(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】クロミア触媒を活性化するための方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/26 20060101AFI20240822BHJP
B01J 35/60 20240101ALI20240822BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20240822BHJP
B01J 37/12 20060101ALI20240822BHJP
B01J 37/26 20060101ALI20240822BHJP
C07C 17/35 20060101ALI20240822BHJP
C07C 19/08 20060101ALI20240822BHJP
C07C 21/18 20060101ALI20240822BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240822BHJP
【FI】
B01J23/26 Z
B01J35/60 G
B01J37/08
B01J37/12
B01J37/26
C07C17/35
C07C19/08
C07C21/18
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021541109
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 GB2020050087
(87)【国際公開番号】W WO2020148540
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2022-12-08
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516030797
【氏名又は名称】メキシケム フロー エセ・ア・デ・セ・ヴェ
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【氏名又は名称】長谷川 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100218800
【氏名又は名称】河内 亮
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・シャラット
(72)【発明者】
【氏名】クレア・リース
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-220400(JP,A)
【文献】特表2008-534276(JP,A)
【文献】特表2012-501826(JP,A)
【文献】特表2011-517681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 23/26
B01J 35/60
B01J 37/08
B01J 37/12
B01J 37/26
C07C 17/35
C07C 19/08
C07C 21/18
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化炭化水素のフッ素化および/またはヒドロフッ素化における使用のための酸化亜鉛を含むクロミア触媒を活性化するための方法であって、
a
)100℃~400℃の温度で前記触媒を乾燥させる工程と、
b)第1の活性化工程において、100℃~500℃の温度で、H
Fで前記触媒を処理する工程と、
c)第2の活性化工程において、100℃~500℃の温度で、
空気およびHFを
1:20~20:1のHFの空気に対するモル比で含む組成物で前記触媒を処理することと、を含む、方法。
【請求項2】
酸化亜鉛が、前記触媒中に、前記触媒の総重量に基づいて、1重量%~10重量
%のレベルで存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(b)および/または(c)が、0.1bara~20bar
aの圧力で実行される、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(b)および/または(c)が、5時間~65時間にわたって実行される、請求項1~
3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
工程(b)および/または(c)が、200℃~500
℃の温度で実行される、請求項1~
4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記触媒が、前記触媒中に1重量%~10重量%のレベルで酸化亜鉛が存在するクロミア触媒を含み、前記触媒が、0.3cm
3/g以上の全細孔容積および100Å以上の平均細孔直径を含み、前記細孔容積が、N
2吸着ポロシメトリーを使用して測定され、前記平均細孔直径が、N
2BET吸着ポロシメトリーを使用して測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒調製プロセスが、
a)金属塩溶液および水酸化物溶液を調製する工程と、
b)金属水酸化物を沈殿させるために、7.5を超えるpHで前記溶液を混ぜ合わせる工程と、
c)前記沈殿した金属水酸化物を乾燥させる工程と、
