(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/14 20060101AFI20240822BHJP
F21V 14/04 20060101ALI20240822BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20240822BHJP
F21V 7/00 20060101ALI20240822BHJP
B60Q 1/04 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B60Q1/14 A
F21V14/04
F21V5/04 550
F21V7/00 590
B60Q1/04 Z
(21)【出願番号】P 2022500442
(86)(22)【出願日】2021-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2021004983
(87)【国際公開番号】W WO2021162041
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2023-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2020021282
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020021283
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020088951
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】丸山 雄太
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀忠
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/073994(WO,A1)
【文献】特開2009-214801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/14
F21V 14/04
F21V 5/04
F21V 7/00
B60Q 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子を有する光源部と、
周期運動を繰り返すことによって前記複数の発光素子からの光を反射して前記光を走査し所定の配光パターンを形成する反射体と、
前記光源部を制御する制御部と、
を備え、
前記所定の配光パターンは、少なくとも2つの前記発光素子からの光が互いに重畳する重畳領域を含み、
前記制御部は、検出装置から車両の前方に位置する対象物を検出することを示す信号が入力する場合において、前記重畳領域における前記対象物と重なる所定領域に光を照射する前記発光素子のうち一部の前記発光素子から前記対象物と重なる前記所定領域に照射される光の光量が変化せず、他の一部の前記発光素子から前記対象物と重なる前記所定領域に照射される光の光量が変化するように、前記光源部を制御する
ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記車両と前記対象物との間の距離に応じて、前記対象物と重なる前記所定領域の左右方向の幅が変化する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記対象物が人間である場合、前記制御部は、前記他の一部の前記発光素子から前記対象物と重なる前記所定領域に照射される光の光量が多くなるように、前記光源部を制御する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前記対象物が再帰反射物体である場合、前記制御部は、前記他の一部の前記発光素子から前記対象物と重なる前記所定領域に照射される光の光量が少なくなるように、前記光源部を制御する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用前照灯。
【請求項5】
前記制御部は、前記車両と前記対象物との間の距離に応じて、前記他の一部の前記発光素子から前記対象物と重なる前記所定領域に照射される光の光量が変化するように、前記光源部を制御する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項6】
前記制御部は、前記対象物から前記車両に向かう光の強度に応じて、前記他の一部の前記発光素子から前記対象物と重なる前記所定領域に照射される光の光量が少なくなるように、前記光源部を制御する
ことを特徴とする請求項4に記載の車両用前照灯。
【請求項7】
前記制御部は、前記車両の進行方向と当該車両から前記対象物に向かう方向とのなす角度が小さいほど、前記他の一部の前記発光素子から前記対象物と重なる前記所定領域に照射される光の光量が少なくなるように、前記光源部を制御する
ことを特徴とする請求項4に記載の車両用前照灯。
【請求項8】
前記制御部は、前記対象物と重なる前記所定領域に光を照射する前記発光素子が3つ以上である場合、前記他の一部の前記発光素子の数を変えて、前記他の一部の前記発光素子から前記対象物と重なる前記所定領域に照射される光の光量を変化させる
ことを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項9】
前記反射体は、回転しながら前記複数の発光素子からの光を反射する回転リフレクタである
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項10】
前記検出装置から前記対象物の状態を示す信号が入力する場合において、前記対象物からの反射光の光量が所定値以上となる所定の要件を前記対象物が満たす状態か否かを判定する判定部をさらに備え、
前記所定の配光パターンにおける前記反射体が走査するそれぞれの発光素子からの光のスポットが通過するそれぞれの走査領域は、走査方向における端を含み前記スポットの前記走査方向の幅以上の一対の端部と、前記一対の端部によって挟まれる中央部とに分割され、
それぞれの前記走査領域は前記走査方向にずれて配置され、それぞれの前記走査領域の前記中央部の一部は他の全ての前記走査領域の中央部の一部と重なり、それぞれの前記走査領域の前記端部は他の全ての前記走査領域の前記端部と重ならず、
前記所定領域が前記他の一部の前記発光素子に対応する全ての前記走査領域における前記中央部内に位置する第1状態から前記所定領域が前記走査方向に移動して前記他の一部の前記発光素子に対応する少なくとも1つの前記走査領域における前記端部と重なるとともに、前記所定領域が前記一部の前記発光素子のうち少なくとも1つの前記発光素子に対応する前記走査領域における前記中央部内に位置する第2状態になる場合、
前記制御部は、前記他の一部の前記発光素子のうち前記所定領域が前記端部に重なる前記走査領域に対応する前記発光素子から前記所定領域に照射される光量が、前記判定部によって前記対象物が前記所定の要件を満たす状態と判定されない場合おいて前記所定領域に照射される光量に戻るとともに、前記一部の前記発光素子のうち前記所定領域が前記中央部内に位置する前記走査領域に対応する少なくとも1つの前記発光素子から前記所定領域に照射される光量が変化することで、前記第2状態での前記所定領域に照射される光量が前記第1状態での光量となるように、前記光源部を制御する
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項11】
前記第2状態での前記所定領域は、前記一部の前記発光素子のうち2つ以上の前記発光素子に対応する前記走査領域の前記中央部内に位置し、
前記第1状態から前記第2状態になる場合、前記一部の前記発光素子における前記2つ以上の前記発光素子のうち前記中央部の前記走査方向における中心と前記所定領域との距離が最も短い前記走査領域に対応する前記発光素子から前記所定領域に照射される光量が変化する
ことを特徴とする請求項10に記載の車両用前照灯。
【請求項12】
前記所定の要件を満たす状態は、前記対象物と前記車両との間の距離が所定の距離未満の状態である
ことを特徴とする請求項10または11に記載の車両用前照灯。
【請求項13】
前記所定の要件を満たす状態は、前記対象物の見た目上の大きさが所定値以上の状態である
ことを特徴とする請求項10から12のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項14】
複数の光源部と、
周期運動を繰り返すことによって前記複数の光源部からの光を反射して前記光を走査する反射体と、
前記複数の光源部を制御する制御部と、
を備え、
前記反射体は、前記複数の光源部のうちの一部の前記光源部からの光の走査によって形成される第1配光パターンと前記複数の光源部のうちの他の一部の前記光源部からの光の走査によって形成される第2配光パターンとが車両の上下方向において部分的に重なるように、前記複数の光源部からの前記光を反射し、
前記制御部は、検出装置から前記車両の前方に位置する再帰反射物体を検出することを示す信号が入力する場合において、前記検出装置から前記再帰反射物体を検出しないことを示す信号が入力する場合に比べて、前記第1配光パターン及び前記第2配光パターンの一方において前記再帰反射物体と重なる所定領域に照射される光の光量が少なくなるように、前記複数の光源部を制御する
ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項15】
前記検出装置から前記再帰反射物体の状態を示す信号が入力する場合において、前記再帰反射物体からの反射光の光量が所定値以上となる所定の要件を前記再帰反射物体が満たす状態か否かを判定する判定部をさらに備え、
前記所定領域に照射される前記光を出射する前記光源部は、複数の発光素子を有し、
前記判定部によって前記再帰反射物体が前記所定の要件を満たす状態と判定される場合において、前記判定部によって前記再帰反射物体が前記所定の要件を満たす状態ではないと判定される場合に比べて、前記複数の発光素子のうちの一部の前記発光素子からの前記光の前記光量及び前記複数の発光素子のうちの他の一部の発光素子からの前記光の前記光量のそれぞれが少なくなるように、前記制御部は前記光源部を制御する
ことを特徴とする請求項14に記載の車両用前照灯。
【請求項16】
前記検出装置から前記再帰反射物体の状態を示す信号が入力する場合において、前記再帰反射物体からの反射光の光量が所定値以上となる所定の要件を前記再帰反射物体が満たす状態か否かを判定する判定部をさらに備え、
前記所定領域に照射される前記光を出射する前記光源部は、複数の発光素子を有し、
前記判定部によって前記再帰反射物体が前記所定の要件を満たす状態と判定される場合において、前記判定部によって前記再帰反射物体が前記所定の要件を満たす状態ではないと判定される場合に比べて、前記複数の発光素子のうちの一部の前記発光素子からの前記光の前記光量が少なくなるように、及び、前記複数の発光素子のうちの他の一部の発光素子からの前記光の前記光量が同じとなるように、前記制御部は前記光源部を制御する
ことを特徴とする請求項14に記載の車両用前照灯。
【請求項17】
前記所定の要件を満たす状態は、前記再帰反射物体と前記車両との間の距離が所定の距離未満の状態である
ことを特徴とする請求項15から16のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項18】
前記所定の要件を満たす状態は、前記再帰反射物体の見た目上の大きさが所定値以上の状態である
ことを特徴とする請求項15から17のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ヘッドライトに代表される車両用前照灯として、出射する光の配光パターンを変更可能なものが知られている。例えば、下記特許文献1には、複数の発光素子を有する光源部と、周期運動を繰り返す反射体とを備え、この反射体が複数の発光素子からの光を反射して走査することで所定の配光パターンを形成する車両用前照灯が記載されている。下記特許文献1には、複数の発光素子からの光の出射を調節することで、出射する光の配光パターンを変化させることが記載されている。
【0003】
また、従来より、前方車等の自ら発光する発光物体と、道路標識等の自ら発光せず光を所定の広がり角度で再帰反射する再帰反射物体とを検出する車両用前照灯システムが知られている。このような車両用前照灯システムは、特許文献2に開示されている。特許文献2に開示される車両用前照灯システムは、光の照射と非照射とを交互に繰り返す前照灯と、照射時と非照射時とにそれぞれ自車前方を撮影し、照射時画像と非照射時画像とを生成する撮像部とを備える。また、車両用前照灯システムは、当該非照射時画像中に位置する高輝度部を発光物体として判定し、照射時画像中に位置するが非照射時画像には位置しない高輝度部を再帰反射物体として判定する検出部を備える。
【0004】
【文献】国際公開第2019/073994号
【文献】特開2011-110999号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明の車両用前照灯は、複数の発光素子を有する光源部と、周期運動を繰り返すことによって前記複数の発光素子からの光を反射して前記光を走査し所定の配光パターンを形成する反射体と、前記光源部を制御する制御部と、を備え、前記所定の配光パターンは、少なくとも2つの前記発光素子からの光が互いに重畳する重畳領域を含み、前記制御部は、検出装置から車両の前方に位置する対象物を検出することを示す信号が入力する場合において、前記重畳領域における前記対象物と重なる所定領域に光を照射する前記発光素子のうち一部の前記発光素子から前記対象物と重なる前記所定領域に照射される光の光量が変化せず、他の一部の前記発光素子から前記対象物と重なる前記所定領域に照射される光の光量が変化するように、前記光源部を制御することを特徴とする。
【0006】
この車両用前照灯では、車両の前方の状況に応じて出射する光の配光パターンが変化し、対象物に照射される光の光量が変化する。また、この車両用前照灯では、対象物が検出される場合であっても、一部の発光素子から対象物と重なる所定領域に照射される光の光量は変化しない。このため、この車両用前照灯では、出射する光の配光パターンが変化されても、一部の発光素子からの光は対象物に照射される。光が対象物を照射すると、出射する光の配光パターンが変化して光が対象物に非照射とされる場合と比べて、対象物が視認しにくくなることが抑制され得、運転し易くし得る。また、この車両用前照灯では、対象物と重なる所定領域に光を照射する全ての発光素子から出射する光の光量を変化させる場合と比べて、出射する光の光量を変化させる発光素子の数が少ない。このため、この車両用前照灯によれば、このような場合と比べて、制御部による光源部の制御を簡易にし得る。なお、例えば、対象物が検出装置によって検出されると共に、対象物が歩行者等の人間である場合、人間に照射される光の光量が変化する。例えば、人間を照射する光の光量が多くなる場合には、車両用前照灯では、人間を照射する光の光量が変化しない場合と比べて、人間が視認され易くなり得、運転し易くし得る。また、対象物が検出装置によって検出されると共に、対象物が標識等の再帰反射物体である場合、再帰反射物体に照射される光の光量が変化する。再帰反射物体が車両用前照灯からの光を反射する場合、再帰反射物体から自車への反射光の強度は、再帰反射物体に照射される光の強度が強いほど、強くなる傾向にある。例えば、再帰反射物体に照射される光の光量が少なくなる場合には、再帰反射物体に照射される光の光量が変化しない場合と比べて、再帰反射物体への光の強度が抑制され、反射光の強度が抑制され得る。このため、車両用前照灯では、自車の運転者へのグレアの付与が抑制され得、運転し易くし得る。
