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特許7541986三次元マトリックスなしでのヒト多能性幹細胞由来人工組織構造体の生成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】三次元マトリックスなしでのヒト多能性幹細胞由来人工組織構造体の生成
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/079 20100101AFI20240822BHJP
   C12N 1/38 20060101ALI20240822BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALI20240822BHJP
【FI】
C12N5/079
C12N1/38
C12N5/0735
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021546212
(86)(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-23
(86)【国際出願番号】 EP2020053237
(87)【国際公開番号】W WO2020165059
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】19156450.9
(32)【優先日】2019-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520493902
【氏名又は名称】ミルテニイ ビオテック ベー.ファー. ウント コー.カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【弁理士】
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー,クリスティン
(72)【発明者】
【氏名】エッカルト,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ボーシオ,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】クノーベル,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】アゴルク,ダーヴィト,ヨエル
(72)【発明者】
【氏名】ハルト,オラフ,トルステン
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-506988(JP,A)
【文献】特開平07-079772(JP,A)
【文献】特表2004-515236(JP,A)
【文献】特表2016-506244(JP,A)
【文献】LI Xia et al.,A fully defined static suspension culture system for large-scale human embryonic stem cell production,Cell Death and Disease,2018年,Vol.9, No.892,p.1-9
【文献】OTSUJI G. Tomomi et al.,A 3D Sphere Culture System Containing Functional Polymers for Large-Scale Human Pluripotent Stem Cell Production,Stem Cell Reports,2014年05月06日,Vol.2,p.734-745
【文献】LANCATER A Madeline & KNOBLICH A Juergen,Generation of cerebral organoids from human pluripotent stem cells,NATURE PROTOCOLS,2014年09月04日,Vol.9, No.10,p.2329-2340
【文献】鶴岡 茉佑子,第III部 ライフサイエンスの研究開発に関連する主要トピック 8章 再生医療・幹細胞研究,ライフサイエンスフロンティア(科学技術に関する調査プロジェクト2015),2015年,p.191-202
【文献】小島 伸彦,ボトムアップ的手法による細胞集積型バイオマイクロデバイスの構築,科学研究費助成事業 研究報告書,2014年05月09日,p.1-5
【文献】LEE Wonjae & PARK Jon,3D patterned stem cell differentiation using thermo-responsive methylcellulose hydrogel molds,SCIENTIFIC REPORTS,Vol.6,p.1-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工神経組織を得るためのインビトロ方法であって、
a)ヒト多能性幹細胞の多細胞凝集塊を用意するステップ、
b)神経誘導培地中で前記多細胞凝集塊を培養し、それによって前記多細胞凝集塊が人工神経組織に分化するように誘導するステップ、
c)人工神経組織に分化するように誘導した多細胞凝集塊を1.7mPas~1500mPasの粘度を有する分化培地中、懸濁状態で培養し、それによって細胞を多細胞凝集塊として増殖させるステップであって、前記増殖させた細胞はさらに分化可能なものである、ステップ
d)ステップc)からの前記増殖した細胞の多細胞凝集塊を懸濁培養下で培養するステップ
を含み、
前記分化培地が、前記分化培地の細胞に生体適合性である粘度増強剤を含み、前記粘度増強剤が、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースであり、培地中で三次元マトリックスを構築しないものである、方法。
【請求項2】
メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースの濃度が、前記培地中0.1%~2%のメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースである、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記分化培地が、
i)動物またはヒト細胞のため基礎培地、および
ii)前記粘度増強剤
含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記分化培地が、さらに
iii)Wntシグナル伝達の活性化因子および/またはTGF-ベータ、アクチビン、ならびにnodalシグナル伝達経路に対する阻害剤
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載の方法によって得ることができる人工神経組織
【請求項6】
人工神経組織に分化するように誘導されている、ヒト多能性幹細胞に由来する懸濁状態の多細胞凝集塊を分化および増殖させるための分化培地の粘度を調整するための粘度増強剤の使用であって、前記粘度が1.7mPas~1500mPasであり、前記粘度増強剤が、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースであ前記粘度増強剤が、培地中で三次元マトリックスを構築しない、使用。
【請求項7】
メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースの濃度が、前記培地中0.1%~2%のメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースである、請求項に記載の使用。
【請求項8】
人工神経組織に分化するように誘導されている、ヒト多能性幹細胞に由来する懸濁状態の多細胞凝集塊分化および増殖させるための分化培地を含むキットであって、前記分化培地は動物またはヒト細胞のための基礎培地、および粘度増強剤を含み、
1.7mPas~1500mPasの粘度を有し前記粘度増強剤が、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースであり、前記粘度増強剤が、培地中で三次元マトリックスを構築せず、前記分化培地が、人工神経組織への前記多細胞凝集の分化のための1または複数の分化因子を含んでいる、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノイド、例えばヒト多能性幹細胞に由来する脳オルガノイドなどの人工組織構造体のインビトロ生成の分野、特に前記人工組織構造体、例えば細胞外マトリックスから独立した前記オルガノイドの生成を可能にする、既定の粘度を有する分化培地に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト多能性幹細胞(PSC)由来人工組織構造体の生成に使用される方法に応じて、種々のレベルの組織複雑性がモデル化され得る。2つの主たる3次元(3D)モデルシステム:スフェロイドおよびオルガノイドが区別され得る。スフェロイド構造体はあまり複雑でなく、細胞および細胞タイプのランダムな混合物と見なされる一方で、オルガノイドは元の(インビボの)臓器構造および機能に近い非常に複雑な組織構築物を再現し得る。両方の3D構造体とも、ヒト多能性幹細胞から生成され得る。3D構造体の生成の最も著名な例の1つは、数ある中でも(例えば、人工の腎臓、心臓、および網膜組織)、ヒト脳オルガノイド(人工神経組織)の生成である。3Dにおける種々のレベルの構造複雑性を生み出すいくつかの異なるプロトコールが公開されている。大脳オルガノイドの生成のための最も著名な現況技術プロトコールは、Lancasterら(2013、Nature:501:373)およびQuianら(2016、Cell:165:1238;2018、Nature Protocols、13:565)によって、ならびにWO2014090993A1において公開されている。それらは、脳オルガノイドの形成に向けた、発生経路に沿ったヒト多能性幹細胞の段階的な分化を記載する。すべてのプロトコールは、MatrigelTM(Corning)に基づく包埋ステップを含む。MatrigelTM包埋は、脳オルガノイドの自己組織化を促進すると広く思われている。さらに、それは、神経上皮増殖および脳室形成において役割を担うと推定される。
【0003】
さらに、皮質スフェアのためのプロトコールが、例えばPascaら(Nat Methods.2015;12(7):671~8)によって記載されている。このプロトコールは、MatrigelTM包埋ステップの使用なしでの、懸濁状態での皮質スフェアの生成を記載した。結果として、神経上皮はあまり増殖せず、前駆細胞(progenitor)ゾーンのサイズはより小さく、あまり構造化されていない。これらの前駆細胞ゾーンは、脳室様構造体よりもむしろ神経ロゼット様構造体と称される。さらに、それらは、たとえ培養下で2カ月後に到達されるサイズが、例えばLancasterら、2013によって記載される脳オルガノイドに匹敵するとしても、あまり複雑でない組織構築物を呈示する。
【0004】
要約すると、両タイプのインビトロ脳モデル化システムは、サイズおよび構造複雑性が異なる。オルガノイドは、密に詰まった神経前駆細胞を含む大きな脳室様ゾーンを生成する一方で、皮質スフェアはより小さく、より小さなより多くの神経ロゼット様構造を示し、脳の簡略化構築を表す。
【0005】
しかしながら、ヒトの発生および神経疾患を詳細に調査するためには、組織構築および細胞組成に関して、ヒト脳とのモデルシステムの高い類似性が望まれる。そうした理由で、脳オルガノイドは、たとえそれらの生成に時間がかかり、いくつかの批判的なステップ、例えばMatrigelTMにおけるオルガノイドの包埋を含有するとしても、多くの用途ゆえに好まれる。とりわけ、このプロトコールステップは時間がかかり、熟練した人材、特定の実験室設備を要し、規模拡大(並行した実験の数)/大規模処理(高容量)の開発を妨げる。さらに、MatrigelTMは、マトリックス構成要素の組成がロット間で異なる、規定されていない(non-defined)マトリックスである。これも分化効率に影響し得、バッチ間の変動につながり得、それにより製造工程の標準化を妨げる。
