(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】電子制御モジュール
(51)【国際特許分類】
H05K 1/14 20060101AFI20240822BHJP
H01L 25/00 20060101ALI20240822BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20240822BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20240822BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240822BHJP
【FI】
H05K1/14 E
H01L25/00 A
H01L25/04 C
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2022516267
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(86)【国際出願番号】 IB2020000405
(87)【国際公開番号】W WO2021214504
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-10-21
【審判番号】
【審判請求日】2024-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉原 裕宣
【合議体】
【審判長】高野 洋
【審判官】土居 仁士
【審判官】馬場 慎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-81327(JP,A)
【文献】特開2018-136912(JP,A)
【文献】特開2019-106432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/14
H01L 25/00
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に電子部品が載置される第1基板と、
前記第1基板の上面側に間隔をあけて配置され、上面に電子部品が載置される第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に設けられ、前記第1基板と前記第2基板との間に閉空間を形成する筒状のブラケットと、を有
し、
前記第1基板に載置される前記電子部品は、コイル部品を含み、
前記第2基板の上面及び前記第2基板に載置された電子部品の表面は、絶縁性コーティング剤によってコーティングされ、
前記コイル部品は、コーティングされていない電子制御モジュール。
【請求項2】
請求項
1に記載の電子制御モジュールにおいて、
前記絶縁性コーティング剤によるコーティング部分と前記電子制御モジュールを収容する筐体との間で熱伝導をするプレートをさらに備える電子制御モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
基板を積層した電子制御モジュールが従来から知られている。例えば、松本栄伸他,ハイブリッド車向けパワーコントロールユニット,ケーヒン技報,2016.12.26,Vol.5,P.32-P.35には、パワーモジュール上に、ゲートドライバ基板、モータを駆動するPCU(Power Control Unit)を制御するECU(エンジンコントロールユニット)を積層した電子制御モジュールが開示されている。
【発明の概要】
【0003】
上記文献に開示されている電子制御モジュールでは、ECUをゲートドライバ基板に積層して固定する際に、ねじなどからコンタミが発生することがある。このようなコンタミが、例えば、ゲートドライバ基板に配置された端子間間隔の狭い電子部品などに付着すると、端子間でショート不良を発生するおそれがある。
【0004】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、基板が積層される電子制御モジュールにおける基板上へのコンタミの付着を抑制することを目的とする。
【0005】
本発明のある態様によれば、電子制御モジュールは、上面に電子部品が載置される第1基板と、第1基板の上面側に間隔をあけて配置され、上面に電子部品が載置される第2基板と、第1基板と第2基板との間に設けられ、第1基板と第2基板との間に閉空間を形成する筒状のブラケットと、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本実施形態の電子制御モジュールの外観斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の電子制御モジュールの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の電子制御モジュールにおける閉空間の内部を示す図である。
【
図4】
図4は、本実施形態の電子制御モジュールを筐体に取り付けた図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0008】
図1は、本実施形態の電子制御モジュール100の外観斜視図である。
図2は、本実施形態の電子制御モジュール100の分解斜視図である。
図3は、本実施形態の電子制御モジュール100における閉空間Sの内部を示す図である。
図4は、本実施形態の電子制御モジュール100を筐体1に取り付けた図である。なお、以下の説明における上下とは、天地を意味するものではなく、図面における上下を意味するものである。
【0009】
本実施形態の電子制御モジュール100は、例えば、ハイブリッド車両のパワーコントロールユニットに用いられる。
図1及び
図2に示すように、電子制御モジュール100は、基体としてのパワーモジュール10と、パワーモジュール10上に配置され、上面20aに電子部品21が載置される第1基板としてのドライバ基板20と、ドライバ基板20の上面20a側に間隔をあけて配置され、上面30aに電子部品31が載置される第2基板としてのモータ制御基板30と、ドライバ基板20とモータ制御基板30との間に設けられる筒状のブラケット40と、を備える。