【0007】
前記車両と前記対象物との間の距離に応じて、前記対象物と重なる前記所定領域の左右方向の幅が変化することとしてもよい。
【0008】
運転者の視点において、車両と対象物との間の距離が近いほど対象物が大きく見える。このため、上記のような構成にすることで、車両と対象物との間の距離に応じて照射される光の光量が変化する所定領域の左右方向の幅が変化しない場合と比べて、対象物に照射される光の光量が適切に変化し得る。
【0009】
前記対象物が人間である場合、前記制御部は、前記他の一部の前記発光素子から前記対象物と重なる前記所定領域に照射される光の光量が多くなるように、前記光源部を制御することとしてもよい。
【0010】
このような構成にすることで、歩行者等の人間に照射される光の光量が変化しない場合と比べて、人間が視認され易くなり得、運転し易くし得る。
【0011】
前記対象物が再帰反射物体である場合、前記制御部は、前記他の一部の前記発光素子から前記対象物と重なる前記所定領域に照射される光の光量が少なくなるように、前記光源部を制御することとしてもよい。
【0012】
このような構成にすることで、再帰反射物体に照射される光の光量が変化しない場合と比べて、自車の運転者へのグレアの付与が抑制され得、運転し易くし得る。
【0013】
前記制御部は、前記車両と前記対象物との間の距離に応じて、前記他の一部の前記発光素子から前記対象物と重なる前記所定領域に照射される光の光量が変化するように、前記光源部を制御することとしてもよい。
【0014】
このような構成にすることで、車両と対象物との間の距離に応じて対象物に照射される光の光量が変化する。運転者は、車両と人間との間の距離が遠いほど当該人間を視認し難くなる傾向にある。このため、例えば、車両と人間との間の距離が遠いほど人間に照射される光の光量が多くされる。この場合には、車両用前照灯では、車両と人間との間の距離に応じて人間に照射される光の光量が変化しない場合と比べて、人間が視認され易くなり得る。また、再帰反射物体が車両用前照灯からの光を反射する場合、再帰反射物体から自車への反射光の強度は、自車と再帰反射物体との間の距離が近いほど強くなる傾向にある。このため、例えば、車両と再帰反射物体との間の距離が近いほど、再帰反射物体に照射される光の光量が少なくされる。この場合には、車両用前照灯では、車両と再帰反射物体との距離に応じて再帰反射物体に照射される光の光量が変化しない場合と比べて、自車の運転者へのグレアの付与を抑制し得る。
【0015】
対象物が再帰反射物体であり制御部が上記の他の一部の発光素子から対象物と重なる所定領域に照射される光の光量が少なくなるように光源部を制御する場合、前記制御部は、前記対象物から前記車両に向かう光の強度に応じて、前記他の一部の前記発光素子から前記対象物と重なる前記所定領域に照射される光の光量が少なくなるように、前記光源部を制御することとしてもよい。
【0016】
このような構成にすることで、自車の運転者へのグレアの付与が適切に抑制され得る。
【0017】
或いは、前記制御部は、前記車両の進行方向と当該車両から前記対象物に向かう方向とのなす角度が小さいほど、前記他の一部の前記発光素子から前記対象物と重なる前記所定領域に照射される光の光量が少なくなるように、前記光源部を制御することとしてもよい。
【0018】
一般的に車両用前照灯から出射する光の配光パターンでは、中央側ほど光の強度が強くなる傾向にある。このため、車両の進行方向と当該車両から対象物に向かう方向の角度が小さくなるにつれて対象物に照射される光の強度が強くなる傾向がある。このため、例えば、この角度が小さいほど対象物である再帰反射物体と重なる所定領域に照射される光の光量が少なくなるよう光源部を制御することで、自車の運転者へのグレアの付与が適切に抑制され得る。
【0019】
車両と対象物との間の距離または再帰反射物体から車両に向かう光の強度に応じて制御部が上記の他の一部の発光素子から対象物と重なる所定領域に照射される光の光量が変化するように光源部を制御する際、前記制御部は、前記対象物と重なる前記所定領域に光を照射する前記発光素子が3つ以上である場合、前記他の一部の前記発光素子の数を変えて、前記他の一部の前記発光素子から前記対象物と重なる前記所定領域に照射される光の光量を変化させることとしてもよい。
【0020】
前記反射体は、回転しながら前記複数の発光素子からの光を反射する回転リフレクタであることとしてもよい。
【0021】
前記検出装置から前記対象物の状態を示す信号が入力する場合において、前記対象物からの反射光の光量が所定値以上となる所定の要件を前記対象物が満たす状態か否かを判定する判定部をさらに備え、前記所定の配光パターンにおける前記反射体が走査するそれぞれの発光素子からの光のスポットが通過するそれぞれの走査領域は、走査方向における端を含み前記スポットの前記走査方向の幅以上の一対の端部と、前記一対の端部によって挟まれる中央部とに分割され、それぞれの前記走査領域は前記走査方向にずれて配置され、それぞれの前記走査領域の前記中央部の一部は他の全ての前記走査領域の中央部の一部と重なり、それぞれの前記走査領域の前記端部は他の全ての前記走査領域の前記端部と重ならず、前記所定領域が前記他の一部の前記発光素子に対応する全ての前記走査領域における前記中央部内に位置する第1状態から前記所定領域が前記走査方向に移動して前記他の一部の前記発光素子に対応する少なくとも1つの前記走査領域における前記端部と重なるとともに、前記所定領域が前記一部の前記発光素子のうち少なくとも1つの前記発光素子に対応する前記走査領域における前記中央部内に位置する第2状態になる場合、前記制御部は、前記他の一部の前記発光素子のうち前記所定領域が前記端部に重なる前記走査領域に対応する前記発光素子から前記所定領域に照射される光量が、前記判定部によって前記対象物が前記所定の要件を満たす状態と判定されない場合おいて前記所定領域に照射される光量に戻るとともに、前記一部の前記発光素子のうち前記所定領域が前記中央部内に位置する前記走査領域に対応する少なくとも1つの前記発光素子から前記所定領域に照射される光量が変化することで、前記第2状態での前記所定領域に照射される光量が前記第1状態での光量となるように、前記光源部を制御することとしてもよい。
【0022】
この車両用前照灯では、前述のように、複数の発光素子からの光の周期的な走査によって配光パターンを形成する。このような車両用前照灯では、例えば、発光素子からの光のスポットが通過する走査領域の走査方向における端の近傍に対象物と重なる所定領域が位置する場合、この端と所定領域との距離がスポットの走査方向における幅より狭くなることがある。ところで、光を走査できる最短の長さは、スポットの走査方向における幅である。このため、上記のような場合、端と所定領域と間に照射される光量を変化させずに所定領域に照射される光量を変化させることができない。このため、所定領域とともに上記の端と所定領域との間に照射される光量も変化し、光量が変化される領域が急に大きくなることがあり、運転者が違和感を覚えることがある。一方、この車両用前照灯では、それぞれの発光素子に対応するそれぞれの走査領域は、一対の端部と、中央部とに分割され、端部の幅はスポットの幅以上である。そして、制御部は、所定領域に照射される光の光量が変化される光を出射する発光素子に対応する走査領域の端部と所定領域とが重なる第2状態となる場合、この発光素子から出射する光の光量が、判定部によって対象物が所定の要件を満たす状態と判定されない場合おいて所定領域に照射される光量に戻るように、光源部を制御する。このため、この車両用前照灯によれば、所定領域に照射される光の光量が変化される発光素子に対応する走査領域の端と所定領域との距離が集光スポットの走査方向における幅未満とならないようにし得る。また、制御部は、この場合、所定領域に照射される光の光量が変化されていない光を出射する発光素子のうち走査領域の中央部内に所定領域が位置する発光素子から当該所定領域に照射される光量が変化することで、第2状態での所定領域に照射される光量が第1状態での光量となるように、光源部を制御する。このため、この車両用前照灯によれば、所定領域の近傍に照射される光量が変化することを抑制し得るとともに、所定領域の明るさが変化しないようにし得、運転者が違和感を覚えることを抑制し得る。
【0023】
第2状態での前記所定領域は、前記一部の前記発光素子のうち2つ以上の前記発光素子に対応する前記走査領域の前記中央部内に位置し、前記第1状態から前記第2状態になる場合、前記一部の前記発光素子における前記2つ以上の前記発光素子のうち前記中央部の前記走査方向における中心と前記所定領域との距離が最も短い前記走査領域に対応する前記発光素子から前記所定領域に照射される光量が変化することとしてもよい。
【0024】
この車両用前照灯では、中央部の中心と所定領域との距離が最も短い走査領域に対応する発光素子からこの所定領域に照射される光の光量が変化する。このため、所定領域が走査方向の一方側または他方側に更に移動したとしても、第1状態から第2状態になる場合に所定領域に照射される光の光量が変化するようにされる発光素子に対応する走査領域の端部と、所定領域とが重なりにくくし得る。従って、この車両用前照灯によれば、制御部が上記のような光源部の制御を行う回数が増加することを抑制し得る。
【0025】
また、前記所定の要件を満たす状態は、前記対象物と前記車両との間の距離が所定の距離未満の状態であってもよい。
【0026】
また、前記所定の要件を満たす状態は、前記対象物の見た目上の大きさが所定値以上の状態であってもよい。
【0027】
本発明の車両用前照灯は、複数の光源部と、周期運動を繰り返すことによって前記複数の光源部からの光を反射して前記光を走査する反射体と、前記複数の光源部を制御する制御部と、を備え、前記反射体は、前記複数の光源部のうちの一部の前記光源部からの光の走査によって形成される第1配光パターンと前記複数の光源部のうちの他の一部の前記光源部からの光の走査によって形成される第2配光パターンとが車両の上下方向において部分的に重なるように、前記複数の光源部からの前記光を反射し、前記制御部は、検出装置から前記車両の前方に位置する再帰反射物体を検出することを示す信号が入力する場合において、前記検出装置から前記再帰反射物体を検出しないことを示す信号が入力する場合に比べて、前記第1配光パターン及び前記第2配光パターンの一方において前記再帰反射物体と重なる所定領域に照射される光の光量が少なくなるように、前記複数の光源部を制御することを特徴とする。
【0028】
再帰反射物体が光を反射する場合、再帰反射物体から自車への反射光の強度は、光源部から再帰反射物体への光の強度が強いほど、強くなる傾向がある。ここで、検出装置から再帰反射物体を検出することを示す信号が制御部に入力する場合と、検出装置から再帰反射物体を検出しないことを示す信号が制御部に入力しない場合とを比較する。再帰反射物体を検出することを示す信号が制御部に入力する場合では、再帰反射物体を検出しないことを示す信号が制御部に入力しない場合と比べて、第1配光パターン及び第2配光パターンの一方において再帰反射物体と重なる所定領域に照射される光の光量は少なくなる。当該光は、第1配光パターン及び第2配光パターンの一方を形成する光の一部である。当該光の光量が少なくなると、光量が少なくならない場合に比べて、再帰反射物体への光の強度が抑制され、反射光の強度が抑制され得る。これにより反射光が自車に進行したとしても、自車の運転者へのグレアの付与が抑制され得る。従って、この車両用前照灯によれば、運転者の視認性の低下が抑制され得る。
【0029】
また、前記検出装置から前記再帰反射物体の状態を示す信号が入力する場合において、前記再帰反射物体からの反射光の光量が所定値以上となる所定の要件を前記再帰反射物体が満たす状態か否かを判定する判定部をさらに備え、前記所定領域に照射される前記光を出射する前記光源部は、複数の発光素子を有し、前記判定部によって前記再帰反射物体が前記所定の要件を満たす状態と判定される場合において、前記判定部によって前記再帰反射物体が前記所定の要件を満たす状態ではないと判定される場合に比べて、前記複数の発光素子のうちの一部の前記発光素子からの前記光の前記光量及び前記複数の発光素子のうちの他の一部の発光素子からの前記光の前記光量のそれぞれが少なくなるように、前記制御部は前記光源部を制御してもよい。
【0030】
この車両用前照灯によれば、再帰反射物体が所定の要件を満たしていない状態よりも再帰反射物体が所定の要件を満たす状態において、再帰反射物体への光の照射が抑制され、反射光の強度がさらに抑制され得る。従って、この車両用前照灯によれば、運転者の視認性の低下がより抑制され得る。
【0031】
また、前記検出装置から前記再帰反射物体の状態を示す信号が入力する場合において、前記再帰反射物体からの反射光の光量が所定値以上となる所定の要件を前記再帰反射物体が満たす状態か否かを判定する判定部をさらに備え、前記所定領域に照射される前記光を出射する前記光源部は、複数の発光素子を有し、前記判定部によって前記再帰反射物体が前記所定の要件を満たす状態と判定される場合において、前記判定部によって前記再帰反射物体が前記所定の要件を満たす状態ではないと判定される場合に比べて、前記複数の発光素子のうちの一部の前記発光素子からの前記光の前記光量が少なくなるように、及び、前記複数の発光素子のうちの他の一部の発光素子からの前記光の前記光量が同じとなるように、前記制御部は前記光源部を制御してもよい。
【0032】
再帰反射物体が所定の要件を満たす状態である場合と、再帰反射物体が所定の要件を満たす状態ではない場合とにおいて、他の一部の発光素子からの光の光量が同じだと、制御部は、どちらの場合であっても他の一部の発光素子に同じ制御を行うことができる。例えば、再帰反射物体が所定の要件を満たす状態ではない場合から再帰反射物体が所定の要件を満たす状態である場合に切り替わっても、制御部は、他の一部の発光素子への電力の供給量を変えることが不要になり得る。従って、制御部は、再帰反射物体が所定の要件を満たす状態である場合と再帰反射物体が所定の要件を満たす状態ではない場合とで他の一部の発光素子からの光の光量が変わる場合に比べて、他の一部の発光素子を制御し易い。
【0033】
また、前記所定の要件を満たす状態は、前記再帰反射物体と前記車両との間の距離が所定の距離未満の状態であってもよい。
【0034】
また、前記所定の要件を満たす状態は、前記再帰反射物体の見た目上の大きさが所定値以上の状態であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図2】
図2は、第1実施形態の1つの灯具を概略的に示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の光源部の発光素子のレイアウトを示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態のそれぞれの発光素子からの光の集光スポットが通過する走査領域を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の走査領域を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の発光素子の点消灯状態を示すタイムチャートである。
【
図7】
図7は、車両用前照灯の動作を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、ステップS4における集光スポットの走査を説明する図である。
【
図9】
図9は、ステップS4における所定の配光パターンを示す図である。
【
図10】
図10は、ステップS5における集光スポットの走査を説明する図である。
【
図11】
