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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】接合構造およびその形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
H01L21/60 311Q
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022046091
(22)【出願日】2022-03-22
(65)【公開番号】P2023015978
(43)【公開日】2023-02-01
【審査請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】110126516
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年3月23日にMaterials Characterization 175(2021)111060にて、「Characterization of interfacial structure for low-temperature direct bonding of Si substrates sputtered with Ag nanotwinned films」と題する論文において発表 令和3年8月3日にJ Mater Sci:Mater Electron(2021)32:21966-21973にて、「Enhancing effect of substrate bias on nanotwinformation of sputtered Ag thin films」と題する論文において発表
(73)【特許権者】
【識別番号】522114427
【氏名又は名称】樂▲金▼材料科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】莊 東漢
(72)【発明者】
【氏名】蔡 幸樺
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】台湾特許公告第000703226(TW,B)
【文献】台湾特許出願公開第201542888(TW,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0046099(US,A1)
【文献】特開2021-072435(JP,A)
【文献】特開2019-207972(JP,A)
【文献】特開2002-110726(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0236782(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 21/52
H01L 23/48
H01L 23/50
H01L 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板、
前記第1の基板に対向して配置された第2の基板、
前記第1の基板上に配置された第1の接合層、
前記第2の基板上に配置され、前記第1の接合層に対向する第2の接合層、および
前記第1の接合層と前記第2の接合層の間に配置された銀フィーチャを含み、前記銀フィーチャは、平行な双晶境界を含む銀ナノ双晶構造を含み、前記平行な双晶境界は、90%以上の[111]結晶方位を含む接合構造。
【請求項2】
前記銀フィーチャの厚さは、少なくとも0.3μmである請求項1に記載の接合構造。
【請求項3】
前記銀ナノ双晶構造の厚さは少なくとも0.1μmである請求項1に記載の接合構造。
【請求項4】
前記平行な双晶境界間の距離は1nm~100nmの間である請求項1に記載の接合構造。
【請求項5】
前記銀フィーチャは、
前記第1の接合層と前記銀ナノ双晶構造の間の第1の遷移粒子層、および
前記第2の接合層と前記銀ナノ双晶構造の間の第2の遷移粒子層をさらに含む請求項1に記載の接合構造。
【請求項6】
前記銀フィーチャは、70%以上の[111]結晶方位を含む請求項5に記載の接合構造。
【請求項7】
前記第1の基板内にあり、前記第1の接合層に接続された第1のビア、および
前記第2の基板内にあり、前記第2の接合層に接続された第2のビアをさらに含む請求項1に記載の接合構造。
【請求項8】
前記第1の基板および前記第2の基板のそれぞれは、シリコン(Si)チップ、Siウェハ、またはそれらの組み合わせを含む請求項1に記載の接合構造。
【請求項9】
前記第1の接合層および前記第2の接合層のそれぞれは、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、Cu/Ti、Cu/Ni、Cu/Cr、またはそれらの組み合わせを含む請求項1に記載の接合構造。
【請求項10】
第1の基板上に第1の接合層を形成するステップ、
前記第1の接合層上に第1の銀フィーチャを形成するステップ、
第2の基板上に第2の接合層を形成するステップ、
前記第2の接合層上に第2の銀フィーチャを形成するステップ、および
前記第1の銀フィーチャと前記第2の銀フィーチャを接合して、前記第1の接合層と前記第2の接合層の間に第3の銀フィーチャを形成するステップを含み、前記第3の銀フィーチャは、平行な双晶境界を含む銀ナノ双晶構造を含み、前記平行な双晶境界は、90%以上の[111]結晶方位を含む接合構造を形成する方法。
【請求項11】