d)前記金属水酸化物を焼成して、金属酸化物を形成する工程と、
を含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒が、非晶質であるか、または前記触媒のうちの0.1~50重量%が、1つ以上のクロムの結晶性化合物および/または1つ以上の亜鉛の結晶性化合物の形態である、請求項
6または7に記載の方法。
【請求項9】
工程(b)および/または(c)が、0.1bara~20bar
aの圧力で実行される、請求項
6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(b)および/または(c)が、5時間~65時間にわたって実行される、請求項
6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(b)および/または(c)が、200℃~500
℃の温度で実行される、請求項
6~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
フッ素化および/またはヒドロフッ素化における請求項1~
11のいずれかに記載の方法に従って生産された触媒の使用。
【請求項13】
C
2~7(ヒドロ)ハロアルケンまたはC
2~7(ヒドロ)クロロフルオロアルケ
ンのフッ素化および/またはヒドロフッ素化における、請求項
12に記載の使用。
【請求項14】
前記C
2~7(ヒドロ)クロロフルオロアルケンが、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233xf)である、請求項
13に記載の触媒の使用。
【請求項15】
フッ素化炭化水素を調製するためのプロセスであって、そのプロセスが
、ハロゲン化された炭化水素を、請求項1~
11のいずれかに記載の方法に従って生産された前記触媒の存在下でフッ化水素と反応させることを含み、前記プロセスが、気相で実行される、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒を活性化するための方法と、該触媒を使用するプロセスとに関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書内の以前に公開された文献の列挙または考察は、文献が技術水準の一部であるか、または技術常識であるという認識として必ずしも解釈されるべきではない。
【0003】
ハロカーボン系化合物、特にフルオロカーボン系化合物は、現在、推進剤、発泡剤、および伝熱流体などの多くの商業および工業用途において使用されている。新たな冷媒が求められているため、伝熱流体としてのフッ素系化合物、特に(ヒドロ)フルオロオレフィンへの関心およびその使用が増加している。
【0004】
フッ素化および/またはヒドロフッ素化工程はまた、(ヒドロ)フルオロアルケンの製造プロセスにおいて一般的である。そのようなプロセスは、HFを1つ以上の(ヒドロ)ハロアルケンまたは(ヒドロ)ハロアルカンと、好ましくは触媒の存在下で、接触させることによって実施され得る。
【0005】
フッ素化および/またはヒドロフッ素化工程は、出発物質をフッ素化剤(例えば、フッ化水素)と反応させて、1つ以上のフッ素原子を出発物質に導入することを伴う。そのようなプロセスは、1つ以上のフッ素原子の出発物質への添加、および/または出発物質の1つ以上の原子の1つ以上のフッ素原子による置換を含む。
【0006】
典型的には、フッ素化および/またはヒドロフッ素化工程は、触媒作用の下で工業的に実施される。そのようなプロセスでの使用に好適な触媒は、多くの場合、遷移金属、例えば、遷移金属酸化物および/またはハロゲン化物の化合物である。そのような触媒の好ましい例としては、多くの場合、亜鉛などの別の金属を含有する、クロミアに基づくものが挙げられる。
【0007】
フッ素化および/またはヒドロフッ素化工程の前に、触媒は、通常、所望の触媒性能を達成するために活性化処理に供される。通常、これは、触媒を高温でフッ化水素で処理することを伴う。多くの場合、活性化処理の前に、不活性雰囲気での触媒の乾燥または加熱、すなわち「焼成」などの他の工程がある。
【0008】
WO2010/026382は、1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエタンの1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)へのフッ素化に触媒を関与させる前に、使用するための触媒を処理するためのそのような方法を開示している。EP 06726692では、触媒をフッ化水素およびペルクロロエチレンと接触させてペンタフルオロエタンを産生する前に、触媒を処理する。
【発明の開示】
【0009】
しかしながら、これらの活性化処理が、より長い炭素鎖を有するハロゲン化炭化水素、特にC3~7(ヒドロ)ハロアルケンをフッ素化および/またはヒドロフッ素化するプロセスのための触媒の活性化に成功するには不十分であることが発見された。触媒には、遅くて複雑な活性化挙動、安定性の欠如、および物質移行の制限があることが発見された。これらすべての制限により、触媒性能が低下する。これらの問題は、商業的に関心のあるプロセス、特に2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233xf)の2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(1234yf)への転化において観察されている。したがって、フッ素化触媒を活性化するための改善された方法を開発する必要性がある。
