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特許7542024廃材取引支援装置、廃材取引支援方法および廃材取引支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】廃材取引支援装置、廃材取引支援方法および廃材取引支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20240822BHJP
【FI】
G06Q50/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022042887
(22)【出願日】2022-03-17
(65)【公開番号】P2023136940
(43)【公開日】2023-09-29
【審査請求日】2024-06-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398040527
【氏名又は名称】株式会社オービック
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古田 剛史
(72)【発明者】
【氏名】上野 剛光
【審査官】日比野 可奈子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-293615(JP,A)
【文献】特開2011-233079(JP,A)
【文献】Power Steel,大塚商会 実践ソリューションフェア2019 ,2019年02月06日,p.1-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取引先から提供された材料を用いて製品を製造し当該製造された製品を前記取引先に対して納入する場合において前記製品の製造過程で発生する廃材についての売上値引または買取を適切に行えるように支援することができる、制御部および記憶部を備える廃材取引支援装置であって、
前記記憶部には、
製造された前記製品の量である製造量と、廃材識別データと、廃材取引区分と、前記廃材の値引単価または買取単価と、前記製品の製造の結果発生した前記廃材の量である廃材発生量と、を含む加工明細データからなる加工データ
が格納されており、
前記制御部は、
前記廃材取引区分が、前記廃材発生量に相当する分の金額を前記製品についての前記取引先に対する売上金額から値引きする旨を示す値引区分である場合、当該値引区分を含む前記加工明細データに基づいて、前記製造量に製品単価を乗じることで算出された売上金額を含む売上明細データ、および、前記廃材発生量に前記値引単価を乗じることで算出された値引金額を含む値引明細データからなる売上データを生成する売上データ生成手段と、
前記廃材取引区分が、前記廃材を前記取引先から買取する旨を示す買取区分である場合、当該買取区分を含む前記加工明細データに基づいて、前記廃材識別データと、前記廃材発生量に前記買取単価を乗じることで算出された発注金額と、を含む発注データを生成する発注データ生成手段と、
を備えること、
を特徴とする廃材取引支援装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記発注データに基づいて、前記廃材識別データと、仕入金額としての前記発注金額と、を含む仕入データを生成する仕入データ生成手段
を更に備えること、
を特徴とする請求項1に記載の廃材取引支援装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記廃材識別データと、前記廃材発生量と、在庫が他社の資産である旨を示す他社区分と、製造過程で前記廃材が発生した前記製品の納入先となる前記取引先についての取引先識別データと、を含む在庫明細データを在庫データに追加する処理を、前記加工データの生成直後に行うことにより、前記在庫データを更新し、
前記売上値引の対象とした前記廃材についての前記廃材識別データおよび前記売上値引の対象とした前記取引先についての前記取引先識別データと紐付く前記在庫データ中の前記他社区分を、在庫が自社の資産である旨を示す自社区分に変更する処理を、前記売上データの生成直後に行うことにより、前記在庫データを更新し、
前記買取の対象とした前記廃材についての前記廃材識別データおよび前記買取の対象とした前記取引先についての前記取引先識別データと紐付く前記在庫データ中の前記他社区分を、前記自社区分に変更する処理を、前記仕入データの生成直後に行うことにより、前記在庫データを更新する在庫データ更新手段
を更に備えること、
を特徴とする請求項2に記載の廃材取引支援装置。
【請求項4】
前記製品が、金属製品であり、
前記廃材が、鉄くず(スクラップ)であること、
を特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の廃材取引支援装置。
【請求項5】
取引先から提供された材料を用いて製品を製造し当該製造された製品を前記取引先に対して納入する場合において前記製品の製造過程で発生する廃材についての売上値引または買取を適切に行えるように支援することができる、制御部および記憶部を備える情報処理装置で実行される廃材取引支援方法であって、
前記記憶部には、
製造された前記製品の量である製造量と、廃材識別データと、廃材取引区分と、前記廃材の値引単価または買取単価と、前記製品の製造の結果発生した前記廃材の量である廃材発生量と、を含む加工明細データからなる加工データ
が格納されており、
前記制御部で実行される、
前記廃材取引区分が、前記廃材発生量に相当する分の金額を前記製品についての前記取引先に対する売上金額から値引きする旨を示す値引区分である場合、当該値引区分を含む前記加工明細データに基づいて、前記製造量に製品単価を乗じることで算出された売上金額を含む売上明細データ、および、前記廃材発生量に前記値引単価を乗じることで算出された値引金額を含む値引明細データからなる売上データを生成する売上データ生成ステップと、
前記廃材取引区分が、前記廃材を前記取引先から買取する旨を示す買取区分である場合、当該買取区分を含む前記加工明細データに基づいて、前記廃材識別データと、前記廃材発生量に前記買取単価を乗じることで算出された発注金額と、を含む発注データを生成する発注データ生成ステップと、
を含むこと、
を特徴とする廃材取引支援方法。
【請求項6】
取引先から提供された材料を用いて製品を製造し当該製造された製品を前記取引先に対して納入する場合において前記製品の製造過程で発生する廃材についての売上値引または買取を適切に行えるように支援することができる、制御部および記憶部を備える情報処理装置に実行させるための廃材取引支援プログラムであって、