【0010】
電子制御モジュール100は、金属製の筐体1の底面にねじ2によって固定され、筐体1内に収容される(
図4参照)。
【0011】
パワーモジュール10は、車両に搭載されたバッテリから供給される直流電力を多相交流電力に変換するインバータ(図示せず)を備える。パワーモジュール10は、インバータによって変換された多相交流電力をモータジェネレータ(図示せず)に供給する。
【0012】
ドライバ基板20は、パワーモジュール10のスイッチング動作を制御する。
図2及び
図3に示すように、ドライバ基板20の上面20aには、複数の電子部品21(トランス、ダイオード、コンデンサ、チップ抵抗など)が配置される。これら電子部品21によってスイッチング回路が構成される。
【0013】
ドライバ基板20の対向する二辺の両端近傍には、電子制御モジュール100を筐体1に固定するねじ2及びねじ2を締結するための工具とドライバ基板20との接触を防止するための切り欠き20bが設けられる。
【0014】
ドライバ基板20には、さらに、ドライバ基板20をパワーモジュール10に固定するねじ2が挿通される貫通孔20cと、ブラケット40に設けられた位置決め突起40d(
図2参照)が挿入される貫通孔20dと、が設けられる。
【0015】
モータ制御基板30は、ドライバ基板20に設けられたスイッチング回路の動作を車両運転状態に応じて制御する。モータ制御基板30の上面30aには、複数の電子部品31(CPU、電源IC、ダイオード、コンデンサ、チップ抵抗など)が配置される。これら電子部品31によってドライバ基板20に設けられたスイッチング回路におけるスイッチング動作の周波数を制御する制御回路が構成される。
【0016】
モータ制御基板30の対向する二辺の両端近傍には、電子制御モジュール100を筐体1に固定するねじ2及びねじ2を締結するための工具とモータ制御基板30との接触を防止するための切り欠き30bが設けられる。
【0017】
モータ制御基板30には、さらに、モータ制御基板30をブラケット40に固定するねじ2が挿通される貫通孔30cと、ブラケット40に設けられた位置決め突起40dが挿入される貫通孔30dと、が設けられる。
【0018】
ブラケット40は、樹脂材料(例えば、PPS樹脂(ポリフェニレンサルファイド樹脂)、PBT樹脂)によって形成される。ブラケット40は、ドライバ基板20の外縁部の形状に沿った筒状の枠体として形成される。
【0019】
ブラケット40の対向する二辺の両端近傍には、電子制御モジュール100を筐体1に固定するねじ2及びねじ2を締結するための工具とドライバ基板20上に配置された電子部品21等との接触を防止するための凹部40bが設けられる。凹部40bは、周壁40aが内側に窪むように形成される。
【0020】
ブラケット40には、さらに、モータ制御基板30をブラケット40に固定するねじ2がねじ込まれる受け部40cが設けられる。受け部40cは、凹部40bの内側に隣接するように設けられている。
【0021】
次に、電子制御モジュール100の組み立てについて説明する。
【0022】
パワーモジュール10上にドライバ基板20を載置し、貫通孔20cに挿通したねじ2をパワーモジュール10の上面に設けられた突起部10bにねじ込む。これにより、パワーモジュール10上にドライバ基板20が固定される。
【0023】
次に、ドライバ基板20上に、位置決め突起40dを貫通孔20dに挿入するようにしてブラケット40を載置する。
【0024】
そして、モータ制御基板30をブラケット40に設けられた位置決め突起40dを貫通孔30dに挿入するようにしてブラケット40上に載置する。その後、モータ制御基板30の貫通孔30cに挿通したねじ2を、ブラケット40の受け部40b部にねじ込むことで、電子制御モジュール100が完成する。
【0025】
このようにして組み立てられた電子制御モジュール100は、パワーモジュール10の貫通孔10cに挿通したねじを筐体1にねじ込むことで、筐体1に固定される。このとき、ブラケット40に凹部40bが、ねじを締結する工具がドライバ基板20に接触することを防止するガードとして機能する。これにより、ドライバ基板20上の電子部品21が損傷することを防止できる。
【0026】
電子制御モジュール100では、ドライバ基板20、モータ制御基板30、及びブラケット40の周壁40aによって閉空間Sが形成される。電子制御モジュール100では、
図3などに示すように、ドライバ基板20上に配置された電子部品21はブラケット40の周壁40aの内側、つまり、閉空間S内に配置される。
【0027】
例えば、電子部品21,31自体の端子間隔が狭い場合には、組み立て作業のねじ止め等で発生した金属コンタミの付着などによって、ショート不良が発生するおそれがある。このため、ドライバ基板20及びモータ制御基板30の上面20a,30a及びドライバ基板20及びモータ制御基板30に載置された電子部品21,31の表面を、絶縁性コーティング剤によってコーティングすることが考えられる。
【0028】
しかしながら、例えば、トランスなどのコイル部品21Aは、一般的に表面のコーティングを行うことができない。理由としては、表面をコーティングした際にコーティング剤がコイル部品21Aの巻線部21aのワイヤ間に侵入すると、侵入したコーティング剤が、周辺温度の変化に伴って熱膨張及び熱収縮を繰り返してワイヤを断線させるおそれがあるからである。
【0029】
そこで、本実施形態では、コイル部品21Aに対してコーティングはせずに、閉空間S内に配置する。さらに、ドライバ基板20上に配置された電子部品21の全てを閉空間S内に配置する。このように電子部品21を閉空間S内に配置することにより、ねじ止め作業などで発生したコンタミが電子部品21やドライバ基板20上に付着することを防止できる。よって、コーティングできない部品を含む基板においてもショート不良の発生を防止できる。
【0030】
