(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】凍結乾燥用ローディングトレイ組立体、凍結乾燥システム及び凍結乾燥方法
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20240822BHJP
A61J 1/10 20060101ALI20240822BHJP
F26B 5/06 20060101ALI20240822BHJP
F26B 25/08 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61J3/00 300C
A61J1/10 330
A61J1/10 333C
F26B5/06
F26B25/08
(21)【出願番号】P 2021555165
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(86)【国際出願番号】 US2020022120
(87)【国際公開番号】W WO2020185909
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-02-01
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506313866
【氏名又は名称】テルモ ビーシーティー バイオテクノロジーズ,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Terumo BCT Biotechnologies, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン、ナサニエル ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ブリッジス、デニス エイ.
(72)【発明者】
【氏名】グエン、アレキサンダー デュ
(72)【発明者】
【氏名】クワイアット、マーガレット ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】パラキニンカス、ケスタス ピー.
(72)【発明者】
【氏名】サミット、リラン エイ.
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-150288(JP,U)
【文献】特開2014-238251(JP,A)
【文献】特表2017-517335(JP,A)
【文献】特表2012-500041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
A61J 1/10
F26B 5/06
F26B 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性凍結乾燥容器を収容するローディングトレイ組立体であって、
凍結乾燥機の棚板に載置可能に構成された板状のシャーシと、
前記シャーシの横方向の一方の側部と他方の側部とにそれぞれ取り付けられ、前記凍結乾燥機の前記棚板同士の間隔を規定する一対の棚スペーサと、
前記シャーシに形成され、前記可撓性凍結乾燥容器を前記シャーシに取り付けて前記シャーシが前記凍結乾燥機の前記棚板に載置されたときに、前記可撓性凍結乾燥容器と
前記凍結乾燥機の
前記棚板との間で直接接触を可能
とする接触用開口部
と、を備え
、
前記接触用開口部は、一対の前記棚スペーサの間に形成される、
ローディングトレイ組立体。
【請求項2】
請求項1記載のローディングトレイ組立体において
、
さらに、クランプを備える、
ローディングトレイ組立体。
【請求項3】
請求項2記載のローディングトレイ組立体において、
前記クランプは初期状態において開放状態となるように構成された、
ローディングトレイ組立体。
【請求項4】
請求項2記載のローディングトレイ組立体において、
前記クランプは、上顎部と下顎部とを有する一時的使用のための2パートクランプであり、前記上顎部と前記下顎部はそれぞれ、2つの
側方部分と1つの
水平部分とを有し、前記上顎部と前記下顎部の前記
側方部分と前記
水平部分は、閉塞を形成する際に協働する、
ローディングトレイ組立体。
【請求項5】
請求項4記載のローディングトレイ組立体において、
前記上顎部の前記側方部分と前記下顎部の前記側方部分との間のすきま寸法は、前記クランプが閉状態にあるときは、前記上顎部と前記下顎部との間に固定された容器材料の2層の厚さの80%~99%の範囲である、
ローディングトレイ組立体。
【請求項6】
請求項4記載のローディングトレイ組立体において、
前記上顎部の前記水平部分と前記下顎部の前記水平部分との間のすきま寸法は、前記クランプが閉状態にあるときは、前記上顎部と前記下顎部との間に固定された容器材料の2層の厚さの100%よりも大きい、
ローディングトレイ組立体。
【請求項7】
請求項
1記載のローディングトレイ組立体において、
前記シャーシの底面は、前記棚スペーサの底面から、0.02mm~5.0mmの距離、オフセットされている、
ローディングトレイ組立体。
【請求項8】
請求項
1記載のローディングトレイ組立体において、
前記棚スペーサの高さは、2.5cm~4.5cmである、
ローディングトレイ組立体。
【請求項9】
請求項
1記載のローディングトレイ組立体において、
前記シャーシはアルミニウムを含み、前記棚スペーサはアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)を含む、
ローディングトレイ組立体。
【請求項10】
請求項1記載のローディングトレイ組立体において、
前記シャーシはさらに、前記
可撓性凍結乾燥容器を取り付けるための取り付け手段を有する、
ローディングトレイ組立体。
【請求項11】
請求項
10記載のローディングトレイ組立体において、
前記取り付け手段は、タブ、支柱及びピンから選択される、
ローディングトレイ組立体。
【請求項12】
請求項1記載のローディングトレイ組立体において、
前記
可撓性凍結乾燥容器はマルチパート容器である、
ローディングトレイ組立体。
【請求項13】
凍結乾燥機と、
非通気性セクションと、通気性セクションと、前記非通気性セクションと前記通気性セクションとの間の閉塞ゾーンと、を有するマルチパート凍結乾燥容器と、
前記凍結乾燥機の棚板に載置可能に構成された板状のシャーシを有するローディングトレイ組立体と、
を備える凍結乾燥システムであって、
前記ローディングトレイ組立体は、