前記記憶部には、
製造された前記製品の量である製造量と、廃材識別データと、廃材取引区分と、前記廃材の値引単価または買取単価と、前記製品の製造の結果発生した前記廃材の量である廃材発生量と、を含む加工明細データからなる加工データ
が格納されており、
前記制御部に実行させるための、
前記廃材取引区分が、前記廃材発生量に相当する分の金額を前記製品についての前記取引先に対する売上金額から値引きする旨を示す値引区分である場合、当該値引区分を含む前記加工明細データに基づいて、前記製造量に製品単価を乗じることで算出された売上金額を含む売上明細データ、および、前記廃材発生量に前記値引単価を乗じることで算出された値引金額を含む値引明細データからなる売上データを生成する売上データ生成ステップと、
前記廃材取引区分が、前記廃材を前記取引先から買取する旨を示す買取区分である場合、当該買取区分を含む前記加工明細データに基づいて、前記廃材識別データと、前記廃材発生量に前記買取単価を乗じることで算出された発注金額と、を含む発注データを生成する発注データ生成ステップと、
を含むこと、
を特徴とする廃材取引支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃材取引支援装置、廃材取引支援方法および廃材取引支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、各会社で使用していない新材料、又は、素性の明確な再生材が主として廃棄材として処理されるムダを有効活用する未使用材管理方法が開示されている(特許文献1の0001段落参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-59013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、賃加工業界においては、取引先から支給された材料を用いて加工業者が製品を製造し、当該製造された製品を前記取引先に納入する。この製造過程で廃材が発生することがあるが、廃材は、販売等による収益化が可能であるためそれ自体で価値がある。
【0005】
このため、発生した廃材については、売上値引(製品の売上金額から廃材分の金額を相殺することで値引きする方法)または買取(廃材を加工業者が買い取る方法)の取引として処理するのが通常である。
【0006】
しかしながら、売上値引または買取を適切に行うためには、従来においては、値引金額または買取金額の計算を含めた一連の処理を手動で行う必要があったため、担当者の負担が大きいという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、取引先から提供された材料を用いて製品を製造し当該製造された製品を前記取引先に対して納入する場合において前記製品の製造過程で発生する廃材についての売上値引または買取を適切に行えるように支援することができる廃材取引支援装置、廃材取引支援方法および廃材取引支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る廃材取引支援装置においては、取引先から提供された材料を用いて製品を製造し当該製造された製品を前記取引先に対して納入する場合において前記製品の製造過程で発生する廃材についての売上値引または買取を適切に行えるように支援することができる、制御部および記憶部を備える廃材取引支援装置であって、前記記憶部には、製造された前記製品の量である製造量と、廃材識別データと、廃材取引区分と、前記廃材の値引単価または買取単価と、前記製品の製造の結果発生した前記廃材の量である廃材発生量と、を含む加工明細データからなる加工データが格納されており、前記制御部は、前記廃材取引区分が、前記廃材発生量に相当する分の金額を前記製品についての前記取引先に対する売上金額から値引きする旨を示す値引区分である場合、当該値引区分を含む前記加工明細データに基づいて、前記製造量に製品単価を乗じることで算出された売上金額を含む売上明細データ、および、前記廃材発生量に前記値引単価を乗じることで算出された値引金額を含む値引明細データからなる売上データを生成する売上データ生成手段と、前記廃材取引区分が、前記廃材を前記取引先から買取する旨を示す買取区分である場合、当該買取区分を含む前記加工明細データに基づいて、前記廃材識別データと、前記廃材発生量に前記買取単価を乗じることで算出された発注金額と、を含む発注データを生成する発注データ生成手段と、を備えること、を特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る廃材取引支援装置においては、前記制御部は、前記発注データに基づいて、前記廃材識別データと、仕入金額としての前記発注金額と、を含む仕入データを生成する仕入データ生成手段を更に備えること、を特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る廃材取引支援装置においては、前記制御部は、前記廃材識別データと、前記廃材発生量と、在庫が他社の資産である旨を示す他社区分と、製造過程で前記廃材が発生した前記製品の納入先となる前記取引先についての取引先識別データと、を含む在庫明細データを在庫データに追加する処理を、前記加工データの生成直後に行うことにより、前記在庫データを更新し、前記売上値引の対象とした前記廃材についての前記廃材識別データおよび前記売上値引の対象とした前記取引先についての前記取引先識別データと紐付く前記在庫データ中の前記他社区分を、在庫が自社の資産である旨を示す自社区分に変更する処理を、前記売上データの生成直後に行うことにより、前記在庫データを更新し、前記買取の対象とした前記廃材についての前記廃材識別データおよび前記買取の対象とした前記取引先についての前記取引先識別データと紐付く前記在庫データ中の前記他社区分を、前記自社区分に変更する処理を、前記仕入データの生成直後に行うことにより、前記在庫データを更新する在庫データ更新手段を更に備えること、を特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る廃材取引支援装置においては、前記製品が、金属製品であり、前記廃材が、鉄くず(スクラップ)であること、を特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る廃材取引支援方法においては、取引先から提供された材料を用いて製品を製造し当該製造された製品を前記取引先に対して納入する場合において前記製品の製造過程で発生する廃