前記第3の銀フィーチャの厚さは、少なくとも0.3μmであり、前記銀ナノ双晶構造の厚さは少なくとも0.1μmであり、前記平行な双晶境界間の距離は1nm~100nmの間である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の銀フィーチャおよび前記第2の銀フィーチャを形成する各前記ステップは、スパッタリングまたは蒸発コーティングを含み、前記スパッタリングまたは蒸発コーティング中、0V~-300Vの電圧および0A~3.0Aの電流の負のバイアスが前記第1の銀フィーチャおよび前記第2の銀フィーチャに加えられる請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の銀フィーチャと前記第2の銀フィーチャの接合は、100℃~250℃の間の温度で行われる請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の銀フィーチャと前記第2の銀フィーチャの接合は、1MPa~30MPaの間の圧力で行われる請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の銀フィーチャと前記第2の銀フィーチャの接合は、10-3トル以上の真空で行われる請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の銀フィーチャと前記第2の銀フィーチャの接合時間は10分~60分の間である請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の接合層と前記銀ナノ双晶構造の間に第1の遷移粒子層を形成するステップ、および
前記第2の接合層と前記銀ナノ双晶構造の間に第2の遷移粒子層を形成するステップをさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記第3の銀フィーチャは、前記第1の遷移粒子層、前記第2の遷移粒子層、および前記銀ナノ双晶構造を含み、前記第3の銀フィーチャは、70%以上の[111]結晶方位を含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の基板に、前記第1の接合層に接続された第1のビアを形成するステップ、および
前記第2の基板に、前記第2の接合層に接続された第2のビアを形成するステップをさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の基板および前記第2の基板のそれぞれは、Siチップ、Siウェハ、またはそれらの組み合わせを含み、前記第1の接合層と前記第2の接合層のそれぞれは、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、Cu/Ti、Cu/Ni、Cu/Cr、またはそれらの組み合わせを含む請求項10に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年6月20日に出願された台湾特許出願番号第110126516号についての優先権を主張するものであり、これらの全ては引用によって本願に援用される。
【0002】
本発明は、結合構造およびその形成方法に関するものであり、特に、銀フィーチャ(silver feature)を有する接合構造およびその形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来の技術では、さまざまなシングルチップモジュール(アナログチップ、デジタルロジックチップ、メモリチップなど)がプリント回路基板(PCB)上に並列に配置され、集積回路構造を形成している。しかしながら、プリント回路板の面積が限られており、各チップ間の距離が長いため、信号遅延のデメリットがある。従って、2次元集積回路構造がその後開発された。それがマルチチップモジュール(MCM)である。2次元集積回路構造は、製造プロセスの最適化により、同じモジュールに異なるチップを封止する。トランジスタの数が増え続ける中、チップまたはウェハが垂直に積み重ねられた3次元集積回路構造がさらに発展してきた。3次元集積回路構造は、システムインパッケージ(SiP)を実現し、その例には、マルチチップパッケージ(MCP)、スタックダイ、パッケージオンパッケージ(PoP)、パッケージインパッケージ(PiP)、チップオンウェハ(CoW)、 ウェハオンウェハ(WoW)を含む。
【0004】
3次元集積回路構造の技術は、異種集積(heterogeneous integration)にある。異種集積は、さまざまな種類の材料と部品を単一のシステムに変え、これにより、マイクロオプトエレクトロメカニカルシステム(MOEMS)、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)、およびナノエレクトロメカニカルシステム(Nano-electro-mechanical systems; NEMS)の性能を向上させる。異種集積から派生した3次元集積回路構造は、ムーアの法則の継続を可能にする。しかしながら、3次元集積回路は、スケールダウン中のジュール熱の影響、ウェハの反り、およびはんだ金属間化合物の成長など、いくつかの欠点が依然としてある。その中でも、チップまたはウェハの接合プロセス中の高温に起因する信頼性の低下は緊急の問題である。そのため、3次元集積回路の製造プロセスに低温接合技術をどのように導入するかを開発する必要がある。
【0005】
従来の低温接合の方法は、陽極接合、はんだ接合、表面活性化接合、超音波接合、高分子接着剤接合(polymer glue bonding)を含む。しかしながら、上記の方法は、陽極接合に用いられたチップに適合しない高電圧によるチップの損傷;はんだ接合における金属間化合物(IMC)の脆化; 表面活性化接合における高コストおよびチップへの損傷;超音波接合における適用領域の狭さ;および高分子接着剤接合における対向電極の再加工(reworking)の難しさなど、いくつかの欠点を有する。
【0006】
面心立方(FCC)結晶構造を有する金属の(111)結晶面は、最も高密度な面である。従って、(100)または(110)結晶面と比較して、滑りやすく、拡散速度が高く、原子拡散速度が高い(例えば、約3~4桁以上)。また、ナノ双晶は高密度の双晶境界を持ち、多数の原子拡散経路を提供することができる。
【0007】
基板の表面上に銅ナノ双晶膜を電気めっきし、高い[111]結晶方位を有する基板上に平行なナノ双晶膜を形成することができる方法が開示されている(特許文献1および特許文献2参照)。特許文献1は金属層で覆われた2つの酸化物基板を0.8MPa~3MPaの圧力と200℃~350℃の温度で接合された、銅ナノ双晶膜の電気めっきによる低温接合の方法を開示している。特許文献2は、まず2つの基板上に銅シード層を電気めっきし、次いで銅シード層上にニッケルナノ双晶膜を電気めっきし、次いで2つの基板を接合することを含むパッケージ構造および方法を開示している。半導体チップ、回路基板、または導電性基板の表面上に金ナノ双晶膜を電気めっきし、次いでそれらを互いに接合することを含む構造および方法も開示されている(特許文献3参照)。