さらに、
前記シャーシの横方向の一方の側部と他方の側部とにそれぞれ取り付けられ、前記凍結乾燥機の前記棚板同士の間隔を規定する一対の棚スペーサと、
前記シャーシに形成され、前記マルチパート凍結乾燥容器を前記シャーシに取り付けて前記シャーシが前記凍結乾燥機の前記棚板に載置されたときに、前記マルチパート凍結乾燥容器と前記凍結乾燥機の前記棚板との間で直接接触を可能とする接触用開口部と、を備え、
前記接触用開口部は、一対の前記棚スペーサの間に形成される、
凍結乾燥システム。
【請求項14】
請求項
13記載の凍結乾燥システムにおいて、
前記ローディングトレイ組立体はさらに、クランプを備える、
凍結乾燥システム。
【請求項15】
請求項
14記載の凍結乾燥システムにおいて、
前記クランプは、一時的使用のための2ピースギロチンクランプ又は平行クランプである、
凍結乾燥システム。
【請求項16】
請求項
13記載の凍結乾燥システムにおいて、
前記ローディングトレイ組立体はさらに、前記マルチパート凍結乾燥容器を取り付けるための取り付け手段を有する、
凍結乾燥システム。
【請求項17】
請求項
13記載の凍結乾燥システムにおいて、
前記マルチパート凍結乾燥容器は
、前記閉塞ゾーンに剥離可能シールを有する、
凍結乾燥システム。
【請求項18】
流体
の凍結乾
燥方法であって
、
凍結乾燥用ローディングトレイ組立体に、剥離可能シールを有するマルチパート凍結乾燥容器を固定するステップと、
液体を前記
マルチパート凍結乾燥容器の非通気性セクションに投入するステップと、
前記凍結乾燥用ローディングトレイ組立体を凍結乾燥機に装着するステップと、
前記液体を凍結するステップと、
熱エネルギーを加えて真空をかけ、前記真空によって前記
マルチパート凍結乾燥容器の前記剥離可能シールを開放して、前記
マルチパート凍結乾燥容器の
前記非通気性セクションと前記
マルチパート凍結乾燥容器の通気性セクションとの間の蒸気移動を可能にするステップと、
前記マルチパート凍結乾燥容器を閉塞して凍結された前記液体を隔離するステップと
、を有し、
前記凍結乾燥用ローディングトレイ組立体は、
前記凍結乾燥機の棚板に載置可能に構成された板状のシャーシと、
前記シャーシの横方向の一方の側部と他方の側部とにそれぞれ取り付けられ、前記凍結乾燥機の前記棚板同士の間隔を規定する一対の棚スペーサと、
前記シャーシに形成され、前記マルチパート凍結乾燥容器を前記シャーシに取り付けて前記シャーシが前記凍結乾燥機の前記棚板に載置されたときに、前記マルチパート凍結乾燥容器と前記凍結乾燥機の前記棚板との間で直接接触を可能とする接触用開口部と、を備え、
前記接触用開口部は、一対の前記棚スペーサの間に形成される、
凍結乾燥方法。
【請求項19】
請求項
18記載の
凍結乾燥方法において
、さらに、気体を前記
マルチパート凍結乾燥容器の前記非通気性セクションに投入して、投入した前記液体の上方に蒸気空間を形成するステップを有する、
凍結乾燥方法。
【請求項20】
請求項
18記載の
凍結乾燥方法において
、さらに、pH調整ガスを前記
マルチパート凍結乾燥容器の前記非通気性セクションに投入するステップを有する、
凍結乾燥方法。
【請求項21】
請求項
18記載の
凍結乾燥方法において
、さらに、前記
マルチパート凍結乾燥容器に
、不活性ガス又はpH調整ガスの充填を行うステップを有する、
凍結乾燥方法。
【請求項22】
請求項
21記載の
凍結乾燥方法において、前記
マルチパート凍結乾燥容器に充填を行う前記ステップは、大気圧の分圧まで充填するステップである、
凍結乾燥方法。
【請求項23】
請求項
22記載の
凍結乾燥方法において、前記
マルチパート凍結乾燥容器に大気圧の分圧まで充填する前記ステップは、
前記pH調整ガスを用いて行われる、
凍結乾燥方法。
【請求項24】
請求項
18記載の
凍結乾燥方法において
、さらに、不活性ガスを導入して容器圧を大気圧に上げるステップを有する、
凍結乾燥方法。
【請求項25】
請求項
18記載の
凍結乾燥方法において
、さらに、前記非通気性セクションの内部が大気圧の分圧の状態で前記
マルチパート凍結乾燥容器の前記通気性セクションに恒久的なシームを形成するステップを有する、
凍結乾燥方法。
【請求項26】
請求項
25記載の
凍結乾燥方法において
、さらに、前記
マルチパート凍結乾燥容器の前記通気性セクションを除去するステップを有する、
凍結乾燥方法。
【請求項27】
請求項
18記載の
凍結乾燥方法において、
前記凍結乾燥用ローディングトレイ組立体はさらに、クランプを備える、
凍結乾燥方法。
【請求項28】
請求項
27記載の
凍結乾燥方法において、
前記クランプは、一時的使用のための2ピースギロチンクランプ又は平行クランプである、
凍結乾燥方法。
【請求項29】
請求項
18記載の
凍結乾燥方法において、
前記シャーシはさらに、前記マルチパート凍結乾燥容器を取り付けるための取り付け手段を有する、
凍結乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年3月14日に米国特許商標局に出願された米国仮特許出願第62/818,214号(タイトル:マルチパート凍結乾燥容器及びその使用方法)、2019年12月23日に米国特許商標局に出願された米国仮特許出願第62/952,752号(タイトル:凍結乾燥用ローディングトレイ組立体及びシステム)、及び2020年2月6日に米国特許商標局に出願された米国仮特許出願第62/971,072号(タイトル:凍結乾燥容器充填治具、システム及び使用方法)の優先権を主張するものであり、該米国特許仮出願の全体は、ここでの開示により明確に本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、米国国防総省から授与された契約番号H92222-16-C-0081に基づく米国政府の支援を受けて行われた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、凍結乾燥容器を凍結乾燥機に装着して流体を凍結乾燥するためのローディングトレイ組立体及び関連システムを説明する。ローディングトレイ組立体は、可撓性を有するマルチパート凍結乾燥容器を収容するように構成されている。本明細書に記載されている装置及びシステムは、主に、ヒト及び動物の血液及び血漿のような関連血液製剤等の生体液の凍結乾燥のために設計されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
