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特許7542044生成物回収および細胞再利用のためのプロセスおよびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】生成物回収および細胞再利用のためのプロセスおよびシステム
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/04 20060101AFI20240822BHJP
   B01D 3/00 20060101ALI20240822BHJP
   B01D 3/10 20060101ALI20240822BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20240822BHJP
   C12P 7/28 20060101ALI20240822BHJP
   C12P 7/40 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C12P7/04
B01D3/00 A
B01D3/10
C12N1/20 A
C12P7/28
C12P7/40
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022168906
(22)【出願日】2022-10-21
(62)【分割の表示】P 2019545746の分割
【原出願日】2018-03-20
(65)【公開番号】P2023011698
(43)【公開日】2023-01-24
【審査請求日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】62/473,850
(32)【優先日】2017-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518403425
【氏名又は名称】ランザテク,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】セクリスト,ポール アルヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ボーアダコス,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】コンラード,ロバート ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,アラン ハ
(72)【発明者】
【氏名】ブロムリー,ジェイソン カール
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,マイケル エマーソン
(72)【発明者】
【氏名】ミハルチェア,クリストフ ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】パロウ-リベラ,イグナシ
(72)【発明者】
【氏名】ティザード,ジョゼフ ヘンリー
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-544072(JP,A)
【文献】特表2016-533175(JP,A)
【文献】特表2012-531209(JP,A)
【文献】特表2016-529096(JP,A)
【文献】特表2011-505839(JP,A)
【文献】特開2013-121327(JP,A)
【文献】特表2016-500258(JP,A)
【文献】J. Brew. Soc. Japn.,1997年,Vol.92,No.10,pp.759-768
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P
C12M
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵プロセスから少なくとも1つの生成物を生成及び回収するための方法であって、
a.C1含有ガス状基質を発酵させて少なくとも1つの生成物および少なくとも1つの副生成物を生成することができる少なくとも1つの微生物を含むバイオリアクタに、供給源からのC1含有ガス状基質を導入すること;
b.生存可能な微生物バイオマスとしての前記少なくとも1つの微生物、前記少なくとも1つの生成物、および前記少なくとも1つの副生成物を含む前記バイオリアクタ内で、発酵ブロスを生成すること;
c.前記バイオリアクタからの前記発酵ブロスを、真空蒸留槽に通過させること;
d.前記発酵ブロスを部分的に蒸発させて生成物濃縮流および生成物枯渇流を生成すること(ここで、前記生成物枯渇流が前記生存可能な微生物バイオマスおよび前記少なくとも1つの副生成物を含む。);ならびに
e.前記生成物枯渇流を、前記バイオリアクタに戻す前に、二次分離ユニットに通過させ、前記少なくとも1つの副生成物を除去すること
を含み、
前記発酵ブロスは前記真空蒸留槽内での滞留時間が0.5~15分であり、かつ、前記生成物枯渇流中の前記微生物バイオマスの生存率と前記発酵ブロス中の前記微生物バイオマスの生存率との差が10%未満である、
前記方法。
【請求項2】
さらに、前記生成物濃縮流を変換ユニットに通過させて前記少なくとも1つの生成物を二次生成物に変換することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二次生成物が、ディーゼル燃料、ジェット燃料およびガソリンのうちの少なくとも1つの成分である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの生成物がアセトンであり、前記二次生成物がメタクリル酸メチルである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの生成物がイソプロパノールであり、前記二次生成物がプロピレンである、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記供給源が、炭水化物発酵プロセス、ガス発酵プロセス、セメント製造プロセス、パルプ製紙プロセス、製鋼プロセス、石油精製プロセス、石油化学製造プロセス、コークス製造プロセス、嫌気性消化プロセス、好気性消化プロセス、合成ガス製造プロセス、天然ガス抽出プロセス、石油抽出プロセス、冶金プロセス、地質学的貯留層、および触媒プロセスから選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記合成ガス製造プロセスが、バイオマス、廃液流、固形廃棄流、都市流、および化石資源ならびにそれらの組み合わせから選択される材料を利用するものである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記化石資源が、天然ガス、石炭および石油ならびにそれらの組み合わせから選択されるものである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記冶金プロセスが、アルミニウムの製造および/または精製、銅の製造および/または精製、および合金鉄の製造および/または精製、ならびにそれらの組み合わせから選択されるものである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記触媒プロセスが、水蒸気メタン改質、水蒸気ナフサ改質、石油コークスガス化、流動接触分解における触媒再生、ナフサ改質における触媒再生、および乾式メタン改質、ならびにそれらの組み合わせから選択されるものである、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの副生成物が、カルボン酸、および/または2,3-ブタンジオールである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
さらに、前記発酵ブロスを前記真空蒸留槽に通過させる前に、前記発酵ブロスを脱気して、脱気された発酵ブロスと発生ガス流とを生成することを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年3月20日に出願された米国仮出願第62/473,850号の
利益を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
この発明は、発酵ブロスから少なくとも1つの生成物を回収するための装置および関連
方法に関する。特に、本発明は、発酵ブロスから生成物を回収するための真空蒸留槽の使
用に関し、発酵ブロスは生存可能な微生物バイオマスを含有し、生成物の回収は微生物バ
イオマスの生存率を確保するような方法で完了する。
【背景技術】
【0003】
二酸化炭素(CO)は人間の活動による世界の温室効果ガス排出の約76%を占め、
メタン(16%)、亜酸化窒素(6%)、およびフッ素化ガス(2%)が残りを占めてい
る(United States Environmental Protection
Agency)。工業および林業の施業も大気中にCOを放出するが、COの大部
分は化石燃料を燃焼させてエネルギーを生成することに由来する。温室効果ガス排出、特
にCOの削減は、地球温暖化の進行ならびにそれに伴う気候および天候の変化を止める
のに重要である。
【0004】
フィッシャー-トロプシュ法などの触媒法を使用して、産業廃ガスまたは合成ガスなど
の二酸化炭素(CO)、一酸化炭素(CO)、および/または水素(H)を含有する
ガスを様々な燃料および化学物質に変換することができることが長い間認識されている。
しかしながら、最近、ガス発酵がそのようなガスの生物学的固定のための代替プラットフ
ォームとして浮上している。特に、C1固定微生物は、CO、CO、および/またはH
を含有するガスをエタノールおよび2,3-ブタンジオールなどの生成物に変換するこ
とが示されている。そのような生成物の生成は、例えば、緩徐な微生物増殖、制限された
ガス消費、毒素に対する感受性、または炭素基質の望ましくない副生成物への転用によっ
て制限され得る。
【0005】
生成物の蓄積は、ガス発酵プロセスの生成効率の低下をもたらし得る。蓄積を防ぐため
に、これらの生成物は有効な速度で除去されなければならない。有効な速度で除去されな
い場合、これらの生成物はC1固定微生物に対して抑制および/または毒性作用を有する
可能性がある。C1固定微生物が生存できない程度まで生成物が蓄積する場合、発酵プロ
セスを停止して再始動させなければならない可能性がある。再始動させる前に、多くの場
合発酵槽を洗浄する必要がある。これは時間のかかるプロセスである。
【0006】
生成物の回収に一般的に関連する別の問題は、従来の回収プロセスによるC1固定微生
物の損失である。生存可能なC1固定微生物の損失を克服するために、濾過方法が採用さ
れてきた。しかしながら、時間が経つにつれて、従来の濾過方法では、粒状物質が濾材中
に蓄積する可能性があり、これは濾液流束の低下をもたらし、最終的には濾材の洗浄およ
び/または交換を必要とする可能性がある。
【0007】
したがって、C1固定微生物の生存率を確保しながら有効な速度で生成物を回収するこ
とができる、メンテナンス要件が少ないシステムの必要性が残存する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、装置、すなわち真空蒸留槽、および発酵ブロスから少なくとも1つの生成物
を回収するための真空蒸留槽を利用する関連する方法を提供する。真空蒸留槽は、発酵ブ
ロスから少なくとも1つの生成物を回収するために設計されており、発酵ブロスはバイオ
リアクタから搬送され、真空蒸留槽は、(a)発酵ブロスを受容するための入口であって
、発酵ブロスが生存可能な微生物バイオマスおよび少なくとも1つの生成物を含む、入口
、生成物濃縮流を移送するための出口、ならびに生成物枯渇流を移送するための出口を画
定する外部ケーシングであって、生成物枯渇流が、生存可能な微生物バイオマスを含み、
生成物枯渇流が、バイオリアクタに移送される、外部ケーシングと、(b)ケーシング内
に位置する分離部分であって、上部トレイによって上方に、および下部トレイによって下
方に結合されており、かつ複数の理論蒸留段を提供するための分離媒体を画定する、分離
部分と、を備え、生成物濃縮流を移送するための出口が発酵ブロスを受容するための入口
に対して上にあり、発酵ブロスを受容するための入口が上部トレイに対して上にあり、生
成物枯渇流を移送するための出口が下部トレイに対して上にある。
【0009】
好ましくは、真空蒸留槽は所与の供給速度で発酵ブロスを処理することができる。供給
速度は、1時間当たりの発酵ブロスの体積として定義される。発酵ブロスの体積は、バイ
オリアクタに含有される発酵ブロスの体積である。少なくとも1つの実施形態において、
真空蒸留槽は、1時間当たり0.05~0.5のバイオリアクタ体積の供給速度で発酵ブ
ロスを処理することができる。ある特定の実施形態では、供給速度は、1時間当たり0.
05~0.1、0.05~0.2、0.05~0.3、0.05~0.4、0.1~0.