なお、モータ制御基板30には、トランスなどのコイル部品21Aが載置されていないため、モータ制御基板30の上面30a及びモータ制御基板30に載置された電子部品31の表面は、絶縁性コーティング剤によってコーティングすることができる。
【0031】
ところで、例えば、外気温が高い環境で、エンジンが高回転で動作している場合には、電子制御モジュール100が設けられているエンジンルーム内が高温になる。この状態で、例えば、モータ制御基板30に設けられたCPUなどが高頻度で演算を行っていると、発熱量が大きくなり、熱よって電子部品31等に不具合が生じるおそれがある。
【0032】
そこで、上述のようにモータ制御基板30に対してコーティングを施す際には、高熱伝導率を有するコーティング剤(例えば、エポキシ系コーティング剤)を用いる。さらに、
図4に示すように、コーティング部分Cと筐体1との間に熱伝導率の優れたプレート50を設ける。具体的には、プレート50は、一端がコーティング部分Cに接触し、他端が筐体1の内壁に接触するようにして設けられえる。これにより、モータ制御基板30上において発生した熱をプレート50を通じて筐体1に逃がすことができる。なお、プレート50は、例えば、アルミ、銅、銀などの熱伝導性に優れた金属、あるいはPPS、PBT(ポリブチレンテレフタレート樹脂)などの熱伝導性に優れた樹脂によって平板状に形成される。
【0033】
以上のように構成された電子制御モジュール100によれば、以下の効果を奏する。
【0034】
電子制御モジュール100では、ドライバ基板20、モータ制御基板30、及びブラケット40によって形成された閉空間S内にドライバ基板20上に配置された電子部品21が配置される。これにより、電子部品21にコンタミが付着することを防止できるので、ドライバ基板20に絶縁性のコーティングを施す必要がない。よって、コストを低下させることができる。また、コーティングができないコイル部品21Aを閉空間S内に配置することで、コイル部品21Aに対して特別なコンタミ対策を施す必要がなく、さらに閉空間S内の領域にはコーティングを施す必要がない。よって、コストの上昇を抑制できる。
【0035】
また、熱伝導性を有するプレート50を、コーティング部分Cと筐体1との間に設けることで、モータ制御基板30上において発生した熱を筐体1に逃がすことができる。よって、電子部品31の熱による不具合等を抑制できる。
【0036】
なお、上記実施形態では、電子制御モジュール100としてハイブリッド車両のパワーコントロールユニットに用いられるものを例に説明したが、電子制御モジュール100はこれに限らず、少なくとも2つの電子制御基板が上下方向に積層されるものであればどのようなものであってもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、第1基板(ドライバ基板20)上にコイル部品21A(トランス)が載置される場合を例に説明したが、コイル部品21A(トランス)が載置されていない基板も適用できる。
【0038】
また、上記実施形態では、モータ制御基板30の上面30a及びモータ制御基板30に載置された電子部品31の表面全体にわたってコーティングを施した場合を例に説明したが、導電部分の間隔が一定間隔以上(例えば、3.5mm以上)確保されていれば、コンタミが付着してもショート不良が発生しないので、この場合には、導電部分の間隔が一定間隔以上の部分にコーティングを施さなくてもよい。
【0039】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0040】
電子制御モジュール100は、上面20aに電子部品21が載置される第1基板(ドライバ基板20)と、第1基板(ドライバ基板20)の上面20a側に間隔をあけて配置され、上面30aに電子部品31が載置される第2基板(モータ制御基板30)と、第1基板(ドライバ基板20)と第2基板(モータ制御基板30)との間に設けられ、第1基板(ドライバ基板20)と第2基板(モータ制御基板30)との間に閉空間Sを形成する筒状のブラケット40と、を有する。
【0041】
閉空間S内に第1基板(ドライバ基板20)に載置された電子部品21を配置することにより、コンタミの付着を防止できる。また、閉空間S内の領域には、コーティングを施す必要がないので、コストを低下させることができる。
【0042】
電子制御モジュール100では、第1基板(ドライバ基板20)に載置される電子部品21は、コイル部品21Aを含む。
【0043】
コイル部品21A(例えば、トランス)は、コーティングを施すことができない。このため、コイル部品21A(例えば、トランス)を閉空間S内に配置することにより、コーティングを施すことなく、コンタミの付着を防止できる。
【0044】
電子制御モジュール100では、第2基板(モータ制御基板30)の上面30a及び第2基板(モータ制御基板30)に載置された電子部品31の表面は、絶縁性コーティング剤によってコーティングされる。
【0045】
第2基板(モータ制御基板30)の上面30a及び第2基板(モータ制御基板30)に載置された電子部品31の表面は、絶縁性コーティング剤によってコーティングを施すことにより、第2基板(モータ制御基板30)の上面30aや電子部品31の表面にコンタミが付着しても、ショート不良が発生することを防止できる。
【0046】
電子制御モジュール100は、絶縁性コーティング剤によるコーティング部分Cと電子制御モジュール100を収容する筐体1との間で熱伝導をするプレート50を備える。
【0047】
熱伝導性を有するプレート50を、絶縁性コーティング剤によるコーティング部分Cと電子制御モジュール100を収容する筐体1との間に設けることで、第2基板(モータ制御基板30)上において発生した熱を筐体1に逃がすことができる。よって、電子部品31の熱による不具合を抑制できる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0049】
上記実施形態では、ブラケット40は、ドライバ基板20の外縁部の形状に沿った筒状に形成された場合を例に説明したが、外縁部の形状に沿った形状とする必要はなく、必要な個所に閉空間Sを形成できれば、どのような形状であってもよい。