凍結乾燥血漿は何十年もの間、利用されてきた。凍結乾燥された血漿に関連する様々な利点はよく知られており、物流や保管上の利点だけでなく、商業的に採算が合うように製品を簡単に、安全に、且つ迅速に大量に得ることができるという利点も含む。血漿の凍結乾燥に使用される通気性膜を含む可撓性マルチパート容器は、当技術分野で知られている。動作時には、多くの変動要素がこのような容器の性能に影響を与える可能性がある。一例として、容器と凍結乾燥機の棚板との間の最適な接触が、凍結乾燥プロセス中に達成又は維持されない場合があり、その結果、容器の性能が最適ではなく、生存可能な製剤の収量が減少する場合がある。他の例としては、オペレータのミスが容器の性能に影響を与えることがある。例えば、オペレータが昇華・脱離後の凍結乾燥物を隔離するために容器内に閉塞を作るのに失敗し、その結果、通気性膜が汚れたり、汚染物質が容器内に侵入したりする可能性がある。これらの理由やその他の理由から、凍結乾燥容器の性能を最適化し、凍結乾燥プロセスにおける作業者のミスの可能性を低減することができる技術や装置を開発する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特定の実施形態は、上記事項を考慮して提供されるが、本明細書で論じられる特定の問題は、本発明の実施形態の適用性を決して限定するものとして解釈されるべきではない。
【0006】
この節は、本発明のいくつかの実施形態の態様を簡略化した形で紹介するために提供されており、請求される発明の全ての重要又は必須の要素の網羅的なリストを含むものではなく、請求項の範囲を限定するものでもない。
【0007】
本発明の一態様では、凍結乾燥容器を収容するためのローディングトレイ組立体が提供される。該ローディングトレイ組立体は、取り付けられた前記凍結乾燥容器と凍結乾燥機の棚板との間で直接接触を可能にするように構成された接触用開口部を含むシャーシと、一時的に使用されるクランプと、棚スペーサと、を備える。
【0008】
本発明の他の態様では、マルチパート凍結乾燥容器と、ローディングトレイ組立体と、凍結乾燥機と、を備える凍結乾燥システムが提供される。該ローディングトレイ組立体は、取り付けられた前記マルチパート凍結乾燥容器と前記凍結乾燥機の棚板との間で直接接触を可能にするように構成された接触用開口部を含むシャーシを備える。
【0009】
本発明のさらに他の態様では、凍結乾燥用ローディングトレイ組立体に、剥離可能シールを有するマルチパート凍結乾燥容器を固定するステップと、液体を前記凍結乾燥容器の非通気性セクションに投入するステップと、前記液体を凍結するステップと、熱エネルギーを加えて真空をかけ、前記真空によって前記凍結乾燥容器の前記剥離可能シールを開放して、前記凍結乾燥容器の非通気性セクションと前記凍結乾燥容器の通気性セクションとの間の蒸気移動を可能にするステップと、前記マルチパート凍結乾燥容器を閉塞して凍結された前記液体を隔離するステップと、を有する、方法が提供される。
【0010】
本発明の他の実施形態は、流体を凍結乾燥するための追加の方法及び装置及びシステムを含む。流体は、ヒト又は動物の血漿を含む任意の適切な液体である。
【0011】
非制限的且つ非包括的な実施形態は、添付図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、従来技術に係る可撓性マルチパート凍結乾燥容器の図である。
【
図2】
図2は、従来技術に係る凍結乾燥機の図である。
【
図3】
図3A及び
図3Bは、本発明の一実施形態に係るローディングトレイ組立体の平面図である。
【
図4】
図4A及び
図4Bは、本発明の一実施形態に係るローディングトレイ組立体の図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係るローディングトレイ組立体の部分分解図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る凍結乾燥容器を収容するローディングトレイ組立体の斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る一時的クランプの正面図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る一時的クランプの側断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る、凍結乾燥システムの図である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態に係るワークフローの概略図である。
【
図11】
図11は、本発明の他の実施形態に係るワークフローの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に記載されている原理は、以下の詳細な説明及び添付の図面に描かれている実施形態を参照することによってさらに理解することができる。特定の特徴が、特定の実施形態に関して以下に示され、説明されるが、本発明は、記載される特定の特徴又は実施形態に限定されない。さらに、以下の実施形態は、ヒト又は動物の血液又は血液成分を凍結乾燥し、保存することに関して説明される。しかしながら、そのような記述は単なる例示である。当業者であれば、本発明の実施形態が、任意の適宜の液体の凍結乾燥に関連して使用され得ることを理解するであろう。
【0014】
本発明の実施形態は、凍結乾燥容器を凍結乾燥機に装着(ロード)し、凍結乾燥プロセス全体を通して容器の適応変化を促進するための専用トレイ組立体に関するものである。トレイ組立体は、凍結乾燥物の汚染を防ぐために、昇華・脱離後に凍結乾燥容器内に一時的な閉塞を形成するように構成された一時的クランプを含む。
【0015】
本発明に記載されている実施形態は、Millrock TechnologyによるMagnum(登録商標)Pilot lyophilizerを含む、多くの従来の市販されている凍結乾燥機と組み合わせて実行されてもよい。従って、本発明に記載されている装置や技術は、現在存在しているものよりも、よりアクセスしやすく、より広く普及する可能性がある。列挙された実施形態の様々な利点は、本明細書を通して言及される。
【0016】
図1は、従来技術に係る可撓性マルチパート凍結乾燥容器の図である。
【0017】
図1を参照すると、凍結乾燥容器100は、ポート領域104を含む非通気性セクション102、通気性膜108を含む通気性セクション106、及び閉塞ゾーン110を含む。
