンパ系の造血器腫瘍、骨髄系の造血器腫瘍、中枢又は末梢神経系腫瘍、急性骨髄性白血病、B細胞リンパ腫、副腎皮質癌、食道癌、胃癌、骨髄異形成症候群、又は頭頚部癌であり、任意に前記癌が急性骨髄性白血病(AML)、B細胞リンパ腫であってもよく、又は転移性腫瘍に由来するものであってもよく、さらに任意に前記癌がAMLであってもよい、請求項1に記載の医薬品。
【請求項6】
前記方法において、前記患者が、前記癌に対する前記PLK1阻害剤の有効性試験における参加候補であり、
(b)前記処置後の前記PLK1標的のリン酸化が、(a)前記処置前の前記PLK1標的のリン酸化に対し、少なくとも35%又は少なくとも50%低下しない場合、前記患者は前記試験に参加する対象ではなく、ここで、前記PLK1標的はTCTPである、
請求項1からのいずれか一項に記載の医薬品。
【請求項7】
前記方法において、(b)前記処置後の前記TCTPのリン酸化が、(a)前記処置前の前記TCTPのリン酸化に対し、少なくとも35%又は少なくとも50%低下する場合に限り、前記患者は前記PLK1阻害剤で治療的に処置される、請求項1からのいずれか一項に記載の医薬品。
【請求項8】
前記方法において、前記PLK1阻害剤で治療的に処置される前記患者が、シスプラチン、シタラビン、デシタビン、ドキソルビシン、ゲムシタビン、パクリタキセル、SN38、ソラフェニブ、ベルケイド、アビラテロン、イブルチニブ、アカラブルチニブ、アザシチジン、ベネトクラクス、CPT11、5FU、ベバシズマブ、ボルテゾミブ、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、又はこれらの組合せでも処置され、
又は、前記方法において、前記患者が前記PLK1阻害剤で処置されない場合、前記患者がシスプラチン、シタラビン、デシタビン、ドキソルビシン、ゲムシタビン、パクリタキセル、SN38、ソラフェニブ、ベルケイド、アビラテロン、イブルチニブ、アカラブルチニブ、アザシチジン、ベネトクラクス、CPT11、5FU、ベバシズマブ、ボルテゾミブ、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、又はこれらの組合せで処置され、
又は、前記方法において、前記患者が前記PLK1阻害剤で処置されるかどうかに関わらず、前記患者がシスプラチン、シタラビン、デシタビン、ドキソルビシン、ゲムシタビン、パクリタキセル、SN38、ソラフェニブ、ベルケイド、アビラテロン、イブルチニブ、アカラブルチニブ、アザシチジン、ベネトクラクス、CPT11、5FU、ベバシズマブ、ボルテゾミブ、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、又はこれらの組合せで処置される、
請求項に記載の医薬品。
【請求項9】
前記方法において、前記患者が急性骨髄性白血病であり、任意に前記患者がシタラビン、アザシチジン、ベネトクラス、デシタビン、FLT3阻害剤、又はこれらの組合せで処置されていてもよく、
又は、前記方法において、前記患者が非ホジキンリンパ腫であり、任意に前記患者がヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、イブルチニブ、アカラブルチニブ、ベネトクラス、又はこれらの組合せで処置されていてもよく、
又は、前記方法において、前記患者が前立腺癌であり、任意に前記患者がアビラテロン、抗アンドロゲン、又はこれらの組合せで処置されていてもよく、さらに任意に、前記前立腺癌は去勢抵抗性であり、前記患者がアビラテロンで処置されていてもよく、
又は、前記方法において、前記癌が腺癌であり、前記腺癌は任意に膵、乳、又は結腸腺癌であってもよく、さらに任意に患者はパクリタキセル、ソラフェニブ、ボルテゾミブ、シスプラチン、SN38、CPT11、5FU、ベバシズマブ、ゲムシタビンまたはそれらの組み合わせで処置されていてもよく、
又は、前記方法において、前記癌が前骨髄球性白血病であり、前記患者は任意にパクリタキセル、ドキソルビシン、シタラビン、又はこれらの組合せで処置されていてもよく、
又は、前記方法において、前記癌が多発性骨髄腫であり、前記患者は任意にカルフィルゾミブ、イキサゾミブ、ボルテゾミブ、サリドマイド、レナリドミド、ポマイドミド、コルチコステロイド、又はこれらの組合せで処置されていてもよく、
又は、前記方法において、前記患者が骨髄異形成症候群であり、任意に前記患者がアザシチジン、デシタビン、又はこれらの組合せで処置されていてもよい、請求項に記載の医薬品。
【請求項10】
前記方法において、
前記癌が急性骨髄性白血病(AML)であり、
前記PLK1標的が翻訳制御腫瘍タンパク質(TCTP)であり、
前記患者が前記PLK1阻害剤で処置されており、かつ
前記TCTPのリン酸化が前記処置前及び処置後に採取される患者の血液試料で測定され、任意にTCTPのセリン46のリン酸化が測定されてもよく、任意に前記TCTPのリン酸化が免疫化学的に測定されてもよく、さらに任意に前記免疫化学的測定がウェスタンブロット法、又は免疫PCRによるものであってもよい、
請求項1に記載の医薬品。
【請求項11】
前記方法において、
前記患者がシタラビン、アザシチジン、ベネトクラクス、デシタビン、FLT3阻害剤、又はこれらの組合せで処置されており、
(b)前記処置後の前記TCTPのリン酸化が、(a)前記処置前の前記TCTPのリン酸化に対して、少なくとも35%低下する場合に限り、前記患者が前記PLK1阻害剤で処置される、
請求項10に記載の医薬品。
【請求項12】
前記PLK1阻害剤がオンバンセルチブである、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬品。
【請求項13】
(1)(a)患者の癌試料のPLK1阻害剤を用いた処置前、及び
(b)前記処置後
に、PLK1標的のリン酸化を測定すること、その後
(2)(a)前記処置前の前記PLK1標的のリン酸化を、(b)前記処置後の前記PLK1標的のリン酸化と比較すること、
により、前記患者の癌試料におけるポロ様キナーゼ1(PLK1)活性を決定する方法であって、
(i) 前記PLK1標的のリン酸化の測定が翻訳制御腫瘍タンパク質(TCTP)のリン酸化の測定であるか、又は、(ii) 前記PLK1標的のリン酸化が免疫化学的に測定され、 前記PLK1阻害剤が、オンバンセルチブ、BI2536、ボラセルチブ(BI6727)、GSK461364、HMN-176、HMN-214、AZD1775、CYC140、リゴセルチブ(ON-01910)、MLN0905、TKM-080301、TAK-960又はRo3280であり、
