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特許7541980流体チャネル付き真空バッグを用いた風力タービンモールドB面加熱及び冷却の方法
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  • 特許-流体チャネル付き真空バッグを用いた風力タービンモールドB面加熱及び冷却の方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】流体チャネル付き真空バッグを用いた風力タービンモールドB面加熱及び冷却の方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/12 20060101AFI20240822BHJP
   B29C 33/04 20060101ALI20240822BHJP
   B29C 43/52 20060101ALI20240822BHJP
   B29C 70/44 20060101ALI20240822BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20240822BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B29C43/12
B29C33/04
B29C43/52
B29C70/44
B29C70/06
B29C35/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021530855
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 US2019063662
(87)【国際公開番号】W WO2020113043
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】62/773,730
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520005303
【氏名又は名称】ティーピーアイ コンポジッツ,インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スキプスビー,カルステン
(72)【発明者】
【氏名】サリミ,アミール
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0327178(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/12
B29C 33/04
B29C 43/52
B29C 70/44
B29C 70/06
B29C 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合風力タービンブレードを形成するための装置であって、
第1のシェルを備える第1のタービンブレード半体と、
第2のシェルを備える第2のタービンブレード半体と、
開いた構成において、前記第1のシェルに対応する第1のモールド表面を含む第1のモールド半体と、
開いた構成において、前記第2のシェルに対応する第のモールド表面を含む第2のモールド半体と、
前記第1シェルのB面上のスパーキャップに覆われた第1の真空バッグと、
前記第2シェルのB面上のスパーキャップに覆われた、前記第1の真空バッグとは異なる第2の真空バッグと
入口流体チャネルと、
出口流体チャネルと、を備え、
前記第1の真空バッグは、加熱流体のための第1の一連の流体チャネルと冷却流体のための第2の一連の流体チャネルとを含み、前記第1および第2の一連の流体チャネルのそれぞれは、前記第1の真空バックの外面に配置され、前記流体チャネルの少なくとも一部は、前記第1のタービンブレードシェルと接触して配置され、
前記第2の真空バッグは、加熱流体のためのの一連の流体チャネルと冷却流体のための第4の一連の流体チャンネルとを含み、前記第3および第4の一連の流体チャネルのそれぞれは、前記第2の真空バックの外面に配置され、前記流体チャネルの少なくとも一部は、前記第2のタービンブレードシェルと接触して配置され
前記第1および第2の真空バッグのそれぞれは、根元領域および先端領域を有し、前記根元領域は第1の密度の流体チャネルを有し、前記先端領域は第2の密度の流体チャネルを有し、前記第1の密度は、前記第2の密度よりも大きく、
前記第1の密度の流体チャネルは、前記第2の密度の流体チャネルよりも、前記複合風力タービンブレードの前記B面と接触する表面積が大きく、
前記入口流体チャネルと前記出口流体チャネルのそれぞれは、流体的に結合された前記第1、第2、第3、および第4の流体チャネルよりも、大きい断面で構成されることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記第1のモールド半体は、前記第1のモールド表面に近接して配置された加熱素子を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2のモールド半体が、前記第2のモールド表面に近接して配置された加熱素子を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