【0018】
動作時には、凍結乾燥容器100は、非通気性セクション102のポート領域104に配置されたポートを介して流体を交換する。流体の交換は、液体血漿を容器に最初に充填する際、並びに、凍結乾燥後に再構成して患者へ輸液するために行われる滅菌水の容器への充填の際に行われる。非通気性セクション102及び通気性セクション106は、非通気性セクション102と通気性セクション106との間の移行部を包含する閉塞ゾーン110における容器の閉塞の形成によって、互いに隔離される。この点において、閉塞ゾーン110内における閉塞の位置は、非通気性セクション102と通気性セクション106との間の境界を定義する。
【0019】
凍結乾燥容器100は、凍結乾燥プロセスを通して継続的に適応変化するように構成されている。本発明の装置及び技術は、凍結乾燥容器100の適応変化及び最適な性能を促進するように構成されている。従って、容器は、ローディングトレイ組立体の相補的な機能部と協働するための種々の従来の位置決め・固定手段をさらに含むことができる。本発明を通して様々に説明されるローディングトレイ組立体と協働するために、容器100は、以下に説明されるハンガータブ及び位置決めタブを補完するようにそれぞれ設計されたハンガー孔及び位置決め孔(図示せず)を有する。
【0020】
図2は、従来技術に係る一般的な凍結乾燥機の図である。
【0021】
図2を参照すると、凍結乾燥機200は、タイミング及び温度制御装置202と油圧棚システム204とを備える。
【0022】
図2に示す凍結乾燥機は、本発明の実施形態と併せて使用するのに適した従来の凍結乾燥機の一例である。好適な従来の凍結乾燥機の典型的な構成要素は、タイミング及び温度制御装置と、冷蔵システムと、真空システムと、凝縮器と、凍結乾燥及びストッパリングが可能な油圧棚システムを含むチャンバと、を有する。
【0023】
図3A及び
図3Bは、本発明の一実施形態に係るローディングトレイ組立体の平面図である。
【0024】
図3Aを参照すると、ローディングトレイ組立体300は、トレイシャーシ302と、ハンガータブ304と、クランプシート306と、接触用開口部308と、クランプ用へこみ312を含む棚スペーサ310と、位置決めタブ314と、ハンドル316と、を備える。
図3Bは、一時的クランプを含む
図3Aのローディングトレイ組立体の一実施形態を示す。
図3Bを参照すると、ローディングトレイ組立体300は、トレイシャーシ302と、ハンガータブ304と、接触用開口部308と、クランプ用へこみ312を含む棚スペーサ310と、位置決めタブ314と、ハンドル316と、2ピース一時的クランプ318と、を備える。
【0025】
図3A及び
図3Bに示すローディングトレイ組立体300は、基本的に長方形の形状であり、2つの可撓性マルチパート凍結乾燥容器を固定するように構成されている。トレイシャーシ302は、ローディングトレイ組立体300の構造支持体の基本部分を提供する。ハンガータブ304は、トレイ組立体300から上向きに延びる長方形の突起であり、凍結乾燥容器の相補的なハンガー孔に係合するように構成されている。クランプシート306は、一時的クランプ318の底部がそこに位置させることができるように構成された、トレイシャーシ302の切り抜き領域又は開口領域である。接触用開口部308もまた、トレイシャーシ302の切り抜き領域又は開口領域であり、固定された凍結乾燥容器と凍結乾燥機の棚板との間の直接接触を可能にするように構成されている。棚スペーサ310は、ローディングトレイ組立体300のシャーシ302の横方向の側面に取り付けられ、効果的なクランプ閉塞と、凍結乾燥機の棚板同士を水平な状態で互いに平行に棚がつぶれていくように接近移動させること(collapse)の両方をアシストする。棚スペーサ310は、配置されたクランプ318を収容するために、クランプシート306の隣接位置にクランプ用へこみ312を有する。位置決めタブ314は、ハンガータブ304と協働する。位置決めタブ314は、上方に延びる長方形の突出部であり、凍結乾燥容器の位置決め孔に係合するように構成されている。ハンドル316は、ローディングトレイ組立体の取り扱いのためにオペレータの手を入れるように構成された切り抜き領域又は開口領域である。一時的クランプ318は、凍結乾燥中に凍結乾燥容器内に閉塞を形成するように構成された2ピースタイプのクランプである。
【0026】
図3A及び
図3Bにおいて、トレイ組立体300の寸法(すなわち、長さ及び幅)は、それぞれ「L」及び「W」と表記されている。好ましい実施形態では、組立体の長さは約60cmであり、組立体の幅は約30cmである。しかしながら、他の実施形態では、トレイ組立体の寸法はこれと異なっていてもよい。例えば、組立体長は45cm~75cmの間(例えば55cm~65cmの間)であってもよく、また、トレイ組立体幅は20cm~40cmの間(例えば25cm~35cmの間)であってもよい。
【0027】
実施形態では、トレイ組立体300の設計は限定されず、トレイ組立体300及びその個々の機能特徴部分は、特定の用途に適合させてよい。例えば、シャーシ302の熱質量を減少させ、それに応じて、凍結乾燥機棚から製剤への熱伝達に対するシャーシ302の影響を最小化する目的で、接触用開口部308を大きくしてもよい。他の実施形態では、ハンドル316は、手袋をはめた手を受容するために拡大されてもよく、或いは、取り扱いを改善するために設計された追加の特徴(例えば、指用の溝)を含んでもよい。さらに他の実施形態では、トレイ組立体300の形状は、上記と異なってもよく、任意の数の凍結乾燥容器を収容するように構成されてもよい。例えば、トレイ組立体300は、様々な寸法を有する凍結乾燥容器を収容するように構成されてもよく、そのような容器を、横に並べる構成ではなく、前後に並べる構成で収容してもよい。
【0028】
図3A及び
図3Bに示すように、取り付けられる容器のための特徴的な機能要素群(すなわち、ハンガータブ304、クランプシート306、接触用開口部308、クランプ用へこみ312及び位置決めタブ314)は、互いにオフセットされている。オフセットされた機能要素群を含むことにより、複数の凍結乾燥容器を、それぞれのクランプ318の間で干渉することなく、トレイ組立体に固定することができる。従って、この構成はまた、凍結乾燥容器の最大幅をサポートし、それによって全体的なシステム効率を向上させる。
【0029】
図4A及び
図4Bは、それぞれ、本発明の一実施形態に係るローディングトレイ組立体の正面図及び側面図である。