3、0.1~0.1~0.5、または0.3~0.5の反応器体積である。
【0010】
ある特定の場合において、発酵ブロスは真空蒸留槽内で所与の滞留時間を有する。発酵
ブロスが真空蒸留槽内にある期間は、発酵ブロスが発酵ブロスを受容するための入口から
入った瞬間から発酵ブロスが生成物枯渇流を移送するための出口から出たときまでの期間
である。好ましくは、滞留時間は0.5~15分である。様々な実施形態において、滞留
時間は、0.5~12分、0.5~9分、0.5~6分、0.5~3分、2~15分、2
~12分、2~9分、または2~6分である。少なくとも1つの実施形態において、微生
物の生存率を確保にするために、滞留時間は15分未満、12分未満、9分未満、6分未
満、3分未満、2分未満、または1分未満である。
【0011】
本発明は、ケーシングの出口を介して生成物枯渇流をバイオリアクタに移送することを
提供する。少なくとも1つの実施形態において、真空蒸留槽のケーシングは配管手段によ
ってバイオリアクタに接続されている。生成物枯渇流は、配管手段を通って真空蒸留槽か
らバイオリアクタへ送られ得る。好ましくは、バイオリアクタは産業プロセスからのC1
含有ガスの発酵のための条件下で操作される。
【0012】
真空蒸留槽は、発酵ブロスから生成物を効果的に除去するように設計されている。真空
蒸留槽は、除去プロセスの一部として分離媒体を利用する。分離媒体は、適切な気液接触
を提供するための任意の適切な材料であり得る。
【0013】
ある特定の場合において、分離媒体は、真空蒸留槽の高さにわたる圧力降下が32mb
ar未満であるように提供される。ある特定の場合において、真空蒸留槽の高さにわたる
圧力降下は、30mbar未満、28mbar未満、26mbar未満、24mbar未
満、22mbar未満、20mbar未満、または18mbar未満である。
【0014】
ある特定の場合において、分離媒体は一連の蒸留トレイによって画定される。蒸留トレ
イは、適切な気液接触を提供するための任意の適切な一連の蒸留トレイであり得る。
【0015】
真空蒸留槽の分離部分は、発酵ブロスが蒸留段を通過するときに増加する量の生成物が
発酵ブロスから蒸発する複数の理論蒸留段を提供するように設計されている。好ましくは
、分離媒体は複数の理論蒸留段を提供する。ある特定の実施形態において、分離媒体は少
なくとも3の理論蒸留段、または少なくとも5の理論段、または少なくとも6の理論段を
提供する。
【0016】
真空蒸留槽は、微生物バイオマスの生存率を確保にするように設計されている。微生物
バイオマスの生存率を確保することによって、バイオリアクタに送られる生成物枯渇流を
ガス発酵プロセスに利用することができる。好ましくは、微生物バイオマスの生存率は十
分に高い割合に維持される。ある特定の場合において、微生物バイオマスの生存率は、8
0%超、または85%超、または90%超、または95%超である。
【0017】
真空蒸留槽は、真空蒸留槽を通過したときに微生物バイオマスの生存率が実質的に低下
しないような方法で設計され得る。ある特定の場合において、生成物枯渇流中の生存可能
な微生物バイオマスは、発酵ブロス中の生存可能な微生物バイオマスと実質的に等しい。
好ましくは、生成物枯渇流中の微生物バイオマスの生存率と発酵ブロス中の微生物バイオ
マスの生存率との間の差は10%未満である。ある特定の場合において、差は5~10%
である。ある特定の場合において、差は5%未満である。
【0018】
微生物バイオマスの生存率は、任意の適切な手段を使用して測定され得る。好ましくは
、生存率はフローサイトメトリーおよび生/死アッセイを使用して測定される。ある特定
の場合において、発酵ブロス中の微生物バイオマスの生存率の測定は、真空蒸留槽に入る
前の発酵ブロスから行われる。ある特定の場合において、生成物枯渇流中の微生物バイオ
マスの生存率の測定は、生成物枯渇流がバイオリアクタに送られる前の真空蒸留槽を出る
生成物枯渇流から行われる。
【0019】
ある特定の場合において、生存率測定の結果として、1つ以上の変数が変更され得る。
好ましくは、生存率測定の結果として変更される1つ以上の変数は、圧力、温度、滞留時
間、発酵ブロス中の生成物濃度、水蒸気供給速度、および分離媒体を含む群から選択され
る。
【0020】
好ましくは、生成物枯渇流は、発酵ブロス中の生成物の蓄積を防ぐまたは少なくとも軽
減するように、発酵ブロスに対する生成物の割合が減少している。発酵ブロス中の生成物
の蓄積を防ぐ、または少なくとも軽減することによって、発酵プロセスを連続させること
ができる。好ましくは、生成物は連続発酵プロセスから回収される。ある特定の場合にお
いて、生成物枯渇流は1重量%未満の生成物、または0.8重量%未満の生成物、または
0.6重量%未満の生成物、または0.4重量%未満の生成物、または0.2重量%未満
の生成物、または0.1重量%未満の生成物を含む。
【0021】
バイオリアクタ内の微生物は、様々な異なる生成物を生成することが可能であり得る。
好ましくは、連続発酵プロセスから回収された1つ以上の生成物は低沸点発酵生成物であ
る。ある特定の場合において、生成物は、エタノール、アセトン、イソプロパノール、ブ
タノール、ケトン、メチルエチルケトン、アセトン、2-ブタノール、1-プロパノール
、酢酸メチル、酢酸エチル、ブタノン、1,3-ブタジエン、イソプレン、およびイソブ
テンからなる群から選択される。ある特定の場合において、真空蒸留槽は、生成される生
成物に基づいて特定の制約を考慮して設計されている。ある特定の場合において、バイオ
リアクタにおいて生成される生成物は、エタノール、アセトン、イソプロパノール、また
はそれらの混合物である。様々な場合において、生成物濃縮流は、発酵ブロスに対して増
加した割合のエタノール、アセトン、イソプロパノール、またはそれらの混合物を含む。
好ましくは、真空蒸留槽は、エタノールが発酵ブロスから効果的に除去され得るように設
計されている。エタノールが微生物によって生成されるある特定の場合において、生成物
濃縮流は、発酵ブロスに対して増加した割合のエタノールを含む。ある特定の実施形態に
おいて、真空蒸留槽は、アセトンが発酵ブロスから効果的に除去され得るように設計され
ている。アセトンが微生物によって生成されるある特定の場合において、生成物濃縮流は
、発酵ブロスに対して増加した割合のアセトンを含む。他の実施形態において、真空蒸留
槽は、イソプロパノールが発酵ブロスから効果的に除去され得るように設計されている。
イソプロパノールが微生物によって生成されるある特定の場合において、生成物濃縮流は
、発酵ブロスに対して増加した割合のイソプロパノールを含む。
【0022】
これらの生成物をさらに変換して、1つ以上の生成物を生成することができる。少なく
とも1つの実施形態において、少なくとも1つ以上の生成物をさらに変換して、ディーゼ
ル、ジェット燃料、および/又はガソリンのうちの少なくとも1つの成分を生成すること
ができる。ある特定の場合において、アセトンをさらに変換してメタクリル酸メチルを生
成する。ある特定の場合において、イソプロパノールをさらに変換してプロピレンを生成
する。
【0023】
微生物の生存率を維持しながら、発酵ブロスから生成物を効果的に除去するために、真
空蒸留槽は大気圧未満の圧力で操作する。好ましくは、真空蒸留槽は40mbar(a)
~100mbar(a)、または40mbar(a)~80mbar(a)、または40
mbar(a)~60mbar(a)、または50mbar(a)~100mbar(a
)、または50mbar(a)~80mbar(a)、または50mbar(a)~70
mbar(a)、または60mbar(a)~100mbar(a)、または60mba
r(a)~100mbar(a)、または80mbar(a)~100mbar(a)の
圧力で操作される。
【0024】
発酵ブロスから生成物を効果的に除去するために、真空蒸留は、微生物の生存率を確保
しながら、生成物を除去することができる温度範囲で操作する。ある特定の場合において
、生成物は、エタノール、アセトン、およびイソプロパノールからなる群から選択される
。好ましくは、真空蒸留槽は35℃~50℃の温度で操作される。一実施形態において、
温度は40℃~45℃、または37℃~45℃、または45℃~50℃である。様々な場
合において、温度は37℃未満である。アセトン回収用に設計された実施形態において、
真空蒸留槽は、好ましくは35℃~50℃の温度で操作される。ある特定の実施形態にお
いて、アセトン回収のために、温度は35℃~45℃、または40℃~45℃、または4
5℃~50℃である。
【0025】
ある特定の場合において、1つ以上の副生成物が発酵によって生成される。ある特定の
場合において、1つ以上の副生成物は、カルボン酸(すなわち、酢酸および乳酸)および
2,3-ブタンジオールからなる群から選択される。ある特定の場合において、1つ以上
の副生成物は発酵ブロスから分離されず、生成物枯渇流においてバイオリアクタに戻され
る。バイオリアクタに副生成物を連続的に戻すため、発酵における副生成物の量が蓄積す
る可能性がある。ある特定の場合において、発酵ブロス中の副生成物の濃度を所定のレベ
ル未満に維持することが望ましい。副生成物の許容可能な濃度は、副生成物に対する微生
物の耐性に基づいて決定することができる。ある特定の場合において、生成物枯渇流を二
次分離手段に提供して生成物枯渇流から1つ以上の副生成物を除去することが望ましい場
合がある。ある特定の実施形態において、副生成物は2,3-ブタンジオールであり、発
酵ブロス中の2,3-ブタンジオールの濃度は10g/L未満に維持される。ある特定の
場合において、副生成物は酢酸であり、発酵ブロス中の酢酸の濃度は10g/L未満に維
持される。
【0026】
ある特定の場合において、バイオリアクタに送る前に生成物枯渇流を冷却する必要があ
るように、生成物枯渇流の温度を上昇させる。流の温度は、微生物の生存率に直接作用し
得る。例えば、より高い温度は微生物の生存率の低下をもたらし得る。温度増加の負の作
用を回避するために、生成物枯渇流はバイオリアクタに送られる前に任意の適切な冷却手
段によって冷却され得る。好ましくは、生成物枯渇流の温度は、バイオリアクタに戻され
る前に、35℃~40℃に冷却される。好ましくは、発酵ブロスおよび生成物枯渇流は、
生存率に対する有害作用を回避するために45℃未満に保たれる。一実施形態において、
有害作用を回避するために、温度は37℃~45℃である。ある特定の場合において、温
度は使用される微生物に依存する。微生物の生存率に対する温度の作用は、より高い滞留
時間で高められ得る。例えば、より高い滞留時間では、温度が最適値を超えると、微生物
の生存率が低下する可能性がある。
【0027】
ある特定の場合において、発酵ブロスはある割合のガスを含有し得る。発酵ブロス中の