図11は、ステップS5における特定の配光パターンを示す図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態の変形例における走査領域を説明する図である。
【
図13】
図13は、第1実施形態の変形例におけるステップS5での光量変化領域の設定の一例を説明する図である。
【
図14】
図14は、第1実施形態の変形例におけるステップS5での光量変化領域の設定の別の一例を説明する図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態の1つの灯具を概略的に示す図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態の複数の光源部の発光素子のレイアウトを示す図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態のそれぞれの発光素子からの光の集光スポットが通過する走査領域を示す図である。
【
図19】
図19は、ステップS4における集光スポットの走査を説明する図である。
【
図20】
図20は、ステップS4における第1配光パターン及び第2配光パターンを示す図である。
【
図21】
図21は、ステップS5における集光スポットの走査を説明する図である。
【
図22】
図22は、ステップS5における第1配光パターン及び第2配光パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る車両用前照灯の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができる。また、本発明は、以下に例示する各実施形態における構成要素を適宜組み合わせてもよい。なお、理解の容易のため、それぞれの図において一部が誇張して記載される場合等がある。
【0037】
(第1実施形態)
本発明の第1の態様としての第1実施形態について説明する。
図1は、車両100を概念的に示す平面図である。
図1に示すように、車両100は、車両用前照灯10と、検出装置110とを備える。
【0038】
本実施形態の車両用前照灯10は、自動車用の前照灯とされる。車両用前照灯10は、車両100の前方部位の左右に配置される一対の灯具20と、判定部50と、制御部60と、記録部70とを主に備える。なお、本明細書において「右」とは車両100の進行方向において右側を意味し、「左」とは車両100の進行方向において左側を意味する。
【0039】
一対の灯具20は、車両100の左右方向において互いに概ね対称な形状とされる。本実施形態の一対の灯具20は、ロービームまたはハイビームを車両100の前方に出射する。一対の灯具20のうちの一方の灯具20aの構成は、形状が概ね対称であることを除いて、一対の灯具20のうちの他方の灯具20bの構成と同じとされる。このため、以下では、それぞれの灯具20a,20bの構成を、灯具20aを用いて説明する。
【0040】
図2は、
図1に示す第1実施形態の灯具20aを概略的に示す図である。
図2に示すように、灯具20aは、光源部30と、反射体39と、駆動部41と、投影レンズ43とを主な構成として備える。
【0041】
光源部30は、回路基板33に実装される複数の発光素子35を備える。複数の発光素子35は、所定の方向に沿って一列に並んで配置される。発光素子35として、例えばLED(Light Emitting Diode)等が用いられる。
図2では、5個の発光素子35を備える光源部30が示されている。なお、光源部30における発光素子35の数は、2個以上であれば特に限定されない。
【0042】
それぞれの発光素子35には、回路基板33を介して電力が供給される。それぞれの発光素子35に供給される電力が調節されることで、それぞれの発光素子35から出射する光の光量が調節される。当該光は、反射体39に向かって出射する。
【0043】
本実施形態の反射体39として、例えば回転リフレクタが挙げられる。反射体39は、駆動部41の図示しない出力シャフトに固定され、この出力シャフトの中心を通る駆動部41の図示しない回転軸を中心に駆動部41からの回転力によって回転する。反射体39は、回転によって周期運動を繰り返す。駆動部41としては、例えば、基準位置からの出力シャフトの回転位置を検出する図示しないエンコーダを有するモータが挙げられる。エンコーダは、検出される出力シャフトの回転位置といった回転位置情報を示す信号を制御部60に出力する。なお、灯具20aは、エンコーダの代わりに、基準位置からの反射体39の回転位置といった回転位置情報を検出するセンサを備えてもよい。この場合、センサは、当該回転位置情報を示す信号を制御部60に出力する。反射体39は、光源部30からの光を投影レンズ43に向かって反射する2つの反射ブレード39aを備える。
【0044】
本実施形態の投影レンズ43は、非球面平凸レンズとされる。この投影レンズ43では、反射体39の反射ブレード39aによって反射される光が入射する側の面である入射面が平面状とされ、入射する光が出射する側の面である出射面が出射方向に膨らむ凸面状とされる。
【0045】
本実施形態では、光源部30の複数の発光素子35が光を反射体39に向けて出射すると共に反射体39が回転する。これにより、反射体39は、周期運動である回転運動を繰り返すことによって複数の発光素子35からの光を投影レンズ43側へ反射して、当該光を車両100の左右方向に走査する。この光が投影レンズ43を透過して車両100の前方に出射すると共に車両100の左右方向に走査されると、車両100の前方の鉛直面200上に所定の配光パターン350が形成される。従って、反射体39は、周期運動を繰り返すことによって複数の発光素子35からの光を反射して当該光を周期的に走査し所定の配光パターン350を形成する。
図2に示す所定の配光パターン350は、車両100の左右方向に横長な長方形状であるハイビームの配光パターンを示す。本実施形態では、所定の配光パターン350が形成されるように、複数の発光素子35からの光を反射する反射ブレード39aの反射面の形状、及び反射ブレード39aに対する複数の発光素子35の位置等が調整される。詳細については後述するが、複数の発光素子35からの光の出射を制御することで、形成される所定の配光パターン350を変更できる。
【0046】
【0047】
制御部60は、車両100に搭載される図示しないライトスイッチからの制御信号が入力されているか否かを判定する。制御信号は、灯具20a及び灯具20bのそれぞれの光源部30からの光の出射の開始を指示する信号である。制御信号が制御部60に入力されている場合には、制御部60は、光源部30を駆動させると共に、駆動部41を駆動させる。制御信号が制御部60に入力されていない場合、制御部60は、光源部30の駆動を停止させると共に、駆動部41の駆動を停止させる。
【0048】
制御部60は、例えば、マイクロコントローラ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large-scale Integrated Circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの集積回路やNC(Numerical Control)装置を用いることができる。また、制御部60は、NC装置を用いた場合、機械学習器を用いたものであってもよく、機械学習器を用いないものであってもよい。
【0049】
検出装置110は、車両100の前方に位置する対象物を検出する。検出装置110が検出する対象物として、再帰反射物体、及び再帰反射物体以外の物体が挙げられる。本実施形態の再帰反射物体は、自ら発光せず、再帰反射物体を照射する光を所定の広がり角度で再帰反射する物体である。このような再帰反射物体として、例えば、道路の傍らに設置される道路標識等が挙げられる。また、再帰反射物体以外の物体としては、例えば、先行車や対向車等の車両、歩行者等の人間が挙げられる。
【0050】
検出装置110の構成として、検出装置110は、例えば、図示しないカメラ、画像処理部、及び検出部等を主に備える。カメラは、車両100の前部に取り付けられ、車両100の前方を撮影する。カメラによって撮影される撮影画像には、一対の灯具20から出射する光が照射される領域の少なくとも一部が含まれる。画像処理部は、カメラによって撮影される撮影画像に画像処理を施す。検出部は、対象物を検出する場合、対象物を検出することを示す信号を、判定部50を介して制御部60に出力する。なお、検出部は、当該信号を制御部60に直接出力してもよい。また、検出部は、画像処理部によって画像処理される情報から対象物の状態を検出する。対象物の状態として、例えば、対象物の存在、撮影画像における対象物の存在位置、対象物の種類、及び撮影画像における対象物の割合が挙げられる。検出装置110は、車両100の前方に位置する対象物を検出する場合に、対象物の状態を示す信号を判定部50に出力し、撮影画像を記録部70に出力する。検出装置110は、対象物として再帰反射物体と人間とを後述するように識別して検出する。また、検出装置110は、車両100の前方に対象物が存在せず、当該対象物を検出しない場合に、対象物を検出しないことを示す信号を判定部50に出力し、撮影画像を記録部70に出力する。当該信号は、対象物が存在しないことを示す信号でもある。なお、検出装置110は、対象物を検出しない場合に、信号を出力しなくてもよい。また、検出装置110が検出する対象物、対象物の種類の数、及び検出装置110の構成は特に限定されるものではない。画像処理部の構成及び検出部の構成として、例えば、制御部60と同様の構成が挙げられる。また、制御部60と、検出装置110の画像処理部及び検出部の少なくとも一方とが一体に構成され、制御部60が画像処理部及び検出部の少なくとも一方を兼ねてもよい。
【0051】
次に、撮影画像からの再帰反射物体の存在の検出の一例について説明する。なお、再帰反射物体は、道路標識であるものとして説明する。記録部70は、それぞれの道路標識の画像データを予め記録している。検出部は、撮影画像に映り込んだ対象物が記録部70に記録されている道路標識の画像データに該当する場合、当該対象物を再帰反射物体と検出する。検出の別の一例として、一般的に、道路標識の形状は、円形、矩形、または三角形であり、道路標識には、赤色、白色、青色、黄色、黒色、緑色といった色が組み合わされている。検出部は、カメラによって撮影される撮影画像に映り込んだ対象物の外形が円形、矩形、または三角形のいずれかであり、対象物の外形の内側の色が上記した色の組み合わせであれば、対象物を再帰反射物体として検出してもよい。上記した2つの検出の一例が組み合わされてもよい。また、再帰反射物体がデリニエータの場合、デリニエータからの反射光は例えば橙色となる。検出部は、カメラによって撮影される撮影画像に映り込んだ対象物からの光が橙色である場合、当該対象物を再帰反射物体と検出してもよい。なお、検出部による再帰反射物体の検出は、上記に限定されるものではない。
【0052】
次に、撮影画像からの人間の存在の検出の一例について説明する。検出部は、撮影画像に映る人間の顔を認証する場合に、対象物を人間として検出する。或いは、検出部は、人間から放出される体温付近の赤外線を検出する人感センサを備えてもよい。人感センサが赤外線を検出すると共に、赤外線が撮影画像に映る場合に、検出部は、撮影画像に映ると共に赤外線を放出する対象物を人間として検出してもよい。なお、検出部による人間の検出は、上記に限定されるものではない。
【0053】
判定部50は、車両100の前方に位置する対象物を検出する検出装置110からの対象物の状態を示す信号を基に、対象物が対象物から自車への反射光の光量が所定値以上となる所定の要件を満たす状態か否かを判定する。所定の要件を満たす状態とは、例えば、対象物と車両100との間の距離が所定の距離未満の状態であることを示す。所定の距離とは、例えば30mである。この距離の数値は、閾値として記録部70に記録されており、日中や夜間といった車両100の走行状況、対象物の種類などに応じて適宜変更可能にされてもよい。また、この距離の数値は、対象物の種類ごとに設定されてもよい。例えば、判定部50は、算出部及び判定本体部を主に備える。算出部は、検出装置110からの対象物の状態における上記割合を基に対象物と車両100との間の距離を算出する。算出される距離を示す信号は、判定本体部に出力される。判定本体部は、記録部70から閾値である所定の距離を読み出し、算出される距離と所定の距離とを比較し、算出される距離が所定の距離よりも大きいか否かを判定する。算出される距離が所定の距離以上である場合、対象物が所定の要件を満たす状態ではないと判定本体部は判定する。また、算出される距離が所定の距離未満である場合、対象物が所定の要件を満たす状態であると判定本体部は判定する。そして、判定部50は、判定本体部によって対象物が所定の要件を満たす状態であると判定される場合に、算出部が算出する距離、撮影画像における対象物の存在位置、及び対象物の種類といった対象物の状態を示す信号を制御部60に出力する。判定部50の構成は、例えば、制御部60と同様の構成が挙げられる。なお、制御部60と判定部50とが一体に構成され、制御部60が判定部50を兼ねてもよい。
【0054】
記録部70は、検出装置110から出力される撮影画像と、判定部50における上記した閾値である所定の距離とを記録する。記録部70としては、例えば、ROM等の半導体メモリ、磁気ディスク等が挙げられる。
【0055】
図3及び
図4は、所定の配光パターン350の形成を説明する図である。
【0056】
図3は、本実施形態の光源部30の発光素子35-1~35-5のレイアウトを示す図である。上記したように、光源部30は5個の発光素子35-1~35-5を備える。
【0057】
図4は、所定の配光パターン350を形成するためにそれぞれの発光素子35-1~35-5からの光が反射体39によって走査されるときに、それぞれの光の集光スポットが通過する走査領域SR1~SR5を示す図である。集光スポットとは、それぞれの発光素子35-1~35-5からの光によって形成されるスポットであり、車両100の前方に投影されるスポットである。
図4において、Hは車両100の左右方向に沿う水平線を示し、Vは車両100の上下方向に沿う垂直線を示す。本実施形態の走査領域SRiは、i番目(1≦i≦5)の発光素子35-iからの光によって形成される集光スポットが通過する領域を示す。走査領域SR1~SR5は、車両100の左右方向に横長な長方形状とされ、概ね同じ大きさとされる。走査領域SR1~SR5の上下方向の位置は概ね同じであり、左右方向の位置は異なっている。従って、走査領域SR1~SR5のそれぞれの一部が他の走査領域の一部と重なるように、走査領域SR1~SR5は互いに左右方向にずれて配置されている。なお、
図4において、理解を容易にするため、走査領域SR1~SR5は上下方向にずらして記載している。走査領域SR1~SR5の集合の外形が
図2に示す所定の配光パターン350の外形に相当する。
【0058】
走査領域SR1~SR5では、走査領域SR1が最も左側に位置しており、走査領域SR1~SR5は走査領域SR1~SR5の順で右方向に徐々にずれて配置されている。従って、走査領域SR2の左右方向の中心は、走査領域SR1の左右方向の中心よりも右側に位置し、走査領域SR2の一部と走査領域SR1の一部とが互いに重なっている。また、走査領域SR3の左右方向の中心は、走査領域SR2の左右方向の中心よりも右側に位置し、走査領域SR3の一部と走査領域SR1~SR2の一部とが互いに重なっている。走査領域SR4の左右方向の中心は、走査領域SR3の左右方向の中心よりも右側に位置し、走査領域SR4の一部と走査領域SR1~SR3の一部とが互いに重なっている。走査領域SR5の左右方向の中心は、走査領域SR4の左右方向の中心よりも右側に位置し、走査領域SR5の一部と走査領域SR1~SR4の一部とが互いに重なっている。
【0059】