【0030】
図4Aを参照すると、トレイ組立体400は、トレイシャーシ402と、棚スペーサ404と、2パートクランプ406と、を含む。
図4Bは、棚スペーサ404を示すローディングトレイ組立体400の側面図である。
【0031】
「H」と表記される棚スペーサ404の高さは、約3.5cmである。図示されているように、棚スペーサ404の高さは、クランプ406が作動状態すなわち閉鎖状態にあるときのトレイ組立体400の全高を規定する。動作において、棚スペーサ404の高さはまた、棚板同士を接近移動させる際、凍結乾燥機の棚板の間の最小距離を規定する。従って、最適なクランプ閉鎖を達成するために、棚スペーサ404の高さは、作動したクランプ406の高さと一致しなければならない。様々な実施形態において、棚スペーサ404の高さは、2.5cm~4.5cmの間(例えば、3.0cm~4.0cmの間)であってよい。
【0032】
棚スペーサ404は、複数の機能を果たす。棚スペーサ404の1つの機能は、棚板同士を接近移動させる際に凍結乾燥装置の棚板間の距離を制御することである。棚スペーサ404の高さが大きすぎる場合、取り付けられた凍結乾燥容器の完全な閉塞が達成されない可能性がある。これに対して、棚スペーサ404の高さが低すぎると、凍結乾燥機の接近し合う棚板によって、2パートクランプ406が押しつぶされる可能性がある。棚スペーサ404の他の機能は、棚板同士を接近させる際に発生する可能性のある棚板の傾きや動かなくなること(binding)を排除することである。すなわち、凍結乾燥機の棚板は、互いに平行に積み重ねて配置された基本的に水平なプレートである。凍結乾燥機の棚板は、水撃ポンプ(hydraulic ram)やその他の作動手段からの圧力で、垂直につぶれるように接近移動し、互いに積み重なる。接近移動の際に互いに略平行に保たれていないと、棚板が傾いたり、ひっかかったり、動かなくなることがある。この問題に対処するために、棚スペーサ404は、動作中の間、棚板が互いに略平行に維持されるようにするため、棚板の十分な長さに沿ってハードストップを提供する。様々な実施形態において、棚スペーサの位置は限定されない。例えば、実施形態では、トレイ組立体400の他の側面に棚スペーサを組み込んでもよい。さらに他の実施形態では、棚スペーサ404は、トレイ組立体400の角にのみ配置されてもよいし、トレイ組立体400の周囲を囲むように配置されてもよい。
【0033】
図4Aに示すように、トレイシャーシ402の底面は、棚スペーサ404の底面と一致していない。すなわち、トレイシャーシ402の底面は、凍結乾燥中にトレイシャーシ402と凍結乾燥機の棚板との間の空隙を維持するために、棚スペーサ404の底面からオフセットされている。実施形態では、トレイシャーシ402の底面は、棚スペーサの底面から、0.02mm~5.0mmの間の距離(例えば1mm)だけオフセットされている。この空隙を維持することにより、トレイシャーシ402と凍結乾燥機の棚板との間の伝導エネルギー伝達を排除し、それにより凍結乾燥中のトレイ組立体400への全体的な熱伝達を低減することができる。トレイ組立体400への熱伝達を低減することで、より迅速な凍結及び加熱が可能となり、凍結乾燥プロセスのより正確な制御が可能となる。
【0034】
図5は、本発明の一実施形態に係るローディングトレイ組立体の部分分解図である。
【0035】
図5を参照すると、ローディングトレイ組立体500は、トレイシャーシ502と、ハンガータブ504と、クランプシート506と、接触用開口部508と、クランプ用へこみ512を含む棚スペーサ510と、位置決めタブ514と、ハンドル516と、2ピースタイプの一時的クランプ518と、を含む。
【0036】
初期においては、クランプ518は、開放状態になるように構成される。すなわち、クランプ518の上顎部は、オペレータによってクランプ518の下顎部の上に手動で配置され、上下顎間に空隙スペースが形成される。動作させるには、凍結乾燥機の棚板同士を接近移動させることによってクランプの上顎部及び下顎部を互いに係合させ、それによってクランプ518が作動する。上述したように、棚スペーサ510は、クランプ518の作動を許し、また棚板の傾斜やひっかかりを防止し、さらに棚板同士が接近移動する際にクランプ518及び容器が押しつぶされる可能性を回避できる高さ位置に停止機構を設けることになり、それによって、クランプ518の作動をアシストする。
【0037】
図5に示すクランプの実施形態は、手動でセットアップが行われ、凍結乾燥機の棚板同士を接近移動させることで、機械的に作動させられ、凍結乾燥容器に恒久的なシーム(permanent seam)を形成した後に手動で解除するように構成されている。他の実施形態は限定されず、他のクランプ又はクランプ方式を利用してもよい。例えば、クランプのセットアップ、クランプの作動、又はクランプの解除のいずれかは、他の機械式又は電気機械式の手段を用いて行ってもよい。例えば、クランプの上顎部及び下顎部は、従来のヒンジによって接続されてもよいし、他の適切な手段によって接続されてもよい。他の実施形態では、クランプセットアップのための手段又はクランプ解除のための手段は、凍結乾燥機の棚システムに統合されてもよい。
【0038】
図5に示す構成では、棚スペーサ510は、従来のねじを用いてトレイシャーシ502に取り付けられている。しかしながら、他の実施形態では、組立体500は、棚スペーサ510を含む単一のコンポーネントとして形成されてもよく、或いは、接着剤やボルトのような任意の他の従来の締結手段を使用して棚スペーサ510を統合してもよい。トレイシャーシ502の好ましい材料の選択はアルミニウムであるが、同様の構造剛性を提供することができる他の金属、金属合金、プラスチックを使用してもよい。図示の実施形態では、棚スペーサ510は、質量を最小化するために、従来の技術を用いて射出成形され、中空化されている。棚スペーサは、ポリカーボネート(PC)とアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)とのブレンドからなる。PC/ABSブレンドの重要な利点は、表面処理やコーティングが施された凍結乾燥機の棚板に、傷をつけずにロードすることができることである。また、棚スペーサにプラスチックを使用することで、ローディングトレイ組立体への熱損失を最小限に抑え、昇華・脱離時の凍結乾燥機の棚板と製剤との間の熱伝達を改善することができる。他の実施形態では、材料の選択は限定されず、望ましい特性を有し、凍結乾燥機で機能することができる任意の材料を含むことができる。