ガスは真空蒸留槽の性能に悪影響を与えることが示されている。この性能の低下は、少な
くとも部分的には、発酵ブロス中のガスと真空蒸留槽における泡の生成との間の相関によ
るものであり得る。発酵ブロス中のガスの割合を低減するために、脱気槽を利用すること
ができる。脱気槽を利用する場合、発酵ブロスを受容するための入口は、配管手段によっ
て脱気槽に接続され得る。脱気槽は、発酵ブロスが真空蒸留槽に搬送される前に、発酵ブ
ロスからガスの少なくとも一部を除去する条件下で操作される。
【0028】
ある特定の場合において、脱気槽は圧力で操作される。ある特定の場合において、脱気
槽はバイオリアクタの操作圧力よりも低い任意の圧力で操作される。好ましくは、脱気槽
は0.0バール(g)~1.0バール(g)の圧力で操作される。一実施形態において、
脱気槽は0.0バール(g)~0.5バール(g)の圧力で操作される。好ましくは、脱
気槽は発酵ブロスから実質的に全てのガスを除去する。特定の実施形態において、脱気槽
は発酵ブロス中の0~100%のガスを除去する。ある特定の場合において、脱気槽は、
発酵ブロスから20%超、40%超、60%超、または80%超のガスを除去する。ある
特定の場合において、脱気槽は発酵ブロスから二酸化炭素の少なくとも一部を除去する。
ある特定の場合において、脱気槽は、発酵ブロスから少なくとも20%、または少なくと
も40%、または少なくとも60%、または少なくとも80%の二酸化炭素を除去する。
【0029】
真空蒸留槽はリボイラーから蒸気流を受容することができる。リボイラーから蒸気流を
受容するように設計されている場合、真空蒸留槽の外部ケーシングは、蒸気流を受容する
ための入口をさらに画定することができる。この蒸気流は、真空蒸留槽からの液体から生
成することができる。真空蒸留槽からの液体を利用する場合、液体は真空蒸留槽のケーシ
ングの出口を介して移送され得る。蒸気流を真空蒸留槽に効果的に移送するために、蒸気
流を受容するための入口は下部トレイに対して下方に位置し得、液体流を移送するための
出口は蒸気流を受容するための入口に対して下部に位置し得る。
【0030】
好ましくは、液体流は実質的に水および最小量の微生物バイオマスからなる。真空蒸留
槽は、生存可能な微生物バイオマスをバイオリアクタに戻すように設計されている。生存
可能な微生物バイオマスは生成物枯渇流に含有されている。真空蒸留槽は、生成物枯渇流
を移送するための出口を介してバイオリアクタに枯渇した生成物を移送する。生成物枯渇
流を移送するための出口は、下部トレイの上方に配置される。微生物バイオマスを含有す
る発酵ブロスは、この下部トレイを通過し得る。次いで、通過するこの発酵ブロスは、真
空蒸留槽の底部で液体と混合され得る。好ましくは、最小量の微生物バイオマスのみが真
空蒸留槽の底部の液体に行き着く。好ましくは、微生物バイオマスを含有する0.042
未満の反応器体積の発酵ブロスが、毎時間下部トレイを通過する。ある特定の場合におい
て、微生物バイオマスを含有する、0.002~0.042反応器体積の発酵ブロスが、
毎時間下部トレイを通過する。様々な実施形態において、微生物バイオマスを含有する0
.042未満、0.037未満、0.032未満、0.027未満、0.022未満、0
.017未満、0.012未満、0.007未満の反応器体積の発酵ブロスが毎時間下部
トレイ通過する。次いで、微生物バイオマスを含有する発酵ブロスの成分を含むこの液体
は、リボイラーに送られて蒸気流を生成する。
【0031】
真空蒸留槽は、下部トレイの下方に1つ以上の追加のトレイを組み込むことができる。
1つ以上の追加のトレイはさらなる生成物除去を可能にし得る。1つ以上の追加のトレイ
を含む場合、下部トレイを通過する発酵ブロスは、追加量の生成物を回収することができ
る1つ以上の追加のトレイに送られる。1つ以上の追加のトレイを通過した後、発酵ブロ
スは真空蒸留槽の底部で液体と混合される。次いで、微生物バイオマスを含有する発酵ブ
ロスの成分を含むこの液体は、リボイラーに送られて蒸気流を生成する。
【0032】
真空蒸留槽は複数の区画に分離されてもよい。好ましくは、真空蒸留槽が複数の区画に
分離される場合、各区画内の発酵ブロスは、1つの区画からの発酵ブロスが別の区画から
の発酵ブロスと混合しないように収容される。この分離は、任意の適切な手段を通して達
成され得る。ある特定の場合において、発酵ブロスは複数のバイオリアクタから供給され
てもよい。発酵ブロスからの生成物枯渇流は、発酵ブロスが由来したバイオリアクタに送
り戻されてもよい。複数の区画間の混合を防ぐことによって、1つの真空蒸留槽を利用し
て複数のバイオリアクタから生成物を効果的に回収することができる。
【0033】
好ましくは、発酵ブロスを提供するバイオリアクタは、C1含有基質の発酵に利用され
る。発酵プロセスにおいて利用されるこのC1含有基質は、1つ以上の産業プロセスから
供給され得る。好ましくは、産業プロセスは、炭水化物発酵、ガス発酵、セメント製造、
パルプ製紙、製鋼、石油精製および関連プロセス、石油化学製造、コークス製造、嫌気性
または好気性消化、合成ガス(バイオマス、廃液流、固形廃棄流、都市流、天然ガス、石
炭および石油を含む化石資源を含むがこれらに限定されない源に由来)、天然ガスの抽出
、石油の抽出、アルミニウム、銅および/または合金鉄の製造および/または精製のため
の冶金プロセス、地質学的貯留層、ならびに触媒プロセス(水蒸気メタン改質、水蒸気ナ
フサ改質、石油コークスガス化、触媒再生-流動接触分解、触媒再生-ナフサ改質、およ
び乾式メタン改質を含むがこれらに限定されない水蒸気源に由来)を含む群から選択され
る。
【0034】
本発明は、真空蒸留槽を利用することによって発酵ブロスから少なくとも1つの生成物
を除去するための方法を提供し、本方法は、(a)生存可能な微生物バイオマスおよび少
なくとも1つの生成物を含む発酵ブロスをバイオリアクタから真空蒸留槽に送ることと、
(b)発酵ブロスを部分的に蒸発させて生成物濃縮流および生成物枯渇流を生成すること
であって、生成物枯渇流が生存可能な微生物バイオマスを含む、生成することと、(c)
生成物枯渇流をバイオリアクタに戻すことと、を含む。本発明は、発酵ブロス中の微生物
バイオマスの生存率が、バイオリアクタに送られたときに微生物バイオマスがC1含有基
質の発酵に利用されることを確実にするような方法で設計され得る。
【0035】
好ましくは、発酵ブロス中のガスは監視および制御される。発酵ブロス中のガスは、真
空蒸留槽の性能を低下させる可能性がある。発酵ブロス中のガスを制御するために、脱気
工程が必要であり得る。発酵ブロスが許容可能な割合よりも高いガスを含有する場合、発
酵ブロスは、脱気した発酵ブロスを真空蒸留槽に送る前に脱気手段に送られる。
【0036】
脱気工程は、発生したガス流が発酵ブロスから分離され、脱気された発酵ブロスが生成
されるように完了することができる。次いで、脱気発酵ブロスを真空蒸留槽によって部分
的に蒸発させ、生成物濃縮流および生成物枯渇流を生成することができる。
【0037】
発生したガス流を形成するガスの部分は、ある割合の生成物を含有し得る。ガスの除去
による生成物の損失を防ぐために、発生したガス流を後続の処理に送ることができる。あ
る特定の場合において、発生したガス流は、少なくとも1つの生成物を回収するためにウ
ォータースクラバーに送られる。ある特定の場合において、発生したガス流はバイオリア
クタに送られてもよい。
【0038】
この方法は、ケーシング内に位置する分離部分を備える真空蒸留槽を利用することがで
きる。好ましくは、ケーシング内に位置する分離部分は、上部トレイによって上方に、お
よび下部トレイによって下方に結合されている。分離部分は、複数の理論蒸留段を提供し
得る。
【0039】
処理される発酵ブロスは、任意の適切な微生物を含有し得る。例えば、微生物は、Es
cherichia coli、Saccharomyces cerevisiae、
Clostridium acetobutylicum、Clostridium b
eijerinckii、Clostridium saccharbutyricum
、Clostridium saccharoperbutylacetonicum、
Clostridium butyricum、Clostridium diolis
、Clostridium kluyveri、Clostridium paster
ianium、Clostridium novyi、Clostridium dif
ficile、Clostridium thermocellum、Clostrid
ium cellulolyticum、Clostridium cellulovo
rans、Clostridium phytofermentans、Lactoco
ccus lactis、Bacillus subtilis、Bacillus l
icheniformis、Zymomonas mobilis、Klebsiell
a oxytoca、Klebsiella pneumonia、Corynebac
terium glutamicum、Trichoderma reesei、Cup
riavidus necator、Pseudomonas putida、Lact
obacillus plantarum、およびMethylobacterium
extorquensを含む群から選択され得る。ある特定の場合において、微生物は、
Acetobacterium woodii、Alkalibaculum bacc
hii、Blautia producta、Butyribacterium met
hylotrophicum、Clostridium aceticum、Clost
ridium autoethanogenum、Clostridium carbo
xidivorans、Clostridium coskatii、Clostrid
ium drakei、Clostridium formicoaceticum、C
lostridium ljungdahlii、Clostridium magnu
m、Clostridium ragsdalei、Clostridium scat
ologenes、Eubacterium limosum、Moorella th
ermautotrophica、Moorella thermoacetica、O
xobacter pfennigii、Sporomusa ovata、Sporo
musa silvacetica、Sporomusa sphaeroides、お
よびThermoanaerobacter kiuviを含む群から選択されるC1固
定細菌であり得る。好ましくは、微生物はClostridium属の一員である。ある
特定の場合において、微生物はClostridium autoethanogenu