材についての売上値引または買取を適切に行えるように支援することができる、制御部および記憶部を備える情報処理装置で実行される廃材取引支援方法であって、前記記憶部には、製造された前記製品の量である製造量と、廃材識別データと、廃材取引区分と、前記廃材の値引単価または買取単価と、前記製品の製造の結果発生した前記廃材の量である廃材発生量と、を含む加工明細データからなる加工データが格納されており、前記制御部で実行される、前記廃材取引区分が、前記廃材発生量に相当する分の金額を前記製品についての前記取引先に対する売上金額から値引きする旨を示す値引区分である場合、当該値引区分を含む前記加工明細データに基づいて、前記製造量に製品単価を乗じることで算出された売上金額を含む売上明細データ、および、前記廃材発生量に前記値引単価を乗じることで算出された値引金額を含む値引明細データからなる売上データを生成する売上データ生成ステップと、前記廃材取引区分が、前記廃材を前記取引先から買取する旨を示す買取区分である場合、当該買取区分を含む前記加工明細データに基づいて、前記廃材識別データと、前記廃材発生量に前記買取単価を乗じることで算出された発注金額と、を含む発注データを生成する発注データ生成ステップと、を含むこと、を特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る廃材取引支援プログラムにおいては、取引先から提供された材料を用いて製品を製造し当該製造された製品を前記取引先に対して納入する場合において前記製品の製造過程で発生する廃材についての売上値引または買取を適切に行えるように支援することができる、制御部および記憶部を備える情報処理装置に実行させるための廃材取引支援プログラムであって、前記記憶部には、製造された前記製品の量である製造量と、廃材識別データと、廃材取引区分と、前記廃材の値引単価または買取単価と、前記製品の製造の結果発生した前記廃材の量である廃材発生量と、を含む加工明細データからなる加工データが格納されており、前記制御部に実行させるための、前記廃材取引区分が、前記廃材発生量に相当する分の金額を前記製品についての前記取引先に対する売上金額から値引きする旨を示す値引区分である場合、当該値引区分を含む前記加工明細データに基づいて、前記製造量に製品単価を乗じることで算出された売上金額を含む売上明細データ、および、前記廃材発生量に前記値引単価を乗じることで算出された値引金額を含む値引明細データからなる売上データを生成する売上データ生成ステップと、前記廃材取引区分が、前記廃材を前記取引先から買取する旨を示す買取区分である場合、当該買取区分を含む前記加工明細データに基づいて、前記廃材識別データと、前記廃材発生量に前記買取単価を乗じることで算出された発注金額と、を含む発注データを生成する発注データ生成ステップと、を含むこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、取引先から提供された材料を用いて製品を製造し当該製造された製品を前記取引先に対して納入する場合において前記製品の製造過程で発生する廃材についての売上値引または買取を適切に行えるように支援することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、廃材取引支援装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、本実施形態に係る処理フローの一例を示す図である。
図3図3は、在庫データの一例を示す図である。
図4図4は、受注入力により生成された受注データの一例を示す図である。
図5図5は、加工入力により生成された加工データおよび加工入力により更新された在庫データの一例を示す図である。
図6図6は、売上入力により生成された売上データおよび発注データならびに売上入力により更新された在庫データの一例を示す図である。
図7図7は、仕入入力により生成された仕入データおよび仕入入力により更新された在庫データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る廃材取引支援装置、廃材取引支援方法および廃材取引支援プログラムの実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0017】
[1.概要]
(1)背景
賃加工業界(取引先から材料を支給されて加工だけ行う業界)においては、製品の製造過程で廃材が発生する。ここで、鉄鋼業界、特に、ステンレス等の高価な金属を扱う業界においては、製品の製造過程において発生した鉄くず(スクラップ)を資産管理上どのように扱うかが、受注段階において決まっている。
【0018】
スクラップの資産管理の仕方としては、例えば、売上値引および買取等がある。売上値引とは、製品の売上金額からスクラップ分の金額を相殺することで値引きする方法である。買取とは、スクラップを加工業者が買い取る方法である。
【0019】
しかしながら、スクラップの発生量に応じた売上値引または買取をすることが受注の時点で取り決めされていたとしても、従来はシステム対応できていなかったため、システム外で値引金額または買取金額を計算する必要があった。
【0020】
このような計算処理を行うのは手間であるため、スクラップ発生分を予め値引した金額を販売額として製品を販売するという対応をとることが多かった。しかしながら、この対応は、実際の取引実情(正規の製品金額を計上した後、値引金額または買取金額を計上する)とは異なっているという問題があった。
【0021】
(2)本実施形態の概要
そこで、本実施形態においては、スクラップの処理方法および単価は受注時に既に決まっていることに注目し、例えば、売上値引する場合には、売上入力時にスクラップ分の値引金額を計上できるようにし、一方で、買取する場合には、売上入力時にスクラップ分の発注金額(=買取金額)を計上できるようにした。
【0022】
また、本実施形態においては、例えば、売上値引または買取した後は、スクラップの在庫を、他社資産から自社資産に振替できるようにした。
【0023】
具体的には、本実施形態においては、例えば、以下の1~4を可能とした。
1.スクラップ発生時の処理方法として、スクラップ取引区分(売上相殺および買取等)を受注データに登録できるようにした。当該登録は、例えば、受注入力時に行うことができる。
2.スクラップが発生した場合、当該スクラップについての資産区分を「他社品」とした上で、当該スクラップを在庫データに登録できるようにした。当該登録は、例えば、加工入力時に行うことができる。