【0039】
図6は、本発明の一実施形態による凍結乾燥容器を収容するローディングトレイ組立体の斜視図である。
【0040】
図6を参照すると、ローディングトレイ組立体600は、トレイシャーシ602と、ハンガータブ604と、クランプシート606と、接触用開口部608と、クランプ用へこみ612を含む棚スペーサ610と、位置決めタブ614と、ハンドル616と、2ピース一時的クランプ618と、を含む。
【0041】
図6では、
図1に描かれているような可撓性マルチパート凍結乾燥容器が、クランプ618の上顎部と下顎部との間に配置されている。図示されているように、クランプ618は、凍結乾燥容器の通気性セクションと非通気性セクションとの間に閉塞が形成された閉塞状態すなわち作動状態にある。凍結乾燥容器は、ハンガータブ604及び位置決めタブ614を使用して、ローディングトレイ組立体600に固定される。
【0042】
ハンガータブ604及び位置決めタブ614が凍結乾燥容器のハンガー孔及び位置決め孔とそれぞれ係合することにより、凍結乾燥容器がトレイシャーシ602内に正確且つ確実に位置決めされる。正確で確実な位置決めにより、容器の性能が最適化される。一態様では、トレイ組立体内での凍結乾燥容器の正確な位置決めにより、閉塞のために設計された容器の領域(例えば、剥離シール領域又は閉塞ゾーン)に、閉塞が確実に作られるようになる。他の態様では、トレイ組立体のハンガータブ602及び位置決めタブ614と、凍結乾燥容器の対応するハンガー孔及び位置決め孔との間のそれぞれの係合を介した容器の確実な位置決めにより、最適な長手方向の容器張力を得ることができる。容器の張力の最適化は、接触用開口部608を介した凍結乾燥容器と凍結乾燥機の棚板との間の接触領域の表面積の最適化の一要因である。接触領域の表面積が最適化されると、凍結、一次乾燥及び二次乾燥における熱伝達が改善される。対照的に、容器の長手方向の張力が最適値よりも低いと、凍結乾燥容器がたわみ、長手方向の位置が正しくなくなり、容器の不適切な領域に閉塞が生じる可能性がある。また、容器の長手方向の張力が最適値よりも大きいと、接触領域の表面積が不十分となり、熱伝導が悪くなる場合がある。従って、容器を正確且つ確実に装着することで、凍結乾燥容器の正しい領域での閉塞の形成と、凍結乾燥容器と凍結乾燥機の棚板との正しい接触量を実現することができる。
【0043】
他の実施形態では、トレイ組立体600の特徴となる機能要素は、本発明の範囲から逸脱することなく変更してもよい。例えば、接触用開口部606のサイズ及び形状は、特定の容器構成に合わせてある程度変更してもよい。同様に、ハンガータブ602又は位置決めタブ614は、異なる位置に配置されてもよく、異なる形状で構成されてもよく、或いは凍結乾燥容器とトレイ組立体600との間の係合をアシストするための追加の特徴機能要素を含んでもよい。
【0044】
凍結乾燥プロセスにおいて、記載されたローディングトレイ組立体600を利用することにはいくつかの利点がある。一態様では、トレイ組立体600を利用することにより、凍結乾燥容器の装着が最適化され一定の状態で行うことができる。容器を最適に且つ常に一定に装着できるということは、バッチプロセスにおいて一定の結果を得るために重要である。他の態様では、クランプの自動化は有利である。クランプの自動化により、オペレータのミスが減り、バッグの性能の最適化が促進され、膜の汚染の可能性が減り、容器への汚染物質の侵入の可能性が減る。
【0045】
図7は、本発明の一実施形態に係る一時的に使用される2ピースクランプの正面図である。
【0046】
図7を参照すると、一時的クランプ700は、留め具部材704を有する上顎部702と、留め具部材708を有する下顎部706と、を含む。
【0047】
一時的クランプは、2ピースのギロチンクランプ(guillotine clamp)又は平行クランプとして説明される。上顎部702及び下顎部706のそれぞれは、互いに係合するように構成された垂直方向に配向された、スライドリリース式バックル型留め具部材(slide release buckle clasp members)704、708を含む。初期位置では、下顎部はトレイ組立体のクランプシート内に配置され、上顎部702は下顎部706上に置かれている。作動位置にあるときは、上顎部702及び下顎部706のバックル型留め具部材704、708は、互いに係合する。上顎部702及び下顎部706は、開位置及び閉位置の両方において、互いに略平行に且つトレイ組立体に対しても平行に配置される。
【0048】
好ましくは、一時的クランプは、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)を用いて射出成形される。しかしながら、他の実施形態では、他の製造方法及び同様の特性を示すプラスチックが望ましい場合がある。
【0049】
例示的なクランプ作動のワークフローは以下の通りである。まず、凍結乾燥用ローディングトレイ組立体を部分的に組み立てる。このステップでは、2つの部分からなるクランプの下顎部が、凍結乾燥トレイ組立体のクランプシートに着座する。次に、剥離可能シールを含む凍結乾燥容器をトレイ組立体に装着する。このステップでは、凍結乾燥容器はクランプ下顎部上に置かれ、トレイ組立体の位置決めタブとハンガータブのそれぞれが容器の対応する機能要素に係合する。次に、2つの部分からなるクランプの上顎部を下顎部の上に置き、「開いた」クランプ構成を形成する。このステップでは、留め具部材704、708は係合しておらず、凍結乾燥容器は、開いた状態のクランプ顎部の間の空隙スペースを通って長手方向に延びている。次に、トレイ組立体と容器を凍結乾燥機に装着する。次に、凍結乾燥機の棚板同士を接近移動させ、クランプの上顎部を下方へ動かし下顎部に押し付け、留め具部材704、708を係合させる。このステップで、容器に閉塞が形成される。次に、凍結乾燥機の棚板同士を離間させる。次に、留め具部材704、708を手動で解除することにより、閉塞を除去し、クランプの上顎部と下顎部との間に空間ができる。
【0050】
図8は、本発明の一実施形態に係る一時的クランプの側断面図である。
【0051】
図8を参照すると、クランプ800は、水平部分804及び側方部分806を含む上顎部802と、水平部分810及び側方部分812を含む下顎部808と、を備える。
【0052】