mである。
【0040】
微生物は、様々な異なる生成物を生成することが可能であり得る。好ましくは、微生物
によって生成される1つ以上の生成物は低沸点発酵生成物である。ある特定の場合におい
て、生成物は、エタノール、アセトン、イソプロパノール、ブタノール、ケトン、メチル
エチルケトン、アセトン、2-ブタノール、1-プロパノール、酢酸メチル、酢酸エチル
、ブタノン、1,3-ブタジエン、イソプレン、およびイソブテンからなる群から選択さ
れる。ある特定の場合において、本方法は生成される生成物に基づいて最適化される。あ
る特定の場合において、バイオリアクタで生成される生成物はエタノールである。好まし
くは、本方法は、エタノールが発酵ブロスから効果的に除去され得るように最適化される
。ある特定の場合において、微生物は少なくとも1つの副生成物を生成する。一実施形態
において、少なくとも1つの副生成物は、酢酸、乳酸、および2,3-ブタンジオールか
らなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の一態様による真空蒸留槽、脱気槽、およびリボイラーを示す概略流れ図である。
図2】本発明の一態様による真空蒸留槽、脱気槽、およびリボイラーを示す概略流れ図であり、真空蒸留槽は下部トレイの下方に1つ以上の追加のトレイを含む。
図3】本発明の一態様によるバッチ発酵実験の代謝物プロファイルを示すグラフである。
図4】本発明の一態様による、図3に示す代謝物プロファイルに対応するバッチ発酵実験のガス取込みを示すグラフである。
図5】本発明の一態様による、ある特定の構成を有するバイオリアクタから真空蒸留槽を通過する微生物の生存率を示すグラフである。
図6】本発明の一態様による、図5に示すものとは異なる構成を有するバイオリアクタから真空蒸留槽を通過する微生物の生存率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明者らは、特別に設計された真空蒸留槽を使用することによって、微生物バイオマ
スの生存率を確保しながら、エタノールなどの少なくとも1つの生成物を生存可能な微生
物バイオマスを含有する発酵ブロスから効果的に回収することができることを確認した。
【0043】
定義
「真空蒸留槽」という用語は、真空下で蒸留を行うための装置を包含することを意図し
ており、蒸留される液体はその沸点を下げるために低圧で封入されている。好ましくは、
真空蒸留槽は、分離媒体を封入するためのケーシングを含む。好ましくは、蒸留される液
体は、生存可能な微生物バイオマスおよび少なくとも1つの生成物を含む発酵ブロスであ
る。そのような発酵ブロスはバイオリアクタから供給されてもよい。バイオリアクタは、
C1含有基質の発酵に使用することができる。
【0044】
「ケーシング」は、分離媒体を保護または封入するカバーまたはシェルを指す。好まし
くは、ケーシングは液体および/または気体を移送するためのいくつかの入口および出口
を含む。ケーシングは、発酵ブロスを受容するための少なくとも1つの入口、生成物濃縮
流を移送するための少なくとも1つの出口、および生成物枯渇流を移送するための少なく
とも1つの出口を含むべきである。
【0045】
「分離媒体」は、気液接触のために大きな表面積を提供することができる任意の適切な
媒体を説明するために使用され、これは真空蒸留塔の有効性を高める。そのような分離媒
体は、複数の理論蒸留段を提供するように設計されている。少なくとも1つの実施形態に
おいて、分離媒体は一連の蒸留トレイである。
【0046】
「蒸留トレイ」または「蒸留プレート」などは、気液接触を促進するために使用される
プレートおよび/またはトレイを包含することを意図している。トレイの種類には、ふる
い、バルブ、およびバブルキャップがある。蒸気が通過するための穴を含有するふるいト
レイは、低コストで高効率を提供する高容量の状況に使用される。より安価ではあるが、
開閉バルブを備えた穴を含有するバルブトレイは、材料の蓄積により汚損が発生する傾向
がある。バブルキャップトレイはキャップを含有し、3つのトレイのうち最も先進的で高
価なものであり、いくつかの液体流速状況において非常に有効である。
【0047】
好ましくは、「上部トレイ」は、発酵ブロスを分離媒体下方に分配することができる任
意の適切な境界である。
【0048】
好ましくは、「下部トレイ」は、ケーシングの出口を通る生成物枯渇流の移送を達成す
るための任意の適切な境界である。
【0049】
「理論蒸留段」は、物質の液相および気相などの2つの相が互いに平衡を確立する仮想
区域である。多くの分離プロセスの性能は、一連の理論蒸留段を有することに依存する。
真空蒸留槽」などの分離装置の性能は、段数を増やすことによって強化させることができ
る。好ましくは、分離媒体は、発酵ブロスから少なくとも1つの生成物を効果的に除去す
るのに十分な数の理論蒸留段を含む。好ましくは、分離媒体は複数の理論蒸留段を含む。
【0050】
「発酵ブロス」または「ブロス」という用語は、栄養培地、1つ以上の微生物の培養物
、および1つ以上の生成物を含む成分の混合物を包含することを意図している。微生物と
いう用語と細菌という用語は、本明細書を通して互換的に使用されることに留意されたい
【0051】
「栄養培地(Nutrient media)」または「栄養培地(nutrient
medium)」は、細菌増殖培地を説明するために使用される。一般に、この用語は
、微生物培養物の増殖に適した栄養素および他の成分を含有する培地を指す。「栄養素」
という用語は、微生物の代謝経路において利用され得る任意の物質を含む。例示的な栄養
素には、カリウム、ビタミンB、微量金属、およびアミノ酸が含まれる。
【0052】
好ましくは、発酵ブロスは「バイオリアクタ」から真空蒸留槽に送られる。「バイオリ
アクタ」という用語は、連続撹拌槽反応器(CSTR)、固定化細胞リサイクル(ICR
)、トリクルベッド反応器(TBR)、気泡塔、ガスリフト発酵槽、静的ミキサ、循環ル
ープ反応器、Hollow Fibre Membrane Bioreactor(H
FM BR)などの膜反応器、または気液接触に適した他の槽もしくは他の装置を含む、
1つ以上の槽および/もしくは塔、または配管配置からなる発酵装置を含む。反応器は、
好ましくは、COもしくはCOもしくはHまたはそれらの混合物を含むガス状基質を
受容するように適合されている。反応器は、並列または直列のいずれかで、複数の反応器
(段)を備えることができる。例えば、反応器は、細菌が培養される第1の増殖反応器と
、増殖反応器からの発酵ブロスが供給され、発酵生成物の大部分が生成され得る第2の発
酵反応器とを備えることができる。
【0053】
「一酸化炭素を含むガス状基質」は、一酸化炭素を含有する任意のガスを含む。ガス状
基質は、典型的には、かなりの割合のCO、好ましくは少なくとも約5体積%~約100
体積%のCOを含有する。
【0054】
基質が任意の水素を含有することは必要ではないが、Hの存在は本発明の方法による
生成物形成に有害であるべきではない。特定の実施形態において、水素の存在はアルコー
ル製造の全体的効率の改善をもたらす。例えば、特定の実施形態において、基質は、約2
:1または1:1または1:2の比のH:COを含み得る。一実施形態において、基質
は、約30体積%以下のH、20体積%以下のH、約15体積%以下のH、または
約10体積%以下のHを含む。他の実施形態において、基質流は、低濃度のH2を、例
えば、例えば5%未満、もしくは4%未満、もしくは3%未満、もしくは2%未満、もし
くは1%未満を含むか、または実質的に水素を含まない。基質はまた、例えば、約1体積
%~約80体積%のCO、または1体積%~約30体積%のCO2をなど、ある程度の
COを含有し得る。一実施形態において、基質は約20体積%以下のCOを含む。特
定の実施形態において、基質は、約15体積%以下のCO、約10体積%以下のCO
、約5体積%以下のCOを含むか、または実質的にCOを含まない。
【0055】
バイオリアクタを備えた真空蒸留槽の使用は、発酵プロセスの効率を高め得る。「効率
を高める」、「高められた効率」などの用語は、発酵プロセスに関して使用される場合、
発酵を触媒する微生物の増殖速度、高生成物濃縮における増殖および/または生成物生成
速度、消費される基質の1体積当たりに生成される所望の生成物の体積、所望の生成物の
生成速度または生成レベル、ならびに発酵の他の副生成物と比較して生成される所望の生
成物の相対的割合のうちの1つ以上を増加させることを含むがこれらに限定されない。
【0056】
文脈上別段の要求がない限り、本明細書で使用される「発酵」、「発酵プロセス」、ま
たは「発酵反応」などの句は、微生物の増殖期および生成物生合成期の両方を包含するこ
とを意図している。
【0057】
発酵プロセスは、「バッチ」または「連続」のいずれかとして説明され得る。「バッチ
発酵」は、バイオリアクタが微生物と共に原料、すなわち炭素源で満たされ、発酵が完了
するまで生成物がバイオリアクタ内に留まる発酵プロセスを説明するために使用される。
「バッチ」プロセスでは、発酵が完了した後、生成物が抽出され、バイオリアクタは次の
「バッチ」が始まる前に洗浄される。「連続発酵」は、発酵プロセスがより長期間にわた
って延長され、発酵中に生成物および/または代謝物が抽出される発酵プロセスを説明す
るために使用される。好ましくは、真空蒸留槽は「連続発酵」プロセスから生成物を取り
出す。
【0058】
「微生物」は、顕微鏡生物、特に細菌、古細菌、ウイルス、または真菌である。本発明
の微生物は、典型的には細菌である。本明細書で使用される場合、「微生物」の引用は、
「細菌」を網羅するものと解釈されるべきである。
【0059】
「生存率」または「微生物バイオマスの生存率」などは、生存している、生存すること
ができる、発達する、または繁殖することができない微生物に対するそれらを行うことが
できる微生物の比率を指す。例えば、真空蒸留槽内の生存可能な微生物バイオマスは、真
空蒸留槽内の生きている/死んでいる微生物の比率を指す場合がある。本発明は、微生物
バイオマスの生存率が最低限の生存率に維持されるように設計することができる。少なく
とも1つの実施形態において、微生物バイオマスの生存率は少なくとも約85%である。
少なくとも1つの実施形態において、生存可能な微生物バイオマスは真空蒸留槽からバイ
オリアクタに戻される。
【0060】
「有効生成物回収率」などは、生成物蓄積に関連する毒性および/または抑制作用を防
ぐ、または少なくとも軽減するために、発酵ブロスから生成物を回収することができる速
度を指す。本発明は、生成物回収の有効速度が微生物バイオマスの生存率が所望の閾値を
超えて維持されるようなものであるように設計され得る。本発明は、ブロス中の生成物濃