少なくとも1つの流体チャネルが、ブレードの全スパンに沿って延在する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
少なくとも1つの流体チャネルが、前記ブレードの先端から後端まで延在する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記流体チャネルは、一方向の流れのために構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第1あるいは第2の一連の流体チャネルの第1の流体チャネル前記第1あるいは第2の流体チャネルの第2の流体チャネルよりも、第1のシェルの表面と接触する表面積が大きい、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記冷却流体は、前記根元領域から前記第1および第2の真空バッグの少なくとも1つの前記先端領域に向かって移動し、熱交換器に入る、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記第1あるいは第2の一連の流体チャネルの少なくとも1つは、前記スパーキャップを反映するパターンで前記第1のシェルの上に配置され、前記第3あるいは第4の流体チャネルの少なくとも1つは、前記スパーキャップを反映するパターンで前記第2のシェルの上に配置される、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、風力タービンブレードの製造中の製造信頼性及び効率を改善する装置、システム、及び方法に関する。特に、本開示のデバイス、システム、及び方法は、製造プロセス中に複合表面を直接加熱及び冷却することに関する。
【背景技術】
【0002】
開示された主題の目的及び利点は、以下の説明に記載され、以下の説明から明らかになり、また、開示された主題の実施によって理解されるであろう。開示される主題のさらなる利点は、本明細書及び特許請求の範囲において、ならびに添付の図面から特に指摘される方法及びシステムによって実現され、達成されるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
これら及び他の利点を達成するために、開示された主題の目的に従って具体化され、広く説明されるように、開示された主題は、第1のシェルを備える第1のタービンブレード半体と、第2のシェルを備える第2のタービンブレード半体と、前記第1のシェルに対応する第1のモールド表面を含む第1のモールド半体と、前記第2のシェルに対応する第1のモールド表面を含む第2のモールド半体と、前記第1のタービンブレードシェルの上方に配置された第1の真空バッグと、前記第2のタービンブレードシェルの上方に配置された第2の真空バッグとを備える、複合風力タービンブレードを形成するための装置を含む。記第1の真空バッグは、第1の一連の流体チャネルを含み、前記流体チャネルの少なくとも一部は、前記第1のタービンブレードシェルと接触して配置される。前期第2の真空バッグは、第2の一連の流体チャネルを含み、前記流体チャネルの少なくとも一部は、前記第2のタービンブレードシェルと接触して配置される。
【0004】
いくつかの実施形態では、加熱素子は、モールド表面に近接して配置することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの流体チャネルは、ブレードの全スパンに沿って、及び/又は、ブレードの先端から後端まで延在する。いくつかの実施形態では、流体チャネルは、ブレードの表面の周りに均一なパターンで分配される。いくつかの実施形態では、ブレードの第1の領域(例えば、根元部分)は、第1の数の流体チャネルを有し、ブレードの第2の領域(先端部分)は、第2の数の流体チャネルを有する。いくつかの実施形態では、流体チャネルは、均一な断面を有するように構成される。いくつかの実施態様において、注入口及び/又は出口流体チャネルは、流体的に結合された分配チャネルよりも大きい直径を有するよう構成される。いくつかの実施形態では、流体チャネルは、一方向の流れのために構成される。いくつかの実施形態では、第1の流体チャネルは、第2の流体チャネルよりも、第1のシェルの表面と接触する大きな表面積を有する。
【0005】
開示の別の態様によれば、風力タービンブレードを形成する方法が提供される。その方法は、第1のシェルを備える第1のタービンブレード半体を設けるステップと、第2のシェルを備える第2のタービンブレード半体を設けるステップと、前記第1のシェルに対応する第1のモールド表面を備える第1のモールド半体を設けるステップであって、前記第1のタービンブレード半体が前記第1のモールド半体に配置されるステップと、前記第2のシェルに対応する第1のモールド表面を備える第2のモールド半体を設けるステップであって、前記第2のタービンブレード半体が前記第2のモールド半体に配置されるステップと、前記第1のタービンブレードシェルの上方に配置された第1の真空バッグを設けるステップであって、前記第1の真空バッグは、第1の一連の流体チャネルを含み、前記流体チャネルの少なくとも一部は、前記第1のタービンブレードシェルと接触して配置されるステップと、前記第2のタービンブレードシェルの上方に配置された第2の真空バッグを設けるステップであって、前記第2の真空バッグは、第2の一連の流体チャネルを含み、前記流体チャネルの少なくとも一部は、前記第2のタービンブレードシェルと接触して配置されるステップと、前記第1の一連の流体チャネル及び前記第2の一連の流体チャネルを通して熱流体を循環させるステップとを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、循環は、モールド半体の外部に配置されたポンプによって提供される。