【0010】
さらに、ハロカーボンを伴う触媒反応は、使用に際して多くの問題を抱え、そのうちの1つは、工業規模プロセスによって、触媒が極端な温度および圧力、非常に多くの再生および腐食性試薬に供されることである。当業者は、工業用触媒の寿命にわたって活性が着実に低減し、触媒を最終的に費用の掛かる手順で交換しなければならないことを知ることになる。
【0011】
したがって、既存の触媒に対して改善された安定性、ならびに同程度または改善された活性および選択性を有する触媒の必要性がある。
【0012】
本発明の第1の態様によると、触媒を活性化するための方法であって、
a)任意選択的に、100℃~400℃の温度で触媒を乾燥させる工程と、
b)100℃~約500℃の温度で、HFを含む組成物で触媒を処理する工程と、
c)約100℃~約500℃の温度で、酸化剤および任意選択的にHFを含む組成物で触媒を処理する工程と、を含む、方法が提供される。
【0013】
酸化剤は、好ましくは、空気、酸素(O2)、塩素(Cl2)、一フッ化塩素(ClF)、三フッ化窒素(NF3)、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0014】
HFの酸化剤に対するモル比は、好ましくは1:20~20:1、より好ましくは15:1~1:3、および最も好ましくは11:1~1:1である。
【0015】
工程(b)および/または(c)は、好ましくは、0.1bara~20bara、より好ましくは3bara~10baraの圧力で実行される。
【0016】
工程(b)および/または(c)は、好ましくは、長期間にわたって実行される。期間は、規模に依存するものとして当業者によって認識されるであろう。実験室規模では、約5時間~約65時間の継続時間が好ましく、より好ましくは約8時間~約55時間である。商業運転プラントでは、このタイミングを延長する必要があり得る。商業運転プラントでは、約24時間~約168時間の継続時間が好ましい。工程(b)および工程(c)に用いられる時間の長さは、同じであっても異なっていてもよい。
【0017】
工程(b)および/または(c)は、好ましくは、約200℃~約500℃、より好ましくは約250℃~約475℃、より好ましくは約300℃~460℃、約310℃~約450℃などの温度で実行される。工程(b)および工程(c)の温度は、同じであっても異なっていてもよい。
【0018】
本発明の第2の態様によると、触媒を活性化するための方法であって、
(a)任意選択的に、100℃~400℃の温度で触媒を乾燥させる工程と、
(b)500℃~約700℃の温度で、HFを含む組成物で触媒を処理する工程と、を含む、方法が提供される。
【0019】
本発明の第2の態様の方法では、工程(b)は、好ましくは、0.1bara~20bara、より好ましくは3bara~10baraの圧力で実行される。
【0020】
本発明の第2の態様の方法では、工程(b)は、好ましくは、長期間にわたって実行される。期間は、規模に依存するものとして当業者によって認識されるであろう。実験室規模では、約5時間~約65時間の継続時間が好ましく、より好ましくは約8時間~約55時間である。商業運転プラントでは、このタイミングを延長する必要があり得る。商業運転プラントでは、約24時間~約168時間の継続時間が好ましい。工程(b)および工程(c)に用いられる時間の長さが、同じであっても異なっていてもよいことが理解されるであろう。
【0021】
本発明の第2の態様の方法では、工程(b)は、好ましくは、約500℃~約600℃、最も好ましくは約520℃の温度で実行される。
【0022】
好ましくは、触媒は、クロミアと、少なくとも1つの追加の金属またはその化合物とを含み、少なくとも1つの追加の金属は、Li、Na、K、Ca、Mg、Cs、Sc、Al、Y、Ti、Zr、HF、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、In、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、La、Ce、およびそれらの混合物から選択される。
【0023】
さらなる態様では、本発明の第1の態様に従って活性化された触媒の存在下で、前駆体から2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(1234yf)を生産するための方法が提供される。この追加の金属またはその化合物は、促進剤とも呼ばれ得る。好ましくは、少なくとも1つの追加の金属は、Li、Na、K、Ca、Mg、Cs、Cr、Zr、Nb、Pd、Ta、Zn、V、Mo、Ni、Co、In、Fe、Cu、およびそれらの混合物から選択され、さらにより好ましくは、追加の金属は、亜鉛である。当業者は、一般的に触媒において、触媒活性が、触媒の利用可能な表面積に比例すると理解されることを理解するであろう。試薬が触媒の表面と相互作用する機会が増えると、転化速度が改善されることが予想される。しかしながら、確立された教示とは対照的に、本発明者らは、意外にも、触媒の表面積を本質的に低減させ得る細孔容積および平均細孔直径の増加によって、触媒の安定性および活性の両方が増加することを発見した。