【0008】
従来の低温接合技術は、基板上に平行なナノ双晶膜を形成することができるが、50rpm、またはさらには1500rpmの高速回転電気めっき法を用いており、そのプロセスおよび膜質の制御を困難にしている。その結果、平行な双晶境界間の距離が大きく、90%以下の[111]結晶方位を含むことになる。XRDパターン(特許文献4参照)は、Cuの結晶方位が(222)で依然として明らかであることを示している。XRDパターン(特許文献5参照)は、Auの結晶方位が(222)で依然として明らかであることを示している。さらに、それは50%の[111]結晶方位しか含まない。さらに、半導体チップ、回路基板、または導電性基板は、従来の技術ではナノ双晶膜を介して接合されるが、表面粗さを減少するために、接合する前にナノ双晶膜に化学機械研磨(CMP)を行う必要がある。これはプロセスを複雑にするだけでなく、ナノ双晶膜に損傷を与える可能性もある。
【0009】
さらに、電気めっきプロセスで形成される部品または接点のサイズは制限される可能性があり、電気めっきプロセスによって生じる廃棄物も環境への懸念がある。特に、2μm以下の部品または接点は、一般に電気めっきプロセスで製造されることができない。一方、スパッタリングまたは蒸着コーティングでは、上記のような懸念はない。2μm以下の部品または接点は、スパッタリングまたは蒸着コーティングで容易に製造することができる。また、ナノ双晶膜はシリコン基板上に直接めっきされるため、少なくとも2μm以上のランダムな粗粒がまず形成され、次いでナノ双晶構造に変換される。即ち、シリコン基板の表面上に2μm以下の厚さのナノ双晶膜を直接形成することは可能でない。従って、2μm以下の厚さの3次元電気接点またはハイブリッド回路用の双晶構造を形成することは可能でない。また、シリコン基板とナノ双晶膜間の接合力が弱いため、剥離が生じ、信頼性がさらに低下する可能性もある。従来の技術のさまざまな欠点をみると、半導体産業は既存のウェハボンディング技術において依然としてさまざまな課題に直面している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】台湾特許第I6865724号明細書
【文献】台湾特許第I521104号明細書
【文献】台湾特許第I519681号明細書
【文献】台湾特許第I432613号明細書
【文献】台湾特許第I507548号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
銀フィーチャを有する接合構造およびその形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示のいくつかの実施形態は、第1の基板、第1の基板に対向して配置された第2の基板、第1の基板上に配置された第1の接合層、第2の基板上に配置され、第1の接合層に対向する第2の接合層、および第1の接合層と第2の接合層の間に配置された銀フィーチャを含み、銀フィーチャは、平行な双晶境界を含む銀ナノ双晶構造を含み、平行な双晶境界は、90%以上の[111]結晶方位を含む接合構造を提供する。
【0013】
いくつかの実施形態では、銀フィーチャの厚さは、少なくとも0.3μmである。
【0014】
いくつかの実施形態では、銀ナノ双晶構造の厚さは少なくとも0.1μmである。
【0015】
いくつかの実施形態では、平行な双晶境界間の距離は1nm~100nmの間である。
【0016】
いくつかの実施形態では、銀フィーチャは、第1の接合層と銀ナノ双晶構造の間の第1の遷移粒子層、および第2の接合層と銀ナノ双晶構造の間の第2の遷移粒子層をさらに含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、銀フィーチャは、70%以上の[111]結晶方位を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、第1の基板内にあり、第1の接合層に接続された第1のビア、および第2の基板内にあり、第2の接合層に接続された第2のビアをさらに含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1の基板および第2の基板のそれぞれは、シリコン(Si)チップ、Siウェハ、またはそれらの組み合わせを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、第1の接合層および第2の接合層のそれぞれは、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、またはそれらの組み合わせを含む。
【0021】
本開示のさらなる実施形態は、第1の基板上に第1の接合層を形成するステップ、第1の接合層上に第1の銀フィーチャを形成するステップ、第2の基板上に第2の接合層を形成するステップ、第2の接合層上に第2の銀フィーチャを形成するステップ、および第1の銀フィーチャと第2の銀フィーチャを接合して、第1の接合層と第2の接合層の間に第3の銀フィーチャを形成するステップを含み、第3の銀フィーチャは、平行な双晶境界を含む銀ナノ双晶構造を含み、平行な双晶境界は、90%以上の[111]結晶方位を含む接合構造を形成する方法を提供する。
【0022】
さらなる実施形態では、第3の銀フィーチャの厚さは、少なくとも0.3μmであり、銀ナノ双晶構造の厚さは少なくとも0.1μmであり、平行な双晶境界間の距離は1nm~100nmの間である。
【0023】
さらなる実施形態では、第1の銀フィーチャおよび第2の銀フィーチャを形成する各ステップは、スパッタリングまたは蒸発コーティングを含む。
【0024】
さらなる実施形態では、第1の銀フィーチャと第2の銀フィーチャの接合は、100℃~250℃の間の温度で行われる。
【0025】
さらなる実施形態では、第1の銀フィーチャと第2の銀フィーチャの接合は、1MPa~30MPaの間の圧力で行われる。
【0026】
さらなる実施形態では、第1の銀フィーチャと第2の銀フィーチャの接合は、10-3トル以上の真空で行われる。
【0027】
さらなる実施形態では、第1の銀フィーチャと第2の銀フィーチャの接合時間は10分~60分の間である。
【0028】