図8に示すように、上顎部及び下顎部は、閉塞を形成する際に協働するように構成されている。この構成では、クランプの作動時に2つの閉塞が形成される。すなわち、クランプの作動時に、上顎部802と下顎部808との間の可撓性容器材料は、側方部分806、812の間の両方の境界部分で閉塞される。好適なことに、2つの閉塞箇所が重複性を生み出し、それによってクランプの信頼性と
とクランプの質の両方が向上する。
【0053】
作動状態又は閉鎖状態において、上顎部802の側方部分806と下顎部808の側方部分812との間のすきま寸法は、凍結乾燥容器を確実に閉塞しなければならないが、容器材料を損ねてはならない(すなわち、引き裂いたり、裂いたりしてはならない)。好ましい実施形態では、上顎部の側方部分と下顎部の側方部分との間のすきま寸法は、容器材料の2つの層の厚さの80%~99%の間である。作動状態又は閉鎖状態では、上顎部802の水平部分804と下顎部808の水平部分810との間のすきま寸法は、凍結乾燥容器を閉塞せず、容器材料のための空間を与えることが望ましい。好ましい実施形態では、上顎部802の水平部分804と下顎部808の水平部分810との間のすきま寸法は、クランプされた容器材料の2つの層の厚さの100パーセントよりも大きく、例えば、クランプされた容器材料の2つの層の厚さの101パーセント~120パーセントの間である。
【0054】
図9は、本発明の一実施形態に係る凍結乾燥システムの図である。
【0055】
図9を参照すると、凍結乾燥システム900は、ローディングトレイ組立体902と、可撓性マルチパート凍結乾燥容器904と、凍結乾燥機906と、を含む。
【0056】
図9に示すように、本発明のローディングトレイ組立体902は、従来技術のマルチパート凍結乾燥容器904を収容するために使用される。凍結乾燥容器がトレイ組立体902に収容されると、トレイ組立体902は、適切な従来の凍結乾燥機906に装着される。
【0057】
以下に記載される例示的なワークフローは、凍結乾燥サイクルを通して容器が適応変化していく際に、ローディングトレイ組立体902が、凍結乾燥機906の棚と連携して、クランプ機能を自動化し、凍結乾燥容器の性能を最適化する態様を説明するものである。
【0058】
図10は、本発明の実施形態に係る、ワークフロー概略図である。
【0059】
図10に示されるワークフロー1000を参照すると、ステップ1002において、対象流体(例えば、血漿)は、凍結乾燥容器の非通気性セクションに導入される。ステップ1004では、剥離可能シールと閉塞ゾーンを含むマルチパート凍結乾燥容器が、凍結乾燥用ローディングトレイ組立体に固定される。ステップ1006において、該容器の流体が凍結され、非通気性セクションに薄い均一厚さを有する氷の構造が形成される。ステップ1008では、真空にされ、熱エネルギーが与えられる。真空圧によって、剥離シールが除去、すなわち「開放」され、熱エネルギーが加わることで、昇華及び脱離が起き、固相から直接気相への氷構造の相変化が引き起こされる。氷構造から放出された蒸気は、容器の空洞部分を通って流れ、通気性セクションを通って逃げていく。その結果、非通気性セクションには、凍結乾燥された血漿ケーキ(すなわち、凍結乾燥の結果として脱水された氷構造)が残る。ステップ1010において、容器は、ローディングトレイ組立体の2パートクランプの動作によって、閉塞される。ステップ1012では、通気性セクションの非通気性材料に恒久的なシーム(閉じ目)(seam)が形成される。ステップ1014では、容器が恒久的なシームで分割され、通気性セクションが廃棄され、非通気性セクションに凍結乾燥物が残る。
【0060】
ステップ1002において、流体の導入は、プレローディングと呼ばれることがある。プレローディング中、250ml~500mlの流体(例えば、血漿)がマルチパート凍結乾燥容器の非通気性セクションに投入される。
【0061】
ステップ1004において、凍結乾燥容器をローディングトレイ組立体上に固定することは、ローディングトレイ組立体に着座した2ピースクランプの上顎部と下顎部との間の開放空間を介して、トレイ組立体上に凍結乾燥容器を配置し、トレイ組立体及び容器にそれぞれ設けられた互いに対応する位置決め機能要素を係合させることを含む。なお、ステップ1002とステップ1004は、他の実施形態では逆にしてもよい。
【0062】
ステップ1008では、真空圧と熱エネルギーを加える。凍結乾燥に必要な真空圧は、剥離可能シールを開くのに必要な真空圧よりも低いので、特別な真空調整は必要ない。つまり、凍結乾燥室に真空が適用されると、凍結乾燥圧力が達成される前に、剥離可能シールが開かれる。この点で、真空と熱エネルギーを一緒に適用することで、昇華と脱離が通常の仕方で進行する。好ましい乾燥温度は、-20℃~-40℃(例えば-25℃)である。
【0063】
ステップ1010では、2つの部分からなるクランプ(2パートクランプ)を作動させることにより、容器を閉塞させる。2パートクランプは、凍結乾燥機の棚板同士の接近移動によって作動する。すなわち、棚板同士を接近させることで、クランプの上顎部を下方に押し下げてクランプの下顎部と係合させる。このような動作は、クランプの初期状態が開放状態である限り可能である。このステップで閉塞を作る目的は、主にステップ1012の前に空気からの水分と酸素による凍結乾燥物の汚染を防ぐことである。
【0064】
ステップ1012では、恒久シームが形成され、非通気性セクションの凍結乾燥ケーキを分離する。示された概略図では、恒久シームステップ1014は、個別のステップである。すなわち、補助的な装置が、恒久シーム又はシールを作成するために使用される。他の例では、恒久シームステップ1014は、閉塞ステップ1012に統合されてもよい。そのような実施形態では、閉塞手段(例えば、クランプ)は、恒久的なシール手段を有してもよい。
【0065】
ステップ1014では、通気性セクションの完全な除去によって、容器の最終変化形態となる。なお、ステップ1012及び1014は、他の実施形態では、行わない場合もある。
【0066】
他の例示的なワークフローでは、
図10に記載のワークフローにステップを追加してもよい。例えば、追加のステップとしては、pHを調節するために、或いは対象となる流体若しくは氷構造の上方に蒸気空間を形成するために、凍結乾燥容器にガスを導入するステップが挙げられる。また、追加のステップとしては、容器の圧力を調整するために不活性ガスを凍結乾燥容器に充填するステップも挙げられる。
【0067】
図11は、本発明の他の実施形態に係るワークフロー概略図である。
【0068】