集合する走査領域SR1~SR5の集合の左右方向における中央部には、中央領域CAが位置する。中央領域CAでは、5つの走査領域SR1~SR5の一部が互いに重なっており、この中央領域CAには、5つの発光素子35-1~35-5からの光が照射可能である。中央領域CAより左側に位置する第1左領域LS1では、4つの走査領域SR1~SR4の一部が互いに重なり、中央領域CAより右側に位置する第1右領域RS1では、4つの走査領域SR2~SR5の一部が互いに重なる。第1左領域LS1より左側に位置する第2左領域LS2では、3つの走査領域SR1~SR3の一部が互いに重なり、第1右領域RS1より右側に位置する第2右領域RS2では、3つの走査領域SR3~SR5の一部が互いに重なる。第2左領域LS2より左側に位置する第3左領域LS3では、2つの走査領域SR1,SR2の一部が互いに重なり、第2右領域RS2より右側に位置する第3右領域RS3では、2つの走査領域SR4,SR5の一部が互いに重なる。第3左領域LS3より左側に位置する第4左領域LS4は走査領域SR1の一部から成り、第3右領域RS3より右側に位置する第4右領域RS4は走査領域SR5の一部から成る。このため、第1左領域LS1及び第1右領域RS1には4つの発光素子からの光が照射可能であり、第2左領域LS2及び第2右領域RS2には3つの発光素子からの光が照射可能である。また、第3左領域LS3及び第3右領域RS3には2つの発光素子からの光が照射可能であり、第4左領域LS4及び第4右領域RS4には1つの発光素子からの光が照射可能である。
【0060】
図5及び
図6は、走査領域SRi内における発光素子35-iの制御を説明する図である。
図5は、走査領域SRiを示す図である。
図5に示す走査領域SRiのうち、ハッチングを付していない範囲は光量変化領域311を示し、ハッチングを付した範囲は光量非変化領域313を示す。光量非変化領域313は、発光素子35-iからの光の光量が概ね所定の量とされる領域である。一方、光量変化領域311は、発光素子35-iからの光の光量が光量非変化領域313に照射される光の光量と異なる領域である。
図6は、発光素子35-iから出射する光の光量を示すタイムチャートである。
図6に示すTSは、走査周期を示す。
【0061】
図5に示すSCiはある時刻において発光素子35-iからの光の集光スポットの位置を示す。集光スポットSCiは、図中左から右に走査するものとする。ある時刻t0に、集光スポットSCiの左端LEが走査領域SRiの左端に位置しているものとする。制御部60は、駆動部41からの回転位置情報を基に走査領域SRiにおける集光スポットSCiの位置を把握しており、回転位置情報に同期して発光素子35-iの輝度を制御する。なお、
図5において、理解を容易にするため、走査領域SRiに対する集光スポットSCiの大きさは、実際の大きさより大きくされている。
【0062】
光量非変化領域313では、制御部60は、集光スポットSCiが光量非変化領域313を通過する期間、その集光スポットSCiに対応する発光素子35-iから出射される光の光量が第1所定値となるように、発光素子35-iの輝度を制御する。第1所定値は、光量非変化領域313において発光素子35-iから出射される光の光量の値を示す。また、第1所定値は、例えば、発光素子35-iから出射される光の光量の最大値の80%等とされる。
【0063】
また、光量変化領域311では、制御部60は、集光スポットSCiが光量変化領域311を通過する期間、その集光スポットSCiに対応する発光素子35-iから出射される光の光量が第2所定値となるように、発光素子35-iの輝度を制御する。具体的には、
図5及び
図6に示すように、制御部60は、集光スポットSCiの右端REが光量変化領域311に達するタイミングtAに発光素子35-iから出射される光の光量を第2所定値に制御する。また、制御部60は、集光スポットSCiの左端LEが光量変化領域311の右端に達するタイミングtBに発光素子35-iから出射される光の光量を第1所定値に制御する。第2所定値は、光量変化領域311において発光素子35-iから出射される光の光量の値を示す。第2所定値は、第1所定値と異なる値である。
図6では、第2所定値が第1所定値より低い例が示される。第2所定値が第1所定値より低い場合、第2所定値は、例えば、発光素子35-iから出射される光の光量の最大値の30%、またはゼロ等とされる。また、第2所定値が第1所定値より高くされてもよく、この場合、第2所定値は、例えば、発光素子35-iから出射される光の光量の最大値等とされる。第2所定値がゼロの場合、発光素子35-iからの光は消灯する。
【0064】
図7は、本実施形態における車両用前照灯10の動作を示すフローチャートである。
図7に示すように、本実施形態のフローチャートは、ステップS1~ステップS5を含んでいる。
【0065】
(ステップS1)
検出装置110は、カメラによって車両100の前方を撮影する。検出装置110は、車両100の前方に位置する対象物を撮影画像から検出する場合に、対象物を検出することを示す信号を判定部50を介して制御部60に出力すると共に、対象物の状態を示す信号を判定部50に出力する。また、検出装置110は、車両100の前方に位置する対象物を撮影画像から検出しない場合に、対象物を検出しないことを示す信号を判定部50に出力する。本実施形態では、検出装置110は対象物として再帰反射物体と人間とを識別して検出する。信号が入力されると、処理はステップS2に移行する。
【0066】
(ステップS2)
本ステップでは、制御部60は、ライトスイッチからの制御信号を基に、光を出射させるか否かを判定する。制御信号が制御部60に入力されていない場合、制御部60は、複数の光源部30の駆動を停止すると共に駆動部41の駆動を停止し、光は出射せず、処理はステップS1に戻る。また、制御信号が制御部60に入力される場合、光が出射し、処理はステップS3に移行する。
【0067】
(ステップS3)
本ステップでは、判定部50は、検出装置110からの対象物の状態を示す信号を基に対象物が所定の要件を満たすか否かを判定する。対象物が所定の要件を満たす状態ではないと判定部50が判定する場合には、処理はステップS4に移行する。また、対象物を検出しないことを示す信号が判定部50に入力される場合には、対象物が所定の要件を満たさないものとして、処理はステップS4に移行する。一方、対象物が所定の要件を満たす状態であると判定部50が判定する場合には、判定部50は、算出部が算出する対象物と車両100との間の距離、撮影画像における対象物の存在位置、及び対象物の種類といった対象物の状態を示す信号を制御部60に出力する。判定部50が信号を出力すると、処理はステップS5に移行する。以下において、所定の要件を満たす状態は、対象物と車両100との間の距離が所定の距離未満の状態であることを例に説明する。また、以下では、対象物は、車両100の左斜め前方に位置するものとして説明する。
【0068】
(ステップS4)
本ステップでは、ステップS3で説明したように、対象物としての再帰反射物体が検出装置110によって検出されると共に、再帰反射物体と車両100との間の距離が所定の距離以上である、或いは検出装置110によって対象物が検出されないこととなる。この場合、制御部60は光源部30の駆動を制御すると共に駆動部41の駆動を制御する。
図8は、本ステップにおける集光スポットSC1~SC5の走査を説明する図である。
図9は、対象物としての再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離以上である場合に形成される所定の配光パターン350を示す図である。なお、
図9に示す所定の配光パターン350は
図2に示す所定の配光パターン350と同じである。
【0069】
ここではまず、
図8を参照して、本ステップにおける集光スポットSC1~SC5の走査を説明する。
図8では、見やすいように、複数の走査領域SR1~SR5をずらして並べている。集光スポットSC1~SC5は、走査領域SR1~SR5を図中左から右に走査する。対象物と車両100との間の距離が所定の距離以上である場合及び検出装置110によって対象物が検出されない場合、制御部60は、走査領域SR1~SR5のそれぞれを光量非変化領域313として設定する。次に、制御部60は、集光スポットSC1~SC5に対応する発光素子35-1~35-5から出射される光の光量が第1所定値となるように、発光素子35-1~35-5を制御する。
【0070】
上記のように制御される発光素子35-1~35-5が光を出射すると、光は駆動部41によって回転される反射体39によって投影レンズ43に向かって反射される。また、光は、投影レンズ43を透過して車両100の前方に出射すると共に車両100の左右方向に走査する。この光の走査によって、
図9に示すように車両100の前方に所定の配光パターン350が形成される。
図9に示すように、再帰反射物体401が道路の傍らに設置される道路標識である場合、当該再帰反射物体401は例えば道路の傍らから立設される金属の支柱である支持部403によって支持される。
図9において、Hは水平線を示し、所定の配光パターン350が太線で示され、所定の配光パターン350は、車両100から例えば25m離れた鉛直面上に形成される配光パターンとされている。また、
図9では、走査領域SR1~SR5のそれぞれの左右の縁が点線で示されている。
【0071】
前述のように、中央領域CAは、走査領域SR1~SR5の一部が互いに重なっている領域である。このため、
図9に示す所定の配光パターン350のうち中央領域CAに重なる領域は、5つの発光素子35-1~35-5からの光が互いに重畳している。なお、この光の重畳には、人間の視覚における光の重畳も含まれる。また、所定の配光パターン350のうち、第1左領域LS1及び第1右領域RS1に重なる領域は4つの発光素子からの光が互いに重畳し、第2左領域LS2及び第2右領域RS2に重なる領域は3つの発光素子からの光が互いに重畳する。また、所定の配光パターン350のうち、第3左領域LS3及び第3右領域RS3に重なる領域は2つの発光素子からの光が互いに重畳し、第4左領域LS4及び第4右領域RS4に重なる領域は1つの発光素子からの光によって形成される。上記のように、走査領域SR1~SR5のそれぞれは、光量非変化領域313に設定されている。この場合、所定の配光パターン350において互いに重なる走査領域の数が多い領域ほど、所定の配光パターン350における光の強度は強くなる。このため、配光パターン350では、配光パターン350のうち中央領域CAに重なる領域の光の強度が最も強く、配光パターン350の左右方向の外側ほど光の強度が弱い。また、所定の配光パターン350のうち領域CA,LS1~LS3,RS1~RS3から成る領域に一致する重畳領域PAは、少なくとも2つの発光素子からの光が互いに重畳する領域であり、所定の配光パターン350は、このような重畳領域PAを含む。なお、
図9では、重畳領域PAは一点鎖線で示されている。
【0072】
(ステップS5)
本ステップでは、対象物としての再帰反射物体が検出装置110によって検出されると共に、再帰反射物体と車両100との間の距離が所定の距離未満であることとなる。この場合、制御部60は、光源部30の駆動を制御すると共に駆動部41の駆動を制御する。
図10は、本ステップにおける集光スポットSC1~SC5の走査を説明する図である。
図11は、再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離未満である場合に形成される特定の配光パターン360を示す図である。また、
図11では、走査領域SR1~SR5のそれぞれの左右の縁が点線で示されている。ここでは、再帰反射物体は、重畳領域PAに重なるものとして説明する。
【0073】
本ステップでは、制御部60は、判定部50からの信号に基づいて、重畳領域PAにおいて再帰反射物体が重なる領域を、所定領域ARと設定する。
図11に示すように、この所定領域ARは、重畳領域PAの上端から下端まで直線状に延在する領域であり、中央領域CA内に位置している。このため、
図9に示す配光パターン350に上記所定領域ARが形成されている場合、所定領域ARでは、5つの発光素子35-1~35-5からの光が互いに重畳する。所定領域ARの左右方向の位置は、車両100に対する再帰反射物体401の左右方向の位置に応じて変化し、本実施形態では、所定領域ARの左右方向の中心が再帰反射物体401の左右方向の中心と概ね一致している。なお、所定領域ARの左右方向の中心は再帰反射物体401の左右方向の中心と一致していなくてもよい。また、所定領域ARの左右方向の幅は、車両100と再帰反射物体401との間の距離に応じて変化する。本実施形態では、再帰反射物体401の全体が所定領域ARと重なると共に、所定領域ARの左右方向の幅は再帰反射物体401との距離が近いほど広くされる。なお、所定領域ARの左右方向の幅は、車両100と再帰反射物体401との間の距離に応じて変化しなくてもよい。所定領域ARの左右方向の幅は、中央領域CAの幅よりも狭くされているが、中央領域CAと同じにされてもよい。
【0074】
次に、
図10に示すように、制御部60は、
図9に示す配光パターン350が形成されている場合に
図9では不図示の所定領域ARに光を照射する発光素子35-1~35-5における走査領域SR1~SR5のうち一部の走査領域には光量変化領域311を設定せず、他の一部の走査領域には光量変化領域311を設定する。本実施形態では、
図10には、3つの走査領域SR1,SR3,SR5に光量変化領域311が設定されず、2つの走査領域SR2,SR4に光量変化領域311が設定される状態が示されている。なお、
図10では、
図8と同様に、見やすいように、複数の走査領域SR1~SR5をずらして並べている。光量変化領域311は所定領域ARに対応しており、光量変化領域311の左右方向の位置は所定領域ARと同じであり、光量変化領域311の左右方向の幅は、所定領域ARと同じである。また、制御部60は、走査領域SR1~SR5のそれぞれにおいて光量変化領域311が設定されていない領域に光量非変化領域313を設定する。
【0075】
なお、所定領域ARが第1左領域LS1内に位置している場合、
図9に示す配光パターン350が形成されると、所定領域ARでは、4つの発光素子35-1~35-4からの光が互いに重畳することとなる。この場合、制御部60は、
図9に示す配光パターン350が形成されている場合に所定領域ARに光を照射する発光素子35-1~35-4における走査領域SR1~SR4のうち一部の走査領域には光量変化領域311を設定せず、他の一部の走査領域には光量変化領域311を設定する。このため、制御部60は、対象物と車両100との間の距離が所定の距離以上の場合に形成される配光パターン350における所定領域ARに光を照射する発光素子の走査領域のうち一部の走査領域には光量変化領域311を設定せず、他の一部の走査領域には光量変化領域311を設定することとなる。
【0076】
また、対象物と車両100との間の距離が所定の距離未満である場合、光量変化領域311が設定される走査領域の数は、車両100と対象物との間の距離に応じて変化する。例えば対象物が再帰反射物体401である場合、当該数は、車両100と再帰反射物体401との間の距離が近いほど多くなる。例えば、車両100と再帰反射物体401との間の距離が
図11に示す状態での距離より近い場合には、距離が
図10に示す状態よりも多くの光量変化領域311が設定される。この場合、例えば、3つの走査領域SR1,SR2,SR4に光量変化領域311が設定される。なお、例えば対象物が人間である場合、光量変化領域311が設定される走査領域の数は、車両100と人間との間の距離が遠いほど多くなる。なお、光量変化領域311が設定される走査領域の数は、車両100と対象物としての再帰反射物体や人間との間の距離に応じて変化しなくてもよい。また、光量変化領域311が設定されない走査領域は、特に限定されるものではなく、重畳領域PAに対する対象物の左右方向の位置に応じて変化されてもよい。