さらなる実施形態では、第1の接合層と銀ナノ双晶構造の間に第1の遷移粒子層を形成するステップ、および第2の接合層と銀ナノ双晶構造の間に第2の遷移粒子層を形成するステップをさらに含む。
【0029】
さらなる実施形態では、第3の銀フィーチャは、第1の遷移粒子層、第2の遷移粒子層、および銀ナノ双晶構造を含み、第3の銀フィーチャは、70%以上の[111]結晶方位を含む
【0030】
さらなる実施形態では、第1の基板に、第1の接合層に接続された第1のビアを形成するステップ、および第2の基板に、第2の接合層に接続された第2のビアを形成するステップをさらに含む。
【0031】
さらなる実施形態では、第1の基板および第2の基板のそれぞれは、Siチップ、Siウェハ、またはそれらの組み合わせを含み、第1の接合層と第2の接合層のそれぞれは、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、またはCu/Ti、Cu/Ni、およびCu/Crなどのそれらの組み合わせを含む。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本開示の実施形態の態様は、以下の詳細な説明および添付の図面を通じて明確に理解することができる。図面は、業界の標準的な慣行に従って、さまざまな特徴が縮尺通りに描かれておらず、説明の目的でのみ使用されている。実際、さまざまな特徴の寸法は、明確に説明できるようにするために、任意に拡大または縮小されることがある。
図1A図1Aは、本開示のいくつかの実施形態による、様々な製造段階での接合構造の断面図である。
図1B図1Bは、本開示のいくつかの実施形態による、様々な製造段階での接合構造の断面図である。
図1C図1Cは、本開示のいくつかの実施形態による、様々な製造段階での接合構造の断面図である。
図1D図1Dは、本開示のいくつかの実施形態による、様々な製造段階での接合構造の断面図である。
図1E図1Eは、本開示のいくつかの実施形態による、様々な製造段階での接合構造の断面図である。
図1F図1Fは、本開示のいくつかの実施形態による、様々な製造段階での接合構造の断面図である。
図2図2は、本開示のいくつかの実施形態による、単結晶シリコン上の銀フィーチャの集束イオンビーム(FIB)画像である。
図3A図3Aは、本開示の他の実施形態による、様々な温度で形成された接合構造の集束イオンビーム画像である。
図3B図3Bは、本開示の他の実施形態による、様々な温度で形成された接合構造の集束イオンビーム画像である。
図3C図3Cは、本開示の他の実施形態による、様々な温度で形成された接合構造の集束イオンビーム画像である。
図3D図3Dは、本開示の他の実施形態による、様々な温度で形成された接合構造の集束イオンビーム画像である。
図3E図3Eは、本開示の他の実施形態による、様々な温度で形成された接合構造の集束イオンビーム画像である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下の開示は、提供される主題の異なる特徴を実施するための多くの異なる実施形態または例を提供する。これらはもちろん単に例示するためであり、それに限定するという意図はない。例えば、下記の開示において、第1の特徴が第2の特徴の上に形成されるということは、第1と第2の特徴が直接接触して形成される複数の実施形態を含むことができ、付加的な特徴が第1と第2の特徴間に形成される複数の実施形態を含むこともできる。また、本開示は、複数の例において同じ構成要素の符号または文字を繰り返し用いる可能性がある。繰り返し用いる目的は、簡易化した、明確な説明を提供するためのもので、説明される様々な実施形態および/または構成の関係を限定するものではない。
【0034】
実施形態のいくつかの変形例を以下に説明する。 異なる図および図示の実施形態では、類似の要素記号は、類似の要素を示すために用いられる。これらの実施形態に記載された段階の前、間、および/または後に、追加のステップを提供できることを理解されたい。説明された段階のいくつかは、異なる実施形態に置き換えるか、または削除されてもよい。
【0035】
さらに、「下の方」、「下方」、「下部」、「上方」、「上部」およびこれらに類する語のような、空間的に相対的な用語は、図において1つの要素または特徴と、別の(複数の)要素と(複数の)特徴との関係を記述するための説明を簡潔にするために用いられる。空間的に相対的な用語は、図に記載された方向に加えて、使用または操作する装置の異なる方向を包含することを意図している。装置は、他に方向づけされてもよく(90度回転、または他の方向に)、ここで用いられる空間的に相対的な記述は、同様にそれに応じて解釈され得る。
【0036】
また、数値または数値の範囲が「約」「おおよそ」などで表されるとき、この用語は、記載された数の+/-10%以内などの記載された数を含む妥当な範囲内にある数、または当業者に理解される他の値を包含することを意図している。例えば、「約5nm」という用語は、4.5nmから5.5nmの寸法範囲を包含している。
【0037】
また、要素を変えるための、請求項における「第1の」、「第2の」、「第3の」等の序数詞の使用は、それ自体が、形成された1つのクレーム要素を他のクレーム要素と比較して優先度、序列、または順序を示唆するものではなく、むしろ、単にクレーム要素を区別するために、特定の名前を有する1つのクレーム要素を同じ名前を有する他の要素から区別するためのラベルとして(だけ、序数詞を)用いている。
【0038】
本開示の実施形態は、2つの基板の間に配置された銀ナノ双晶構造を有する銀フィーチャを含む接合構造を提供する。銀フィーチャ全体は70%以上の[111]結晶方位を含み、銀フィーチャ内の銀ナノ双晶構造は90%以上の[111]結晶方位を含む。銀自体の特性に加えて、双晶構造の特性、例えば、より良い耐酸化性、耐食性、電気伝導性、熱伝導性、および高温安定性などは、本開示の実施形態による接合構造を、低温ウェハオンウェハおよびチップオンウェハなどの3次元集積回路パッケージングで、より適用可能にさせる。
【0039】