【0006】
これらの理由で、ヒト多能性幹細胞に由来する脳オルガノイドなどの人工組織構造体(オルガノイド)生成のための改善されたもしくは代替的な分化培地、および/または特に人工神経組織(脳オルガノイド)の生成のための前記分化培地を使用するための方法の必要性が当技術分野にある。
【発明の概要】
【0007】
大脳または脳オルガノイドの生成のための現在の方法は、例えばWO2014090993A1に開示される4つのステップ:
1)第1の培地中でヒト多能性幹細胞の多細胞凝集塊(multicellular aggregation)を形成するステップ、
2)第2の培地、すなわち神経誘導培地中で前記多細胞凝集塊を培養し、それによって前記多細胞凝集塊が神経組織に分化するように誘導するステップ、
3)第3の培地、すなわち(大脳オルガノイド)分化培地中のMatrigelTMなどの三次元マトリックスにおいて前記分化した多細胞凝集塊を培養し、それによって前記細胞を多細胞凝集塊として増殖させ、前記細胞をさらに分化させるステップ、および
4)第4の培地中でステップ3)からの前記増殖した細胞の多細胞凝集塊を懸濁培養下で培養するステップ
を含む。
【0008】
驚くべきことに、本発明者らは、分化するように誘導されている、ヒト多能性幹細胞に由来する懸濁状態の多細胞凝集塊に由来する脳オルガノイドなどの人工組織構造体(またはオルガノイド)を生成するインビトロ手順が、三次元マトリックスをある特定の粘度の対応する培地(WO2014090993A1の上述される工程における第3の培地)で置換した場合、三次元マトリックスなしで実現可能であることを今回見いだした。脳オルガノイドなどの人工組織構造体は、WO2014090993A1の上で記載される工程のステップ4で呈示されるように、その後さらに培養され得る。分化培地の粘度は、分化培地への粘度増強剤の添加によって達成され得る。粘度増強剤は、培地などの液体の粘度を増加させ得、そのような培地に含有される細胞に生体適合性である、任意の物質であり得る。粘度増強剤は、(細胞)培地などの液体の粘度を、1.7mPas~1500mPas、2mPas~1400mPas、2mPas~1000mPas、2mPas~500mPas、4mPas~1000mPas、4mPas~500mPas、4mPas~200mPas、4mPas~100mPas、6mPas~80mPas、10mPas~80mPas、または10mPas~50mPasの粘度に調整することを可能にする物質であり得る。粘度増強剤は、例えば、カラギーナン、キサンタンガム、ならびにメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースエーテル誘導体、ならびにそれらの混合物など、非ゲル化生体適合性レオロジー改質剤からなる群から選択され得る。
【発明の効果】
【0009】
今回、細胞は分化培地中で懸濁状態であり、脳オルガノイドなどの人工組織構造体(またはオルガノイド)を生成するために細胞を三次元マトリックスに包埋する必要はない。
【0010】
ゲルなどの複雑な三次元マトリックスの省略は、標準化された、例えば自動化された様式での、脳オルガノイドなどの人工組織構造体の生成を容易にし、規模拡大および大規模製造工程も可能にする。システムからMatrigelTMのロット間の変動がを取り除くことによって、さらなる標準化が達成され、およびオルガノイド包埋が必要とされないことから、より容易な取り扱いが達成される。
【0011】
驚くべきことに、本明細書に開示される分化培地を使用する本明細書に開示される方法によって得られる本明細書で生成される脳オルガノイドは、細胞を三次元マトリックスに包埋するステップを含む先行技術の方法を用いて生成されるものと類似している。当技術分野において公知の方法によって生成される脳オルガノイドと類似しており、それゆえ匹敵するものの、それらはそれらから際立っており、本明細書に開示される有益性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】分化手順の図式的概観である。ヒト多能性幹細胞の単一細胞懸濁液を、96ウェル超低接着プレートに播種した。24時間後、EB様構造体が形成され、第1の培地(M1)を神経誘導培地(培地2)によって置き換えた。5日目に、早期神経組織様構造体を24ウェルプレートに移し、粘度増強剤を含有する培地3を添加した。15日目に、発生中の神経組織を次いで10cmディッシュ(大脳オルガノイド分化培地、すなわち培地4を含有する)に移し、それをシェーカーに置く。所望の発生段階に応じて、オルガノイドは>100日間培養され得る。
図2】ヒト脳オルガノイドの生成の画像である。ヒト脳オルガノイドの生成についての代表的な透過型光学顕微鏡法写真が示されている。1日目に、細胞は、透明の取り囲みおよび一体化された構造を示す円形の胚様体様構造体を形成した。黒い内部コアは、透明な環によって取り囲まれている。播種の5日後、神経組織は円形の構造体を依然として示す。オルガノイドの内部は、いくつかの小さな構造体を示し始める。オルガノイドは、あまり小形ではないように見える。20および30日目に、オルガノイドの内部における円形の構造体が観察され得る。これらの構造体は、神経前駆細胞ゾーンを表す。オルガノイドが成長する(grow older)につれて、構造体はより高密度になる。内部構造体は、分化のこの段階では光学顕微鏡法によって検出され得ない。
図3】フローサイトメトリーを使用した脳オルガノイドの特徴付けのグラフである。オルガノイド発生の間の神経マーカー発現の変化を、発生の期間にわたって測定して、神経誘導の程度を査定した。分化の5、15日目、および30日目にオルガノイドを分析した。その目標に向けて、Multi Tissue Dissociation Kit 3TMを使用してオルガノイドを採取して、単一細胞を得た。図3Aは、5および15日目の分析された脳オルガノイド培養物についての例示的なドットプロット(フローサイトメトリー)を示している。核神経前駆細胞マーカーPax6およびSox2の共発現が示されている。二重陽性細胞の量は5日目に約90%に到達し、神経誘導の成功および大きな神経前駆細胞集団の存在を表す。それとは対照的に、前駆細胞集団における陽性細胞の量は、15日目に減少する。種々の実験についての収集されたデータが図3Bに提示される。図表は、5日目の高いPax6発現を示しており、それはその後15および30日目に約35%まで減少し、神経前駆細胞集団の減少を表す。これは、神経発生の間に生じる過程と一致しており、なぜなら神経前駆細胞の数は、ニューロンの誘導化に起因して経時的に減少し、ゆえに前駆細胞集団の減少を説明するためである。
図4】30および50日目の脳オルガノイドの特徴付けの画像である。図4Aは、頂端膜の典型的マーカーであるN-カドヘリンの発現を示している。頂端膜は、脳室を裏打ちするすべての前駆細胞ゾーン(脳室様構造体)で観察される。発現は、分析時点とは無関係である。図4Bは、核局在性神経前駆細胞マーカーSox2の発現を示している。Sox2の発現は、脳室にごく近接した細胞で主に観察され、それは通常の神経発生と相関する。さらに、TuJ1染色が示されている。この細胞骨格マーカーは早期ニューロンで検出される。脳室での前駆細胞マーカーの配置および周囲のTuJ1染色は、標準的な神経発生過程と相関する。類似の細胞構造体は、50日目にも観察される。図4C:神経発生の間で重要なさらなるマーカーは、TBR2およびPax6である。Pax6は、脳室付近に局在する神経前駆細胞の核を標識する。TBR-2陽性細胞は、より基底部に位置付けられる異なる神経前駆細胞集団を表し、脳室下帯を構成する。図4Dは、核皮質板マーカーTBR1の発現および深層ニューロンを示している。50日目に、両マーカーは、脳室帯の基底部に検出され得る。神経発生において観察されるように、TBR-1はまさに基底部位に見いだされ、発生中の皮質板を表す。それとは対照的に、CTIP2は、皮質板の頂端に見いだされ、深層ニューロンの形成を表す。
図5】粘度増強剤を含有する培地に対してMatrigelTMの使用を比較する実験組み立ての図式である。ヒト多能性幹細胞の単一細胞懸濁液を、96ウェル超低接着プレートに播種した。24時間後、EB様構造体が形成され、第1の培地を神経誘導培地(培地2)によって置き換えた。5日目に、早期神経組織を24ウェルに移した。粘度増強剤を使用した実験組み立てに関しては、メチルセルロースを有する培地を添加した。MatrigelTMを使用した実験組み立てに関しては、オルガノイドを、標準的手順を使用してMatrigelTM液滴中に包埋し、粘度増強剤なしの培地中で培養した。15日目に、発生中の神経組織を次いで10cmディッシュ(大脳オルガノイド分化培地を含有する)に移し、それをシェーカーに置く。所望の発生段階に応じて、オルガノイドは>100日間培養され得る。
図6】脳オルガノイドの生成のための、粘度増強剤を含有する培地に対するMatrigelTMの使用の比較の画像である。Lancasterら(2013、Nature:501:373)およびQuianら(2016、Cell:165:1238;2018、Nature Protocols、13:565)によって、ならびにWO2014090993A1に記載される標準的方法を使用して生成されたオルガノイドの透過型光学顕微鏡法画像が示されている。オルガノイドは、分化および培養のためにMatrigelTMに包埋される。高密度オルガノイド構造体が観察され得る。さらに、矢印によって表される一部の神経伸長が示され得る。一部の細胞は、MatrigelTM内に移動するように見える。滑らかな表面は観察され得ない。オルガノイドのバッチに応じて、あまり高密度でない構造体および流体で満たされた空洞が観察され得、部分的な非特異的分化を表し、それは、粘度増強剤を補給された培地を使用した場合には観察され得ない。それとは対照的に、MatrigelTMなしであるが粘度増強剤を使用して生成されたオルガノイドは、いかなる神経伸長または流体で満たされた空洞もなく滑らかな表面を示す。
図7】種々の培地粘度の滴定の画像である。脳オルガノイド形成を支持する粘度の値域を決定するために、種々のメチルセルロース粘度を試験した。0%、0.25%、0.5%、1%、または2%メチルセルロース中で培養された脳オルガノイドから得られた透過型光学データ(30日目のオルガノイド)が示されている。いかなる粘度増強剤もなしでのオルガノイドの培養は、オルガノイドの「緩んだ」構造体につながる。それらはあまり小形でなくなり、より房状になる。経時的に、これらオルガノイドの大多数は完全に解離し、ゆえにオルガノイドの非常に減少した収量につながる。0.25%~1%メチルセルロースの使用によって生成された脳オルガノイドはより高密度であり、非常に小形の構造体を示す。さらに、それらは滑らかな境界を有し、オルガノイド内の一部の細胞構造体が観察され得る。これは、典型的な前駆細胞ゾーンを含有する脳オルガノイドの生成の成功を表す。培地への2%メチルセルロースの添加は、非常に増加した粘度につながる。オルガノイドは、他の条件と比較して小さい。それらは非常に小形であり、いかなる目に見える特異的構造体をも内側に有しない。
図8】種々のメチルセルロース濃度から得られたオルガノイドの組織透明化の画像である。前駆細胞がオルガノイドの内部コアで形成されるかどうかを調べるために、オルガノイドを、増殖マーカーKi67について染色し、有機溶媒としてのケイ皮酸エチルに基づく組織透明化手順を使用して透明化した。透明化した脳オルガノイドを、共焦点顕微鏡法およびZスタックを使用して分析し、それを、脳室様ゾーンを含む完全なオルガノイドを示すように再構築した。0.5%および1%サンプルにおいて、環状の脳室様構造体が観察された。これらの構造体は、オルガノイド全体にわたって見いだされた。それとは対照的に、2%メチルセルロースを使用して生成されたオルガノイドは、Ki67陽性細胞を示さず、脳室様ゾーンの非存在を表す。