3.売上値引を行う場合、売上値引用の明細を自動生成できるようにした。また、売上値引の対象としたスクラップについては、在庫データ中の「他社品」の資産区分を「自社品」の資産区分に変更できるようにした。当該生成および当該変更は、例えば、売上入力時に行うことができる。
4.買取を行う場合、発注データおよび仕入データを自動生成できるようにした。また、買取の対象としたスクラップについては、在庫データ中の「他社品」の資産区分を「自社品」の資産区分に変更できるようにした。当該発注データの生成は、例えば、売上入力時に行うことができる。当該仕入データの生成および当該変更は、例えば、仕入入力時に行うことができる。
【0024】
(3)効果
本実施形態においては、例えば、加工時に発生するスクラップについて、事前に委託元と取り決めたスクラップ取引区分(売上相殺および買取等)に応じた処理ができるようになった。
【0025】
また、本実施形態においては、例えば、受託材料からのスクラップ発生を管理できることで、売上値引または買取となるスクラップの発生を加工時に抑えることができるよう作業員に意識させることに成功した。
【0026】
そして、スクラップが発生してしまった場合には発生したスクラップを販売することによる収益化も可能であるが、本実施形態においては、例えば、スクラップを自社資産として管理できるようにすることで、スクラップに対する従業員の資産意識を向上させることに成功した。以下、具体的な構成および動作について説明する。
【0027】
[2.構成]
本実施形態に係る廃材取引支援装置100の構成の一例について、図1を参照して説明する。図1は、廃材取引支援装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【0028】
廃材取引支援装置100は、市販のデスクトップ型パーソナルコンピュータである。なお、廃材取引支援装置100は、デスクトップ型パーソナルコンピュータのような据置型情報処理装置に限らず、市販されているノート型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistants)、スマートフォン、タブレット型パーソナルコンピュータなどの携帯型情報処理装置であってもよい。
【0029】
廃材取引支援装置100は、制御部102と通信インターフェース部104と記憶部106と入出力インターフェース部108と、を備えている。廃材取引支援装置100が備えている各部は、任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0030】
通信インターフェース部104は、ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回線を介して、廃材取引支援装置100をネットワーク300に通信可能に接続する。通信インターフェース部104は、他の装置と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。ここで、ネットワーク300は、廃材取引支援装置100とサーバ200とを相互に通信可能に接続する機能を有し、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)等である。なお、後述する各種マスタ等のデータは、例えばサーバ200に格納されてもよい。
【0031】
入出力インターフェース部108には、入力装置112および出力装置114が接続されている。出力装置114には、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる。入力装置112には、キーボード、マウス、及びマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタを用いることができる。なお、以下では、出力装置114をモニタ114とし、入力装置112をキーボード112またはマウス112として記載する場合がある。
【0032】
記憶部106には、各種のデータベース、テーブルおよびファイルなどが格納される。記憶部106には、OS(Operating System)と協働してCPU(Central Processing Unit)に命令を与えて各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録される。記憶部106として、例えば、RAM(Random Access Memory)・ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および光ディスク等を用いることができる。
【0033】
記憶部106は、例えば、在庫データ106aと、受注データ106bと、加工データ106cと、売上データ106dと、発注データ106eと、仕入データ106fと、を備えている。
【0034】
本実施形態に係る廃材取引支援装置100によれば、取引先から提供された材料を用いて製品を製造し当該製造された製品を前記取引先に対して納入する場合において前記製品の製造過程で発生する廃材についての売上値引または買取を適切に行えるように支援することができる。
【0035】
前記製品は、例えば、金属製品(特に鉄鋼製品)である。前記廃材は、前記製品が前記金属製品である場合、例えば、鉄くず(いわゆるスクラップ)である。
【0036】
在庫データ106aは、在庫明細データからなる。当該在庫明細データは、図5等に示すように、例えば、在庫を識別するための在庫識別データ(商品)と、資産区分と、在庫数量(員数および重量)と、前記取引先を識別するための取引先識別データ(取引先)と、等を含む。
【0037】
前記在庫は、前記製品および前記廃材の両方を含む。前記在庫が前記製品である場合、前記在庫識別データは、前記製品を識別するための製品識別データであり、前記在庫数量は、製造された前記製品の量である製造量である。前記在庫が前記廃材である場合、前記在庫識別データは、前記廃材を識別するための廃材識別データであり、前記在庫数量は、前記製品の製造の結果発生した前記廃材の量である廃材発生量である。
【0038】
前記資産区分は、前記在庫が他社の資産である旨を示す他社区分(他社)、または、前記在庫が自社の資産である旨を示す自社区分(自社)である。
【0039】
受注データ106bは、受注明細データからなる。当該受注明細データは、図4に示すように、例えば、受注番号と、受注行番号(行)と、前記取引先識別データ(得意先)と、前記製品を識別するための製品識別データ(商品)と、受注した前記製品の量である受注量(員数および重量)と、前記製品の単位重量あたりの単価である製品単価と、前記製品についての受注金額(金額)と、前記取引先から支給された材料を識別するための材料識別データ(支給材料)と、廃材取引区分(スクラップ取引区分)と、前記廃材の値引単価または買取単価(スクラップ単価)と、等を含む。