図1A図1Fは、本開示のいくつかの実施形態による、様々な製造段階での接合構造の断面図を示している。図1Aに示すように、第1の基板10Aが提供される。第1の基板10Aは、その上に第1の接合層25Aを有し、第1の基板10Aは、第1の接合層25Aに接続された第1のビア15Aを有する。いくつかの実施形態では、第1の基板10Aは、半導体ウェハ、半導体チップ、またはそれらの組み合わせを含む。例えば、第1の基板10Aは、シリコン(Si)およびゲルマニウム(Ge)などの元素半導体、炭化ケイ素(SiC)、ヒ化ガリウム(GaAs)、リン化ガリウム(GaP)、リン化インジウム(InP)、ヒ化インジウム(InAs)および/またはアンチモン化インジウム(InSb)などの複合半導体、シリコンゲルマニウム(SiGe)、ヒ素リン化ガリウム(GaAsP)、アルミニウムインジウムヒ素(AlInAs)、アルミニウムガリウムヒ素(AlGaAs)、ヒ化ガリウムインジウム(GaInAs)、ガリウムインジウムリン化物(GaInP)および/またはガリウムインジウムヒ素リン化物(GaInAsP)などの合金半導体、またはこれらの組み合わせを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、第1の接合層25Aは、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、またはCu/Ti、Cu/Ni、およびCu/Crなどのそれらの組み合わせを含むことができる。第1の接合層25Aの厚さは、0.01μm~10μm、例えば、0.1μmから1.0μmであることができる。いくつかの実施形態では、第1のビア15Aは、Siビアであることができる。
【0041】
他の実施形態では、第1の基板10Aは、金属間誘電体(IMD)(図示せず)および保護層(図示せず)をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、金属間誘電体は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、ホウケイ酸ガラス(BSG)、リンケイ酸ガラス(PSG)、ホウリンケイ酸ガラス(BPSG)、Low-k材料、他の適切な誘電体材料またはそれらの組み合わせであることができる。例えば、相互接続構造(図示せず)、再配線層(RDL)(図示せず)などが金属間誘電体上に配置されることができる。保護層は、窒化ケイ素、ポリイミド(PI)、またはそれらの組み合わせであることができる。さらに、第1の基板10Aは、抵抗器、コンデンサ、インダクタ、ダイオード、電界効果トランジスタ(FET)、金属酸化物半導体FET(MOSFET)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)トランジスタ、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)、横方向拡散MOS(LDMOS)トランジスタ、高電圧トランジスタ、高周波トランジスタ、その他の適切なデバイス、またはこれらの組み合わせなどの様々な受動および能動装置(図示せず)を含むことができる。図1Aに示された構造は単なる一例であり、第1の基板10Aは追加の特徴を含んでもよいことを理解されたい。
【0042】
図1Bに示すように、第1の銀フィーチャ50Aが第1の接合層25A上に形成されている。いくつかの実施形態では、第1の銀フィーチャ50Aの厚さは、0.3μm以上、例えば、約0.3μm~約10μmであることができる。第1の銀フィーチャ50Aは、銀ナノ双晶構造14Aを含む。銀ナノ双晶構造14Aの厚さは少なくとも0.1μmである。銀ナノ双晶構造14Aは、平行双晶境界(Σ3+Σ9)を含み、平行双晶境界間の距離は、例えば、1nm~100nm、好ましくは2nm~50nmであることができる。いくつかの実施形態では、銀ナノ双晶構造14Aは、平行に積み重ねられた銀ナノ双晶柱(pillars)を含む。銀ナノ双晶柱の直径は、0.1μm~10μm、好ましくは0.3μm~1.0μmであることができる。
【0043】
図1Bに引き続き示すように、いくつかの実施形態では、銀ナノ双晶構造14Aに加えて、第1の銀フィーチャ50Aも遷移粒子(transition grain)層22Aを含む。平行な双晶境界を有する銀ナノ双晶構造14Aの代わりに、第1の銀フィーチャ50Aが第1の接合層25A上に先に形成されたとき、平行な双晶境界のない遷移粒子層22Aが先に形成される。いくつかの実施形態では、遷移粒子層22Aの厚さは、2.0μm以下、例えば、約0.1μm~約1μmであることができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、第1の銀フィーチャ50Aは、スパッタリングによって第1の接合層25A上に形成されることができる。いくつかの実施形態では、スパッタリングプロセスは、単一のスパッタリングガンまたは複数のスパッタリングガンを用いることができる。スパッタリングプロセスでは、電源は、DC、DCプラス、RF、または高出力インパルスマグネトロンスパッタリング(HIPIMS)であることができる。第1の銀フィーチャ50Aをスパッタリングするプロセス電力は、例えば、約100W~約500Wであることができる。スパッタリングプロセスは室温で行われる。しかしながら、スパッタリングプロセス中の温度は、約50℃~約200℃上昇する可能性がある。スパッタリングプロセスのバックグラウンド圧力は1×10-5トルであることができ、作動圧力は、例えば、約1×10-3トルから1×10-2トルであることができる。アルゴンの流量は、約10sccm~約20sccmであることができる。ステージ(stage)の回転速度は、例えば、約5rpm~約20rpmであることができる。スパッタリングプロセス中、-100V~約-200Vなどの約0V~約-300Vの電圧および0.1A~約1.0Aなどの約0A~約3.0Aの電流の負のバイアスのイオン衝撃が基板に加えられる。第1の銀フィーチャ50Aの堆積速度は、例えば、約0.5nm/s~約3nm/sであることができる。上述のスパッタリングプロセスパラメータは、実際の用途に応じて適切に調整されることができ、限定されることを意図していないことを理解されたい。
【0045】