【0077】
また、制御部60は、判定部50からの情報に基づいて、第2所定値を設定する。制御部60は、対象物が再帰反射物体である場合、つまり制御部60に対象物が再帰反射物体であることを示す信号に入力される場合には、第2所定値を第1所定値より低い所定の値に設定する。なお、制御部60は、対象物が人間である場合、つまり制御部60に対象物が人間であることを示す信号が入力される場合には、第2所定値を第1所定値よりも高く設定する。
図7に示すフローチャートでは、対象物が再帰反射物体401であるため、制御部60は、第2所定値を第1所定値より低い所定の値に設定している。
【0078】
次に、制御部60は、対象物が再帰反射物体401である場合、光量変化領域311が設定されていない走査領域SR1,SR3,SR5を走査する集光スポットSC1,SC3,SC5に対応する発光素子35-1,35-3,35-5から出射される光の光量が第1所定値となるように、発光素子35-1,35-3,35-5を制御する。また、制御部60は、対象物が再帰反射物体401である場合、光量変化領域311が設定されてた走査領域SR2,SR4を走査する集光スポットSC2,SC5が光量非変化領域313を通過する期間、集光スポットSC2,SC4に対応する発光素子35-2,35-4から出射される光の光量が第1所定値となるように、発光素子35-2,35-4を制御する。また、制御部60は、対象物が再帰反射物体401である場合、集光スポットSC2,SC4が光量変化領域311を通過する期間、集光スポットSC2,SC4に対応する発光素子35-2,35-4から出射される光の光量が第2所定値となるように、発光素子35-2,35-4を制御する。そして、処理はステップS1に戻る。
【0079】
上記のように制御される発光素子35-1~35-5が光を出射すると、光は駆動部41によって回転される反射体39によって投影レンズ43に向かって反射される。この反射される光は、投影レンズ43を透過して車両100の前方に出射すると共に車両100の左右方向に走査する。この光の走査によって、
図11に示す特定の配光パターン360が車両100の前方に形成される。上記のように、集光スポットSC2,SC4が光量変化領域311を通過する期間、集光スポットSC2,SC4に対応する発光素子35-2,35-4から出射される光の光量は、第1所定値より低い第2所定値とされる。このため、集光スポットSC2,SC4から所定領域ARに照射される光量は、判定部50によって再帰反射物体が所定の要件を満たしていない状態と判定される場合の光量から少なくなるように変化する。従って、
図11に示す特定の配光パターン360を
図9に示す所定の配光パターン350と比較する場合、特定の配光パターン360における所定領域ARに照射される光の光量は、所定の配光パターン350における当該所定領域ARに対応する領域に照射される光の光量より少なくなり、再帰反射物体401に照射される光の光量が少なくなる。
【0080】
ここで、上記のように、制御部60は、少なくとも2つの走査領域が互いに重なっている領域に対象物が重なる場合には、一部の走査領域には光量変化領域311を設定せず、他の一部の走査領域には光量変化領域311を設定する。このため、本ステップにおいて、制御部60は、
図9に示す配光パターン350における少なくとも2つの発光素子からの光が互いに重畳する重畳領域PAにおける対象物と重なる所定領域ARに光を照射する発光素子のうち一部の発光素子から対象物と重なる所定領域ARに照射される光の光量が変化せず、他の一部の発光素子から対象物と重なる所定領域ARに照射される光の光量が変化するように、光源部30を制御することとなる。
【0081】
なお、本ステップにおいて、検出装置110によって対象物として人間が検出され、判定部50によって当該人間が所定の要件を満たす状態と判定される場合、制御部60は、上記のように、第2所定値を第1所定値よりも高く設定する。第2所定値が第1所定値よりも高い場合、発光素子35-2,35-4から所定領域ARに照射される光量は、判定部50によって人間が所定の要件を満たしていない状態と判定される場合の光量よりも多くなる。光量が多くなると、判定部50によって人間が所定の要件を満たす状態と判定される場合の特定の配光パターン360における人間と重なる所定領域ARに照射される光量は、判定部50によって人間が所定の要件を満たしていない状態と判定される場合の所定の配光パターン350における当該所定領域ARに対応する領域に照射される光量より多くなる。従って、人間に照射される光の光量は、人間が所定の要件を満たしていない状態よりも人間が所定の要件を満たす状態において、多くなる。
【0082】
また、本ステップにおいて、上記したように、対象物である再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離未満である場合、光量変化領域311が設定される走査領域の数は、車両100と再帰反射物体401との間の距離が近いほど多くなる。このため、車両100と再帰反射物体401との間の距離が近いほど再帰反射物体に照射される光の光量が少なくなる。また、上記したように、対象物である人間と車両100との間の距離が所定の距離未満である場合、光量変化領域311が設定される走査領域の数は、車両100と人間との間の距離が遠いほど多くなる。このため、車両100と人間との間の距離が遠いほど人間に照射される光の光量が多くなる。このため、制御部60は、車両100と対象物との間の距離に応じて、上記の重畳領域PAにおける対象物と重なる所定領域ARに光を照射する発光素子のうち一部の発光素子から対象物と重なる所定領域ARに照射される光の光量が変化せず、他の一部の発光素子から対象物と重なる所定領域ARに照射される光の光量が変化するように、光源部30を制御することとなる。
【0083】
ところで、例えば、自車に備えられる車両用前照灯から出射する光が標識等の再帰反射物体を照射する場合、光の一部は、反射光として再帰反射物体から自車に向かい、自車の運転者にグレアを与えてしまうことがある。また、車両用前照灯から出射して歩行者等の人間に照射される光の光量が少ない場合、運転者が当該人間を視認し難くなることがある。従って、運転をより容易にしたいとの要請がある。
【0084】
そこで、本実施形態の車両用前照灯10は、光源部30と、反射体39と、光源部30を制御する制御部60と、を備える。光源部30は、複数の発光素子35-1~35-5を有する。反射体39は、周期運動を繰り返し複数の発光素子35-1~35-5からの光を反射してこの光を周期的に走査し所定の配光パターン350を形成する。所定の配光パターン350は、少なくとも2つの発光素子からの光が互いに重畳する重畳領域PAを含む。制御部60は、検出装置110から車両100の前方に位置する対象物を検出することを示す信号が入力する場合において、重畳領域PAにおける対象物と重なる所定領域ARに光を照射する発光素子のうち一部の発光素子から対象物と重なる所定領域ARに照射される光の光量が変化せず、他の一部の発光素子から対象物と重なる所定領域ARに照射される光の光量が変化するように、光源部30を制御する。
【0085】
本実施形態の車両用前照灯10では、車両100の前方の状況に応じて出射する光の配光パターンが変化し、対象物に照射される光の光量が変化する。また、本実施形態の車両用前照灯10では、対象物が検出される場合であっても、一部の発光素子から対象物と重なる所定領域ARに照射される光の光量は変化しない。このため、本実施形態の車両用前照灯10では、出射する光の配光パターンが変化されても、一部の発光素子からの光は対象物に照射される。光が対象物を照射すると、出射する光の配光パターンが変化して光が対象物に非照射とされる場合と比べて、対象物を視認しにくくなることが抑制され得、運転し易くし得る。また、本実施形態の車両用前照灯10では、対象物と重なる所定領域ARに光を照射する全ての発光素子から出射する光の光量を変化させる場合と比べて、出射する光の光量を変化させる発光素子の数が少ない。このため、本実施形態の車両用前照灯10によれば、このような場合と比べて、制御部60による光源部30の制御を簡易にし得る。なお、対象物が検出装置によって検出されると共に、例えば、
図11に示すように、対象物が再帰反射物体401である場合、再帰反射物体401に照射される光の光量が変化する。再帰反射物体401が車両用前照灯10からの光を反射する場合、再帰反射物体401から自車への反射光の強度は、再帰反射物体401に照射される光の強度が強いほど、強くなる傾向にある。本実施形態の車両用前照灯10では、再帰反射物体401を照射する光の光量が少なくなるため、再帰反射物体401を照射する光の光量が変化しない場合と比べて、再帰反射物体401への光の強度が抑制され、反射光の強度が抑制され得る。このため、本実施形態の車両用前照灯10では、自車の運転者へのグレアの付与が抑制され得、運転し易くし得る。また、本実施形態の車両用前照灯10では、対象物が検出装置によって検出されると共に、対象物が人間である場合、人間に照射される光の光量が変化する。本実施形態の車両用前照灯10では、人間を照射する光の光量が多くなるため、車両用前照灯10では、人間を照射する光の光量が変化しない場合と比べて、人間が視認され易くなり得、運転し易くし得る。なお、制御部60は、対象物が所定の要件を満たすか否かを示す判定部50の判定結果を入力されると、対象物が検出されると判定してもよい。この場合、検出装置110は、対象物を検出することを示す信号の制御部60への出力をしなくてもよい。
【0086】
また、本実施形態の車両用前照灯10では、車両100と対象物との間の距離に応じて、対象物と重なる所定領域ARの左右方向の幅が変化する。運転者の視点において、車両100と対象物との間の距離が近いほど対象物が大きく見える。このため、このような構成にすることで、車両100と対象物との間の距離に応じて照射される光の光量が変化する所定領域ARの左右方向の幅が変化しない場合と比べて、対象物に照射される光の光量が適切に変化し得る。
【0087】
また、本実施形態の車両用前照灯10では、制御部60は、車両100と対象物との間の距離に応じて、上記の重畳領域PAにおける対象物と重なる所定領域ARに光を照射する発光素子のうち一部の発光素子から対象物と重なる所定領域ARに照射される光の光量が変化せず、他の一部の発光素子から対象物と重なる所定領域ARに照射される光の光量が変化するように、光源部30を制御する。このため、車両100と対象物との間の距離に応じて対象物に照射される光の光量が変化する。運転者は、車両と人間との間の距離が遠いほど当該人間を視認し難くなる傾向にある。本実施形態の車両用前照灯10では、車両と人間との間の距離が遠いほど人間に照射される光の光量が多くされる。このため、本実施形態の車両用前照灯10では、車両100と人間との間の距離に応じて人間に照射される光の光量が変化しない場合と比べて、人間が視認され易くなり得、運転し易くし得る。また、再帰反射物体が車両用前照灯10からの光を反射する場合、再帰反射物体から自車への反射光の強度は、自車と再帰反射物体との間の距離が近いほど強くなる傾向にある。本実施形態の車両用前照灯10では、車両100と再帰反射物体との間の距離が近いほど再帰反射物体に照射される光の光量が少なくされる。このため、本実施形態の車両用前照灯10は、車両100と再帰反射物体との距離に応じて再帰反射物体に照射される光の光量が変化しない場合と比べて、自車の運転者へのグレアの付与が抑制され得、運転し易くし得る。
【0088】
なお、ステップS5において、制御部60は、重畳領域PAにおける対象物と重なる所定領域ARに光を照射する発光素子のうち一部の発光素子と異なる他の一部の発光素子から対象物と重なる所定領域ARへ向けて出射する光の光量が常に第2所定値となるように、この他の一部の発光素子を制御する必要はない。例えば、制御部60は、所定の走査周期において、光量変化領域311を設定してもよい。そして、制御部60は、上記の他の一部の発光素子から所定領域ARへ向けて出射される光の光量が、この所定の走査周期において集光スポットが光量変化領域311を通過する期間に第2所定値となるように、この他の一部の発光素子を制御してもよい。また、上記の他の一部の発光素子が複数である場合、この複数の発光素子から所定領域ARへ向けて出射される光の光量が互いに異なっていてもよい。例えば、上記実施形態のように他の一部の発光素子が2つの発光素子35-2,35-4であり対象物が再帰反射物体である場合、制御部60は、発光素子35-2から所定領域ARへ向けて出射される光の光量が第2所定値となり、発光素子35-4から所定領域ARへ向けて出射される光の光量が第2所定値より低い第3所定値となるように、2つの発光素子35-2,35-4を制御してもよい。
【0089】
また、ステップS5において、制御部60は、車両100と対象物との間の距離に応じて、重畳領域PAにおける対象物と重なる所定領域ARに光を照射する発光素子のうち一部の発光素子から所定領域ARに照射される光の光量が変化せず、他の一部の発光素子から所定領域ARに照射される光の光量が変化するように、光源部30を制御する必要はない。例えば、検出装置110が対象物として再帰反射物体を検出可能であると共に再帰反射物体から車両100に向かう光の強度を検出可能である場合、制御部60は、再帰反射物体から車両100に向かう光の強度に応じて、重畳領域PAにおける再帰反射物体と重なる所定領域ARに光を照射する発光素子のうち一部の発光素子から所定領域ARに照射される光の光量が変化せず、他の一部の発光素子から所定領域ARに照射される光の光量が少なくなるように、光源部30を制御してもよい。このような構成にすることで、自車の運転者へのグレアの付与が適切に抑制され得る。なお、検出装置110は、例えば撮影画像における輝度値を基に再帰反射物体から車両100に向かう光の強度を検出する。また、例えば、検出装置110が対象物として再帰反射物体を検出可能であると共に車両100の進行方向と当該車両100から再帰反射物体に向かう方向とのなす角度を検出可能である場合、制御部60は、この角度が小さいほど、重畳領域PAにおける再帰反射物体と重なる所定領域ARに光を照射する発光素子のうち一部の発光素子から所定領域ARに照射される光の光量が変化せず、他の一部の発光素子から所定領域ARに照射される光の光量が少なくなるように、光源部30を制御してもよい。一般的に車両用前照灯から出射する光の配光パターンでは、中央側ほど光の強度が強くなる傾向にある。このため、上記の角度が小さくなるにつれて対象物に照射される光の強度が強くなる傾向がある。このため、例えば、上記の角度が小さいほど、再帰反射物体と重なる所定領域ARに照射される光の光量が少なくなるよう光源部30を制御することで、自車の運転者へのグレアの付与が適切に抑制され得る。また、制御部60は、対象物と重なる所定領域ARに光を照射する発光素子35が3つ以上である場合、他の一部の発光素子の数を変えて、他の一部の発光素子から対象物と重なる所定領域ARに照射される光の光量を変化させてもよい。
【0090】
また、制御部60は、所定領域ARの左右方向の位置に応じて、光量変化領域311が設定される走査領域を変化させてもよい。以下、光量変化領域311が設定される走査領域が変化する変形例について説明する。なお、上記実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0091】
本変形例では、例えば、
図12に示すように、それぞれの発光素子35-1~35-5に対応する走査領域SR1~SR5が、走査方向である左右方向において、一対の端部EP1-1~EP1-5,EP2-1~EP2-5、及び中央部CP1~CP5の3つの領域に分割される。なお、