度のレベルが所望の閾値未満に保たれるように設計され得る。例えば、本発明は、発酵ブ
ロス中のエタノール濃度が40g/L未満に保たれるように設計され得る。ある特定の場
合において、発酵ブロス中のエタノール濃度は25~35g/Lに保たれる。ある特定の
場合において、発酵ブロス中のエタノール濃度は、30g/L未満、35g/L未満、ま
たは38g/L未満である。好ましくは、発酵ブロス中のエタノール濃度は、微生物の抑
制をもたらし得る濃度よりも低い。ある特定の場合において、抑制は、使用される微生物
および生成される生成物に依存し得る。
【0061】
真空蒸留槽は、生成物枯渇流がバイオリアクタに送られる前に、生成物枯渇流を「冷却
手段」に送ることができる。「冷却手段」という用語は、生成物枯渇流の温度を低下させ
ることができる任意の適切な装置またはプロセスを説明し得る。
【0062】
バイオリアクタ内の微生物は、天然に存在する微生物から改変することができる。「親
微生物」は、本発明の微生物を生成するために使用される微生物である。親微生物は、天
然に存在する微生物(即ち、野生型微生物)または以前に修飾されたことのある微生物(
即ち、変異体または組換え微生物)であり得る。本発明の微生物は、親微生物において発
現または過剰発現されていなかった1つ以上の酵素を発現または過剰発現させるように修
飾され得る。同様に、本発明の微生物は、親微生物によって含有されなかった1つ以上の
遺伝子を含有するように修飾され得る。本発明の微生物は、また、親微生物において発現
された1つ以上の酵素を発現しないまたはより少ない量を発現させるように修飾され得る
。一実施形態において、親微生物は、Clostridium autoethanog
enum、Clostridium ljungdahlii、またはClostrid
ium ragsdaleiである。好ましい実施形態において、親微生物は、2010
年6月7日にドイツのD-38124 Braunschwieg、Inhoffens
traβ 7Bに位置するDeutsche Sammlung von Mikroo
rganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)にブダ
ペスト条約の条項下で2010年6月7日に寄託され、受託番号DSM23693を付与
されたClostridium autoethanogenum LZ1561である
。この菌株は、WO2012/015317として公開されている国際特許出願第PCT
/NZ2011/000144号に記載されている。
【0063】
「Wood-Ljungdahl」は、すなわち、Ragsdale,Biochim
Biophys Acta,1784:1873-1898,2008に記載されてい
るような炭素固定のWood-Ljungdahl経路を指す。「Wood-Ljung
dahl微生物」は、予想通り、Wood-Ljungdahl経路を含む微生物を指す
。一般に、本発明の微生物は天然のWood-Ljungdahl経路を含有する。本明
細書では、Wood-Ljungdahl経路は天然の未修飾のWood-Ljungd
ahl経路であり得るか、またはCO、CO、および/またはHをアセチル-CoA
に変換するように依然として機能する限り、ある程度の遺伝的修飾(すなわち、過剰発現
、異種発現、ノックアウトなど)を有するWood-Ljungdahl経路であり得る
【0064】
「C1」は、1炭素分子、例えば、CO、CO、CH、またはCHOHを指す。
「C1酸素化物」は、少なくとも1つの酸素原子も含む1炭素分子、例えば、CO、CO
、またはCHOHを指す。「C1炭素源」は、本発明の微生物のための部分的または
唯一の炭素源として機能する1炭素分子を指す。例えば、C1炭素源は、CO、CO
CH、CHOH、またはCHのうちの1つ以上を含み得る。好ましくは、C1
炭素源は、COおよびCOのうちの1つまたは両方を含む。「C1固定微生物」は、C
1炭素源から1つ以上の生成物を生成する能力を有する微生物である。典型的には、本発
明の微生物はC1固定細菌である。
【0065】
「嫌気性細菌」は、増殖のために酸素を必要としない微生物である。嫌気性細菌は、酸
素が特定の閾値を超えて存在する場合、負の反応を起こし得るか、もしくは死滅し得る。
しかしながら、いくつかの嫌気性細菌は低レベルの酸素(すなわち、0.000001~
5%の酸素)を許容することができる。典型的には、本発明の微生物は嫌気性細菌である
【0066】
「アセトゲン」は、エネルギー節約のため、ならびにアセテートなどのアセチル-Co
Aおよびアセチル-CoA由来生成物の合成のためのそれらの主要機構としてWood-
Ljungdahl経路を使用する、偏性嫌気性細菌である(Ragsdale,Bio
chim Biophys Acta,1784:1873-1898,2008)。特
に、アセトゲンは、Wood-Ljungdahl経路を、(1)COからのアセチル
-CoAの還元合成のための機構、(2)最終電子受容エネルギー節約プロセス、(3)
細胞炭素の合成におけるCOの固定(同化)のための機構として使用する(Drake
,Acetogenic Prokaryotes,In:The Prokaryot
es,3rd edition,p.354,New York,NY,2006)。天
然に存在する全てのアセトゲンは、C1固定、嫌気性、独立栄養性、および非メタン資化
性である。典型的には、本発明の微生物はアセトゲンである。
【0067】
「エタノロゲン」は、エタノールを生成する、または生成することが可能である微生物
である。典型的には、本発明の微生物はエタノロゲン(ethanologen)である
【0068】
「独立栄養生物」は、有機炭素がなくても増殖することが可能な微生物である。代わり
に、独立栄養生物は、COおよび/またはCOなどの無機炭素源を使用する。典型的に
は、本発明の微生物は独立栄養生物である。
【0069】
「カルボキシドトローフ(carboxydotroph)」は、炭素およびエネルギ
ーの唯一の供給源としてCOを利用することが可能な微生物である。典型的には、本発明
の微生物はカルボキシド栄養生物である。
【0070】
「メタン資化性菌」は、炭素とエネルギーの唯一の供給源としてメタンを利用すること
が可能な微生物である。特定の実施形態では、本発明の微生物はメタン資化性菌であるか
、またはメタン資化性菌から誘導される。他の実施形態では、本発明の微生物はメタン資
化性菌ではないか、メタン資化性菌から誘導されない。
【0071】
「基質」は、本発明の微生物のための炭素および/またはエネルギー源を指す。典型的
には、基質は、ガス状であり、C1炭素源、例えば、CO、CO、および/またはCH
を含む。好ましくは、基質は、COまたはCO+COのC1炭素源を含む。基質は、
、N、または電子などの他の非炭素構成要素をさらに含み得る。
【0072】
「共基質」という用語は、必ずしも生成物合成のための一次エネルギーおよび材料源で
はないが、主要な基質などの別の基質に添加された場合に生成物合成に利用することがで
きる物質を指す。
【0073】
基質は典型的にはガス状であるが、基質はまた、代替の形態で提供されてもよい。例え
ば、基質は、マイクロバブル分散物発生装置を使用して、CO含有ガスで飽和した液体中
に溶解されてもよい。さらなる例として、基質は、固体支持体上に吸着されてもよい。
【0074】
基質および/またはC1炭素源は、自動車の排出ガスまたはバイオマスガス化からなど
、産業プロセスの副生成物として得られる、または何らかの他の源からの廃ガスであって
もよい。特定の実施形態において、産業プロセスは、炭水化物発酵からのガス排出、ガス
発酵、セメント製造からのガス排出、パルプ製紙、製鋼、石油精製および関連プロセス、
石油化学製造、コークス製造、嫌気性または好気性消化、合成ガス(バイオマス、廃液流
、固形廃棄流、都市流、天然ガス、石炭および石油を含む化石資源を含むがこれらに限定
されない源に由来)、天然ガスの抽出、石油の抽出、アルミニウム、銅および/または合
金鉄の製造および/または精製のための冶金プロセス、地質学的貯留層、ならびに触媒プ
ロセス(水蒸気メタン改質、水蒸気ナフサ改質、石油コークスガス化、触媒再生-流動接
触分解、触媒再生-ナフサ改質、および乾式メタン改質を含むがこれらに限定されない水
蒸気源に由来)からなる群から選択される。これらの実施形態では、基質および/または
C1炭素源は、任意の簡便な方法を使用して、それが大気中に放出される前に産業プロセ
スから捕捉されてもよい。
【0075】
本発明の微生物は、1つ以上の生成物を生成するようにガス流と共に培養され得る。例
えば、本発明の微生物は、エタノール(WO2007/117157)、アセテート(W
O2007/117157)、ブタノール(WO2008/115080およびWO20
12/053905)、ブチレート(WO2008/115080)、2,3-ブタンジ
オール(WO2009/151342およびWO2016/094334)、ラクテート
(WO2011/112103)、ブテン(WO2012/024522)、ブタジエン
(WO2012/024522)、メチルエチルケトン(2-ブタノン)(WO2012
/024522およびWO2013/185123)、エチレン(WO2012/026
833)、アセトン(WO2012/115527)、イソプロパノール(WO2012
/115527)、脂質(WO2013/036147)、3-ヒドロキシプロピオネー
ト(3-HP)(WO2013/180581)、イソプレンを含むテルペン(WO20
13/180584)、脂肪酸(WO2013/191567)、2-ブタノール(WO
2013/185123)、1,2-プロパンジオール(WO2014/036152)
、1-プロパノール(WO2014/0369152)、コリスメート由来生成物(WO
2016/191625)、3-ヒドロキシブチレート(WO2017/066498)
、および1,3-ブタンジオール(WO2017/0066498)を生成することがで
きるか、または生成するように操作され得る。
【0076】
「天然生成物」は、遺伝子修飾されていない微生物によって生成される生成物である。
例えば、エタノール、アセテート、および2,3-ブタンジオールは、Clostrid
ium autoethanogenum、Clostridium ljungdah
lii、およびClostridium ragsdaleiの天然生成物である。「非
天然生成物」は、遺伝子修飾された微生物によって生成されるが、遺伝子修飾された微生
物が由来する遺伝子修飾されていない微生物によって生成されない生成物である。
【0077】
「選択性」は、微生物によって生成される全発酵生成物の生成に対する標的生成物の生
成の比率を指す。本発明の微生物は、特定の選択性で、または最小の選択性で生成物を生