いくつかの実施形態では、熱流体は、第1又は第2のシェルのうちの少なくとも1つよりも高い温度を有する。いくつかの実施形態では、熱流体は、第1又は第2のシェルのうちの少なくとも1つよりも低い温度を有する。いくつかの実施形態では、循環は、ブレードの根元に近接する熱流体の入口と、ブレードの先端に近接する熱流体の出口とを設けるステップを含む。
【0007】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明の両方は、例示的なものであり、特許請求される開示された主題のさらなる説明を提供することが意図されていることを理解されたい。本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、開示される主題の方法及びシステムを例示し、さらに理解するために含まれる。説明と共に、図面は、開示された主題の原理を説明する役割を果たす。
【0008】
本明細書で説明される主題の様々な態様、特徴、及び実施形態の詳細な説明は、添付の図面を参照して提供され、添付の図面は、以下で簡単に説明される。図面は、例示的なものであり、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではなく、いくつかの構成要素及び特徴は、明確にするために誇張されている。図面は、本主題の様々な態様及び特徴を示し、本主題の1つ又は複数の実施形態又は例を全体的に又は部分的に示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】従来の加熱システムを備えた部分的(片側)風力タービンブレードモールドを示す図である。
図2】開示された主題に従った加熱システムを備えた部分的(片側)風力タービンブレードモールドを示す図である。
図3】本開示の実施形態による例示的な加熱/冷却装置を示す。
図4】本開示の実施形態による熱サイクルを示す。
図5】本開示の実施形態による熱サイクルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで、開示された主題の例示的な実施形態を詳細に参照し、その一例を添付の図面に示す。開示された主題の方法及び対応するステップは、システムの詳細な説明と併せて説明される。
【0011】
現代の風力タービンローターブレードは繊維強化プラスチックから作られている。繊維強化プラスチックは強度重量比が高いためである。ロータブレードは、典型的には、丸い先端と鋭い後端を有する翼型形状を含み、ブレードは、タービンのハブに接続するブレードルート(根元部)を含む。複数のロータブレードが、それぞれのブレードの根元でハブに接続され、風車を形成する。ブレードルートは、ブレードに補強を提供する繊維強化ポリマー内に設置された複数のルートブッシングを含む。ボルトは、ブレードルート部をハブに接続するために、ルートブッシング内のねじ山と係合される。
【0012】
典型的なタービンブレードは、2つのシェル半体を一対のモールドで成形することによって作られる。スパーキャップ(航空機の翼のスパーに類似する)、ウェブ補強材(リブ)、及び他の細部を、任意選択でブレード半体のうちの1つに取り付けることができる。接着剤は、例えば、等間隔のビードで、第1のシェルの結合周辺部/縁部に塗布される。次いで、まだモールドツール内にある第2のシェル半体を裏返し、第1のシェル半体の上に下ろす。モールドを一緒にプレスし、接着剤を硬化させ、ブレードの2つの半体を一緒に接合する。この2つのブレードの半体をペーストで接合するプロセスをブレードクロージャーと呼ぶ。
【0013】
様々な実施形態では、モールドは、当技術分野で知られている任意の適切な金属から作製することができる。様々な実施形態では、モールドは、例えば、アルミニウム、鋼、ステンレス鋼、チタン、タンタル、タングステン、又は金属の任意の適切な組み合わせ(例えば、金属合金)などの金属を含むことができる。様々な実施形態では、モールドは、ポリマー、例えば、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニルなどを含むことができる。種々の実施形態において、モールドは、機械加工(例えば、CNC機械加工)、3Dプリンティング(例えば、直接金属レーザ焼結(DMLS)及び熱溶解積層方式(FDM)を使用する)、開放成形、閉鎖成形、樹脂注入、圧縮成形、コンポジットハンドレイアップ(composite hand layup)、射出成形、引抜成形、自動化繊維配置、チューブ圧延、自動化テープ敷設、フィラメント巻き、樹脂移送成形、又は当技術分野で公知の任意の適切な製造技術によって作製されてもよい。当業者は、任意の適切な3Dプリンティング技術が、本明細書に記載される構成要素を製造するために使用されてもよいことを認識するであろう。