図9】オルガノイド形態に基づく種々の粘度増強剤の比較の画像である。7日目および25日目の時点における、ヒト脳オルガノイドの生成についての代表的な透過型光学顕微鏡法写真が示されている。0.5%メチルセルロース、0.21%カルボキシメチルセルロース、および0.25%ヒドロキシエチルセルロースを、培地3において粘度増強剤として使用した。7日目に、3つすべての条件におけるオルガノイドは、内部の部分に一部の小さな構造体を示し、表面で膨らみ、進行中の分化および増殖を表す。30日目に、オルガノイドの内部における円形の構造体が観察され得、神経前駆細胞ゾーンを表す。両日とも、3つすべての条件は同等のように見える。
図10】フローサイトメトリーに基づく種々の粘度増強剤の比較のグラフである。神経マーカー発現をオルガノイド発生の30日目に測定して、培地3において種々の粘度増強剤を使用して分化効率を比較した。その目標に向けて、Multi Tissue Dissociation Kit 3TMを使用してオルガノイドを採取して、単一細胞を得た。核神経前駆細胞マーカーPax6およびSox2、ならびに早期ニューロンにおける細胞骨格マーカーTuJ1の発現が示されている。3つすべての条件は、33~40%のSox2、10~15%のPax6、および45~50%のTuJ1の発現を有して、同程度のマーカー発現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
第1の態様において、本発明は、人工組織構造体、例えば人工神経組織(脳オルガノイド)に分化するように誘導されている、ヒト多能性幹細胞に由来する懸濁状態の多細胞凝集塊の分化および増殖のための分化培地であって、前記培地は動物またはヒト細胞のための基礎培地を含み、前記分化培地は、1.7mPas~1500mPas、2mPas~1400mPas、2mPas~1000mPas、2mPas~500mPas、4mPas~1000mPas、4mPas~500mPas、4mPas~200mPas、4mPas~100mPas、6mPas~80mPas、10mPas~80mPas、または10mPas~50mPasの粘度を有する、分化培地を提供する。
【0014】
優先的には前記粘度は4mPas~100mPasであり、より優先的には粘度は6mPas~80mPasであり、最も優先的には粘度は10mPas~80mPasである。
【0015】
前記分化培地は、1.7mPas~1500mPas、2mPas~1400mPas、2mPas~1000mPas、2mPas~500mPas、4mPas~1000mPas、4mPas~500mPas、4mPas~200mPas、4mPas~100mPas、6mPas~80mPas、10mPas~80mPas、または10mPas~50mPasの前記粘度が、前記分化培地における粘度増強剤の存在によって達成され、それゆえ前記分化培地が、
i)動物またはヒト細胞のための基礎培地、および
ii)粘度増強剤
を含み得、前記分化培地が、1.7mPas~1500mPas、2mPas~1400mPas、2mPas~1000mPas、2mPas~500mPas、4mPas~1000mPas、4mPas~500mPas、4mPas~200mPas、4mPas~100mPas、6mPas~80mPas、10mPas~80mPas、または10mPas~50mPasの粘度を有するものである。
【0016】
前記分化培地は、三次元マトリックスなしであり得る。
【0017】
前記粘度増強剤は、細胞培養培地中で三次元マトリックスを構築しない。前記粘度増強剤は、分化培地の細胞に生体適合性であり得る。前記粘度増強剤は、例えば非ゲル化生体適合性レオロジー改質剤であり得る。レオロジー改質剤は、カラギーナン、キサンタンガム、ならびにメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースエーテル誘導体、ならびにそれらの混合物であり得る。前記粘度増強剤は、例えば、カラギーナン、キサンタンガム、ならびにメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースエーテル誘導体、ならびにそれらの混合物からなる生体適合性レオロジー改質剤の群から選択され得る。優先的には、前記粘度増強剤は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、またはその組み合わせである。
【0018】
前記粘度増強剤は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースであり、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースの濃度が、前記培地中0.1%~2%のメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースであるものである。
【0019】
前記粘度増強剤は、優先的にはメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースであり、前記分化培地の粘度を1.7mPas~1500mPasの値に増加させるものである。
【0020】
前記分化培地は、人工組織構造体への前記多細胞凝集塊の分化のための1つまたは複数の分化因子を付加的に含み得る。
【0021】
前記1つまたは複数の分化因子は、前記多細胞凝集塊を、人工神経組織に、人工心臓組織に、人工腎臓組織に、または人工網膜組織に分化させ得る。
【0022】
前記人工組織構造体は人工神経組織であり得、前記分化培地は、Wntシグナル伝達の活性化因子、ならびにTGF-ベータ、アクチビン、およびnodalシグナル伝達経路に対する阻害剤からなる群から選択される1つまたは複数の分化因子を任意で含み得るものである。
【0023】
驚くべきことに、人工神経組織に分化するように誘導されている、ヒト多能性幹細胞に由来する懸濁状態の前記多細胞凝集塊の前記分化および増殖は、前記1つまたは複数の分化因子の添加なしの前記分化培地中でもうまくいく。
【0024】
前記人工組織構造体は心臓オルガノイドであり得、前記分化培地は、Wnt活性化因子および阻害剤、BMP、アクチビン、およびbFGF経路の活性化因子からなる群から選択される1つまたは複数の分化因子を含み得るものである。
【0025】
前記人工組織構造体は腎臓オルガノイドであり得、前記分化培地は、Wnt活性化因子およびFGFシグナル伝達の活性化因子からなる群から選択される1つまたは複数の分化因子を含み得るものである。
【0026】
前記人工組織構造体は網膜オルガノイドであり得、前記分化培地は、Wnt阻害剤およびソニックヘッジホッグ経路の活性化因子からなる群から選択される1つまたは複数の分化因子を含み得るものである。
【0027】
前記分化培地は、本明細書に開示されるまたはWO2014090993A1に開示される、人工神経組織(脳オルガノイド)を得るための方法内で使用され得る。もちろん、WO2014090993A1に開示される方法において、前記分化培地は、ステップ3(MatrigelTMなどの三次元マトリックスにおいて前記分化した多細胞凝集塊を培養するステップ)の培地と置き換わる。
【0028】
人工神経組織(脳オルガノイド)以外の人工組織構造体(オルガノイド)、例えば人工心臓組織(心臓オルガノイド)、人工腎臓組織(腎臓オルガノイド)、または人工網膜組織(網膜オルガノイド)を得る方法のためのステップは、人工神経組織(脳オルガノイド)を得るステップとは異なり得る。しかし、人工組織構造体(オルガノイド)を得るためのこれらすべての方法は、三次元マトリックスを使用する、本明細書に開示される分化培地の使用によって置き換えられ得るステップを共通して有する。
【0029】
前記多能性幹細胞は、ヒト胚性幹細胞またはヒト誘導多能性幹細胞であり得る。
【0030】
さらなる態様において、本発明は、脳オルガノイド(人工神経組織)を得るためのインビトロ方法であって、
a)ヒト多能性幹細胞の多細胞凝集塊を用意するステップ、
b)誘導培地(神経誘導培地)中で前記多細胞凝集塊を培養し、それによって前記多細胞凝集塊が脳オルガノイド(人工神経組織)に分化するように誘導するステップ、
c)分化培地中にて懸濁状態で前記分化した多細胞凝集塊を培養するステップであって、前記分化培地は、1.7mPas~1500mPas、2mPas~1400mPas、2mPas~1000mPas、2mPas~500mPas、4mPas~1000mPas、4mPas~500mPas、4mPas~200mPas、4mPas~100mPas、6mPas~80mPas、10mPas~80mPas、または10mPas~50mPasの粘度を有し、それによって細胞を多細胞凝集塊として増殖させ、前記細胞をさらに分化させるステップ
を含む、方法を提供する。
【0031】
前記脳オルガノイドを得るための方法は、付加的なステップ:
d)ステップc)からの前記増殖した細胞の多細胞凝集塊を懸濁培養下で培養するステップ
を含むものである。
【0032】
前記方法のステップa)において提供され得る、ヒト多能性幹細胞の前記多細胞凝集塊は、「ヒト多能性幹細胞からの多細胞凝集塊の生成のための培地」中で生成され得る。
【0033】
ヒト多能性幹細胞からの多細胞凝集塊の生成のための培地は、当技術分野において周知であり、例えばEirakuら(Cell Stem Cell、2008、3:519~532)、US20110091869、WO2011055855A1、およびWO2014090993A1において開示される。
【0034】
ヒト多能性幹細胞からの多細胞凝集塊の生成のための前記培地(または培地A)は、i)動物またはヒト細胞のための基礎培地、およびii)Rock阻害剤、を含み得る。Rock阻害剤、例えばチアゾビビン、Y27632の添加が好ましい。そのような培地は、例えば実施例において使用される。
【0035】
人工神経組織に分化させるヒト多能性幹細胞由来多細胞凝集塊の誘導のための培地(神経誘導培地)は、当技術分野において周知であり、例えばEirakuら(Cell Stem Cell、2008、3:519~532)、US20110091869、WO2011055855A1、およびWO2014090993A1において開示される。
【0036】
多細胞凝集塊から人工神経組織への分化のための、前記方法のステップb)の前記神経誘導培地(または培地B)は、i)動物またはヒト細胞のための基礎培地、ii)TGF-ベータ、アクチビン、およびNodalシグナル伝達経路に対する阻害剤、ならびにiii)骨形態形成タンパク質(BMP)阻害剤、を含み得る。
【0037】
脳オルガノイド(人工神経組織)を得るための前記方法は、前記分化培地が、
i)動物またはヒト細胞のための前記基礎培地、ならびに
ii)前記粘度増強剤、ならびに任意で
iii)Wntシグナル伝達の活性化因子、ならびに/またはTGF-ベータ、アクチビン、およびnodalシグナル伝達経路に対する阻害剤
を含むものである。
【0038】
ヒト多能性幹細胞からの多細胞凝集塊の生成のための前記培地中でiPS細胞などのヒト多能性幹細胞を多細胞凝集塊として培養する前記ステップは、1~5日間、優先的には24時間実施され得る。特に、この培養ステップは0~1日目に実施される。前記神経誘導培地中でのこれらの多細胞凝集塊からの人工神経組織の誘導は、4~7日間、優先的には4日間、例えば分化の1~4日目に実施され得る。分化培地中で細胞を培養する培養ステップは、8~12日間、優先的には10日間実施され得る。特に、前記ステップは5~15日目に実施され得る。増殖した多細胞凝集を培養するための前記培地中での懸濁培養(粘度増強剤を含有する分化培地中で細胞を培養した後の)は、撹拌および/または振とう培養(シェーカー、バイオリアクターなど)であり得る。発生段階に応じて、前記懸濁培養は、増殖した多細胞凝集を培養するための前記培地中にて、撹拌および/または振とう条件下で、最高100日間またはさらにより多くの日数維持され得る。
【0039】