成するように操作され得る。一実施形態において、標的生成物は、本発明の微生物によっ
て生成される全発酵生成物の少なくとも約5%、10%、15%、20%、30%、50
%、75%、または95%を占める。一実施形態において、標的生成物は、本発明の微生
物が少なくとも10%の標的生成物に対して選択性を有するように、本発明の微生物によ
って生成される全発酵生成物の少なくとも10%を占める。別の実施形態において、標的
生成物は、本発明の微生物が少なくとも30%の標的生成物に対して選択性を有するよう
に、本発明の微生物によって生成される全発酵生成物の少なくとも30%を占める。
【0078】
真空蒸留槽は、1つ以上の「低沸点発酵生成物」を回収することができる。「低沸点発
酵生成物」は揮発性の生成物である。これらの生成物には、エタノール、アセトン、イソ
プロパノール、ブタノール、ケトン、メチルエチルケトン、2-ブタノール、1-プロパ
ノール、酢酸メチル、酢酸エチル、ブタノン、1,3-ブタジエン、イソプレン、および
イソブテンが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0079】
培養物は概して、微生物の増殖を可能にするのに十分な栄養素、ビタミン、および/ま
たは無機物を含有する水性培地中で維持される。好ましくは、水性培地は、最小嫌気性微
生物増殖培地などの嫌気性微生物培地である。好適な培地は、当該技術分野において既知
である。
【0080】
培養/発酵は、望ましくは、標的生成物の生成に適切な条件下で実施されるべきである
。典型的には、培養/発酵は、嫌気性条件下で実施される。考慮すべき反応条件は、圧力
(または分圧)、温度、ガス流速、液体流速、培地pH、培地酸化還元電位、撹拌速度(
連続撹拌槽反応器を使用する場合)、接種レベル、液相中のガスが制限的にならないこと
を確実にするための最大ガス基質濃度、および生成物阻害を回避するための最大生成物濃
度を含む。具体的には、基質の導入速度は、生成物がガス制限条件下での培養によって消
費され得るため、液相中のガスの濃度が制限的にならないことを確実にするように制御さ
れてもよい。
【0081】
上昇した圧力でバイオリアクタを操作することは、気相から液相へのガス物質移動の増
加した速度を可能にする。したがって、概して、大気圧よりも高い圧力で培養/発酵を実
施することが好ましい。また、所与のガス変換速度が部分的に基質保持時間の関数であり
、かつ保持時間がバイオリアクタの必要な体積を示すため、加圧システムの使用は、必要
なバイオリアクタの体積、およびその結果として培養/発酵装置の資本コストを大幅に低
減することができる。これはさらに、バイオリアクタ中の液体体積を入力ガス流速で除算
したものと定義される保持時間が、バイオリアクタが大気圧よりも上昇した圧力に維持さ
れるときに減少され得ることを意味する。最適反応条件は、使用される特定の微生物に部
分的に依存する。しかしながら、一般的には、大気圧より高い圧力で発酵を行うことが好
ましい。また、所与のガス変換速度が部分的に基質保持時間の関数であり、かつ所望の保
持時間を達成することが同様にバイオリアクタの必要な体積を示すため、加圧システムの
使用は、必要なバイオリアクタの体積、およびその結果として発酵機器の資本コストを大
幅に低減することができる。
【0082】
説明
真空蒸留は、発酵ブロスに含有される微生物の生存率を確保しながら、発酵ブロスから
生成物を効果的に回収することがわかった。真空蒸留槽に供給される発酵ブロスはバイオ
リアクタから供給される。好ましくは、バイオリアクタは、C1含有ガス状基質の発酵に
使用される。発酵プロセスが連続的に操作するためには、ブロスに含有される微生物の少
なくとも一部が生存可能なままでなければならない。これらの微生物はある特定の生成物
の濃度に対してかなり特異的な耐性を有する。加えて、これらの微生物は温度に対してか
なり特異的な耐性を有する。例えば、少なくとも1つの実施形態において、微生物は37
℃の最適増殖温度を有する。本発明者らは、真空蒸留を利用することによって、発酵プロ
セスの連続操作が可能であるような方法で生存率の条件を制御することができることを見
出した。
【0083】
真空蒸留槽は、複数の要素:(1)発酵ブロスを受容するための少なくとも1つの入口
、生成物濃縮流を移送するための1つの出口、および生成物枯渇流を移送するための1つ
の出口を画定する外部ケーシングと、(2)ケーシング内に位置する分離部分であって、
上部トレイによって上方に、および下部トレイによって下方に結合されており、かつ複数
の理論蒸留段を提供するための分離媒体を画定する、分離部分と、(3)真空蒸留槽の底
部に維持される液面とからなる。
【0084】
真空蒸留槽は、発酵ブロスを効果的に処理するためにバイオリアクタと結合されている
。本発明者らは、所与の供給速度で真空蒸留槽に供給することによってバイオリアクタ内
の生成物蓄積を制御し、それによって微生物の生存率を確保にすることを見出した。供給
速度は、1時間当たりのバイオリアクタの発酵ブロスの体積に関して示される。本発明者
らは、微生物の生存率を確保しながら、1時間当たり0.05~0.5反応器体積の供給
速度がブロスを効果的に処理することを可能にすることを確認した。供給速度は、圧力、
温度、滞留時間、発酵ブロス中の生成物濃度、水蒸気供給速度、および/または分離媒体
を含むがこれらに限定されない真空蒸留槽の条件に少なくとも部分的に依存し得る。ある
特定の実施形態では、供給速度は、1時間当たり0.05~0.1、0.05~0.2、
0.05~0.3、0.05~0.4、0.1~0.3、0.1~0.1~0.5、また
は0.3~0.5の反応器体積である。好ましくは、供給速度は、生成物枯渇流が許容可
能な割合の生成物を有するように制御される。
【0085】
加えて、本発明者らは、発酵ブロスが真空蒸留槽内にある時間として定義される滞留時
間をある特定の期間内に保つことによって、微生物の生存率が確保されることを確認した
。本発明者らは、微生物の生存率を確保しながら、0.5~15分の滞留時間がブロスを
効果的に処理することを可能にすることを確認した。様々な実施形態において、滞留時間
は、0.5~12分、0.5~9分、0.5~6分、0.5~3分、2~15分、2~1
2分、2~9分、または2~6分である。少なくとも1つの実施形態において、微生物の
生存率を確保するために、滞留時間は15分未満、12分未満、9分未満、6分未満、3
分未満、2分未満、または1分未満である。
【0086】
真空蒸留槽は減圧を使用して発酵ブロスを処理し、真空蒸留槽内の圧力は発酵ブロス中
の液体を蒸発させるのに必要な温度を下げるために大気圧未満に維持される。真空蒸留槽
内の温度は圧力およびエタノール濃度に依存し得る。好ましくは、蒸発する液体は主とし
てエタノールなどの生成物である。好ましくは、真空蒸留槽の圧力は、微生物の生存率を
確保にするために40mbar(a)~100mbar(a)に維持される。少なくとも
1つの実施形態において、真空蒸留槽は、40mbar(a)~80mbar(a)、4
0mbar(a)~90mbar(a)、または45mbar(a)~90mbar(a
)に維持される。圧力は典型的には分離媒体にわたって降下し、真空蒸留槽の頂部の圧力
が真空蒸留槽の底部の圧力よりも低いことを意味する。好ましくは、真空蒸留槽の高さに
わたる圧力降下は32ミリバール未満である。ある特定の場合において、真空蒸留槽の高
さにわたる圧力降下は、30mbar未満、28mbar未満、26mbar未満、24
mbar未満、22mbar未満、20mbar未満、または18mbar未満である。
【0087】
これは、温度が槽の長さにわたって増加する真空蒸留槽内の温度勾配をもたらし、真空
蒸留槽の頂部で最低であり、真空蒸留槽の底部で最高である。発酵ブロスが真空蒸留槽を
流下するにつれて生成物力価が低下し、生成物力価は真空蒸留槽の頂部で最大であり、真
空蒸留槽の底部で最小である。
【0088】
発酵ブロスは最初にケーシングの入口を介して真空蒸留槽に入る。発酵ブロスを受容す
るための入口は上部トレイの上方に位置する。発酵ブロスが槽に入ると、発酵ブロス中の
生成物の一部が蒸発して生成物濃縮流を形成し、これは槽の頂部に向かって上昇し、ケー
シングの出口を通って出る。生成物濃縮流を移送するための出口は、発酵ブロスを受容す
るための入口に対して上にある。残りの発酵ブロスは上部トレイおよび分離媒体を通過す
る。分離媒体は複数の理論蒸留段を提供する。発酵ブロスが各理論蒸留段に達すると、さ
らなる生成物が蒸発する。蒸発した生成物は生成物濃縮流の一部となり、槽の頂部に向か
って上昇し、ケーシングの出口を通って出る。分離媒体を通過した後、残りの発酵ブロス
はケーシングの出口を介して真空蒸留槽を出る。ケーシングを出る発酵ブロスは生成物枯
渇流である。生成物枯渇流は生存可能な微生物バイオマスを含有する。生成物枯渇流を移
送するための出口は、下部トレイに対して上にある。下部トレイは真空蒸留槽の底部に対
して上にある。真空蒸留槽の底部には一定レベルの液体が収容されている。
【0089】
真空蒸留槽の有効性を高め、必要な気液接触を提供するために、ケーシングの入口を介
してリボイラーから真空蒸留槽へ蒸気流を導入することができる。蒸気流を受容するため
の入口は、下部トレイの下方に位置する。リボイラーは、エネルギーと組み合わせて真空
蒸留槽の底部からの液体の一部を利用して液体を蒸発させて蒸気流を作り出す。真空蒸留
槽の底部からの液体は、真空蒸留槽のケーシングの出口を介して移送される。この出口は
蒸気流を受容するための入口よりも下方に位置する。蒸気流は分離媒体を通って上方へ流
れ、生成物の一部を得、生成物濃縮流の一部となる。生成物濃縮流を移送するために出口
を通って出る生成物濃縮流。1つ以上の実施形態において、生成物の濃度を増加させるた
めに生成物濃縮流をさらに処理してもよい。
【0090】
真空蒸留槽に送られる発酵ブロスは、ある割合のガスを含有し得る。発酵ブロス中のガ
スは、真空蒸留槽の性能を低下させる可能性がある。発酵ブロス中のガスに関連する性能
低下を防ぐために、脱気槽を利用することができる。好ましくは、脱気槽はサイクロン式
脱気装置である。好ましくは、脱気槽は0.0バール(g)~1.0バール(g)の圧力
で操作される。一実施形態において、脱気槽は0.0バール(g)~0.5バール(g)
の圧力で操作される。好ましくは、脱気槽は発酵ブロスから実質的に全てのガスを除去す
る。特定の実施形態において、脱気槽は発酵ブロス中の0~100%のガスを除去する。
ある特定の場合において、脱気槽は、発酵ブロスから20%超、40%超、60%超、ま
たは80%超のガスを除去する。脱気槽は、発酵ブロスからガスの少なくとも一部を分離
するように操作される。サイクロン式脱気装置を利用する場合、発酵ブロスを回転させ、