前記PLK1標的がTRF1、Mre11、PTP1B、Orc2、Hbo1、BubR1、WDR62、IRS2、LSD1、カスパーゼ-8、NudC、PTEN、BORA、BUB1B/BUBR1、CCNB1、CDC25C、CEP55、ECT2、ERCC6L、FBXO5/EMI1、FOXM1、KIF20A/MKLP2、CENPU、NEDD1、NINL、NPM1、NUDC、PKMYT1/MYT1、KIZ、PPP1R12A/MYPT1、PRC1、RACGAP1/CYK4、SGO1、STAG2/SA2、TEX14、TOPORS、p73/TP73、WEE1、HNRNPU、又は翻訳制御腫瘍タンパク質(TCTP)である、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年8月26日に出願された米国仮出願第62/722,934号の利益を主張するものであり、その全体が参照によりここに組み入れられたものとする。
【0002】
本願は、概して癌治療に関する。より具体的には、本願は、ポロ様キナーゼ1(PLK1)阻害剤に対する癌の反応性を評価する方法を提供し、これは癌患者におけるPLK1標的のリン酸化を阻害するPLK1阻害剤の能力を決定することにより行う。
【背景技術】
【0003】
ポロ様キナーゼ1
ポロ様キナーゼ1(PLK1)は、セリン/スレオニンプロテインキナーゼファミリーの5つのメンバーのうち最もよく特徴づけられたメンバーであり、有糸分裂による細胞の発達を強く促進する。PLK1は、細胞周期の細胞分裂(M)期におけるいくつかの重要な機能を担い、中心体成熟及び紡錘体形成の調節、染色体腕からコヒーシンの除去、後期促進複合体/サイクロソーム(APC/C)阻害因子の不活化、並びに有糸分裂停止及び細胞質分裂の調節が挙げられる(Stebhardt、2010年)。中心体機能及び双極紡錘体の形成において重要な役割を担う。p53ファミリーメンバーの負の調節因子としても作用し、ユビキチン化、その後のp53/TP53の分解、p73/TP73媒介プロアポトーシス機能の阻害、及びオーロラキナーゼAの補因子であるboraのリン酸化/分解を引き起こす。有糸分裂の様々な段階において、PLK1は中心体、動原体及び中心紡錘体に限局する。PLK1は、急性骨髄性白血病(AML)、乳、卵巣、非小細胞肺、結腸、頭頚部、子宮内膜及び食道癌腫を含む様々なヒトの癌に異常に過剰発現し、細胞増殖及び予後不良と相関関係がある(Degenhardt、2010年;Liuら、2017年;Cancer Genome Atlas)。
【0004】
オンバンセルチブ
【化1】
オンバンセルチブ
オンバンセルチブ(PCM-075、NMS-1286937、NMS-937、米国特許第8,927,530号明細書の「式(I)の化合物」としても知られる;IUPAC名1-(2-ヒドロキシエチル)-8-{[5-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(トリフルオロメトキシ)フェニル]アミノ}-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミド)は、経口経路により投与される最初のPLK1特異的ATP競合阻害剤であり、異なる前臨床モデルにおいて証明された抗腫瘍活性に対する臨床試験が行われた(Beriaら、2011年;Hartsink-Segersら、2013年;Seroら、2014年;Valsasinaら、2012年;Casolaroら、2013年)。本化合物は増殖アッセイで高い有効性を示し、固形並びに血液腫瘍の多くの細胞株で低ナノモル活性を有する。オンバンセルチブは、癌細胞株において有糸分裂細胞周期停止、続いてアポトーシスを強力に引き起こし、経口投与後のマウスにおいて良好な耐量での明確なPLK1関連作用機序により異種移植腫瘍増殖を阻害する。また、オンバンセルチブはイリノテカンなど、認可された細胞毒性薬との併用療法で活性を示し、各単独の薬剤と比較して、HT29ヒト結腸腺癌異種移植片における腫瘍退縮を増強させる(Valsasinaら、2012年;米国特許第8,927,530号明細書も参照のこと)。また、AMLの播種モデルにおいて、シタラビンとの併用療法により動物の生存期間が延長される(Valsasinaら、2012年;Casolaroら、2013年)。オンバンセルチブは、齧歯類及び非齧歯類において好意的な薬理パラメータ及び良好な経口バイオアベイラビリティを有し、また様々な投与計画により異なる非臨床モデルにおいて証明された抗腫瘍活性を有する。これにより高度に柔軟な投薬スケジュール、臨床環境における保証調査(warranting investigation)を潜在的に提供することができる。オンバンセルチブは、従来のPLK阻害剤に対していくつかの利点を有し、PLK1のみへの高い選択性、経口アベイラビリティ及び約24時間の半減期が挙げられる。
米国の単一の研究施設でオンバンセルチブを用いた第1相用量漸増試験が、進行性/転移性固形腫瘍を有する成人対象で実施された。この研究の第1の目的は、進行性/転移性固形腫瘍を有する成人対象におけるオンバンセルチブの最大耐量(MTD)を決定することであった。この研究の第2の目的は、抗腫瘍活性を明らかにすることであった。この研究において、第2相での推奨用量を24mg/m2とすると、評価可能患者16名中5名が安定であった。
上記に基づくと、オンバンセルチブ又は他のPLK1阻害剤にレスポンスを示す可能性がより大きな被験者のサブグループを限定する方法が必要である。本発明では、PLK1阻害剤を用いてPLK1標的のリン酸化を阻害する程度を決定することで癌に対するPLK1阻害剤の有効性を予測する方法を提供することにより、この必要性が満たされる。
【発明の概要】
【0005】
患者の癌におけるポロ様キナーゼ1(PLK1)活性を決定することを含む方法を提供し、これは(a)(i)患者又は(ii)患者の癌試料をPLK1阻害剤で処置する前、及び(b)処置した後に、PLK1標的のリン酸化を測定することにより行う。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A図1Aは、オンバンセルチブ(PCM-075)及びシタラビン又はデシタビンで処置された患者3名の血液中の白血病細胞を示すグラフである。
図1B図1Bは、オンバンセルチブで処置された患者3名の骨髄中の白血病細胞を示すグラフである。
図2A図2Aは、オンバンセルチブ(PCM-075)により阻害されるTCTPのPLK1リン酸化の説明である。
図2B図2Bは、オンバンセルチブ(PCM-075)により阻害されるTCTPのPLK1リン酸化のウェスタンブロットを示す。
図2C図2Cは、AML細胞株におけるTCTPのPLK1リン酸化をオンバンセルチブ(PCM-075)で阻害する試験のウェスタンブロットを示す。
図3A図3Aは、オンバンセルチブ(PCM-075)及びLDAC(シタラビン)で処置された患者3名の血液中の白血病細胞を示すグラフである。
図3B図3Bは、図3Aで特定された患者をオンバンセルチブ(PCM-075)で処置する前後のTCTPに対するPLK1リン酸化のウェスタンブロットを示す。
図4A図4Aは、オンバンセルチブ(PCM-075)及びデシタビンで処置された患者3名の血液中の白血病細胞を示すグラフである。
図4B図4Bは、図4Aで特定された患者をオンバンセルチブ(PCM-075)で処置する前後のTCTPに対するPLK1リン酸化のウェスタンブロットを示す。