他の実施形態では、第1の銀フィーチャ50Aは、蒸発コーティングによって第1の接合層25A上に形成されることができる。いくつかの実施形態では、蒸発コーティングプロセスのバックグラウンド圧力は、1×10-5トルであることができ、作動圧力は、例えば、約1×10-4トルから5×10-4トルであることができる。アルゴンの流量は、約2sccm~約10sccmであることができる。ステージ(stage)の回転速度は、例えば、約5rpm~約20rpmであることができる。第1の銀フィーチャ50Aの堆積速度は、例えば、約1nm/s~約5.0nm/sであることができる。また、蒸発コーティングプロセス中、-10V~約-200Vなどの約0V~約-300Vの電圧および0.1A~約1.0Aなどの約0A~約3.0Aの電流の負のバイアスのイオン衝撃が銀ナノ双晶構造14Aに加えられる。上述の蒸発コーティングプロセスパラメータは、実際の用途に応じて適切に調整されることができ、限定されることを意図していないことを理解されたい。
【0046】
スパッタリングまたは蒸発コーティングプロセスと比較して、電気めっきプロセスで形成された部品または接点のサイズは制限がある可能性がある。特に、一般に2μm以下の部品または接点は、電気めっきプロセスで製造されることができない。一方、2μm以下の部品または接点は、スパッタリングまたは蒸着コーティングプロセスで容易に製造することができる。また、ナノ双晶膜はシリコン基板上に直接めっきされるため、少なくとも2μm以上のランダムな粗粒がまず形成され、次いでナノ双晶構造に変換される。即ち、シリコン基板の表面上に2μm以下の厚さのナノ双晶膜を直接形成することは可能でない。従って、2μm以下の厚さの3次元電気接点またはハイブリッド回路用の双晶構造を形成することは可能でない。本開示のいくつかの実施形態では、スパッタリングまたは蒸着コーティングのプロセス中、0~-300Vの電圧の負のバイアスが銀薄膜に加えられ、少なくとも0.1μmの厚さのナノ双晶構造が0.3μm以下の厚さの銀薄膜の表面上に形成されることができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、第1の基板10A上に第1の接合層25Aおよび第1の銀フィーチャ50Aを形成する方法は、第1の基板10Aの表面全体に第1の接合層25Aおよび第1の銀フィーチャ50Aを形成するステップ、およびパターンニングプロセスを行い、第1の接合層25Aおよび第1の銀フィーチャ50Aの部分を除去し、図1Bに示された構造を形成するステップを含むことができる。もう1つの実施形態では、第1の基板10A上に第1の接合層25Aおよび第1の銀フィーチャ50Aを形成する方法は、第1の基板10A上に開口部を有するマスクを提供するステップ、第1の基板10A上に第1の接合層25Aおよび第1の銀フィーチャ50Aを形成するステップ、およびマスクと開口部の外側の層の部分を除去し、図1Bに示された構造を形成するステップを含むことができる。上述の方法は単なる一例であり、実際の用途に応じて適切に調整されることができ、したがってそれに限定されないことを理解されたい。
【0048】
図1Cに示すように、第2の基板10Bが提供される。第2の基板10Bは、その上に第2の接合層25Bを有し、第2の基板10Bは、第2の接合層25Bに接続された第2のビア15Bを有する。第2の基板10B、第2の接合層25B、および第2のビア15Bの材料は、図1Aに記載された実施形態を参照することができる。従って、ここでは繰り返されない。続いて、第2の銀フィーチャ50Bが第2の接合層25B上に形成される。第2の銀フィーチャ50Bは、銀ナノ双晶構造14Bおよび遷移粒子層22Bを含む。第2の銀フィーチャ50Bの厚さおよび形成方法は、図1Bに記載された実施形態を参照することができる。従って、ここでは繰り返されない。第2の基板10B、第2の接合層25B、第2のビア15B、および第2の銀フィーチャ50Bは、実際の用途に応じて適切に調整されることができ、図1Aおよび図1Bに示された実施形態に限定されないことを理解されたい。
【0049】
図1Cに引き続き示すように、第1の銀フィーチャ50Aおよび第2の銀フィーチャ50Bは、対向して接合され、第3の銀フィーチャ(50A+50B)および接合構造を形成する。第3の銀フィーチャは、ナノ双晶構造(14A+14B)を含む。断面図では、第3の銀フィーチャ全体は70%以上(70%以上または75%以上など)の[111]結晶方位を含み、ナノ双晶構造(14A+14B)は90%以上(90%以上または95%以上など)の[111]結晶方位を含む。双晶境界間の距離は、1nm~100nm、好ましくは2nm~50nmであることができる。いくつかの実施形態では、銀ナノ双晶構造(14A+14B)の厚さT1は、少なくとも0.1μm、例えば、約0.1μm~約8μmであり、第3の銀フィーチャ(50A+50B)の厚さT2は、少なくとも0.3μm、例えば、約0.3μm~約10μmである。
【0050】
実際には、厚さが0.1μm以下のナノ双晶膜は、後続の低温ウェハボンディングおよび3次元集積回路パッケージングにおいてボンディング材料と迅速且つ完全に反応する。界面に形成された金属間化合物は基板と接合することができず、剥離する可能性がある。即ち、実用には適さない。
【0051】
いくつかの実施形態では、第1の銀フィーチャ50Aおよび第2の銀フィーチャ50Bの接合は、100℃~250℃(例えば、約100℃~約150℃または約150℃~約250℃)の温度、1MPa~30MPa(例えば、約1MPa~約3MPa、約3MPa~約30MPa)の圧力、および10-3トル以上の真空で行われることができる。いくつかの実施形態では、第1の銀フィーチャ50Aと第2の銀フィーチャ50Bの接合の時間は、10分~60分(例えば、約10分~約30分、または約30分~約60分)の間である。第1の銀フィーチャ50Aおよび第2の銀フィーチャ50Bの接合後、接合構造は依然としてナノ双晶構造14A、14Bを含み、ナノ双晶構造の特性を保持する。
【0052】
上述の2つの基板を接合する実施形態は、単なる一例である。以下の図1D図1Fに示されるように、基板の数は2つ以上に増加されることができ、接合層と銀フィーチャは各種基板の前面と背面上に形成され接合することができることを理解されたい。
【0053】