回転している発酵ブロスの中心に低圧領域を作り出し、ガスを発酵ブロスから分離させる
。次いで、ガスの割合を減らした発酵ブロスを真空蒸留槽に送る。分離されたガスはある
割合の生成物を含有し得る。分離されたガスから生成物を回収し、生成物の損失を回避す
るために、分離されたガスは後続の装置および/または処理に送られてもよい。少なくと
も1つの実施形態において、分離されたガスはバイオリアクタに送られてもよい。
【0091】
好ましくは、真空蒸留槽を出る生成物枯渇流はバイオリアクタに戻される。生成物枯渇
流は、生存可能な微生物バイオマスを含有し、これは、バイオリアクタに戻される場合、
発酵プロセスの効率を高めるであろう。しかしながら、この生成物枯渇流は最適温度より
も高い温度を有する可能性がある。したがって、バイオリアクタに戻される前に、生成物
枯渇流を冷却することができる。生成物枯渇流の冷却は、冷却手段によって完了すること
ができる。生成物枯渇流の温度が最適範囲内であるように、生成物枯渇流の温度を低下さ
せる条件下で冷却を行う。生成物枯渇流をバイオリアクタに送る前に生成物枯渇流の温度
を下げることによって、バイオリアクタ内の培養物の不必要な加熱を回避することができ
る。例えば、生成物枯渇流をバイオリアクタ内の発酵ブロスに対して高い温度でバイオリ
アクタに提供しようとした場合、生成物枯渇流を再利用することによりバイオリアクタ内
の発酵ブロスの温度が上昇する可能性がある。バイオリアクタ内の発酵ブロスの温度が、
微生物に適した許容可能な範囲内に維持されない場合、微生物の生存率は低下する可能性
がある。したがって、生成物枯渇流の温度を監視および制御することは、生成物枯渇流の
再利用能に重要であり得る。
【0092】
図1は、発酵ブロスから少なくとも1つの生成物を回収するための真空蒸留槽100を
示し、発酵ブロスはバイオリアクタから搬送される。真空蒸留槽100は、発酵ブロスを
受容するための入口114、生成物濃縮流を移送するための出口115、および生成物枯
渇流を移送するための出口116を画定する外部ケーシング113を備える。真空蒸留槽
100はまた、ケーシング113内に位置する分離部分109を備え、この分離部分10
9は、上部トレイ112によって上方に、および下部トレイ111によって下方に結合さ
れる。真空蒸留槽100は、発酵ブロスからの生成物の回収率を増加させるように設計さ
れている。生成物濃縮流を移送するための出口115は、発酵ブロスを受容するための入
口114に対して上にある。発酵ブロスを受容するための入口114は上部トレイ112
に対して上にあり、生成物枯渇流を移送するための出口116は下部トレイ111に対し
て上にある。
【0093】
真空蒸留槽100は、所与の供給速度で発酵ブロスを処理することができるように設計
されている。供給速度は、バイオリアクタ内の発酵ブロスの体積に関して定義される。好
ましくは、真空蒸留槽100は、供給速度が0.05~0.5であるように設計されてい
る。
【0094】
真空蒸留槽100は、発酵ブロスが滞留時間を規定するように設計されている。滞留時
間は、発酵ブロスが真空蒸留槽100内にある期間に関して定義される。発酵ブロスが入
口114を通って入るとき、発酵ブロスは真空蒸留槽100内にあると見なされる。発酵
ブロスが出口116を通って出るとき、発酵ブロスは真空蒸留槽100の外にあると見な
される。好ましくは、滞留時間は0.5~15分である。様々な実施形態において、滞留
時間は、0.5~12分、0.5~9分、0.5~6分、0.5~3分、2~15分、2
~12分、2~9分、または2~6分である。少なくとも1つの実施形態において、微生
物の生存率を確保するために、滞留時間は15分未満、12分未満、9分未満、6分未満
、3分未満、2分未満、または1分未満である。
【0095】
所与の滞留時間は、少なくとも部分的には、真空蒸留装置100内の分離媒体109の
種類に依存し得る。少なくとも1つの実施形態において、分離媒体109は一連の蒸留ト
レイによって画定される。好ましくは、生成物を回収するために十分な数の理論蒸留段が
提供されるように分離媒体109が提供される。好ましくは、分離媒体109は複数の理
論蒸留段を提供する。他の実施形態において、分離媒体109は、最小数の理論蒸留段、
例えば、3超の理論蒸留段、4超の理論蒸留段、または5超の理論蒸留段、または6超の
理論上流段を提供する。
【0096】
真空蒸留槽100は、発酵ブロス中の生成物を効果的に回収し、バイオリアクタにおけ
る生成物の蓄積を防ぐように設計されている。好ましくは、生成物枯渇流は、生成物の蓄
積が効果的に低減または排除されるように減少した割合の生成物を有する。少なくとも1
つの実施形態において、生成物枯渇流は0.2重量%未満の生成物を含む。ある特定の実
施形態において、生成物枯渇流は1.0重量%未満の生成物を含む。ある特定の場合にお
いて、生成物枯渇流は0.1~1.0重量%の生成物を含む。少なくとも1つの実施形態
において、回収される生成物はエタノールである。
【0097】
生成物枯渇流の移送を達成するために、生成物枯渇流を移送するための出口116を配
管手段102を介してバイオリアクタに接続することができる。生成物枯渇流は、許容可
能な温度よりも高い可能性があり、したがってバイオリアクタに移送される前に冷却を必
要とする場合がある。冷却を達成するために、冷却手段が提供され得る。冷却手段は、生
成物枯渇流がバイオリアクタに移送される前に、生成物枯渇流を許容可能な温度にするこ
とができる。
【0098】
いくつかの場合において、発酵ブロスは許容可能な割合を超えるガスを有する可能性が
あり、したがってバイオリアクタに移送される前に脱気を必要とする場合がある。脱気を
達成するために、脱気槽200が提供され得る。好ましくは、脱気槽200はサイクロン
式脱気装置である。脱気槽200は、発酵ブロスを受容するための入口201を備え得る
。バイオリアクタから発酵ブロスを移送するために、この入口201を配管手段702を
介してバイオリアクタに接続することができる。好ましくは、脱気槽200は、発酵ブロ
スが真空蒸留槽100に搬送される前に、ガスの少なくとも一部が発酵ブロスから除去さ
れ得るように操作される。脱気槽200は、発酵ブロスが発生したガス流と脱気された発
酵ブロスとに分離されるように、発酵ブロスからガスを分離することができる。発生した
ガス流は出口205を介して脱気槽200を出る。出口205は、発生した流から生成物
を回収するために、配管手段204を介して後続のプロセスに接続されてもよい。少なく
とも1つの実施形態において、発生したガス流を水で洗浄して発生したガス流中の生成物
を回収する。加えて、出口205は配管手段204を介してバイオリアクタに接続するこ
とができ、発生したガスは発酵プロセスに使用することができる。脱気された発酵ブロス
は配管手段202を介して出口203を通って真空蒸留槽300に送られる。少なくとも
1つの実施形態において、脱気槽200は、0.0バール(g)~0.5バール(g)の
圧力で操作される。脱気槽200を利用しない実施形態において、発酵ブロスは、配管手
段702を介してバイオリアクタから真空蒸留槽100の入口114に直接送られてもよ
い。
【0099】
真空蒸留槽100は、生成物を回収しながら、微生物の生存率を確保するように設計さ
れている。好ましくは、生成物枯渇流中の微生物の生存率は85パーセント超である。少
なくとも1つの実施形態において、生成物枯渇流中の微生物の生存率は、流入する発酵ブ
ロス中の生存可能な微生物バイオマスと実質的に等しい。
【0100】
真空蒸留槽100は、リボイラー800を使用して生成物回収を提供し得る。リボイラ
ー800は、蒸気流を真空蒸留槽100に向けるように提供される。この蒸気流は、配管
手段802を通ってリボイラーの出口806から真空蒸留槽100のケーシング113の
入口117に向けられる。蒸気流は真空蒸留槽100に入り、発酵ブロス中の生成物と接
触する下部プレート111および分離媒体108を通って上方に上昇する。リボイラー8
00は、真空蒸留槽100の底部に位置する液体107を使用して蒸気流を作り出すこと
ができる。好ましくは、この液体107は実質的に水および最小量の微生物バイオマスか
らなる。液体107は、真空蒸留槽100の出口118からリボイラー800の入口80
1まで配管手段106を通過することができる。様々な実施形態において、真空蒸留槽1
00の底部に位置する液体107は、冷却手段、水蒸気凝縮物、コージェネレーションユ
ニット、および/または精留塔底部を含むがこれらに限定されない、いくつかの源に由来
し得る。
【0101】
真空蒸留槽100のケーシング113は、配管101、103、および105を介して
液体107を真空蒸留槽100の内外に移送するための1つ以上の追加の入口121、1
19、および出口120を備えることができる。これにより、真空蒸留槽100内の液体
107の含有量および割合を制御することが可能になり得る。ある特定の場合において、
配管101、103、および105は、液体107の源のうちの1つ以上に接続され得る
【0102】
加えて、真空蒸留槽100は、複数のバイオリアクタからの発酵ブロスを混合せずに真
空蒸留槽100に送ることができる方法で、真空蒸留槽100が複数の区画に分離される
ように設計されてもよい。この分離は、そのような分離を確実にするのに適した任意の手
段によって達成することができる。
【0103】
真空蒸留槽は、下部トレイ111の下方に1つ以上の追加のトレイ122を収容するこ
とができる。図2は、下部トレイ111の下方に追加のトレイ122を有する真空蒸留槽
100を図示する。これらの追加のトレイ122はさらなる生成物の除去をもたらす。真
空蒸留槽100は、生存可能な微生物バイオマスを含有する発酵ブロスを、下部トレイ1
11の上方に配置された出口116を通してバイオリアクタに移送するように設計されて
いる。下部トレイ111を通過する発酵ブロスは、生存可能な微生物バイオマスを含有す
る最小量ではあるが追加の量の発酵ブロスを含有してもよい。下部トレイ111を通過す
る発酵ブロスはバイオリアクタに送られない。この発酵ブロスは、代わりに、追加の生成
物が発酵ブロスから回収される1つ以上の追加のトレイ122を通過する。1つ以上の追
加のトレイ122を通過した後、発酵ブロスは真空蒸留槽100の底部に位置する液体1
07と混合される。微生物バイオマスを含有する発酵ブロスの一部を含むこの液体107
は、次いでリボイラー800に送られて蒸気流を生成する。
【0104】
図3および4は、発酵ブロスから生成物を除去するための真空蒸留槽の必要性を図示す
る。図3は、バッチ発酵実験の代謝物プロファイルを示す。図3は、発酵実験の初期段階
中にバイオマスおよびエタノール濃度が指数関数的に増加することを示す。エタノールが
蓄積し、約30g/Lの濃度を超えると、微生物に対するエタノールの作用によりバイオ