本明細書に開示される方法によって発生する人工神経組織(脳オルガノイド)は、例えば大脳オルガノイド、中脳オルガノイド、または後脳オルガノイドであり得る。脳オルガノイドの種類またはタイプの発生は、腹側タイプの前脳オルガノイドの生成につながるソニックヘッジホッグなど、種々の小分子の添加または除外に依存し得、一方でCHIRおよびソニックヘッジホッグの添加は、オルガノイドにおいて生成される脳領域の尾部化(caudalization)につながる。小分子の組み合わせに応じて、種々の脳領域に対するオルガノイドが生成され得る。
【0040】
前記方法は、前記分化培地が、上で開示される前記培地の細胞に生体適合性である粘度増強剤を含み、それによって前記分化培地の前記粘度を1.7mPas~1500mPas、2mPas~1400mPas、2mPas~1000mPas、2mPas~500mPas、4mPas~1000mPas、4mPas~500mPas、4mPas~200mPas、4mPas~100mPas、6mPas~80mPas、10mPas~80mPas、または10mPas~50mPasに調整するものである。
【0041】
前記分化培地は、三次元マトリックスなしであり得る。
【0042】
前記粘度増強剤は、細胞培養培地中で三次元マトリックスを構築しない。優先的には、前記粘度増強剤は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、またはその組み合わせである。
【0043】
メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースであり、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースの濃度が、前記培地中0.1%~2%のメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースである、前記粘度増強剤。
【0044】
前記粘度増強剤、優先的にはメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースであり、前記分化培地の粘度を1.7mPas~1500mPasの値に増加させるものである。
【0045】
前記方法のステップc)の前記分化培地(培地C)は、さらなる細胞運命決定(specification)および神経上皮増殖に使用され得る。前記分化培地は動物またはヒト細胞のための基礎培地を含み得、前記分化培地は、1.7mPas~1500mPas、2mPas~1400mPas、2mPas~1000mPas、2mPas~500mPas、4mPas~1000mPas、4mPas~500mPas、4mPas~200mPas、4mPas~100mPas、6mPas~80mPas、10mPas~80mPas、または10mPas~50mPasの粘度を有する。
【0046】
前記分化培地は、1.7mPas~1500mPas、2mPas~1400mPas、2mPas~1000mPas、2mPas~500mPas、4mPas~1000mPas、4mPas~500mPas、4mPas~200mPas、4mPas~100mPas、6mPas~80mPas、10mPas~80mPas、または10mPas~50mPasの前記粘度が、前記分化培地における粘度増強剤の存在によって達成され、それゆえ前記分化培地は、
i)動物またはヒト細胞のための基礎培地、および
ii)粘度増強剤
を含み得、前記分化培地が、1.7mPas~1500mPas、2mPas~1400mPas、2mPas~1000mPas、2mPas~500mPas、4mPas~1000mPas、4mPas~500mPas、4mPas~200mPas、4mPas~100mPas、6mPas~80mPas、10mPas~80mPas、または10mPas~50mPasの粘度を有するものである。
【0047】
前記粘度増強剤は、前記分化培地の細胞に生体適合性であり得る。前記粘度増強剤は、例えば非ゲル化生体適合性レオロジー改質剤であり得る。レオロジー改質剤は、カラギーナン、キサンタンガム、ならびにメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースエーテル誘導体、ならびにそれらの混合物であり得る。前記粘度増強剤は、例えば、カラギーナン、キサンタンガム、ならびにメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースエーテル誘導体、ならびにそれらの混合物からなる生体適合性レオロジー改質剤の群から選択され得る。
【0048】
優先的には、前記粘度増強剤は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、またはその組み合わせである。
【0049】
前記粘度増強剤は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースであり、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースの濃度が、前記培地中0.1%~2%のメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースである。
【0050】
前記粘度増強剤は、優先的にはメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースであり、前記分化培地の粘度を1.7mPas~1500mPasの値に増加させるものである。
【0051】
前記分化培地は、人工神経組織への前記多細胞凝集の分化のための1つまたは複数の分化因子を付加的に含み得る。
【0052】
前記分化培地は、Wntシグナル伝達の活性化因子、ならびにTGF-ベータ、アクチビン、およびnodalシグナル伝達経路に対する阻害剤からなる群から選択される1つまたは複数の分化因子を任意で含み得る。
【0053】
上述されるように、人工神経組織に分化するように誘導されている、ヒト多能性幹細胞に由来する懸濁状態の前記多細胞凝集の前記分化および増殖は、前記1つまたは複数の分化因子の添加なしの前記分化培地中でもうまくいく。
【0054】
それゆえ、前記分化培地は、本明細書に開示される粘度を生み出すメチルセルロースなどの本明細書に開示される粘度増強剤を含有する培地から構成され得る。培地は、N2(トランスフェリン、インスリン、プロゲステロン、プトレシン、セレナイト)、L-グルタミンからさらに構成され得る。さらなる細胞運命決定および神経上皮増殖のために、Wnt活性化因子、例えばCHIR99021、ならびに/またはTGF-β、アクチビン、およびNodalシグナル伝達経路の活性化因子、例えばSB431542が添加され得る。そのような培地は、例えば実施例において使用される。
【0055】
前記分化培地(または培地C)は、例えばWO2014090993A1に開示されるMatrigelTMなどの三次元マトリックスの使用または必要なしで、さらなる細胞運命決定および神経上皮増殖(方法のステップc)に使用され得る。
【0056】
ステップc)からの細胞の前記増殖した多細胞凝集を懸濁培養下で前記培養するステップ(方法のステップd)は、「増殖した多細胞凝集を培養するための培地」中で実施され得る。増殖した多細胞凝集を培養するためのそのような培地は、当技術分野において周知であり、例えばWO2014/090993A1において開示される。増殖した多細胞凝集を培養するための前記培地(または培地D)は、i)動物またはヒト細胞のための基礎培地、ならびにii)レチノイン酸およびレチノール、を含み得る。
【0057】
それゆえ、増殖した多細胞凝集を培養するための前記培地は、脳オルガノイドを懸濁培養下で培養するために使用され得る。培地は、例えばNB21補給剤(MACS(登録商標)NeuroBrew(登録商標)-21、Miltenyi Biotec)またはその任意の構成要素から構成され得る。そのような培地は、例えば実施例において使用される。
【0058】
本明細書に開示される方法のステップdの懸濁培養(すなわち、増殖した多細胞凝集を培養するための前記培地中に粘度増強剤を含有する分化培地中で細胞を培養した後の)は、撹拌および/または振とう培養(例えば、シェーカーまたはバイオリアクター)であり得る。
【0059】
上で記載される培地のいずれかは、栄養素、緩衝剤、および酸素をさらに含有し得る。培地は、成長因子をさらに含み得る、または成長因子を欠如し得る。好ましい栄養素は、炭水化物、とりわけグルコースまたはフルクトースなどのモノヘキソースまたはモノペントースを含む。好ましい実施形態において、任意の培地は、血清およびゼノフリーである。
【0060】
前記多能性幹細胞がヒト誘導多能性幹細胞である、脳オルガノイドを得るための前記方法。
【0061】
さらなる態様において、本方法は、ヒト多能性幹細胞に由来する人工組織構造体を得るために使用される細胞培地の粘度を調整するための粘度増強剤の使用であって、前記粘度は、1.7mPas~1500mPas、2mPas~1400mPas、2mPas~1000mPas、2mPas~500mPas、4mPas~1000mPas、4mPas~500mPas、4mPas~200mPas、4mPas~100mPas、6mPas~80mPas、10mPas~80mPas、または10mPas~50mPasである、使用を提供する。
【0062】
一態様において、本発明は、本明細書に開示される脳オルガノイドを得るためのインビトロ方法によって得ることができる脳オルガノイドを提供する。
【0063】
前記方法はインビトロで実施され、神経組織は、天然に成長する神経組織の複雑性には到達しないため、脳オルガノイドを得るための前記方法によって得られる脳オルガノイドは人工神経組織である。
【0064】
本明細書に開示される方法によって得ることができる脳オルガノイド(人工神経組織)は、MatrigelTMなどの三次元マトリックスを必要としおよび以下のように特徴付けられている、当技術分野において公知のおよび例えばWO2014/090993に開示される脳オルガノイドに似ている。
【0065】
脳オルガノイドは、少なくとも2つの異なる前駆細胞層および神経分化層の細胞の異種集団から構成され、少なくとも1つの前駆細胞層は、外側放射状グリア細胞を含む。脳オルガノイドは、十分に組織化された大脳皮質を呈示する。さらに、これらの組織は、ヒトに特異的ないくつかの特徴、すなわちマウスには存在しない、実質的な外側放射状グリア集団の存在および皮質外脳室下帯層(extra cortical subventricular zone layer)の組織化を呈示する。外側放射状グリア細胞の存在は、最も区別しやすい特徴の1つであるように見えるが、もちろん他も存在する。例えばEirakuら(2008)は、彼らの培養において、皮質組織の放射状グリアは12日目以降に減少し、外側放射状グリア細胞に発達するのに明らかに失敗したことを記載しており、外側放射状グリアは、それらの場所ならびに形態(体液で満たされた脳室様空洞との頂端接続の欠如)によって特徴付けられる。WO2014/090993の三次元神経組織培養によれば、外側放射状グリア細胞は、好ましくは前駆細胞層にあり、特に放射状グリアが存在する脳室帯の基底部に局在する脳室下帯にある。
【0066】
WO2014/090993に開示される脳オルガノイドは、種々の分化グレードの層を含む分化した組織に発達し得る。3D構造体において、これは、オルガノイドの別個の区画として観察可能であり得る。好ましい実施形態において、培養人工神経組織は、少なくとも2つの層由来の区画を含む。そのような層は、球状の組織本体、例えばそこから個別の層が発達している本体を囲むように形作られ得る。特に、組織は、頂端および背側組織区画の際立った発達を示し得る。
【0067】
WO2014/090993に開示される脳オルガノイドは、脳またはその前駆体に見いだされる実質的にすべての細胞を含む大脳組織であるまたはそれに似ている。そのような細胞は、特に信頼区間を含む未分化細胞の平均を上回るレベルにある選択的遺伝子発現マーカーによって識別され得る。そのようなマーカーは、フローサイトメトリーおよび免疫蛍光に使用される特異的抗体によって識別され得る。
【0068】
好ましくは、脳オルガノイドの細胞は、前脳マーカーFoxG1およびPax6から選択される1つまたは複数の遺伝子発現マーカーを発現する。