図12において、理解を容易にするため、走査領域SR1~SR5が上下にずらして並べられており、それぞれの走査領域に対する一対の端部の大きさは、実際の大きさより大きくされている。
【0092】
一方の端部EP1-1~EP1-5は、走査領域SR1~SR5の左側の端を含む領域である。左右方向の幅W1-1~W1-5は、集光スポットSC1~SC5の左右方向の幅以上の幅であり、例えば集光スポットSC1~SC5の左右方向の幅の10倍とされる。他方の端部EP2-1~EP2-5は、走査領域SR1~SR5の右側の端を含む領域である。左右方向の幅W2-1~W2-5は、集光スポットSC1~SC5の左右方向の幅以上の幅であり、例えば集光スポットSC1~SC5の左右方向の幅の10倍とされる。中央部CP1~CP5は、一方の端部EP1-1~EP1-5と他方の端部EP2-1~EP2-5とによって挟まれる領域である。
【0093】
走査領域SR1~SR5は左右方向にずれて配置されており、中央部CP1~CP5の左右方向の中心C1~C5も左右方向に互いにずれている。しかし、それぞれの中央部CP1~CP5の一部は、他の全ての走査領域の中央部の一部と重なっている。また、それぞれの端部EP1-1~EP1-5,EP2-1~EP2-5は、他の全ての走査領域における端部と重なっていない。
【0094】
図13は、本変形例におけるステップS5での光量変化領域311の設定の一例を説明する図である。なお、
図13において、理解を容易にするため、それぞれの走査領域に対する一対の端部の大きさは、実際の大きさより大きくされている。また、
図13では、ステップS5において、3つの走査領域SR1,SR2,SR3に光量変化領域311が設定されず、2つの走査領域SR4,SR5に光量変化領域311が設定される状態が示されている。また、所定領域ARは、光量変化領域311が設定される全ての走査領域SR4,SR5の中央部CP4,CP5内に位置する。なお、
図13に示す例では、所定領域ARは、光量変化領域311が設定されない走査領域SR1~SR3の中央部CP1~CP3内にも位置している。このような状態において、例えば車両100が移動することで所定領域ARが左右方向に移動する場合、光量変化領域311も左右方向に移動することなる。このため、
図14に示すように、2つの走査領域SR4,SR5では、端部と、光量変化領域311とが重なる場合がある。換言すれば、2つの走査領域SR4,SR5では、端部と、所定領域ARとが重なる場合がある。ここで、
図14に示される例では、走査領域SR5の一方の端部EP1-5と所定領域ARとが重なっており、この所定領域ARは、走査領域SR1~SR4の中央部CP1~CP4内に位置している。
【0095】
所定領域ARが
図13に示すように第1状態から
図14に示すように第2状態になる場合、制御部60は以下のように光源部30を制御する。第1状態は、
図13に示すように光量変化領域311が設定される全ての走査領域SR4,SR5における中央部CP4,CP5内に所定領域ARが位置する状態である。また、第2状態は、
図14に示すように所定領域ARが走査領域SR5における一方の端部EP1-5と重なるとともに、光量変化領域311が設定されない走査領域SR1~SR3の中央部CP1~CP3内に位置する状態である。制御部60は、発光素子35-4,35-5のうち端部と所定領域ARとが重なる走査領域に対応する発光素子から所定領域ARに照射される光量が、当該光量が変化される前に所定領域ARに照射される光量に戻るように、光源部30を制御する。具体的には、制御部60は、端部EP1-5と所定領域ARとが重なっている走査領域SR5から光量変化領域311をなくす。このため、走査領域SR5に対応する発光素子35-1から所定領域ARに照射される光量が、走査領域SR5に光量変化領域311が設けられる前に所定領域ARに照射される光量に戻る。つまり、発光素子35-1から所定領域ARに照射される光量は、判定部50によって対象物が所定の要件を満たす状態と判定されない場合おいて所定領域ARに照射される光量に戻る。
【0096】
また、制御部60は、発光素子35-1~35-3のうち所定領域ARが中央部内に位置する走査領域に対応する少なくとも1つの発光素子から所定領域ARに照射される光の光量が変化することで、第2状態での所定領域ARに照射される光量が第1状態での光量となるように、光源部30を制御する。ここで、本変形例では、上記実施形態と同様に、集光スポットSCiが光量非変化領域313を通過する際にそれぞれの発光素子35-iから出射される光の光量は第1所定値となる。このため、制御部60は、3つの走査領域SR1~SR3のうち所定領域ARが中央部内に位置する走査領域に対応する1つ走査領域に光量変化領域311を設ける。ここで、3つの走査領域SR1~SR3における端部と所定領域ARとは重ならないため、3つの走査領域SR1~SR3のうちいずれか1つに光量変化領域311を設ける。本変形例では、制御部60は、3つの走査領域SR1~SR3のうち中央部CP1~CP3の左右方向の中心C1~C3と所定領域ARとの距離が最も短い走査領域SR2に光量変化領域311を設ける。このため、走査領域SR2に対応する発光素子35-2から所定領域ARに照射される光量が変化し、第2状態での所定領域ARに照射される光量が第1状態での光量となる。そして、処理はステップS5からステップS1に戻る。なお、制御部60は、3つの走査領域SR1~SR3のうちいずれかに光量変化領域311を設けることで、第2状態での所定領域ARに照射される光量が第1状態での光量となるように、光源部30を制御すればよい。走査領域の選択方法は特に限定されるものではなく、複数の走査領域に光量変化領域311を設けてもよい。複数の走査領域に光量変化領域311を設ける場合、第2状態での所定領域ARに照射される光量が第1状態での光量となるように、集光スポットが光量変化領域311を通過する際に発光素子から出射される光の光量を調節する。
【0097】
ここで、本変形例では、上記実施形態と同様に、複数の発光素子35-1~35-5からの光の周期的な走査によって配光パターンを形成する。このような車両用前照灯では、例えば、発光素子35-iからの光の集光スポットSCiが通過する走査領域SRiの走査方向における端の近傍に対象物と重なる所定領域ARが位置する場合、この端と所定領域ARとの距離が集光スポットSCiの走査方向における幅より狭くなることがある。ところで、光を走査できる最短の長さは、集光スポットSCiの走査方向における幅である。このため、上記のような場合、端と所定領域ARと間に照射される光量を変化させずに所定領域ARに照射される光量を変化させることができない。このため、所定領域ARとともに上記の端と所定領域ARとの間に照射される光量も変化し、光量が変化される領域が急に大きくなることがあり、運転者が違和感を覚えることがある。
【0098】
本変形例の車両用前照灯10は、検出装置110から対象物の状態を示す信号が入力する場合において、対象物からの反射光の光量が所定値以上となる所定の要件を対象物が満たす状態か否かを判定する判定部50をさらに備える。また、本変形例の車両用前照灯10では、上記に説明したように、所定の配光パターン350における反射体39が走査するそれぞれの発光素子35-1~35-5からの光の集光スポットSC1~SC5が通過するそれぞれの走査領域SR1~SR5は、一対の端部EP1-1~EP1-5,EP2-1~EP2-5と、中央部CP1~CP5とに分割される。一方の端部EP1-1~EP1-5は、走査領域SR1~SR5の左側の端を含む領域であり、他方の端部EP2-1~EP2-5は、走査領域SR1~SR5の右側の端を含む領域である。中央部CP1~CP5は、走査方向において一方の端部EP1-1~EP1-5と他方の端部EP2-1~EP2-5とによって挟まれる領域である。それぞれの走査領域SR1~SR5における端部EP1-1~EP1-5,EP2-1~EP2-5の走査方向の幅は、集光スポットSC1~SC5の走査方向の幅以上である。それぞれの走査領域SR1~SR5は走査方向にずれて配置され、それぞれの走査領域SR1~SR5の中央部CP1~CP5の一部は他の全ての走査領域の中央部の一部と重なり、それぞれの走査領域SR1~SR5の端部EP1-1~EP1-5,EP2-1~EP2-5は他の全ての走査領域の端部と重ならない。そして、所定領域ARが第1状態から第2状態になる場合、制御部60は、以下のように光源部30を制御する。ここでの第1状態は、所定領域ARに照射される光の光量が変化される発光素子35-4,35-5に対応する全ての走査領域SR4,SR5における中央部CP4,CP5内に所定領域ARが位置する状態である。また、第2状態は、所定領域ARが走査方向に移動して所定領域ARに照射される光の光量が変化される発光素子35-4,35-5に対応する少なくとも1つの走査領域における端部と所定領域ARが重なるとともに、所定領域ARに照射される光の光量が変化されていない発光素子35-1~35-3のうち少なくとも1つの発光素子に対応する走査領域における中央部内に所定領域ARが位置する状態である。制御部60は、所定領域ARに照射される光の光量が変化される発光素子35-4,35-5のうち所定領域ARが端部に重なる走査領域SR5に対応する発光素子35-5から所定領域ARに照射される光量が、判定部50によって対象物が所定の要件を満たす状態と判定されない場合おいて所定領域ARに照射される光量に戻るように、光源部30を制御する。このため、本変形例の車両用前照灯10によれば、所定領域ARに照射される光の光量が変化される発光素子に対応する走査領域の端と所定領域ARとの距離が集光スポットの走査方向における幅未満とならないようにし得る。また、制御部60は、所定領域ARに照射される光の光量が変化されていない発光素子35-1~35-3のうち所定領域ARが中央部内に位置する走査領域に対応する少なくとも1つの発光素子から所定領域ARに照射される光量が変化することで、第2状態での所定領域ARに照射される光量が第1状態での光量となるように、光源部30を制御する。このため、本変形例の車両用前照灯10によれば、所定領域ARの近傍に照射される光量の変化が抑制され得るとともに、所定領域ARの明るさが変化しないようにし得、運転者が違和感を覚えることを抑制し得る。
【0099】
また、本変形例の車両用前照灯10では、第2状態での所定領域ARは、所定領域ARに照射される光の光量が変化されていない発光素子35-1~35-3のうち2つ以上の発光素子に対応する走査領域の中央部内に位置している。そして、第1状態から第2状態になる場合、所定領域ARに照射される光の光量が変化されていない発光素子35-1~35-3における2つ以上の発光素子のうち中央部CP1~CP3の走査方向における中心C1~C3と所定領域ARとの距離が最も短い走査領域SR2に対応する発光素子35-2から所定領域ARに照射される光量が変化する。このため、所定領域ARが走査方向の一方側または他方側に更に移動したとしても、第1状態から第2状態になる場合に所定領域ARに照射される光の光量が変化するようにされる発光素子35-2に対応する走査領域SR2の端部と、所定領域ARとが重なりにくくし得る。従って、本変形例の車両用前照灯10によれば、制御部60が上記のような光源部30の制御を行う回数が増加することを抑制し得る。
【0100】
なお、本変形例では、第1状態において走査領域SR4,SR5に光量変化領域311が設けられていた。しかし、光量変化領域311が設けられる走査領域や光量変化領域311が設けられる走査領域の数は特に限定されるものではない。また、それぞれの走査領域の走査方向の長さも特に限定されるものではない。また、これら走査領域における端部の幅は、互いに異なっていてもよく、同じであってもよい。また、これら走査領域における走査方向と垂直な方向の幅は、互いに異なっていてもよく、同じであってもよい。また、これら走査領域は、走査方向とともに走査方向と垂直な方向にもずれていてもよい。また、これら5つの発光素子35-1~35-5からの光の走査によって配光パターンの一部を形成し、他の発光素子からの光の走査によって配光パターンの他の一部を形成してもよい。
【0101】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2の態様としての第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。本実施形態の車両用前照灯10では、灯具20a,20bにおける光源部30の構成が、第1実施形態の灯具20a,20bにおける光源部30の構成とは異なる。本実施形態の灯具20a,20bの構成はそれぞれ同じであるため、それぞれの灯具20a,20bの構成を、灯具20aを用いて説明する。
【0102】
図15は、本実施形態の灯具20aを概略的に示す図である。
図15に示すように、本実施形態の灯具20aでは、複数の光源部30が配置されている。
【0103】
図15では、それぞれの光源部30を破線で示している。当該破線は、それぞれの光源部30を示すために便宜的に記載されたものであり、それぞれの光源部30の形状が破線のような形状であることを意味するものではない。それぞれの光源部30は、
図15の紙面の上下方向である一方の方向に沿って一列に並んで配置される。また、それぞれの光源部30は、回路基板33に実装される複数の発光素子35を備える。複数の発光素子35は、一方の方向とは異なる他方の方向に沿って一列に並んで配置される。他方の方向は、例えば、一方の方向に直交している方向である。
図15では、2つの光源部30が一方の方向に沿って一列に並んで配置される例を示している。また、
図15では、複数の光源部30のうちの一部の光源部30aでは5個の発光素子35が他方の方向に沿って一列に並んで配置され、他の一部の光源部30bでは2個の発光素子35が他方の方向に沿って一列に並んで配置される例が示されている。光源部30aは、第1実施形態の光源部30に対応する。なお、光源部30の数及びそれぞれの光源部30における発光素子35の数は、特に限定されない。また、例えば、それぞれの光源部30は、1つの発光素子35を備える構成とされても良い。
【0104】
それぞれの光源部30において、それぞれの発光素子35には、回路基板33を介して電力が供給される。それぞれの発光素子35に供給される電力が調節されることで、それぞれの発光素子35から出射する光の光量が調節される。光は、反射体39に向かって出射する。反射体39の反射ブレード39aは、複数の光源部30からの光を投影レンズ43に向かって反射する。
【0105】
本実施形態では、複数の光源部30が光を反射体39に向けて出射すると共に反射体39が回転すると、反射体39は周期運動を繰り返すことによって複数の光源部30からの光を投影レンズ43側へ反射して、当該光を車両100の左右方向に走査する。光は、投影レンズ43を透過して車両100の前方に出射すると共に車両100の左右方向に走査され、車両100の前方の鉛直面200上に第1配光パターン201及び第2配光パターン203を形成する。第1配光パターン201は光源部30aからの光の走査によって形成される配光パターンであり、第2配光パターン203は光源部30bからの光の走査によって形成される配光パターンである。第1配光パターン201は、車両100の上下方向において、第2配光パターン203と部分的に重なる。例えば、第1配光パターン201及び第2配光パターン203が車両100の左右方向に横長な長方形状である場合、第1配光パターン201の上端部が第2配光パターン203の下端部と重なる。ここでは、反射体39は、第1配光パターン201が車両100の上下方向において第2配光パターン203と部分的に重なるように、複数の光源部30からの光を反射する。なお、
図15では、第1配光パターン201及び第2配光パターン203を長方形状で示しているが、第1配光パターン201及び第2配光パターン203の形状は長方形状に限定されない。