【0040】
前記廃材取引区分(スクラップ取引区分)は、前記廃材発生量に相当する分の金額を前記製品についての前記取引先に対する売上金額から値引きする旨を示す値引区分(売上相殺)、前記廃材を前記取引先から買取する旨を示す買取区分(買取)、または、前記廃材を前記取引先から無料で引き取る旨を示す引取区分(引取)である。
【0041】
前記廃材の前記値引単価は、例えば、前記廃材の単位重量あたりの値引金額である。前記廃材の前記買取単価は、例えば、前記廃材の単位重量あたりの買取金額である。
【0042】
加工データ106cは、加工明細データからなる。当該加工明細データは、図5に示すように、例えば、加工番号と、加工行番号(行)と、前記受注番号と、前記受注行番号(行)と、前記製品識別データ(受入商品)と、製造された前記製品の量である前記製造量(受入員数および受入重量)と、前記材料識別データ(払出材料)と、前記製品の製造に使用した前記材料の量(払出員数および払出重量)と、前記廃材取引区分(スクラップ取引区分)と、前記廃材を識別するための廃材識別データ(スクラップ商品)と、前記廃材の前記値引単価または前記買取単価(スクラップ単価)と、前記製品の製造の結果発生した前記廃材の量である前記廃材発生量(スクラップ重量)と、等を含む。なお、スクラップ取引に関する情報は、例えば、工場参照用の情報として保持されていてもよい。
【0043】
売上データ106dは、売上明細データおよび値引明細データからなる。当該売上明細データは、図6の売上データ106dにおいて、ハッチングを付していない3つの明細である。前記値引明細データは、図6の売上データ106dにおいて、ハッチングを付した明細である。前記値引明細データは、売上値引を行う場合に、前記売上明細データ中の売上金額との相殺処理を行うために生成される値引用の明細のデータである。
【0044】
前記売上明細データは、図6に示すように、例えば、売上番号と、売上行番号(行)と、前記受注番号と、前記受注行番号(行)と、前記取引先識別データ(得意先)と、前記製品識別データ(商品)と、売上数量(員数および重量)としての加工データ106c中の前記製造量と、売上単価(単価)としての受注データ106b中の前記製品単価と、前記製造量に前記製品単価を乗じることで算出された売上金額(金額)と、等を含む。
【0045】
前記値引明細データは、図6に示すように、例えば、前記売上番号と、前記売上行番号(行)と、前記取引先識別データ(得意先)と、値引数量としての加工データ106c中の前記廃材発生量(員数および重量)と、加工データ106c中の前記値引単価(単価)と、前記廃材発生量に前記値引単価を乗じることで算出された値引金額(金額)と、等を含む。
【0046】
発注データ106eは、発注明細データからなる。発注データ106eは、前記加工業者が前記取引先から前記廃材の買取を行う場合に、前記取引先に前記廃材を発注して買取したという形式にするために生成されるデータである。
【0047】
前記発注明細データは、図6に示すように、例えば、発注番号と、発注行番号(行)と、発注区分と、仕入先識別データ(仕入先)と、発注商品(商品)としての前記廃材識別データと、発注数量(員数および重量)としての加工データ106c中の前記廃材発生量と、発注単価(単価)としての加工データ106c中の前記買取単価と、前記廃材発生量に前記買取単価を乗じることで算出された発注金額(金額)と、等を含む。前記発注区分としては、例えば、通常商品の発注であることを示す区分、および、スクラップ商品の発注であることを示す区分(スクラップ購入)等が挙げられる。
【0048】
仕入データ106fは、仕入明細データからなる。仕入データ106fは、前記加工業者が前記取引先から前記廃材の買取を行う場合に、前記取引先から前記廃材を仕入れて買取したという形式にするために生成されるデータである。
【0049】
前記仕入明細データは、図7に示すように、例えば、仕入番号と、仕入行番号(行)と、前記発注番号と、前記発注行番号(行)と、仕入区分と、前記仕入先識別データ(仕入先)と、仕入商品(商品)としての発注データ106e中の前記廃材識別データと、仕入数量(員数および重量)としての発注データ106e中の前記発注数量と、仕入単価(単価)としての発注データ106e中の前記発注単価と、仕入金額(金額)としての発注データ106e中の前記発注金額と、等を含む。前記仕入区分としては、例えば、通常商品の仕入であることを示す区分、および、スクラップ商品の仕入であることを示す区分(スクラップ購入)等が挙げられる。
【0050】
制御部102は、廃材取引支援装置100を統括的に制御するCPU等である。制御部102は、OS等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し、格納されているこれらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。
【0051】
制御部102は、機能概念的に、例えば、(1)前記廃材識別データと、前記廃材発生量と、在庫が他社の資産である旨を示す他社区分と、製造過程で前記廃材が発生した前記製品の納入先となる前記取引先についての取引先識別データと、を含む在庫明細データを在庫データに追加する処理を、前記加工データの生成直後に行うことにより、前記在庫データを更新し、前記売上値引の対象とした前記廃材についての前記廃材識別データおよび前記売上値引の対象とした前記取引先についての前記取引先識別データと紐付く前記在庫データ中の前記他社区分を、在庫が自社の資産である旨を示す自社区分に変更する処理を、前記売上データの生成直後に行うことにより、前記在庫データを更新し、前記買取の対象とした前記廃材についての前記廃材識別データおよび前記買取の対象とした前記取引先についての前記取引先識別データと紐付く前記在庫データ中の前記他社区分を、前記自社区分に変更する処理を、前記仕入データの生成直後に行うことにより、前記在庫データを更新する在庫データ更新手段としての在庫データ更新部102aと、(2)前記廃材取引区分が、前記廃材発生量に相当する分の金額を前記製品についての前記取引先に対する売上金額から値引きする旨を示す値引区分である場合、当該値引区分を含む前記加工明細データに基づいて、前記製造量に製品単価を乗じることで算出された売上金額を含む売上明細データ、および、前記廃材発生量に前記値引単価を乗じることで算出された値引金額を含む値引明細データからなる売上データを生成する売上データ生成手段としての売上データ生成部102bと、(3)前記廃材取引区分が、前記廃材を前記取引先から買取する旨を示す買取区分である場合、当該買取区分を含む前記加工明細データに基づいて、前記廃材識別データと、前記廃材発生量に前記買取単価を乗じることで算出された発注金額と、を含む発注データを生成する発注データ生成手段としての発注データ生成部102cと、(4)前記発注データに基づいて、前記廃材識別データと、仕入金額としての前記発注金額と、を含む仕入データを生成する仕入データ生成手段としての仕入データ生成部102dと、を備えている。なお、各部が実行する処理の内容については、以下の[3.処理の具体例]において説明する。