【0069】
脳オルガノイドは、N-カドヘリン(Catherin)、Sox2、TuJ1、Pax6、Otx2、FoxG1、Tbr1、Tbr2、Satb2、Ctip2、またはその任意の組み合わせから選択される1つまたは複数の発現マーカーを発現する細胞を含むことによって代替的にまたは付加的に特徴付けられ得る。
【0070】
好ましくは、脳オルガノイドは、FoxG1を発現する細胞を含む。FoxG1は、背側皮質のアイデンティティを有する細胞で発現される。
【0071】
好ましくは、脳オルガノイドは、Pax6を発現する細胞を含む。Pax6は、前頭皮質のアイデンティティを有する細胞で発現される。
【0072】
優先的には、脳オルガノイドは、脳室付近に局在する、Sox2およびPax6を発現する細胞を含む。これらのマーカーは、前脳前駆細胞集団で発現される。
【0073】
好ましくは、脳オルガノイドは、TBR-2を発現する細胞を含む。TBR-2は、中間前駆細胞で発現される。
【0074】
好ましくは、脳オルガノイドは、Tuj1を発現する細胞を含む。Tuj1は、皮質内部線維層のアイデンティティを有する細胞で発現される。
【0075】
好ましくは、脳オルガノイドは、Brn2を発現する細胞を含む。Brn2は、後期誕生ニューロン(外部領域のニューロン)の細胞で発現される。
【0076】
好ましくは、脳オルガノイドは、Satb2を発現する細胞を含む。Satb2は、後期誕生ニューロン(外部領域のニューロン)の細胞で発現される。
【0077】
好ましくは、脳オルガノイドは、Ctip2を発現する細胞を含む。Ctip2は、早期誕生ニューロン(内部領域のニューロン)の細胞で発現される。
【0078】
好ましくは、脳オルガノイドは、TBR-1を発現する細胞を含む。TBR-1は、背側皮質板内の皮質介在ニューロンの細胞で発現される。
【0079】
本明細書に開示される脳オルガノイドを得るための方法によって得ることができる脳オルガノイドは、WO2014/090993に開示される大脳オルガノイドの特徴のほとんどまたは多くを共通して有するものの、これら2種類のオルガノイドの間にはいくらかの違いが存在する。違いは、オルガノイドを得るために使用される異なる方法に遡り得る。本明細書に開示される方法によって得られる脳オルガノイドは、ECMを使用する当技術分野において公知の方法によって得られる脳オルガノイドと比較して、より少ない神経伸長を有する(図6を参照されたい)。本明細書に開示される方法によって得られる脳オルガノイドは、ECMなどの三次元マトリックスを使用する当技術分野において公知の方法によって得られる脳オルガノイドよりも、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%少ない神経伸長を有し得る。優先的には、本明細書に開示される脳オルガノイドは、神経伸長を有しない可能性があり、それゆえ滑らかな表面を有し得る。先行技術の脳オルガノイドは、オルガノイドの細胞がECMに侵入するため滑らかな表面を有せず、それゆえ神経伸長を生み出す。
【0080】
本明細書に開示される方法によって得られる脳オルガノイドは、先行技術の方法によって得られる脳オルガノイドと比較して有益性を有する。
- より少ない非特異的神経分化、およびオルガノイドの外側へのより少ない指向性神経細胞(neural)移動(図6)。
-(胚)発生の間にMatrigelTMが存在しないため、オルガノイドは神経発生をより厳密にリモデリングする。
- 生み出されたニューロンはオルガノイド内にとどまり、これが神経分化および皮質板発生神経層形成を改善し得る。
【0081】
本発明の方法によって発生した脳オルガノイドが、WO2014/090993A1に開示されるものなど、ECMの存在を必要とする先行技術の方法によって発生した脳オルガノイドとの生化学的差異も有することは自明である。これは、例えば、本明細書に開示される発生中のオルガノイドの細胞とECMとの間の接触エリアの消失によって暗示的である(図6)。
【0082】
さらなる態様において、本発明は、人工組織構造体に分化するように誘導されている、ヒト多能性幹細胞に由来する懸濁状態の多細胞凝集の分化および増殖のための分化培地を含むキットであって、前記培地は動物またはヒト細胞のための基礎培地を含み、前記分化培地は、1.7mPas~1500mPas、2mPas~1400mPas、2mPas~1000mPas、2mPas~500mPas、4mPas~1000mPas、4mPas~500mPas、4mPas~200mPas、4mPas~100mPas、6mPas~80mPas、10mPas~80mPas、または10mPas~50mPasの粘度を有する、キットを提供する。
【0083】
前記キットは、前記分化培地の1.7mPas~1500mPas、2mPas~1400mPas、2mPas~1000mPas、2mPas~500mPas、4mPas~1000mPas、4mPas~500mPas、4mPas~200mPas、4mPas~100mPas、6mPas~80mPas、10mPas~80mPas、または10mPas~50mPasの前記粘度が、前記分化培地における粘度増強剤の存在によって達成され、それゆえ前記分化培地が、
i)動物またはヒト細胞のための基礎培地、および
ii)粘度増強剤
を含み得、前記分化培地が、1.7mPas~1500mPas、2mPas~1400mPas、2mPas~1000mPas、2mPas~500mPas、4mPas~1000mPas、4mPas~500mPas、4mPas~200mPas、4mPas~100mPas、6mPas~80mPas、10mPas~80mPas、または10mPas~50mPasの粘度を有するものである。
【0084】
前記キットは、前記粘度増強剤が、前記分化培地の細胞に生体適合性であり得るものである。
【0085】
前記粘度増強剤は、例えば非ゲル化生体適合性レオロジー改質剤であり得る。レオロジー改質剤は、カラギーナン、キサンタンガム、ならびにメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースエーテル誘導体、ならびにそれらの混合物であり得る。前記粘度増強剤は、例えば、カラギーナン、キサンタンガム、ならびにメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースエーテル誘導体、ならびにそれらの混合物からなる生体適合性レオロジー改質剤の群から選択され得る。
【0086】
優先的には、前記粘度増強剤は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、またはその組み合わせである。
【0087】
前記粘度増強剤は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースであり、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースの濃度が、前記培地中0.1%~2%のメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースである。
【0088】
前記粘度増強剤は、優先的にはメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースであり、前記分化培地の粘度を1.7mPas~1500mPasの値に増加させるものである。
【0089】
前記キットは、前記分化培地が1つまたは複数の分化因子を付加的に含み得るものである。
【0090】
前記キットは、前記1つまたは複数の分化因子が、人工神経組織への、人工心臓組織への、人工腎臓組織への、または人工網膜組織への前記多細胞凝集の分化のための分化因子であり得るものである。
【0091】
前記キットは、前記分化培地が人工神経組織への分化のためのものであり、前記分化培地が、Wntシグナル伝達の活性化因子、ならびにTGF-ベータ、アクチビン、およびnodalシグナル伝達経路に対する阻害剤からなる群から選択される1つまたは複数の分化因子を任意で含み得るものである。
【0092】
前記キットは、前記分化培地が人工神経組織への分化のためのものであり、
a)動物またはヒト細胞のための基礎培地を含む分化培地であって、1.77mPas~1496.82mPas、2mPas~1400mPas、2mPas~1000mPas、2mPas~500mPas、4mPas~1000mPas、4mPas~500mPas、4mPas~200mPas、4mPas~100mPas、6mPas~80mPas、10mPas~80mPas、または10mPas~50mPasの粘度を有する分化培地、
b)ヒト多能性幹細胞からの多細胞凝集の生成のための培地であって、
i)動物またはヒト細胞のための基礎培地
ii)Rock阻害剤
を含む培地、
c)神経誘導培地であって、
i)動物またはヒト細胞のための基礎培地
ii)TGF-ベータ、アクチビン、およびNodalシグナル伝達経路に対する阻害剤
iii)骨形態形成タンパク質(BMP)阻害剤
を含む培地
を含み得るものである。
【0093】
前記キットは、
d)本明細書に開示される方法に従った、増殖した多細胞凝集を培養するための培地であって、
i)動物またはヒト細胞のための基礎培地
ii)レチノイン酸およびレチノール
を含む培地
をさらに含み得る。
【0094】
前記キットの前記分化培地は、Wntシグナル伝達の活性化因子、ならびにTGF-ベータ、アクチビン、およびnodalシグナル伝達経路に対する阻害剤からなる群から選択される1つまたは複数の分化因子を任意で含み得る。
【0095】
本発明の態様、例えば本発明の第1の態様に関して、本明細書で規定されるすべての定義、特徴、および実施形態は、本明細書に開示される本発明の他の態様の文脈においても準用される。
【0096】
実施形態
本発明の一実施形態において、本明細書に開示される分化培地は、動物またはヒト細胞のための基礎培地、ならびに約10~15mPA秒の前記培地の粘度につながる粘度増強剤としての0.5%メチルセルロース、Wntシグナル伝達の活性化因子、ならびにTGF-ベータ、アクチビン、およびnodalシグナル伝達経路に対する阻害剤を含む。
【0097】
ヒト誘導多能性幹細胞(iPSC)などの多能性幹細胞は、ヒト多能性幹細胞からの多細胞凝集の生成のための培地中で24時間以内に多細胞凝集に発達し得る。ヒト多能性幹細胞からの多細胞凝集の生成のための前記培地は、a)動物またはヒト細胞のための基礎培地、およびii)Rock阻害剤、を含み得る。
【0098】
前記多細胞凝集は神経誘導培地中で培養され得、4日間以内に人工神経組織に分化し得る。神経誘導培地は、i)動物またはヒト細胞のための基礎培地、ii)TGF-ベータ、アクチビン、およびNodalシグナル伝達経路に対する阻害剤、ならびにiii)骨形態形成タンパク質(BMP)阻害剤、を含み得る。
【0099】
次いで、分化した多細胞凝集を、人工神経組織の分化のために、上述される分化培地中にて懸濁状態で約10日間培養する。任意で、i)動物またはヒト細胞のための基礎培地、ならびにii)レチノイン酸およびレチノールを含む、増殖した多細胞凝集を培養するための培地中にて懸濁培養で、増殖した多細胞凝集を10~15日間培養することによって、これらの人工神経組織をさらに培養し得る。
【0100】
本発明の1つの実施形態において、本明細書に開示される脳オルガノイドを得るためのインビトロ方法は、方法の間の任意の段階で、細胞における関心対象の遺伝子の発現を減少させるまたは増加させることを含む、発生神経学的組織効果を調査する付加的なステップを含む。
【0101】
本発明の1つの実施形態において、本明細書に開示される脳オルガノイドを得るためのインビトロ方法は、発生神経学的組織効果を調査する前記方法を実施することを含む、関心対象の発生神経学的組織欠損を治療するのに適した候補治療用作用物質をスクリーニングする付加的なステップ、および方法の間の任意の段階で、好ましくはすべての段階で、前記細胞に候補作用物質を投与するステップを含む。
【0102】