【0024】
理論に拘束されることを望むものではないが、これが、触媒を介した物質移行の増加の結果であり、この効果が、C2化合物よりもC3化合物についてより顕著であることが考えられる。また、理論に拘束されることを望むものではないが、本発明のより大きい細孔直径によって、使用中の触媒が、ヒドロフルオロプロペンなどの(ヒドロ)ハロアルケンを生産するために、より迅速に有効な細孔構造をとることが可能になる。
【0025】
固体多孔質材料の細孔構造は、いくつかの方法によって決定することができ、最も一般的に使用されているものの1つは、固体表面上への凝縮ガスの多層の吸着のBET理論(Brunauer、Emmett、およびTeller)に基づくN2の吸着および脱着、ならびに脱着中の吸着ガスの蒸発(脱着)である。窒素は、ミクロおよびメソポーラス領域を精査するための一般的な吸着質である。吸着および脱着等温線から、N2の単層の吸着からのBET表面積、P/P°=0.99で吸着された窒素の量から得られる全細孔容積を計算することができ、平均細孔直径は、吸着または脱着データのいずれかからの、BET理論またはBJH(Barrett、Joyner、およびHalenda)理論のいずれかに基づく異なる計算を使用して決定することができる。好ましくは、触媒の全細孔容積は、N2吸着ポロシメトリーによって測定される場合、0.35cm3/gまたは0.4cm3/g以上、0.45cm3/g、0.5cm3/g、0.55cm3/gなど、またはさらに0.6cm3/gである。
【0026】
好ましくは、触媒の平均細孔幅は、N2BET吸着ポロシメトリーによって測定される場合、100Å以上、例えば、110Å以上または120Å以上である。
【0027】
好ましくは、触媒の平均細孔幅は、N2BJH吸着ポロシメトリーによって測定される場合、130Å以上、例えば、140Å以上、150Å以上、または170Å以上である。
【0028】
好ましくは、触媒の平均細孔幅は、N2BJH脱着ポロシメトリーによって測定される場合、90Å以上、例えば、100Å以上、110Å以上、または120Å以上である。
【0029】
ポロシメトリー測定の他の方法が当業者に知られていることが理解される。
【0030】
触媒は、好ましくは、活性化後に5~250m2/gの表面積を有し、典型的には、触媒は、活性化後に40~50m2/gの表面積を有する。
【0031】
好ましくは、触媒は、複数の触媒粒子を含む1つ以上のペレットの形態で提供される。そのような触媒粒子は、例えば荷重下で一緒に押圧されて、ペレットを形成し得る。ペレットは、1つ以上のさらなる材料を含み得る。例えば、ペレットは、グラファイトを、好ましくは約0.5重量%~約10重量%、例えば、約1重量%~約5重量%の量で含み得る。好ましくは、ペレットは、約1mm~約100mmの最長寸法を有する。いくつかの実施形態では、ペレットは、約1mm~約10mm、例えば約3mm~約5mmの最長寸法を有し得る。
【0032】
好ましくは、触媒は、少なくとも80重量%(例えば少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも92重量%、少なくとも93重量%、少なくとも94重量%、少なくとも95重量%、または少なくとも96重量%)のクロミアを含む。有利なことには、触媒は、亜鉛/クロミア触媒であり得る。「亜鉛/クロミア触媒」という用語は、金属酸化物触媒が、クロムまたはクロムの化合物、および亜鉛または亜鉛の化合物を含むことを意味する。
【0033】
本発明の亜鉛/クロミア触媒中に存在する亜鉛または亜鉛の化合物の総量は、触媒のうちの、典型的には約0.01%~約25%、好ましくは0.1%~約25%、便宜的には0.01%~6%であり、いくつかの実施形態では、好ましくは触媒のうちの0.5重量%~約25重量%、好ましくは触媒のうちの約1~10重量%、より好ましくは触媒のうちの約2~8重量%、例えば、触媒のうちの約3~6重量%である。
【0034】
さらなる好ましい実施形態では、追加の金属化合物は、インジウム(例えば、ln2O3の形態)および/またはジルコニウム(例えば、ZrO2の形態)を含み得る。
【0035】
追加の金属またはその化合物は、典型的には、触媒のうちの約0.01%~約25%、好ましくは0.1%~約25%、便宜的には0.01%~6重量%存在し、いくつかの実施形態では、好ましくは触媒のうちの0.5重量%~約25重量%、好ましくは触媒のうちの約1~10重量%、より好ましくは触媒のうちの約2~8重量%、例えば、触媒のうちの約4~6重量%である。
【0036】
他の実施形態では、触媒は、白金、鉄、クロム、および亜鉛から選択される1つ以上の促進剤を有するアルミナ触媒であり得る。促進剤の総量は、典型的には触媒のうちの約0.1~約60重量%、好ましくは触媒のうちの約0.5~約50重量%、触媒のうちの0.5重量%~約25重量%など、または触媒のうちの約1~10重量%である。そのような実施形態では、触媒が少なくとも80重量%(例えば少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも92重量%、少なくとも93重量%、少なくとも94重量%、少なくとも95重量%、または少なくとも96重量%)のクロミアを含むことが好ましい。いくつかの実施形態では、触媒は、フッ素化形態であってもよい。例えば、触媒は、高温でHFで処理することによってフッ素化されていてもよい。