【0052】
[3.処理の具体例]
本項目では、本実施形態に係る処理の具体例について説明する。以下、受注入力、加工入力、売上入力および仕入入力の順に、項目立てて説明をする。
【0053】
本実施形態に係る廃材取引支援装置100の使用者は、例えば、鉄鋼製品の加工を行う加工業者の担当者である。また、本項目[3.処理の具体例]において、在庫データ106aは、図3に示す内容で予め登録されているものとする。
【0054】
[3-1.受注入力]
まず、受注入力について、図2および図4を参照して説明をする。
【0055】
得意先からの受注を受けると、前記担当者による受注入力により、図4に示す受注データ106bが登録される。当該登録された受注データ106bは、図2の処理フローでいうと、「受注入力」から延びる受注データ106bに相当する。
【0056】
図4の受注データ106bは、得意先「あああ商事」からスクラップ取引区分「売上相殺」で、得意先「あいう株式会社」からスクラップ取引区分「買取」で、得意先「いいい物産」からスクラップ取引区分「引取」で受注を受けるという内容である。
【0057】
つまり、得意先「あああ商事」については、発生したスクラップを単価10円で売上金額から相殺(値引)し、得意先「あいう株式会社」については、発生したスクラップを単価12円で買取し、得意先「いいい物産」については、発生したスクラップを無料で引取することとなる。
【0058】
なお、図4の受注データ106bに示すように、3つの受注すべてにおいて、得意先から支給された支給材料は「YYY」であり、その重量は120である。
【0059】
[3-2.加工入力]
次に、加工入力について、図2および図5を主に参照して説明をする。
【0060】
(1)加工データ106cの登録
受注入力後、前記担当者による加工入力により、図5に示す加工データ106cが登録される。当該登録された加工データ106cは、図2の処理フローでいうと、「加工入力」から延びる加工データ106cに相当する。
【0061】
図5の加工データ106cは、3つの得意先すべてについて、商品「XXX」が重量でいうと100製造された結果、スクラップ商品「ZZZ」が重量でいうと20発生したという内容である。
【0062】
(2)在庫データ106aの更新
在庫データ更新部102aは、前記廃材識別データと、前記廃材発生量と、前記他社区分と、製造過程で前記廃材が発生した前記製品の納入先となる前記取引先についての前記取引先識別データと、を含む在庫明細データを在庫データ106aに追加する処理を、加工データ106cの生成直後に行うことにより、在庫データ106aを更新する。
【0063】
具体的には、在庫データ更新部102aは、スクラップ取引区分が「売上相殺」または「買取」である得意先については、資産区分が「他社」である在庫明細データを、在庫データ106aに追加する。これは、「売上相殺」または「買取」として処理する場合は、一旦は、他社資産として在庫計上する必要があるためである。
【0064】
すなわち、在庫データ更新部102aは、スクラップ取引区分が「売上相殺」である得意先「あああ商事」については、スクラップ商品「ZZZ」と、資産区分「他社」と、員数「1」と、スクラップの発生重量「20」と、得意先「あああ商事」と、を含む在庫明細データを、図3の在庫データ106aに追加する。
【0065】
また、在庫データ更新部102aは、スクラップ取引区分が「買取」である得意先「あいう株式会社」については、スクラップ商品「ZZZ」と、資産区分「他社」と、員数「1」と、スクラップの発生重量「20」と、得意先「あいう株式会社」と、を含む在庫明細データを、図3の在庫データ106aに追加する。
【0066】
これに対して、在庫データ更新部102aは、スクラップ取引区分が「引取」である得意先については、資産区分が「自社」である在庫明細データを、在庫データ106aに追加する。これは、「引取」として処理する場合は、最初から自社資産として在庫計上して問題ないためである。
【0067】
すなわち、在庫データ更新部102aは、スクラップ取引区分が「引取」である得意先「いいい物産」については、スクラップ商品「ZZZ」と、資産区分「自社」と、員数「1」と、スクラップの発生重量「20」と、を含む在庫明細データを、図3の在庫データ106aに追加する。当該在庫明細データ中には、得意先「いいい物産」は含まれない。
【0068】
以上、本項目(2)で説明した処理により3つの在庫明細データが追加されて更新された在庫データ106aを、図5に示す。当該更新された在庫データ106aは、図2の処理フローでいうと、「加工入力」から延びる在庫データ106aに相当する。
【0069】
[3-3.売上入力]
次に、売上入力について、図2図5および図6を参照して説明をする。
【0070】
(1)売上データ106dの生成
売上データ生成部102bは、前記廃材取引区分(スクラップ取引区分)が前記値引区分(売上相殺)である場合、当該値引区分(売上相殺)を含む前記加工明細データに基づいて、前記製造量に製品単価を乗じることで算出された売上金額を含む売上明細データ、および、前記廃材発生量に前記値引単価を乗じることで算出された値引金額を含む値引明細データからなる売上データ106dを生成する。
【0071】
具体的には、図5の加工データ106cを参照すると、加工番号:KA001(得意先「あああ商事」に対応)についてのスクラップ取引区分は、「売上相殺」である。
【0072】
この場合、売上金額は、図5の加工データ106c中の加工番号:KA001の加工明細データ中の受入商品「XXX」の製造量100に、図4の受注データ106b中の得意先「あああ商事」を含む受注明細データ中の受入商品「XXX」の製品単価100円を乗じて算出される10,000円となる。このため、売上データ生成部102bは、得意先「あああ商事」と、当該算出した売上金額10,000円と、等を含む、売上番号:UR001の売上明細データを生成する。