本発明の1つの実施形態において、本明細書に開示される脳オルガノイドは、前記オルガノイドに候補薬物を投与するステップ、および前記オルガノイドの細胞の関心対象の活性を判定するステップ、および前記候補薬物を投与しないオルガノイドに対する細胞の活性と前記活性とを比較するステップを含む、神経学的効果について候補薬物を試験するインビトロ方法において使用され、示差的活性は神経学的効果を表す。
【0103】
本発明の1つの実施形態において、本明細書に開示される脳オルガノイドは、前記オルガノイドを提供しおよび関心対象の分化した神経細胞を単離するステップを含む、または関心対象の分化した神経細胞を単離するステップをさらに含む本明細書に開示される脳オルガノイドを得るための方法に従って前記オルガノイドを生成するステップを含む、分化した神経細胞を得るインビトロ方法において使用される。
【0104】
定義
別様に定義されない限り、本明細書で使用される技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって共通に理解されるものと同じ意味を有する。
【0105】
本明細書で使用される「多能性幹細胞」という用語は、自己再生する能力がありかつ胚性胚葉の内胚葉、中胚葉、および外胚葉のいずれかに分化する潜在性を有する細胞、ならびにこれに由来する細胞を指す。これらの基準は、胚性幹細胞(ESC)および誘導多能性幹細胞(iPSC)に当てはまる。通常、これらの細胞は、ヒト起源のもの、すなわちヒト細胞である。「プライム型(primed state)」多能性幹細胞、「ナイーブ型(naive state)」多能性幹細胞、または「リセット段階(reset stage)」多能性幹細胞と称される、種々の程度の多能性が当技術分野において公知である。
【0106】
本明細書で使用される胚性幹細胞(ESC)という用語は、着床前の早期段階での胚盤胞の内部細胞隗に由来するヒト多能性幹細胞を指す。ESCは自己再生する能力があり、かつ胚性胚葉の内胚葉、中胚葉、および外胚葉のいずれかに分化する潜在性を有し、ならびにこれに由来する細胞である。ESCは、多能性マーカーOCT3/4の発現を示す。ヒト胚性幹細胞は、例えばWO03/046141において開示されるように、破壊なしで胚から単離され得る。
【0107】
本明細書で使用される「誘導多能性幹細胞(iPSC)」という用語は、より低い潜在力の細胞、すなわちより分化した細胞、典型的には体細胞の、多能性の状態への変換によって生成されるヒト多能性細胞を指し、結果として生じる細胞は、自己再生する能力がありかつ胚性胚葉の内胚葉、中胚葉、および外胚葉のいずれかに分化する潜在性を有し、ならびにこれに由来する細胞である。iPSCは、多能性マーカーOCT3/4の発現を示す。リプログラミングは、核移植、細胞融合、または因子誘導性リプログラミング、すなわちOCT3/4、SOX2、KLF4、C-MYC、NANOG、LIN28などであるがそれらに限定されない1つもしくは複数のリプログラミング因子の誘導性発現など、当技術分野において公知の方法によって達成され得る。リプログラミング因子は、ウイルス形質導入によってまたはトランスフェクションによって、核酸またはタンパク質として導入され得る。種々の培養条件およびリプログラミング因子組み合わせは、「プライム型」多能性幹細胞、「ナイーブ型」多能性幹細胞、または「リセット段階」多能性幹細胞と称される、種々の程度の多能性をもたらし得る。
【0108】
「人工組織構造体」または「オルガノイド」という用語は互換可能に使用され得、本明細書で使用されるこれらの用語は、形態および/または生理機能がヒト組織に似ている、多能性幹細胞から発生している細胞のネットワークを指す。細胞ネットワークは、ヒト臓器発生の過程に見られる細胞構造体/組織構築物を再現する。それに起因して、人工組織構造体は、分析の時点に応じて、種々の発生段階との類似性を示し得る。発生中の臓器に応じて、種々の組織構築物が予想される。人工組織構造体はインビトロで発生し、例えば胚発生の間に発生する天然に(インビボで)成長した組織構造体とは同一でないため、それらは「人工」である。
【0109】
「人工神経組織」または「脳オルガノイド」という用語は互換可能に使用され得、本明細書で使用されるこれらの用語は、発生中のヒト脳部分の形態に似ている多細胞構造体を指す。これらの多細胞構造体は、ヒト脳発生の間に観察される典型的な神経マーカーの発現を示す。さらに、組織構築物全体、細胞タイプ、細胞局在、および細胞複雑性は、発生中のヒト脳と適合する。それに反して、脳スフェロイドは、あまり複雑でない構造体を示し、組織複雑性を欠如する。そうした理由で、それらは脳オルガノイドの定義の一部ではない。人工神経組織はインビトロで発生し、例えば胚発生の間に発生する天然に(インビボで)成長した神経組織とは同一でないため、それらは「人工」である。
【0110】
本明細書で使用される「多能性幹細胞に由来する多細胞凝集塊」という用語は、多能性幹細胞が、本明細書に開示される「多能性幹細胞からの多細胞凝集塊の生成のための培地」などの多能性幹細胞培地中で培養された場合に現れる、多能性幹細胞を含む細胞の凝集塊を指す。前記多細胞凝集塊は、先行技術においてさらに標準的な用語である「胚様体」とも称され得る。多細胞凝集塊は、より特殊化した人工組織構造体または特殊化した組織にさらに発達し得る。
【0111】
本明細書で使用される多細胞凝集塊という用語は、1つの三次元構造体におけるいくつかの細胞の集合体を定義する。多細胞凝集塊内の細胞は、分化の時点に応じて、同じ種類のもの、例えば多能性幹細胞、または異なる分化段階のものであり得る。
【0112】
三次元マトリックスとは、細胞外マトリックスなどの生体適合性マトリックスの三次元構造体である。
【0113】
本明細書で使用される「細胞外マトリックス」(ECM)という用語は、周囲細胞に構造的および生化学的支持体を提供する、結合組織によって分泌される細胞外分子の集合体を指し(天然に存在するECM)、ならびに/または、例えば幹細胞に対してそれらを培養する間に、細胞ニッチを模倣するマトリックスもしくは足場を構築し得る、天然の、半合成の、および合成の生体材料もしくはそれらの混合物を指す。これらすべての構造的支持体、マトリックス、および足場は、多能性幹細胞などの細胞がこれらの構造体に、すなわちECM(三次元マトリックス)に付着し得るという固有の特徴を有し、それゆえ前記細胞は、細胞培養培地中で懸濁状態にない。
【0114】
足場は三次元ネットワークを提供する。前記足場にとって適切な合成材料は、多孔質固体、ナノ繊維、ならびに例えば自己集合ペプチドを含めたペプチドなどのヒドロゲル、ポリエチレングリコールホスフェート、ポリエチレングリコールフマレート、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリセルロースアセテート、および/またはその共重合体から構成されるヒドロゲル、から選択されるポリマーを含む。
【0115】
ECMは、多様な多糖、水、エラスチン、および糖タンパク質から構成され、糖タンパク質は、コラーゲン、エンタクチン(ニドゲン)、フィブロネクチン、およびラミニンを含む。ECMは結合組織細胞によって分泌される。種々のタイプの糖タンパク質および/または種々の組み合わせの糖タンパク質を含めた種々の組成を含む、種々のタイプのECMが公知である。前記ECMは、容器内で例えば線維芽細胞などのECM産生細胞を、これらの細胞の除去および例えば多能性幹細胞の添加前に培養することによって用意され得る。細胞外マトリックス産生細胞の例は、コラーゲンおよびプロテオグリカンを主に産生する軟骨細胞、IV型コラーゲン、ラミニン、間質プロコラーゲン、およびフィブロネクチンを主に産生する線維芽細胞、ならびにコラーゲン(I、III、およびV型)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、ヒアルロン酸、フィブロネクチン、およびテネイシン-Cを主に産生する結腸筋線維芽細胞である。あるいは、前記ECMは商業的に提供される。市販の細胞外マトリックスの例は、細胞外マトリックスタンパク質(Invitrogen)およびMatrigelTM(BD Biosciences)である。
【0116】
再度、ECMは、培養下の細胞の付着/接着を可能にする固化構造を有する。細胞培養は、制御された条件下で細胞を、一般的にはそれらの天然環境の外で成長させる(「培養する」とも称される)工程である。関心対象の細胞が例えば生きた組織から単離された後、それらはその後慎重に制御された条件下で維持され得る。これらの条件は、各細胞タイプによって異なるが、一般的には、必須の栄養素(アミノ酸、炭水化物、ビタミン、ミネラル)、成長因子、ホルモン、および気体(CO、O)を供給し、生理化学的環境(pH緩衝剤、浸透圧、温度)を調節する基質または培地を有する適切な容器からなる。ほとんどの細胞は、表面または人工基板を要し(接着または単層培養)、一方で他のものは、培養培地中で自由に浮かんで成長し得る(懸濁培養または「懸濁状態」)。それゆえ、「懸濁(細胞)培養」という用語は、培養の細胞または多細胞ユニットまたは多細胞凝集塊が、培養培地中で自由に浮かんで成長する、すなわちそれらは懸濁状態であることを意味する。
【0117】
「人工組織構造体に分化するように誘導されている、ヒト多能性幹細胞に由来する多細胞凝集塊」とは、例えば人工神経組織の場合、発生の間に、多細胞性の細胞凝集塊が、いくつかの円形クラスター(ロゼット)を発生させるであろう極性神経上皮構造体および神経上皮シートを形成することを意味する。これらのステップは、本明細書に開示されおよび例えばEiraku(2008)、US2011/0091869A1、およびWO2011/055855A1によって記載される神経誘導培地によって制御され得る。
【0118】
本明細書で使用される「人工組織構造体に分化するように誘導されている、ヒト多能性幹細胞に由来する懸濁状態の多細胞凝集塊の分化および増殖のための分化培地」という用語は、人工組織構造体、すなわち多細胞凝集塊よりも分化した細胞構造体への、多細胞凝集塊のさらなる分化および/または発達を意味する。それゆえ、あるいは「人工組織構造体に分化するように誘導されている、ヒト多能性幹細胞に由来する懸濁状態の多細胞凝集塊のさらなる分化および増殖のための分化培地」という用語が本明細書で使用され得る。
【0119】
「人工組織構造体に分化するように誘導されている多細胞凝集塊の分化および増殖」という用語は、例えば人工神経組織の場合、いくつかの円形クラスター(ロゼット)を発生させるであろう極性神経上皮構造体および神経上皮シートが、より分化した構造体にさらに発達するであろうことを意味する。
【0120】
本明細書で使用される「動物またはヒト細胞のための基礎培地」という用語は、カーボネートに基づく緩衝剤で、好ましくは7.2~7.6のpHに、優先的には約7.4のpHに緩衝される、動物またはヒト細胞のための規定された合成培地を指し、一方で細胞は、5%~10%CO、好ましくは約5%COを含む大気中で培養される。動物またはヒト細胞に適した好ましい基礎培地は、グルタミン、インスリン、ペニシリン/ストレプトマイシン、およびトランスフェリンを補給されたDMEM/F12およびRPMI 1640から選択され得る。さらに好ましい実施形態において、血清フリー培養のために最適化されおよびインスリンをすでに含む、Advanced DMEM/F12またはAdvanced RPMIが使用される。この場合、Advanced DMEM/F12またはAdvanced RPMI培地は、好ましくは、グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを補給される。前記培地は、精製された、天然の、半合成の、および/または合成の成長因子を補給され、ウシ胎仔血清または子ウシ胎仔血清などの規定されていない構成要素を含まないことがさらに好ましい。例えばB27、N-アセチルシステイン、およびN2などの補給剤は、一部の細胞の増殖を刺激し、必要に応じて培地にさらに添加され得る。
【0121】
流体の粘度は、剪断応力による漸進的変形に対するその抵抗性の測定である。細胞培地などの液体に関して、それは、「濃さ」という非公式な概念に相当する。