【0106】
図16及び
図17は、第1配光パターン201及び第2配光パターン203の形成を説明する図である。
【0107】
図16は、本実施形態の複数の光源部30の発光素子35-1~35-7のレイアウトを示す図である。上記したように、光源部30aは5個の発光素子35-1~35-5を備え、光源部30bは2個の発光素子35-6~35-7を備える。
【0108】
図17は、第1配光パターン201及び第2配光パターン203を形成するためにそれぞれの発光素子35-1~35-7からの光が反射体39によって走査されるときに、それぞれの光の集光スポットが通過する走査領域SR1~SR7を示す図である。本実施形態の走査領域SRiは、i番目(1≦i≦7)の発光素子35-iからの光によって形成される集光スポットが通過する領域を示す。走査領域SR1~SR5の集合が第1配光パターン201に相当し、走査領域SR6~SR7の集合が第2配光パターン203に相当する。
【0109】
本実施形態の走査領域SR1~SR5の並び方は、第1実施形態の走査領域SR1~SR5と同じであるため、説明を省略する。
図17では、図示の明瞭化のため、
図4に示す領域CA,LS1~LS4,RS1~RS4の符号の記載を省略している。
【0110】
走査領域SR6~SR7は、車両100の左右方向に横長な長方形状とされ、概ね同じ大きさとされる。走査領域SR6は、走査領域SR1よりも広くされている。走査領域SR6~SR7の上下方向の位置は概ね同じであり、左右方向の位置は異なっている。従って、走査領域SR6~SR7のそれぞれの一部が他の走査領域の一部と重なるように、走査領域SR6~SR7は互いに左右方向にずれて配置されている。重なっている領域は垂直線Vに重なると共に、水平線Hよりも上側に位置する。また、走査領域SR6~SR7のそれぞれの下端部は、走査領域SR1~SR5それぞれの上端部の一部に重なっている。重なっている領域は、水平線Hよりも上側に位置する。
【0111】
図18は、走査領域SRi内における発光素子35-iの制御を説明する図である。
図18は、走査領域SRiを示す図である。
図18に示す走査領域SRiのうち、ハッチングを付していない範囲は非照射領域211を示し、ハッチングを付した範囲は照射領域213を示す。非照射領域211は、第1配光パターン201及び第2配光パターン203において光が照射されない領域、あるいは第1配光パターン201及び第2配光パターン203において再帰反射物体からの反射光によって車両100の運転者にグレアを与えない程度の少ない光量の光が照射される領域を示す。照射領域213は、第1配光パターン201及び第2配光パターン203において光が照射される領域を示す。照射領域213における光量は、非照射領域211における光量よりも多くされる。発光素子35-iの点消灯状態を示す本実施形態のタイムチャートは、
図6に示すタイムチャートと同じとされる。
【0112】
照射領域213では、制御部60は、集光スポットSCiが照射領域213を通過する期間、その集光スポットSCiに対応する発光素子35-iから出射される光の光量が第1所定値となるように、発光素子35-iの輝度を制御する。第1所定値は、照射領域213において発光素子35-iから出射される光の光量の値を示す。また、第1所定値は、例えば、発光素子35-iから出射される光の光量の最大値、または最大値の80%等である。
【0113】
また、非照射領域211では、制御部60は、集光スポットSCiが非照射領域211を通過する期間、その集光スポットSCiに対応する発光素子35-iから出射される光の光量が第2所定値となるように、発光素子35-iの輝度を制御する。具体的には、
図6及び
図18に示すように、制御部60は、集光スポットSCiの右端REが非照射領域211に達するタイミングtAにおいて発光素子35-iから出射される光の光量を第2所定値に制御し、集光スポットSCiの左端LEが非照射領域211の右端に達するタイミングtBにおいて発光素子35-iから出射される光の光量を第1所定値に制御する。第2所定値は、非照射領域211において発光素子35-iから出射される光の光量の値を示す。本実施形態の第2所定値は、第1所定値よりも少ない値である。第2所定値は、例えば、光量の最大値の30%、またはゼロ等である。第2所定値がゼロの場合、発光素子35-iからの光は消灯する。
【0114】
次に、本実施形態における車両用前照灯10の動作について説明する。当該動作の制御フローチャートは、第1実施形態の制御フローチャートと同様にステップSP1~ステップSP5を含む。本実施形態のステップSP1~ステップSP3は第1実施形態のステップSP1~ステップSP3と同じであるため、説明を省略する。本実施形態のステップSP4~ステップSP5は、第1実施形態のステップSP4~ステップSP5と異なり、以下に説明する。なお、本実施形態の対象物は、車両100の左斜め前方に位置する再帰反射物体としている。また、以下において、再帰反射物体と車両100との間の距離を、単に距離と呼ぶ場合がある。
【0115】
(ステップS4)
本ステップでは、実施形態1のステップSP4と同様に、再帰反射物体が検出装置110によって検出されると共に、距離が所定の距離以上であることとなる、或いは検出装置110によって当該再帰反射物体が検出されないこととなる。この場合、制御部60は複数の光源部30の駆動を制御すると共に駆動部41の駆動を制御する。
図19は、本ステップにおける集光スポットSC1~SC7の走査を説明する図である。
図20は、距離が所定の距離以上である場合における第1配光パターン201及び第2配光パターン203を示す図である。
図20に示す第1配光パターン201及び第2配光パターン203は、
図15に示す第1配光パターン201及び第2配光パターン203と同じである。
【0116】
ここではまず、
図19を参照して、本ステップにおける集光スポットSC1~SC7の走査を説明する。
図19では、見やすいように、複数の走査領域SR1~SR7をずらして並べている。集光スポットSC1~SC7は、走査領域SR1~SR7を図中左から右に走査する。距離が所定の距離以上である及び検出装置110によって再帰反射物体が検出されない場合、制御部60は、走査領域SR1~SR7のそれぞれを照射領域213として設定する。次に、制御部60は、集光スポットSC1~SC7に対応する発光素子35-1~35-7から出射される光の光量が第1所定値となるように、発光素子35-1~35-7を制御する。
【0117】
上記のように制御される発光素子35-1~35-7が光を出射すると、光は回転する反射体39によって投影レンズ43に向かって反射される。また、光は、投影レンズ43を透過して車両100の前方に出射すると共に車両100の左右方向に走査する。この光の走査によって、
図20に示すように車両100の前方に第1配光パターン201及び第2配光パターン203が形成される。
図20に示すように、再帰反射物体401が道路の傍らに設置される道路標識である場合、当該再帰反射物体401は例えば道路の傍らから立設される金属の支柱である支持部403によって支持される。
図20においてHは水平線を示し、第1配光パターン201及び第2配光パターン203が太線で示され、第1配光パターン201及び第2配光パターン203は、車両100から例えば25m離れた鉛直面上に形成される配光パターンとされている。第1配光パターン201は、第2配光パターン203と車両100の上下方向において部分的に重なる。
【0118】
(ステップS5)
本ステップでは、再帰反射物体が検出装置110によって検出されると共に、距離が所定の距離未満であることとなる。この場合、制御部60は複数の光源部30の駆動を制御すると共に駆動部41の駆動を制御する。
図21は、本ステップにおける集光スポットSC1~SC7の走査を説明する図である。
図22は、距離が所定の距離未満である場合における第1配光パターン201及び第2配光パターン203を示す図である。ここでは、第1配光パターン201の上端部は第2配光パターン203の下端部と車両100の上下方向において部分的に重なり、再帰反射物体は第1配光パターン201及び第2配光パターン203のうちの一方である第2配光パターン203に重なるものとして説明する。
【0119】
本ステップでは、制御部60は、判定部50からの信号に基づいて、第2配光パターン203において再帰反射物体が重なる所定領域ARを検出し、所定領域ARを非照射領域211として設定する。当該信号は、再帰反射物体の存在位置といった対象物の状態を示す。次に、制御部60は、第1配光パターン201を形成する光を出射する光源部30aの駆動及び第2配光パターン203を形成する光を出射する光源部30bの駆動を制御する。本ステップにおける、光源部30a及び光源部30bの駆動ついて、以下に説明する。
【0120】
ここではまず、
図21を参照して、本ステップにおける集光スポットSC1~SC7の走査を説明する。
図21では、
図19と同様に、見やすいように、複数の走査領域SR1~SR7をずらして並べている。集光スポットSC1~SC7は、走査領域SR1~SR7を図中左から右に走査する。
【0121】
まず、光源部30aの駆動について説明する。制御部60は、走査領域SR1~SR5のそれぞれを照射領域213として設定する。次に、制御部60は、集光スポットSC1~SC5に対応する発光素子35-1~35-5から出射される光の光量が第1所定値となるように、発光素子35-1~35-5を制御する。
【0122】
次に、光源部30bの駆動について説明する。制御部60は、走査領域SR6~SR7のそれぞれの一部に非照射領域211を設定し、走査領域SR6~SR7のそれぞれの他の一部に照射領域213を設定する。制御部60は、集光スポットSC6,SC7が照射領域213を通過する期間、集光スポットSC6,SC7に対応する発光素子35-6,35-7から出射される光の光量が第1所定値となるように、発光素子35-6,35-7を制御する。また、制御部60は、集光スポットSC6,SC7が非照射領域211を通過する期間、集光スポットSC6,SC7に対応する発光素子35-6,35-7から出射される光の光量が第2所定値となるように、発光素子35-6,35-7を制御する。
【0123】
上記のように制御される発光素子35-1~35-7が光を出射すると、光は回転する反射体39によって投影レンズ43に向かって反射される。また、光は、投影レンズ43を透過して車両100の前方に出射すると共に車両100の左右方向に走査し、車両100の前方に第1配光パターン201及び第2配光パターン203を形成する。
【0124】
本ステップでは、判定部50によって再帰反射物体401が所定の要件を満たす状態と判定される場合において、判定部50によって再帰反射物体401が所定の要件を満たしていない状態と判定される場合に比べて、第1配光パターン201及び第2配光パターン203の一方である第2配光パターン203において再帰反射物体401と重なる所定領域ARに照射される光の光量が少なくなる。これにより、第2配光パターン203は、ステップS4における第2配光パターン203と比べて再帰反射物体401において光量が少ない状態で、車両100の前方に投影される。
【0125】
次に、第2所定値の制御の一例について、数値を用いて説明する。この第2所定値は、所定領域ARに照射される光の光量の値である。ここで用いられる数値は、光量の大小関係をイメージし易いように便宜的に記載されるものであり、所定領域ARに照射される光の光量の実際の数値を示すものではない。
【0126】
ここでは、所定領域ARに照射される光を出射する光源部30bの発光素子35-6から出射される光を第1光とし、第1光の光量を第1光量として説明する。また、光源部30bの発光素子35-7から出射される光を第2光とし、第2光の光量を第2光量として説明する。
【0127】
距離が所定の距離以上である場合では、制御部60は、例えば、第1光量が「100」となり、第2光量が「100」となるように、光源部30bを制御する。この場合、第1光量及び第2光量の総和は「200」となる。
【0128】
一方、距離が所定の距離未満である場合では、制御部60は、第1光量が「80」となり、第2光量が「80」となるように、光源部30bを制御する。この場合、第1光量及び第2光量の総和は「160」となる。
【0129】
次に、距離が所定の距離以上である場合における第1光量及び第2光量の総和「200」と、距離が所定の距離未満である場合における第1光量及び第2光量の総和「160」との比較について説明する。それぞれの総和を比較すると、距離が所定の距離未満である場合において、距離が所定の距離以上である場合よりも第1光量及び第2光量の総和が少なくなるように、制御部60は光源部30bを制御することとなる。次に、距離が所定の距離以上である場合における第1光量「100」及び第2光量「100」と、距離が所定の距離未満である場合における第1光量「80」及び第2光量「80」との比較について説明する。それぞれを比較すると、距離が所定の距離未満である場合において、距離が所定の距離以上である場合よりも第1光量及び第2光量のそれぞれが少なくなるように、制御部60は光源部30bを制御することとなる。
【0130】
なお、本実施形態では、距離が所定の距離未満である場合において、距離が所定の距離以上である場合よりも第1光量及び第2光量の総和が上記したように少なくなるのであればよい。制御部60は、例えば、第1光量と第2光量との一方が「80」となり、他方が「100」となるように、光源部30bを制御してもよい。ここで、距離が所定の距離以上である場合における第1光量「100」及び第2光量「100」と、距離が所定の距離未満である場合における第1光量「80」及び第2光量「100」との比較について説明する。それぞれを比較すると、距離が所定の距離未満である場合において、距離が所定の距離以上である場合よりも、第1光量は少なくなるように、及び、第2光量が同じとなるように、制御部60は光源部30bを制御することとなる。
【0131】
上記したように第1光量及び第2光量の総和が制御されると、処理はステップS1に戻る。
【0132】
ところで、自車に備えられる車両用前照灯からの光が標識等の再帰反射物体を照射する場合、光の一部は、反射光として再帰反射物体から自車に向かい、自車の運転者にグレアを与えてしまうことがある。これにより、運転者の視認性が低下してしまう懸念が生じる。
【0133】
そこで、本実施形態の車両用前照灯10は、複数の光源部30と、周期運動を繰り返すことによって複数の光源部30からの光を反射して光を車両100の左右方向に走査する反射体39と、複数の光源部30を制御する制御部60とを備える。反射体39は、複数の光源部30のうちの一部の光源部30aからの光の走査によって形成される第1配光パターン201と複数の光源部30のうちの他の一部の光源部30bからの光の走査によって形成される第2配光パターン203とが車両100の上下方向において部分的に重なるように、複数の光源部30からの光を反射する。制御部60は、検出装置110から車両100の前方に位置する再帰反射物体を検出することを示す信号が入力する場合において、検出装置110から再帰反射物体を検出しないことを示す信号が入力する場合に比べて、第1配光パターン201及び第2配光パターン203の一方である第2配光パターン203において再帰反射物体と重なる所定領域ARに照射される光の光量が少なくなるように、複数の光源部30を制御する。
【0134】