図11に示されるワークフロー1100を参照すると、ステップ1102では、剥離可能シールと閉塞ゾーンを含むマルチパート凍結乾燥容器が、凍結乾燥用ローディングトレイ組立体に固定される。ステップ1104において、対象流体(例えば、血漿)は、非通気性セクションに導入される。なお、ステップ1102とステップ1104は、他の実施形態では逆にしてもよい。ステップ1106では、空気、不活性ガス、又はpH調整ガス(例えば、CO
2)を、凍結乾燥容器の非通気性セクションに導入する。ステップ1108において、該容器の流体が凍結され、非通気性セクションに薄い均一厚さを有する氷の構造が形成される。ステップ1110では、真空にされ、熱エネルギーが与えられる。真空圧によって、剥離シールが除去すなわち「開放」され、熱エネルギーが加わることで、昇華及び脱離が起き、固相から直接気相への氷構造の相変化が引き起こされる。氷構造から放出された蒸気は、容器の空洞部分を通って流れ、通気性セクションを通って逃げていく。その結果、非通気性セクションには、凍結乾燥された血漿ケーキ(すなわち、凍結乾燥の結果として脱水された氷構造)が残る。ステップ1112では、容器に不活性ガスを充填し、容器の圧力を大気圧分圧又は大気圧まで上昇させる。ステップ1114において、容器は、ローディングトレイ組立体の2パートクランプの動作によって、閉塞される。ステップ1116では、任意であるが、通気性セクションの非通気性材料に恒久シーム(閉じ目)(seam)が形成される。ステップ1118では、容器が恒久シームで分割され、通気性セクションが廃棄され、非通気性セクションに凍結乾燥された最終製剤が残る。
【0069】
図11は、ステップ1106及び1112を追加した点のみにおいて、
図10のワークフローと基本的に異なっている。ステップ1106では、空気(又は窒素又は他の不活性乾燥ガス)、又はpH調整ガス(例えば、CO
2)が凍結乾燥容器に導入される。pH調整ガスは、pHを調整するために凍結乾燥容器に導入される。他の実施形態では、pH調整ガスは、ステップ1112の間に導入されてもよい。
【0070】
ステップ1112では、凍結乾燥容器を、pH調整ガス(例えば、CO2)で大気圧分圧又は大気圧まで充填する。大気圧分圧まで充填する場合、所望の大気圧分圧に到達すると、容器は閉塞される。任意で、容器を恒久的にシールする。大気圧よりも低い圧力で容器を閉塞及び/又はシールすると、容器が大気圧にさらされたときに、容器がつぶれて体積が減少する。このプロセスはまた、pH調整用ガスが非通気性部分に確保され、容器内への酸素や水分の侵入を防ぐことができる。結果として得られた容器は、大気圧よりも低い圧力で閉塞及び/又はシールされており、また、凍結乾燥機の真空が取り除かれると、最終的な容器の体積は減少状態になるので、最終的な凍結乾燥された製剤は、より容易に保存及び搬送することができる。このような容器容積の減少は、硬くて可撓性のない凍結乾燥容器では不可能であるため、この方法での充填は、可撓性のある材料又は部品を有する容器の実施形態に特に適用される。
【0071】
上述のワークフローで使用される機器は様々である。例えば、いくつかの実施形態では、オールインワンの凍結乾燥機を採用してもよいが、他の実施形態では、凍結ステップのために別個のスタンドアローンの冷凍機を利用してもよい。同様に、プロセスステップの順序にもいくつかのバリエーションがある。例えば、可撓性容器のローディングトレイ組立体への固定は、容器に流体を導入する前でも後でもよい。
【0072】
上記のワークフローに従って非通気性セクションの流体を通気性セクションから分離するための物理的バリア(例えば、2パートギロチンクランプ)の使用により、流体が凍結乾燥容器の通気性セクションの通気性材料の細孔と接触したり、通気性材料の細孔に付着汚染したりする可能性がなくなる。付着汚染は、凍結乾燥の昇華と脱離を中断させる可能性があり、それにより、総凍結乾燥時間が増加し、生存能力のある凍結乾燥物を得る能力が低下する。従って、付着汚染の可能性を排除すると、蒸気流が相対的に増加し、結果として、昇華冷却効果の増加とタンパク質と凝固因子の保持の増加により、一次乾燥において、凍結乾燥が速くなり、氷の温度が低くなる。
【0073】
本明細書に記載されているクランプの自動化により、様々な利点や効果が得られる。例えば、凍結乾燥容器を閉塞するために接近移動式の棚を使用することにより、不注意によるクランプステップのタイミングのずれや不注意によるクランプステップのし忘れを含む、オペレータのエラーを回避することができる。自動化による他の利点は、ローディングトレイ組立体自体の設計に由来する。例えば、棚スペーサは、凍結乾燥機の棚板を確実に且つエラーなく、接近移動させることを可能にする。これにより、システム内の各凍結乾燥容器を一貫してクランプすることができ、手動でクランプする場合に起こりがちな故障や汚染の可能性をさらに減らすことができる。
【0074】
本明細書において様々な特定の実施形態が列挙されたが、当業者であれば、特定の用途のために様々な変形及び最適化を実施できることを理解するであろう。例えば、本発明の他の実施形態は、例えば、
図5に示された実施形態に含まれるよりも、少ない構成要素を有するトレイ組立体を有してもよい。同様に、記載されたローディングトレイ組立体は、本図に描かれた凍結乾燥容器の説明によって限定されない、様々な凍結乾燥容器を装着するように構成されてもよい。例えば、そのような容器は、剛性を有してもよく、1つ又は複数の部分又は区画を有してもよく、様々な材料を利用してもよい。従って、本発明に記載されているローディングトレイ組立体の実施形態は、棚スペーサ、2パートクランプ、又は容器取り付け手段のいずれかを任意に省略してもよい。すなわち、特定の実施形態では、棚板同士の接近移動やクランプの作動を規制するために棚スペーサを必要としない場合がある。同様に、特定の実施形態では、クランプを完全に除外するか、無線制御の電気機械式クランプ等の他のタイプのクランプを利用してもよい。さらに他の実施形態では、容器取り付け手段を除外して、接触用開口部を有するシャーシのみ、又は接触用開口部及びオプションでクランプと棚スペーサを有するシャーシのみを備えてもよい。さらに、本発明は、血液又は血液製剤の凍結乾燥に限定されない。すなわち、本発明の原理は、多くの流体の凍結乾燥に適用可能である。従って、本発明の方法及びシステムの構成、動作、及び詳細において、様々な変形や変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。