図1Dに示すように、第3の接合層25Cおよび第4の銀フィーチャ50Cは、第2の接合層25Bに対向する第2の基板10Bの表面上に形成されることができる。図1Eに示すように、第3の基板10Cが提供される。第3の基板10Cは、その上に第4の接合層25Dを有し、第3の基板10Cは、第4の接合層25Dに接続された第3のビア15Cを有する。第5の銀フィーチャ50Dは、第4の接合層25D上に形成されることができる。続いて、第4の銀フィーチャ50Cおよび第5の銀フィーチャ50Dが対向して接合され、接合構造を形成する。第3の基板10C、第3のビア15C、第3の接合層25C、第4の接合層25D、第4の銀フィーチャ50C、および第5の銀フィーチャ50Dの材料および/または形成方法、ならびに厚さT3およびT4は、図1A図1Cに示された実施形態を参照することができる。従って、ここでは繰り返されない。
【0054】
図1Fに示すように、領域Eは、図1Eに示された構造であることができる。図1Fは、実際の用途に応じて基板の数が調整され、異なる数の層を有する接合構造を形成することができることを説明するための単なる一例であることを理解されたい。
【0055】
いくつかの実施形態では、本開示の接合プロセスは、基板または銀ナノ双晶を損傷しない1MPaから30MPaの圧力で行われる。従来の技術では0.8MPa~3MPaの低圧で接合プロセスが行われることができるが、接合前に化学機械研磨(CMP)をナノ双晶膜に行い、表面粗さを低減する必要がある。これはプロセスを複雑にするだけでなく、ナノ双晶膜を損傷する潜在的なリスクもある。従来の技術と比較して、本開示は、基板および銀ナノ双晶を損傷することなく、約1MPa~約30MPaのより大きな圧力を加え、銀ナノ双晶の表面の突起が、ナノスケールの成形を受けて、ターゲットと密接する効果を達成することができる。銀ナノ双晶の表面粗さの問題を解決するだけでなく、従来の技術での追加の化学機械研磨またはその他の表面処理の必要もなくなり、スループットと歩留まりを大幅に向上させることができる。また、従来の技術における銅ナノ双晶の硬度は4GPaであり、これは、本開示における銀ナノ双晶の硬度の約2倍である。銅ナノ双晶の表面粗さの問題を解決するために本開示のナノスケール突起成形機構が用いられる場合、100MPa以上の圧力を加える必要があり、これは基板および銅ナノ双晶構造を損傷することになる。
【0056】
また、銀の抵抗率は1.63μΩ・cmであり、銅(1.69μΩ・cm)、金(2.2μΩ・cm)、およびニッケル(6.90μΩ・cm)より低い。従って、銀は銅、金、およびニッケルより優れた電気伝導率と熱伝導率を有している。銀の積層欠陥エネルギーは25mJ/m2であり、これも銅(70mJ/m2)、金(45mJ/m2)、およびニッケル(225mJ/m2)より低い。従って、銀は銅、金、およびニッケルよりも双晶を形成しやすい。
【0057】
電気めっきによって銅ナノ双晶薄膜を形成する従来の技術(台湾特許第I432613号)と比較して、本開示のナノ双晶構造を形成するプロセスでは、銀の拡散速度は銅の拡散速度より10倍以上速い(LANDOLF-BORNSTEIN, Ed.H.Mehrer, Diffusion in Solid Metals and Alloys, Vol.26, P.75)。また、銀の融点は銅より約100℃低い。従って、後続のウェハボンディングプロセスは、より低い温度で行なわれ、半導体デバイスが接合プロセスの高温の影響を受けないようにすることができる。特に、銀ナノ双晶構造と比較して、銅ナノ双晶構造は、接合により高い温度(例えば250℃以上)を必要とする。温度が高くなると、半導体デバイスが損傷する可能性があり、接合プロセス後に材料が室温まで冷却されたとき、材料の収縮により、微小な接点の位置合わせ(small contact alignment)が失敗する可能性がある。
【0058】
銀ナノ双晶の硬度はわずか約2GPaであり、銅ナノ双晶よりも柔らかいため、表面粗さは結合プロセスにほとんど影響を与えない。特に、微小な部品または接点の高さに差があるとき、コプラナリティ(coplanarity)の問題が生じにくい。
【0059】
さらに、銅ナノ双晶膜と比較して、銀ナノ双晶膜は酸化されにくく、より良い接合界面を得ることができる。上記の全ての特徴は、本開示の銀ナノ双晶構造が実際の用途に適しているという利点を有することを示しており、特に、ウェハオンウェハおよびチップオンウェハなどの3次元集積回路パッケージングのニーズに適している。
【0060】
双晶の形成は、材料内に蓄積されたひずみエネルギーによる。ひずみエネルギーは、粒子内の一部の領域で均一な原子せん断(uniform atomic shear)をせん断されていない原子に駆動し、互いに鏡面対称の格子位置を形成する。双晶は、焼鈍双晶および機械的双晶を含む。相互に対称的な界面は双晶境界である。
【0061】
双晶は、主に、最も近い格子配列を有する面心立方(FCC)または六方最密充填(HCP)の結晶材料で形成される。最も近い格子配列を有する結晶構造に加えて、双晶は、小さい積層欠陥エネルギーを有する材料で形成されやすい。例えば、アルミニウムはFCC結晶材料であるが、その積層欠陥エネルギーは約200erg/cm2である。そのため、双晶がアルミニウムで形成されることはほとんどない。
【0062】
双晶境界はコヒーレント(coherent)結晶構造であり、界面エネルギーの低いΣ3およびΣ9の特殊粒界に分類される。結晶方位は全て{111}である。一般的な焼鈍と再結晶によって形成された高角度の粒界と比較して、双晶粒界の界面エネルギーは、高角度の粒界の界面エネルギーの約5%である(George E.Dieter, Mechanical Metallurgy, McGRAW-HILL Book Company, 1976, P.135-141)。
【0063】
双晶境界の低い界面エネルギーにより、酸化、硫化、および塩化物イオン腐食が回避されることができる。従って、銀ナノ双晶薄膜は、より優れた耐酸化性、耐腐食性を示す。さらに、双晶の対称的な格子配列は、電子輸送の妨げになりにくい。従って、銀ナノ双晶薄膜は、より優れた電気伝導率と熱伝導率を示す。双晶境界は転位の移動を抑制するため、材料は依然として高い引張強度を維持することができる。高い引張強度と電気伝導率の特性は、銅薄膜で証明されている。Ultrahigh Strength and High Electrical Conductivity in Copper, Science, vol.304, 2004, p.422-426 issued to L. Lu, Y. Shen, X. Chen, L. Qian, and K. Luを参照ください。