【0073】
売上データ生成部102bは、得意先「あいう株式会社」について売上番号:UR002の売上明細データを生成し、得意先「いいい物産」について売上番号:UR003の売上明細データを生成するが、生成の方法は前段落で説明した方法と同様であるため、詳細な説明は割愛する。
【0074】
一方で、値引金額は、図5の加工データ106c中の加工番号:KA001の加工明細データ中のスクラップ商品「ZZZ」のスクラップの発生重量20にマイナス1を乗じた-20に、図5の加工データ106c中の加工番号:KA001の加工明細データ中のスクラップ商品「ZZZ」のスクラップ単価10円を乗じて算出される-200円となる(つまり、200円の値引である)。このため、売上データ生成部102bは、得意先「あああ商事」と、当該算出した値引金額-200円と、等を含む、売上番号:UR001の値引明細データを生成する。
【0075】
以上、本項目(1)で生成された3つの売上明細データおよび1つの値引明細データを含む売上データ106dを、図6に示す。当該生成された売上データ106dは、図2の処理フローでいうと、「売上入力」から延びる売上データ106dに相当する。
【0076】
前記担当者は、生成された図6の売上データ106dを参照することで、得意先「あああ商事」に対する10,000円の売上金額があるが、この売上金額から値引される値引金額が200円存在するということを把握することができる。
【0077】
(2)在庫データ106aの更新
在庫データ更新部102aは、前記売上値引の対象とした前記廃材についての前記廃材識別データおよび前記売上値引の対象とした前記取引先についての取引先識別データと紐付く在庫データ106a中の前記他社区分を、前記自社区分に変更する処理を、売上データ106dの生成直後に行うことにより、在庫データ106aを更新する。
【0078】
具体的には、売上値引(売上相殺)の対象としたスクラップ商品は、図5の加工データ106cにおいてスクラップ取引区分「売上相殺」を含む加工番号:KA001の加工明細データ中のスクラップ商品「ZZZ」となる。また、売上値引(売上相殺)の対象とした得意先は、図4の受注データ106bにおいてスクラップ取引区分「売上相殺」を含む受注番号:JU001の受注明細データ中の得意先「あああ商事」となる。
【0079】
この場合、在庫データ更新部102aは、図5の在庫データ106aにおいてスクラップ商品「ZZZ」および得意先「あああ商事」を含む下から2行目の在庫明細データについて、資産区分を「他社」から「自社」に変更(振替)し、また、得意先を「あああ商事」からブランクに変更する。
【0080】
当該変更によって、図5の在庫データ106aにおいて、下から3行目の在庫明細データと下から2行目の在庫明細データとは、スクラップ商品「ZZZ」、資産区分「自社」および得意先がブランクという同じ状態となるため、当該2つの在庫明細データが集約されることで、在庫データ106aは、図6に示すように更新される。当該更新された在庫データ106aは、図2の処理フローでいうと、「売上入力」から延びる在庫データ106aに相当する。
【0081】
(3)発注データ106eの生成
発注データ生成部102cは、前記廃材取引区分(スクラップ取引区分)が、前記買取区分(買取)である場合、当該買取区分(買取)を含む前記加工明細データに基づいて、前記廃材識別データと、前記廃材発生量に前記買取単価を乗じることで算出された発注金額と、を含む発注データ106eを生成する。
【0082】
具体的には、図5の加工データ106cを参照すると、加工番号:KA002(得意先「あいう株式会社」に対応)についてのスクラップ取引区分は、「買取」である。
【0083】
この場合、発注金額は、図5の加工データ106c中の加工番号:KA002の加工明細データ中のスクラップ商品「ZZZ」のスクラップの発生重量20に、図5の加工データ106c中の加工番号:KA002の加工明細データ中のスクラップ商品「ZZZ」のスクラップ単価12円を乗じて算出される240円となる。このため、発注データ生成部102cは、発注区分「スクラップ購入」と、スクラップ商品「ZZZ」と、当該算出した発注金額240円と、等を含む発注データ106eを生成する。つまり、スクラップ取引区分が「買取」である場合、材料支給元である「あいう株式会社」からスクラップを購入するために、発注データ106eが生成されるということである。
【0084】
当該生成された発注データ106eを、図6に示す。当該生成された発注データ106eは、図2の処理フローでいうと、「売上入力」から延びる発注データ106eに相当する。
【0085】
[3-4.仕入入力]
次に、仕入入力について、図2図5図6および図7を参照して説明をする。
【0086】
(1)仕入データ106fの生成
仕入データ生成部102dは、発注データ106eに基づいて、前記廃材識別データと、仕入金額としての前記発注金額と、を含む仕入データ106fを生成する。
【0087】
具体的には、仕入データ生成部102dは、図6の発注データ106eに基づいて、仕入区分「スクラップ購入」と、スクラップ商品「ZZZ」と、仕入金額としての前記発注金額240円と、等を含む仕入データ106fを生成する。
【0088】
当該生成された仕入データ106fを、図7に示す。当該生成された仕入データ106fは、図2の処理フローでいうと、「仕入入力」から延びる仕入データ106fに相当する。
【0089】
(2)在庫データ106aの更新
在庫データ更新部102aは、前記買取の対象とした前記廃材についての前記廃材識別データおよび前記買取の対象とした前記取引先についての取引先識別データと紐付く在庫データ106a中の前記他社区分を、前記自社区分に変更する処理を、仕入データ106fの生成直後に行うことにより、在庫データ106aを更新する。
【0090】
具体的には、買取の対象としたスクラップ商品は、図5の加工データ106cにおいてスクラップ取引区分「買取」を含む加工番号:KA002の加工明細データ中のスクラップ商品「ZZZ」となる。また、買取の対象とした得意先は、図4の受注データ106bにおいてスクラップ取引区分「買取」を含む受注番号:JU002の受注明細データ中の得意先「あいう株式会社」となる。
【0091】
この場合、在庫データ更新部102aは、図6の在庫データ106aにおいてスクラップ商品「ZZZ」および得意先「あいう株式会社」を含む下から1行目の在庫明細データについて、資産区分を「他社」から「自社」に変更(振替)し、また、得意先を「あいう株式会社」からブランクに変更する。
【0092】