【0122】
運動学的粘度を測定するための1つのやり方は、ガラス毛細管粘度計である。別の選択肢は、以下の式を使用することによって、粘度(Pas)に対する溶液中の粘度増強剤のxグラムまたは%からの算出であり得る。
η1/8=(c・α)+1
η=(c・α+1)
η=mPasでの溶液粘度
α=各メチルセルロースに特異的な定数
c=%での溶液中のメチルセルロースの濃度
【0123】
例としての0.5%メチルセルロース;α=0.747
η=(0.5%・0.474+1)
η=12.66mPa・s
【0124】
粘度の物理単位はパスカル秒(Pas)である。mPasはミリパスカル秒を意味する。
【0125】
本明細書に開示される分化培地において使用され得る粘度の値域を、粘度増強剤メチルセルロースを使用することによって例示的に決定した。1.7mPasの前記培地の粘度は、前記培地中0.1%メチルセルロースと相関し、3.9mPasの前記培地の粘度は、前記培地中0.25%メチルセルロースと相関し、12.66mPasの前記培地の粘度は、前記培地中0.5%メチルセルロースと相関し、86.76mPasの前記培地の粘度は、前記培地中1%メチルセルロースと相関し、1500mPasの前記培地の粘度は、前記培地中2%メチルセルロースと相関する。
【0126】
「粘度増強剤」という用語は、培地などの液体の粘度を、1.7mPas~1500mPas、2mPas~1400mPas、2mPas~1000mPas、2mPas~500mPas、4mPas~1000mPas、4mPas~500mPas、4mPas~200mPas、4mPas~100mPas、6mPas~80mPas、10mPas~80mPas、または10mPas~50mPasの値に増加させ得およびそのような培地に含有される細胞に生体適合性であり得る、任意の物質であり得る。粘度増強剤は、例えば、カラギーナン、キサンタンガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースエーテル誘導体、ならびにそれらの混合物など、非ゲル化生体適合性レオロジー改質剤からなる群から選択され得る。
【0127】
細胞培養培地などの液体中で三次元マトリックスを構築しないことは、粘度増強剤の特徴である。
【0128】
粘度増強剤は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロース、ならびにそれらの混合物からなる群から選択されるセルロースエーテル誘導体であり得る。本発明の好ましい実施形態において、粘度増強剤はメチルセルロースであり得る。本明細書で使用されるレオロジー改質剤(増粘剤)は、細胞培養培地などの液体の安定性および流動特性に影響を及ぼす。それらは非ゲル化であるべきであり、すなわちそれらはゲルを形成すべきではない。それらは生体適合性でもあるべきである。例は、カラギーナン、キサンタンガム、ならびにメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースエーテル誘導体、ならびにそれらの混合物であり得る。
【0129】
優先的には、前記粘度増強剤は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、またはその組み合わせであり得る。
【0130】
前記粘度増強剤は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースであり得、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースの濃度は、前記培地中0.1%~2%のメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースであり得る。
【0131】
前記粘度増強剤は、優先的にはメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースであり、分化培地の粘度を1.7mPas~1500mPasの値に増加させるものである。
【0132】
カラギーナン(またはカラゲニン)は、食用紅藻から抽出される線状硫酸化多糖のファミリーである。それらの硫酸化の程度が異なる、3つの主な種類のカラギーナンがある。カッパ-カラギーナンは、二糖あたり1個の硫酸基を有し、イオタ-カラギーナンは2個、およびラムダ-カラギーナンは3個有する。
【0133】
キサンタンガムは、多くの産業的用途を有する多糖である。それは、成分が分離するのを阻止する有効な増粘剤および安定剤である。それは、発酵工程を使用して単糖から産生され得、その名前は、使用される細菌の種Xanthomonas campestrisに由来する。
【0134】
生体適合性材料/物質の文脈における生体適合性という用語は、材料/物質が不活性であり、例えば細胞培養物のまたはヒト身体の細胞に非毒性であることを意味する。
【0135】
本明細書で使用される「分化因子」または「分化剤」という用語は、あまり特殊化していない細胞または組織からより特殊化した細胞または組織への分化またはさらなる分化を誘引するおよび/または誘導する作用物質を指す。
【0136】
本明細書で使用される「阻害剤」とは、分子または経路のシグナル伝達機能に干渉する(例えば、低下させる、減少させる、抑制する、排除する、または遮断する)化合物または分子(例えば、小分子、ペプチド、ペプチド模倣体、天然化合物、siRNA、アンチセンス核酸、アプタマー、または抗体)を指す。阻害剤は、指名されたタンパク質(シグナル伝達分子、指名されたシグナル伝達分子と関わる任意の分子、指名された関連分子)の任意の活性を変化させる任意の化合物または分子であり得る。
【0137】
本明細書で使用される「活性化因子」とは、分子または経路のシグナル伝達機能、例えばWntシグナル伝達、の活性化を増加させる、誘導する、刺激する、活性化する、促す、または増強する化合物を指す。
【0138】
本明細書で使用するとき、「分化」という用語は、多能性幹細胞などの特殊化していない細胞が、ニューロン、心臓、肝臓、または筋肉細胞などの特殊化した細胞の特徴を取得する過程を指す。分化は、通常では細胞表面に埋め込まれたタンパク質を伴うシグナル伝達経路を通じて、細胞の遺伝子と細胞の外側の物理的および化学的条件との相互作用によって制御される。
【0139】
本明細書で使用するとき、細胞に関して「分化を誘導すること」という用語は、デフォルト細胞タイプ(遺伝子型および/または表現型)を非デフォルト細胞タイプ(遺伝子型および/または表現型)に変化させることを指す。ゆえに、「(ヒト)多能性幹細胞において分化を誘導すること」とは、多能性幹細胞が、遺伝子型(例えば、遺伝子発現の変化)および/または表現型(例えば、タンパク質マーカーの発現の変化)など、多能性幹細胞とは異なる特徴を有する子孫細胞に分裂するように誘導することを指す。
【0140】
Wntシグナル伝達経路は、Wntタンパク質が、フリズルド受容体ファミリーメンバーの細胞表面受容体に結合した場合に生じる一連の事象によって定義される。これは、アキシン、GSK-3、およびタンパク質APCを含むタンパク質の複合体が細胞内β-カテニンを分解するのを阻害するディシェベルドファミリータンパク質の活性化をもたらす。結果として生じる富化した核β-カテニンは、TCF/LEFファミリー転写因子による転写を増強する。
【0141】
Wntアゴニスト(またはWnt活性化因子)は、細胞におけるTCF/LEF媒介性転写を活性化する作用物質として本明細書で定義される。それゆえ、Wntアゴニストは、Wntファミリータンパク質、細胞内β-カテニン分解の阻害剤、およびTCF/LEFの活性化因子のいずれかおよびすべてを含めた、フリズルド受容体ファミリーメンバーに結合しおよび活性化する真のWntアゴニストから選択される。
【0142】
Wntアゴニストは、Wntファミリーメンバー、R-スポンジンファミリー、ノーリン、およびGSK阻害剤からなる群から選択され得る。
【0143】
Wntファミリーメンバーは、Wnt-1/Int-1;Wnt-2/Irp(Int-1関連タンパク質);Wnt-2b/13;Wnt-3/Int-4;Wnt-3a;Wnt-4;Wnt-5a;Wnt-5b;Wnt-6;Wnt-7a;Wnt-7b;Wnt-8a/8d;Wnt-8b;Wnt-9a/14;Wnt-9b/14b/15;Wnt-10a;Wnt-10b/12;Wnt-11;およびWnt-16を含む。
【0144】
R-スポンジンファミリーは、R-スポンジン-1、R-スポンジン-2、R-スポンジン-3、およびR-スポンジン-4を含む。
【0145】
公知のGSK阻害剤は、低分子干渉RNA(siRNA)、リチウム、ケンパウロン、SB216763およびSB415286(Sigma-Aldrich)、ならびにGSK-3とアキシンとの相互作用を阻止するFRATファミリーメンバーおよびFRAT由来ペプチドを含む。
【0146】
本発明の一実施形態において、前記WntアゴニストはR-スポンジン1を含むまたはそれからなる。R-スポンジン1は、好ましくは、少なくとも50ng/ml、より好ましくは少なくとも100ng/ml、より好ましくは少なくとも200ng/ml、より好ましくは少なくとも300ng/ml、より好ましくは少なくとも500ng/mlの濃度で細胞培養培地に添加され得る。R-スポンジン1の最も好ましい濃度は、およそ500ng/mlまたは500ng/mlである。幹細胞の培養の間、前記Wntファミリーメンバーは、好ましくは2日ごとに細胞培養培地に添加され、一方で培養培地は、好ましくは4日ごとに新たにされる。
【0147】
本発明の別の実施形態において、Wntアゴニストは、R-スポンジン、Wnt-3a、およびWnt-6からなる群から選択される。より好ましくは、R-スポンジンおよびWnt-3aが両方ともWntアゴニストとして使用される。好ましい濃度は、Rスポンジンに関しておよそ500ng/mlまたは500ng/ml、Wnt3aに関しておよそ100ng/mlまたは100ng/mlであり得る。
【0148】
TGF-ベータ、アクチビン、およびnodalシグナル伝達経路に対する阻害剤は、(特異的経路の)シグナル伝達カスケードの活性化を阻止する、天然に存在するサイトカインまたは化学合成された小分子のいずれかの物質である。下流カスケードは活性化されなくなると考えられ、それゆえ下流遺伝子の活性化または阻害は阻止される。シグナル伝達経路阻害剤は、経路の種々のレベル、例えばシグナル伝達受容体、主要調節性の、例えば酵素に作用し得る。
【0149】
オルガノイドは、本物そっくりの微小解剖学的性質を示す、三次元でインビトロで産生される、臓器の小型化および簡略化版である。それらは、組織、胚性幹細胞、または誘導多能性幹細胞由来の1個または数個の細胞に由来し、それは、それらの自己再生能および分化能のおかげで三次元培養下で自己組織化し得る。
【0150】
脳オルガノイドは、脳の本物そっくりの微小解剖学的性質を示す、三次元でインビトロで産生される、脳の小型化および簡略化版である。そのようなオルガノイドの構造体は、例えば本明細書に記載される。脳オルガノイドの特異的異型は大脳オルガノイドである。
【0151】
本発明は、その範囲に限定を課すものとして決して解釈されるべきでない以下の実施例によってさらに解説される。
【実施例1】
【0152】
粘度増強剤を有する培地を使用したPSC由来大脳オルガノイドの生成
ヒト脳オルガノイドの生成のために、ヒト多能性幹細胞を標準的手順を使用して単一細胞に解離させた。幹細胞クローンに応じて、7500~20000個細胞を、アクチビンA、bFGF、またはTGFベータなどの典型的なサイトカインを欠如する標準的幹細胞培地中にて、96ウェル超低接着プレートに播種した。24時間以内に、細胞はクラスター化し、円形の高密度構造体の形成が観察された。播種のほぼ24時間後、培地を、Quianら(2016、Cell:165:1238;2018、Nature Protocols、13:565)およびWO2014090993A1(neural induction medium)などに示される神経誘導培地によって置き換えた(図1)。培地交換を、5日目まで1日おきに行った。5日目に、早期神経組織を24ウェルプレートに移し、本明細書に開示される粘度増強剤として0.5%メチルセルロースを含有する培地3を添加した。15日目に、発生中の神経組織を10cmディッシュに移し、それをシェーカーに置く(図1)。所望の発生段階に応じて、オルガノイドは>100日間培養され得た。15日目から、オルガノイドを、Quianら(2016、Cell:165:1238;2018、Nature Protocols、13:565)およびWO2014090993A1などに記載される大脳オルガノイド分化培地中で培養した。