図5図5は、図3及び4で特定された患者をオンバンセルチブ(PCM-075)で処置する前後のTCTPに対するPLK1リン酸化のウェスタンブロット及びウェスタンブロットを定量したグラフを示す。
図6図6は、1用量(D1)又は4用量(D5)のオンバンセルチブ(PCM-075)で患者を処置する前後のTCTPに対するPLK1リン酸化のウェスタンブロットを示す。
図7図7は、オンバンセルチブでレスポンダ及びノンレスポンダを処置する前後のpTCTP%データのグラフである。
図8図8は、1用量のオンバンセルチブで患者を処置する前後のTCTPに対するPLK1リン酸化のウェスタンブロットを示し、処置前に対する処置後のpTCTP%の変化を示すグラフである。
図9A図9Aは、TCTPリン酸化がオンバンセルチブにより阻害される患者(バイオマーカ陽性)、及びTCTPリン酸化がオンバンセルチブにより阻害されない患者(バイオマーカ陰性)の骨髄芽球変化%を示すグラフである。
図9B図9Bは、バイオマーカ陽性患者及びバイオマーカ陰性患者のベースラインに対する骨髄芽球変化%のウォーターフォールプロット(waterfall blot)である。
図10図10は、TCTPのリン酸化を決定するために行う免疫PCRの一例の説明である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ここで、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上特に明記されない限り、複数形も含むことが意図される。更に、「又は」の使用は、文脈上特に明記されない限り、「及び/又は」を含むことが意図される。
【0008】
本発明は、PLK1阻害剤が癌の細胞においてPLK1活性を阻害することができるかどうかを決定することにより、患者の癌を処置する際のPLK1阻害剤の有効性を直ちに、容易に決定することができるという発見に一部基づいている。この発見は以下の実施例に記載された研究により立証される。これらの実施例は、患者の癌(急性骨髄性白血病)のPLK1標的(TCTP)に対するPLK1阻害剤(オンバンセルチブ)を用いたリン酸化阻害により、PLK1阻害剤を用いた患者の処置にレスポンスを示す癌を特定することを立証している。この結果から、当業者は、任意のPLK1阻害剤による任意の患者の任意の癌における任意のPLK1標的のリン酸化阻害を測定することは、そのPLK1阻害剤を用いた処置にレスポンスを示す癌を特定することを理解するであろう。
従って、いくつかの実施形態において、本発明は、
患者の癌におけるポロ様キナーゼ1(PLK1)活性を決定すること、
を含む方法を対象とし、これは、
(a)(i)患者又は(ii)患者の癌試料をPLK1阻害剤で処置する前、及び
(b)処置した後に、
PLK1標的のリン酸化を測定することにより行う。
これらの方法で、任意のPLK1標的のリン酸化を測定することができる。リン酸化の低下について評価することができるPLK1リン酸化標的の非限定的な例としては、TRF1、Mre11、PTP1B、Orc2、Hbo1、BubR1、WDR62、IRS2、LSD1、カスパーゼ8、NudC、PTEN、BORA、BUB1B/BUBR1、CCNB1、CDC25C、CEP55、ECT2、ERCC6L、FBXO5/EMI1、FOXM1、KIF20A/MKLP2、CENPU、NEDD1、NINL、NPM1、NUDC、PKMYT1/MYT1、KIZ、PPP1R12A/MYPT1、PRC1、RACGAP1/CYK4、SGO1、STAG2/SA2、TEX14、TOPORS、p73/TP73、WEE1、HNRNPU及び翻訳制御腫瘍タンパク質(TCTP)が挙げられる。いくつかの実施形態において、リン酸化阻害について評価されるPLK1標的は、TCTP(UniProtKB P13693)である。PLK1は、セリン46及びスレオニン65でTCTPをリン酸化する(Cucchiら、2010年;Acunzoら、2014年)。
【0009】
いくつかの実施形態において、患者をPLK1阻害剤で処置し、癌試料をその処置前後に採取し、これらの試料における標的のリン酸化を測定して、PLK1阻害剤が有効であるかどうかを決定する。他の実施形態において、(例えば、血液、リンパ、骨髄又は生検組織などの組織又は穿刺吸引による細胞における)癌細胞を患者の身体から採取し、これらの細胞をインビトロでPLK1阻害剤を用いて処置する。このような試料は、癌が存在する任意の組織又は体液でよい。
これらの方法で評価される癌細胞は、患者の組織又は体液、例えば、以下で特定される癌のいずれかを含む任意の体液又は組織、例えば、患者の血液、組織吸引物、骨髄、尿等に含まれ得る。いくつかの実施形態において、癌は患者の血液中に含まれ、PLK1阻害を評価するのに利用される細胞は、患者のリンパ、骨髄又は血液の試料から採取することができる。患者の血液中の任意の癌は、これらの方法により評価することができる。いくつかの実施形態において、癌は、急性骨髄性白血病(AML)、B細胞リンパ腫であるか、又は転移性腫瘍由来である。血液中の転移性腫瘍に由来する細胞を評価する方法は、当技術分野で公知である。例えば、Racilaら、1998年を参照のこと。
これらの方法は、試料を採取し、PLK1標的のリン酸化阻害について評価するというPLK1阻害剤を用いた処置後の任意の特定の時間に厳密に限定されない。任意のPLK1標的のために試料を採取する処置及びPLK1阻害剤処置を行った後の時間間隔は、過度な実験を行うことなく決定することができる。PLK1阻害剤がオンバンセルチブ(経口投与、半減期約24時間)であり、PLK1標的がTCTPである場合、処置した後1~24時間で試料を採取し評価することができると考えられている。いくつかの実施形態において、PLK1標的のリン酸化は処置の少なくとも2時間後に決定される。他の実施形態において、PLK1標的のリン酸化は処置の少なくとも約3時間後に決定される。
【0010】
この方法は、任意の癌の細胞で利用することができる。