【0064】
高温安定性の面では、双晶境界は、双晶境界の低い界面エネルギーにより、高角度の粒界より安定している。双晶境界は、高温で移動しにくい。双晶境界は、周囲の高角度の粒界をロックする効果があり、高角度の粒界が移動できないようにすることができる。従って、粒子は高温で大きく成長することがなく、材料の引張強度が高温で維持されるようにすることができる。
【0065】
電流の信頼性の面では、原子は、低い界面エネルギーの双晶境界を通過するときに低い拡散速度を有するため、電子機器の動作中に、ワイヤ内の原子を高電流密度で移動させることは困難である。そのため、電流がワイヤを通過するときに頻繁に発生するエレクトロマイグレーションが抑制される。双晶は銅薄膜のエレクトロマイグレーションを抑制することができることが証明されている。Observation of Atomic Diffusion at Twin-Modified Grain Boundaries in Copper, Science, vol.321, 2008, p.1066-1069 issued to K.C. Chen, W.W. Wu, C.N. Liao, L.J. Chen, and K.N. Tuを参照ください。
【0066】
半導体デバイスでは、銀フィーチャが電極として用いられることができる。上述のように、他の接合構造(例えば、柱(pillar)、はんだなど)として用いられる他の金属(例えば、銅、金、ニッケルなど)と比較して、銀はより低い抵抗率、積層欠陥エネルギー、および融点を有する。これは、ナノ双晶構造を形成しやすくし、低温および低圧接合プロセスで用いられることができる。
【0067】
本開示の実施形態は、銀ナノ双晶構造によって低温接合を処理する。これは3次元集積回路のパッケージング業界で用いられるだけでなく、ハイパワーチップと基板の接合、温度に敏感な産業(temperature-sensitive industries)、およびその他の装置(微小電気機械部品(MEMS)、発光ダイオード(LED)、マイクロ発光ダイオード(Micro-LED)、ミニ発光ダイオード(Mini-LED)、バイオチップ、モノのインターネット(Internet of Things; IoT)システムのセンサ、アクチュエーター、感熱部品などで用いられることもできる。
【0068】
以下、本開示のいくつかの実施例の形成および検出結果を詳細に説明する。
【0069】
実施例1
【0070】
図2に示すように、単結晶シリコン基板の銅接合層の表面に銀フィーチャがスパッタリングされる。-100Vの負のバイアス電圧がスパッタリング中に銀薄膜に加えられた。集束イオンビーム(FIB)で分析された画像は、銀フィーチャが、平行な銀ナノ双晶構造と、平行な銀ナノ双晶構造と銅接合層との間の銀遷移粒子層に主に含まれていることが示された。電子線後方散乱回折(EBSD)による銀フィーチャの分析の結果は、平行な銀ナノ双晶境界が98%以上の[111]結晶方位配向を含み、銀フィーチャ全体の85%以上が[111]結晶方位の銀ナノ双晶構造であったことが示された。
【0071】
実施例2~6(図3A図3Eにそれぞれ対応)
【0072】
銀フィーチャは、それぞれ2つのSiチップの銅接合層にそれぞれスパッタリングされる。銀フィーチャの2つのSiチップは、20MPaの圧力、10-3トルの真空、および100℃の温度で60分間、対向して接合される。得られたFIB画像は図3Aに示される。銀フィーチャの2つのSiチップは、20MPaの圧力、10-3トルの真空、および150℃の温度で30分間、対向して接合される。得られたFIB画像は図3Bに示される。銀フィーチャの2つのSiチップは、20MPaの圧力、10-3トルの真空、および200℃の温度で30分間、対向して接合される。得られたFIB画像は図3Cに示される。銀フィーチャの2つのSiチップは、20MPaの圧力、10-3トルの真空、および250℃の温度で30分間、対向して接合される。得られたFIB画像は図3Dに示される。銀フィーチャの2つのSiチップは、20MPaの圧力、10-3トルの真空、および250℃の温度で10分間、対向して接合される。得られたFIB画像は図3Eに示される。実施例2~6のFIB画像は全て、接合界面が穴を含まず、平行なナノ双晶が銅接合層間の接合界面に残っていることが示されている。EBSDによる実施例2~6の銅接合層間の接合界面の分析の結果は、平行な銀ナノ双晶境界が98%以上の[111]結晶方位を含み、銀フィーチャ全体の85%以上が[111]結晶方位の銀ナノ双晶構造であったことが示された。
【0073】
本開示の実施形態は、いくつかの有利な特徴を有する。接合構造の断面図では、銀ナノ双晶構造は、90%以上の[111]結晶方位を有する平行な双晶境界を含む。銀フィーチャ全体は、70%以上の[111]結晶方位を含む。また、他の金属(例えば、銅、金、ニッケルなど)と比較して、銀はより低い抵抗率、積層欠陥エネルギー、および融点を有する。これは、ナノ双晶構造を形成しやすくし、低温および低圧接合プロセスで用いられることができる。
【0074】
前述の内容は、当業者が以下の詳細な説明をよりよく理解できるように、いくつかの実施形態の特徴を概説している。当業者は、同じ目的を実行するため、および/または本明細書に導入される実施形態の同じ利点を達成するための他のプロセスおよび構造を設計または修正するための基礎として本開示を容易に使用できることを理解できる。当業者はまた、そのような同等の構造が本開示の精神および範囲から逸脱せず、且つそれらは、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書で様々な変更、置換、および代替を行うことができることを理解するべきである。
【符号の説明】
【0075】
10A、10B、10C 基板
14A、14B、14C、14D 銀ナノ双晶構造
15A、15B、15C ビア
22A、22B、22C、22D 遷移粒子層
25A、25B、25C、25D 接合層
50A、50B、50C、50D 銀フィーチャ
E 領域
T1、T2、T3、T4 厚さ
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E