マスが低下する。これは、エタノール濃度が約30g/Lに達するのとほぼ同時にCOの
取り込みおよびCOの生成が遅くなる、図4によってさらに示される。このデータは、
生成物濃縮速度が生成物蓄積の負の作用が軽減および/または低減される点まで制御され
得る本発明の真空蒸留槽の必要性を例示する。
【0105】
真空蒸留槽は、生成物枯渇発酵ブロスをバイオリアクタに再利用することができる。真
空蒸留槽は、微生物の生存率を確保しながら生成物を回収するように設計されているため
、再利用される場合、微生物はバイオリアクタ内でC1含有ガスを発酵させて生成物を生
成することができる。図5および6は、多様なバリエーションのバイオリアクタ設計から
の微生物の生存率を確保する真空蒸留槽の能力を図示する。
【0106】
図5は、発酵ブロスが真空蒸留槽からバイオリアクタに再利用される、ある特定の構成
を有するバイオリアクタからの微生物の生存率を示す。微生物の生存率を、バイオリアク
タ(バイオリアクタ1)および真空蒸留槽(VDリターン)から間隔を置いて3回測定し
た。グラフに示されるように、真空蒸留槽内の微生物の生存率はバイオリアクタ内の微生
物の生存率に実質的に等しい。
【0107】
図6は、発酵ブロスが真空蒸留槽からバイオリアクタに再利用される、異なる構成を有
するバイオリアクタからの微生物の生存率を示す。微生物の生存率を、バイオリアクタ(
バイオリアクタ2)および真空蒸留槽(VDリターン)から間隔を置いて3回測定した。
グラフに示されるように、真空蒸留槽内の微生物の生存率はバイオリアクタ内の微生物の
生存率に実質的に等しい。
【0108】
本明細書に列挙される公表文献、特許出願、および特許を含む全ての参考文献は、各参
考文献があたかも参照により組み込まれることが個々にかつ具体的に示され、かつその全
体が本明細書中に記載された場合と同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
本明細書における任意の従来技術への言及は、その従来技術が任意の国における努力傾注
分野の共通の一般的知識の一部をなすという承認ではなく、かつそのように解釈されるべ
きではない。
【0109】
本発明の記載との関連で(特に、以下の特許請求の範囲との関連で)、用語「a」およ
び「an」および「the」ならびに同様の指示語の使用は、本明細書中に他に指示がな
い限り、または文脈によって明らかに相反することがない限り、単数および複数の両方を
包含すると解釈されるものとする。用語「含むこと」、「有すること」、「含むこと」、
および「含有すること」は、特に断りのない限り、非限定的な用語(即ち、「~を含むが
これらに限定されないこと」を意味する)と解釈されるものとする。本明細書の値の範囲
の記載は、本明細書に別段の指示がない限り、範囲内に入る各それぞれの値を個々に言及
する省略法としての機能を果たすことを単に意図し、各それぞれの値は、あたかも本明細
書に個々に記載されたかのように、本明細書中に組み込まれる。本明細書に記載される全
ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに相反するこ
とがない限り、任意の好適な順序で実施され得る。本明細書に提供されるありとあらゆる
実施例または例示的な用語(例えば、「など」)の使用は、本発明をよりよく理解するこ
とを単に意図し、別段特許請求の範囲に記載されない限り、本発明の範囲を制限しない。
本明細書におけるいかなる用語も、本発明の実施に不可欠な任意の非請求要素を示すもの
と解釈するべきではない。
【0110】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に記載される。それらの好ましい実施形態の変化形は、上記の説明を読むことによって当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者が必要に応じてそのような変化形を採用することを予想し、本発明者らは、本発明が本明細書に具体的に記載されるものとは別の方法で実施されることを意図する。したがって、本発明は、適用法によって許可された通り、本明細書に添付される特許請求の範囲に記載される主題の全ての修正物および均等物を含む。さらに、上記の要素のそれらの全ての考えられる変化形における任意の組み合わせは、本明細書中に他に指示がない限り、または文脈によって明らかに相反することがない限り、本発明によって包含される。

以下に、当初の特許請求の範囲に記載の発明を列挙する。
[発明1]
発酵ブロスから少なくとも1つの生成物を回収するための真空蒸留槽であって、前記発酵ブロスがバイオリアクタから搬送され、前記真空蒸留槽が、
a.生存可能な微生物バイオマスおよび少なくとも1つの生成物を含む前記発酵ブロスを受容するための入口、生成物濃縮流を移送するための出口、ならびに生成物枯渇流を移送するための出口を画定する外部ケーシングであって、前記生成物枯渇流が生存可能な微生物バイオマスを含み、前記生成物枯渇流が前記バイオリアクタに移送される、外部ケーシングと、
b.前記ケーシング内に位置する分離部分であって、上部トレイによって上方に、および下部トレイによって下方に結合されており、かつ複数の理論蒸留段を提供するための分離媒体を画定する、分離部分と、を備え、
前記生成物濃縮流を移送するための前記出口が前記発酵ブロスを受容するための前記入口に対して上にあり、前記発酵ブロスを受容するための前記入口が前記上部トレイに対して上にあり、前記生成物枯渇流を移送するための前記出口が前記下部トレイに対して上にある、真空蒸留槽。
[発明2]
前記バイオリアクタが発酵ブロスの体積を定義し、前記発酵ブロスがある供給速度で前記真空蒸留槽に搬送され、前記供給速度が1時間当たりの前記発酵ブロスの体積として定義され、前記供給速度が0.05~0.5である、発明1に記載の真空蒸留槽。
[発明3]
発酵ブロスが滞留時間を定義し、前記滞留時間が前記発酵ブロスが前記真空蒸留槽内にある期間として定義され、前記滞留時間が0.5~15分である、発明1に記載の真空蒸留槽。
[発明4]
前記生成物枯渇流を移送するための前記出口が、配管手段によって前記バイオリアクタに接続されて前記生成物枯渇流を前記バイオリアクタに移送し、前記バイオリアクタが産業プロセスからのC1含有ガスの発酵のための条件下で操作される、発明1に記載の真空蒸留槽。
[発明5]
前記分離媒体が一連の蒸留トレイによって画定されている、発明1に記載の真空蒸留槽。
[発明6]
前記分離媒体が3超の理論蒸留段を提供する、発明1に記載の真空蒸留槽。
[発明7]
前記生成物枯渇流中の前記生存可能な微生物バイオマスが、85パーセントを超える生存率を有する、発明1に記載の真空蒸留槽。
[発明8]
前記生成物枯渇流中の前記生存可能な微生物バイオマスが、前記発酵ブロス中の前記生存可能な微生物バイオマスと実質的に等しい、発明1に記載の真空蒸留槽。
[発明9]
前記生成物枯渇流が0.2重量%未満の生成物を含む、発明1に記載の真空蒸留槽。
[発明10]
前記生成物濃縮流が、エタノール、アセトン、イソプロパノール、またはそれらの混合物を含む、発明1に記載の真空蒸留槽。
[発明11]
前記真空蒸留槽が、前記真空蒸留槽の高さにわたる圧力降下を定義し、前記圧力降下が32mbar未満である、発明1に記載の真空蒸留槽。
[発明12]
前記真空蒸留槽が40mbar(a)~100mbar(a)の圧力で操作される、発明1に記載の真空蒸留槽。
[発明13]
前記真空蒸留槽が35℃~50℃の温度で操作される、発明1に記載の真空蒸留槽。
[発明14]
前記生成物枯渇流は、前記生成物枯渇流が前記バイオリアクタに移送される前に、前記生成物枯渇流の温度を下げるために冷却手段に送られる、発明1に記載の真空蒸留槽。
[発明15]
前記生成物枯渇流の前記温度が、35℃~40℃である、発明14に記載の真空蒸留槽。
[発明16]
前記発酵ブロスを受容するための前記入口が配管手段によって脱気槽に接続され、前記脱気槽は、前記発酵ブロスが前記真空蒸留槽に搬送される前に、前記発酵ブロスからガスの少なくとも一部を除去する条件下で操作される、発明1に記載の真空蒸留槽。
[発明17]
前記脱気槽が0.0バール(g)~0.5バール(g)の圧力で操作される、発明16に記載の真空蒸留槽。
[発明18]
前記外部ケーシングが、リボイラーからの蒸気流を受容するための入口と、前記リボイラーに液体流を移送するための出口とをさらに画定し、前記蒸気流を受容するための前記入口が前記下部トレイに対して下方にあり、前記液体流を移送するための前記出口が前記蒸気流を受容するための前記入口に対して下部に位置する、発明1に記載の真空蒸留槽。
[発明19]
前記液体流が実質的に水と最小量の微生物バイオマスとからなる、発明18に記載の真空蒸留槽。
[発明20]
複数のバイオリアクタからの発酵ブロスを混合せずに前記真空蒸留槽に送ることができる様式で、前記真空蒸留槽が複数の区画に分離されている、発明1に記載の真空蒸留槽。
[発明21]
前記産業プロセスが、炭水化物発酵、ガス発酵、セメント製造、パルプ製紙、製鋼、石油精製および関連プロセス、石油化学製造、コークス製造、嫌気性および好気性消化、合成ガス、天然ガス抽出、石油抽出、アルミニウム、銅、および/または合金鉄の製造および/または精製のための冶金プロセス、地質学的貯留層、ならびに触媒プロセスを含む群から選択される、発明4に記載の真空蒸留槽。
[発明22]
真空蒸留槽を用いて発酵ブロスから少なくとも1つの生成物を除去するための方法であって、
a.生存可能な微生物バイオマスおよび少なくとも1つの生成物を含む発酵ブロスをバイオリアクタから真空蒸留槽に送ることと、
b.前記発酵ブロスを部分的に蒸発させて生成物濃縮流および生成物枯渇流を生成することであって、前記生成物枯渇流が生存可能な微生物バイオマスを含む、生成することと、
c.前記生成物枯渇流を前記バイオリアクタに戻すことと、を含む、方法。
[発明23]
前記発酵ブロスを前記真空蒸留槽に送る前に、脱気槽を使用して前記発酵ブロスを脱気して、脱気された発酵ブロスおよび発生したガス流を生成することをさらに含み、前記脱気した発酵ブロスを部分的に蒸発させる、発明22に記載の方法。
[発明24]
前記発生したガス流が少なくとも1つの生成物を回収するために水で洗浄される、発明23に記載の方法。
[発明25]
前記真空蒸留槽が、ケーシング内に位置する分離部分を備え、前記分離部分が上部トレイによって上方に、および下部トレイによって下方に結合されており、前記分離部分が複数の理論蒸留段を提供するための分離媒体を画定する、発明22に記載の方法。
[発明26]
前記バイオリアクタが産業プロセスからのC1含有ガスの発酵のための条件下で操作される、発明22に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6