例示的な癌としては、限定されないが、急性リンパ芽球性白血病、AML、副腎皮質癌腫、副腎皮質癌腫、エイズ関連癌、エイズ関連リンパ腫、肛門癌、虫垂癌、小児小脳星細胞腫、小児大脳星細胞腫、基底細胞癌腫、皮膚癌(非黒色腫)、肝外胆管癌、膀胱癌、骨癌、骨肉腫及び悪性線維性組織球腫、脳腫瘍、脳幹神経膠腫、小脳星細胞腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視覚路及び視床下部膠腫、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、カルチノイド腫瘍、胃腸中枢神経系リンパ腫、子宮頸癌、小児癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、結腸癌、結直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、菌状息肉腫、セザリー症候群、子宮体癌、食道癌、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼の癌、眼内黒色腫、網膜芽腫、胆嚢癌、胃癌(gastric (stomach) cancer)、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍グリオーマ、頭頚部癌、肝細胞(肝)癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼内黒色腫、膵島細胞腫瘍(膵臓内分泌腺)、カポジ肉腫、腎臓(腎細胞)癌、腎臓癌、喉頭癌、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、有毛細胞白血病、口唇癌及び口腔癌、肝癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、エイズ関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、中枢神経原発リンパ腫、原発性マクログロブリン血症、髄芽腫、黒色腫、眼内(眼)黒色腫、メルケル細胞癌腫、中皮腫、悪性中皮腫、転移性頸部扁平上皮癌、口腔癌(mouth cancer)、多発性内分泌腫瘍症候群、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、慢性骨髄増殖性疾患、上咽頭癌、神経芽腫、口腔癌(oral cancer)、口腔癌(oral cavity cancer)、中咽頭癌、卵巣癌、上皮性卵巣癌、卵巣低悪性度腫瘍、膵癌、膵島細胞膵癌、副鼻腔癌及び鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体芽腫及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、前立腺癌、直腸癌、腎盂及び尿管、移行上皮癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍(Ewing family of sarcoma tumors)、カポジ肉腫、軟部組織肉腫、子宮肉腫、皮膚癌(非黒色腫)、皮膚癌(黒色腫)、メルケル細胞皮膚癌腫、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌腫、胃癌(stomach (gastric) cancer)、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、精巣癌、咽喉癌、胸腺腫、胸腺腫及び胸腺癌腫、甲状腺癌、腎盂及び尿管の移行上皮癌、妊娠性絨毛腫瘍、尿道癌、子宮内膜子宮癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、及びウィルムス腫瘍が挙げられる。
【0011】
いくつかの実施形態において、非癌性細胞と比較すると、癌ではPLK1活性が上昇する。このような癌の非限定的な例としては、卵巣癌、乳癌、結腸癌、肺癌、膵癌、前立腺癌、皮膚癌、扁平上皮癌腫、リンパ系の造血器腫瘍、骨髄系の造血器腫瘍、中枢又は末梢神経系腫瘍、急性骨髄性白血病、B細胞リンパ腫、副腎皮質癌、食道癌、胃癌、及び頭頚部癌が挙げられる。
特定の実施形態において、癌はAMLである。様々な実施形態において、患者は骨髄異形成症候群である。
【0012】
いくつかの実施形態において、PLK阻害剤を用いた処置の前に最初にPLK1活性を決定した後、決定したPLK1活性を正常、つまり非癌性のPLK1活性と比較し、PLK1活性が癌で上昇していなければ、患者又は癌試料はPLK1阻害剤で処置されない。これらの実施形態の根拠は、PLK1阻害剤による処置が、上昇したPLK1活性を有する癌患者の利益になる可能性が最も高いということである。いくつかの実施形態において、PLK1活性が正常未満なら、患者又は癌試料はPLK1阻害剤で処置されない。
ここで、「正常」PLK1活性は、患者の非癌性細胞又はある集団の平均、好ましくは癌組織と一致又は類似する組織又は細胞におけるPLK1活性である。
任意のPLK1阻害剤は、これらの方法を用いて評価することができる。非限定的な例としては、オンバンセルチブ、BI2536、ボラセルチブ(BI6727)、GSK461364、HMN-176、HMN-214、AZD1775、CYC140、リゴセルチブ(ON-01910)、MLN0905、TKM-080301、TAK-960又はRo3280が挙げられる。いくつかの実施形態において、PLK1阻害剤はオンバンセルチブである。これらの実施形態の一部において、癌はAMLである。
【0013】
PLK1標的(例えば、TCTP)のリン酸化は、当技術分野で公知の任意の方法により決定することができる。いくつかの実施形態において、例えば、(a)非リン酸化標的に結合する抗体、及び(b)非リン酸化ではなくリン酸化標的に結合する抗体を用い、免疫化学的にリン酸化を決定する。これらの方法は、任意の特定の免疫化学的方法に厳密に限定されない。利用することができる方法の例としては、ウェスタンブロット(以下の実施例1)、ドットブロット、ELISA、免疫組織化学、及び(pTCTP検出のための)免疫PCRが挙げられる。
免疫PCRは、オリゴヌクレオチドが酵素ではなく信号発生部分であることを除き、ELISAに類似している。オリゴヌクレオチドからの信号は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅により発生する。PCRは何倍にもオリゴヌクレオチドを増幅させ、一般に色素標識増幅産物をもたらすため、免疫PCRは極めて敏感であり、本方法で用いられると、極少量のリン酸化TCTPを検出することができる。
免疫PCRはELISAに類似するため、pTCTPを検出するための任意の形式で免疫PCRを利用することができる。この形式は、当技術分野で公知の任意の固相(例えば、マイクロタイタープレート、ビーズなど)を用い、直接、間接、サンドイッチ又は競合型などのELISAにより他のタンパク質を検出することについて記載されている(例えばバイオラッド、2017年を参照のこと)。
pTCTPを検出するための免疫PCRの非限定的な例を図10に示す。この例において、アビジンは固相に共有結合的又は非共有結合的に結合する。リン酸化TCTP(「pTCTP」)における第1のエピトープ(「EPITOPE-1」)に結合するビオチン標識TCTP捕捉抗体は、アビジンに結合する。pTCTPを有するとされる試料を添加した後、TCTPレポーター抗体を添加する。このアッセイにおいて、捕捉抗体又はレポーター抗体のどちらかは、pTCTPに結合することができるが、非リン酸化TCTPには結合することはできない。いくつかの実施形態において、レポーター抗体はpTCTPに結合することができるが、非リン酸化TCTPに結合することはできない。2本鎖DNA分子(dsDNA)はレポーター抗体に結合している。その後、dsDNAを増幅させるPCRを実施する。試料がpTCTPを有する場合のみ、PCR産物があり;そのPCR産物の量は、試料中のpTCTPの量に比例する。その後、PCR産物を定量して、試料に存在するpTCTPの量を決定することができる。