【0037】
これらの好ましい特徴の多くを、好ましい実施形態に組み合わせてもよい。したがって、本発明の第3の態様によると、触媒を活性化するための方法が提供され、触媒は、触媒中に1重量%~10重量%のレベルで酸化亜鉛が存在するクロミア触媒を含み、触媒は、0.3cm3/g以上の総細孔容積および100Å以上の平均細孔直径を有し、細孔容積は、N2吸着ポロシメトリーを使用して測定され、平均細孔直径は、N2BET吸着ポロシメトリーを使用して測定され、
a)任意選択的に、100℃~400℃の温度で触媒を乾燥させる工程と、
b)100℃~約500℃の温度で、HFを含む組成物で触媒を処理する工程と、
c)約100℃~約500℃の温度で、酸化剤および任意選択的にHFを含む組成物で触媒を処理する工程と、を含む。
【0038】
本発明の第1および第2の態様の好ましい特徴は、本発明の第3の態様に準用するように解釈されるものとする。
【0039】
好ましくは、本発明で使用される酸化亜鉛/クロミア触媒は、非晶質であり得る。これは、触媒が、例えば、X線回折によって分析されたときに、いずれの実質的な結晶特性を示さないことを意味する。
【0040】
代替的に、本発明で使用される酸化亜鉛/クロミア触媒は、部分的に結晶性であってもよい。これは、触媒のうちの0.1~50重量%が、1つ以上のクロムの結晶性化合物および/または1つ以上の亜鉛の結晶性化合物の形態であることを意味する。部分的に結晶性の触媒を使用する場合、それは、好ましくは触媒のうちの0.2~25重量%、より好ましくは0.3~10重量%、さらにより好ましくは0.4~5重量%を、1つ以上のクロムの結晶性化合物および/または1つ以上の亜鉛の結晶性化合物の形態で含有する。
【0041】
反応での使用中に、結晶化度が変化する可能性があることを理解されたい。したがって、反応で使用する前に上記で定義された結晶化度を有する触媒が、反応での使用中または使用後にこれらの範囲外の結晶化度を有することが可能である。
【0042】
触媒は、好ましくは、活性化後に5~250m2/gの表面積を有し、典型的には、触媒は、活性化後に40~50m2/gの表面積を有する。
【0043】
本発明はまた、触媒を調製するための方法も提供し、上記方法は、
a)金属塩溶液および水酸化物溶液を調製する工程と、
b)金属水酸化物(複数可)を沈殿させるために、7.5を超えるpHで溶液を混ぜ合わせる工程と、
c)沈殿した金属水酸化物を乾燥させる工程と、
d)金属水酸化物(複数可)を焼成して、金属酸化物(複数可)を形成する工程と、を含む。
【0044】
好ましくは、金属塩は、水酸化物硝酸塩などの硝酸塩を含む。好ましい実施形態では、金属塩は、クロムを含み、Cr(OH)(NO3)2などの硝酸クロム塩を含み得る。水酸化物溶液は、水酸化アンモニウム(NH4OH)を含み得る。有利なことには、工程b)は、8を超えるpHで実行される。好ましくは、工程b)は、8.1、8.2、8.3、8.4、または8.5以上のpHで実行される。
【0045】
本発明のさらなる態様では、C2~3ヒドロハロカーボン種をフッ素化するためのプロセスであって、その種を本発明による触媒と接触させることを含む、プロセスが提供される。これは、典型的には、HFの存在下で実行される。誤解を避けるために、C2~3ヒドロハロカーボンという用語は、2個または3個の炭素鎖を有し、かつ1つ以上の水素原子およびハロゲン原子(F、Cl、Br、I)を含有する飽和または不飽和化合物を含む。好ましい実施形態では、ヒドロハロカーボン種は、C3ヒドロハロカーボン種を含む。
【0046】
そのようなプロセスの例としては、トリクロロエチレンを触媒とHFの存在下で接触させて、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(134a)を生産すること、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(240db)の2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233xf)への転化、1233xfの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(1234yf)および/もしくは1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(245cb)への転化、1,1,1,3-テトラクロロプロパン(250fb)の3,3,3-トリフルオロプロペン(1243zf)への転化、または2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン(243db)の1233xfおよび/または1234yfへの転化が挙げられる。
【0047】