当該変更によって、図6の在庫データ106aにおいて、下から2行目の在庫明細データと下から1行目の在庫明細データとは、スクラップ商品「ZZZ」、資産区分「自社」および得意先がブランクという同じ状態となるため、当該2つの在庫明細データが集約されることで、在庫データ106aは、図7に示すように更新される。当該更新された在庫データ106aは、図2の処理フローでいうと、「仕入入力」から延びる在庫データ106aに相当する。
【0093】
[4.本実施形態のまとめ]
以上説明してきたように、本実施形態に係る廃材取引支援装置100によれば、スクラップ取引区分「売上相殺」を含む加工明細データに基づいて値引情報を含む売上データ106dを生成し、一方で、スクラップ取引区分「買取」を含む加工明細データに基づいて発注データ106eを生成することができる。これにより、取引先から提供された材料を用いて製品を製造し当該製造された製品を前記取引先に対して納入する場合において前記製品の製造過程で発生する廃材についての売上値引または買取を適切に行えるように支援することができる。
【0094】
また、本実施形態に係る廃材取引支援装置100によれば、売上データ106dの生成直後および仕入データ106fの生成直後のタイミングで、在庫データ106a中のスクラップ商品についての資産区分を「他社」から「自社」に変更(振替)する処理を行うこともできる。これにより、スクラップ取引を行う場合においても在庫管理を適切に行えるように支援することができる。
【0095】
[5.国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
本実施形態により、業務効率化や企業の適切な経営判断を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標8及び9に貢献することが可能となる。
【0096】
また、本実施形態により、廃棄ロス削減や、ペーパレス・電子化を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標12、13及び15に貢献することが可能となる。
【0097】
また、本実施形態により、統制、ガバナンス強化に寄与することができるので、SDGsの目標16に貢献することが可能となる。
【0098】
[6.他の実施形態]
本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0099】
例えば、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0100】
また、本明細書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0101】
また、廃材取引支援装置100に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0102】
例えば、廃材取引支援装置100が備える処理機能、特に制御部にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPUおよび当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、本実施形態で説明した処理を情報処理装置に実行させるためのプログラム化された命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて廃材取引支援装置100に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部などには、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
【0103】
また、このコンピュータプログラムは、廃材取引支援装置100に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
【0104】
また、本実施形態で説明した処理を実行するためのプログラムを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、および、Blu-ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0105】
また、「プログラム」とは、任意の言語または記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードまたはバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成および読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0106】
記憶部に格納される各種のデータベース等は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、および、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0107】
また、廃材取引支援装置100は、既知のパーソナルコンピュータまたはワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、任意の周辺装置が接続された当該情報処理装置として構成してもよい。また、廃材取引支援装置100は、当該装置に本実施形態で説明した処理を実現させるソフトウェア(プログラムまたはデータ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0108】
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じてまたは機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、例えば、賃加工業界(取引先から材料を支給されて加工だけ行う業界)において有用であり、特に、鉄鋼等の金属の加工を行う業界においては極めて有用である。
【符号の説明】
【0110】
100 廃材取引支援装置
102 制御部
102a 在庫データ更新部
102b 売上データ生成部
102c 発注データ生成部
102d 仕入データ生成部
104 通信インターフェース部
106 記憶部
106a 在庫データ
106b 受注データ
106c 加工データ
106d 売上データ
106e 発注データ
106f 仕入データ
108 入出力インターフェース部
112 入力装置
114 出力装置
200 サーバ
300 ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7