上記方法のいずれかにおいて、標的タンパク質の任意のアミノ酸残基のリン酸化を測定することができる。例えば、標的TCTPを用いて、セリン46又はスレオニン65、又はその両方のリン酸化を測定することができる。
【0014】
これらの方法を利用して、癌に対するPLK1阻害剤の有効性を決定することができる。これを以下の実施例1に明示する。PLK1阻害剤であるオンバンセルチブは、オンバンセルチブにレスポンスを示さない患者のAML細胞ではなく、オンバンセルチブにレスポンスを示す患者のAML細胞におけるPLK1標的であるTCTPのリン酸化を阻害した。
本発明は上記方法の特定の変化形も包含する。例えば、癌細胞におけるPLK1阻害を評価するのではなく、患者の血清におけるセルフリーPLK1及び/又はPLK1標的(例えば、TCTP)が、PLK1阻害剤に曝露した時の標的のリン酸化阻害について評価することができる。この変化形について、リン酸化阻害を決定するのに、免疫PCRなどの非常に敏感な方法を利用してよい。
更なる変化形では、ここに記載する方法を用い、癌におけるPLK1活性を阻害するPLK1阻害剤の能力を決定することにより、癌におけるPLK1を阻害するPLK1阻害剤の能力を決定することができる。
以下の実施例に明示するように、PLK1阻害剤によるPLK1標的のリン酸化阻害は、PLK1阻害剤が癌に対して有効であることを示す。従って、これらの方法は、PLK1阻害剤が有効であるかどうかを早期に決定するのに使用することができる。
【0015】
PLK1標的リン酸化の阻害割合は、特定のPLK1阻害剤の有効性を示し、過度な実験を行うことなく決定することができる。この決定はPLK1標的、PLK1阻害剤、試験のために試料を採取する処置を行った後の時間、処置の有効性をどのように測定するか、及び所望の偽陽性又は偽陰性の相対数次第である。例えば、以下の実施例において、阻害パーセントを50%で設定する場合、偽陰性が1つあり(図9Bの星付きの棒)、pTCTPの阻害は40%のみであった。しかし、PLK1阻害剤処置により骨髄芽球%及びその患者の客観的腫瘍縮小効果は大きく低下した。阻害割合を35%に設定すると、偽陰性はない。このように、PLK1阻害剤処置の有効性を示す阻害パーセントは、任意の割合、例えば30%、35%、40%、45%、50%、55%又は60%、又は任意の他の割合で設定することができる。
従って、いくつかの実施形態において、処置後のPLK1標的のリン酸化が少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%又は60%低下すると、処置が有効であることを示す。
上記方法は癌に対するPLK1阻害剤の有効性試験における候補を特定するのに利用することができる。本願のいくつかの実施形態において、PLK1標的のリン酸化が処置前のTCTPのリン酸化に対して、処置後に少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%又は60%低下していないなら、患者は試験に参加する資格がない。
上記PLK1阻害剤処置の有効性の決定は、PLK1阻害剤で患者を治療的に処置するかどうかを決めるために利用することができ、PLK1標的のリン酸化の低下割合が上記のように設定した閾値を超えるのであれば、患者はPLK1阻害剤で処置される。このように、いくつかの実施形態において、TCTPのリン酸化が処置前のTCTPのリン酸化に対して、処置後に少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%又は60%低下する場合のみ、患者はPLK1阻害剤で治療的に処置される。
【0016】
PLK1阻害剤が癌を処置する際に単独で使用される場合、或いはPLK1阻害剤をPLK1阻害剤ではない1つ又は複数の抗腫瘍薬と併用して、患者の癌が処置されてもいるか、又は処置が考慮されている場合、これらの方法を使用することができる。このような抗癌剤の非限定的な例は、シスプラチン、シタラビン、デシタビン、ドキソルビシン、ゲムシタビン、パクリタキセル、SN38、ソラフェニブ、ベルケイド、アビラテロン、イブルチニブ、アカラブルチニブ、アザシチジン、ベネトクラクス、CPT11、5FU、ベバシズマブ、ボルテゾミブ、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤である。様々な実施形態において、患者がPLK1阻害剤で治療的に処置されるかどうかに関わらず、患者は抗癌剤での処置を継続する。
いくつかの実施形態において、癌は急性骨髄性白血病(AML)であり、患者はシタラビン、アザシチジン、ベネトクラクス、デシタビン、FLT3阻害剤、又はこれらの組合せでも処置されているか、又は処置が考慮されている(単独又はPLK1阻害剤との併用)。
他の実施形態において、癌は非ホジキンリンパ腫であり、患者はヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、イブルチニブ、アカラブルチニブ、ベネトクラクス、又はこれらの組合せでも処置されているか、又は処置が考慮されている。
追加の実施形態において、癌は去勢抵抗性又は去勢感受性前立腺癌であり、患者はアビラテロン、抗アンドロゲン、又はこれらの組合せでも処置されているか、又は処置が考慮されている。
更なる実施形態において、癌は膵、乳又は結腸腺癌などの腺癌であり、患者はパクリタキセル、ソラフェニブ、ボルテゾミブ、シスプラチン、SN38、CPT11、5FU、ベバシズマブ、ゲムシタビン、又はこれらの組合せでも処置されているか、又は処置が考慮されている。
他の実施形態において、癌は前骨髄球性白血病であり、患者はパクリタキセル、ドキソルビシン、シタラビン、又はこれらの組合せでも処置されているか、又は処置が考慮されている。
追加の実施形態において、癌は多発性骨髄腫であり、患者はカルフィルゾミブ、イキサゾミブ、ボルテゾミブ、サリドマイド、レナリドミド、ポマイドミド、コルチコステロイド、又はこれらの組合せでも処置されているか、又は処置が考慮されている。
更なる実施形態において、患者は骨髄異形成症候群(MDS)であり、患者はシタラビン、アザシチジン、ベネトクラクス、デシタビン、FLT3阻害剤、又はこれらの組合せでも処置されているか、又は処置が考慮されている。
【0017】
PLK1阻害剤で処置することなく、PLK1標的のリン酸化を測定することにより、患者の癌におけるポロ様キナーゼ1(PLK1)活性を決定することを含む方法も提供する。いくつかの実施形態において、PLK1活性は正常活性と比較される。
これらの方法は、任意のPLK1阻害剤で処置する前に、癌におけるPLK1活性レベルを評価することができる。いくつかの実施形態において、癌におけるPLK1活性が上昇する場合、患者はPLK1阻害剤で処置され、癌におけるPLK1活性が上昇しない場合、患者はPLK1阻害剤で処置されない。他の実施形態において、癌におけるPLK1活性が上昇する又は正常である場合、患者はPLK1阻害剤で処置され、癌におけるPLK1活性が正常未満である場合、患者はPLK1阻害剤で処置されない。