本発明の別の態様では、C2~3ヒドロハロカーボン種(好ましくはC3ヒドロハロカーボン種)を脱ハロゲン化水素化するためのプロセスであって、その種を触媒と接触させて、ヒドロ(ハロ)フルオロプロパンなどを触媒と接触させて、フルオロプロペン、好ましくはテトラフルオロプロペン(1234)、1234ze((E)または(Z))または1234yfなどを生産することを含む、プロセスが提供される。有利なことには、これは、245cbおよび/もしくは1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン(245eb)の2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(1234yf)および/もしくは1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(1234ze)への転化、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(245fa)の1234zeへの転化、または1-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロパンの1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd)もしくは1234zeへの転化を含み得る。本発明のさらなる態様では、HFを、飽和C2~3ヒドロハロカーボン種(好ましくはC3ヒドロハロカーボン種)から除去するためのプロセスであって、その種を本発明による触媒と接触させることを含む、プロセスが提供される。
【0048】
本発明の別の態様では、HFを、不飽和C2~3ヒドロハロカーボン種(好ましくはC3ヒドロハロカーボン種)に添加するためのプロセスであって、その種を本発明による触媒と接触させることを含む、プロセスが提供される。
【0049】
プロセスは、液相または気相で行ってもよいが、好ましくは気相で行う。プロセスは、大気圧、準大気圧、または超大気圧、典型的には0~約30bara、好ましくは約1~約20bara、15baraなどで実行され得る。
【0050】
典型的には、気相プロセスは、約100℃~約500℃(例えば、約150℃~約500℃または約100~約450℃)の温度で実行される。好ましくは、プロセスは、約150℃~約450℃、約150℃~約400℃など、例えば、約175℃~約300℃の温度で行われる。より低い温度、約150℃~約350℃など、例えば、約150℃~約300℃または約50℃~約250℃も、250fbの1243zfへの転化に使用してもよい。
【0051】
プロセスは、典型的には、約1:1~約100:1、約3:1~約50:1など、例えば、約4:1~約30:1または約5:1または6:1~約20:1または30:1のHF:有機物のモル比を用いる。プロセスの反応時間は、一般に、約1秒~約100時間、好ましくは約10秒~約50時間、約1分~約10または20時間などである。連続プロセスでは、触媒と試薬との典型的な接触時間は、約1~約1000秒、例えば、約1~約500秒、または約1~約300秒、または約1~約50、100、または200秒である。
【実施例】
【0052】
触媒活性化の実施例
3重量%のZnOを含有する3mlのクロミア触媒粒子(0.5mm~1.0mmのサイズ範囲)を、1Baraの窒素雰囲気(60ml/分)下で250℃で4時間加熱することによって乾燥させた。
【0053】
触媒を、HF雰囲気(30ml/分)下で、380℃で16時間、第1の活性化工程に供した。
【0054】
触媒を、以下に概説される条件下で第2の活性化工程に供した。
【表1】
【表2】
【0055】
触媒の実施例
活性化された触媒を、反応器内で2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233xf)(1ml/分)およびフッ素化水素(25ml/分)と接触させた。サイクル時間は、約21時間~約28時間であった。圧力は、1baraであった。
【0056】
生成されたデータは、供給物(1233xf)および主な反応生成物2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(1234yf)および1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(245cb)について、反応器オフガス(ROG)組成物の形式であった。
【0057】
【0058】
各データ点について、反応の平衡位置を算出し、次いで、1233xf転化のための瞬時正味速度定数、k’xfを算出した。
【0059】
このようにして、各実験について、時間に対する触媒の有効性を定量化し、活性および安定性に関連する有用な触媒性能特性を導き出すことが可能であった。
【0060】
各実験について、k’
xf対時間のプロットが作成され、以下の方程式を使用して適合された。
【数1】
式中、
a=初期活性
b=最終活性
k’’=触媒活性減衰速度
ここで、t=0時間での触媒活性減衰の初期速度=
【数2】
これは、以下の表に例示される。
【表5】
【0061】
圧力を6baraに増加させたことを除いて、上記と同じ条件下で触媒の実施例を繰り返した。得られた動的データを以下の表に示す。
【表6】
【0062】
本発明の方法に従って活性化された触媒は、高い初期活性を示すだけでなく、比較方法で活性化された触媒と比較した場合、上記活性のより低い減少を示す。
【0063】
細孔サイズの測定
触媒の細孔サイズは、BET Ads(4V/A)法に従って測定した。結果を以下の表に示す。
【表7】
【0064】
したがって、本特許の教示による触媒活性化処理により、多孔性が増加し、かつ活性および安定性が向上した触媒の作用がいかにもたらされるかが実証されている。