【0153】
オルガノイド構造体の生成の間、いくつかの形態学的変化が透過型光学顕微鏡法を使用して観察され得た(図2)。播種の24時間後、円形の多細胞凝集塊が形成された。これらの構造体は、一体化した境界および高密度コアを示し、それはより透明な環で取り囲まれた。5日目まで、多細胞構造体の全体サイズは増加した(図2d5)。さらに、オルガノイドの内部コアはより不均一な構造を示し、オルガノイドの内部における構造再配置を表した。構造体は、依然として高密度でありかつ小形であった。発生が進むにつれて、オルガノイドはサイズが増大し、一部の構造再配置が観察され得た。20および30日目に、オルガノイドの内部における円形の構造体が発生した。典型的に、これらの構造体は、「中空の」黒い空洞を取り囲む内部環を示した。内部環は外部環によってさらに取り囲まれ、構造体の端を示した。この配置は胚脳発生に類似しており、流体で満たされた脳室は、脳室付近の支配的頂端膜および基底部位上の基底膜を有する前駆細胞ゾーンによって裏打ちされる。これらの構造体は、神経前駆細胞ゾーンに形態学的に似ている。オルガノイドが成長する(grow older)につれて、構造体はより高密度になった。内部構造体は、透過型光学顕微鏡法によって検出され得なかった。
【実施例2】
【0154】
フローサイトメトリーを使用した大脳オルガノイドの特徴付け
オルガノイド発生の間の神経マーカー発現の変化を、発生の期間にわたって測定して、神経誘導の程度を査定した。分化の5、15日目、および30日目にオルガノイドを分析した。その目標に向けて、Multi Tissue Dissociation Kit 3TM(Miltenyi Biotec GmbH)を使用してオルガノイドを採取して、単一細胞を得た。簡潔には、オルガノイドをエッペンドルフカップに移し、dPBSで2回洗浄し、次いで酵素ミックスを添加した。発生段階に応じて、大脳オルガノイドを37℃で10分間(5日目/15日目のオルガノイド)または15分間(30日目のオルガノイド)インキュベートした。その後、停止試薬を添加し、上下にピペッティングすることによってオルガノイドを解離させた。単一細胞懸濁液を、FoxP3 Staining Buffer Set(Miltenyi Biotec GmbH)を使用して、神経前駆細胞マーカーPax6およびSox2の発現について染色した。染色された細胞を、MACS Quant AnalyzerおよびMACS Quantify Softwareを使用して分析した。
【0155】
5日目に、神経前駆細胞マーカーPax6およびSox2の高い発現が観察され得た(図3)。ドットプロット(pot)は>90%の重複発現を示し、幹細胞の高い神経誘導および神経前駆細胞の存在を表す。それとは対照的に、15および30日目に、両マーカーの発現は約35%まで減少し、神経前駆細胞集団の減少を表した。これは、神経発生の間に生じる過程と一致しており、なぜなら神経前駆細胞は経時的に枯渇し、ニューロンを生み出し、ゆえに前駆細胞集団の減少を説明するためである。
【実施例3】
【0156】
オルガノイドの特徴付け
大脳オルガノイドを、実施例1に記載されるように生成した。脳オルガノイドの特徴付けを30日目および50日目に実施した。その目標に向けて、オルガノイドを固定し、凍結切片化し(20μM)、神経発生に典型的である特異的抗体で染色した。完全なプロトコールは、WO2014090993A1に記載される。
【0157】
代表的な横断面が図4に示されている。頂端膜の完全性を示すために、オルガノイドをN-カドヘリンの発現について染色した。脳室周囲に高い発現が観察され、頂端膜の存在を示した。発現は、分析時点とは無関係であった。
【0158】
さらに、オルガノイドを、神経前駆細胞マーカーSox2の発現について分析した。Sox2の発現は脳室付近に主に観察され、神経発生の間に予想される神経前駆細胞層を表した。
【0159】
神経前駆細胞層は、TuJ1陽性細胞層によって取り囲まれる。このマーカーは早期ニューロンで発現し、それはオルガノイドにおける早期神経産出を裏付ける。脳室での前駆細胞マーカーの配置および周囲のTuJ1染色は、標準的な神経発生過程と相関する。この配置は50日目にも観察される。
【0160】
神経発生で公知のさらなるマーカーは、TBR2およびPax6である。Pax6は、脳室付近に局在する神経前駆細胞を標識する。Sox2およびPax6の発現は重複する。両マーカーは、脳室付近に局在する細胞を標識する。TBR-2陽性細胞は、より基底部に位置付けられる異なる神経前駆細胞集団を表し、脳室下帯を構成する。
【0161】
さらに、皮質板マーカーTBR1の発現および深層ニューロンを分析した。50日目に、両マーカーは、脳室帯に対して基底部に検出され得る。神経発生において観察されるように、TBR1はまさに基底部位に見いだされ、発生中の皮質板を表す。それとは対照的に、CTIP2は、皮質板の頂端に見いだされ、深層ニューロンの形成を表す。
【0162】
最後に、本発明者らは、オルガノイドに対するすべての特徴的マーカーが発現されると言える。
【実施例4】
【0163】
粘度増強剤としてのメチルセルロースおよびMatrigelTM包埋を用いた分化培地の比較
メチルセルロース培地条件とMatrigelTM包埋オルガノイドとを比較するために、2つの異なるプロトコールを使用した。メチルセルロース培地条件のオルガノイドを、実施例1で説明されるプロトコールを使用して生成した。それとは対照的に、プロトコールをMatrigelTM条件オルガノイドに適応させた。この条件では、5日目に神経組織をMatrigelTM液滴中に包埋した。包埋ステップは、Lancasterら;Nature Protocols、第9巻、2329~2340ページ(2014)に記載される。粘度増強剤を有する培地は、この条件では使用されなかった(図5)。他のすべてのステップは、実施例1におけるものと同じであった。透過型光学顕微鏡法によって両条件を互いに比較すると、いくらかの違いが明らかになった(図6)。MatrigelTM包埋オルガノイドに関して、高密度構造体が観察され得た。さらに、矢印によって表される一部の神経伸長が示され得る。一部の細胞は、MatrigelTM内に移動するように見える。滑らかな表面は観察され得ない。
【0164】
それとは対照的に、MatrigelTMなしであるがメチルセルロース培地を使用して生成されたオルガノイドは、いかなる神経伸長もなく滑らかな表面を示した。さらに、MatrigelTM条件におけるオルガノイドは、流体で満たされた空洞(嚢胞様構造体)を含有する非特異的構造体の形成への傾向を示した。これらの構造体は、粘度増強剤を使用した場合には見当たらなかった。
【0165】
さらに、脳室様構造体/オルガノイドの量を分析した。脳室様構造体をカウントするために、オルガノイドを神経前駆細胞マーカーSox2で染色した。その後、Klingbergら;JASN 2017年2月、28(2)452~459のECi組織透明化プロトコールを使用して、オルガノイドを透明にした。共焦点顕微鏡法を使用して、蛍光写真を撮影した。脳室様ゾーンを、MatrigelTMおよび粘度増強剤条件および2つの異なるiPS細胞クローンに関してカウントし、図表に提示した。F10およびK10に関して、<5個の脳室がカウントされた(図8)。それとは対照的に、本明細書に開示される培地を使用して生成されたオルガノイドにおいて、脳室カウント数の増加が観察された。
【実施例5】
【0166】
種々のメチルセルロース濃度を使用した種々の培地粘度の滴定
オルガノイド形成を支持する粘度の値域を決定するために、種々のメチルセルロース粘度を試験した。その目標に向けて、粘度増強剤の濃度を0%、0.25%、0.5%、1%、または2%に調整した。プロトコールにおける他のすべてのステップは同じままであった。図7Aは、0%、0.25%、0.5%、1%、または2%メチルセルロース中で培養されたオルガノイドから得られた透過型光学顕微鏡法データを示している。いかなる粘度増強剤もなしでのオルガノイドの培養は、オルガノイドの解離した構造体につながる。それらは小形でなくなり、より房状になる。経時的に、これらオルガノイドの大多数は完全に解離し、ゆえにオルガノイドの非常に減少した収量につながる。前駆細胞ゾーンがオルガノイドの内部で形成されるかどうかを調べるために、オルガノイドを、増殖マーカーKi67について染色し、ECiに基づく標準的な組織透明化手順を使用して透明化した。透明化したオルガノイドを共焦点顕微鏡法を使用して分析し、Zスタックを、脳室様ゾーンを含む完全なオルガノイドを示すように再構築した(図7B)。さらに、脳室様構造体の量を見ると、前駆細胞ゾーンは観察され得なかった。それゆえ、粘度増強剤なしでのオルガノイドの生成は好ましくない。
【0167】
0.25%~1%メチルセルロースに関して作り出された写真を見ると、これらのオルガノイドはより高密度であり、非常に小形の構造体を示す。さらに、それらは一体化した境界を有し、オルガノイド内の一部の細胞構造体が観察され得る。これは、典型的な前駆細胞ゾーンを含有する脳オルガノイドの生成の成功を表す。これは、多数の脳室様構造体が観察され得た組織透明化データによってさらに強調され得る。
【0168】
興味深いことに、2%メチルセルロースを培地に添加した後、培地は非常に粘性になる。オルガノイドは、他の条件と比較してサイズの減少を示す。それらは非常に小形であり、いかなる形態学的構造体をも内側に有しない。これは、オルガノイドが典型的な前駆細胞ゾーンを形成し得なかったことを表す。さらに、組織透明化の後に、脳室様構造体は検出され得なかった。
【実施例6】
【0169】
種々の粘度増強剤の比較
他の粘度増強剤の利用可能性を評価するために、本発明者らは、メチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースの添加後に生成されたオルガノイドの形態を比較した。その目標に向けて、培地3の粘度を、0.5%メチルセルロース、0.21%カルボキシメチルセルロース、および0.25%ヒドロキシエチルセルロースを使用して増強した。プロトコールにおける他のすべてのステップは同じままであった(実施例1)。図9は、0.5%メチルセルロース、0.21%カルボキシメチルセルロース、または0.25%ヒドロキシエチルセルロース中で培養されたオルガノイドから得られた透過型光学顕微鏡法データを示している。分化の7日目に、3つすべての条件におけるオルガノイドは、類似した形態を示す。一部の小さな構造体が内部の部分で観察され得、表面で膨らみ、両方とも進行中の分化および増殖を表す。25日目までに、オルガノイドのサイズは増加し、構造再配置が観察され得た。3つすべての条件において、オルガノイドの内部における円形の構造体が発生し、神経前駆細胞ゾーンによって取り囲まれた脳室に形態学的に似ていた。
【0170】
さらに、オルガノイドを、神経前駆細胞マーカーSox2およびPax6、ならびに早期ニューロンにおける細胞骨格マーカーTuJ1の発現について30日目に分析した。それゆえ、フローサイトメトリー測定を、実施例2に記載されるように実施した。図10は、30日目の時点におけるマーカー発現を示しており、それは3つすべての条件において類似している。TuJ1発現は45~50%前後であり、一方でSox2およびPax6発現はあまり強くなく、それは神経発生の間に生じる過程と一致している。神経前駆細胞は経時的に枯渇し、ニューロンを生み出し、ゆえに前駆細胞集団の減少を説明する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10