これらの方法の様々な実施形態において、患者又は試料がPLK1阻害剤で処置される場合、癌におけるPLK1活性はここに記載される方法のいずれかにより決定される。
【0018】
好ましい実施形態を以下の実施例に記載する。特許請求の範囲内の他の実施形態は、ここに開示される本発明の明細書又は実施を考慮することで当業者に明らかであろう。本明細書は実施例と共に例示的なものとしてのみ考えられ、本発明の範囲及び趣旨は実施例に続く特許請求の範囲により示されることが意図される。
【0019】
実施例1.オンバンセルチブによる翻訳制御腫瘍タンパク質(TCTP)のリン酸化の阻害により急性骨髄性白血病のポロ様キナーゼ1(PLK1)阻害剤処置に対するレスポンスを予測する
イントロダクション
本研究は、PLK1の阻害剤であるオンバンセルチブによる患者の血液中のAML細胞におけるTCTPのリン酸化阻害が、AMLに対するオンバンセルチブ処置の有効性を予測するかどうかを決定することを対象とする。本データは、AML細胞におけるTCTPリン酸化に対するオンバンセルチブ阻害が、オンバンセルチブ処置に対するAMLのレスポンスを予測することを立証する。
【0020】
材料及び方法
ここで提供される患者データは、臨床試験NCT03303339、Onvansertib in Combination With Either Low-dose Cytarabine(LDAC) or Decitabine in Adult Patients With Acute Myeloid Leukemia(AML)(ClinicalTrials.gov)の患者データである。
血液におけるTCTPのセリン46のリン酸化は以下の通りに決定した。メーカーの推奨により、Leucosep遠心管(VWR)及びHistopaque1077(シグマ)を用いて、Cellsave血液チューブ(Menarini Silicon Biosystems)から末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。
150mMのNaCl及び1×プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤カクテル(サーモフィッシャー)を含むM-PERバッファ(サーモフィッシャー)を用い、PBMC及び細胞株からタンパク質抽出物を調製した。Pierce BCA protein assay kit(サーモフィッシャー)でタンパク質濃度を測定した。
キャピラリー電気泳動及び免疫検出技術を組み合わせたWes system(プロテインシンプル)を用い、メーカーのプロトコールに従って、ウェスタンブロットをSimple Western(登録商標)アッセイとして実施した。簡潔に、等しいタンパク質濃度の抽出物を0.1×試料バッファ及び5×蛍光性マスターミックスと混合した。変性タンパク質試料、ビオチン化ラダー(プロテインシンプル)、一次抗体、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)-結合二次抗体(プロテインシンプル)、化学発光基質及び洗浄バッファをアッセイプレートの各ウェルに分注し、ウェス装置に配置した。一次抗体はセルシグナリングテクノロジーからホスホ-TCTP-Ser46(#5251)及びTCTP(#5128)を購入し、1:50の濃度で使用した。定量分析はCompassソフトウェア(プロテインシンプル)を用いて実施した。pTCTPのシグナル強度(面積)をTCTPのピーク面積に正規化し、pTCTP%として報告した。
オンバンセルチブ投与の3時間後、ピーク濃度(Cmax)で採取した血液で患者におけるPLK1阻害を評価した。
レスポンダは、処置中に循環芽球及び骨髄芽球の減少を示す患者として定義された。
【0021】
結果
血液(図1A)及び骨髄(図1B)での白血病細胞割合の減少により示されるように、オンバンセルチブを低用量シタラビン(LDAC)又はデシタビンと併用して処置した患者6名のうち3名は処置へのレスポンスを示し、患者2名(07-009及び07-011)では、骨髄でそれぞれ96%から55%及び55%から15%に減少した。
インビボでのPLK1阻害が有効であれば、特にオンバンセルチブはインビトロで用量依存的にpTCTPを阻害するため(図2B)、図2Aに明示するようにオンバンセルチブはTCTPリン酸化を防止するだろう。
AML細胞株MV4-11及びHL-60をオンバンセルチブ(PCM-075)(0.1又は0.5μM)、シタラビン(10又は100nM)又はデシタビン(0.2又は1μM)で15分間処置した。その後、タンパク質を細胞から抽出し、pTCTPについて評価した。図2Cに示すように、オンバンセルチブはpTCTPを阻害したが、シタラビン又はデシタビンは阻害しなかった。
図3Aは、オンバンセルチブ及びLDAC(シタラビン)を投与した患者3名の血液中の白血病細胞割合を示す。患者01-002は処置にレスポンスを示し、他の患者2名はレスポンスを示さなかった。図3Bに示すように、このレスポンダのみが早ければ処置開始から3時間でpTCTPの減少を示した。
図4Aは、オンバンセルチブ及びデシタビンを投与した患者3名の血液中の白血病細胞割合を示す。患者07-009及び07-011はどちらも処置にレスポンスを示し、患者07-013はレスポンスを示さなかった。図3Bに示すように、2名のレスポンダのみがどちらも早ければ3時間でpTCTPの減少を示した。
図3及び4のデータは、ここに記載するTCTPリン酸化方法を用いて、処置開始5日以内にレスポンダを特定することができ、一方で血液中の白血病細胞%を決定することにより、レスポンダを特定するのに15日以上かかったことを示す。
図5は、図3及び4のウェスタンブロットの定量を示す。レスポンダはウェスタンブロットで容易に特定することができた。
高用量のオンバンセルチブがノンレスポンダのpTCTPを低下させることができたかどうかを決定するため、18mg/m2を投与した患者の血液細胞を分析した。図6は、高用量で処置されたノンレスポンダ5名のウェスタンブロットと併せて、12mg/m2で処置された図3及び4に示す患者6名のウェスタンブロットを示す。高用量のオンバンセルチブであっても、ノンレスポンダの細胞では処置にレスポンスを示してpTCTPが減少することはなかった。
レスポンダ及びノンレスポンダにおけるpTCTPレベルをオンバンセルチブで処置する前後の差異について分析した。図7に示すように、処置前にpTCTPレベルの違いは無かった。処置後のpTCTPの減少は、ノンレスポンダに対してレスポンダで著しく高かった。
【0022】
実施例2.オンバンセルチブによるTCTPのリン酸化阻害により急性骨髄性白血病のポロ様キナーゼ1(PLK1)阻害剤処置へのレスポンスを予測する