【0014】
ブレードのブレードシェル(すなわち、高圧側及び低圧側、又は「内側」及び「外側」)は、ガラス繊維強化エポキシ樹脂などの繊維強化ポリマーから作製される。例えば、炭素繊維(一方向及び/又は双方向)、ケブラー(Kevlar)、ガラス繊維(一方向及び/又は双方向)などの他の適切な繊維強化材を、他の繊維と一緒に、又は独立して組み込むことができる。さらに、ブレードシェルは、部品の所望の厚さ及び特性のために、任意の適切な数の繊維強化層を含むことができる。コアは、例えば、ポリマー発泡体(例えば、ポリウレタン、ジビニルセル、ポリイソシアヌレートなど)、サンドイッチコア(例えば、ノメックスハニカム、アルミニウムハニカム、バルサなど)、及び/又はポリマーハニカム材料などの任意の適切な材料から作製される。
【0015】
複合構造、例えば風力タービンブレードを形成する際に、ポリマー(エポキシ系樹脂系である)が一連のパネル又は「レイアップ」でモールド内に挿入される。設計された硬化度に達した後、これらのポリマーレイアップセグメントは、複合構造内のマトリックス成分として働き、これにより強化繊維間の均一な荷重分担を可能にし、それによって部品内に最大の機械的強度を作り出す。硬化プロセスは、ある場合には室温で進行する可能性があるが、風力タービンブレードの製造を含むほとんどの用途では、外部熱源が採用される。
【0016】
図1に示すように、従来のタービンブレードのシェル、及び小さな組み立て式の部品(即ち、せん断ウェブ及び桁(girder))の製作では、加熱ワイヤ10は、ツーリング構造、例えば下にあるモールド表面100に内蔵される。モールド表面100は、硬化プロセスをサポートするためにモールド表面12(「A面」と呼ばれる)のみに熱源として作用する。このアプローチの明らかな欠点は、このようなシステムが加熱のみに限定され、冷却を提供できないことである。さらに、この従来の構成では、発生した熱の多くは、上面20(複合ブレード自体である「B面」と呼ばれることが多い)での強制対流を介して周囲空気中に放散される。
【0017】
更に、ブレードの根元に近い領域では、複合層の厚さが増加し、これにより、A面のみに熱源を使用することが不可能でなければ、厚さ全体にわたって加熱を制御することが困難になる。さらに、A面加熱素子のみを採用することにより、B面に沿った温度の制御がさらに少なくなる。複合強化層の伝導率係数の低い値による過剰な厚さ方向の温度減衰に加えて、層の比較的高い比熱は加熱プロセスを許容できないほど遅くする。
【0018】
この問題に対処するために、本開示は、製造された複合構成要素(すなわち、B面)上に能動的加熱及び冷却を直接送達するシステムを提供する。図2に示される例示的な実施形態では、加熱ワイヤ100は、ツーリング構造、例えば下にあるモールド表面1000に内蔵される。さらに、流体チャネル302のネットワークが、製造される複合部品200を覆う真空バッグ300に組み込まれる。真空バッグは、レイアップ繊維全体にわたって樹脂を引っ張るための真空力を生成するためのバリアとして働く。これらの流体チャネル302は、加熱及び/又は冷却流体(例えば、油又は水)が全体にわたって移動し、複合部品200から熱を送達又は除去するための通路として働く。流体チャネル302は、長手方向に(例えば、根元から先端までのブレードスパンに沿って)、翼弦方向に(例えば、先端から後端まで)延在するように、及び/又はそれに対してある角度(例えば、均一又は非対称)でオフセットされるように配置することができる。
【0019】
上述のように、流体チャネル302は、ブレードの全スパンに沿って、かつ先端から後端まで延在することができる。いくつかの実施形態では、流体チャネル302は、ブレードの表面積にわたって均一なパターンで分配される。いくつかの実施態様において、流体チャネル302は、他の領域(例えば、先端)よりも密なチャネル302の分布を有するブレード(例えば、根)の領域を有するようにパターニングされ得る。流体チャネル302は、全チャネル長に沿って一定の断面(例えば、均一な直径)を有することができる。また、チャネルの一部をより大きな直径で形成することができる(例えば、スパーキャップなどの特定の構成要素/幾何学的形状での熱伝達を高めるために)。図2の例示的な実施形態に示されるように、第1の流体チャネル302aは、第2の流体チャネル302bよりも、複合部品のB面と接触するより大きな表面積を有することができる。例えば、流体チャネル302aは、スパーキャップの上部に位置することができ、スパーキャップは、周囲の膜よりも幅が広く、厚い構造であり、したがって、隣接する膜に対して追加の冷却能力を必要とする、一方、流体チャネル302bは、補助スパーキャップの上部に位置する(これは、302aの下の主スパーキャップよりも狭く、薄く、したがって、チャネル302aよりも小さい表面積を覆う)。いくつかの実施形態では、特定のセクションは、周囲空気を介した冷却にさらされたままであり(すなわち、流体チャネルによって能動的に冷却されない)、真空バッグは、ブレード膜の表面上に延在する。
【0020】