再帰反射物体が光を反射する場合、再帰反射物体から自車への反射光の強度は、光源部30から再帰反射物体への光の強度が強いほど、強くなる傾向がある。ここで、検出装置110から再帰反射物体を検出することを示す信号が制御部60に入力する場合と、検出装置110から再帰反射物体を検出しないことを示す信号が制御部60に入力する場合とを比較する。再帰反射物体を検出することを示す信号が制御部60に入力する場合では、再帰反射物体を検出しないことを示す信号が制御部60に入力する場合と比べて、第1配光パターン201及び第2配光パターン203の一方である第2配光パターン203において再帰反射物体と重なる所定領域ARに照射される光の光量は少なくなる。当該光は、第2配光パターン203を形成する光の一部である。当該光の光量が少なくなると、当該光量が少なくならない場合に比べて、再帰反射物体への光の強度が抑制され、再帰反射物体からの反射光の強度が抑制され得る。これにより反射光が自車に進行したとしても、自車の運転者へのグレアの付与が抑制され得る。従って、この車両用前照灯10によれば、運転者の視認性の低下が抑制され得る。
【0135】
なお、本実施形態の車両用前照灯10は、検出装置110から再帰反射物体の状態を示す信号が入力する場合において、再帰反射物体からの反射光の光量が所定値以上となる所定の要件を再帰反射物体が満たす状態か否かを判定する判定部50をさらに備え、制御部60は、判定部50によって再帰反射物体が所定の要件を満たす状態と判定される場合において、判定部50によって再帰反射物体が所定の要件を満たす状態ではないと判定される場合に比べて、第1配光パターン201及び第2配光パターン203の一方である第2配光パターン203において再帰反射物体と重なる所定領域ARに照射される光の光量が少なくなるように、複数の光源部30を制御してもよい。この場合においても、上記のように、再帰反射物体への光の強度が抑制され、再帰反射物体からの反射光の強度が抑制され得る。これにより反射光が自車に進行したとしても、自車の運転者へのグレアの付与が抑制され得る。従って、この車両用前照灯10によれば、運転者の視認性の低下が抑制され得る。
【0136】
また、本実施形態の車両用前照灯10では、複数の光源部30のうちの所定領域ARに照射される光を出射する光源部30bは、複数の発光素子35を有する。判定部50によって再帰反射物体が所定の要件を満たす状態と判定される場合において、判定部50によって再帰反射物体が所定の要件を満たす状態ではないと判定される場合に比べて、複数の発光素子35のうちの一部の発光素子35-6からの光の光量及び複数の発光素子35のうちの他の一部の発光素子35-7からの光の光量のそれぞれが少なくなるように、制御部60は光源部30bを制御する。
【0137】
この車両用前照灯10によれば、再帰反射物体が所定の要件を満たしていない状態よりも再帰反射物体が所定の要件を満たす状態において、再帰反射物体への光の照射が抑制され、反射光の強度がさらに抑制され得る。従って、この車両用前照灯10によれば、運転者の視認性の低下がより抑制され得る。
【0138】
また、本実施形態の車両用前照灯10では、判定部50によって再帰反射物体が所定の要件を満たす状態と判定される場合において、判定部50によって再帰反射物体が所定の要件を満たす状態ではないと判定される場合に比べて、複数の発光素子35のうちの一部の発光素子35-6からの光の光量が少なくなるように、及び、複数の発光素子35のうちの他の一部の発光素子35-7からの光の光量が同じとなるように、制御部60は光源部30を制御してもよい。
【0139】
再帰反射物体が所定の要件を満たす状態である場合と、再帰反射物体が所定の要件を満たす状態ではない場合とにおいて、他の一部の発光素子35-7からの光の光量が同じだと、制御部60は、どちらの場合であっても発光素子35-7に同じ制御を行うことができる。例えば、再帰反射物体が所定の要件を満たす状態ではない場合から再帰反射物体が所定の要件を満たす状態である場合に切り替わっても、制御部60は、発光素子35-7への電力の供給量を変えることが不要になり得る。従って、制御部60は、再帰反射物体が所定の要件を満たす状態である場合と再帰反射物体が所定の要件を満たす状態ではない場合とで発光素子35-7からの光の光量が変わる場合に比べて、発光素子35-7を制御し易い。
【0140】
以上、本発明について、上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0141】
上記それぞれの実施形態では、ステップS1~ステップS5を含むフローチャートを例に説明したが、フローチャートは特に限定されるものではない。
【0142】
反射ブレード39aの枚数は、特に限定されない。
【0143】
反射体39は、周期運動を繰り返すことによって複数の光源部30からの光を投影レンズ43側へ反射して、当該光を車両100の左右方向に走査すればよい。反射体39は、例えば、反射面に平行な軸を中心に揺動可能なミラーであってもよい。また、例えば、反射体39はMEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラーであり、駆動部41はアクチュエータである共振器であってもよい。
【0144】
各実施形態の光源部30は、反射体39に向けて光を照射する構成となっていればよい。また、第2実施形態の光源部30は、第1実施形態の光源部30と同様に、所定の方向に沿って一列に並んで配置される複数の発光素子とは別の少なくとも1つの発光素子を更に備えていてもよい。この場合、光源部における複数の発光素子は、所定の方向に2つ以上の列を形成するように並んで配置されてもよい。
【0145】
第2実施形態の光源部30bにおいて、発光素子35-6から出射される光を第2光とし、発光素子35-7から出射される光を第1光としてもよい。
【0146】
光源部30bが1つの発光素子のみを備える構成の場合、判定部50によって再帰反射物体が所定の要件を満たす状態と判定される場合において、判定部50によって再帰反射物体が所定の要件を満たす状態ではないと判定される場合に比べて、1つの発光素子35からの光の光量が少なくなるように、制御部60は光源部30bを制御すればよい。
【0147】
第2実施形態のステップS5において、制御部60は、集光スポットSC6,SC7が非照射領域211を通過する期間、集光スポットSC6,SC7に対応する発光素子35-6,35-7から出射される光の光量がゼロとなるように、光源部30bを制御してもよい。または、制御部60は、発光素子35-6及び発光素子35-7の一方から出射される光の光量がゼロとなり、発光素子35-6及び発光素子35-7の他方から出射される光の光量がゼロ以外の第2所定値となるように、光源部30bを制御してもよい。
【0148】
第2実施形態のステップS5において、再帰反射物体と車両100との間の距離が所定の距離未満である場合において、再帰反射物体と車両100との間の距離が所定の距離以上である場合よりも第2配光パターン203において再帰反射物体と重なる所定領域ARに照射される光の光量の総和が少なくなればよい。光量の総和が少なくなれば、例えば、制御部60は、発光素子35-6及び発光素子35-7の一方から出射される光の光量が第2所定値となり、発光素子35-6及び発光素子35-7の他方から出射される光の光量が第1所定値よりも多い所定値となるように、光源部30bを制御してもよい。または、制御部60は、例えば、発光素子35-6及び発光素子35-7の一方から出射される光の光量が第2所定値となり、発光素子35-6及び発光素子35-7の他方から出射される光の光量が第2所定値よりも少ない第3所定値となるように、光源部30bを制御してもよい。
【0149】
第2実施形態のステップS5において、制御部60は、光の走査期間中において、発光素子35-6,35-7から出射される光の光量が常に第2所定値となるように、発光素子35-6,35-7を制御する必要はない。例えば、制御部は、走査期間のある1走査期間において光量が常に第2所定値となるように、発光素子35-6,35-7を制御してもよい。または、制御部60は、走査期間のある所定の走査期間において、光量が常に第2所定値となるように、発光素子35-6,35-7を制御してもよい。
【0150】
また、第2実施形態のステップS5において、制御部60は、発光素子35-1~35-5から出射される光の光量が第2所定値となるように、光源部30aを制御してもよい。または、制御部60は、発光素子35-1~35-5から出射される光の光量が第1所定値よりも多い所定値となるように、光源部30aを制御してもよい。この場合、例えば、第1所定値は光量の最大値の80%であり、第1所定値よりも多い所定値は光量の最大値である。
【0151】
第2実施形態では、制御部60は、検出装置110からの情報に基づいて、第2配光パターン203において再帰反射物体が重なる所定領域ARを検出し、所定領域ARを非照射領域211に設定しているが、これに限定される必要はない。例えば、制御部60は、検出装置110からの情報に基づいて、第2配光パターン203において人間の顔が重なる所定領域ARを検出し、所定領域ARを非照射領域211に設定してもよい。
【0152】
第2実施形態では、所定領域ARは第2配光パターン203に重なるものとして説明しているが、所定領域ARが第1配光パターン201に重なっていても、所定領域ARが第2配光パターン203に重なった場合と同様に、制御部60は光源部30bを制御すればよい。
【0153】
灯具20aの構成は、灯具20bの構成と同じとされているが、灯具20bの構成と異なってもよい。
【0154】
撮影画像は、動画像及び静止画像の少なくとも一方であればよい。
【0155】
検出装置110は、カメラによって撮影される撮影画像から対象物の存在、対象物の存在位置、対象物の種類等を検出するが、これに限定される必要はない。検出装置110は、対象物を検出可能なミリ波レーダやライダー等を搭載している場合、ミリ波レーダやライダー等から入力される信号を基に、対象物の存在、対象物の存在位置、対象物の種類等を検出してもよい。また、検出装置110は、カメラによって撮影される撮影画像及びミリ波レーダやライダー等から入力される信号を基に、これらを検出してもよい。また、算出部は、ミリ波レーダ等から入力される信号を基に、再帰反射物体と車両100との間の距離を算出してもよい。また、検出装置110は、対象物としての再帰反射物体と人間とを識別して検出するものでなくてもよく、再帰反射物体及び人間の一方を検出するものであってもよい。また、対象物としての再帰反射物体や人間を示す信号は、判定部50と別の構成、例えば検出装置110から制御部60に入力されてもよい。
【0156】
また、ミリ波レーダは、ミリ波を対象物に送信して対象物に当たって反射される反射波を受信する。ミリ波レーダは、受信結果を示す信号を算出部に出力する。受信結果は、対象物の状態に含まれてもよい。算出部は、ミリ波レーダから入力される受信結果を基に、車両100と対象物との間の距離を算出してもよい。
【0157】
また、検出装置110は、車両100の前方を撮影するステレオカメラを備えてもよい。ステレオカメラは、2つのカメラを備えており、それぞれのカメラによって撮影される撮影画像を算出部に出力する。撮影画像は、対象物の状態に含まれてもよい。算出部は、2つ撮影画像において互いに対応する画素である対応画素における視差を求めるステレオマッチングを基に車両100と対象物との間の距離を算出してもよい。従って、算出部は、ステレオカメラからの撮影画像を基に車両100と対象物との間の距離を算出することとなる。
【0158】
また、検出装置110の検出部は、画像処理部によって画像処理される撮影画像から撮影画像における対象物の大きさの時間的な変化量を検出してもよい。変化量は、対象物の状態を示す信号に含まれるものである。時間が経過して対象物から離れている車両100が対象物に近づいた場合には再帰反射物体401の大きさの変化量は小さく、時間が経過して車両が前進して対象物に近い車両100が対象物にさらに近づいた場合には対象物の大きさの変化量はより大きくなる。対象物の大きさとは、例えば、対象物の面積や、対象物の幅などを示す。検出装置110は、車両100の前方に位置する対象物を検出した場合に、撮影画像における対象物の割合及び上記変化量といった対象物の状態を示す信号を算出部に出力する。算出部は、上記割合及び上記変化量を基に、距離を算出してもよい。
【0159】
また、一対の灯具20から出射する光の光量が変わらない状態で、対象物である例えば再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離未満の状態となると、距離が所定の距離以上の状態と比べて、再帰反射物体401から自車への反射光の強度は強くなる傾向がある。ところで、本実施形態の車両用前照灯10では、所定の要件を満たす状態は、対象物である例えば再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離未満の状態である。当該距離が所定の距離未満の状態である場合、制御部60は第1実施形態または第2実施形態で説明したように一対の灯具20を制御する。従って、距離が所定の距離未満の状態となると、距離が所定の距離以上の状態と比べて、再帰反射物体401から自車へ進行する反射光の強度が抑制され得、グレアの付与が抑制され得、運転者の視認性の低下が抑制され得る。
【0160】
所定の要件は、特に限定されるものではなく、距離でなくても上記した対象物の見た目上の大きさなどであってもよい。所定の要件が対象物の見た目上の大きさである場合、所定の要件を満たす状態は、対象物の見た目上の大きさが所定値以上の状態であることを示す。この場合、検出装置110の検出部は、上記のように、画像処理部によって画像処理される撮影画像から撮影画像における対象物の大きさを検出する。判定部50は、対象物の大きさを基に、対象物が所定の要件を満たす状態か否かを判定する。所定値は、閾値として記録部70に記録されており、日中や夜間といった車両100の走行状況などに応じて変更されてもよい。対象物と車両100との間の距離が所定の距離以上であっても、対象物の見た目上大きさが所定値以上である場合、対象物の見た目上の大きさが所定値未満の場合に比べて、車両100からの光の一部は、反射光として対象物から車両100に向かい、自車の運転者にグレアを与えてしまう懸念がある。上記のように、所定の要件を満たす状態が対象物の見た目上の大きさが所定値以上の状態である場合、制御部60は上記のように一対の灯具20を制御する。従って、対象物と車両100との間の距離が所定の距離以上で、対象物の見た目上の大きさが所定値以上である場合においても、対象物から自車へ進行する反射光の強度が抑制され得、グレアの付与が抑制され得、運転者の視認性の低下が抑制され得る。上記において、対象物の見た目上の大きさを用いて説明したが、所定の要件は、撮影画像における対象物の割合であってもよい。所定の要件が当該割合である場合、所定の要件を満たす状態は、当該割合が所定値以上の状態である。
【0161】
上記において、所定の要件を満たす状態は、対象物の見た目上の大きさが所定値以上の状態としたが、これに限定される必要はない。例えば、所定の要件を満たす状態は、実施形態で説明した対象物と車両100との間の距離が所定の距離未満の状態、対象物の見た目上の大きさが所定値以上である状態、及び割合が所定値以上の状態である状態とのいずれかの状態を組み合わせた状態であってもよい。
【0162】
検出装置110の構成は、車両用前照灯10の構成に含まれてもよい。この場合には、検出装置110のカメラは、灯具20の筐体の内部に配置されてもよい。
【0163】
制御部60は、再帰反射物体が所定の要件を満たす状態ではなくなると、再帰反射物体が検出されなくなった領域を光量非変化領域313や照射領域213に設定してもよい。
【0164】
以上説明したように、本発明の第1実施形態によれば、運転し易くし得る車両用前照灯が提供され、当該車両用前照灯は自動車等の車両用前照灯の分野等において利用可能である。また、本発明の第2実施形態によれば、運転者の視認性の低下を抑制することができる車両用前照灯が提供され、当該車両用前照灯は自動車等の車両用前照灯の分野等において利用可能である。