実施例1に記載の方法を使用し、用量を増加させてオンバンセルチブ処置のTCTPのリン酸化を阻害する能力、及びその阻害を使用することで処置に対する疾患反応を予測する能力を決定する。
オンバンセルチブ処置前及び処置の3時間後、実施例1に記載の試験に参加した患者から血液試料を採取した。オンバンセルチブ処置は12、18、27、又は40mg/m2であった。pTCTP及びTCTPをウェスタンブロットで評価し、pTCTP%(pTCTP/TCTP)を定量した。
これらの研究において、バイオマーカ陽性をT=0からT=3hで、≧50%のpTCTP%減少として定義した。
【0023】
結果を図8に示す。上及び真ん中のパネルは、それぞれバイオマーカ陽性及びバイオマーカ陰性のpTCTP阻害を有する患者から採取した試料のウェスタンブロット例を示す。評価可能患者24名のうち9名(38%)がバイオマーカ陽性であった。バイオマーカ陽性は、オンバンセルチブ用量、薬物動態、或いはLDAC又はデシタビンの単剤効果に依存しない。
バイオマーカ陽性患者のうち、01-002及び08-027をLDACで処置しており;07-009、05-030、及び07-036をデシタビンで処置していた。バイオマーカ陰性患者のうち、07-018及び07-033をLDACで処置し;07-004、01-024及び12-041をデシタビンで処置した。これにより、LDAC又はデシタビンのどちらかを用いた処置は、PLK1阻害剤(ここではオンバンセルチブ)のPLK1標的(ここではTCTP)のリン酸化を阻害する能力に明らかに影響しないことが確認される。
バイオマーカ陽性患者を12、27又は40mg/m2のオンバンセルチブで処置しており、バイオマーカ陰性患者を12、18、27及び40mg/m2のオンバンセルチブで処置していた。これは、バイオマーカ陽性がオンバンセルチブ用量に依存しないことを示す。また、薬物動態解析は、バイオマーカ陽性及び血液中のオンバンセルチブ濃度間に相関関係がないことを示した。
図8の最下部のパネルは、バイオマーカ陽性(「ターゲットエンゲージメント」)及びバイオマーカ陰性(「ターゲットエンゲージメント無し」)患者の投与前に対する投与後のpTCTP%の範囲を示す。
図9A及び9Bは、バイオマーカ陽性が処置に対するレスポンスを予測することを示す。図9Aは、バイオマーカ陽性患者では、バイオマーカ陰性患者と比較して、BM芽球が著しく大きく減少したことを示す。図9Bに示すように、バイオマーカ陽性患者9名のうち6名でBM芽球が≧50%減少した。患者4名は、Chesonら(2003年)に定義されるように、完全奏効[CR]又は造血機能の回復が不十分なCR[CRi]であった。客観的腫瘍縮小効果(CR+CRi)を有する患者4名のうち、3名がバイオマーカ陽性であり、1名のpTCTPは40%減少した。
【0024】
参考文献
【0025】
上記を考慮すると、本発明のいくつかの目的が達成され、他の利点が得られることがわかる。
本発明の範囲を逸脱することなく、上記方法及び組成物に様々な変更を加えることができるため、上記説明に含まれ、添付図に示されるすべての事項は、説明として解釈され、限定する意味でないことが意図される。
本明細書に引用されるすべての参考文献は参照により組み込まれたものとする。参考文献の考察は、単に著者による主張を要約することを意図し、任意の参考文献が従来技術を構成するという承認ではない。出願者は引用された参考文献の正確性及び妥当性に異議を申し立てる権利を有する。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕(a)(i)患者又は(ii)前記患者の癌試料のPLK1阻害剤を用いた処置前、及び
(b)前記処置後
に、PLK1標的のリン酸化を測定することにより、前記患者の癌におけるポロ様キナーゼ1(PLK1)活性を決定することを含む方法。
〔2〕PLK1活性が翻訳制御腫瘍タンパク質(TCTP)のリン酸化により測定される、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記患者が前記PLK1阻害剤で処置される、前記〔1〕に記載の方法。
〔4〕前記患者から採取した癌試料が前記PLK1阻害剤で処置される、前記〔1〕に記載の方法。
〔5〕前記癌試料が血液試料である、前記〔4〕に記載の方法。
〔6〕前記癌試料が組織試料である、前記〔4〕に記載の方法。
〔7〕前記PLK1標的が前記患者のリンパ、骨髄又は血液の試料に含まれる、前記〔1〕に記載の方法。
〔8〕前記PLK1標的が前記癌の細胞に含まれる、前記〔1〕に記載の方法。
〔9〕前記PLK1標的が前記患者の血液において無細胞である、前記〔1〕に記載の方法。
〔10〕前記癌が卵巣癌、乳癌、結腸癌、肺癌、膵癌、前立腺癌、皮膚癌、扁平上皮癌腫、リンパ系の造血器腫瘍、骨髄系の造血器腫瘍、中枢又は末梢神経系腫瘍、急性骨髄性白血病、B細胞リンパ腫、副腎皮質癌、食道癌、胃癌、又は頭頚部癌である、前記〔1〕に記載の方法。
〔11〕前記癌が急性骨髄性白血病(AML)、B細胞リンパ腫であるか、又は転移性腫瘍に由来する、前記〔1〕に記載の方法。
〔12〕前記癌がAMLである、前記〔1〕に記載の方法。
〔13〕前記患者が骨髄異形成症候群である、前記〔1〕に記載の方法。
〔14〕PLK1活性が前記癌において上昇しない場合に限り、前記患者又は癌試料は前記PLK1阻害剤で処置されない、前記〔1〕に記載の方法。
〔15〕PLK1活性が正常未満の場合、前記患者又は癌試料は前記PLK1阻害剤で処置されない、前記〔1〕に記載の方法。
〔16〕前記PLK1阻害剤がオンバンセルチブ、BI2536、ボラセルチブ(BI6727)、GSK461364、HMN-176、HMN-214、AZD1775、CYC140、リゴセルチブ(ON-01910)、MLN0905、TKM-080301、TAK-960又はRo3280である、前記〔1〕に記載の方法。
〔17〕前記PLK1阻害剤がオンバンセルチブである、前記〔1〕に記載の方法。
〔18〕前記PLK1標的の前記リン酸化が免疫化学的に測定される、前記〔1〕に記載の方法。
〔19〕前記免疫化学的測定がウェスタンブロット法によるものである、前記〔18〕に記載の方法。
〔20〕前記免疫化学的測定が固相免疫測定法によるものである、前記〔18〕に記載の方法。
〔21〕前記TCTPのリン酸化が免疫PCRにより測定される、前記〔2〕に記載の方法。
〔22〕TCTPのセリン46のリン酸化が測定される、前記〔2〕に記載の方法。
〔23〕TCTPのスレオニン65のリン酸化が測定される、前記〔2〕に記載の方法。
〔24〕処置後に前記PLK1標的の前記リン酸化が少なくとも35%低下すると、前記処置は有効であることを示す、前記〔1〕に記載の方法。
〔25〕処置後に前記PLK1標的の前記リン酸化が少なくとも50%低下すると、前記処置は有効であることを示す、前記〔24〕に記載の方法。
〔26〕前記PLK1標的の前記リン酸化が処置の少なくとも2時間後に決定される、前記〔1〕に記載の方法。
〔27〕前記PLK1標的の前記リン酸化が処置の少なくとも約3時間後に決定される、前記〔1〕に記載の方法。