上記に加えて、又は代替的に、流体チャネルは、主チャネル(例えば、外向きに分岐)に流体的に結合される分配チャネルよりも大きな容積(例えば、直径)を有する主供給チャネル(例えば、入口、出口)として機能し、ブレードの特定領域にわたって加熱/冷却流体を導く役割を果たすことができる。換言すれば、流体チャネルネットワークは、所定の位置(例えば、根元、スパーキャップなど)への熱流体の局所的な伝送のために、より小さな分配チャネルに分岐する、より大きな入口/出口チャネルを含むことができる。いくつかの実施形態では、チャネルは、一方向流のために構成することができ、第1の部分/一連のチャネルは、ブレード表面を横切る入力及び分配チャネルとして機能し、第2の部分/一連のチャネルは、真空バッグからの回収及び取り出しのための回収/戻り及び出力チャネルとして機能する(又は、必要に応じて繰り返し/リサイクルする)。例えば、冷却流体は、ルート領域に供給され、先端部に到達するまでブレードスパンに沿って導かれ、その後、熱交換器に戻ることができる。加えて、又は代替的に、流体回路は、より小さい/複数の再循環ゾーンを備えて構成され得る。例えば、第1の「ローカルな」回路が設けられて冷却流体が根元に供給され、その冷却流体が例えばスパーキャップまでのブレードのサブ部分に沿って導かれ、熱交換器に戻る冷却流体で確立することができる。第2の「グローバルな」回路が設けられて、冷却流体が根元に供給され、ブレードスパン全体(すなわち、先端へ)に沿って導かれ、その後熱交換器に戻るようにすることができる。
【0021】
流体チャネル302は、プラスチックストリップを真空バッグの外側表面に固定して(例えば、両面テープを使用して)、漏れを防止することによって作り出すことができる通路である。図3は、流体チャネル302が形成された真空バッグ300の例示的な実施形態を示す。チャネルの形状ならびに高温又は低温流体の適用は、加熱/低温ゾーン及び用途に依存する。例えば、すぐに接着ビードを適用できるよう、主桁のB面の冷却を加速するために、冷たい流体チャネルが、根元から先端まで主桁の上に配置される。同様に、所望の硬化度に達するのに時間がかかる根元の領域については、適切な流体ポケット設計を実施して、高温流体を循環させることができ、それによって硬化プロセスを促進することができる。
【0022】
本開示の別の態様によれば、真空バッグの外表面上の流体チャネル302を通して加熱/冷却流体を送達し、循環させ、回収するための流体循環システムが提供される。例示的な(冷却)流体循環システムの概略は、図4に提供される。流体が流体チャネルポケットの端部に到達すると、流体チャネル出口を通って熱交換システムに入る。熱交換システムは、所望の熱の適用に応じて、加熱又は冷蔵ユニットとすることができる。流体の温度が一旦設計値に戻されると、流路を通って再循環させることができる。システムの加熱及び冷却能力は、流量と同様に、流入する流体の温度によって制御される。
【0023】
図5に示される例示的実施形態では、流体チャネルは、所望の熱伝達を達成するために十分な滞留時間を提供するために、変動する翼弦方向距離に沿って冷却流体を導く、下にある構成要素(例えば、スパーキャップ)を反映するパターンを有することができる。図示の実施形態では、千鳥状のチャネルパターンは、加熱された流路を表し、直線状のチャネルパターンは、冷却流路を表す(ただし、流路は直線状である必要はないことが理解されるであろう)。図示のように、熱水回路の過剰な長さは、加熱流体をブレード表面に付加的に曝し、その間の熱伝達を高める結果となる(ただし、この千鳥状の回路は、必要に応じて、冷却流体を供給することができることが理解されるであろう)。さらに、単一の流体チャネルが示されているが、任意の数のチャネルを設けることができる。ここで、各チャネルは、それ自体の流体供給入口及び流出口を有し、モールド表面を横切る流体の流れを可能にする。
【0024】
従って、本明細書に開示したB面加熱・冷却システムは、製造プロセスを加速するだけでなく、部品の厚さ方向に亘って熱をより良好に分配し、ブレード全体に亘って適切な硬化度を確保することによって、離型されたブレードの品質を向上させる。さらに、本開示は、硬化プロセス時間を短縮し、ブレードにおける不均一な硬化の程度を回避/最小化し、制御されたB面温度を提供し、ガラス転移温度(Tg)基準違反を監視/回避する。さらに、本開示は、高温表面(例えば、スパーキャップ)を低減することによって、モールド閉鎖工程(すなわち、第1のモールド半体が第2のモールド半体の上部で反転され、完全な、閉鎖されたブレードを形成する工程)における遅延を低減することによって、全体的なサイクル時間を低減する。
【0025】
本開示は、せん断ウェブ及び対応する桁キャップを有するものを含む、様々なブレード設計に適用可能である。上下のモールド膜はまた、例えばブレードの中間点から後端まで増加する厚さを有するコア材料を含むことができる
【0026】
本発明の様々な実施形態の説明は、例示の目的で提示されているが、網羅的であることも、開示された実施形態に限定されることも意図されていない。記載された実施形態の範囲及び精神から逸脱することなく、多くの修正及び変形が当業者には明らかであろう。本明細書で使用される用語は、実施形態の原理、市場で見出される技術に対する実際の適用又は技術的改善を最もよく説明するために、又は当業者が本明細書で開示される実施形態を理解することを可能にするために選択されたものである。
図1
図2
図3
図4
図5