〔28〕前記患者が、前記癌に対する前記PLK1阻害剤の有効性試験における参加候補であり、
前記PLK1標的の前記リン酸化が、前記処置前の前記TCTPのリン酸化に対し、前記処置後に少なくとも35%低下しない場合、前記患者は前記試験に参加する対象ではない、
前記〔1〕から〔27〕のいずれか一項に記載の方法。
〔29〕前記患者が、前記癌に対する前記PLK1阻害剤の有効性試験における参加候補であり、
前記TCTPのリン酸化が、前記処置前の前記TCTPのリン酸化に対し、前記処置後に少なくとも50%低下しない場合、前記患者は前記試験に参加する対象ではない、
前記〔1〕から〔27〕のいずれか一項に記載の方法。
〔30〕前記TCTPのリン酸化が、前記処置前の前記TCTPのリン酸化に対し、前記処置後に少なくとも35%低下する場合に限り、前記患者は前記PLK1阻害剤で治療的に処置される、前記〔1〕から〔27〕のいずれか一項に記載の方法。
〔31〕前記TCTPのリン酸化が、前記処置前の前記TCTPのリン酸化に対し、前記処置後に少なくとも50%低下する場合に限り、前記患者は前記PLK1阻害剤で治療的に処置される、前記〔1〕から〔27〕のいずれか一項に記載の方法。
〔32〕前記PLK1阻害剤で治療的に処置される前記患者が、シスプラチン、シタラビン、デシタビン、ドキソルビシン、ゲムシタビン、パクリタキセル、SN38、ソラフェニブ、ベルケイド、アビラテロン、イブルチニブ、アカラブルチニブ、アザシチジン、ベネトクラクス、CPT11、5FU、ベバシズマブ、ボルテゾミブ、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、又はこれらの組合せでも処置される、前記〔30〕に記載の方法。
〔33〕前記患者が前記PLK1阻害剤で処置されない場合、前記患者がシスプラチン、シタラビン、デシタビン、ドキソルビシン、ゲムシタビン、パクリタキセル、SN38、ソラフェニブ、ベルケイド、アビラテロン、イブルチニブ、アカラブルチニブ、アザシチジン、ベネトクラクス、CPT11、5FU、ベバシズマブ、ボルテゾミブ、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、又はこれらの組合せで処置される、前記〔30〕に記載の方法。
〔34〕前記患者が前記PLK1阻害剤で処置されるかどうかに関わらず、前記患者がシスプラチン、シタラビン、デシタビン、ドキソルビシン、ゲムシタビン、パクリタキセル、SN38、ソラフェニブ、ベルケイド、アビラテロン、イブルチニブ、アカラブルチニブ、アザシチジン、ベネトクラクス、CPT11、5FU、ベバシズマブ、ボルテゾミブ、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、又はこれらの組合せで処置される、前記〔30〕に記載の方法。
〔35〕前記患者が急性骨髄性白血病である、前記〔30〕に記載の方法。
〔36〕前記患者がシタラビン、アザシチジン、ベネトクラクス、デシタビン、FLT3阻害剤、又はこれらの組合せで処置されている、前記〔35〕に記載の方法。
〔37〕前記患者が非ホジキンリンパ腫である、前記〔30〕に記載の方法。
〔38〕前記患者がヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、イブルチニブ、アカラブルチニブ、ベネトクラクス、又はこれらの組合せで処置されている、前記〔37〕に記載の方法。
〔39〕前記患者が前立腺癌である、前記〔30〕に記載の方法。
〔40〕前記患者がアビラテロン、抗アンドロゲン、又はこれらの組合せで処置されている、前記〔39〕に記載の方法。
〔41〕前記前立腺癌が去勢抵抗性であり、前記患者がアビラテロンで処置されている、前記〔39〕に記載の方法。
〔42〕前記癌が腺癌である、前記〔30〕に記載の方法。
〔43〕前記患者がパクリタキセル、ソラフェニブ、ボルテゾミブ、シスプラチン、SN38、CPT11、5FU、ベバシズマブ、ゲムシタビン、又はこれらの組合せで処置されている、前記〔42〕に記載の方法。
〔44〕前記腺癌が膵、乳又は結腸腺癌である、前記〔42〕に記載の方法。
〔45〕前記癌が前骨髄球性白血病である、前記〔30〕に記載の方法。
〔46〕前記患者がパクリタキセル、ドキソルビシン、シタラビン、又はこれらの組合せで処置されている、前記〔45〕に記載の方法。
〔47〕前記癌が多発性骨髄腫である、前記〔30〕に記載の方法。
〔48〕前記患者がカルフィルゾミブ、イキサゾミブ、ボルテゾミブ、サリドマイド、レナリドミド、ポマイドミド、コルチコステロイド、又はこれらの組合せで処置されている、前記〔47〕に記載の方法。
〔49〕前記患者が骨髄異形成症候群である、前記〔30〕に記載の方法。
〔50〕前記患者がアザシチジン、デシタビン、又はこれらの組合せで処置されている、前記〔49〕に記載の方法。
〔51〕前記癌が急性骨髄性白血病(AML)であり;
前記PLK1標的が翻訳制御腫瘍タンパク質(TCTP)であり;
前記患者が前記PLK1阻害剤で処置され;
前記TCTPのリン酸化が前記処置前及び処置後に採取される患者の血液試料で測定される、
前記〔1〕に記載の方法。
〔52〕TCTPのセリン46のリン酸化が測定される、前記〔51〕に記載の方法。
〔53〕前記PLK1阻害剤がオンバンセルチブである、前記〔51〕に記載の方法。
〔54〕前記TCTPのリン酸化が免疫化学的に測定される、前記〔51〕に記載の方法。
〔55〕前記免疫化学的測定がウェスタンブロット法によるものである、前記〔54〕に記載の方法。
〔56〕前記免疫化学的測定が免疫PCRによるものである、前記〔54〕に記載の方法。
〔57〕前記患者がシタラビン、アザシチジン、ベネトクラクス、デシタビン、FLT3阻害剤、又はこれらの組合せで処置されており;
前記TCTPのリン酸化が、前記処置前の前記TCTPのリン酸化に対して、前記処置後に少なくとも35%低下する場合に限り、前記患者が前記PLK1阻害剤で処置される、
前記〔51〕から〔56〕のいずれか一項に記載の方法。
〔58〕PLK1阻害剤で処置を行うことなくPLK1標的のリン酸化を測定することにより、患者の癌におけるポロ様キナーゼ1(PLK1)活性を決定すること、
を含む方法。
〔59〕前記癌において前記PLK1活性が上昇する場合、前記患者がPLK1阻害剤で処置され、
前記癌において前記PLK1活性が上昇しない場合、前記患者がPLK1阻害剤で処置されない、
前記〔58〕に記載の方法。
〔60〕前記癌において前記PLK1活性が上昇する又は正常である場合、前記患者がPLK1阻害剤で処置され、
前記癌において前記PLK1活性が正常未満である場合、前記患者がPLK1阻害剤で処置されない、
前記〔58〕に記載の方法。
〔61〕前記患者がPLK1阻害剤で処置される場合、前記癌におけるPLK1活性が前記〔1〕から〔27〕のいずれか一項に記載の方法により決定される、
前記〔59〕又は〔60〕に記載の方法。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10